説明

腐食を低減するための使用および方法

本発明は、ポリオルガノシロキサンSを含有する組成物の使用、および鉄筋コンクリート施工物の鉄筋の腐食を低減する方法、およびかかる組成物を使用して生成するコンクリート構造物に関する。それは、老朽コンクリートの改修、および生コンクリート中の鉄筋の腐食の防止にも非常に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート施工物の鉄筋の腐食防止の分野に関する。特に、本発明は、コンクリート施工物の鉄筋の腐食を低減するためのアミノアルコールで修飾されたポリオルガノシロキサンを含む組成物の使用、およびまたコンクリート施工物の鉄筋の腐食を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
施工工事における補強としての鋼は、よく知られている。コンクリート補強用鋼は、特に重要である。この鋼は、水硬性材料中に導入され、これを補強する。鋼は、特に、ロッド状の形態において、特にロッドまたはグリッドとして使用され、また、当業者によって鉄筋と呼称されることが多い。鉄筋コンクリートは、特に重要である。水硬性材料中に存在する鋼の腐食は、経済的に非常に重要である。鉄筋インレーの腐食によって、その強度、したがってコンクリートの強度が減少する。さらに、酸化鉄や水和酸化鉄などの腐食生成物は、非腐食鋼それ自体より大きい体積を有する。このことが、物体全体の亀裂もしくは断裂破壊の元になり得るコンクリートの応力をもたらす。
【0003】
コンクリート施工物は、コンクリートを表面から除去または吹き飛ばし、鉄筋を曝露することによって改修し得る。次いで、例えば、サンドブラストによって腐食生成物を除去した後、鉄筋は、防食剤または防食剤を含有する生成物によって処理し、最後に、コンクリートまたは修理用モルタルで再度被覆、または再成型し得る。この方法は、特に、鉄筋の腐食が進行している場合(断面が大幅に減少した場合、鉄筋は、新規の鉄筋と交換しなければならない)、およびコンクリートが剥離した場合、また比較的高濃度の塩化物が鉄筋を被覆するコンクリート層中に存在する場合に使用される。この手順は、非常に複雑であり、多大なコストを要する。
【0004】
亜硝酸塩、アミン、アルカノールアミン、これらと無機もしくは有機酸またはリン酸エステルとの混合物などの防食剤を生コンクリートに添加すること、あるいは硬化鉄筋コンクリートの表面を浸透性防食剤で処理することは周知である。しかし、それらの作用を示すことが可能になるためには、防食剤は、コンクリートを通って鉄筋インレーまで浸透しなければならない。鉄筋を被覆するコンクリートの厚さに応じて、この浸透は数センチメートルの距離になる場合があり、したがって、浸透するのに長時間がかかる。したがって、これらの防食剤の施用された量のかなりの部分が、全く鉄筋インレーに到達せず、したがって、防食作用を発揮できない。したがって、防食剤は、多量に使用しなければならず、このために多数の段階が必要になり、不経済である。さらに、アミノアルコールは、揮発性が大であり、非常に強い臭気を有する場合が多く、このために、施用、特に大面積への施用には不利である。
【0005】
鉄筋コンクリート施工物中への水の浸透は、ケイ素化合物に基づく適切なコーティングおよび反応性樹脂コーティングによって防止し得ることも周知である。欧州特許出願公開第0177824号には、樹脂様オルガノポリシロキサンと、有機溶媒と、またシート状シリケートとを含む疎水化剤が記載されている。しかし、かかるコーティングは、疎水性であるが、腐食を防止せず、容易に、例えば、機械的にまたはUV線もしくは酸性雨によって劣化し、これにより、やはり経時的にコンクリートに浸透可能であるが、鉄筋インレーの腐食の元になり得る塩化物イオンがもたらされるという欠点を有する。
【0006】
欧州特許出願公開第1308428号には、コンクリート中の鉄筋の腐食電流を減少させるためのアルキルアルコキシシランもしくはアルキルアルコキシシロキサンに基づく組成物が記載されている。記載のシランおよびシロキサンでは、Si原子は、アミノ官能基を有する置換基に、Si-アルキレン橋を介してのみ、すなわちSi-C結合を介して結合している。防食剤の溶液は、コンクリート表面上に連続して多数回塗布もしくはスプレーされ、防食剤が表面内に浸透する。しかし、かかる組成物は、移動可能である低濃度の防食剤しか含有していない。したがって、鉄筋に対する所望の防食作用を得るためには、組成物は、非常な大量で、および多数の段階で施用しなければならず、不経済であり、非常に労働集約的である。
【0007】
したがって、現存するコンクリート構造物に施用することができ、速やかにかつ長期間腐食から鉄筋を保護し、腐食を防止するとともに鉱物性ビルディング材料に含浸する作用がある鉄筋コンクリート用の組成物に対する必要性が存在する。特に、保管中安定であり、それによって防食剤が高濃度でコンクリート表面に施用できる、またはコンクリート混合物中に導入できる組成物に対する必要性が存在する。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0177824号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1308428号
【非特許文献1】Andreas Tomanek、「Silicone and Technik」、Wacker Chemie GmbH編、Carl Hanser Verlag、Munich、1990年、24〜25頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服する、鉄筋の腐食を低減するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、本目的は、独立クレームに記載の使用によって実現し得ることが分かった。加えて、かかる組成物は、優れた作業性および高い安定性を有する。
【0010】
ポリオルガノシロキサンを含むこれらの組成物は、防食性と疎水化性の特性を組み合わせるという大きな利点を有する。それらによって処理されたコンクリートは、表面もしくは表面に近い層が疎水化され、第二に、アミノアルコールが排出され、コンクリート中に浸透し、腐食から鉄筋を保護する。特に、こうした使用は、強力な疎水化性を伴い、シロキサンもしくはシランの沈殿が生ずることなく、このように大量のアミノアルコールを導入し得ることが分かった。さらに、これらの組成物によって、大量のアミノアルコールが施用中に周囲の空気中に放出されることなく大量の施用が可能になる。従来技術の方法を使用する場合、これは不可能である。したがって、本方法は、老朽コンクリートの改修と生コンクリートの鉄筋の腐食保護双方のために使用し得る。
【0011】
本発明のさらなる有利な実施形態が、従属クレームで提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、鉄筋施工物の鉄筋の腐食を低減するための組成物およびそれらの使用に関する。
【0013】
組成物は、一般式(I)の少なくとも4つの反復単位を有する少なくとも1つのポリオルガノシロキサンSを含む。
[A1z(B1O)pSiO(4-p-z)/2] (I)
【0014】
ここで、B1は、H、炭素原子最高18個を有するアルキルもしくはアリール基、または一般式(II)の基のいずれかである。
【0015】
【化1】

【0016】
さらに、X1およびX2は、それぞれ互いに独立に、O、SまたはNR4である。
【0017】
A1、R2、R3およびR4は、それぞれ互いに独立に、水素、または炭素原子最高18個を有する炭化水素基であり、O、S、Si、Cl、F、Br、PおよびNからなる群から選択されるヘテロ原子をさらに含有し得る。
【0018】
さらに、R5、R5'およびR6は、それぞれ互いに独立に、炭素原子1から8個を有する非分枝または分枝のアルキレン基である。
【0019】
加えて、zおよびpは、それぞれ互いに独立に、0、1、2または3である。さらに、mは、0、または1から10の整数であり、qは、0、または1から10の整数である。
【0020】
一般式(II)の少なくとも1つの基、炭素原子最高18個を有する少なくとも1つのアルコキシまたはアリールオキシ基、およびその中でケイ素原子が酸素原子3個と結合している一般式(I)の少なくとも1つの反復単位が、ポリオルガノシロキサンS中に存在する。
【0021】
本文書中の式全てで、ケイ素原子は、四価であり、破線は、他の基との結合点を表す。
【0022】
zまたはpが、1を超える場合、異なる基A1またはB1は、それぞれの場合において存在し得る。
【0023】
Si原子がアミノ官能基を有する置換基にSi-C結合を介して結合している従来技術のアミノ官能化シランおよびシロキサンと異なり、窒素官能基を有する一般式(II)の基は、酸素原子を介してケイ素に結合している。これは、この結合の反応性を、例えば、加水分解性能に関して、劇的に変える。
【0024】
Alは、炭化水素基、好ましくは、脂肪族の直鎖もしくは分枝または脂環式基、あるいはフェニル基でよい。これは、好ましくは、炭素原子1から10個、特に1または8個を有する。特に好ましい炭化水素基は、フェニル、n-ブチル、イソブチル、n-プロピル、イソプロピル、エチル、イソオクチル、n-オクチルおよびメチル基である。Alは、特に好ましくは、メチル、n-オクチルおよびイソオクチルからなる群から選択される炭化水素基である。
【0025】
同様に好ましい炭化水素基Alは、メルカプト基、イソシアナト基(イソシアナト基は化学反応からそれを保護するために、反応遮断されていてもよい)、ヒドロキシル基、エポキシ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、第一級、第二級または第三級アミノ基(1つまたは複数の窒素原子を有し、該窒素原子は水素、または一価の芳香族、脂肪族もしくは脂環式炭化水素基で置換されていてもよい)、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アルデヒド基、ウレタン基、尿素基、ホスホン酸モノエステル基、ホスホン酸ジエステル基、ホスホン酸基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基およびそれらの混合物からなる群から選択される官能基を有し得るヘテロ原子含有基である。
【0026】
同様に好ましい炭化水素基A1は、式-OC(=O)-R10を有し、式中R10は、一価の直鎖もしくは分枝の脂肪族または脂環式炭化水素基、あるいは一価の芳香族炭化水素基、好ましくは、炭素原子1から18個、特に1から6個を有する基である。
【0027】
アミノ基を含有する好ましい基A1は、一般式(V)を有する。
【0028】
【化2】

【0029】
ここで、R11は、二価のC1〜C18炭化水素基、特に、C2-、C3-、C4-、C5-またはC6-炭化水素基、好ましくはプロピレン基である。
【0030】
R12およびR13は、それぞれ互いに独立に、水素原子、または非置換もしくはフッ素-、塩素-もしくは臭素置換C1〜C18炭化水素基、好ましくは脂環式もしくは芳香族部分を有し得るC2-、C3-、C4-、C5-またはC6-炭化水素基である。
【0031】
さらに、cは、2、3、4、5または6、特に、2であり、dは、0または1、2、3または4、特に、0または1である。
【0032】
B1は、アルキルまたはアリール基である。好ましいアルキルまたはアリール基は、酸素原子を介してケイ素原子と結合している脂肪族の直鎖もしくは分枝または脂環式基、あるいはフェニルオキシ基である。
【0033】
基B1は、好ましくは、炭素原子1から6個、特に、1から3個を有する。特に好ましい基B1は、エチルまたはメチルである。
【0034】
B1は、式(II)の基でもよい。
【0035】
好ましい実施形態では、R6は、エチレン、プロピレン、イソプロピレンもしくは-C(CH3)2-CH2-基、またはポリエチレンもしくはポリプロピレン基である。特に、R6は、式(III)のアルキレン基であり、
【0036】
【化3】

【0037】
式中、nは、1から10、特に、1から4の整数である。nは、特に好ましくは、2である。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、m=q=0である。
【0039】
さらなる実施形態では、R2および/またはR3は、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、イソブチル、n-ブチル、イソペンチル、n-ペンチル、または直鎖もしくは分枝ヘキシル、ヘプチルまたはオクチルである。メチル、エチルまたはn-ブチルが特に好ましい。
【0040】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、R2および/またはR3は、それぞれ、H、または炭素原子1から12個を有する直鎖もしくは分枝の脂肪族基であり、特に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルである。メチル、エチルまたはn-ブチルが特に好ましい。
【0041】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、R2は、Hであり、R3は、炭素原子1から12個を有する直鎖もしくは分枝の脂肪族基であり、特に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルである。メチル、エチル、またはn-ブチルが特に好ましい。
【0042】
式(I)の少なくとも4つの反復単位は、ポリオルガノシロキサンSに対して上記で定めた条件が満たされる限り、互いに独立に、同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
ポリオルガノシロキサンSは、一般式(I)の4つの反復単位に加えて、さらなるシロキサン反復単位を有し得る。このさらなるシロキサン反復単位は、好ましくは、水素、ヒドロキシル、メチルおよびフェニル基からなる群から選択される基を含有する。
【0044】
好ましいポリオルガノシロキサンSは、少なくとも0.5重量%であるが、60重量%以下である基OB1を含有するものである。ポリオルガノシロキサンSの重量に対して、少なくとも1重量%であるが、50重量%以下である基B1を含有するポリオルガノシロキサンSが、特に好ましい。好ましくは、ポリオルガノシロキサンS中少なくとも70モル%、特に少なくとも90モル%の基B1が一般式(II)の基である。
【0045】
好ましいポリオルガノシロキサンSの分子量は、重量平均分子量Mw、500から5000g/モル、特に好ましくは600から3500g/モルである。
【0046】
好ましいポリオルガノシロキサンSは、少なくとも10モル%、特に少なくとも50モル%のT単位を含み、T単位は、その中で、酸素原子が2個のSi原子に相互に結合するか、または、ヒドロキシル、アルコキシまたはアリールオキシ基OB1の一部であるかに関係なく、Si原子が3個の酸素原子に結合しているものである。
【0047】
さらなる反復単位は、好ましくは、D単位またはM単位、すなわち、その中でSi原子が酸素原子2個と結合している単位(D単位)、または酸素原子ただ1個と結合している単位(M単位)である。
【0048】
ポリオルガノシロキサンSは、加水分解可能基を含有し、一般式(VI)の少なくとも4つの反復単位から構成されているポリオルガノシロキサンCと、
[A1z(R1)pSiO(4-p-z)/2] (VI)
式(VII)のアミノアルコールを
【0049】
【化4】

【0050】
反応させることによって得ることができる。
【0051】
ここで、基R1は、炭素原子最高18個を有するアルコキシもしくはアリールオキシ基、ヒドロキシル基、H、またはCH2基を介してSiに結合しているホスホン酸基もしくはホスホン酸エステル基であり、基A1、R2、R4、R5、R5'、R6、X1、X2、p、z、mおよびqは、上記で定義した通りである。
【0052】
ポリオルガノシロキサンC中は、炭素原子最高18個を有する少なくとも1つのアルコキシまたはアリールオキシ基、およびその中でケイ素原子が酸素原子3個と結合している一般式(VI)の少なくとも1つの反復単位は存在するが、ポリオルガノシロキサンSと異なり、一般式(II)の基は存在しない。
【0053】
式(VII)の適切なアミノアルコールの例は、
- ポリオキシアルキレンジオール、特に、一端がアミノ基で終端しているポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール;
- 一端がアルコキシル化されたポリオキシアルキレンポリアミン、特に、例えば、商品名Jeffamine(登録商標)でHuntsman Chemicalsから得ることができるポリオキシアルキレンポリアミンをモノアルコキシル化することによって得られるもの;
- 一端がアルコキシル化されたポリエチレンイミン、特に、例えば、商品名Lupasol(登録商標)でBASFから得ることができるポリエチレンイミンをモノアルコキシル化することによって得られるもの;
- アンモニアまたは第一級アミンもしくは第二級アミンから出発するエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加生成物;
- エタノールアミン(2-アミノエタノール)、3-アミノプロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-l-プロパノール(アラニノール)、4-アミノ-l-ブタノール、2-アミノ-l-ブタノール、2-アミノ-2-メチル-l-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-l-プロパノール(AMP)およびそれらのN-アルキル化もしくはN-ジアルキル化誘導体;
- 2-(2-アミノエトキシ)エタノールおよびそのN-アルキル化もしくはN-ジアルキル化誘導体。
【0054】
好ましい第一級アミノアルコールは、エタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-l-プロパノール、2-アミノ-2-メチルプロパノールおよび2-(2-アミノエトキシ)エタノールである。
【0055】
好ましい第二級アミノアルコールは、N-メチルエタノールアミン、N-メチル-l-アミノ-2-プロパノール、N-メチル-2-アミノ-l-プロパノール、N-メチル-2-(2-アミノエトキシ)エタノール、N-エチルエタノールアミン、N-エチル-1-アミノ-2-プロパノール、N-エチル-2-アミノ-l-プロパノール、N-エチル-2-(2-アミノエトキシ)エタノール、N-ブチルエタノールアミン、N-n-ブチル-l-アミノ-2-プロパノール、N-n-ブチル-2-アミノ-l-プロパノール、N-n-ブチル-2-(2-アミノエトキシ)エタノールである。
【0056】
好ましい第三級アミノアルコールは、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチル-l-アミノ-2-プロパノール、N,N-ジメチル-2-アミノ-l-プロパノール、N,N-ジメチル-2-(2-アミノエトキシ)エタノール、N,N,N'-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジエチル-l-アミノ-2-プロパノール、N,N-ジエチル-2-アミノ-l-プロパノール、N,N-ジエチル-2-(2-アミノエトキシ)エタノール、N,N,N'-トリエチルアミノエチルエタノールアミン、N,N-ジ-n-ブチルエタノールアミン、N,N-ジ-n-ブチル-l-アミノ-2-プロパノール、N,N-ジ-n-ブチル-2-アミノ-l-プロパノール、N,N-ジ-n-ブチル-2-(2-アミノエトキシ)エタノール、N,N,N'-トリ-n-ブチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,-ジブチル-N'-メチルアミノエチルエタノールアミンである。
【0057】
ポリオルガノシロキサンCは、当業者に周知の化合物であり、例えば、Andreas Tomanek、「Silicone and Technik」、Wacker Chemie GmbH編、Carl Hanser Verlag、Munich、1990年、24〜25頁に記載されている周知の方法で調製し得る。
【0058】
ポリオルガノシロキサンCと式(VII)のアミノアルコールの反応は、好ましくは、事実上完結まで進行する、すなわち、反応生成物には未反応アミノアルコールは、事実上存在しない。アルコキシドなどの塩基は、通常、反応のために使用される。反応中に形成される排出生成物、例えば、アルコールは、好ましくは、本質的に完全な反応を実現するために、真空を使用して、適切なら昇温して反応混合物から分離除去される。
【0059】
組成物は、全体がポリオルガノシロキサンSからなっていてもよいが、あるいはさらなる化合物を含有していてもよい。
【0060】
好ましいさらなる成分は、特に、第1にシランであり、第2に水硬性結合剤である。
【0061】
本発明の一実施形態では、組成物は、ポリオルガノシロキサンSのみでなく、式(IV)の少なくとも1つのオルガノシランをも含有する。
【0062】
【化5】

【0063】
ここで、基R7は、H、または炭素原子最高18個を有するアルキルもしくはアリール基、または式(II)の基である。基R8は、H、または炭素原子最高18個を有するアルキルもしくはアリール基であり、A2は、A1について可能である種類の基である。基A2は、A1と同一であっても、異なっていてもよい。最後に、aは、0、1または2である。複数の基R7が存在する(すなわち、a≠2)場合、これらの基は、互いに独立に、同一であっても、異なっていてもよい。
【0064】
その中でA2が、炭素原子3から12個、特に炭素原子5から9個を有するアルキル基であるオルガノシランは、特に有用である。
【0065】
その中でR7がメチルもしくはエチル、または式(II)の基であるオルガノシランも好ましい。
【0066】
aが0であるオルガノシランが、特に好ましい。
【0067】
この種類の好ましいシランは、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランおよびドデシルトリメトキシシラン、特に、オクチルトリメトキシシランおよびイソオクチルトリメトキシシラン、およびそれらのエトキシ変形体である。
【0068】
驚くべきことに、オルガノシラン、特に、式(IV)のもの、特に、R7がエチルであるものをポリオルガノシロキサンに添加すると、防食剤の浸透が著しく改良されることが分かった。特に、浸透がはるかに速やかに行われることが分かった。複数のウエット-イン-ウエット施用が実施される場合、これは特に有利である。非処理表面に比較して処理コンクリート表面の変色または黒ずみは全くもしくは事実上全く生じないことがさらに分かっている。オルガノシランを添加したため、ポリオルガノシロキサンSの濃度、したがって浸透中排出されるアミノアルコールの濃度は、簡単な方式で、特定の用途の要件に適合させ得る。
【0069】
H、または炭素原子最高18個を有するアルキルもしくはアリール基である1つもしくは複数の基R7を有するオルガノシランは、しばしば広く市販されているか、あるいは簡単な方式で対応するメトキシ誘導体(すなわち、R7=メチル)から、特にエステル交換反応によって調製し得る。この種類の好ましいシランは、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランおよびドデシルトリメトキシシラン、特に、オクチルトリメトキシシランおよびイソオクチルトリメトキシシランである。
【0070】
基R7が式(II)の基である式(IV)のオルガノシランは、ポリオルガノシロキサンSについて上記したのと同じ方法によって調製し得る。ここでもまた、アルコキシオルガノシラン(すなわち、R7=アルキル、特にメチル)は、通常、アミノアルコールによってエステル交換される。ここでもまた、利用に供されたアミノアルコールが事実上完全に反応することが有利である。使用されたアミノアルコールの量に応じて、ジアルコキシシランまたはトリアルコキシシラン(a=0または1)中のアルキル基の全部または一部のみが式(II)の基によって置換され得る。オクチルトリメトキシシランとアミノエタノールの反応生成物をここで例として挙げる。
【0071】
【化6】

【0072】
本発明のさらなる実施形態では、組成物は、ポリオルガノシロキサンSのみでなく、少なくとも1つの水硬性結合剤をも含有する。水硬性結合剤は、特に、セメント、石こうプラスター、フライアッシュまたはスラグなどの鉱物性結合剤、および添加剤である。好ましい水硬性結合剤は、少なくとも1つのセメント、特に、欧州標準規格EN 197に準拠する少なくとも1つのセメント、または無水物の形態の硫酸カルシウムまたは硫酸カルシウム半水和物もしくは二水和物;あるいは水酸化カルシウムを含む。ポルトランドセメント、スルホアルミナートセメントおよび高アルミナセメント、特にポルトランドセメントが好ましい。セメントの混合物が、特に良好な特性をもたらす場合がある。速硬用として、特に、好ましくは、少なくとも1つの高アルミナセメントもしくは他のアルミナート源、例えば、アルミナート供給クリンカー、および適切なら無水物の形態の硫酸カルシウムまたは硫酸カルシウム半水和物もしくは二水和物;および/または水酸化カルシウムを含有する速硬セメント含有結合剤が使用される。
【0073】
組成物は、低粘度から高粘度までの形態、すなわち、ペースト様もしくはゲル様の形態で存在し得る。組成物は、好ましくは、低粘度であり、速やかに浸透する。組成物は、好ましくは、1から100mPas、特に好ましくは、1から50mPas、より好ましくは、1から20mPasまたは5から10mPasの粘度を有する。
【0074】
施用特性を改良するために、組成物は、使用に応じて、低粘度または高粘度のエマルジョンまたは溶液として配合し得る。例えば、組成物は、コンクリート用作業水に水性エマルジョンまたは溶液として添加することによって非常に均一な分布を確実にし得る。鉄筋コンクリート表面へ施用するために、垂直な表面に対しても流下によって生成物を大きく損失することなく、数段階で、好ましくは一段階で100g/m2、特に100から400g/m2の量で施用が可能であるような十分な粘性を有する組成物が、特に適している。
【0075】
組成物は、溶媒、染料、光沢材料、希釈剤、水、乳化剤、増粘剤、チキソトロピー剤、防食剤またはそれらの混合物などの追加の成分をも含有し得る。特に適切な溶媒は、アルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール;エチレングリコール、グリセリンなどの高級アルコール;ポリエチレングリコールなどのポリエーテルポリオール;ならびにブチルグリコール、メトキシプロパノールおよびアルキルポリエチレングリコールなどのエーテルアルコールであるが;また、アルデヒド、エステル、エーテル、アミドまたはケトン、特に、アセトン、メチルエチルケトン、炭化水素、特に、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、ヘプタン、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、ホワイトスピリット、およびそれらの混合物でもある。適切な増粘剤は、例えば、微粉砕粘土鉱物、沈降性シリカまたは焼成シリカである。適切な防食剤は、特に、アミノアルコール、特に、式(VII)のものである。
【0076】
驚くべきことに、上記の組成物は、コンクリート表面への施用に非常に適しており、その中に通常鉄筋が存在するコンクリートの層内へ十分浸透することが分かった。したがって、かかる組成物は、鉄筋の腐食を低減もしくは防止するのに非常に適している。
【0077】
したがって、本発明は、鉄筋コンクリート施工物の鉄筋の腐食を低減するための説明された組成物の使用を提供する。
【0078】
さらなる態様では、本発明は、鉄筋コンクリート施工物の鉄筋の腐食を低減する方法であって、組成物が好ましくは鉄筋コンクリート表面に施用される方法を提供する。
【0079】
組成物の施用は、有利には、要件に応じて、ブラシ、無気スプレー装置、圧縮貯留スプレー装置、ペンキローラー、スプレーバケツなどの補助器具を使用して、スプレー、塗装、噴出、注入、ブラッシングまたはローリングによって実施し得る。組成物は、鉄筋コンクリート表面に対して、50から2000g/m2、好ましくは100〜1000g/m2、より好ましくは150〜500g/m2、最も好ましくは200〜300g/m2の量で施用する。適切であれば、組成物は、特に、所望量の有効物質が、基材の吸収性の低さまたは組成物の性質のために一段階で施用できない場合、数層で、好ましくは2,3または4層で施用する。複数回の施用では、段階間の乾燥時間が必要である場合があり、乾燥時間は、数分から数日、好ましくは半時間から24時間、より好ましくは1から12時間、特に好ましくは2から5時間の範囲が可能である。
【0080】
さらなる実施形態では、本発明は、組成物が生コンクリート、すなわち、未だ硬化していないコンクリートに添加される方法を包含する。ここで、組成物は、好ましくは、コンクリート用の作業水に添加される。組成物は、好ましくは、セメント混合物の重量に対して、0.2から10重量%、好ましくは0.5から5重量%、より好ましくは1から3重量%の量で添加される。
【0081】
したがって、同様に本発明は、上記の組成物と、水硬性結合剤、特に、セメント、石こうプラスター、フライアッシュまたはスラグなどの鉱物性結合剤と、添加剤をも含む水硬性組成物を提供する。好ましい水硬性結合剤は、少なくとも1つのセメント、特に、欧州標準規格EN 197に準拠する少なくとも1つのセメント、または無水物の形態の硫酸カルシウムまたは硫酸カルシウム半水和物もしくは二水和物;あるいは水酸化カルシウムを含む。ポルトランドセメント、スルホアルミナートセメントおよび高アルミナセメント、特にポルトランドセメントが好ましい。セメントの混合物が、特に良好な特性をもたらし得る。速硬用として、特に、好ましくは、少なくとも1つの高アルミナセメントもしくは他のアルミナート源、例えば、アルミナート供給クリンカー、および適切なら無水物の形態の硫酸カルシウムまたは硫酸カルシウム半水和物もしくは二水和物;および/または水酸化カルシウムを含有する速硬セメント含有結合剤が使用される。
【0082】
添加剤として、任意の液状もしくは粉末状コンクリート添加剤を使用することが可能である。硬化促進剤、可塑剤、増粘剤、硬化防止剤、収縮低減剤、消泡剤などの使用が有利である。硬化促進剤や可塑剤等などのこうした添加剤は、一般に周知である。コンクリートをスプレーするために、例えば、商品名Sigunit(登録商標)でSika Schweiz AGから上市されている促進剤は、特に重要である。可塑剤または硬化防止剤として、例えば、商品名Sika(登録商標)ViscoCrete(登録商標)でSika Schweiz AGから上市されているものを使用することが可能である。
【0083】
本発明は、本発明に記載の方法によって処理された、鉄筋の腐食から保護されたコンクリート施工物をさらに提供する。コンクリート施工物は、有利には、地上または地下土木工事、特に、ビルディングまたはトンネル、道路、もしくは橋梁である。
【0084】
ポリオルガノシロキサンSは、アミノアルコールを排出し得る。説明した組成物がコンクリートに施用される場合、ポリオルガノシロキサンは、コンクリート内に浸透する。加水分解の結果、ポリオルガノシロキサンSは、アミノアルコールを排出し、縮合反応を受け得る。これによって、コンクリートの表面上、特に、コンクリートの表面層に疎水層が形成される。形成されたアミノアルコールは、コンクリート内にさらに浸透することができるので、コンクリート中でより深く位置する鉄筋に到達し、腐食から鉄筋を保護することが可能である。したがって、説明された方法によって、鉄筋コンクリートの表面を疎水化し、同時に腐食から鉄筋を保護することが可能になる。
【0085】
最後に、ポリオルガノシロキサンSを含有する組成物は、適切な濃度の対応するアミノアルコールを含有する組成物と比較して、作業現場の毒性および輸送上の利点をも有し、より有利な格付けを得ることができる。施用中、周囲の空気中に蒸発する揮発性アミノアルコールの量がより少ない。特に、このことは、施用中の臭気汚染を大きく低減し得るという追加の利点をもたらす。
【0086】
(実施例)
1.組成物
ポリオルガノシロキサンSを含有する例示組成物の生成、および比較例を以下に説明する。パーセンテージは全て、重量による。別段の指示がなければ、手順は全て、室温(23℃)および大気圧下で(1013mbar(絶対))実施する。装置は、多数の装置製造業者から入手可能であるの通常の実験室用の装置である。
【0087】
(実施例1:1)
重量平均分子量Mw1200およびメトキシ基18%を有するイソオクチルメチルシリコーン樹脂とトリメチルアミノエチルエタノールアミンの反応:
シリコーン樹脂600.00gおよびトリメチルアミノエチルエタノールアミン1122.88gを2lの三口フラスコ中窒素雰囲気下で混合する。装置は還流コンデンサおよび内部温度計をも備える。ナトリウムメトキシド0.86gを混合物に加える。混合物を加熱して還流する(内部温度112℃)。還流を1時間維持する。次いで、混合物を冷却し、還流コンデンサを蒸留ヘッドで置き換える。混合物を大気圧下で3時間蒸留すると、内部温度は135℃まで上昇する。次いで、真空度を60mbarにして、減圧下蒸留をさらに2時間継続する。これによって、わずかな固有の臭気を有する淡黄色で、透明で、わずかに粘性のある液体が得られる。
【0088】
収量:634g、粘度:約100mPa*s(ブルックフィールド粘度計(RVT)、確定せん断速度を有する回転式粘度計、スピンドル番号3、DIN EN ISO 3219に基づく方法)。該液体は、観察した全貯蔵期間にわたり安定のままであった。
【0089】
【表1】

【0090】
(実施例2:2)
重量平均分子量Mw1200およびメトキシ基18%を有するイソオクチルメチルシリコーン樹脂とN-メチルエタノールアミンの反応:
シリコーン樹脂254.94gをN-メチルエタノールアミン245.06gと混合し、ナトリウムメトキシド0.25gを加える。混合物を窒素雰囲気下で調製する。混合物を回転式エバポレータの1lの一口丸底フラスコ中で調製する。仕込んだフラスコを回転式エバポレータに固定する。最初真空度を300mbarにし、次いで油浴を110℃まで加熱する。油浴温度が110℃に到達したら、真空度を注意深く60mbarまで下げる。蒸留を継続するために、浴温を2時間かけて140℃まで上昇させる。2時間後、蒸留物はもはや流出しない。わずかな固有の臭気を有する橙黄色で、透明で、わずかに粘性のある液体305.87gが得られる。粘度:約100mPa*s(ブルックフィールド粘度計(RVT)、確定せん断速度を有する回転式粘度計、スピンドル番号3、DIN EN ISO 3219に基づく方法)。該液体は、観察した全貯蔵期間にわたり安定のままであった。
【0091】
【表2】

【0092】
(実施例3:3)
重量平均分子量Mw1200およびメトキシ基18%を有するオクチルメチルシリコーン樹脂とN-ブチルエタノールアミンの反応:
シリコーン樹脂266.70gをN-ブチルエタノールアミン400.00gと混合し、ナトリウムメトキシド0.33gを加える。混合物を窒素雰囲気下で調製する。混合物を回転式エバポレータの1lの一口丸底フラスコ中で調製する。仕込まれたフラスコを回転式エバポレータに固定する。最初真空度を300mbarにし、次いで油浴を110℃まで加熱する。油浴温度が110℃に到達したら、真空度を注意深く60mbarまで下げる。蒸留を継続するために、浴温を2時間かけて140℃まで上昇させる。2時間後、蒸留物はもはや流出しない。わずかな固有の臭気を有する黄色で、透明で、わずかに粘性のある液体406.26gが得られる。粘度:約150mPa*s(ブルックフィールド粘度計(RVT)、確定せん断速度を有する回転式粘度計、スピンドル番号3、DIN EN ISO 3219に基づく方法)。該液体は、観察した全貯蔵期間にわたり安定のままであった。
【0093】
【表3】

【0094】
(実施例4:4)
50重量%の実施例3と50重量%のイソオクチルトリメトキシシランの混合物を2つの液体を合わせることによって生成した。該液体は、観察した全貯蔵期間にわたり安定のままであった。
【0095】
(実施例5:5)
66.6重量%の実施例3と33.3重量%のイソオクチルトリメトキシシランの混合物を2つの液体を合わせることによって生成した。混合物は、わずかな固有の臭気を有する。該液体は、観察した全貯蔵期間にわたり安定のままであった。
【0096】
(実施例6:6)
66.6重量%の実施例2と33.3重量%のイソオクチルトリメトキシシランの混合物を2つの液体を合わせることによって生成した。混合物は、わずかな固有の臭気を有する。該液体は、観察した全貯蔵期間にわたり安定のままであった。
【0097】
(実施例7:7)
66.6重量%の実施例1と33.3重量%のイソオクチルトリメトキシシランの混合物を2つの液体を合わせることによって生成した。混合物は、わずかな固有の臭気を有する。該液体は、観察した全貯蔵期間にわたり安定のままであった。
【0098】
(実施例8:8)
50重量%の実施例2と50重量%のジプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合物を2つの液体を合わせることによって生成した。混合物は、わずかな固有の臭気を有する。該液体は、観察した全貯蔵期間にわたり安定のままであった。
【0099】
(実施例9:9)
55.6重量%の実施例2と44.4重量%のジプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合物を2つの液体を合わせることによって生成した。混合物は、わずかな固有の臭気を有する。該液体は、観察した全貯蔵期間にわたり安定のままであった。
【0100】
(参考例1:Ref.1)
100重量%のイソオクチルトリメトキシシラン。
【0101】
(参考例2:Ref.2)
98.49重量%のイソオクチルトリメトキシシランと1.51重量%のN-n-ブチルエタノールアミンの混合物を2つの液体を合わせることによって生成した。混合物は、明確な固有の臭気を有する。該液体は、観察した全貯蔵期間にわたり安定のままであった。
【0102】
(参考例3:Ref.3)
66.6重量%のイソオクチルトリメトキシシランと33.3重量%のN-n-ブチルエタノールアミンの混合物(化学量論である、すなわち50モル%:50モル%)を2つの液体を合わせることによって生成した。混合物は、非常に強い固有の臭気を有する。
【0103】
(参考例4:Ref.4)
Degussaから市販されているProtectosil(登録商標)CIT。
【0104】
2.施用試験
組成物を表1および2に示す量でブラシによって材令3年のコンクリートスラブに施用した。
【0105】
コンクリートスラブを、以下の成分を水とともに使用して生成したコンクリートを使用して作製した:
標準規格EN 197-1に合致するポルトランドセメントPC CEM I 42.5 11.25kg
石灰石フィラー 0.75kg
0〜1.2mmの砂24kg
1.2〜4.0mmの砂15kg
4.0〜8.0mmの砂11.25kg
8.0〜16.0mmの砂24kg。
【0106】
コンクリート用の添加剤を全く使用しなかった。水/セメント比(w/c比)は、0.64であり、標準規格EN 12350-5(1999)に従って測定したスランプは、45cmであり、標準規格SIA 162/1A(2003)に従って測定した水通過率qwは、3.8g/m2hであり、標準規格DIN 52617(改訂1996)に従って測定した水吸収係数wは、720+/-80g/m2h0.5であり、標準規格EN 12350-7(2000)に従って測定した空隙率は、3.6%であった。大きさ300×300×80mmを有するコンクリートスラブを生成し、20℃、大気中の相対湿度95%で28日間貯蔵し、続いて耐候性試験に曝露した。28日後の圧縮強度は、30.9MPaであった。組成物を施用する前、プレートを大きさが300×148×80mmの1/2体にノコギリで切断した。水ですすいだ後、このような仕方で得られたスラブ形状の供試体を23℃、大気中の相対湿度50%で雰囲気制御室内で約2週間養生した。
【0107】
コンクリート試験用スラブに防食組成物を施用した後、供試体を1ヶ月間平面屋根上で耐候試験に曝露し、続いてコンクリートスラブの変色、撥水効果および組成物の浸透挙動を分析した。
【0108】
表面疎水化:撥水効果
接触角もしくは濡れ角を測定することによって、表面上に滴下した水をはじく効果を評価した。90°を超える大きい接触角は、良好な撥水効果を示し、90°未満の中程度から小程度の接触角は、不十分な撥水効果を示す傾向がある(表1)。
【0109】
疎水化:浸透挙動
疎水性化合物の浸透挙動を、表面上の疎水ゾーンの厚さを測定することによって求めた。この目的のために、ドリルコア(75mmの環状ビット)を除去し、コンクリートスラブのドリル孔の壁を乾燥させて、次いで壁を水で濡らした。水濡れの有無の境界線は、明確に見ることができた。表面の水に濡れていない、疎水性ゾーンの厚さは、疎水性化合物の浸透深さを示す。浸透深さが増加するにつれて、コンクリートの水の吸収が減少し、同時にその疎水性が向上する。
【0110】
【表4】

【0111】
防食剤の浸透挙動:ニンヒドリン着色反応によるアミノアルコールの検出
防食剤の浸透挙動を深さプロフィールの測定によって、すなわち、試験スラブの多様なコンクリート層で、すなわち、深さ0〜8mm、11〜19mm、22〜30mm、33〜41mmおよび44〜52mmでニンヒドリン着色反応によりアミノアルコール濃度を測定することによって解析した(表2)。
【0112】
ニンヒドリン着色反応を以下のようにして実施した。
コンクリート試験スラブの多様な層からの破砕コンクリート試料1gを秤量しタブレットバイアル中に入れ、蒸留水1mlと混合し、十分振とうし、30分間静置した。液体を0.45μmメンブランフィルタによってろ別した。抽出物を10μlの量のいくつかの部分でTLCプレート(直ぐ使用できるシリカゲル60F254 TLCプレート、20×20cm、Merckカタログ番号105735)に塗布し、オーブン中120℃で2時間賦活した。プレートを分画ごとにヘアドライヤーによって乾燥させた。短時間の乾燥後、TLCプレート全体に、ブタノール50mlおよび氷酢酸1.5ml中にニンヒドリン0.15g(Merck試薬231)を含むスプレー溶液をスプレーし、再度短時間乾燥させた後、エタノール50ml中にニンヒドリン0.1g(Merck試薬231)を含むスプレー溶液をスプレーした。続いてTLCプレートを乾燥オーブン中120℃で約1時間展開した後、評価した。識別の補助とするために、標準溶液(モノエタノールアミン100ng/H2O 10μl)およびブランク(蒸留水)も塗布した。橙色の背景上の赤い点は、試料層中のアルカノールアミンが検出されたことを示す。ブランクの場合、着色反応は起らない。赤い着色を、着色の強度に従って「非常に強い」、「強い」、「中程度」、「わずか」、「痕跡」および「検出不能」として分類した。この格付けを表2に示す:
非常に強い:5
強い:4
中程度:3
わずか:2
痕跡:1
n.d.:検出不能
鉄筋が通常位置する深さ22〜30mmにおけるアミノアルコールの検出が特に重要である。
【0113】
表2の結果は、Ref.1からRef.4の参考例が、たとえあるとしても少量のアミノアルコールしかコンクリート中に導入できないことを示す。実施例1から9は、参考例より臭気が少ない。特に、実施例1から9に比較してアミノアルコールの濃度が増加している参考例Ref.3は、臭気および揮発性において大きな相違を示す。
【0114】
ポリオルガノシロキサンSおよびオルガノシランを使用した実施例(実施例4から7)は、極めて良好な浸透挙動を示すことが分かった。
【0115】
当然のことながら、本発明は、提示し説明された実施例に限定されない。本発明の上記の特徴は、それぞれの場合に示される組合せのみならず、他の改変形態、組合せ、および変形形態、またはそれら自体において本発明の範囲を逸脱することなく使用し得ることはいうまでもない。
【0116】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート施工物の鉄筋の腐食を低減するための組成物の使用であって、組成物が、一般式(I)の少なくとも4つの反復単位を有する少なくとも1つのポリオルガノシロキサンSを含み、
[A1z(B1O)pSiO(4-p-z)/2] (I)
[式中、B1は、H、炭素原子最高18個を有するアルキルもしくはアリール基、または一般式(II)の基のいずれかである
【化1】

(式中、X1およびX2は、それぞれ互いに独立に、O、SまたはNR4であり;
A1、R2、R3およびR4は、それぞれ互いに独立に、水素、または炭素原子最高18個を含有する炭化水素基であり、O、S、Si、Cl、F、Br、PおよびNからなる群から選択されるヘテロ原子をさらに含有し得;
R5、R5'およびR6は、それぞれ互いに独立に、炭素原子1から8個を有する非分枝または分枝のアルキレン基であり;
zおよびpは、それぞれ互いに独立に、0、1、2または3であり;
mは、0、または1から10の整数であり;
qは、0、または1から10の整数である)]
但し、
一般式(II)の少なくとも1つの基と、
炭素原子最高18個を有する少なくとも1つのアルコキシまたはアリールオキシ基と、
その中でケイ素原子が酸素原子3個と結合している一般式(I)の少なくとも1つの反復単位と
がポリオルガノシロキサンS中に存在する使用。
【請求項2】
R6が、式(III)のアルキレン基である
【化2】

[式中、nは、1から10の整数である]ことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
nが、2であることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
R2および/またはR3がそれぞれ、H、または炭素原子1から12個を有する直鎖もしくは分枝脂肪族基であり、特に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルであり、好ましくはメチル、エチルまたはn-ブチルであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
R2が、Hであり、R3が、炭素原子1から12個を有する直鎖または分枝脂肪族基であり、特に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルであり、好ましくはメチル、エチルまたはn-ブチルであることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
A1が、炭化水素基であり、特に、メチル、n-オクチルおよびイソオクチルからなる群から選択される炭化水素基であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
ポリオルガノシロキサンSが、少なくとも50モル%のT単位を含み、T単位は、その中でSi原子が酸素原子3個と結合している単位であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
ポリオルガノシロキサンS中の基OB1の割合が、10から50重量%であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
ポリオルガノシロキサンS中の基B1の少なくとも70モル%が、一般式(II)の基であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
組成物が、式(IV)
【化3】

[式中、R7は、H、または炭素原子最高18個を有するアルキルもしくはアリール基、または式(II)の基であり;
R8は、H、または炭素原子最高18個を有するアルキルもしくはアリール基であり;
A2は、A1について可能であるものと同様の基であり;
aは、0、1または2である]
の少なくとも1つのオルガノシランをさらに含有することを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
A2が、X-R9---である[式中
R9は、O、S、NおよびPからなる群から選択されるヘテロ原子を含有し得る二価の有機基であり;
Xは、H、またはヒドロキシル、エポキシ、メルカプト、アミノ、ウレタン、カルボキシル、アルデヒド、(メタ)アクリロイルオキシからなる群から選択される官能基である]ことを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
組成物が、少なくとも1つの水硬性結合剤をさらに含有することを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
組成物を、鉄筋コンクリート表面に施用することを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
組成物を、鉄筋に施用することを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
組成物を、生コンクリートに添加することを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
請求項1から12のいずれかに記載の使用において使用される組成物を、鉄筋コンクリート表面に施用することを特徴とする、鉄筋コンクリート施工物の鉄筋の腐食を防止する方法。
【請求項17】
組成物を、鉄筋コンクリート表面に複数の層で施用することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組成物を、ブラシもしくはカラーローラーによって鉄筋コンクリート表面に施用する、または前記表面上に吹き付けるもしくはスプレーすることを特徴とする、請求項16または17いずれかに記載の方法。
【請求項19】
組成物を、50から2000g/m2、好ましくは100〜1000g/m2、より好ましくは200〜500g/m2、最も好ましくは250〜300g/m2の量で鉄筋コンクリート表面に施用することを特徴とする、請求項16から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項16から19のいずれかに記載の方法によって処理されるコンクリート施工物。
【請求項21】
コンクリート施工物が、地上もしくは地下土木工事、特に、ビルディング、道路、橋梁、またはトンネルであることを特徴とする、請求項20に記載のコンクリート施工物。

【公表番号】特表2009−515038(P2009−515038A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538363(P2008−538363)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068063
【国際公開番号】WO2007/051833
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】