説明

脱臭装置

【課題】起動時に未浄化物質が送出されることを抑制する脱臭装置を提供する。
【解決手段】脱臭装置1は、光を出射するLED61が配された発光ユニット60と、LED61からの光が照射されることにより光触媒反応を起こす浄化板10と、浄化板10に空気を流すためのファン31、32と、発光ユニット60とファン31、32を制御するための制御回路100とを備える。制御回路100は、脱臭装置1の電源がONされる際、LED61を点灯させてから所定時間後にファン31、32を駆動する。これにより、脱臭装置1の電源がONされた後、電源OFFの間に浄化板10の吸着膜14に付着していた未浄化物質が、排気口20bから送出されることが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒構造体を用いて空気中に含まれる浄化対象物質を浄化する脱臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光触媒活性物質を含む光触媒構造体を用いて、大気浄化、脱臭、浄水、抗菌、防汚、水分解を行う光触媒装置の開発が進められている。光触媒構造体は、所定波長の光が照射されることにより膜面で酸化還元反応(光触媒反応)を起こし、膜面に付着した物質を浄化する。この種の光触媒構造体は、一般に、基板上に、酸化チタン(TiO)等からなる光触媒膜が積層されることにより生成される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3809347
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記光触媒構造体を用いた脱臭装置では、装置周辺の空気を吸気口から取り込み、取り込まれた空気に含まれる浄化対象物質を光触媒膜上で浄化し、浄化後の空気を排気口から送出する。このとき、光触媒構造体に空気を流すためにファンが用いられる。
【0005】
しかしながら、脱臭装置が動作していない間に、光触媒構造体上に浄化対象物質が付着すると、次回脱臭装置が起動されてファンが駆動される時に、光触媒構造体上に付着した浄化対象物質が浄化されずに排気口から送出されてしまう。
【0006】
本発明は、かかる問題を解消するためになされたものであり、起動時に未浄化物質が送出されることを抑制する脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主たる態様は、光触媒反応により空気を浄化する脱臭装置に関する。この態様に係る脱臭装置は、光を出射する光源と、前記光が照射されることにより前記光触媒反応を起こす光触媒構造体と、前記光触媒構造体に空気を流すためのファンと、前記光源および前記ファンを制御するための制御部とを備える。ここで、前記制御部は、前記脱臭装置の起動の際、前記光源を点灯させてから所定時間後に前記ファンを駆動する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、起動時に未浄化物質が送出されることを抑制する脱臭装置を提供することができる。
【0009】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態に係る浄化板の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る基板の形成手順を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る凹凸構造の反射率低減作用を示す測定結果である。
【図4】実施形態1に係る脱臭装置の構成を示す図である。
【図5】実施形態1に係る起動時および停止時における制御を示すフローチャートである。
【図6】実施形態1に係る通常動作時におけるモード切り替えを示すフローチャートおよび点灯制御パターンを示す図である。
【図7】実施形態1に係る点灯制御パターンの変更例を示す図である。
【図8】実施形態1に係る浄化板の配置の変更例を示す図である。
【図9】実施形態2に係る脱臭装置の構成および浄化板の変更例を示す図である。
【図10】実施形態2に係る制御を示すフローチャートである。
【図11】実施形態3に係る浄化板および脱臭装置の構成を示す図である。
【図12】実施形態2および3に係る浄化板の変更例を示す図である。
【図13】実施形態2の変更例に係るLEDの点灯順の設定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0012】
<浄化板>
図1に、本実施の形態に係る浄化板10の構成を示す。同図(a)は、浄化板10の積層構造を示す図であり、同図(b)は、基板11の凹凸構造11aを示す図であり、同図(c)は、凹凸構造11aの二次電子写真像を示す図である。
【0013】
同図(a)を参照して、浄化板10は、基板11と、透過膜12と、光触媒膜13と、吸着膜14を有する。
【0014】
基板11は、ポリカーボネート等の透光性材料から形成されており、屈折率は1.6に設定されている。基板11の透過膜12側の面には、同図(b)、(c)に示す如く、縦横均等に一定ピッチにて円柱状の突起が並ぶようにして、凹凸構造11aが形成されている。凹凸構造11aのピッチ(円柱状突起の幅)は、縦横ともに250nmであり、円柱状突起の高さは、175nmとなっている。
【0015】
なお、同図(c)の写真像は、凹凸構造11a上に合金膜をスパッタによって20nm形成した後、電子写真撮像のためにPt−Pdを10Å蒸着した状態で撮像を行ったときのものである。
【0016】
ここで、図2を参照して基板11の形成手順について説明する。
【0017】
まず、シリコン原盤上にスピンコートによりレジストを塗布する(工程1)。次に、EB描画(電子ビームカッティング)にて、上記ピッチの凹凸構造を形成する(工程2)。この描画後、現像処理を行い(工程3)、RIE加工を行う(工程4)。さらに、酸素プラズマアッシングを行って、残存するレジストを除去する(工程5)。これにより、シリコン原盤上に凹凸構造が形成される(Si原基)。
【0018】
続いて、このSi原基に対し、Niメッキを行って(工程6)、Niを堆積させる。そして、堆積したNi層をSi原基から剥離して、スタンパを作製する(工程7)。このスタンパに対し、射出成形を行って(工程8)、基板11を作製する(工程9)。これにより、凹凸構造が転写された基板11が形成される。
【0019】
なお、本実施の形態では、基板11の材料としてポリカーボネート以外に、ポリオレフィンといった透光性材料を用いることもできる。また、これ以外に、ポリ乳酸等の生分解性材料を用いることもできる。生分解性材料を用いると、廃棄時における環境負荷等を小さくすることができる。
【0020】
また、EB描画の替わりに、レーザビームカッティングを用いることもできる。この場合、シリコン原盤上には、フォトレジスト層が塗布される。また、カッティングビームとしては、波長400nm程度のレーザ光が用いられる。
【0021】
図1(a)に戻り、透過膜12は、上記手順によって形成された基板11の凹凸構造11a上に、スパッタ法によって積層される。透過膜12は、Alからなり、屈折率は基板11と略同じとなるよう1.6に設定されている。また、透過膜12の上面と下面は、基板11の凹凸構造11aを反映して凹凸構造となっている。なお、透過膜12は、非電解質な無機材料からなるため、後述する光触媒膜13の光触媒反応により浸食されない。
【0022】
また、透過膜12の膜厚およびRa(表面粗さ)は、基板11が光触媒膜13によって浸食されないように、且つ、基板11側から入射する光が光触媒膜13に十分に届くように設定されている。
【0023】
すなわち、透過膜12の膜厚が小さく設定されると、Raの設定によっては、透過膜12にホールが生じ、基板11と光触媒膜13とがこのホールにより接することが起こり得る。このように基板11が光触媒膜13に接すると、後述する光触媒膜13の光触媒反応により基板11が浸食され、基板11に劣化が生じる可能性がある。また、透過膜12のRaが大きく設定されると、透過膜12の膜厚によっては、透過膜12にホールが生じる。この場合も、光触媒膜13の光触媒反応により基板11が浸食され、基板11に劣化が生じる可能性がある。他方、ホールの発生を防ぐために、透過膜12の膜厚が大きく設定されると、基板11側から入射する光が、透過膜12によって吸収されて光触媒膜13に届きにくくなる。このため、光触媒膜13での光触媒反応が進み難くなる。
【0024】
このようなことを考慮して、透過膜12の膜厚およびRaが、適正に設定される必要がある。なお、透過膜12のRaの制御は、スパッタ時のガス圧を調節することによって行われる。
【0025】
本件発明者の行った実験では、透過膜12の膜厚を7nmとし、Raを0.8nmとすると、基板11に光触媒膜13の光触媒反応による浸食が生じたが、透過膜12の膜厚を7nmとし、Raを0.6nmとすると、基板11に光触媒膜13の光触媒反応による浸食が生じなかった。このことから、透過膜12は、膜表面のRaが膜厚の10%以下程度となるよう形成するのが望ましいと判断される。また、基板11側から入射する光が光触媒膜13に向けて十分に透過するよう、透過膜12の膜厚は3〜80nm程度に設定されるのが望ましい。以上から、本実施の形態では、透過膜12の膜厚を7nm、Raを0.66とした。なお、スパッタ時のガス圧を0.3Paとした。
【0026】
光触媒膜13は、透過膜12の上面にスパッタ法によって積層される。光触媒膜13は、TiOからなり、屈折率は2.5に設定されている。また、光触媒膜13の上面と下面は、透過膜12の上面に形成された凹凸構造を反映して凹凸構造となっている。これにより、基板11の表面の凹凸構造11aを反映した構造が光触媒膜13の上面(反応面)に形成され、光触媒膜13上面の表面積が大きくなり、光触媒反応が起こりやすくなる。
【0027】
なお、成膜後の光触媒膜13自体の表面は、積層される際にガス圧の調整によって多孔質状とすることができる。これにより、光触媒膜13自体が多孔質状となるため、光触媒膜13の表面積を大きくすることができ、さらに基板11の凹凸構造11aより光触媒膜13の表面積を増やすことができる。光触媒膜13の膜厚は小さいと、透過膜12の上面は光触媒膜13により完全に覆われなくなる。他方、光触媒膜13の膜厚が大きいと、透過膜12の上面に形成された凹凸構造が光触媒膜13の上面(反応面)に反映しなくなることに加えて、透過膜12側から入射する光が、光触媒膜13による吸収により、光触媒膜13の上面まで透過し難くなる。そこで、本実施の形態では、これらを考慮して、透過膜12の上面が十分に被覆され、且つ、上面へと透過する光が十分に得られるように、光触媒膜13の膜厚を80nmとした。
【0028】
光触媒膜13を形成するTiOは、アナターゼ結晶微粒子を含んでいる。アナターゼ結晶は、バンドギャップから波長388nm以下の紫外光を吸収し、光触媒反応を起こす。また、アナターゼ結晶は、微粒子状で光触媒膜13内に存在するため、基板11の形状が複雑であっても基板11に対して均一に分布する。これにより、光触媒膜13上で広範囲に亘って効率的に光触媒反応が起き易くなる。
【0029】
また、TiOは、アナターゼ結晶構造以外に、ルチル構造、アモルファス構造、ブルカイト構造を形成することが分かっており、構造により光触媒反応が異なる。すなわち、反応の活性や反応する波長が構造毎に異なっている。本実施の形態で用いた光触媒膜13を形成するTiOには、複数の構造が含まれている。具体的には、TiOからなる光触媒膜13は、アモルファス状のものおよびアナターゼ結晶欠陥や、スパッタ時に含まれる微量の窒素を含む微粒子、ルチル微粒子が含まれた複合膜である。これにより、光触媒膜13の光触媒反応は、前述した388nm以下だけでなく、400〜500nmの可視光領域の波長の光によっても促進されることとなる。よって、光触媒反応を起こす光源としてLEDや半導体レーザが用いられる場合に、これら光源から出射される光が温度や個体差などにより可視光(388nm以上の光)を含む場合でも、光の利用効率が高められる。なお、TiOにより形成される構造として、アナターゼ結晶構造以外に、上記に記述した全ての構造が含まれる必要はなく、TiOからなる光触媒膜13は、可視光(388nm以上の光)で活性を得られる微粒子が含まれる複合膜であれば良い。
【0030】
なお、光触媒膜13は、光触媒膜13に付着した物質に対して光触媒作用を及ぼす。光触媒作用を受ける物質として、アンモニア、アセトアルデヒド、硫化水素、メチルメルカプタン、ホルムアルデヒド、酢酸、トルエン、菌、油分、などが挙げられる。これら物質は、光触媒作用を受けて二酸化炭素や水等に分解される。
【0031】
吸着膜14は、光触媒膜13の上面にスパッタ法によって積層される。吸着膜14は、SiOからなる。SiOは吸湿性があり、空気中の水分子や気相ガスを取り込み易い性質を有する。これにより、吸着膜14の上面にある空気中の物質が、吸着膜14に付着し易くなる。また、吸着膜14に吸着した物質は、吸着膜14上に留まり光触媒作用を受ける。
【0032】
なお、吸着膜14は、光触媒膜13の上面を完全にコートしてしまわないよう、光触媒膜13上に積層される。すなわち、スパッタ時のガス圧を低くしたり(具体的には0.8〜1Pa以上)、スパッタレートを早くしたりする(70Å/min以上)ことにより、吸着膜14に無数の微細孔が形成される。これにより、吸着膜14の上面に付着した物質が、微細孔を介して、光触媒膜13と接するようになる。吸着膜13の膜厚は、吸着膜14に付着した物質が光触媒膜13と効率的に接する厚みに設定されるのが望ましく、具体的には、3〜100nm程度とするのが望ましい。本実施の形態では、吸着膜13の膜厚を7nmとした。
【0033】
以上、上記浄化板10によれば、浄化板10に対して基板11の透過膜12とは反対側の面(以下、「入射面」という)から、波長375nmの紫外光が照射されると、かかる紫外光は、基板11と、透過膜12と、光触媒膜13を透過し、光触媒膜13の上面(以下、「反応面」という)に到達する。これにより、吸着膜14に付着して反応面に接している物質が光触媒作用を受け得る。
【0034】
この場合、基板11と光触媒膜13の間に透過膜12が配されているため、光触媒膜12の光触媒作用による基板11の浸食が抑制され得る。また、反応面には凹凸構造が形成されているため、反応面が物質と接触する面積が大きくなり、光触媒膜13による光触媒反応が起こりやすくなる。さらに、反応面に形成された凹凸構造表面において紫外光が多重反射を引き起こすため、光触媒膜13と紫外光との反応機会が多くなり、光触媒膜13による光触媒反応が起こりやすくなる。
【0035】
また、上記浄化板10によれば、吸着膜14に物質が留められ易くなるため、吸着膜14がない場合に比べて、物質に対する光触媒反応がより効率的に行われるようになる。
【0036】
また、上記浄化板10によれば、基板11と透過膜12の接面と、透過膜12の接面と光触媒膜13の接面に微細な凹凸構造が形成され、この凹凸構造のピッチ(250nm)が光触媒反応のための紫外光の波長(375nm)よりも小さく設定されているため、入射面から入射する紫外光が、基板11と透過膜12の界面と、透過膜12の接面と光触媒膜13の界面で反射することが抑制される。すなわち、屈折率の異なる膜が隣接しても、波長より小さい凹凸構造により界面での屈折率が徐々に変化するため、界面での反射を抑制する効果が大きくなる。また、基板11と透過膜12の屈折率が略同じであるため、入射面から入射する光が、透過膜12と基板11の界面で反射することが、さらに抑制される。これにより、浄化板10の入射面から入射する光が、より効率的に光触媒膜13に到達する。なお、このように作製した浄化板10の波長λ=375nmでの透過率は70%以上であった。
【0037】
なお、上記浄化板10では、透過膜12と基板11の屈折率を1.6に合わせたが、他の屈折率に合わせる場合には、それに応じて、透過膜12と基板11の材料を適宜選択すれば良い。また、透過膜12と基板11の屈折率は一致させるのが望ましいが、両者の屈折率が相違する場合にも、なるべく両者の屈折率が接近するように、透過膜12と基板11の材料を選択すると良い。
【0038】
また、上記浄化板10によれば、入射面から光を入射させることにより、反応面において光触媒反応を生じさせることができるため、吸着膜14に浄化対象物質が多量に付着した場合でも、反応面における光触媒反応が滞りなく起こり得る。
【0039】
なお、基板11の上面側だけでなく下面側にも、上面側と同様に、透過膜12と、光触媒膜13と、吸着膜14が配されるようにしても良い。このとき、吸着膜14は光透過膜により構成される。この場合、下面側から光が入射すると、1つの光源で下面側の透過膜12の下面(反応面)と、上面側の透過膜12の上面(反応面)において、光触媒反応が生じることとなる。但しこの場合、下面側表面に多量の物質が付着して光の透過が減少することを考慮する必要がある。なお、吸着膜14は透光性のSiOからなり、屈折率は1.45である。吸着膜14の表面の凹凸と、吸着膜14と光触媒膜13との界面の凹凸により反射を低減できる。
【0040】
また、浄化板10の各層に用いる材料は、上記に限定されるものではない。また、各層の厚みも、材料の変更に応じて、適宜、変更可能である。たとえば、透過膜12を構成する材料として上記ではAlが用いられたが、Alの替わりにSiOが用いられても良い。この場合、SiOの透過率は、Alのように基板11の透過率と略同じとはならないため、基板11側から入射した光が基板11と透過膜12との間で反射する割合は高くなる。しかしながら、吸着膜14と同じ材料であることから、スパッタ時のガス圧調整により、透過膜12と吸着膜14とを成膜できる。よって、浄化板10の製造が容易になる。
【0041】
さらに、光触媒反応に用いる光の波長も、光触媒膜13に用いる材料に応じて適宜変更され得る。なお、このように光触媒反応に用いる光の波長が変更される場合には、それに応じて、凹凸構造のピッチを調整するのが望ましい。すなわち、上記と同様、光触媒反応に用いる光が、基板11と透過膜12の界面と、透過膜12の接面と光触媒膜13の界面で反射するのを抑制するためには、当該光の波長よりも凹凸構造のピッチを小さく設定する必要がある。
【0042】
なお、基板11を構成するポリカーボネートは、ガラス等よりも空気中の物質を吸着する性質を有する。この性質により、空気中の物質を浄化板10の周辺に留めることができる。
【0043】
上記浄化板10の実施の形態では、基板11側から光を照射するとして説明した。しかしながら、凹凸構造とTiOの多孔質構造により光触媒反応面積が飛躍的に増大するため、吸着膜14側から光を照射しても、吸着膜14に付着する対象物質の量が多くなければ、これらの構造がない従来の浄化板に比べて、浄化性能を高めることができる。しかしながら、吸着膜14に付着する対象物質が圧倒的に多く、吸着膜14側から反応面に光が届かなければ、従来の浄化板と同じ結果となる。よって、本実施の形態のように、光を基板11側から入射する方が望ましい。
【0044】
<測定例>
発明者は、上記凹凸構造による反射率低減作用の測定を行ったので、以下、これについて説明する。
【0045】
本測定では、図1(c)に示すように、縦横方向に均等に一定ピッチにて円柱状の突起が並ぶようにして、基板上に凹凸構造を形成した。凹凸構造のピッチ(隣り合う円柱状突起間の距離)は、縦横ともに250nmであり、円柱状突起の高さは、170nmである。凹凸構造は、図2に示す工程により生成した。すなわち、図2に示す工程により、凹凸構造が転写された基板を形成した。なお、本測定では、基板材料として、ポリカーボネートを用いた。
【0046】
本測定では、このようにして生成した基板上に、Co50Al50at.%の合金膜(反射膜)を、スパッタによって20nm形成した。なお、本測定では、基板上に、この合金膜(反射膜)のみを形成した。
【0047】
合金膜(反射膜)の形成は、以下のようにして行った。
【0048】
真空チャンバで5×10−5Pa以上まで真空引きを行ったのち、Arガスを導入し、0.6Paの雰囲気中でスパッタを行った。チャンバ内には、CoターゲットとAlターゲットを設置し、同時にそれぞれに電力を投入することにより合金化するCo−スパッタ法を用いてCo50Al50at.%の合金膜(反射膜)を製膜した。尚、基板は、合金膜(反射膜)を均一に製膜するために、放電中に、40rpmで自公転させた。
【0049】
このようにして合金膜(反射膜)を生成した後、反射率の測定を行った。図3に、その測定結果を示す。同図には、比較例として、反射膜形成面が平坦なガラス基板上にCo50Al50at.%の合金膜をスパッタによって20nm形成した構造体に対する反射率の測定結果を重ねて示してある。光は、合金膜(反射膜)側から複数の凹凸構造が照射範囲に含まれるように照射した。
【0050】
同図から、基板上に上記のような凹凸構造を形成すると、平坦なAl−Co膜を形成したガラス基板に比べ、反射率が35〜40%程度低下することが分かる。このことから、凹凸構造を形成すると、凹凸構造を形成しない鏡面部分との間で大きな反射率差を発現させることができることが分かる。
【0051】
かかる反射率の低減作用は、図3から、少なくとも凹凸構造のピッチ(250nm)が、光触媒反応に用いる光の波長(375nm)よりも小さいと起こることが分かる。したがって、上記浄化板10では、光触媒反応に用いる光の波長よりも凹凸構造のピッチを小さく設定することで、基板11と透過膜12の界面と、透過膜12の接面と光触媒膜13の界面における当該光の反射を抑制することができる。
【0052】
<実施形態1>
以下は、上記浄化板10を脱臭装置に適用した例である。
【0053】
図4は、脱臭装置1の構成を示す図である。
【0054】
脱臭装置1は、浄化板10と、送風経路20と、ファン31、32と、フィルター41、42と、臭気センサ51と、発光ユニット60と、LED駆動回路70と、ファン駆動回路81、82と、電源スイッチ90と、制御回路100と、を備える。
【0055】
送風経路20は、中空の筒体からなっており、その中を空気がX軸方向に流通できるよう構成されている。送風経路20の入口と出口には、それぞれ吸気口20aと排気口20bが形成されている。また、送風経路20の中心付近には、浄化板10が配置されるための浄化領域20cが形成されている。
【0056】
浄化板10は、上記の如く、基板11と、透過膜12と、光触媒膜13と、吸着膜14が、X−Y平面に平行となるよう積層されている。また、浄化板10は、浄化領域20c内に突出するように設置されている。
【0057】
ファン31、32は、吸気口20aから排気口20bに向けて、空気を流通させる。これにより、吸気口20a付近にある空気は、ファン31によって吸気口20aから吸い込まれ、浄化領域20cを通り、ファン32によって排気口20bから送出される。
【0058】
フィルター41は、吸気口20aから吸い込まれた空気に含まれる大きな埃を取り除き、フィルター42は、フィルター41側から送出される空気に含まれる小さい埃を取り除く。臭気センサ51は、ファン31から浄化領域20cに向けて送出される空気に含まれる臭い成分を検出する。臭気センサ51の検出信号は、制御回路100に出力される。
【0059】
発光ユニット60は、X−Y平面上に複数のLED61を有している。これらLED61は、浄化板10の入射面に向けて波長375nmの光を出射する。LED駆動回路70は、制御回路100からの指令に応じて、発光ユニット60に配された複数のLED61を駆動する。
【0060】
ファン駆動回路81、82は、制御回路100からの指令に応じて、それぞれ、ファン31、32を駆動する。ファン31、32の回転数は、制御回路100によって制御される。電源スイッチ90には、ON/OFFの切り替えスイッチが設けられており、操作者はこのスイッチを切り替えることにより、脱臭装置1の電源をON/OFFに切り替えることができる。電源スイッチ90の切り替え信号は、制御回路100に出力される。制御回路100は、臭気センサ51の出力信号と電源スイッチ90の切り替え信号に基づき、LED駆動回路70と、ファン駆動回路81、82を制御する。
【0061】
このように脱臭装置1が構成されると、ファン31が駆動されることにより吸気口20aから取り込まれた空気が、フィルター41、42で埃を取り除かれ、浄化領域20cに送出される。浄化領域20cに送出された空気は、浄化板10の吸着膜14に接すると、かかる空気中に含まれる物質が吸着膜14に留められ、光触媒膜13の反応面と接することとなる。この状態で、発光ユニット60のLED61から光触媒膜13に光が照射されると、反応面において光触媒反応が起こり、反応面と接している物質が分解される。浄化板10による作用を受けて分解された物質は、ファン31、32が駆動されることにより浄化領域20cから排気口20bへ向けて送出され、排気口20bから送出される。こうして、脱臭装置1の近傍の空気中に含まれる物質が浄化される。本実施の形態の構成では、浄化板10を挟んで空気の流路とLED61等の駆動回路を配置できるため、浄化物質が回路を浸食するガスであっても浄化可能となる。
【0062】
図5は、起動時および停止時における制御回路100による制御を示すフローチャートである。
【0063】
同図(a)は、脱臭装置1の電源スイッチ90がOFFからONにされた時(起動時)のLED61とファン31、32の制御を示すフローチャートである。
【0064】
脱臭装置1の電源がONされると、まず、電源ONされてからの経過時間がカウントされる(S11)。続いて、制御回路100が、LED駆動回路70を介して、LED61を点灯させる(S12)。
【0065】
制御回路100により、脱臭装置1の電源がONされてからの経過時間が所定時間に達したと判定されると(S13:YES)、制御回路100は、ファン駆動回路81、82を介してファン31、32を駆動する(S14)。このようにして、脱臭装置1が通常動作とされる。
【0066】
このようにLED61とファン31、32が制御されると、脱臭装置1の電源がONされた時に、電源OFFの間に吸着膜14に付着した未浄化物質が、排気口20bから送出されることが抑制される。
【0067】
すなわち、電源OFFの間に浄化領域20c付近に浮遊している物質は、吸着膜14の吸着能力が高いため、吸着膜14に付着される。この状態で、脱臭装置1の電源がONされて、LED61が点灯されると、LED61からの光が光触媒膜13に到達し、これにより電離した電子と正孔により、光触媒膜13の表面で酸化還元反応が生じて浄化対象物質が浄化される。このとき、浄化に寄与しなかった電子は再び正孔と反応し、熱エネルギーになる。かかる熱エネルギーにより光触媒膜13の温度が上昇するため、吸着膜14に付着している未浄化物質が、浄化されずに浄化領域20cの空気中に放出され易くなる。この状態でファン31、32が駆動されると、浄化領域20cの空気中に放出された未浄化物質が排気口20bから送出されてしまう。加えて、ファン31、32による気流によって、吸着膜14から未浄化物質が離脱し、排気口20bから送出されてしまう。
【0068】
これに対し、図5(a)の制御では、上記のように、電源ONから一定期間はファン31、32が停止しているため、この期間に光触媒膜13の温度上昇により空気中に放出された未浄化物質が、排気口20bから送出されるのが抑制され得る。また、このとき、ファン31、32は停止しているため、吸着膜14に付着している未浄化物質が、気流によって、吸着膜14から離脱して排気口20bから送出されるのが抑制され得る。これにより、電源ONと同時にファン31、32が駆動される場合に比べ、ファン31、32が停止している期間に未浄化物質の浄化が進められる。よって、所定時間の経過後にファン31、32が駆動されても、排気口20bから未浄化物質が送出され難い。
【0069】
なお、S13での判定に用いられる所定時間は、吸着膜14に付着した未浄化物質が十分に減少するまでの所要時間に設定される。こうすると、所定時間が経過した後には、ファン31、32が駆動されても排気口20bから送出される未浄化物質が少なくなるため、迅速に脱臭装置1の近傍の空気の取り込みを開始することができる。
【0070】
同図(b)は、脱臭装置1の電源スイッチ90がONからOFFにされた時(停止時)のLED61とファン31、32の制御を示すフローチャートである。
【0071】
脱臭装置1の電源がOFFされると、まず、電源OFFされてからの経過時間がカウントされる(S21)。続いて、制御回路100が、ファン駆動回路81、82を介して、ファン31、32を停止させる(S22)。
【0072】
制御回路100により、脱臭装置1の電源がOFFされてからの経過時間が所定時間に達したと判定されると(S23:YES)、制御回路100は、LED駆動回路70を介してLED61を消灯させる(S24)。このようにして、脱臭装置1の動作が終了する。
【0073】
このようにLED61とファン31、32が制御されると、電源OFFの間に吸着膜14に付着していた未浄化物質や、浄化板10の周辺にある未浄化物質が、排気口20bから送出されることが抑制される。
【0074】
すなわち、脱臭装置1の電源がOFFされて、ファン31、32の停止と共にLED61が消灯されると、浄化領域20cの空気中にある未浄化物質が吸着膜14に付着し、付着した未浄化物質は浄化されることなく吸着膜14に留まる。この状態で、次に脱臭装置1の電源がONされると、吸着膜14に付着している未浄化物質が減少するまでに時間を要し、さらに未浄化物質が排気口20bから送出され易くなってしまう。
【0075】
これに対し、図5(b)の制御では、上記のように、電源OFFされてファン31、32が停止されてから、所定期間はLED61が点灯しているため、この期間に、吸着膜14に付着していた未浄化物質や、浄化板10にある未浄化物質の浄化が進められることとなる。このため、LED61の消灯時には、吸着膜14の膜面や浄化領域20cには、未浄化物質が殆ど無い状態となる。よって、次に電源ONされるときに吸着膜14に付着している未浄化物質が少ないため、未浄化物質が十分に浄化されるまでに時間を要することがなく、さらに未浄化物質が排気口20bから送出されることが抑制され得る。また、電源OFFされてから、LED61が点灯している間、ファン31、32は停止しているため、吸着膜14に付着している未浄化物質が、気流によって、吸着膜14から離脱して排気口20bから送出されることが抑制され得る。
【0076】
なお、S23での判定に用いられる所定時間は、吸着膜14に付着した未浄化物質や、浄化板10にある未浄化物質が十分に減少するまでの所要時間に設定される。こうすると、所定時間が経過した後には、吸着膜14に付着する未浄化物質が少なくなるため、次に電源ONされるときに未浄化物質が排気口20bから送出され難くなり、迅速に脱臭装置1の近傍の空気の取り込みを開始することができる。
【0077】
図6は、通常動作時における制御回路100による制御を示す図である。
【0078】
同図(a)は、脱臭装置1の通常動作時におけるモード切り替えを示すフローチャートである。
【0079】
図5(a)の処理が終了して脱臭装置1が通常動作とされると、まず、臭気センサ51の検出信号が所定値以下であるかが判定される(S101)。臭気センサ51の検出信号が所定値以下であると判定されると(S101:YES)、制御回路100は、LED61の点灯制御パターンを“ON/OFFモード”に設定する(S102)。臭気センサ51の検出信号が所定値よりも大きいと判定されると(S101:NO)、制御回路100は、LED61の点灯制御パターンを“ONモード”に設定する(S103)。S102、S103の処理の後、再び処理がS101に戻されて繰り返される。
【0080】
なお、S101でNOと判定される場合には、浄化対象物質が微量ではなく十分に存在するため、浄化対象物質の拡散により光触媒膜13と浄化対象物質の接触が頻繁に生じる状態にある。よって、この場合には、点灯制御パターンが“ONモード”に設定されて、光触媒膜13における浄化能力が高められる。
【0081】
同図(b)は、“ON/OFFモード”のときの点灯制御パターンを示す図である。
【0082】
LED61の点灯制御パターンが“ON/OFFモード”に設定されると、制御回路100は、図示の如く、点灯時間がt1、消灯時間がt2、周期がT1となるようにLED61を制御する。なお、消灯時間t2は、LED61の点灯によって上昇した光触媒膜13の温度が十分抑制される時間に設定されている。
【0083】
同図(c)は、“ONモード”のときの点灯制御パターンを示す図である。
【0084】
LED61の点灯制御パターンが“ONモード”に設定されると、制御回路100は、図示の如く、LED61を一定レベルで連続的に点灯させる。
【0085】
同図(a)〜(c)に示すようにLED61が制御されると、脱臭装置1の通常動作時に、浄化領域20cに送出される空気に浄化対象となる物質が微量しか存在しない場合にも、確実に浄化対象物質を浄化することが可能となる。
【0086】
すなわち、空気中に浄化対象物質が微量しか存在しないときにLED61が点灯されると、光触媒膜13の温度が上昇する。これにより、浄化板10近傍の空気の温度が上昇するため、浄化領域20c内の空気に含まれる浄化対象物質が吸着膜14に付着し難くなる。しかしながら、この場合に、LED61の点灯制御パターンが“ON/OFFモード”に設定されて、LED61が所定時間ごとに点灯と消灯に切り替えられれば、光触媒膜13の温度上昇が抑制されるため、浄化対象物質が吸着膜14に付着し易くなり、浄化対象物質が浄化され易くなる。
【0087】
以上、本実施形態によれば、吸気口20aから吸い込まれた空気に含まれる物質は、浄化板10の光触媒膜13の光触媒作用により浄化され、排気口20bから送出される。これにより、脱臭装置1の近傍の空気が浄化され得る。
【0088】
また、本実施形態によれば、脱臭装置1の電源がONされた後、電源OFFの間に吸着膜14に付着していた未浄化物質が、排気口20bから送出されることが抑制される。これにより、電源ONの直後に、脱臭装置1から外部に異臭が放たれるのが抑制され得る。
【0089】
また、本実施形態によれば、脱臭装置1の電源がOFFされるときに、吸着膜14に付着している未浄化物質や、浄化領域20cにある未浄化物質が浄化されるため、次に脱臭装置1の電源がONされるときに、排気口20bから未浄化物質が送出され難くなり、且つ、迅速に脱臭装置1の近傍の空気の取り込みを開始することができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、脱臭装置1の通常動作時に、浄化対象物質が微量であると、LED61の点灯制御パターンが“ON/OFFモード”に設定されて、光触媒膜13の温度上昇が抑制されるため、微量の浄化対象物質を効率的に浄化板10に吸着させることができ、浄化対象物質をより確実に浄化することができる。
【0091】
なお、図6に示したLED61の点灯制御パターンは、“ON/OFFモード”と“ONモード”に切り替えられたが、これに限らず、“ON/OFFモード”における点灯制御パターンが複数準備され、これらが適宜切り替えられるようにしても良い。
【0092】
図7(a)は、“ON/OFFモード”における点灯制御パターンの変更例である。なお、図7(b)は、図6(b)と同じ図である。
【0093】
図7(a)の点灯制御パターンでは、図示の如く、点灯時間がt1、消灯時間がt2よりも長いt2’、周期がT1よりも長いT1’となっている。このようにLED61が点灯されると、図7(a)の消灯時間は同図(b)よりも長いため、同図(b)に比べて光触媒膜13の温度上昇が抑制されるとともに消費電力を低減できる。
【0094】
この場合、図6(a)のS102では、図7(a)、(b)に示す2種類の点灯制御パターンの何れかが、臭気センサ51の検出信号に基づいて設定される。具体的には、臭気センサ51の検出信号が、S101における所定値よりも小さく、所定の閾値よりも大きいときは、図7(b)の点灯制御パターンをもとにLED61が点灯制御され、臭気センサ51の検出信号が、S101における所定値よりも小さく、さらに、前記所定の閾値以下のときは、図7(a)の点灯制御パターンをもとにLED61が点灯制御される。このように、2種類の点灯制御パターンを用いてLED61を点灯制御すると、より効率良く光触媒膜13による浄化対象物質の浄化を行うことができる。
【0095】
また、本実施形態では、光触媒反応を起こさせる光源としてLED61が用いられたが、LED61の替わりに半導体レーザが用いられても良い。この場合も、上記のように半導体レーザが制御される。さらに、この場合、“ONモード”におけるレーザ光の出射パワーが適宜切り替えられるようにしても良い。
【0096】
図7(d)は、半導体レーザを用いるときの“ONモード”における点灯制御の変更例である。なお、図7(c)は、半導体レーザを用いる場合の図6(c)に対応する図である。
【0097】
図7(d)の点灯制御パターンでは、図示の如く、同図(c)に示すONの時のパワーよりもさらに大きいパワー(Pa)で半導体レーザが点灯される。このように半導体レーザが点灯されると、同図(c)よりも発光エネルギーが大きいため、同図(c)に比べて光触媒膜13における光触媒反応が促進される。
【0098】
よって、半導体レーザが用いられて、図6(a)において点灯制御パターンが“ONモード”に設定されるとき、臭気センサ51の検出信号に基づいて、さらに図7(c)、(d)の2種類の点灯制御パターンの何れかに切り替えられれば、より効率良く光触媒膜13における浄化が行われ得る。
【0099】
<浄化板の配置の変更例>
上記浄化板10は、図4に示したような配置に限られず、以下のように、浄化板10と同様の別の浄化板が配置されても良い。なお、図8では、便宜上、浄化領域20cの近傍のみ図示されている。
【0100】
図8(a)に示す脱臭装置1には、浄化領域20cに対して、図4に示した浄化板10と対称となるように、浄化板110が設置されている。
【0101】
この場合、LED61から出射される光は、浄化板10によって吸収される。さらに浄化板10を透過した光は、浄化板110の吸着膜14と、浄化板110の吸着膜14上に付着している物質により吸収される。しかしながら、LED61から出射される光の一部は、浄化板110の光触媒膜13に到達し、浄化板110の光触媒膜13において光触媒反応を生じさせる。これにより、上記図4に示した脱臭装置1に比べて、浄化領域20c内の空気がより浄化され得る。なお、図8(a)において、浄化板10と浄化板110との間に、さらに別の浄化板110が浄化領域20cの内壁面に設置されても良い。
【0102】
図8(b)に示す脱臭装置1には、図4に示した浄化板10のZ軸正方向にさらに別の浄化板120が配置されている。浄化板120は、Z軸正方向と負方向の両方の面に光触媒作用を有するよう、透過膜12と、光触媒膜13と、吸着膜14が配されている。また、浄化板120は、図示の如く、浄化領域20cの内壁面に固定されている。
【0103】
この場合、LED61から出射される光は、浄化板10を透過して、浄化板120のZ軸正方向と負方向の両方の光触媒膜13に到達し、それぞれの光触媒膜13において光触媒反応を生じさせる。これにより、上記脱臭装置の実施形態に比べて、1つの光源で反応面積を大幅に増加させることで、浄化領域20c内の空気がより浄化され得る。なお、図8(b)において、浄化領域20c内に、浄化板120と同様の構成を有するさらに別の浄化板が、浄化板120のZ軸正方向に設置されても良い。
【0104】
図8(c)に示す脱臭装置1には、浄化領域20cに対して、図4に示した浄化板10および発光ユニット60と対称となるように、浄化板110および発光ユニット130が設置されている。発光ユニット130は、発光ユニット60と同様の構成であり、発光ユニット130に配された複数のLED61から出射された光は、浄化板110の光触媒膜13に照射される。発光ユニット60からの光は、浄化板10を通って浄化板110に至る。また、発光ユニット130からの光は浄化板110を通って、浄化板10に至る。これにより、浄化板10、110の光触媒膜13の反応面に照射される光量が大幅に増え、より光触媒反応が活発となる。
【0105】
この場合も、浄化板110において、浄化板10と同様に光触媒反応が生じるため、上記脱臭装置の実施形態に比べて、浄化領域20c内の空気がより浄化され得る。なお、図8(c)では、Z軸方向に浄化板および発光ユニットが対向するよう配置されたが、さらにY軸方向に浄化板と発光ユニットが対向するように配置されても良い。こうすると、さらに浄化領域20c内の空気が浄化され得る。また、図8(c)の構成において、図8(b)における浄化板120が、浄化板10と浄化板110の間に配されても良い。こうすると、浄化板10、110を透過した光が上下から浄化板120に照射されるため、浄化板120の上面および下面における光触媒反応が効率よく行われ得る。
【0106】
このように、発光ユニットから光出射方向に浄化板を多段に構成すると、発光ユニットの数をできるかぎり少なくでき、コスト的に安くできる。また、浄化板を透過する光を再利用できるため効率が良くなる。さらに、限られたスペースで大面積に光触媒反応を起こすことが可能となる。
【0107】
なお、浄化板を多段に構成する場合は、浄化板の透過率が低くなると、光が対面する浄化板まで届かず、効果が得られ難くなる。本実施の形態において、上記浄化板10は、基板11と、透過膜12、光触媒膜13、吸着膜14とを含めて70%以上の透過率で形成されるようにした。これにより、4層構造でも25%以上の透過光が得られ、光の損失があっても十分機能するものであった。多段構成においては、透過率が少なくとも浄化板単体で50%以上あることが望ましい。このとき、浄化板を構成する基板11は薄い方が、浄化板による光の吸収が少なくなる。ただし、基板11の上面への膜形成や、上面に形成される膜の保持のために、基板11には一定の厚さが必要である。また、基板11は自重により湾曲しない構成とする必要がある。具体的には0.1mm以上であれば湾曲による膜の損傷はない。
【0108】
<実施形態2>
上記実施形態1では、“ON/OFFモード”のとき、所定時間ごとにLED61の点灯制御パターンが切り替えられることにより、光触媒膜13の温度上昇が抑制された。本実施形態では、光が照射される浄化板上の領域を変化させることにより、光触媒膜13の温度上昇を抑制する。
【0109】
図9(a)は、本実施形態における脱臭装置1の構成を示す図である。なお、同図(a)には、浄化領域20cの近傍のみが示されている。
【0110】
140は、本実施形態の浄化板である。浄化板140の中心には、図示の如く、浄化板140の中心を貫通するようにして、軸141が通されている。軸141は浄化板140に固定されている。浄化板駆動回路150は、制御回路100の指令に応じて、軸141をZ軸周りに回転させる。軸141がZ軸周りに回転すると、浄化板140は軸141を中心として回転することとなる。
【0111】
本実施形態の発光ユニット60は、発光ユニット60に配されたLED61から出射される光が、図示の如く、浄化板140の右側領域(排気口側の領域)のみに照射されるよう構成されている。
【0112】
同図(b)は、浄化板140をZ軸方向から見た図である。図示の如く、浄化板140は円形形状である。浄化板140の右側領域(排気口側の領域)は、LED61から光が照射される“照射領域”であり、浄化板140の左側領域(吸気口側の領域)は、LED61から光が照射されない“非照射領域”である。また、浄化板140は、上記の如く、軸141を中心としてX−Y平面上を回転する。
【0113】
図10は、制御回路100による制御を示すフローチャートである。
【0114】
同図(a)は、脱臭装置1の電源スイッチ90がOFFからONにされた時(起動時)のLED61と、浄化板140と、ファン31、32の制御を示すフローチャートである。
【0115】
脱臭装置1の電源がONされると、制御回路100は、LED61が点灯させる(S31)。続いて、制御回路100は、“浄化板の駆動”と“ファンの駆動”を実行する(S32、S33)。
【0116】
同図(b)は、“浄化板の駆動”の処理を示すフローチャートである。
【0117】
制御回路100は、まず、経過時間のカウントを開始する(S131)。続いて、制御回路100により、S131で経過時間のカウントを開始してから時間Tが経過したと判定されると(S132:YES)、制御回路100は、浄化板駆動回路150を介して、浄化板140を半回転(180度回転)させる(S133)。その後、制御回路100は、時間Tが経過する毎に浄化板140を半回転させる。なお、時間Tは、浄化板10の右側領域の浄化が完了し、且つ、浄化板10の左側領域の冷却が完了するのに要する時間に設定される。
【0118】
同図(c)は、“ファンの駆動”の処理を示すフローチャートである。
【0119】
制御回路100は、まず、経過時間のカウントを開始する(S141)。続いて、制御回路100により、S141で経過時間のカウントを開始してから時間2Tが経過したかが判定される(S142)。なお、ここで用いる時間Tは、同図(b)の時間Tと同じである。時間2Tが経過したと判定されると(S142:YES)、制御回路100は、ファン駆動回路81、82を介してファン31、32を停止状態から駆動させる(S143)。
【0120】
なお、S142において時間2Tが経過する間に、図10(b)の制御処理により浄化板140は1回転される。これにより、電源ON時に浄化板140の光触媒膜13に付着していた浄化対象物質は、光触媒膜13の全面に亘って浄化される。ファン31、32は、このように光触媒膜13全面の浄化が終わった後に、図10(c)のS143にて駆動開始される。
【0121】
同図(d)は、脱臭装置1の電源スイッチ90がONからOFFにされた時(停止時)のファン31、32とLED61の制御を示すフローチャートである。同図(d)のフローチャートでは、図5(b)のS23に替えてS25が追加され、さらにS26が追加されている。以下、S25とS26についてのみ説明する。
【0122】
S25では、制御回路100により、脱臭装置1の電源がOFFされてからの経過時間が2Tに達したかが判定される。なお、ここで用いる時間Tは、同図(b)の時間Tと同じである。経過時間が2Tに達したと判定されると(S25:YES)、LEDが消灯され(S24)、さらに、浄化板140の回転制御が終了されて(S26)、処理が終了する。なお、浄化板140は、同図(b)の“浄化板の駆動”に従って、時間2Tの間に1回転する。これにより、同図(d)のS25において、経過時間が2Tに達するまでの間に浄化板140は1回転するため、浄化板140の全面の浄化が終了する。
【0123】
ここで、上記実施形態2では、LED61からの光が浄化板140の右側領域(排気口側の領域)に照射されるようにしたが、このように構成した理由を以下に示す。
【0124】
浄化板140は、図10(b)に示すように、時間Tごとに半回転されるため、脱臭装置1の電源ON直後を除き、非照射領域に位置付けられる浄化板140には、未浄化物質の付着量は比較的少ない。すなわち、非照射領域に位置付けられる浄化板140の領域には、直前に照射領域において浄化が行われているため、未浄化物質の付着量は少なく、浄化対象物質が吸着し易い状態となっている。また、ファン31、32が駆動している場合に、吸気口20aから吸い込まれた浄化対象物質は、浄化領域20cに入ると、まず、浄化板140の左側領域を通る。よって、吸気口20aから吸い込まれて浄化領域20cに入った浄化対象物質は、吸着力の強い浄化板140の領域(左側領域)の吸着膜14上に留められ易くなる。これにより、吸着膜14に吸着されずに排気口20bから送出されてしまう未浄化物質が減少することとなる。このため、LED61からの光が浄化板140の右側領域(排気口側の領域)に照射されることが望ましい。
【0125】
以上、本実施形態によれば、浄化板140左側領域には、光が照射されないため、光触媒膜13の温度上昇が抑制される。これにより、浄化領域20c内の浄化対象物質が、浄化板140の左側領域に吸着し易くなる。また、時間Tごとに浄化板140が半回転させられるため、吸着膜14上の未浄化物質が少ない領域が、時間Tごとに非照射領域に位置付けられる。これにより、非照射領域に位置付けられた浄化板140に、さらに浄化対象物質が吸着し易くなる。よって、浄化領域20c内に浄化対象物質が少ない場合でも、効率的に浄化板10に吸着させることができ、浄化対象物質をより確実に浄化することができる。
【0126】
また、本実施形態によれば、脱臭装置1の電源がONされてから、時間2Tの経過後にファン31、32が駆動されるため、上記実施形態1と同様、脱臭装置1の電源がONされた後、電源OFFの間に吸着膜14に付着していた未浄化物質が、排気口20bから送出されることが抑制される。これにより、電源ONの直後に、脱臭装置1から外部に異臭が放たれるのが抑制され得る。
【0127】
なお、本実施形態では、脱臭装置1の電源がONされてから、時間2Tの経過後にファン31、32が駆動されるようにしたが、時間T+αの経過後にファン31、32が駆動されるようにしても良い。この場合の時間αは、0以上T以下の範囲において、ファン31、32の駆動後に排気口20bから多量の未浄化物質が送出されない程度に設定される。こうすると、より迅速に脱臭装置1の周辺の空気の取り込みを開始することができる。
【0128】
すなわち、脱臭装置1の電源がONされてから時間Tが経過すると、光が照射されて吸着膜14上の浄化対象物質が減少した右側領域(排気側)が、半回転されて左側領域(吸気側)に移動される。この状態から、さらに時間αが経過した後にファン31、32が駆動されると、浄化領域20cに入ってくる浄化対象物質は、吸着力の高い左側領域に付着し易いため、排気口20bから送出される未浄化物質の量が抑制される。また、このとき、右側領域の吸着膜14上に残っている浄化対象物質は、時間αの間にある程度浄化されているため、未浄化物質がファン31、32によって離脱して排気口20bから送出されることが抑制される。よって、浄化板140に付着している未浄化物質の浄化が全て完了する時間(2T)の前に、ファン31、32を駆動することができるため、迅速に脱臭装置1の周辺の空気の取り込みを開始することができる。
【0129】
また、本実施形態によれば、上記のように浄化板140が回転させられると、回転中にLED61から出射される光が浄化板140に対してむらなく照射されるため、浄化板140の全面で光触媒反応が生じ得る。
【0130】
すなわち、LEDから出射される光は、一般に所定の出射角度で広がっている。また、脱臭装置1内におけるLED61と浄化板140との設置スペースの関係から、LED61と浄化板140が近接して設置されることがある。このため、LED61から出射される光は、浄化板140上に偏って照射されることになる。しかしながら、上記のように浄化板140が一定時間ごとに回転させられると、回転中に、回転停止時に光の照射が弱かった領域に光が照射され、浄化板140に対してむらなく光が照射されるため、浄化板140の全面で光触媒反応が生じ得る。
【0131】
なお、本実施形態では、浄化領域20cに1つの浄化板140が設置されたが、複数の浄化板140が用いられても良い。
【0132】
図9(c)は、上記実施形態2において複数の浄化板140が用いられる場合の浄化板140の構成を示す図である。
【0133】
図示の如く、浄化板140はZ軸方向に間隔を開けて複数枚積層されており、これら浄化板140は、1本の軸141によって貫通されて固定されている。このような複数の浄化板140が浄化領域20c内に配されている。
【0134】
この場合、複数の浄化板140が積層されているため、下側から照射されるLED61の光は、各浄化板140を透過して1つ上(Z軸正方向)の浄化板140へと照射される。これにより、1つの浄化板140が用いられる場合に比べ、LED61からの光を効率良く利用することができる。
【0135】
なお、同図(c)において、上側からも複数の浄化板140の右側領域に光が照射されるよう、上側にも発光ユニットを配置しても良い。こうすると、複数の浄化板140の右側領域に対して、上側と下側の2方向から光が照射されるため、各浄化板140の右側領域において、より浄化が進み得る。
【0136】
<実施形態3>
上記実施形態2では、光触媒膜13の膜面に垂直な軸の回りに浄化板を回転させたが、本実施形態では、光触媒膜13の膜面に平行な軸の回りに浄化板を回転させることにより、光触媒膜13の温度上昇が抑制される。
【0137】
図11(a)は、4枚の浄化板10の構成を示す図である。4枚の浄化板10は、上記実施形態1で用いた浄化板10と同様の構成の浄化板を、図示の如くX軸方向に伸びた軸161の回りに固定して設置することにより構成されている。右側の2枚の浄化板10の吸着膜14は、上面側(Z軸正方向側)に向けられており、左側の2枚の浄化板10の吸着膜14は、下面側(Z軸負方向側)に向けられている。
【0138】
図11(b)は、本実施形態における脱臭装置1の構成を示す図である。なお、同図(b)には、浄化領域20cの近傍のみが示されている。
【0139】
図示の如く、軸161の伸びる方向がX軸方向となるよう、4枚の浄化板10が浄化領域20c内に配置されている。浄化板駆動回路150は、制御回路100の指令に応じて、軸161をX軸周りに回転させる。軸161がX軸周りに回転すると、4枚の浄化板10は軸161を中心としてX軸周りに回転することとなる。LED61から出射される光は、図示の如く、図中の右側の2枚の浄化板10(照射領域)のみに照射され、図中の左側の2枚の浄化板10には照射されない。
【0140】
また、4枚の浄化板10は、上記実施形態2と同様、時間T毎に軸161回りに半回転される。すなわち、時間T毎に、右側の2枚の浄化板10は左側に回転され、左側の2枚の浄化板10は右側に回転される。なお、LED61とファン31、32についても、上記実施形態2と同様に制御される。このように脱臭装置1が構成されて、LED61と、4枚の浄化板10と、ファン31、32が制御されると、上記実施形態2と同様の効果が奏され得る。
【0141】
なお、図11(a)において、4枚の浄化板10の吸着膜14は、上面側に向けられていても下面側に向けられていても良い。また、同図(b)において、上側からも右側の2枚の浄化板10の右側領域に光が照射されるよう、上側にも発光ユニットを配置しても良い。
【0142】
以上、本発明の実施形態および変更例について説明したが、本発明は上記実施形態および変更例に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0143】
たとえば、図12(a)に示すように、上記実施形態2の浄化板140の下側(光の入射側)に、軸141を通り浄化板140の右側領域と左側領域を2分割する境界に沿って、光を通さない壁142が設けられても良い。こうすると、浄化板140の右下から出射されるLED61の光は壁142によって遮断されることにより、浄化板140の左側領域に照射されないため、より確実に照射領域と非照射領域を分けることができる。
【0144】
また、図12(b)に示すように、上記実施形態3の浄化板160に、軸161を通りX−Z平面に平行となるような光を通さない壁162が設けられても良い。この場合も、右側の2枚の浄化板の下側から出射されるLED61の光は壁162によって遮断されることにより、左側の2枚の浄化板10に照射されないため、より確実に照射領域と非照射領域を分けることができる。
【0145】
また、上記実施形態1では、図5(a)に示すように、脱臭装置1の電源がONされてから所定時間が経過したときにファン31、32が駆動されるようにしたが、これに限らず、脱臭装置1の電源がONされてから所定時間が経過した後、臭気センサ51の検出信号をモニターして、臭気センサ51の検出信号が所定値以下となったときにファン31、32が駆動されるようにしても良い。
【0146】
また、上記実施形態1では、図6(a)において、“ON/OFFモード”と“ONモード”とに切り替えられるようにしたが、これに替えて、図6(b)の“ON/OFFモード”の処理のみが実行されるようにしても良い。こうすると、空気中に浄化対象物質が多く含まれる場合に、浄化の進行が遅くなるものの、図6(a)の“モード切り替え”の処理が行われないため、脱臭装置1の制御が簡素化され得る。
【0147】
また、上記実施形態1では、図5(a)のS12において、LED61を連続的に点灯させるようにしたが、S12において、LED61を図7(a)または(b)に示すようにON/OFFモードで点灯させるようにしても良い。こうすると、浄化板10や浄化領域20cにある未浄化物質が浄化されるまでに時間がかかるものの、光触媒膜13の温度上昇が抑制されるため、未浄化物質が空気中に放出されて排気口20bから送出されることをより確実に抑制することができる。
【0148】
また、上記実施形態2、3では、浄化板を軸回りに回転させることにより、浄化板上の照射領域を変更したが、浄化板を直線的に移動させて浄化板上の照射領域を変更しても良い。また、浄化板を停止させて発光ユニット60の位置を変更させることにより、浄化板上の照射領域を変更するようにしても良い。または、浄化板を移動させながら発光ユニット60の位置を変更させるようにしても良い。さらに、発光ユニット60に配されたLED61を、部分的に点灯または消灯させることにより、浄化板上の照射領域を変更するようにしても良い。
【0149】
また、上記実施形態2では、LED61を点灯と消灯とに切り替える際に、全てのLED61が一律に点灯と消灯とに切り替えられたが、各LED61に点灯順が設定されるようにしても良い。
【0150】
図13(a)は、この場合の発光ユニット60の構成例を示す図である。なお、ここでは、LED61は発光ユニット60上に、便宜上、X軸方向に4個、Y軸方向に8個配されているが、これに限らず、複数のLED61が発光ユニット60上に配されていれば良い。
【0151】
制御回路100によりLED61の点灯が指示されると、まず、グループL1が点灯される。次に、所定時間経過後、グループL1が消灯され、グループL2が点灯される(同図(a)の状態)。このようにして、グループL1からL4まで順次点灯グループが移動される。グループL4が点灯された後は、L3、L2、L1の順に点灯グループが移動され、以降、同様にしてグループL1〜L4が点灯される。なお、グループL4が点灯された後、L1、L2、L3の順に点灯されても良い。
【0152】
この場合、各グループが所定回数点灯されるまでの時間が、浄化板140が半回転される時間Tに等しく設定される。こうすると、浄化板140の右側領域の中で、光が照射される領域と照射されない領域が、時間Tの間にX軸方向に移動することとなる。これにより、光が照射される領域は浄化が進められ、光が照射されない領域は温度上昇が抑制される。
【0153】
図13(b)は、発光ユニット60の他の構成例を示す図である。
【0154】
制御回路100によりLED61の点灯が指示されると、まず、グループL1が点灯される。次に、所定時間経過後、グループL1が点灯されたまま、グループL2が点灯される(同図(b)の状態)。このようにして、グループL1からL8まで順次点灯範囲が広げられる。全てのグループが点灯されると、次に、所定時間経過後、グループL8が消灯される。さらに、所定時間経過後、グループL7が消灯される。このようにして、グループL8からL1まで順次点灯範囲が狭められ、最後に全てのグループが消灯される。
【0155】
この場合、LED61が全て消灯された状態から全て点灯され、再び消灯されるまでの時間が、浄化板140が半回転される時間Tに等しく設定される。こうすると、上記実施形態2に比べて、浄化板140の右側領域の温度上昇が抑制されると共に、左側領域の浄化も進められる。
【0156】
なお、上記実施形態1、3においても、図13(a)、(b)のようにLED61の点灯順が設定されるようにしても良い。
【0157】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【0158】
なお、本発明の脱臭装置に係る請求項は、特許請求の範囲に記載の請求項の他、以下のように特徴づけられ得る。
【0159】
光触媒反応により空気を浄化する脱臭装置において、光を出射する光源と、前記光が照射されることにより前記光触媒反応を起こす光触媒構造体と、前記光触媒構造体に空気を流すためのファンと、前記光源および前記ファンを制御するための制御部と、を備え、前記制御部は、前記脱臭装置の停止の際、前記ファンを停止した後、所定時間、前記光源を点灯させる、ことを特徴とする脱臭装置。
【符号の説明】
【0160】
1 … 脱臭装置
10、110、120、140 … 浄化板(光触媒構造体)
31、32 … ファン
51 … 臭気センサ
60、130 … 発光ユニット(光源)
61 … LED(光源)
100 … 制御回路(制御部)
141、161 … 軸
150 … 浄化板駆動回路(照射領域変更部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒反応により空気を浄化する脱臭装置において、
光を出射する光源と、
前記光が照射されることにより前記光触媒反応を起こす光触媒構造体と、
前記光触媒構造体に空気を流すためのファンと、
前記光源および前記ファンを制御するための制御部と、を備え、
前記制御部は、前記脱臭装置の起動の際、前記光源を点灯させてから所定時間後に前記ファンを駆動する、
ことを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱臭装置において、
前記光触媒構造体に前記空気を流すための送風経路内に配された臭気センサをさらに備え、
前記制御部は、前記臭気センサから出力される検出信号の値が所定値よりも小さいとき、前記光源を所定の時間間隔で点灯と消灯とに切り替え、前記臭気センサから出力される検出信号の値が所定値よりも大きいとき、前記光源を常時点灯させる、
ことを特徴とする脱臭装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の脱臭装置において、
前記制御部は、前記光源を前記ファンの駆動前に所定の時間間隔で点灯と消灯とに切り替える、
ことを特徴とする脱臭装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の脱臭装置において、
前記光触媒構造体に対する前記光の照射領域を変更するための照射領域変更部をさらに備える、
ことを特徴とする脱臭装置。
【請求項5】
請求項4に記載の脱臭装置において、
前記照射領域変更部は、前記光触媒構造体に設置された軸を回転することにより前記光触媒構造体を当該軸周りに回転させて、前記光触媒構造体に対する前記光の前記照射領域を変化させる、
ことを特徴とする脱臭装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の脱臭装置において、
前記制御部は、前記脱臭装置の停止の際、前記ファンを停止した後、所定時間、前記光源を点灯させる、
ことを特徴とする脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−110518(P2011−110518A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270808(P2009−270808)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】