説明

脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤

【課題】
薬理的に選択性が高く抗肥満薬および抗がん剤としての用途が期待される優れたFAS阻害剤を提供する。
【解決手段】
非天然型の(S)-チオラクトマイシンおよび (S)-3-デメチルチオラクトマイシンを合成し、これらの化合物に優れた脂肪酸合成酵素(FAS)阻害活性を見出した。このようなFAS阻害剤は抗肥満薬又は抗がん剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記一般式(1)で表される(S)-チオラクトマイシン(Rはメチル基を示す)および(S)-3-デメチルチオラクトマイシン(Rは水素原子を示す)の脂肪酸合成酵素(以下FASと略記する)阻害剤に関する。
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
(R)-チオラクトマイシン(2)は、Nocardia sp.から単離・構造決定されたチオテトロン酸抗生物質である(非特許文献1)。
【0004】
【化2】

【0005】
(R)-チオラクトマイシンは、細菌のFASを阻害することにより抗菌活性を示すことが報告されている(非特許文献 2、3、4)。また、ラセミ体のチオラクトマイシンやその誘導体は抗マラリア活性を有していることが報告されている(非特許文献 5)。また、FAS阻害という作用メカニズムを有していることから、チオラクトマイシンやその誘導体が抗肥満薬や抗がん剤としての開発が期待されている(非特許文献
6)。チオラクトマイシンにおいては(R)体およびラセミ体のFAS阻害活性が報告されており(非特許文献6および特許文献1)、また3-デメチルチオラクトマイシンにおいては、ラセミ体のFAS阻害活性が報告されているのみである(非特許文献6および特許文献1)。非天然型である(S)-チオラクトマイシンおよび(S)-3-デメチルチオラクトマイシンについては合成された例はなく、またそのFAS阻害活性も明らかではなかった。
【0006】
【非特許文献1】Oishi, H.ら、J.Antibiot. 1982, 35, 391.
【非特許文献2】Miyakawa, S.ら、J. Antibiot. 1982, 35, 411.
【非特許文献3】Noto, T.ら、J. Antibiot. 1982, 35, 401.
【非特許文献4】Slayden, R. A.ら、Antimicrob. AgentsChemother. 1996, 40, 2813.
【非特許文献5】Waller, R. F.ら、Antimicrob. AgentsChemother. 2003, 47, 297.
【非特許文献6】Townsend, C. A. ら、J. Med. Chem., 2005, 28 , 956.
【特許文献1】WO 2004/005277 パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
薬理学的に選択性が高く抗肥満薬および抗がん剤としての用途が期待される優れたFAS阻害剤を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはチオラクトマイシンおよび3-デメチルチオラクトマイシンの両対掌体を合成し、それらのFAS阻害活性を測定した結果、非天然型である(S)-チオラクトマイシンおよび(S)-3-デメチルチオラクトマイシンがその対掌体やラセミ体に比べ優れたFAS阻害活性を有することを見出し、本発明を完成した。本発明の(S)-チオラクトマイシンおよび(S)-3-デメチルチオラクトマイシンは優れたFAS阻害活性を示す反面、抗菌活性は示さないことから薬理学的に選択性の高いFAS阻害剤である。
【0009】
即ち、本発明は
1) 一般式(1)
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする脂肪酸合成酵素阻害剤、
【0012】
2)前記一般式(1)で表される化合物が(S)-チオラクトマイシンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする脂肪酸合成酵素阻害剤、
【0013】
3)前記一般式(1)で表される化合物が(S)-3-デメチルチオラクトマイシンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする脂肪酸合成酵素阻害剤、
に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
非天然型の(S)-チオラクトマイシンおよび(S)-3-デメチルチオラクトマイシンはその対掌体やラセミ体に比べ優れたFAS阻害活性を示すことから、薬理学的に選択性の高い抗肥満薬又は抗がん剤として用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上記一般式(1)で表される化合物が塩を形成する場合、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、および亜鉛塩などの金属塩、アンモニウム塩およびテトラメチルアンモニウム塩などのアンモニウム塩、モルホリン、およびピペラジンなどとの有機アミン塩、およびグリシン、リジン、アルギニン、フェニルアラニンおよびプロリンなどのアミノ酸との付加塩が例示できる。中でもナトリウム塩、又はカリウム塩などが好ましい。
【0016】
上記一般式(1)で表される化合物またはその塩は、分子内塩や付加物、それらの溶媒和物あるいは水和物などのいずれも含むものである。
【0017】
上記一般式(1)で表される化合物は、例えば公知の方法(上記非特許文献6)若しくは実施例記載の方法に従って製造することができる。
【実施例】
【0018】
以下、参考例および実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明がこれらに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0019】
(参考例1)
2, 4-ジメチル-2, 4-ヘキサジエン酸の合成
【0020】
【化4】

【0021】
文献の方法
(Petroski, R. J.ら、Synth. Commun. 2001, 31, 89.) に従って、トリエチル 2-ホスホノプロピオネート(21.3 g, 89.4 mmoL) の無水ヘキサン溶液 (180 mL) 中に、室温アルゴン雰囲気下でt-BuOLi(94 mL, 94.0 mmoL)、を5分かけて加え、25分攪拌した。次いで氷冷下でチグリルアルデヒド(8.4 mL, 82.6 mmoL)を15分かけて加え、さらに30分攪拌した。反応混合液に氷水を加え、ヘキサンで抽出した(100 mL x 3)。合した有機層を無水硫酸ナトリウム乾燥し、溶媒留去した。残渣にエタノール(90 mL)を加え、次いで10%水酸化ナトリウム水溶液を加えた後、50℃で16時間攪拌した。反応混合液をヘキサンで洗浄し(100 mL x 3)、濃塩酸でpH1とした後、ジエチルエーテルで抽出し(100 mL x 3)、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。残渣を再結晶(MeOH-H2O)にて精製し、5.26 gの薄黄色結晶である表題化合物を得た(収率45%)。再度、ろ液を再結晶にて精製し1.77 gの薄黄色結晶である表題化合物を得た(収率15%)。さらにろ液をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、3.05 gの淡黄色固体の表題化合物を得た(収率26%)。
MS (EI+)
(m/z): 140 (M+).
Analysis Calcd.
for C8H12O2 : C, 68.54; H, 8.63; Found: C,
68.60; H, 8.60.
IR(KBr): 1663,
1273 cm-1.
【0022】
(実施例1)
(4R)-3-(2,
4-ジメチルヘキサ-2,
4-ジエノイル)-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0023】
【化5】

【0024】
参考例1の化合物(2.00 g, 14.3 mmoL) の無水テトラヒドロフラン溶液 (72 mL) 中に、-15℃でトリエチルアミン(4.8 mL, 34.4 mmoL) を加え、次いでピバロイルクロリド(1.9 mL, 15.4 mmoL)を5分かけて加え、15分攪拌した。リチウムクロリド(730 mg, 17.2 mmoL)を加え、次いで無水テトラヒドロフラン(12 mL)に溶解させた(R)-4-ベンジル-2-オキサゾリジノン(3.20 g, 17.2 mmoL)を5分かけて加えた後、室温に戻して16時間攪拌した。反応混合液に飽和塩化アンモニウム水溶液(100 mL)を加え、酢酸エチルで抽出した(50 mL x 2)。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム(50 mL)、飽和食塩水(50 mL)で順次洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 4:1)にて精製し、3.93
gの無色固体である表題化合物を得た(収率92%)。再結晶(Et2O)を行い1.92 gの無色結晶を得た。再度ろ液を再結晶にて精製し1.50 gの無色結晶を得た。
MS (EI+)
(m/z): 299 (M+).
Analysis Calcd.
for C18H21NO3 : C, 72.22; H, 7.07; N, 4.68;
Found: C, 72.07; H, 7.00; N, 4.70.
IR(KBr): 1786,
1674 cm-1.
【0025】
(実施例2)
(4S)-3-(2,
4-ジメチルヘキサ-2,
4-ジエノイル)-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0026】
【化6】

【0027】
実施例1の方法に従って参考例1の化合物(2.00
g, 14.3 mmoL) 、トリエチルアミン(4.8 mL, 34.4 mmoL)、ピバロイルクロリド(1.9 mL, 15.4 mmoL)、リチウムクロリド(730 mg, 17.2
mmoL)および(S)-4-ベンジル-2-オキサゾリジノン(3.20 g, 17.2 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 4:1)にて精製し、3.83
gの無色固体である表題化合物を得た(収率89%)。再結晶(Et2O)を行い無色結晶を得た。
MS (EI+)
(m/z): 299 (M+).
Analysis Calcd.
for C18H21NO3 : C, 72.22; H, 7.07; N, 4.68;
Found: C, 72.12; H, 7.07; N, 4.59 .
IR(KBr): 1786,
1674 cm-1.
【0028】
(実施例3)
(4R)-3-[(2R)-2-(3,
3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエノイル]-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0029】
(工程1)
チオ酢酸 S-(3,3-ジメトキシプロピル)エステルの合成
【0030】
【化7】

【0031】
3-ブロモプロピオンアルデヒド ジメチルアセタール(11.5 mL, 81.7 mmoL) の無水テトラヒドロフラン溶液 (500 mL)
中に、-10℃でトリエチルアミン(13.7 mL,
98.3 mmoL)を加えたのちチオール酢酸 (6.3 mL, 86.4 mmoL)を5分かけて加え、1時間30分攪拌した後、室温に戻して14時間攪拌した。不溶物をろ過し、ろ液を溶媒留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、14.8 gの無色油状の表題化合物を得た(収率100%)。
MS (EI+)
(m/z): 147 (M-OCH3+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C7H14O3S (M-OCH3+):
147.0480. Found, 147.0516.
IR(NaCl): 1694,
1125 cm-1.
【0032】
(工程2)
3,3-ジメトキシプロピルジスルフィドの合成
【0033】
【化8】

【0034】
実施例3の工程1の化合物(22.3 g,
125 mmoL) の無水メタノール溶液 (310 mL) 中に、氷冷下でナトリウムメトキシド (9.24 g, 162 mmoL)を加えた後、室温に戻し50分攪拌した。次いでヨウ素(15.9 g, 62.6 mmoL)を加えて30分攪拌した。反応液を溶媒留去し、H2O(200 mL)を加えた後、酢酸エチルで抽出した(100
mL x 3)。有機層を飽和食塩水(50 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、16.6 gの薄黄色油状の表題化合物を得た(収率98%)。
MS (EI+)
(m/z): 270 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C10H22O4S2
(M+): 270.0960. Found, 270.0978.
IR(NaCl): 1122
cm-1.
【0035】
(工程3)
メチル
3,3-ジメトキシプロピルチオールスルホネートの合成
【0036】
【化9】

【0037】
文献の方法 (Fujiki, K. ら、Synthesis. 2002, 343.) に従って、実施例3の工程2の化合物(305 mg,
1.13 mmoL) の無水塩化メチレン溶液 (7.0 mL) 中に、室温でメタンスルフィン酸ナトリウム (400 mg, 3.64 mmoL)を加えた後、ヨウ素(580 mg, 2.29
mmoL)を加え、2時間攪拌した。反応液に1mol/Lチオ硫酸ナトリウムを反応液が無色になるまで加え、塩化メチレンで抽出した(50 mL x 1)。有機層をH2O(50 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製し、209 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率86%)。
MS (EI+)
(m/z): 183 (M-OCH3+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. For C6H14O4S2
(M-OCH3+): 183.0150. Found, 183.0163.
IR(NaCl): 1319,
1132 cm-1.
【0038】
(工程4)
(4R)-3-[(2R)-2-(3,
3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエノイル]-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0039】
【化10】

【0040】
実施例1の化合物(598 mg, 2.00 mmoL) の無水テトラヒドロフラン溶液 (10 mL) 中に、室温でヘキサメチルホスホラミド(1.4 mL, 8.05
mmoL)を加えた後、-78℃でナトリウムヘキサメチルジシラジド(2.2 mL, 2.20 mmoL)を5分かけて加えて30分攪拌した。実施例3の工程3の化合物(645 mg, 3.01 mmoL)の無水テトラヒドロフラン溶液(2.0 mL)を5分かけて加えたのち、徐々に昇温させて2時間攪拌した。反応液が0℃になった時点で飽和塩化アンモニウム水溶液(20 mL)を加え、酢酸エチルで抽出した(15 mL x 3)。有機層を飽和食塩水(15 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、780 mgの無色油状の表題化合物を立体異性体の混合物として得た(収率90%)。さらにHPLC(CHIRALPAK AD-H ヘキサン:2-プロパノール:エタノール=93:4:3)にて精製し、単一の化合物を641 mg得た(収率74%)。
MS (EI+)
(m/z): 433 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C23H31NO5S (M +):
433.1881. Found, 433.1941.
IR(NaCl): 1790,
1680 cm-1.
【0041】
(実施例4)
(4S)-3-[(2S)-2-(3,
3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエノイル]-4-(フェニルメチル)-2-オキサゾリジノンの合成
【0042】
【化11】

【0043】
実施例3の方法に従って実施例2の化合物(600
mg, 2.00 mmoL) 、ヘキサメチルホスホラミド(1.4 mL, 8.05 mmoL)、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(2.2 mL, 2.20 mmoL)および実施例3の工程3の化合物(645 mg, 3.01 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 4:1)にて精製し735
mgの無色油状の表題化合物を立体異性体の混合物として得た(収率85%)。さらにHPLC(CHIRALPAK AD-H ヘキサン:2-プロパノール:エタノール=93:1:6)にて精製し、単一の化合物を581 mg得た(収率67%)。
MS (EI+)
(m/z): 433 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C23H31NO5S (M +):
433.1881. Found, 433.1881.
IR(NaCl): 1790,
1680 cm-1.
【0044】
(実施例5)
(2R)-2-(3,
3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0045】
【化12】

【0046】
文献の方法
(Evans, D. A. ら、J. Am. Chem. Soc. 1990. 112. 4011.) に従って無水ベンジルアルコール(4.3 mL, 41.6 mmoL)中に室温でチタニウムイソプロポキシド(0.61
mL, 2.07 mmoL)を加えた後、減圧下(0.5 mmHg~1.0 mmHg)で2時間半攪拌した。その溶液を実施例5の化合物(432 mg, 1.00 mmoL) に加え、70℃で14時間攪拌した。塩化メチレン(100mL)を加えた後、1mol/L塩酸(5 mL)を加えた。析出した不溶物をセライトで除き、H2O(50 mL)を加えて、塩化メチレンで抽出した(50 mL
x 3)。有機層を飽和食塩水(100 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、250 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率69%)。
MS (EI+)
(m/z): 364 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C20H28O4S (M +):
364.1708. Found, 364.1710.
IR(NaCl): 1726
cm-1.
【0047】
(実施例6)
(2S)-2-(3,
3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0048】
【化13】

【0049】
実施例5の方法に従って無水ベンジルアルコール(4.8 mL, 46.4 mmoL)、チタニウムイソプロポキシド(0.69 mL,
2.34 mmoL)および実施例4の化合物(487 mg,
1.12 mmoL) を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、291 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率71%)。
MS (EI+)
(m/z): 364 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C20H28O4S (M +):
364.1708. Found, 364.1737.
IR(NaCl): 1726
cm-1.
【0050】
(実施例7)
rac-2-(3, 3-ジメトキシプロピルスルファニル)-2, 4-ジメチルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0051】
【化14】

【0052】
実施例3の工程4の方法に従って、文献(Goodman, M. ら、J. Org. Chem., 1996, 61 ,
2582.)を参考に合成した化合物(345 mg, 1.50 mmoL) 、ヘキサメチルホスホラミド(1.1 mL, 6.32 mmoL)、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(1.8 mL,
1.80 mmoL)および実施例3の工程3の化合物(486 mg, 2.27 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 8:1)にて精製し446
mgの無色油状の表題化合物を得た(収率82%)。
MS (EI+)
(m/z): 364 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C23H31NO5S (M +):
364.1708. Found, 433.1698.
IR(NaCl): 1726
cm-1.
【0053】
(実施例8)
(2R)-
2, 4-ジメチル-2-(2-ホルミルエチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0054】
【化15】

【0055】
実施例5の化合物(805 mg, 2.21 mmoL) のテトラヒドロフラン溶液 (9.0 mL) 中に、室温で6%塩酸(7.0
mL)加えて6時間攪拌した。氷冷下で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)を加えた後、酢酸エチルで抽出した(15 mL x 3)。有機層を飽和食塩水(15 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)にて精製し、667 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率95%)。
MS (EI+)
(m/z): 318 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +):
318.1290. Found, 318.1308.
IR(NaCl): 1726
cm-1.
【0056】
(実施例9)
(2S)-2,
4-ジメチル-2-(2-ホルミルエチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0057】
【化16】

【0058】
実施例8の方法に従って、実施例6の化合物(498 mg, 1.26 mmoL)および6%塩酸(5.0 mL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)にて精製し、380 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率95%)。
MS (EI+)
(m/z): 318 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +):
318.1290. Found, 318.1277.
IR(NaCl): 1726
cm-1.
【0059】
(実施例10)
rac-2, 4-ジメチル-2-(2-ホルミルエチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0060】
【化17】

【0061】
実施例8の方法に従って、実施例7の化合物(73 mg, 0.20 mmoL)および6%塩酸(0.6 mL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)にて精製し、58 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率91%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ(ppm.) 1.66 (3H, s), 1.72 (3H,
s), 2.56 (2H, t, J=7.3 Hz), 2.75-2.85(2H, m), 5.05(1H, d, J=10
Hz), 5.20(1H, d, J=17 Hz), 5.20(2H, q, J=12 Hz), 5.74(1H, s),
6.34(1H, dd, J=17, 10 Hz), 7.30-7.39(5H, m), 9.61(1H, s).
薄層クロマトグラフィー(Merck シリカゲル 60F254) : Rf値 0.4 (ヘキサン:酢酸エチル=6:1)
【0062】
(実施例11)
(2R)
-2, 4-ジメチル-2-(プロピオニルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0063】
【化18】

【0064】
(工程1)
(2R)
-2, 4-ジメチル-2-スルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
無水エタノール(105 mL)に炭酸セシウム(6.81 g, 20.9 mmoL)を懸濁させたのち、氷冷下で実施例8の化合物(666 mg, 2.09 mmoL) の無水エタノール溶液(7.0 mL)を20分かけて加えて20分攪拌した。反応液を飽和塩化アンモニア水溶液/1mol/L塩酸=3/1(120 mL)にあけ、ジエチルエーテルで抽出した (20 mL x 3) 。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。酢酸エチル(100
mL)を加え、再び無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。
【0065】
(工程2)
(2R)
-2, 4-ジメチル-2-(プロピオニルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
工程1で得られた残渣に無水塩化メチレン(21 mL)を加え、氷冷下でトリエチルアミン(0.45 mL, 3.23 mmoL)、プロピオニルクロリド(0.24 mL,
2.69 mmoL)を加え、氷浴上で30分攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(50 mL)を加えた後、塩化メチレンで抽出した(30 mL x 3)。有機層を飽和食塩水(30 mL)で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、501 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率75%)。
MS (EI+)
(m/z): 318 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +):
318.1290. Found, 318.1301.
IR(NaCl): 1738,
1694 cm-1.
【0066】
(実施例12)
(2S)
-2, 4-ジメチル-2-(プロピオニルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0067】
【化19】

【0068】
(工程1)
(2S)
-2, 4-ジメチル-2-スルファニルヘキサ-3,
5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例11の工程1に従って、炭酸セシウム(3.88 g, 11.9 mmoL)および実施例9の化合物(380 mg, 1.19 mmoL)を用いて反応を行った。
【0069】
(工程2)
(2S)
-2, 4-ジメチル-2-(プロピオニルスルファニル)ヘキサ-3,
5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例11の工程2に従って、トリエチルアミン(0.25 mL, 1.57 mmoL)およびプロピオニルクロリド(0.14 mL, 1.57 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、290 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率77%)。
MS (EI+)
(m/z): 318 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +):
318.1290. Found, 318.1273.
IR(NaCl): 1738,
1695 cm-1.
【0070】
(実施例13)
rac -2, 4-ジメチル-2-(プロピオニルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0071】
【化20】

【0072】
(工程1)
rac -2, 4-ジメチル-2-スルファニルヘキサ-3,
5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例11の工程1に従って、炭酸セシウム(2.46 g, 7.55 mmoL)および実施例10の化合物(240 mg, 0.754 mmoL)を用いて反応を行った。
【0073】
(工程2)
rac -2, 4-ジメチル-2-(プロピオニルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例11の工程2に従って、トリエチルアミン(0.13 mL, 0.973 mmoL)およびプロピオニルクロリド(0.070 mL, 0.785 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、192 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率80%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ(ppm.) 1.10(3H, t, J=7.3
Hz), 1.77 (3H, d, J=1.2 Hz), 1.90 (3H, s), 2.49(2H, d, J=7.3 Hz),
5.04(1H, d, J=10 Hz), 5.18(1H, d, J=17 Hz), 5.18 (2H, s),
5.75(1H, s), 6.30(1H, dd, J=17, 10 Hz), 7.30-7.35(5H, m).
薄層クロマトグラフィー(Merck シリカゲル 60F254) : Rf値 0.2 (ヘキサン:酢酸エチル=20:1)
【0074】
(実施例14)
(2R)
-2, 4-ジメチル-2-(アセチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0075】
【化21】

【0076】
(工程1)
(2R)
-2, 4-ジメチル-2-スルファニルヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例11の工程1に従って、炭酸セシウム(2.61
g, 8.01 mmoL)および実施例8の化合物(510 mg, 1.60 mmoL) を用いて反応を行った。
【0077】
(工程2)
(2R)
-2, 4-ジメチル-2-(アセチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例11の工程2に従って、トリエチルアミン(0.45 mL, 3.23 mmoL)およびアセチルクロリド(0.12 mL, 1.57 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、332 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率68%)。
MS (EI+)
(m/z): 304 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +):
304.1133. Found, 304.1159.
IR(NaCl): 1738,
1694 cm-1.
【0078】
(実施例15)
(2S)
-2, 4-ジメチル-2-(アセチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0079】
【化22】

【0080】
(工程1)
(2S)
-2, 4-ジメチル-2-スルファニルヘキサ-3,
5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例11の工程1に従って、炭酸セシウム(5.12 g, 15.7 mmoL)および実施例9の化合物(500 mg, 1.57 mmoL)を用いて反応を行った。
【0081】
(工程2)
(2S)
-2, 4-ジメチル-2-(アセチルスルファニル)ヘキサ-3,
5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例11の工程2に従って、トリエチルアミン(0.45 mL, 3.23 mmoL)およびアセチルクロリド(0.12 mL, 1.66 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、391 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率82%)。
MS (EI+)
(m/z): 304 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +):
304.1133. Found, 304.1114.
IR(NaCl): 1738,
1694 cm-1.
【0082】
(実施例16)
rac-2,
4-ジメチル-2-(アセチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
【0083】
【化23】

【0084】
(工程1)
rac -2, 4-ジメチル-2-スルファニルヘキサ-3,
5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例11の工程1に従って、炭酸セシウム(5.16 g, 15.8 mmoL)および実施例10の化合物(1.01 g, 3.17 mmoL)を用いて反応を行った。
【0085】
(工程2)
rac -2, 4-ジメチル-2-(アセチルスルファニル)ヘキサ-3, 5-ジエン酸 ベンジルエステルの合成
実施例11の工程2に従って、トリエチルアミン(0.90 mL, 6.46 mmoL)およびアセチルクロリド(0.25 mL, 3.45 mmoL)を用いて反応を行い、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、688 mgの無色油状の表題化合物を得た(収率71%)。
MS (EI+)
(m/z): 304 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C18H22O3S (M +):
304.1133. Found, 304.1135.
IR(NaCl): 1738,
1694 cm-1.
【0086】
(実施例17)
(5R)-4-ヒドロキシ-3, 5-ジメチル-5-(2-メチルブタ-1, 3-ジエニル)-5H-チオフェン-2-オン(チオラクトマイシン)の合成
【0087】
【化24】

【0088】
文献の方法 (特許文献1) に従って、実施例11の工程2の化合物(498 mg, 1.56 mmoL) の無水テトラヒドロフラン溶液 (78 mL) 中に、-78℃でリチウムヘキサメチルジシラジド(4.0 mL, 4.00mmoL)を加え、0℃になるまで昇温しながら3時間30分攪拌した。反応液を1mol/L塩酸(40 mL)に注ぎ、酢酸エチルで抽出し(35 mL x 3)、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒留去した。残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、ジエチルエーテルで洗浄した(20 mL x 2)。水層に1mol/L塩酸を加え、pHを2とした後、ジエチルエーテルで抽出し(25 mL x 2)、さらに酢酸エチルで抽出した(25 mL x 2)。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒留去し、褐色固体の表題化合物を得た(収率91%)。さらにジエチルエーテル:ヘキサン=1:1でトリチュレートし、無色固体の表題化合物を得た(収率63%)。また、機器分析用サンプルは、ジイソプロピルエーテルで再結晶を行うことにより得た。
MS (EI+)
(m/z): 210 (M+).
Analysis Calcd.
for C11H14O2S : C, 62.83; H, 6.71; Found: C,
62.68; H, 6.54.
IR(KBr): 1605
cm-1.
[α]29 =+197o (c 1.0, MeOH).
【0089】
(実施例18)
(5S)-4-ヒドロキシ-3, 5-ジメチル-5-(2-メチルブタ-1, 3-ジエニル)-5H-チオフェン-2-オン(チオラクトマイシン)の合成
【0090】
【化25】

【0091】
実施例17の方法に従って、実施例12の工程2の化合物(320 mg, 1.00 mmoL)およびリチウムヘキサメチルジシラジド(2.5 mL, 2.5 mmoL)を用いて反応を行い、褐色固体の表題化合物を得た(収率93%)。さらにジエチルエーテル/ヘキサン=1:1でトリチュレートし、無色固体の表題化合物を得た(収率42%)。また、機器分析用サンプルは、ジイソプロピルエーテルで再結晶を行うことにより得た。
MS (EI+)
(m/z): 210 (M+).
Analysis Calcd.
for C11H14O2S : C, 62.83; H, 6.71; Found: C,
62.51; H, 6.68.
IR(KBr): 1605
cm-1.
[α]29=-192o (c 1.0, MeOH).
【0092】
(実施例19)
rac-4-ヒドロキシ-3, 5-ジメチル-5-(2-メチルブタ-1, 3-ジエニル)-5H-チオフェン-2-オン(チオラクトマイシンのラセミ体)の合成
【0093】
【化26】

【0094】
実施例17の方法に従って、実施例13の工程2の化合物(186 mg, 0.584 mmoL)およびリチウムヘキサメチルジシラジド(1.5 mL, 1.5 mmoL)を用いて反応を行い、褐色固体の表題化合物を93 mg得た(収率76%)。さらにジエチルエーテル/ヘキサンで再結晶を行い無色固体の表題化合物を45 mg得た(収率37%)。
MS (EI+)
(m/z): 210 (M+).
Analysis Calcd.
for C11H14O2S : C, 62.83; H, 6.71; Found: C,
62.62; H, 6.63.
【0095】
(実施例20)
(5R)-4-ヒドロキシ-5-メチル-5-(2-メチルブタ-1, 3-ジエニル)-5H-チオフェン-2-オンの合成
【0096】
【化27】

【0097】
実施例17の方法に従って、実施例14の工程2の化合物(318 mg, 1.04 mmoL)およびリチウムヘキサメチルジシラジド(2.6 mL, 2.6 mmoL)を用いて反応を行い、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ベンゼン:アセトン=4:1)にて精製し、121 mgの茶褐色固体の表題化合物を得た(収率59%)。また、機器分析用サンプルは、ジイソプロピルエーテルで再結晶を行うことにより得た。
MS (EI+)
(m/z): 196 (M+).
Analysis Calcd.
for C10H12O2S : C, 61.20; H, 6.16; Found: C,
60.90; H, 6.07.
IR(KBr): 1607
cm-1.
[α]29=+186o (c 1.0, MeOH).
【0098】
(実施例21)
(5S)-4-ヒドロキシ-5-ジメチル-5-(2-メチルブタ-1, 3-ジエニル)-5H-チオフェン-2-オンの合成
【0099】
【化28】

【0100】
実施例17の方法に従って、実施例15の工程2の化合物(590 mg, 1.94 mmoL)およびリチウムヘキサメチルジシラジド(4.8 mL, 4.8 mmoL)を用いて反応を行い、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ベンゼン:アセトン=4:1)にて精製し、210 mgの茶褐色固体の表題化合物を得た(収率55%)。また、機器分析用サンプルは、ジイソプロピルエーテルで再結晶を行うことにより得た。
MS (EI+)
(m/z): 196 (M+).
Analysis Calcd.
for C10H12O2S : C, 61.20; H, 6.16; Found: C,
60.98; H, 6.08.
IR(KBr): 1607
cm-1.
[α]29=-184o (c 1.0, MeOH).
【0101】
(実施例22)
rac-4-ヒドロキシ-5-ジメチル-5-(2-メチルブタ-1, 3-ジエニル)-5H-チオフェン-2-オンの合成
【0102】
【化29】

【0103】
実施例17の方法に従って、実施例16の工程2の化合物(674 mg, 2.21 mmoL)およびリチウムヘキサメチルジシラジド(5.5 mL, 5.5 mmoL)を用いて反応を行い、褐色固体の表題化合物を430
mg得た(収率99%)。さらにジエチルエーテルで再結晶を行い無色固体の表題化合物を102 mg得た(収率24%)。ろ液をシリカゲルクロマトグラフィー(ベンゼン:アセトン=3:1)にて精製し、153 mgの淡黄色固体の表題化合物を得た(収率35%)。
MS (EI+)
(m/z): 196 (M+).
HRMS (EI+)
(m/z): Calcd. for C10H12O2S (M +):
196.0558. Found, 196.0521.
【0104】
(実施例23) FAS阻害活性(HepG2細胞における脂肪酸合成阻害作用)
ヒト肝癌由来HepG2細胞を用いて[(14)C]酢酸からの脂肪酸合成を測定することにより、ヒト肝臓における脂肪酸合成酵素に及ぼす影響を実験的に確認できることが知られている(J Biol Chem. 1996 Jun 14;271(24):14376-82、Lipids.
2001 Apr;36(4):395-400)。この実験方法に準じて、被検化合物のHepG2細胞における脂肪酸合成阻害作用を検討した。
方法:HepG2細胞を10%仔ウシ血清含有ダルベッコ改良培地(DMEM)に懸濁して12ウェルプレートに播種した。培養はすべて37℃、5%炭酸ガスで行った。72時間培養後に無血清DMEMに培地交換した。24時間後に被検化合物および陽性対照であるC75(Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 Mar
28;97(7):3450-4)を含むクレブス・リンガー リン酸ヘペス緩衝液(pH7.4)に培地交換した。実施例17〜22の化合物およびC75はジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して2.5, 5, 10, 20, 40, 80μg/mlで添加した。溶媒対照にはDMSOを添加した。測定はすべて3例で実施した。4時間培養後、さらに0.2μCi
[(14)C]酢酸を添加し、2時間培養して脂肪酸合成反応を行った。15%水酸化カリウムを含むエタノール溶液で反応を停止させ、85℃で2時間加温してケン化させた。石油エーテルで脂溶性画分を除去後、塩酸でpH1に調整してケン化生成物を溶解し、石油エーテルで抽出した。室温で乾固後、クロロホルムで溶解し、精製水を混和して完全に水溶性画分を除去後、クロロホルム層を回収した。室温で乾固後、メタノールで溶解させ、シンチレーターを混和して放射能を測定した。IC50値はPrism Version 4.0(Graph Pad Software) により算出した。
【0105】
結果:被検化合物およびC75(非特許文献6)のIC50値を表1に示した。 (S)-チオラクトマイシン(実施例18の化合物)および(S)-3-デメチルチオラクトマイシン(実施例21の化合物)はその対掌体やラセミ体に比べ優れたFAS阻害活性を示した。
【0106】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0107】
非天然型である(S)-チオラクトマイシンおよび(S)-3-デメチルチオラクトマイシンがその対掌体やラセミ体に比べ優れたFAS阻害活性を有することを見出した。一方これらの化合物は抗菌活性を示さないことから薬理的な選択性の高いFAS阻害剤である。このようなFAS阻害剤は抗肥満薬又は抗がん剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする脂肪酸合成酵素阻害剤。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が(S)-チオラクトマイシンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする脂肪酸合成酵素阻害剤。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が(S)-3-デメチルチオラクトマイシンまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする脂肪酸合成酵素阻害剤。

【公開番号】特開2007−63156(P2007−63156A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248519(P2005−248519)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】