説明

脱穀装置

【課題】選別風量調節機構の連係対象として、処理物量の変動に対応して姿勢変更を行うものを見出し、その対象物に選別風量調節機構を連係することによって、操作系の簡素化を図ることのできる脱穀装置を提供する。
【解決手段】唐箕32の選別風の風量を変更調節可能な蓋体32Bと、選別風を機体後部の排塵口に誘導する排塵経路と、排塵経路における機外へ開口する排塵口の手前に位置して開き姿勢と閉じ姿勢とに切換可能な排塵制御体60とを備える。排塵制御体60を閉じ姿勢側に切り換えると蓋体32Bを選別風量が少なくなる状態に切換え、排塵制御体60を開き姿勢側に切り換えると蓋体32Bを選別風量が多くなる状態に切換えるべく、蓋体32Bと排塵制御体60とを連動手段Eによって連動させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唐箕の選別風の風量を変更調節可能な選別風量調節機構を備えた脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀装置の選別部で選別される処理物量は刈取り量に応じて変動する。その為に、選別風量を調節する機構である選別風量調節機構を備えたものがある。そのものでは、唐箕を収納する唐箕ケースの一部に開口を形成し、唐箕が起こす起風量の一部を開口を通して放出することによって、唐箕が起こす起風量のうちの放出されなかった残りの風を選別部に誘導すべく構成するものがあった(特許文献1)。
上記従来構成にあっては、開口を閉塞する蓋体を、開口を閉塞する状態と開口を開放する状態と、開放度を変更自在に構成するために、蓋体と駆動モータとを連係リンク機構を介して連係していた。
また、他には、唐箕から選別部への風路に選別風量調節機構としての選別風調節体と操作レバーとを連係リンクで連係して、選別風調節体の開閉操作を人為的に行うものもある(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−43277号公報(段落番号〔0023〕〔0025〕、図2〜4参照)。
【特許文献2】特開2002−262653号公報(段落番号〔0028〕、図2〜4参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した何れの特許文献に記載された発明も、蓋体と駆動モータ(特許文献1)、蓋体と人為的操作レバー(特許文献2)とを、連係リンク機構を介して連係する構成のものである。
したがって、蓋体とその蓋体を操作する機構が一対一に対応するだけのものであり、蓋体の開閉操作の為だけに、操作機構と連係リンクとを必要とすることとなり、機器構成の簡素化を図る必要があった。
【0005】
本発明の目的は選別風量調節機構の連係対象として、処理物量の変動に対応して姿勢変更を行うものを見出し、その対象物に選別風量調節機構を連係することによって、操作系の簡素化を図ることのできる脱穀装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
本第1発明の特徴構成は、唐箕の選別風の風量を変更調節可能な選別風量調節機構と、前記選別風を機体後部の排塵口に誘導する風力排塵経路と、前記風力排塵経路における機外へ開口する排塵口の手前に位置して前記風力排塵経路を開路する開き姿勢と前記風力排塵経路を閉路して三番ロスを抑制する閉じ姿勢とに切換可能な排塵制御体とを備え、前記排塵制御体を閉じ姿勢側に切り換えると前記選別風量調節機構を前記選別風量が少なくなる状態に切換え、前記排塵制御体を開き姿勢側に切り換えると前記選別風量調節機構を前記選別風量が多くなる状態に切換えるべく、前記選別風量調節機構と前記排塵制御体とを選別排塵用連動手段によって連動させてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
唐箕が起こした選別風によって選別を受けた処理物量が少ない場合には、排ワラや排塵に穀粒が混入して排塵口より機外に排出される、いわゆる3番ロスと呼ばれる不具合が起こる虞がある。そこで、風力排塵経路における排塵口の手前に、排塵制御体を設けた。
この排塵制御体を設けたことによって、処理物量が多くなると風力排塵経路を開路するように排塵制御体を開き姿勢に設定し、処理物量が少なくなると風力排塵経路を閉路するように排塵制御体を閉じ姿勢に切換える。
このような構成によって、処理物量が大量である場合は、排塵制御体を開き姿勢に設定して、大量の排塵や排ワラを放出すべく構成し、処理物量が少ない場合には、排塵制御体を閉じ姿勢側に設定して、3番ロスを減少させる構成を採っていた。
【0008】
以上のような制御形態を採る排塵制御体について鑑みると、処理物量に対応して選別風量を変更する唐箕の選別風量調節機構と同一の制御傾向を示すものであると判断できる。
【0009】
そこで、上記したように、前記選別風量調節機構と前記排塵制御体とを選別排塵用連動手段によって連動させた。この連動構造によって、処理物量が少なくなって3番ロスが起こりやすい状況では、前記排塵制御体を閉じ姿勢側に切り換え、その閉じ姿勢側への切換えに連動して、選別排塵用連動手段によって前記選別風量調節機構を前記選別風量が少なくなる状態に切換える。処理物量が多くなる状態では、前記排塵制御体を開き姿勢側に切り換える。そうすると開き姿勢側への切り換わりに連動して、選別排塵用連動手段によって前記選別風量調節機構を前記選別風量が多くなる状態に切換えることができる。
【0010】
〔効果〕
したがって、上記のように、前記選別風量調節機構と前記排塵制御体とを選別排塵用連動手段によって連動させることによって、前記選別風量調節機構と前記排塵制御体との、処理物量に対応して姿勢を制御する駆動装置、或いは、人為的操作具等を単一のもので済ますことができ、操作系の簡素化を達成できるものである。
【0011】
処理物量が多い状態で排塵制御体を開き姿勢に切換えた場合、選別風量が多くなる状態となるので、開き姿勢の排塵制御体と多い選別風量の相乗効果により、排塵や排ワラの放出の促進が期待できる。
処理物量が少ない状態で排塵制御体を閉じ姿勢に切換えた場合、選別風量が少なくなる状態となるので、閉じ姿勢の排塵制御体及び少ない選別風量の両方の相乗効果により、3番ロスがさらに少なくなることが期待できる。
【0012】
〔構成〕
本第2発明の特徴構成では、本第1発明の構成において、扱室からの脱穀排ワラを無端回動チェーンと搬送ガイド杆とによって機体後方向きに挟持搬送する排ワラ搬送装置を備え、前記搬送ガイド杆の前記無端回動チェーンに対する挾持間隔を変更する方向への変位を前記排塵制御体の開閉姿勢切換に要する変位として伝達する排ワラ搬送装置用連動手段を設け、前記搬送ガイド杆と前記無端回動チェーンとの相対間隔が大きくなると、前記排塵制御体を開き姿勢側に切り換え操作し、前記搬送ガイド杆と前記無端回動チェーンとの相対間隔が小さくなると、前記排塵制御体を閉じ姿勢側に切換え操作するように、前記搬送ガイド杆と前記排塵制御体とを前記排ワラ搬送装置用連動手段を介して連動させてある点にあり、その作用効果は次ぎの通りである。
【0013】
〔作用〕
排ワラ搬送装置においは、脱穀排ワラを無端回動チェーンと搬送ガイド杆とによって機体後方向きに挟持搬送している。したがって、処理物量が多くなる程、排ワラ搬送装置における搬送量が多くなる。搬送量が多くなる程、搬送ガイド杆が無端回動チェーンから離間する間隔が大きくなる傾向にある。
【0014】
本願発明では、この点に着目し、処理物量に応じて姿勢を変更する排塵制御体と排ワラ搬送装置とを連係することとした。つまり、前記搬送ガイド杆の前記無端回動チェーンに対する挾持間隔を変更する方向への変位を、排塵制御体の開閉姿勢切換に要する変位として伝達する排ワラ搬送装置用連動手段を設けて、搬送ガイド杆と排塵制御体とを排ワラ搬送装置用連動手段を介して連係した。
【0015】
排ワラ搬送装置用連動手段を介して連係したことによって、前記搬送ガイド杆と前記無端回動チェーンとの相対間隔が大きくなると、前記排塵制御体を開き姿勢側に切り換え操作し、前記搬送ガイド杆と前記無端回動チェーンとの相対間隔が小さくなると、前記排塵制御体を閉じ姿勢側に切換え操作することが、自動的に行えるようになった。
【0016】
〔効果〕
したがって、搬送ガイド杆を排塵制御体の操作系として利用することができ、排塵制御体に対する専用の操作具を必要としなくなった。
しかも、排塵制御体と選別風量調節機構も連係されているので、選別風量調節機構も搬送ガイド杆と連係されることとなり、排塵制御体と選別風量調節機構との専用の操作具も必要ではなくなった。
【0017】
〔構成〕
本第3発明の特徴構成は、本第2発明の構成において、前記排ワラ搬送装置用連動手段に、前記搬送ガイド杆が前記無端回動チェーンとの相対間隔を変動することに連動して作動する連動部材を備え、前記搬送ガイド杆と当接する方向に前記連動部材を付勢する付勢手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0018】
処理物量が少なくなって搬送ガイド杆が無端回動チェーンに近接する状態に戻っても、排ワラ搬送装置用連動手段に連係された連動部材が、搬送ガイド杆の作動に連動可能な所定の状態に戻り切らないことがある。
これは、排ワラ搬送装置用連動手段を構成するリンク機構等の連係部位に基づくガタの為であろうと考えられる。
そこで、この付勢手段を連動部材に作用させることによって、連動部材を所定の姿勢に復帰させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。 図1は、本発明の実施例に係る脱穀装置の縦断側面図である。この図に示すように、本実施例に係る脱穀装置は、機体1の外部に設けた脱穀フィードチェーン11、及び機体内の前部に設けた扱室12を有した脱穀部10と、前記扱室12の後方に設けた排ワラ搬送装置20と、前記扱室12の下方に設けた揺動選別装置31を有した選別部30と、前記排ワラ搬送装置20の下方に設けた排塵ファン41を有した排塵部40と、前記選別部30の底部に設けた一番スクリューコンベヤ2及び二番スクリューコンベヤ3と、前記機体1の後部に連設された排ワラ処理装置50とを備えている。
【0020】
この脱穀装置は、コンバインに装備され、コンバインの刈取り部(図示せず)によって刈取り処理された刈取り穀稈の脱穀処理と、脱穀粒の選別処理と、脱穀排ワラの処理とを行う。
【0021】
すなわち、脱穀部10は、脱穀フィードチェーン11と扱室12とを備える他、扱室12の下部に設けた受網13とを備えて構成してあり、刈取り穀稈の脱穀処理を行う。
【0022】
つまり、脱穀フィードチェーン11は、刈取り穀稈の株元側を機体後方側に挟持搬送しながら刈取り穀稈の穂先側を扱室12に供給する。扱室12は、扱室内に機体前後向きの軸芯まわりに回転駆動自在に設けられた扱胴14を備えており、供給された刈取り穀稈の穂先側を扱胴14によって扱き処理する。脱穀フィードチェーン11は、脱穀排ワラを扱室12の後端部に位置する送塵口15から扱室12の後方に搬出する。
【0023】
前記排ワラ搬送装置20は、脱穀フィードチェーン11の搬送終端部の横側近くに搬送始端側が位置し、搬送終端側が前記排ワラ処理装置50の排ワラ投入口51上方に位置する配置で機体内の後部に設けた無端回動チェーン21と、この無端回動チェーン21の搬送側の下方に無端回動チェーン21に沿わせて設けた搬送ガイド杆22とを備えて構成してある。
【0024】
図1,3に示すように、搬送ガイド杆22の搬送始端側と搬送終端側とは、搬送ガイド杆22に上端部が連結された機体上下向きの連結杆23を介して機体側の支持部材24に支持されている。搬送始端側の支持部材24は、脱穀フィードチェーン11を走行案内するチェーンガイドに固定されている。搬送終端側の支持部材24は、機体1に固定されている。搬送始端側及び搬送終端側の支持部材24は、連結杆23を上下摺動自在に支持している。各連結杆23は、搬送ガイド杆22と支持部材24との間に配置され連結杆23に装着されジャバラに覆われたスプリング25によって上昇付勢されている。これにより、搬送ガイド杆22は、スプリング25によって無端回動チェーン21に接近するよう付勢されている。
【0025】
排ワラ搬送装置20は、扱室12から排出された脱穀排ワラの株元側を脱穀フィードチェーン11から無端回動チェーン21と搬送ガイド杆22との間に受け継ぎ、このように受け継いだ脱穀排ワラを、これの穂先側を前記排ワラ搬送装置20よりも穂先側に位置している支持レール(図示せず)に載置した横架姿勢で、無端回動チェーン21と搬送ガイド杆22とによって機体後方向きに挟持搬送し、排ワラ処理装置50の排ワラ投入口51の上に落下させる。無端回動チェーン21は、搬送終端側ほど脱穀フィードチェーン11からの距離がより大になる配置になっており、排ワラ搬送装置20は、脱穀排ワラを機体1に対して脱穀フィードチェーン側とは反対側に移動させながら搬送する。
【0026】
排ワラ搬送装置20によって搬送される脱穀排ワラの量が変化すると、脱穀排ワラのボリュームが変化することにより、搬送ガイド杆22がスプリングによる操作力と、脱穀排ワラからの反力とによって無端回動チェーン21に対して離間するよう、あるいは接近するよう移動する。これにより、排ワラ量が大になるほど搬送ガイド杆22と無端回動チェーン21との間隔がより大になり、排ワラ量が小になるほど搬送ガイド杆22と無端チェーン21との間隔がより小になる。
【0027】
排ワラ処理装置50は、排ワラ投入口51を有した細断ケース52と、この細断ケース52の後端側の上方に設けた長ワラ放出口53とを備えている。細断ケース52は、前記排ワラ投入口51を開閉するよう揺動自在に取り付けられた蓋体54を備え、ケース内部に機体横向きの軸芯まわりに駆動回動自在に設けたカッター軸55と供給軸56とを備え、前記カッター軸55及び供給軸56の下方に設けた細断ワラ放出口57を備えている。
【0028】
排ワラ処理装置50は、前記蓋体54が閉じ操作されると、長ワラ放出の処理状態になる。すると、排ワラ処理装置50は、前記排ワラ搬送装置20からの長ワラを蓋体54の外面側で長ワラ放出口53に下降案内し、この長ワラ放出口53から機体後方の地面に長ワラ状態で落下させる。
【0029】
排ワラ処理装置50は、前記蓋体54が開き操作されると、細断放出の処理状態になる。すると、排ワラ処理装置50は、前記排ワラ搬送装置20からの脱穀排ワラを前記排ワラ投入口51から細断ケース52の内部に落下させ、前記カッター軸55がこれの軸芯方向に並べて一体回転自在に備えている円盤型の切断刃と、前記供給軸56がこれの軸芯方向に並べて一体回転自在に備えている円盤型の供給刃とによって稈身方向に細断し、細断状態の排ワラを細断ワラ放出口57から地面に落下させる。
【0030】
前記選別部30は、前記揺動選別装置31を備える他、この揺動選別装置31の前端側の下方に設けた唐箕32と、前記送塵口15の後方に設けた処理回転体33とを備えて構成してある。
【0031】
前記処理回転体33は、機体横向きの軸芯まわりに回転駆動され、扱室12の前記送塵口15から排出されたワラ屑を揺動選別装置31が備える上部ストローラック34に受け止め支持させながら解し処理し、ワラ屑から穀粒を取り出す。
【0032】
揺動選別装置31は、前記上部ストローラック34を備える他、前記受網13の下方に位置したグレンパン35とチャフシーブ36とを備え、前記チャフシーブ36の後方に設けたストローラック37を備え、前記チャフシーブ36の下方に設けたグレンシーブ38を備えている。
【0033】
選別部30は、前記処理回転体33からの処理物と、扱室12から受網13を通して落下供給された処理物とを、揺動選別装置31による揺動選別と、唐箕32によって排塵部40に向けて供給される選別風による風選別とによって一番処理物と、二番処理物と、ワラ屑などの排出用の処理物とに選別し、一番処理物と二番処理物とを揺動選別装置31から落下させ、排出用の処理物を排塵部40に送る。
【0034】
一番スクリューコンベヤ2は、揺動選別装置31から落下した一番処理物を機体1の横外側に搬出して揚穀装置4に供給する。この揚穀装置4は、コンバインの穀粒タンク(図示せず)に脱穀粒を送り込む。二番スクリューコンベヤ3は、揺動選別装置31から落下した二番処理物を機体1の横外側に搬出して還元装置5に供給する。この還元装置5は、二番処理物を機体1の横側壁に設けた還元口に搬送し、この還元口から機体内に送り込んで揺動選別装置31の始端側に還元する。
【0035】
排塵部40は、排塵ファン41を有したファン付き排塵経路Aと、このファン付き排塵経路Aの下方に設けた風力排塵経路Bとを備えている。
【0036】
ファン付き排塵経路Aは、排塵ファン41を駆動自在に収容したファンケース42によって形成されており、ファン付き排塵経路Aは、排塵ファン41を備える他、ファンケース42の吸引口で成る塵埃吸引口43と、ファンケース42の吐出口で成る塵埃排出口44とを備えている。
【0037】
塵埃吸引口43は、揺動選別装置31の後端部の上方に揺動選別装置31に向かって開口して位置している。塵埃排出口44は、細断ケース52の内部に細断ワラ放出口57に向かって開口して位置している。
【0038】
これにより、ファン付き排塵経路Aは、選別部30の後部から送り出された排出用の処理物を、排塵ファン41の送り力によって塵埃吸引口43から吸引し、塵埃吐出口44から細断ケース52を介して機体外に排出する。ファン付き排塵経路Aは、唐箕32からの選別風の一部を処理物と共に吸引して排出する。
【0039】
風力排塵経路Bは、ファンケース42の排塵ファン41の下方に位置する部分42aと、揺動選別装置31の後端部とによって形成されており、揺動選別装置31の後端部に連通している。風力排塵経路Bは、機体1の後端部にファン付き排塵経路Aの塵埃吐出口44の下方に配置して設けた排塵口45を備えている。この排塵口45は、細断ケース52の長ワラ放出口57に向かって開口している。
【0040】
風力排塵経路Bは、選別部30から送り出された排出用の処理物を唐箕32からの選別風による移送力によって導入し、排塵口45から細断ケース52を介して機体外に排出する。
【0041】
風力排塵経路Bは、排塵口45よりも機体内側に少し入り込んだ部位に設けた板形の排塵制御体60を備えている。図2に示すように、排塵制御体60は、これの上端部に一体回転自在に設けた回転支軸61を介して脱穀部10の排塵ファン41の下方に位置する部分42aに揺動自在に支持されている。
【0042】
図3(a)は、排塵制御体60の閉じ姿勢での側面図である。この図に示すように、排塵制御体60は、回転支軸61の回転作動により、この回転支軸61の機体横向き軸芯まわりに下降側に揺動操作されると、閉じ姿勢になる。すると、排塵制御体60は、風力排塵経路Bの処理物の通過を抑制するよう風力排塵経路Bの処理物流動方向に対して交差した姿勢になる。
【0043】
図3(b)は、排塵制御体60の開き姿勢での側面図である。この図に示すように、排塵制御体60は、前記回転支軸61の回転作動により、この回転支軸61の機体横向き軸芯まわりに上昇側に揺動操作されると、開き姿勢になる。すると、排塵制御体60は、風力排塵経路Bの処理物の通過を容易にするよう風力排塵経路Bの処理物移動方向に沿った姿勢になる。
【0044】
図7に示すように、排塵制御体60の取付ボス部60Aを回転支軸61に外嵌して、排塵制御体60を回転支軸61周りに回転可能に取り付けてある。取付ボス部60Aには、止めネジ67が装着してある一方、回転支軸61の外周面には、円弧状断面の一部を弦方向に沿って研削して形成する平坦面61A、61Bを、周方向二箇所に形成して、止めネジ67のネジ先端部を当接すべく構成してある。
図7(a)に示すように、止めネジ67のネジ先端部を一方の平坦面61Aに当てつけると排塵制御体60を閉じ姿勢に設定でき、図7(b)に示すように、止めネジ67を緩めて排塵制御体60を回転支軸61周りに回動させて、止めネジ67を締めこんでネジ先端部を他方の平坦面61Bに当てつけると、排塵制御体60を開き姿勢に切り換えることができる。
【0045】
図2に示すように、排塵制御体60は、脱穀フィードチェーン11の存在側とは反対側の脱穀部10の横側壁10aに備えた排ワラ搬送装置用連動手段Dにより、前記搬送ガイド杆22の前記搬送終端側の連結杆23が連結している部位に連動されている。
【0046】
排ワラ搬送装置用連動手段Dについて説明する。図3及び図5に示すように、回転支軸61における脱穀部10の左右一方の横側壁10aから突出した突出端に、揺動アーム71を取付けてある。一方、揺動アーム71の上方で、搬送ガイド杆22を支持する支持部材24と支持部材24の下方に位置する支持ブラケット62とを機体フレーム76に取付、支持ブラケット62に連動部材としての連動アーム73を上下揺動自在に支持し、連動アーム73の先端に受止ピン73aを取付固定してある。受止ピン73aには、回転可能なカラー73bが遊転外嵌されており、カラー73bが搬送ガイド杆22とともに上下動する連結杆23の下端に当接する状態に構成されている。
したがって、搬送ガイド22が無端回動チェーン21に対して近接・離間作動する状態に連動して、連動アーム73は、上下揺動する。
【0047】
図2〜図5に示すように、連動アーム73と同一軸芯位置には、連係アーム74が取り付け固定してあり、連動アーム73の上下揺動作動に連動して、連係アーム74が一体的に上下揺動する。搬送ガイド杆22に連係された連係アーム74と、排塵制御体60に連係された揺動アーム71とを連係リンク部材75で連係してある。
連係リンク部材75は、直線状のリンク部75Aと直線状のリンク部75Aの下端部においてL字状に屈折しているアーム部75Bとを一体形成してあり、リンク部75Aの上端部を連係アーム74に相対揺動自在に連係し、アーム部75Bの先端部を揺動アーム71に相対揺動自在に連係してある。
【0048】
図3及び図5に示すように、連動アーム73を支持する支持ブラケット62と支持部材24の設置部位に、連動アーム73を付勢し連動アーム73の受止ピン73aを連結杆23の下端に当接する方向に付勢する板状のバネ70を装着してある。板状のバネ70は、支持部材24の下端面と連動アーム73のカラー73bに下から当接して、連動アーム73を引き上げ付勢している。
図3(a)に示すように、処理物量が少なくなって搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に近接する状態に戻っても、排ワラ搬送装置用連動手段Dに連係された連係アーム74、連係リンク部材75等の連係部分のガタ等によって、連動アーム73が戻り切らない点を、この板状のバネ70によって、連動アーム73を引き上げ付勢して、連動アーム73の受止ピン73aを連結杆23の下端に当接する状態を維持すべく構成してある。
【0049】
図2及び図3に示すように、排ワラ搬送装置用連動手段Dを構成する連係リンク部材75の直線状のリンク部75Aは、二部材で構成されており、二部材の連結部位に長孔調整機構75aが設けてある。この長孔調整機構75aを利用して、唐箕32の蓋体32Bの初期開度を調節可能に構成してある。
製作ロット毎の製作誤差に基づく初期開度の違いを調整することが可能である。
【0050】
以上、搬送ガイド杆22に連係されている連動アーム73、連動アーム73と一体揺動可能な連係アーム74、連係アーム74に連係された連係リンク部材75、連係リンク部材75に連係された揺動アーム71によって、排ワラ搬送装置用連動手段Dを構成する。
【0051】
選別風量調節機構Cについて説明する。図3及び図4に示すように、唐箕32を収納する唐箕ケース32Aの一部を切り欠いて外部に臨む開口32aを形成するとともに、開口32aを開閉する蓋体32Bを揺動自在に支持してある。
蓋体32Bを開き状態にすると、開口32aを通して唐箕32が起こした風量の一部を唐箕ケース32A外に放出することができる。このような構成によって、選別風量を少なくできる。
蓋体32Bを閉じ状態にすると、唐箕32が起こした風量の全てを唐箕ケース32Aから選別部30に送り込むことができる。このような構成によって蓋体32Bを開き状態にする場合に比べて多くできる。
【0052】
図4に示すように、蓋体32Bは、上端近くに配置されているブラケット63に支持されており、ブラケット63に受動アーム64を回転自在に支持させてある。受動アーム64のブラケット63に支持されている基端ピン部64Aに蓋体32Bの上端円曲部32bを取り付け固定し、蓋体32Bを受動アーム64とともに一体的に基端ピン部64A回りで回転可能に構成してある。
【0053】
受動アーム64の上端に板状の連結リンク65がピン64aを介して連結してあり、連結リンク65におけるピン連結部位とは反対側の端部を排塵制御体60の枢支部位まで延出してある。図6に示すように、排塵制御体60の枢支部位においては、揺動アーム71が回転支軸61を介して排塵ファン41の下方に位置する部分42aに軸支されており、回動支軸61に被動アーム68を取り付けて、被動アーム68を揺動アーム71と一体的に揺動可能に構成してある。
【0054】
選別排塵用連動手段Eを構成する連結リンク65は二部材で構成してあり、連結部位に長孔調整機構65Aが設けてある。この長孔調整機構65Aを利用して、唐箕32の蓋体32Bの初期開度を調節可能に構成してある。
製作ロット毎の製作誤差に基づく初期開度の違いを調整することが可能である。
以上、被動アーム68、連結リンク65、受動アーム64で選別排塵用連動手段Eを構成する。
【0055】
以上のように、排ワラ搬送装置用連動手段Dと選別排塵用連動手段Eとを連動させたので、次のような制御形態を採る。
(1) 図3(a)に示すように、搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21に近接する処理物量が少ない場合には、排ワラ搬送装置用連動手段Dによって排塵制御体60を閉じ状態に設定して、排塵口45より排ワラ等に混じって穀粒等が排出される3番ロスを防止することができる。
この場合に、選別排塵用連動手段Eによって、唐箕32の蓋体32Aが開き姿勢に切り換えられる。そうすると、唐箕32の風量の一部が開口32aより放出されて、選別部30へ送られる風量が処理量に応じて少なくなる。
【0056】
(2) 図3(b)に示すように、搬送ガイド杆22が無端回動チェーン21から離間する処理物量が多い場合には、排ワラ搬送装置用連動手段Dによって排塵制御体60を開き状態に設定して、排塵口45より多量の排ジン等を排出すべく構成してある。
この場合に、選別排塵用連動手段Eによって、唐箕32の蓋体32Aが閉じ姿勢に切り換えられる。そうすると、唐箕32の全風量が放出されることはなく、選別部30へ送られる風量が処理量に応じて多くなる。
【0057】
(3) 図示してはいないが、搬送ガイド杆22の位置が無端回動チェーン21に対して図3(a)(b)に示す状態の中間状態を示す場合には、排塵制御体60の開き状態、及び、唐箕32の蓋体32Aの開き状態が、図3(a)(b)に示す状態の中間の状態を示すこととなる。
【0058】
〔別実施形態〕
(1) 選別風量調節機構Cとしては、唐箕32と一番スクリューコンベア2との間に通路を開閉する機構を設けてもよい。開閉する機構としては、ドア式に揺動する形式のものが代表される。また、ベルト無段変速装置や各種モータ、制御装置等を適宜組み合わせることによって、唐箕32の回転数を制御する制御機構を用いてもよい。
(2) 排塵制御体60としては、単に板状のものだけでなく、板状部材の下端部に複数個の切欠き部を形成したレーキ状のものや、板状部材の表面に凹凸を形成したり、テフロン(登録商標)等のコーティング剤を施して、排塵や排ワラ等が付着し難い構成を採ってもよい。
(3) 選別排塵用連動手段Eとしては、リンク機構を使用した機械的連係手段を構成したが、連係ロッドや連係ワイヤ等の異なる機械的手段を採ってものよく、また、排塵制御体60と選別風量調節機構Cとをアクチュエータを利用して駆動し、両者を制御手段からの指令に基づいて制御する形態を採ってもよい。また、排塵制御体60と選別風量調節機構Cとのうちの一方のみを、アクチュエータを使用して駆動制御し、排塵制御体60と選別風量調節機構Cとの連係には、機械的連係機構を使用してもよい。
(4) 排ワラ搬送装置用連動手段Dとしては、連係ロッドや連係ワイヤ等の異なる機械的手段を採ってものよく、また、アクチュエータを用いて排塵制御体60を制御すべく構成し、搬送ガイド杆22の動作をセンサで感知して、前記排塵制御体60のアクチュエータを駆動制御してもよい。
(5) 排ワラ搬送装置用連動手段Dにおいて、リンク機構等のガタに起因する戻り遅れ等を抑制する目的で付勢手段として板状のバネ70が設けてあるが、コイルバネ等で行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】脱穀装置の縦断側面図
【図2】搬送ガイド杆と排塵制御体とを連係する排ワラ搬送装置用連動手段、及び、排塵制御体と唐箕ケースの蓋体とを連係する選別排塵用連動手段を備えた脱穀装置の側面図
【図3】(a)処理物が少ない場合の無端回動チェーンに近接した状態にある搬送ガイド杆と、閉じた姿勢にある排塵制御体、及び、開き姿勢にある唐箕ケースの蓋体を示す側面図、(b)処理物が多い場合の無端回動チェーンから離間した状態にある搬送ガイド杆と、開いた姿勢にある排塵制御体、及び、閉じ姿勢にある唐箕ケースの蓋体を示す側面図
【図4】唐箕ケースの蓋体と選別排塵用連動手段との連係状態を示す側面図
【図5】搬送ガイド杆を支持する連結杆と連動部材との当接状態を示す側面図
【図6】排塵制御体と排ワラ搬送用連動手段の連係リンク部材との連係、及び、排塵制御体と選別排塵用連動手段の連結リンクとの連係状態を示す側面図
【図7】(a)排塵制御体を閉塞姿勢に設定した状態を示す側面図、(b)排塵制御体を開放姿勢に設定した状態を示す側面図
【符号の説明】
【0060】
12 扱室
15 送塵口
20 排ワラ搬送装置
21 無端回動チェーン
22 搬送ガイド杆
32 唐箕
45 排塵口
50 排ワラ処理装置
60 排塵制御体
70 板状のバネ(付勢手段)
73 連動アーム(連動部材)
A ファン付き排塵経路
B 風力排塵経路
C 選別風量調節機構
D 排ワラ搬送装置用連動手段
E 選別排塵用連動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
唐箕の選別風の風量を変更調節可能な選別風量調節機構と、前記選別風を機体後部の排塵口に誘導する風力排塵経路と、前記風力排塵経路における機外へ開口する排塵口の手前に位置して前記風力排塵経路を開路する開き姿勢と前記風力排塵経路を閉路して三番ロスを抑制する閉じ姿勢とに切換可能な排塵制御体とを備え、前記排塵制御体を閉じ姿勢側に切り換えると前記選別風量調節機構を前記選別風量が少なくなる状態に切換え、前記排塵制御体を開き姿勢側に切り換えると前記選別風量調節機構を前記選別風量が多くなる状態に切換えるべく、前記選別風量調節機構と前記排塵制御体とを選別排塵用連動手段によって連動させてある脱穀装置。
【請求項2】
扱室からの脱穀排ワラを無端回動チェーンと搬送ガイド杆とによって機体後方向きに挟持搬送する排ワラ搬送装置を備え、前記搬送ガイド杆の前記無端回動チェーンに対する挾持間隔を変更する方向への変位を前記排塵制御体の開閉姿勢切換に要する変位として伝達する排ワラ搬送装置用連動手段を設け、前記搬送ガイド杆と前記無端回動チェーンとの相対間隔が大きくなると、前記排塵制御体を開き姿勢側に切り換え操作し、前記搬送ガイド杆と前記無端回動チェーンとの相対間隔が小さくなると、前記排塵制御体を閉じ姿勢側に切換え操作するように、前記搬送ガイド杆と前記排塵制御体とを前記排ワラ搬送装置用連動手段を介して連動させてある請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記排ワラ搬送装置用連動手段に、前記搬送ガイド杆が前記無端回動チェーンとの相対間隔を変動することに連動して作動する連動部材を備え、前記搬送ガイド杆と当接する方向に前記連動部材を付勢する付勢手段を設けてある請求項2記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−81812(P2010−81812A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251593(P2008−251593)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】