説明

脂質及びカチオン性ペプチドの組成物

本発明は、少なくとも1つのカチオン性ペプチド活性因子、少なくとも1つの中性構造形成両親媒性物質、少なくとも1つのアニオン性構造形成両親媒性物質、及び必要に応じて少なくとも1つの溶媒を含む組成物であって、前記組成物は、非ラメラ相構造の形態であり及び/又は体液にさらされると非ラメラ構造を形成する組成物に関する。本発明は、また、ペプチドをインビボの酵素分解から保護する方法、及び、ペプチド活性因子がそのように保護される組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物及び栄養補助組成物におけるペプチド及びタンパク質の保護、安定化、及び、デリバリー(送達、delivery)に関する。とりわけ、本発明は、ペプチダーゼ及びプロテアーゼによる分解に対する一層優れた保護をもたらす、脂質ベースのデリバリーシステムでカチオン性ポリペプチド及びオリゴペプチドを送達する組成物及び製剤に関する。本発明は、また、そのような保護をするように、そのようなペプチドを調合してデリバリーする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な病状の治療、並びに、予防、及び、患者(対象)の総合的健康及び快適さの向上において、ペプチド及びタンパク質の使用は、非常に大きな潜在能力がある。しかしながら、投与されたペプチド剤の能力は、一般に、乏しいバイオアベイラビリティー(bioavailability)に起因して、限定されている。言い換えると、これは、生体液中のペプチド及びタンパク質の急速な分解が原因である。このことが、投与しなければならない用量を増加させ、多くの場合、効率的な投与経路を制限する。これらの影響は、多くの場合、ペプチド及びタンパク質の生体膜に対する乏しい透過性により、さらに悪化する。
【0003】
哺乳類の身体に(例えば、経口、筋肉内などにより)投与されたペプチド及びタンパク質は、その身体中に存在する様々なタンパク質分解酵素及びシステムによる分解にさらされる。ペプチダーゼ活性部位としてよく知られているものには、胃(例えば、ペプシン)及び腸管(例えば、トリプシン、キモトリプシンやその他のもの)などが含まれる。しかし、その他のペプチダーゼ(例えば、カルボキシペプチダーゼA、B及びC)は、身体の至る所に存在する。経口投与されると、腸管表面の裏打ちから潜在的に吸収されうるペプチド又はタンパク質の量が、胃腸の分解により低減され、それによりバイオアベイラビリティーが減少する。同様に、哺乳類の血流中の遊離ペプチド及びタンパク質もまた、(例えば、血漿カルボシキペプチダーゼなどによる)酵素分解にさらされる。
【0004】
表1に、哺乳類の身体に見られるプロテアーゼ(ペプチダーゼ)のうちの少数について、それらのタイプ及び一般的な作用部位とともに示す。
【0005】
【表1】

【0006】
経口システムにおけるペプチドの乏しいバイオアベイラビリティーをもたらすもう一つの大きな障害は、低い透過性及び吸収作用である。脂質キャリアがペプチド及びタンパク質の吸収を大きく向上することを示した例はいくつかある。しかし、概して、ペプチド剤のバイオアベイラビリティーは、(特に経口の場合は、)それらを実質的に無効とするほど低い。
【0007】
カチオン性ペプチド活性因子(active agent)の2つの例は、環状ノナペプチドのデスモプレシン(desmopressin)、8アミノ酸環状ソマトスタチン(somatostatin)アナログのオクトレオチド(octerotide)、及び、32アミノ酸ペプチドのカルシトニン(calcitonin)である。
【0008】
カルシトニンは、哺乳類甲状腺の傍濾胞細胞から分泌される自然発生するペプチドホルモンであって、鳥類や魚類にも見られる。すべての起源に由来するカルシトニンは、1つのジスルフィド結合を有する32残基のペプチドである。そして、いくつかの普遍的に保存された残基があるけれども、その他の部分の一次配列が著しく異なるカルシトニンもある。カルシトニンは、血漿カルシウムレベルの上昇に応答して天然に産生される。そして、骨のパジェット病、高カルシウム血症及び閉経後骨粗しょう症などのような病気の制御、治療及び予防に利用することができる。
【0009】
ヒトへの使用として最も一般的に投与されるのは、合成ヒトカルシトニン及び合成サケカルシトニン(これはヒトホルモンよりも目方で約50倍強力である。)である。カルシトニンは、非経口経路でのみ投与されうる。これは、部分的には、胃腸管(GI tract)における急速分解に起因する。通常、投与は、静脈内(IV)、筋肉内(IM)又は皮下(SC)である。これは必要なことであるが、望ましくない。なぜなら、カルシトニンによる治療は通常長期に渡り、患者は概して定期的に皮下注射によりしばしば異なる部位にホルモンを自己投与しなければならないからである。結果として、効果的な経口製剤は、著しい進歩となる。
【0010】
デスモプレシンは、天然ヒト下垂体後葉ホルモンアルギニンバソプレシン(arginine vasopressin)の合成アナログである。デスモプレシンは、抗利尿剤であり、内在性下垂体後葉バソプレシンを欠乏する患者、例えば、尿崩症(diabetes insipidus)における多渇症、多尿症及び脱水症状を予防又は制御するために使用される。
【0011】
カルシトニンと異なり、デスモプレシンは、高い有効性と限られた副作用に起因して経口投与することができる。しかし、その経口アベイラビリティーは、極めて低いままである。鼻腔内投与及び静脈内投与は、経口摂取よりも大幅により効果的である。鼻腔内投与は、経口製剤のバイオアベイラビリティーの少なくとも20倍を与えることができ、また、静脈内投与は、600倍以上効果的である。それにもかかわらず、デスモプレシンの経口投与は極めて好まれており、バイオアベイラビリティーが向上したこのペプチドの組成物を提供することは、相当に利点がある。
【0012】
オクトレオチドは、共通制御ホルモンソマトスタチン(成長ホルモン放出阻害因子又はソマトトロピン放出阻害因子としても知られる)の合成アナログである。ソマトスタチンは、成長ホルモンソマトトロピンの制御に効果を及ぼすのみならず、いくつかの下垂体前葉ホルモンの分泌変化、脾臓の内分泌及び外分泌機能、胃酸及びGIホルモンの産生、並びに、その他のメカニズムに効果を及ぼす。オクトレオチドは、静脈内、皮下及び長期筋肉内投与で利用可能である。よって、実行可能な経口製剤は、相当の価値となる。
【0013】
上記の例で説明したように、胃腸管のタンパク質分解活性からペプチド活性因子を保護できる方法が、大いに必要とされている。また、ペプチドを静脈内又は皮下の“デポ(depot)”注入用に調合し、長期間に渡り体内で分解から保護された状態に保つ方法も、大いに必要とされている。
【0014】
最近、脂質などのような両親媒性物質を含む活性因子の製剤が、著しい関心を生じている。脂質は、極性親水基と非極性疎水基とを有する。これらの基が相互作用を通して集合し、極性及び/又は非極性溶媒存在下で、様々な又は規則的及び不規則的な構造をとることができる。脂質の自発曲率が低い場合、それらの構造は一般的にラメラであり、例えば、モノ‐又はマルチ‐ラメラベシクル及びリポソームなどのようなものである。また、自発曲率がよい高い場合、ミセル相又は液晶相が優位を占める。
【0015】
両親媒性物質系(amphiphile-based)製剤は、多くの物質のデリバリー、とりわけヒト又は動物の体内へのインビボ(in vivo)デリバリーにおいて相当の潜在能力を示す。両親媒性物質は、一団となって極性領域及び非極性領域を形成する極性基及び非極性基の両方を有するため、極性及び非極性化合物の両方を効率的に可溶化できる。さらに、極性及び/又は非極性溶媒中で両親媒性物質/構造化因子(structuring agent)により形成される構造の多くは極めて相当な極性/非極性境界領域を有する。この領域にその他の両親媒性化合物が吸着され安定化されうる。両親媒性物質は、また、侵食性の生物学的環境から少なくともある程度は活性因子を保護するために調合することができ、それにより、有利な活性因子放出速度及び部位をもたらすことができる。
【0016】
両親媒性物質/水、両親媒性物質/油、及び、両親媒性物質/油/水の相図における非ラメラ領域の形成は、よく知られた現象である。そのような相には、例えば、キュービックP、キュービックD、キュービックG及びヘキサゴナル相などのような、分子レベルでは流動体だが著しい長距離秩序(long-range order)を示す液晶相が含まれる。さらに、非ラメラであるが液晶相の長距離秩序を欠く多重に相互接続した二分子膜シートのバイコンティニュアス(両連続)ネットワークを含むL3相が含まれる。その曲率に応じて、これらの相は、正(normal;平均曲率が非極性領域を指向する)又は逆(reversed;平均曲率が極性領域を指向する)と記載されうる。
【0017】
非ラメラの液晶及びL3相は、熱力学的に安定な系である。換言すると、これらは、単に、層やラメラ相などに分離及び/又はリフォームする準安定状態ではなく、混合物の熱力学的に安定な形態である。
【0018】
ラメラ及び非ラメラ系のどちらも、規定食剤(dietary agent)、化粧品剤、栄養剤、診断剤及び医薬剤のキャリア及び/又は賦形剤としての特性について研究されてきた。しかし、非ラメラ系は、高い内部表面積、並びに、バイコンティニュアスな極性及び非極性領域という点において相当な利点を有すると考えられる。よって、非ラメラ相は、特に制御放出製剤や比較的低溶解度の化合物を可溶化する用途についてかなり研究されている。
【0019】
上述のとおり、バルクな非ラメラ相は、一般に、熱力学的に安定な系である。加えて、このバルクな相は、極性又は非極性溶媒中で分散し、バルクな溶媒中で非ラメラ相(特に、液晶相)の粒子を形成することができる。これにより、体液と非混和性(非ミシブル)であるバルク製剤の使用が問題となる場合、例えば、非経口投与などの用途にも、バルクな非ラメラ相の利点が適用可能となる。さらに、例えば、そのような分散のサイズ、形態、及び、薬剤キャリア膜相互作用を最適化することで、化合物の放出プロファイルの制御も達成できる。
【0020】
多くの場合、液晶又はL3相は、過剰溶媒中で熱力学的に平衡状態又は平衡近傍状態となることができる。それゆえ、非ラメラ粒子の安定な分散を調製できる。そのような粒子は、完全に(つまり、熱力学的に)安定となることもあり、又は、次第に分解して、それによりそれとともに調合される活性因子の放出プロファイルの制御をもたらすこともある。分散の形成は、自然発生である場合や、又は、せん断(shearing)若しくは超音波などの機械力の結果としての場合がある。これらの非ラメラ粒子は、活性因子のデリバリーにおいて相当に関心が高く、多くのそのような作用のためのキャリアとして提案されている。
【0021】
水などの溶媒における非ラメラ相の分散粒子の形成方法は、US 5,531,925(特許文献1)に開示される。そのような粒子は、非ラメラ液晶若しくはL3の内部相又はそれらの組み合わせを示し、一般的には、ラメラ又はL3の表面相を示す。
【0022】
公知の液晶又はL3内部相の粒子は、この相に表面相形成(surface-phase forming)及び安定化(stabilizing)剤を添加し、撹拌して粗大分散を形成し、得られた混合物をフラグメンテーション化(fragmenting)するというような方法により形成できる。非ラメラ粒子は、また、溶媒に適切な組成の構造形成(structure forming)剤及びフラグメンテーション化/安定化剤を溶解した場合に、自然発生的に形成されることもある。
【0023】
液晶相の存在を査定(assess)するため、上述した液晶秩序を、低角X線回折法(SAX)、低温透過型電子顕微鏡法(低温TEM)、又は、核磁気共鳴(NMR)分光分析法観察により調べることができる。分散粒子の粒径及び粒径分布は、光散乱により調べることができ、とりわけ、レーザー光散乱又はレーザー光回折計器を用いて調べることができる。
【0024】
エマルジョン、ミセル又は非ラメラ相の製剤は、一般的に、少なくとも1つの親水性“頭部”基及び少なくとも1つの疎水性“尾部”基を備える少なくとも1つの両親媒性物質を含む混合物から形成される。最も天然に生じる脂質では、これらの基は、脂肪酸の炭化水素鎖からなる“尾部”とのエステル結合により結合している。それゆえ、概して、両親媒性物質を含む活性因子調剤は、天然エステル含有脂質、合成(すなわち、天然に存在しない)両親媒性物質、又は、それらの混合物のいずれかを含む。
【特許文献1】米国特許第5,531,925号明細書
【発明の開示】
【0025】
本発明者らは、アニオン性両親媒性物質、特に脂肪酸を含む非ラメラ製剤中にカチオン性ペプチドを調合することにより、経口投与又は皮下若しくは筋肉内注入(injection)におけるカチオン性ペプチドのライフタイムが大幅に増加しうることを、予想外にも確立した。
【0026】
それゆえ、第一の態様として、本発明は、少なくとも1つのカチオン性ペプチド活性因子、少なくとも1つの中性構造形成両親媒性物質、少なくとも1つのアニオン性構造形成両親媒性物質、及び必要に応じて少なくとも1つの溶媒を含む組成物であって、前記組成物は、非ラメラ相構造を含み及び/又は体液にさらされると非ラメラ相構造を形成する組成物を提供する。前記組成物は、好ましくは、哺乳類の身体へ、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、又はヒツジなどの身体への投与に適合可能であり、最も好ましくは、ヒト身体への投与に適合可能である。さらに、前記組成物により採用又は形成される非ラメラ相構造は、好ましくは、非ラメラ相粒子である。
【0027】
さらなる態様として、本発明は、ヒト又は動物の身体の治療方法であって、酵素分解に感受性があるペプチド活性因子、少なくとも1つの中性構造形成両親媒性物質、少なくとも1つのアニオン性構造形成両親媒性物質又はその塩、及び必要に応じて少なくとも1つの溶媒を含む組成物を形成すること、及び、前記組成物を前記対象(subject)に投与することを含み、前記組成物は、非ラメラ相の粒子を含み及び/又は体液にさらされると非ラメラ相の粒子を形成する組成物である治療方法を提供する。好ましくは、前記治療方法は、哺乳類の身体へ、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、又はヒツジなどの身体への行われ、最も好ましくは、ヒト身体に行われる。好ましくは、前記投与は、静脈内、経口、筋肉内、局所、又は、皮下である。
【0028】
本発明は、哺乳類の対象において、従来達成されてきたものよりも大幅に高い経口バイオアベイラビリティーをもたらす。とりわけ、このことは、同じ用量を直接(例えば、食塩水中で静脈内に)投与した場合に存在することとなる量に対して、血流中で検出できるより高い割合の投与量として見ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
それゆえ、さらなる態様として、本発明は、少なくとも1つのカチオン性ペプチド活性因子、少なくとも1つの中性構造形成両親媒性物質、少なくとも1つのアニオン性構造形成両親媒性物質、及び必要に応じて少なくとも1つの溶媒を含む組成物であって、前記組成物は、非ラメラ相(特に、その粒子)を含み及び/又は体液にさらされると非ラメラ相(特に、その粒子)を形成し、並びに、前記活性因子の経口バイオアベイラビリティーが、食塩水中での静脈内投与と比較した活性因子の血漿濃度として測定した場合に、少なくとも1%である組成物を提供する。
【0030】
よりさらなる態様として、本発明は、同様に、プロテアーゼ感受性(例えば、カルボキシペプチダーゼC感受性)カチオン性ペプチド活性因子の少なくとも1%を経口デリバリーする方法であって、前記方法が、前記ペプチド活性因子、少なくとも1つの中性構造形成両親媒性物質、少なくとも1つのアニオン性構造形成両親媒性物質又はその塩、及び必要に応じて少なくとも1つの溶媒を含む組成物を形成すること、及び、前記組成物を経口投与することを含み、前記組成物は、非ラメラ相(特に、その粒子)を含み及び/又は体液にさらされると非ラメラ相(特に、その粒子)を形成し、並びに、経口デリバリーが、静脈内投与と比較した血漿濃度として測定される方法を提供する。
【0031】
向上したバイオアベイラビリティーを示す方法及び組成物において、少なくとも1%のペプチド活性因子濃度が血流中に存在する。この濃度は、静脈内投与、とりわけ、食塩水中で静脈内投与して測定できる量と比較したものである。このアベイラビリティーは、少なくとも1.5%であることが好ましく、より好ましくは2%、最も好ましくは3%である。本発明の組成物であれば、非常に高いペプチドバイオアベイラビリティー(例えば、5%以上)も可能である。
【0032】
さらなる態様として、本発明は、また、プロテアーゼ感受性(例えば、カルボキシペプチダーゼC感受性)カチオン性ペプチド活性因子、少なくとも1つの中性構造形成両親媒性物質、少なくとも1つのアニオン性構造形成両親媒性物質又はその塩、及び必要に応じて少なくとも1つの溶媒を含む組成物を、経口、筋肉内若しくは皮下投与の際に前記ペプチド活性因子を酵素分解から保護することにおける使用であって、前記組成物は、非ラメラ相の粒子を含み及び/又は体液にさらされると非ラメラ相の粒子を形成する組成物である使用を提供する。
【0033】
さらにさらなる態様として、本発明は、また、本発明の組成物を形成する方法であって、非ラメラ相の粒子、及び/又は、体液にさらされると非ラメラ相を生じる粒子であって、少なくとも1つの中性構造形成両親媒性物質、少なくとも1つのアニオン性構造形成両親媒性物質又はその塩、及び必要に応じて少なくとも1つの溶媒を含む粒子を形成すること、並びに、引き続いて、前記粒子をカチオン性ペプチド活性因子の溶液に接触させることを含む方法を提供する。この方法は、また、例えば、凍結乾燥又はスプレー乾燥などにより得られたペプチド含有分散を乾燥する工程を含んでもよい。
【0034】
理論に拘束されることはないが、本発明の組成物として投与されるカチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティーの向上は、少なくとも一部は、酵素分解の減少にあると考えられる。特に、発明者らは、非ラメラ粒子製剤が、タンパク質分解酵素からペプチドを著しく保護するのみならず、アニオン性両親媒性物質、とりわけ脂肪酸を含むような非ラメラ製剤は、その他の製剤よりもそのような保護が著しく一層効果的であることを示した。
【0035】
トリプシンなどのようなタンパク質分解酵素がカチオン性ペプチドを分解する作用が、本発明の脂肪酸を含む製剤によって著しく低減することが示された。この酵素分解の低減は、吸収部位に到達して血流に入り込むペプチド活性因子の割合の増加をもたらす。動物において本発明によって吸収されるペプチドのレベルが、これらの保護効果がない場合に比べて著しく高いことが示された(下記実施例参照)。
【0036】
本発明において、前記ペプチド活性因子は概してカチオン性のペプチド又はタンパク質であり、短いオリゴマー(例えば、ジ‐、トリ‐、又はテトラ‐ペプチドなどのようなもの)から分子量が何千ダルトンの大きなタンパク質までの範囲に渡ってもよい。ここではそれらの二次又は三次構造に関わらず、すべてを“ペプチド”という。しかし、ここでいうペプチドは概して特に示さない限りリポタンパク質ではない。同様に“プロテアーゼ”及び“ペプチダーゼ”の用語は、ここでは他に示さない限り同等として使用される。
【0037】
ペプチドは、純粋に“遺伝コード”の20の共通α‐アミノ酸(及び場合によってはそれらの立体異性体)からなるものであってもよく、又は、例えば、β‐、γ‐若しくはδ‐アミノ酸、若しくはこれらのいずれかの置換相当物、及び、天然のタンパク質には日常的には見られないα‐アミノ酸などのような少なくとも1つの自然的に若しくは非自然的に生じるアミノ酸単位を含んでもよい。一般的な置換基としては、ヒドロカルビル置換基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル又はアルカリル基)、複素環置換基(例えば、窒素、酸素若しくは硫黄を含有する単環式又は多環式置換基)、窒素系置換基(例えば、アミノ、アルキルアミノ、ニトロ、ウレア又はアゾ置換基)、硫黄系置換基(例えば、チオ、チオアルキル又はスルホニル置換基)、ハロゲン系置換基(例えば、フッ化、塩化、臭化、ヨウ化、塩素酸塩又はヨウ素酸塩など)、酸素系置換基(例えば、ケト、カルボキシ、エステル、ヒドロキシ、アルデヒド、ペルオキシド又はエーテル置換基など)及びその組み合わせを含む。当然、一部の天然及び非天然の置換基は、橋渡し/架橋することができる。そして、ジスルフィド、エステル、アミド又はその他の橋渡しが高い頻度で存在してもよい。そのような架橋は、前記ペプチドの立体構造の自由度を低減し、しばしばより顕著な生物学的効果をもたらす。オクトレオチドは、Cys−Cys架橋を有するペプチドの一例であって、2つのアミノ酸が、下記構造において通常ではない立体異性体として存在する。
【0038】
【化1】

【0039】
本発明における様々な成分の調合は、示した両親媒性成分及びペプチド活性因子を使用して公知の方法で行なうことができる。適した方法は、本実施例、並びに、US5,531,925、WO02/02716、WO02/068561、WO02/066014及びWO02/068562に示されるものを含む。これら及びここに引用される全ての参照の開示は、参照によりここに取り込まれる。
【0040】
分散方法は、液晶相形成両親媒性物質を(フラグメンテーション剤を伴って、若しくは伴わずに)、乾燥、融解又は溶液の形態で、水溶液(必要に応じてフラグメンテーション剤を含み、また、必要に応じて脂質、例えば、ホスファチジルコリン‐PCを含む)に添加すること、並びに、前記混合物を自然にフラグメンテーションさせること、又は、例えば、機械的撹拌、ボルテックス、ロト‐ステータ(roto-stator)混合、高圧ホモジネーション(homogenation)、マイクロ流動化及び/又は超音波などにより処理を促進することを含む。
【0041】
本発明の粒子製剤の相挙動及び粒径分布は、また、1つ以上(好ましくは1つ)の加熱・冷却サイクルで制御できる。そのようなサイクルは、ラメラ粒子を非ラメラ形態に変換し、粒径の散らばりを低減することに使用できる。この方法が使用される場合、前記組成物は、熱力学的に安定な状態が非ラメラであるように調合されることが好ましい。熱サイクルが使用される場合、前記ペプチド活性因子は、熱サイクルの前及び/又は後に前記粒子に取り込ませてもよい。1サイクル以上の熱サイクルが使用される場合、前記活性因子を、さらに又はその代わりに、サイクル間に取り込ませてもよい。ペプチド活性因子はしばしば熱感受性であるから、前記活性因子は任意の熱サイクルが完了した後に取り込ませることが好ましい。有名な例外の一例が、オクトレオチドである。オクトレオチドは比較的熱安定性である。
【0042】
熱サイクルは、前記活性因子が存在してもしなくても前記組成物を、室温までの冷却時に少なくとも一部の前記粒子が非ラメラ相へ変換するのに十分な温度にまで至らせる。これは、一般的には、約90〜150℃まで1〜30分間加熱し、続いて、室温まで冷却することを含む。より一般的には、熱サイクルは、冷却前に100〜120℃まで2〜20分間加熱することを含む。最も適した条件は、組成物間で詳細に変化するが、当業者により容易に確立できる。
【0043】
前記熱サイクル工程において、一般的には、平均粒径は増加するが、粒径分布は減少する。
【0044】
前記ペプチド活性因子が十分に熱安定性である場合には、前記活性因子を本発明の組成物の粒子へ装填することを助けるために、1サイクル以上の熱サイクルを使用してもよい。とりわけ、熱サイクルを用いて装填できる活性因子の安定レベルは、多くの場合、組成物を室温でインキュベーションした平衡レベルと比べて数倍となる。結果として、本発明の合成方法においては、前記活性因子がこれらの条件で安定な場合には、熱サイクル装填工程を含むことが好ましい。
【0045】
非ラメラ形態の粒子の存在は、好ましくは、一組の低温透過型電子顕微鏡観察粒子画像から査定される。好ましくは、30を超える試料を示し、好ましくは50を超える試料であって、より好ましくは、100を超える試料である。非ラメラ粒子の存在は、また、X線散乱実験により査定することもできる。
【0046】
“カチオン性”の用語は、前記ペプチド活性因子が、前記組成物のpH及び/又は生理的pHにおいて、プラスの正味電荷(net charge)を持っていることを示すために使用される。一般に、天然のペプチド及びタンパク質に共通して見られる20のアミノ酸が優位を占める場合、カチオン性ペプチドは、グルタミン酸又はアスパラギン酸といった酸性残基よりもより多くの数のリジン又はアルギニンなどといった塩基性アミノ酸を持つ。
【0047】
過剰の塩基性官能基を有していないペプチドを本発明において使用するために、これらのペプチドを、例えば酸性官能側鎖をイオン化しないように保護するなどして、合成的に“カチオン性”とすることができる。この方法により、電荷バランスを変化させてペプチドプロドラッグにプラスの正味電荷をもたらすことができる。
【0048】
潜在的にマイナス電荷の基である例えばカルボン酸などを保護する場合、保護基は、生物学的活性に影響を与えるべきではなく、又は、好ましくは、標的部位で切断されて許容される生理的特性の分子を放出するものである。エステル及びアミド基は、例えば、どちらも、カルボン酸部分のイオン化防止のために使用でき、そして、どちらも、身体中で、化学的又は酵素的に切断可能である。酸性基は、例えば、メチルエステルを使用するよりむしろ、エチル又はイソプロピルエステルとして保護することが好ましい。脱保護に際して、前者は望ましくないメタノールを生じ、後者は生物学的に許容できるエタノール又はイソプロピルアルコールを生じる。
【0049】
上述と同様にして、付加的なアミン又はその他の適当なpHでプラス電荷を示す基を与えることで、十分なカチオン性の性質を示さないペプチドに付加的なプラス電荷を加えることができる。セリン又はその他の水酸基含有残基は、例えば、アミノ酸(特に、グリシン若しくはアラニンなどのような天然アミノ酸)のカルボキシ基とエステル化させることができ、それにより、前記アミノ基が付加的な塩基部分を提供することとなる。同様の反応は、システインの遊離チオール基で行うことができる。すなわち、チオール基に、ジスルフィド結合によりアミノチオール基が結合される。酸性基の保護と同様に、このような中性基の“活性化”は、標的部位で(例えば、酵素的に)切断される結合を用いることが好ましい。それにより、生物学的に許容できる分子(上記の例では、例えば、グリシン又はアラニン)が放出される。多くの適した置換基を形成する方法は、当該技術分野で公知である。ここでペプチド活性因子を参照する場合、特に示さない限り、上述のようなそれらの“プロドラッグ”もまた参照する。
【0050】
前記カチオン性ペプチド活性因子は、一般的には、薬学的又は獣医学的活性を持つもの(例えば、治療剤、ワクチン剤、予防剤若しくは診断剤など)であってもよい。しかし、規定食剤(dietary agent)若しくは化粧剤、または、全身興奮剤若しくは免疫促進剤であってもよい。適切であれば、1つ以上のペプチド活性因子を取り込ませてもよいし、また、ペプチド及び非ペプチドを含む付加的な活性因子を適切に取り込ませて製剤としてもよい。前記カチオン性ペプチド活性因子の活性を増強するために任意の付加的な活性因子を存在させてもよく、又は、例えば、さらに前記カチオン性ペプチドの取り込みを増加させるため、若しくは、前記カチオン性ペプチド活性因子の望ましくない効果を1つ以上抑制するために、任意の付加的な活性因子を加えてもよい。本発明の好ましい実施形態の1つにおいて、前記カチオン性ペプチド活性因子は、少なくとも1つのプロテアーゼ阻害剤の存在下で本発明に従って調合される。プロテアーゼ阻害剤と共に調合することにより、本発明の保護効果が一層強化され、より大きな割合の前記ペプチド活性因子がデリバリーされることとなる。適したプロテアーゼ阻害剤としては、ペプシン阻害剤、トリプシン阻害剤、及び、キモトリプシン阻害剤を含み、例えば、Trasylol(商標、アプロチニン)、アマスタチン、ロイペプチンウシ脾臓トリプシン阻害剤、エコチン、ストレプトミセスペプシン阻害剤、ペプスタチン、酢酸キモトリプシン阻害剤Iなどを含む。
【0051】
概して、本発明で参照される前記カチオン性ペプチド活性因子は、“酵素感受性”又は“ペプチダーゼ感受性”である。ここで使用される場合、これは、前記ペプチドを形成する少なくとも1つのペプチド結合が、タンパク質分解酵素による切断を受けやすいことを示す。そのような酵素への感受性は、当該技術分野の当業者によく知られた標準的なインビトロ(in vitro)の方法により測定できる。そのような方法は、本発明の安定化効果のインビトロテストについての下記実施例において示す方法と似ている。概して、本発明におけるペプチドは、哺乳類の胃腸管で生じる例えばトリプシン、カルボキシペプチダーゼC、キモトリプシン若しくはペプシンなどのようなペプチダーゼ及び/又はプロテアーゼの少なくとも1つに対して感受性である。好ましくは、前記カチオン性ペプチド活性因子は、カルボキシペプチダーゼC感受性である。
【0052】
ここで使用される場合、“非ラメラ”の用語は、正(normal)又は逆(reversed)の液晶相(例えば、キュービック相若しくはヘキサゴナル相)若しくはL3相、又は、これらの任意の組み合わせを示すために使用される。粒子が非ラメラ相又は形態を示すと記載される場合、これは、少なくとも前記粒子の内部領域の両親媒性物質がこの形態を採用することを示す。粒子は、一般的に、2つの異なる領域、内部領域及び周囲の表面領域を有する。たとえ“非ラメラ”粒子であっても、前記表面領域は、概して、ラメラ、L3又は結晶性である。対照的に、“ラメラ”粒子は、ここで記載する場合、非ラメラよりはむしろ溶媒のコア領域を有する粒子である。好ましい非ラメラ形態は、逆液晶相、例えば、キュービック又はヘキサゴナル相などであって、非常に好ましい液晶相は、逆ヘキサゴナル相である。
【0053】
組成物は、分子分率(molecular fraction)で少なくとも30%の前記構造形成両親媒性物質が非ラメラ相粒子として存在する場合、“非ラメラ”と見なされる。同様に、少なくとも30%の前記両親媒性物質が水性流体にさらされた後にそのような相の形態となる場合に、組成物は非ラメラ相粒子を形成するという。これは、一般に、両方の場合で少なくとも50%である。そして、調合された組成物又は体液にさらされた後の組成物のいずれかで、少なくとも70%の両親媒性成分が、非ラメラ形態であることが好ましい。より好ましくは、これは少なくとも80%であり、最も好ましくは90%以上である。
【0054】
体液にさらされると非ラメラを形成する組成物(組成物前駆体)は、一般的に、両親媒性物質、活性ペプチド、及び必要に応じてフラグメンテーション成分を、非ラメラ分散におけるそれらのものと同様の相対比率で含む。しかし、概して、必要に応じて加える溶媒の割合はより低い。この溶媒は、一般に、水性又は水と混和性である。前記組成物前駆体は、非ラメラ粒子組成物を乾燥すること、例えば、スプレー乾燥若しくは凍結乾燥などによる乾燥により形成できる。この前駆体は、また、前記組成物を乾燥時に安定化し保護することを助けるため、及び/又は、再水和を助けるため、糖(例えば、ラクトース)などのような成分を含んでもよい。水混和性溶媒は、一般的には、生物学的に許容できるものであり、アルコール(特に、エタノール及びイソプロパノール)、グリセロール、エチレン/プロピレングリコール(特に、オリゴ‐エチレン及び/又はプロピレングリコール)、並びに、短鎖モノグリセリド(例えば、C6まで、特に、直鎖プロピル、ブチル、ペンチル若しくはヘキシル、場合によって、1以上の不飽和を含む)を含む。
【0055】
活性成分を含有する分散は、とりわけ、ヒト又は動物の身体へ静脈内投与する場合には、コロイド状であることが望ましい。つまり、その粒径が、10μmを超えないこと、特に、5μm、とりわけ、1μmを超えないことが望ましい。分散中の粒子がこのサイズを超えると、この分散はコロイドで安定ではなく、その製剤が静脈内投与された場合には、塞栓症を引き起こすという考慮すべきリスクがある。さらに、任意の活性因子の放出制御を最大とするため、粒径分布は狭幅(narrow;狭分布)であることが望ましい。
【0056】
本発明においては、組成物は、多くの場合、静脈内以外の方法(特に、経口、筋肉内又は皮下)で投与される。よって、粒径は、コロイドである必要はない。そのような場合、一般的に、粒径は、約10μm〜約200μmの範囲である。しかしながら、粒子の分解速度及び/又は活性因子の放出を制御するためによく特徴付けされ再現性のある粒径分布とすることは、粒子組成物にとって利点があることに変わりはない。
【0057】
本発明の実施形態の1つとして、本発明の組成物の投与により、インビボで“デポ”が形成される。前記デポは、非ラメラ相構造を含み、一般的に、少なくとも一部分は、投与後に(例えば、水混和性溶媒の放散及び/又は水の吸収により)形成される。デポ組成物は、上記考察のとおり、非ラメラ相の粒子を形成しうるが、バルクな非ラメラ相を形成することがより好ましい。これは、その最大寸法が、少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも1mm、より好ましくは5mm以上である非ラメラ相のコンテニュアス(連続)又はセミコンテニュアス(半連続)な“粒子”を含む構造であると見なすことができる。これらのバルク相は、活性因子を徐々に放出する。その放出は、溶液に直接的(例えば、前記バルク相の端部分の分解による)か、又は、それらが分解するとともに非ラメラ相のより小さな粒子を放出することによる。後者の場合、これらの粒子が、前記活性因子の大部分を放出する機能を果たすこととなる。
【0058】
ここで示される“構造形成両親媒性物質”は、水性溶媒の存在下、必要に応じて両親媒性物質及び/又はフラグメンテーション剤などのその他の試薬の存在下で、構造化された相を形成できる任意の試薬である。前記両親媒性物質は、少なくとも1つの極性親水基及び少なくとも1つの非極性疎水基を有する。
【0059】
極性基の例は公知であって(例えば、米国出願公開番号20020153509参照)、カルボン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩及びスルホン酸塩などのような陰性基、アルコール、ポリオール(例えば、糖、グリセロールなど)及びエステルなどのような非イオン基、第4アンモニウム化合物、ピリジニウム塩及び第4級ホスホニウム塩などのようなエステル陽性基、並びに、リン脂質頭部基(例えば、ホスファチジルコリンなど)、アンモニオアセテート、アンモニオアルカンスルホン酸塩及びトリアルキルアミノアルキルリン酸塩などのような両性イオン基を含む。前記中性両親媒性物質成分は、前記組成物のpH及び/又は生理的pHにおいて、正味電荷を示すことはない。一方、前記アニオン性脂質成分は、そのような条件下において、マイナスの正味電荷を持つこととなる。前記中性両親媒性物質成分は、非イオン性であることが好ましい。さらに、前記アニオン性脂質は、少なくとも1つの酸性基又はその塩、とりわけ、カルボン酸基を含むことが好ましい。カチオン性両親媒性成分は、好ましくないが、存在する場合、カチオン性両親媒性物質よりもアニオン性両親媒性物質がより多量に存在することとなる。
【0060】
非極性基の例は、C6−C32アルキル及びアルケニル基を含み、これらは、一般に、長鎖カルボン酸のエステルとして存在する。これらは、しばしば、炭素原子数及び炭素鎖中の不飽和数を参照することにより記載される。すなわち、CX:Zは、X個の炭素原子と
Z個の不飽和数を有する炭化水素鎖を示す。その例としては、とりわけ、カプロイル基(C6:0)、カプリルオイル基(C8:0)、カプリル基(C10:0)、ラウロイル基(C12:0)、ミリストリル基(C14:0)、パルミトイル基(C16:0)、フィタノイル基(C16:0)、パルミトレオイル基(C16:1)、ステアロイル基(C18:0)、オレオイル基(C18:1)、エライドイル基(C18:1)、リノレオイル基(C18:2)、リノレノイル基(C18:3)、アラキドノイル基(C20:4)、ベヘノイル基(C22:0)及びリグノセロイル基(C24:9)を含む。両親媒性物質は、典型的には、1つ又は2つの非極性“尾部”基(それぞれ、モノアシル及びジアシル脂質)を有するが、3つ、4つ又はそれ以上の疎水基を有してもよい。
【0061】
本発明における使用に適した両親媒性物質の例は、天然脂質、合成脂質、界面活性剤、コポリマー、タンパク質(とりわけ、カゼイン及びアルブミン)、ヒドロトロープ、アルコール、及び、構造化された相を形成する又は形成を促進するその他の添加剤を含む。好ましい剤は、グリセリド(例えば、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド)、グリセリドのジ−及びポリグリセロールエステル(例えば、ジグリセロールモノオレエート、ジグレセロールモノカプレート)、天然油脂(例えば、大豆オイル、ココナッツオイル、コーンオイル、キャスターオイル、ヒマワリオイル)、分留油(例えば、分留ココナッツオイル、Miglyol(商標、Condea社製))、エステル転移化油(例えば、Maizine(商標))、油とPEGのエステル転移化産物(例えば、エトキシル化キャスターオイル(例えば、Cremophor(商標)EL(BASF社製))、エトキシル化水素化キャスターオイル(例えば、Cremophor(商標)RH−40(BASF社製))、エトキシル化コーンオイル(例えば、Labrafil(商標)M2125CS(Gattefosse社製))、アセチル化モノグリセリド、脂肪酸(例えば、C6−C26飽和及び不飽和脂肪酸)、脂肪アルコール(例えば、フィタントリオール(3,7,11,15-テトラメチル‐1,2,3-ヘキサデカントリオール))、エーテル脂質(例えば、モノオレイルグリセリルエーテル)、天然及び合成リン脂質(例えば、卵レクチン、大豆レクチン、水素化レクチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸)、リゾリン脂質(例えば、リゾレクチン、リゾホスファチジルコリン、リゾオレイルホスファチジルコリン)、ホスホリン脂質類似化合物(US6344576に記載のもの)、ステロール及びステロール誘導体(例えば、コレステロール、シトステロール、レーンステロール及びそれらのエステル、特にPEG又は脂肪酸とのエステル)、ガラクトリピド(例えば、ジガラクトシルジアシルグリセロール、モノガラクトシルジアシルグリセロール)、スフィンゴ脂質(例えば、スフィンゴミエリン);非イオン性界面活性剤、とりわけ、PEG脂肪酸モノ及びジエステルなどのエトキシル化界面活性剤(例えば、Crodet(商標、Croda社製)、Cithrol(商標、Croda社製)、Nikkol(商標、Nikko社製)、Myrj(商標)シリーズ(ICI社製)、Solutol(商標)HS15(BASF社製))、PEGグリセロール脂肪酸エステル(例えば、Tagat(商標)L及びO(Goldschmidt社製)、Glycerox(商標)Lシリーズ(Croda社製)、Capmul(商標)EMG(Abitec社製))、油及びPEGのエステル転移化産物(例えば、Labrafil(商標、Gattefosse社製)、Cremophor(商標、BASF社製)、Crovol(商標、Croda社製)及びNikkol(商標)HCOシリーズ(Nikko社製)のもの)、PEGソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween(商標)20、Tween(商標)80及びその他のTween(商標)シリーズのポリソルベート(ICI社製))、PEGアルキルエステル(例えば、Brij(商標、ICI社製)及びVolpo(商標)シリーズ(Croda社製)のもの)、PEGアルキルフェノール界面活性剤(例えば、TritonX及びNシリーズ(Rohm&Haas社製);ポリグリセル化脂肪酸(例えば、Nikkol(商標)Decaglyn(Nikko社製)、Plurol(商標)Oleique(Gattefosse社製)のもの)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Caproyol(商標)90(Gattefosse社製)、Lutrol(商標)OP2000(BASF社製)、Captex(商標)(Abitec社製))、グリセロール/プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Arlacel(商標)186(ICI社製))、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Span(商標、ICI社製)及びCrill(商標)シリーズ(Croda社製)のもの)、糖エステル(例えば、SUCROESTER(商標、Gattefosse社製)、Ryoto(商標、三菱化学社製)及びCrodesta(商標)シリーズ(Croda社製))、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(いわゆるポロキサマー(poloxamer)、例えば、Pluronic(商標、BASF社製)、Synperonic(商標、ICI社製)及びLutrol(商標)シリーズ(BASF社製))、エチレンオキシド及びブチレンオキシドのコポリマー;アニオン性界面活性剤であって、脂肪酸塩、胆汁塩(例えば、コール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム)、カルボン酸エステルなどのようなカルボキシレート、スクシニル化モノクリセリド、モノ及びジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル、脂肪酸のグリセリル‐ラクトエステル、アシルラクチレート、アルギン酸塩、プロピレングリコールアルギネートを含むアニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤であって、エトキシル化アミン(例えば、ポリオキシエチレン‐15ココナッツアミン)、ベタイン(例えば、N‐ラウリル‐N,N‐ジメチルグリシン)、アルキルピリジニウム塩、ヘキサデシルトリアンモニウムブロマイドなどのような第4アンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどを含むカチオン性界面活性剤;トリメチルアンモニオエチルアルキルホスホン酸塩(例えば、US6344576に記載される実施例)を含む両性イオン界面活性剤;これらの全ての混合物である。
【0062】
最も好ましい中性構造形成剤は、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノリノレエート、グリセリルジオレエート(GDO)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)及びフィタントリオール、又は、リゾリン脂質、特に、リゾオレイルホスファチジルコリン(LOPC)である。これらの任意の混合物、とりわけ、GDO/DOPC又はGDO:卵レクチンを(例えば、どちらかを70:30wt/wtで)含むものも好適である。自然源又は合成源から自然に生じる脂質は、それらの一般的に低度であってより予測可能な毒性プロファイルのため、好ましい。自然に生じるリン脂質を含む脂肪酸エステル脂質は、非常に好適である。
【0063】
しばしば、両親媒性成分は、抽出され精製された天然産物の形態で物質を含み、関連する化合物の混合物を含む。例えば、大豆ホスファチジルコリンは、約60〜75%のC18:2アシル基、約12〜16%のC16:0及び残りのその他のものを有する化合物の混合物である。同様に、市販の卵レクチンは、概して、約70〜75%のホスファチジルコリン、約10%のホスファチジルエタノールアミン及び残りのその他の脂質である。これらの産物は共に本発明における使用に適している。異なる市販製剤は、同様にわずかに異なるが、いずれにしろ好適である。
【0064】
本発明における使用で好ましい構造化剤は、市販のグリセリルモノオレエート(GMO)である。上述のとおり、これは、大半がオレオイル(C18:1)アシル鎖を有するモノグリセリドであるが、一定量の他の化合物を含む。これらは、ここで使用する“グリセリルモノオレエート”又は“GMO”の用語に含まれる。市販製剤のGMOには、GMOrphic−80及びMyverol18−99(Eastman Kodak社製)、RyloMG19及びDimodanDGMO(Danisco社製)が含まれる。任意の構造形成両親媒性物質が、単独又は1つ以上のその他の両親媒性構造化剤との組み合わせで使用できる。
【0065】
本発明のキーコンポーネント(重要な成分)は、アニオン性脂質成分である。これは、酵素分解に対するペプチド活性因子の保護を、予想を超えて高いレベルでもたらすからである。上記したものを含む任意のアニオン性両親媒性物質又はその組み合わせを使用できる。しかし、少なくとも1つの脂肪酸又は脂肪酸塩成分を使用することが好ましい。好ましい脂肪酸は、天然脂質の脂肪酸に対応するものであり、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、フィタン酸、パルミトル酸(palmitolic)、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、若しくは、リグノセリン酸、これらの塩又はその混合物を含む。前記脂肪酸の塩は、生理学的に許容できるものである。最も好ましいアニオン性両親媒性物質は、天然に生じる不飽和脂肪酸及びそれらの塩であって、特に、オレイン酸又はその塩である。
【0066】
ここに示した任意のアニオン性成分、とりわけアニオン性両親媒性物質の好ましい塩は、アルカリ及びアルカリ土類金属塩、及び、アンモニウム及びアルキルアンモニウム塩を含む。これらの好ましい例は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム塩、アンモニウム塩、又は、トリエチルアンモニウム塩を含む。アニオン性成分又は酸がここで示されたものである場合、その表示は、特にその他に規定されない限り、生理学的に許容できるその塩も参照する。
【0067】
前記アニオン性成分が十分な濃度で存在することで、前記カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティーが増加することとなる。しかしながら、その他の重要な性能基準の点からは、非常に高濃度のアニオン性両親媒性物質、例えば、脂肪酸が、いつも望ましいとは限らない。前記性能基準は、生体適合性、分散性(dispersability)、形態及びコロイド安定性、並びに、対象の健康を含む。よって、いくつかの実施形態においては、前記アニオン性成分は、望ましいレベルの酵素保護をもたらすに必要な量を大幅に超えない量で存在する。一般的に、前記アニオン性成分は、インビトロのカルボキシペプチダーゼC溶液中の(カチオン性)ペプチド活性因子の半減期を、アニオン性成分が存在しない同等の組成と比較して、少なくとも50%増加させるのに十分な濃度で存在する。より好ましくは、この半減期は、少なくとも75%又は100%増加し、もっとも好ましくは、アニオン性両親媒性物質の非存在下で測定した値の2,5、3又は4倍である。
【0068】
必要なアニオン性両親媒性物質の濃度は、簡単な実験、とりわけ、ここの実施例を参照して容易に測定することができる。そして、下記に示すとおり、少なくとも50%までのアニオン性成分を使用できる。しかしながら、概して、アニオン性両親媒性物質の中性両親媒性物質への割合は、0.5〜20%w/wの濃度範囲であって、より好ましくは、1〜10%w/wである。最も好ましい範囲は、2〜8%w/wの範囲である。
【0069】
ここで参照される粒子の分散は、少なくとも1つのフラグメンテーション剤を含むことが好ましい。フラグメンテーション剤は、非ラメラ相の分散性を改善する機能を果たし、非ラメラ粒子の周りに安定化相を形成し、及び/又は、分散を安定させる。好適なフラグメンテーション剤は、両親媒性物質の分散から粒子(特に、非ラメラ相粒子)へとなることを助ける又はそのような粒子を安定化させる剤である。一般的には、フラグメンテーション剤は、例えば両親媒性ブロックコポリマーなどのような界面活性剤である。
【0070】
重要なフラグメンテーション剤は、天然脂質、合成脂質、界面活性剤、コポリマー、タンパク質(特に、カゼイン及びアルブミン)、ヒドロトロープ、アルコール、及び、それ自体でフラグメンテーションを促進し又は外部から加えられる力又は圧力によりフラグメンテーションを促進して安定化に寄与するその他の添加剤を含む。これは、また、ナノ粒子、及びポリマーとナノ粒子との組み合わせを含む(WO99/12640参照)。
【0071】
好ましいフラグメンテーション剤は、コポリマーであって、これらは、ポリオキシアルキレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアミド及び/又はポリアルケンを含むブロックを有してもよい。前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つの異なる親水性度のポリマーブロックを含む。ある種のタンパク質(例えば、カゼイン)は、また、両親媒性の特徴を有し、フラグメンテーション剤として使用できる。前記カチオン性活性化因子が両親媒性タンパク質の場合、これは、活性化因子及びフラグメンテーション剤の両方として作用することができ、又は、その他の活性因子及び/又はフラグメンテーション剤に加えて含ませることができる。
【0072】
両親媒性ブロックコポリマーの好ましい例としては、少なくも1つのポリオキシエチレンのブロック及び少なくとも1つのポリオキシプロピレンを含むポロキサマーである。最も好ましいフラグメンテーション剤は、ポロキサマー407(例えば、Pluronic(商標)(Lutrol)F127(BASF社製))、ポロキサマー188(例えば、Pluronic(商標)F68(BASF社製))、及び、ポリソルベート80(例えば、Tween(商標)80(ICI社製))である。
【0073】
分散を助けるために取り込まれた場合、前記フラグメンテーション剤は、組成物のフラグメンテーションをもたらし、及び/又は、フラグメンテーション化された粒子(好ましくは、非ラメラ相の粒子)を安定化するのに十分な濃度で存在する。そのようなフラグメンテーションは、自然発生的なものでもよく、又は、せん断及び/若しくは超音波などの物理的なフラグメンテーションを必要としてもよい。前記組成物が物理的に安定であるのに十分なフラグメンテーション剤が存在することが好ましい。一般的に、フラグメンテーションは、前記組成物の総両親媒性物質含有量を基準として、1〜30重量%の濃度で望ましい効果をもたらす。これは、より一般的には、5〜15重量%であって、最も好ましくは、8〜12重量%である。
【0074】
本発明に適した活性因子は、天然及び合成カチオン性ペプチドであって、ヒト及び獣医用の薬剤及びワクチン、診断剤、化粧剤、栄養素、栄養補助食品などである。これらは、本質的にカチオン性であってもよく、又は、上記のような適切な合成保護又は活性化によりカチオン性を与えてもよい。これらは、また、上記したような非天然アミノ酸を含んでもよい。
【0075】
適した薬剤の例は、大環状ペプチド抗生物質を含む抗菌剤、抗真菌剤、抗がん剤及び/又は抗ウイルス剤、抗炎症剤、コレステロール低下剤及び血圧低下剤を含む心臓血管薬、鎮痛薬、抗うつ剤、ホルモン、ワクチン、並びに、骨調節剤である。診断剤は、X線、超音波及びMRI造影促進剤を含む放射性核種標識化合物並びに造影剤を含む。栄養素は、食品補助食品などを含む。
【0076】
好ましい活性因子は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)及びその断片、アンギオテンシン及びその関連ペプチド、抗体及びその断片、抗原及びその断片、心房性ナトリウム利用ペプチド、生体接着性ペプチド、ブラジキニン及びその関連ペプチド、ペプチドT及びその関連ペプチド、カルシトニン及びその関連ペプチド、細胞表面受容体タンパク質断片、走化性ペプチド、シクロスポリン、サイトカイン、ダイノルィン及びその関連ペプチド、エンドルフィン及びP−リドトロピン断片、エンケファリン及びその関連タンパク質、酵素阻害剤、フィブロネクチン断片及びその関連ペプチド、胃腸ペプチド、成長ホルモン放出ペプチド、免疫刺激ペプチド、インターロイキン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及びその関連ペプチド、メラニン細胞刺激ホルモン及びその関連ペプチド、核局在化シグナル関連ペプチド、ニューロテンシン及びその関連ペプチド、神経伝達物質ペプチド、オピオイドペプチド、オキシトシン、バソプレシン及びその関連ペプチド(特に、デスモプレシン)、副甲状腺ホルモン及びその断片、プロテインキナーゼ及びその関連ペプチド、ソマトスタチン及びその関連ペプチド、サブスタンスP及びその関連ペプチド、トランスフォーミング成長因子(TGF)及びその関連ペプチド、腫瘍壊死因子断片、毒素及びトキソイド、並びに、アンギオスタチン、血圧降下剤ペプチド、抗血液凝固ペプチド及び抗微生物ペプチドを含む抗がんペプチドなどのような機能性ペプチドからなる群から選択されるヒト及び獣医用の薬剤;免疫グロブリン、アンギオジェニン、骨形態形成タンパク質、ケモカイン、コロニー刺激因子(CSF)、サイトカイン、成長因子、インターフェロン、インターロイキン、レプチン、白血病抑制因子、幹細胞因子、トランスフォーミング成長因子及び腫瘍壊死因子などのようなタンパク質からなる群から選択されるヒト及び獣医用の薬剤、これらにカチオン性を与えるために必要な誘導体化されたものを含む。
【0077】
前記カチオン性ペプチド活性因子は、本質的カチオン性であり、製剤pHにおいてプラスの正味電荷を示し、何ら化学的変化が起きることがないものが最も好ましい。
【0078】
ペプチド活性因子の例のいくつかを、それらの特性及び/又は標的表示についての概略とともに下記表2に示す。下記表は、また、一定のペプチドについてのアミノ酸数及び等電点を示す。
【0079】
好ましいペプチド活性因子は、カチオン性であり、これは、例えばその活性形態及び/又は(上記したような)プロドラッグとして修飾された場合における、そのペプチドの等電点pHにより測定できる。等電点の値よりも低いpHでは、ペプチドはカチオン性であると考えられる。よって、好ましいペプチドは、等電点が、少なくとも6.5を示し、特に少なくとも7.0(例えば、少なくとも7.5、好ましくは少なくとも7.8)であって、最も好ましくは約8以上(例えば、少なくとも8.0、少なくとも8.5又は少なくとも9.0)である。例えば、カルシトニンは、約pH8.9で等電点を示し、バソプレシンは、約8.0である。オクトレオチドの等電点もまた、約8.0である。このようなすべてのペプチドの例は、表2に示される。それに対応して、ペプチド活性因子は、レプリジン(lepuridin)又はインシュリンαなどのような約4の等電点の値を示すペプチドでないことが好ましい。
【0080】
【表2】






【0081】
好ましい例は、とりわけこのリストからであって、ソマトスタチン(及び、オクトレオチドを含むアナログ)、カルシトニン(サケ)、ゴナドレリン、バソプレシン、ホリトロピンα、ヒト絨毛性ゴナドトロピンβ(hCGβ)、インスリン及びインスリンアナログ、甲状腺刺激ホルモンα、セクレチン、ブラジキニン、インターフェロンβ、インターフェロンγ、タキプレシンI、タフトシン、マゲイニンI、マゲイニンII、インドリシジ
ン、プロテグリン、ポリフェムシンI、ポリフェムシンII、ポリミキシンB、グラミシジンS、細胞間接着因子1、アルテプラーゼ、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、ベカプレミン、ツブリシンA−F、コンタクリンG(CGX1160)、αコノトキシン様ペプチド、メリチン、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−13、IL−17、IL−19、IL−20、IL−24及びIL−26を含む。最も好ましいカチオン性ペプチド活性因子は、本質的にカチオン性ペプチドであるカルシトニン(ヒト又は好ましくはサケ)、オクトレオチド、その他のソマトスタチンアナログ(例えば、文献[Janecka et al. Endocrine Regulations 35 75-79, 2001]において開示及び参照されるもの)、及び、デスモプレシンである。
【0082】
本発明の組成物は、当該技術分野で公知の方法により、医薬品として調合できる。これらの製剤は、一般的に、タブレット剤、コートタブレット剤(例えば、放出制御タブレット剤)、カプセル剤、懸濁剤、分散剤、シロップ剤又は粉剤などのような経口製剤であってよい。しかし、吸入用の製剤(例えば、粉剤若しくはエアロゾル)、又は、例えば、生理食塩水中の無菌分散の形態などの非経口(例えば、皮下、筋肉内若しくは静脈内)投与用の製剤、又はその前駆体であってもよい。非経口“デポ”投与に関する特に関心を引く実施形態の一例を、下記に詳述する。
【0083】
前記組成物は、例えば、水性キャリア(例えば、注射用水)、溶媒、バインダー、フィラー、安定剤、浸透圧調整剤、発泡剤(effervescing agents)、pHバッファー及び調整剤、粘度調整剤、甘味料、潤滑剤、乳化剤、着香料、コーティング剤(例えば、胃液耐性コーティング)などの、従来の薬剤キャリア、希釈剤及び/又は不形剤とともに調合してもよい。したがって、少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤を含む製剤は、本発明のさらに好ましい態様を形成する。
【0084】
対象に投与する本発明の組成物の用量は、活性因子、対象の種、サイズ、成長度、健康状態に依存し、また、選択した製剤に依存する。前記組成物は、従来の製剤よりも一層大きな割合の活性因子を対象へデリバリーすることができる。このことを考慮すべきである。既知の治療ペプチドの好適な用量は、本発明の組成物が調合される場合のバイオアベイラビリティー、並びに、確立された方法によるデリバリーの場合の用量及びバイオアベイラビリティーを参照して容易に確立できる。
【0085】
あるいは、前記組成物は、前記キャリア及び賦形剤が主に食用に適する食料品又は飲料品を含む場合には、機能性食品又は飲料として調合することができる。そのような製品は、調理済み食品などのような加熱消費用の加工食品であってもよい。しかし、スプレッド(例えば、マーガリン又は低脂肪スプレッド)、清涼飲料、朝食シリアル、朝食バー、パン、ビスケット、アイスクリーム、ヨーグルト、ムース若しくはトライフルなどのようなチルドデザート、ミルク若しくはミルク添加飲料を含む低温食品であることがより好ましい。
【0086】
本発明の組成物に存在するペプチド活性因子が機能性食品又は飲料として調合される場合、そのような食品の食べすぎにより誤って消費されうる最大用量が、過度にならないことが重要である。
【0087】
本発明のその他の実施形態において、本発明の組成物は、非ラメラ相の粒子よりはむしろバルクな非ラメラ相構造を含む又は形成する。これは、インビボで徐々に分解し、この分解の結果として若しくは徐々の分散により(又はその双方により)ペプチド活性因子を放出する“デポ”組成物の生成のために、とりわけ適した実施形態である。本発明の組成物は、インビボの分解からペプチド活性因子を非常に効果的に保護できる。そのため、これらの組成物は、非常に効果的なデポ組成物及び前駆体を作ることができる。一般に、デポ組成物は、非経口、とりわけ、筋肉内又は皮下注射により投与され、数日間(例えば、1〜14日)、数週間(例えば、2〜8週)又は数ヶ月(例えば、1〜3ヶ月)に渡る活性ペプチドの放出をもたらす。
【0088】
デポ実施形態において、概して、前記組成物は、投与時に非ラメラ構造をとらないことが好ましい。これは、バルクな非ラメラ相構造は(粒子とは対照的に)しばしば粘性があり、注入が困難であり又は痛みが伴うからである。その結果、この実施形態においては、前記組成物は、概して、約0.5〜50重量%の酸素含有有機溶媒、例えば、アルコール、ケトン、スルホキシド、エステル又はエーテルなどを含む。そのような溶媒の付加は、投与後に体液と接触することで本発明の非ラメラ組成物を形成する低粘度プレ製剤の形成を可能とする。明らかなように、そのようなプレ製剤もまた、本発明の組成物である。よって、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、さらに、0.5〜50重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%の生物学的に許容できる酸素含有有機溶媒を含む。この実施形態において、前記組成物は、最初から非ラメラ相の形態ではなく、投与後に体液と接触してそのような(ここで記載したような)相を形成することが好ましい。
【0089】
前記組成物における使用に適した一般的な溶媒は、アルコール、ケトン、エステル(楽トンを含む)、エーテル及びスルホキシドから選択される少なくとも1つの溶媒を含む。好適なアルコールの例は、エタノール、イソプロパノール及びグリセロールホルマールを含む。ケトンの例は、アセトン及びn−メチルピロジノンを含む。好適なエーテルは、ジエチルエーテル、グリコフロール(glycofurol)及びジメチルイソバーバイド(dimethylisobarbide)を含む。好適なエステルは、エチルアセテート及びイソプロピルアセテートを含み、ジメチルスルフィドは、好適なスルフィド溶媒である。
【0090】
前記組成物がデポ組成物又はプレ製剤である場合、前記中性両親媒性物質成分は、ジアシル脂質、特にジアシルグリセロール、及び、リン脂質を、重量で5:95〜95:5の割合で含むことが好ましい。前記のジアシル脂質とリン脂質の割合は、好ましくは、10:90〜90:10であり、より好ましくは10:90〜45:55である。
【0091】
同様に、さらなる実施形態において、本発明は、カチオン性ペプチドを対象に投与する方法であって、(上述したような)有機溶媒を含み、体液と接触することで引き続いてインビボにおいて本発明の非ラメラ“デポ”組成物を形成する本発明の組成物を注入することを含む方法を提供する。
【0092】
本発明を、本発明を制限することのない下記実施例及び添付図面を参照してさらに説明する。
【0093】
〔実施例〕
下記実施例においては、次の略語を使用した。
E200 エピクロン(Epikuron)200(大豆レシチン)
F127 Pluronic(商標)F127(BASF社製)
GDO グリセロールジオレエート
GMO グリセロールモノオレエート
LA リノール酸
LD レーザー回折
OA オレイン酸
PC ホスファチジルコリン
RetPal レチニルパルミテート
SAXS 低角X線散乱
sCT カルシトニン(サケ)
TEM 透過型電子顕微鏡法
TryGly トリグリセリド
【実施例1】
【0094】
GMO/OA粒子
1.1−高圧下の分散調製
RyloMG19GMO(Danisco、4.70g)及びオレイン酸(Apoteket、0.24g)を混合して大部分がキュービック粒子の粗大分散を形成した。その混合物を、ポロキサマー(poloxamer)147(BASF、0.5g)を含む脱イオン水(45.7g)へ、室温で激しく撹拌しながら滴下して添加した。得られた粗大分散を約30分間平衡化させた後、マイクロ流動化装置において、高圧(350bar)、10分間(6サイクル)、40℃でホモジナイズ(均一化)した。
【0095】
粒径は、レーザー回折(Coulter LS230)を使用してホモジナイズの前後で測定した。前記ホモジナイズ物(均一化物)の粒子形態及び相挙動は、低角X線散乱(SAXS)を使用し、また、低温透過型電子顕微鏡観察(低温TEM)により解析した。
【0096】
前記ホモジナイズ物は、大部分がベシクルからなり、ある割合のキュービック相コア粒子を含む粒径1μm未満のコロイド分散であった。この方法で調製された粒子は、主に装填前の熱処理工程にまわされた。
【0097】
1.2−高圧下の分散調製
前記ホモジナイズ工程を低圧(174bar)、短時間(5サイクル)で行なった以外は実施例1.1の手順を繰り返した。
【0098】
前記低圧法は、二峰性の粒径分布を示すより大きな割合のキュービック相コア粒子及びいくらかのベシクルを産生した。そのホモジナイズ物は、必要に応じて装填前に熱処理サイクルにまわした。
【0099】
1.3−熱処理
より大きな割合の粒子を非ラメラ相に変換するために、必要に応じて、実施例1.1及び1.2で調製された非ラメラ分散に熱処理サイクルを行われる。実施例1.1の方法で得られた粒子は、通常、1サイクルの熱処理を行なった。実施例1.1又は1.2で生成された分散試料(10ml)をオートクレーブ(121℃、20分)し、室温まで冷却した。低温TEMで調べると、実質的にこの分散中の全ての粒子が非ラメラの特徴を示す。粒径分布もまた、熱処理前の分散と比較していくらか狭幅化され、平均粒径がわずかに増加した。熱処理された粒子は、保存に対して改善された安定性を示した。
【実施例2】
【0100】
さらなる非ラメラ分散及び装填
2.1−非ラメラ分散の組成
様々な成分の水中の非ラメラ粒子分散を実施例1.1の方法で調製し、必要に応じて、実施例1.2の熱処理方法で処理した。得られた分散の粒径及び相挙動を解析した。
【0101】
【表3】

【0102】
2.2−ペプチド装填
実施例2.1の各分散へ、カチオン性ペプチドデスモプレシンを最終濃度1mg/mlで添加する。この分散を、室温で60分間平衡化する。
【0103】
2.3−ペプチド及びペプチダーゼ阻害剤の装填
実施例2.1の各分散へ、カチオン性ペプチドカルシトニンを濃度0.8mg/mlで添加し、アプロチニン(Trasylol(商標))、アマスタチン及び/又はロイペプチンから選択される1つ以上のペプチダーゼ阻害剤を総濃度0.4mg/mlで添加する。この分散を、室温で3時間静置する。
【実施例3】
【0104】
プロテアーゼトリプシンによるペプチド分解
3.1−ペプチド装填とプロテアーゼアッセイ法
サケカルシトニン(sCT)を、0.9%食塩水を入れた2つのバイアル及びテスト非ラメラ分散の生理食塩水を入れた1つのバイアルへ、濃度1mg sCT/mLまで添加した。前記バイアルを、撹拌しながら37℃のウォーターバスに配置した。
【0105】
sCTの生理食塩水を入れた1つのバイアルへ、阻害剤であるアプロチニン(Trasylol(商標))(10000KIE/mL、125μL/mL生理食塩水)を添加した。
【0106】
前記2つの生理食塩水バイアル及び前記非ラメラ分散からゼロサンプルを採取した。
【0107】
全てのバイアルに、プロテアーゼであるトリプシン(500μg/mL、30μL/mL生理食塩水)を添加した。
【0108】
一定の時間間隔後、試料をHPLCバイアルに移し、阻害剤Trasylol(商標)を非ラメラ分散試料及びTrasylol(商標)がない生理食塩水試料に添加した。
【0109】
一位相系を形成するために、100μLの試料へ230μLのメタノール及び40〜115μLのクロロホルム(添加容量は、脂質組成と非ラメラ分散の濃度に依存して調整した)を添加した。試料を十分に混合し、5分間静置した。
【0110】
230μLのクロロホルム及び700μLの水を添加して前記一位相系を二相に分けた。試料を混合して5分、13000rpmで遠心分離した。200μLの上層の水/メタノール相を300μLインサートバイアルへ移した。
【0111】
未分解ペプチド量の解析は、HPLCを使用して行なった。
【0112】
3.2−GMO/OA/sCT比較プロテアーゼアッセイ
実施例1.1及び1.3に示される方法で熱処理後に最終濃度0.9%のNaClを添加して調製した、アニオン性脂質成分として様々な割合のオレイン酸(OA)を含む非ラメラ分散試料に対して、上記の装填及びテスト手順を繰り返した。コントロール及び非ラメラ分散を、上記実施例3.1で示した濃度のsCT及びTrasylol(商標)で処理した。
【0113】
前記非ラメラ粒子は、100/0、95/5及び50/50のGMO/OA比で水に対して9%の脂質を含み、1%のポリマー安定剤Pluronic(商標)F127(BASF)を含む、粒径分布(d〜1μm)のGMO/OA非ラメラ液晶相であった。コントロールは、上述のとおりTrasylol(商標)を含まない生理食塩水及びTrasylol(商標)を含む生理食塩水とした。HPLC解析の結果を図1に示す。図1は、アニオン性両親媒性物質濃度の増加がsCTペプチド活性因子の分解速度の減少をもたらすことを明確に示す。50/50GMO/OA分散がペプチダーゼ阻害剤Trasylol(商標)よりも優れた程度の保護をもたらしうることが分かった。
【実施例4】
【0114】
動物バイオアベイラビリティー研究
4.1−一般手順
実験初日に、ケータラー/キシラジン(ketalar/xylazin)麻酔下で頚動脈にシリコンカテーテル(OD約1mm)を挿入してラットを調製した。カテーテルは皮下を進み、肩甲骨の間から体外に出した。手術後、投薬前にラットを48時間回復させた。前記カテーテルは、毎朝回復時間中に、1mM EDTAを含む0.9%NaClでリンスした。
【0115】
朝、約16時間の絶食(水は利用できる)後、前記動物に投薬し、血液を回収した。動物は、投薬後、水を自由にとることはできるが、食料はとることができない。全てのサンプリングが終了したのち、全ての動物を犠牲にした。
【0116】
非ラメラ粒子分散は、実施例1.1の高圧法に続き、実施例1.3に説明する熱処理及びカルシトニンの装填を行って調製した。
【0117】
4.2−投薬
ラットへの投与は、静脈カテーテルを通して皮下に、又は、プラスチックボールがついたガバージチューブ(gavage tube)による強制飼養(gavage)により行なった。皮下投与ラットは、kg体重あたり1mgのsCTを0.5mL/kgの無菌酢酸バッファーで与えた。強制飼養ラットは、sCT含有非ラメラ分散の水の分散をkg体重あたり1mgのsCTとなるように与えた。総非ラメラ分散及びsCT濃度は変化し、総経口投与容量は、2.5〜25mg/kg体重の範囲である。経口投与は、軽いイソフルレン(isoflurane)麻酔下で行なった。
【0118】
4.3−サンプリング
血液試料(0.5mL)は、投薬前(投薬前日)、投薬後10分、30分、1時間、3時間、6時間及び24時間後に、EDTA処理し、試料mLあたり500KIEアプロチニン(Trasylol(商標))を含む試験管に回収した。全ての血液試料を穏やかに混合し、氷上に静置し(約10分間)、その後、2000g、10分、+4℃で遠心分離した。そして、血漿を速やかに新しい試験管に移し、ドライアイスに接触させた。試料は解析まで−80℃で保存した。
【0119】
4.4−解析
すべての血漿試料中のsCT含有量を、市販の酵素結合免疫アッセイキットにより測定した。
【0120】
血漿sCT濃度データは、台形法により0〜6時間の濃度曲線下面積(AUC)を算出するために利用した。
【0121】
経口非ラメラ製剤におけるsCTの用量補正済みの絶対バイオアベイラビリティーは、
アベイラビリティー(F)=(AUC経口×用量IV)/(AUCIV×用量経口)×100
として算出した。
【0122】
4.5−結果
ラットへ、上述のように静脈内sCT溶液を投与し、また、GMO/OA(95%/5%)又はGMO(100%)sCT非ラメラ分散を経口で投与した。全ての分散は、大部分がキュービック液晶分散相であった。血漿sCT含有量を解析し、sCT血漿濃度を経時的にプロットした(図2)。sCTをGMO/OA製剤で経口投与した絶対バイオアベイラビリティー(F)は、約1%であった。一方、純粋なGMO製剤で送達されたsCTは、約0.5%のバイオアベイラビリティーという結果となった。それゆえ、GMO/OA(95%/5%)は、非ラメラGMO(100%)製剤と比較して、経口バイオアベイラビリティーが約2倍であるという向上した効果を示す。
【実施例5】
【0123】
デポ組成物及びインビトロ相研究
液晶“デポ”組成物が入手できることを説明するために、ホスファチジルコリン(“PC”−エピキュア(epicure)200)及びグリセロールジオレエート(GMO)を含み、さらに、アニオン性脂質オレイン酸(OA)及び溶媒としてのエタノールを含む又は含まない注入用製剤を調製した。
【0124】
適当量のPC及びエタノールをガラスバイアルに量り取り、PCが完全に溶解して透明な液体溶液を形成するまで撹拌器に置いた。その後、GDO及び必要に応じてOAを添加し、注入用の均一な溶液を形成させた。
【0125】
製剤は、下記表4の組成で製造した。カチオン性ペプチド活性因子のサケカルシトニン(sCT)を、500μg sCT/g製剤の濃度で各製剤に添加した。この製剤は、非経口投与用の均一な懸濁剤としてデザインされた(使用直前に混合が必要である。なぜなら、この薬品は、PC/GDO/エタノールの系には完全に溶解しないからである)。製剤GはOAを含む。この例の相研究は、37℃の過剰なラット血清中で行なった。インビボの状況をシミュレートするためである。下記表4は、同じ相が形成されたことを示す。
【0126】
【表4】

【実施例6】
【0127】
デポ製剤からのインビボ放出研究
実施例5の製剤F及びGをラットにおけるインビボ薬物放出研究に使用した。前記製剤を肩甲骨の間からシリンジを使用して皮下投与した。sCTの用量は、500μg/kg体重であった。放出プロファイルは、13日間モニターした。ラット血漿試料中のsCT濃度は、市販のキット(DSLabs社製)で解析した。前記薬剤は、ビオチン−ストレプトアビジンを検出システムとして使用したサンドイッチタイプの免疫アッセイで酵素的に増幅した。
【0128】
図3に結果を示す。ゴマ油に基づく純粋なトリグリセリドビークルを、脂質リファレンスシステムとして選択した。
【0129】
OAを含む製剤は、血漿濃度に従って、よりゆっくりとしたsCTの放出、及び、14日間に渡る改善したバイオアベイラビリティーを示す。これは、ペプチド薬剤の向上した安定性と一致する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、異なる脂質製剤と共存する場合において、時間とともに分解されずに残存するペプチド活性因子カルシトニンの割合を示す。
【図2】図2は、GMO/OA(95%/5%)又はGMO(100%)のキュービック液晶製剤で経口デリバリーした後の血漿サケカルシトニン(sCT)濃度を示す。
【図3】図3は、ラットに2つのデポ製剤を皮下投与した後の血漿濃度を示す。ゴマ油ベースのデポをリファレンスとして使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのカチオン性ペプチド活性因子、少なくも1つの中性構造形成両親媒性物質、少なくとも1つのアニオン性構造形成両親媒性物質、及び、必要に応じて少なくとも1つの溶媒を含む組成物であって、前記組成物は、非ラメラ相構造を含み、及び/又は、体液にさらされると非ラメラ相構造を形成する組成物。
【請求項2】
前記非ラメラ相が、キュービック相、ヘキサゴナル相、又は、L3相である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記カチオン性ペプチドが、7.0を超える等電点を示す請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カチオン性ペプチドが、ペプチドホルモンである請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記カチオン性ペプチドが、デスモプレシン、オクトレオチド、サケカルシトニン及びヒトカルシトニンからなる群から選択される請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
生理食塩水を用いた静脈内投与を基準とした活性因子の血漿濃度として測定した場合の経口バイオアベイラビリティーが、少なくとも1%である請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
さらに、ペプチダーゼ阻害剤を含む請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記中性構造形成両親媒性物質が、少なくとも1つのグリセリルモノオレエート、グリセリルモノリノレエート、グリセリルジオレエート(GDO)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)及びフィタントリオール、リゾオレイルホスファチジルコリン(LOPC)及びこれらの混合物を含む請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アニオン性構造形成両親媒性物質が、少なくとも脂肪酸を含む請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記脂肪酸が、少なくとも1つのカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、フィタン酸、パルミトル酸(palmitolic)、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、これらの塩又はその混合物である請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記アニオン性構造形成両親媒性物質が、カルボキシペプチダーゼCの溶液中の前記ペプチド活性因子の半減期を、前記アニオン性構造形成両親媒性物質を含まない同等の組成物の半減期を基準として少なくとも50%増加させるのに十分な量で存在する請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記アニオン性構造形成両親媒性物質が、中性両親媒性物質の重量を基準として、0.5〜50重量%の量で存在する請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
さらに、フラグメンテーション剤を含む請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物、及び、少なくとも1つの薬学的に許容できるキャリア又は賦形剤を含む医薬製剤。
【請求項15】
前記非ラメラ相構造の粒子を含む又は形成する請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記粒子がコロイドである請求項15記載の組成物。
【請求項17】
さらに、生物学的に許容できる酸素含有有機溶媒を含む請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
体液に接触するとバルクの非ラメラ相を形成する溶液の形態である請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、ジアシルグリセロールを含む請求項18記載の組成物。
【請求項20】
前記活性因子が、少なくとも2〜14日間放出される請求項17から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物を形成する方法であって、
非ラメラ相粒子、及び/又は、体液にさらされると非ラメラ相を生成する粒子であって、少なくとも1つの中性構造形成両親媒性物質を、少なくとも1つのアニオン性構造形成両親媒性物質若しくはその塩、及び、必要に応じて少なくとも1つの溶媒を含む粒子を形成すること、並びに、
引き続いて、前記粒子をカチオン性ペプチド活性因子の溶液と接触させること
を含む方法。
【請求項22】
患者にカチオン性ペプチドを投与する方法であって、請求項17記載の組成物を注入することを含み、前記組成物は、使用時に体液と接触すると引き続いてインビボで非ラメラの“デポ”を形成する方法。
【請求項23】
ペプチド活性因子をインビボで酵素分解から保護する方法であって、前記方法は、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物として前記活性因子を調合することを含む方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−510705(P2007−510705A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538932(P2006−538932)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004696
【国際公開番号】WO2005/046642
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(505345749)カムルス エービー (17)
【Fターム(参考)】