脳の監視およびモジュレート用のリードおよび方法
組織をモジュレートおよびモニタする装置、システム、および方法が、近位端および遠位端を有する細長い部材と、その細長い部材に沿って軸方向に並べられた複数の環状の刺激電極とを有する。それらの刺激電極は、遠位端の付近に配置され、電流を組織内に流すようになされる。それらの環状の刺激電極の少なくとも1つが、その電極に少なくとも3つの独立の刺激点(刺激部位)を有する。この装置はまた、局所的な組織の電位を測定するようになされた複数の記録電極と、それらの記録電極と刺激電極とに接続された複数の導電体とを備える。オプションの多接点接続端子を導電体と接続することができ、その多接点接続端子は、細長い部材の近位端の付近に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には医療装置および方法に関し、より具体的には、脳の組織を電気的および/または化学的にモジュレート(調節)およびモニタ(監視)するために使用されるリードに関する。
【背景技術】
【0002】
プローブまたはリードなどの医療デバイスを頭蓋骨の中に埋め込むことは、パーキンソン病、本態性振顫、およびジストニアなどの病気の治療に関する手法として、ますます重要になっている。うつ病、癲癇、ジストニア、強迫神経症、肥満、および慢性的疼痛などの数多くの疾患を治療するために、インプラントが使用できる。これらのデバイスのほとんどは、電極によって電流を加えることによって脳と相互に連絡する。さらに、慢性的に埋め込まれたリードを通して薬物を注入することが、とりわけアルツハイマー病やパーキンソン病を患う患者で、主な治療または電気刺激への補助的な治療として医療文献で提案されてきた。
【0003】
現在の埋め込み可能なプローブは一般に、遠位先端付近の数個の周縁部の金属リングおよび電気的に受動的な中央の軸方向管腔を備える、小さな直径の円筒または管として構成される。金属リングは電気刺激を与えるために使用され、中央の軸方向の管腔は、埋込み処置の間にガイドワイヤまたはスタイレットの上にプローブを送るために使用できる。
【0004】
ほとんどの治療プロトコルでは、連続した電気パルスがプローブの1つまたは複数の電導リングに加えられる。一般に、電導リングの単極または双極の刺激が用いられる。単極の刺激では、電流用の戻り経路がバッテリーパックまたは制御モジュールなどの遠隔の部位にある、単一の円周状リングが、電荷平衡(charge balanced) したバイフェイズ電気パルスによって刺激される。双極の刺激では、反対の極性の、電荷平衡したバイフェイズ電気パルスを使用して、リングの組合せが刺激される。隣接する中性または脳の組織の電気的な特性での異方性のため、ある程度の非対称性が生じるが、電導リングの刺激により、プローブの周りにある程度対照的である、作用の場が生み出される。
【0005】
プローブ軸の周りの対称的な電場は、必ずしも望ましいものではない。例えば、それはプローブがモジュレートする標的の中心に埋め込まれていない、または脳の標的の形状が非対称または不規則である場合である。さらに、標的域の付近にはしばしば、モジュレートされるべきではない神経細胞領域がある。非標的域をモジュレートすると、とりわけ体性感覚、不随意運動、および視覚障害を含む望ましくない副作用を招くおそれがある。
【0006】
脳活動をモジュレートするだけでなく、それを生理学上および病態生理学上の状態と共にモニタすることも望ましい。モニタにより、電場電位および細胞外で記録された活動電位を含む、刺激部位の付近での神経細胞の活動に関する情報が得られる。そのような電位は、治療用の電気刺激の過程中に、ならびに個人の脳および脳から電極インターフェースへアクセスするように設計された特別な刺激および応答経験の過程中に、進行中ベースで観測できる。間隔を置いたモニタから得られる情報は、進行中の日単位ベースで患者によって、または医療従事者への継続調査訪問で、治療を制御および調整するために使用できる。モニタから得られた情報は、自動化された制御システムまたは制御アルゴリズムによる、および制御器のパラメータを更新することによって、治療を動的に調整するためにも使用できる。
【0007】
間隔を置いてモニタすることは、刺激の大きさの関数として刺激に対する脳の応答での変化を追うために使用できる。臨床意思決定は、応答をかろうじて生成する閾値刺激レベル、および観測された応答をちょうど飽和する刺激レベルなどの推定パラメータに基づくことができる。刺激応答関数の形状は、例えば、下に凸、上に凸、または直線であり、治療に対する調整を知らせることもできる。刺激部位の付近で測定された飽和に対する閾値からのダイナミックレンジは、臨床的な効果のダイナミックレンジに直接的に対応することができ、またはそれと関係付けることができる。いずれの場合にも、局所的に測定されたダイナミックレンジは、最初の取付けを促進し、治療プロトコルで進行中の調整を案内することができる情報を与えることができる。治療に応答した脳の可塑性は、ダイナミックレンジの変化によって追うことができる。
【0008】
パーキンソン病の治療に対して、間隔を置いてモニタする用途を考えてみよう。パーキンソン病患者に対する電気刺激の有益な効果は、刺激プロトコルが開始した後に数分または数時間の間現れないことがよく知られている。プロトコルが睡眠中に中断され、起床時に再開される場合、治療の有益な効果は何時間もの間、再び現れることができない。間隔を置いてモニタすることは、有益な効果をもたらすための1つのプロトコル中に、および有益な効果を単に維持するための別のより保守的なプロトコルの下で刺激を加えることができるように、刺激に応答した変化を追うための機会を提供する。そのような戦略は、バッテリーの電力を節約することになり、副作用を低減させることもできる。
【0009】
瞬間ごとに観測することによって、モジュレート性の治療を、観測された病理学上のまたは通常の生理学上の状態に基づいて自然の脳のリズムと動的に同期させることができ、あるいは自動化された制御システムまたは制御アルゴリズムによって制御することもできる。
【0010】
現在行われているほとんどの処置は、電気的に刺激するプローブの部位から離れた部位で患者の動き、挙動、または脳活動をモニタし、この情報が脳刺激パラメータをモジュレートするために使用される。パラメータは、望ましい効果を生み出し、副作用を最小限に抑えるために短時間のスケールで調整され、脳の可塑性に配慮するためにより長時間のスケールで調整される。脳の可塑性は、脳によって介入に対して適応応答することによるものであり、モジュレート治療などの介入に対する脳による進行中の応答はしばしば最初の応答とは異なることがよく知られている。有用な情報は、電気刺激の部位の付近の電位をモニタすることにより得ることもでき、したがって電気刺激の部位で脳活動をモニタすることが望ましい。モニタは、病気の経過および治療過程を様々な治療のオプションに関する予測に沿って測定できるようにする。
【0011】
こうした理由ならびにその他の理由で、脳などの組織をモジュレートおよびモニタする改善されたプローブを提供することが望ましい。意図される標的に向かって、および/またはその他の脳の領域から離れる方向に導くことができる向きのある電場を生成する効率的な設計を提供することが特に望ましい。電気的な記録と、刺激またはモジュレートの可能性の両方を統合する、効率的な数および寸法の電極、ならびにコネクタ・リードを有するプローブを提供することも望ましく、その場合に記録からの情報が、治療部位に近接して得られ、刺激プロトコルを定義するために使用できる。次いでプロトコルを静的または動的に適合することができ、病気の状態が変化すると、治療も調整できる。脳の電気的な活動を記録およびモニタすることが、いつ刺激プロトコルが適用され、またはより効果的な時のために保留されるべきかどうか決定するためにも使用され、それによって電力を節約するのを補助する。
【0012】
従来技術の説明
脳モジュレート・プローブおよび方法を説明する従来の特許および公報には、次の特許文献が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許公報第2006/0047325号
【特許文献2】米国特許公報第2006/0004422号
【特許文献3】米国特許公報第2005/0015130号
【特許文献4】米国特許公報第2004/0039434号
【特許文献5】米国特許第7,051,419号
【特許文献6】米国特許第7,047,082号
【特許文献7】米国特許第7,006,872号
【特許文献8】米国特許第6,094,598号
【特許文献9】米国特許第6,038,480号
【特許文献10】米国特許第6,011,996号
【特許文献11】米国特許第5,843,148号
【特許文献12】米国特許第5,716,377号
【発明の概要】
【0014】
本発明は一般に、組織をモジュレートまたは刺激し、モジュレートの結果として局所的な組織応答を測定および記録することが可能な埋込み可能なプローブまたはリードを提供する。
用語「モジュレートする(modulating)」および「刺激する(stimulating)」 は、入れ替え可能に使用され、組織内の活動を鼓舞(incite)または抑制(suppress)する刺激を提供することを指称するために使用される。用語「プローブ」および「リード」は、同じく入れ替え可能に使用され、組織をモジュレートし、および/または局所的な組織応答を測定および記録するための任意のデバイスを指すために使用される。組織のモジュレートは、組織の電気的および/または化学的な刺激、ならびに組織の活動の抑制を含むことができる。組織応答を測定および記録することは、刺激に応答した局所的な組織の電位を測定することをしばしば必要とするが、内生的な組織の電位ならびに組織内の化学的な活動を測定および記録することも含むことができる。しばしば、プローブは一般には深い脳の構造、または大脳もしくは小脳に埋め込まれて、脳の組織に使用される。
【0015】
本発明は、効率が改善され、望ましくない副作用が最小限に抑えられた神経構造などの組織内に治療的なモジュレートを送ることができる方法も提供する。本発明は、治療的な介入が、その効果を改善し、試薬または電荷などの限られた資源を節約するためにモジュレートできるように、組織の活動を電気的および/または化学的に組織の活動をモニタする方法も含む。
【0016】
プローブは、脳などの組織を刺激し、および/または局所的な組織の電位を測定することによって組織の活動を記録するための電極を有する。刺激電極は、個々に、または組み合わせて作動できるように配置される。それらは、あるいは刺激された脳の組織を形作り、刺激された脳での活動の大きさおよびタイミングをモジュレートするために、同時または順次の連係で作動できる。プローブはしばしば、プローブに沿って軸方向に並べられた、複数の環状の刺激電極を有する。効果的なプローブの1例では、環状の各電極は、その位置に配置された独立の3つの刺激部位を有するものであるが、環状の領域ごとにより多くの数の刺激部位を使用することもできる。「独立の刺激部位」によって、一般には120°円弧の環状の電極に配置された3つの別個の領域に電極を分離可能であり、外部またはその他のエネルギー源から独立に各領域にエネルギー供給できることを意味する。
【0017】
本発明の第1の態様において、脳の組織を刺激およびモニタする装置は、近位端および遠位端を有する細長い部材と、その細長い部材に軸方向に沿って並べられ且つ遠位端付近に配置される(尚、他の軸方向の位置に配置することも可)複数の環状の刺激電極とを備える。その細長い部材の部分は、近位端の付近で可撓性であることが可能であるが、遠位端の付近では、しばしば剛性を有することもできる。環状の刺激電極は、電流を組織に流すようになされ、環状の刺激電極のうちの少なくとも1つは、少なくとも3つの独立の刺激領域または点を有する。この装置は通常、刺激電極に隣接して配置された複数の測定電極または記録電極をさらに備え(ただし、これは必須ではない)、記録電極のうちのいくつかは、環状の刺激電極の間に配置することができ、記録電極は、局所的な組織の電位を測定するようになされる。記録電極は、細長い部材の周囲の周縁上に配置することができ、円形の表面を有することもある。この装置の先端またはその付近に、記録および/または刺激用の表面があることも可能である。この装置は通常、環状の刺激電極および環状の記録電極のうちの少なくともいくつかと接続された複数の導電体を備え、オプションの多接点接続端子を細長い部材の近位端の付近に配置することができ、その端子は導電体と接続される。この装置は、刺激領域当たりに1つの導電体、および/または記録領域当たりに1つの導電体を有することができる。この装置はしばしば、近位端と遠位端の間に軸方向に配置された管腔も有し、管腔はガイドワイヤまたはスタイレットを受けるようになされることもある。
【0018】
しばしば、治療される組織は脳組織であるが、その他の組織も本発明の方法およびシステムによって治療できる。さらにこの装置は、しばしば細長い部材に沿って、またはその中に軸方向に配置された管腔も有する。いくつかの場合には、管腔はガイドワイヤまたはスタイレットを受けるようになされ、それは細長い部材の遠位端の付近のポートから管腔を通過するようになされる。その他の場合には、管腔と連通する1つまたは複数のポートが、細長い部材の遠位端の付近に配置され、治療薬剤またはその他の物質を組織へ送り、および/または組織から化学物質を受けるようになされる。いくつかの場合には、ポートは環状の刺激電極の間に配置され、別の場合にはポートのうちの少なくとも1つが、細長い部材の遠位端に配置される。いくつかの実施形態では、ポートは、その選択的な動作可能性を可能にするようになされたゲート部材を備えることができる。ゲート部材は、半透明の薄膜であることができ、ゲート部材が化学的に反応性のヒドロゲルである場合などに化学的に制御できる。
【0019】
いくつかの実施形態では、さらなる刺激電極を管腔に配置でき、しばしばこの追加の電極はワイヤである。治療薬剤は、管腔を通して送ることもできる。別の実施形態では、追加の刺激電極が細長い部材の遠位端に配置でき、この電極は電流を組織に送ることも可能である。治療薬剤も、この実施形態または本明細書に説明されたその他の実施形態の場合に使用できる。しばしば、導電体は細長い部材に沿って螺旋状に巻かれる。第1の組の導電体が刺激電極と接続でき、第2の組の導電体が記録電極と接続できる。第1の組の導電体は、第1のピッチを有する螺旋状に巻くことができ、第2の組の導電体は第2のピッチを有する螺旋状に巻くことができる。いくつかの場合には、第1のピッチは第2のピッチと異なる。導電体はしばしば、ステンレス鋼、MP35N、またはタングステンからなり、その理由は、それらが生体適合性を有し、MRI撮影システムと適合性を有するからであるが、白金イリジウム合金などの他の材料も使用可能である。一般に、複数の環状の刺激電極ならびに記録電極も、磁気共鳴映像(MRI)と適合性を有することができる。物体は、それが画質を大幅に歪ませ、加熱によって組織を損傷させ、磁界の存在の下で移動しない場合に、MRIと適合性を有する。
【0020】
本発明の第2の態様では、組織を治療する方法が組織にプローブを埋め込むステップを含む。プローブも、磁気共鳴映像と適合性を有することができ、通常複数の環状の刺激電極ならびに複数の記録電極を有する。少なくとも1つの環状の刺激電極が、その上に少なくとも3つの独立の刺激点または領域を有する。次いで、組織は環状の刺激電極から治療電流を使用して刺激することができ、局所的な組織の電位が、一般に記録電極を使用した刺激に応答して測定できる。刺激の効果に基づいてフィードバックを提供するために、組織からの化学物質も収集することができ、これはプローブに配置された1つまたは複数のポートを選択的に開閉するようにゲート部材を制御するステップを含むことができる。ポートは、組織への治療薬剤の配分、および/または組織から受け取った化学物質の送出を制御するようになされてもよい。測定された局所的な組織の電位は、刺激の効果に関するフィードバックを行うために分析でき、次いで、刺激はフィードバックに応答して調整できる。治療されている組織はしばしば脳組織であり、方法は、さらに治療薬剤によって組織を刺激するステップを含む。方法は、アンカーによって、組織にプローブを解放可能に連結するステップも含むことができる。
【0021】
本発明の第3の態様では、組織を治療するシステムは、磁気共鳴映像と適合性があり、通常、複数の環状の刺激電極ならびに局所的な組織の電位を測定するようになされた複数の記録電極を有する組織プローブを備える。環状の刺激電極のうちの少なくとも1つは、少なくとも3つの独立の刺激点または領域を有し、その領域は電流を組織に流すようになされる。システムは、記録電極および刺激電極と接続された多接点コネクタ、および多接点コネクタを介して組織プローブに電気的な刺激を与えるようになされた埋込み可能かつ制御可能なパルス発生器も備えることができる。一般に、治療されている組織は脳組織であり、システムはしばしば、定着デバイス(anchoring device)を備えることができる。定着デバイスは、患者の頭に組織プローブを取外し可能に固定するようになされる。システムは一般に、パルス発生器を制御するようになされた患者プログラマ(patient programmer)も備える。
【0022】
これらの、およびその他の実施形態が、添付の図面に関連付けられた以下の説明にさらに詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】組織のモニタおよびモジュレート用リードの1つの実施形態を示す。
【図2】組織のモニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態を示す。
【図3】組織のモニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態を示す。
【図4】組織のモニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態を示す。
【図5】組織のモニタおよびモジュレート用リードの断面図を示す。
【図6】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の断面図を示す。
【図7】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の断面図を示す。
【図8】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の断面図を示す。
【図9】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の別の断面図を示す。
【図10】モニタおよびモジュレート用リードの実施形態の別の断面図を示す。
【図11】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の別の断面図を示す。
【図12】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の別の断面図を示す。
【図13A】モニタおよびモジュレート用リードの例示の実施形態の記録および刺激領域を強調して示す。
【図13B】モニタおよびモジュレート用リードの例示の実施形態の記録および刺激領域を強調して示す。
【図13C】モニタおよびモジュレート用リードの例示の実施形態の記録および刺激領域を強調して示す。
【図14】90°で分けられた4つの刺激部位によって生成された双極子の大きさのモデルを示す。
【図15】図14のモデルと比較して120°で分けられた3つの刺激部位によって生成された双極子の大きさのモデルを示す。
【図16】脳のモニタおよびモジュレート用リードの実施形態の斜視図を示す。
【図17】患者の頭部に埋め込まれた脳のモニタおよびモジュレート・リードを示す。
【図18A】2つの記録電極からの脳電位のサンプル記録を示す。
【図18B】2つの記録電極からの脳電位のサンプル記録を示す。
【図18C】2つの記録電極からの脳電位のサンプル記録を示す。
【図19A】2つの記録電極からの脳電位の追加のサンプル記録を示す。
【図19B】2つの記録電極からの脳電位の追加のサンプル記録を示す。
【図19C】2つの記録電極からの脳電位の追加のサンプル記録を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面では、同様の番号が実質的に同様の構成要素を示す。プローブは、しばしば、その遠位端に環状の電極を有する。2つの刺激部位に分割された電極では、双極子(ダイポール)を単一軸に向けることのみが可能である。環状の電極が3つの刺激部位に分割されて構成される場合には、双極子を平面上で任意の方向に向けて生成できる。したがって、環状の電極当たりの3つの刺激部位は、双極子を平面上の任意の方向に沿って向けるために必要な電極当たりの最小限の数の刺激部位になっているものとして有利である。最小限の数の刺激部位を使用することは、プローブを通過しなければならない導電体の数を最小限に抑え、脳組織をモジュレートするための任意の記録部位を通る最大電流密度を可能にするので、同様に有利である。
【0025】
電流密度が脳組織の耐性によって制限される場合に、刺激部位の切断されたリングが、いくつかの方向に他よりも多くの刺激を送ることができる。例えば、4つの刺激部位であって、2つの部位が横軸(X)と整列し、他の2つの部位が垂直軸(Y)と整列した4つの刺激部位として、円筒形のプローブの周囲に切断されたリングとして配置されている4つの刺激部位を、ここで考察する。この構成は、対抗する対の刺激部位の間に電流を流すことから生じる2つの双極子の線形和によって、刺激部位の平面内で任意の方向の電気双極子を生成できる。軸(X)に対して向きθで大きさ(m)の双極子の生成のためには、大きさ(m/d)cosθの電流が、(X)に整列した刺激部位を通して流され、且つ、大きさ(m/d)sinθの電流が (Y)に整列した刺激部位を通って流される(ただしdは原点からの距離である)。θが変化すると、双極子の大きさが円を描く。何れの単一の電極での電流密度も、熱またはその他の望ましくない刺激の副作用を抑えることができるように、ある最大値未満に制限することが望ましい。そのような制約によって、角度θの関数として4つの刺激部位の切断されたリングによって生成できる最大の双極子が、図14で分かるように正方形243を描く。最大の双極子の大きさは、両方の対の刺激部位が最大の許容電流を伝えるので、正方形の角の、軸(X)と(Y)の間の中間の向きになる。最小の双極子の大きさは、1対の刺激部位のみが非0電流を伝えるので、軸(X)および(Y)に沿った向きになる。
【0026】
円筒形のプローブの周囲に切断されたリングまたは環になって配置された3つの刺激部位を備える実施形態と上記のシナリオを比較する。電極リングの軸方向の広がりおよび最大電流密度が上記の実施例と同じ場合、任意の電極を通る電流の最大の大きさは、1/3大きい。最大電流が1つの電極を通って流された場合、帰還電流がその他の2つの電極の間の様々な部分に分割される。θの関数として3つの電極のリングによって生成できる最大の双極子は、図15に示されるものと同様の六角形246を描く。刺激域のほとんどの向きに関して、3つの刺激部位の切断されたリングによって生成された最大の双極子の大きさは、図15に重ね合わされた図14からの正方形243によって分かるように、4つの刺激部位の切断されたリングによって生成される双極子よりも大きい。
【0027】
図14および15は、3のような素数の刺激部位を使用する利点を明らかにする簡素化されたモデルを示す。図1の好ましい実施形態での切断されたリングに3つの刺激部位がある。図14は、円230の周囲の点に配置された4つの電気単極子(モノポール)234a、234b、234c、および234dの場合を示す。単極子234aおaよび234cは、等しくかつ反対に帯電され、単極子234bおよび234dを生成すると双極子を生成する。正方形234上の点の径方向部位は、単極子上の最大電荷が大きさ1である制約に従って、2つの双極子234a、234c、および234b、234dの合計によって形成できる最大の正味双極子を表す。4つの単極子の電荷の合計は0である。
【0028】
図15は、円230の周囲の点に配置された3つの電気単極子(モノポール)235a、235b、および235cの場合を示す。図15の最大の正味双極子の正方形243が、ここに参照のために重ね合わされる。3つの電気単極子は、最大の正味双極子の六角形によって図示されるように、より効果的に向きを付けられた双極子を生成する。2つの双極子は、1つの極性の1つの単極子および2つの反対または0電荷の単極子によって生成される。3つすべての単極子の電荷の合計は0である。六角形246の点の径方向部位は、2つの双極子の合計によって生成できる最大の正味双極子を表し、どの単極子の最大電荷が大きさ1.2を超えることができない制約に従う。各部分が円周の1/4を占める場合よりも各部分が円周の1/3を占める場合に固定された軸方向長さの各刺激部位の表面積がより大きくなるので、ここでより大きな最大電荷の制約が使用される。電極235a、235b、235cに最も近い六角形の辺は、制約する電極が正の極性を有し、これらと反対側にある六角形の辺は、制約する電極が負の極性を有する場合の状況で生成される。六角形246の径方向の部位が、原点からのほとんどの方向で、正方形243よりも原点から離れていることが理解できる。切断されたリングの固定された軸の範囲に関して、3つの刺激部位が、4つの刺激部位と比べてより大きな効果的な刺激を送ることができる。あるいは、固定された効果的な刺激に関して、3つの刺激部位の切断されたリングの軸方向の長さは、4つの刺激部位の切断されたリングに関するよりも短いものであることができる。本発明の好ましい実施形態は、最大の電流密度が制約される状態に関する電流のよりよい誘導可能性を補助する別のプローブに勝る利点を有する。本発明のこの説明は、異なる切断されたリングの刺激部位が同時または連携して刺激される刺激プロトコルを使用することを除外しない。
【0029】
6つ(または任意のその他の3の倍数)の刺激部位の切断されたリングを有する刺激プローブが、本発明の利点を得る様式で使用できることが当分野の技術者には明らかである。これは、それぞれが1対の隣接する刺激部位からなる3つの刺激部位として、6つの刺激部位のリングを制御することによって達成できる。
【0030】
したがって、任意の軸方向部位で、刺激部位の数は素数である。素数は、異なる刺激の向きを得るために、電極のすべての表面を同時に使用するためのより多くの組合せの可能性を生み出す。すべての電極表面を使用することにより、電流密度が可能な限り低く保たれる。好ましい実施形態では、刺激部位の数は3である。別の実施形態では、刺激部位の数は5である。2つ、5つ、または7つの刺激部位による構成も、本発明が達成しようとする電流密度の利点を得ることができるが、より少ない程度しか得られない。
【0031】
図1を参照すると、組織のモジュレートおよびモニタプローブが示されている。図1は、プローブの好ましい実施形態を示す。それは、可撓性プローブ本体10およびオプションの多接点接続端子20aを備える円筒形のプローブである。多接点接続端子のさらなる詳細は、米国仮特許出願第60/820,914号に記載され、その全体の内容が本明細書に参照によって組み込まれる。その他のコネクタが使用でき、当分野でよく知られている。プローブ30aの遠位端に、1つまたは複数の刺激部位の切断された環状のリングがある。刺激部位はすべてのリングの適合する角度部位と部位合わせすることができ、または異なるリングで異なる角度部位にずらすことができる。局所的な電場電位を記録するのに適した1つまたは複数の周縁の電極バンド(electrode bands )、および最遠位点またはその付近にある記録電極もある。この好ましい実施形態では、多接点端子20aの最大直径は可撓性のプローブ本体10の直径に等しい。
【0032】
この実施形態では、3つの刺激部位33a、33b、33c、34a、34b、34c、35a、35b、35c、36a、36b、36cが、4つの軸方向部位に、総計で12の刺激部位に関して切断されたリングとして配置される。これらは、図5〜12の断面図でよりよく理解できる。また、この実施形態には、切断されたリングの間の間隙に配置される3つの記録バンド37、38、39がある。記録部位の大きさは、局所的な電場電位を記録するのに適しており、露出した領域が約0.0005mm2から約0.5mm2の範囲にあるが、その領域は約0.8mm2までになることもできる。いくつかの実施形態は、活動電位の細胞外の記録を改善するより小さな記録部位を有する。露出された領域のそのような記録部位は、約1.9×10-5mm2から約0.002mm2の範囲にあることができるが、それらは約0.1mm2程度の大きさであることもできる。記録部位の型式は、絶縁されたワイヤのむき出しの端部、薄膜、金属パッド、またはデバイスの壁の中で導電体を露出するために除去される絶縁の部分を有する絶縁された領域であることができる。別の実施形態は、記録リングをまったく有することができず、またはより多くの記録リングを有することができる。さらなる記録リングまたは点電極がプローブ本体10に沿って、またはプローブ先端32に配置できる。本実施形態は、刺激部位に対する記録電極(バンドおよび/または点)の部位合わせを制限しない。
【0033】
短絡化を低減し、記録された信号の絶縁を向上させるために、刺激面と記録面の間および記録面の間に少なくとも100μmの非伝導性の隔たりがなければならない。プローブを通って移動する電気信号は、互いに干渉しないことが望ましい。高いレベルの電気刺激信号が低レベルの記録信号と干渉しないことが特に望ましい。したがって、記録信号を運ぶ導電体が内側の螺旋に配設されることが望ましく、刺激信号を運ぶ導電体が外側の螺旋に配設されることが好ましい。刺激導電体および記録導電体の対が、感知できる距離に対して、隣接する経路をまったく横切らないように、2つの螺旋のピッチは、同じまたは異なることができる。これは、刺激導電体と任意の記録導電体の間の容量性結合を最小限に抑える。その他の実施形態では、導電性の被覆を記録導電体の螺旋の外側に施すことができる。これは、2つのタイプの導電体の間の電磁干渉を低下させるために接地できる。別の実施形態では、接地できる金属箔が内側の螺旋と外側の螺旋の間に巻かれる。
【0034】
別の実施形態では、記録された信号を運ぶ導電体は、電気刺激信号を運ぶ導電体の間に配設される。この実施形態は、導電体が単一の薄層で配設されよりコンパクトかつより可撓性があることができる利点を有するが、場合によっては、この実施形態は刺激電流が刺激導電体をモジュレートする場合、刺激信号が隣接する記録導電体につながる可能性があるという欠点を有する可能性がある。必ずしもすべての刺激導電体が、任意の瞬間に電流を運ぶことを求められないことに留意されたい。したがって、プローブの多くの用途において、記録導電体のうちのいくつかは、任意の瞬間に作動状態の刺激導電体から十分に分離される。別の実施形態では、刺激ワイヤおよび記録ワイヤは、螺旋状に導電体の隣接する組として通る。
【0035】
ワイヤは機械的な強度を有し、導電性である必要がある。適切な材料には、合金MP35N(コバルト・クロム合金)、ステンレス鋼、およびタングステンまたは刺激部位との導通、および頭蓋外のコネクタへの導通を向上させるために金メッキされたタングステン合金ワイヤが含まれる。材料がMRI適合性を最大にするために磁性が最小限であることが重要である。
【0036】
刺激部位は、白金、イリジウム、または白金とイリジウムの合金などの安全な電荷移動を最大にする比較的不活性の材料から作製できる。プローブの本体は、プローブが頭蓋骨を出る短い曲率半径による曲げを補助する、シリコーンゴムまたはポリウレタンなどの生体適合性ポリマーによって被覆される。
【0037】
図2は、プローブ30bの別の実施形態を示す。プローブ30bは、化学物質がプローブ管腔に出入りできることを可能にするポート40を加える点を除いて、図1のプローブ30aと同様である。ポート40を半透明の薄膜によって覆うことができる。あるいは、化学的に反応性のあるヒドロゲルなどの化学的に制御されたゲーティング機構がポートの付近に配置できる。そのようなヒドロゲルは、隣接する媒体の化学組成に基づいて膨張または後退できる。ゲーティング機構は、ポートのかさの膨張および閉塞に基づいて動作することができ、またはヒドロゲルは機械的な付属構造によって形成できる。そのような構造の1つの例に、Applied Physics Letters、81(16):3091~3093、2002 に掲載された「Micromechanical Cantilever as an Ultrasensitve pH Microsensor 」にR.Bashir、J.Z.Hilt、O.Elibol、A.Gupta、およびN.A.Peppasによって述べられるようなバイモルフ・ビーム(bimorph beam)が含まれる。別の例には、Sensor and Actuators B、114(l):9~18、2006 に掲載された「A Microstructured Silicon Membrane with Entrapped Hydrogels for Environmentally Sensitive Fluid Gating 」という名称の1つの論文でA.Baldi、M.Lei、Y.Gu、R.A.Siegel、およびB.Ziaie によって開示された、微細ポートによって開口部を付けられた表面カバーが含まれ、別の例には、Journal of Microelectromechanical Systems、12(5):613~621;2003に掲載された「A Hydrogel-Actuated Environmentally Sensitive Microvalve for Active Flow Control」でA.Baldi、Y.Gu、P.E.Loftness、R.A.Siegel、およびB.Ziaie によって述べられるような閉塞性シールを形成するのに適した要素を移動するパッドが含まれる。これらの参考文献の内容全体が本明細書に参照によって組み込まれる。
【0038】
ヒドロゲルは、その体積が異なる化学的な依存性(chemical dependencies )を有するように配合できるので、薬物をプローブの所定の部位に選択的に送ることができるように、異なるヒドロゲルをリードの異なる所定の部位にあるポートと関連付けることができる。同様に、細胞外空間または脳脊髄液(CFS)のサンプルをプローブの所定の部位から得ることができる。pHによって直接的に制御される化学的なゲーティング機構の例には、上記に「Micromechanical Cantilever as an Ultrasensitve pH Microsensor 」で述べたものが含まれる。pHとの関係を介して二酸化炭素の存在によって制御されるゲーティング機構には、The Journal of Clinical Monitoring and Computing 21(2):83~90、2007 に掲載された「Assessment of a New Prototype Hydrogel CO2 Sensor;Comparison with Air Tonometry」にR.Steege、H.Sebastiaan、W.Olthuis、P.Bergveld、A.Berg、およびJ.Kolkman によって述べられたものが含まれる。グルコースの存在によって制御されるゲーティング機構のその他の例は、米国特許第6,997,922号にTheeuwes等によって開示されている。上記に挙げた参考文献の内容全体が本明細書に参照によって組み込まれる。
【0039】
図3は、ブローブ30cの別の実施形態を示し、プローブ先端32aが導電性であり、追加の刺激部位として機能する。これは、従来の刺激部位として機能することができ、単極および双極の刺激を補助する。刺激部位36a〜cの遠位リングと共に、それは3次元で先端の付近の電流の誘導を補助する四面体の頂点に中心を合わせられた刺激部位の組を形成する。図3の実施形態は、刺激電極36a〜36cと遠位の刺激電極32aとの間に追加の記録電極42も有する。また、多接点接続端子20cは、米国仮特許出願第60/820,914号にさらに詳しく開示されるような、2つの反円筒形またはD字形のコネクタに沿って軸方向に間隔を置いた複数の電気接点を有し、その内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0040】
図4は、プローブ30dの別の実施形態を示し、多接点端子20dがプローブ本体10と同じ直径を有する必要がないことを示す。ここで、接点端子20dは、プローブ30dをモニタおよびモジュレート・システムのその他の部分と接続するための差込み部を備えるより大きな直径の円筒形プラグである。この実施形態は、記録電極の表面が円形である必要がないが、記録点43として構成できることを示す。別の実施形態は、複数の記録部位を含むことができ、いくつかはリングとして構成され、その他は点として構成される。別の実施形態では、記録電極は、正方形、長方形、または変則的な形を含む、他の形を取ることができる。別の実施形態では、多接点端子によって、プローブ内の流体通路に管腔または導管を設けることが可能になる。流体は、1つまたは複数の管腔を通過でき、脳に流入または脳から流出でき、あるいはその両方が可能である。
【0041】
図5は、図1の断面線101での好ましい実施形態の軸方向断面図を示す。好ましい実施形態では、中央の管腔70が、ポリウレタン、シリコーンゴム、またはポリアミドなどの生体適合性ポリマーから作成される管72によって囲まれる。別の実施形態では、管腔はポリマー被覆であり、絶縁された記録導電体60は内部の管腔に配置できる。記録導電体60は、記録部位から多接点端子20のその終端まで螺旋状に巻かれる。同様に、刺激導電体50は、刺激部位から多接点端子20のその終端まで螺旋状に巻かれる。好ましい実施形態では、刺激導電体50は、刺激導電体50に関して抵抗による損失がより大きな問題であるので記録導電体60よりも大きな寸法を有するが、別の実施形態では、すべての導電体が同じまたは同様の寸法のものであることができる。好ましい実施形態では、ワイヤ間の平均の容量性結合を低下させるために、記録ワイヤの螺旋および刺激ワイヤの螺旋のピッチは異なる。別の実施形態では、螺旋は同じピッチを有することができる。2つの螺旋は、同じまたは反対の向き(一方が時計回り、もう一方が反時計回り)を有することができる。導電体50、60は、好ましい実施形態で可撓性のポリマーに埋め込まれ、絶縁されるが、別の実施形態では絶縁のために周囲のポリマーに依存でき、または依存できない。好ましい実施形態では、導電性材料74の層が記録導電体と刺激導電体の間に挿入され、それを低インピーダンスの電気的な基準に結び付けることができる。別の実施形態は、層74または中央の管腔72の中央のライニングを内側の刺激電極として使用できる。別の実施形態は、簡単に製造するために、この層74を省略することができる。刺激部位33a〜cをプローブの表面に配置することができ、その間に非導電体材料41による隔たりがある。刺激部位33a〜cは、プローブに接着された管の断面の形のものであることができ、導電体50に溶接またはリベット締めされ、または薄膜技術によって製造できる。プローブを製造するために使用できる薄膜技術の例が、例えば米国特許第7,051,419号、および米国特許第7,047,082号に記載され、その内容全体が本明細書に参照として組み込まれる。図5の導電体50、60は、横断方向に切断された丸いワイヤを示すために円形の輪郭を有するものとして示されるが、別の形では、正方形、長方形、または楕円形の断面を有するものなどの成形ワイヤを使用でき、または導電体に薄膜技術が使用できる。図5は、好ましい実施形態と一致する12の刺激導電体50および3つの記録導電体60を示すが、別の実施形態では、様々な数の電極を支持するためにより多くまたはより少ない導電体を有することができる。
【0042】
図6は、刺激導電体50がプローブの周縁の周囲に均一に間隔を置いて配置されるのではなく組になって配置される別の実施形態を示す。4本からなる3つの組が示されるが、その代わりに導電体は3本からなる4つの組に配置することができる。そのような実施形態により、中央の管腔70とプローブの外側との間を連通するポートを設け、または導電体の組の間の壁厚を低下させると共に、プローブの可撓性を改善することが可能になる。
【0043】
図7は、図1の断面線101での別の実施形態の軸方向断面図を示す。この実施形態では、導電体が分離された前の実施形態とは異なり、刺激導電体および記録導電体は、プローブの同じ環状の空間にある。この実施形態は、両方の導電体を同じ管状の空間に配置するので、中央の管腔70はより大きいものであることができる。好ましい実施形態では、刺激導電体50および記録導電体60は、螺旋の周囲に交互になるが、別の実施形態では、刺激導電体および記録導電体は別々の組として通ることができる。別の実施形態では、刺激導電体50と記録導電体60の間に、電気的中性の点に連結できる別の導電体があることができる。別の実施形態では、電気的中性の点に連結できる管72を導電体材料によって被覆できる。
【0044】
図8は、記録導電体60および刺激導電体50が組に分けられた別の実施形態を示す。この実施形態は、図7に示される実施形態と比較して刺激導電体と記録導電体の間に望ましくない容量性結合が起こる可能性を低下させる利点があるが、個々の記録導電体の間に望ましくない容量性結合が起こる可能性を増加させる。
【0045】
図9は、流体(気体または液体)の物質または薬物の送出またはサンプリング、あるいは液体または揮発性物質のサンプリングを可能にするための、中央管腔70および管状管腔71の二重管腔を有する実施形態を示す。管腔は、図2および13A〜13Cに40として示されるポートと連通することができ、そのような連通は、電気的または化学的に開閉制御することができる。管腔の遠位端は、管腔の内容または管腔の内容の一部を排出するために、閉じられ、透過可能であり、選択的に透過可能であり、または開くことができる。2つの管腔の遠位端は、一方がレボドパなどの薬物を含む液体、あるいは一酸化炭素または一酸化二窒素などの生体活性効果を有する気体の媒体を送出し、もう一方の管腔が1つまたは複数の物質をプローブ内のポート40またはその他の開口の付近の媒体と交換する機会を得た後に媒体を回収するように、互いに連通することができる。米国特許第6,094,598号および米国特許第6,227,203号に開示されるもののような送出できるその他の治療薬剤が当分野でよく知られており、その両方は、その内容が参照によって本明細書に組み込まれ、脳脊髄液(CSF)などの細胞外流体がしばしば標本として抜き取られる。この実施形態では、プローブ内の追加の壁78によって形成された追加の環79内に電気刺激および記録用の導電体が共に通る。
【0046】
図10は、刺激および記録用の導電体が、内部の2つの管腔70、71に対して両方とも同心である2つの個別の管状のリング76および77を通ることを除いて、図9と同じ構成を示す。別の実施形態では、3つ以上の管腔があることができ、管腔は同心である必要はない。
【0047】
図11は、単一の管72があることを除いて、図9のものと同様の構成を示す。さらに、導電体50および導電体60は、無作為に向きを付けられ、したがって定められたパターンで導電体を有するプローブと異なり、プローブをより容易に製造可能にすることができる。
【0048】
図12は、ガイドワイヤまたは物質伝達を補助するための管腔をまったく備えない構成を示す。導電体は、プローブの中心を共に通る。
【0049】
図13A〜13Cは、図2に示される実施形態と同様の、刺激導電体および記録導電体用の構成を示す。図13Aは、刺激電極の4つの領域36a〜36c、35a〜35c、34a〜34c、および33a〜33cを有するプローブを示し、各領域が3つの独立の刺激部位を有する。さらに、図13Aのプローブは、記録電極37、38、および39、ならびにポート40を有する。図13Aのプローブは図13Bから13Cに示され、導電体の上縁および下縁が互いに実際に導通するように、プローブの周縁部が包まれていない。プローブ先端の領域では、導電体が軸方向に通り、回転してプローブ本体に沿って螺旋の巻きを形成する。図13Bは、プローブ先端の付近の軸方向に通り、次いで回転してプローブ本体に沿って螺旋状の巻きを形成する記録電極の導電体90a、90b、および90cを示す。図13Cは、刺激電極の導電体92a、92b、92c、94a、94b、94c、96a、96b、96c、および98a、98b、98c用の同様のパターンを示す。
【0050】
図16は、モニタおよびモジュレート用リードの斜視図を示す。図16では、リード上の4つの刺激領域が、それぞれ3つの独立の刺激電極を含む。すべての3つの刺激電極36a、36b、36cは、最遠位領域でのみ可視である。2つの刺激電極は、35a、35b、34a、34b、33a、33bを含むリードのその他の領域で可視である。さらに、リードは、3つの記録電極37、38、および39、ならびに遠位のリード先端32の付近に追加の記録電極52を有する。内側のシャフト53が、リード本体10内に収容され、本明細書に前述したガイドワイヤ、スタイレット、管腔等を収めるように適合できる。
【0051】
図17は、固定具16によって患者11の頭蓋骨に固定され、脳組織14に埋め込まれたモニタおよびモジュレート・プローブまたはリード12を示す。延長リード18は、プローブ12を制御可能なパルス発生器19と連結する。リードはしばしば、患者の皮膚の下を通るが、通らないことも可能であり、制御可能なパルス発生器19が埋込みでき、または患者11の身体の外側に出たままであることができる。プローブを頭蓋骨に固定する固定具のさらなる詳細は、米国仮特許出願第60/908,367号に記載され、その全体の内容が本明細書に参照によって組み込まれる。
【0052】
下記の表1は、環状のリングの周りの異なる刺激部位を刺激することによって異なる機能的な刺激効果が達成できることを実証する集計されたデータを要約したものである。図16に示されるものと同様のリードが、麻酔をかけた猫の大脳基底核に挿入された。最遠位の環状のリング(36a、36b、および36c)の刺激部位が、脳を電気的に刺激するために共に、および独立に通電された。接地が側頭筋に配置された。十分な大きさの電気的刺激が同側または対側、あるいは両方の顔面筋での反応を引き起こした。刺激の大きさが電圧の段階で送られ、運動反応が順序尺度に基づいて段階評価された(NR〜反応なし、THR、反応閾値、より大きな数がより高い大きさの閾上反応に対応する)。部位36aのみが刺激された場合、同側の動きに関する反応閾値が対側の動きよりも低かった。部位36bのみが刺激された場合、同側の動きおよび対側の動きに関する反応閾値は同じであった。部位36cのみが刺激された場合、対側の動きに関する閾値が同側の動きに関するものよりも低かった。すべての3つの部位が同時に刺激された場合、同側運動に関する閾値は対側運動に関するものよりも低かったが、同側運動および対側運動の両方に関する閾値は、任意の単一の部位の刺激の場合よりも低かった。この試験からのデータが下記の表1に概要を示され、この刺激の識別閾値(differential stimulation thresholds )のパターンにより、環状のリング内の異なる部位を刺激することが電流を脳内で誘導することが実証される。
【0053】
図18A〜18Cは、リードが電場電位を記録でき、異なる記録部位が異なる電位を記録することを実証する。記録は、上記に論じたような図16に示される同じリードから、同じ配置で得られた。反応は、目の前で閃光を揺らすことによる視覚経路の感覚刺激によって引き起こされた。図18Aでは、トレースT1が記録部位38から記録され、図18Bでは、トレースT2が記録部位39から記録される。これらのトレースのスペクトル分析は、180Hzおよび300Hzでの振動を示し、それは電力網との意図しない結合から生じるものと考えられる。クリスチャーノ・フィッツジェラルド・フィルタ(Christiano-Fitzgerald filter)がこれらの周波数の付近の信号エネルギーを除去するために加えられ、図18A〜18Cに示されるようにT1aおよびT2aで表される。図18Cのトレース△は、差T1a−T2aである。トレースは同様に見えるが、それらが主に電気的なクロストークから生じる場合のように釣り合っていない。位置Aでは、T1/T1aは、T2/T2aと比較してより持続的な陽性を有する。位置Bでは、トレースの陽性T1/T1aおよびT2/T2aがほぼ同一である。位置Bと位置Cの間の三相波の振幅は、トレースT1/T1aおよびT2/T2aにおいて大幅に異なる。この記録された電位の振幅は、リードの位置を反映して、最適に記録された電場電位の振幅に比べて幾分少ない。
【0054】
図19A〜19Cは、灰白質の中心での配置の自発的活動の電場電位の特徴をリードが記録できることを実証する。記録は図18A〜18Cでの記録が得られる部位に対して3mm背部の部位から得られた。この記録の振幅は電力網からの干渉の振幅よりもはるかに大きかったので、Christiano−Fitzgeraldフィルタリングが必要でなかった。図19AのトレースT1は記録部位38から記録され、図19BのトレースT2は記録部位39から記録される。図19Cのトレース△は、差T1−T2である。トレースは、電場電位の記録の時間経過および振幅の特徴によって同様に見える。差のトレース△は、活動電位波形の0.5から3.5msecの継続時間を伴ういくつかの非定常波、および数十ミリボルトの振幅の特徴を有する。図18A〜18Cに示される記録と共に、これらのデータは、図16に示されるようなリードが白質および灰白質からの電場電位を記録でき、適切な信号処理によって活動電位スパイクも記録できることを実証する。
【0055】
【表1】
【0056】
理解を明確にするためおよび例として、例示の実施形態をある程度詳細に説明してきたが、様々な追加の修正、改作、および変更は当業者には明らであることができる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0057】
10 可撓性プローブ本体; 20a 多接点接続端子; 30a,30b プローブ;33a、33b、33c、34a、34b、34c、35a、35b、35c、36a、
36b、36c 刺激部位; 37、38、39 記録バンド; 40 ポート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には医療装置および方法に関し、より具体的には、脳の組織を電気的および/または化学的にモジュレート(調節)およびモニタ(監視)するために使用されるリードに関する。
【背景技術】
【0002】
プローブまたはリードなどの医療デバイスを頭蓋骨の中に埋め込むことは、パーキンソン病、本態性振顫、およびジストニアなどの病気の治療に関する手法として、ますます重要になっている。うつ病、癲癇、ジストニア、強迫神経症、肥満、および慢性的疼痛などの数多くの疾患を治療するために、インプラントが使用できる。これらのデバイスのほとんどは、電極によって電流を加えることによって脳と相互に連絡する。さらに、慢性的に埋め込まれたリードを通して薬物を注入することが、とりわけアルツハイマー病やパーキンソン病を患う患者で、主な治療または電気刺激への補助的な治療として医療文献で提案されてきた。
【0003】
現在の埋め込み可能なプローブは一般に、遠位先端付近の数個の周縁部の金属リングおよび電気的に受動的な中央の軸方向管腔を備える、小さな直径の円筒または管として構成される。金属リングは電気刺激を与えるために使用され、中央の軸方向の管腔は、埋込み処置の間にガイドワイヤまたはスタイレットの上にプローブを送るために使用できる。
【0004】
ほとんどの治療プロトコルでは、連続した電気パルスがプローブの1つまたは複数の電導リングに加えられる。一般に、電導リングの単極または双極の刺激が用いられる。単極の刺激では、電流用の戻り経路がバッテリーパックまたは制御モジュールなどの遠隔の部位にある、単一の円周状リングが、電荷平衡(charge balanced) したバイフェイズ電気パルスによって刺激される。双極の刺激では、反対の極性の、電荷平衡したバイフェイズ電気パルスを使用して、リングの組合せが刺激される。隣接する中性または脳の組織の電気的な特性での異方性のため、ある程度の非対称性が生じるが、電導リングの刺激により、プローブの周りにある程度対照的である、作用の場が生み出される。
【0005】
プローブ軸の周りの対称的な電場は、必ずしも望ましいものではない。例えば、それはプローブがモジュレートする標的の中心に埋め込まれていない、または脳の標的の形状が非対称または不規則である場合である。さらに、標的域の付近にはしばしば、モジュレートされるべきではない神経細胞領域がある。非標的域をモジュレートすると、とりわけ体性感覚、不随意運動、および視覚障害を含む望ましくない副作用を招くおそれがある。
【0006】
脳活動をモジュレートするだけでなく、それを生理学上および病態生理学上の状態と共にモニタすることも望ましい。モニタにより、電場電位および細胞外で記録された活動電位を含む、刺激部位の付近での神経細胞の活動に関する情報が得られる。そのような電位は、治療用の電気刺激の過程中に、ならびに個人の脳および脳から電極インターフェースへアクセスするように設計された特別な刺激および応答経験の過程中に、進行中ベースで観測できる。間隔を置いたモニタから得られる情報は、進行中の日単位ベースで患者によって、または医療従事者への継続調査訪問で、治療を制御および調整するために使用できる。モニタから得られた情報は、自動化された制御システムまたは制御アルゴリズムによる、および制御器のパラメータを更新することによって、治療を動的に調整するためにも使用できる。
【0007】
間隔を置いてモニタすることは、刺激の大きさの関数として刺激に対する脳の応答での変化を追うために使用できる。臨床意思決定は、応答をかろうじて生成する閾値刺激レベル、および観測された応答をちょうど飽和する刺激レベルなどの推定パラメータに基づくことができる。刺激応答関数の形状は、例えば、下に凸、上に凸、または直線であり、治療に対する調整を知らせることもできる。刺激部位の付近で測定された飽和に対する閾値からのダイナミックレンジは、臨床的な効果のダイナミックレンジに直接的に対応することができ、またはそれと関係付けることができる。いずれの場合にも、局所的に測定されたダイナミックレンジは、最初の取付けを促進し、治療プロトコルで進行中の調整を案内することができる情報を与えることができる。治療に応答した脳の可塑性は、ダイナミックレンジの変化によって追うことができる。
【0008】
パーキンソン病の治療に対して、間隔を置いてモニタする用途を考えてみよう。パーキンソン病患者に対する電気刺激の有益な効果は、刺激プロトコルが開始した後に数分または数時間の間現れないことがよく知られている。プロトコルが睡眠中に中断され、起床時に再開される場合、治療の有益な効果は何時間もの間、再び現れることができない。間隔を置いてモニタすることは、有益な効果をもたらすための1つのプロトコル中に、および有益な効果を単に維持するための別のより保守的なプロトコルの下で刺激を加えることができるように、刺激に応答した変化を追うための機会を提供する。そのような戦略は、バッテリーの電力を節約することになり、副作用を低減させることもできる。
【0009】
瞬間ごとに観測することによって、モジュレート性の治療を、観測された病理学上のまたは通常の生理学上の状態に基づいて自然の脳のリズムと動的に同期させることができ、あるいは自動化された制御システムまたは制御アルゴリズムによって制御することもできる。
【0010】
現在行われているほとんどの処置は、電気的に刺激するプローブの部位から離れた部位で患者の動き、挙動、または脳活動をモニタし、この情報が脳刺激パラメータをモジュレートするために使用される。パラメータは、望ましい効果を生み出し、副作用を最小限に抑えるために短時間のスケールで調整され、脳の可塑性に配慮するためにより長時間のスケールで調整される。脳の可塑性は、脳によって介入に対して適応応答することによるものであり、モジュレート治療などの介入に対する脳による進行中の応答はしばしば最初の応答とは異なることがよく知られている。有用な情報は、電気刺激の部位の付近の電位をモニタすることにより得ることもでき、したがって電気刺激の部位で脳活動をモニタすることが望ましい。モニタは、病気の経過および治療過程を様々な治療のオプションに関する予測に沿って測定できるようにする。
【0011】
こうした理由ならびにその他の理由で、脳などの組織をモジュレートおよびモニタする改善されたプローブを提供することが望ましい。意図される標的に向かって、および/またはその他の脳の領域から離れる方向に導くことができる向きのある電場を生成する効率的な設計を提供することが特に望ましい。電気的な記録と、刺激またはモジュレートの可能性の両方を統合する、効率的な数および寸法の電極、ならびにコネクタ・リードを有するプローブを提供することも望ましく、その場合に記録からの情報が、治療部位に近接して得られ、刺激プロトコルを定義するために使用できる。次いでプロトコルを静的または動的に適合することができ、病気の状態が変化すると、治療も調整できる。脳の電気的な活動を記録およびモニタすることが、いつ刺激プロトコルが適用され、またはより効果的な時のために保留されるべきかどうか決定するためにも使用され、それによって電力を節約するのを補助する。
【0012】
従来技術の説明
脳モジュレート・プローブおよび方法を説明する従来の特許および公報には、次の特許文献が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許公報第2006/0047325号
【特許文献2】米国特許公報第2006/0004422号
【特許文献3】米国特許公報第2005/0015130号
【特許文献4】米国特許公報第2004/0039434号
【特許文献5】米国特許第7,051,419号
【特許文献6】米国特許第7,047,082号
【特許文献7】米国特許第7,006,872号
【特許文献8】米国特許第6,094,598号
【特許文献9】米国特許第6,038,480号
【特許文献10】米国特許第6,011,996号
【特許文献11】米国特許第5,843,148号
【特許文献12】米国特許第5,716,377号
【発明の概要】
【0014】
本発明は一般に、組織をモジュレートまたは刺激し、モジュレートの結果として局所的な組織応答を測定および記録することが可能な埋込み可能なプローブまたはリードを提供する。
用語「モジュレートする(modulating)」および「刺激する(stimulating)」 は、入れ替え可能に使用され、組織内の活動を鼓舞(incite)または抑制(suppress)する刺激を提供することを指称するために使用される。用語「プローブ」および「リード」は、同じく入れ替え可能に使用され、組織をモジュレートし、および/または局所的な組織応答を測定および記録するための任意のデバイスを指すために使用される。組織のモジュレートは、組織の電気的および/または化学的な刺激、ならびに組織の活動の抑制を含むことができる。組織応答を測定および記録することは、刺激に応答した局所的な組織の電位を測定することをしばしば必要とするが、内生的な組織の電位ならびに組織内の化学的な活動を測定および記録することも含むことができる。しばしば、プローブは一般には深い脳の構造、または大脳もしくは小脳に埋め込まれて、脳の組織に使用される。
【0015】
本発明は、効率が改善され、望ましくない副作用が最小限に抑えられた神経構造などの組織内に治療的なモジュレートを送ることができる方法も提供する。本発明は、治療的な介入が、その効果を改善し、試薬または電荷などの限られた資源を節約するためにモジュレートできるように、組織の活動を電気的および/または化学的に組織の活動をモニタする方法も含む。
【0016】
プローブは、脳などの組織を刺激し、および/または局所的な組織の電位を測定することによって組織の活動を記録するための電極を有する。刺激電極は、個々に、または組み合わせて作動できるように配置される。それらは、あるいは刺激された脳の組織を形作り、刺激された脳での活動の大きさおよびタイミングをモジュレートするために、同時または順次の連係で作動できる。プローブはしばしば、プローブに沿って軸方向に並べられた、複数の環状の刺激電極を有する。効果的なプローブの1例では、環状の各電極は、その位置に配置された独立の3つの刺激部位を有するものであるが、環状の領域ごとにより多くの数の刺激部位を使用することもできる。「独立の刺激部位」によって、一般には120°円弧の環状の電極に配置された3つの別個の領域に電極を分離可能であり、外部またはその他のエネルギー源から独立に各領域にエネルギー供給できることを意味する。
【0017】
本発明の第1の態様において、脳の組織を刺激およびモニタする装置は、近位端および遠位端を有する細長い部材と、その細長い部材に軸方向に沿って並べられ且つ遠位端付近に配置される(尚、他の軸方向の位置に配置することも可)複数の環状の刺激電極とを備える。その細長い部材の部分は、近位端の付近で可撓性であることが可能であるが、遠位端の付近では、しばしば剛性を有することもできる。環状の刺激電極は、電流を組織に流すようになされ、環状の刺激電極のうちの少なくとも1つは、少なくとも3つの独立の刺激領域または点を有する。この装置は通常、刺激電極に隣接して配置された複数の測定電極または記録電極をさらに備え(ただし、これは必須ではない)、記録電極のうちのいくつかは、環状の刺激電極の間に配置することができ、記録電極は、局所的な組織の電位を測定するようになされる。記録電極は、細長い部材の周囲の周縁上に配置することができ、円形の表面を有することもある。この装置の先端またはその付近に、記録および/または刺激用の表面があることも可能である。この装置は通常、環状の刺激電極および環状の記録電極のうちの少なくともいくつかと接続された複数の導電体を備え、オプションの多接点接続端子を細長い部材の近位端の付近に配置することができ、その端子は導電体と接続される。この装置は、刺激領域当たりに1つの導電体、および/または記録領域当たりに1つの導電体を有することができる。この装置はしばしば、近位端と遠位端の間に軸方向に配置された管腔も有し、管腔はガイドワイヤまたはスタイレットを受けるようになされることもある。
【0018】
しばしば、治療される組織は脳組織であるが、その他の組織も本発明の方法およびシステムによって治療できる。さらにこの装置は、しばしば細長い部材に沿って、またはその中に軸方向に配置された管腔も有する。いくつかの場合には、管腔はガイドワイヤまたはスタイレットを受けるようになされ、それは細長い部材の遠位端の付近のポートから管腔を通過するようになされる。その他の場合には、管腔と連通する1つまたは複数のポートが、細長い部材の遠位端の付近に配置され、治療薬剤またはその他の物質を組織へ送り、および/または組織から化学物質を受けるようになされる。いくつかの場合には、ポートは環状の刺激電極の間に配置され、別の場合にはポートのうちの少なくとも1つが、細長い部材の遠位端に配置される。いくつかの実施形態では、ポートは、その選択的な動作可能性を可能にするようになされたゲート部材を備えることができる。ゲート部材は、半透明の薄膜であることができ、ゲート部材が化学的に反応性のヒドロゲルである場合などに化学的に制御できる。
【0019】
いくつかの実施形態では、さらなる刺激電極を管腔に配置でき、しばしばこの追加の電極はワイヤである。治療薬剤は、管腔を通して送ることもできる。別の実施形態では、追加の刺激電極が細長い部材の遠位端に配置でき、この電極は電流を組織に送ることも可能である。治療薬剤も、この実施形態または本明細書に説明されたその他の実施形態の場合に使用できる。しばしば、導電体は細長い部材に沿って螺旋状に巻かれる。第1の組の導電体が刺激電極と接続でき、第2の組の導電体が記録電極と接続できる。第1の組の導電体は、第1のピッチを有する螺旋状に巻くことができ、第2の組の導電体は第2のピッチを有する螺旋状に巻くことができる。いくつかの場合には、第1のピッチは第2のピッチと異なる。導電体はしばしば、ステンレス鋼、MP35N、またはタングステンからなり、その理由は、それらが生体適合性を有し、MRI撮影システムと適合性を有するからであるが、白金イリジウム合金などの他の材料も使用可能である。一般に、複数の環状の刺激電極ならびに記録電極も、磁気共鳴映像(MRI)と適合性を有することができる。物体は、それが画質を大幅に歪ませ、加熱によって組織を損傷させ、磁界の存在の下で移動しない場合に、MRIと適合性を有する。
【0020】
本発明の第2の態様では、組織を治療する方法が組織にプローブを埋め込むステップを含む。プローブも、磁気共鳴映像と適合性を有することができ、通常複数の環状の刺激電極ならびに複数の記録電極を有する。少なくとも1つの環状の刺激電極が、その上に少なくとも3つの独立の刺激点または領域を有する。次いで、組織は環状の刺激電極から治療電流を使用して刺激することができ、局所的な組織の電位が、一般に記録電極を使用した刺激に応答して測定できる。刺激の効果に基づいてフィードバックを提供するために、組織からの化学物質も収集することができ、これはプローブに配置された1つまたは複数のポートを選択的に開閉するようにゲート部材を制御するステップを含むことができる。ポートは、組織への治療薬剤の配分、および/または組織から受け取った化学物質の送出を制御するようになされてもよい。測定された局所的な組織の電位は、刺激の効果に関するフィードバックを行うために分析でき、次いで、刺激はフィードバックに応答して調整できる。治療されている組織はしばしば脳組織であり、方法は、さらに治療薬剤によって組織を刺激するステップを含む。方法は、アンカーによって、組織にプローブを解放可能に連結するステップも含むことができる。
【0021】
本発明の第3の態様では、組織を治療するシステムは、磁気共鳴映像と適合性があり、通常、複数の環状の刺激電極ならびに局所的な組織の電位を測定するようになされた複数の記録電極を有する組織プローブを備える。環状の刺激電極のうちの少なくとも1つは、少なくとも3つの独立の刺激点または領域を有し、その領域は電流を組織に流すようになされる。システムは、記録電極および刺激電極と接続された多接点コネクタ、および多接点コネクタを介して組織プローブに電気的な刺激を与えるようになされた埋込み可能かつ制御可能なパルス発生器も備えることができる。一般に、治療されている組織は脳組織であり、システムはしばしば、定着デバイス(anchoring device)を備えることができる。定着デバイスは、患者の頭に組織プローブを取外し可能に固定するようになされる。システムは一般に、パルス発生器を制御するようになされた患者プログラマ(patient programmer)も備える。
【0022】
これらの、およびその他の実施形態が、添付の図面に関連付けられた以下の説明にさらに詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】組織のモニタおよびモジュレート用リードの1つの実施形態を示す。
【図2】組織のモニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態を示す。
【図3】組織のモニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態を示す。
【図4】組織のモニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態を示す。
【図5】組織のモニタおよびモジュレート用リードの断面図を示す。
【図6】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の断面図を示す。
【図7】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の断面図を示す。
【図8】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の断面図を示す。
【図9】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の別の断面図を示す。
【図10】モニタおよびモジュレート用リードの実施形態の別の断面図を示す。
【図11】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の別の断面図を示す。
【図12】モニタおよびモジュレート用リードの別の実施形態の別の断面図を示す。
【図13A】モニタおよびモジュレート用リードの例示の実施形態の記録および刺激領域を強調して示す。
【図13B】モニタおよびモジュレート用リードの例示の実施形態の記録および刺激領域を強調して示す。
【図13C】モニタおよびモジュレート用リードの例示の実施形態の記録および刺激領域を強調して示す。
【図14】90°で分けられた4つの刺激部位によって生成された双極子の大きさのモデルを示す。
【図15】図14のモデルと比較して120°で分けられた3つの刺激部位によって生成された双極子の大きさのモデルを示す。
【図16】脳のモニタおよびモジュレート用リードの実施形態の斜視図を示す。
【図17】患者の頭部に埋め込まれた脳のモニタおよびモジュレート・リードを示す。
【図18A】2つの記録電極からの脳電位のサンプル記録を示す。
【図18B】2つの記録電極からの脳電位のサンプル記録を示す。
【図18C】2つの記録電極からの脳電位のサンプル記録を示す。
【図19A】2つの記録電極からの脳電位の追加のサンプル記録を示す。
【図19B】2つの記録電極からの脳電位の追加のサンプル記録を示す。
【図19C】2つの記録電極からの脳電位の追加のサンプル記録を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面では、同様の番号が実質的に同様の構成要素を示す。プローブは、しばしば、その遠位端に環状の電極を有する。2つの刺激部位に分割された電極では、双極子(ダイポール)を単一軸に向けることのみが可能である。環状の電極が3つの刺激部位に分割されて構成される場合には、双極子を平面上で任意の方向に向けて生成できる。したがって、環状の電極当たりの3つの刺激部位は、双極子を平面上の任意の方向に沿って向けるために必要な電極当たりの最小限の数の刺激部位になっているものとして有利である。最小限の数の刺激部位を使用することは、プローブを通過しなければならない導電体の数を最小限に抑え、脳組織をモジュレートするための任意の記録部位を通る最大電流密度を可能にするので、同様に有利である。
【0025】
電流密度が脳組織の耐性によって制限される場合に、刺激部位の切断されたリングが、いくつかの方向に他よりも多くの刺激を送ることができる。例えば、4つの刺激部位であって、2つの部位が横軸(X)と整列し、他の2つの部位が垂直軸(Y)と整列した4つの刺激部位として、円筒形のプローブの周囲に切断されたリングとして配置されている4つの刺激部位を、ここで考察する。この構成は、対抗する対の刺激部位の間に電流を流すことから生じる2つの双極子の線形和によって、刺激部位の平面内で任意の方向の電気双極子を生成できる。軸(X)に対して向きθで大きさ(m)の双極子の生成のためには、大きさ(m/d)cosθの電流が、(X)に整列した刺激部位を通して流され、且つ、大きさ(m/d)sinθの電流が (Y)に整列した刺激部位を通って流される(ただしdは原点からの距離である)。θが変化すると、双極子の大きさが円を描く。何れの単一の電極での電流密度も、熱またはその他の望ましくない刺激の副作用を抑えることができるように、ある最大値未満に制限することが望ましい。そのような制約によって、角度θの関数として4つの刺激部位の切断されたリングによって生成できる最大の双極子が、図14で分かるように正方形243を描く。最大の双極子の大きさは、両方の対の刺激部位が最大の許容電流を伝えるので、正方形の角の、軸(X)と(Y)の間の中間の向きになる。最小の双極子の大きさは、1対の刺激部位のみが非0電流を伝えるので、軸(X)および(Y)に沿った向きになる。
【0026】
円筒形のプローブの周囲に切断されたリングまたは環になって配置された3つの刺激部位を備える実施形態と上記のシナリオを比較する。電極リングの軸方向の広がりおよび最大電流密度が上記の実施例と同じ場合、任意の電極を通る電流の最大の大きさは、1/3大きい。最大電流が1つの電極を通って流された場合、帰還電流がその他の2つの電極の間の様々な部分に分割される。θの関数として3つの電極のリングによって生成できる最大の双極子は、図15に示されるものと同様の六角形246を描く。刺激域のほとんどの向きに関して、3つの刺激部位の切断されたリングによって生成された最大の双極子の大きさは、図15に重ね合わされた図14からの正方形243によって分かるように、4つの刺激部位の切断されたリングによって生成される双極子よりも大きい。
【0027】
図14および15は、3のような素数の刺激部位を使用する利点を明らかにする簡素化されたモデルを示す。図1の好ましい実施形態での切断されたリングに3つの刺激部位がある。図14は、円230の周囲の点に配置された4つの電気単極子(モノポール)234a、234b、234c、および234dの場合を示す。単極子234aおaよび234cは、等しくかつ反対に帯電され、単極子234bおよび234dを生成すると双極子を生成する。正方形234上の点の径方向部位は、単極子上の最大電荷が大きさ1である制約に従って、2つの双極子234a、234c、および234b、234dの合計によって形成できる最大の正味双極子を表す。4つの単極子の電荷の合計は0である。
【0028】
図15は、円230の周囲の点に配置された3つの電気単極子(モノポール)235a、235b、および235cの場合を示す。図15の最大の正味双極子の正方形243が、ここに参照のために重ね合わされる。3つの電気単極子は、最大の正味双極子の六角形によって図示されるように、より効果的に向きを付けられた双極子を生成する。2つの双極子は、1つの極性の1つの単極子および2つの反対または0電荷の単極子によって生成される。3つすべての単極子の電荷の合計は0である。六角形246の点の径方向部位は、2つの双極子の合計によって生成できる最大の正味双極子を表し、どの単極子の最大電荷が大きさ1.2を超えることができない制約に従う。各部分が円周の1/4を占める場合よりも各部分が円周の1/3を占める場合に固定された軸方向長さの各刺激部位の表面積がより大きくなるので、ここでより大きな最大電荷の制約が使用される。電極235a、235b、235cに最も近い六角形の辺は、制約する電極が正の極性を有し、これらと反対側にある六角形の辺は、制約する電極が負の極性を有する場合の状況で生成される。六角形246の径方向の部位が、原点からのほとんどの方向で、正方形243よりも原点から離れていることが理解できる。切断されたリングの固定された軸の範囲に関して、3つの刺激部位が、4つの刺激部位と比べてより大きな効果的な刺激を送ることができる。あるいは、固定された効果的な刺激に関して、3つの刺激部位の切断されたリングの軸方向の長さは、4つの刺激部位の切断されたリングに関するよりも短いものであることができる。本発明の好ましい実施形態は、最大の電流密度が制約される状態に関する電流のよりよい誘導可能性を補助する別のプローブに勝る利点を有する。本発明のこの説明は、異なる切断されたリングの刺激部位が同時または連携して刺激される刺激プロトコルを使用することを除外しない。
【0029】
6つ(または任意のその他の3の倍数)の刺激部位の切断されたリングを有する刺激プローブが、本発明の利点を得る様式で使用できることが当分野の技術者には明らかである。これは、それぞれが1対の隣接する刺激部位からなる3つの刺激部位として、6つの刺激部位のリングを制御することによって達成できる。
【0030】
したがって、任意の軸方向部位で、刺激部位の数は素数である。素数は、異なる刺激の向きを得るために、電極のすべての表面を同時に使用するためのより多くの組合せの可能性を生み出す。すべての電極表面を使用することにより、電流密度が可能な限り低く保たれる。好ましい実施形態では、刺激部位の数は3である。別の実施形態では、刺激部位の数は5である。2つ、5つ、または7つの刺激部位による構成も、本発明が達成しようとする電流密度の利点を得ることができるが、より少ない程度しか得られない。
【0031】
図1を参照すると、組織のモジュレートおよびモニタプローブが示されている。図1は、プローブの好ましい実施形態を示す。それは、可撓性プローブ本体10およびオプションの多接点接続端子20aを備える円筒形のプローブである。多接点接続端子のさらなる詳細は、米国仮特許出願第60/820,914号に記載され、その全体の内容が本明細書に参照によって組み込まれる。その他のコネクタが使用でき、当分野でよく知られている。プローブ30aの遠位端に、1つまたは複数の刺激部位の切断された環状のリングがある。刺激部位はすべてのリングの適合する角度部位と部位合わせすることができ、または異なるリングで異なる角度部位にずらすことができる。局所的な電場電位を記録するのに適した1つまたは複数の周縁の電極バンド(electrode bands )、および最遠位点またはその付近にある記録電極もある。この好ましい実施形態では、多接点端子20aの最大直径は可撓性のプローブ本体10の直径に等しい。
【0032】
この実施形態では、3つの刺激部位33a、33b、33c、34a、34b、34c、35a、35b、35c、36a、36b、36cが、4つの軸方向部位に、総計で12の刺激部位に関して切断されたリングとして配置される。これらは、図5〜12の断面図でよりよく理解できる。また、この実施形態には、切断されたリングの間の間隙に配置される3つの記録バンド37、38、39がある。記録部位の大きさは、局所的な電場電位を記録するのに適しており、露出した領域が約0.0005mm2から約0.5mm2の範囲にあるが、その領域は約0.8mm2までになることもできる。いくつかの実施形態は、活動電位の細胞外の記録を改善するより小さな記録部位を有する。露出された領域のそのような記録部位は、約1.9×10-5mm2から約0.002mm2の範囲にあることができるが、それらは約0.1mm2程度の大きさであることもできる。記録部位の型式は、絶縁されたワイヤのむき出しの端部、薄膜、金属パッド、またはデバイスの壁の中で導電体を露出するために除去される絶縁の部分を有する絶縁された領域であることができる。別の実施形態は、記録リングをまったく有することができず、またはより多くの記録リングを有することができる。さらなる記録リングまたは点電極がプローブ本体10に沿って、またはプローブ先端32に配置できる。本実施形態は、刺激部位に対する記録電極(バンドおよび/または点)の部位合わせを制限しない。
【0033】
短絡化を低減し、記録された信号の絶縁を向上させるために、刺激面と記録面の間および記録面の間に少なくとも100μmの非伝導性の隔たりがなければならない。プローブを通って移動する電気信号は、互いに干渉しないことが望ましい。高いレベルの電気刺激信号が低レベルの記録信号と干渉しないことが特に望ましい。したがって、記録信号を運ぶ導電体が内側の螺旋に配設されることが望ましく、刺激信号を運ぶ導電体が外側の螺旋に配設されることが好ましい。刺激導電体および記録導電体の対が、感知できる距離に対して、隣接する経路をまったく横切らないように、2つの螺旋のピッチは、同じまたは異なることができる。これは、刺激導電体と任意の記録導電体の間の容量性結合を最小限に抑える。その他の実施形態では、導電性の被覆を記録導電体の螺旋の外側に施すことができる。これは、2つのタイプの導電体の間の電磁干渉を低下させるために接地できる。別の実施形態では、接地できる金属箔が内側の螺旋と外側の螺旋の間に巻かれる。
【0034】
別の実施形態では、記録された信号を運ぶ導電体は、電気刺激信号を運ぶ導電体の間に配設される。この実施形態は、導電体が単一の薄層で配設されよりコンパクトかつより可撓性があることができる利点を有するが、場合によっては、この実施形態は刺激電流が刺激導電体をモジュレートする場合、刺激信号が隣接する記録導電体につながる可能性があるという欠点を有する可能性がある。必ずしもすべての刺激導電体が、任意の瞬間に電流を運ぶことを求められないことに留意されたい。したがって、プローブの多くの用途において、記録導電体のうちのいくつかは、任意の瞬間に作動状態の刺激導電体から十分に分離される。別の実施形態では、刺激ワイヤおよび記録ワイヤは、螺旋状に導電体の隣接する組として通る。
【0035】
ワイヤは機械的な強度を有し、導電性である必要がある。適切な材料には、合金MP35N(コバルト・クロム合金)、ステンレス鋼、およびタングステンまたは刺激部位との導通、および頭蓋外のコネクタへの導通を向上させるために金メッキされたタングステン合金ワイヤが含まれる。材料がMRI適合性を最大にするために磁性が最小限であることが重要である。
【0036】
刺激部位は、白金、イリジウム、または白金とイリジウムの合金などの安全な電荷移動を最大にする比較的不活性の材料から作製できる。プローブの本体は、プローブが頭蓋骨を出る短い曲率半径による曲げを補助する、シリコーンゴムまたはポリウレタンなどの生体適合性ポリマーによって被覆される。
【0037】
図2は、プローブ30bの別の実施形態を示す。プローブ30bは、化学物質がプローブ管腔に出入りできることを可能にするポート40を加える点を除いて、図1のプローブ30aと同様である。ポート40を半透明の薄膜によって覆うことができる。あるいは、化学的に反応性のあるヒドロゲルなどの化学的に制御されたゲーティング機構がポートの付近に配置できる。そのようなヒドロゲルは、隣接する媒体の化学組成に基づいて膨張または後退できる。ゲーティング機構は、ポートのかさの膨張および閉塞に基づいて動作することができ、またはヒドロゲルは機械的な付属構造によって形成できる。そのような構造の1つの例に、Applied Physics Letters、81(16):3091~3093、2002 に掲載された「Micromechanical Cantilever as an Ultrasensitve pH Microsensor 」にR.Bashir、J.Z.Hilt、O.Elibol、A.Gupta、およびN.A.Peppasによって述べられるようなバイモルフ・ビーム(bimorph beam)が含まれる。別の例には、Sensor and Actuators B、114(l):9~18、2006 に掲載された「A Microstructured Silicon Membrane with Entrapped Hydrogels for Environmentally Sensitive Fluid Gating 」という名称の1つの論文でA.Baldi、M.Lei、Y.Gu、R.A.Siegel、およびB.Ziaie によって開示された、微細ポートによって開口部を付けられた表面カバーが含まれ、別の例には、Journal of Microelectromechanical Systems、12(5):613~621;2003に掲載された「A Hydrogel-Actuated Environmentally Sensitive Microvalve for Active Flow Control」でA.Baldi、Y.Gu、P.E.Loftness、R.A.Siegel、およびB.Ziaie によって述べられるような閉塞性シールを形成するのに適した要素を移動するパッドが含まれる。これらの参考文献の内容全体が本明細書に参照によって組み込まれる。
【0038】
ヒドロゲルは、その体積が異なる化学的な依存性(chemical dependencies )を有するように配合できるので、薬物をプローブの所定の部位に選択的に送ることができるように、異なるヒドロゲルをリードの異なる所定の部位にあるポートと関連付けることができる。同様に、細胞外空間または脳脊髄液(CFS)のサンプルをプローブの所定の部位から得ることができる。pHによって直接的に制御される化学的なゲーティング機構の例には、上記に「Micromechanical Cantilever as an Ultrasensitve pH Microsensor 」で述べたものが含まれる。pHとの関係を介して二酸化炭素の存在によって制御されるゲーティング機構には、The Journal of Clinical Monitoring and Computing 21(2):83~90、2007 に掲載された「Assessment of a New Prototype Hydrogel CO2 Sensor;Comparison with Air Tonometry」にR.Steege、H.Sebastiaan、W.Olthuis、P.Bergveld、A.Berg、およびJ.Kolkman によって述べられたものが含まれる。グルコースの存在によって制御されるゲーティング機構のその他の例は、米国特許第6,997,922号にTheeuwes等によって開示されている。上記に挙げた参考文献の内容全体が本明細書に参照によって組み込まれる。
【0039】
図3は、ブローブ30cの別の実施形態を示し、プローブ先端32aが導電性であり、追加の刺激部位として機能する。これは、従来の刺激部位として機能することができ、単極および双極の刺激を補助する。刺激部位36a〜cの遠位リングと共に、それは3次元で先端の付近の電流の誘導を補助する四面体の頂点に中心を合わせられた刺激部位の組を形成する。図3の実施形態は、刺激電極36a〜36cと遠位の刺激電極32aとの間に追加の記録電極42も有する。また、多接点接続端子20cは、米国仮特許出願第60/820,914号にさらに詳しく開示されるような、2つの反円筒形またはD字形のコネクタに沿って軸方向に間隔を置いた複数の電気接点を有し、その内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0040】
図4は、プローブ30dの別の実施形態を示し、多接点端子20dがプローブ本体10と同じ直径を有する必要がないことを示す。ここで、接点端子20dは、プローブ30dをモニタおよびモジュレート・システムのその他の部分と接続するための差込み部を備えるより大きな直径の円筒形プラグである。この実施形態は、記録電極の表面が円形である必要がないが、記録点43として構成できることを示す。別の実施形態は、複数の記録部位を含むことができ、いくつかはリングとして構成され、その他は点として構成される。別の実施形態では、記録電極は、正方形、長方形、または変則的な形を含む、他の形を取ることができる。別の実施形態では、多接点端子によって、プローブ内の流体通路に管腔または導管を設けることが可能になる。流体は、1つまたは複数の管腔を通過でき、脳に流入または脳から流出でき、あるいはその両方が可能である。
【0041】
図5は、図1の断面線101での好ましい実施形態の軸方向断面図を示す。好ましい実施形態では、中央の管腔70が、ポリウレタン、シリコーンゴム、またはポリアミドなどの生体適合性ポリマーから作成される管72によって囲まれる。別の実施形態では、管腔はポリマー被覆であり、絶縁された記録導電体60は内部の管腔に配置できる。記録導電体60は、記録部位から多接点端子20のその終端まで螺旋状に巻かれる。同様に、刺激導電体50は、刺激部位から多接点端子20のその終端まで螺旋状に巻かれる。好ましい実施形態では、刺激導電体50は、刺激導電体50に関して抵抗による損失がより大きな問題であるので記録導電体60よりも大きな寸法を有するが、別の実施形態では、すべての導電体が同じまたは同様の寸法のものであることができる。好ましい実施形態では、ワイヤ間の平均の容量性結合を低下させるために、記録ワイヤの螺旋および刺激ワイヤの螺旋のピッチは異なる。別の実施形態では、螺旋は同じピッチを有することができる。2つの螺旋は、同じまたは反対の向き(一方が時計回り、もう一方が反時計回り)を有することができる。導電体50、60は、好ましい実施形態で可撓性のポリマーに埋め込まれ、絶縁されるが、別の実施形態では絶縁のために周囲のポリマーに依存でき、または依存できない。好ましい実施形態では、導電性材料74の層が記録導電体と刺激導電体の間に挿入され、それを低インピーダンスの電気的な基準に結び付けることができる。別の実施形態は、層74または中央の管腔72の中央のライニングを内側の刺激電極として使用できる。別の実施形態は、簡単に製造するために、この層74を省略することができる。刺激部位33a〜cをプローブの表面に配置することができ、その間に非導電体材料41による隔たりがある。刺激部位33a〜cは、プローブに接着された管の断面の形のものであることができ、導電体50に溶接またはリベット締めされ、または薄膜技術によって製造できる。プローブを製造するために使用できる薄膜技術の例が、例えば米国特許第7,051,419号、および米国特許第7,047,082号に記載され、その内容全体が本明細書に参照として組み込まれる。図5の導電体50、60は、横断方向に切断された丸いワイヤを示すために円形の輪郭を有するものとして示されるが、別の形では、正方形、長方形、または楕円形の断面を有するものなどの成形ワイヤを使用でき、または導電体に薄膜技術が使用できる。図5は、好ましい実施形態と一致する12の刺激導電体50および3つの記録導電体60を示すが、別の実施形態では、様々な数の電極を支持するためにより多くまたはより少ない導電体を有することができる。
【0042】
図6は、刺激導電体50がプローブの周縁の周囲に均一に間隔を置いて配置されるのではなく組になって配置される別の実施形態を示す。4本からなる3つの組が示されるが、その代わりに導電体は3本からなる4つの組に配置することができる。そのような実施形態により、中央の管腔70とプローブの外側との間を連通するポートを設け、または導電体の組の間の壁厚を低下させると共に、プローブの可撓性を改善することが可能になる。
【0043】
図7は、図1の断面線101での別の実施形態の軸方向断面図を示す。この実施形態では、導電体が分離された前の実施形態とは異なり、刺激導電体および記録導電体は、プローブの同じ環状の空間にある。この実施形態は、両方の導電体を同じ管状の空間に配置するので、中央の管腔70はより大きいものであることができる。好ましい実施形態では、刺激導電体50および記録導電体60は、螺旋の周囲に交互になるが、別の実施形態では、刺激導電体および記録導電体は別々の組として通ることができる。別の実施形態では、刺激導電体50と記録導電体60の間に、電気的中性の点に連結できる別の導電体があることができる。別の実施形態では、電気的中性の点に連結できる管72を導電体材料によって被覆できる。
【0044】
図8は、記録導電体60および刺激導電体50が組に分けられた別の実施形態を示す。この実施形態は、図7に示される実施形態と比較して刺激導電体と記録導電体の間に望ましくない容量性結合が起こる可能性を低下させる利点があるが、個々の記録導電体の間に望ましくない容量性結合が起こる可能性を増加させる。
【0045】
図9は、流体(気体または液体)の物質または薬物の送出またはサンプリング、あるいは液体または揮発性物質のサンプリングを可能にするための、中央管腔70および管状管腔71の二重管腔を有する実施形態を示す。管腔は、図2および13A〜13Cに40として示されるポートと連通することができ、そのような連通は、電気的または化学的に開閉制御することができる。管腔の遠位端は、管腔の内容または管腔の内容の一部を排出するために、閉じられ、透過可能であり、選択的に透過可能であり、または開くことができる。2つの管腔の遠位端は、一方がレボドパなどの薬物を含む液体、あるいは一酸化炭素または一酸化二窒素などの生体活性効果を有する気体の媒体を送出し、もう一方の管腔が1つまたは複数の物質をプローブ内のポート40またはその他の開口の付近の媒体と交換する機会を得た後に媒体を回収するように、互いに連通することができる。米国特許第6,094,598号および米国特許第6,227,203号に開示されるもののような送出できるその他の治療薬剤が当分野でよく知られており、その両方は、その内容が参照によって本明細書に組み込まれ、脳脊髄液(CSF)などの細胞外流体がしばしば標本として抜き取られる。この実施形態では、プローブ内の追加の壁78によって形成された追加の環79内に電気刺激および記録用の導電体が共に通る。
【0046】
図10は、刺激および記録用の導電体が、内部の2つの管腔70、71に対して両方とも同心である2つの個別の管状のリング76および77を通ることを除いて、図9と同じ構成を示す。別の実施形態では、3つ以上の管腔があることができ、管腔は同心である必要はない。
【0047】
図11は、単一の管72があることを除いて、図9のものと同様の構成を示す。さらに、導電体50および導電体60は、無作為に向きを付けられ、したがって定められたパターンで導電体を有するプローブと異なり、プローブをより容易に製造可能にすることができる。
【0048】
図12は、ガイドワイヤまたは物質伝達を補助するための管腔をまったく備えない構成を示す。導電体は、プローブの中心を共に通る。
【0049】
図13A〜13Cは、図2に示される実施形態と同様の、刺激導電体および記録導電体用の構成を示す。図13Aは、刺激電極の4つの領域36a〜36c、35a〜35c、34a〜34c、および33a〜33cを有するプローブを示し、各領域が3つの独立の刺激部位を有する。さらに、図13Aのプローブは、記録電極37、38、および39、ならびにポート40を有する。図13Aのプローブは図13Bから13Cに示され、導電体の上縁および下縁が互いに実際に導通するように、プローブの周縁部が包まれていない。プローブ先端の領域では、導電体が軸方向に通り、回転してプローブ本体に沿って螺旋の巻きを形成する。図13Bは、プローブ先端の付近の軸方向に通り、次いで回転してプローブ本体に沿って螺旋状の巻きを形成する記録電極の導電体90a、90b、および90cを示す。図13Cは、刺激電極の導電体92a、92b、92c、94a、94b、94c、96a、96b、96c、および98a、98b、98c用の同様のパターンを示す。
【0050】
図16は、モニタおよびモジュレート用リードの斜視図を示す。図16では、リード上の4つの刺激領域が、それぞれ3つの独立の刺激電極を含む。すべての3つの刺激電極36a、36b、36cは、最遠位領域でのみ可視である。2つの刺激電極は、35a、35b、34a、34b、33a、33bを含むリードのその他の領域で可視である。さらに、リードは、3つの記録電極37、38、および39、ならびに遠位のリード先端32の付近に追加の記録電極52を有する。内側のシャフト53が、リード本体10内に収容され、本明細書に前述したガイドワイヤ、スタイレット、管腔等を収めるように適合できる。
【0051】
図17は、固定具16によって患者11の頭蓋骨に固定され、脳組織14に埋め込まれたモニタおよびモジュレート・プローブまたはリード12を示す。延長リード18は、プローブ12を制御可能なパルス発生器19と連結する。リードはしばしば、患者の皮膚の下を通るが、通らないことも可能であり、制御可能なパルス発生器19が埋込みでき、または患者11の身体の外側に出たままであることができる。プローブを頭蓋骨に固定する固定具のさらなる詳細は、米国仮特許出願第60/908,367号に記載され、その全体の内容が本明細書に参照によって組み込まれる。
【0052】
下記の表1は、環状のリングの周りの異なる刺激部位を刺激することによって異なる機能的な刺激効果が達成できることを実証する集計されたデータを要約したものである。図16に示されるものと同様のリードが、麻酔をかけた猫の大脳基底核に挿入された。最遠位の環状のリング(36a、36b、および36c)の刺激部位が、脳を電気的に刺激するために共に、および独立に通電された。接地が側頭筋に配置された。十分な大きさの電気的刺激が同側または対側、あるいは両方の顔面筋での反応を引き起こした。刺激の大きさが電圧の段階で送られ、運動反応が順序尺度に基づいて段階評価された(NR〜反応なし、THR、反応閾値、より大きな数がより高い大きさの閾上反応に対応する)。部位36aのみが刺激された場合、同側の動きに関する反応閾値が対側の動きよりも低かった。部位36bのみが刺激された場合、同側の動きおよび対側の動きに関する反応閾値は同じであった。部位36cのみが刺激された場合、対側の動きに関する閾値が同側の動きに関するものよりも低かった。すべての3つの部位が同時に刺激された場合、同側運動に関する閾値は対側運動に関するものよりも低かったが、同側運動および対側運動の両方に関する閾値は、任意の単一の部位の刺激の場合よりも低かった。この試験からのデータが下記の表1に概要を示され、この刺激の識別閾値(differential stimulation thresholds )のパターンにより、環状のリング内の異なる部位を刺激することが電流を脳内で誘導することが実証される。
【0053】
図18A〜18Cは、リードが電場電位を記録でき、異なる記録部位が異なる電位を記録することを実証する。記録は、上記に論じたような図16に示される同じリードから、同じ配置で得られた。反応は、目の前で閃光を揺らすことによる視覚経路の感覚刺激によって引き起こされた。図18Aでは、トレースT1が記録部位38から記録され、図18Bでは、トレースT2が記録部位39から記録される。これらのトレースのスペクトル分析は、180Hzおよび300Hzでの振動を示し、それは電力網との意図しない結合から生じるものと考えられる。クリスチャーノ・フィッツジェラルド・フィルタ(Christiano-Fitzgerald filter)がこれらの周波数の付近の信号エネルギーを除去するために加えられ、図18A〜18Cに示されるようにT1aおよびT2aで表される。図18Cのトレース△は、差T1a−T2aである。トレースは同様に見えるが、それらが主に電気的なクロストークから生じる場合のように釣り合っていない。位置Aでは、T1/T1aは、T2/T2aと比較してより持続的な陽性を有する。位置Bでは、トレースの陽性T1/T1aおよびT2/T2aがほぼ同一である。位置Bと位置Cの間の三相波の振幅は、トレースT1/T1aおよびT2/T2aにおいて大幅に異なる。この記録された電位の振幅は、リードの位置を反映して、最適に記録された電場電位の振幅に比べて幾分少ない。
【0054】
図19A〜19Cは、灰白質の中心での配置の自発的活動の電場電位の特徴をリードが記録できることを実証する。記録は図18A〜18Cでの記録が得られる部位に対して3mm背部の部位から得られた。この記録の振幅は電力網からの干渉の振幅よりもはるかに大きかったので、Christiano−Fitzgeraldフィルタリングが必要でなかった。図19AのトレースT1は記録部位38から記録され、図19BのトレースT2は記録部位39から記録される。図19Cのトレース△は、差T1−T2である。トレースは、電場電位の記録の時間経過および振幅の特徴によって同様に見える。差のトレース△は、活動電位波形の0.5から3.5msecの継続時間を伴ういくつかの非定常波、および数十ミリボルトの振幅の特徴を有する。図18A〜18Cに示される記録と共に、これらのデータは、図16に示されるようなリードが白質および灰白質からの電場電位を記録でき、適切な信号処理によって活動電位スパイクも記録できることを実証する。
【0055】
【表1】
【0056】
理解を明確にするためおよび例として、例示の実施形態をある程度詳細に説明してきたが、様々な追加の修正、改作、および変更は当業者には明らであることができる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0057】
10 可撓性プローブ本体; 20a 多接点接続端子; 30a,30b プローブ;33a、33b、33c、34a、34b、34c、35a、35b、35c、36a、
36b、36c 刺激部位; 37、38、39 記録バンド; 40 ポート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を刺激およびモニタする装置であって、
近位端および遠位端を有する細長い部材と、
前記細長い部材に沿って軸方向に並べられ、前記遠位端の付近に配置された複数の環状の刺激電極にして、組織内に電流を流すようになされ、少なくとも1つの環状の刺激電極が少なくとも3つの独立の刺激点を有する環状の刺激電極と、
前記刺激電極に隣接して配置された複数の記録電極にして、局所的な組織の電位を測定するようになされた複数の記録電極と、
前記環状の刺激電極と前記記録電極とに接続された複数の導電体とを備える装置。
【請求項2】
前記近位端の付近の前記細長い部材の部分が可撓性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記遠位端の付近の前記細長い部材の部分が剛性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の記録電極のうちの少なくともいくつかが環状の刺激電極の間に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記組織が脳組織である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記細長い部材の前記近位端と遠位端の間に軸方向に配置された管腔をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記管腔がガイドワイヤまたはスタイレットを受けるようになされた、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記細長い部材の前記遠位端の付近の1つまたは複数のポートをさらに備え、前記ポートが前記管腔と連通し、治療的な薬剤を組織へ送り、および/または前記組織から化学物質を受けるようになされた、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記治療薬剤がレボドパを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ポートが前記環状の刺激電極の間に配置される、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記ポートのうちの少なくとも1つが、前記細長い部材の前記遠位端に配置された、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記ポートが、その選択的な動作可能性を可能にするようになされたゲート部材を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記ゲート部材が半透明の薄膜である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ゲート部材が化学的に制御される、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記ゲーティング機構が化学的に反応性のヒドロゲルである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記管腔に配置された刺激電極をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項17】
前記管腔に配置された前記刺激電極がワイヤである、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記細長い部材の前記遠位端に刺激電極をさらに備え、前記刺激電極が前記組織に電流を流すようになされた、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記複数の導電体が前記細長い部材に沿って螺旋状に巻かれた、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
第1の組の前記導電体が刺激電極と接続され、第2の組の前記導電体が前記記録電極と接続され、前記第1の組の導電体が前記第2の組の導電体の周囲に巻かれた第1のピッチを有する螺旋を形成し、前記第2の組の導電体も第2のピッチを有する螺旋を形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記第1のピッチが前記第2のピッチと異なる、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記導電体が、ステンレス鋼、MP35、およびタングステンからなる群から選択される材料からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記複数の環状の刺激電極が磁気共鳴映像と適合性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記複数の導電体のうちの少なくともいくつかと接続され、前記細長い部材の前記近位端の付近に配置された多接点接続端子をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記記録電極が前記細長い部材の周囲に周縁に配置された、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記記録電極が円形の表面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
組織を治療する方法であって、
組織にプローブを埋込みをするステップにして、前記プローブが複数の記録電極、および複数の環状の刺激電極を有し、前記環状の刺激電極の少なくとも1つが少なくとも3つの独立の刺激点を有するステップと、
前記組織を前記環状の刺激電極からの治療電流によって刺激するステップと、
局所的な組織の電位を前記刺激に応答して前記記録電極によって測定するステップと、
前記刺激の効果に関するフィードバックを行うために前記測定された局所的な組織の電位を分析するステップと、
前記フィードバックに応答して前記刺激を調整するステップと含む方法。
【請求項28】
前記組織が脳組織である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組織を治療薬剤によって刺激するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記プローブをアンカーによって前記組織に解放可能に連結するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記プローブが磁気共鳴映像と適合性を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記刺激の効果に基づいてフィードバックを行うために、前記組織から化学物質を集めるステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記プローブに配置された1つまたは複数のポートを選択的に開閉するために、ゲート部材を制御するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記ポートが、前記組織への治療薬剤の送出を制御し、および/または前記組織から化学物質を受け取るようになされた、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
組織を治療するシステムであって、
局所的な組織の電位を測定するようになされた複数の記録電極、および複数の環状の刺激電極を有する刺激および記録プローブにして、前記環状の刺激電極のうちの少なくとも1つが少なくとも3つの独立の刺激点を有し、前記刺激電極が組織内に電流を流すようになされた刺激および記録プローブと、
前記プローブに電気的刺激を与えるようになされた埋込み可能および制御可能なパルス発生器と
を備えるシステム。
【請求項36】
治療される前記組織が脳組織である、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記プローブを患者の頭部に取外し可能に固定するようになされた定着デバイスをさらに備える、請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記パルス発生器を制御するようになされた患者プログラマをさらに備える、請求項35に記載のシステム。
【請求項39】
前記記録電極および刺激電極と電気的に接続された多接点コネクタをさらに備える、請求項35に記載のシステム。
【請求項40】
前記組織プローブが磁気共鳴映像と適合性を有する、請求項35に記載のシステム。
【請求項1】
組織を刺激およびモニタする装置であって、
近位端および遠位端を有する細長い部材と、
前記細長い部材に沿って軸方向に並べられ、前記遠位端の付近に配置された複数の環状の刺激電極にして、組織内に電流を流すようになされ、少なくとも1つの環状の刺激電極が少なくとも3つの独立の刺激点を有する環状の刺激電極と、
前記刺激電極に隣接して配置された複数の記録電極にして、局所的な組織の電位を測定するようになされた複数の記録電極と、
前記環状の刺激電極と前記記録電極とに接続された複数の導電体とを備える装置。
【請求項2】
前記近位端の付近の前記細長い部材の部分が可撓性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記遠位端の付近の前記細長い部材の部分が剛性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の記録電極のうちの少なくともいくつかが環状の刺激電極の間に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記組織が脳組織である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記細長い部材の前記近位端と遠位端の間に軸方向に配置された管腔をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記管腔がガイドワイヤまたはスタイレットを受けるようになされた、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記細長い部材の前記遠位端の付近の1つまたは複数のポートをさらに備え、前記ポートが前記管腔と連通し、治療的な薬剤を組織へ送り、および/または前記組織から化学物質を受けるようになされた、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記治療薬剤がレボドパを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ポートが前記環状の刺激電極の間に配置される、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記ポートのうちの少なくとも1つが、前記細長い部材の前記遠位端に配置された、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記ポートが、その選択的な動作可能性を可能にするようになされたゲート部材を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記ゲート部材が半透明の薄膜である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ゲート部材が化学的に制御される、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記ゲーティング機構が化学的に反応性のヒドロゲルである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記管腔に配置された刺激電極をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項17】
前記管腔に配置された前記刺激電極がワイヤである、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記細長い部材の前記遠位端に刺激電極をさらに備え、前記刺激電極が前記組織に電流を流すようになされた、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記複数の導電体が前記細長い部材に沿って螺旋状に巻かれた、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
第1の組の前記導電体が刺激電極と接続され、第2の組の前記導電体が前記記録電極と接続され、前記第1の組の導電体が前記第2の組の導電体の周囲に巻かれた第1のピッチを有する螺旋を形成し、前記第2の組の導電体も第2のピッチを有する螺旋を形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記第1のピッチが前記第2のピッチと異なる、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記導電体が、ステンレス鋼、MP35、およびタングステンからなる群から選択される材料からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記複数の環状の刺激電極が磁気共鳴映像と適合性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記複数の導電体のうちの少なくともいくつかと接続され、前記細長い部材の前記近位端の付近に配置された多接点接続端子をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記記録電極が前記細長い部材の周囲に周縁に配置された、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記記録電極が円形の表面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
組織を治療する方法であって、
組織にプローブを埋込みをするステップにして、前記プローブが複数の記録電極、および複数の環状の刺激電極を有し、前記環状の刺激電極の少なくとも1つが少なくとも3つの独立の刺激点を有するステップと、
前記組織を前記環状の刺激電極からの治療電流によって刺激するステップと、
局所的な組織の電位を前記刺激に応答して前記記録電極によって測定するステップと、
前記刺激の効果に関するフィードバックを行うために前記測定された局所的な組織の電位を分析するステップと、
前記フィードバックに応答して前記刺激を調整するステップと含む方法。
【請求項28】
前記組織が脳組織である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組織を治療薬剤によって刺激するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記プローブをアンカーによって前記組織に解放可能に連結するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記プローブが磁気共鳴映像と適合性を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記刺激の効果に基づいてフィードバックを行うために、前記組織から化学物質を集めるステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記プローブに配置された1つまたは複数のポートを選択的に開閉するために、ゲート部材を制御するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記ポートが、前記組織への治療薬剤の送出を制御し、および/または前記組織から化学物質を受け取るようになされた、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
組織を治療するシステムであって、
局所的な組織の電位を測定するようになされた複数の記録電極、および複数の環状の刺激電極を有する刺激および記録プローブにして、前記環状の刺激電極のうちの少なくとも1つが少なくとも3つの独立の刺激点を有し、前記刺激電極が組織内に電流を流すようになされた刺激および記録プローブと、
前記プローブに電気的刺激を与えるようになされた埋込み可能および制御可能なパルス発生器と
を備えるシステム。
【請求項36】
治療される前記組織が脳組織である、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記プローブを患者の頭部に取外し可能に固定するようになされた定着デバイスをさらに備える、請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記パルス発生器を制御するようになされた患者プログラマをさらに備える、請求項35に記載のシステム。
【請求項39】
前記記録電極および刺激電極と電気的に接続された多接点コネクタをさらに備える、請求項35に記載のシステム。
【請求項40】
前記組織プローブが磁気共鳴映像と適合性を有する、請求項35に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【公表番号】特表2009−545402(P2009−545402A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522991(P2009−522991)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/074746
【国際公開番号】WO2008/016881
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(509032405)クレイニアル・メディカル・システムズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/074746
【国際公開番号】WO2008/016881
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(509032405)クレイニアル・メディカル・システムズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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