説明

脱着剤としてテトラリンを用いる液相吸着により芳香族炭化水素の供給材料からメタキシレンを分離する方法

【課題】良好な選択性および吸着容量、改善された物質移動でメタキシレンを分離することができる、芳香族炭化水素供給材料からのメタキシレンの分離方法を提供する。
【解決手段】本発明は、8個の炭素原子を含む異性体を含む炭化水素供給材料からメタキシレンを分離する方法であって、該供給材料をホージャサイト型ゼオライト吸着剤と接触させる工程であって、吸着剤中の水の百分率は0〜8重量%であり、吸着温度は25〜250℃である、工程と、テトラリンおよびそのアルキル化誘導体から選択された溶媒を利用する脱着工程と、脱着剤からメタキシレンを分離する工程とを包含する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相吸着により、8個の炭素原子を含む異性体を含む芳香族炭化水素の供給材料からメタキシレンを分離する方法に関する。
【0002】
特に、この方法は、非常に純度の高いメタキシレン、すなわち、99.0%超、好ましくは99.5%超の純度を有するメタキシレンの調製に適用される。
【0003】
前記方法からのメタキシレンは、殺虫剤または化学中間体(例えばイソフタル酸)の調製のために用いられ得る。
【背景技術】
【0004】
当初は、メタキシレンは、適切な化学剤による化学的抽出または抽出蒸留を含む従来の分離技術によって芳香族供給材料から分離されていた。
【0005】
特許文献1には、主としてオルトキシレンを含む芳香族炭化水素供給材料を、抽出剤、例えばプロポキシプロパノール、1,4−ブタンジオール、安息香酸エチル、エチレングリコールフェニルエーテルまたはベンジルアルコールと接触させることによる該供給材料からのメタキシレンの分離が記載されている。しかしながら、当該技術は、上記の非常に純粋なメタキシレンを生じさせることができない。抽出剤の選択性が十分でないからである。
【0006】
特許文献2〜4には、抽出蒸留工程を用いる芳香族供給材料からのメタキシレンの分離が記載されている。しかしながら、蒸留されるべきサンプル中に存在する分子は、しばしば、互いに近接した沸点を有し、これにより、蒸留による分離が困難かつ高価なものになっている。
【0007】
これらの不利益点を克服するために、供給材料をゼオライトタイプの選択的吸着剤があるところに導くことによって芳香族炭化水素供給材料からメタキシレンを分離することを何人かの著者が提案した。このため、特許文献5には、メタキシレンの選択的吸着剤としての、交換可能なカチオンサイトがナトリウム原子によって占められているYゼオライトの使用が記載されている。メタキシレンに有利になるような満足な選択性を得るために、部分的に水和され、500℃での強熱減量が初期ゼオライト重量の2〜7重量%であるゼオライトを用いることが推奨される。当該文献は、20〜250℃の温度、大気圧〜35バールの圧力(この値は、液体の形態に供給材料を維持するように選択される)での疑似移動床法による分離を推奨する。選択される脱着剤はトルエンである。
【0008】
特許文献6には、カチオンサイトがナトリウムおよびリチウムカチオンによって同時に占められているYゼオライト(ナトリウムカチオンの交換;5〜35モル%、好ましくは10〜30モル%)であって、500℃での強熱減量が1.5〜3重量%であるものの使用が記載されている。吸着温度は、100〜145℃であり、用いられる脱着剤はトルエンまたはインダンである。
【0009】
特許文献7には、シリカ/アルミナ比が4〜6であり、カチオンサイトがナトリウムカチオンによって占められているYゼオライトの使用であって、
・脱着剤がトルエンである場合には500℃での強熱減量が1.5〜2重量%であり、吸着温度が100〜150℃であり;
・脱着剤がインダンである場合には500℃での強熱減量が1.5〜2.5重量%であり、吸着温度が100〜150℃である
使用が記載されている。
【0010】
上記に挙げられた文献に記載された方法に基づく吸着は全て、供給材料の他の成分と比較してメタキシレンについて良好な選択性でメタキシレンを分離することを可能にする。
【特許文献1】米国特許第4585526号明細書
【特許文献2】米国特許第3700744号明細書
【特許文献3】米国特許第3729523号明細書
【特許文献4】米国特許第3773846号明細書
【特許文献5】米国特許第4306107号明細書
【特許文献6】米国特許第5382747号明細書
【特許文献7】米国特許第5900523号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らの目的は、従来技術の方法で得られる選択性と実質的に同一であるかあるいはそれより良好でさえある選択性、従来技術の方法により得られる吸着容量と実質的に同一であるかあるいはそれより良好である吸着容量でメタキシレンを分離することができ、さらには、改善された物質移動(matter transfer)でメタキシレンを分離することができる、芳香族炭化水素供給材料からのメタキシレンの分離方法を提供することである。用語「物質移動」は、吸着剤中の供給材料の化合物(ここでの場合、好ましくはメタキシレン)の拡散速度を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、8個の炭素原子を含む異性体を含む炭化水素供給材料からメタキシレンを分離する方法であって、
・該供給材料を、ホージャサイト型ゼオライトを含むメタ選択性の吸着剤と接触させる工程であって、該ゼオライト中の水の百分率は0〜8重量%であり、吸着温度は25〜250℃である、工程と、
・脱着剤を利用する脱着工程と、
・該脱着剤からメタキシレンを分離する工程と
を包含し、該脱着剤は、テトラリンおよびそのアルキル化された誘導体から選択されることを特徴とするものである。
【0013】
ホージャサイト型ゼオライトは、
・(Si/Al)比が1.0〜1.5であるXホージャサイト
・(Si/Al)比が1.5超であるYホージャサイト
から選択されることが好ましい。
【0014】
ホージャサイト型ゼオライトはYホージャサイトであることが好ましい。
【0015】
Yホージャサイトは、少なくとも70%がナトリウム原子によって占められる交換可能なサイトを有することが好ましい。
【0016】
ホージャサイトの(Si/Al)比は2.5〜3であることが好ましい。
【0017】
吸着剤は、無機バインダ中に分散させられたホージャサイト型ゼオライト結晶を含む凝集体の形態であることが好ましい。
【0018】
ホージャサイトは、凝集体重量全体に対して75〜98重量%の量で凝集体に含まれることが好ましい。
【0019】
吸着剤の含水量は0〜1重量%であることが好ましい。
【0020】
接触工程の前に、吸着剤前処理工程を包含し、該吸着剤前処理工程は、
・0.5〜3時間の期間にわたる60〜120℃の一定温度での少なくとも1回の乾燥段階と、
・0.5〜3時間の期間にわたる少なくとも235℃の一定の温度での少なくとも1回の活性化段階と
を包含することが好ましい。
【0021】
乾燥段階と活性化段階の間に、観察される温度上昇は、1〜50℃/分であることが好ましい。
【0022】
吸着温度は、100〜200℃であることが好ましい。
【0023】
吸着温度は、120〜180℃であることがより好ましい。
【0024】
脱着剤の供給材料容積に対する容積比は、0.5〜2.5であることが好ましい。
【0025】
脱着剤の供給材料容積に対する容積比は、1〜2であることがより好ましい。
【0026】
操作圧力は、大気圧〜20バールであることが好ましい。
【0027】
吸着剤は、1以上の固定床の形態にあることが好ましい。
【0028】
吸着剤との接触は、疑似移動床技術を用いて行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の方法は、8個の炭素原子を含む異性体を含む炭化水素供給材料からメタキシレンを分離する方法であって、該供給材料をホージャサイト型ゼオライト吸着剤と接触させる工程であって、
・吸着剤中の水の百分率は0〜8重量%であり、吸着温度は25〜250℃である、工程と、
・テトラリンおよびそのアルキル化誘導体から選択された溶媒を利用する脱着工程と、
・脱着剤からメタキシレンを分離する工程と
を包含し、該脱着剤は、テトラリンおよびそのアルキル化された誘導体から選択される方法であるので、良好な選択性および吸着容量、改善された物質移動でメタキシレンを分離することができる、芳香族炭化水素供給材料からのメタキシレンの分離方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、8個の炭素原子を含む異性体を含む炭化水素供給材料からメタキシレンを分離する方法であって、
・該供給材料を、ホージャサイト型ゼオライトであって、該ゼオライト中の水の百分率が0〜8重量%であるものを含むメタ選択的吸着剤と接触させ、吸着温度は25〜250℃である工程と、
・テトラリンおよびそのアルキル化誘導体から選択された脱着剤を利用する脱着工程と、
・該脱着剤からメタキシレンを分離する工程と
を包含する方法を提供する。
【0031】
表現「8個の炭素原子を含む異性体を含む炭化水素供給材料」は、一般的に、メタキシレンの異性体、例えばオルトキシレン、パラキシレンまたはエチルベンゼンを含む供給材料を意味する。
【0032】
さらに、テトラリンの脱着剤としての使用は、例えば、蒸留によって、最終分離工程中の脱着剤からのメタキシレンの容易な分離を可能にする利点を有する。テトラリンとメタキシレンとの間で沸点の差異が大きいからである(それぞれ、大気圧でテトラリンについては207℃、メタキシレンについては139℃)。その結果、テトラリンは、次の脱着サイクル中に再使用のために容易に回収され得る。
【0033】
このため、メタキシレンからのテトラリンの分離の費用は、メタキシレンの沸点に近い沸点を有する脱着剤を使用する従来技術と比較してより低い。
【0034】
上記のように、吸着剤は、メタ選択的なホージャサイトゼオライト型の吸着剤である。
【0035】
本発明の関連で使用された用語「メタ選択的吸着剤」は、供給材料の他の成分、特に供給材料のC芳香族化合物、例えばパラキシレン、オルトキシレンまたはエチルベンゼンと比較してメタキシレンの優先的な吸着を可能にする吸着剤を意味する。
【0036】
本発明の関連において、ホージャサイトの2つのカテゴリーが想定されてよい:
・(Si/Al)比が1.0〜1.5であるXホージャサイト;
・(Si/Al)比が1.5超であり、例えば6以下、好ましくは2.5〜3.0であり得るYホージャサイト。
【0037】
一般に、本発明の関連で用いられるYホージャサイトは、次の一般式を有する:
(1±0.1)M2/nO:Al:wSiO:yH
ここで:
・Mは、アルカリまたはアルカリ土類金属を示す;
・wは、SiOのモル数を示す;
・yは、HOのモル数を示し8以下である;
・nは、アルカリまたはアルカリ土類金属の価数を示す。
【0038】
wが3未満である場合、上記のように、ホージャサイトはXホージャサイトに相当する。
【0039】
wが3超である場合、上記のようにホージャサイトはYホージャサイトに相当する。
【0040】
好ましくは、本発明により、ホージャサイトは、ナトリウムのみを実質的に含有するYホージャサイト、すなわち、サイトの少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%がナトリウムイオンによって占められており、任意の他の交換可能なサイトは、ナトリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類イオンによって占められているホージャサイトである。
【0041】
前記ホージャサイトの(Si/Al)比は、好ましくは2.5〜3.0である。
【0042】
本発明の適切なナトリウム含有ゼオライトの例は、US−A−4326092;US−A−5382747およびUS−A−5900523に与えられる。
【0043】
一般に、本発明の吸着剤は、ホージャサイト型ゼオライト、好ましくはYゼオライトの結晶を含み、該結晶は、無機バインダ、例えばアルミナまたはクレー中に分散させられ、無機バインダの量は、一般的には吸着剤の全体重量の25%を超えない、凝集体の形態である。
【0044】
凝集体中に存在するYホージャサイトの量は、一般的に、凝集体の全体重量に対して75〜98重量%である。
【0045】
凝集体は、一般的に、ホージャサイトの粉体から、当業者に既知の方法を用いて、確定したサイズ範囲の硬質の粒子、例えば押出体、凝集体またはビーズを形成するように調製される。
【0046】
上記に挙げられた粒子は、100マイクロメートル〜数ミリメートルの平均サイズを有し得る。
【0047】
本発明によると、用いられるゼオライトの含水量は、ゼオライトの全体重量に対して0〜8重量%、好ましくは0〜1重量%である。
【0048】
ゼオライトの含水量が0〜1重量%である場合、このような含水量を達成するために、炭水化物供給材料と接触させる前に、ゼオライトは、有利には、ゼオライト中の湿気の量を低減させ、かつ、より良好な物質移動を達成し、大量のメタキシレンを吸着することができるようにこれを活性化することもできる特定の前処理工程を経る。
【0049】
前記の前処理工程は、
・60〜120℃の一定温度での0.5〜3時間の期間にわたる少なくとも1回の乾燥段階と、
・少なくとも235℃かつ500℃以下の一定の温度での0.5〜3時間の期間にわたる少なくとも1回の活性化段階と
を包含する。
【0050】
好ましくは、前記前処理工程は、窒素等の不活性ガス雰囲気中あるいは雰囲気中の湿気の存在を最少にした乾燥空気雰囲気中で行われる。
【0051】
一定温度の乾燥および活性化段階の間で着実な温度上昇を選ぶことが好ましく、該上昇は、例えば1〜50℃/分の速度である。
【0052】
乾燥段階と活性化段階との間の他の中間的な一定温度段階が提供されてもよい。
【0053】
中間段階の間、上記のように温度上昇が遅いことも推奨される。
【0054】
このため、例えば、400℃でゼオライトが活性化されることになる場合、80℃での一定温度の乾燥段階の後、150℃、200℃、250℃および300℃の段階が引き起こされ得る。例えば、80℃での乾燥段階および400℃での活性化段階が1時間にわたり維持され得る一方で、45分にわたり中間段階が維持され得る。
【0055】
種々の一定温度段階の間、温度は、例えば、5℃/分の速度で直線的に増加させられ得る。
【0056】
この前処理工程は、直列に配置され、それぞれが一定の温度段階を採るように機能する複数の炉を用いるか、または、種々の一定温度段階を実行するようにプログラミングされた単一の炉を用いて行われてよい。
【0057】
ガス供給速度および吸着剤供給速度等のパラメータは、当業者によって容易に調整され得る。
【0058】
この前処理工程は、処理中の吸着剤の性能のわずかな劣化でさえ回避することができる。
【0059】
前処理工程の終了時に、部分的または完全に脱水された吸着剤は、ゼオライトの全体重量に対して0〜1重量%の含水量で得られる。
【0060】
工程の終了時に得られた脱水の度合いのために、ゼオライトは、脱アルミネーション反応による結晶性の損失または劣化の危険もなく非常に高い温度(例えば、700〜800℃の程度)で安定である。
【0061】
上記の水の量は、乾燥不活性ガス、例えば窒素のパージ中、十分な長い期間(その期間の後にその重量が一定のままであるような:一般的には1〜2時間)にわたる500℃の実効温度で吸着剤が受けた重量損失の百分率として定義される500℃での強熱減量(loss on ignition:LOI)を測定することによって決定される。この強熱減量は、吸着剤の初期質量に対して表現される。
【0062】
上記に挙げられたホージャサイト型の新しい吸着剤(すなわち、その最初の使用前の吸着剤)の場合、強熱減量は、ほぼもっぱら水の損失に相当する。したがって、損失は、一般的に、吸着剤の含水量の測定であると考えられ得る。しかしながら、吸着剤上の水の実際の量は、カール・フィッシャー法(ASTM D1364)等の分析法によって決定され得る。
【0063】
本発明によると、炭化水素供給材料は、吸着剤(好ましくは前処理された)と、25〜250℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜180℃の吸着温度で接触させられる。操作圧力は、大気圧〜20バールであってよい。
【0064】
一定工程の関連で利用される操作条件により、吸着剤上でのメタキシレンの高度に選択的な吸着および優れた物質移動が可能になる。
【0065】
前述において、用語「吸着剤と接触させられる混合物(略語Xによって規定される)の他の化合物と比較したメタキシレンについての吸着剤の選択性」は、下記に規定される濃度の比を意味する:
[(メタキシレン)/(X)]/[(メタキシレン)]/(X)
ここで、
・(メタキシレン)および(メタキシレン)は、それぞれ、吸着剤を通過した後の平衡時の吸着剤中および混合物中のメタキシレンの重量濃度を示す;
・(X)および(X)は、それぞれ、吸着剤を通過した後の平衡時の吸着剤中および混合物中の他の化合物の重量濃度を示す。
【0066】
吸着剤の床を通過する混合物の組成がもはや変化しない時、言い換えると、吸着相と非吸着相との間に起こる物質の正味の移動がまったくない時に平衡に達する。
【0067】
上記に定義された選択性が約1である場合、これは、メタキシレンおよび他の化合物がほぼ同一の量で吸着されることを意味する。言い換えると、これは、化合物を比較した場合に優先的な吸着がないことを意味する。
【0068】
選択性が1を超える場合、これは、混合物の他の化合物を超えてメタキシレンが優先的に吸着されることを意味する。
【0069】
好ましくは、供給材料の他の成分と比較したメタキシレンの選択性は、1.5より大きくあるべきである。
【0070】
メタキシレンの吸着剤の選択性を決定するための選択の技術は、Ruthvenによる著作物「Principles of Adsorption and Adsorption Processes」(220−273ページ)において説明されるような破過曲線(breakthrough curve)を作成することからなり得る。
【0071】
吸着剤と供給原料との間の物質移動を概算するために、Ruthvenの著作物「Principles of Adsorption and Adsorption Processes」(第8章、248−250ページ)に説明されるような段理論(plate theory)を用いることが可能である。
【0072】
本発明の方法は、脱着工程を包含しており、該脱着工程は、テトラリンの流れまたはそのアルキル化された誘導体群の一つの流れを吸着剤上に通過させることからなる。
【0073】
挙げられてよいアルキル化されたテトラリン誘導体群は、メチルテトラリン、エチルテトラリン、プロピルテトラリン、イソプロピルテトラリン、メチルエチルテトラリン、ジメチルテトラリンおよびジエチルテトラリンである。明らかに、用語「アルキル化されたテトラリン誘導体群」は、全ての位置異性体を包含する。
【0074】
脱着剤として用いられるテトラリン(またはそのアルキル化された誘導体群)は、以下の利点を有する:
・供給材料中に存在する他の化合物に対するメタキシレンの選択性の低下も反転も引き起こさない点での、供給材料および吸着剤との良好な親和性;
・メタキシレンおよび/または吸着剤に関する非反応性;
・余りに多くのテトラリンを消費することなくメタキシレンを相当迅速に移動させるための十分な力;
・吸着剤中の良好な拡散性;
・メタキシレンと実質的に相違し、これにより、簡単な蒸留によりテトラリンとメタキシレンの容易な分離を可能とする沸点。
【0075】
脱着工程は、有利には、上記の吸着工程の関連で用いられた温度および圧力に類似の温度および圧力で行われる。
【0076】
脱着剤の供給材料に対する容積比は、好ましくは0.5〜2.5、好ましくは1〜2である。
【0077】
最初の2工程(吸着工程および脱着工程)の後、反応器出口から、最少の選択性で吸着された化合物と共に脱着剤を含む第1の流れが得られ(該第1の流れは、吸着剤を通過した脱着剤の第1の通過(単数または複数)に相当する)、第2の流れは、脱着剤およびメタキシレンを含む(該第2の流れは、吸着剤を通過する脱着剤の後の通過(単数または複数)に相当する)。
【0078】
第1の流れは、例えば、蒸留によって2つの流れに分離され得る;
・脱着剤を含む流れ;
・最少の吸着選択性で吸着された、供給材料の化合物を含む流れ。
【0079】
本発明によると、第2の流れは、例えば、蒸留によって、脱着剤からメタキシレンを分離するように処理される。
【0080】
回収されたテトラリンは、その後、次の工程で再使用されてよい。
【0081】
固体吸着剤の床が処理対象の供給材料と接触することを可能にする任意の設備が、本発明の方法を行うために用いられてよい。
【0082】
このため、本発明の一実施形態(バッチ様式)によると、吸着剤は、供給材料および脱着剤と代わる代わる接触させられる1以上の固定床の形態とされる。
【0083】
別の実施形態(連続様式)によると、吸着剤との接触は、疑似移動床技術(好ましくは向流様式)として知られた技術を用いてなされてよい。当該技術は、前記カラム内を移動する主要な流れの方向に、処理対象の供給材料および脱着剤を注入する位置および抽出物(メタキシレン+脱着剤)およびラフィネート(供給材料の他の化合物+脱着剤)を抜き出す位置を周期的に同時に移動させて行われる。12〜24床を含む装置がこの技術において用いられてよい。
【0084】
以下、本発明は、以下の実施例に関して記載されるが、これらは、制限しない例示として与えられる。
【0085】
(実施例1)
本実施例では、破過試験(前端クロマトグラフィー)が行われ、US−A−4306107に記載された操作条件、すなわち、強熱減量(500℃で測定)が2.3%である吸着剤および120℃の吸着温度を用い、次いで、US−A−5900523に記載された操作条件、すなわち、強熱減量(500℃で測定)が1.75重量%である吸着剤および125℃の吸着温度を用いてメタキシレン/オルトキシレン混合物からメタキシレンを分離する際のトルエンの効果が決定された。
【0086】
供給材料の組成は、次の通りである:
・メタキシレン:45重量%:
・オルトキシレン:45重量%:
・イソオクタン:10重量%(イソオクタンは、非選択的な容積を概算するためのトレーサーとして用いられたのであり、分離には含まれない)。
【0087】
吸着剤は、ナトリウムで置換されたY型ホージャサイトであった。これらの試験のために用いられた吸着剤の量は約55gであった。
【0088】
それぞれ1.75重量%および2.3重量%の強熱減量に達するのに必要な活性化は、現場外の管状炉において40L/hの窒素流を用いて行われた。
【0089】
破過曲線およびブレイクアウト曲線(breakout curve)を得るために用いられた操作手順は、次の通りであった:
1)吸着剤によりカラムを充填し、カラムを試験台上に置く;
2)室温でトルエンにより充填する;
3)トルエンの流れ(5cm/分)の中で吸着温度を着実に上昇させる;
4)吸着温度に達した時に10cm/分でトルエンを注入する;
5)供給材料の注入を可能にするためにトルエンを抜き出す;
6)供給材料を注入し(10cm/分)、注入は、熱力学的平衡に達するのに十分な期間にわたり維持される;
7)破過(breakthrough)流出物を集めてこれを分析する;
8)脱着溶媒(トルエン)を注入するために供給材料を抜き出す;
9)吸着剤上に吸着させられた化合物を脱着させるのに十分な期間にわたり脱着溶媒(トルエン)を注入する(10cm/分);
10)破過流出物を集め、これを分析する。
【0090】
前記試験のための圧力は、上記の供給材料および溶媒が液相に保たれるように10バールに維持された。
【0091】
2つの破過の結果が下記表1に示される。
【0092】
オルトキシレンと比較したメタキシレンについての選択性は、物質収支を用いて計算された。テトラリンによるメタキシレンの選択性は、実験曲線(破過およびブレイクアウト)をシミュレーションすることにより計算された。
【0093】
種々の破過の結果は、下記表1に示される。
【0094】
【表1】

【0095】
(実施例2)
本実施例では、破過試験(前端クロマトグラフィー)が行われ、メタキシレン/オルトキシレン混合物からメタキシレンを分離する際のテトラリンの効果が測定された。
【0096】
用いられた吸着剤は、ナトリウムで置換されたYホージャサイト型ゼオライト(NaYで表示する)であって、500℃での強熱減量が0.05重量%未満であるものである。吸着温度(脱着温度と同様)は、160℃に固定された。
【0097】
試験のために用いられた吸着剤の活性化前の量は56.6gであった。
【0098】
次いで、吸着剤は、これを現場で活性化するように、室温で40L/hの流量で窒素をカラムに注入することにより前処理され、次いで、一定の温度段階で80℃、150℃、200℃、250℃、300℃および400℃に昇温させた。一定の温度段階の間、温度は、5℃/分の速度で直線的に昇温させられた。
【0099】
温度は、他の段階において1時間および45分にわたり80℃および400℃に維持された。吸着剤を活性化させた後の温度の統計データが図1に与えられる。
【0100】
活性化後の吸着剤の質量は55.3gであった。
【0101】
残余の500℃での強熱減量は、0.05%未満であった。
【0102】
破過曲線を得るために用いられた操作手順は、次の通りであった:
1)吸着剤によりカラムを充填し、カラムを試験台上に置く;
2)室温でテトラリンにより充填する;
3)テトラリンの流れ(5cm/分)の中で吸着温度を着実に上昇させる(160℃);
4)吸着温度(160℃)に達した時に10cm/分でテトラリンを注入する;
5)供給材料の注入を可能にするためにテトラリンを抜き出す;
6)供給材料を注入し(10cm/分)、注入は、熱力学的平衡に達するのに十分な期間にわたり維持される;
7)破過流出物を集め、これを分析する;
8)脱着溶媒(テトラリン)を注入するために供給材料を抜き出す;
9)吸着剤上に吸着させられた化合物を脱着させるのに十分な期間にわたり脱着溶媒(テトラリン)を注入する(10cm/分);
10)破過流出物を集め、これを分析する。
【0103】
試験の間、カラムの温度は160℃に維持され、圧力は10バールに維持され、上記の供給材料および溶媒は、液相を維持した。
【0104】
供給材料の組成は、次の通りであった:
・メタキシレン:45重量%;
・オルトキシレン:45重量%;
・イソオクタン:10重量%(これは、非選択容積を概算するためのトレーサーとして用いられたのであり、分離に含まれない)。
【0105】
用いられた脱着剤は、テトラリン、すなわち1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンであった。
【0106】
破過およびブレイクアウトの間、カラムからの流出物がサンプリングされ(80サンプル)、次いで、ガスクロマトグラフィーによって分析され、種々の時間間隔でのその組成が測定された。
【0107】
当該供給材料および脱着溶媒に対応する破過およびブレイクアウト曲線が図2に与えられる。
【0108】
吸着剤の容量およびその選択性が計算され、下記表2に与えられる。オルトキシレンに対するメタキシレンの選択性は、物質収支を用いて計算された。
【0109】
テトラリンと比較したメタキシレンの選択性は、実験曲線(破過およびブレイクアウト)をシミュレーションすることによって計算された。
【0110】
【表2】

【0111】
得られた結果は、メタキシレン/溶媒の選択性が特に良好であることを示す。同様に、吸着剤中のメタキシレンの拡散は、特に満足できるものである。破過データから計算されるように理論段高(theoretical plate height)がかなり低いからである。
【0112】
(実施例3)
本実施例では、破過試験(前端クロマトグラフィー)が行われ、メタキシレン/オルトキシレンの混合物からメタキシレンを分離する際のテトラリンの効果が測定された。
【0113】
用いられた吸着剤は、ナトリウムで置換されたYホージャサイト型ゼオライト(NaYで表示)であって、500℃の強熱減量が2.2重量%であるものであった。吸着温度(脱着温度と同様)は、140℃に固定された。
【0114】
試験のために用いられた吸着剤の活性化前の量は55.9gであった。
【0115】
500℃での強熱減量が2.2重量%に達するのに必要な活性化が現場外の管状炉において、400L/hの窒素流量を用いて行われた。
【0116】
500℃での強熱減量は、0.05%未満であった。
【0117】
破過およびブレイクアウト曲線を得るために用いられた操作手順は、次の操作を含んでいた:
1)吸着剤によりカラムを充填し、カラムを試験台上に置く;
2)室温でテトラリンにより充填する;
3)テトラリンの流れ(5cm/分)の中で吸着温度を着実に上昇させる(140℃);
4)吸着温度(140℃)に達した時に10cm/分でテトラリンを注入する;
5)供給材料の注入を可能にするためにテトラリンを抜き出す;
6)供給材料を注入し(10cm/分)、注入は、熱力学的平衡に達するのに十分な期間にわたり維持される;
7)破過流出物を集め、これを分析する;
8)脱着溶媒(テトラリン)を注入するために供給材料を抜き出す;
9)吸着剤上に吸着させられた化合物を脱着させるのに十分な期間にわたり脱着溶媒(テトラリン)を注入する(10cm/分);
10)破過流出物を集め、これを分析する。
【0118】
試験の間、カラムの温度は140℃に維持され、圧力は10バールに維持され、上記の供給材料および溶媒は液相に維持された。
【0119】
供給材料の組成は、次の通りであった:
・メタキシレン:45重量%;
・オルトキシレン:45重量%;
・イソオクタン:10重量%(これは、非選択容積を概算するためのトレーサーとして用いられるのであり、分離に含まれない)。
【0120】
用いられた脱着剤は、テトラリンすなわち1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンであった。
【0121】
破過およびブレイクアウトの間、カラムからの流出物がサンプリングされ(80サンプル)、次いで、ガスクロマトグラフィーにより分析され、種々の時間間隔でのその組成が測定された。
【0122】
供給材料および脱着溶媒に対応する破過およびブレイクアウト曲線は、図3に与えられる。
【0123】
吸着剤の容量およびその選択性が計算され、下記表3に与えられる。オルトキシレンに対するメタキシレンの選択性は、物質収支を用いて計算された。
【0124】
テトラリンと比較したメタキシレンの選択性は、実験曲線(破過およびブレイクアウト)をシミュレーションすることによって計算された。
【0125】
【表3】

【0126】
得られた結果は、メタキシレン/溶媒の選択性が特に良好であることを示す。同様に、吸着剤中のメタキシレンの拡散は、特に満足すべきものである。破過データから計算されるように理論段高はかなり低いからである。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】実施例2において用いられる吸着剤を前処理した後の温度の統計データを示す。
【図2】脱着剤としてテトラリンを用い、500℃での強熱減量が0.05重量%未満であるYホージャサイト型の吸着剤を通過させる、メタキシレン/オルトキシレン混合物からのメタキシレンの160℃での分離のクロマトグラフィーの表示を示す。
【図3】脱着剤としてテトラリンを用い、500℃での強熱減量が2.2重量%未満であるYホージャサイト型の吸着剤を通過させる、メタキシレン/オルトキシレン混合物からのメタキシレンの140℃での分離のクロマトグラフィーの表示を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
8個の炭素原子を含む異性体を含む炭化水素供給材料からメタキシレンを分離する方法であって、
・該供給材料を、ホージャサイト型ゼオライトを含むメタ選択性の吸着剤と接触させる工程であって、該ゼオライト中の水の百分率は0〜8重量%であり、吸着温度は25〜250℃である、工程と、
・脱着剤を利用する脱着工程と、
・該脱着剤からメタキシレンを分離する工程と
を包含し、該脱着剤は、テトラリンおよびそのアルキル化された誘導体から選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
ホージャサイト型ゼオライトは、
・(Si/Al)比が1.0〜1.5であるXホージャサイト
・(Si/Al)比が1.5超であるYホージャサイト
から選択される、請求項1に記載のメタキシレン分離法。
【請求項3】
ホージャサイト型ゼオライトはYホージャサイトである、請求項1または2に記載のメタキシレン分離法。
【請求項4】
Yホージャサイトは、少なくとも70%がナトリウム原子によって占められる交換可能なサイトを有する、請求項3に記載のメタキシレン分離法。
【請求項5】
ホージャサイトの(Si/Al)比は2.5〜3である、請求項3または4に記載のメタキシレン分離法。
【請求項6】
吸着剤は、無機バインダ中に分散させられたホージャサイト型ゼオライト結晶を含む凝集体の形態である、請求項1〜5のいずれか1つに記載のメタキシレン分離法。
【請求項7】
ホージャサイトは、凝集体重量全体に対して75〜98重量%の量で凝集体に含まれる、請求項6に記載のメタキシレン分離法。
【請求項8】
吸着剤の含水量は0〜1重量%である、請求項1〜7のいずれか1つに記載のメタキシレン分離法。
【請求項9】
接触工程の前に、吸着剤前処理工程を包含し、該吸着剤前処理工程は、
・0.5〜3時間の期間にわたる60〜120℃の一定温度での少なくとも1回の乾燥段階と、
・0.5〜3時間の期間にわたる少なくとも235℃の一定の温度での少なくとも1回の活性化段階と
を包含する、請求項8に記載のメタキシレン分離法。
【請求項10】
乾燥段階と活性化段階の間に、観察される温度上昇は、1〜50℃/分である、請求項9に記載のメタキシレン分離法。
【請求項11】
吸着温度は、100〜200℃である、請求項1〜10のいずれか1つに記載のメタキシレン分離法。
【請求項12】
吸着温度は、120〜180℃である、請求項11に記載のメタキシレン分離法。
【請求項13】
脱着剤の供給材料容積に対する容積比は、0.5〜2.5である、請求項1〜12のいずれか1つに記載のメタキシレン分離法。
【請求項14】
脱着剤の供給材料容積に対する容積比は、1〜2である、請求項13に記載のメタキシレン分離法。
【請求項15】
操作圧力は、大気圧〜20バールである、請求項1〜14のいずれか1つに記載のメタキシレン分離法。
【請求項16】
吸着剤は、1以上の固定床の形態にある、請求項1〜15のいずれか1つに記載のメタキシレン分離法。
【請求項17】
吸着剤との接触は、疑似移動床技術を用いて行われる、請求項1〜16のいずれか1つに記載のメタキシレン分離法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−45824(P2007−45824A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217613(P2006−217613)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】