説明

脳活動計測装置のプローブ取り付け用治具

【課題】 被検者の頭皮に対して作用するプローブ先端の押圧力を必要以上に大きくしないで、被検者に対して痛みや、押圧痕を与えないようにしながら、プローブ位置がずれないように、しかも、簡単に装着できる脳活動計測装置のプローブ取り付け用治具を提供することである。
【解決手段】 複数のプローブ1を固定するためのプローブ板6と、このプローブ板の一方の面に設けた伸縮自在の帯状部材12とからなり、上記プローブ板は、プローブを貫通させて固定する複数の固定孔7を備え、上記帯状部材は、上記プローブ板の固定孔に対応する貫通孔を有するメッシュ部13と、上記帯状部材を被検者の頭部外周にまわして両端を連結するための連結手段16a,16bと、上記メッシュ部の周囲であってプローブ板と反対側の面に設けたスペーサー17とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脳の活動を計測するプローブを被検者に取り付けるための脳活動計測装置のプローブ取り付け用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の脳の活動状態を測定する方法として、頭部に近赤外線を照射し、脳で反射した近赤外線を分析して、脳の血流状態を測定する方法がある。
この方法では、近赤外線を照射する照射の光ファイバおよび反射光の受光用光ファイバを頭部に取り付ける必要がある。
具体的には、各光ファイバの先端のプローブ1(図4)を図5に示すようなプローブ板6に固定して、このプローブ板6を被検者の頭部にセットする。このプローブ板6は、ゴム製の板で、複数の貫通孔7を備えているが、この貫通孔7にプローブ1を貫通させて固定する。
上記プローブ1は、図4に示すように、筒本体2内に図示しないスプリングを設け、そのスプリングの弾性力を作用させるとともに、軸方向に移動可能な可動部3を備えている。そして、測定装置に連結する光ファイバ5を上記筒本体2および可動部3内に通し、プローブ1の先端部4に導いている。
【0003】
また、プローブ板6の貫通孔7の周囲には、図6に示す金属製のリング部材8を備えている。このリング部材8の側面には、複数の貫通するビス孔9を形成するとともに、このビス孔9にかみ合うビス10を設けている。そして、上記貫通孔7にプローブ1を挿入し、プローブ1の先端部4をプローブ板6から突出させた状態で、上記ビス10を上記筒本体2の側面に向かってねじ込み、複数のビス10によってプローブ1をプローブ板6に固定するようにしている。
上記のようにして、複数のプローブ1を固定したプローブ板6には、複数の紐11を取り付け、これらの紐11を使ってプローブ板6を被検者の頭部に取り付けるようにしている。そして、上記プローブ板6を被検者の頭部に取り付けたときには、プローブ1の先端部4は、プローブ1内部のスプリングの弾性力に抗して筒本体2側へ押し込まれ、反対に、プローブ1の先端部4の端面が上記弾性力によって被検者の頭皮に押し付けられるようにしている。
【特許文献1】特開2003−322612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、被検者の頭部にプローブ板6取り付ける際には、測定個所であるプローブ1の先端部4の位置がずれないように、プローブ板6に設けた紐11をきつく引っぱって結ばなければならない。その結果、プローブ1のプローブ板6から突出した部分を、被検者の頭によってプローブ板6側に押し込むような状態になる。
このような状態では、被検者の頭皮には、上記スプリングによる弾性力が、大きな押圧力として作用し、プローブ1の位置ずれは発生し難くなる。しかし、被検者は、測定中にプローブ1の先端部4で強く頭皮を押し続けられるので、頭が痛むという問題が発生する。
【0005】
また、上記プローブ1を強く押し付けた場合には、プローブ1の先端部4に押された痕が頭皮に残ってしまう。プローブ1を額などに装着した際に、先端部4による押圧痕がひどいと、痛みだけでなく見た目も悪いので、測定後すぐに外出できないという問題もあった。
だからといって、紐11を緩めてプローブ板6を弱く固定したのでは、プローブ1の設定位置がずれてしまって、正確な計測ができないこともある。
一方、上記プローブ板6を取り付ける際に、プローブ1の位置ずれが起こらないで、しかも、頭皮に対する押圧力が強すぎない程度に紐11の引っぱり強さを調節することは非常に難しい。
【0006】
この発明の目的は、被検者の頭皮に対して作用するプローブ先端の押圧力を必要以上に大きくしないで、被検者に対して痛みや、押圧痕を与えないようにしながら、プローブ位置がずれないように、しかも、簡単に装着できる脳活動計測装置のプローブ取り付け用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、脳活動計測装置に用いる光ファイバの先端に接続したプローブを、被検者の頭部に取り付けるためのプローブ取り付け用治具であって、複数のプローブを固定するためのプローブ板と、このプローブ板の一方の面に設けた伸縮自在の帯状部材とからなり、上記プローブ板は、プローブを貫通させて固定する複数の固定孔を備え、上記帯状部材は、上記プローブ板の固定孔に対応する貫通孔を有するメッシュ部と、上記帯状部材を被検者の頭部外周にまわして両端を連結するための連結手段と、上記メッシュ部の周囲であってプローブ板と反対側の面に設けたスペーサーとを備えた点に特徴を有する。
【0008】
第2の発明は、第1の発明を前提とし、上記スペーサーを、クッション性を有する材質で構成するとともに、その厚みを、上記貫通孔から突出させるプローブ先端の突出長さと同等にした点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
第1、第2の発明によれば、被検者の頭皮に対して作用するプローブ先端の押圧力を必要以上に大きくしないで、被検者に対して痛みや、押圧痕を与えない状態で、プローブを取り付けることができる。
しかも、伸縮自在の帯状部材によって、プローブ位置がずれないように簡単に装着できる。
第2の発明によれば、スペーサーからのプローブ先端部の突出長さをわずかにすることができる。そのため、プローブによる押圧力を弱くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1〜図3に、この発明の一実施形態を示す。
図1に示すように、この発明のプローブ取り付け用治具は、プローブ板6と帯状部材12とからなる。ここで用いるプローブは、上記従来例で説明した図4に示すプローブ1と同じものである。
また、プローブ板6も、図5に示した従来例のプローブ板6と全く同じものであり、ゴム製など、装着時に被検者の頭部のカーブに合わせて多少変形できるようにしている。そして、図6に示すリング部材8の内周とプローブ板6に形成した貫通孔7がこの発明の固定孔を構成している。そして、このリング部材8と貫通孔7にプローブ1を通し、ビス10をプローブ1の筒本体2に押し付けることによってプローブ1を固定する点は、従来例と同様である。
【0011】
上記帯状部材12は、中央にメッシュ部13を備え、その枠部14の両側にベルト15a、15bを連続させた部材である。メッシュ部13は、伸縮性のある糸で折られたメッシュで、その網目がプローブ1の先端部4を挿入するための貫通孔に相当する。
なお、図1では、プローブ板6と帯状部材12とを離して表しているが、使用時にはプローブ板6を帯状部材12上に重ねて、図示しない紐などで結合する。両者の結合はプローブ板6にプローブ1を固定してから行ってもよいし、予め結合したものにプローブ1を固定するようにしてもよい。
【0012】
上記ベルト15a,15bは、長さ方向に伸縮性のある素材で形成され、その端部には、この発明の連結手段である面ファスナー16a,16bを取り付けている。
さらに、上記帯状部材12の、枠部14の一方の面には、スペーサー17を設けている。このスペーサー17は、ウレタンフォームなどクッション性のある材料で形成し、上記枠部14に沿って取り付けたものである。ただし、上記スペーサー17のクッション性は、被検者の頭部に接触したときに多少変形するようにするためのもので、その厚みTが大きく変わることはない。
そして、このスペーサー17の厚みTを、図2に示すように、上記プローブ板6に固定したプローブ1の先端部4の突出長さLと同等にしている。実際には、プローブ板6にプローブ1を取り付ける際に、スペーサー17の厚みTと同等となるように、先端部4を突出させてビス10によって固定するようにすればよい。
【0013】
上記のようにして、プローブ板6と帯状部材12とを一体化した治具に複数のプローブ1を固定したら、それを被検者の頭部に装着する。上記プローブ板6を計測したい個所、例えば額の上に合わせて、両側のベルト15a,15bを回し、後頭部で面ファスナー16a,16bを結合する(図3参照)。このとき、プローブ1の先端部4が、筒本体2側にわずかに押し込まれる程度にベルト15a,15bを引っぱり気味にすると、先端部4が頭部に押し付けられることになり、プローブ1の位置がずれることがない。
【0014】
ただし、この実施形態では、被検者の頭部とプローブ板6との間にスペーサー17が介在しているので、プローブ1の先端部4が、従来のように必要以上に押し縮められることがない。また、この治具による頭部への締め付け力は、先端部4だけでなく上記スペーサー17や、ベルト15a,15b全体で作用する。従って、先端部4の端面に、大きな押圧力が集中して被検者の頭皮を押圧する心配がない。
そのため、被検者は、計測中に頭が痛くなることもないし、計測後に押圧痕が残ったりすることもなくなる。
【0015】
しかも、上記帯状部材12全体が伸縮性を備えているため、ベルト15a,15bをやや引き伸ばした状態で上記面ファスナー16aと16bとを結合すれば、手を離して上記ベルト15a,15bの伸びが戻っても、プローブ1の位置がずれるほど緩むことがない。つまり、この発明の治具を用いれば、プローブ1を、その位置がずれないように簡単に取り付けることができる。
【0016】
なお、上記実施形態では、スペーサー17の厚みTを、プローブ1の先端部4の、プローブ板6からの突出長さLと同等としたが、これに限らない。スペーサー17の厚みTによって、スペーサー17からの先端部4の突出長さを調整し、押圧力を調整することもできる。
また、上記実施形態では、スペーサー17は枠部14に設け、メッシュ部13の周囲を囲っているが、メッシュ部13の周囲に不連続に配置してもかまわないし、メッシュ部13の内部に設けてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明のプローブ取り付け用治具の斜視図である。
【図2】この発明のプローブ取り付け用治具にプローブを取り付けた状態の部分断面図である。
【図3】被検者がプローブ取り付け用治具を装着した状態を示した模式図である。
【図4】脳活動計測装置のプローブの正面図である。
【図5】プローブ板の斜視図である。
【図6】図5の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0018】
1 プローブ
4 先端部
5 光ファイバ
6 プローブ板
7 貫通孔
8 リング部材
12 帯状部材
13 メッシュ部
14 枠部
15a,15b ベルト
16a,16b 面ファスナー
17 スペーサー
T 厚み
L 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳活動計測装置に用いる光ファイバの先端に接続したプローブを、被検者の頭部に取り付けるためのプローブ取り付け用治具であって、複数のプローブを固定するためのプローブ板と、このプローブ板の一方の面に設けた伸縮自在の帯状部材とからなり、上記プローブ板は、プローブを貫通させて固定する複数の固定孔を備え、上記帯状部材は、上記プローブ板の固定孔に対応する貫通孔を有するメッシュ部と、上記帯状部材を被検者の頭部外周にまわして両端を連結するための連結手段と、上記メッシュ部の周囲であってプローブ板と反対側の面に設けたスペーサーとを備えたことを特徴とする脳活動計測装置のプローブ取り付け用治具。
【請求項2】
上記スペーサーを、クッション性を有する材質で構成するとともに、その厚みを、上記貫通孔から突出させるプローブ先端の突出長さと同等にしたことを特徴とする請求項1に記載の脳活動計測装置のプローブ取り付け用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−149611(P2006−149611A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343855(P2004−343855)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】