説明

脂質消化率を改善するための方法および食餌組成物

【課題】ペットに有効な脂質同化作用に関する利点を与える方法の提供。
【解決手段】脂質を有効に消化するためのペットの能力を維持、促進または向上させる成分を含有する食用組成物を、ペットに、それの規則的な食餌の一部として又はそれに加えて、投与する。ペット特に高齢または老齢ペットにおける脂質同化作用を促進するのに使用するための組成物。この組成物は膵機能促進剤と、肝臓または腸粘膜どちらかの機能促進剤またはその両方を含有している。態様によっては、肝機能促進剤はタウリン、ビタミン、ミネラル、グルタチオンおよびグルタチオン促進剤から選ばれてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的にはペット用の食品および/または食品サプリメント製品に関し、またそれを、脂質の吸収(absorption)および消化率(digestibility)を改善するために使用することに関する。特に、それは病理および/または加齢の影響に悩まされている高齢ネコでの脂質の吸収および消化率の改善に関する。本発明は愛玩動物において脂質の消化率および/または同化(assimilation)を向上させる方法に及ぶ。
【背景技術】
【0002】
食物脂質(dietary lipids)の同化不良(malassimilation)はヒトにおいては知られている病態である。米国特許第6426069号は、ヒトにおいては、腸(intestine)の中での食物脂肪の吸収は腸内の吸収作用物質(absorption agent)としての乳化剤リゾホスファチジルコリン(lysophosphatidylcholine)(レシチン)の量を増やすことによって増進できる、ということを教示している。この作用物質はその物理的形態および/または生理学的性質に影響するかもしれない非脂質分子を付加的に含有することができる。かかる分子としてはたとえば胆汁酸塩類(bile salts)および重炭酸塩類が挙げられ、それらは脂質複合体(lipid complex)のコロイド粒子の形成を助ける。
【0003】
高齢ネコの栄養についての研究は9年齢を超すような老ペットの有意数が脂肪消化能力の低下を示すことを明らかにした。同様に、幾つかの科学系刊行物はネコでは脂質消化率が年齢に関係して低下すると報告している(バークホルダーWJ(Burkholder, WJ)の「成犬/成猫における栄養要件と消化機能に対する年齢に関係した変化(Age-related changes to nutritional requirements and digestive function in adult dogs and cats)」(JAVMA, Vol 215, No. 5, September 1, 1999);ニコルソンA(Nicholson A)とワトソンADJ(Watson ADJ)とマーサーJR(Mercer JR)の「3匹のネコの脂肪同化不良(Fat malassimilation in three cats)」(Australian Veterinary Journal, Vol. 66, No. 4, April, 1989);ピーチェブSE(Peachev SE)とドーソンJM(Dawson JM)とハーパーEJ(Harper EJ)の「牛脂、ヒマワリ油またはオリーブ油に富む食餌を与えられたネコによる栄養素消化率に対する加齢の影響(The effects of aging on nutrient digestibility by cats fed beef fallow, sunflower oil or olive oil enriched diets)」)。
【0004】
劣った脂質消化率を導くことのある多数の病理が存在し得る。吸収不良(malabsorption)および消化不良(maldigestion)は腸の殆どのいずれのびまん性疾患(diffuse disease)からも、又は外分泌膵機能不全(exocrine pancreatic insufficiency)から、又は原因不明から、起こることがある。ネコの場合には、膵炎は約0.15%〜3.5%の罹患率で起こり、そしていくつかのケースにおいて劣った脂肪消化率の原因となっているのであろう。びまん性腸疾患(diffuse intestinal diseases)、たとえば腸リンパ腫(intestinal lymphoma)、小腸内細菌の異常増殖(small intestinal bacterial overgrowth)、炎症性の腸疾患(bowel disease)および肝臓疾患(liver disease)は小腸での栄養吸収の低下を導くかもしれない。
【0005】
膵機能不全のケースは時には獣医学的診断で動物用食餌に生の膵臓を添加することによって治療される。膵臓は消化酵素の変質を避けるために加熱されるべきでない。この種の手法は定期的に実行しなければならないペット飼主にとっては不便である。商業製造された酵素サプリメント、たとえば、商品名ビオカーゼ(Viokase)V(アラバマ州バーミンガムの米アクスカンファーマ社(Axcan Pharma US Inc.)の商品名である)で販売されているもの、は膵機能不全に襲われた動物における脂肪消化率を改善するのに有効であるが、必要量を与えるとき費用がかかる。従って、それらはペットの一般食(regular diet)に含有させるのには適していない。
【0006】
ニコルソン他(Nicholson et al)op. Cit.)は以下のことを開示している:劣った脂肪消化率を呈するネコに向けての食餌用膵臓エキス補充(dietary pancreatic extract supplementation)は脂肪消化率を殆ど2倍にしたが、酵素補充は試験した3匹のネコ全てにおいて脂肪消化率を正常レベルにまで高めることができなかった。これら発見は膵臓酵素補充が部分的矯正しか達成できないことを示している。
【0007】
ビタミンA、D、EおよびKは長鎖脂肪酸によってのみ吸収される脂溶性ビタミンである。従って、脂質の吸収または消化どちらかの欠陥はこれらビタミンのいずれの欠乏症ばかりでなくタウリンのような栄養素またはカルシウムやマグネシウムのようなミネラルの消化不良にも至らしめる。これはそれらが非吸収脂肪酸と結合するせいである(シンプソンKW(Simpson, KW)とミッシェルKE(Michel, KE)の「胃腸病患者の微量栄養素状態(Micronutrient status in patients with gastrointestinal disease)」(Proceedings ACVIM, Denver, CO, pp. 651-653, 2001))。それ故に、低い脂質消化率を有するペットはその健康を危うくする幾つかの可能性のある栄養欠乏症に罹り易い。
【0008】
本明細書のためには、用語、脂質断片(lipid fraction)は水に不溶性である化合物の群を意味していると理解されるべきであり、その群は脂肪類、油類、ワックス類、ホスファチド類(phosphatides)、セレブロシド類(cerebrosides)、ステロール(sterol)、テルペン類(terpenes)などを包含し、これらの殆どはその構造の中に脂肪酸を含有している。脂質は食物源からの栄養素を腸にそして利用サイトに、例えばレシピエントの体の細胞の中に、運ぶ又は輸送するように作用することができる。
【0009】
本明細書に使用されるとき、「消化」は、複雑な食物マトリックスをそれの成分部分に、たとえば、脂肪をグリセロールと脂肪酸に、分解する過程を意味する。分解過程は主として、胃の酵素、肝臓の酵素および膵臓の酵素の作用による。
【0010】
本明細書に使用されるとき、「吸収」は分解過程の生成物が腸壁(intestinal wall)を通過して血流の中へ移動することを意味する。
【0011】
本明細書に使用されるとき、「消化率」は、動物によって摂取された総栄養素量に対する消化吸収された栄養素のパーセンテージの形式で表わされる量を意味する。
【0012】
本明細書に使用されるとき、「同化」は、食物消化によって生成されそして体の中へ吸収された単純な分子を生物の構成要素を形成する複雑な化合物に取り込む過程を意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は低い脂質消化率を示すペットに投与されたときに脂質および脂質結合化合物の消化率を改善させる栄養製品を提供することである。もう一つの目的は有効な脂質吸収に関連した利益をペットおよびペット飼主に与えることである。
【0014】
本発明の別の目的は栄養管理法によって愛玩動物において脂質の消化率を高めることである。
【0015】
本発明の更なる目的はペットがその食餌の中の脂質と脂質可溶性栄養素を吸収するのを助ける完成ペットフードまたは完成ペットフード用サプリメントを提供することである。
【0016】
本発明の更に別の目的は愛玩動物特に高齢ペットにおける脂質吸収改善方法を提供することである。
【0017】
本発明の更に別の目的はペットの組織の中への脂溶性ビタミンおよび必須脂肪酸の輸送を改善する手段を提供することである。
【0018】
(発明の概要)
本発明は脂質および脂質断片の有効な同化に関連した利益を与えるための組成物、およびその組成物を含有している製品を提供する。それはまた、脂質または脂質断片を有効に同化するためのそしてそれによる利益を誘発できるようにするための愛玩動物の能力を改善または維持する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第一の局面によれば、脂質または脂質断片の有効な同化に関連した利益をペットに与える方法は、ペットに、その一般食の一部として又はそれに加えて、膵機能促進剤(pancreatic function promoter)と、肝機能促進剤(liver function promoter)および腸粘膜機能促進剤(intestinal mucosa function-promoter)の一つ以上とを含んでいる食用組成物を投与する工程を含む。
【0020】
本発明の第二の局面によれば、脂質消化率を維持、改善、促進またはそうでなくても向上させるための栄養管理養生法(nutrition management regimen)は愛玩動物に予め定められた指示に従って規則的に有効な脂質同化促進量で支給するための食餌構成要素(dietary component)を含んでおり、この食餌構成要素が膵機能促進剤と、肝機能促進剤および腸粘膜機能促進剤のいずれか一つまたはそれ以上を含んでいる。
【0021】
一態様においては、膵機能促進剤はリパーゼ、腸pH調節剤(gut pH modifier)または膵臓エキスを含む。
【0022】
肝機能促進剤は、タウリン、乳化剤、ビタミン、ミネラル、グルタチオンおよびグルタチオン促進剤、およびそれらの組合せから選ばれてもよい。
【0023】
肝機能促進剤は好ましくは、摂取後に内在性グルタチオン(endogenous glutathione)を増加させる栄養素である。
【0024】
本発明の一態様においては、肝機能促進剤は膵臓エキスを含む。好ましい態様においては、エキスは膵リパーゼを包含する。膵臓エキスはさらに、非膵臓源に由来するリパーゼを含んでいてもよい。一態様においては、非膵臓源は真菌である。
【0025】
一態様においては、腸粘膜機能促進剤は脂肪輸送用の助剤、作用物質またはキャリヤーを含む。
【0026】
助剤、作用物質またはキャリヤーは好ましくは、ホエータンパク質(whey protein)、およびリポタンパク質の形成を促進する能力を有するプロテアーゼから選ばれる。
【0027】
一態様においては、腸粘膜機能促進剤は吸収を改善するために特別に選択された脂肪酸プロフィル(fatty acid profile)を有する。好ましいかかる態様においては、脂肪酸プロフィルは多価不飽和性である。魚油は多価不飽和プロフィルを有する適切な例である。
【0028】
本発明の好ましい形態においては、ペットに対する利点は、腸機能(gut function)、外見(outward appearance)、ペットと飼主の関係(pet-owner relationship)、加齢(aging)および一般健康面(general health aspects)の少なくとも一つに関している。
【0029】
利点が加齢に関している場合には、それは、
老化の徴候の発症の遅延;
年齢に関係した影響の軽減(amelioration);
改善された視力;
老ペットにおける消化器系の回復された機能性;および
延びた寿命
のいずれか一つ以上の中に観察可能であってもよい。
【0030】
本発明の更なる好ましい態様においては、組成物は栄養的にバランスのとれたそのまま食せるミール(meal)の形態にある。
【0031】
一態様においては、組成物は乾燥キブル(dried kibble)を含む。
【0032】
代替の態様においては、組成物は湿潤ペットフードミール(wet petfood meal)の形態にある。
【0033】
別の態様においては、組成物はミールサプリメントとして投与される。
代替の態様においては、組成物は湿潤ペットフードミールの形態にある。
【0034】
一態様においては、本発明の脂質同化促進用構成要素は、別包装された完成ミールに添加するための又はミールとは別に投与するための容器の中に提供される。一態様においては、この構成要素は医薬上許容されるキャリヤーの中に提供されてもよい。
【0035】
更なる態様においては、本発明のいずれかの局面を応用することによる利点は外見に関しており、それは
改善された体調(body condition);
改善された筋肉の調子(muscle tone);
改善された皮膚(skin)および毛(coat)の状態;および
より若い容姿
のいずれか一つ以上の中に観察可能である。
【0036】
腸粘膜機能促進剤は好ましくは、抗炎症剤、ラクトフェリン、プレバイオティック(prebiotic)またはプロバイオティック微生物(probiotic micro-organism)を包含する。
【0037】
抗炎症剤は好ましくはω−3−脂肪酸である。
【0038】
さらに、前記養生法に従うペットによって脂質または脂質断片の有効な同化作用から誘導可能な利点は、腸機能、外見、ペットと飼主の関係、加齢および一般健康面の一つに関している。
【0039】
一態様においては、腸機能に関する利点は、
上昇した、栄養素およびエネルギーの消化率;
改善された腸内微生物叢(gut microflora)、たとえば、小腸内細菌の異常増殖の減少に観察されるような;
改善された糞の堅さおよび/または臭い;
最適化された糞体積;
食べ物の移動時間の改善された規則性;
低下した鼓腸(flatulence);
向上した腸解毒(gut detoxification);および
脂溶性栄養素の改善された吸収
のいずれか一つ以上の中に観察可能である。
【0040】
本発明の第三の局面によれば、予め定められた指示に従って愛玩動物に規則的に投与することによって愛玩動物における脂質消化率を維持、改善、促進またはそうでなくても向上させるのに使用するための食用組成物は、膵機能促進剤と、肝機能促進剤および腸粘膜機能促進剤のいずれか一つまたはそれ以上を含んでいる。
【0041】
本発明の更なる局面においては、愛玩動物の必須栄養素を吸収する能力を改善する方法は、その動物の、必須栄養素のキャリヤーである脂質または脂質断片を吸収する能力を改善する工程を含む。好ましい必須栄養素はビタミンEおよびアラキドン酸(arachadonic acid)(またはARA)を包含する。
【0042】
本発明は、別の局面においては、愛玩動物における最適な脂質吸収に関連した利点を提供するための、食餌組成物または食餌サプリメントの製造における脂質消化率向上剤の使用に及ぶ。利点は上に列挙されたものの中のいずれか一つであってもよい。
【0043】
本発明の別の局面によれば、ペットの外観を改善する方法はその食餌の中の脂肪を消化するためのその能力を増進させる工程を含んでおり、脂肪消化能力は、ペットに、下記のものから選ばれた作用物質を含有する食餌を支給することによって増進される:
脂肪乳化剤/乳化システムと、次のもののいずれか:
酸性化剤、または
脂肪輸送剤(リコペンのためのキャリヤーとしてのホエータンパク質)、または
それらの組合せ。
【0044】
本発明はまた、愛玩動物における必須脂肪酸および/または脂溶性抗酸化物質の血中レベル(serum levels)を維持、促進または改善する方法に使用するための組成物を提供し、その組成物は膵機能促進剤と、肝機能促進剤および腸粘膜機能促進剤の一つまたはそれ以上を含んでおり、そしてその方法はその組成物を予め定められた食餌養生法に従ってペットに経口投与することを含む。
【0045】
本発明の利点は虚弱な高齢ネコのような高齢ペットの体調における目に見える改善を生じることである。
【0046】
別の利点はそれが彼らの栄養状態の改善をもたらすことである。このことを通して、ペットの生活の質の改善や延びた寿命および飼主のより大きな満足のような更なる利点が期待される。
【0047】
本発明の更なる利点は臨床的に健康な高齢ペットネコに対してばかりでなく、外分泌膵機能不全(Exocrine Pancreatic Insufficiency)(EPI)や、より広範囲の、脂質吸収不良に寄与するそのメカニズムが未だ完全には理解されていない消化不足、を患っているネコに対しても適用されてもよいということである。
【0048】
(態様の詳細)
ペットにおいては、脂質の吸収は他の必須栄養素たとえばビタミンEの吸収に大いに関係しているということが判明した。従って、低い消化率を有するペットはその健康を危うくすることのある欠乏した栄養状態または最適未満の栄養状態になりやすい。
【0049】
本発明はいずれかの原因によって脂質吸収能力の低下を発現しやすい又は既に発現しているペットの保護および救済の手段を提供する。かかる原因には、EPI、炎症性肝臓疾患、膵炎、炎症性腸疾患、腸リンパ腫、および特発性の(原因不明の)吸収不良が包含されてもよい。本発明は栄養管理を通して脂質吸収を増進させる手段を提供する。かかる管理はペットの飼主、介護人または世話人によって行われることができる。それを、脂質消化率を維持、改善、促進またはそうでなくても向上させる養生法として履行することによって、様々な健康上の利点および健康である状態の利点が結果として生じ得る。これらは以下に更に詳しく記述される。
【0050】
従って、ペットにおける脂質消化率を維持、改善、促進またはそうでなくても向上させるための栄養管理養生法はそれを必要としているペットに予め定められた指示に従って規則的に支給するための脂質吸収促進用成分を含んでいる。この脂質吸収促進用成分は膵機能促進剤から選ばれた少なくとも一つの栄養素と、肝機能促進剤、腸粘膜機能促進剤およびそれらの組合せからなる群から選ばれたもう一つとを含んでいる。それはペットの規則的な食餌(regular diet)の一部として、たとえば、栄養的にバランスのとれたペットフードの媒体の中に、投与されてもよいし、又はミール(meal)に対する若しくはトリート(treat)に対するサプリメントとして投与されてもよい。ミールは湿潤または乾燥であってもよく、たとえば、キブル形態にあってもよい。
【0051】
ペットはネコまたはイヌであってもよい。本発明は高齢または老齢のペットにおいて特に利益を有する。一般に、これらは9年齢以上のペットである。しかしながら、もっと若いペットも年齢の属性を示す場合があるであろうし、その場合はやはり有益であろう。
【0052】
本発明において使用されてもよい膵機能促進剤は天然および人工のリパーゼ、腸pH調節剤、膵臓エキス、およびそれらの組合せが挙げられる。有利には、膵機能促進剤がリパーゼ酵素である場合には、それはペットに投与されるために、食用組成物の中に、それを受理するペットに日に約1,000〜80,000IUのリパーゼ酵素を与えるのに十分な量で、存在している。好ましくは、組成物は、予め定められた養生法に従って投与されるときには、日に約9,000〜60,000IUのリパーゼ酵素を付与するのに十分な量の促進剤を含有している。
【0053】
膵機能促進剤が腸pH調節剤である場合には、それは、酸性化剤、アルカリ化剤(alkalanizer)、緩衝剤、プレバイオティックまたはプロバイオティック微生物の一つまたはそれ以上を含有するシステムを構成してもよい。好ましい腸pH調節剤は予測可能かつコントロール可能な仕方で発酵を促進し腸pHを調節するものである。適する酸性化剤の例はクエン酸および乳酸である。適する塩基の例は水酸化ナトリウムである。塩基は炭酸塩または重炭酸塩であってもよく、又はそれらの組合せを含んでもよい。
【0054】
腸pH調節剤が酸性化剤である場合には、それは腸pHを14ポイントpH目盛で約1ポイントだけ低下させるのに十分な量で存在することを規定されるべきである。
【0055】
腸pH調節剤がアルカリ化剤である場合には、それは腸pHを14ポイントpH目盛で約1ポイントだけ上昇させるのに十分な量で存在すると規定されるべきである。
【0056】
腸pH調節剤が緩衝剤である場合には、それは腸pHを消化の初期段階中には約4未満に維持するのに十分な量で存在すると規定されるべきである。
【0057】
膵機能促進剤が膵臓エキスである場合には、エキスは好ましくは膵リパーゼを含む。しかしながら、加えて又は代わりに、非膵臓源に由来するリパーゼが使用されてもよい。
【0058】
本発明の好ましい態様においては、腸pH調節剤はプレバイオティックまたはプロバイオティック微生物である。プレバイオティックはいずれか適する天然の又は精製された源、たとえば、チコリ(chicory)、から得られてもよく、そしてインスリンまたはオリゴ糖を含んでもよい。プロバイオティック微生物が選ばれるべき場合には、それは腸内での発酵過程を経て腸pHを整えるものである必要がある。一般に、プロバイオティック微生物はクロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens)やヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)のような病因性細菌の増殖を抑制する乳酸や酢酸のような有機酸を生産する。適するプロバイオティック微生物の例は次のものを包含する:酵母類、たとえば、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、デバロマイセス属(Debaromyces)、カンジダ属(Candida)、ピチア属(Pichia)およびトルロプシス属(Torulopsis)、カビ類(molds)、たとえば、アスペルギルス属(Aspergillus)、リゾプス属(Rhizopus)、ムコール属(Mucor)、およびペニシリウム属(Penicillium)およびトルロプシス属(Torulopsis)、および細菌類、たとえば、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)、メリソコッカス属(Melissococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ペプトストレポコッカス属(Peptostrepococcus)、バチルス属(Bacillus)、ペジオコッカス属(Pediococcus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ワイセラ属(Weissella)、アエロコッカス属(Aerococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)および乳酸桿菌属(Lactobacillus)。適するプロバイオティック微生物の具体例は次の通りである:Saccharomyces cereviseae、Bacillus coagulans、Bacillus licheniformis、Bacillus subtilis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium longum、Enterococcus faecium、Enterococcus faecalis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus alimentarius、Lactobacillus casei subsp. casei、Lactobacillus casei Shitota、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus delbruckii subsp. lactis、Lactobacillus farciminus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus(ラクトバチルスGG)、Lactobacillus sake、Lactococcus lactis、Micrococcus varians、Pediococcus acidilactici、Pediococcus pentosaceus、Pediococcus acidilactici、Pediococcus halophilus、Streptococcus faecalis、Streptococcus thermophilus、Staphylococcus carnosus、およびStaphylococcus xylosus。プロバイオティック微生物は粉末乾燥形態、特に、胞子を形成する微生物については胞子形態、にあってもよい。さらに、望むならば、プロバイオティック微生物は生存確率を更に高めるためにカプセル化されてもよい;たとえば、糖マトリックス、脂肪マトリックスまたは多糖マトリックスの中に。代わりに、微生物は主食組成物に対する別容器に入れたサプリメントとして提供されてもよい。
【0059】
本発明の態様においては、上記の2つ以上の膵機能促進剤のいずれかの組合せが使用されてもよい。
【0060】
本発明に使用するのに適する肝機能促進剤は食用乳化剤、タウリン、グルタチオンまたはグルタチオン促進剤、ミネラルおよびビタミンから選ばれてもよい。使用されるタウリンは天然であってもよいし又は精製源からであってもよいし、又は両者の混合物であってもよい。本発明の組成物がドライペットフードの形態で入手可能に製造される場合の本発明の態様においては、タウリンはドライマター(dry matter)(DM)基準で約0.5重量%以下含有される。好ましい態様においては、タウリン濃度はDM基準で約0.1重量%〜約0.4重量%の範囲にある。湿潤(缶詰)ペットフードの場合には、タウリン濃度はドライマター基準で1重量%以下であってもよいが、好ましくは、DM基準で約0.8重量%以下である。
【0061】
グルタチオン促進剤の非限定的例はセレンおよびビタミンEである。好ましい態様においては、セレンはアソシエーション・オブ・アメリカン・フィード・コントロール・オフィシャルズ(Association of American Feed Control Officials)(AAFCO)の最小値の約2〜3倍で存在する。たとえば、DM基準で食餌1kg当り約0.3mgのセレンが存在してもよい。ビタミンE量はAAFCO最小値の約20倍以下、たとえば、現時点では、DM基準で約600IU以下、であってもよい。これら作用物質は天然または精製源から得られてもよく、そして両方の組合せを含んでいてもよい。
【0062】
一態様においては、肝機能促進剤は摂取後に内在性グルタチオンを増加させることのできる栄養素である。
【0063】
肝機能促進剤がビタミンである場合には、それはたとえば、天然源たとえば酵母、または精製源、またはそれらの組合せ、から得られてもよい。好ましい態様においては、本発明の組成物は選択されたビタミンを、AAFCOによって折々に設定された最小レベルを約2〜5倍だけ超すのに十分な量(言い換えるなら、AAFCO最小値の約200〜500%)で含む。
【0064】
同様に、肝機能促進剤用に使用されるミネラルは天然または精製源およびそれらの組合せから得られる。好ましい態様においては、本発明の組成物は選択されたミネラルを、アソシエーション・オブ・アメリカン・フィード・コントロール・オフィシャルズ(AAFCO)によって折々に設定された最小レベルを約3〜5倍だけ超すのに十分な量(言い換えるなら、AAFCO最小値の約300〜500%)で含む。
【0065】
有利には、肝機能促進剤は下記の利点の少なくとも一つを得るためには予め定められた養生法に従って投与されるときに食用組成物中に所期効果をあげる量でペットに投与されるように存在する。
【0066】
本発明の腸粘膜機能促進剤は、一態様においては、ホエータンパク質や、リポタンパク質の形成を助けるプロテアーゼのような、脂肪輸送用の助剤、作用物質またはキャリヤーを包含する。適するプロテアーゼの例はパパイン(papain)である。食餌または食餌組成物は好ましくは、DM基準で約0.1重量%〜1重量%のパパインを含む。リポタンパク質形成用促進剤としてホエータンパク質が包含されるべき場合には、それは好ましくは、DM基準で約2重量%〜10重量%、好ましくは約5重量%〜7重量%の濃度で存在する。
【0067】
しかしながら、腸粘膜機能促進剤は代わりに又は加えて、抗炎症剤を包含してもよい。これらの適する例はω−3−脂肪酸、ラクトフェリン、プレバイオティックス、プロバイオティック微生物、または吸収を改善するために特別に選ばれたプロフィルを有する脂肪酸である。例としては、多価不飽和は適する吸収向上性プロフィルをもつ脂肪酸基を含む。好ましい態様においては、これらはDM基準で食餌の約2重量%〜25重量%、好ましくは約4重量%〜約12重量%で食餌の中に含有される。多価不飽和は魚油を包含してもよいし又はそれから誘導されてもよい。
【0068】
有利には、腸粘膜機能促進剤は以下に記述される利点の少なくとも一つを得るためには予め定められた養生法に従って投与されたときに所期効果をあげる量で食用組成物中にペットに投与されるように存在する。
【0069】
腸粘膜機能促進剤がω−3−オイルを含む場合には、それは好ましくは、DM基準で約1重量%〜20重量%、好ましくは約3重量%〜13重量%で食餌の中に含有される。食餌または組成物がラクトフェリンを含む場合には、それは好ましくは、1日当り約100mg〜200mg含有される。チコリの場合には、好ましい態様においては、それはドライマター基準で食餌または食餌組成物の約0.5重量%〜2重量%を成す。プレバイオティックス、たとえば、イヌリンおよび/またはオリゴ糖は好ましくはDM基準で食餌の約0.1重量%〜1重量%を成すべきである。プロバイオティックスは含有される場合には、好ましくは、食餌の中に少なくとも約10CFUの数値濃度にある。
【0070】
本発明の組成物の支給がペットで達成するところの利点は腸機能、外見、加齢、または更には一般健康面に関係していてもよい。腸機能に関する利点は、
上昇した、栄養素およびエネルギーの消化率;
改善された腸微生物叢、たとえば、小腸内細菌異常増殖(「SIBO」)の減少に証明されるような;
改善された糞の堅さおよび/または臭い;
最適化された糞体積;
低下した鼓腸;
改善された腸解毒;および
食べ物の移動時間の改善された規則性
を包含する:
【0071】
外観に関する利点は、
改善された体調および筋肉の調子;
脂肪酸やビタミンのような必須栄養素の生体内利用効率(bioavailability)を改善することによってもたらされた、改善された皮膚および毛の状態;および
より若く見えることによる、高齢ペットの総合的外観の改善
を包含してもよい。
【0072】
加齢に関する利点は、
老化の徴候の発症の遅延;
加齢の影響の軽減または改善;
老ペットにおける消化器系の機能の回復;および
延びた寿命
を包含してもよい。
【0073】
老化の徴候は、たとえば、毛の灰色化のように外観に関していてもよいし、又はより低レベルの活動のように活動に関していてもよい。加齢の影響は明白な関節硬直のように運動に関係していてもよいし、又は消化に関係していてもよいし、又は感覚能力などの低下に関係していてもよい。
【0074】
飼主との相互作用の利点(owner-interaction benefits)は、
改善されたフィジカルアクティビティ(physical activity);
増大したじゃれつき(playfulness)レベル;
改善された敏捷性(alertness)、メンタルパフォーマンス(mental performance)および認識力(cognitive ability);および
ペットの増大したアクティビティとじゃれつきを通しての改善されたペットと飼主の相互作用および結びつき
を包含してもよい。
【0075】
本発明によって提供されるより一般的な健康上の利点は、
改善された、水の代謝回転(water turnover);
改善された、栄養及び総合健康状態(nutritional and overall health status);
ビタミン(たとえばビタミンE)吸収を増進させることによる改善された酸化防止体質(antioxidant status);
改善された窒素平衡(nitrogen balance);
全ての脂質可溶性栄養素たとえば脂肪酸、ビタミンA、D、EおよびK、の改善された吸収;
タンパク分解(proteolysis)の低下による低減された腎臓の過剰負荷(renal overload);および
脂肪または抗酸化物質の改善された吸収に直接的または間接的に関連づけられる改善された機能
を包含する。
【0076】
従って、本発明はペットにおける脂質同化不良の影響を軽減する方法も提供する。この方法の工程は脂質を効率的に消化するためのペットの能力を維持、促進または向上させる構成要素の有効量を含む食餌をペットに投与することを含む。この構成要素は膵機能促進剤と、肝機能促進剤および腸粘膜機能促進剤およびそれらの組合せの一つ以上を含む。構成要素の各成分は上に言及した一般範疇に属するものから選ばれる。
【0077】
必須栄養素のキャリヤーである脂質または脂質断片を吸収するための愛玩動物の能力を改善することによって、この動物の必須栄養素吸収能力も改善される。必須栄養素は代表的には、ビタミンA、E、DまたはKのようなビタミンである。好ましい栄養素はビタミンEおよびアラキドン酸(ARA)を包含する。これら栄養素たとえばビタミンEの吸収効率の向上を介して、その血中レベルが維持および/または改善されてもよい。
【0078】
消化率を向上させる成分または作用物質は、愛玩動物における最適脂質吸収に関連した利点を付与するための又は劣った脂質吸収および低い消化率に関連した病態を予防するための食餌組成物またはサプリメントまたは医薬組成物の製造方法に使用されてもよい。かかる方法は後続の段落でさらに記述される。
【0079】
脂質の同化または消化を促進する構成要素は、単独で又は成分の組合せで又は相乗作用性成分のシステムで提供されようとも、多数の様々な形態のいずれかでそれを必要とする愛玩動物に投与するために提供されてもよい。たとえば、それはペットにそのまま食せるミールの一部として又はトリートの一部として支給されてもよい。ペットフードミールとして提供される場合には、本発明のペットフードはいずれか適するプロセスを使用して湿潤または乾燥形態で製造されてもよい。好ましくは、成分は栄養的にバランスのとれたミールの一部であろう。また、それらは定時ミール(regular meals)に加えて支給するためのトリートとして提供されてもよいし、又はミール若しくはスナックもしくはトリートと共に投与されてもよい食餌サプリメントまたは補足として提供されてもよい。成分(単数または複数)は医薬品形態で投与されてもよく、成分は医薬上許容されるキャリヤーの中に含有される。かかる形態は錠剤、カプセル剤、シロップ剤、ドリンク剤およびゲル剤などを包含し、その中で成分は使用の機会がおとずれるまで適切に貯蔵可能である。
【0080】
非限定的例で、成分が湿潤形態のペットフードの形態の中に提供される場合には、それはエマルジョンゲルとして又は流動性グレービー(gravy)またはゲルの中の固形ピース(solid peaces)として送達されてもよい。
【0081】
従って、冷却すると固まるであろう熱ゲル化エマルジョン(thermally gelled emulsion)を製造するためには、適する肉素材を細粉化してミートバッター(meat batter)を生成する。ミートバッターには、適するゲル化剤たとえば澱粉およびガムたとえばカッパ−カラゲナン(kappa-carrageenan)、ローカストビーンガム(locust bean gum)、グアーガム(guar gum)、およびキサンタンガム(xanthan gum)、が添加されてもよい。通常、約1重量%以下のガムが必要とされる。
【0082】
ミートバッターには水も約70重量%〜約85重量%の水分を与えるように添加されてもよい。肉素材の中に十分な水分が存在する場合には、水を添加する必要はない。
【0083】
それから、ミートバッターは混合物の熱ゲル化を開始させるのに適する温度に加熱される;たとえば、ミキサー−クッカーの中で約40℃〜約65℃の温度。望むならば、ミートバッターの中に水蒸気が注入されてもよい。加熱されたミートバッターは望むならば乳化されてもよい。それから、ミートバッターは必要とされるまで約40℃〜約65℃の温度に維持される。レトルト処理しそして室温に冷却した後では、ミートバッターは、実質的に固体であるか又は少なくともその形状を保つ熱ゲル化エマルジョンになる。
【0084】
グレービーまたはゲルの中の固形食物ピースを製造するには、肉または他の素材または両者の固形ピースがグレービーと混合されてもよい。その他素材の固形ピースも使用されてもよい;たとえば、米粒、パスタまたはヌードル、ベジタブルピースなど。
【0085】
固形食物ピースは熱ゲル化マトリックスのピース形態であってもよい。熱ゲル化マトリックスのピースはいずれか適する手順、たとえば、米国特許第4,781,939号、第5,132,137号、および第5,567,466号PCT出願WO97/02760のいずれかに記載されている手順、によって製造されてもよい。
【0086】
熱ゲル化マトリックスはピースまたはチャンク(chunk)を形成するためにエマルジョンミル(emulsion mill)または押出機のような適切な装置で成形されてもよい。押出機が使用される場合には、エマルジョンはエマルジョンに所望の形状、たとえば、長円形、正方形または長方形の断面を、を与えるためのオリフィスの中を通るように強制されてもよい。それから、押出物は適する連続調理システム、たとえば、加熱媒体として熱風、水蒸気、熱風と水蒸気の混合物、またはマイクロ波を使用するトンネル炉、の中で調理されてもよい。押出物のコア温度は押出物が熱ゲル化を受けるように上昇される。たとえば、コア温度は少なくとも80℃、たとえば、約85℃〜約95℃、に上昇されてもよい。ゲル化された押出物は次いでピース状に切断されてもよく、そしてピースは冷却されて熱ゲル化マトリックスのピースを提供する。ピースは望むならばフレーキング(flaking)を受けてもよい。冷却はピースの上に水を吹き付けることによって行われてもよい。代わりに、他の冷却媒体が使用されてもよい。
【0087】
グレービーが固形食物ピースと共に使用される場合には、グレービーは水と、一つまたはそれ以上の澱粉またはガムと、適する着香剤(flavoring agent)とから製造されてもよい。グレービーは好ましくは、固形ピースとグレービーの混合物の約20重量%〜約80重量%を成す。適するガムはカッパ−カラゲナン、ローカストビーンガム、グアーガムおよびキサンタンガムである。
【0088】
ゲルが固形食物ピースと共に使用される場合には、ゲルは適するゲル化剤と水と適する着香剤とから製造されてもよい。ゲルは好ましくは、固形ピースとグレービーの混合物の約20重量%〜約80重量%を成す。適するゲル化剤はタンパク質たとえばゼラチン;ガム、たとえば、アルギネート、カッパ−カラゲナン、ローカストビーンガム、グアーガムおよびキサンタンガム、など、である。ゲルまたはアスピック(aspic)は従来のように製造されてもよい。
【0089】
上記プロセスの組合せが使用されてもよい。たとえば、熱ゲル化エマルジョンが上記のように製造されてもよい。それから、熱ゲル化マトリックス、ミートピース、ベジタブルピース、これらピースの組合せ、など、であってもよい固形食物ピースが、熱ゲル化エマルジョンと組み合わされる。更なる代替としては、熱ゲル化エマルジョンと、グレービーまたはゲルの中の固形食物ピースとの組合せが使用されてもよい。適する組合せはWO98/05218およびWO98/05219に記載されており;その開示は本明細書の中に組み入れられる。
【0090】
ペットフードは次いで、缶またはその他の容器の中に充填され、それら容器は密封され、そしてそれら製品は通常の仕方でレトルト処理される。適する装置は商業的に入手可能である。
【0091】
乾燥ペットフードを製造するのに適するプロセスは各種成分の供給材料混合物を調理し、調理済み混合物をペレット状に成形し、乾燥し、それから、ペレットにフレーバーを塗布することを伴う。調理および成形の工程は当分野で周知の押出機を使用して好ましく行われる。しかしながら、ペレットは他の調理手順、たとえば、選ばれた成分を好ましくは栄養上バランスのとれた割合で含んでいる予備成形された食品本体をベーキングすることによって製造されてもよい。
【0092】
いずれのプロセスを利用するにしても、脂質同化促進用成分は適する段階で添加されてもよい。どの段階にするかは成分の本性に依存するであろう。それは調理、加熱または押出段階に先立って主成分に添加されてもよいし、又は熱に弱い成分の場合には、湿潤または乾燥であるかにかかわらずピースが形成された後に添加されてもよい。成分は成分を含有するべき食品本体の中に吸着されてもよいし、又は大部分が表面にとどまるように塗布されてもよい。それはゲル化チャンクまたは押出チャンクを伴っていてもよいグレービーの中に含有されてもよいし、又はミールサプリメントとして提供されてもよい。
【0093】
一般に、ポスト−キブル形成工程(post-kibble formation step)での機能性成分の適用は押出、乾燥および冷却プロセスの段階の後に行われる。ペットフード用キブルはたとえばコーティングドラムを装備したコーティングステーションに入る。そこでは、製品のおいしさ(palatability)を向上させるため且つ製品の美粧性(cosmetics)を改善するために、必要なビタミン、脂肪、ミネラルおよび微量元素としてかかる成分を含有または添加することによって、栄養プロフィルを生理学的要件および法的要件に合わせるように一つの又は幾つかのコーティングシステムが液体および/または粉体形態で適用される。
【0094】
有益な効果を得るためにペットによって消費されるべきペットフードの量はペットの大きさ、ペットのタイプ、ペットの活動レベルおよび年齢のような因子に依存するであろう。しかしながら、上記のようであれば、ドライマター基準で、ペットの体重1kg当り毎日約10g〜25gの量を与える栄養組成物の量が一般に投与されるべきである。好ましくは、この量は食餌の中にDM基準で体重1kg当り約12.5g〜20gの範囲にあるべきである。
【0095】
従って、適切な量の構成要素または成分組合せは次いでペットの食餌要件に従ってミールまたはトリートの中に含有されてもよい。成分(単数または複数)は基本処方物の中に混入され次いで加工されてもよいし、又はフードまたはトリートと共に含むための若しくはそれに添加するためのグレービーまたは他のキャリヤーの中に混合されてもよい。
【0096】
ペットフード組成物を上に規定されている通りに提供し、それを高齢ペットの管理人または飼主に入手可能にさせ、そしてかかるペットに対する組成物の規則的支給がそれらペットにおける劣った脂質同化作用を示す徴候を少なくとも一時的に軽減できるという期待に対する注目を引き出すことによって、ペット管理人は組成物を規則的にペットに投与するように励まされるであろうということが考えられる。管理人の注意を組成物の利点に引きつける適切なやり方は食品組成物の包装に注目させる手法によっているか、代わりにそれの独立した広告によっている。
【0097】
上記の態様には、本発明の範囲を逸脱することなく、多数の変形がなされてもよい。例として、そして非限定的に、本発明の製品の試行を更なる例証のために以下に記載する。
【実施例】
【0098】
(実施例)
多数の可能性のあるものの中でもどの栄養の介在が、対照キャットフード食餌に添加されたときに、低い脂肪消化率(すなわち、80%未満)のために予め選ばれたネコの脂肪消化率を改善するかを精査するために、一連の消化率試験が使用される。
【0099】
脂質消化率は次のような材料および方法を使用して一群のネコについて検定される:
全ての参加しているネコは成年であって健康良好であり、そして妊娠していない。
各試験食餌はネコのための唯一の栄養源である。
水はいつでもネコに入手可能である。
各ネコの体重は試験の開始前に記録される。
各ネコはその代謝可能エネルギー要求をまかなうのに必要な量の食物を支給される。
ネコは5日間の糞回収前期間にわたって同じ対照食餌を支給される。
ネコの体重は6日目に記録される。
糞回収期間は6日目から15日目までである。この期間に消費された食物が記録される。
6日目に、食餌と一緒に、マーカーとして赤色酸化鉄が、缶詰食餌についてはミール質量1kg当り1.0gそして乾燥食餌についてはミール質量1kg当り2.5gの濃度で、支給される。
赤いマーク糞は回収されるべき最初のものである。赤いマーク糞が最初に出現するまでは、6日目と7日目におけるマークされてない糞(通常の色の)は捨てる。全ての赤いマーク糞ばかりでなく、最初の赤い糞が観察された後の全てのマークされてない糞が回収される。
各ネコについて回収された糞を−20℃で冷凍する。
15日目の朝に、赤い酸化鉄が再び(6日目のように)食餌に添加され、今回は試験支給期間の最後をマークするためであり、そして各ネコの体重が記録される。糞は赤いマーカーが再出現するまで回収され続ける。
食餌の2サンプルと、各ネコの糞サンプルは冷凍乾燥され、そしてタンパク質、脂肪、ドライマター、および灰分の分析のために送られる。
【0100】
次に、市販ペットフード製品の中への吸収改善用栄養介在の履行を例証する実施例を記載する。
(実施例1)
【0101】
缶詰食品を使用しての試験
この実施例では、参加しているネコはエマルジョンミート食餌を受理し、その食餌は、重量%基準で、約9%の脂肪と、2.2%の灰分と、8.4%のタンパク質と、76%の水分という組成を有している。これは食餌Aと呼ばれる。
【0102】
別の食餌、Bと呼ぶ、は同じような処方物に基づいているが、下記添加成分(重量%で示されている)を含有している:
膵機能促進剤:0.1%酸性化剤(クエン酸)
肝機能促進剤:湿潤キャットフード向けには、AAFCO最小値の約4倍のレベルのタウリン(ドライマター基準で0.8重量%)
腸粘膜機能促進剤:魚油(3%)
【0103】
低い脂肪消化率(すなわち、80%未満)を有する20匹のネコの群に、食餌AおよびBの両方を、2つの消化率試験のクロスオーバー設計で、支給する。各食餌は15日間の消化率試験にわたって支給され、最初の5日間は順応期間であり、そして残りの10日間は糞回収期間である。ネコは食餌Aを支給されたときよりも食餌Bを支給されたときの方が脂肪の有意に高い割合を消化することが判明した。結果として、食餌Bでは総エネルギー消化率と有機物消化率は改善される。ネコはそのエネルギー要求をまかなうのに食餌Aよりも食餌Bの方が少ない量ですむことが判明した。全体として、ネコは食餌Aを支給されたときよりも食餌Bを支給されたときの方がその体重をよりよく維持するようである。
(実施例2)
【0104】
ドライフード食餌を使用しての試験
この実施例は、重量%基準で、約31%のタンパク質と、15%の脂肪と、4.5%の繊維と、12%の水分と、5%の灰分という組成を有する通常のドライキャットフード、食餌Cと呼ぶ、を使用している。
【0105】
別の食餌、Dと呼ぶ、は同じような処方物に基づいているが、下記添加成分(重量%で示されている)を含有している:
膵機能促進剤:タウリン(0.27%)
肝機能促進剤:大豆からのレシチン(1%)
腸粘膜機能促進剤:チコリ(1%)
【0106】
この試験では、判明している低い脂肪消化率(すなわち、80%未満)を有する20匹のネコの群に、食餌CおよびDの両方を、2つの消化率試験のクロスオーバー設計で、支給する。各食餌は15日間の消化率試験にわたって支給され、最初の5日間は順応期間であり、そして残りの10日間は糞回収期間である。食餌Dにおけるネコは食餌Cにおけるネコよりも脂肪の高い割合を消化することが判明した。総エネルギー消化率と有機物消化率はやはり、食餌Cと比べたときに、食餌Dによって改善される。食餌Cの代わりに食餌Dをネコに支給したときの、減少した糞の体積および臭いが注目された。
【0107】
ここに記載した現時点での好ましい態様に対して様々な変形および変更が当業者には明らかになろうが、本発明の範囲を逸脱しないで且つその意図した利益を失わないで可能であるかかる変形および変更は特許請求の範囲によってカバーされることを意図している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットに脂質または脂質断片の有効な同化に関する利点を与える方法であって、ペットに、それの規則的な食餌として又はそれに加えて、膵機能促進剤と、肝機能促進剤および腸粘膜機能促進剤の一つまたはそれ以上とを含む食用組成物を投与する工程を含んでいる、前記方法。
【請求項2】
膵機能促進剤がリパーゼ、腸pH調節剤または膵臓エキスを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
肝機能促進剤が、タウリン、乳化剤、ビタミン、ミネラル、グルタチオンおよびグルタチオン促進剤、およびそれらの組合せから選ばれる、請求項1または2の方法。
【請求項4】
腸粘膜機能促進剤が脂肪輸送用の助剤、作用物質またはキャリヤーを含む、先行請求項のいずれか一項の方法。
【請求項5】
ペットの利点が、腸機能、外見、ペットと飼主の関係、加齢および一般健康面の少なくとも一つに関している、先行請求項のいずれか一項の方法。
【請求項6】
利点が加齢に関しており、そして
老化の徴候の発症の遅延、
年齢に関係した影響の軽減、
改善された視力、
老ペットにおける消化器系の回復された機能性、および
延びた寿命
のいずれか一つまたはそれ以上の中に観察可能である、請求項5の方法。
【請求項7】
組成物が、栄養的にバランスのとれたそのまま食せるミールの形態にある、先行請求項のいずれか一項の方法。
【請求項8】
組成物が乾燥キブルを含む、請求項7の方法。
【請求項9】
組成物がミールサプリメントとして投与される、先行請求項のいずれか一項の方法。
【請求項10】
利点が外見に関しており、そして
改善された体調、
改善された筋肉の調子、
改善された皮膚および毛の状態、および
より若い容姿
のいずれか一つまたはそれ以上の中に観測可能である、請求項5〜9のいずれか一項の方法。
【請求項11】
脂質消化率を維持、改善、促進またはそうでなくても向上させるための栄養管理養生法であって、愛玩動物に、予め定められた指示に従って、有効な脂質同化促進量で規則的に支給するための食餌構成要素を含んでおり、この食餌構成要素が膵機能促進剤と、肝機能促進剤および腸粘膜機能促進剤のいずれか一つまたはそれ以上とを含む、前記養生法。
【請求項12】
膵機能促進剤がリパーゼ、腸pH調節剤または膵臓エキスを含む、請求項11の養生法。
【請求項13】
pH調節剤が、酸性化剤、アルカリ化剤、緩衝剤、プレバイオティックまたはプロバイオティック微生物の一つまたはそれ以上を包含する、請求項12の養生法。
【請求項14】
肝機能促進剤が、タウリン、乳化剤、ビタミン、ミネラル、グルタチオンおよびグルタチオン促進剤、およびそれらの組合せから選ばれる、請求項11から13のいずれか一項の養生法。
【請求項15】
肝機能促進剤が、摂取後に内在性グルタチオンを増加させる栄養素である、請求項11〜14のいずれか一項の養生法。
【請求項16】
腸粘膜機能促進剤が脂肪輸送用の助剤、作用物質またはキャリヤーを包含する、請求項11〜15のいずれか一項の養生法。
【請求項17】
助剤、作用物質またはキャリヤーが、ホエータンパク質、およびリポタンパク質の形成を促進する能力を有するプロテアーゼから選ばれる、請求項16の養生法。
【請求項18】
腸粘膜機能促進剤が、抗炎症剤、ラクトフェリン、プレバイオティックまたはプロバイオティック微生物を包含する、請求項16または17の養生法。
【請求項19】
抗炎症剤がω−3−脂肪酸である、請求項18の養生法。
【請求項20】
脂肪輸送用の助剤、作用物質またはキャリヤーが、脂質吸収を改善するように選ばれた脂肪酸プロフィルを有する、請求18または19の養生法。
【請求項21】
脂肪酸プロフィルが多価不飽和性である、請求項20の養生法。
【請求項22】
脂肪輸送用の助剤、作用物質またはキャリヤーがホエータンパク質を含む、請求項21の養生法。
【請求項23】
ペットによって脂質または脂質断片の有効な同化作用から誘発可能な利点が、腸機能、外見、ペットと飼主の関係、加齢および一般健康面の少なくとも一つに関する、請求項11〜22のいずれか一項の養生法。
【請求項24】
腸機能に関する利点が、
上昇した、栄養素およびエネルギーの消化率;
改善された腸微生物叢、たとえば、小腸内細菌異常増殖の減少に観察されるような;
改善された糞の堅さおよび/または臭い;
最適化された糞体積;
食べ物の移動時間の改善された規則性;
低下した鼓腸;
向上した腸解毒;および
脂溶性栄養素の改善された吸収
のいずれか一つまたはそれ以上の中に観察可能である、請求項23の養生法。
【請求項25】
外見に関する利点が、
改善された体調;
改善された筋肉の調子;
改善された皮膚および毛の状態;および
より若い容姿
のいずれか一つまたはそれ以上の中に観察可能である、請求項23の養生法。
【請求項26】
愛玩動物への、予め定められた指示に従っての、規則的投与によって、愛玩動物における脂質消化率を維持、改善、促進またはそうでなくても向上させるのに使用するための食用組成物であって、膵機能促進剤と、肝機能促進剤および腸粘膜機能促進剤のいずれか一つまたはそれ以上とを含む、前記組成物。
【請求項27】
愛玩動物の外観を改善する方法であって、膵機能促進剤と、肝機能促進剤、腸粘膜機能促進剤またはそれらの組合せとを含有している食餌をペットに支給することによって、ペットの、それの食餌の中の脂肪を消化する能力を増進させる工程を含んでいる、前記方法。
【請求項28】
膵機能促進剤が脂肪乳化剤/乳化システムを含み、腸粘膜機能促進剤が酸性化剤を含み、そして腸粘膜機能促進剤が脂肪輸送用作用物質を含む、請求項27の方法。




【公開番号】特開2009−114196(P2009−114196A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313528(P2008−313528)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【分割の表示】特願2003−581599(P2003−581599)の分割
【原出願日】平成15年4月3日(2003.4.3)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】