説明

腐食をオンラインでモニターするためのシステム及び方法

【課題】圧力容器の腐食をオンラインでモニターするためのシステムと方法が望まれる。
【解決手段】第1及び第2の電極40は圧力容器12の壁28内で互いに絶縁され、圧力容器12内の腐食性の環境に曝露され得る。また、第1及び第2の電極40は、これらの電極40の間に電位差が存在する場合第1の電極40と第2の電極40との間に電流が流れるように電気的に結合され得る。そして、これらの電極40間の電位差及び/又はその間に流れる電流を測定し解析して、圧力容器12に対する矯正処置をいつ実行するべきかを決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、一般に腐食のモニターに関し、特に圧力容器の腐食をオンラインでモニターするためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】

電気化学的腐食(電食)は、金属原子が酸化され電子を失う過程である。腐食の業界用語で、金属原子が電子を失う場所はアノードと呼ばれ、電子が移される場所はカソードと呼ばれる。母材金属内の局部的腐食には、非腐食性のカソード領域から分離された腐食性の高いアノード領域の創成が伴う。そして、母材金属がアノードで酸化されてアノード領域に点食が形成されると、そこに残された電子はカソードに流れる。この電子の流れは本質的に電気回路を形成する。従って、回路が閉じ、アノードとカソードとの間に電位差が存在すると、アノードとカソードの間に電流が流れる。
【0003】
ガス化は、石炭のような炭化水素供給原料を合成ガスに変換する部分酸化過程であり、この合成ガスはその後よりクリーンでより環境に優しい発電手段として使用できる。通例、このガス化過程は、ガス化ユニットといわれることが多いガス化機で行われる。ガス化機内で、炭化水素供給原料が高圧加熱下で酸素及び蒸気と混合されると化学反応が起こる。例えば、石炭のような供給原料は、ガス化機内で圧力と熱により化学的に分解され、合成ガスの主成分である水素と一酸化炭素の両方が生成する化学反応が起こり得る。この合成ガスは次いで洗浄され、電気を発生させるために、統合ガス化複合サイクル(IGCC)発電所の複合サイクルタービンシステムのようなタービンシステムに供給することができる。
【0004】
ガス化過程中、様々な腐食性の作用物質がガス化機内で取り扱われる。例えば、塩化アンモニウム、硫化水素及び塩化水素のような極めて腐食性のガスがガス化過程中に生成することが多い。これらの高温の腐食性ガスはガス化機全体に拡散し、特に、ガス化機の圧力容器の内壁と接触する。多くの場合、圧力容器の材料の制約のために、容器の壁表面温度は腐食性のガスの多くのガス状の塩の露点より低い。その結果、容器の壁と接触する腐食性のガスが凝縮し、壁面から滴下する。これらの凝縮するガス状の塩及びその他の腐食性物質は容器の壁を連続的に被覆し、その結果圧力容器の腐食が起こり得る。
【0005】
現在のところ、化学反応器の容器のような、高温腐食に曝露される殆どの工業設備をモニターする最良の手段の1つはその設備を停止させ検査することである。ガス化機の場合、休止時間は非常に高価となる可能性がある。さらに、検査には、ガス化機の少なくとも一部分の解体を必要とすることが多く、これにはさらに多くの休止時間と費用がかかる。ガス化機又はIGCCの技師はガス化機の幾つかの作動パラメーターを調節するといった他の選択肢も利用可能であるかもしれないが、この処置をいつ行うべきか予測するのは非常に困難であることが多い。従って、調節をあまりに頻繁に行っても行わなくても不要な出費がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】

【特許文献1】米国特許第7309414号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、圧力容器のような金属部品の腐食をオンラインでモニターするためのシステム及び方法は当該技術で歓迎されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の様々な態様及び利点は、一部は以下の説明で示され、或いは以下の説明から明らかになり得るか、又は本発明の実施により分かるであろう。
【0009】
1つの態様において、本主題は、圧力容器の腐食をオンラインでモニターする方法を提供する。この方法は一般に、第1の電極及び第2の電極の一部分をその圧力容器内の腐食性の環境に曝露することを含む。これらの第1及び第2の電極は圧力容器の壁に配置され、絶縁材料により互いに絶縁されている。さらに、第1及び第2の電極は電気的に結合されていて、第1の電極と第2の電極との間に電位差が存在するとき、第1の電極と第2の電極との間に電流が流れるようになっている。また、この方法は、第1の電極と第2の電極との間の電位差及び/又はその間に流れる電流を測定し解析して圧力容器の腐食特性を予測することも含んでいる。さらに、この方法は、圧力容器の予測された腐食特性に基づいて、圧力容器に対する矯正処置をいつ実行するべきかを決定することを含んでいる。
【0010】
別の態様において、本主題は、圧力容器の腐食をオンラインでモニターするためのシステムを提供する。このシステムは、圧力容器内に配置された腐食感知デバイスを含んでいる。この腐食感知デバイスは、一般に、絶縁材料内で互いに絶縁された第1の電極と第2の電極を含んでいる。これらの第1及び第2の電極は、第1及び第2の電極の各々の一部分が圧力容器内の腐食性の環境に曝露されるように、腐食感知デバイス内に配置されている。また、第1及び第2の電極は、これらの第1及び第2の電極間に電位差が存在するとき、第1の電極と第2の電極との間に電流が流れるように、電気的に結合している。このシステムは、第1の電極と第2の電極との間の電位差及び/又はその間に流れる電流を測定し解析するように構成された腐食モニターデバイスも含んでおり、その圧力容器の予測された腐食特性に基づいて、圧力容器に対する矯正処置をいつ実行するべきかを示す。
【0011】
本発明の上記及びその他の特徴、態様及び利点は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲を参照することでより明確に理解されるであろう。本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を示しており、以下の記載と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0012】
当業者に向けた、本発明の最良の形態を含む本発明を実施可能にする十分な開示を、添付の図を参照して以下の明細書に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ガス化機の簡略化した断面図であり、本主題の1つの態様に従って腐食をオンラインでモニターするための1つの実施形態のシステムが設置されている。
【図2】図2は、本主題の1つの態様に従って圧力容器内に設置され、腐食モニターデバイスに結合された腐食感知デバイスの1つの実施形態の部分断面側面図である。
【0014】
以下、本発明の様々な実施形態を詳細に説明するが、その1以上の例が図面に示されている。各々の例は本発明の説明のために提供するものであって、本発明を限定するものではない。実際、当業者には明らかなように、本発明において、本発明の範囲又は思想から逸脱することなく様々な修正及び変形をなすことができる。例えば、1つの実施形態の一部として例示又は記載されている特徴を別の実施形態と共に使用してさらに別の実施形態に至ることができる。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物に入るものとしてかかる修正及び変形を包含するものである。
【0015】
一般に、本主題は、腐食をオンラインでモニターするためのシステムと方法を開示する。特に、圧力容器の凝縮性塩環境で腐食を検出しモニターするために腐食感知デバイスと腐食モニターデバイスを利用するシステムが開示される。1つの実施形態において、圧力容器はガス化機の一部であってもよい。そこで、開示されているシステムと方法は、圧力容器に対する損傷を防止するようにガス化機に対してとるべき事前又は応答性の矯正処置を可能にするように、ガス化機容器の腐食の度合に関するリアルタイムの情報をガス化機の技師に提供することができる。
【0016】
一般に本明細書では、本主題のシステムと方法を、ガス化機、特にガス化機の圧力容器に関連して説明する。しかし、本主題の用途はガス化機内で起こる腐食のモニターに限定される必要はないことが分かるであろう。むしろ、開示されているシステムと方法は、一般に、腐食を受ける部品を含み得るあらゆる装置と共に使用するように適合させることができる。例えば、高温の腐食性の塩による腐食は殆どの化学反応器容器内のような様々な工業用途全体で起こる。特に、反応器容器の容器壁はその容器内に含まれる腐食性のガス状の塩に連続的に曝露され得る。例えば、精油分留塔は凝縮性のガス状塩への曝露による腐食を受けることが多い。
【0017】
腐食は一般に、ガス化機内で、高温の腐食性のガス状の塩がガス化機の比較的に冷たい圧力容器壁上に凝縮し、金属酸化物の表面層を除去及び/又は溶解し、圧力容器の母材金属を酸素のような酸化剤に曝露する際に起こる。かかる酸化剤に曝露されると、母材金属は金属酸化物に変換され、そこに電子が残され、この電子は母材金属の他の部分(すなわちカソード領域)へ流れる。腐食又は酸化が起こっている場所(すなわちアノード領域)で、母材金属の腐食特性に応じて空洞又は点食が母材金属に形成される。本明細書で使用する場合、用語「腐食特性」とは、一般に、ある金属が典型的な場合に腐食にどのように応答するか、例えば、腐食に起因する点食の度合又は点食の深さをいう。一般に、腐食により生成する点食は時間と共に成長し続け、圧力容器の構造的完全性を破壊する可能性がある(その結果容器の亀裂の発生及びさらには故障に至る可能性がある)。
【0018】
圧力容器の腐食の検出を可能にするために、腐食感知デバイスをその圧力容器に設置することができる。一般に、この腐食感知デバイスは、腐食する圧力容器の母材金属をシミュレートするように構成することができ、例えば、母材金属のアノード及びカソード領域をシミュレートし、圧力容器と同様の腐食特性をもたせることができる。従って、1つの実施形態において、腐食感知デバイスは、腐食する金属のアノード及びカソード領域をシミュレートするために一連の電極を利用する、特に高温の圧力容器内に使用されるように適合させた結合多電極アレイセンサーを含み得る。これらの電極は、電極間に電位差が存在する場合アノード電極とカソード電極との間に電流が流れるように、互いに結合することができる。その際、この電位差及び/又は電流を本主題の腐食モニターデバイスにより測定し解析して、圧力容器の点食の度合及び点食の深さのような腐食特性を予測することにより、圧力容器に対して、又は1つの実施形態においてガス化機自体に対して矯正処置を行うべき時期を決定することができる。
【0019】
従って、本主題のシステムでは、圧力容器の腐食を連続的にモニターして、検査のために頻繁に運転停止をする必要なく、圧力容器の状態に関するリアルタイムの情報を提供することが可能になり得る。すなわち、このシステムにより、圧力容器に対していつどのような矯正処置を行う必要があるかを決定するために必要な入力を得ることができ、その結果矯正処置の必要性をより正確に予測することができる。例えば、ガス化機技師は、ガス化機容器上で起こっている腐食の程度に基づく1以上の推奨又は所要とされる矯正処置を知ることができる。
【0020】
図面を参照すると、図1には、炭化水素供給原料を合成ガスに変換するのに使用されるガス化機10の簡略化した図が示されている。一般に、ガス化機10は、圧力容器12、及びレンガ絶縁ライナー16により画定される内側の反応チャンバー14を含んでいる。圧力容器12は一般に、ガス化機10の外側の殻を画定し、ガス化過程の高圧に耐えるように構成され得る。また、圧力容器12は、ガス化過程中に生成するガスを維持するように構成され得る。圧力容器12は、反応チャンバー14内で起こる高温の反応に耐えるように設計されていない合金鋼のような材料から形成し得る。従って、ガス化機10のレンガ絶縁ライナー16は一般に、プロセス中に生じる高温から圧力容器12を保護するように構成し得る。例えば、温度は、反応チャンバー14で起こる化学反応により熱が発生するので、絶縁ライナー16内でカ氏2500度もの高温に達し得る。従って、レンガ絶縁ライナー16は一般に、圧力容器12又はその付近の温度を容器材料が耐えることができるレベルに確実に保たれるように、高温セラミックのような高温絶縁材料からなり得ることが分かるであろう。また、ガス化機10は、炭化水素供給原料、水(又は蒸気)、及び酸素を受容するための1以上の入口18、並びにガス化過程で生成した合成ガス及び灰分又はスラグ(すなわち水/灰分混合物)のようなプロセスのあらゆる副生成物を排出するための1以上の出口20を含み得る。しかし、本明細書に記載し例示するガス化機10の構造、部品及び/又は特徴は、本主題のシステムと方法を利用し得るガス化機10の単なる一例として提供されているものと了承されたい。当業者には分かるように、開示されたシステムと方法は、本主題の範囲から逸脱することなく腐食を受け得るあらゆるガス化機と共に広く利用し得る。
【0021】
ガス化機10の作動中、特に石炭ガス化過程において、石炭源21からの石炭は通例粉砕され、水と混ぜられて石炭スラリーを形成する。この石炭スラリーは、酸素源22からの酸素と共に、1以上の入口18を介してガス化機10中に向けられる。少なくとも部分的にガス化機10内の熱と高圧レベルのため、石炭スラリーと酸素は反応して、合成ガス主成分である水素と一酸化炭素を形成する。この高温の合成ガスは、プロセス中に生成した灰分又はスラグと共に、ガス化機10の1以上の出口20を介して排出され得る。例えば、スラグ又は灰分は保持容器23に向けられ得る。また、1つの実施形態において、合成ガスは、下流の高温の合成ガスを冷却するように構成された合成ガス冷却器24に向けられ得、例えば、IGCC発電所の下流の配管、合成ガス洗浄デバイスなどのような下流部品25に向けられ得る。
【0022】
水素と一酸化炭素に加えて、数多くの他のガスがガス化過程中に生成し得る。特に重要なことに、塩化アンモニウム、硫化水素、塩化水素などのような様々な腐食性のガスが生成し得る。これらのガスはガス化機10のレンガ絶縁ライナー16を通って拡散し、圧力容器12と絶縁ライナー16との間に画定された空間26を満たし得る。前述したとおり、圧力容器12に対する設計上の制約のために、圧力容器12又はその付近の温度は反応チャンバー14内の温度よりずっと低い温度に維持される。従って、容器の内壁28の表面温度は多くの場合圧力容器12内に含まれる多くの腐食性ガスの露点より低くなり得る。そのため、腐食性のガスは、比較的冷たい容器壁28と接触すると凝縮し得る。これらの凝縮する高温の腐食性塩は圧力容器12の壁28を連続的に被覆し、流れ/滴下し得る。この連続的な高温の塩曝露により、圧力容器12の母材金属の一部分が腐食性の作用物質の存在下で酸化するので圧力容器12の腐食が起こる。同様な高温腐食は、多くの化学反応器容器のような様々な工業用途で利用される数多くの他の圧力容器で起こることが容易に分かるであろう。
【0023】
本主題の1つの態様に従って、図1はまた、圧力容器12の腐食をオンラインでモニターするシステムの1つの実施形態も示している。このシステムは一般に、少なくとも部分的に圧力容器12内に配置された腐食感知デバイス30と、腐食感知デバイス30に結合された腐食モニターデバイス32とを含んでいる。モニターデバイス32は、感知デバイス30からの出力を測定し解析して、感知デバイス30が設置されている金属の腐食特性を予測するように構成し得る。その後、この予測された腐食特性に基づいて、モニターデバイス32は、過度の腐食による損傷を防止するためにガス化機10又は圧力容器12に対していつ矯正処置を行うのが推奨又は所要とされるかを示し得る。
【0024】
図1に示されているように、腐食感知デバイス30は圧力容器12の腐食特性を予測するために圧力容器12の壁28に配置することができる。しかし、腐食感知デバイス30は、凝縮する腐食性のガス状塩による腐食を受けやすいあらゆる部品に、又はガス化機10内のあらゆる場所に設置することができることが分かるであろう。また、図に示されているように、腐食感知デバイス30はワイヤにより腐食モニターデバイス32に結合することができる。しかし、代わりの実施形態において、腐食感知デバイス30は無線周波数トランスミッターのようなワイヤレストランスミッターを介して腐食モニターデバイス32と連通させることができる。また、複数の腐食感知デバイス30をガス化機10内に、例えば圧力容器12内に配置してガス化機10内の様々な位置で腐食を検出してもよいことも了解されよう。
【0025】
図2に、ガス化機10の圧力容器12内に一般に配置された腐食感知デバイス30の断面図を示す。図示したように、腐食感知デバイス30は、感知デバイス30の一端が作動中ガス化機10の腐食性の凝縮性ガス状塩環境に曝露されるように容器12内に設置するか又は取り付けることができる。反対の端は圧力容器12の外側に伸び出るようになる。腐食感知デバイス30はあらゆる適切な手段を用いて圧力容器12内に取り付けることができることが分かるであろう。図示したように、感知デバイス30はスエージロック型の圧縮結合部品により圧力容器12に固定される。しかし、代わりの実施形態において、腐食感知デバイス30は、ネジ付き結合部品を利用して、溶接することにより、又は当技術分野で公知の他のあらゆる手段により容器12内に取り付けることができる。
【0026】
1つの実施形態において、本主題の腐食感知デバイス30は、一般に腐食を検出するための結合多電極アレイセンサーからなることができ、そのように構成することができる。従って、腐食感知デバイス30は絶縁材料38と複数の電極40を含むことができる。絶縁材料38は一般に、感知デバイス30内で電極40を電気的に絶縁するように電流の流れに抵抗するあらゆる材料で作成することができる。1つの実施形態において、絶縁材料38は高温材料からなり得る。例えば、絶縁材料38は高温材料で被覆された高温セラミック又はその他の適切な電気絶縁体からなり得る。
【0027】
腐食感知デバイス30の電極40は一般に金属又はワイヤの小片からなり得る。一般に、電極40は、各々の電極40が絶縁材料38により他の電極40から絶縁されるように腐食感知デバイス30内に配置され得る。また、図2には単一の列の電極40が示されているが、電極40は二次元のアレイとして腐食感知デバイス30内に配置してもよいことが分かるであろう。さらに、隣接する電極40間の間隔は広く変化し得る。しかし、最適の間隔は通常の実験により確かめることができるものと了解されたい。
【0028】
また、電極40は、各々の電極40の一部分が圧力容器12内、例えば容器壁28上に凝縮する腐食性の高温の塩に曝露されるように腐食感知デバイス30内に配置することができる。例えば、図2に示したように、各電極の端面42は、腐食性環境に曝露され得、圧力容器12の内壁28と実質的に揃えることができる。従って、1つの実施形態において、端面42は圧力容器12内に含まれる腐食性の作用物質に直接曝露され得、特に、容器壁上に凝縮する腐食性で高温のガス状の塩に直接曝露され得る。
【0029】
一般に、腐食感知デバイス30は圧力容器12内に起こる腐食を検出するように構成され得る。特に、腐食感知デバイス30は、電極40の露出された面42で起こる電気化学反応に基づく局在化された腐食を検出することができる。例えば、圧力容器12内の感知デバイス30の配置のために、電極40は、容器壁28上に凝縮する腐食性の塩に曝露され、従って圧力容器12と同様の腐食を受け得る。統計的に、腐食感知デバイス30内の電極40の幾つかは圧力容器12の母材金属中のアノード部位と類似の性質を有し、幾つかの電極は母材金属のカソード部位と類似の性質を有することになる。従って、電極40が絶縁材料38内で互いに電気的に絶縁されているが腐食モニターデバイス32内のように絶縁材料38の外部に共に結合されている場合、アノードとして作動可能な電極40はアノード領域をシミュレートし得、カソードとして作動可能な電極40は母材金属のカソード領域をシミュレートし得る。その結果、1以上のアノード電極40で起こる腐食のために電極間に電位差が存在すると、電極40間に電流が流れる。従って、アノードとして作動可能な電極40は電子を放出し得、この電子がカソードとして作動可能な電極40に流れる。そうすると、アノード電極40とカソード電極40間の生じた電位差及び/又は電流を腐食モニターデバイス32により測定し解析して、圧力容器12上に起こっている腐食の程度を予測することができ、それにより圧力容器12に対して又はガス化機12内で矯正処置を行う必要がある時期を決定することができる。
【0030】
さらに図2を参照して、電極40は、圧力容器12を形成するのに用いた材料と同様な腐食特性を有する材料から形成することができるということが分かるであろう。1つの実施形態において、電極40は圧力容器12と実質的に同様な腐食特性を有する材料から形成することができる。従って、電極40は、圧力容器12と実質的に同様な腐食挙動を示すことができ、より詳細には、ガス化機10内の腐食の多くを引き起こす原因である腐食性のガス状の塩に対して同様な応答を示すことができる。例えば、電極40は、圧力容器12と同じ材料から形成することができる。従って、腐食感知デバイス30から得られる測定値は、電極40の腐食特性を示すことができるだけでなく、電極材料を適当に選ぶことにより、圧力容器12の容器壁28で起こる腐食の程度を正確に予測するのに使用することもできる。幾つかの実施形態において、電極40は、腐食感知デバイス30の信号出力を増大するために、凝縮する腐食性の塩に対して、圧力容器12を形成するのに用いた材料より感度がいい材料から形成できることが分かるであろう。
【0031】
さらに、別の実施形態において、実際の(複数の)電極40を実質的に異なる材料から形成して、単一の腐食感知デバイス30を用いて複数の部品に対する腐食測定値の取得を可能にしたり、及び/又は圧力容器12上で起こる腐食に関する追加の情報を集められるようにすることができる。例えば、1つの実施形態において、腐食感知デバイス30の第1の組の電極40を圧力容器12と同じ材料から形成することができ、一方第2の組を異なる部品と同じ材料から形成することができる。こうして、2つ以上の感知デバイス30を使用する必要なく両方の部品で起こる腐食の程度を予測するために、第1と第2の組の電極40間の電位差及び/又はその間に流れる電流を測定することができる。もう1つ別の実施形態において、腐食感知デバイス30の各々の電極40を異なる金属から形成し、各々の金属が腐食を引き起こす特定のガス状の塩又はガス状の塩の組合せのような特定の腐食性作用物質に応じて異なる腐食特性を示すようにすることができる。かかる実施形態において、異なる材料の電極40間の電位差及び/又はその間に流れる電流を測定し、特定の伝達関数を構築することで、どのガス状の塩が圧力容器12上に局在化された腐食を引き起こし得るのかを正確に予測することができる。代わりの実施形態において、少なくとも1つの感知デバイス30が圧力容器12と実質的に同様な材料から形成された電極40を含み、少なくとも1つの他の感知デバイス30が異なる材料で作製された電極40を含むようにして、2以上の感知デバイス30を圧力容器12内に配置することができる。
【0032】
前述したとおり、本主題の腐食モニターデバイス32は一般に、腐食感知デバイスからの出力(例えば、電極40間の電位差及び/又はその間に流れる電流)を測定し解析するように構成することができる。従って、腐食モニターデバイス32を利用して圧力容器12の腐食特性を予測することにより、ある矯正処置がいつ実行されるべきか推奨又は要求されるかを指示することができる。その際、様々な実施形態において、腐食感知デバイス30の複数の電極40を腐食モニターデバイス32内で電気的に結合して、そのモニターデバイス32が、任意の2つの電極40間の電位差及び/又はその間に流れる電流又は腐食感知デバイス30内に配置された複数の電極40間の電位差及び/又はその間に流れる電流を測定することができるようにすることが分かるであろう。
【0033】
一般に、腐食モニターデバイス32は、電極40間の電位差及び/又はその間に流れる電流を測定し解析することができるあらゆるデバイス又はデバイスの組合せからなり得る。例えば、腐食モニターデバイス32は、ガス化機制御システムのガス化機コントローラー、IGCC発電所制御システムのIGCCコントローラー、コンピューター又はその他あらゆる適切な処理装置と連通した電圧計、電流計又はその他任意の適切な電気計測器からなり得る。従って、1つの実施形態において、各電極40は共通のリード線(図には示してない)に電気的に接続することができ、小さい抵抗器(図には示してない)が各々の電極と共通のリード線との間に接続される。かかる実施形態において、各電極40からの出力は多重チャンネル電圧計に送ることができ、抵抗器の両端の電位差又は電圧降下を測定することが可能になる。その後、電圧測定値はコンピューターのような何らかの適切な処理装置に送られてその測定値が解析され得る。代わりの実施形態において、腐食モニターデバイス32は、電極40間の電位差及び/又は電流を測定し解析することができるように適切な処理装置と連通した多電極腐食モニターを含み得る。適切な市販の多電極腐食モニターはCORR INSTRUMENTS(San Antonio、Texas)のNANOCORRからなり得る。別の実施形態において、腐食感知デバイス30は、圧力容器12の腐食特性を予測するために感知デバイス30からの出力を測定すると共に解析することができる処理装置に直接結合することができる。本主題のシステムと共に利用されるコンピューター関連設備のような任意の処理装置は、電極40間の電位差及び/又は電流を解析するための任意の適切な組のソフトウェアの指令を実行するように構成することができるということは理解されるであろう。
【0034】
前述したとおり、腐食感知デバイス30は一般に、圧力容器12の腐食する母材金属をシミュレートするように構成することができる。従って、この腐食モニターデバイス32を用いて、電極40間の電流の流れ及び/又はその間の電位差を解析することにより、点食の度合及び深さのような圧力容器12の腐食特性を予測することができる。適切な伝達関数を構築し腐食モニターデバイス32にプログラミングして、電極40間の電位差、その間に流れる電流、又は両者を圧力容器12の腐食特性に関連付けることができることが了解されるであろう。かかる伝達関数の構築は当業者の能力の範囲内であり、従ってその詳細について本明細書では述べない。しかし、一般に、圧力容器12の平均腐食又は点食の度合はアノード及びカソード電極40間の電流の平均に基づいて予測することができ、局在化された腐食の度合は最も速く腐食する電極40(すなわち、電子が最も高速で失われる最もアノード性の電極)に基づいて予測することができる。また、腐食又は点食の深さは、測定電流を介してアノード電極40における母材金属の損失を逆に計算することによって予測することができる。
【0035】
腐食モニターデバイス32はまた、予測された腐食特性及び/又は腐食測定値を操作し、保存し及び/又は表示して、技師又はメンテナンス従事者がかかるデータにアクセスし理解することができるようにすることもできる。例えば、腐食モニターデバイス32は、圧力容器12上で起こる腐食の程度の視覚表示を技師に提供するコンピュータースクリーン、ディスプレーパネルその他の適切な画像表示のようなディスプレーデバイス33を含むことができる。従って、1つの実施形態において、腐食モニターデバイス32は、圧力容器12、別のモニターされる部品、又は複数のモニターされる部品に対する予測された点食の深さ及び/又は点食の度合を表す表又はチャートを時間と共に表すディスプレーデバイス33上に表示するように構成することができる。かかる実施形態において、技師はそこで表示された点食の度合及び/又は点食の深さに応答するためにどのような可能な矯正処置が必要であるかを決定することができる。代わりに、腐食モニターデバイス32は、例えば、特定の部品の点食の深さ及び/又は点食の度合に対する所定の限界に基づいてある矯正処置が必要かどうかを自動的に決定するように適切なソフトウェア指令をプログラミングすることができる。こうして、腐食モニターデバイス32は、技師又はメンテナンス従事者が必要な処置をとることができるように、ディスプレーデバイス33を介して技師又は従事者に自動的に推奨又は要求される矯正処置を通知することができる。
【0036】
従って、電位差の測定値及び/又は電流の測定値を圧力容器12の腐食特性と関連付けることによって、腐食モニターデバイス32を利用して、圧力容器10又は1つの実施形態においてガス化機10に対していつ矯正処置を実行するべきかを示すこともできる。これにより、例えば腐食レベルの突然の又は意外な増大に基づいた、圧力容器12又はガス化機10の予測/事前のメンテナンスと応答矯正処置の実行との両者が可能になるであろう。とられる矯正処置は一般に、圧力容器12上で起こる腐食の防止若しくはその量の低下をめざすあらゆる処置又は圧力容器12の状態のモニター及び/又は検査に関するあらゆる処置であり得る。例えば、1つの実施形態において、矯正処置は、ガス化機10の停止及びその部品の検査からなり得る。代わりの実施形態において、矯正処置は、ガス化機10の1以上の作動パラメーターを変更すること、例えば、炭化水素供給原料の供給速度、酸素の供給速度、ガス化機10内の圧力及び/又はガス化機10に供給される水の量(例えば、石炭スラリーの含水率を調節することによる)の1以上を調節することからなり得る。様々な他の矯正処置が当業者には明らかであり、従って、可能な矯正処置は上記処置に限られることがないことが分かるであろう。
【0037】
さらに、とられる特定の矯正処置は圧力容器12に対して予測される腐食の種類及び/又は程度に依存し得ることが了解されよう。例えば、技師(又は腐食モニターデバイス32)がどの処置をいつとるべきか決定することができるように、一定の矯正処置又は矯正処置の組合せを特定の腐食条件/度合/状態に関連付けるか及び/又は割り当てるのが望ましいであろう。従って、1つの実施形態において、容器12に対して予測された点食の度合が所定の点食の度合を越えた場合、矯正処置はガス化機10のある種の作動パラメーターの変更のようなあらゆる利用可能な軽減方策の実施からなり得る。同様に、容器12に対して予測された点食の深さが所定の点食の深さを越えた場合、そのガス化機10を停止し検査して圧力容器12に対する追加の点食/損傷を防止し得る。さらに、腐食感知デバイス30から得られた測定値の解析により、圧力容器12に対して予測された点食の度合が短時間に大きく増大したことが示された場合、矯正処置はかかる増大の何らかの特別な原因の技師による調査を含み得る。
【0038】
さらに、腐食モニターデバイス32の測定値を他の利用可能なデータ(例えば圧力容器作動時間、作動温度、など)と組み合わせることにより、その圧力容器12の作動寿命を予測することもできることが了解されよう。例えば、適切な伝達関数を構築して、腐食モニターデバイス32により提供された腐食測定値に少なくとも部分的に基づいてその容器の寿命を正確に予測し得ることが了解されよう。
【0039】
以上の説明では例を用いて、最良の態様を含めて本発明を開示し、当業者が本発明を実施でき、例えばデバイス又はシステムを作り、使用し、また組み込まれたあらゆる方法を実行できるようにした。本発明の特許性のある範囲は特許請求の範囲により定義されており、当業者には自明の他の例も包含し得る。かかる他の例は、これらが特許請求の範囲の文言通りの言語と異ならない構造要素を含むか、又は特許請求の範囲の文言通りの言語と実質的な差をもたない均等の構造要素を含む場合、それらも特許請求の範囲内に入るものとする。
【符号の説明】
【0040】
10 ガス化機
12 圧力容器
14 反応チャンバー
16 レンガ絶縁ライナー
18 入口
20 出口
21 石炭源
22 酸素源
23 保持容器
24 合成ガス冷却器
25 下流部品
26 開放空間
28 容器壁
30 腐食感知デバイス
32 腐食モニターデバイス
38 絶縁材料
40 電極
42 露出した端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器(12)の腐食をオンラインでモニターするための方法であって、
第1の電極(40)及び第2の電極(40)の一部分を圧力容器(12)内の腐食性の環境に曝露すること、ここで、前記第1の電極(40)及び前記第2の電極(40)は、前記圧力容器(12)の壁(28)上に配置され、絶縁材料(38)により互いに電気的に絶縁され、前記第1及び第2の電極(40)は、前記第1の電極(40)と前記第2の電極(40)との間に電位差が存在するとき、前記第1の電極(40)と前記第2の電極(40)との間で電流が流れるように電気的に結合されており、前記第1の電極(40)と前記第2の電極(40)との間の電位差は少なくとも部分的に前記第1の電極(40)又は前記第2の電極(40)における腐食に基づいている、
前記第1の電極(40)と前記第2の電極(40)との間の電位差及びその間に流れる電流の少なくとも1つを測定すること、
測定された電位差及び測定された電流の少なくとも1つを解析して前記圧力容器(12)の腐食特性を予測すること、
前記圧力容器(12)の予測された腐食特性に基づいて前記圧力容器(12)に対する矯正処置をいつ実行するべきかを決定すること
を含んでなる、前記方法。
【請求項2】
前記圧力容器(12)に対する矯正処置を実行することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記圧力容器(12)がガス化機(10)の一部を形成する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
矯正処置が前記ガス化機(10)を停止し検査することを含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
矯正処置が前記ガス化機(10)の1以上の作動パラメーターを調節することを含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記圧力容器(12)の予測された腐食特性を視覚的に表示することを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
腐食性環境が、前記圧力容器(12)の前記壁(28)上に凝縮する腐食性のガス状塩に少なくとも部分的に起因する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記圧力容器(12)の腐食特性が点食の深さ及び点食の度合の少なくとも1つを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の電極(40)が前記圧力容器(12)と同様な腐食特性を有する材料から形成される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
圧力容器(12)の腐食をオンラインでモニターするためのシステムであって、
圧力容器(12)の壁(28)内に配置されており、絶縁材料(38)内で互いに絶縁された第1の電極(40)及び第2の電極(40)を含む腐食感知デバイス(30)であり、前記第1及び第2の電極(40)は、前記第1及び第2の電極(40)の各々の一部分が前記圧力容器(12)内の腐食性環境に曝露されるように配置されており、前記第1及び第2の電極(40)は、前記第1の電極(40)と前記第2の電極(40)との間に電位差が存在するとき、前記第1の電極(40)と前記第2の電極(40)との間で電流が流れるように電気的に結合されており、前記第1の電極(40)と前記第2の電極(40)との間の電位差が少なくとも部分的に前記第1の電極(40)又は前記第2の電極(40)における腐食に基づいている、前記腐食感知デバイス(30)、並びに
前記第1の電極(40)と前記第2の電極(40)との間の電位差及びその間に流れる電流の少なくとも1つを測定し解析して、前記圧力容器(12)の予測された腐食特性に基づいて前記圧力容器(12)に対する矯正処置をいつ実行するべきかを示すように構成された腐食モニターデバイス(32)
を含んでなる、前記システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−219173(P2011−219173A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−65320(P2011−65320)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】