説明

脱穀機

【課題】脱着容易な脱穀機の処理室カバーを提供する。
【解決手段】処理室5の機体外側面を覆う処理室カバー23は、上部処理室カバー25、下部処理室カバー26及び桶状カバー27からなり、下部処理室カバー26の桶状カバー27の取付部には網部26aが一体に構成されている。処理室カバー23は脱穀機1の右側面22にノブ付きボルト31,33,35,39,40によって取付けられていると共に、その中央部の下方には2番還元筒20の上部カバー20aが近接して配設されている。2番還元筒20の上部カバー20aが近接して配設されている下部処理室カバー26の中央部には取付座36が設けられており、この取付座36を2番還元筒20の上部カバー20aの取付座37に長めのノブ付きボルト39で連結することによって固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンバインやハーベスタなどに搭載される脱穀機に関し、詳しくは脱穀機を覆うカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扱胴を回転自在に軸架する扱室の後方かつ穂先側に、処理胴を軸架する処理室を並設すると共に、処理室の機体内側面を処理網(受網)で形成し、処理室の機体外側面を処理室カバーにより形成した脱穀機が案出されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−176837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の処理室カバーは、その上縁及び下縁を複数のボルト部材で脱穀機の側面に固定して取付けられているが、処理室の下方には選別不十分な穀粒を排塵選別室へと還元する2番還元筒の上端部が近接して配置されており、この2番還元筒の上方部分のスペースが狭くなって、上記ボルト部材を脱穀機の側面に締め付けづらかった。
【0005】
そこで、本発明は処理室カバーの2番還元筒の上方部分を、2番還元筒の上端部に固定することによって、上記課題を解決した脱穀機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、扱室(3)の後方かつ穂先側に並設され、処理胴(7)を軸架する処理室(5)と、これら扱室(3)及び処理室(5)から漏下する混合物から穀粒を選別する排塵選別室(11)とを備え、選別不十分な穀粒を2番還元筒(20)によって前記排塵選別室(11)に還元し、再度選別処理を行う脱穀機(1)において、
前記2番還元筒(20)の上端部(20a)を前記処理室(5)の下方に近接して配置し、
前記処理胴(7)の機体外側を覆う処理室カバー(23)を、前記脱穀機(1)の側面(22)にボルト部材(31,33,35,40)によって固定すると共に、前記処理室カバー(23)の前記2番還元筒(20)の上方部分は、強度の高い該2番還元筒(20)の上端部(20a)に固定する、
ことを特徴とした脱穀機にある。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記処理室カバー(23)は、略々半円筒形のカバー部材であり、その上下方向中央部ほど機体外側に突出して構成されていると共に、
前記処理室カバー(23)の前後方向中央部の機体外側に取付座(36)を設け、該取付座(36)を介して前記処理室カバー(23)を前記2番還元筒(20)の上端部(20a)に固定した、
請求項1記載の脱穀機にある。
【0008】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、処理室カバーの2番還元筒上方部分を、強度の高い2番還元筒の上端部に固定したことによって、処理室カバーの取付けが容易になると共に、その剛性を向上させることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によると、処理室カバーの前後方向中央部の機体外側を、フレームが通っていない脱穀機の側面ではなく、2番還元筒の上端部に固定することによって、処理室カバーの取付け強度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明に係る実施形態について説明をする。
【0012】
<実施形態1>
図1に示すように、コンバインの脱穀機1は、フィードチェーン2によって搬送されてきた穀稈を脱穀する扱室3の機体後方に、扱室3で脱穀した穀粒及び藁屑を再度脱穀する処理室5を並設しており、これら扱室3及び処理室5には、複数の扱歯6a,7aがその外周に設けられた扱胴6及び処理胴7が回転自在に軸架されている。また、これら扱胴6及び処理胴7の下方には排塵選別室11が設けられており、受網9及び処理網10から漏下した穀粒と藁屑との混合物を選別している。
【0013】
上記排塵選別室11には、混合物を揺動選別する揺動選別体12と、排塵選別室11内に選別風を送風する唐箕ファン13と、藁屑などの排塵を吸引する吸引ファン15とからなる穀粒選別装置16が設けられており、この穀粒選別装置16によって選別された穀粒は、1番口Aに設けられた揚穀ラセンを内装した揚穀ラセン筒17によってグレンタンク19に回収されると共に、選別不十分な穀粒は2番口Bに設けられた還元ラセンを内装した2番還元筒20によって揺動選別体12上に還元されて再度選別処理される。
【0014】
図2乃至4に示すように、上記処理室5は、扱室3の後端穂先側に設けられた送塵口21により扱室3と連通しており、略々円筒形の形状をして処理胴7を覆っている。この処理室5のうち、揺動選別体12の上方に位置する機体内側面は、クリンプ網からなる処理網10によって形成され、脱穀機1の右側面22から機体外側に突出した処理室5の機体外側面は、略々半円筒形の処理室カバー23によって形成されている。
【0015】
上記処理室カバー23は、図5乃至図7に示すように、処理室5の機体外側面上方を形成する上部処理室カバー25と、処理室5の機体外側面下方を形成する下部処理室カバー26と、この下部処理室カバー26に一体に形成された網部26aから漏下する穀粒を排塵選別室11の開口部Dへと案内する桶状カバー27とに3分割して構成されており、その上下方向中央部ほど機体外側に突出して設けられている。
【0016】
また、処理室5の下方では、2番還元筒20が脱穀機1の底部から上方に向って略々垂直に立設しており、排塵選別室11の中部上方に開口した2番還元口Eから選別不十分な穀粒を揺動選別体上に放出している。この2番還元口Eの後方には、上記排塵選別室11の開口部Dが隣接して設けられており、脱穀機1の右側面22では2番還元筒20の上部カバー(上端部)20aが、下部処理室カバー26の下方かつ桶状カバー27の前方に近接して配置されている。
【0017】
次に処理室カバー23の取付け構造について説明をする。脱穀機1の右側面22には処理室の前面29及び後面30を形成する略々半円形の板状部材が機体外側に突出して一体に設けられており、これら前後面間には上記処理胴7が軸架されている。処理室カバー23は、この前後面29,30の外縁に沿って処理胴7を覆っていると共に、脱穀機1の右側面22に8本のノブ付きボルト31,33,35,40によって取付けられている。
【0018】
上記処理室カバー23の上部処理室カバー25は、その上縁の前部、後部、中部の3箇所をノブ付きボルト31,31,31で脱穀機1の右側面22に固定されており、その下縁は固定ボルト32,32,32によって下部処理室カバー26の上縁と一体に連結されている。また、下部処理室カバー26の上縁は、その前後端部をノブ付きボルト33、33によって上記処理室5の前後面29,30にそれぞれ固定していると共に、下部処理室カバー26の下縁は、その前部及び後部を脱穀機1の右側面22にノブ付きボルト35,35によって固定している。
【0019】
一方、下部処理室カバー26の前後方向中央部には、機体外側(機体上下方向中央側)にステー状の取付座36が設けられており、その後方には桶状カバー27を取付ける鍔部26b,26bが配設され、その下方には2番還元筒20の上部カバー20aがそれぞれ近接して配設されている。また、2番還元筒20の上部カバー20aも同様に取付座37がボルト37a,37aによって脱着自在に設けられており、これら2番還元筒側及び下部処理室カバー側の取付座36,37がノブ付きボルト39によって連結されることによって、下部処理室カバー26の中央部が固定されている。
【0020】
上記下部処理室カバー23の中央部を固定するノブ付きボルト39は、通常よりも長いものが使用され、処理室カバー23の頂部及び2番還元筒20の上部カバー20aの外縁よりも突出するように構成されている。
【0021】
また、上記桶状カバー27は、その上部を下部処理室カバー26の中央部から後方に亘って一体に形成された網部26aの前後端に設けられた鍔部26b,26bにノブ付きボルト40,40によって固定されていると共に、その下部は脱穀機1の右側面22に設けられた嵌込部41に嵌め込まれて固定されている。
【0022】
なお、上述した下部処理室カバー側の取付座37は、2番還元筒20を取外すことを考慮して脱着自在に構成されている。
【0023】
次に、本実施の形態に係る脱穀機1の作用について説明をする。作業者は処理室5の簡単なメンテナンス作業を行う場合、桶状カバー27を取外して下部処理室カバー26の網部26a、排塵選別室11の開口部Dを露出させ、これら下部処理室カバー26の網部26a及び排塵選別室内11を清掃したり、上部処理室カバー25を取外して処理胴7の清掃をしたりする。
【0024】
上記桶状カバー27は、下部処理室カバー26の鍔部26b,26bに取付けられた2本のノブ付きボルト40,40を外した後に桶状カバー27の下部を嵌込部41から引抜くことによって取外されると共に、上部処理室カバー25は、その3本の固定ボルト32,32,32及びノブ付きボルト31,31,31を外すことによって取外される。
【0025】
一方、処理室全体のメンテナンスをする際には、まず、桶状カバー27を取外すと共に、上下の処理室カバー25,26を脱穀機1の右側面22に固定しているノブ付きボルト31,33,35及び、取付座36,37を連結するノブ付きボルト39を全て取外し、処理胴7及び機体内側の処理網10を開放する。作業者は処理室カバー全体が取外されると、これら処理胴7、処理網10及び下部処理室カバー26の網部26aなどを清掃すると共に、処理室全体の損傷箇所のチェックなどをする。
【0026】
上述したように脱穀機1を構成したことによって、下部処理室カバー26の前後方向中央部を、取付座36,37を介して2番還元筒20の上部カバー20aに固定することができる。それにより、桶状カバー27及び2番還元筒20が隣接して配置された下部処理室カバー26の前後方向中央部でも、容易に脱穀機1の右側面に固定することができる。また、2番還元筒20の上部カバー側の取付座36とを連結するノブ付きボルト39を通常よりも長くしたことによっても、その取付け性が向上した。
【0027】
更に、強度の強い2番還元筒20の上部カバー20aに下部処理室カバー26の前後方向中央部を固定したので、処理室カバー全体の剛性が向上すると共に、網部26aに穀粒が停滞し、最も荷重がかかる桶状カバー27の取付け口のある下部処理室カバー26の前後方向中央部においても、カバーが変形して穀粒が漏れ出す虞がない。また、上述したように下部処理室カバー26の前後方向中央部には荷重がかかるため、ノブ付きボルト39による締付力が最も働くが、この下部処理室カバー26の前後方向中央部を、取付座36,37を介して2番還元筒20の上部カバー20aに固定したため、フレームの通っていない脱穀機の右側面22中央部に取付ける必要がなくなり、処理室カバー23の取付け強度が向上した。
【0028】
<実施形態2>
図8は、本発明の実施形態2に係る脱穀機を示すものである。この実施形態は、実施形態1における取付座36,37を90度向きを回転させて配設したものであり、以下に実施形態1の構成と相違する部分について説明をする。
【0029】
図8に示すように、下部処理室カバー26の中央部及び2番還元筒20の上部カバー20aに取付けられた取付座36,37は、それぞれ脱穀機1の前後方向に対して垂直方向(脱穀機の幅方向)にオーバーラップするように配設されており、これらの取付座36,37は脱穀機1の前方からノブ付きボルト39によって連結されている。
【0030】
上記取付座36,37は、下部処理室カバー26及び2番還元筒20の取付け方向に対して垂直方向に設けられているため、作業者は2番還元筒20、2番還元筒20の上部カバー20aもしくは下部処理室カバー26を脱着する際に、いちいち取付座36,37を外す必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願発明の実施形態1に係る脱穀機の左側面図。
【図2】本願発明の実施形態1に係る脱穀機の平面図。
【図3】図2のX−X断面図。
【図4】図2のT−T断面図。
【図5】本願発明の実施形態1に係る脱穀機の斜視図。
【図6】本願発明の実施形態1に係る脱穀機の処理室カバーを取外した状態を示す斜視図。
【図7】本願発明の実施形態1に係る脱穀機の桶状カバーを取外した状態を示す斜視図。
【図8】本願発明の実施形態2に係る脱穀機の右側面図。
【符号の説明】
【0032】
1 脱穀機
3 扱室
5 処理室
7 処理銅
11 排塵選別室
20 2番還元筒
20a 上部カバー(2番還元筒の上端部)
22 脱穀機の右側面
23 処理室カバー
31,33,35,40 ノブ付きボルト(ボルト部材)
36 取付座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室の後方かつ穂先側に並設され、処理胴を軸架する処理室と、これら扱室及び処理室から漏下する混合物から穀粒を選別する排塵選別室とを備え、選別不十分な穀粒を2番還元筒によって前記排塵選別室に還元し、再度選別処理を行う脱穀機において、
前記2番還元筒の上端部を前記処理室の下方に近接して配置し、
前記処理胴の機体外側を覆う処理室カバーを、前記脱穀機の側面にボルト部材によって固定すると共に、前記処理室カバーの前記2番還元筒の上方部分は、強度の高い該2番還元筒の上端部に固定する、
ことを特徴とした脱穀機。
【請求項2】
前記処理室カバーは、略々半円筒形のカバー部材であり、その上下方向中央部ほど機体外側に突出して構成されていると共に、
前記処理室カバーの前後方向中央部の機体外側に取付座を設け、該取付座を介して前記処理室カバーを前記2番還元筒の上端部に固定した、
請求項1記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−268411(P2009−268411A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122078(P2008−122078)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】