説明

脳の原発性神経腫瘍および神経膠腫における脳腫瘍幹細胞マーカーならびに診断および治療標的としてのCD24

本発明は、対象における原発性脳腫瘍を治療する方法および原発性脳腫瘍の移動性の広がりを予防する方法に関する。これらの方法は、治療標的としての腫瘍前駆細胞上に選択的に発現されるCD24表面タンパク質、ならびに腫瘍部位へ腫瘍崩壊治療剤を直接向けるための手段を利用することを含む。本発明は、さらに、腫瘍前駆細胞におけるCD24発現に基づいて、対象における脳腫瘍の存在を診断する方法および脳腫瘍の状態をモニタリングする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年12月21日に出願された米国仮特許出願第61/016,381号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、原発性脳腫瘍を治療する方法、その移動性の広がりを予防する方法、および原発性脳腫瘍を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
さまざまな造血および固形組織腫瘍の両方において、癌は、それらの新生物性娘細胞とは異なったままでありかつこれらから分離可能なままであり得る新生物性組織特異的幹細胞から生じ得ることが示された。そのために、癌幹細胞仮説は、腫瘍拡大に必要とされる比較的少数の新生物性前駆細胞からの拡大によって、癌が維持されると主張する。これらの新生物性前駆細胞は、脳腫瘍を開始させる原因であり得るだけでなく、細胞傷害性治療後にそれらを再生させ、最終的に臨床的再発および治療失敗に至る原因でもあり得る。
【0004】
神経膠腫幹細胞とそれらが由来するネイティブな前駆細胞とを識別する遺伝子およびシグナル伝達経路を定義することは、従って、悪性神経膠腫に対して標的化される抗新生物薬の開発にとって非常に重要である。ヒト脳腫瘍の種々の表現型は、新生物性前駆細胞の階層を含み得、異なる腫瘍は、それらの系統発達における異なるポイントで形質転換された細胞の形質転換された誘導体に対応する。結果として、形質転換された前駆細胞の娘細胞は、それらの拡大および増殖制御の両方においてそれらの親とは十分に異なり得、それらの誘導された腫瘍に向けられる療法は、親の形質転換された前駆細胞クローンに対して適切でも有効でもない場合がある。注目すべきことに、これは、癌幹細胞仮説とはいくぶん異なり、癌幹細胞仮説は、親の前駆細胞、すなわち腫瘍幹細胞の消失が、その誘導された表現型が自己複製することができない所定の腫瘍を破壊するのに十分であると主張する。むしろ、本発明者らは、誘導された表現型は、いったん生成されると自律性自己複製をすることが十分にできる場合があるが、それらの基礎をなす親の形質転換体が消失しなければ、それらに対して向けられた細胞傷害性療法は、再発および最終的な治療失敗につながることを示唆する。治療的意味としては、腫瘍崩壊療法が、基本的に異なるメカニズム戦略によって、腫瘍幹細胞またはその誘導体のいずれかのみに対してではなく、むしろ両方に対して向けられる必要があり得るということである。
【0005】
本発明は、当技術分野におけるこれらおよび他の不足を克服することへ向けられる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1局面は、対象における原発性脳腫瘍を治療する方法に関する。この方法は、対象における原発性脳腫瘍を治療するのに有効な条件下でCD24特異的標的化成分を対象へ投与する工程を含む。
【0007】
本発明の別の局面は、対象における原発性脳腫瘍の移動性の広がりを予防する方法に関する。この方法は、対象内での原発性脳腫瘍の移動性の広がりを予防するのに有効な条件下でCD24特異的標的化成分を対象へ投与する工程を含む。
【0008】
本発明の第3局面は、対象における脳腫瘍の存在を診断する方法に関する。この方法は、患者サンプルを提供する工程、およびCD24抗原またはCD24をコードする核酸分子の存在について患者サンプルを分析し、それによって、対象における脳腫瘍の可能性のある存在が示される工程を含む。
【0009】
本発明の別の局面は、対象における脳腫瘍の存在を診断するかまたは状態をモニタリングする方法に関する。この方法は、対象を提供する工程、およびCD24抗原の存在に基づいて脳腫瘍の存在または解剖学的分布について対象を分析し、それによって、対象における脳腫瘍の存在を診断するかまたは状態をモニタリングする工程を含む。
【0010】
その顕著な発現が非腫瘍脳細胞によって共有されない、原発性神経膠腫および他の原発性脳腫瘍内の脳腫瘍開始細胞の選択マーカーとして、CD24は、選択的抗原を示し、これにより生検材料または他の患者サンプル中の腫瘍形成を診断し、かつ治療戦略としての破壊のために腫瘍開始細胞を選択的に標的化する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1A〜Bは、正常な神経膠前駆細胞と比べて、全ての4つの原発性脳腫瘍型におけるCD24の有意により高い発現を示すベン図である。選択的な腫瘍前駆細胞が発現する遺伝子を、ヒト成人脳由来のネイティブな正常のA2B5により単離した神経膠前駆細胞とA2B5により単離した神経膠腫腫瘍前駆細胞のプロフィールとを比較することによって同定した。神経膠腫は、4つのカテゴリー、乏突起神経膠腫(OLG)、乏突起星状細胞腫(OA)、星状細胞腫(A)、および多形神経膠芽腫(GBM)へ細分される。線形モデリングアプローチを使用して、標準化された神経膠腫前駆細胞プロフィールを、正常前駆細胞(A2B5norm)と直接比較した。ベン図は、各比較において有意に調節された転写産物(Affymetrixプローブセット)の数を示す(>3倍変化、t検定5%偽発見率)。乏突起神経膠腫、乏突起星状細胞腫、および星状細胞腫の腫瘍前駆細胞中の調節された転写産物の重複が図1Aに示され、乏突起星状細胞腫、星状細胞腫、および多形神経膠芽腫の腫瘍前駆細胞中の調節された転写産物の重複が図1Bに示される。CD24 mRNAは、その発現が、各神経膠腫型から単離された腫瘍前駆細胞に対して選択的であった転写産物の限定されたセットの中にあった。
【図2】図2は、分類されていない(uns)、成人のヒト白質(WM)または皮質(CTX)由来のA2B5選択細胞、およびCD11b小神経膠細胞と比較した、14個の神経膠腫から単離された一団のA2B5により選別した細胞におけるマイクロアレイ分析によるCD24 mRNA発現の遺伝子発現ヒートマップである。A=星状細胞腫、OLG=乏突起神経膠腫、OA=乏突起星状細胞腫、GBM=神経膠芽腫、CTX=皮質、WM=白質、uns=分類されていない。
【図3】図3A〜Oは、胎児(図3A〜I)および成人(図3J〜O)のヒト脳切片中のCD24発現の蛍光免疫組織学的検出を示す一団の写真である。ヒト胎児脳において、CD24は、皮質板(CP)(図3A〜C)から、中間帯(図3D〜F)、および脳室下帯(SVZ)(図3G〜I)へ、拡散して強く発現されている。より低い程度の免疫反応性が脳室帯において観察される(図3G〜I)。個々の細胞核を示すために、組織切片をDAPIで対比染色した。VZ=脳室帯;SVZ=脳室下帯;IZ=中間帯;CP=皮質板。成人脳において、CD24発現は、上衣層(EL)へ制限されているようであり、拡散パターンが上衣下層(SEL)中に観察された(図3J〜L)。図3M〜Nは、最小バックグラウンドコントロール(Ct)染色を示す(一次抗体の省略)。図3A、D、G、およびJは、CD24発現および細胞核染色(DAPI)のオーバーレイを示し;図3B、E、H、およびKは、CD24発現単独を示し;図3C、F、IおよびLは、DAPI標識化単独を示す。スケールバー、100μm。
【図4】図4A〜Hは、ヒト胎児脳の脳室帯(VZ)および脳室下帯(SVZ)における、CD24およびSox2発現(図4E〜H)ならびにCD24およびMusashi-1(Msi-1)発現(図4A〜D)の、蛍光免疫組織学的検出および共局在化を示す一団の写真である。DAPI染色は個々の細胞核を示す。スケールバー、100μm。
【図5】図5A〜Dは、神経膠芽腫(GBM)(図5A)、星状細胞腫(A)(図5B)、乏突起神経膠腫(O)(図5C)、および乏突起星状細胞腫(OA)(図5D)を含む、種々の神経膠腫サンプルにおけるCD24発現の蛍光免疫組織学的検出を示す。スケールバー、100μm。
【図6】図6A〜Fは、乏突起神経膠腫(図6A〜B)、星状細胞腫(図6C〜D)、および神経膠芽腫(図6E〜F)における、CD24発現と幹細胞/前駆細胞マーカーSOX2および乏突起神経膠細胞マーカーOLIG2の発現との間の強い関連を示す一団の蛍光免疫組織学写真である。スケールバー、100μm。
【図7】図7A〜Lは、乏突起星状細胞腫における、乏突起神経膠細胞前駆細胞マーカーPDGFRa(図7A〜C)、神経細胞マーカーTuj 1(図7D〜F)、星状細胞マーカーGFAP(図7G〜I)および幹細胞マーカーNestin(図7J〜L)と関連するCD24発現を示す蛍光免疫組織学写真である。スケールバー、100μm。
【図8】図8は、フローサイトメトリーによって検出された神経膠芽腫(U87、U373、U251、SID 227)および神経膠肉腫(SID 238)細胞株におけるCD24発現のレベルを示す棒グラフである。SF=無血清培地、FBS=ウシ胎仔血清が補われた培養培地。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明の第1局面は、対象における原発性脳腫瘍を治療する方法に関する。この方法は、対象における原発性脳腫瘍を治療するのに有効な条件下でCD24特異的標的化成分を対象へ投与する工程を含む。本発明のこの局面によれば、1つまたは複数の原発性脳腫瘍を有する対象が選択され、CD24特異的標的化成分が、選択された対象へ投与される。
【0013】
本発明は、さらに、対象における原発性脳腫瘍の移動性の広がりを予防する方法に関する。この方法は、対象内での原発性脳腫瘍の移動性の広がりを予防するのに有効な条件下でCD24特異的標的化成分を対象へ投与する工程を含む。本発明のこの局面によれば、1つまたは複数の原発性脳腫瘍の移動性の広がりの危険性がある対象が選択され、CD24特異的標的化成分が、選択された対象へ投与される。
【0014】
本発明の方法は、このような治療の必要がある任意の対象、好ましくは動物対象において、原発性脳腫瘍を治療するまたは脳腫瘍の移動性の広がりを予防するために、使用され得る。好ましい態様において、対象は哺乳類対象である。例示的な哺乳類対象としては、非限定的に、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、齧歯動物(例えば、マウス、ラット、モルモット)、ウマ、ウシ(cattle)およびウシ(cow)、ヒツジ、ならびにブタが挙げられる。
【0015】
本明細書において使用される場合、原発性脳腫瘍は、脳内で生じる任意の腫瘍である。原発性脳腫瘍は、一般的に、それらが生じる正常な脳細胞(例えば、星状細胞、乏突起神経膠細胞、神経細胞など)またはそれらが生じる脳内の場所(例えば、髄膜、大脳、脳幹など)に従って分類および命名される。本発明の方法に従う治療に好適な原発性脳腫瘍としては、神経膠腫、混合乏突起星状細胞腫、神経膠芽腫、未分化星状細胞腫、乏突起神経膠腫、神経細胞腫、未分化神経外胚葉性腫瘍、異形成性神経上皮腫瘍、および神経節膠腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
CD24は、p-セレクチンについてのリガンドとして役立つ35-45kDa GPI結合型膜シアロ糖タンパク質である。本明細書に記載の研究によって、神経膠芽腫、未分化星状細胞腫、乏突起神経膠腫、および神経細胞腫を含む種々の原発性脳腫瘍中の親の腫瘍細胞と比べて、腫瘍前駆細胞上のCD24の過剰発現が確認された。従って、CD24は、腫瘍増殖および移動を直接阻害する手段ならびに腫瘍部位へ腫瘍崩壊治療剤を標的化する手段の両方として、原発性脳腫瘍薬物療法についての好適な標的である。
【0017】
本発明のCD24特異的標的化成分は、任意のCD24結合分子を包含するように意味される。好ましい態様において、CD24特異的標的化成分はまた、CD24アンタゴニストである。CD24アンタゴニストとしては、CD24の生物学的活性を部分的にまたは完全に遮断する、阻害する、または無効にする任意の分子が挙げられる。本発明の方法を行うために有用である好適なCD24特異的標的化成分としては、核酸分子、タンパク質またはポリペプチド、および小分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
例示的な核酸CD24特異的標的化成分としては、アンチセンスRNAまたはRNAi、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、およびマイクロRNAが挙げられる。
【0019】
遺伝子のインビボ翻訳およびその後のタンパク質発現を阻害するアンチセンス方法の使用は、当技術分野において周知である(例えば、米国特許第7,425,544号,Dobieら;米国特許第7,307,069号,Karrasら;米国特許第7,288,530号,Bennettら;米国特許第7,1791796号,Cowsertら;これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。アンチセンス核酸は、mRNA分子など特定の核酸分子の少なくとも一部に相補的であるまたはこれへハイブリダイズする、核酸分子(例えば、DNAヌクレオチド、RNAヌクレオチド、またはそれらの修飾(例えば、分子の安定性を増加させる修飾、例えば、2'-O-アルキル(例えば、メチル)置換ヌクレオチド)もしくは組み合わせを含有する分子)である(例えば、Weintraub, H. M., 「Antisense DNA and RNA,」 Scientific Am. 262:40-46 (1990) を参照のこと;これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。アンチセンス核酸は、対応の核酸、例えば、mRNAへハイブリダイズし、二本鎖分子を形成し、これにより、細胞が二本鎖mRNAを翻訳しないためmRNAの翻訳を妨げられる。本発明の方法において使用されるアンチセンス核酸は、典型的に、長さが少なくとも10〜12ヌクレオチド、例えば、長さが少なくとも15、20、25、50、75、または100ヌクレオチドである。アンチセンス核酸はまた、それとともに阻害性二本鎖を形成するように意図される標的核酸と長さが同じぐらいであり得る。アンチセンス核酸は、例えば遺伝子治療法を使用して、アンチセンスオリゴヌクレオチドとして細胞中へ導入され得るか、またはアンチセンス核酸をコードする核酸が導入されている細胞中で産生され得る。
【0020】
siRNAは、両末端上に短い2〜3ヌクレオチド3'オーバーハングを有する、長さがおよそ20〜25ヌクレオチドの、二本鎖合成RNA分子である。二本鎖siRNA分子は、標的mRNA分子の一部、この場合はCD24 mRNA配列の一部の、センスおよびアンチセンス鎖を示す。siRNA分子は、典型的に、開始コドンからおよそ50〜100ヌクレオチド下流のmRNA標的の領域を標的化するように設計される。細胞中へ導入されると、siRNA複合体は、内因性RNA干渉(RNAi)経路を誘発し、標的mRNA分子の切断および分解が生じる。効果的にCD24発現に干渉するsiRNA分子が開発されており(例えば、Santa Cruz Biotechnology, Inc)、本発明における使用に好適である。さらに、siRNA組成物の種々の改善、例えば、安定性、特異性、および効果を高めるためのsiRNA分子の一方または両方の鎖中への修飾ヌクレオシドまたはモチーフの組み入れが、記載されており、本発明のこの局面に従う使用に好適である(例えば、WO 2004/015107,Gieseら;WO 2003/070918,McSwiggenら;WO 1998/39352,Imanishiら;米国特許出願公開第2002/0068708号,Jesperら;米国特許出願公開第2002/0147332号,Kanekoら;米国特許出願公開第2008/0119427号,Bhatらを参照のこと;これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。
【0021】
低分子(short)または低分子(small)ヘアピンRNA分子は、機能がsiRNA分子と類似しているが、急なヘアピンカーブを作るより長いRNA配列を含む。shRNAは、細胞機構によってsiRNAへ切断され、細胞RNA干渉経路によって遺伝子発現をサイレンスする。
【0022】
CD24へ特異的に結合する核酸アプタマーもまた、本発明の方法において有用である。核酸アプタマーは、Watson-Crick塩基対形成または三重鎖形成以外の機構によって、選択された非オリゴヌクレオチド分子または分子の群を特異的に認識することができる、一本鎖の、部分的に一本鎖の、部分的に二本鎖の、または二本鎖のヌクレオチド配列、有利には複製可能なヌクレオチド配列である。アプタマーとしては、非限定的に、ヌクレオチド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、修飾ヌクレオチド、ならびに骨格修飾、分岐点および非ヌクレオチド残基、基、または架橋を含むヌクレオチドを含む、規定の配列セグメントおよび配列が挙げられる。核酸アプタマーは、部分的および完全に一本鎖のおよび二本鎖のヌクレオチド分子および配列;合成RNA、DNA、およびキメラヌクレオチド;ハイブリッド;二本鎖;ヘテロ二本鎖;ならびに任意のリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはそのキメラ相当物および/または対応の相補配列、プロモーター、または、アプタマー分子もしくは配列の全部もしくは一部を増幅、転写、もしくは複製するために必要とされるプライマー−アニーリング配列を含む。
【0023】
上記に説明したように、CD24特異的標的化成分はまた、タンパク質またはポリペプチドCD24結合分子であり得る。例示的なタンパク質またはポリペプチドCD24結合分子は、好ましくは、非CD24タンパク質について結合親和性をほとんどまたは全く有さない。
【0024】
本発明のこの局面によれば、CD24特異的標的化成分は、免疫グロブリン分子の任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子の免疫グロブリン重鎖を含み得る。CD24結合分子は、重鎖および軽鎖の両方を有し得る。本発明の好ましいCD24特異的標的化成分としては、それらが所望の活性、例えば、CD24への結合を示す限り、抗体(全長抗体を含む)、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、および抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、Fab発現ライブラリーによって作製されるフラグメント、上記のもののいずれかのエピトープ結合フラグメント、および抗体の遺伝子操作形態、例えば、scFv分子が挙げられる。
【0025】
本発明の方法における使用に好適なCD24抗体は、当技術分野において公知である(例えば、Sagiv et al., 「Targeting CD24 for Treatment of Colorectal and Pancreatic Cancer by Monoclonal Antibodies or Interfering RNA,」 Cancer Research 68:2803-2812 (2008);Benkerrou et al., 「Anti-B-Cell Monoclonal Antibody Treatment of Severe Posttransplant B-Lymphorproliferative Disorder: Prognostic Factors and Long-Term Outcome,」 Blood 92(9):3137-47 (1998);Fischer et al., 「Anti-B-Cell Monoclonal Antibodies in the Treatment of Severe B-Cell Lymphoproliferative Syndrome Following Bone Marrow and Organ Transplantation,」 N Engl J Med 324(21): 1452-6 (1991) を参照のこと;これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。あるいは、抗CD24抗体は、当業者に公知の抗体を作製するために一般的に利用される方法のいずれを使用しても作製され得る。
【0026】
ポリクローナル抗体を惹起するための手順は、当技術分野において周知である。典型的に、このような抗体は、任意でキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、他の免疫原性担体へ結合され、無菌食塩水中に希釈され、アジュバント(例えば、フロイント完全または不完全アジュバント)と合わされて安定なエマルジョンを形成する、関連性のある抗原(精製CD24ペプチドフラグメント、全長組換えCD24タンパク質、融合タンパク質など)の複数回の皮下または腹腔内注射により動物(例えば、ウサギ、ラット、マウス、ロバなど)を免疫化することによって惹起される。次いで、ポリクローナル抗体が、免疫化されたものの血液または腹水から回収される。回収された血液を凝固させ、血清をデカンテーションし、遠心分離によって澄ませ、抗体力価についてアッセイした。ポリクローナル抗体は、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析などを含む当技術分野における標準方法に従って、血清または腹水から精製され得る。ポリクローナル抗血清はまた、標準手順を使用して単一特異性にされ得る(例えば、Agaton et al., 「Selective Enrichment of Monospecific Polyclonal Antibodies for Antibody-Based Proteomics Efforts,」 J Chromatography A 1043(l):33-40 (2004) を参照のこと;これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0027】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、例えば、Kohler and Milstein, 「Continuous Cultures of Fused Cells Secreting Antibody of Predefined Specificity,」 Nature 256:495-7 (1975) に記載されるものを使用して作製され得、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。ハイブリドーマ法を使用して、マウス、ハムスター、または他の好適な宿主動物が、免疫化され、免疫抗原へ特異的に結合する抗体のリンパ球による産生が誘発される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。免疫化に続いて、リンパ球を単離し、例えば、ポリエチレングリコールを使用して好適な骨髄腫細胞株と融合することで、ハイブリドーマ細胞が形成され、これは、未融合リンパ球および骨髄腫細胞とは分けて選択できる。免疫沈降、免疫ブロット法、またはインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって測定されるような、CD24に対して特異的に向けられたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、次いで、標準方法(James Goding, MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE (1986)、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)を使用してインビトロ培養で、または動物における腹水腫瘍としてインビボでのいずれかで増殖させることができる。次いで、モノクローナル抗体は、上記においてポリクローナル抗体について説明されたように、培養培地または腹水から精製され得る。
【0028】
あるいは、モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号,Cabillyらに記載されるような組換えDNA法を使用して作製され得、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドが、例えば、成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞から、例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増殖するオリゴヌクレオチドプライマーを使用するRT-PCRによって、単離され、従来の手順を使用して、それらの配列が決定される。重鎖および軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドは、次いで、好適な発現ベクター中へクローニングされ、これらが、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞中へトランスフェクトされると、モノクローナル抗体が宿主細胞によって作製される。所望の種の組換えモノクローナル抗体またはそのフラグメントはまた、記載されるようにファージディスプレイライブラリーから単離され得る(McCafferty et al., 「Phage Antibodies: Filamentous Phage Displaying Antibody Variable Domains,」 Nature 348:552-554 (1990);Clackson et al., 「Making Antibody Fragments using Phage Display Libraries,」 Nature 352:624-628 (1991);およびMarks et al., 「By-Passing Immunization. Human Antibodies from V-Gene Libraries Displayed on Phage,」 J MoI. Biol. 222:581-597 (1991);これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。
【0029】
モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、代替の抗体を作製するために、組換えDNA技術を使用して多数の異なる方法でさらに修飾され得る。一態様において、例えば、マウスモノクローナル抗体の、軽鎖および重鎖の定常ドメインは、キメラ抗体を作製するために、ヒト抗体のそれらの領域で置換され得る。あるいは、マウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常ドメインは、融合抗体を作製するために、非免疫グロブリンポリペプチドで置換され得る。他の態様において、定常領域は、モノクローナル抗体の所望の抗体フラグメントを作製するために、切断または除去される。さらに、可変領域の部位特異的または高密度突然変異誘発が、モノクローナル抗体の特異性および親和性を最適化するために、使用され得る。
【0030】
本発明のある態様において、CD24に対するモノクローナル抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、可変領域内に非ヒト(例えば、マウス)抗体由来の最小配列を含有する抗体である。このような抗体は、ヒト対象へ投与される場合、抗原性およびヒト抗マウス抗体応答を減らすために治療的に使用される。実際には、ヒト化抗体は、典型的に、非ヒト配列に対して最小限のものを有するヒト抗体である。ヒト抗体は、ヒトによって産生される抗体、またはヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。
【0031】
ヒト化抗体は、当技術分野において公知の種々の技術を使用して製造され得る。抗体は、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)を、所望の特異性、親和性、および能力を有する非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターなど)で置換することによって、ヒト化され得る(Jones et al., 「Replacing the Complementarity-Determining Regions in a Human Antibody With Those From a Mouse,」 Nature 321 :522-525 (1986);Riechmann et al., 「Reshaping Human Antibodies for Therapy,」 Nature 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., 「Reshaping Human Antibodies: Grafting an Antilysozyme Activity,」 Science 239:1534-1536 (1988);これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。ヒト化抗体は、抗体特異性、親和性、および/または能力を改良および最適化するために、Fvフレームワーク領域内および/または置き換えられた非ヒト残基内のいずれかでの追加の残基の置換によってさらに修飾され得る。
【0032】
ヒト抗体は、当技術分野において公知の種々の技術を使用して直接作製され得る。標的抗原に対して向けられた抗体を産生する、インビトロで免疫化されたまたは免疫化された個体から単離された不死化ヒトBリンパ球が、作製され得る(例えば、Reisfeld et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy 77 (Alan R. Liss 1985)および米国特許第5,750,373号,Garrardを参照のこと;これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。さらに、ヒト抗体は、ファージライブラリーから選択され得、ここで、そのファージライブラリーは、ヒト抗体を発現する(Vaughan et al., 「Human Antibodies with Sub-Nanomolar Affinities Isolated from a Large Non-immunized Phage Display Library,」 Nature Biotechnology, 14:309-314 (1996);Sheets et al., 「Efficient Construction of a Large Nonimmune Phage Antibody Library: The Production of High-Affinity Human Single-Chain Antibodies to Protein Antigens,」 Proc Nat'l Acad Sci USA 95:6157-6162 (1998);Hoogenboom et al., 「Bypassing Immunisation. Human Antibodies From Synthetic Repertoires of Germline VH Gene Segments Rearranged In Vitro,」 J. Mol. Biol, 227:381-8 (1992);Marks et al., 「By-passing Immunization. Human Antibodies from V-gene Libraries Displayed on Phage,」 J. Mol. Biol, 222:581-97 (1991);これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。ヒト化抗体はまた、内因性免疫グロブリン産生の非存在下で免疫化時にヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウス中で作製され得る。このアプローチは、米国特許第5,545,807号,Suraniら;第5,545,806号,Lonbergら;第5,569,825号,Lonbergら;第5,625,126号,Lonbergら;第5,633,425,Lonbergら;および第5,661,016号,Lonbergらに記載されており、これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0033】
CD24を特異的に認識する二重特異性抗体もまた、本発明の方法における使用に好適である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープを特異的に認識しこれらに結合することができる抗体である。二重特異性抗体は、インタクトな抗体または抗体フラグメントであり得る。二重特異性抗体を作製するための技術は、当技術分野において一般的である(Brennan et al., 「Preparation of Bispecific Antibodies by Chemical Recombination of Monoclonal Immunoglobulin G1 Fragments,」 Science 229:81-3 (1985);Suresh et al, 「Bispecific Monoclonal Antibodies From Hybrid Hybridomas,」 Methods in Enzymol. 121 :210-28 (1986);Traunecker et al., 「Bispecific Single Chain Molecules (Janusins) Target Cytotoxic Lymphocytes on HIV Infected Cells,」 EMBO J. 10:3655-3659 (1991);Shalaby et al., 「Development of Humanized Bispecific Antibodies Reactive with Cytotoxic Lymphocytes and Tumor Cells Overexpressing the HER2 Protooncogene,」 J. Exp. Med. 175:217-225 (1992);Kostelny et al, 「Formation of a Bispecific Antibody by the Use of Leucine Zippers,」 J. Immunol. 148: 1547-1553 (1992);Gruber et al., 「Efficient Tumor Cell Lysis Mediated by a Bispecific Single Chain Antibody Expressed in Escherichia coli,」 J. Immunol. 152:5368-74 (1994);および米国特許第5,731,168号,Carterら;これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。
【0034】
本発明のある態様において、腫瘍への透過を増加させるために、インタクトな抗体よりはむしろ、抗体フラグメントを使用することが望ましい場合がある。種々の技術が、抗体フラグメントの製造について公知である。伝統的には、これらのフラグメントは、インタクトな抗体のタンパク質分解消化によって誘導される(例えば、Morimoto et al., 「Single-step Purification of F(ab')2 Fragments of Mouse Monoclonal Antibodies (immunoglobulins G1) by Hydrophobic Interaction High Performance Liquid Chromatography Using TSKgel Phenyl-5PW,」 Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992)およびBrennan et al., 「Preparation of Bispecific Antibodies by Chemical Recombination of Monoclonal Immunoglobulin G1 Fragments,」 Science 229:81-3 (1985);これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。しかし、これらのフラグメントは、現在、典型的に、上述のような組換え宿主細胞によって直接産生されている。従って、Fab、Fv、およびscFv抗体フラグメントは全て、大腸菌または他の宿主細胞中で発現されそこから分泌され得、これにより大量のこれらのフラグメントの生成が可能となる。あるいは、このような抗体フラグメントは、上述の抗体ファージライブラリーから単離され得る。抗体フラグメントはまた、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,641,870号,Rinderknechtらに記載されるような線状抗体であり得、かつ単一特異性または二重特異性であり得る。抗体フラグメントの製造のための他の技術は、当業者に明らかである。
【0035】
さらに、その血中半減期を増加させるために抗体を修飾することが、特に抗体フラグメントの場合に望ましい場合がある。これは、例えば、抗体フラグメント中の好適な領域の突然変異による抗体フラグメント中へのサルベージ受容体結合エピトープの組み入れによって、または、該エピトープをペプチドタグ中へ組み入れ、次いでこれを抗体フラグメントの末端または中央のいずれかに融合させる(例えば、DNAまたはペプチド合成による)ことによって、達成され得る。
【0036】
本発明は、さらに、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体、またはそれらの抗体フラグメントに実質的に相同である変異体および均等物を包含する。これらは、例えば、同類置換変異、即ち、抗体または抗体フラグメントの結合活性を維持または改善する、類似のアミノ酸による1つまたは複数のアミノ酸の置換を含有し得る。
【0037】
抗体および抗体フラグメントに加えて、本発明の他の好適なCD24特異的標的化成分としては、抗体模倣物およびCD24結合オリゴペプチドが挙げられる。
【0038】
多数の抗体模倣物が、当技術分野において公知であり、非限定的に、以下が挙げられる:第10ヒトフィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)に由来するモノボディーとして公知の抗体模倣物(Koide et al., 「The Fibronectin Type III Domain as a Scaffold for Novel Binding Proteins,」 J. Mol. Biol. 284:1141-1151 (1998);Koide et al., 「Probing Protein Conformational Changes in Living Cells by Using Designer Binding Proteins: Application to the Estrogen Receptor,」 Proc. Nat 'l Acad. Sci. USA 99: 1253-1258 (2002);これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる);および、ブドウ球菌プロテインAの安定αヘリックス細菌受容体ドメインZに由来するアフィボディーとして公知の抗体模倣物(Nord et al., 「Binding Proteins Selected from Combinatorial Libraries of an α-Helical Bacterial Receptor Domain,」 Nat. Biotechnol. 15(8):772-777 (1997);これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。これらの抗体模倣物のバリエーションは、これらのポリペプチドの1つまたは複数のドメインをCD24特異的ドメインで置換し、次いで、修飾されたモノボディーまたはアフィボディーをCD24への結合に対する特異性に関してスクリーニングすることによって、作製され得る。
【0039】
CD24結合オリゴペプチドは、CD24タンパク質へ、好ましくは特異的に結合するオリゴペプチドである。このようなオリゴペプチドは、公知のオリゴペプチド合成法を使用して化学合成され得、または組換え技術を使用して作製および精製され得る。このようなオリゴペプチドは、通常、長さが少なくとも約5アミノ酸であるが、長さが5〜100アミノ酸のいずれであってもよい。このようなオリゴペプチドは、周知の技術を使用して過度の実験なしに同定することができる。ポリペプチド標的、この場合はCD24へ特異的に結合することができるオリゴペプチドについてオリゴペプチドライブラリーをスクリーニングするための技術は、当技術分野において周知である(例えば、米国特許第5,556,762号,Pinillaら;第5,750,373号,Garrardら;第4,708,871号,Geysen;第4,833,092号,Geysen;第5,223,409号,Ladnerら;第5,403,484号,Ladnerら;第5,571,689号,Heuckerothら;第5,663,143号,Leyら;ならびにPCT公開番号WO84/03506,GeysenおよびWO84/03564 Geysenを参照のこと;これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。
【0040】
本発明の一態様において、CD24特異的標的化成分は、癌治療剤へ連結または結合されており、原発性脳腫瘍への治療剤の直接送達を容易にする。好ましい態様において、CD24特異的標的化成分は、癌治療剤へ連結または結合されている抗体である。このような結合体、特に、抗体−薬物結合体の作製方法は、当技術分野において公知であり、WO2005/077090,Duffyら、WO2005/082023,Feng、WO2005/084390,Alleyら、WO2006/065533,McDonaghら、WO2007/103288,McDonaghら、WO2007/011968,Jeffery、およびWO2008/070593,McDonaghらに記載されており、これらは全て、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。CD24特異的標的化成分へ連結され得る癌治療剤としては、化学療法剤、放射性同位体、または免疫療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明のこの局面によれば、例示的な化学療法剤としては、毒素、ジフテリア、リシン、およびコレラ毒素が挙げられる。本発明のCD24特異的標的化成分へ連結され得る他の化学療法剤としては、アルキル化薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ニトロソウレア類);代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、ペメトレキセド、6-メルカプトプリン、ダカルバジン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、アラビノシルシトシン、カペシタビン、ゲムシタビン、デシタビン);植物性アルカロイドおよびテルペノイド、例えば、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン)、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、タキサン類(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、リン酸エトポシド);抗腫瘍抗生物質(ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、およびブレオマイシン);リボヌクレオチド還元酵素阻害剤;抗微小管剤;ならびにレチノイドが挙げられる。
【0042】
本発明の代替の態様において、CD24特異的標的化成分は、放射性同位体へ連結されている。例示的な放射線療法剤としては、X線、ガンマ線、電子線、光子、アルファ粒子および中性子などを含む、癌治療に有用な任意の放射線放出核種が挙げられる。上記の核種は、131I、60Co、57Co、192Ir、166Ho、32P、48V、198Au、99mTc、125I、165Dy、188Re、169Er、153Sm、90Y、109Pd、および89Srによって例示される。このような放射線は、好ましくは、腫瘍病巣からの周囲組織への漏出を防ぐためにキトサンなどの担体と複合される。
【0043】
別の態様において、本発明のCD24特異的標的化成分は、免疫療法剤へ連結されている。免疫療法剤はサイトカインであり得る。サイトカインは、インターロイキン-1(IL-I)、IL-2、IL-4、IL-5、IL-β、IL-7、IL-10、IL-12、IL-I5、IL-18、CSF-GM、CSF-G、IFN-γ、IFN-α、TNF、TGF-β、FLT-3リガンドおよびCD40リガンドによって例示されるが、常にそれらに限定されるわけではない。
【0044】
本発明の別の態様において、CD24特異的標的化成分は、癌治療剤を含有する送達ビヒクルへ連結または結合され得る。好適な送達ビヒクルとしては、リポソーム(Hughes et al., 「Monoclonal Antibody Targeting of Liposomes to Mouse Lung In Vivo,」 Cancer Res 49(22):6214-20 (1989);これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、ナノ粒子(Farokhzad et al., 「Targeted Nanoparticle-Aptamer Bioconjugates for Cancer Chemotherapy In Vivo,」 Proc Nat'l Acad Sci USA 103(16):6315-20(2006);これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、生分解性マイクロスフェア、マイクロ粒子、およびコラーゲンミニペレットが挙げられる。送達ビヒクルは、上記に記載される化学療法剤、放射線療法剤、または免疫療法剤のいずれをも含有し得る。
【0045】
一態様において、CD24特異的標的化成分は、リポソーム送達ビヒクルへ結合されている(Sofou & Sgouros, 「Antibody-Targeted Liposomes in Cancer Therapy and Imaging,」 Exp Opin Drug Deliv 5(2):189-204(2008);これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。リポソームは、水相を封入する1つまたは複数の同心円状に並んだ脂質二重層から構成された小胞である。それらは、通常、漏出性ではないが、膜に穴または孔が生じる場合、膜が溶解されるかまたは分解する場合、または膜温度が相転移温度へ上昇する場合に、漏出性となり得る。リポソームを介する薬物送達の現在の方法は、リポソーム担体が、最終的に透過性となり、封入された薬物(癌治療剤)を原発性脳腫瘍部位で放出することを必要とする。これは、例えば、受動的様式で達成され得、ここで、リポソーム二重層は、体内における種々の因子の作用によって経時的に分解される。各リポソーム組成物は、循環中にまたは体内の他の部位で特徴的な半減期を有し、従って、リポソーム組成物の半減期を制御することによって、二重層が分解する速度は、多少調節され得る。
【0046】
受動的な薬物放出と対照的に、能動的な薬物放出は、リポソーム小胞の透過性変化を誘発する薬剤を使用することを含む。リポソーム膜は、リポソーム膜に近接した環境が酸性となった場合に不安定となるように、構築され得る(例えば、Wang & Huang, 「pH-Sensitive Immunoliposomes Mediate Target-cell-specific Delivery and Controlled Expression of a Foreign Gene in Mouse,」 Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 84:7851-5(1987) を参照のこと;これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。例えば、リポソームが標的細胞によってエンドサイトーシスされると、それらは、酸性エンドソームへの経路が定められ得、これによってリポソームが不安定になり、薬物放出が生じる。
【0047】
あるいは、リポソーム膜は、酵素が膜上のコーティングとして配置されるように化学的に修飾することができ、この酵素は、リポソームを徐々に不安定にする。薬物放出の制御は、膜中に最初に配置された酵素の濃度に依存するので、薬物放出を調節しまたは変化させ「オンデマンドの」薬物送達を達成する実際の有効な方法は存在しない。リポソーム小胞が標的細胞と接触するとすぐに、それが取り込まれて、pHの低下が薬物放出をもたらすという点で、同一の問題が、pH感受性リポソームについても存在する。
【0048】
種々のタイプのリポソームが、Bangham et al., 「Diffusion of Univalent Ions Across the Lamellae of Swollen Phospholipids,」 J Mol. Biol. 13:238-52 (1965);米国特許第5,653,996号,Hsu;米国特許第5,643,599号,Leeら;米国特許第5,885,613号,Hollandら;米国特許第5,631,237号,DzauおよびKaneda;および米国特許第5,059,421号,Loughreyらに従って作製され得、これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる.
【0049】
これらのリポソームは、本発明の治療剤に加えて、その後標的部位で放出される免疫療法のサイトカインなどの他の治療剤を含有するように製造することができる(例えば、Wolff et al., 「The Use of Monoclonal Anti-Thyl IgG1 for the Targeting of Liposomes to AKR-A Cells in Vitro and in Vivo,」 Biochim. Biophys. Acta 802:259-73 (1984);これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0050】
本発明の方法によれば、原発性脳腫瘍を有する対象へ、CD24特異的標的化成分単独、癌治療剤へ連結されたもの、または癌治療剤を含有する送達ビヒクルへ結合されたものを投与することは、腫瘍細胞の数の減少、腫瘍増殖の減少、および腫瘍サイズまたは容積の減少を引き起こす。一態様において、CD24特異的標的化成分の投与は、腫瘍浸潤および移動(即ち、腫瘍転移)を減らし、それによって腫瘍進行を遅らせるかまたは阻害する。CD24特異的標的化成分単独または癌治療剤へ連結されたものの投与は、特定の原発性脳腫瘍に関連する1つまたは複数の症状を緩和し、原発性脳腫瘍を有する対象の病的状態および死亡を減らすかまたは妨げる。好ましい投与方法および様式は下記に説明される。
【0051】
本発明の別の局面は、原発性脳腫瘍の治療またはその移動性の広がりの予防に好適である、CD24特異的標的化成分単独、癌治療剤へ結合されたCD特異的標的化成分、および/または送達ビヒクルへ連結されたCD24特異的標的化成分を含む薬学的組成物に関する。CD24特異的標的化成分(例えば、CD24抗体または抗体フラグメント、結合オリゴペプチド、CD24 RNAiまたはアンチセンス分子、およびCD24結合小分子)の治療製剤は、所望の純度を有する抗体、オリゴペプチド、核酸または小分子を、任意の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で保存するために調製される(REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES (A. Osol ed. 1980);これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投薬量および濃度で受容者にとって非毒性であり、以下が含まれる:緩衝剤、例えば、酢酸塩、Trisリン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸およびメチオニン;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;単糖類、二糖類、および他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えば、EDTA;張性調節剤(tonicifier)、例えば、トレハロースおよび塩化ナトリウム;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;界面活性剤、例えば、ポリソルベート;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)。
【0052】
本明細書における製剤はまた、治療される特定の適応症について必要に応じて2つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を与えない補完的な活性を有するものを含有し得る。例えば、CD24結合オリゴペプチド、CD24 RNAi、またはCD24結合小分子に加えて、追加のRNAi、例えば、CD24核酸上の異なる領域に結合する第2のCD24 RNAi、または特定の脳腫瘍の増殖に影響を与える増殖因子などの何らかの他の標的に対するものを1つの製剤中に含めることが望ましい場合がある。代替としてまたは加えて、組成物は、化学療法剤、細胞傷害剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤、および/または心臓保護剤をさらに含み得る。このような分子は、意図される目的について有効である量で組み合わされて適切に存在する。
【0053】
薬学的組成物の治療有効成分(即ち、CD24特異的標的化成分単独または癌治療剤へ連結されたもの)は、コアセルベーション技術を使用してまたは界面重合によって作製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイダル薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に封入され得る。このような技術は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES (A. Osol ed. 1980) に開示されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。上記に記載されたように、CD24特異的標的化成分はまた、腫瘍の部位へ治療剤の送達を標的化するためにマイクロカプセル送達ビヒクルへ結合され得る。徐放性調製物が作製されてもよい。徐放性調製物の好適な例は、抗体またはポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、このマトリクスは、成形物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成された注射可能なマイクロスフェア)、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0054】
インビボ投与のために使用される製剤は、無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。
【0055】
本発明のCD24特異的標的化成分を含有する治療的に有効な組成物は、例えば、ボーラスとしてまたは一定時間にわたる持続注入による、静脈内投与、筋内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、髄腔内、経口、局所、または吸入経路によるなどの公知の方法に従って、対象へ投与される。脳、脳幹、または脊髄へのCD24特異的標的化成分の全身、血管内、脳室内、および実質内投与が好ましい。代替の態様において、CD24特異的標的化成分を含む組成物は、対流強化輸送法(convection enhanced delivery)(CED)を使用して投与される。CEDは、注射器ポンプによって発生される僅かな静水圧によって達成される対流力を使用した中枢神経系の間質腔の直接灌流を含む方法である。CEDは、血液脳関門からの干渉なしに小さなおよび大きな組織体積中への、リポソームまたは他の送達ビヒクル中に封入された治療剤を含む治療剤の安全で標的化された、均一な送達を可能にする。CED法は、当技術分野において周知である(例えば、Saito et al., 「Distribution of Liposomes into Brain and Rat Brain Tumor Models by Convection-Enhanced Delivery Monitored with magnetic Resonance Imaging,」 Cancer Research 64:2572-2579 (2004);Vogelbaum M., 「Convention Enhanced Delivery for the Treatment of Malignant Gliomas: Symposium Review,」 J Neuro-Oncology 73(1):57-69 (2005);Perlstein et al., 「Convection-Enhanced Delivery of Maghemite Nanoparticles: Increased Efficacy and MRI Monitoring,」 Neuro-Oncol 10(20):153-161 (2008);Krauze et al., 「Convection-Enhanced Delivery of Nanoliposomal CPT-11 (Irinotecan) and PEGylated Liposomal Doxorubicin (Doxil) in Rodent Intracranial Brain Tumor Xenografts,」 Neuro-Oncol 9(4):393-403 (2007)を参照のこと;これらは全て、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。
【0056】
他の治療レジメンが、CD24特異的標的化成分の投与と併用され得る。併用投与は、別個の製剤または単一の薬学的製剤を使用する同時投与、およびいずれかの順序での連続投与を含み、ここで、好ましくは、両方(または全ての)活性薬剤が、それらの生物学的活性を同時に与える期間が存在する。好ましくは、このような併用療法は、相乗的な治療効果を生じさせる。
【0057】
CD24標的化成分の投与と、原発性脳腫瘍に関連する別の腫瘍抗原に対して向けられた抗体の投与とを併用することも、望ましい場合がある。
【0058】
別の態様において、本発明の治療的処置法は、各成分が異なる化学療法剤、放射線療法剤、または免疫療法剤へ結合されている、1種または複数種のCD24特異的標的化成分の併用投与を含み、これは、化学療法剤、放射線療法剤、および/または免疫療法剤のカクテルの投与を生じさせる。別の態様において、CD24特異的標的化成分単独または癌治療剤へ結合されたものは、1つまたは複数の追加の化学療法剤と共に投与され得る。このような化学療法剤についての作製および投薬スケジュールは、製造業者の使用説明書に従って、または当業者によって経験的に決定されるように、使用され得る。このような化学療法についての作製および投薬スケジュールはまた、CHEMOTHERAPY SERVICE (M. C. Perry ed., 1992) において記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0059】
時には、患者へ心臓保護剤(療法に関連する心筋機能障害を予防するまたは減らすため)または1つまたは複数のサイトカインを同時投与することも、有利であり得る。上記の治療レジメンに加えて、患者は、CD24特異的標的化成分療法の前、これと同時、またはこれの後に、癌細胞の外科的除去および/または放射線療法へ供され得る。上記の同時投与される薬剤のいずれかについての好適な投薬量は、現在使用されているものであり、該薬剤およびCD24特異的標的化成分の併用作用(相乗効果)に起因して減らされ得る。
【0060】
原発性脳腫瘍の治療について、投与の様式および投薬量は、公知の基準に従って医師によって選択される。CD24特異的標的化成分単独または癌治療剤へ連結されたものの治療有効量は、腫瘍細胞の減少、腫瘍サイズの減少、腫瘍細胞移動および浸潤の減少、または腫瘍増殖の減少のために有効な量である。投薬量は、有害な副作用、例えば、望まれない交差反応、アナフィラキシー反応などを引き起こすべきではない。一般的に、投薬量は、年齢、病態、性別および投与経路、または他の薬物がレジメンに含められるかどうかで変化し、当業者によって決定され得る。CD24特異的標的化成分の好適な投薬量はまた、治療される原発性脳腫瘍のタイプ、ならびに該疾患の重篤度および経過に依存する。CD24特異的標的化成分は、一度にまたは一連の治療にわたって患者へ適切に投与される。好ましくは、CD24特異的標的化成分は、静脈内注入によってまたは皮下注射によって投与される。腫瘍のタイプおよび重篤度に依存して、約1μg/kg〜約50 mg/kg体重(例えば、約0.1〜15mg/kg/用量)のCD24抗体が、例えば、1つまたは複数の別個の投与によって、または持続注入によってにかかわらず、対象への投与についての初回候補投薬量であり得る。投薬レジメンは、約4 mg/kgの初回ローディング用量と、続く抗CD24抗体の約2 mg/kgの毎週の維持用量を投与すること含み得る。しかし、他の投薬レジメンが有用である場合もある。典型的な一日投薬量は、上述の因子に依存して、約1μg/kg〜100 mg/kgまたはそれ以上の範囲にわたり得る。抗体についての好適な用量を選択することにおけるさらなる手引きは、HANDBOOK OF MONOCLONAL ANTIBODIES 303-357 (Ferrone et al. eds., 1985) およびSmith et al., ANTIBODIES IN HUMAN DIAGNOSIS AND THERAPY 365-389 (Haber et al. eds., 1977) において見られ、これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0061】
病態に応じた数日またはそれ以上にわたる反復投与について、治療は、腫瘍増殖の所望の抑制が生じるまで、持続される。この療法の経過は、当技術分野において公知でありかつ下記に記載される従来の方法、アッセイ、および基準によって容易にモニタリングされ得る。
【0062】
本発明の核酸CD24特異的標的化成分(即ち、CD24 RNAi、アンチセンス分子、またはアプタマー)は、対象へ全身または局所投与され得る。阻害性RNAの送達は、好ましくは、単独でまたは本発明の組成物の成分として投与される。好適な組成物は、ポリエチレンイミン(例えば、直鎖または分岐鎖PEI)および/またはポリエチレンイミン誘導体、例えば、グラフト化PEI、例えば、ガラクトースPEI、コレステロールPEI、抗体誘導体化PEI、およびそれらのポリエチレングリコールPEI誘導体で製剤化または複合体化されたsiRNAを含む(例えば、Blazek-Welsh & Rhodes, 「Maltodextrin-based Proniosomes,」 AAPS Pharm. Sci. 3(1):1-11 (2001);Furgeson et al., 「Modified Linear Polyethylenimine-cholesterol Conjugates for DNA Complexation,」 Bioconjug. Chem. 14:840-7 (2003);Kunath et al., 「The Structure of PEG-modified Poly(Ethylene Imines) Influences Biodistribution and Pharmacokinetics of Their Complexes with NF-κB Decoy in Mice,」 Pharm. Res. 19:810-7 (2002);Choi et al., 「Effect of Poly(Ethylene Glycol) Grafting on Polyethylenimine as a Gene Transfer Vector in Vitro,」 Bull. Korean Chem. Soc. 22(l):46-52 (2001);Bettinger et al., 「Size Reduction of Galactosylated PEI/DNA Complexes Improves Lectin-mediated Gene Transfer into Hepatocytes,」 Bioconjug. Chem. 10:558-61 (1999);Petersen et al., 「Polyethylenimine-graft-poly(ethylene glycol) Copolymers: Influence of Copolymer Block Structure on DNA Complexation and Biological Activities as Gene Delivery System,」 Bioconjug. Chem. 13:845-54 (2002);Erbacher et al., 「Transfection and Physical Properties of Various Saccharide, Poly(Ethylene Glycol), and Antibody-derivatized Polyethylenimines (PEI),」 J. Gene Med 1(3):210-22 (1999);Godbey et al., 「Tracking the Intracellular Path of Poly(Ethylenimine)/DNA Complexes for Gene Delivery,」 Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 96:5177-81 (1999);Godbey et al., 「Poly(Ethylenimine) and Its Role in Gene Delivery,」 J. Control. Release 60: 149-60 (1999);Diebold et al., 「Mannose Polyethylenimine Conjugates for Targeted DNA Delivery into Dendritic Cells,」 J. Biol. Chem. 274:19087-94 (1999);Thomas & Klibanov, 「Enhancing Polyethylenimine's Delivery of Plasmid DNA into Mammalian Cells,」 Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 99:14640-5(2002);米国特許第6,586,524号,Sagaraを参照のこと;これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。
【0063】
CD24特異的標的化核酸分子はまた、バイオコンジュゲート、例えば、米国特許第6,528,631号,Cookら、米国特許第6,335,434号,Guzaevら、米国特許第6,235,886号,ManoharanおよびCook、米国特許第6,153,737号,Manoharanら、米国特許第5,214,136号,LinおよびMatteucci、ならびに米国特許第5,138,045号,CookおよびGuinossoに記載されるような核酸コンジュゲートの形態で存在し得、これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0064】
CD24特異的標的化核酸分子、またはそれを含有する任意の組成物もしくはバイオコンジュゲートは、上述のリポソーム送達機構によって投与され得る。
【0065】
本発明の第3局面は、対象における脳腫瘍の存在を診断する方法に関する。この方法は、患者サンプルを提供する工程、およびCD24抗原またはCD24をコードする核酸分子の存在について患者サンプルを分析し、それによって、脳腫瘍の可能性のある存在が示される工程を含む。
【0066】
CD24抗原またはCD24をコードする核酸分子の存在についての患者サンプルの分析は、CD24 RNA、cDNA、またはタンパク質へ結合またはハイブリダイズすることができる任意の分子プローブを使用して行い、それによって対象由来のサンプル中のその発現を検出およびモニタリングする。一態様において、患者サンプル中のCD24の存在は、ハイブリダイゼーション反応においてCD24 RNAまたはcDNAへ結合するCD24核酸プローブを使用して分析される。このような態様において、ハイブリダイゼーション反応(例えば、リアルタイムPCR反応)の前またはこれと同時に、増幅反応を含めることが望ましい場合がある。好ましい態様において、患者サンプル中のCD24抗原の存在は、免疫反応においてCD24へ結合する抗CD24特異的抗体を使用して分析される。
【0067】
当業者に公知の古典的な免疫組織学的方法が、CD24特異的標的化成分(例えば、CD24抗体)を使用して患者サンプル中のCD24の存在を分析するために使用され得る(例えば、Jalkanen et al., 「Heparan Sulfate Proteoglycans From Mouse Mammary Epithelial Cells: Localization on the Cell Surface With a Monoclonal Antibody,」 J Cell Biol 101:976-84 (1985);Jalkanen et al., 「Cell Surface Proteoglycan of Mouse Mammary Epithelial Cells is Shed by Cleavage of its Matrix-Binding Ectodomain from its Membrane-associated Domain,」 J Cell Biol 105:3087-96 (1987)を参照のこと;これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。典型的な免疫測定法としては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫細胞化学、免疫組織化学、およびウエスタンブロットが挙げられるが、これらに限定されない。CD24特異的標的化成分結合の検出は、標的化成分を検出可能な物質へカップリングすることによって容易にされる。検出可能な物質としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、種々の陽電子放出断層撮影を使用する陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能な物質は、当技術分野において公知の技術を使用して、CD24特異的標的化成分へ直接的にまたは中間物(例えば、当技術分野において公知のリンカー)を介して間接的にカップリングまたは結合され得る。
【0068】
例示的な放射性標識としては、125I、131I、111In、または99TCが挙げられる。標的化成分、例えば、抗体または抗体フラグメントを放射標識する方法は、当技術分野において公知であり、米国特許第5,514,363号,Shochatらに記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。放射能は、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーを使用して検出および定量される。
【0069】
CD24特異的標的化成分検出についての例示的な蛍光標識としては、キレート(ユーロピウムキレート)、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、Lissamine、フィコエリトリンおよびTexas Redが挙げられる。蛍光標識は、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY (Coligen et al. eds., 1991) に開示される技術を使用して、CD24特異的標的化成分へ結合され得、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。蛍光は、蛍光光度計を使用して、検出および定量され得る。
【0070】
好適な酵素標識は、一般的に、種々の技術を使用して測定され得る発色基質の化学的変化を触媒する。例えば、酵素は、基質の色変化を触媒し得、これは、分光測光法によって測定され得る。あるいは、酵素は、基質の蛍光または化学発光を変化させ得る。好適な酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号,Wengら、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、ヘテロサイクリックオキシダーゼ(例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。標的化成分、例えば、抗体へ酵素を結合するための技術は、METHODS IN ENZYMOLOGY 147-66 (Langone et al. eds., 1981) において、O'Sullivan et al., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassayに記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0071】
標識は、CD24特異的標的化成分と間接的に結合され得る。例えば、CD24特異的標的化成分はビオチンと結合され得、上述の検出可能な標識のいずれかが、アビジンと結合され得、または逆も同様である。ビオチンはアビジンへ選択的に結合し、従って、標識は、この間接的な様式でCD24特異的標的化成分と結合され得る。あるいは、標識とCD24特異的標的化成分との間接的な結合を達成するために、標的化成分は、小さなハプテン(例えば、ジゴキシン)と結合され、上述の種々のタイプの標識のうちの1つが、抗ハプテン抗体(例えば、抗ジグロキシン抗体)と結合される。従って、標識とCD24特異的標的化成分との間接的な結合が達成され得る。別の態様において、CD24特異的標的化成分は標識されず、その存在は、CD24特異的標的化成分へ結合する標識された抗体を使用して検出される。
【0072】
本発明の別の局面は、対象における脳腫瘍の存在を診断するかまたは状態をモニタリングする方法に関する。この方法は、対象を提供する工程、およびCD24抗原の存在に基づいて脳腫瘍の存在または解剖学的分布について対象を分析し、それによって、対象における脳腫瘍の存在を診断するかまたは状態をモニタリングする工程を含む。
【0073】
本発明のこの局面は、標識されたCD24特異的標的化成分(例えば、標識されたCD24抗体もしくは他の結合分子、または好適な標識を有するCD24抗体標的化リポソーム)を対象へ(例えば、非経口、皮下、または腹腔内)投与する工程、標識された分子が、CD24抗原が発現される対象中の部位に優先的に集まること(および結合していない標識された分子が、バックグラウンドレベルまで取り除かれること)を可能にする工程、ならびに、投与に続いての好適な時間間隔後に、対象中のCD24抗原へ結合している標識されたCD24特異的標的化成分の量またはレベルを検出する工程を含む。バックグラウンドレベルは、検出された標識された分子の量と特定のシステムについて予め測定された標準値とを比較することを含む、種々の方法によって測定され得る。使用されるイメージングシステムおよび対象のサイズは、診断画像を作製するために必要とされるイメージング部分の量を決定する。放射性同位体部分の場合、ヒト対象について、注射される放射能の量は、通常、99Tc約5〜20ミリキュリーの範囲にわたる。標識された抗体または抗体フラグメントは、次いで、CD24タンパク質を含有する細胞の位置に優先的に蓄積する。インビボイメージングは、TUMOR IMAGING: THE RADIOCHEMICAL DETECTION OF CANCER (Burchiel et al. eds., 1982) においてBurchiel et al., Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragmentsに記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0074】
使用される標識のタイプおよび投与様式を含む、いくつかの変数に依存して、標識された分子が対象中の部位に優先的に集まるのを可能にするためおよび結合されていない標識された分子がバックグラウンドレベルまで取り除かれるための投与後の時間間隔は、6〜48時間、6〜24時間、または6〜12時間である。別の態様において、投与後の時間間隔は、5〜20日または5〜10日である。
【0075】
一態様において、原発性脳腫瘍の状態のモニタリングは、例えば、最初の診断の1ヵ月後、最初の診断の6ヵ月後、最初の診断の1年後などに、脳腫瘍の存在を診断するための方法を繰り返すことによって行われる。原発性脳腫瘍の状態のモニタリングは、特定のコースの治療的処置に対する腫瘍の応答性を測定する場合に、特に好適である。
【0076】
標識された分子の存在は、脳のインビボスキャンニングおよびイメージングのための当技術分野において公知の方法を使用して、患者内で検出され得る。これらの方法は、使用される標識のタイプに依存する。当業者は、特定の標識を検出するための適切な方法を決定することができる。本発明の診断方法において使用され得る方法および装置としては、コンピュータ断層撮影法(CT)、全身スキャン、例えば、陽電子放出断層撮影(position emission tomography)(PET)、磁気共鳴画像法(MRI)、および超音波検査法が挙げられるが、これらに限定されない。一態様において、CD24特異的標的化成分は、放射性同位体で標識され、放射線応答性外科用器具(米国特許第5,441,050号,Thurstonら;これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)を使用して患者内で検出される。別の態様において、CD24特異的標的化成分は、蛍光化合物で標識され、蛍光応答性スキャンニング装置を使用して患者内で検出される。別の態様において、CD24特異的標的化成分は、陽電子放出金属で標識され、陽電子放出断層撮影を使用して患者内で検出される。なお別の態様において、CD24特異的標的化成分は、常磁性標識で標識され、磁気共鳴画像法(MRl)を使用して患者内で検出される。
【0077】
本発明を下記の実施例によって説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0078】
実施例1−CD24 RNA発現のための原発性神経膠腫の組織サンプルおよび細胞株の処理
University of Rochester-Strong Memorial Hospital Research Subjects Review Boardによって承認されたプロトコル下での組織使用に同意した患者から、成人および胎児ヒトサンプルを得た。
【0079】
難治性てんかん患者から切除した、成人の大脳皮質、皮質下白質、および海馬からの組織をコントロールとして使用した。世界保健機関(WHO)が確立したガイドラインに従って、担当医である神経病理学者が、腫瘍を等級付けした。
【0080】
腫瘍標本を3つの部分に分割し、第1部分を培養のために使用し、第2部分を分子分析のために液体窒素中で凍結し、第3部分を免疫組織化学的および組織学的分析のために4% PFA中で固定して、組織の代表性を確実にした。
【0081】
組織処理およびA2B5細胞の磁気単離を、以前に記載されたのと同様に行った(Nunes et al., 「Identification and Isolation of Multipotential Neural Progenitor Cells from the Subcortical White Matter of the Adult Human Brain,」 Nat Med 9(4):439-447 (2003);これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。解離後、細胞を、bFGF(20 ng/ml;Sigma)、EGF(20 ng/ml)、PDGF-AA(20 ng/ml;Sigma)が補われたDMEM/F12/N1培地からなる無血清培地(SF)中に再懸濁し、一晩回復のために細胞懸濁液培養皿中で培養した。A2B5陽性細胞およびA2B5陰性細胞の磁気分離を、解離の24〜48時間後に行った。神経膠腫細胞を、SF培地中にまたは5%血小板由来ウシ胎仔血清(PD-FBS)が補われたDMEM/F12/N1中でさらに培養した。U87、U251、およびU373細胞株を、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から得た。細胞株を、10%ウシ胎仔血清(FBS)が補われたDMEMまたはEMEM培地中で、5%CO2、37℃で培養した。
【0082】
実施例2−マイクロアレイ分析によるCD24 RNA発現の分析
選別直後に、製造業者の仕様書に従ってRNeasy(Qiagen, Chatsworth, CA)を使用して、RNAを抽出および精製した。ゲノムDNA混入を、オンカラムDNA分解酵素消化ステップを使用して除去した。20ナノグラムのトータルRNAを、ribo-SPIAベースの増幅(Nugen, Inc)を使用して増幅し、標識し、断片化し、HG-U133 Plus 2.0 GeneChip(Affymetrix)へハイブリダイズさせた。
【0083】
マイクロアレイデータを、RMA法(Irizarry et al., 「Exploration, Normalization, and Summaries of High Density Oligonucleotide Array Probe Level Data,」 Biostatistics 4(2):249-64 (2003);これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)を使用して前処理し、下流分析(downstream analysis)を、Bioconductor and R(Gentleman et al. 「Bioconductor: Open Software Development for Computational Biology and Bioinformatics,」 Genome Biol 5(10):R80 (2004);これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)を使用して行った。乏突起神経膠腫(n=4)、乏突起星細胞腫(n=4)、星状細胞腫(n=2)、および多形神経膠芽腫(n=3)から単離した、A2B5により選別した神経膠腫前駆細胞の遺伝子発現プロフィールを分析した。神経膠腫前駆細胞の発現プロフィールを、成人の皮質下白質または皮質(各々、n=4)のいずれかから単離した正常な成人のヒト神経膠前駆細胞の発現プロフィールと直接比較した。これらのプロフィールをさらにフィルターにかけ、正常組織中で非特異的に発現される転写産物を除いた。選別されていない白質または皮質解離物(dissociates)中で発現が有意に増加した遺伝子、またはCD11b免疫反応性に基づいて白質から精製されたヒト小神経膠細胞からの遺伝子を、分析から除いた。発現のレベルが、正常な前駆細胞と比べて腫瘍前駆細胞中で3倍高い場合、遺伝子は、A2B5+腫瘍前駆細胞によって有意に過剰発現されていると定義した。有意性は、5%偽発見率(false discovery rate)カットオフで、緩和(moderate)t検定統計を使用して(q<0.05、線形モデリング経験的Bayes検定統計)、判定した。この方法を使用して、およそ800個の一義的に注釈を付けられた遺伝子が、腫瘍前駆細胞中で増加していると同定された。図1A〜Bは、乏突起神経膠腫、乏突起星細胞腫、星状細胞腫、および多形神経膠芽腫組織サンプル由来の、A2B5により単離した神経膠腫腫瘍前駆細胞中で調節されているmRNA転写産物における重複を示すベン図である。
【0084】
有意な転写産物の中でも、CD24に対するmRNAが、最も高度に発現される細胞表面タンパク質であった。CD24に対して注釈が付けられたいくつかのプローブセットによって、腫瘍前駆細胞における高レベルの発現が検出された(図2)。それらの中で最も有意なのは、A2B5+腫瘍前駆細胞における20.6倍高いレベルの発現であった(q=4.63 x 10-6)。CD24 mRNAは、個々の腫瘍サブタイプにおける正常な前駆細胞と比べて、腫瘍前駆細胞中で有意に過剰発現されていた。要約すると、アレイデータによって、CD24 mRNAを、神経膠腫表現型全体にわたってA2B5+腫瘍前駆細胞中で有意に過剰発現され、かつ正常なヒト脳実質中では高度には発現されない、腫瘍特異的転写産物として同定した。
【0085】
実施例3―リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応によるCD24 RNA過剰発現の確認
CD24 mRNA発現を、CD24に対する、TaqMan 遺伝子発現アッセイを用いた定量的PCR(qPCR)によってモニタリングした(Assays-on-Demand Hs00273561_s1*、Applied Biosystems, Foster City, CA)。NuGenホールトランスクリプトーム増幅キットを使用して、RNAを増幅した。増幅したcDNAを、Taqman低密度アレイ中へ二つ組でロードした。各転写産物の相対的発現を、製造業者(ABI, Foster City, CA)によって記載されるように、ΔΔCt分析、および標準化コントロールとしてヒトGAPDHを使用して定量した。個々のサンプルの平均値、標準誤差、および有意性検定を、データ表示のための逆対数変換の前にΔΔCt値について計算した。t検定(p<0.005)を使用して、腫瘍のおよび正常な選別された前駆細胞中における発現を比較することによって、有意性を判定した。
【0086】
CD24 qPCRによって、A2B5により選別した腫瘍細胞における、それらの正常なA2B5により選別した神経膠前駆細胞対応物と比較したCD24 mRNA発現が、18.76倍増加していることが明らかとなった(5.39〜65.29倍高い、95%信頼限界)。腫瘍表現型ごとの変化倍率は、以下のようであった:乏突起星細胞腫において40.5倍(p=0.002)、星状細胞腫において34.8倍(p=0.042)、乏突起神経膠腫において19.1倍(p=0.025)、および神経膠芽腫において14.1倍(p=0.022)。CD24 mRNA発現は、A2B5陰性腫瘍細胞と比較してA2B5陽性の選別済み腫瘍細胞においては有意に制御されていなかった。
【0087】
実施例4−免疫組織化学による組織切片中のCD24発現の確認
胎児/成人脳および神経膠腫から切除したヒトサンプルを、サンプルのサイズに応じて4℃で1〜2時間、リン酸緩衝液(PB)に含まれるパラホルムアルデヒド(4%)中に浸漬し、次いで、4℃で24時間、PBに含まれるスクロース(6%および30%)中で徐々に凍結保護し、Tissue-Tek OCTで包埋し、凍結させた。14μm連続切片を、クリオスタットを用いて切り取り、室温で乾燥させ、免疫組織化学的および組織学的分析のために処理した。
【0088】
各ヒトサンプルについて、様々な層での切片を、組織学的パラメータの評価のためにヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。免疫組織化学的標識化のために、切片をPBS中で再水和させ、0.1%サポニンおよび1%正常ヤギ/ロバ血清(NGS/NDS)を含有するPBSで15分間透過処理した。切片をPBS中で3回洗浄し、次いで、0.05%サポニンおよび10%NGS/NDSを含有するPBSと共に1時間インキュベートした。一次抗体を、0.01%サポニンおよび5%NGS/NDSを含有するPBS中に希釈し、一晩インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、AlexaFluor488および594標識二次抗体(1/500 - 1/1000、Molecular Probes)を使用して、(0.01%サポニンおよび5%NGS/NDSを含有するPBSに含まれる)二次抗体の溶液と共に、切片をさらにインキュベートした。切片を、4'-6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI;Invitrogen)で対比染色した。以下の抗体を使用した:CD24(マウスIgG2a、クローンML5、BD Biosciences)(マウスIgG2a、Chemicon)、Olig2(ヤギIgG、R&D)、Sox2(ヤギIgG、R&D)、Nestin(ウサギIgG、Chemicon)、GFAP(ウサギIgG、Chemicon)、PDGFRa(ウサギIgG、Santa-Cruz Biotechnology)、クラスIII-β-チューブリン(ウサギIgG、R&D)。免疫蛍光測定を、x40およびx60対物レンズを使用する落射蛍光顕微鏡および共焦点顕微鏡(Olympus BX51)を使用して行った。
【0089】
異なる表現型の低グレードおよび高グレードの神経膠腫サンプル(n=21)、ヒト成人脳(n=6)およびヒト胎児脳(n=3)におけるCD24の発現を調べた。図3A〜Iに示されるように、散在した強い免疫反応のパターンが、皮質板(CP)(図3A〜C)から、中間帯(IZ)(図3D〜F)を通って、脳室下(SVZ)(図3G〜I)まで、ヒト胎児脳内で観察された。一方、図4Cおよび4Gにおいて示されるように、幹細胞/前駆細胞マーカーSox2およびMusashi-1に対して免疫反応性を強く示す領域である、脳室帯(VZ)において、低度の発現が観察された(図3G〜Hならびに4Bおよび4F)。図3J〜Lに示されるように、CD24免疫反応の膜状パターンは、薬物抵抗性てんかん患者から切除した正常な成人海馬中の上衣層に限定された。さらに、上衣下層(SEL)(図3J〜K)中への、ならびに歯状回の顆粒細胞下帯および顆粒細胞層中への、CD24の散在した発現が観察された。
【0090】
図5および6に示されるように、CD24発現が、神経膠腫サンプル中でさまざまな程度の強度および頻度で、調べた全ての腫瘍タイプおよびグレードにおいて観察された。2つのパターン、つまり、免疫反応を示した細胞の明確な形態学的同定を可能にする、細胞のサブセットにおける標識の表面膜および/または細胞質パターンと、数値定量化の余地を与えない、局所的に観察された散在パターンとが、観察された。明確な表面および/または細胞質パターンは、二重標識化が行われたサンプルのサブセットについてのみ観察された。二重標識化分析によって、CD24免疫反応性細胞の大部分が、調べた全ての腫瘍中で、前駆細胞マーカーであるOlig2(CD24+細胞の88.24±5.88%)(図6B、D、およびF)およびSox2(CD24+細胞の84.81±11.75%)(図6A、C、およびE)を共発現していることが明らかとなった。多数のCD24免疫反応性細胞が、神経細胞マーカーであるクラスIII-βチューブリン(Tuj 1)を共発現することがわかった(図7D〜F)。有意な程度の同時標識化が、乏突起神経膠腫中で乏突起神経膠細胞前駆細胞マーカーPDGFRαで示された(図7A〜C)。CD24と、星状細胞マーカーGFAP(図7G〜I)または幹細胞マーカーNestin(図7J〜L)とを共発現する細胞は、全くまたはほとんどなかった。
【0091】
実施例5−ヒト神経膠腫由来細胞株のCD24発現の定量的フローサイトメトリー分析
U87、U373、U251、SID-227神経膠芽腫(gliomablastoma)細胞株およびSID 238神経膠肉腫細胞株の細胞(50000〜100000細胞)を、50μlのフローサイトメトリー(FC)緩衝液(2mM EDTAおよび0.5%BSAを含むPBS)中に再懸濁し、96ウエルプレート中で培養し、以下の抗体と共に氷上で20分間インキュベートした:CD133(マウスIgG1;クローンAC141-PE;Myltenyi Biotech)、CD24(クローンML5、マウスIgG2a;FITC結合または非結合;BD Biosciences)、およびA2B5(マウスIgM;Chemicon)。細胞をFC緩衝液中で洗浄し、蛍光結合二次抗体(ヤギ抗マウスIgM-APC結合抗体、またはヤギ抗マウスIgG-A488結合抗体)と共に室温で20分間インキュベートした。細胞を1回洗浄し、分析前に、80ng/mlの最終濃度まで、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、Invitrogen)が補われたFC緩衝液中に再懸濁した。コントロール条件は、標識化されていない細胞、および適切なアイソタイプコントロールまたは二次抗体単独で標識された細胞を含んだ。FACS DIVAソフトウエアおよび/またはFlowJoを使用して、FACS ARIAフローサイトメーター(BD Biosciences)において、細胞を分析した。
【0092】
いくつかの神経膠腫細胞株は、U87細胞株を除いて、有意な程度のCD24免疫反応性を示した(図8を参照のこと)。より高度の発現が、増殖因子が補われた無血清(SF)培地中に維持された細胞と比較して、5%FBSが補われた培養培地中に維持された神経膠芽腫/神経膠肉腫細胞株SID238について観察された。
【0093】
好ましい態様を本明細書において詳細に記載し説明してきたが、種々の修飾、追加、置換などを本発明の精神を逸脱することなく行うことができ、従ってこれらも、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内にあると考えられることが、当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における原発性脳腫瘍を治療する方法であって、
対象における原発性脳腫瘍を治療するのに有効な条件下で、CD24特異的標的化成分を対象へ投与する工程
を含む、方法。
【請求項2】
原発性脳腫瘍を有する危険性がある対象を選択する工程をさらに含む方法であって、CD24特異的標的化成分が選択された対象へ投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
CD24特異的標的化成分が、化学療法剤または放射性同位体へ連結されている、請求項1記載の方法。
【請求項4】
CD24特異的標的化成分が化学療法剤へ連結されている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
化学療法剤が、ジフテリア、リシン、またはコレラ毒素である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
CD24特異的標的化物質が放射性同位体へ連結されている、請求項3記載の方法。
【請求項7】
原発性脳腫瘍が、神経膠腫、混合乏突起星細胞腫(mixed oligo-astrocytoma)、神経膠芽腫、未分化星状細胞腫、乏突起神経膠腫、神経細胞腫、未分化神経外胚葉性腫瘍、異形成性神経上皮腫瘍、および神経節膠腫からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記投与が、全身投与と、血管内投与と、脳室内投与と、脳、脳幹、または脊髄への実質内投与とからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
CD24特異的標的化成分が抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記投与により、腫瘍の容積が減少または消失する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記投与により、腫瘍浸潤が減りかつ疾患進行が遅れる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
対象における原発性脳腫瘍の移動性の広がりを予防する方法であって、
対象内での原発性脳腫瘍の移動性の広がりを予防するのに有効な条件下で、CD24特異的標的化成分を対象へ投与する工程
を含む、方法。
【請求項13】
脳内での腫瘍の移動性の広がりの危険性がある対象を選択する工程をさらに含む方法であって、CD24特異的標的化成分が選択された対象へ投与される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
CD24特異的標的化成分が、化学療法剤または放射性同位体へ連結されている、請求項12記載の方法。
【請求項15】
化学療法剤がCD24特異的標的化成分へ連結されている、請求項14記載の方法。
【請求項16】
化学療法剤が、ジフテリア、リシン、またはコレラ毒素である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
放射性同位体がCD24特異的標的化成分へ連結されている、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記投与が、全身投与と、血管内投与と、脳室内投与と、脳、脳幹、または脊髄への実質内投与とからなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項19】
CD24特異的標的化成分が抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項20】
対象における脳腫瘍の存在を診断する方法であって、
患者サンプルを提供する工程、および
CD24抗原の存在またはCD24をコードする核酸分子の存在について患者サンプルを分析し、それによって、対象における脳腫瘍の存在が示される工程
を含む、方法。
【請求項21】
前記分析が、免疫反応においてCD24へ結合するCD24特異的抗体を用いて行われる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記分析が、ハイブリダイゼーション反応において自身の相補体へ結合する、CD24をコードする核酸またはその相補体を用いて行われる、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記分析が、増幅ハイブリダイゼーション反応において自身の相補体へ結合する、CD24をコードする核酸またはその相補体を用いて行われる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
サンプルが組織サンプルである、請求項22記載の方法。
【請求項25】
対象における脳腫瘍の存在を診断するかまたは脳腫瘍の状態をモニタリングする方法であって、
対象を提供する工程、および
CD24抗原の存在に基づいて脳腫瘍の存在または解剖学的分布について対象を分析し、それによって、対象における脳腫瘍の存在を診断するかまたは脳腫瘍の状態をモニタリングする工程
を含む、方法。
【請求項26】
前記分析が、対象の脳を画像化する工程を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記分析が、免疫反応においてCD24へ結合するCD24特異的抗体を用いて行われる、請求項25記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−509244(P2011−509244A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539934(P2010−539934)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/087977
【国際公開番号】WO2009/086284
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(507245021)ユニバーシティー オブ ロチェスター (9)
【Fターム(参考)】