説明

脳循環状態検査装置及びそれを備えたストレス計

【課題】検出情報の信頼性を従来のものより向上させ、技術者負担を低減すると共に、高精度の脳循環状態の指標等を早期に且つ容易に得易くした脳循環状態検査装置及びそれを備えるストレス計を提供する。
【解決手段】この課題を解決するために、検査対象の脳循環状態を検出する検出部3と、前記検出部3からの検出情報から脳循環状態を指標化する指標化部7と、前記検出情報から外乱の影響を受けたものを特定する外乱特定部6と、を有し、前記外乱特定部6は、前記検出部3の検出動作に同期した出力値を取得すると共に、前記出力値が閾値9を超えた区間Sの検出情報を無効情報と定め、前記指標化部7は前記無効情報を除いた検出情報から脳循環状態を指標化するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳循環状態検査装置及びそれを備えたストレス計に関し、殊に、脳循環状態検査におけるノイズの軽減技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から非侵襲で脳循環状態を検査する脳循環状態検査装置のうち、医療関係者でなくても簡便に利用できるものとして、近赤外分光法(NIRS:Near Infrared Spectrometer)や脳波(EEG:Electroencephalogram)を用いた検査装置がある。NIRSを用いる装置は、例えば、照射プローブと検出プローブを備え、両プローブを検査対象者の頭部に配置し、検出プローブにより非侵襲で検出した検出情報の変化から脳活動に伴う脳循環状態の変化を検査している。詳しくは、照射プローブから照射され脳を介して検出プローブで受光された近赤外光から、脳を包含する毛細血管中のヘモグロビン量や酸化ヘモグロビン濃度等のヘモグロビンに由来する値を検出情報として得るものである。EEGを用いる装置は、例えば、検査対象者の頭部に配置する検出プローブを備え、検出プローブにより非侵襲で検出した頭皮の電位差等を検出情報として得るものである。そして、これら検査装置は、測定中に検査対象が頭部の動作(モーションアーチファクト)を行うと、外乱となって検出情報に影響を与えてしまい、検出情報の信頼性が低下してしまう。
【0003】
そこで、同じ測定を複数回行い検出情報の数を増やすことで外乱の影響を軽減させるものや、装置を操作する測定者等の技術者が測定後に外乱の有無を特定し外乱の影響を受けた検出情報の除去処理を行うものがある。この除去処理とは、技術者が、測定後に測定等で得た複数の情報の略全てを比較検討することで、外乱や外乱の影響を受けた検出情報を特定して信頼性の低い検出情報を取り除く作業であり、手間がかかると共に判定に専門知識を要する。そのため、NIRSとEEGと生体情報取得部の測定を同期させて行い、技術者による情報の比較検討作業を行い易くしたもの(特許文献1等参照)もある。
【0004】
また、脳循環状態検査装置を用いたストレス計として、検査対象に特定のタスクを課し脳循環状態の変化からストレス状態を評価するもの(特許文献2等参照)や、左脳半球と右脳半球の脳循環状態を比較してストレス状態を評価するもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−195326号公報
【特許文献2】特開2002−177282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の検査装置やストレス計は、頭部の動作等の外乱の影響を受けた検出情報を特定して除去や無効にする等の外乱の影響を受けた検出情報に対する処理手段を備えていないため、検出情報の信頼性が余り高くないものである。そのため、信頼性の余り高くない検出情報を用いて脳循環状態の指標化やストレス状態の評価を行っても、精度の高い指標や評価を得難いという問題がある。そして、精度を向上させるには技術者による除去処理が必要であるため、測定(検査)直後等の早期に信頼性(精度)の高い結果情報を得ることが難しいと共に、技術者負担が大きく、更に専門知識の無い者には行えないという問題がある。
【0007】
そこで、この事情に鑑み、検出情報の信頼性を従来のものより向上させ、技術者負担を低減すると共に、高精度の脳循環状態の指標等を早期に且つ容易に得易くした脳循環状態検査装置及びそれを用いたストレス計を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明の脳循環状態検査装置は、検査対象の脳循環状態を検出する検出部と、前記検出部からの検出情報から脳循環状態を指標化する指標化部と、前記検出情報から外乱の影響を受けたものを特定する外乱特定部と、を有し、前記外乱特定部は、前記検出部の検出動作に同期した出力値を取得すると共に、前記出力値が閾値を超えた区間の検出情報を無効情報と定め、前記指標化部は前記無効情報を除いた検出情報から脳循環状態を指標化するものであることを特徴とする。
【0009】
この脳循環状態検査装置として、前記外乱特定部が前記検出情報の微分値を前記出力値に用いるものであることが好ましい。
【0010】
この脳循環状態検査装置として、前記外乱特定部が前記検査対象の頭部に取り付けられる加速度計を備えると共に、前記加速度計の計測結果を前記出力値に用いるものであることが好ましい。
【0011】
この脳循環状態検査装置として、前記指標化部が酸化ヘモグロビン濃度で脳循環状態を指標化するものであることが好ましい。
【0012】
この脳循環状態検査装置として、前記指標化部が脳波の特定周波数帯域の最大パワースペクトル値で脳循環状態を指標化するものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明のストレス計は、これら脳循環状態検査装置のいずれかを備えたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような構成としたことで、検出情報の信頼性が向上し、技術者負担を低減することができ、更に脳循環状態の指標やストレス状態の評価の精度を向上できると共に、指標や評価を従来のものより早期に且つ容易に得易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】脳循環状態検査装置のNIRSを用いた例の、(a)構成ブロック図と、(b)測定状態の構成図である。
【図2】同上の縦軸を検出値とし横軸を測定時間とした検出情報の説明図である。
【図3】同上の縦軸を微分値とし横軸を時間とした出力値の説明図である。
【図4】検出情報の縦軸を酸化ヘモグロビン濃度に変換した(a)左脳半球と(b)右脳半球の説明図である。
【図5】同上の他例であり、(a)構成ブロック図と、(b)測定状態の構成図である。
【図6】同上の縦軸を可速度計の計測値とした出力値の説明図である。
【図7】脳循環状態検査装置のEEGを用いた例の構成ブロック図である。
【図8】同上の縦軸を脳波由来の値とし横軸を時間とした検出情報の説明図であり、(a)が右脳半球で(b)が左脳半球のものである。
【図9】同上の検出情報を縦軸をパワースペクトル値に横軸を周波数に変換した説明図であり、(a)が右脳半球で(b)が左脳半球のものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、脳循環状態検査装置1は、例えば、検査対象者の頭部11に照射した近赤外光から脳循環状態を検出するNIRS測定装置1aである。詳しくは、脳に近赤外光を照射する照射プローブ2aを有する光発生部2と、脳からの反射光を受ける検出プローブ3aを有し受光内容に応じて検出情報を出力する検出部3と、各種情報処理を行う中央演算部4と、からなっている。そして、照射プローブ2a及び検出プローブ3aは検査対象者の頭部11にゴム製のキャップ等の保持具10により保持されると共に、所定の間隔を空けて配置され、互いに対をなしている。
【0018】
更に、検出部3は図2に示すような検出値の経時変化を検出情報として中央演算部4に出力している。詳しくは、プローブと大脳皮質表面の間に位置する血管のうち、脳の大脳皮質表面の毛細血管中のヘモグロビン由来の値の変動を脳循環状態の検出情報としており、検出値には、血管中のヘモグロビン量等のヘモグロビン由来の値を用いている。そのため、検出値にはプローブと大脳皮質表面の間に位置する表層部血流等の他の血管中のヘモグロビン由来の値も含まれており、モーションアーチファクトの際に表層部血流の血流量が増加すると、この増加に伴う変動が外乱となる。そして、この表層部血流の血流量の変化に伴う検出値の変動は上記毛細血管の血流量の変化に伴う変動に比べて大きく、モーションアーチファクト発生時にはこの外乱の影響を受けて検出値の変動幅が大きくなる。
【0019】
また、中央演算部4は、光発生部2の光照射の開始や停止等の装置動作を制御すると共に、検出情報から外乱の影響を受けている情報を特定し且つ特定した情報以外の検出情報で検査対象の脳循環状態を指標化するものである。すなわち、中央演算部4は、装置動作を制御する制御部5と、検出情報から脳循環状態の指標を算出する指標化部7と、外乱の影響を受けた検出情報を特定する外乱特定部6と、を兼ねている。
【0020】
そして、外乱特定部6は、検出部3による検出動作中に、この動作と同期して所定の出力値を取得すると共に、取得した出力値が予め設定された閾値9を越えるか否かを判定することで、外乱の影響を受けている検出情報を特定している。なお、閾値9は、少なくともモーションアーチファクトを生じていない状態での最大出力値より大きく且つモーションアーチファクト中の最小出力値より小さければ、外乱特定部6で用いる出力値に応じて適宜、値を設定すればよい。
【0021】
ここで、検出部3による検出動作と同期して取得される出力値に検出値の微分値を用いた例で、中央演算部4による指標算出動作を説明する。
【0022】
中央演算部4に検出部3から検出情報が入力されると、外乱特定部6が検出情報から検出値を読み取ると共に各検出値の微分値を算出する。その後、外乱特定部6は、図3に示すように、算出した各微分値が、予め設定した閾値9を越えるか否かを判定して、閾値9を越える微分値があると、その微分値の測定時間(区間S)を読み取り、その区間Sを無効情報と定める。なお、本例では、閾値9を表層部血流の血流量の変化に伴う検出値の変動幅より小さく且つ大脳皮質表面の毛細血管の血流量の変化に伴う検出値の変動幅より大きい値に設定している。
【0023】
そして、外乱の影響を受けている区間Sが無効情報として特定されると、指標化部7が、無効情報を検出情報から除去して検出情報の信頼性を向上させると共に、信頼性の向上した残りの検出情報から脳循環状態の指標を算出する。
【0024】
このように、外乱特定部6が外乱の影響を受けた検出値を特定して無効情報に定めるため、技術者による外乱影響の特定及び除去作業を不要にでき、技術者負担を軽減することができる。そして、外乱特定部6により無効情報が定められることで、指標化部7は検出情報を指標算出に用いる際に、外乱影響を受けていない有効情報と、外乱影響を受けた無効情報と、を容易に区別することができる。更に、外乱特定部6が検出部3の検出動作に同期して得た出力値を予め設定された閾値9に比較して検出情報の有効無効を判定するため、測定中や測定直後等の早期に外乱の影響を受けた検出値を特定することができる。
【0025】
そのため、指標化部7が有効情報のみで構成した信頼性の高い検出情報を早期に且つ容易に得られ、脳循環状態の指標を従来のものより早期に且つ容易に得易くなっている。そして、指標化に用いる検出情報の信頼性が向上したことで、外乱の影響を受けた検出値を含む検出情報で脳循環状態を指標化する従来のものより、脳循環状態の指標精度を向上させることができる。
【0026】
更に、出力値に検出情報の微分値を用いたことで、微分演算を行う機能を外乱特定部6に付与するだけでよくなり、検査対象に対して測定や計測を行う手段を追加せずに済み、簡素に指標精度を向上することができる。
【0027】
また、指標算出の変形例として、指標化部7が検出情報を所定の情報に変換すると共に、変換後の情報から脳循環状態を指標化するものもある。詳しくは、検出部3からヘモグロビン量等を検出値とした検出情報が中央演算部4に出力されると共に、外乱特定部6が検出動作と同期して取得した出力値から無効情報(区間S)を特定する。そして、指標化部7は予め記憶設定された計算式やデータベースを用いて、検出情報を、図4に示すような酸化ヘモグロビン濃度(酸素化ヘモグロビン濃度)を縦軸とし測定時間を横軸とした酸化Hb情報に変換する。変更後、指標化部7は無効情報から酸化Hb情報中の対応した情報を除去して、残りの酸化Hb情報から酸化ヘモグロビン濃度の平均値を算出し、算出された酸化ヘモグロビン濃度の平均値が脳循環状態の指標となる。
【0028】
そのため、本例では、技術者負担の軽減及び指標に用いる情報の信頼性の向上に加えて、脳循環状態の指標を定量化して得られるものとなっている。もちろん、検出部3に酸化Hb情報を変換させて変換後の情報を検出情報として出力させて、指標化部7による検出情報の変換処理を省いてもよい。
【0029】
また、他例として、例えば、加速度計8を保持具10であるキャップのプローブ近傍に取り付け、外乱特定部6で用いる出力値に加速度計8の計測値を用いることができる。詳しくは、外乱特定部6が、頭部11の動きに応じて計測値を出力する加速度計8と、計測値が閾値9を越えるか否かを判定すると共に判定結果に基づき検出情報から無効情報を特定する情報処理部(特に図示しない)と、からなっている。そして、情報処理部を中央演算部4が兼ねており、加速度計8は、図5に示すように、脳の前頭前野側である頭部11の前方側に配置されると共に、検出部3による検出に同期して計測を行うものであり、計測値が出力値となっている。そのため、モーションアーチファクトを加速度計8で略直接検知している。
【0030】
すなわち、図6に示すように、計測値が閾値9を越えると、その閾値9を越えた区間Sの検出値を無効情報に定めて、無効情報を除く検出情報から脳循環状態の指標を算出するものである。そして、閾値9は予め設定された値であり、例えば、検出値に影響を与えるほどのモーションアーチファクトが行われたと判断可能な値と略同じあるいは判断可能な値より小さく且つ有効情報を無効情報と誤認することがない程度に大きい値になっている。
【0031】
このように、出力値に加速度計8の計測値を用いたことで、モーションアーチファクトの検知精度が向上し、中央演算部4によるモーションアーチファクトの判定が容易になると共に判定精度を向上させることができる。そのため、無効情報除去後の検出情報の信頼性が高くなり、信頼性の向上した検出情報を用いて指標化でき、脳循環状態の指標精度を従来のものより向上させることができる。
【0032】
また、更に他例として、EEG測定装置1bを用いて脳波を検出し、検出した脳波の情報から脳循環状態を推定する脳循環状態検査装置1がある。詳しくは、図7に示すように、検出部3が検出プローブ3aを備え、脳波由来の値を検出結果を検出情報として中央演算部4に出力し、中央演算部4が脳循環状態を指標化するEEG測定装置1bである。
【0033】
このものとして、例えば、検出プローブ3aが頭皮に接触させて取り付ける電極を有しており、検出部3は、図8に示すように、頭皮上の微弱な電流や電位差等を脳波由来の値として、その経時変化を検出している。そして、モーションアーチファクト発生時には筋電等の筋肉の動作由来の変動が検出情報に影響を与える外乱であり、この外乱の変動による影響は脳波由来の値の変動より大きい。
【0034】
また、中央演算部4は検出値の微分値や加速度計8の計測値等の検出情報と同期した出力値を取得して、各出力値が閾値9を越えるか否かを判定した後、閾値9を越えている区間Sの検出値を無効情報と定める。そして、無効情報の特定が済むと、無効情報の区間Sの検出値を検出情報から除去し、除去した残りの検出情報に対して高速フーリエ変換等を行い、図9に示すような周波数毎のパワースペクトル値に変換する。更に、中央演算部4は、変換後の情報から特定周波数帯fにおける最大パワースペクトル値Pを読み取り、その値を脳循環状態の指標とする。
【0035】
このように、脳波由来の値を検出すると共に、出力値に基づいて無効情報を特定して検出情報から除去することで、検出情報の信頼性が向上し、検出情報から算出される脳循環状態の指標の精度を向上することができる。そして、無効情報の特定及び検出情報からの除去を中央演算部4が行うため、技術者負担を軽減することができる。そのため、脳循環状態の指標を従来のものより早期に且つ容易に得易くなっている。なお、EEGを用いた脳循環状態検査装置1は例示の構成に限らず、検出部3が予め変換不要な検出情報を出力するものや、指標化部7が特定周波数帯fのパワースペクトル値の平均値を算出することで指標化するもの等であってもよい。
【0036】
また、指標化部7による指標化は、前述に例示した酸化ヘモグロビン濃度の平均値や最大パワースペクトル値P等の定量化したものに限らず、例えば、脳循環状態の変化の有無や、その増減である変化動向の向き等の定性化したものであってもよい。そして、検査対象は人体に限らず、検出部3で脳循環状態を検出可能であれば、動物であってもよい。ましてや、脳循環状態検査装置1は例示に限らず、外乱特定部6を備えると共に簡便に利用可能であれば、脳磁図、PET(ポジトロン断層撮影法)、fMRI(機能的核磁気共鳴法)、SPECT(単一光子放射断層撮影法)等を用いてもよい。
【0037】
また、外乱特定部6を有した脳循環状態検査装置1を備えたストレス計の例を以下に説明する。なお、前述の脳循環状態検査装置1の例で説明した構成と重複する構成の詳細な説明は省略する。
【0038】
本例のストレス計は、例えば、脳循環状態を検出すると共に無効情報を定めた後、無効情報を除去した検出情報からストレス状態を指標化して、ストレス反応における左脳に対する右脳の優位性からストレス評価を行うものである。
【0039】
詳しくは、検出部3が左脳半球と右脳半球夫々の脳循環状態を検出し、外乱特定部6が外乱の影響を受けている区間Sを特定すると共に、その区間Sを無効情報に定める。そして、指標化部7が無効情報を除いた夫々の検出情報からストレス量Stを算出してストレス状態を指標化する。
【0040】
このストレス量Stの算出方法として、例えば、A式やB式のように、右脳半球の前頭前の脳循環状態DRightから左脳半球の前頭前野の脳循環状態DLeftを減算あるいは除算して、その算出結果をストレス量Stとすることができる。そして、DRight及びDLeftは無効情報を除いた脳循環状態の検出情報に基づき、例えば、検出情報から算出した所定の測定時間における平均値や最大値等の絶対値である。なお、以下の式におけるKは比例定数である。
A式:St=K(DRight−DLeft
B式:St=K(DRight/DLeft
【0041】
このように、外乱特定部6により指標化に用いる検出情報の信頼性を向上できると共に、技術者負担を軽減できるため、ストレス評価の指標を容易に且つ早期に得易くなると共に指標精度が従来のものより向上している。更に、A式やB式を用いたことで、ストレス状態をストレス量Stとして定量化でき、タスクを用いなくてもストレス評価を行うことができる。そのため、タスクに対する嗜好等の心理的要因による外乱の発生を抑制でき、安定してストレス状態を計り易いストレス計になっている。
【0042】
また、ストレス評価に減算を用いるものでは、C式のように、減算結果を左右の脳の値の和算結果で除算すると共にその除算結果をストレス量Stとすることで、検査対象のストレス状態を個体間で比較可能なストレス量Stに指標化することもできる。
C式:St=K(DRight−DLeft)/(DRight+DLeft
【0043】
なお、ストレス計は評価結果を外部に出力する出力部を備えており、出力部は、例えば、文字や画像の表示あるいは音で外部に報知する報知端末や、外部の記憶手段や演算手段に評価結果を伝達する端末である。
【0044】
また、ストレス計の他例として、検査対象に演算課題等のタスクを与え、タスクを与える前後の脳循環状態を比較して、タスク付与前後の脳循環状態の変化からストレス評価を行うものがある。なお、前述の各例で説明した構成と重複する構成の詳細な説明は省略する。
【0045】
このものとして、例えば、指標化部7が無効情報を除いた検出情報からタスク付与前後における脳循環状態の変化の有無や変化動向の向き等に定性化することで、検査対象へのタスク付与によるストレス評価を指標化するものがある。そして、外乱特定部6により指標化に用いる検出情報の信頼性を向上できると共に、技術者負担を軽減できるため、ストレス評価の指標を容易に且つ早期に得易くなると共に指標精度が従来のものより向上している。
【符号の説明】
【0046】
1 脳循環状態検査装置
3 検出部
6 指標化部
7 外乱特定部
8 加速度計
9 閾値
11 頭部
S 閾値を越えている区間
f 特定周波数帯
P 最大パワースペクトル値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の脳循環状態を検出する検出部と、前記検出部からの検出情報から脳循環状態を指標化する指標化部と、前記検出情報から外乱の影響を受けたものを特定する外乱特定部と、を有し、前記外乱特定部は、前記検出部の検出動作に同期した出力値を取得すると共に、前記出力値が閾値を超えた区間の検出情報を無効情報と定め、前記指標化部は前記無効情報を除いた検出情報から脳循環状態を指標化するものであることを特徴とする脳循環状態検査装置。
【請求項2】
前記外乱特定部が前記検出情報の微分値を前記出力値に用いるものであることを特徴とする請求項1に記載の脳循環状態検査装置。
【請求項3】
前記外乱特定部が前記検査対象の頭部に取り付けられる加速度計を備えると共に、前記加速度計の計測結果を前記出力値に用いるものであることを特徴とする請求項1に記載の脳循環状態検査装置。
【請求項4】
前記指標化部が酸化ヘモグロビン濃度で脳循環状態を指標化するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の脳循環状態検査装置。
【請求項5】
前記指標化部が脳波の特定周波数帯域の最大パワースペクトル値で脳循環状態を指標化するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の脳循環状態検査装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の脳循環状態検査装置を備えるものであることを特徴とするストレス計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−5717(P2012−5717A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145669(P2010−145669)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】