説明

脂質代謝改善剤

【課題】脂質代謝改善に効果を発揮し、食品や医薬品として利用できる材料の提供。
【解決手段】ライチ種子又はその抽出物を含有する脂質代謝改善剤を含有する飲食品及び医薬品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質代謝改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられているものとして、ライチと同じムクロジ科植物である無患子が見られる。無患子は、果皮を石鹸の代用品として用いていた。また、ライチは中国の伝統的な官僚登用試験である状元になぞられることがあり、かつて北京では新生児に生後三日目の産湯をつかわせる際に、湯桶に産婆が乾燥させたライチ、竜眼、クルミを投げ込み、科挙の三つの試験の首席を願い、祝辞を述べるのを常とした。ライチは、楊貴妃の時代から食用として珍重されているが、種子を食用とする事はなかった。また、ライチの種子は軟膏にして皮膚病に用いる。昭和53年11月10日発行、世界果樹図鑑、農業図書株式会社発行に記載がある。特開2000−128730に保湿剤としてレイシ(ライチ)を用いる特許が見られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、皮膚外用剤や、浴用としてライチの種子を用いることは周知の事実であり、ライチの種子や果実を皮膚外用剤として用いることは、なんら新規性はない。
しかし、ライチ種子は内服薬、坐剤、注射剤等の医薬品や、食品等として利用されたことはない。本発明は、ライチの種子に脂質代謝改善剤等の極めて有用な効果を見出したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、本発明の脂質代謝改善剤は、ライチ種子又はその抽出物を含有することを特徴とする。
また、本発明の薬品は、上記脂質代謝改善剤を含有することを特徴とする。
更に、本発明の飲食品は、脂質代謝改善剤を含有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の脂質代謝改善剤は、ライチの種子を用いる事に限定したものであり、ライチの種子を用いる方法で有れば全て効果を期待することができる。ライチ種子をそのまま用いても良いが、エキスを用いる場合、極性有機溶媒を用いる方法がより良い方法である。用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、二酸化炭素などをそのまま単一溶媒で用いるか、2種類以上を任意に混合して用いて、エキスを作成する事も出来る。
【0006】
抽出溶媒として水を使用する場合には、抽出温度20〜100℃、好ましくは80〜100℃程度で行うとよい。これは、抽出温度が低すぎると、有効成分が抽出されにくいためである。抽出用の水の種類は、特に限定されず、水道水、蒸留水、ミネラル水、アルカリイオン水等を使用することができる。好ましくは、抽出溶媒として、深層水(海洋深層水)を使用するとよい。
【0007】
抽出溶媒として含水エタノールを使用する場合、エタノール濃度30〜90%(容量比)であることが好ましい。30%(容量比)程度よりも少ないか、90%(容量比)を超えると、有効成分の抽出量が低下しやすくなるからである。また、抽出温度は、20〜80℃、好ましくは50〜80℃程度で行うとよい。なお、含水エタノール抽出は、有効成分の含有率を向上させるため、種々の濃度で繰り返すとよい。
【0008】
本発明の脂質代謝改善剤の抽出方法としては、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出、超臨界抽出など任意の方法を採用することができ、室温ないし還流加熱下において任意の装置を使用することができる。
【0009】
具体的な方法としては、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料を投入し、攪拌しながら有効成分を溶出させる。例えば、抽出溶媒として水または含水エタノールを用いる場合には、抽出原料の5〜100倍量程度(重量比)の極性溶媒を使用し、30分〜5時間程度抽出を行う。溶媒中に有効成分を溶出させた後、ろ過して抽出残渣を除くことによって、抽出液を得る。その後、常法に従って抽出液に希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施し、脂質代謝改善剤とする。
なお、精製方法としては、例えば、活性炭処理、樹脂吸着処理、イオン交換樹脂、液−液向流分配等の方法が挙げられるが、食品等に添加する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままで使用してもよい。
【0010】
また、本発明の脂質代謝改善剤は、飲食品に含有させることができる。例えば、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック菓子、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)をはじめとする一般食品や健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)などが上げられる。インスタント食品に本発明の脂質代謝改善剤を添加しても良い。例えば、脂質代謝改善剤を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥したものを、粉末、顆粒、打錠または溶液にすることで容易に飲食品に含有させることができる。
【0011】
本発明の脂質代謝改善剤は、経口投与で用いる薬品(医薬品および医薬部外品を含む。)に含有させることができる。例えば、軟・硬カプセル剤または錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤等の製品形態にすることができる。
また、本発明の脂質代謝改善剤を非経口投与してもよい。非経口剤として投与する場合、溶液の状態、または分散剤、懸濁剤、安定剤などを添加した状態で、注射剤、坐剤などの形態とすることができる。
【実施例】
【0012】
[ライチ種子エキスの製造]
原料には、ライチ種子を、乾燥、粉砕して使用した。まず、ライチ種子を、60%(v/v)含水エタノールで還流し、エタノール抽出液を濃縮した。このとき、還流温度は75〜85℃とし、還流時間は4時間とした。その後、この濃縮液の固形分と同量のデキストリンを加え、乾燥粉末とし、ライチ種子エキス(実施例)を得た。
【0013】
ラットにおけるライチ種子エキスの脂質代謝に及ぼす影響を検討した。
4週齢の雄性Sprague-Dawleyラット(以下SDラットという)を室温22±1℃、室温55±5%、8:00〜20:00点灯のライトサイクルの動物飼育室で飼育した。
最初5日間はMF固形飼料を与えて予備飼育を行った。その後、ラットの体重に群間で差がないように群分けし、以下の試験食を4週間自由摂食させた。
【0014】
試験食は、AIN-93G組成に基づいた純化食をコントロール食とした。飼料の重量組成(g/kg)は、カゼイン200、コーン油50、ミネラル混合(AIN-93-MX)35、ビタミン混合(AIN-93-VX)10、セルロース50、重酒石酸コリン2、α-コーンスターチ132、ショ糖100、L-シスチン3、コレステロール5、コール酸ナトリウム1.25、TBHQ0.014およびコーンスターチで1000とした。ライチ種子エキス添加群には、ライチ種子エキスを飼料総重量の1%添加し、その添加量分のコーンスターチ量を減じた。飼育期間中、摂食量は毎日、体重は1日おきに測定した。
【0015】
ライチ種子エキスは、SDラットの血清コレステロール、血清中性脂肪および肝臓中性脂肪濃度を効果的に低下させた。結果を表1に示す。
【表1】

【0016】
血清や肝臓の中性脂肪濃度は、肝臓の脂肪合成や分解による影響を大きく受ける。そこで、肝臓脂肪合成関連酵素の活性を測定した。ライチ種子エキスは、脂肪酸合成に関与する肝臓サイトゾル画分のFatty acid synthase活性および脂肪合成に関与する肝臓ミクロソーム画分のPhosphatidic acid phosphohydrolase活性を著しく低下させ、脂肪酸分解に関与する肝臓ミトコンドリア画分のCarnitine palmitoyltransferase活性を増加させた。結果を表2に示す。
【表2】

これらの結果から、ライチ種子エキスは肝臓Fatty acid synthase活性およびPhosphatidic acid phosphohydrolase活性を低下させることで肝臓脂肪合成を抑制し、またCarnitine palmitoyltransferase活性を上昇させることで脂肪分解を促進することにより肝臓および血清中性脂肪濃度を低下させることが明らかとなった。
【0017】
以下、本発明の脂質代謝改善剤(ライチ種子エキス)の配合例の例を挙げる。但し、下記配合例は、本発明の発明を限定するものではなく、脂質代謝の改善に効果があれば、下記配合例に限定されないのは勿論である。
配合例1:チューインガム
砂糖 53.0重量%
ガムベース 20.0
グルコース 10.0
水飴 16.0
香料 0.5
ライチ種子エキス 0.5
100.0重量%
【0018】
配合例2:グミ
還元水飴 40.0重量%
グラニュー糖 20.0
ブドウ糖 20.0
ゼラチン 4.7
水 9.68
ウメ果汁 4.0
ウメフレーバー 0.6
色素 0.02
ライチ種子エキス 1.0
100.0重量%
【0019】
配合例3:キャンディー
砂糖 50.0重量%
水飴 33.0
水 14.4
有機酸 2.0
香料 0.2
ライチ種子エキス 0.4
100.0重量%
【0020】
配合例4:ヨーグルト(ハード・ソフト)
牛乳 41.5重量%
脱脂粉乳 5.8
砂糖 8.0
寒天 0.15
ゼラチン 0.1
乳酸菌 0.005
ライチ種子エキス 0.4
香料 微量
水 残余
100.0重量%
【0021】
配合例5:ソフトカプセル
玄米胚芽油 87.0重量%
乳化剤 12.0
ライチ種子エキス 1.0
100.0重量%
【0022】
配合例6:コーヒー飲料(液状)
焙煎コーヒー豆 6.0重量%
砂糖 6.0
重曹 0.2
乳化剤 0.15
ライチ種子エキス 1.0
水 残余
100.0重量%
【0023】
配合例7:コーヒー飲料(粉末)
インスタントコーヒー 90.0重量%
脱脂乳 7.0
ライチ種子エキス 3.0
100.0重量%
【0024】
配合例8:清涼飲料
果糖ブドウ糖液糖 30.0重量%
乳化剤 0.5
ライチ種子エキス 0.05
香料 適量
精製水 残余
100.0重量%
【0025】
配合例9:錠剤
乳糖 54.0重量%
結晶セルロース 30.0
澱粉分解物 10.0
グリセリン脂肪酸エステル 5.0
ライチ種子エキス 1.0
100.0重量%
【0026】
配合例10:錠菓
砂糖 76.4重量%
グルコース 19.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
ライチ種子エキス 0.5
精製水 3.9
100.0重量%
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上により、ライチ種子エキスは、脂質代謝改善に効果を発揮する食品や医薬品として十分利用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライチ種子又はその抽出物を含有することを特徴とする脂質代謝改善剤。
【請求項2】
請求項1に記載の脂質代謝改善剤を含有することを特徴とする医薬品。
【請求項3】
請求項1に記載の脂質代謝改善剤を含有することを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2007−70267(P2007−70267A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257184(P2005−257184)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本農芸化学会2005年度(平成17年度)大会(主催者名;社団法人日本農芸化学会)にて平成17年3月29日に文書で発表
【出願人】(594045089)オリザ油化株式会社 (96)
【Fターム(参考)】