脛骨近位端の骨切り用ガイド器具
【課題】最終的な器具の固定において位置ズレしにくく、また正確な位置決めがしやすい骨切り用ガイド器具を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の骨切り用ガイド器具10は、下部がアンクルクランプ21により足首に固定され、長手方向に延びる軸が脛骨軸と平行にされるシャフト部20と、脛骨近位端62の骨切り面をガイドするスリット41を有するガイド部45と該ガイド部45から下方に延びるガイド脚部42とを備えたT型カットガイド部40と、前記シャフト部20の上部に連係し、斜め上方に延び、前記T型カットガイド部40のガイド脚部42を受けて前記T型カットガイド部40を昇降調節する機能を有するロッド部30と、を備えており、前記ロッド部30の上端近傍に、脛骨軸の軸合わせの基準位置に仮止めするための仮止めピン50が突出していることを特徴とする。
【解決手段】 本発明の骨切り用ガイド器具10は、下部がアンクルクランプ21により足首に固定され、長手方向に延びる軸が脛骨軸と平行にされるシャフト部20と、脛骨近位端62の骨切り面をガイドするスリット41を有するガイド部45と該ガイド部45から下方に延びるガイド脚部42とを備えたT型カットガイド部40と、前記シャフト部20の上部に連係し、斜め上方に延び、前記T型カットガイド部40のガイド脚部42を受けて前記T型カットガイド部40を昇降調節する機能を有するロッド部30と、を備えており、前記ロッド部30の上端近傍に、脛骨軸の軸合わせの基準位置に仮止めするための仮止めピン50が突出していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工膝関節を設置する前に、脛骨近位端を正確に骨切りするのに使用される骨切り用ガイド器具に関する。
【背景技術】
【0002】
人工膝関節を設置するためには、膝関節を構成する脛骨近位部と大腿骨近位部とを整形(骨切り)する必要がある。特に、脛骨近位部は、所定の傾斜を有する平面となるように、正確に骨切りしなくてはならない。また、骨切りする量も、厳密に調整しなくてはならない。骨切りの際の平面の傾斜や骨切り量が適切でないと、人工膝関節を設置した後に、膝関節の違和感や、膝関節の偏減りなどの原因となる。
【0003】
従来の脛骨近位端の骨切りガイド器具では、脛骨上部に固定するアンカー部材と、アンカー部材の上部に固定されスロットを備えた器具部分とを備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。このガイド器具は、アンカー部材を脛骨の中程に固定し、次いでコンピュータイメージガイダンスを用いて器具部分を正確に位置決めし、そして器具部分を脛骨の近位部にピンで固定する。器具部分のスロットにより切刃をガイドし、脛骨近位端を所定の傾斜を有する平面に骨切りする。このガイド器具では、一連の作業の間、アンカー部材と器具部分との間に備えられたフォーク状構造体を脛骨に接触させて、ガイド器具の安定性を高めている。
【0004】
また、別の脛骨近位部の骨切り用器具として脛骨ミリング案内装置が知られており、脛骨近位端をエンドミルにより平坦に切削するのに使用されている(例えば特許文献2参照)。この脛骨ミリング案内装置では、脛骨軸に沿って骨髄外に配置される棒状の整合案内と、整合案内の上部に取り付けられた基準案内と、整合案内の下部に固定されたローワーメンバーとを備えている。使用時には、整合案内は、下部をローワーメンバーによりくるぶしに固定され、上部を基準案内により所定位置に調整された後、整合案内の上部近傍の穴に挿通したボーンスクリューにより脛骨に固定される。そして、基準案内が取り外され、代わりにミリングベースアセンブリ及びミリングテンプレートが固定される。ミリングテンプレートは、脛骨近位端の関節面に配置されて、テンプレートの溝にそってエンドミルを操作することにより、脛骨近位端を切削する。
【特許文献1】特開2004−202239号公報
【特許文献2】特開平8−56956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
骨切りガイド器具では、器具部分を脛骨の近位部にピン固定するときに、ガイド器具がアンカー部材のみで固定されているので、ピンの打ち込みの際の衝撃によって器具部分の位置がずれる可能性がある。また、脛骨ミリング案内装置でも、整合案内の上部をボーンスクリューにより固定するときに、整合案内がローワーメンバーによりくるぶしに固定されているだけなので、簡単に位置ズレしやすい。
器具部分や整合案内の位置がずれると、再度位置合わせからやり直す必要があり、手術時間の延長につながる恐れがある。
また、骨切りガイド器具や脛骨ミリング案内装置では、正確な位置決めの手順が複雑であるので、熟練した術者でなければ手術時間が長くなりやすい傾向にあった。
【0006】
そこで、本発明は、最終的な器具の固定において位置ズレしにくく、また正確な位置決めがしやすい骨切り用ガイド器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の骨切り用ガイド器具は、下部がアンクルクランプにより足首に固定され、長手方向に延びる軸が脛骨軸と平行にされるシャフト部と、脛骨近位端の骨切り面をガイドするスリットを有するガイド部と該ガイド部から下方に延びるガイド脚部とを備えたT型カットガイド部と、前記シャフト部の上部に連係し、斜め上方に延び、前記T型カットガイド部のガイド脚部を受けて前記T型カットガイド部を昇降調節する機能を有する前記ロッド部と、を備えており、ロッド部上端近傍に、脛骨軸の軸合わせの基準位置に仮止めするための仮止めピンが突出していることを特徴とする。
【0008】
骨切り用ガイド器具は脛部の前方に取り付けられるので、シャフト部の内外側方向の位置合わせの基準点としては、脛骨の前面にある脛骨粗面の内側より1/3の位置(脛骨粗面基準位置と称する)、又は第二中足指が利用される。本発明では、脛骨粗面基準位置に仮止めピンを打ち込むことにより、シャフト部の上部を仮固定できる。つまり、骨切り用ガイド器具の固定初期から、シャフト部の上部が脛骨に、下部が足首に固定されることになる。よって、シャフト部が脛骨軸に対して平行に調節し、T型カットガイド部の高さを決定し、そしてT型カットガイド部をピン等で脛骨に固定する時も、シャフト部が位置ズレすることは殆どない。
【0009】
また、仮止めピンを脛骨粗面基準位置に打ち込むことにより、シャフト上部の内外側方向の位置をほぼ正確に位置決めできる。また、仮止めピンを基準としてシャフト下部の位置合わせをすれば、シャフト部を脛骨軸に平行に調節できる。よって、従来の方法と同様の位置決め精度を、簡単な手順で達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、最終的な器具の固定において位置ズレしにくく、また正確な位置決めしやすい骨切り用ガイド器具を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図7に示した本発明の骨切り用ガイド器具10は、大きく分けると、シャフト部20と、ロッド部30と、T型カットガイド部40とから構成されている。各構成部分について、以下に説明する。
【0012】
(T型カットガイド部40)
図1〜図5Bに示すように、T型カットガイド部40は、上部にガイド部45を、下部にガイド脚部42を備えている。
ガイド部45は、上下方向の厚みが薄く、上面から見たときに湾曲した形状をしており、また、前方向Aから後ろ方向Pに貫通したほぼ水平なスリット41を備えている。このスリット41の上下方向の寸法は、骨切りに使用する切刃が挿通できるように設定されている。ガイド脚部42は、斜め下方に延びており、ロッド部30の内部に挿入できるようになっている。ガイド脚部42の表面には雄ネジ47が形成されており、ロッド部30の調節ナット34の内面に形成された雌ネジと螺合している。なお、図5A及び図5Bに示すように、ガイド脚部42の側面には、ガイド脚部42の長手方向に沿って、断面コの字型の回転防止溝48が形成され、ロッド部30の内部には、この回転防止溝48と係合するピン(図示せず)が突出している。
【0013】
図4〜図5Bに、本発明に適したT型カットガイド部40の形態を詳しく例示する。
図4は、左脚用のT型カットガイド部40であり、前方向Aから見たときに、左側だけが長く延びた形態となっている。ガイド部45の下面側には、複数の突起(この図では3つ)が前後方向(AP方向)に延びており、その突起部分には、貫通孔43、44が形成されている。これらの貫通孔43、44は、T型カットガイド部40の位置が確定し、T型カットガイド部40を脛骨近位部に本固定する際に、固定ピンを挿通するのに使用される。このように一方向だけガイド部45が延びた形態は、最小侵襲手術(MIS)に適している。また、T型カットガイド部40の下部には、外面に雄ネジが形成されたガイド脚部42が取り付けられている。なお、ガイド部45の上面に記入された数値(3°)は、ガイド部45に形成されたスリット41の傾斜角度であり、前方向Aから後ろ方向Pに向かって3°下がっていること(後傾3°)を意味している。通常は、スリット41の後傾の異なる複数種類(通常は後傾0°(水平)〜後傾7°の範囲)のT型カットガイド部40が準備され、患者の状態によって適宜選択される。
【0014】
図5A及び図5Bは、右脚及び左脚のいずれにも使用できるT型カットガイド部40であり、前方向から見たときに、左右対称に延びた形態になっている。このT型カットガイド部40には、ガイド部45の下面に4つの貫通孔43、44が形成されている。また、図5Bに図示されているように、このT型カットガイド部40の後ろ側には、スリット41より上側が取り除かれて、段差46になっている。これにより、骨切りする際に、切刃の先端が脛骨近位部に接触する位置を目視で確認することができる。なお、骨切りするときには、切刃を段差の下側に沿わせることにより、所定の角度に合わせて正確に骨切りすることができる。
【0015】
(ロッド部30)
図1〜図3に示すように、ロッド部30は、斜め上方向に延びるロッド上部36と、ほぼ垂直下向きに延びてシャフト部20に挿入されるロッド下部31とから構成されている。
ロッド上部36には、後ろ方向Pに突出した仮止めピン50と、仮止めピン50と同軸上で前方向Aに突出したピン頭部51とを備えている。仮止めピン50は、骨切り用ガイド器具10を脛骨に固定する際には、初期段階で脛骨粗面基準位置に打ち込まれる。これにより、骨切り用ガイド基部10が正確に位置決めされるまで、骨切り用ガイド器具10の上部近傍を仮固定するものである。ピン頭部51は、仮止めピン50を打ち込む際にハンマーで叩くのに利用でき、また仮止めピン50を抜去する際にも利用できる。
【0016】
仮止めピン50とピン頭部51とは、外観上では1本のピン状になっているように見えるが、実際には図3に示すように実際には別体にされており、その間にガイド脚部42が挿通されている。すなわち、仮止めピン50を脛骨粗面基準位置に打ち込んだ後でも、ガイド脚部42は上下にスライド可能である。よって、仮止めピン50を固定する前はもちろん、固定した後であってもT型カットガイド部40を着脱可能である。よって、手術中にT型カットガイド部40を任意に交換することができる。
仮止めピン50の近傍には、ロッド貫通孔35が形成されている。このロッド貫通孔35は、ロッド部30及びシャフト部20の位置が確定し、ロッド部30を脛骨近位部に本固定する際に、固定ピンを挿通するのに使用される。ロッド貫通孔35の向きは、ほぼAP方向であるが、仮止めピン50が水平であるのに対して、水平からわずかに傾けている。これにより、仮止めピン50による仮固定と、固定ピンによる本固定との相乗効果で、ロッド部30の上側を脛骨近位端に確実に固定することができる。
【0017】
また、ロッド上部36には、調節ナット34が回転可能に取り付けられている。調節ナット34を回転すると、調節ナット34の内面の雌ネジに螺合したガイド脚部42が上昇又は下降し、これによりガイド部45の高さを調節するようになっている。
このとき、ガイド脚部42の回転防止溝48が、ロッド内部に突出したピンと係合しているので、ガイド部45はロッド30に対して上下方向にしか移動しないようになっている。よって、調節ナット34を回転させたときに、ガイド部45は回転せずに上下動することができる。
【0018】
ロッド下部31には、外周方向に沿って複数の刻み線38を形成するのが好ましい。本実施形態では、ロッド下部31はシャフト部20の上部にバネ付勢により固定されているが、この刻み線38が形成されていることにより、ロッド下部31の係止位置を段階的に位置決めしやすくなり、固定時の安定性も高くなる。
【0019】
(シャフト部20)
図1、図6A〜図7に示すように、シャフト部20は、垂直方向に延びるシャフト本体200と、シャフト本体200の下部に固定されたアンクルクランプ21とを備えている。シャフト本体200は、筒状体から形成することができる。またシャフト20の上端部には、ロッド下部31を固定するためのバネ付勢による係止手段を有することができる。
【0020】
バネ付勢による係止手段は、シャフトスリーブ29と、シャフトボタン32と、バネ33とから構成されている。図6Aに示すように、シャフト本体200の上端には、上方向と横方向とにそれぞれ1つずつ開口を有するシャフトスリーブ29が固定されている。シャフトスリーブの横方向の穴(ボタン挿入穴291)から、バネ33とシャフトボタン32とを順次挿入する。ボタン挿入穴291はシャフトスリーブ29を貫通していないので、バネ33はシャフトスリーブ29の内面とシャフトボタン32とに挟まれた状態になる。このシャフトボタン32には、上下方向に貫通するボタン貫通孔321が形成されている。ボタン貫通孔321の内壁には、孔の貫通方向と直交する向きの突出板(図示せず)が固定されている。ボタン貫通孔321の内径及びシャフトスリーブ29の上方向の開口(シャフト開口部292)の内径は、いずれもロッド下部31の外径よりも大きく形成されていて、シャフト開口部292とボタン貫通孔321とを一致させれば、ロッド下部31をシャフト開口部292からシャフト本体200の内部まで挿入することができる。シャフトボタン32は、バネ33によってボタン挿入穴291の外側方向に常にバネ付勢されているので、シャフト本体200に挿通されたロッド下部31は、シャフトボタン32のボタン貫通孔321の突出板とシャフト本体200の内面とに挟まれて、シャフト部20に係止されることになる。このとき、突出板がロッド下部31の刻み線38に引っかかるので、係止状態が安定する。
シャフト部20とロッド下部31との係止状態は、シャフトボタン32をボタン挿入穴291の内部方向に押し込むことで解除できる。シャフトボタン32を押し込んで、シャフト開口部292とボタン貫通孔321とを一致させれば、ロッド下部31は係止状態が解除されて、ロッド下部31を上下方向にスライドさせることができる。
【0021】
なお、ロッド下部31とシャフトスリーブ29とには、回転防止手段が備えられていて、ロッド下部31を上下にスライドさせるときに、ロッド30がシャフト部20に対して回転するのを防止している。まず、図6Aに図示されているように、ロッド下部31の側面には、ロッド下部31の軸方向に沿って1つ又は2つの回転防止面311が形成されている。よって、ロッド下部31の断面は、図6Bのように円形の一部を切り取ったような形状になっている(この例は、回転防止面311が2面形成されている)。そして、図6Bに図示されているように、シャフトスリーブ29のシャフト開口部292の内部には、回転防止ピン293が水平方向に挿通されている(この例は、1本の回転防止ピンが挿通されている)。回転防止ピン293によって、シャフト開口部292はロッド下部31の断面と同様な寸法形状になっている。よって、回転防止面311を回転防止ピン293に一致させてロッド下部31をシャフト開口部292に挿通すれば、ロッド下部31とシャフト開口部292とが回転するのを防止できる。
【0022】
このようなバネ付勢による固定は、係止解除が簡単であるので、位置調節を迅速に行うことができる。また、構造が簡単なので故障等の不具合が起こりにくい。また、ロッド下部31に形成された刻み線38と協働して、しっかりと固定することもできる。特に、切刃で骨切りするときに骨切り用ガイド器具に振動が伝わると、ネジにより固定した場合にはネジに弛みを生じる恐れがある。これに対して本実施の形態のような固定方法であれば、振動による弛みが起こらない点で有利である。
なお、これ以外の係止方法を用いて、ロッド下部31とシャフト本体20とを固定することもできる。
【0023】
図7に詳細に図示されているように、シャフト部20の下部に備えられたアンクルクランプ21は、L字状のクランプ基部211と、その両端に固定された2つのアーム212から構成されている。クランプ基部211とアーム212との結合部分にはバネが組み込まれており、アーム212がクランプ基部211の方向に閉じるようバネ付勢されている。アンクルクランプ21を足首に取り付けるには、まずアーム212を開いてクランプ基部211に接触させ、次いでアーム212を開放することにより自動的にアーム212が閉じて、クランプ基部211とアーム212との間に足首を挟み込むことができる。このようなアンクルクランプ21は、足首への固定作業を簡単に行える利点がある。なお、本実施の形態で示したアンクルクランプ21は一例であって、別の形態のアンクルクランプを使用することもできる。例えば、アーム212を備える代わりに、クランプ基部21の両端に掛け渡す別体のバネ部材を使用した形態のアンクルクランプ21を使用することもでき、足首が細い等により図7のようなアンクルクランプ21では固定しにくい患者にも適用しやすい。
【0024】
本実施の形態では、シャフト本体200とアンクルクランプ21との間に、内外側方向調節手段を備えている。
内外側方向調節手段とは、内側方向M及び外側方向Lの位置合わせに使用されるものである。図7に図示した内外側方向調節手段は、クランプ基部211の一片に沿って形成されたディスタルプレート22と、そのディスタルプレート22を受容するスライドレール23と、ディスタルノブ26とから構成されている。ディスタルプレート22は、断面逆台形のスライド部分を有しており、逆台形に対応する形状のスライドレール23にスライド部分を挿通することにより、内外側方向(ML方向)スライド可能に係合している。
スライドレール23には、中空のディスタルロッド24の一端が直交して取り付けられている。そして、ディスタルロッド24の中空部分と連通するように、スライドレール23に穴が形成されている。ディスタルロッド24の中空部分とスライドレール23の穴とには、ディスタルノブ26のポール部材262を挿通することができる。このポール部材262の一端にはディスタルノブ26の把持部分261が取着されている。ポール部材262の他端には、外面に雄ネジ263が形成されおてり、ディスタルロッド24の内面形成された雌ネジに螺合される。ディスタルロッド24の中空部分にポール部材26を挿入し、ディスタルノブ26の把持部分261を所定方向に回転させると、ポール部材262の雄ネジ263がディスタルロッド24の内部の雌ネジに螺合して、ポール部材262がディスタルロッド24の中を移動して、ポール部材262の他端がスライドレール23の内部に突出する。ポール部材262の他端は、まず、スライドレール23内に挿通されているディスタルプレート22のスライド部分に接触し、さらに、ディスタルプレート22をクランプ基部21方向に押しつける。このとき、スライド部分が逆台形であるので、ディスタルプレート22はスライドレール23から脱離せず、スライドレール23内に固定される。
【0025】
この内外側方向調節手段を使用するには、まずシャフト部20の下部をアンクルクランプ21で固定し、その後にスライドレール23をディスタルプレート22に対してML方向にスライドさせて、スライドレール23が所望の位置にきたときに、ディスタルノブ26を回転させてよりディスタルプレート22をスライドレール23に固定する。
内外側方向調節手段を備えることにより、アンクルクランプ21で患者の足首に固定した後でも、骨切り用ガイド器具10のML方向を調節できるようになる。
【0026】
本実施の形態では、さらに、シャフト本体200とアンクルクランプ21との間に前後方向調節手段も備えている。
前後方向調節手段とは、前方向A及び後ろ方向Pの位置合わせに使用されるものである。図7に図示した前後方向調節手段は、ディスタルスリーブ25と、ディスタルボタン27と、バネ28とから構成されている。前後方向調節手段の構造は、シャフトの係止手段とほぼ同様である。シャフト本体200の下端に固定されたディスタルスリーブ25は、ML方向に開口した穴(ボタン挿入穴251)と、AP方向に貫通した孔(ロッド挿通孔252)を有している。ボタン挿入穴251とロッド挿通孔252とは、ディスタルスリーブ25内部で連通している。ボタン挿入穴251には、バネ28とディスタルボタン27とを順次挿入する。ボタン挿入穴251はディスタルスリーブ25を貫通していないので、バネ28はディスタルスリーブ25の内面とディスタルボタン27とに挟まれた状態になる。また、ディスタルボタン27には、AP方向に挿通するボタン貫通孔271が形成されており、ボタン貫通孔271の内壁には、孔の貫通方向と直交する向きの突出板(図示せず)が固定されている。ディスタルスリーブ25のロッド挿通孔252の内径及びボタン貫通孔271の内径は、いずれもディスタルロッド24の外径よりも大きく形成されている。よって、ロッド挿通孔252とボタン貫通孔271とを一致させれば、ディスタルロッド24をロッド挿通孔252に挿通することができる。
【0027】
ディスタルボタン27は、バネ28によってボタン挿入穴251の外側方向に常にバネ付勢されているので、ディスタルロッド24は、ディスタルボタン27のボタン貫通孔271の突出板とディスタルスリーブ25のロッド挿通孔252の内面とに挟まれて、ディスタルスリーブ25に係止されることになる。ディスタルロッド24には、外周方向に沿って複数の刻み線242を形成するのが好ましい。本実施形態では、ディスタルロッド24はディスタルスリーブ25にバネ付勢により固定されているが、この刻み線242に突出板が引っかかるようになり、よりディスタルロッド24の係止位置を段階的に位置決めしやすくなり、また係止状態が安定する。
ディスタルロッド24とディスタルスリーブ25との係止状態は、ディスタルボタン27をボタン挿入穴251の内部方向に押し込むことで解除できる。ディスタルボタン27を押し込んで、ロッド挿通孔252とボタン貫通孔271とを一致させれば、ディスタルロッド24は係止状態が解除されて、ディスタルスリーブ25をAP方向にスライドさせることができる。
前後方向調節手段を備えることにより、アンクルクランプ21で患者の足首に固定した後でも、骨切り用ガイド器具10のAP方向を調節できるようになる。
【0028】
なお、ディスタルロッド24とディスタルスリーブ25とには、回転防止手段が備えられていて、ディスタルロッド24をAP方向にスライドさせるときに、ディスタルスリーブ25がディスタルロッド24に対して回転するのを防止している。まず、図7に図示されているように、ディスタルロッド24の側面には、ディスタルロッド24の軸方向に沿って回転防止面241が形成されている。よって、ディスタルロッド24の断面は、円形の一部を切り取ったような形状になっている。そして、ディスタルスリーブ25のロッド挿通孔252の内部には、回転防止ピン253がML方向に挿通されている。回転防止ピン253によって、ロッド挿通孔252はディスタルロッド24の断面と同様な寸法形状になっている。よって、回転防止面241を回転防止ピン253に一致させてディスタルロッド24をロッド挿通孔252に挿通すれば、ディスタルロッド24とディスタルスリーブ25とが回転するのを防止できる。
【0029】
本実施の形態では、内外側方向調節手段と前後方向調節手段とは、異なる構造を有している。これらは、1つの例示に過ぎず、実施の形態に示す手段以外でも、形成しやすさ、操作しやすさ、調節精度等を勘案して、周知の手段を任意で適用することができる。
【0030】
骨切り用ガイド器具10の各部品は、医療用金属に認定された金属から形成されて、滅菌処理した状態で密封され、手術中に開封して使用される。
【0031】
本実施の形態の骨切り用ガイド器具10の使用方法について、図8〜図10を参照しながら説明する。
【0032】
(1.骨切り用ガイド器具10の組立)
図1のように骨切り用ガイド器具10を組立て、ロッド部30の傾斜方向と、アンクルクランプ21の方向と、仮止めピン50の突出方向が、すべて後ろ方向Pに配置されていることを確認する。また、T型カットガイド部40は、ガイド部45の湾曲が前方向Aに凸となるように位置決めして、ロッド部30に螺合する。なお、手術を行う際には、既に組み立てられた状態で、滅菌封入されて提供されるのが好ましい。
【0033】
(2.骨切り用ガイド器具10の脚部への取り付け)
骨切り用ガイド10は、脛部の前側に固定されて、前方向Aから観察したときに、骨切り用ガイド10が脛骨軸と一致するように、且つ横方向(外側方向L又は内側方向M)から観察したときに、シャフト部20が脛骨軸と平行になるように、正確に位置決めしなくてはならない。ここでは、おおよその位置決め方法を述べる。
外科的手法により脛骨近位端を露出させた後、図8のように、骨切り用ガイド器具10のアンクルクランプ21を前方向A(脛側)から患者の足首に固定する。その後、シャフトボタン32を押してロッド部30を上下方向にスライドさせて、仮止めピン50の位置が脛骨粗面基準位置の高さに一致させる。そして、図9及び図10に示すように、脛骨60の脛骨粗面61に仮止めピン50を打ち込む。このとき、仮止めピン50を打ち込む脛骨粗面基準位置は、図9のように、上側から脛骨粗面61を観察し、脛骨粗面61のML方向の長さを3等分してM方向から1/3の位置である。この脛骨粗面基準位置から後ろ方向Pに真っ直ぐ進むと脛骨軸に達するので、前方向Aから脛骨軸を確認するときは、この脛骨粗面基準位置が利用される。脛骨粗面基準位置に仮止めピンを打ち込むことにより、前側から観察したときに、仮止めピン50の近傍の位置を脛骨軸に一致させることができる。
【0034】
(3.骨切り用ガイド器具10の正確な位置決め)
骨切り用ガイド器具10と脛部とを前方向A及び横方向から繰り返し観察して、骨切り用ガイド器具10を正確に位置決めする。主に、シャフト部20を正確に位置決めすることにより、骨切り用ガイド器具10をほぼ適切な位置に配置することができる。このとき、骨切り用ガイド器具10の上側は、仮止めピン50によって既に正確な位置に仮固定されているので、調整が必要なのは、骨切り用ガイド器具10の下部のみ、すなわちシャフト部20の下部のみとなる。
ML方向の位置決めには、前方向Aからシャフト部20を観察する。シャフト部20が脛骨軸とずれている場合には、ディスタルノブ26の把持部分261を回転させてディスタルプレート22の固定を緩め、スライドレール23をML方向にスライドさせる。シャフト部20の下部が脛骨軸と一致したら、ディスタルノブ26によりディスタルプレート22を固定する。
AP方向の位置決めには、横方向からシャフトを観察する。シャフト部20が脛骨軸と平行になっていない場合には、ディスタルボタン27を押してディスタルロッド24とディスタルスリーブ25との係止を解除したまま、ディスタルスリーブ25をAP方向にスライドさせる。シャフト部20が脛骨軸と平行になったらディスタルボタン27を離して、ディスタルスリーブ25をディスタルロッド24に係止させる。
【0035】
(4.ロッド部30の上部の本固定)
図8〜図10のように、ロッド部30のロッド貫通孔35に固定ピン53を挿通して、脛骨粗面61に打ち込むことにより、ロッド部30を脛骨60に固定する。図10から分かるように、固定ピン53は仮止めピン50に対してわずかに傾いている。このような角度で固定ピン53を打ち込むと、骨切り用ガイド器具10の回転を防止できるだけでなく、骨切り用ガイド器具10を脛骨60から引き離す方向の力がかかっても、固定ピン53と仮止めピン50とが脱落しなくなる。また、図9に図示されているように、上方向から固定ピン53と仮止めピン50とを観察すると、ほぼ平行であることがわかる。このように縦方向に角度をつけて固定すると、縦方向の揺動を防止するのに適している。
固定ピン53の打ち込みにより、骨切り用ガイド器具10は脛骨に確実に固定される。
【0036】
(5.T型カットガイド部40の高さ調節)
調節ナット34を回転させて、T型カットガイド部40の高さを調節する。このとき、図10のように、脛骨近位端62の骨切り予定面A−Aの延長線上にT型カットガイド部40のスリット41を位置させることが重要である。調節ナット34を用いることにより、T型カットガイド部40の高さを微調節できるので、骨切り量を正確に設定することができる。なお、骨切り予定面A−Aが後傾している場合には、その後傾角度に合ったスリット41を有するT型カットガイド部40を選択する。
【0037】
(6.T型カットガイド部40の本固定)
図8〜図10のように、T型カットガイド部40の貫通孔43、44に固定ピン54、55を挿通して、脛骨近位端62に打ち込む。これにより、T型カットガイド部40は、脛骨60に完全に固定される。図9から分かるように、固定ピン54と固定ピン55とは平行ではなく、わずかに傾いている。これにより、T型カットガイド部40は、脛骨近位端62に確実に固定される。なお、図10のように横方向から観察すると、固定ピン54、55は平行に脛骨60に固定されている。このように横方向に角度をつけて固定すると、横方向の揺動を防止するのに適している。
【0038】
(7.脛骨近位端62の骨切り)
T型カットガイド部40のスリット41に、切刃を挿入して骨切り予定面A−Aに沿って脛骨近位端62を骨切りする。骨切り量が不足した場合には、固定ピン54、55を抜去し、調節ナット34を回転させてT型カットガイド部40を下げる。再度T型カットガイド部40を固定ピン54、55で固定し、切刃で骨切りすることができる。
骨切り時には、T型カットガイド部40は脛骨60に確実に固定されているので、切刃の振動によってスリット41の傾きが変わることや、スリット41が設定位置からずれることはなく、骨切り予定面A−Aに沿って骨切りすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る骨切り用ガイド器具の斜視図である。
【図2】本発明に係る骨切り用ガイド器具の部分拡大斜視図である。
【図3】本発明に係る骨切り用ガイド器具の部分断面図である。
【図4】本発明の骨切り用ガイド器具に適したT型カットガイド部の斜視図である。
【図5A】本発明の骨切り用ガイド器具に適した別のT型カットガイド部の正面図である。
【図5B】本発明の骨切り用ガイド器具に適した別のT型カットガイド部の斜視図である。
【図6A】本発明に係る骨切り用ガイド器具の部分分解図である。
【図6B】本発明に係る骨切り用ガイド器具のシャフトスリーブの上面図である。
【図7】本発明に係る骨切り用ガイド器具の部分分解図である。
【図8】本発明に係る骨切り用ガイド器具を左脚に固定した様子を示す概略斜視図である。
【図9】本発明に係る骨切り用ガイド器具を左脚に固定した様子を示す概略上面図である。
【図10】本発明に係る骨切り用ガイド器具を左脚に固定した様子を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 骨切り用ガイド器具、 20 シャフト部、 21 アンクルクランプ、 22 ディスタルプレート、 23 スライドレール、 24 ディスタルロッド、 25 ディスタルスリーブ、 26 ディスタルノブ、 27 ディスタルボタン、 28 バネ、 29 シャフトスリーブ、 30 ロッド、 31 ロッド下部、 32 シャフトボタン、 33 バネ、 34 調節ナット、 35 ロッド貫通孔、 36 ロッド上部、 40 T型カットガイド部、 41 スリット、 42 ガイド脚部、 43、44 貫通孔、 45 ガイド部、 50 仮止めピン、 51 ピン頭部、 53、54、55 固定ピン、 60 脛骨、 61 脛骨粗面、 62 脛骨近位端。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工膝関節を設置する前に、脛骨近位端を正確に骨切りするのに使用される骨切り用ガイド器具に関する。
【背景技術】
【0002】
人工膝関節を設置するためには、膝関節を構成する脛骨近位部と大腿骨近位部とを整形(骨切り)する必要がある。特に、脛骨近位部は、所定の傾斜を有する平面となるように、正確に骨切りしなくてはならない。また、骨切りする量も、厳密に調整しなくてはならない。骨切りの際の平面の傾斜や骨切り量が適切でないと、人工膝関節を設置した後に、膝関節の違和感や、膝関節の偏減りなどの原因となる。
【0003】
従来の脛骨近位端の骨切りガイド器具では、脛骨上部に固定するアンカー部材と、アンカー部材の上部に固定されスロットを備えた器具部分とを備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。このガイド器具は、アンカー部材を脛骨の中程に固定し、次いでコンピュータイメージガイダンスを用いて器具部分を正確に位置決めし、そして器具部分を脛骨の近位部にピンで固定する。器具部分のスロットにより切刃をガイドし、脛骨近位端を所定の傾斜を有する平面に骨切りする。このガイド器具では、一連の作業の間、アンカー部材と器具部分との間に備えられたフォーク状構造体を脛骨に接触させて、ガイド器具の安定性を高めている。
【0004】
また、別の脛骨近位部の骨切り用器具として脛骨ミリング案内装置が知られており、脛骨近位端をエンドミルにより平坦に切削するのに使用されている(例えば特許文献2参照)。この脛骨ミリング案内装置では、脛骨軸に沿って骨髄外に配置される棒状の整合案内と、整合案内の上部に取り付けられた基準案内と、整合案内の下部に固定されたローワーメンバーとを備えている。使用時には、整合案内は、下部をローワーメンバーによりくるぶしに固定され、上部を基準案内により所定位置に調整された後、整合案内の上部近傍の穴に挿通したボーンスクリューにより脛骨に固定される。そして、基準案内が取り外され、代わりにミリングベースアセンブリ及びミリングテンプレートが固定される。ミリングテンプレートは、脛骨近位端の関節面に配置されて、テンプレートの溝にそってエンドミルを操作することにより、脛骨近位端を切削する。
【特許文献1】特開2004−202239号公報
【特許文献2】特開平8−56956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
骨切りガイド器具では、器具部分を脛骨の近位部にピン固定するときに、ガイド器具がアンカー部材のみで固定されているので、ピンの打ち込みの際の衝撃によって器具部分の位置がずれる可能性がある。また、脛骨ミリング案内装置でも、整合案内の上部をボーンスクリューにより固定するときに、整合案内がローワーメンバーによりくるぶしに固定されているだけなので、簡単に位置ズレしやすい。
器具部分や整合案内の位置がずれると、再度位置合わせからやり直す必要があり、手術時間の延長につながる恐れがある。
また、骨切りガイド器具や脛骨ミリング案内装置では、正確な位置決めの手順が複雑であるので、熟練した術者でなければ手術時間が長くなりやすい傾向にあった。
【0006】
そこで、本発明は、最終的な器具の固定において位置ズレしにくく、また正確な位置決めがしやすい骨切り用ガイド器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の骨切り用ガイド器具は、下部がアンクルクランプにより足首に固定され、長手方向に延びる軸が脛骨軸と平行にされるシャフト部と、脛骨近位端の骨切り面をガイドするスリットを有するガイド部と該ガイド部から下方に延びるガイド脚部とを備えたT型カットガイド部と、前記シャフト部の上部に連係し、斜め上方に延び、前記T型カットガイド部のガイド脚部を受けて前記T型カットガイド部を昇降調節する機能を有する前記ロッド部と、を備えており、ロッド部上端近傍に、脛骨軸の軸合わせの基準位置に仮止めするための仮止めピンが突出していることを特徴とする。
【0008】
骨切り用ガイド器具は脛部の前方に取り付けられるので、シャフト部の内外側方向の位置合わせの基準点としては、脛骨の前面にある脛骨粗面の内側より1/3の位置(脛骨粗面基準位置と称する)、又は第二中足指が利用される。本発明では、脛骨粗面基準位置に仮止めピンを打ち込むことにより、シャフト部の上部を仮固定できる。つまり、骨切り用ガイド器具の固定初期から、シャフト部の上部が脛骨に、下部が足首に固定されることになる。よって、シャフト部が脛骨軸に対して平行に調節し、T型カットガイド部の高さを決定し、そしてT型カットガイド部をピン等で脛骨に固定する時も、シャフト部が位置ズレすることは殆どない。
【0009】
また、仮止めピンを脛骨粗面基準位置に打ち込むことにより、シャフト上部の内外側方向の位置をほぼ正確に位置決めできる。また、仮止めピンを基準としてシャフト下部の位置合わせをすれば、シャフト部を脛骨軸に平行に調節できる。よって、従来の方法と同様の位置決め精度を、簡単な手順で達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、最終的な器具の固定において位置ズレしにくく、また正確な位置決めしやすい骨切り用ガイド器具を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図7に示した本発明の骨切り用ガイド器具10は、大きく分けると、シャフト部20と、ロッド部30と、T型カットガイド部40とから構成されている。各構成部分について、以下に説明する。
【0012】
(T型カットガイド部40)
図1〜図5Bに示すように、T型カットガイド部40は、上部にガイド部45を、下部にガイド脚部42を備えている。
ガイド部45は、上下方向の厚みが薄く、上面から見たときに湾曲した形状をしており、また、前方向Aから後ろ方向Pに貫通したほぼ水平なスリット41を備えている。このスリット41の上下方向の寸法は、骨切りに使用する切刃が挿通できるように設定されている。ガイド脚部42は、斜め下方に延びており、ロッド部30の内部に挿入できるようになっている。ガイド脚部42の表面には雄ネジ47が形成されており、ロッド部30の調節ナット34の内面に形成された雌ネジと螺合している。なお、図5A及び図5Bに示すように、ガイド脚部42の側面には、ガイド脚部42の長手方向に沿って、断面コの字型の回転防止溝48が形成され、ロッド部30の内部には、この回転防止溝48と係合するピン(図示せず)が突出している。
【0013】
図4〜図5Bに、本発明に適したT型カットガイド部40の形態を詳しく例示する。
図4は、左脚用のT型カットガイド部40であり、前方向Aから見たときに、左側だけが長く延びた形態となっている。ガイド部45の下面側には、複数の突起(この図では3つ)が前後方向(AP方向)に延びており、その突起部分には、貫通孔43、44が形成されている。これらの貫通孔43、44は、T型カットガイド部40の位置が確定し、T型カットガイド部40を脛骨近位部に本固定する際に、固定ピンを挿通するのに使用される。このように一方向だけガイド部45が延びた形態は、最小侵襲手術(MIS)に適している。また、T型カットガイド部40の下部には、外面に雄ネジが形成されたガイド脚部42が取り付けられている。なお、ガイド部45の上面に記入された数値(3°)は、ガイド部45に形成されたスリット41の傾斜角度であり、前方向Aから後ろ方向Pに向かって3°下がっていること(後傾3°)を意味している。通常は、スリット41の後傾の異なる複数種類(通常は後傾0°(水平)〜後傾7°の範囲)のT型カットガイド部40が準備され、患者の状態によって適宜選択される。
【0014】
図5A及び図5Bは、右脚及び左脚のいずれにも使用できるT型カットガイド部40であり、前方向から見たときに、左右対称に延びた形態になっている。このT型カットガイド部40には、ガイド部45の下面に4つの貫通孔43、44が形成されている。また、図5Bに図示されているように、このT型カットガイド部40の後ろ側には、スリット41より上側が取り除かれて、段差46になっている。これにより、骨切りする際に、切刃の先端が脛骨近位部に接触する位置を目視で確認することができる。なお、骨切りするときには、切刃を段差の下側に沿わせることにより、所定の角度に合わせて正確に骨切りすることができる。
【0015】
(ロッド部30)
図1〜図3に示すように、ロッド部30は、斜め上方向に延びるロッド上部36と、ほぼ垂直下向きに延びてシャフト部20に挿入されるロッド下部31とから構成されている。
ロッド上部36には、後ろ方向Pに突出した仮止めピン50と、仮止めピン50と同軸上で前方向Aに突出したピン頭部51とを備えている。仮止めピン50は、骨切り用ガイド器具10を脛骨に固定する際には、初期段階で脛骨粗面基準位置に打ち込まれる。これにより、骨切り用ガイド基部10が正確に位置決めされるまで、骨切り用ガイド器具10の上部近傍を仮固定するものである。ピン頭部51は、仮止めピン50を打ち込む際にハンマーで叩くのに利用でき、また仮止めピン50を抜去する際にも利用できる。
【0016】
仮止めピン50とピン頭部51とは、外観上では1本のピン状になっているように見えるが、実際には図3に示すように実際には別体にされており、その間にガイド脚部42が挿通されている。すなわち、仮止めピン50を脛骨粗面基準位置に打ち込んだ後でも、ガイド脚部42は上下にスライド可能である。よって、仮止めピン50を固定する前はもちろん、固定した後であってもT型カットガイド部40を着脱可能である。よって、手術中にT型カットガイド部40を任意に交換することができる。
仮止めピン50の近傍には、ロッド貫通孔35が形成されている。このロッド貫通孔35は、ロッド部30及びシャフト部20の位置が確定し、ロッド部30を脛骨近位部に本固定する際に、固定ピンを挿通するのに使用される。ロッド貫通孔35の向きは、ほぼAP方向であるが、仮止めピン50が水平であるのに対して、水平からわずかに傾けている。これにより、仮止めピン50による仮固定と、固定ピンによる本固定との相乗効果で、ロッド部30の上側を脛骨近位端に確実に固定することができる。
【0017】
また、ロッド上部36には、調節ナット34が回転可能に取り付けられている。調節ナット34を回転すると、調節ナット34の内面の雌ネジに螺合したガイド脚部42が上昇又は下降し、これによりガイド部45の高さを調節するようになっている。
このとき、ガイド脚部42の回転防止溝48が、ロッド内部に突出したピンと係合しているので、ガイド部45はロッド30に対して上下方向にしか移動しないようになっている。よって、調節ナット34を回転させたときに、ガイド部45は回転せずに上下動することができる。
【0018】
ロッド下部31には、外周方向に沿って複数の刻み線38を形成するのが好ましい。本実施形態では、ロッド下部31はシャフト部20の上部にバネ付勢により固定されているが、この刻み線38が形成されていることにより、ロッド下部31の係止位置を段階的に位置決めしやすくなり、固定時の安定性も高くなる。
【0019】
(シャフト部20)
図1、図6A〜図7に示すように、シャフト部20は、垂直方向に延びるシャフト本体200と、シャフト本体200の下部に固定されたアンクルクランプ21とを備えている。シャフト本体200は、筒状体から形成することができる。またシャフト20の上端部には、ロッド下部31を固定するためのバネ付勢による係止手段を有することができる。
【0020】
バネ付勢による係止手段は、シャフトスリーブ29と、シャフトボタン32と、バネ33とから構成されている。図6Aに示すように、シャフト本体200の上端には、上方向と横方向とにそれぞれ1つずつ開口を有するシャフトスリーブ29が固定されている。シャフトスリーブの横方向の穴(ボタン挿入穴291)から、バネ33とシャフトボタン32とを順次挿入する。ボタン挿入穴291はシャフトスリーブ29を貫通していないので、バネ33はシャフトスリーブ29の内面とシャフトボタン32とに挟まれた状態になる。このシャフトボタン32には、上下方向に貫通するボタン貫通孔321が形成されている。ボタン貫通孔321の内壁には、孔の貫通方向と直交する向きの突出板(図示せず)が固定されている。ボタン貫通孔321の内径及びシャフトスリーブ29の上方向の開口(シャフト開口部292)の内径は、いずれもロッド下部31の外径よりも大きく形成されていて、シャフト開口部292とボタン貫通孔321とを一致させれば、ロッド下部31をシャフト開口部292からシャフト本体200の内部まで挿入することができる。シャフトボタン32は、バネ33によってボタン挿入穴291の外側方向に常にバネ付勢されているので、シャフト本体200に挿通されたロッド下部31は、シャフトボタン32のボタン貫通孔321の突出板とシャフト本体200の内面とに挟まれて、シャフト部20に係止されることになる。このとき、突出板がロッド下部31の刻み線38に引っかかるので、係止状態が安定する。
シャフト部20とロッド下部31との係止状態は、シャフトボタン32をボタン挿入穴291の内部方向に押し込むことで解除できる。シャフトボタン32を押し込んで、シャフト開口部292とボタン貫通孔321とを一致させれば、ロッド下部31は係止状態が解除されて、ロッド下部31を上下方向にスライドさせることができる。
【0021】
なお、ロッド下部31とシャフトスリーブ29とには、回転防止手段が備えられていて、ロッド下部31を上下にスライドさせるときに、ロッド30がシャフト部20に対して回転するのを防止している。まず、図6Aに図示されているように、ロッド下部31の側面には、ロッド下部31の軸方向に沿って1つ又は2つの回転防止面311が形成されている。よって、ロッド下部31の断面は、図6Bのように円形の一部を切り取ったような形状になっている(この例は、回転防止面311が2面形成されている)。そして、図6Bに図示されているように、シャフトスリーブ29のシャフト開口部292の内部には、回転防止ピン293が水平方向に挿通されている(この例は、1本の回転防止ピンが挿通されている)。回転防止ピン293によって、シャフト開口部292はロッド下部31の断面と同様な寸法形状になっている。よって、回転防止面311を回転防止ピン293に一致させてロッド下部31をシャフト開口部292に挿通すれば、ロッド下部31とシャフト開口部292とが回転するのを防止できる。
【0022】
このようなバネ付勢による固定は、係止解除が簡単であるので、位置調節を迅速に行うことができる。また、構造が簡単なので故障等の不具合が起こりにくい。また、ロッド下部31に形成された刻み線38と協働して、しっかりと固定することもできる。特に、切刃で骨切りするときに骨切り用ガイド器具に振動が伝わると、ネジにより固定した場合にはネジに弛みを生じる恐れがある。これに対して本実施の形態のような固定方法であれば、振動による弛みが起こらない点で有利である。
なお、これ以外の係止方法を用いて、ロッド下部31とシャフト本体20とを固定することもできる。
【0023】
図7に詳細に図示されているように、シャフト部20の下部に備えられたアンクルクランプ21は、L字状のクランプ基部211と、その両端に固定された2つのアーム212から構成されている。クランプ基部211とアーム212との結合部分にはバネが組み込まれており、アーム212がクランプ基部211の方向に閉じるようバネ付勢されている。アンクルクランプ21を足首に取り付けるには、まずアーム212を開いてクランプ基部211に接触させ、次いでアーム212を開放することにより自動的にアーム212が閉じて、クランプ基部211とアーム212との間に足首を挟み込むことができる。このようなアンクルクランプ21は、足首への固定作業を簡単に行える利点がある。なお、本実施の形態で示したアンクルクランプ21は一例であって、別の形態のアンクルクランプを使用することもできる。例えば、アーム212を備える代わりに、クランプ基部21の両端に掛け渡す別体のバネ部材を使用した形態のアンクルクランプ21を使用することもでき、足首が細い等により図7のようなアンクルクランプ21では固定しにくい患者にも適用しやすい。
【0024】
本実施の形態では、シャフト本体200とアンクルクランプ21との間に、内外側方向調節手段を備えている。
内外側方向調節手段とは、内側方向M及び外側方向Lの位置合わせに使用されるものである。図7に図示した内外側方向調節手段は、クランプ基部211の一片に沿って形成されたディスタルプレート22と、そのディスタルプレート22を受容するスライドレール23と、ディスタルノブ26とから構成されている。ディスタルプレート22は、断面逆台形のスライド部分を有しており、逆台形に対応する形状のスライドレール23にスライド部分を挿通することにより、内外側方向(ML方向)スライド可能に係合している。
スライドレール23には、中空のディスタルロッド24の一端が直交して取り付けられている。そして、ディスタルロッド24の中空部分と連通するように、スライドレール23に穴が形成されている。ディスタルロッド24の中空部分とスライドレール23の穴とには、ディスタルノブ26のポール部材262を挿通することができる。このポール部材262の一端にはディスタルノブ26の把持部分261が取着されている。ポール部材262の他端には、外面に雄ネジ263が形成されおてり、ディスタルロッド24の内面形成された雌ネジに螺合される。ディスタルロッド24の中空部分にポール部材26を挿入し、ディスタルノブ26の把持部分261を所定方向に回転させると、ポール部材262の雄ネジ263がディスタルロッド24の内部の雌ネジに螺合して、ポール部材262がディスタルロッド24の中を移動して、ポール部材262の他端がスライドレール23の内部に突出する。ポール部材262の他端は、まず、スライドレール23内に挿通されているディスタルプレート22のスライド部分に接触し、さらに、ディスタルプレート22をクランプ基部21方向に押しつける。このとき、スライド部分が逆台形であるので、ディスタルプレート22はスライドレール23から脱離せず、スライドレール23内に固定される。
【0025】
この内外側方向調節手段を使用するには、まずシャフト部20の下部をアンクルクランプ21で固定し、その後にスライドレール23をディスタルプレート22に対してML方向にスライドさせて、スライドレール23が所望の位置にきたときに、ディスタルノブ26を回転させてよりディスタルプレート22をスライドレール23に固定する。
内外側方向調節手段を備えることにより、アンクルクランプ21で患者の足首に固定した後でも、骨切り用ガイド器具10のML方向を調節できるようになる。
【0026】
本実施の形態では、さらに、シャフト本体200とアンクルクランプ21との間に前後方向調節手段も備えている。
前後方向調節手段とは、前方向A及び後ろ方向Pの位置合わせに使用されるものである。図7に図示した前後方向調節手段は、ディスタルスリーブ25と、ディスタルボタン27と、バネ28とから構成されている。前後方向調節手段の構造は、シャフトの係止手段とほぼ同様である。シャフト本体200の下端に固定されたディスタルスリーブ25は、ML方向に開口した穴(ボタン挿入穴251)と、AP方向に貫通した孔(ロッド挿通孔252)を有している。ボタン挿入穴251とロッド挿通孔252とは、ディスタルスリーブ25内部で連通している。ボタン挿入穴251には、バネ28とディスタルボタン27とを順次挿入する。ボタン挿入穴251はディスタルスリーブ25を貫通していないので、バネ28はディスタルスリーブ25の内面とディスタルボタン27とに挟まれた状態になる。また、ディスタルボタン27には、AP方向に挿通するボタン貫通孔271が形成されており、ボタン貫通孔271の内壁には、孔の貫通方向と直交する向きの突出板(図示せず)が固定されている。ディスタルスリーブ25のロッド挿通孔252の内径及びボタン貫通孔271の内径は、いずれもディスタルロッド24の外径よりも大きく形成されている。よって、ロッド挿通孔252とボタン貫通孔271とを一致させれば、ディスタルロッド24をロッド挿通孔252に挿通することができる。
【0027】
ディスタルボタン27は、バネ28によってボタン挿入穴251の外側方向に常にバネ付勢されているので、ディスタルロッド24は、ディスタルボタン27のボタン貫通孔271の突出板とディスタルスリーブ25のロッド挿通孔252の内面とに挟まれて、ディスタルスリーブ25に係止されることになる。ディスタルロッド24には、外周方向に沿って複数の刻み線242を形成するのが好ましい。本実施形態では、ディスタルロッド24はディスタルスリーブ25にバネ付勢により固定されているが、この刻み線242に突出板が引っかかるようになり、よりディスタルロッド24の係止位置を段階的に位置決めしやすくなり、また係止状態が安定する。
ディスタルロッド24とディスタルスリーブ25との係止状態は、ディスタルボタン27をボタン挿入穴251の内部方向に押し込むことで解除できる。ディスタルボタン27を押し込んで、ロッド挿通孔252とボタン貫通孔271とを一致させれば、ディスタルロッド24は係止状態が解除されて、ディスタルスリーブ25をAP方向にスライドさせることができる。
前後方向調節手段を備えることにより、アンクルクランプ21で患者の足首に固定した後でも、骨切り用ガイド器具10のAP方向を調節できるようになる。
【0028】
なお、ディスタルロッド24とディスタルスリーブ25とには、回転防止手段が備えられていて、ディスタルロッド24をAP方向にスライドさせるときに、ディスタルスリーブ25がディスタルロッド24に対して回転するのを防止している。まず、図7に図示されているように、ディスタルロッド24の側面には、ディスタルロッド24の軸方向に沿って回転防止面241が形成されている。よって、ディスタルロッド24の断面は、円形の一部を切り取ったような形状になっている。そして、ディスタルスリーブ25のロッド挿通孔252の内部には、回転防止ピン253がML方向に挿通されている。回転防止ピン253によって、ロッド挿通孔252はディスタルロッド24の断面と同様な寸法形状になっている。よって、回転防止面241を回転防止ピン253に一致させてディスタルロッド24をロッド挿通孔252に挿通すれば、ディスタルロッド24とディスタルスリーブ25とが回転するのを防止できる。
【0029】
本実施の形態では、内外側方向調節手段と前後方向調節手段とは、異なる構造を有している。これらは、1つの例示に過ぎず、実施の形態に示す手段以外でも、形成しやすさ、操作しやすさ、調節精度等を勘案して、周知の手段を任意で適用することができる。
【0030】
骨切り用ガイド器具10の各部品は、医療用金属に認定された金属から形成されて、滅菌処理した状態で密封され、手術中に開封して使用される。
【0031】
本実施の形態の骨切り用ガイド器具10の使用方法について、図8〜図10を参照しながら説明する。
【0032】
(1.骨切り用ガイド器具10の組立)
図1のように骨切り用ガイド器具10を組立て、ロッド部30の傾斜方向と、アンクルクランプ21の方向と、仮止めピン50の突出方向が、すべて後ろ方向Pに配置されていることを確認する。また、T型カットガイド部40は、ガイド部45の湾曲が前方向Aに凸となるように位置決めして、ロッド部30に螺合する。なお、手術を行う際には、既に組み立てられた状態で、滅菌封入されて提供されるのが好ましい。
【0033】
(2.骨切り用ガイド器具10の脚部への取り付け)
骨切り用ガイド10は、脛部の前側に固定されて、前方向Aから観察したときに、骨切り用ガイド10が脛骨軸と一致するように、且つ横方向(外側方向L又は内側方向M)から観察したときに、シャフト部20が脛骨軸と平行になるように、正確に位置決めしなくてはならない。ここでは、おおよその位置決め方法を述べる。
外科的手法により脛骨近位端を露出させた後、図8のように、骨切り用ガイド器具10のアンクルクランプ21を前方向A(脛側)から患者の足首に固定する。その後、シャフトボタン32を押してロッド部30を上下方向にスライドさせて、仮止めピン50の位置が脛骨粗面基準位置の高さに一致させる。そして、図9及び図10に示すように、脛骨60の脛骨粗面61に仮止めピン50を打ち込む。このとき、仮止めピン50を打ち込む脛骨粗面基準位置は、図9のように、上側から脛骨粗面61を観察し、脛骨粗面61のML方向の長さを3等分してM方向から1/3の位置である。この脛骨粗面基準位置から後ろ方向Pに真っ直ぐ進むと脛骨軸に達するので、前方向Aから脛骨軸を確認するときは、この脛骨粗面基準位置が利用される。脛骨粗面基準位置に仮止めピンを打ち込むことにより、前側から観察したときに、仮止めピン50の近傍の位置を脛骨軸に一致させることができる。
【0034】
(3.骨切り用ガイド器具10の正確な位置決め)
骨切り用ガイド器具10と脛部とを前方向A及び横方向から繰り返し観察して、骨切り用ガイド器具10を正確に位置決めする。主に、シャフト部20を正確に位置決めすることにより、骨切り用ガイド器具10をほぼ適切な位置に配置することができる。このとき、骨切り用ガイド器具10の上側は、仮止めピン50によって既に正確な位置に仮固定されているので、調整が必要なのは、骨切り用ガイド器具10の下部のみ、すなわちシャフト部20の下部のみとなる。
ML方向の位置決めには、前方向Aからシャフト部20を観察する。シャフト部20が脛骨軸とずれている場合には、ディスタルノブ26の把持部分261を回転させてディスタルプレート22の固定を緩め、スライドレール23をML方向にスライドさせる。シャフト部20の下部が脛骨軸と一致したら、ディスタルノブ26によりディスタルプレート22を固定する。
AP方向の位置決めには、横方向からシャフトを観察する。シャフト部20が脛骨軸と平行になっていない場合には、ディスタルボタン27を押してディスタルロッド24とディスタルスリーブ25との係止を解除したまま、ディスタルスリーブ25をAP方向にスライドさせる。シャフト部20が脛骨軸と平行になったらディスタルボタン27を離して、ディスタルスリーブ25をディスタルロッド24に係止させる。
【0035】
(4.ロッド部30の上部の本固定)
図8〜図10のように、ロッド部30のロッド貫通孔35に固定ピン53を挿通して、脛骨粗面61に打ち込むことにより、ロッド部30を脛骨60に固定する。図10から分かるように、固定ピン53は仮止めピン50に対してわずかに傾いている。このような角度で固定ピン53を打ち込むと、骨切り用ガイド器具10の回転を防止できるだけでなく、骨切り用ガイド器具10を脛骨60から引き離す方向の力がかかっても、固定ピン53と仮止めピン50とが脱落しなくなる。また、図9に図示されているように、上方向から固定ピン53と仮止めピン50とを観察すると、ほぼ平行であることがわかる。このように縦方向に角度をつけて固定すると、縦方向の揺動を防止するのに適している。
固定ピン53の打ち込みにより、骨切り用ガイド器具10は脛骨に確実に固定される。
【0036】
(5.T型カットガイド部40の高さ調節)
調節ナット34を回転させて、T型カットガイド部40の高さを調節する。このとき、図10のように、脛骨近位端62の骨切り予定面A−Aの延長線上にT型カットガイド部40のスリット41を位置させることが重要である。調節ナット34を用いることにより、T型カットガイド部40の高さを微調節できるので、骨切り量を正確に設定することができる。なお、骨切り予定面A−Aが後傾している場合には、その後傾角度に合ったスリット41を有するT型カットガイド部40を選択する。
【0037】
(6.T型カットガイド部40の本固定)
図8〜図10のように、T型カットガイド部40の貫通孔43、44に固定ピン54、55を挿通して、脛骨近位端62に打ち込む。これにより、T型カットガイド部40は、脛骨60に完全に固定される。図9から分かるように、固定ピン54と固定ピン55とは平行ではなく、わずかに傾いている。これにより、T型カットガイド部40は、脛骨近位端62に確実に固定される。なお、図10のように横方向から観察すると、固定ピン54、55は平行に脛骨60に固定されている。このように横方向に角度をつけて固定すると、横方向の揺動を防止するのに適している。
【0038】
(7.脛骨近位端62の骨切り)
T型カットガイド部40のスリット41に、切刃を挿入して骨切り予定面A−Aに沿って脛骨近位端62を骨切りする。骨切り量が不足した場合には、固定ピン54、55を抜去し、調節ナット34を回転させてT型カットガイド部40を下げる。再度T型カットガイド部40を固定ピン54、55で固定し、切刃で骨切りすることができる。
骨切り時には、T型カットガイド部40は脛骨60に確実に固定されているので、切刃の振動によってスリット41の傾きが変わることや、スリット41が設定位置からずれることはなく、骨切り予定面A−Aに沿って骨切りすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る骨切り用ガイド器具の斜視図である。
【図2】本発明に係る骨切り用ガイド器具の部分拡大斜視図である。
【図3】本発明に係る骨切り用ガイド器具の部分断面図である。
【図4】本発明の骨切り用ガイド器具に適したT型カットガイド部の斜視図である。
【図5A】本発明の骨切り用ガイド器具に適した別のT型カットガイド部の正面図である。
【図5B】本発明の骨切り用ガイド器具に適した別のT型カットガイド部の斜視図である。
【図6A】本発明に係る骨切り用ガイド器具の部分分解図である。
【図6B】本発明に係る骨切り用ガイド器具のシャフトスリーブの上面図である。
【図7】本発明に係る骨切り用ガイド器具の部分分解図である。
【図8】本発明に係る骨切り用ガイド器具を左脚に固定した様子を示す概略斜視図である。
【図9】本発明に係る骨切り用ガイド器具を左脚に固定した様子を示す概略上面図である。
【図10】本発明に係る骨切り用ガイド器具を左脚に固定した様子を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 骨切り用ガイド器具、 20 シャフト部、 21 アンクルクランプ、 22 ディスタルプレート、 23 スライドレール、 24 ディスタルロッド、 25 ディスタルスリーブ、 26 ディスタルノブ、 27 ディスタルボタン、 28 バネ、 29 シャフトスリーブ、 30 ロッド、 31 ロッド下部、 32 シャフトボタン、 33 バネ、 34 調節ナット、 35 ロッド貫通孔、 36 ロッド上部、 40 T型カットガイド部、 41 スリット、 42 ガイド脚部、 43、44 貫通孔、 45 ガイド部、 50 仮止めピン、 51 ピン頭部、 53、54、55 固定ピン、 60 脛骨、 61 脛骨粗面、 62 脛骨近位端。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部がアンクルクランプにより足首に固定され、長手方向に延びる軸が脛骨軸と平行にされるシャフト部と、
脛骨近位端の骨切り面をガイドするスリットを有するガイド部と該ガイド部から下方に延びるガイド脚部とを備えたT型カットガイド部と、
前記シャフト部の上部に連係し、斜め上方に延び、前記T型カットガイド部のガイド脚部を受けて前記T型カットガイド部を昇降調節する機能を有するロッド部と、を備えており、
前記ロッド部上端近傍に、脛骨軸の軸合わせの基準位置に仮止めするための仮止めピンが突出していることを特徴とする骨切り用ガイド器具。
【請求項2】
前記ロッド部と前記シャフト部とがバネ付勢により固定されており、バネ付勢を解除することにより前記ロッド部が前記シャフト部に対して上下方向にスライド可能であることを特徴とする請求項1に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項3】
前記T型カットガイド部が、脛骨にピン固定するための複数の貫通孔を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項4】
前記T型カットガイド部が、仮止めピンの仮止め後にも着脱可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項5】
前記シャフト部が、その下部に、内側及び外側方向の位置合わせをする内外側方向調節手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項6】
前記内外側方向調節手段が、内外側方向に延びるスライドレールと、前記スライドレールと摺動可能に係合するディスタルプレートと、前記ディスタルプレートを前記スライドレールに押し当てて固定するディスタルノブと、を備えている請求項5に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項7】
前記シャフト部が、その下部に、前後方向の位置合わせをする前後方向調節手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項8】
前記前後方向調節手段が、前後方向に延びるディスタルロッドと、前記ディスタルロッドを挿通するディスタルスリーブと、前記ディスタルロッドと前記ディスタルスリーブとをバネ付勢により固定する固定手段と、を備えており、バネ付勢を解除することにより前記ディスタルスリーブが前記ディスタルロッドに対して前後方向にスライド可能であることを特徴とする請求項7に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項1】
下部がアンクルクランプにより足首に固定され、長手方向に延びる軸が脛骨軸と平行にされるシャフト部と、
脛骨近位端の骨切り面をガイドするスリットを有するガイド部と該ガイド部から下方に延びるガイド脚部とを備えたT型カットガイド部と、
前記シャフト部の上部に連係し、斜め上方に延び、前記T型カットガイド部のガイド脚部を受けて前記T型カットガイド部を昇降調節する機能を有するロッド部と、を備えており、
前記ロッド部上端近傍に、脛骨軸の軸合わせの基準位置に仮止めするための仮止めピンが突出していることを特徴とする骨切り用ガイド器具。
【請求項2】
前記ロッド部と前記シャフト部とがバネ付勢により固定されており、バネ付勢を解除することにより前記ロッド部が前記シャフト部に対して上下方向にスライド可能であることを特徴とする請求項1に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項3】
前記T型カットガイド部が、脛骨にピン固定するための複数の貫通孔を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項4】
前記T型カットガイド部が、仮止めピンの仮止め後にも着脱可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項5】
前記シャフト部が、その下部に、内側及び外側方向の位置合わせをする内外側方向調節手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項6】
前記内外側方向調節手段が、内外側方向に延びるスライドレールと、前記スライドレールと摺動可能に係合するディスタルプレートと、前記ディスタルプレートを前記スライドレールに押し当てて固定するディスタルノブと、を備えている請求項5に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項7】
前記シャフト部が、その下部に、前後方向の位置合わせをする前後方向調節手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の骨切り用ガイド器具。
【請求項8】
前記前後方向調節手段が、前後方向に延びるディスタルロッドと、前記ディスタルロッドを挿通するディスタルスリーブと、前記ディスタルロッドと前記ディスタルスリーブとをバネ付勢により固定する固定手段と、を備えており、バネ付勢を解除することにより前記ディスタルスリーブが前記ディスタルロッドに対して前後方向にスライド可能であることを特徴とする請求項7に記載の骨切り用ガイド器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−125706(P2008−125706A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312624(P2006−312624)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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