説明

脚部の取付け構造

【課題】本発明は、脚部の長さを調節する際の操作性や利便性を向上させ、その上、基体の上側から脚部を取り付けたり取り外したりすることができ、かつ、該脚部の取付け固定強度を高くすることを課題とする。
【解決手段】便器本体2の取付け孔11に段部19を形成し、該段部19よりも上側にねじ溝20を形成し、脚部10の下部にねじ筒27を嵌着し、該脚部10の下端部に外挿管29を嵌着した上で、該脚部10を該取付け孔11に挿入し、該ねじ筒27のねじ部26を該取付け孔11のねじ溝20に螺着して、該段部19と該ねじ筒27下端との間で該脚部10のフランジ部28を締付けることによって、該脚部10を該取付け孔11に着脱可能に固定するとともに、該外挿管29の複数個の係止孔30のうちの一つを選択して該脚部10の係止ピン24を係止させることによって、該脚部10を長さ調節可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脚部の取付け構造に関し、特に簡易便器の肘掛けの脚部の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基体の上側から脚部を取り付けたり取り外したりすることができ、かつ、該脚部の取付け固定強度が非常に高い脚部の取付け構造として、基体上面に設けた取付け孔の中間部内周に段部を形成し、該段部よりも上側内周にねじ溝を形成し、一方、脚部の下端部外周にフランジを形成し、該脚部の下端部のフランジよりも上側に外周にねじ溝を形成したねじ筒を嵌着した上で、該脚部を該取付け孔に挿入し、該ねじ筒を該取付け孔のねじ溝に螺着して、該取付け孔の段部と該ねじ筒下端との間で該脚部のフランジ部を締付けることによって、該脚部を該取付け孔に着脱可能に固定したものが一般に提供されている。
そして、該脚部の下端部には複数個のピン孔が設けられており、該脚部の長さを調節する場合には、該複数個のピン孔の一つを選択して固定ピンを挿通することによって、該フランジの取付け高さ位置を調節する(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−97469号公報(第3−5頁、第2−3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の脚部の取付け構造では、脚部の長さ調節に用いる固定ピンを紛失しないように部品管理する必要がある。更に、上記従来の脚部の取付け構造は、特に簡易便器のアームレストの取付けに適用されるものであるが、簡易便器は主として体の不自由な人や高齢者が使用するものであるため、アームレストの高さ(脚部の長さ)を調節する際の操作性や利便性の更なる向上が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、基体2の上面に設けた取付け孔11の中間部内周に段部19を形成し、該段部19よりも上側内周にねじ溝20を形成し、一方、脚部10の下部に外周にねじ部26を形成したねじ筒27を嵌着し、該脚部10の下端部には該ねじ筒27のねじ部26よりも下側に外周にフランジ部28を有する外挿管29を嵌着した上で、該脚部10を該取付け孔11に挿入し、該ねじ筒27のねじ部26を該取付け孔11のねじ溝20に螺着して、該取付け孔11の段部19と該ねじ筒27下端との間で該脚部10のフランジ部28を締付けることによって、該脚部10を該取付け孔11に着脱可能に固定した脚部10の取付け構造において、該脚部10の下端部には突出方向に付勢された係止ピン24が出没可能に設けられ、該外挿管29には複数個の係止孔30が縦列して設けられており、該複数個の係止孔30のうちの一つを選択して該係止ピン24を係止させることによって、該脚部10を長さ調節可能にした脚部の取付け構造を提供するものである。
該ねじ筒27の少なくとも下部の内周は下方に向かって径が漸増するテーパー形状にされ、該外挿管29の上部の外周は該ねじ筒27内周のテーパー形状に対応して上方に向かって径が漸減するテーパー形状にされていることが望ましい。
また、該ねじ筒27の上端の内周は該脚部10の外周に密接して該脚部10を支持していることが望ましい。
更に、該取付け孔11には樹脂製のスリーブ18a,18bが挿着され、該スリーブ18a,18bの中間部内周に段部19が形成され、該段部19よりも上側にねじ溝20が形成されており、また、該ねじ筒27は樹脂製であることが望ましい。
また更に、該基体は簡易便器1の便器本体2であり、該取付け孔は該便器本体2の前端両側に設けられたアームレスト取付け孔11であり、該脚部は該便器本体2の両側に取付けられるアームレスト3の脚部10であることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の脚部の取付け構造では、脚部10の下端部に突出方向に付勢された係止ピン24が出没可能に設けられているため、従来のように固定ピンの部品管理をする必要がない。また、該係止ピン24を付勢力に抗して押し込んで、該脚部10を該外挿管29に対して上方または下方に摺動させ、該複数個の係止孔30のうちの一つを選択して該係止ピン24を係止させることによって、該脚部10の長さを容易に調節することができる。従って本発明では、脚部10の長さを調節する際の操作性や利便性が非常に向上する。
また本発明では、ねじ筒27のねじ部26を基体2の上面に設けた取付け孔11のねじ溝20に螺着したり、あるいは該ねじ溝20から取外したりすることによって、基体2の上側から脚部10を取付けたり取外したりすることができる。特に、該基体が簡易便器1の便器本体2であり、該脚部が該便器本体2の前端両側のアームレスト取付け孔11に取付けられているアームレスト3の脚部10である場合には、使用者が便器に腰掛けたままでもアームレスト3が簡単に取付け取外しでき、更に、該アームレスト3の取付け固定強度が非常に高くなり、その上、アームレスト3の高さ(脚部10の長さ)を調節する際の操作性や利便性が非常に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を図1〜図4に示す一実施例によって説明する。
図1に示すように、簡易便器1の便器本体2の両側には左右一対のアームレスト3が取付けられており、該便器本体2の後端部には背もたれ4が取付けられている。更に、該便器本体2の上面の凹部(図示せず)には受板5を介して便バケツ6が懸架されており、該便器本体2の上面後部には、シャワーユニット7が台座(図示せず)を介して載置されて取付けられている。
【0008】
該便器本体2の両側のアームレスト3は、アームレストフレーム8と、該アームレストフレーム8上に取付けられているアームレスト部9とからなり、該アームレストフレーム8は前端部を下方に折曲げて脚部10とし、該アームレストフレーム8の脚部10は該便器本体2の上面前端両側に設けられたアームレスト取付け孔11にそれぞれ着脱可能に取付けられている。
【0009】
該背もたれ4は、該便器本体2の後端両側から立設される背もたれフレーム12と、該背もたれフレーム12中央部において支持されている背もたれ板13とからなり、該背もたれフレーム12の脚部14は該便器本体2の上面後端部両側に設けられた背もたれ取付け孔15にそれぞれ着脱可能に取付けられている。
更に、該アームレストフレーム8の後端からは背もたれ補助フレーム16がそれぞれ一体的に延設されており、該背もたれ補助フレーム16は、該背もたれ板13の背面において固定ボルト17を介して着脱可能に当接されている。本実施例では、該固定ボルト17の螺着位置を選択することによって、該背もたれ補助フレーム16は、三段階に取付け高さ位置を調節できるようにされている(図4参照)。
【0010】
図2および図3に示すように、該便器本体2の前端部両側上面のアームレスト取付け孔11には、左右別体の樹脂製のスリーブ18a,18bが互いに組み合わせて一体とされた状態で挿着されており、該別体のスリーブ18a,18bの中間部内周には段部19がそれぞれ形成されており、更に、該段部19よりも上側内周にはねじ溝20がそれぞれ形成されている。
該別体のスリーブ18a,18bの下端部外周には係止爪21がそれぞれ突設されており、該スリーブ18a,18bを便器本体2のアームレスト取付け孔11に挿着したときに、該係止爪21が該取付け孔11内周に設けられた切欠部(図示せず)に係止することによって、該スリーブ18a,18bが便器本体2に係止固定される(図3参照)。
また、一方のスリーブ18aの中間部の所定の位置には、上側凸部22および下側凹部23が設けられており、他方のスリーブ18bの中間部の対応する位置には、上側凹部(図示せず)および下側凸部(図示せず)が設けられている。したがって、別体のスリーブ18a,18bを互いに組合わせたときに、一方のスリーブ18aの上側凸部22および下側凹部23と他方のスリーブ18bの上側凹部および下側凸部とがそれぞれ嵌合して、スリーブ18a,18bが一体となった状態で該スリーブ18a,18bが互いに摺動することが防止される(図2および図3参照)。
【0011】
一方、図2および図3に示すように、該アームレストフレーム8の脚部10の下端部には、係止ピン24が出没可能に取り付けられており、該係止ピン24は屈曲ばね25によって突出方向に付勢されている。
また、該脚部10の下部には、外周にねじ部26を形成した樹脂製のねじ筒27が嵌着されており、該ねじ筒27の下部の内周は、下方に向かって径が漸増するテーパー形状にされている。そして、該ねじ筒27の上部は上方に向かって延出しており、延出したねじ筒27の内周の上端は、該アームレスト3の脚部10の外周に密接して該脚部10を支持している。
【0012】
更に、該脚部10の下端部には、該ねじ筒27のねじ部26よりも下側において、外周にフランジ部28を有する外挿管29が嵌着されている。該外挿管29には三個の係止孔30が縦列して設けられており、該三個の係止孔30のうちの一つを選択して該係止ピン24を係止させることによって、該脚部10は長さ調節可能とされている。
また、該外挿管29の上部の外周は、該ねじ筒27の内周のテーパー形状に対応して、上方に向かって径が漸減するテーパー形状にされている(図3参照)。
【0013】
図3に示すように、アームレスト3を便器本体2に取付ける場合には、まず、アームレスト3の脚部10に予めねじ筒27を嵌着した後、該脚部10に外挿管29を嵌着する。このとき、脚部10の係止ピン24を屈曲ばね25の付勢力に抗して押し込んで、該脚部10を該外挿管29に対して上方または下方に摺動させて、該三個の係止孔30のうちの一つを選択して該係止ピン24を係止させることによって、該脚部10の長さを調節する。
次に、該アームレスト3の脚部10を、予めスリーブ18a,18bを挿着したアームレスト取付け孔11に挿入して、該ねじ筒27のねじ部26を該取付け孔11内のスリーブ18a,18bのねじ溝20に螺着することによって、該外挿管29を該スリーブ18a,18bの段部19に当接させるとともに、該取付け孔11内のスリーブ18a,18bの段部19と該ねじ筒27下端との間で該外挿管29を締付けて、該アームレスト3の脚部10を該便器本体2の取付け孔11に着脱可能に固定する。
このとき、該アームレストフレーム8後端の背もたれ補助フレーム16は、図4に示すように、該脚部10の高さ位置に応じて固定ボルト17の螺着位置を選択し、取付け高さ位置を調節して背もたれ板13の背面に取付け固定する。
【0014】
上記のように、脚部10の下端部に突出方向に付勢された係止ピン24が出没可能に設けられているため、従来のように固定ピンの部品管理をする必要がない。
また、該係止ピン24を屈曲ばね25の付勢力に抗して押し込んで、該脚部10を該外挿管29に対して上方または下方に摺動させ、該複数個の係止孔30のうちの一つを選択して該係止ピン24を係止させることによって、使用者の体型に応じてアームレスト3の高さ(脚部10の長さ)を容易に調節することができるため、アームレスト3の高さ(脚部10の長さ)を調節する際の操作性や利便性が非常に向上する。
更に、アームレスト3の高さ(脚部10の長さ)の調節が完了した後、係止ピン24は便器本体2のアームレスト取付け孔11の内部に取り付けられたスリーブ18a,18b内に収納されるため、該係止ピン24が不意に押し込まれることがなく、不意に該アームレスト3の高さ(脚部10の長さ)が変わることがない。
【0015】
また上記のように、該ねじ筒27のねじ部26を該スリーブ18a,18bのねじ溝20に螺着したり、あるいは該ねじ溝20から取外したりすることによって、便器本体2の上側からアームレスト3の脚部10を取付けたり取外したりすることが出来、使用者が簡易便器1に腰掛けたままでも該アームレスト3の一方または両方を便器本体2から容易に着脱することが可能となる。
【0016】
更に、該ねじ筒27の下部の内周が下方に向かって径が漸増するテーパー形状にされ、該外挿管29の上部の外周が該ねじ筒27内周のテーパー形状に対応して上方に向かって径が漸減するテーパー形状にされているので、該ねじ筒27のねじ部26を該取付け孔11内のスリーブ18a,18bのねじ溝20に螺着したときに、該ねじ筒27の下部内周のテーパー形状と該外挿管29の上部外周のテーパー形状とが密着して相互締付けを行なう。
そのため、垂直方向のみならず円周方向にも締付け固定力が働き、脚部10の固定強度が大幅に向上して、アームレスト3のがたつきを防止することが出来る。
【0017】
また更に、延出したねじ筒27の上端の内周が、該脚部10の外周に密接して該アームレスト3の脚部10を支持しているので、該脚部10の歳差運動が阻止されて、脚部10の固定強度が更に向上し、アームレスト3のぐらつきを防止することが可能となる。
その上、該アームレスト取付け孔11には樹脂製スリーブ18a,18bが挿着され、また、該アームレスト3の脚部10に取付けられるねじ筒27が樹脂製であるので、樹脂の弾性によってテーパー形状による前記円周方向の締付け効果が更に有効に働き、アームレスト3のがたつきを更に有効に防止することが出来る。
【0018】
以上、本発明の実施の形態を実施例により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
例えば、本実施例以外、アームレストフレーム8は後端部を下方に折曲げて脚部(図示せず)としてもよく、該アームレストフレーム8後端部の脚部を便器本体2の上面後端両側に設けられたアームレスト取付け孔(図示せず)に取り付ける場合に、上記の脚部の取付け構造を適用してもよい。
また、本実施例以外、上記の脚部の取付け構造は、背もたれフレーム12の脚部14を便器本体2後端両側に設けられた背もたれ取付け孔15に着脱可能に取付ける場合に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、脚部の長さを調節する際の操作性や利便性が非常に向上し、その上、基体の上側から脚部を取り付けたり取り外したりすることができ、かつ、該脚部の取付け固定強度が非常に高い脚部の取付け構造として、産業上利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】簡易便器の斜視図である。
【図2】アームレストの脚部の取付け構造を示す分解斜視図である。
【図3】アームレストの脚部の取付け構造を示す説明側断面図である。
【図4】背もたれ補助フレームの取付け構造を示す説明側面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 簡易便器
2 基体(便器本体)
10 脚部(脚部)
11 取付け孔(アームレスト取付け孔)
18a スリーブ
18b スリーブ
19 段部
20 ねじ溝
24 係止ピン
26 ねじ部
27 ねじ筒
28 フランジ部
29 外挿管
30 係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の上面に設けた取付け孔の中間部内周に段部を形成し、該段部よりも上側内周にねじ溝を形成し、一方、脚部の下部に外周にねじ部を形成したねじ筒を嵌着し、該脚部の下端部には該ねじ筒のねじ部よりも下側に外周にフランジ部を有する外挿管を嵌着した上で、該脚部を該取付け孔に挿入し、該ねじ筒のねじ部を該取付け孔のねじ溝に螺着して、該取付け孔の段部と該ねじ筒下端との間で該脚部のフランジ部を締付けることによって、該脚部を該取付け孔に着脱可能に固定した脚部の取付け構造において、
該脚部の下端部には突出方向に付勢された係止ピンが出没可能に設けられ、該外挿管には複数個の係止孔が縦列して設けられており、該複数個の係止孔のうちの一つを選択して該係止ピンを係止させることによって、該脚部を長さ調節可能にしたことを特徴とする脚部の取付け構造。
【請求項2】
該ねじ筒の少なくとも下部の内周は下方に向かって径が漸増するテーパー形状にされ、該外挿管の上部の外周は該ねじ筒内周のテーパー形状に対応して上方に向かって径が漸減するテーパー形状にされている請求項1に記載の脚部取付け構造。
【請求項3】
該ねじ筒の上端の内周は該脚部の外周に密接して該脚部を支持している請求項1または請求項2に記載の脚部取付け構造。
【請求項4】
該取付け孔には樹脂製のスリーブが挿着され、該スリーブの中間部内周に段部が形成され、該段部よりも上側にねじ溝が形成されており、また、該ねじ筒は樹脂製である請求項2または請求項3に記載の脚部取付け構造。
【請求項5】
該基体は簡易便器の便器本体であり、該取付け孔は該便器本体の前端両側に設けられたアームレスト取付け孔であり、該脚部は該便器本体の両側に取付けられるアームレストの脚部である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脚部取付け構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−6500(P2006−6500A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185739(P2004−185739)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】