説明

脱グリコシル化抗MUC−1抗体およびその使用

未改変の親抗体分子の可変領域中のグリコシル化部位の一部分を形成する少なくとも1つのアミノ酸残基にて改変されている、特異的標的に選択的に結合する改変抗体分子であって、該改変抗体が、アミノ酸改変が一部分を形成する前記グリコシル化部位にてグリコシル化されず、該改変抗体が、未改変の親抗体分子よりも特異的標的に対してより大きい結合親和性を示すことを特徴とする改変抗体分子。該改変抗体分子をコードするヌクレオチド配列、アミノ酸配列および発現ベクター、ならびにそれらの使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合特性が改善された抗体、抗体断片および抗体誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体は、癌治療を含む多くの臨床的使用において現在用いられている。これらは、細胞傷害性薬物または放射性核種と結合した抗体とともに、宿主の免疫機能の補充またはレセプター-リガンド相互作用の遮断を含む多様な機構によりそれらの効果を奏する非コンジュゲート型抗体を含む。
【0003】
臨床的に用いられた最初の抗体は、患者に免疫応答を惹起する可能性を有していたマウス抗体であり、ヒト免疫エフェクター細胞の補充においてヒト抗体よりも効果が低かった。このことを解決するために、マウス抗体の定常領域をまず、ヒト定常領域で置き換え、いわゆるキメラ抗体とした。工学的に改変した抗体の次の世代として、主に抗体の抗原結合領域でマウスアミノ酸の大部分を等価なヒト配列と交換し、2、3のマウス配列のみを残した。
【0004】
抗体は、重鎖定常領域のそれぞれにオリゴ糖が結合した糖タンパク質である。これらのグリコシル化は、補体の結合、エフェクター細胞上のIgGレセプターの結合、および抗体の安定化において役割を果たしている。多くの天然に存在する抗体は、抗体の可変領域に付加的なオリゴ糖分子も含む。
【0005】
放射線免疫画像法、放射線免疫療法または組換え細胞傷害性融合タンパク質の投与のような多くの臨床的使用は、好ましくは、抗体断片またはFab分子もしくは多価誘導体のような抗原結合性小分子を用いる。これらのより小さい抗体断片または抗原結合性分子が、IgG型の抗体全体(野生型またはヒト化)の使用に対して利点を有する場合がある。例えば、免疫グロブリン全体とは対照的に、scFv断片は、充実性腫瘍組織に効率的に浸透でき(Yokota, Tら(1992) Cancer Res 52:3402頁)、循環から速やかに排出される(Milenic, D. E.ら(1991) Cancer Res 51:6363頁)。抗体全体の特性を改善する代替法は、親和性のような特定の特性を最適化することである。
【0006】
臨床的使用において、抗体または断片が標的抗原に対して十分な親和性を有する一方で、高い程度の安定性および十分に長い半減期を有して、抗体がその標的に到達しかつ臨床的に許容される期間にわたって活性であり続けることが最も重要である。これらの主要な要件を満たされなければ、Adams, G. P.ら(1998) Cancer Res 58:485頁、およびWilluda, J.ら(1999) Cancer Res 59:5758頁で示されるように、免疫欠損マウスでの異種移植された充実性腫瘍における抗体またはその断片の不十分な増強しかもたらされず、よって将来の臨床的な使用を妨げる。
【特許文献1】米国特許第4440859号
【特許文献2】米国特許第4530901号
【特許文献3】米国特許第4582800号
【特許文献4】米国特許第4677063号
【特許文献5】米国特許第4678751号
【特許文献6】米国特許第4704362号
【特許文献7】米国特許第4710463号
【特許文献8】米国特許第4757006号
【特許文献9】米国特許第4766075号
【特許文献10】米国特許第4810648号
【特許文献11】WO98/16643
【特許文献12】GB2360772
【特許文献13】GB2383538
【特許文献14】EP0349578A
【特許文献15】EP0527839A
【特許文献16】EP0589877A
【特許文献17】WO94/11026
【非特許文献1】Yokota, Tら(1992) Cancer Res 52:3402頁
【非特許文献2】Milenic, D. E.ら(1991) Cancer Res 51:6363頁
【非特許文献3】Adams, G. P.ら(1998) Cancer Res 58:485頁
【非特許文献4】Willuda, J.ら(1999) Cancer Res 59:5758頁
【非特許文献5】Taylor-Papadimitriouら(1999) Biochim Biophys Acta 1455:301頁
【非特許文献6】Baldus, S. E.ら(2002) Histopathology 40:440頁
【非特許文献7】Utsunomiya, T.ら(1998) Clin Cancer Res 4:2605頁
【非特許文献8】Brossart, P.ら(2001) Cancer Res 61:6846頁
【非特許文献9】Hanisch, F. G.、およびMuller, S. (2000) Glycobiology 10:439頁
【非特許文献10】Gendler, S.ら(1998) J Biol Chem 263:12820頁
【非特許文献11】Taylor-Papadimitriou, J.ら(1981) Int J Cancer 28:17頁
【非特許文献12】Aboud-Pirak, E.ら(1988) Cancer Res 48:3188頁
【非特許文献13】Epenetos, A. A.ら(2000) Int J Gynecol Cancer 10:44頁
【非特許文献14】Verhoeyen, M. E.ら(1993) Immunology 78:364頁
【非特許文献15】Betterら(1988) Science 240, 1041頁
【非特許文献16】Skerraら(1988) Science 240, 1038頁
【非特許文献17】Birdら(1988) Science 242, 423頁
【非特許文献18】Hustonら(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5879頁
【非特許文献19】Wardら(1989) Nature 341, 544頁
【非特許文献20】WinterおよびMilstein (1991) Nature 349, 293〜299頁
【非特許文献21】Kabatら(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest. NIH出版第91-3242号
【非特許文献22】Adamsら、Br J Cancer 77、1405〜1412頁、1998
【非特許文献23】Jonesら、Nature、321:522〜525頁(1986)
【非特許文献24】Riechmannら、Nature、332:323〜327頁(1988)
【非特許文献25】Verhoeyenら、Science、239:1534〜1536頁(1988)
【非特許文献26】Presta、Curr. Op. Struct. Biol.、2:593〜596頁(1992)
【非特許文献27】SambrookおよびRussell (Molecular Cloning: a Laboratory Manual. 2001. 第3版)
【非特許文献28】ChuおよびRobinson、2001、Curr Opin Biotechnol 12、180〜187頁
【非特許文献29】Dempseyら、2003、Biotechnol Prog 19、175〜178頁
【非特許文献30】Yooら、2002、J. Immunol Meth 261、1〜20頁
【非特許文献31】Tissue Culture、Academic Press、KruseおよびPaterson編(1973)
【非特許文献32】Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach (M. Butler編、IRL Press、1991)
【非特許文献33】Smith、Science 228、1985、1315〜7頁
【非特許文献34】McCaffertyら、Nature、1990、552〜554頁
【非特許文献35】Feliciら(1995) Biotechnol. Annual Rev.、1、149〜183頁
【非特許文献36】Katz (1997) Annual Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26、27〜45頁
【非特許文献37】Hoogenboomら(1998) Immunotechnology 4(1)、1〜20頁
【非特許文献38】Kay、1995、Perspect. Drug Discovery Des. 2、251〜268頁
【非特許文献39】KayおよびPaul、1996、Mol. Divers. 1、139〜140頁
【非特許文献40】ChiswellおよびMcCafferty、1992、Trends Biotechnol. 10、80〜84頁
【非特許文献41】McCaffertyら、1990、Nature 348、552〜554頁
【非特許文献42】Barbasら、1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88、7978〜7982頁
【非特許文献43】Clacksonら、1991、Nature 352、624〜628頁
【非特許文献44】Marksら、1991、J. Mol. Biol. 222、581〜597頁
【非特許文献45】HoogenboomおよびWinter、1992、J. Mol. Biol. 227、381〜388頁
【非特許文献46】Phage display of peptides and proteins: a laboratory manual Kay、WinterおよびMcCafferty編(1996) Academic Press, Inc ISBN 0-12-402380-0
【非特許文献47】Harlowら編、Antibodies A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory; Cold Spring Harbor、N. Y. (1988)、第6章
【非特許文献48】Jefferisら(1998) Immunological Reviews 163 59〜76頁
【非特許文献49】Rajuら(2000) Glycobiology 10 477〜486頁
【非特許文献50】Vitettaら、Science、238:1098(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以前から知られている抗体、例えばHMFG1は、最適化されていない1または複数の結合特性、例えば結合親和性を有する。よって、本発明は、結合特性が増大された抗体分子を提供することにより、この問題を解決することに努める。
【0008】
MUC-1遺伝子産物である膜ムチン糖タンパク質(多形上皮ムチンまたはPEM)は、ほとんどの腺癌で過剰発現していることが示されている(Taylor-Papadimitriouら(1999) Biochim Biophys Acta 1455:301頁)。MUC-1の過剰発現は、結腸直腸および胃の腫瘍の患者の乏しい予後と広く関連している(Baldus, S. E.ら(2002) Histopathology 40:440頁; Utsunomiya, T.ら(1998) Clin Cancer Res 4:2605頁)。MUC-1は、より最近になって、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病および多発性骨髄腫を含む多様な血液学的悪性病変で過剰発現されていることが見出されている(Brossart, P.ら(2001) Cancer Res 61:6846頁)。
【0009】
癌細胞におけるMUC-1糖タンパク質のグリコシル化は、健康な組織で発現されるものとは異質である(Hanisch, F. G.、およびMuller, S. (2000) Glycobiology 10:439頁)。従って、腫瘍関連ムチン糖タンパク質は、モノクローナル抗体(mAb)を用いる診断的および治療的なアプローチについての価値のある標的であると同定されている。
【0010】
いくつかのmAbが、MUC-1糖タンパク質の細胞外部分における20アミノ酸のタンデム反復を有する高度に保存された免疫原性MUC-1コア領域に対して作製されている(Gendler, S.ら(1998) J Biol Chem 263:12820頁)。これらのmAbは、MUC-1エピトープを高い選択性で認識するHMFG1を含む(Taylor-Papadimitriou, J.ら(1981) Int J Cancer 28:17頁)。
【0011】
HMFG1は、その標的抗原に結合した後に細胞により内部移行される(Aboud-Pirak, E.ら(1988) Cancer Res 48:3188頁)。よって、HMFG1は、腫瘍細胞に細胞傷害性薬物を選択的に送達するための価値ある手段を提供する。よって、90Y-マウスHMFG1放射性免疫コンジュゲートが、アジュバント設定において進行性卵巣癌患者での第I〜II相臨床試験に用いられた。試験物質の単一用量の腹腔内投与は、これらの患者の78%において>10年の長期の生存をもたらした(Epenetos, A. A.ら(2000) Int J Gynecol Cancer 10:44頁)。
【0012】
huHMFG1と表されるHMFG1のヒト型は、マウスの抗原結合部位をヒトのフレームワークにつなぐことにより作製された(Verhoeyen, M. E.ら(1993) Immunology 78:364頁)。huHMFG1は、抗原親和性およびげっ歯類の原型と同じ選択性を保持することが示された。
【0013】
抗体断片の潜在的な利点を活用するために、huHMFG1は、scFv断片中に再フォーマットもされている。抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ドメインは、抗原認識に関わる。この事実は、初期のプロテアーゼ消化実験により最初に認識された。
【0014】
抗原の選択性は、可変ドメインにより与えられ、定常ドメインからは独立していることが、全ての抗体断片が1または複数の可変ドメインを含む抗体断片の細菌での発現を伴う実験から知られている。これらの分子は、Fab様分子(Betterら(1988) Science 240, 1041頁);Fv分子(Skerraら(1988) Science 240, 1038頁);VHおよびVLの対のドメインが可動性オリゴペプチドを介して結合している単鎖Fv (ScFv)分子(Birdら(1988) Science 242, 423頁; Hustonら(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5879頁)、ならびに単離されたVドメインを含む単一ドメイン抗体(dAb)(Wardら(1989) Nature 341, 544)を含む。それらの選択的結合部位を保持している抗体断片の合成に関わる技術の全般的な概説は、WinterおよびMilstein (1991) Nature 349, 293〜299頁に見出される。
【0015】
可変領域グリコシル化部位の1つの例がHMFG1抗体において証明され、これが、56位のアスパラギンアミノ酸残基(Asn56またはN56)での可変(抗原結合)領域のN-結合グリコシル化部位を有することを、今回示す。分析により、この部位が少なくとも部分的にグリコシル化されることが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
我々は、グリコシル化を妨げるような可変領域グリコシル化部位での抗体の改変が、抗体の結合特性、特に結合親和性に驚くほど影響を与え得ることを示す。
【0017】
本発明の第1の態様において、未改変の親抗体分子の可変領域中のグリコシル化部位の一部分を形成する少なくとも1つのアミノ酸残基にて改変されている、特異的標的に選択的に結合する改変抗体分子であって、改変抗体が、アミノ酸改変が一部分を形成する前記グリコシル化部位にてグリコシル化されず、改変抗体が、未改変の親抗体分子よりも特異的標的に対してより大きい結合親和性を示すことを特徴とする改変抗体分子が提供される。
【0018】
改変抗体分子の親和性は、実施例3に記載される方法を用いて測定および比較できる。実施例3の方法は、未改変の親抗体と比較した、特異的標的に対する改変抗体の相対親和性を測定する。
【0019】
特定のアミノ酸残基のグリコシル化は、実施例、特に実施例1の方法を用いて予測および同定し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
未改変の親抗体分子中で改変されるアミノ酸は、好ましくはアスパラギン(AsnまたはN)である。
【0021】
好都合には、改変の部位は、図11のアミノ酸残基VH56または別の抗体分子中の対応する残基である。
【0022】
図11のVH56アミノ酸残基に対応するアミノ酸残基の位置は、分泌された重鎖中のその位置により定義される(シグナルペプチドが除去された成熟重鎖の56番目の残基)。同じ残基は、任意の所定の抗体またはKABAT番号付けシステムにより同定される抗体断片で同定され得る。KABATシステムは、Fvタンパク質配列を、http://www.bioinf.org.uk/abs/seqtest.htmlにオンラインで送信することによりアクセスし得る。このサイトのサーバは、送信された配列を全てのKABATデータベース入力に整列させ、残基の正確な番号付けを行う。また、任意の「特異な」残基(すなわち、所定の位置での発生が<1%)が報告される。この方法を用いて、HMFG1中の対象のグリコシル化されたアスパラギン残基が、KABAT番号55に配置される(HMFG1中の挿入残基による)。配列は、Kabatら(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest. NIH出版第91-3242号の方法に従って手作業で整列させることも可能である。
【0023】
適切には、特異的標的は、MUC-1遺伝子産物である。
【0024】
好ましい改変は、小さい側鎖のアミノ酸をもたらす。
【0025】
好ましくは、改変は、アミノ酸グリシンをもたらす。あるいは、システインまたはアラニンが好ましい。
【0026】
適切には、改変抗体分子は、抗HMFGモノクローナル抗体(HMFG1)と同等な結合選択性を有する。好ましくは、改変された抗体はHMFG1である。
【0027】
結合選択性の等価性は、実施例3に記載される方法を用いて測定できる。
【0028】
あるいは、改変抗体分子は、単鎖抗体であり、Fab、ScFvまたは二重特異性抗体であってよい。
【0029】
変異scFvも、二価二重特異性抗体にさらに工学的に改変してよい。二重特異性抗体分子は、改善された薬物動態学的特性および腫瘍停留特性を示し得る(Adamsら、Br J Cancer 77、1405〜1412頁、1998)。
【0030】
適切には、改変抗体分子は、ヒト化されている。
【0031】
ヒト化抗体は、投与された免疫グロブリンに対するヒトによる免疫応答を引き起こすことなくヒトに投与するために適切である。抗体のヒト化された形は、無傷の免疫グロブリン、ヒト免疫グロブリンの配列から主に構成され、かつ非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する免疫グロブリン鎖またはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体のその他の抗原結合配列)である。ヒト化は、Winterらの方法(Jonesら、Nature、321:522〜525頁(1986);Riechmannら、Nature、332:323〜327頁(1988);Verhoeyenら、Science、239:1534〜1536頁(1988))に従って行い得る。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。ヒト化抗体は、受容者の抗体にも組込まれたCDRまたはフレームワークの配列にも見出されない残基も含み得る。一般に、ヒト化抗体は、全てもしくは実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつ全てもしくは実質的に全てのフレームワーク領域がヒト免疫グロブリン共通配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変領域の全てを実質的に含む。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部分も含む(Jonesら、1986;Riechmannら、1988;およびPresta、Curr. Op. Struct. Biol.、2:593〜596頁(1992))。あるいは、抗体はキメラ抗体であってよい。
【0032】
本発明の第一の態様の代替の実施形態において、抗体は、3次元抗体を作る軽鎖および重鎖のポリペプチドのいずれかまたは両方のアミノ酸配列であると考え得る。
【0033】
本発明の第二の態様において、本発明の第一の態様による改変抗体分子をコードするヌクレオチド配列を有する核酸が提供される。
【0034】
ヌクレオチド配列は、自動化配列装置の使用を含む任意の通常の配列決定技術を用いて見出し得る。配列決定法の例としては、SambrookおよびRussell (Molecular Cloning: a Laboratory Manual. 2001. 第3版)を参照されたい。配列の比較も、通常の方法を用いて行うことが可能であり、Vector NTI(インビトロジェン(Invitrogen))およびhttp://us.expasy.orgにある無料のソフトウェアパッケージのような市販のソフトウェアプログラムの使用を含む。
【0035】
好ましくは、ヌクレオチド配列は、XXXがアスパラギン以外のアミノ酸残基をコードする任意のコドンである図9のものである。
【0036】
本発明の第三の態様は、本発明の第一の態様による改変抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを提供する。
【0037】
好ましくは、ヌクレオチド配列は、XXXがアスパラギン以外のアミノ酸残基をコードする任意のコドンである図9のものである。
【0038】
DNAは、次いで、適切な宿主で発現されて、本発明の化合物を含むポリペプチドを産生する。つまり、本発明の化合物を構成するポリペプチドをコードするDNAを、本明細書に含まれる教示の観点で適切に改変された既知の方法に従って用いて、発現ベクターを構築してよく、次いでこれを用いて、本発明のポリペプチドの発現および産生のための細菌または真核細胞のような適切な宿主細胞を形質転換する。このような技術は、全てが本明細書に参照により組込まれるRutterらに1984年4月3日に発行された米国特許第4440859号、Weissmanに1985年7月23日に発行された米国特許第4530901号、Crowlに1986年4月15日に発行された米国特許第4582800号、Markらに1987年6月30日に発行された米国特許第4677063号、Goeddelに1987年7月7日に発行された米国特許第4678751号、Itakuraらに1987年11月3日に発行された米国特許第4704362号、Murrayに1987年12月1日に発行された米国特許第4710463号、Toole, Jr.らに1988年7月12日に発行された米国特許第4757006号、Goeddelらに1988年8月23日に発行された米国特許第4766075号、およびStalkerに1989年3月7日に発行された米国特許第4810648号に開示されるものを含む。
【0039】
真核宿主細胞で行われる抗体発現は、該発現を可能にする条件下で該細胞を培養したときに該宿主細胞での前記断片の発現を駆動し得る配列に機能的に連結されている、免疫原として活性な抗体分子をコードする核酸を含む。本発明による細胞は、抗体分子の大規模生産に適切に用いられる。
【0040】
不死化細胞は当該技術において知られており、原則として無限に成長できる。限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系統、HeLa細胞系統、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞系統、NS0およびSp2-0を含むハイブリドーマ細胞系統などの細胞系統を含む当該技術において知られている多様な腫瘍細胞系統も不死化されている。抗体の工業的な製造に通常用いられる細胞系統は、CHO、NS0およびSp2-0を含む(ChuおよびRobinson、2001、Curr Opin Biotechnol 12、180〜187頁;Dempseyら、2003、Biotechnol Prog 19、175〜178頁;Yooら、2002、J. Immunol Meth 261、1〜20頁)。
【0041】
真核細胞の培養は、それが、代謝および/または成長および/または分裂および/または対象の組換えタンパク質の産生を可能にするように行われる。このことは、当業者に公知の方法により行うことが可能であり、限定されないが、細胞に栄養を与えることを含む。この方法は、表面に接着する成長、懸濁液での成長、またはそれらの組合せを含む。
【0042】
いくつかの培養条件を、当該技術において公知の方法により最適化して、タンパク質生産の生産量を最適化し得る。培養は、例えばシャーレ、ローラーボトル、またはバイオリアクタ内で、回分系、流加系、連続系、中空繊維などを用いて行い得る。
【0043】
細胞培養による組換えタンパク質の大規模(連続)生産を行うために、当該技術において、懸濁液で成長し得る細胞を得ることが好ましく、動物もしくはヒト由来の血清または動物もしくはヒト由来の血清成分なしで培養され得る細胞を得ることが好ましい。よって、精製がより容易になり、培地由来の付加的な動物またはヒトタンパク質が存在しないので安全性が増進されるが、合成培地は再現性が最もよいので、系の信頼性も非常によい。
【0044】
細胞を成長または増加させるための条件(例えばTissue Culture、Academic Press、KruseおよびPaterson編(1973)を参照されたい)、および組換え産物の発現のための条件は多少異なっていてよく、当業者に一般に知られる方法に従って、プロセスの最適化を通常行って、産物の生産量および/または細胞の成長を互いに増大させる。一般に、哺乳動物細胞培養の生産性を最大限にするための原理、プロトコルおよび実際の方法は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach (M. Butler編、IRL Press、1991)に見出し得る。
【0045】
抗体は、本発明による細胞で発現され、細胞または好ましくは細胞培養培地から、当業者に一般に知られる方法により回収され得る。このような方法は、沈殿反応、遠心分離、ろ過、サイズ排除クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、カチオンおよび/またはアニオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーなどを含み得る。
【0046】
本発明の化合物を構成するポリペプチドをコードするDNAは、適切な宿主への導入のための広く多様な他のDNA配列と連結されてよい。伴われるDNAは、宿主の性質、宿主へのDNAの導入様式、およびエピソームとしての維持または組込みのどちらが所望されるかに依存する。
【0047】
一般に、DNAは、プラスミドのような発現ベクターに、発現のための適当な方向および正しい読み取り枠で挿入される。必要であれば、DNAは、所望の宿主により認識される適切な転写および翻訳の調節制御ヌクレオチド配列に連結してよいが、このような制御は、通常、発現ベクター中で利用可能である。よって、DNA挿入断片は、適切なプロモーターに機能可能に連結してよい。細菌のプロモーターは、E. coliのlacIおよびlacZプロモーター、T3およびT7プロモーター、gptプロモーター、ファージλPRおよびPLプロモーター、phoAプロモーターならびにtrpプロモーターを含む。真核生物プロモーターは、CMV最初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、ならびにレトロウイルスLTRのプロモーターを含む。その他の適切なプロモーターは、当業者に知られている。発現構築物は、転写開始および終結のための部位、ならびに転写される領域に翻訳のためのリボソーム結合部位も含むことが望ましい(Hastingsら、1998年4月23日に公開の国際特許WO98/16643)。
【0048】
次いで、ベクターは、例えばトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、ウイルス感染などのような標準的な方法により宿主に導入される(Sambrook, J.およびRussell, D. W. (2001). Molecular cloning: a laboratory manual. Pub. Cold Spring Harbor Laboratory Press出版を参照されたい)。
【0049】
導入された核酸は、細胞内に染色体外で存在可能であり、その場合、発現は一過性である。染色体外プラスミドは、宿主細胞で分配可能であってもなくてもよい。プラスミドが複製可能でない場合、プラスミドは細胞内で分配されるので希釈され、よって発現が時間とともに失われる。プラスミドが該細胞のゲノムに安定に組込まれる場合、細胞は安定した様式で発現を駆動し得る。工業的な抗体生産については、この場合が好ましい。
【0050】
任意の抗体の軽鎖をコードするDNAおよび重鎖をコードするDNAは、同じプラスミドに存在してもよいし、別個のプラスミドに存在してもよい。コード領域は、当業者に通常知られる方法により、発現プラスミドのプロモーターに近接して挿入される(Sambrook, J.およびRussell, D.W. (2001). Molecular cloning: a laboratory manual. Pub. Cold Spring Harbor Laboratory Press出版を参照されたい)。コード領域は、培地へのタンパク質の分泌を促進するリーダーペプチドまたはシグナルペプチドも含み得る。このことは、該タンパク質の回収および精製を促進する。このようなシグナルペプチドは、分泌の際に前駆体ポリペプチドから切断され、成熟ポリペプチド、よって抗体を与える。
【0051】
通常、宿主の全てがベクターで形質転換されるわけではなく、よって、形質転換された宿主細胞を選択する必要がある。1つの選択手法は、形質転換細胞内での選択可能な形質をコードするDNA配列マーカーを、任意の必要な制御要素とともに発現ベクターに組込むことを伴う。これらのマーカーは、真核細胞培養についてジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418またはネオマイシン耐性、ならびにE. coliおよびその他の細菌での培養についてテトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピシリン耐性遺伝子を含む。あるいは、このような選択可能な形質についての遺伝子は、所望の宿主細胞を同時形質転換するために用いられる別のベクター上に存在し得る。発現ベクターは、親細胞が欠損している例えばグルタミンシンセターゼのような酵素もコードしてよい。ベクターがゲノムに安定的に組込まれた細胞だけが、酵素により産生される必須栄養素を欠く培地、グルタミンシンセターゼの場合はグルタミンフリーの培地で成長可能である。
【0052】
本発明の組換えDNAで形質転換された宿主細胞は、次いで、十分な時間、本明細書に開示される教示の観点で当業者に知られる適切な条件下で培養されて、ポリペプチドの発現が可能になり、これは次いで回収可能である。
【0053】
本発明のポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む公知の方法により、組換え細胞培養物から回収および精製可能である。
【0054】
例えば組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えばE. coliおよびBacillus subtilis);例えば酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae);例えばウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;例えばウイルスまたは細菌の発現ベクターに感染させた植物細胞系;例えばアデノウイルス発現ベクターに感染させた動物細胞系を用いる系を含む、多くの発現系が知られている。
【0055】
ベクターは、ベクターを他の非原核細胞型の発現に用いる場合であっても、原核細胞内での伝播のためにCol E1 oriのような原核細胞レプリコンを含み得る。ベクターは、E. coliのような細菌宿主細胞で、一緒に形質転換される遺伝子の発現(転写および翻訳)を支配し得る原核細胞プロモーターのような適切なプロモーターも含み得る。
【0056】
プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合および転写が発生することを可能にするDNA配列で形成される発現制御要素である。例示的な細菌宿主に適合し得るプロモーター配列は、本発明のDNAセグメントの挿入のための好都合な制限部位を含むプラスミドベクター中に典型的に提供される。
【0057】
典型的な原核細胞ベクタープラスミドは、バイオラドラボラトリーズ(Biorad Laboratories)(米国カリフォルニア州リッチモンド)から入手可能なpUC18、pUC19、pBR322およびpBR329;ファルマシア(Pharmacia)(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)から入手可能なpTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540およびpRIT5;ストラタジーンクローニングシステムズ(Stratagene Cloning Systems)(米国カリフォルニア州92037ラホーヤ)から入手可能なpBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46Aである。
【0058】
真核細胞での発現のためのいくつかの公知でよく用いられるプロモーターは、例えばE1Aプロモーターのようなアデノウイルス、CMV最初期(IE)プロモーターのようなサイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーター、シミアンウイルス40(SV40)由来のプロモーターなどのようなウイルス由来のプロモーターを含む。適切なプロモーターは、メタロチオネイン(MT)プロモーター、伸長因子1α(EF-1α)プロモーター、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターなどのような真核細胞由来でもあり得る。
【0059】
典型的な哺乳動物細胞ベクタープラスミドは、ファルマシア(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)から入手可能なpSVLである。このベクターは、SV40後期プロモーターを用いてクローニングされた遺伝子の発現を駆動し、最高レベルの発現はCOS-1細胞のようなT抗原産生細胞で見出される。誘導性の哺乳動物発現ベクターの例は、pMSGであり、これもファルマシア(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)から入手可能である。このベクターは、マウス乳腺癌ウイルスの長い末端反復配列のグルココルチコイド誘導性プロモーターを用いて、クローニングされた遺伝子の発現を駆動する。真核細胞発現ベクターのさらなる例は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)主要最初期プロモーターを用いて発現を制御するpEE系(ロンザ(Lonza))である。
【0060】
有用な酵母プラスミドベクターは、pRS403〜406およびpRS413〜416であり、通常、ストラタジーンクローニングシステムズ(米国カリフォルニア州92037ラホーヤ)から入手可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405およびpRS406は、酵母組込みプラスミド(YIp)であり、酵母選択マーカーHIS3、TRP1、LEU2およびURA3を組込んでいる。プラスミドpRS413〜416は、酵母セントロメアプラスミド(YCp)である。
【0061】
当業者に公知の方法を用いて、コード配列と、例えば適切な転写または翻訳制御とを含む発現ベクターを構築し得る。このような方法は、Sambrook, J.およびRussell, D.W. (2001). Molecular cloning: a laboratory manual. Pub. Cold Spring Harbor Laboratory Press出版に記載されている。
【0062】
1つのこのような方法は、ホモポリマー尾部を介する連結を含む。ホモポリマーであるポリdA(またはポリdC)の尾部は、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼにより、クローニングされるDNA断片上の露出された3' OH基に付加される。次いで、断片は、線状化されたプラスミドベクターの末端に付加されたポリdT(またはポリdG)尾部にアニールし得る。アニーリングの後に残されるギャップは、DNAポリメラーゼにより充填され、遊離末端はDNAリガーゼにより連結され得る。
【0063】
別の方法は、付着末端を介する連結を含む。適合し得る付着末端は、適切な制限酵素の作用によりDNA断片およびベクター上で作製可能である。これらの末端は、相補性塩基対形成により迅速にアニールし、残存するニックは、DNAリガーゼの作用により閉じ得る。
【0064】
さらなる方法は、リンカーおよびアダプターと呼ばれる合成分子を用いる。平滑末端を有するDNA断片は、突出3'末端を除去し、へこんだ3'末端を充填するバクテリオファージT4 DNAポリメラーゼまたはE. coli DNAポリメラーゼIにより作製される。所定の制限酵素の認識配列を含む平滑末端化された二本鎖DNAの部分である合成リンカーを、T4 DNAリガーゼにより平滑末端化されたDNA断片に連結し得る。これらは、その後、適切な制限酵素で消化され、付着末端を創出し、適合可能な末端を有する発現ベクターに連結される。アダプターも、連結に用いられる1つの平滑末端を含むが、1つの予め形成された付着末端も有する化学合成DNA断片である。
【0065】
多様な制限エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーは、米国コネチカット州ニューヘーヴンのインターナショナルバイオテクノロジーズインコーポレーテッド(International Biotechnologies Inc)(Kodak/IBI)を含むいくつかの供給元から市販で入手可能である。
【0066】
発現ベクターの構築の他の方法は、PCR法の使用を含む(Sambrook, J.およびRussell, D.W. (2001). Molecular cloning: a laboratory manual. Pub. Cold Spring Harbor Laboratory Press出版を参照されたい)。
【0067】
よって、本発明の第四の態様において、改変抗体分子をコードするヌクレオチド配列の発現に起因して本発明の第一の態様による改変抗体分子を産生する宿主細胞が提供される。
【0068】
好ましくは、ヌクレオチド配列は、XXXがアミノ酸残基をコードする任意のコドンである図9のものである。
【0069】
第五の態様において、本発明は、少なくも1種の他の作用物質と会合している本発明の第一の態様による改変抗体分子を提供する。
【0070】
好ましくは、作用物質は、薬物、毒素(例えばPE、DT、リシンAなど)、放射性核種(例えば90Y、131I、125I、99mTcなど)、ヌクレアーゼ(例えばRNアーゼ、カスパーゼおよびDNアーゼ)、酵素、サイトカイン(例えばIL-12)およびケモカインから選択される少なくとも1種である。
【0071】
他の作用物質と会合している抗体の使用の例は、GB2360772およびGB2383538に記載されている。
【0072】
より好ましくは、作用物質は、改変抗体分子にコンジュゲートしており、このようなコンジュゲートは融合タンパク質を含む。
【0073】
最も好ましくは、作用物質はサイトカインである。
【0074】
本発明の第六の態様は、本発明の第一の態様による改変抗体分子と、薬学的に許容されるキャリア、賦形剤および/または希釈剤とを含む組成物を提供する。
【0075】
好ましくは、組成物は、本発明の第二の態様に記載されるようなヌクレオチド配列を含む。
【0076】
より好ましくは、組成物は、少なくとも1種の他の作用物質をさらに含む。
【0077】
最も好ましくは、作用物質は、薬物、毒素(例えばPE、DT、リシンAなど)、放射性核種(例えば90Y、131I、125I、99mTcなど)、ヌクレアーゼ(例えばRNアーゼ、DNアーゼ)、プロテアーゼ(例えばカスパーゼ)、プロドラッグアプローチのための酵素、サイトカイン、ケモカインから選択される少なくとも1種である。
【0078】
本発明の第七の態様において、本発明の第一の態様による改変抗体分子の、癌、クローン病、関節リウマチ、乾癬、喘息およびアレルギーのような炎症性障害;再狭窄、両心バイパス、心筋梗塞のような心血管疾患;呼吸系発疹ウイルス、HIV、C型肝炎のような感染性疾患;狼瘡、および皮膚筋炎のような自己免疫障害;アルツハイマー病、移植拒絶および移植片対宿主疾患のような中枢神経系障害;ならびに腎炎、敗血症、ヘモグロビン尿症、化学療法誘発性血小板減少症および嗜癖(例えばコカインおよびニコチン)の治療および/または診断および/または予防のための医薬品の製造における使用が提供される。
【0079】
好ましくは、上記の疾患は癌である。より好ましくは、癌は、乳癌、卵巣癌、子宮癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、B-NHL、多発性骨髄腫、AML、CLLおよびヘアリーセル白血病である。
【0080】
本発明の第八の態様において、本発明の第二の態様による核酸を含むファージが提供される。
【0081】
好ましくは、ヌクレオチド配列は、ファージ表面タンパク質をコードするヌクレオチド配列に機能可能に連結している。より好ましくは、ヌクレオチド配列は、ファージにより発現され、ファージ表面でディスプレイされる。
【0082】
本発明は、さらに、スクリーニングアッセイにおける上記のファージの使用を提供する。
【0083】
このようなスクリーニングアッセイは、選択的標的に結合可能であるファージでディスプレイされる変異抗体、抗体断片または抗体誘導体を同定する。好ましくは、該標的は、MUC-1遺伝子産物である。
【0084】
ファージコートタンパク質の1つに融合された、バクテリオファージ(ファージ)表面でのタンパク質およびポリペプチドのディスプレイは、選択的リガンドの選択のための強力な手段を提供する。この「ファージディスプレイ」法は、当初は、1985年にSmith (Science 228、1315〜7頁)により用いられ、特定の抗原に対する高い親和性を有するものを選択するためのペプチドの大きいライブラリーを創出した。より最近では、該方法は、所望の特性を有するリガンドを同定するためにファージ表面で抗体を提示するために用いられている(McCaffertyら、Nature、1990、552〜554頁)。
【0085】
生物学的に関連する分子に結合するリガンドを単離するためのファージディスプレイの使用は、Feliciら(1995) Biotechnol. Annual Rev.、1、149〜183頁、Katz (1997) Annual Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26、27〜45頁およびHoogenboomら(1998) Immunotechnology 4(1)、1〜20頁で考察されている。いくつかの無作為化されたコンビナトリアルペプチドライブラリーが、異なる標的、例えば細胞表面レセプターまたはDNAに結合するポリペプチドを選択するために構築されている(Kay、1995、Perspect. Drug Discovery Des. 2、251〜268頁; KayおよびPaul、1996、Mol. Divers. 1、139〜140頁による考察)。タンパク質および多量体タンパク質は、機能性分子としてうまくファージディスプレイされている(EP0349578A、EP0527839A、EP0589877A; ChiswellおよびMcCafferty、1992、Trends Biotechnol. 10、80〜84頁を参照されたい)。さらに、機能性抗体断片(例えばFab、単鎖Fv [scFv])が発現され(McCaffertyら、1990、Nature 348、552〜554頁; Barbasら、1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88、7978〜7982頁; Clacksonら、1991、Nature 352、624〜628頁)、ヒトの高親和性抗体断片が単離されているので、ヒトモノクローナル抗体技術の短所のいくつかが置き換えられている(Marksら、1991、J. Mol. Biol. 222、581〜597頁; HoogenboomおよびWinter、1992、J. Mol. Biol. 227、381〜388頁)。ファージディスプレイの原理および実行についてのさらなる情報は、その開示が本明細書に参照により組込まれるPhage display of peptides and proteins: a laboratory manual Kay、WinterおよびMcCafferty編(1996) Academic Press, Inc ISBN 0-12-402380-0に示されている。
【0086】
ファージ上での変異抗体断片のディスプレイは、例えばMUC-1遺伝子産物のようなポリペプチドの、発現している試験ScFVへの選択的結合を検出する方法を提供する。
【0087】
本発明の第九の態様において、未改変の親抗体分子の可変領域中のグリコシル化部位の一部分を形成する少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なるアミノ酸残基で置換することにより抗体分子を改変して改変抗体を作製する方法であって、得られる改変抗体が、アミノ酸改変が一部分を形成する前記グリコシル化部位にてグリコシル化されず、得られる改変抗体が、未改変の親抗体分子よりも特異的標的に対してより大きい結合親和性を示すことを特徴とする方法を提供する。
【0088】
抗体分子を改変する方法は、本発明の抗体分子が既知のポリペプチド改変技術により改変され得るように当業者に知られている。
【0089】
用いられる用語の意味
用語「抗体分子」は、抗体、抗体断片または抗体誘導体の任意の1つのことであるとみなされるべきである。これは、野生型IgG抗体(すなわち4つのポリペプチド鎖を含む分子)、その他の無傷の抗体(例えばIgA、IgM、ラクダ抗体)、合成抗体、限定されないが免疫グロブリン軽鎖および/または重鎖可変および/または定常領域のファージディスプレイにより産生される単鎖改変抗体分子のような組換え抗体または抗体ハイブリッド、あるいは当業者に知られる免疫アッセイフォーマットで抗原に結合し得るその他の免疫相互作用可能な分子を含むことを意図する。
【0090】
用語「抗体誘導体」は、抗体の断片(例えばFabまたはFv断片)、または1もしくは複数のアミノ酸またはその他の分子の付加により改変されて、別のペプチドもしくはポリペプチド、大きいキャリアタンパク質または固体支持体への抗体の結合が促進された改変抗体分子(例えばアミノ酸チロシン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システインおよびそれらの誘導体、特にNH2-アセチル基またはCOOH末端アミド基)のような、当業者に知られる免疫アッセイフォーマットで抗原に結合し得る任意の改変抗体分子のことである。
【0091】
用語「ScFv分子」は、VHおよびVLパートナードメインが可動性オリゴペプチドを介して連結されている任意の分子のことである。
【0092】
用語「二重特異性抗体」は、それぞれの鎖が、VHおよびVLドメインからなる2つのドメインを含む非共有結合二量体である任意の分子のことである。これらのドメインはともに、同じ鎖のドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーにより連接されている。よって、各鎖単独では抗原に結合可能でないが、2つの鎖が、2つの機能的抗原結合部位を有する二量体の二重特異性抗体に組合わされる。
【0093】
用語「ヌクレオチド配列」または「核酸」または「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は、交換可能に用いられ、ヌクレオチドのヘテロポリマーまたはこれらのヌクレオチドの配列のことである。これらの句は、一本鎖もしくは二本鎖であり得、かつセンスもしくはアンチセンス鎖を表し得るゲノムまたは合成の起源のDNAあるいはRNA、ペプチド核酸(PNA)、あるいは任意のDNA様またはRNA様物質のことでもある。本明細書における配列では、Aはアデニンであり、Cはシトシンであり、Tはチミンであり、Gはグアニンであり、NはA、C、GまたはT(U)である。ポリヌクレオチドがRNAである場合、本明細書で示される配列中のT(チミン)は、U(ウラシル)で置き換えられることを意図する。通常、本発明により与えられる核酸セグメントは、ゲノムの断片および短いオリゴヌクレオチドリンカーから、または一連のオリゴヌクレオチドから、または個別のヌクレオチドから組立てられて、細菌もしくはウイルスのオペロンまたは真核細胞遺伝子由来の調節要素を含む組換え転写単位において発現され得る合成核酸を与え得る。
【0094】
用語「プローブ」および「プライマー」は交換可能に用いられ、少なくとも約5ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約7ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約9ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約11ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも約17ヌクレオチドであるヌクレオチド残基の配列のことである。プローブは、好ましくは約500ヌクレオチド未満、好ましくは約200ヌクレオチド未満、より好ましくは約100ヌクレオチド未満、より好ましくは約50ヌクレオチド未満、最も好ましくは30ヌクレオチド未満である。好ましくは、プローブは約6ヌクレオチド〜約200ヌクレオチド、好ましくは約15〜約50ヌクレオチド、より好ましくは約17〜30ヌクレオチド、最も好ましくは約20〜25ヌクレオチドである。好ましくは、断片は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、種々のハイブリッド形成法、またはマイクロアレイ法で用いて、mRNAもしくはDNA分子の同一または関連する部分を同定あるいは増幅し得る。断片またはセグメントは、本発明の各ポリヌクレオチド配列を一義的に同定し得る。
【0095】
用語「ポリペプチド」または「ペプチド」または「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の配列またはそれらの断片、および天然に存在するかまたは合成の分子のことである。ポリペプチドの「断片」「部分」または「セグメント」は、少なくとも2残基、好ましくは約5アミノ酸、好ましくは少なくとも約7アミノ酸、より好ましくは少なくとも約9アミノ酸、最も好ましくは少なくとも約17以上のアミノ酸のアミノ酸残基の連続である。活性であるために、いずれのポリペプチドも生物学的および/または免疫学的な活性を示すのに十分長くなければならない。
【0096】
用語「変異型」(または「類似体」)は、例えば組換えDNA技術を用いて創出されたアミノ酸の挿入、欠失および置換により天然に存在するポリペプチドからは異なる任意のポリペプチドのことである。対象の活性を失うことなく、どのアミノ酸残基を置換、付加または欠失させ得るかを決定する手引きは、特定のポリペプチドの配列を同種のペプチドと比較し、高い相同性の領域(保存領域)中に形成されるアミノ酸配列の変更の数を最小限にすることによるか、またはアミノ酸を共通配列で置換することにより見出され得る。
【0097】
本明細書で用いる場合、用語「精製された」または「実質的に精製された」は、記載される核酸またはポリペプチドが例えばポリヌクレオチド、タンパク質などのような他の生物学的高分子が実質的に存在しない中に存在することをいう。ある実施形態において、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、それが、存在する記載される生物学的高分子の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%であるように精製される(しかし、水、緩衝液およびその他の小分子、特に1000ダルトン未満の分子量を有する分子は存在し得る)。
【0098】
本明細書で用いる場合、用語「単離された」は、天然の供給源中に核酸またはポリペプチドとともに存在する少なくとも1種のその他の成分(例えば核酸またはポリペプチド)から分離された核酸またはポリペプチドのことである。ある実施形態において、核酸またはポリペプチドは、(もし存在するならば)溶媒、緩衝液、イオンまたはその溶液中に通常存在するその他の成分のみの存在下で見出される。用語「単離された」および「精製された」は、天然の供給源中に存在する核酸またはポリペプチドを含まない。
【0099】
ポリペプチドまたはタンパク質について言及して本明細書で用いる場合、用語「組換え」は、ポリペプチドまたはタンパク質が組換え(例えば細菌、昆虫または哺乳動物)発現系に由来することを意味する。「細菌の」は、組換えポリペプチドまたはタンパク質が細菌または真菌(例えば酵母)の発現系で作製されたことをいう。生成物として、「組換え細菌の」とは、天然の内因性物質を本質的に含まず、関連する天然グリコシル化を伴わないポリペプチドまたはタンパク質を規定する。例えばE. coliのようなほとんどの細菌培養物で発現されるポリペプチドまたはタンパク質は、グリコシル化修飾を受けていない。酵母で発現されるポリペプチドまたはタンパク質は、哺乳動物細胞で発現されるものとは通常異なるグリコシル化パターンを有する。
【0100】
用語「発現ベクター」は、DNA (RNA)配列からポリペプチドを発現するためのプラスミドまたはファージまたはウイルスまたはベクターのことである。発現伝達手段は、(1)例えばプロモーターおよびしばしばエンハンサーのような遺伝子発現において制御の役割を有する遺伝的要素と、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される構造配列またはコード配列と、(3)適切な転写および翻訳開始ならびに終結配列との集合を含む転写単位を含み得る。酵母または真核細胞発現系での使用を意図する構造単位は、好ましくは、宿主細胞による翻訳されたタンパク質の細胞外への分泌を可能にするリーダー配列を含む。あるいは、組換えタンパク質がリーダーまたは輸送配列なしで発現される場合、これはアミノ末端のメチオニン残基を含み得る。この残基は、発現された組換えタンパク質からその後切断されるかまたは切断されずに、最終産物を与え得る。
【0101】
用語「選択的結合」および「結合選択性」は、本発明の抗体の可変領域が本発明のポリペプチドのみを認識し結合することを示すが(すなわち、本発明のポリペプチドを、ポリペプチドのファミリー内で見出される配列の同一性、相同性または類似性に関わらず、他の類似のポリペプチドから区別し得る)、抗体の可変領域の外側の配列、特に分子の定常領域での相互作用により、他のタンパク質(例えばS. aureusプロテインAまたはELISA法におけるその他の抗体)と相互作用もしてよい。本発明の抗体の結合選択性を決定するスクリーニングアッセイは、公知であり、当該技術において日常的に行われている。このようなアッセイの包括的な論考については、Harlowら(編)、Antibodies A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory; Cold Spring Harbor、N. Y. (1988)、第6章を参照されたい。本発明のポリペプチドの断片を認識し結合する抗体も、該抗体が上記で定義するように本発明の全長ポリペプチドに第一にかつ主要に選択的であるならば、意図される。本発明の全長ポリペプチドに選択的である抗体のように、断片を認識する本発明の抗体は、タンパク質のファミリー内で見出される固有の配列の同一性、相同性または類似性に関わらず、ポリペプチドの同じファミリーからポリペプチドを区別し得るものである。
【0102】
用語「結合親和性」は、抗体分子と抗原との間の結合の強度の意味を含む。
【0103】
(好ましい実施形態)
本発明のある好ましい態様を含む実施例を、ここで、以下の図面を参照にして記載する。
【実施例1】
【0104】
HMFG1重鎖の可変領域中のグリコシル化
HMFG1抗体の野生型配列を、可能性のあるN-グリコシル化部位について、in silicoで、NetNGlycプログラム(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetNGlyc/(デンマーク工科大学(Technical University of Denmark))または等価なソフトウェアプログラム)を用いて分析した。NetNGlycソフトウェアは、受容体と非受容体のシークオンを区別しようとして、可能性のあるグリコシル化部位の周囲を取り囲む配列の関係について人工ニューロコンピュータを訓練する。
【0105】
この分析は、グリコシル化部位の可能性がある重鎖中の2つのアスパラギン残基を同定した(図1)。第二の部位は、定常領域内にあり、そこでIgG分子がグリコシル化されると予測されるアスパラギンである。(Asn298 (KABAT番号付けシステムの下ではAsn297ともよばれる)、通常の免疫グロブリンG分子に存在する保存されたN-グリコシル化残基)しかし、別の部位は、可変(抗原結合、CDR2)領域内のAsn56であった。
【0106】
HMFG1を還元SDS-PAGEで電気泳動し、クーマシーブルーで染色すると、重鎖は二重線として現れる(図2)。しかし、これをPNGアーゼF(タンパク質から全てのN-グリカンを除去するエンドグリコシダーゼ)で処理すると、2つのバンドは同じサイズまで分子量が減少する。このことは、2つのバンドが、同じタンパク質の別のグリコフォームであることを示す。
【0107】
抗体は、通常、定常領域でグリコシル化されるが、これらのIgGグリカンは構造が限定されている。典型的なFc領域のグリカンは、各アンテナ上に2つのN-アセチルグルコサミン、3つのマンノースおよび2つのさらなるN-アセチルグルコサミンの基本核構造を含む。
【0108】
この基本構造は、通常、核のフコース糖を含み、2つに分かれるN-アセチルグルコサミンと、2、1または0個のガラクトース残基が末端にあるアンテナとを含み得る(Jefferisら(1998) Immunological Reviews 163 59〜76頁およびRajuら(2000) Glycobiology 10 477〜486頁を参照されたい)。
【0109】
Fcグリカンを原因としては、SDS-PAGEにおいて、重鎖が2つのバンドとして電気泳動されることはなく、したがって、二重線の存在は、タンパク質上の別の場所、おそらくコンピュータ解析から示された部位での部分的グリコシル化を示す。
【0110】
未処理のHMFG1およびPNGアーゼF処理した(すなわち脱グリコシル化された)HMFG1の試料をMUC1抗原結合ELISA(実施例3を参照されたい)で試験すると、脱グリコシル化された試料は、MUC1について増加した親和性を有するように見え(図3)、このことは、抗原結合領域でグリコシル化が存在することをさらに示唆する。
【実施例2】
【0111】
発現ベクターの構築およびトランスフェクション
Asn56の変異を作製するために、HMFG1をコードするDNAを合成してコドン使用を付随的に最適化する一方、遺伝子の変異体の形も作製することを決定した。
【0112】
コドンの最適化およびDNA合成は、ジーンアートジーエムビーエイチ(GeneArt GMBH)(ドイツ)www.geneart.com/gene-synthesisにより行われた。コドンを最適化した遺伝子は、遺伝子の発現を増大させるために通常用いられる。典型的には、共通コドンのみが含まれ、mRNAで二次構造の形成をもたらし得る配列を変更する。ポリペプチド配列の変更はなく、変更により、産生されるタンパク質に影響はない。野生型HMFG1アミノ酸配列と4つの変異重鎖とをコードするDNA配列を、この様式で合成した。これらの変異体は、N56S、N56G、N56DおよびN56Qであった。
【0113】
合成により得られた以下の配列を図に示し、これらは以下のものを含む。
・野生型軽鎖
・野生型重鎖
・包括的なN56XXX置換重鎖
・N56G重鎖(例として)
・4つの変異体重鎖アミノ酸配列と、Asn野生型配列とのアラインメント
【0114】
DNA配列を標準的なクローニングベクターに供給することにより、PCRを用いて配列を増幅し、適切な発現ベクターに挿入した。
【0115】
用いた改変抗体を合成する1つの方法は、軽鎖DNAをpEE12.1ベクターにクローニングし、重鎖DNAをpEE6.4ベクターに、EcoRI-HindIII断片としてクローニングした(ベクターはともにロンザバイオロジクス(Lonza Biologics)からである)(図12を参照されたい)。
【0116】
発現カセットは、コザック配列とリーダー配列とを含んでいた(図8〜10を参照されたい)。コザック配列は、ATG開始コドンに隣接し、リボソームが翻訳のATG開始コドンを認識することを可能にすることにより、発現を改善する。これらのプラスミドの挿入断片の配列は、DNA配列決定(DBSゲノミクス(Genomics))により確認した。転写は、CMVプロモーターからである。
【0117】
プラスミドを、CHO細胞に、Lipofectamine 2000(インビトロジェン)を製造者の使用説明書に従って用いて一過的にトランスフェクションし、3〜4日後に培地を回収した。軽鎖および重鎖をコードするプラスミドは同時トランスフェクションした。トランスフェクションの方法は、次のとおりである。
【0118】
2つのプラスミド(軽鎖保持プラスミドおよび重鎖保持プラスミド)のDNA各55μgを混合し、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)中でLipofectamine 2000と20分間プレインキュベートした。この混合物を、次いで、DMEM+10%血清中で成長しているCHO細胞に加え、37℃、5% CO2で3〜4日間インキュベートした。
【0119】
次いで、抗体を細胞培養上清から、20mMリン酸塩pH7のローディング緩衝液を用いるプロテインAクロマトグラフィーにより精製した。精製は、AKTAエクスプローラFPLCで1mlのHiTrapカラム(アマシャム(Amersham)、P#17-5079-01)を用いて行った。タンパク質を、低pH(0.1Mクエン酸ナトリウムpH3)で溶出し、溶出直後に2M Trisを用いてpH7〜7.2付近に中和した。
【0120】
次いで、物質をSDS-PAGEで電気泳動した。図4により、変異重鎖が単一種として電気泳動され、よってグリコシル化部位が変異されていることが確認される。このことにより、Asn56が野生型の形で少なくとも部分的にグリコシル化されることも確認される。
【0121】
変異N56S、N56Q、N56GおよびN56Dならびに野生型N56Nを含む遺伝子配列を合成した。残りの15種のアミノ酸変異を作製するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)突然変異誘発を用いた。
【0122】
コドン最適化変異体でのAsn56をコードするコドンの直後に、XbaI制限部位が存在する。このXbaI部位とともに全ての残りのアミノ酸をコードするコドンを組込んだオリゴヌクレオチドを合成した。これらのオリゴヌクレオチド配列を、図14に示す。これらの配列は相補鎖であり、正しいコドン配列も図14に示す。
【0123】
オリゴヌクレオチドPP1を合成した(図14)。これは、重鎖DNAカセットの始めにHindIII制限部位を含み、コザック配列およびコード領域の開始も含む。鋳型として野生型N56N発現ベクターを用い、PP1および各変異オリゴヌクレオチドを用いてPCR増幅を行って、約230塩基対のDNA断片を作製した。
【0124】
作製した断片は、PCR開始のために用いられるオリゴヌクレオチドを組込むので、必須の変異コドンを含む。断片を、次いで、野生型重鎖ベクターに連結しなおし、ここから230bpのHindIII-XbaI野生型配列断片を切り出した。この様式で、56位のアミノ酸の他にDNAまたはアミノ酸の配列を変更せずに、Asn56を残りのアミノ酸のそれぞれに置き換えた。PCR増幅された領域の配列は、任意のさらなる分析の前に確認した。
【0125】
上記の分子生物学により、HMFG1の軽鎖がpEE12.1にクローニングされ、HMFG1の重鎖(および変異体)がpEE6.4にクローニングされた。これらを、単一プラスミドに連結することも可能である。この付加的なステップは、いくつかの変異体で行った(以下を参照されたい)。トランスフェクションは、いずれかの別々のプラスミド上または単一プラスミド上の軽鎖および重鎖を用いて、等しく良好に行い得る。単一プラスミドを作製するために、重鎖発現プラスミドおよび軽鎖発現プラスミドの両方を、NotIおよびBamHI制限酵素で消化した(部位は図12に示す)。このことにより、軽鎖ベクターが効率的に線状化される(非常に小さいDNA断片の損失がある)。重鎖プラスミドの消化により、3.7kbの断片が作製され、これはCMVプロモーター-重鎖遺伝子-ポリA配列を含む。この3.7kbの断片を、線状化された軽鎖プラスミドに挿入して、単一ベクターを作製し、これを図13に示す。
【0126】
以下の変異体は、単一プラスミド(1つのベクター上にある重鎖および軽鎖)として作製された:N56R、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、Y、V。
【0127】
以下の変異体は、さらに別々のプラスミド上の重鎖および軽鎖を用いて分析した:N56A、W、C、T、D。
【0128】
上記のように、同じまたは別々のプラスミドからの抗体鎖の発現は、抗体アミノ酸配列、タンパク質折りたたみ、抗体親和性または安定性に影響がない。
【0129】
全ての変異体プラスミドを、上記のようにしてCHO細胞に一過的にトランスフェクションし、抗体も上記のようにして精製した。複数回の一過性トランスフェクションおよび分析を行った(各変異体について4回までのアッセイを行った)。このことにより、良好なデータを得た。
【0130】
しかし、安定細胞系統も変異体を用いて作製し、これらの安定細胞系統からのデータのみを本明細書に示す。しかし、一過性および安定なトランスフェクションからのデータは、本質的に同一であった。
【0131】
変異体N56Gを、まず、NS0細胞にトランスフェクションし、安定細胞系統を作製した。その後、全ての変異体(野生型AsnおよびN56Gを含む)を、CHO K1SV細胞系統にトランスフェクションして、安定細胞系統を作製した。唯一の例外はN56Vであり、これは技術的な誤りによりCHO K1SV細胞系統に入れることに失敗した(そして、これを繰り返す機会はなかった)。しかし、この変異体については、一過性トランスフェクションからのデータを示す。
【0132】
プラスミドpEE12.1およびpEE6.4、ならびに安定細胞系統の作製のためのグルタミンシンセターゼ選択法は、ロンザバイオロジクスからのライセンスの下に用いた。安定細胞系統の作製のためのプロトコルも、ロンザバイオロジックスからのライセンスの下に供給され、本研究ではこれらの方法に従った。
【0133】
簡単に、NS0細胞を、Lipofectamine 2000を用いてN56G発現プラスミドに安定的にトランスフェクションさせた。トランスフェクションの1日後に、細胞を50,000細胞/ウェル、10,000細胞/ウェルまたは2,000細胞/ウェルのいずれかで96ウェルプレートのウェルに播種した。これらを、グルタミンフリーのDMEM+10% FCS中で、クローンが出現し始めるまで(約3週間)成長させた。
【0134】
NS0のようなマウス骨髄腫細胞系統は、内因性グルタミンシンセターゼ遺伝子を欠損しており、グルタミンの非存在下で成長不可能である。プラスミドpEE12.1は、グルタミンシンセターゼ遺伝子を含むので、このプラスミドがゲノムに組込まれた細胞のみが成長し得る。より成長したクローンをさらに用い、抗体を上清から上記のようなプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。
【0135】
CHO K1SV細胞系統のトランスフェクションのために、プラスミドを細胞にエレクトロポレーションした。次いで、細胞を、10% FCSおよび50μMメチオニンスルホキシミン(MSX)を含有するCM2培地(ロンザバイオロジックスからのライセンスの下に得た)中で成長させた。CHO細胞系統は、グルタミンシンセターゼ遺伝子を含むので、グルタミンの非存在下で増殖可能である。MSXは、グルタミンシンセターゼの阻害剤であり、トランスフェクションされたプラスミドからの付加的なGS活性を有する細胞だけが増殖し得る。トランスフェクションの後に、細胞を組織培養フラスコに植菌した(そして、96ウェルプレートに播種してクローン個体群を作製しなかった)。このようにして、ポリクローナル安定細胞系統を作製した。
【実施例3】
【0136】
抗原結合活性
試料のタンパク質濃度は、ヒトIgG特異的ELISAにより決定した(データは示さず)。
【0137】
次いで、物質を、以下のプロトコルに従って、抗原への結合について分析した。
【0138】
96ウェルプレート(ヌンク(Nunc) Maxisorp)を、炭酸塩-重炭酸塩緩衝液(シグマ(Sigma) C3041)中に1μg/mlの100μlのMUC1で、4℃にて一晩コートした。ここで用いたMUC1抗原は、出願人により作製され、7のタンデム反復数(VNTR)領域を含むMUC1-GST融合タンパク質である。VNTRは、MUC1により認識される抗原である。
【0139】
次いで、プレートをPBS(リン酸生理食塩水)+0.05% Tween 20の洗浄溶液で洗浄し、インキュベーション緩衝液(200mlのPBS+0.2g BSA(ウシ血清アルブミン))でのHMFG1試料(野生型タンパク質または変異体)の系列希釈をウェルに加え、37℃にて1時間インキュベートした。
【0140】
プレートを再び洗浄し、検出抗体(10μl HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)抗ヒトIgG (BDファーミンジェン(Pharmingen)、P# 555788、またはジャクソン(Jackson) P# 209-035-056)+1mlインキュベーション緩衝液)で37℃にて30分間処理し、洗浄緩衝液で洗浄し、TMB(テトラメチルベンジジン)試薬で発色させた(室温まで温めた100μl TMB(シグマ、T8665)、そして100μlの硫酸を用いて約6分後に反応を停止した)。プレートの吸光度を、発色の直後にSpectromaxプレートリーダーで450nmにて読み取った。
【0141】
N56G、N56D、N56SおよびN56Qについて読み取った吸光度を、図5に示す。N56G HMFG1変異体は、野生型HMFG1に比較して、抗原に対する親和性が増大していた。まず、変異体N56G、N56D、N56SおよびN56Qを発現するプラスミドを作製した。これらは、CHO細胞に一過的にトランスフェクションし、得られた抗体を上記のようにして分析した。
【0142】
その後、全ての可能な変異体を発現するポリクローナル安定細胞系統を作製した。図15〜18は、これらのポリクローナル細胞系統からの全ての変異体HMFG1抗体の結合親和性を示す(N56V以外。これについてのデータは図19に示し、これは一過的にトランスフェクションした細胞からのものである)。これらのデータは、野生型N56Nコドン最適化プラスミド、および元来のコドン非最適化HMFG1(プラスミドpAS6Kから発現された)を含む。野生型Asn56抗体を発現するこれらの2つのプラスミドは、このような分析に固有の誤差を示す。さらに、図20は、HMFG1標準物質と比較した、安定NS0細胞系統から調製したN56Gの比較を示す。NS0細胞系統から単離したタンパク質を用いるN56Gについてのこのデータは、CHO細胞系統から得られたものと非常に類似する。
【0143】
これらのデータから、親和性の指標であるEC50値を求め得る。これらは、アッセイ間変動のために、アッセイ内の対照と常に比較すべきである。図21は、HMFG1標準物質と比較した各変異体のEC50の違いの倍数の表を示す。これらのデータは、図15〜20より求められる。
【0144】
MUC1に対して特に良好な親和性を有する3つの変異体は、大きい順にN56C>N56G>N56Aである。図21は、HMFG1標準物質と比較して、N56Cが約20倍増加した親和性、N56Gが約10倍増加した親和性、およびN56Aが約5倍増加した親和性を有することを示す。
【0145】
56位のアミノ酸のいずれの変更も、親和性を劇的に減少させることは無いようである。多くの変異体は、この位置のアスパラギンと比較して、ほぼ類似の親和性を有する。導入された変異アミノ酸は、どれもN-グリコシル化されず、よって全てがこの位置でのグリカン不均一性を低減させるはずである。N56Cを用いての著しい親和性の増加は、予期されない。N56GおよびN56Aを用いての親和性の特に良好な増加は、小さい側鎖を有するアミノ酸が、この位置で好ましい可能性があることを示唆する。
【実施例4】
【0146】
抗体依存性細胞傷害
実施例2で安定NS0細胞系統から調製されたN56G変異体を、抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイで、HMFG1標準物質と比較した。HMFG1標準物質もNS0細胞系統から生成され、抗体の定常領域に存在するグリカンは、HMFG1標準物質とN56Gとの間で一定であるようである。
【0147】
簡単に、末梢血単核細胞(PBMC)を、健康な提供者からの全血から、フィコールパック勾配での遠心分離により単離した。これらは、エフェクター細胞である。用いた標的細胞はDU145細胞であり、これらは細胞表面にMUC1抗原を発現することが知られている。
【0148】
ADCCを、96ウェルプレート中でDELFIA細胞傷害性アッセイ(パーキンエルマー(Perkin-Elmer))を用いて行った。方法は、標的細胞に、蛍光増強リガンドのアセトキシメチルエステル(BATDA)を負荷することに基づく。標的細胞が溶解されると、放出されたリガンドは、ユーロピウム溶液に導入されて、蛍光錯体を形成する。測定される信号は、溶解された細胞の量に直接相関する。
【0149】
アッセイは、本質的に、製造者により記載されるようにして行った。簡単に、DU145標的細胞を5000細胞/ウェルで用い、PBMCエフェクター細胞を50:1のエフェクター:標的の比で用いた。BATDAは、37℃にて15分間、標的細胞と予めインキュベートし、次いで洗浄した。エフェクター細胞、BATDAを負荷した標的細胞、および抗体(1μg/ml)を、96ウェルプレートのウェル中で混合し、37℃にて2時間インキュベートした。
【0150】
この時間の後に、プレートを遠心分離し、上清の試料を各ウェルから回収した。これを、ユーロピウムと20分間インキュベートし(パーキンエルマーのキットの使用説明書に従って)、次いでパーキンエルマーVictor3プレートリーダーで蛍光を測定した。
【0151】
抗体の非存在下でPBMCによる標的細胞の非特異的溶解があったので、標的細胞からのBATDAのバックグラウンド漏出を測定した。このバックグラウンドは、抗体を含む試験ウェルで得られた値から減じた。100%溶解の測定は、Triton-X 100を用いて標的細胞を処理することにより決定し、試験試料の溶解は、100%対照の%として算出した。
【0152】
このデータは、N56G変異体が、野生型HMFG1よりも、HMFG1依存性細胞傷害の媒介においてより効力があったことを示す。
【実施例5】
【0153】
その他の作用物質との関係
本発明の抗体、抗体断片および抗体誘導体は、それらが関連する他の作用物質とコンジュゲートしてよい。このような免疫コンジュゲートは、細胞傷害性薬物(例えば化学療法薬)または放射性同位体とコンジュゲートした抗体を含む。
【0154】
用い得る酵素活性毒素およびその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosaから)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、Phytolacca americanaタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、Momordica charantia阻害物質、クルシン、クロチン、Saponaria officinalis阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセネスを含む。放射性コンジュゲート抗体の産生のために、多様な放射性核種が利用可能である。その例は、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reを含む。
【0155】
抗体および細胞傷害性薬物のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトリレン2,6-ジイソシアネート)、ならびにビス-活性フッ素化合物(例えば、l,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)のような多様な二官能性タンパク質結合性作用物質を用いて作製する。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら、Science、238:1098(1987)に記載されるようにして調製し得る。カーボン-14標識1-イソチオシアネートベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、抗体への放射性核種のコンジュゲーションのためのキレート化剤の例である。WO94/11026を参照されたい。
【0156】
抗体は、腫瘍の予備的ターゲティングにおける使用のために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)にコンジュゲート可能であり、ここで抗体-レセプターコンジュゲートは患者に投与され、続いて浄化剤を用いて循環から未結合のコンジュゲートを除去し、次いで、細胞傷害性薬物に次にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0157】
抗体/抗体断片または抗体誘導体が関連し得る(コンジュゲーションまたはそれ以外のいずれかにより)癌化学療法剤は、メクロレタミン(HN2)、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)およびクロラムブシルのようなナイトロジェンマスタード;ヘキサメチルメラミン、チオテパのようなエチレンイミンおよびメチルメラミン;ブスルファンのようなアルキルスルホネート;カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)およびストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)のようなニトロソ尿素;ならびにダカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾール-カルボキサミド)のようなトリアゼンを含むアルキル化剤;メトトレキセート(アメトプテリン)のような葉酸類縁体;フルオロウラシル(5-フルオロウラシル;5-FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FUdR)およびシタラビン(シトシンアラビノシド)のようなピリミジン類縁体;ならびにメルカプトプリン(6-メルカプトプリン;6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン;TG)およびペントスタチン(2'-デオキシコホルマイシン)のようなプリン類縁体および関連阻害剤を含む代謝拮抗薬;ビンブラスチン(VLB)およびビンクリスチンのようなビンカアルカロイド;エトポシドおよびテニポシドのようなエピポドフィロトキシン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン(マイトマイシンC)のような抗生物質;L-アスパラギナーゼのような酵素;ならびにインターフェロンアルフェノメスのような生物学的応答修飾因子を含む天然産物;シスプラチン(シス-DDP)およびカルボプラチンのような白金配位錯体;ミトキサントロンおよびアントラサイクリンのようなアントラセンジオン;ヒドロキシ尿素のような置換尿素;プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH)のようなメチルヒドラジン誘導体;ならびにミトタン(o,p'-DDD)およびアミノグルテチミドのような副腎皮質抑制薬;タキソールおよび類縁体/誘導体;ならびにフルタミドおよびタモキシフェンのようなホルモン作動薬/拮抗薬を含む種々の作用物質を含む。
【実施例6】
【0158】
医薬製剤および投与
本発明のさらなる態様は、本発明の第一の態様の化合物を、薬学的または獣医学的に許容されるアジュバント、希釈剤またはキャリアと混合して含む医薬製剤を提供する。
【0159】
好ましくは、上記の製剤は、活性成分の1日量または単位、1日以下の量またはその適切な画分を含む単位投与量である。
【0160】
本発明の化合物は、薬学的に許容される投与形態の、所望により非毒性の有機もしくは無機の酸または塩基、付加塩の形の活性成分を含む医薬製剤の形で通常は経口または任意の非経口経路により投与される。治療される障害および患者、ならびに投与経路に応じて、組成物は多様な用量で投与してよい。
【0161】
ヒトの治療において、本発明の化合物は、単独で投与され得るが、通常は、意図する投与経路および標準的な製薬のプラクティスに関して選択される適切な薬学的な賦形剤、希釈剤またはキャリアと混合して投与される。
【0162】
例えば、本発明の化合物は、即座の、遅延したもしくは制御された放出の投与のための香料もしくは着色料を含み得る錠剤、カプセル剤、腔坐剤、エリキシル剤、溶液もしくは懸濁液の形で経口、頬側、または舌下により投与され得る。本発明の化合物は、陰茎海綿体注射によっても投与してよい。
【0163】
このような錠剤は、微結晶セルロース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびグリシンのような賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、バレイショもしくはタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよびある種の錯ケイ酸塩のような崩壊剤、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ショ糖、ゼラチンおよびアカシアのような造粒結合剤を含んでよい。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリンおよびタルクのような滑沢剤を含んでよい。
【0164】
類似の型の固形組成物は、ゼラチンカプセル剤における充填物として用いてもよい。この関係における好ましい賦形剤は、乳糖、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁剤および/またはエリキシル剤について、本発明の化合物は、多様な甘味料もしくは香料、着色料または色素、乳化剤および/または懸濁化剤、ならびに水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの希釈剤ならびにそれらの組合せと組み合わせてよい。
【0165】
本発明の化合物は、例えば静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、胸骨内、頭蓋内、筋内または皮下のような非経口で投与することも可能であるか、またはこれらは注入法により投与してもよい。これらは、例えば十分な塩もしくはグルコースのようなその他の物質を含んで溶液を血液と等張にし得る滅菌水溶液の形で最もよく用いられる。水溶液は、必要であれば適切に緩衝されるべきである(好ましくは3〜9のpHまで)。滅菌条件下で適切な非経口製剤の調製は、当業者に公知の標準的な製薬の技術により容易に達成される。
【0166】
非経口投与用に適する製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および意図する受容者の血液と製剤を等張にする溶質を含み得る水性および非水性の滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。製剤は、例えば密閉されたアンプルおよびバイアルのような単位用量または複数用量の容器中に存在し得、使用直前に例えば注射用の水のような滅菌液体キャリアの添加のみを必要とする凍結乾燥条件で貯蔵され得る。即時調合注射溶液および懸濁液は、滅菌の粉末、顆粒および上記の種類の錠剤から調製してよい。
【0167】
ヒト患者への経口および非経口投与について、本発明の化合物の1日投与量のレベルは、通常、1mg/kg〜30mg/kgである。つまり、例えば、本発明の化合物の錠剤またはカプセル剤は、適切であれば、単独または2回以上の投与のための活性化合物の用量を含んでよい。いずれにしても、医師は任意の個別の患者について最も適切な実際の投与量を決定し、これは特定の患者の年齢、体重および応答により変動する。上記の投与量は、平均的な場合の例である。もちろん、より高いかまたはより低い投与量の範囲で効果がある個別の場合があり得、そのようなものも本発明の範囲内である。
【0168】
本発明の化合物は、鼻腔内または吸入によっても投与可能であり、乾燥粉末吸入器または例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134A3)もしくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA3)のようなヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素またはその他の適切な気体のような適切な噴射剤を用いる加圧容器、ポンプ、噴霧器、もしくはネブライザからのエアロゾル噴霧器の形で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計測された量を送達するバルブを用いることにより決定してよい。加圧容器、ポンプ、噴霧器またはネブライザは、例えばエタノールと噴射剤との混合物を溶媒として用い、例えばソルビタントリオレエートのような滑沢剤を追加で含んでよい活性化合物の溶液または懸濁液を含み得る。吸入器または注入器用のカプセルおよびカートリッジ(例えばゼラチン製)は、本発明の化合物と、乳糖またはデンプンのような適切な粉末基材との粉末混合物を含んで処方され得る。
【0169】
エアロゾルまたは乾燥粉末の製剤は、それぞれの計測された用量または「ひと吹き」が、患者への送達のために本発明の化合物の適切な用量を送達するように手配されるのが好ましい。エアロゾルを用いる全体的な1日用量が患者ごとに異なり、単一用量またはより通常には、分割された用量で1日を通して投与され得ることが認識される。
【0170】
本発明の化合物は、あるいは、坐剤または膣坐剤の形で投与し得るか、またはローション剤、溶液、クリーム、軟膏もしくは散布剤の形で局所的に塗布され得る。本発明の化合物は、例えば皮膚貼布を用いることにより経皮的に投与してもよい。これらは、特に眼の疾患の治療のために眼の経路により投与してもよい。
【0171】
眼への使用のために、本発明の化合物は、塩化ベンジルアルコニウムのような防腐剤と所望により組み合わせて、等張のpH調整された滅菌の塩水中の微小化懸濁液として、または好ましくは等張のpH調整された滅菌の塩水中の溶液として処方され得る。あるいは、これらはワセリンのような軟膏に処方され得る。
【0172】
皮膚への局所塗布のために、本発明の化合物は、例えば以下の1つまたは複数を用いる混合物中に懸濁または溶解した活性化合物を含有する適切な軟膏として処方され得る:鉱物油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ろうおよび水。あるいは、これらは、例えば以下の1つまたは複数の混合物中に懸濁または溶解して適切なローション剤またはクリームとして処方され得る:鉱物油、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルろう、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水。
【0173】
口腔内での局所投与に適する製剤は、風味をつけた基材、通常はショ糖およびアカシアまたはトラガカント中に活性成分を含むトローチ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアのような不活性基材中に活性成分を含む香錠;ならびに適切な液体キャリア中に活性成分を含む口腔洗浄剤を含む。
【0174】
一般に、ヒトにおいて、本発明の化合物の経口または局所投与は、最も簡便であり、好ましい経路である。受容者が嚥下障害または経口投与後の薬物吸収の欠陥に罹患している場合は、薬物は、例えば舌下または頬側のような非経口的に投与してよい。
【0175】
獣医学的な使用のために、本発明の化合物は、通常の獣医学的なプラクティスに従う適切に許容される製剤として投与され、獣医の外科医師は、特定の動物に最も適する投与計画および投与経路を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】NetNGlycプログラムによるN-グリコシル化の予測を示す図である。 N56がグリコシル化されている可能性は閾値未満であるが、これはこの値に非常に近い。このことは、なぜN56位が全ての分子内でグリコシル化されておらず、それによって異なるグリコフォームを生成するかを説明すると思われる。
【図2】クーマシーブルーで染色されたHMFG1のSDS-PAGEゲルを示す図である。 レーン1:分子量マーカー レーン2:試料1 HMFG1 レーン3:PNGアーゼFで処理した試料1 HMFG1 レーン4: PNGアーゼFのみ レーン5:試料2 HMFG1 レーン6:PNGアーゼFで処理した試料2 HMFG1 レーン7:PNGアーゼFのみ PNGアーゼF(ニューイングランドバイオラブス(New England Biolabs))での処理は、製造者の使用説明書に従って行った。PNGアーゼF(ペプチドN-グリコシダーゼF)は、存在する場合にゲル上で可視である(レーン4および7でみられるように)。SDS-Page(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲルおよび関連する試薬は、インビトロジェンからであり、製造者の使用説明書に従って用いた。
【図3】抗原結合ELISAの結果を示す図である。 2つの試料を分析した。 試料1:四角=未処理、丸=PNGアーゼF処理 試料2:三角=未処理、ひし形=PNGアーゼF処理 2つの軸の単位は、x軸-μg/ml、y軸-吸光度である。
【図4】クーマシーブルーで染色したHMFG1変異体の4つの還元SDS-PAGEゲルを示す図である。 レーン1:分子量マーカー レーン2:HMFG1標準物質 レーン3:WT HMFG1 レーン4:N56S HMFG1 レーン5:N56G HMFG1 レーン6:N56Q HMFG1 レーン7:N56D HMFG1 レーン2は、標準GMP物質である。レーン3〜7は、一過性のトランスフェクションからの精製タンパク質である。
【図5】変異HMFG1を用いる抗原結合ELISAの結果を示す図である。 HMFG1標準物質:白抜きの四角 野生型(WT) HMFG1:塗りつぶした四角 N56G HMFG1:白抜きのひし形 N56S HMFG1 塗りつぶした丸 N56Q HMFG1 白抜きの三角 N56D HMFG1 白抜きの丸 x軸はμg/mlであり、y軸は吸光度である。 ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)の曲線は左にシフトし、抗原に対するより高い親和性を示す。
【図6】斜体で示すコザック、太字で示す開始コドンおよび下線を付したリーダー配列を有する野生型軽鎖DNA配列を示す図である。
【図7】分泌された軽鎖の配列を示す図である。
【図8】斜体で示すコザック、太字で示す開始コドンおよび下線を付したリーダー配列を有する野生型重鎖DNA配列を示す図である。
【図9】斜体で示すコザック、太字で示す開始コドンおよび下線を付したリーダー配列を有する包括的な軽鎖DNA配列を示す図である。改変のためのコドンはXXXと示す。
【図10】斜体で示すコザック、太字で示す開始コドンおよび下線を付したリーダー配列を有するN56G重鎖DNA配列を示す図である。
【図11】分泌された重鎖のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。
【図12】HMFG1の重鎖および軽鎖の別々の産生のためのベクター地図を示す図である。
【図13】HMFG1の産生のための単一ベクターのプラスミド地図を示す図である。
【図14】PCR突然変異誘発に用いたオリゴヌクレオチド配列を示す図である。 XbaI制限部位に下線を付す。変異コドンは太字である。変異コドンは、必須のアミノ酸をコードするセンス鎖コドンとして最後の列に繰り返す。PP1において、HindIIIおよびATG開始コドンに下線を付す。
【図15】安定細胞系統からの変異HMFG1を用いた抗原結合ELISA(パート1)の結果を示す図である。 HMFG1標準物質:塗りつぶした四角 N56N:白抜きの四角 N56K:白抜きの丸 N56G:白抜きの三角 N56C:白抜きのひし形 N56Q:塗りつぶした丸 x軸はμg/mlであり、y軸は吸光度である。
【図16】安定細胞系統からの変異HMFG1を用いた抗原結合ELISA(パート2)の結果を示す図である。 HMFG1標準物質:塗りつぶした四角 N56P:白抜きの四角 N56L:白抜きの丸 N56I:白抜きの三角 N56D:白抜きのひし形 N56A:塗りつぶした丸 x軸はμg/mlであり、y軸は吸光度である。
【図17】安定細胞系統からの変異HMFG1を用いた抗原結合ELISA(パート3)の結果を示す図である。 HMFG1標準物質:塗りつぶした四角 N56M:白抜きの四角 N56R:白抜きの丸 N56W:白抜きの三角 N56H:白抜きのひし形 N56F:塗りつぶした丸 x軸はμg/mlであり、y軸は吸光度である。
【図18】安定細胞系統からの変異HMFG1を用いた抗原結合ELISA(パート4)の結果を示す図である。 HMFG1標準物質:塗りつぶした四角 N56S:白抜きの四角 N56Y:白抜きの丸 pAS6K:白抜きの三角 N56T:白抜きのひし形 N56E:塗りつぶした丸 x軸はμg/mlであり、y軸は吸光度である。
【図19】一過性トランスフェクションからの変異体N56Vを用いた抗原結合ELISAの結果を示す図である。 HMFG1標準物質:白抜きの丸 N56V:白抜きの四角 x軸はμg/mlであり、y軸は吸光度である。 この変異体は、抗原に対してHMFG1と同様の親和性を示す。
【図20】NS0安定的トランスフェクションからの変異体N56Gを用いた抗原結合ELISAの結果を示す図である。 HMFG1標準物質:白抜きの四角 N56G:白抜きの丸 x軸はμg/mlであり、y軸は吸光度である。 この変異体も左へのシフトを示し、抗原に対してHMFG1よりも高い親和性を示す。
【図21】図15〜20に示すデータのまとめの表である。 EC50の値は、ELISAソフトウェアパッケージSoftMax Proを用いてELISA曲線から算出した。値は、全ての場合において同じアッセイで用いたHMFG1標準物質について得られたEC50と比較した。 N56Gについて2つの値を示す:これらの値の差異は、これらのアッセイにおける固有の変動を示す。 N56N(コドン最適化HMFG1 DNA配列)およびpAS6K (コドン非最適化HMFG1 DNA配列)についての値も示す。この差異もまた、アッセイの変動を反映する。
【図22】抗体依存性細胞傷害(ADCC)試験の結果を示す図である。 ADCCの結果は、N56Gが、ADCCの媒介についてHMFG1標準物質よりも能力があることを示し、このことはその増加した親和性による可能性が最も高い。この効果は、抗体の濃度のある範囲で見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未改変の親抗体分子の可変領域中のグリコシル化部位の一部分を形成する少なくとも1つのアミノ酸残基にて改変されている、特異的標的に選択的に結合する改変抗体分子であって、改変抗体が、アミノ酸改変が一部分を形成する前記グリコシル化部位にてグリコシル化されず、改変抗体が、未改変の親抗体分子よりも特異的標的に対してより大きい結合親和性を示すことを特徴とする改変抗体分子。
【請求項2】
未改変の親抗体分子中の改変されるアミノ酸が、アスパラギン(N)である請求項1に記載の改変抗体分子。
【請求項3】
改変の部位が、図11のアミノ酸残基VH56または別の抗体分子中の対応する残基である請求項1または2に記載の改変抗体分子。
【請求項4】
特異的標的が、MUC-1遺伝子産物である請求項1から3のいずれかに記載の改変抗体分子。
【請求項5】
改変が、アミノ酸グリシンをもたらす請求項1から4のいずれかに記載の改変抗体分子。
【請求項6】
改変抗体分子が、抗HMFGモノクローナル抗体HMFG1の抗原結合選択性と同等な抗原結合選択性を有する請求項1から5のいずれかに記載の改変抗体分子。
【請求項7】
改変された抗体がHMFG1である請求項6に記載の改変抗体分子。
【請求項8】
改変抗体分子が、単鎖抗体である請求項1から7のいずれかに記載の改変抗体分子。
【請求項9】
単鎖抗体がScFvである請求項8に記載の改変抗体分子。
【請求項10】
単鎖抗体が二重特異性抗体である請求項9に記載の改変抗体分子。
【請求項11】
改変抗体分子がヒト化されている請求項1から10のいずれかに記載の改変抗体分子。
【請求項12】
改変抗体分子がキメラ抗体である請求項1から11のいずれかに記載の改変抗体分子。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の改変抗体分子をコードするヌクレオチド配列を有する核酸。
【請求項14】
ヌクレオチド配列が図9の配列であり、配列中、XXXがアスパラギン以外のアミノ酸残基をコードする任意のコドンである請求項13に記載の核酸。
【請求項15】
請求項1から12のいずれかに記載の改変抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項16】
ヌクレオチド配列が図9の配列であり、配列中、XXXがアスパラギン以外のアミノ酸残基をコードする任意のコドンである請求項15に記載の発現ベクター。
【請求項17】
請求項1から12のいずれかに記載の改変抗体分子をコードするヌクレオチド配列の発現に起因して前記改変抗体分子を産生する宿主細胞。
【請求項18】
ヌクレオチド配列が図9の配列であり、配列中、XXXがアスパラギン以外のアミノ酸残基をコードする任意のコドンである請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項19】
少なくとも1種の他の作用物質と会合している請求項1から12のいずれかに記載の改変抗体分子。
【請求項20】
作用物質が、薬物、毒素、放射性核種、ヌクレアーゼ、酵素、サイトカインおよびケモカインから選択される少なくとも1種である請求項19に記載の改変抗体分子。
【請求項21】
作用物質が、改変抗体分子にコンジュゲートしている請求項19または20に記載の改変抗体分子。
【請求項22】
作用物質がサイトカインである請求項19から21のいずれかに記載の改変抗体。
【請求項23】
請求項1から12のいずれかに記載の改変抗体分子と、薬学的に許容されるキャリア、賦形剤および/または希釈剤とを含む組成物。
【請求項24】
請求項13または14に記載の核酸を含む組成物。
【請求項25】
少なくとも1種の他の作用物質をさらに含む請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
作用物質が、薬物、毒素、放射性核種、ヌクレアーゼ、酵素、サイトカインおよびケモカインから選択される少なくとも1種である請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
癌、炎症性障害、心血管疾患、感染性疾患、自己免疫障害、中枢神経系障害、腎炎、敗血症、ヘモグロビン尿症、化学療法誘発性血小板減少症または嗜癖の治療および/または診断および/または予防のための医薬品の製造における、請求項1から12のいずれかに記載の改変抗体分子の使用。
【請求項28】
疾患が癌である請求項27に記載の使用。
【請求項29】
癌が、乳癌、卵巣癌、子宮癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、B-NHL、多発性骨髄腫、AML、CLLまたはヘアリーセル白血病である請求項28に記載の使用。
【請求項30】
請求項13または14に記載の核酸を含むファージ。
【請求項31】
核酸が、ファージ表面タンパク質をコードするヌクレオチド配列に機能可能に連結している請求項30に記載のファージ。
【請求項32】
ヌクレオチド配列の産物を発現しかつディスプレイする請求項30または31に記載のファージ。
【請求項33】
スクリーニングアッセイにおける、請求項30から32のいずれかに記載のファージの使用。
【請求項34】
スクリーニングアッセイが、標的分子に結合できるディスプレイされた抗体、抗体断片または抗体誘導体を同定する段階を含む請求項33に記載の使用。
【請求項35】
標的が、MUC1遺伝子産物である請求項34に記載のスクリーニングアッセイの使用。
【請求項36】
未改変の親抗体分子の可変領域中のグリコシル化部位の一部分を形成する少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なるアミノ酸残基で置換することにより、抗体分子を改変して改変抗体を作製する方法であって、得られる改変抗体が、アミノ酸改変が一部分を形成する前記グリコシル化部位にてグリコシル化されず、得られる改変抗体が、未改変の親抗体分子よりも特異的標的に対してより大きい結合親和性を示すことを特徴とする方法。
【請求項37】
実施例および図面に関連して本明細書に実質的に記載されている、未改変の親抗体よりも大きい安定性を示すように改変された改変抗体分子。
【請求項38】
実施例および図面に関連して本明細書に実質的に記載されている、改変抗体分子をコードするヌクレオチド配列。
【請求項39】
実施例および図面に関連して本明細書に実質的に記載されている、改変抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2009−508514(P2009−508514A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531789(P2008−531789)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003541
【国際公開番号】WO2007/034210
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(504265846)アンティソーマ・ピーエルシー (5)
【Fターム(参考)】