説明

脱穀機の選別装置

【課題】被選別物中の夾雑物の多少に応じて選別制御することによって選別性能に優れた脱穀機の選別装置を提供する。
【解決手段】選別装置は、被選別物を順次揺動搬送する揺動流板上に積層する被選別物の層厚を検出する層厚センサ15と、選別不十分な被選別物を該揺動流板上方等の選別経路中途部に放出する2番還元ラセン中の穀粒流量を検出する2番流量センサ24とを有すると共に、層厚センサ15及び2番流量センサ24の検出値と、選別制御手段50に記憶された校正線とを比較することによって被選別物中の夾雑物の多少を判別し、夾雑物の多い場合は唐箕ファンモータ54を制御して唐箕ファン風量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀機の選別装置に関し、詳しくは被選別物の選別能力を適宜変更調整する脱穀機の選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被選別物を移送しながら漏下選別する揺動選別手段上に積層される被選別物の層厚を検出する層厚センサ、2番還元ラセンから選別経路中途部に還元される被選別物の流量を検出する2番流量センサ等の出力に基づいて選別能力を調整する脱穀機の選別装置が案出されている(特許文献1乃至3参照)。
【0003】
上記特許文献1記載の選別装置は、層厚センサによって検出される揺動選別手段上(揺動選別板)の被選別物の層厚に基づいて唐箕ファン風量及びチャフシーブのフィン開度の目標値を設定し、上記層厚センサ及び2番流量センサの検出値が、予め選別制御手段(制御手段)に記憶されている2番還元ラセン(スクリューコンベヤ)の流量と揺動選別手段上の層厚との予測量の範囲を外れた場合に、前記目標値を補正するように構成されている。
【0004】
また、特許文献2記載の選別装置も同様に、上記層厚センサもしくは車速センサからの検出値に基づいて選別制御すると共に、2番還元ラセン(スクリューコンベヤ)より還元される被選別物の流量によって該選別制御を補正するように構成されている。
【0005】
更に、特許文献3記載の選別装置は、予め選別制御手段にそれぞれ記憶させている2番流量センサ(穀粒センサ)及び層厚センサの基準値と、2番還元ラセン(2番移送螺旋)から還元された被選別物を再処理する2番処理胴の排塵口からの穀粒量を検出する2番流量センサ及び層厚センサの検出値とを比較演算して選別制御をしている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−33号公報
【特許文献2】特許第2721083号公報
【特許文献3】特開平10−155349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記選別装置は、層厚センサ、2番流量センサ等の検出値に基づいてチャフシーブのフィン開度や唐箕ファン風量を調整し、選別性能の向上を図っているが、どれも揺動選別手段上に積層された被選択物中の夾雑物の多少を判別して選別制御するものではなく、該被選別物中の夾雑物の多少に関係なく同一の選別制御をしていたため、選別性能が充分ではない。
【0008】
そこで本発明は、判別手段によって揺動選別手段上に積層された被選別物中の夾雑物の多少を判別し、該判別手段の判定結果に基づき、選別能力を調整することによって選別性能の良い脱穀機の選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、被選別物を搬送漏下させる揺動選別手段(10)と、該揺動選別手段(10)から漏下した被選別物に選別風を当てて選別する風選別手段(7)と、を備え、被選別物を穀粒と夾雑物とに選別する脱穀機(1)の選別装置(2)において、
前記揺動選別手段(10)上の被選別物に含まれる夾雑物の多少を判別する判別手段(15,24,50)を備え、
該判別手段の判定結果に基づいて、被選別物の選別能力を調整する、
ことを特徴とする脱穀機の選別装置にある。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記判別手段(15,24,50)は、前記揺動選別手段(10)上の被選別物の厚さを検出する層厚センサ(15)と、
選別不十分な被選別物を還元する2番還元ラセン(25)の被選別物中の穀粒流量を検出する2番流量センサ(24)と、を備え、
前記層厚センサ(15)に基づく前記揺動選別手段(10)上の層厚と前記2番流量センサ(24)に基づく穀粒流量との関係により、前記揺動選別手段(10)上の被選別物に含まれる夾雑物の多少を判別してなる、
請求項1記載の脱穀機の選別装置にある。
【0011】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によると、揺動選別手段上の被選別物に含まれる夾雑物の多少を判別手段によって判別し、該判別手段の判定に基づいて選別能力を調整するので、被選別物の選別性能を向上させることができる。またこれにより、揺動選別手段上に被選別物が溜まり、選別室から被選別物が漏れ出すことも防止することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によると、判別手段は、揺動選別手段上の被選別物の厚さを検出する層厚センサと、2番還元ラセンの被選別物中の穀粒流量を検出する2番流量センサとを備えてなり、該層厚センサと2番流量センサとの検出値の関係により被選別物中の夾雑物の多少を判別することによって、夾雑物の多少とは関係なしに被選別物を選別している基本選別制御を補正し、選別性能を向上させると共に、上記層厚センサや2番流量センサを基本選別制御に使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
<第1の実施の形態>
図1に示すようにコンバインの脱穀機1は、脱穀装置30とその下方に設けられた選別装置2とからなり、該脱穀装置30には前処理部(不図示)で刈取られた穀稈を挟持搬送するフィードチェーン40に沿って第1扱ぎ室31及び第2扱ぎ室32が設けられている。また、第1扱ぎ室31及び第2扱ぎ室32にはそれぞれ第1扱ぎ胴33及び第2扱ぎ胴35が配設されていると共に、該第1及び第2扱ぎ胴33,35の下方には受網34,36が配設され、扱ぎ落とされた穀粒及び藁屑等の夾雑物が混合した被選別物がふるいにかけられて漏下する。一方、該第1及び第2扱ぎ胴33,35によって穀粒を扱ぎ落とされた排稈は、フィードチェーン40の搬送後端に配置された排藁チェーン41によって後処理装置38まで搬送され、適宜長さに切断されて排出口42より排出される。
【0016】
上記受網34,36の下方には選別装置2が設けられており、ベース3から立設された側板に囲まれた選別室内に揺動選別手段10と、風選別手段7とを備えて構成されている。該揺動選別手段10は、受網34から漏下する被選別物を順次揺動搬送する揺動流板11と、該揺動流板11の後方に設けられ、かつ複数のフィン12aを有するチャフシーブ12と、該チャフシーブ12の下方に位置し、所定の目合いを有する金網部材で構成されるグレンシーブ13と、受網36から漏下した被選別物を篩選別するストローラック14とからなり、不図示のカムもしくはクランク機構等の揺動リンクによって所定周期で連続的に往復揺動するように構成されている。
【0017】
また、揺動流板11にはフロート式の層厚センサ15(判別手段)が設けられており、該揺動流板11上に積層した被選別物の層厚を検出している。なお該層厚センサ15は、フロート式ではなく超音波等の他の方式を用いたものでもよい。
【0018】
一方、風選別手段7は、唐箕ファン4と、2番選別ファン5とからなり、選別風により被選別物を風選別していると共に、該風選別手段7によって吹き飛ばされた夾雑物は排塵ファン6を備えた排塵口8から排出される。上記唐箕ファン4は、揺動流板11の下方に設けられ、チャフシーブ12及びグレンシーブ13を漏下してくる被選別物を風選別し、2番選別ファン5は、1番ラセン22と2番ラセン21との間に配設され、ストローラック14を漏下してくる被選別物を風選別する。
【0019】
なお、チャフシーブ12のフィン12aはその開度を調節可能に設けられており、被選別物の漏下量を調整すると共に、唐箕ファン4の選別風の通風量も制御している。また、唐箕ファン4の通風口には整流板4aが設けられている。
【0020】
上述の唐箕ファン4によって精選された穀粒は、上記1番ラセン22によって横搬送されると共に、揚こくラセン筒23を介してホッパー(不図示)に貯留される。また、ストローラック14を漏下した選別不十分な被選別物は、2番ラセン21によって横搬送されると共に、2番還元ラセン筒20内の2番還元ラセン25によって選別経路中途部である揺動流板11及びチャフシーブ12上に還元される。
【0021】
該2番還元ラセン25は、図2及び図3に示すようにラセン軸25aの周りに複数のラセン羽根25bが設けられていると共に、その上端部には放出体25cが配設されている。また、2番還元ラセン筒20の放出口には2番流量センサ24(判別手段)が設けられており、回動支軸24bと、該回動支軸24bに固設される衝突板24aとを備えて形成されている。
【0022】
該2番流量センサ24は、上記放出体25cに跳ね上げられた被選別物が衝突板24aに衝突する際の衝突エネルギーを検出しているため、重量が極めて軽い藁屑等の夾雑物の衝突エネルギーは検出せず、一定の重量を持った穀粒の衝突エネルギーのみを検出し、もって2番還元ラセン25中の穀粒の流量を検出することができる。また、該2番流量センサ24に近接して送風体26が配設されており、夾雑物が放出口に詰まることを防止している。
【0023】
次に本発明の第1の実施の形態に係る脱穀機の選別装置の作用について主に図5のフローチャートに基づいて説明をする。
【0024】
オペレータは収穫作業を始めるにあたり、図4に示す選別自動スイッチ51及び作業機クラッチレバー(作業機クラッチスイッチ53)をオンにし、選別装置2の選別自動制御を有効にして作業を開始する(S1)。脱穀作業が開始されると、選別制御手段50(判別手段)は、層厚センサ15によって検出される揺動流板11上の被選別物の層厚に基づいて唐箕ファン風量もしくはチャフシーブ12のフィン開度を唐箕ファンモータ54及びチャフシーブモータ55を制御して揺動流板上の被選別物量を調整する(基本選別制御)(S2)。
【0025】
また、該選別制御手段50は、層厚センサ15の検出結果に基づいて揺動流板11上の被選別物量を制御すると共に、フィン開度センサ52及び2番流量センサ24によって、チャフシーブ12のフィン開度KF及び2番還元ラセン25の穀粒の流量KNを読込む(S3),(S4)。
【0026】
該選別制御手段50は、図7(a)に示す穀粒のみの被選別物を用いて測定された揺動流板11上の被選別物の層厚と2番還元ラセン25の穀粒流量との関係(校正線L1)を記憶しており、フィン開度センサ52によって読込んだフィン開度KFにおける校正線L1と、2番流量センサ24の出力値とを比較して層厚センサ15の出力予測値P(2番流量センサ24の検出値KNにおける校正線L1の揺動流板11上の被選別物量)を算出する(S5)。
【0027】
次に選別制御手段50は、層厚センサ15の検出値KSNを読込み(S6)、上記出力予測値Pと許容値Kとの合計値と、層厚センサ15の検出値KSNとを比較して揺動流板11上の被選別物の夾雑物の多少を判別する(S7)。
【0028】
該出力予測値Pと許容値Kとの合計値より層厚センサ15の検出値KSNが大きい場合、揺動流板11上の被選別物中に夾雑物が多く含まれていると判別し、唐箕ファン4の風量を上げる(S8)と共に、該出力予測値Pと許容値Kとの合計値より層厚センサ15の検出値KSNが小さくなるまで上記ステップを繰り返す。
【0029】
一方、層厚センサ15の検出値KSNが、該出力予測値Pと許容値Kとの合計値内の場合、揺動流板11上の被選別物中に夾雑物が少ないと判別すると共に、唐箕ファン風量が標準風量かどうかを確認され(S9)、該唐箕ファン風量が標準風量でない場合は、標準風量に戻される(S10)。唐箕ファン風量が標準風量になると、刈取り作業を終了するかどうかを判別し(S11)、終了の場合は、上記選別制御を終了し(S12)、終了でない場合は上記ステップを繰り返す。
【0030】
なお、第1の実施の形態では、揺動流板11上の被選別部材の層厚に基づいて基本的な選別制御をしたが、2番流量センサ24の検出に基づいて2番還元ラセン25からの被選別物の流量を調整しても良く、他にも車速センサによって検出される刈取り走行速度に基づくものや、搬送穀稈ボリュームに基づき選別制御するものでも良い。
【0031】
また、層厚センサ15及び2番流量センサ24の検出値に基づいて被選別物中の夾雑物の多少を判別したが、2番流量センサ24に代えて、揺動選別手段10の揺動リンクに力学センサを配置して、その出力から穀粒量を検出しても良い。更に、被選別物中に夾雑物が多いと判別された際、唐箕ファン風量でなく、チャフシーブ12のフィン開度を調整しても良く、また唐箕ファン風量及びチャフシーブ12のフィン開度の両方を調整しても良い。
【0032】
上記のように脱穀機1の選別装置2を構成したことによって、選別制御手段50に記憶している穀粒のみの被選別物を用いて測定された揺動流板11上の被選別物の層厚及び2番還元ラセンの穀粒量との関係(校正線L1)と、層厚センサ15及び2番流量センサ24の検出値とを比較演算することによって、揺動流板11上の被選別物中の夾雑物の多少を判別することができる。
【0033】
また、該被選別物中の夾雑物が多いと判別した際には、唐箕ファン4の風量を上げることによって、被選別物の選別能力を向上させることができると共に、揺動流板11上に被選別物が溜まり、選別室から被選別物が漏れ出すこともない。
【0034】
<第2の実施の形態>
以下に、夾雑物の混合度合いによって唐箕ファン風量の増加量を調節する本発明に係る第2の実施の形態において、第1の実施の形態と相違する点について説明をする。なお、第1の実施の形態と対応するものについては同一符号を付すものとする。
【0035】
図6に示すように選別制御手段50は、第1の実施の形態と同様に図7(b)に示す校正線L1に基づいて出力予測値Pを算出すると共に、層厚センサ15の検出値KSNと、出力予測値P及び許容値Kの合計値を比較して揺動流板11上の被選別物中の夾雑物の多少を判別する(S1〜S6)。
【0036】
層厚センサ15の検出値KSNが出力予測値Pと許容値Kとの合計値よりも大きい場合、選別制御手段50は、揺動流板11上の被選別物中に夾雑物が多く混合していると判別すると共に、該層厚センサ15の検出値KSNの出力予測値P及び許容値Kの合計値からの超過量を図7(b)に示すようにレベル1〜3にクラス分けし、超過量が多いほど被選別物中に夾雑物が多いと判別する(S13)。
【0037】
そして、超過量のレベルに応じて唐箕ファン風量の増加量もレベル1〜3にクラス分けし、超過量が多いほど唐箕ファン4の風量の増加量を大きくし(S8a,S8b,S8c)、該出力予測値P及び許容値Kの合計値より層厚センサ15の検出値KSNが小さくなるまで上記ステップを繰り返す。なお、層厚センサ15の検出値KSNが出力予測値P及び許容値Kの合計値よりも小さい場合は、第1の実施の形態と同様の制御をする。
【0038】
以上のように脱穀機1の選別装置2を構成したことにより、揺動流板11上の被選別物に夾雑物が多いと判別したときには唐箕ファン4の風量を調節することによって選別性能を向上することができると共に、その夾雑物の混合度合いに応じてクラス分けをし、唐箕ファン4の風量の増加量を変えることによって、より細やかな選別制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る脱穀機の概略側面図。
【図2】本発明に係る2番還元ラセンの側面図。
【図3】本発明に係る2番還元ラセンの上面図。
【図4】本発明の脱穀機の選別自動制御に係るブロック図。
【図5】第1の実施の形態に係る選別自動制御のフローチャート。
【図6】第2の実施の形態に係る選別自動制御のフローチャート。
【図7】(a)第1の実施の形態に係る穀粒のみで測定した揺動流板上の層厚と2番還元ラセンの流量の関係を示すグラフ、(b)第2の実施の形態に係る穀粒のみで測定した揺動流板上の層厚と2番還元ラセンの流量の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0040】
1 脱穀機
2 選別装置
7 風選別手段
10 揺動選別手段
15 層厚センサ(判別手段)
24 2番流量センサ(判別手段)
25 2番還元ラセン
50 選別制御手段(判別手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被選別物を搬送漏下させる揺動選別手段と、該揺動選別手段から漏下した被選別物に選別風を当てて選別する風選別手段と、を備え、被選別物を穀粒と夾雑物とに選別する脱穀機の選別装置において、
前記揺動選別手段上の被選別物に含まれる夾雑物の多少を判別する判別手段を備え、
該判別手段の判定結果に基づいて、被選別物の選別能力を調整する、
ことを特徴とする脱穀機の選別装置。
【請求項2】
前記判別手段は、前記揺動選別手段上の被選別物の厚さを検出する層厚センサと、
選別不十分な被選別物を還元する2番還元ラセンの被選別物中の穀粒流量を検出する2番流量センサと、を備え、
前記層厚センサに基づく前記揺動選別手段上の層厚と前記2番流量センサに基づく穀粒流量との関係により、前記揺動選別手段上の被選別物に含まれる夾雑物の多少を判別してなる、
請求項1記載の脱穀機の選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−55804(P2009−55804A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224082(P2007−224082)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】