説明

脱穀装置

【課題】処理物が処理胴の処理作用を十分に受けずに排塵室に排出されて三番飛散になるという問題を解消すると共に、処理室の終端部における屑はけを良くし、処理室の終端部における屑の停滞や詰まりを防止する。
【解決手段】扱胴4を回転自在に内装した扱室2と、処理胴9を回転自在に内装した処理室8と、穀粒を選別する選別室5と、屑を機外に排出する排塵室19とを備えると共に、扱室2の終端部から処理室8の始端部に供給される処理物を処理胴9の回転で単粒化処理し、ここで単粒化された穀粒を受網10を介して選別室5に漏下させる一方、処理室8の終端部まで達した処理物を排塵室19に排出する脱穀装置1であって、処理室8の内周部に、処理物の流れに抵抗を与える抵抗体26A〜26Eを設けると共に、該抵抗体26A〜26Eの抵抗力を、処理室8の中間部から終端部に向けて小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやハーベスタに設けられる脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扱胴を回転自在に内装した扱室の終端部と、屑を機外に排出する排塵室との間に亘って、処理室を配置した脱穀装置が知られている。この種の処理室は、処理胴を回転自在に内装して構成されており、扱室の終端部から供給される処理物を処理胴の回転で単粒化処理し、ここで単粒化された穀粒を漏下体(受網)を介して選別室に漏下させる一方、処理室の終端部まで達した処理物は、排塵室に排出されるようになっている。
【0003】
また、処理室の内周部に、処理物の流れに抵抗を与える抵抗体(ガイドフィン)が設けられた脱穀装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。このような脱穀装置によれば、扱室から処理室に送られた処理物が処理胴の処理作用を十分に受けることなく処理室の終端部まで到達し、そのまま排塵室に排出されて三番飛散になるという問題を解消することができる。しかも、特許文献1に記載される脱穀装置では、処理室の始端部に設けられるガイドフィンの案内角度を、処理室の中間部や後部に設けられるガイドフィンの案内角度よりも大きくしているので、扱室から処理室への処理物の流れを速くし、扱室の送塵口における処理物の停滞や詰まりを防止できるという利点もある。
【特許文献1】特開平10−84757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される脱穀装置では、扱室から処理室への処理物の流れがスムーズになるものの、処理室の中間部や終端部では負荷が大きくなり、特に、屑の発生量が多い材料を処理している状況では、屑のはけが悪くなり、処理室の終端部で屑が停滞したり詰まる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、扱胴を回転自在に内装した扱室と、処理胴を回転自在に内装した処理室と、穀粒を選別する選別室と、屑を機外に排出する排塵室とを備えると共に、扱室の終端部から処理室の始端部に供給される処理物を処理胴の回転で単粒化処理し、ここで単粒化された穀粒を漏下体を介して選別室に漏下させる一方、処理室の終端部まで達した処理物を排塵室に排出する脱穀装置であって、前記処理室の内周部に、処理物の流れに抵抗を与える抵抗体を設けると共に、該抵抗体の抵抗力を、処理室の中間部から終端部に向けて小さくしたことを特徴とする。このようにすると、処理室の中間部では、処理物の流れに大きな抵抗を与えることができるので、処理物が処理胴の処理作用を十分に受けることなく処理室の終端部まで到達し、そのまま排塵室に排出されて三番飛散になるという問題を回避できる。しかも、抵抗体の抵抗力を、処理室の中間部から終端部に向けて小さくしたので、処理室の終端部における屑はけを良くし、処理室の終端部で屑が停滞したり詰まるという問題も解消することができる。
また、前記抵抗体の抵抗力を、処理室の始端部から中間部に向けて大きくしたことを特徴とする。このようにすると、処理室の始端部における抵抗力を小さくできるので、扱室から処理室への処理物の流れを速くし、扱室の送塵口における処理物の停滞や詰まりを防止できる。
また、前記抵抗体は、処理室の内周部に周方向に沿って立設される仕切板からなり、処理室の内周部における仕切板の周方向の立設長さにもとづいて抵抗力が設定されることを特徴とする。このようにすると、少なくとも抵抗力が小さく設定される箇所では、処理室の内周部に全周に亘って仕切板を設けることなく、一部に屑の排出ルートを確保できるので、処理室内における屑の堆積を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
[第一実施形態]
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1において、1は脱穀装置であって、該脱穀装置1は、穂先側が扱室2に導入される姿勢で、茎稈を扱室2に沿って挟持搬送する脱穀フィードチェン3と、扱室2に回転自在に内装され、脱穀フィードチェン3が搬送する茎稈から穀粒を脱穀する扱胴4と、扱胴4の下側外周に沿って設けられ、扱胴4で脱穀された穀粒を選別室5に漏下させる受網6と、扱室2の側方に設けられ、送塵口7を介して扱室2の後部と連通される処理室8と、処理室8に回転自在に内装され、扱室2から処理室8に供給された処理物を単粒化処理する処理胴9と、処理胴9の外周に沿って設けられ、処理胴9で単粒化された穀粒を選別室5に漏下させる受網(漏下体)10と、選別室5に設けられ、扱室2や処理室8から漏下する穀粒を揺動選別する揺動選別体11と、揺動選別体11から漏下する穀粒を風選別する第一選別ファン12と、一番物を収容する一番ラセン13と、一番物を穀粒タンク14へ揚上搬送する揚上搬送筒15と、二番物を風選別する第二選別ファン16と、二番物を収容する二番ラセン17と、二番物を揺動選別体11上へ還元する二番還元筒18と、排塵室19に設けられ、切れ藁などの屑を機外に排出する排塵ファン20と、脱穀済みの排藁を搬送する排藁チェン21と、排藁を細断処理するカッター22とを備えて構成されており、処理室8を除く部分の構成及び動作は従来通りである。
【0007】
図1及び図2に示すように、処理室8は、扱室2の終端部及び排塵室19の側方に位置するように前後方向に沿って配置されており、送塵口7を介して扱室2の終端部から供給される処理物を処理胴9の回転で単粒化処理し、ここで単粒化された穀粒を受網10を介して選別室5に漏下させる一方、処理室8の終端部まで達した処理物を、排出口23を介して排塵室19へ排出するようになっている。
【0008】
次に、本発明の要部である処理室8の具体的な構成について、図2〜図5を参照して説明する。これらの図に示すように、本実施形態の処理室8は、処理胴9、受網10、補助受網24、カバー体25及び抵抗体26A〜26Eを備えて構成されている。
【0009】
処理胴9は、処理室8内に処理胴軸9aを介して回転自在に支架され、エンジン動力で一方向に回転される円筒体であり、その外周面には、移送ラセン9b、処理歯9c及び排出板9dが突設されている。移送ラセン9bは、処理胴9の前端部外周面に並列状に設けられており、送塵口7を介して扱室2から処理室8へ供給される処理物を積極的に後方へ移送するようになっている。処理歯9cは、処理胴9の中間部外周面に所定の配列で複数設けられており、主に処理物の単粒化処理を行う。排出板9dは、処理胴9の後端部外周面に並列状に設けられており、処理室8の終端部まで到達した処理物を積極的に排出口23に向けて跳ね出すようになっている。
【0010】
受網10は、処理室8の始端部から終端部に亘り、背面視で処理胴9の左半部を覆うように設けられており、主に、処理室8内で単粒化された穀粒を選別室5に漏下させるようになっている。
補助受網24は、処理室8の中間部から終端部に亘り、背面視で処理胴9の右半部下側を覆うように設けられており、受網10と同様に、処理室8内で単粒化された穀粒を選別室5に漏下させるようになっている。
カバー体25は、処理室8の始端部から終端部に亘り、背面視で処理胴9の右半部又は右半部上側を覆うように設けられている。
【0011】
抵抗体26A〜26Eは、処理物の流れに抵抗を与えるために処理室8の内周部に設けられている。このような抵抗体26A〜26Eを設けると、扱室2から処理室8に送られた処理物が処理胴9の処理作用を十分に受けることなく処理室8の終端部まで到達し、そのまま排塵室19に排出されて三番飛散になるという問題が解消される。
【0012】
抵抗体26A〜26Eは、処理室8の始端部、中間部及び始端部に設けられている。ここで、処理室8の各箇所に設けられる抵抗体26A〜26Eの抵抗力は均一ではなく、その箇所に応じて抵抗力が設定されるようになっている。具体的には、抵抗体26A〜26Eの抵抗力を、処理室8の始端部から中間部に向けて大きくすると共に、処理室8の中間部から終端部に向けて小さくしてある。
【0013】
このようにすると、処理室8の始端部では、抵抗力を小さくできるので、扱室2から処理室8への処理物の流れを速くし、扱室2の送塵口7における処理物の停滞や詰まりを防止できる。
また、処理室8の中間部では、抵抗力を大きくできるので、処理物の流れを遅くして、処理物に処理胴9の処理作用を十分に受けさせ、単粒化を促進することができる。
さらに、処理室8の終端部では、抵抗力を小さくすることができるので、処理室8の終端部における屑はけを良くし、処理室8の終端部で屑が停滞したり詰まるという問題を解消することができる。
【0014】
本実施形態では、処理室8の各箇所に設けられる抵抗体26A〜26Eの抵抗力を設定するにあたり、抵抗体26A〜26Eを、処理室8の内周部に周方向に沿って立設される仕切板で構成すると共に、処理室8の内周部における仕切板の周方向の立設長さにもとづいて抵抗力を設定している。具体的には、処理室8の始端部では、抵抗力を小さくするために、受網10上にのみ抵抗体26Aを立設し、処理室8の中間部では、抵抗力を大きくするため、受網10、補助受網24及びカバー体25上に抵抗体26B、26D、26Eを立設し、さらに、処理室8の終端部では、抵抗力を小さくするために、受網10上にのみ抵抗体26Cを立設している。このようにすると、少なくとも抵抗力が小さく設定される箇所では、処理室8の内周部に全周に亘って仕切板を設けることなく、一部に屑の排出ルートを確保できるので、処理室8内における屑の堆積を防止することができる。
【0015】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、扱胴4を回転自在に内装した扱室2と、処理胴9を回転自在に内装した処理室8と、穀粒を選別する選別室5と、屑を機外に排出する排塵室19とを備えると共に、扱室2の終端部から処理室8の始端部に供給される処理物を処理胴9の回転で単粒化処理し、ここで単粒化された穀粒を受網10を介して選別室5に漏下させる一方、処理室8の終端部まで達した処理物を排塵室19に排出する脱穀装置1であって、処理室8の内周部に、処理物の流れに抵抗を与える抵抗体26A〜26Eを設けると共に、該抵抗体26A〜26Eの抵抗力を、処理室8の中間部から終端部に向けて小さくしたので、処理室8の中間部では、処理物の流れに大きな抵抗を与えることができる。これにより、処理物が処理胴9の処理作用を十分に受けることなく処理室8の終端部まで到達し、そのまま排塵室19に排出されて三番飛散になるという問題を回避できる。しかも、抵抗体26A〜26Eの抵抗力を、処理室8の中間部から終端部に向けて小さくしたので、処理室8の終端部における屑はけを良くし、処理室8の終端部で屑が停滞したり詰まるという問題も解消することができる。
【0016】
また、本実施形態では、抵抗体26A〜26Eの抵抗力を、処理室8の始端部から中間部に向けて大きくしたので、処理室8の始端部における抵抗力を小さくできる。これにより、扱室2から処理室8への処理物の流れを速くし、扱室2の送塵口7における処理物の停滞や詰まりを防止できる。
【0017】
また、本実施形態の抵抗体26A〜26Eは、処理室8の内周部に周方向に沿って立設される仕切板からなり、処理室8の内周部における仕切板の周方向の立設長さにもとづいて抵抗力が設定されるので、抵抗力が小さく設定される処理室8の始端部や終端部では、処理室8の内周部に全周に亘って仕切板を設けることなく、一部に屑の排出ルートを確保でき、その結果、処理室8内における屑の堆積を防止することができる。
【0018】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図6を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の構成については、同じ符号を付けることにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0019】
図6に示すように、第二実施形態の脱穀装置1は、処理室8の始端部、中間部及び終端部に抵抗体26F〜26Hを備えると共に、処理室8の始端部に設けられる抵抗体26Fの抵抗力を小さくし、中間部に設けられる抵抗体26Gの抵抗力を大きくし、さらに、終端部に設けられる抵抗体26Hの抵抗力を小さくしている点では前記実施形態と同様であるが、各抵抗体26F〜26Hの高さにもとづいて抵抗力を設定する点が前記実施形態と相違している。具体的には、図6に示すように、処理室8の中間部に設けられる抵抗体26Gの高さを、他の抵抗体26F、26Hよりも高くすることにより抵抗力を大きくしている。
【0020】
尚、抵抗体26F〜26Hの高さにもとづいて抵抗力を設定するにあたり、図6に示す実施例では、各抵抗体26F〜26H間の高さは相違させるものの、各抵抗体26F〜26Hの高さは全周に亘って均一としているが、各抵抗体26F〜26Hの高さを周方向の領域毎に変更するようにしてもよい。例えば、受網10側では、抵抗体26F〜26Hの高さを低くし、カバー体25側では、抵抗体26F〜26Hの高さを高くすることができる。このようにすると、受網10側における屑の堆積を防止し、受網10の漏下性能を良好に維持することができる。
【0021】
また、図6に示す実施例では、各抵抗体26F〜26Hを処理室8の全周に亘って設けているが、周方向の一部の領域にのみ抵抗体26F〜26Hを設けるようにしてもよい。例えば、受網10側では、上側半部にのみ抵抗体26F〜26Hを設け、カバー体25側では、下側半分にのみ抵抗体26F〜26Hを設ける。このようにすると、周方向の一部に屑の排出ルートを確保し、処理室8内における屑の堆積を防止することができる。
【0022】
また、図6に示す実施例では、各抵抗体26F〜26Hを周方向に連続する環状に配置しているが、各抵抗体26F〜26Hを複数の円弧に分割し、処理室8の長さ方向に位置をずらして配置するようにしてもよい。例えば、各抵抗体26F〜26Hを半円状に2分割し、処理室8の長さ方向に交互に位置をずらして配置する。このようにすると、周方向の一部に屑の排出ルートを確保し、処理室8内における屑の堆積を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】脱穀装置の内部側面図である。
【図2】扱室及び処理室の内部平面図である。
【図3】扱室及び処理室のA−A断面図である。
【図4】処理室のB−B断面図である。
【図5】処理室のC−C断面図である。
【図6】第二実施形態を示す扱室及び処理室の内部平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 脱穀装置
2 扱室
4 扱胴
5 選別室
7 送塵口
8 処理室
9 処理胴
10 受網
19 排塵室
20 排塵ファン
23 排出口
24 補助受網
25 カバー体
26 抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴を回転自在に内装した扱室と、処理胴を回転自在に内装した処理室と、穀粒を選別する選別室と、屑を機外に排出する排塵室とを備えると共に、扱室の終端部から処理室の始端部に供給される処理物を処理胴の回転で単粒化処理し、ここで単粒化された穀粒を漏下体を介して選別室に漏下させる一方、処理室の終端部まで達した処理物を排塵室に排出する脱穀装置であって、
前記処理室の内周部に、処理物の流れに抵抗を与える抵抗体を設けると共に、該抵抗体の抵抗力を、処理室の中間部から終端部に向けて小さくしたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記抵抗体の抵抗力を、処理室の始端部から中間部に向けて大きくしたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記抵抗体は、処理室の内周部に周方向に沿って立設される仕切板からなり、処理室の内周部における仕切板の周方向の立設長さにもとづいて抵抗力が設定されることを特徴とする請求項1又は2記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−34053(P2009−34053A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201804(P2007−201804)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】