腫瘍の診断および処置のためのクロロトキシン薬剤の全身性投与
本発明は、悪性腫瘍を処置および診断するための方法および組成物に関する。本発明の方法は、一般に、標識されていてよいか、または標識されていなくてよいクロロトキシン薬剤の全身性(例、静脈内)投与を含んでいる。本発明はまた、局所投与(例えば、腔内)ではなくむしろ全身性投与によって被験者にクロロトキシンを効果的に送達できるという知見を含んでいる。詳細には、本出願人は、クロロトキシンを静脈内投与によって効果的に送達できることを証明した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の情報
本願は、2007年10月12日出願の米国仮特許出願第60/979,714号の利益およびこの仮出願に対する優先権を主張し、この仮出願の内容は、その全体が本明細書により参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
ジャイアント・イエロー・イスラエリサソリ(Leiurus Quinquestriatus)の毒液中で見いだされたクロロトキシンは、癌を診断および処置するための薬剤として大きな将来性を示すことが証明されている。最初は塩化物イオンチャネルブロッカーであると報告された36アミノ酸クロロトキシンペプチドは、131−ヨウ素を用いて神経膠腫を標的とするための候補薬として前臨床試験において調査されてきた(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。神経外胚葉性腫瘍(例えば、神経膠腫および髄膜種)を診断および処置するための組成物(各々の全体を参照として援用する特許文献1および特許文献2を参照されたい)および方法(各々の全体を参照として援用する特許文献3および特許文献4を参照されたい)は、クロロトキシンが神経外胚葉起源の腫瘍細胞に結合する能力に基づいて開発されてきた(非特許文献2;非特許文献4;非特許文献5)。
【0003】
天然型クロロトキシンの合成型であるTM−601は、血液脳関門および組織関門を横断することが証明されている。前臨床試験は、放射性ヨウ化TM−601の安定性、安全性、有効性、および免疫原性の欠如を証明してきた。これらのデータに基づいて、臨床試験(第I/II相)が、再発性高悪性度神経膠腫を有する成人患者における131I−TM−601の腔内送達の安全性、忍容性、生体内分布および線量測定を評価するために実施されてきた。2007年2月現在、第I相試験では131I−TM−601の単回腔内投与を受けた患者18例中、5例は再発から12カ月間以上生存し、2例は再発から36カ月間を超えて生存し、1例の患者は現在も(再発から4年間超)生存している(各々の全体を参照として援用する米国特許出願第11/731,661号および2007年3月30日に出願された国際出願PCT/US2007/08309号を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,905,027号明細書
【特許文献2】米国特許第6,429,187号明細書
【特許文献3】米国特許第6,028,174号明細書
【特許文献4】米国特許第6,319,891号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.A.DeBinら、Am.J.Physiol.(Cell Physiol.),1993,264,33:C361−C369
【非特許文献2】L.Soroceanuら、Cancer Res.,1998,58:4871−4879
【非特許文献3】S.Shenら、Neuro−Oncol.,2005,71:113−119
【非特許文献4】Ullrichら、Neuroreport,1996,7:1020−1024
【非特許文献5】Ullrichら、Am.J.Physiol.,1996,270:C1511−C1521
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの臨床試験で得られた結果は、大いに前途有望であり、腫瘍を診断および処置するためのクロロトキシンの有効性を証明している。上述した臨床試験では、クロロトキシンは腔内経路を使用して投与された。脳内に所在する腫瘍の場合には、腔内送達は手術中に開始される。そこで、手術が必要とされない、または望ましくない場合には、腔内投与が最適な送達経路ではない場合がある。このため、腫瘍を診断および処置するためのクロロトキシンおよびクロロトキシンをベースとする薬剤を投与するための代替戦略が必要である。特に望ましいのは、腔内送達より低侵襲性の投与方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、局所投与(例えば、腔内)ではなくむしろ全身性投与によって被験者にクロロトキシンを効果的に送達できるという知見を含んでいる。詳細には、本出願人は、クロロトキシンを静脈内投与によって効果的に送達できることを証明した。本発明によると、被験者への全身性送達によって、クロロトキシンの腫瘍特異的局在化を達成し、生存期間の改善がもたらされる。
【0008】
本発明のこれらの目的やその他の目的、利点および特徴は、当業者であれば、以下の好ましい実施形態についての詳細な説明を読めば明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、TM−601の様々な培養細胞への結合についての要約を示している表である(実験の詳細については実施例1を参照されたい)。
【図2】図2は、プレート結合アッセイを用いて、ビオチニル化TM−601(TM−602)の多数の癌細胞タイプへの結合を示しているグラフである(実験の詳細については実施例1を参照されたい)。結合は、TM−602が加えられていない細胞に対してストレプトアビジン−HRPコントロールの百分率(%)としてグラフ表示されている。神経膠腫細胞はD54、U251、U373、G26。乳房腫瘍細胞は2LMP、DY3672、LCC6、BT474、SK−BR−3、MCF−7、MDA−MB−231、MDA−MB−468、およびMDA−MB−453。非小細胞性肺癌細胞はA427、WI−62、およびH1466。黒色腫細胞はSKM28。結腸直腸癌細胞はSW948。前立腺癌細胞はPC3、LNCaP、およびDU145。
【図3】図3は、TM−601の様々なヒト組織への結合についての要約を示している表である。
【図4】図4は、TM−601の多形性膠芽腫への特異的結合を示す図である。ヒト正常脳および多形性膠芽腫組織はビオチニル化TM−601(左)または緩衝食塩液(右)を用いて組織化学的に染色した。ビオチニル化TM−601または緩衝食塩液(ペルオキシダーゼ試薬染色コントロールとして)とともに一次インキュベーションした後、組織をペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン、次にペルオキシダーゼ基質とともにインキュベートすると、ビオチニル化TM−601に結合した陽性サンプル中で褐色が生成された。TM−601染色は、腫瘍組織中でのみ見られる(左下)。
【図5】図5は、正常組織と比較した、TM−601のヒト腫瘍組織への特異的結合を示す図である。(A)ビオチニル化TM−601(A、左)または緩衝食塩液(A、右)を用いて組織化学的に染色したヒト腫瘍組織の代表的例を示す図である。(B)ビオチニル化TM−601(B、左)または緩衝食塩液(B、右)を用いて組織化学的に染色した、(A)におけるヒト腫瘍組織に適合させたヒト正常組織の代表的例を示す図である。ビオチニル化TM−601または緩衝食塩液(ペルオキシダーゼ試薬染色コントロールとして)とともに一次インキュベーションした後、(A)および(B)の組織をペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン、次にペルオキシダーゼ基質とともにインキュベートすると、ビオチニル化TM−601に結合したサンプル中で褐色が生成された。陽性染色を示す強い褐色は、ビオチニル化TM−601(A、左)へ曝露した腫瘍組織中でのみ見られた。
【図6】図6Aは、ヌードマウスモデル中のU251−MG脳腫瘍異種移植片における131I−TM−601の有効性を示す図である。グラフ上のデータは、カプラン−マイヤー生存表としてプロットされている。得られた結果は、メジアン生存期間が食塩液群については29日間であり、低温TM−601群については21日間であることを示した。これとは著しく対照的に、131I−TM−601群についてのメジアン生存期間は78日間であった。図6Bは、131I−TM−601の注射後のヒトU251−MG神経膠腫の頭蓋内異種移植片を有する2匹のマウス(第1列:マウス006、第2列:マウス009)のγカメラ画像を示す図である。マウスに腫瘍細胞が移植されてから21日後、131I−TM−601が腫瘍部位内へ注射された。注射の24および96時間後、マウスをγカメラで撮像した。24および96時間後の画像は、腫瘍部位での放射能の優れた残留を示した。
【図7】図7は、マウスモデルにおける静脈内注射後に125I−TM−601および125I−EGFが標的とした脳の結果を要約した表である。
【図8】図8は、未処置およびTM−601処置を受けた、D54MG異種移植片が移植されたマウスについてのカプラン−マイヤー生存曲線を示す図である。
【図9】図9は、マウスにおけるD54MG側腹腫瘍の増殖に対してTM−601および放射線療法(RT)が及ぼす作用を示すグラフである。
【図10】図10は、静脈内(IV)、腹腔内(IP)、皮下(SC)または経口(OP)投与によるTM−601の単回投与後に測定されたマウスの血漿中レベルを示すグラフである。
【図11】図11は、動物においてTM−601を用いて実施されたGLP毒物学試験の結果を要約した表である。
【図12】図12は、再発性または難治性転移性充実性腫瘍を有する患者における静脈内131I−TM−601の第I相イメージングおよび安全性試験において使用された投与スキームを示す図である。
【図13】図13は、相違するタイプの充実性腫瘍を有する患者における静脈内投与後の131I−TM−601の腫瘍特異的取込みについて要約した表である。
【図14】図14は、前立腺癌を有する患者への131I−TM−601(30mCi/0.6mg)の静脈内注射の3時間後、24時間後、および7日間後に記録されたγカメラ画像を示す図である。
【図15】図15は、非小細胞性肺癌を有する患者への131I−TM−601(30mCi/0.6mg)の静脈内注射の3時間後、24時間後、および48時間後に記録されたγカメラ画像を示す図である。
【図16】図16は、悪性神経膠腫を有する患者への131I−TM−601(30mCi/0.6mg)の静脈内注射の3時間後、24時間後、および48時間後に記録されたγカメラ画像を示す図である。
【図17】図17は、脳、肺、肝臓、および右脚の皮下結節へ転移性である黒色腫を有する患者への131I−TM−601の静脈内注射の24時間後および48時間後に記録された全身γカメラ画像を示す図である。
【図18】図18Aは、転移性黒色腫を有する患者の左前頭脳転移を示している処置前磁気共鳴画像(MRI)(左)、および前記患者への131I−TM−601(30mCi/0.2mg)の静脈内注射の24時間後に記録されたSPECT画像(右)を示す図である。図18Bは、転移性黒色腫を有する同一患者の右後頭脳転移を示している処置前MRI(左)、および前記患者への131I−TM−601(10mCi/0.2mg)の静脈内注射の24時間後に記録されたSPECT画像(右)を示す図である。
【図19】図19は、悪性神経膠腫を有する患者の左前頭腫瘍を示している処置前MRI(左)、および前記患者への131I−TM−601の静脈内注射の48時間後に記録されたSPECT画像(右)を示す図である。
【図20】図20は、悪性神経膠腫を有する患者の処置前脳MRI(左)、および前記患者への131I−TM−601(10mCi/0.2mg)の静脈内注射の24時間後に撮像されたSPECT画像(右)を示す図である。
【図21】図21は、悪性神経膠腫を有する患者(図20に示した患者と同一)の処置前に撮像されたMRI(左)、および前記患者への131I−TM−601の静脈内注射の3週間後に撮像されたMRI(右)を示す図である。
【図22】図22は、静脈内注射された非癌性マウスにおける未修飾TM−601と比較した、PEG化クロロトキシン(TM−601−PEG)の半減期を示す図である。PEG化は、TM601の半減期をおよそ32倍増加させた。
【図23】図23は、PEG化TM−601が、マウスCNVモデルにおける未修飾TM−601よりも低頻度の投与で増加した抗血管形成性作用によって証明されるように、増加したAUC(曲線下面積)を達成できることを示している。CNVモデルにおける微小血管密度を未修飾TM−601またはPEG化TM−601に対して様々な投与レジメンについてプロットした。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(用語の定義)
本明細書を通して、以下の段落に規定する様々な用語を使用する。
【0011】
数に関連して本明細書で使用する用語「およそ」および「約」は、一般に、他に特別に規定されていない限り、またはその状況から明白ではない限り(そのような数が100%の可能性値を越える場合を除いて)、その数のいずれかの方向(その数よりも大きい方向または小さい方向)における10%の範囲内に入る数を含んでいる。
【0012】
用語「生物学的に活性」は、ポリペプチドを特徴付けるために本明細書で使用する場合には、前記ポリペプチドと類似もしくは同一特性(例えば、癌細胞に特異的に結合する能力、および/または癌細胞内へ内在化される能力、および/または癌細胞を殺滅する能力)を示すために親ポリペプチドとの十分なアミノ酸配列相同性を共有する分子を意味する。
【0013】
本明細書で使用する用語「癌」は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理的状態を意味するか、またはそれを説明する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が含まれるがそれらに限定されない。より詳細には、そのような癌の例には、肺癌、骨癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚黒色腫もしくは眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、性生殖器癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫が含まれる。
【0014】
本明細書で使用する用語「癌細胞」は、望ましくない無秩序な細胞増殖または組織の異常な残留もしくは異常な侵襲を経験する、インビボにおける哺乳動物(例、人間)の細胞を意味する。インビトロでは、この用語は適切な新鮮培地および空間があることを前提に、無制限に無秩序な方法で増殖する永続的に不死化された株化細胞培養である細胞系もまた意味する。
【0015】
本明細書で使用する用語「癌患者」は、癌に罹患しているか、または癌に感受性である個体を意味し得る。癌患者は、癌であると診断されているか、または診断されていなくてもよい。この用語には、さらにまた以前に癌療法を受けていた個体も含まれる。
【0016】
本明細書で使用する用語「化学療法薬」および「抗癌剤もしくは抗癌薬」は、互換的に使用される。それらは、癌または癌状態を処置するために使用される医薬品を意味する。抗癌薬は、通常以下の群の1つに分類されている:アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物性アルカロイド、挿入抗生物質、アロマターゼ阻害剤、抗代謝薬、細胞分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答修飾剤、抗ホルモン薬および抗アンドロゲン薬。そのような抗癌剤の例には、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、トモゾロミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、デカルバジン、アルトレタミン、メトトレキセート、メルカプトプリン、チオグアニン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、シタラビン、アザシチジン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルチマイド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトーテンおよびアミフォスチンが含まれるがそれらに限定されない。
【0017】
用語「細胞毒性」は、本明細書で成分、化合物、薬物もしくは薬剤を特徴付けるために使用する場合は、細胞の機能を阻害もしくは防止する、および/または細胞の破壊を誘発する成分、化合物、薬物もしくは薬剤を意味する。
【0018】
本明細書で使用する用語「有効量」は、化合物もしくは組成物の、所定の目的、すなわち組織もしくは被験者における所望の生物学的応答もしくは医学的応答を満たすために十分な任意の量を意味する。例えば、本発明の所定の実施形態では、目的は、標的組織へ特異的に結合すること、癌の症状の進行、重大化、もしくは悪化を緩徐化するか、もしくは停止させること、癌の症状の改善を発生させること、および/または癌を治癒させることであってよい。
【0019】
用語「融合タンパク質」は、個々のペプチド骨格を介して共有結合によって連結された、最も好ましくはそれらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を通して生成された2つ以上のタンパク質もしくはそのフラグメントを含む分子を意味する。
【0020】
本明細書で使用する用語「相同」(もしくは「ホモロジー」)は、2つのポリペプチド分子間または2つの核酸分子間の同一性の程度を意味する。両方の比較された配列内の位置が同一塩基もしくはアミノ酸モノマーサブユニットに占められている場合は、各分子はその位置で相同である。2つの配列間のホモロジーのパーセンテージは、2つの配列が共有するマッチングする位置、もしくは相同の位置の数を比較された位置の数で割って100を掛けた数に相当する。一般に、最大ホモロジーを得るために2つの配列が整列されて比較が実施される。相同アミノ酸配列は、同一もしくは類似のアミノ酸残基を共有する。類似の残基は、参照配列内の対応するアミノ酸残基に対する保存的置換、または「許容された点突然変異」である。参照配列内の残基の「保存的置換」は、対応する参照残基と物理的もしくは機能的に類似である、例えば共有結合もしくは水素結合などを形成する能力を含む、類似のサイズ、形状、電荷、化学特性を有する置換である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffらによる「許容された点突然変異」について規定された基準を満たす置換である(“Atlas of Protein Sequence and Structure”,1978,Nat.Biomed.Res.Foundation,Washington,DC,Suppl.3,22:354−352)。
【0021】
用語「個体」および「被験者」は、本明細書では互換的に使用される。それらは疾患もしくは障害(例、癌)に罹患する可能性があるか、または感受性であるが、その疾患もしくは障害を有しているか、または有していない可能性があるヒトもしくは別の哺乳動物(例、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマもしくは霊長類)を意味する。多数の実施形態では、被験者は人間である。他に特に明記しない限り、用語「個体」および「被験者」は、特定の年齢を示さないので、このため成人、小児、および新生児を含んでいる。
【0022】
用語「標識(された)」および「検出可能な薬剤もしくは成分で標識(された)」は、本明細書ではある実体(例、クロロトキシンもしくはクロロトキシンコンジュゲート)が例えば別の実体(例、新生物腫瘍組織)への結合後には可視化できることを明記するために互換的に使用される。好ましくは、検出可能な薬剤もしくは成分は、測定することのできるシグナルを生成し、その強度が結合した実体の量に関連する(例えば、比例する)ように選択される。タンパク質およびペプチドを標識および/または検出するための広範囲の系は、当技術分野において公知である。標識タンパク質およびペプチドは、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段、化学的手段またはその他の手段によって検出可能な標識の組み込み、または標識へのコンジュゲート化によって調製できる。標識成分もしくは標識化成分は、直接的に検出できる(すなわち、検出可能にするためにさらなる反応もしくは操作を全く必要としない、例えば、蛍光体は直接的に検出できる)、または間接的に検出できる(すなわち、検出可能な別の実体との反応もしくは結合を通して検出可能にすることができ、例えば、ハプテンは、蛍光体などのレポーターを含む適切な抗体との反応後に免疫染色によって検出可能である)。適切な検出可能な薬剤には、放射性核種、蛍光体、化学発光剤、微粒子、酵素、比色標識、磁気標識、ハプテン、モレキュラービーコン、アプタマービーコンなどが含まれるがそれらに限定されない。
【0023】
用語「正常」および「健常」は、本明細書では互換的に使用される。それらは、腫瘍を有していない個体もしくは個体の群を意味する。用語「正常」は、本明細書では健常個体から単離された組織サンプルを特定するためにも使用される。
【0024】
「医薬組成物」は、本明細書では、有効量の少なくとも1つの有効成分(例えば、標識できる、もしくは標識できないクロロトキシンもしくはクロロトキシンコンジュゲート)、および少なくとも1つの医薬上許容される担体を含む組成物であると規定されている。
【0025】
本明細書で使用する用語「医薬上許容される担体」は、有効成分の生物学的活性の有効性を妨害せず、かつ投与される濃度で宿主にとって過度に毒性ではない担体媒質を意味する。この用語には、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などが含まれる。医薬活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である(例えば、全体を参照として援用する“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,E.W.Martin,18th Ed.,1990,Mack Publishing Co.:Easton,PAを参照されたい)。
【0026】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、本明細書では互換的に使用され、それらの天然(未荷電)形態または塩としてのいずれかで、また未修飾、またはグリコシル化、側鎖酸化もしくはリン酸化によって修飾されたかのいずれかで、様々な長さのアミノ酸配列を意味する。所定の実施形態では、アミノ酸配列は、全長天然タンパク質である。他の実施形態では、アミノ酸配列は、全長タンパク質のより短いフラグメントである。さらに他の実施形態では、アミノ酸配列は、例えばグリコシル単位などのアミノ酸側鎖へ結合された付加置換、脂質、またはリン酸塩などの無機イオン、ならびに例えばスルフヒドリル基の酸化などの、鎖の化学的変換に関連する修飾によって修飾される。そこで、用語「タンパク質」(もしくはその同等用語)は、その特異的な特性を変化させない修飾を受ける、全長天然タンパク質のアミノ酸配列を含むことが意図されている。詳細には、用語「タンパク質」は、タンパク質アイソフォーム、すなわち、同一遺伝子によってコードされるが、それらのpIもしくはMWまたは両方が相違する変異体を含んでいる。そのようなアイソフォームは、それらのアミノ酸配列において(例えば、選択的スプライシングもしくは制限タンパク分解の結果として)相違する場合があるか、または、示差的翻訳後修飾(例、グリコシル化、アシル化もしくはリン酸化)から発生する可能性がある。
【0027】
本明細書で使用する用語「タンパク質アナログ」は、親ポリペプチドと類似もしくは同一の機能を有するが、必ずしも親ポリペプチドのアミノ酸配列と類似もしくは同一であるアミノ酸配列を含む必要がないか、または親ポリペプチドの構造と類似もしくは同一である構造を有する必要はないポリペプチドを意味する。好ましくは、本発明の状況においては、タンパク質アナログは、親ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも30%(より好ましくは、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を有する。さらに、当業者であれば、タンパク質配列は一般に活性を破壊せずに一部の置換を忍容することを理解できるであろう。そこで、活性を維持しており、通常は少なくとも3〜4、場合によっては20までのアミノ酸を有する1つ以上の高度に保存された領域において、親ポリペプチドと少なくとも約30〜40%、場合によっては約50%、60%、70%、もしくは80%を超える総合配列同一性を共有し、さらに場合によっては90%、96%、97%、98%もしくは99%を超える少なくとも1つの高同一性領域を含む任意のポリペプチドが、用語「タンパク質アナログ」に含まれている。
【0028】
本明細書で使用する用語「タンパク質フラグメント」は、第2ポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも5アミノ酸残基のアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。タンパク質のフラグメントは、親ポリペプチドの機能的活性を有していても、有していなくてもよい。
【0029】
用語「低分子」は、生物学的プロセスに影響を及ぼすように作用できる任意の化学的成分または他の成分を含んでいる。低分子は、現在公知で使用されている任意の数の治療薬を含むことができるか、または生物学的機能をスクリーニングする目的でそのような分子のライブラリー内で合成された低分子であってよい。低分子は、高分子からサイズによって識別される。本発明において使用するために適切な低分子は、通常は約5,000ダルトン(Da)未満、好ましくは約2,500Da未満、より好ましくは1,000Da未満、最も好ましくは約500Da未満の分子量を有する。
【0030】
本明細書で使用する用語「全身性投与」は、薬剤が有意な量で身体内に広く分布され、かつ生物学的作用、例えばその所望の作用を血液中で有し、および/または血管系を介してその所望の作用部位に到達するような薬剤の投与を意味する。典型的な全身性投与経路には、(1)薬剤を血管系内に直接導入するか、または(2)経口、肺、もしくは筋肉内投与による投与であって、ここで薬剤は吸収され、血管系に進入し、血液を介して1つ以上の所望作用部位へ運ばれる投与が含まれる。
【0031】
用語「治療薬」および「薬物」は、本明細書では互換的に使用される。それらは、疾患もしくは臨床状態の処置において有効な物質、分子、化合物、薬剤、因子もしくは組成物を意味する。
【0032】
用語「組織」は、本明細書では広い意味で使用される。組織は、腫瘍細胞を含み得る(しかし、必ずしも含まなくてよい)任意の生物学的実体であってよい。本発明の状況では、インビトロ、インビボおよびエクスビボ組織が考察される。そこで、組織は、個体の一部か、または個体から(例えば、生検によって)入手されてよい。組織は、さらにまた組織学的目的のために採取された冷凍切片、または公知の診断、処置および/もしくは結果履歴を有する記録サンプルなどの組織の切片を含むことができる。用語「組織」は、さらにまた組織サンプルを加工処理することによって引き出された任意の材料を含んでいる。引き出された材料には、組織から単離された細胞(またはそれらの子孫)が含まれるがそれらに限定されない。組織サンプルの加工処理は、濾過、蒸留、抽出、濃縮、干渉成分の不活性化、試薬の添加などのうちの1つ以上を含むことができる。
【0033】
用語「処置」は、本明細書では(1)疾患もしくは状態の発症を遅延させる、もしくは予防すること、(2)疾患もしくは状態の1つ以上の症状の進行、重大化、もしくは悪化を緩徐化もしくは停止させること、(3)疾患もしくは状態の症状の改善を発生させること、(4)疾患もしくは状態の重症度もしくは発生率を減少させること、または(5)疾患もしくは状態を治癒させることを目的とする方法もしくはプロセスを特徴付けるために使用される。処置は、予防もしくは防止作用のために、疾患の発症に先行して投与することができる。あるいは、もしくは追加して、処置は治療作用のために、疾患もしくは状態の開始後に投与することができる。
【0034】
既に上述したように、本発明は、腫瘍を処置および診断するための方法に関する。本明細書に提供した方法は、一般に、検出可能な成分を用いて標識されていてよい、またはされていなくてよいクロロトキシン薬剤の全身性投与を含んでいる。所定の好ましい実施形態では、クロロトキシン薬剤は、静脈内投与される。
【0035】
本発明によると、当該分野の範囲内に含まれる従来型分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術を使用できる。そのような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、Maniatis,Fritsch & Sambrook,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,1982;“DNA Cloning:A Practical Approach,”Volumes I and II,D.N.Glover(Ed.),1985;“Oligonucleotide Synthesis”,M.J.Gait(Ed.),1984;“Nucleic Acid Hybridization”,B.D.Hames & S.J.Higgins(Eds.),1985;“Transcription and Translation”B.D.Hames & S.J.Higgins(Eds.),1984;“Animal Cell Culture”,R.I.Freshney(Ed.),1986;“Immobilized Cells And Enzymes”,IRL Press,1986;B.Perbal,“A Practical Guide To Molecular Cloning”,1984を参照されたい。
I. クロロトキシン薬剤
本発明の処置および診断方法は、有効量の少なくとも1つのクロロトキシン薬剤の、それを必要とする個体への全身性投与を含んでいる。本明細書で使用する用語「クロロトキシン薬剤」は、少なくとも1つのクロロトキシン成分を含む化合物を意味する。所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの治療成分(例えば、抗癌剤)と結合された少なくとも1つのクロロトキシン成分を含んでいる。クロロトキシン成分(および/または治療成分)は、少なくとも1つの標識化成分と結合させることができる。
【0036】
A. クロロトキシン成分
本明細書で使用する用語「クロロトキシン成分」は、クロロトキシン、生物学的に活性なクロロトキシンサブユニットまたはクロロトキシン誘導体を意味する。
【0037】
所定の実施形態では、用語「クロロトキシン」は、配列番号1に規定した天然クロロトキシンのアミノ酸配列を含むLeiurus quinquestriatusサソリ毒に天然に由来する全長36アミノ酸ポリペプチドを意味している(DeBinら、Am.J.Physiol.,1993,264:C361−369)。用語「クロロトキシン」は、例えば米国特許第6,319,891号(本明細書に全体を参照として援用する)に開示されたポリペプチドなどの、合成されたかもしくは組換え生成されている配列番号1を含むポリペプチドを含んでいる。
【0038】
「生物学的に活性なクロロトキシンサブユニット」は、36アミノ酸未満のクロロトキシンを含み、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を保持しているペプチドである。本明細書で使用する、クロロトキシンの「特性もしくは機能」は、異常な細胞増殖を停止させる能力、正常細胞と比較して腫瘍/癌細胞へ特異的に結合する能力、腫瘍/癌細胞内に内在化する能力、および/または腫瘍/癌細胞を殺滅する能力を含むがそれらに限定されない。腫瘍/癌細胞は、インビトロ、エクスビボ、インビトロ、被験者からの一次単離体、培養細胞、または細胞系であってよい。
【0039】
本明細書で使用する用語「生物学的に活性なクロロトキシン誘導体」は、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を保持しているクロロトキシンおよび関連ペプチドの様々な誘導体、アナログ、変異体、ポリペプチドフラグメントおよび模倣物のいずれかを意味する。クロロトキシン誘導体の例には、クロロトキシンのペプチド変異体、クロロトキシンのペプチドフラグメント、例えば、配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7の連続10マーペプチドを含むか、もしくはそれらからなるか、または配列番号1の10〜18もしくは21〜30残基、コア結合配列を含むフラグメント、およびペプチド模倣物が含まれるがそれらに限定されない(内容全体を参照として援用する、国際公開第2003/101474号パンフレットとして公開された国際出願PCT/US03/17410号を参照されたい)。
【0040】
クロロトキシン誘導体の例には、クロロトキシンの活性と関連している、少なくとも約7、8、9、10、15、20、25、30もしくは35連続アミノ酸残基を有する、配列番号1に規定のアミノ酸配列のフラグメントを有するペプチドが含まれる。そのようなフラグメントは、公知のペプチドドメインに対応するアミノ酸配列の領域、ならびに顕著な親水性の領域として同定された、クロロトキシンペプチドの機能的領域を含有していてよい。そのようなフラグメントは、相互に連結された2つのコア配列を、リンカーによって除去または置換された介在アミノ酸配列とともに、任意の順序でさらに含むことができる。
【0041】
クロロトキシンの誘導体には、誘導体配列およびクロロトキシン配列が最大に整列した場合は、少なくとも1つのアミノ酸残基の保存的置換もしくは非保存的置換を含むポリペプチドが含まれる。この置換は、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を増強するか、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を阻害するか、またはクロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能に中立である置換であってよい。
【0042】
本発明を実施する際に使用するために適切なクロロトキシンの誘導体の例は、国際公開第2003/101474号パンフレット(全体を参照として援用する)に記載されている。特定の例には、配列番号8または配列番号13を含むか、またはそれからなるポリペプチド、ならびにその変異体、アナログ、および誘導体が含まれる。
【0043】
クロロトキシンの誘導体の他の例には、例えば、相同組換え、特定部位もしくはPCR突然変異誘発による事前に決定された突然変異を含有するポリペプチド、およびペプチドのファミリーの対立遺伝子もしくは他の天然型変異体;ならびにペプチドが置換、化学的手段、酵素的手段もしくは他の適切な手段によって、天然型アミノ酸以外の成分(例えば、酵素もしくは放射性同位体などの検出可能な成分)を用いて共有結合的に修飾されている誘導体が含まれる。
【0044】
クロロトキシンおよびそのペプチド誘導体は、当技術分野において公知であるように、標準固相(もしくは液相)ペプチド合成法を含む、様々な方法のいずれかを用いて調製できる。さらに、これらのペプチドをコードする核酸は、市販で入手できるオリゴヌクレオチド合成機器を用いて合成することができ、タンパク質は標準組換え生成系を用いて組換え生成することができる。
【0045】
他の適切なクロロトキシン誘導体には、クロロトキシンの三次元構造を模倣するペプチド模倣物が含まれる。そのようなペプチド模倣物は、例えば、より経済的な製造、より大きな化学的安定性、強化された薬理学的特性(半減期、吸収、効能、有効性など)、変化した特異性(例、広域生物学的活性、減少した抗原性など)を含む天然型ペプチドに対して優位な利点を有していてよい。
【0046】
所定の実施形態では、模倣物は、クロロトキシンペプチド二次構造の要素を模倣する分子である。タンパク質のペプチド骨格は、主として、例えば抗体および抗原の相互作用などの、分子相互作用を促進するような方法でアミノ酸側鎖を方向付けるために存在する。ペプチド模倣物は、天然分子に類似する分子相互作用を許容すると予想される。ペプチドアナログは、一般には鋳型ペプチドの特性に類似する特性を有する非ペプチド薬として製薬工業において使用されている。これらのタイプの化合物は、さらにまたペプチド模倣物もしくはペプチドミメティック(例えば、Fauchere,Adv.Drug Res.,1986,15:29−69;Veber & Freidinger,1985,Trends Neurosci.,1985,8:392−396;Evansら、J.Med.Chem.,1987,30:1229−1239)とも呼ばれており、通常はコンピュータ制御分子モデリングを使用して開発されている。
【0047】
一般に、ペプチド模倣物は、パラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的特性もしくは薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、非ペプチド結合によって任意に置換される1つ以上のペプチド結合を有する。ペプチド模倣物の使用は、薬物ライブラリーを作り出すためにコンビナトリアル化学の使用を通して増強することができる。ペプチド模倣物の設計は、例えば、腫瘍細胞へのペプチドの結合を増加または減少させるアミノ酸突然変異を同定することによって補助することができる。使用できるアプローチには、酵母ツーハイブリッド法(例えば、Chienら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1991,88:9578−9582を参照されたい)およびファージ提示法の使用が含まれる。ツーハイブリッド法は、酵母中のタンパク質−タンパク質相互作用を検出する(Fieldら、Nature,1989,340:245−246)。ファージ提示法は、固定化タンパク質とλおよびM13などのファージの表面上で発現するタンパク質との間の相互作用を検出する(Ambergら、Strategies,1993,6:2−4;Hogrefeら、Gene,1993,128:119−126)。これらの方法は、ペプチド−タンパク質相互作用の陽性選択および陰性選択ならびにこれらの相互作用を決定する配列の同定を可能にする。
【0048】
所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、上述したクロロトキシンに類似するか、またはそれに関連する活性を提示する別のサソリ種のポリペプチド毒素を含んでいる。本明細書で使用する用語「クロロトキシンに類似するか、またはそれに関連する活性」は、詳細には、腫瘍/癌細胞への選択的/特異的結合を意味する。適切な関連サソリ毒素の例には、クロロトキシンとのアミノ酸および/またはヌクレオチド配列同一性を提示する、サソリ起源の毒素もしくは関連ペプチドが含まれるがそれらに限定されない。関連サソリ毒素の例には、Mesobuthus martenssi由来のCT神経毒素(GenBankアクセッション番号AAD473730)、Buthus martensii karsch由来の神経毒素BmK 41−2(GenBankアクセッション番号A59356)、Buthus martensii由来の神経毒素Bm12−b(GenBankアクセッション番号AAK16444)、Leiurus quinquestriatus hebraeu由来の推定毒素LGH 8/6(GenBankアクセッション番号P55966)、Mesubutus tamulus sindicus由来の小毒素(GenBankアクセッション番号P15229)が含まれるがそれらに限定されない。
【0049】
本発明において使用するために適切な関連サソリ毒素は、配列番号1に規定した全クロロトキシン配列との少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。所定の実施形態では、関連サソリ毒素には、配列番号8または配列番号13と相同の配列を有する関連サソリ毒素が含まれる。
【0050】
所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤内のクロロトキシン成分が標識される。以下では、標識方法および標識化成分の例について記載する。
【0051】
B. 治療成分
既に上述したように、所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの治療成分に結合した少なくとも1つのクロロトキシン成分を含んでいる。適切な治療成分には、疾患もしくは臨床状態の処置において有効である様々な物質、分子、化合物、薬剤もしくは因子のいずれかが含まれる。所定の好ましい実施形態では、治療成分は、化学療法薬(すなわち、抗癌薬)である。適切な抗癌薬には、癌細胞に対して直接的もしくは間接的に毒性もしくは有害である様々な物質、分子、化合物、薬剤もしくは因子のいずれかが含まれる。
【0052】
当業者であれば理解できるように、治療成分は、合成化合物もしくは天然化合物:単分子、相違する分子の混合物または相違する分子の複合体であってよい。適切な治療成分は、低分子、ペプチド、タンパク質、糖類、ステロイド剤、抗体(そのフラグメントおよび変異体を含む)、融合タンパク質、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、短鎖干渉RNA、ペプチドミメティック、放射性核種などを含むがそれらに限定されない様々なクラスの化合物のいずれかに属し得る。
【0053】
治療成分が抗癌薬を含む場合は、該抗癌薬は、例えば以下のクラスの抗癌薬:アルキル化剤、抗代謝薬、細胞分裂抗生物質、アルカロイド系抗腫瘍剤、ホルモン剤および抗ホルモン剤、インターフェロン、非ステロイド系抗炎症薬、ならびに例えばキナーゼ阻害剤、プロテオソーム阻害剤およびNF−κB阻害剤などの様々な他の抗腫瘍薬の中に見いだすことができる。
【0054】
抗癌薬の例には、一部の名を挙げると、アルキル化剤(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)、抗代謝薬(メトトレキセート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビン(cytarabile)、ゲムシタビン)、紡錘体毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン剤(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)が含まれるがそれらに限定されない。最新の癌療法についてのより包括的な考察については、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmにあるFDA承認抗癌剤の一覧である、http://www.cancer.gov、および全内容を参照として援用するThe Merck Manual、第17版、1999を参照されたい。
【0055】
所定の実施形態では、治療成分は、細胞毒性剤を含んでいる。細胞毒性剤の例には、毒素、他の生物学的に活性なタンパク質、従来型化学療法薬、酵素、および放射性同位体が含まれる。
【0056】
適切な細胞毒性毒素の例には、細菌毒素および植物毒素、例えばゲロニン、リシン、サポニン、シュードモナス属外毒素、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、およびジフテリア毒素が含まれるがそれらに限定されない。
【0057】
適切な細胞毒性生物活性タンパク質の例には、補体系のタンパク質(もしくは補体タンパク質)が含まれるがそれらに限定されない。補体系は、有機体からの病原体を除去して治癒を促進するのに役立つ複雑な生化学的カスケードである(B.P.Morgan,Crit.Rev.Clin.Lab.Sci.,1995,32:265)。補体系は、35を超える可溶性タンパク質および細胞結合タンパク質からなるが、そのうちの12は補体経路に直接的に含まれている。
【0058】
適切な細胞毒性化学療法薬の例には、タキサン系(例、ドセタキセル、パクリタキセル)、マイタンシン系、デュオカルマイシン系、CC−1065、アウリスタチン系、カリチアマイシン系および他のエンジイン系抗腫瘍抗生物質が含まれるがそれらに限定されない。他の例には、抗葉酸塩系(例、アミノプテリン、メトトレキセート、プレメトレキセド、ラルチトレキセド)、ビンカアルカロイド系(例、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、ビンデシン、ビノレルビン)、およびアントラサイクリン系(例、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン)が含まれる。
【0059】
適切な細胞毒性酵素の例には、核酸分解酵素が含まれるがそれらに限定されない。
【0060】
適切な細胞毒性放射性同位体の例には、任意のα−放射体、β−放射体またはγ−放射体が含まれるが、これらは腫瘍部位に局在すると、細胞破壊を生じさせる(S.E. Order, “Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy”, Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwinら、(Eds.),Academic Press,1985)。そのような放射性同位体の例には、ヨウ素−131(131I)、ヨウ素−125(125I)、ビスマス−212(212Bi)、ビスマス−213(213Bi)、アスタチン−211(211At)、レニウム−186(186Re)、レニウム−186(188Re)、リン−32(32P)、イットリウム−90(90Y)、サマリウム−153(153Sm)、およびルテニウム−177(117Lu)が含まれるがそれらに限定されない。
【0061】
あるいは、もしくは追加して、本発明において使用するために適切な治療成分は、全体を参照として援用する2007年8月7日に出願された“Chlorotoxins as Drug Carriers”(米国特許仮出願第60/954,409号)と題する共同所有の仮特許出願に記載された治療成分のいずれかであってよい。そのようなクラスの治療成分の例には、難水溶性抗癌剤、薬物耐性に関連する抗癌剤、アンチセンス核酸、リボザイム、三重らせん剤、短鎖干渉RNA(siRNA)、光増感剤、放射線増感剤、スーパー抗原、プロドラッグ活性化酵素、および抗血管新生剤が含まれるがそれらに限定されない。
【0062】
C. 標識化成分
所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの標識化成分で標識される。例えば、クロロトキシン薬剤内の1つ以上のクロロトキシン成分および/または1つ以上の治療成分は、標識化成分で標識することができる。
【0063】
標識化成分の役割は、試験対象の組織に結合した後にクロロトキシン薬剤の検出を促進することである。好ましくは、標識化成分は、測定できるシグナルを生成し、その強度が組織に結合した診断薬の量に関連する(例、比例する)ように選択される。
【0064】
好ましくは、標識化は、クロロトキシン薬剤の所望の生物学的活性もしくは薬学的活性を実質的に妨害しない。所定の実施形態では、標識化は、1つ以上の標識化成分のクロロトキシン成分への、好ましくはクロロトキシン成分のペプチド配列上の非干渉性位置への結合もしくは組み込みを含んでいる。そのような非干渉位置は、クロロトキシン成分の腫瘍細胞への特異的結合に参加しない位置である。
【0065】
標識化成分は、目的の組織もしくは系に結合した後にクロロトキシン薬剤の検出を可能にする任意の実体であってよい。広範囲の検出可能な薬剤のいずれかは、本発明のクロロトキシン薬剤における標識化成分として使用できる。標識化成分は、直接的に検出可能、または間接的に検出可能である。標識化成分の例としては、様々なリガンド、放射性核種(例、3H、14C、18F、19F、32P、35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu)、蛍光色素(特定の典型的な蛍光色素については、下記を参照)、化学発光色素(例えば、アクリジニウムエステル、安定化ジオキセタンなど)、生物発光剤、スペクトル的に分解可能な無機蛍光半導体ナノ結晶(すなわち、量子ドット)、金属ナノ粒子(例、金、銀、銅および白金)、もしくはナノクラスター、常磁性金属イオン、酵素(酵素の特定の例については以下を参照)、比色標識(例えば、色素、コロイド金など)、ならびにビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、およびタンパク質であってそれらに対する抗血清もしくはモノクローナル抗体を入手できるタンパク質が含まれるがそれらに限定されない。
【0066】
所定の実施形態では、標識化成分は、蛍光標識を含んでいる。様々な化学構造および物理的特性を有する多数の公知の蛍光標識化成分は、本発明の診断方法の実践において使用するために適切である。適切な蛍光色素には、フルオレセインおよびフルオレセイン色素(例、フルオレセインイソチオシアニンもしくはFITC、ナフトフルオレセイン、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセインもしくはFAM)、カルボシアニン、メロシアニン、スチリル色素、オキソノール色素、フィコエリトリン、エリスロシン、エオシン、ローダミン色素(例、カルボキシテトラメチル−ローダミンもしくはTAMRA、カルボキシローダミン6G、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、リサミンローダミンB、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミンもしくはTMR)、クマリンおよびクマリン色素(例、メトキシクマリン、ジアルキルアミノクマリン、ヒドロキシクマリンおよびアミノメチルクマリンもしくはAMCA)、Oregon Green色素(例、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514)、Texas Red、Texas Red−X、Spectrum Red(商標)、Spectrum Green(商標)、シアニン色素(例、Cy−3(商標)、Cy−5(商標)、Cy−3.5(商標)、Cy−5.5(商標))、Alexa Fluor色素(例、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660およびAlexa Fluor 680)、BODIPY色素(例、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY TR、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665)、IRD色素(例、IRD40、IRD 700、IRD 800)などが含まれるがそれらに限定されない。蛍光色素を例えばタンパク質およびペプチドなどの他の化学的実体へ結合させるために適切な蛍光色素および方法のさらなる例については、例えば、“The Handbook of Fluorescent Probes and Research Products”, 9th Ed., Molecular Probes, Inc., Eugene, ORを参照されたい。蛍光標識化剤の好ましい特性には、高いモル吸収係数、高い蛍光量子収量、および光安定性が含まれる。所定の実施形態では、標識化蛍光体は、望ましくはスペクトルの紫外線範囲(すなわち、400nm未満)よりむしろ可視範囲(すなわち、400〜750nm)内の吸収および発光波長を示す。
【0067】
所定の実施形態では、標識化成分は、酵素を含んでいる。適切な酵素の例には、ELISAにおいて使用される酵素、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、およびアルカリホスファターゼが含まれるがそれらに限定されない。他の例には、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ+ペルオキシドおよびアルカリホスファターゼが含まれる。酵素は、例えばカルボジイミド、ジイソシアネート、グルタルアルデヒドなどのリンカー基を使用してクロロトキシン成分にコンジュゲート化することができる。
【0068】
所定の実施形態では、標識化成分は、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)またはポジトロン放射断層撮影法(PET)によって検出可能な放射性同位体を含んでいる。そのような放射性核種の例には、ヨウ素−131(131I)、ヨウ素−125(125I)、ビスマス−212(212Bi)、ビスマス−213(213Bi)、アスタチン−221(211At)、銅−67(67Cu)、銅−64(64Cu)、レニウム−186(186Re)、レニウム−186(188Re)、リン−32(32P)、サマリウム−153(153Sm)、ルテニウム−177(117Lu)、テクネチウム−99m(99mTc)、ガリウム−67(67Ga)、インジウム−111(111In)、およびタリウム−201(201Tl)が含まれるがそれらに限定されない。
【0069】
所定の実施形態では、標識化成分は、γカメラによって検出可能な放射性同位体を含んでいる。そのような放射性同位体の例には、ヨウ素−131(131I)、およびテクネチウム−99m(99mTc)が含まれるがそれらに限定されない。
【0070】
所定の実施形態では、標識化成分は、磁気共鳴イメージング(MRI)における良好なコントラスト増強剤である常磁性金属イオンを含んでいる。そのような常磁性金属イオンの例には、ガドリニウムIII(Gd3+)、クロムIII(Cr3+)、ジスプロシウムIII(Dy3+)、鉄III(Fe3+)、マンガンII(Mn2+)、およびイッテルビウムIII(Yb3+)が含まれるがそれらに限定されない。所定の好ましい実施形態では、標識化成分は、ガドリニウムIII(Gd3+)を含んでいる。ガドリニウムは、MRIのためのFDA承認造影剤であり、異常組織中に蓄積し、これらの異常な領域が磁気共鳴画像上で極めて明るくなる(増強される)原因となる。ガドリニウムは、身体の様々な領域、特に脳内で正常組織と異常組織との間の大きなコントラストを提供することは公知である。
【0071】
所定の実施形態では、標識化成分は、核磁気共鳴分光法(MRS)で検出可能な安定性常磁性同位体を含んでいる。適切な安定性常磁性同位体の例には、炭素−13(13C)およびフッ素−19(19F)が含まれるがそれらに限定されない。
【0072】
D. クロロトキシン薬剤の形成
所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの治療成分と結合された少なくとも1つのクロロトキシン成分を含んでいる。そこで、クロロトキシン剤は、少なくとも2つの他の分子の会合(例、結合、相互作用、融合、またはカップリング)の結果として生じる。
【0073】
クロロトキシン薬剤内のクロロトキシン成分および治療成分の結合は、共有結合もしくは非共有結合であってよい。結合、相互作用、もしくはカップリングの性質には関係なく、クロロトキシン成分および治療成分の結合は、好ましくは、クロロトキシン薬剤が腫瘍および腫瘍中への輸送/送達前または輸送/送達中には解離しないように十分に選択的、特異的および強力である。クロロトキシン薬剤内のクロロトキシン成分および治療成分の結合は、当業者には公知である任意の化学的カップリング、生化学的カップリング、酵素的カップリング、または遺伝学的カップリングを使用して達成することができる。
【0074】
所定の実施形態では、クロロトキシン成分および治療成分の結合は非共有結合である。非共有結合相互作用の例には、疎水性相互作用、静電相互作用、双極子相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、および水素結合が含まれるがそれらに限定されない。
【0075】
所定の実施形態では、クロロトキシン成分および治療成分の結合は共有結合である。当業者には理解されるように、これらの成分は直接的もしくは間接的(例えば、以下で記載するように、リンカーを通して)のいずれかで相互に結合することができる。
【0076】
所定の実施形態では、クロロトキシン成分および治療成分は、相互に直接的に共有結合されている。直接的な共有結合は、アミド結合、エステル結合、炭素−炭素結合、ジスルフィド結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレア結合、アミン結合、またはカーボネート結合などの結合を通してであり得る。共有結合は、クロロトキシン成分および/または治療成分上に存在する官能基を利用することによって達成できる。あるいは、非臨界的アミノ酸は、カップリングのために有用な基(アミノ、カルボキシもしくはスルフヒドリル)を導入する別のアミノ酸によって置換されてよい。あるいは、追加のアミノ酸は、カップリングのために有用な基(アミノ、カルボキシもしくはスルフヒドリル)を導入するためにクロロトキシン成分に追加することができる。成分を一緒に結合するために使用できる適切な官能基には、アミン、無水物、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオールなどが含まれるがそれらに限定されない。例えばカルボジイミドなどの活性化剤は、直接結合を形成するために使用できる。広範囲の活性化剤は当技術分野において公知であり、治療剤およびクロロトキシン成分を結合させるために適する。
【0077】
他の実施形態では、クロロトキシン薬剤の内部のクロロトキシン成分および治療成分は、リンカー基によって相互に間接的に共有結合されている。これは、ホモ官能剤およびヘテロ官能剤を含む、当技術分野において周知の、任意の数の安定性二官能性剤を使用することによって達成できる(そのような薬剤の例については、例えば、Pierce Catalog and Handbookを参照されたい)。二官能性リンカーの使用と活性化剤の使用は、前者は結果として生じるクロロトキシン薬剤中に存在する結合成分を生じさせるが、後者は反応に関与する2つの成分間の直接カップリングを生じさせる点で相違する。二官能性リンカーの役割は、他の不活性である2つの成分間の反応を可能とすることである。あるいは、もしくは追加して、反応生成物の一部になる二官能性リンカーは、それがクロロトキシン薬剤へある程度の立体構造柔軟性を付与するように選択することができる(例、二官能性リンカーは数個の原子を含有する直鎖状アルキル鎖、例えば、2〜10個の炭素原子を含有する直鎖状アルキル鎖を含んでいる)。あるいは、もしくは追加して、二官能性リンカーは、クロロトキシン成分および治療成分の間で形成された結合が切断可能、例えば加水分解可能であるように選択できる(そのようなリンカーの例については、例えば、全体を参照として援用する米国特許第5,773,001号;第5,739,116号および第5,877,296号を参照されたい)。そのようなリンカーは、例えば好ましくは、コンジュゲートの加水分解後にクロロトキシン成分および/または治療成分のより高い活性が観察される場合に使用される。それによって治療成分がクロロトキシン成分から切断され得る典型的な機序には、酸性pHにおけるリソソーム中での加水分解(ヒドラゾン、アセタール、およびcis−アコニテート様アミド)、リソソーム酵素(カプテプシンおよびその他のリソソーム酵素)によるペプチド切断、およびジスルフィドの還元が含まれる。それによって治療成分がクロロトキシン薬剤から切断される別の機序には、細胞外もしくは細胞内での生理的pHでの加水分解が含まれる。この機序は、治療成分をクロロトキシン成分へカップリングさせるために使用される架橋剤が例えばポリデキストランなどの生物分解性/生物腐食性実体である場合に適用される。
【0078】
例えば、ヒドラゾン含有クロロトキシン薬剤は、所望の放出特性を提供する導入されたカルボニル基を用いて作製することができる。クロロトキシン薬剤は、さらに一方の端ではジスルフィド基、他方の端ではヒドラジン誘導体を有するアルキル鎖を含むリンカーを用いて作製することができる。ヒドラゾン以外の官能基を含有するリンカーは、さらにまたリソソームの酸性環境内で切断される可能性もまた有している。例えば、クロロトキシン薬剤は、例えばエステル、アミド、およびアセタール/ケタールなどの細胞内で切断可能な、ヒドラゾン以外の基を含有するチオール反応性リンカーから作製することができる。
【0079】
pH感受性リンカーのクラスの別の例は、アミド基と並置されたカルボン酸基を有する、cis−アコニテートである。カルボン酸は、酸性リソソーム中でアミド加水分解を加速させる。数種の他のタイプの構造を用いて類似タイプの加水分解速度の加速を達成するリンカーもまた使用できる。
【0080】
クロロトキシン薬剤のための別の可能性のある放出法は、リソソーム酵素によるペプチドの酵素的加水分解である。1つの例では、ペプチド毒素はアミド結合によってパラ−アミノベンジルアルコールへ結合し、次にカルバメートもしくはカーボネートがベンジルアルコールおよび治療成分の間で作製される。ペプチドの切断はアミノベンジルカルバメートもしくはカーボネートの崩壊および治療成分の放出を導く。別の例では、フェノールは、カルバメートの代わりにリンカーの崩壊によって切断することができる。別の変形では、ジスルフィド還元がパラ−メルカプトベンジルカルバメートもしくはカーボネートの崩壊を開始させるために使用される。
【0081】
クロロトキシン薬剤内の治療成分がタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドである実施形態では、クロロトキシン薬剤は融合タンパク質であってよい。既に上記で規定したように、融合タンパク質はそれらの個別のペプチド骨格を介して共有結合によって結合された2つ以上のタンパク質もしくはペプチドを含む分子である。本発明の方法において使用する融合タンパク質は、当技術分野において公知である任意の適切な方法によって生成することができる。例えば、それらはポリペプチド合成装置を使用して直接タンパク質合成法によって生成することができる。あるいは、アンカープライマーを使用して遺伝子フラグメントのPCR増幅を実施することができるが、これは2つの連続遺伝子フラグメント間で相補的オーバーハングを発生させ、これは引き続いてアニーリングして再増幅させるとキメラ遺伝子配列を生成することができる。融合タンパク質は、標準組換え法によって入手することができる(例えば、Maniatisら、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,2nd Ed.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring,N.Y.を参照されたい)。これらの方法は、一般に、(1)所望の融合タンパク質をコードする核酸分子の構築;(2)組換え発現ベクター内への核酸分子の挿入;(3)発現ベクターを用いての適切な宿主細胞の形質転換;および(4)宿主細胞内での融合タンパク質の発現、を含んでいる。そのような方法によって生成された融合タンパク質は、当技術分野において公知であるように、培養培地から直接的に、または細胞の溶解のいずれかで回収して単離することができる。形質転換された宿主細胞によって生成されたタンパク質を精製するための多数の方法は、当技術分野において周知である。これらには、沈降法、遠心分離法、ゲル濾過法、および(イオン交換、逆相、および親和性)カラムクロマトグラフィーが含まれるがそれらに限定されない。その他の精製方法は記載されている(例えば、Deutscherら、“Guide to Protein Purification”in Methods in Enzymology,1990,Vol.182,Academic Pressを参照されたい)。
【0082】
当業者であれば容易に理解できるように、本発明の方法において使用されるクロロトキシン薬剤は、任意の数の様々な方法によって相互に結合している、任意の数のクロロトキシン成分および任意の数の治療成分を含むことができる。コンジュゲートの設計は、その所定の目的およびその使用の特定の状況において望ましい特性によって影響を受けるであろう。クロロトキシン薬剤を形成するためにクロロトキシン成分を治療成分に結合させるための方法の選択は、当業者の知識の範囲内に含まれており、一般には、成分間の所望の相互作用の性質(すなわち、共有結合対非共有結合および/または切断可能対切断不可能)、治療成分の性質、含まれる成分上の官能性化学基の存在および性質などに依存するであろう。
【0083】
標識クロロトキシン薬剤では、クロロトキシン成分(もしくは治療成分)および標識化成分の結合は、共有結合であっても非共有結合であってもよい。共有結合の場合には、クロロトキシン成分(もしくは治療成分)および標識化成分は、上述したように、直接的または間接的のいずれかで相互に結合させることができる。
【0084】
所定の実施形態では、クロロトキシン成分(もしくは治療成分)および標識化成分の結合は非共有結合である。非共有結合の例には、疎水性相互作用、静電相互作用、双極子相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、および水素結合が含まれるがそれらに限定されない。例えば、標識化成分は、キレート化によってクロロトキシン成分(もしくは治療成分)に非共有的に結合させることができる(例えば、金属同位体は、クロロトキシン成分に結合、例えば融合されるポリHis領域にキレート化することができる)。
【0085】
所定の実施形態では、クロロトキシン成分(もしくは治療成分)は、同位体標識される(すなわち、通常自然に見いだされる原子質量もしくは質量数とは相違する原子質量もしくは質量数を有する原子によって置換されている1つ以上の原子を含有する)。あるいは、もしくは追加して、同位体をクロロトキシン成分および/または治療成分に結合させることができる。
【0086】
当業者であれば容易に理解できるように、本発明の所定の方法において使用される標識クロロトキシン薬剤は、任意の数の様々な方法によって相互に結合している、任意の数のクロロトキシン成分、任意の数の治療成分、および任意の数の標識化成分を含むことができる。標識クロロトキシン薬剤の設計は、その所定の目的、その使用の状況において望ましい特性、およびその検出から選択される方法によって影響を受けるであろう。
【0087】
II. 処置方法
本発明の処置方法には、有効量のクロロトキシン薬剤、またはその医薬組成物の、それを必要とする個体(すなわち、新生物腫瘍を有する個体)への全身性(例えば、静脈内)投与が含まれる。そこで、本発明の処置方法は、充実性腫瘍のサイズを減少させるため、腫瘍増殖および/または転移を阻害するため、リンパ腺癌を処置するため、および/または癌および癌の状態に罹患している哺乳動物(ヒトを含む)の生存期間を延長させるために使用できる。
【0088】
A. 適応
本発明によって処置できる癌および癌の状態の例には、脳および中枢神経系の腫瘍(例、髄膜、脳、脊髄、脳神経およびCNSの他の部分の腫瘍、例えば膠芽細胞腫もしくは髄質芽細胞腫)、頭頸部癌、乳房腫瘍、循環器系(例、心臓、縦隔および肋膜、その他の強胸郭内器官、血管性腫瘍、および腫瘍関連血管組織)の腫瘍、血管系およびリンパ系の腫瘍(例、ホジキン病、非ホジキン病リンパ腫、バーキットリンパ腫、AIDS関連リンパ腫、悪性免疫増殖性疾患、多発性骨髄腫、および悪性形質細胞新生物、リンパ球性白血病、骨髄性白血病、急性もしくは慢性リンパ球性白血病、単球性白血病、特定細胞型の他の白血病、不特定細胞タイプの白血病、リンパ球組織、造血性組織および関連組織の不特定悪性新生物、例えばびまん性大細胞型リンパ腫、T細胞リンパ腫もしくは皮膚T細胞リンパ腫)、排泄系(例、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、およびその他の泌尿器官)の腫瘍、消化器官(例えば、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸S状結腸移行部、直腸、肛門および肛門管)の腫瘍、肝臓および肝内胆管、胆嚢、および胆道のその他の部分、膵臓、およびその他の消化器官を含む腫瘍、口腔(例、唇、舌、歯茎、口腔底、口蓋、耳下腺、唾液腺、扁桃、中咽頭、鼻咽頭、膿状洞、下咽頭、および口腔の他の部位)の腫瘍、生殖器系(例、外陰部、膣、子宮頸部、子宮、卵巣、および女性生殖器に関連する他の部位、胎盤、陰茎、前立腺、精巣、および男性生殖器に関連する他の部位)の腫瘍、呼吸管の腫瘍(例、鼻腔、中耳、副腔、咽頭、気管、気管支、肺、例えば小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、骨格系(例、下肢の骨および関節軟骨、骨関節軟骨およびその他の部位)の腫瘍、皮膚の腫瘍(例、皮膚の悪性黒色腫、非黒色腫皮膚癌、皮膚の基底細胞癌、皮膚の扁平上皮癌、中皮腫、カポジ肉腫)、ならびに末梢神経系および自律神経系、結合組織および軟組織、腹膜後および腹膜、眼および付属器、甲状腺、副腎、他の内分泌腺および関連構造物、リンパ節の二次および不特定悪性新生物、呼吸器系および消化器系の二次性悪性新生物ならびに他の部位の二次性悪性新生物を含む他の組織を含む腫瘍が含まれるがそれらに限定されない。
【0089】
本発明の所定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、肉腫の処置において使用される。一部の実施形態では、本発明の組成物および方法は、膀胱癌、乳癌、慢性リンパ腫白血病、頭頸部癌、子宮内膜癌、非ホジキン病リンパ腫、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、および前立腺癌の処置において使用される。
【0090】
本発明の所定の実施形態では、組成物および方法は、神経外胚葉起源の腫瘍を処置するために使用される。ヒト患者において存在する神経外胚葉起源の任意の腫瘍は、一般には、本発明の組成物/方法を用いて処置できる。所定の実施形態では、患者が罹患する神経外胚葉起源の腫瘍は、神経膠腫、髄膜種、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経節腫、褐色細胞腫、黒色腫、末梢原始神経外胚葉腫瘍、小細胞肺癌、ユーイング肉腫、および神経外胚葉起源の脳内の転移性腫瘍からなる群の一員である。
【0091】
所定の実施形態では、神経外胚葉起源の腫瘍は、患者の脳を侵す。所定の実施形態では、脳腫瘍は神経膠腫である。すべての原発性脳腫瘍のほぼ半数は神経膠腫である。神経膠腫には4つの主要タイプがある。星状細胞腫(成人および小児の両方において最も一般的な神経膠腫のタイプである)、上衣細胞腫、乏突起膠腫、および混合性神経膠腫。神経膠腫は、それらの位置によって分類できる。テント下(すなわち、脳の下方部分に所在し、小児患者において最も多く見いだされる)またはテント上(すなわち、脳の上方部分に所在し、成人患者において最も多く見いだされる)。
【0092】
神経膠腫は、腫瘍の病理学的評価によって決定される、その悪性度によってさらに類別される。世界保健機関(WHO)は、最も低攻撃性である傾向を示すI度神経膠腫から最も攻撃性および悪性である傾向を示すIV度神経膠腫までの悪性度判定システムを開発している。低悪性度(すなわち、I度もしくはII度)の神経膠腫の例には、毛様細胞性星状細胞腫(若年性毛様細胞性星状細胞腫とも呼ばれる)、線維性星状細胞腫、多形性黄色星状膠細胞腫、および胚芽異形成性神経上皮腫瘍が含まれるがそれらに限定されない。高悪性度神経膠腫は、III度神経膠腫(例、未分化星状細胞腫、AA)およびIV度神経膠腫(多形性膠芽腫、GBM)を含んでいる。未分化星状細胞腫は、30代〜50代の男性および女性間で最も頻回に発生し、全脳腫瘍の4%を占めている。神経膠腫の中で最も侵襲性タイプである多形性膠芽種腫瘍は、50代〜70代の男性および女性間で最も頻回に発生し、全原発性脳腫瘍の23%を占めている。IV度神経膠腫の予後は最も不良であり、平均生存期間は12カ月間である。所定の実施形態では、本発明の方法は、高悪性度神経膠腫を処置するために使用される。
【0093】
積極的な処置にもかかわらず、通常神経膠腫は、頻繁に高悪性度を伴って、ときには様々な形態を伴って再発する。再発率は様々であるが、IV度神経膠腫は常に再発する。そこで所定の実施形態では、本発明の方法は、再発性神経膠腫、特に再発性高悪性度神経膠腫を処置するために使用される。
【0094】
本発明の組成物および方法を用いて処置できる腫瘍には、さらにまた他の化学療法薬を用いた処置に難治性である腫瘍が含まれる。用語「難治性」は、腫瘍に関連して使用する場合は、本発明の組成物以外の少なくとも1つの化学療法薬を用いた処置を受けた際の腫瘍(および/またはその転移)が、そのような化学療法薬を用いた処置後に抗増殖性応答を全く示さないか、または弱い抗増殖性応答しか示さない(すなわち、腫瘍増殖の阻害がないか、そのような阻害が弱い)、すなわち、他の(好ましくは標準の)化学療法薬を用いて全く処置できないか、または満足できない結果しか得られない腫瘍を意味している。本発明は、難治性腫瘍の処置などが言及される場合は、(i)1つ以上の化学療法薬が患者の処置中に既に失敗している腫瘍だけではなく(ii)他の手段、例えば生検および培養によって、化学療法薬の存在下で難治性であると証明できる腫瘍もまた含むと理解すべきである。
【0095】
本発明による処置を受けることのできる患者は、一般に新生物腫瘍を有すると診断された任意の患者を含んでいる。当業者には理解されるように、腫瘍の位置および性質に依存して、イメージング法、生検などの様々な診断方法が実施されてよい。
B. 用量および投与
本発明の処置方法では、クロロトキシン薬剤、もしくはその医薬組成物は、一般には、少なくとも1つの所望の結果を達成するために必要もしくは十分であるような量および時間にわたって投与されるであろう。例えば、クロロトキシン薬剤は、癌細胞を殺滅する、腫瘍サイズを減少させる、腫瘍増殖もしくは転移を阻害もしくは遅延させる、患者の生存期間を延長させる、または臨床的有益性を生み出すような量および時間にわたって投与することができる。
【0096】
本発明による処置は、単回投与またはある期間にわたる複数回投与から構成されてよい。投与は、1日1回もしくは複数回、週1回(もしくは他の複数日間隔で)または断続的スケジュールであってよい。投与すべきクロロトキシン薬剤、もしくはその医薬組成物の正確な量は、被験者毎に変動し、幾つかの因子(下記参照)に依存するであろう。
【0097】
クロロトキシン薬剤、もしくはその医薬組成物は、所望の治療作用を達成するために有効な任意の全身性投与経路を使用して投与されてよい。典型的な全身性投与経路には、筋肉内、静脈内、肺内、および経口経路が含まれるがそれらに限定されない。投与は、さらにまた、例えば、注入もしくはボーラス注射によって、または上皮もしくは皮膚粘膜内膜(例、口腔、粘膜、直腸および腸粘膜など)を通しての吸収によって実施されてよい。所定の好ましい実施形態では、クロロトキシン薬剤は、静脈内投与される。ヒト患者においてクロロトキシン薬剤を静脈内投与するための典型的な方法は、実施例9に記載されている。
【0098】
投与経路に依存して、有効量は、処置対象の被験者の体重、体表面積、または器官/腫瘍サイズによって計算することができる。適切な用量の最適化は、当業者であれば、ヒト臨床試験で観察された薬物動態試験データに照らせば容易に行うことができる。最終用量およびレジメンは、担当医によって、薬物の作用を修飾する様々な因子、例えば薬物の特異的活性、損傷の重症度および患者の応答性、患者の年齢、状態、体重、性別および食事、任意の存在する感染症の重症度、投与時間、他の療法の使用(もしくは不使用)、ならびに他の臨床因子を考察して決定されるであろう。クロロトキシン薬剤を用いた試験が実施されるにつれて、適切な用量レベルおよび処置期間に関する詳細な情報が明らかになるであろう。
【0099】
典型的な用量は、1.0pg/kg(体重)〜100mg/kg(体重)を含んでいる。例えば、全身性投与のためには、用量は100.0ng/kg(体重)〜10.0mg/kg(体重)であり得る。
【0100】
より詳細には、クロロトキシン薬剤が静脈内投与される所定の実施形態では、本薬剤の投与は、約0.001mg/kg〜約5mg/kg、例えば約0.001mg/kg〜約5mg/kg、約0.01mg/kg〜約4mg/kg、約0.02mg/kg〜約3mg/kg、約0.03mg/kg〜約2mg/kgまたは約0.03mg/kg〜約1.5mg/kgのクロロトキシンを含む1つ以上の用量の投与を含むことができる。例えば、所定の実施形態では、各々が約0.03mg/kg、約0.04mg/kg、約0.05mg/kg、約0.06mg/kg、約0.07mg/kg、約0.09mg/kg、約1.0mg/kgまたは1.0mg/kg超のクロロトキシンを含有する1つ以上の用量のクロロトキシン薬剤を投与することができる。他の実施形態では、各々が約0.05mg/kg、約0.10mg/kg、約0.15mg/kg、約0.20mg/kg、約0.25mg/kg、約0.30mg/kg、約0.35mg/kg、約0.40mg/kg、約0.45mg/kg、約0.50mg/kg、約0.55mg/kg、約0.60mg/kg、約0.65mg/kg、約0.70mg/kg、約0.75mg/kg、約0.80mg/kg、約0.85mg/kg、約0.90mg/kg、約0.95mg/kg、約1.0mg/kg、または約1mg/kg超のクロロトキシンを含有する1つ以上の用量のクロロトキシン薬剤を投与することができる。さらにまた別の実施形態では、各々が約1.0mg/kg、約1.05mg/kg、約1.10mg/kg、約1.15mg/kg、約1.20mg/kg、約1.25mg/kg、約1.3mg/kg、約1.35mg/kg、約1.40mg/kg、約1.45mg/kg、約1.50mg/kg、または約1.50mg/kg超のクロロトキシンを含有する1つ以上の用量のクロロトキシン薬剤を投与することができる。そのような実施形態では、処置は、単回用量のクロロトキシン薬剤の投与、または2回、3回、4回、5回、6回、または6回超の投与を含むことができる。2回の連続投与は、1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、7日間隔、または7日間超(例えば、10日間、2週間、または2週間超)の間隔で投与されてよい。
C. 併用療法
本発明の処置方法は、追加の療法と併用して使用できることは理解されるであろう(すなわち、本発明による処置は、1つ以上の所望の治療薬もしくは医療手技と同時か、または先行してか、または引き続いて投与することができる)。そのような併用レジメンにおいて使用するための療法(治療薬もしくは手技)の特定の併用は、所望の治療薬および/または手技の適合性および達成される所望の治療作用を考慮に入れるであろう。
【0101】
例えば、本発明の処置方法は、手術、放射線療法(例、γ線、中性子ビーム放射線療法、電子線放射線療法、陽子線療法、小線源療法、全身性放射性同位体)、内分泌療法、ハイパーサーミア、および凍結療法を含む、処置対象の腫瘍に依存した他の手技と一緒に使用できる。
【0102】
脳腫瘍の多数の症例では、本発明の処置は、術後に極めて頻回に投与されるであろう。脳腫瘍の処置では、手術の主要な目標は、全摘出、すなわち全可視腫瘍の除去を達成することである。そのような目標を達成する際の困難の1つは、これらの腫瘍が浸潤性であること、すなわちそれらは正常脳構造間でジグザグに進行する傾向があることである。さらに、患者の脳から安全に除去できる腫瘍の量には大きな変動性がある。除去は、一般には、腫瘍の全部もしくは一部が臨界的機能を制御する脳の領域内に所在する場合は不可能である。
【0103】
脳腫瘍の多数の症例では、本発明の処置は、しばしば放射線療法と併用して(すなわち、同時か、先行してか、または引き続いて)行われるであろう。従来型処置では、放射線療法は、一般に術後に行われる。放射線は、一般には、数週間にわたって一連の1日1回(分割と呼ばれる)療法として投与される。この放射線を投与するための「分割」アプローチは、腫瘍細胞の破壊を最大化し、正常隣接脳への副作用を最小限に抑えるために重要である。放射線が投与される領域(照射野と呼ばれる)は、実現可能な限り正常脳を含むことを回避できるように注意深く計算される。
【0104】
あるいは、もしくは追加して、本発明の処置方法は、例えば任意の有害作用を減弱させる薬剤(例、制吐薬)などの他の治療薬、および/または他の承認された化学療法薬と併用して行うことができる。化学療法薬の例には、一部の名を挙げると、アルキル化剤(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)、抗代謝薬(メトトレキセート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル、ゲムシタビン)、紡錘体毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン剤(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)が含まれるがそれらに限定されない。最新の癌療法についてのより包括的な考察については、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmにあるFDA承認抗癌剤の一覧である、http://www.cancer.gov、および全内容を参照として援用するThe Merck Manual、第17版、1999を参照されたい。
【0105】
本発明の方法はまた、治療レジメンの一部として細胞毒性剤の1つ以上のさらなる組み合わせと一緒に使用することができるが、細胞毒性剤のさらなる組み合わせは、CHOPP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、COP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、CAP−BOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、プロカルバジン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、m−BACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびロイコボリン)、ProMACE−MOPP(プレドニゾン、メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)、ProMACE−CytaBOM(プレドニゾン、メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、シタラビン、ブレオマイシン、およびビンクリスチン)、MACOP−B(メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン、およびロイコボリン)、MOPP(メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)、ABVD(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、およびダカルバジン)、MOPP(メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾンおよびプロカルバジン)とABV(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、およびビンクリスチン)を交互、MOPP(メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)とABVD(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、およびダカルバジン)を交互、ChlVPP(クロラムブシル、ビンブラスチン、プロカルバジン、およびプレドニゾン)、IMVP−16(イフォスファミド、メトトレキセート、およびエトポシド)、MIME(メチル−gag、イフォスファミド、メトトレキセート、およびエトポシド)、DHAP(デキサメタゾン、高用量シタラビン、およびシスプラチン)、ESHAP(エトポシド、メチルプレドニゾロン、高用量シタラビン、およびシスプラチン)、CEPP(B)(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CAMP(ロムスチン、ミトキサントロン、シタラビン、およびプレドニゾン)、CVP−1(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、ESHOP(エトポシド、メチルプレドニゾロン、高用量シタラビン、ビンクリスチン、およびシスプラチン)、EPOCH(シクロホスファミドのボーラス投与および経口プレドニゾンとともに96時間にわたるエトポシド、ビンクリスチン、およびドキソルビシン)、ICE(イフォスファミド、シクロホスファミド、およびエトポシド)、CEPP(B)(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CHOP−B(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CEPP−B(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、およびブレオマイシン)、ならびにP/DOCE(エピルビシンまたはドキソルビシン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、およびプレドニゾン)から選択される。
【0106】
当業者には理解されるように、本発明の処置方法と併用して投与できる1つ以上の治療薬の選択は、処置対象の腫瘍に依存するであろう。
【0107】
例えば、脳腫瘍のために処方される化学療法薬には、経口摂取されるテモゾロマイド(Temodar(登録商標))、プロカルバジン(Matulane(登録商標))、およびロムスチン(CCNU)、静脈内投与されるビンクリスチン(Oncovin(登録商標)またはVincasar PFS(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、カルムスチン(BCNU、BiCNU)、およびカルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、ならびに経口、静脈内または髄腔内(すなわち、髄液内へ直接的に注射される)投与され得るメトトレキサート(Rheumatrex(登録商標)またはTrexall(登録商標))が含まれるがそれらに限定されない。BCNUはまた、手術中にポリマーウエハインプラントの形態下でも投与される(Giadel(登録商標)ウエハ)。脳腫瘍に対して最も一般的に処方される併用療法の1つは、通常は6週間毎に投与されるPCV(プロカルバジン、CCNU、およびビンクリスチン)である。
【0108】
処置対象の腫瘍が神経外胚葉起源の脳腫瘍である実施形態では、本発明の方法は、例えば発作および脳水腫などの症状を管理するための薬剤と併用して使用できる。脳腫瘍と関連する発作を管理するために成功裏に投与される抗痙攣剤の例には、フェニトイン(Dilantin(登録商標))、カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))およびジバルプロエックスナトリウム(Depakote(登録商標))が含まれるがそれらに限定されない。脳の腫脹は、ステロイド剤(例えば、デキサメタゾン(Decadron(登録商標))を用いて処置できる。
【0109】
D. 医薬組成物
上述したように、本発明の処置方法は、クロロトキシン薬剤それ自体または医薬組成物の形態にあるクロロトキシン薬剤の投与を含んでいる。医薬組成物は、一般には、有効量の少なくとも1つのクロロトキシン薬剤および少なくとも1つの医薬上許容される担体もしくは賦形剤を含むであろう。
【0110】
医薬組成物は、当技術分野において周知の従来方法を使用して製剤化することができる。最適な医薬製剤は、投与経路および所望の用量に依存して変動させることができる。そのような製剤は、投与される化合物の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を及ぼすことがある。製剤化によって、固体、液体または半固体医薬組成物を生成することができる。
【0111】
医薬組成物は、投与の容易さおよび用量の一様性のために投与単位形で製剤化することができる。本明細書で使用する表現「投与単位形」は、処置対象の患者のためのクロロトキシン薬剤の物理的個別単位クロロトキシン薬剤を意味している。各単位は、所望の治療作用を生成するために計算された、事前に規定された量の活性物質を含有している。しかし、組成物の総用量は、堅実な医学的判断の範囲内で担当医によって決定されるであろう。
【0112】
上述したように、所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、注射または注入によって静脈内投与される。注射または注入によって投与するために適切な医薬組成物は、適切な分散剤もしくは湿潤剤、および懸濁化剤を使用して公知の技術に従って製剤化することができる。医薬組成物はまた、例えば2,3−ブタンジオール中の溶液としての非毒性希釈剤もしくは溶媒中の無菌注射液、懸濁液またはエマルジョンであってよい。特に使用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液、U.S.Pおよび生理食塩液であってよい。さらに、無菌の固定油は、溶液もしくは懸濁媒質として従来から使用されている。このために、合成モノグリセリドもしくはジグリセリドを含む任意のブランドの固定油を使用できる。オレイン酸などの脂肪酸もまた、注射用製剤の調製において使用できる。
【0113】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通しての濾過によって、または使用前に無菌水もしくは他の無菌注射用媒質中に溶解もしくは分散させることのできる無菌固体組成物の形態にある無菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0114】
薬物の作用を延長させるために、注射からの薬物の吸収を緩徐化することがしばしば望ましい。これは、油性ビヒクル中に有効成分を溶解または懸濁させることによって実施することができる。注射用デポー形は、例えばポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって製造される。薬物対ポリマーの比率および使用される特定ポリマーの性質に依存して、薬物の放出速度を制御することができる。デポー注射用製剤はまた、身体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を封入することによって調製することができる。
【0115】
III. 診断方法
A. 投与
別の態様では、本発明は、腫瘍をインビボ診断するための方法を提供する。より詳細には、患者における非新生物組織から新生物腫瘍組織を識別するための方法が提供される。そのような方法は、本明細書に記載した有効量の標識クロロトキシン薬剤、またはその医薬組成物を患者へ、組織が新生物である場合は標識クロロトキシン薬剤の組織への特異的結合が発生できるように、全身性(例えば、静脈内)投与することを含んでいる。
【0116】
一般に、標識クロロトキシン薬剤の用量は、患者の年齢、性別、および体重、試験対象の身体の領域、ならびに投与経路などの検討材料に依存して変動するであろう。禁忌、併用療法、およびその他の変量などの因子もまた、投与すべき標識クロロトキシン薬剤の用量を調整するために考慮に入れるべきである。しかしこれは、経験を積んだ医師によって容易に達成することができる。一般に、標識クロロトキシン薬剤の適切な用量は、患者における新生物腫瘍組織の検出を可能にするために十分である薬剤の最少量に一致する。
【0117】
例えば、クロロトキシン薬剤が131Iで標識されていて静脈内投与される場合は、標識クロロトキシン薬剤の投与は、各々が約5mCi〜約100mCi、例えば、約5mCi〜約80mCi、約10mCi〜約80mCi、または約10mCi〜約50mCiの131Iを含む1つ以上の用量の投与を含むことができる。例えば、各々が約10mCi、約20mCi、約30mCiの131I、約40mCiの131I、約50mCiの131I、約60mCiの131I、約70mCiの131I、約80mCiの131I、約90mCiの131I、または約100mCiの131Iを含有する1つ以上の用量の131I放射標識クロロトキシン薬剤を投与することができる。そのような実施形態では、診断方法は、単回用量の131I−放射標識クロロトキシン薬剤の投与、または例えば、2回、3回もしくは4回などの複数回用量の投与を含むことができる。2回の連続投与は、1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、7日間隔、または7日間超の間隔で投与されてよい。
【0118】
131I−放射標識クロロトキシン薬剤が使用される実施形態では、患者には、好ましくは131I放射標識クロロトキシン薬剤の投与に先行して(例えば、本発明による処置の1日前、2日前、または3日前に)過飽和ヨウ化カリウムが投与される。過飽和ヨウ化カリウムの投与は、甲状腺による131Iの取込みを遮断するので、甲状腺機能低下症などの副作用を予防する。
【0119】
標識クロロトキシン薬剤の投与に続いて特異的結合が発生するために十分な時間が経過した後に、結合した標識クロロトキシンの検出が実施される。
【0120】
B. 腫瘍の検出および局在化
当業者であれば認識できるように、標識クロロトキシン薬剤の目的の組織への結合の検出は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段または化学的手段を含むがそれらに限定されない任意の多種多様な方法によって実施できる。検出方法の選択は、一般には薬剤の標識化成分(すなわち、蛍光成分、放射性核種、常磁性金属イオンなど)の性質に基づくであろう。所定の好ましい実施形態では、患者の体内の腫瘍の検出および局在化は、イメージング技術を用いて実施される。
【0121】
標識化成分の性質に依存して、様々なイメージング技術が使用できる。例えば、結合は、標識化成分が常磁性金属イオン(例、Gd3+)を含む場合には、磁気共鳴イメージング(MRI)を用いて検出することができる。標識化成分が放射性同位体(131Iなど)を含む場合は、結合を検出するために単光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)および/またはポジトロン放射断層撮影(PET)を使用できる。その他のイメージング技術には、γカメライメージングが含まれる。
【0122】
C. 診断
本発明の診断方法によると、組織は、標識クロロトキシン薬剤の目的の組織への結合レベルが標識クロロトキシン薬剤の正常組織への結合レベルと比較して上昇している場合、新生物組織であると同定される。既に上述したように、正常組織は、本明細書では非新生物組織であると規定されている。例えば、本方法がインビボで実施されると、目的の器官(例、脳)の領域内で測定された標識クロロトキシン薬剤の結合レベルは、同一器官の正常領域内で測定された標識クロロトキシン薬剤の結合レベルと比較することができる。
【0123】
所定の実施形態では、目的の組織は、測定された結合レベルが正常組織への結合レベルより高い場合は、新生物組織であると同定される。例えば、結合レベルは、正常組織への結合レベルの少なくとも約2倍より高い、少なくとも約3倍より高い、少なくとも約4倍より高い、少なくとも約5倍より高い、少なくとも約10倍より高い、少なくとも約25倍より高い、少なくとも約50倍より高い、少なくとも約75倍より高い、少なくとも約100倍より高い、少なくとも約150倍より高い、少なくとも約200倍より高い、または200倍より高くてよい。
【実施例】
【0124】
以下の実施例では、本発明を作製および実施する好ましい様式の一部について記載する。しかし、これらの実施例は例示することだけを目的としており、本発明の範囲を制限することは意図していないことを理解されたい。さらに、実施例の中の記載が過去形で記載されていない限り、本文は、本明細書の他の部分と同様に、実験が実施された、またはデータが実際に入手されたと示唆することを意図していない。
【0125】
実施例1 TM−601およびビオチニル化TM−601(TM−602)のインビトロ細胞結合
最初にLeiurus quinquestriatusサソリ毒から単離された36アミノ酸ペプチドであるTM−601の腫瘍細胞系および正常一次細胞培養への結合を試験した。得られた結果は、TM−601が多数の相違する腫瘍タイプへ選択的に結合するという以前の予備試験観察をさらに確証した。ヒト、サル、ラット、ハムスター、およびマウス由来のものを含む、ヒト、ラット、およびマウス神経膠腫細胞系、培養一次細胞、および非神経膠腫細胞系をTM−601結合について試験した。さらに、例えば肺腫瘍、結腸腫瘍、前立腺腫瘍および黒色腫に由来する腫瘍系を含む多数の非神経膠腫細胞系もまたTM−601に結合することが見いだされた。これとは対照的に、使用した実験条件下では、多数の一次培養細胞(ラットおよびヒト星状膠細胞)および非神経膠腫細胞系(ヒト肺線維芽細胞、ヒト皮膚線維芽細胞、ヒト臍血管内皮細胞、ヒトニューロン細胞、および3T3マウス線維芽細胞)はTM−601結合について陰性であることが見いだされた。得られた全データを図1に要約する。
【0126】
プレート結合における、およびFACSアッセイによる細胞上のTM−601結合の証明:様々な癌のタイプを示している広範囲の腫瘍細胞系を標的とすることを証明するために、ビオチニル化TM−601(TM−602)をプレート結合アッセイにおいて使用した。試験したヒト癌細胞系は、転移性および原発性乳癌、肺癌、前立腺癌、脳癌、結腸直腸癌、および黒色腫を含んでいた。より詳細には、試験した神経膠腫細胞はD54、U251、U373、およびG26、乳房腫瘍細胞は2LMP、DY3672、LCC6、BT474、SK−BR−3、MCF−7、MDA−MB−231、MDA−MB−468、およびMDA−MB−453、非小細胞肺癌はA427、WI−62、およびH1466、黒色腫はSKM28、結腸直腸癌はSW948、ならびに前立腺癌細胞はPC3、LNCaP、およびDU145を含んでいた。
【0127】
96ウェルプレート内のサブコンフルエント培養は、TM−602を生存細胞に添加し、その後に色基質を発色させるためにストレプトアビジン−HRPを添加することによって結合についてアッセイした。結合は、TM−602が加えられていない細胞と比較したストレプトアビジン−HRPコントロールの百分率として決定した。試験した全腫瘍細胞系はTM−602に結合することが見いだされたが、3つのヒト乳腺腺癌細胞系への結合は試験した他の腫瘍細胞より低かった(図2を参照されたい)。
【0128】
TM−601の血液系癌との反応性を証明するために、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用した。ビオチニル化TM−601(TM−602)を使用して、ヒト非ホジキンリンパ腫、T細胞白血病、および黒色腫細胞系を染色した。FACS分析によって、全血液系腫瘍細胞系はTM−602に結合した(2種のリンパ腫、1種のT細胞白血病、および1種の骨髄性白血病)。
【0129】
実施例2 非標識TM−601は、インビトロでの腫瘍細胞増殖を減少させない
白血病、黒色腫ならびに肺癌、結腸癌、脳癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌および腎臓癌を提示する56種のヒト腫瘍細胞系を含有するインビトロ細胞系スクリーニングは、米国立癌研究所によって実施された。TM−601をスクリーニング科へ提出した。得られた結果は、TM−601が試験した細胞系のいずれにとっても細胞毒性ではないことを証明した。追跡実験として、低血清増殖条件下で細胞毒性活性が明白であったかどうかを決定するために、単一細胞系であるPanc−1をある範囲の血清濃度(10%、5%、2%、1%)で試験した。クロロトキシンの有意な細胞毒性は観察されず、これはクロロトキシンに対する主要作用機序が腫瘍細胞への直接的な細胞毒性作用を介してではないことを示している。
【0130】
実施例3 ビオチニル化TM−601のインビトロ組織結合
ビオチニル化TM−601(TM−602)を用いた組織化学的染色試験は、ヒト生検標本および/またはヒト剖検標本のパラフィン中に包埋された固定組織または冷凍切片に対してTM−601結合部位を局在化するために実施した。これまで、200片を超える脳腫瘍生検および剖検標本をTM−601結合について評価した。これらの試験には、神経膠腫、他の悪性腫瘍、および非新生物組織が含まれた。本試験およびその後の試験の結果を図3に提示する。
【0131】
一般に、ほぼ全部の神経膠腫はTM−601に対する顕著な染色活性を示したが、正常な非腫瘍組織は示さなかった。所定の腫瘍内のTM−601陽性細胞のパーセンテージは50〜98%の範囲に及び、WHO悪性度の上昇に伴って増加した。TM−601による神経膠腫の特異的な染色の例を図4に示す。さらに、第I相臨床試験からの全患者の脳腫瘍組織サンプルは強固なビオチニル化TM−601染色を示したが、非癌脳組織はほんのわずかなバックグラウンド染色しか示さなかった。
【0132】
本試験におけるその他の陽性組織は、神経膠腫に類似する胚起源を有する末梢神経外胚葉腫瘍(PNET)を含んでいた。TM−601によるPNETの組織化学的染色の例を図5に示す。
【0133】
これらの非神経膠腫における染色の証明は、例えばTM−601などのクロロトキシン薬剤が神経膠腫以外の多数の腫瘍を標的とするために使用できることを示唆している。その後の試験は、TM−601が標的とする腫瘍のタイプを、例として乳癌、乳癌転移、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、およびリンパ腫を含むタイプへと広げた。
【0134】
実施例4 担癌マウスにおける131I−TM−601の有効性
131I−TM−601がヒト神経膠腫異種移植マウスモデルにおいて生存期間を延ばす能力について試験した。各々少なくとも10匹のヌードマウスからなる3つの群に、ヒト神経膠腫細胞系U251−MGを頭蓋内に移植した。U251−MG細胞は、食塩液、非標識(「低温」)TM−601または1.65mCiの131I−TM−601のいずれかを用いてエクスビボで30分間にわたり前処置した。次に細胞を食塩液で洗浄し、およそ1×106細胞を脳内に導入した。131I−TM−601を投与された細胞上の結合放射能量は、エクスビボで細胞に適用された総線量の0.2%に過ぎなかった。これは、0.5mCiのヒト脳線量に一致する。
【0135】
メジアン生存期間は、非標識TM−601および食塩液処置動物各々において、21および29日間に達した。これとは対照的に、この同一期間中に131I−TM−601処置動物においては、動物は1匹も死亡しなかった(図6Aを参照されたい)。第21日に、各群に残っている動物には各エクスビボ化合物(食塩液、非標識TM−601、または0.165mCiの131I−TM−601のいずれか)を頭蓋内に注射し、131I−TM−601処置動物の一部では第22日(処置24時間後)および第25日(処置96時間後)にγカメライメージングを実施した。γカメライメージングは、脳内の131I−TM−601の濃度を示したが、これは放射能が注射部位で24時間にわたり維持されていたことを示していた。イメージングはさらに、TM−601に結合すると、放射能がこの期間にわたって他の組織による取込みをほとんど伴わずに96時間超にわたり腫瘍の領域内に特異的に維持されることを証明した(図6Bを参照されたい)。
【0136】
131I−TM−601処置群のメジアン生存期間は腫瘍移植後78日に達し、本試験が90日目に終了した時点では、14例の131I−TM−601処置動物中5匹の動物が未だ生存していた。131I−TM−601で処置された動物群においては169%の生存率が見られた。薬物は、処置されたマウスに良好に忍容され、化合物関連挙動作用は認められなかった。これらの結果は、ヌードマウスモデルにおける131I−TM−601などの標識クロロトキシン薬剤の治療有効性および診断能力を証明している。これは、U251−MG腫瘍細胞系の放射線耐性およびたった2回の放射線投与を考察すると顕著であり、さらに高悪性度神経膠腫を処置およびイメージングするためのクロロトキシン薬剤の臨床適用を支持している。
【0137】
実施例5 担癌マウスに静脈内投与された125I−TM−601
125I−TM−601が血液脳関門を横断する能力を評価するために一連の実験を実施した。これらの実験は、E54−MG/SCIDマウスモデルを利用した5件の研究試験から構成された。これらの試験では、125I−TM−601を尾静脈を介して注射し、その後のTM−601が脳腫瘍を標的とする能力を24時間後に測定した。1つの実験はまた、コントロールとして125I−EGFを利用したが、これはEGF受容体がこれらの腫瘍内ではアップレギュレートされることが公知であるからである。コントロールとしてのEGFの使用は、TM−601のようなEGFが頭蓋内に注射された場合に神経膠腫細胞に結合することが証明されているために、重要である。図7から明らかなように、125I−TM−601の静脈内注射によって、これらの動物の脳の右半球内に移植されたD54−MG異種移植ヒト神経膠腫を特異的に標的としたが、これは静脈内投与された125I−TM−601が血液脳関門を横断することを証明している。さらに、125I−EGFの静脈内注射が何らかの感知可能な程度まで脳腫瘍へ局在化せず、これは125I−EGFが無傷血液脳関門を横断しなかったことを示していることに注目することが重要である。これらの実験から、例えば125I−TM−601などのクロロトキシン薬剤は血液脳関門を横断し、その生物学的に活性な状態で脳内に所在する腫瘍に到達すると結論付けられた。
【0138】
実施例6 担癌マウスに静脈内投与されたTM−601の有効性
全身性投与された125I−TM−601は、血液脳関門を横断して頭蓋内腫瘍に結合することを前提として、静脈内投与経路を使用して脳内での抗腫瘍活性について試験するために、非標識TM−601を用いた実験を実施した。
【0139】
ヌードマウスの頭蓋内にD54MG神経膠腫細胞を移植した。異種移植片の移植14日後に開始して、週に2度、食塩液または2種の用量のTM−601(マウス1匹当たり、注射1回当たり0.2μgまたは2.0μg)のいずれかで長期尾静脈注射を全試験期間にわたって実施した。この実験からの生存曲線は、高用量のTM−601が与えられた動物において生存期間の強化が発生したことを証明している(図8)。メジアン生存期間(動物の50%が生存している期間)を測定すると、高用量TM−601処置によってメジアン生存期間は34日間(食塩液群)から56日間へ用量依存様式で延長した。低用量TM−601は、同様の寿命延長を示さなかった。さらにこれは、非標識分子の長期全身性投与がマウスモデルに与えられると有効であることを示唆している。生存期間延長が腫瘍細胞への直接的な作用に起因するか、または別の作用に関連するかを識別するためには、D54MG脳腫瘍を有する処置された動物についての詳細な組織学的分析が必要であろう。
【0140】
単剤療法としての非標識TM−601の治療能力を裏付ける追加の1つの予備試験は、マウス側腹腫瘍モデルを用いたTM−601の長期全身性(i.v.)送達である。この異種移植腫瘍モデルを使用して、D54MGヒト神経膠腫細胞をヌードマウス(1群に付き7〜8匹)の側腹部に移植した。14日後に開始して、非標識TM−601は、マウス1匹当たり、注射1回当たり0.26μgの用量で尾静脈を介して2回投与した。1群の動物はTM−601処置を受け、1群は2Gyの放射線(RT)を週2回受け、第3群はRTおよびTM−601を受けた。第52〜53日の間に、TM−601および/またはRTの最終投与を行い、動物は第67日まで試験した。TM−601群ならびにTM−601およびRT併用群についての腫瘍増殖曲線は、療法中および療法終了後に極めて密接に整列している(図9)。
【0141】
RT群についての曲線は、腫瘍がRT単独群より緩徐に増殖することを示唆している。しかし、平均値の標準誤差を示すエラーバーは、特に後期の時点にはばらつきのレベルを示している。このことや小さなサンプリングサイズ(試験終了時に、RT単独群についてはn=5および他の群についてはn=8)のために、腫瘍増殖の差は統計的に有意であるとは思われなかった。このデータは、TM−601およびRTの両方が38〜39日間の治療経過にわたって疾患進行を防止したこと、治療の完了後には腫瘍が増殖し始めたことを示唆している。より結論的に言えば、治療無しでの腫瘍進行速度を確立するためにコントロール群を含めるべきであったが、歴史的には、このD54MG側腹モデルにおける腫瘍はこの実験で観察されたものよりも高速で増殖する。そこでこの予備試験は、単剤療法としてのTM−601の長期全身性送達がこの側腹腫瘍モデルにおいて有効であると示唆している。
【0142】
要約すると、クロロトキシンを用いたインビトロ試験は、神経膠腫、神経外胚葉組織を含む多数の腫瘍細胞タイプ、ならびに例えば乳癌および前立腺癌などの多数の他の腫瘍への特異的結合を証明した。この組織学的結合は、腫瘍細胞系を用いて確証された。この結合は、正常組織への結合が有意に弱かったので、腫瘍に選択的であると思われる。インビボモデルを使用すると、131I−TM−601の頭蓋内注射および非標識TM−601の反復全身性注射は、頭蓋内神経膠腫異種移植片を有する動物の寿命を延長させることが証明されている。これらのデータは、放射標識TM−601が放射活性タグの局所的送達を介して腫瘍増殖に大きな影響を及ぼすのに対し、非標識TM−601は未だ不明確な機序を通して腫瘍増殖に大きな影響を及ぼすことを示唆している。
【0143】
実施例7 動物におけるTM−601の薬物動態および代謝
ヌードマウスにおけるTM−601の薬物動態:TM−601の血漿中レベルおよび尿レベルを、ヌードマウスへの単回用量で2μgのTM−601の静脈内(IV)、腹腔内(IP)、皮下(SC)または強制経口(PO)送達後に測定した。TM−601は、TM−601と交差反応するウサギ抗TM−701抗体を使用するELISAアッセイを使用して検出された。TM−701は、1つのアミノ酸(残基29でのチロシン置換)によってTM−601とは相違する。2μgのTM−601の単回投与後の血漿中レベルを図10に示す。最高ピーク血清レベル(Cmax)は静脈内注射後に観察され、その後に皮下投与、腹腔内投与および強制経口投与が続いた。TM−601の血漿中レベルは、強制経口投与の場合は定量不能であった。
【0144】
血漿中のTM−601の半減期は、静脈内投与については17.7分、皮下投与については27.4分であると計算された。TM−601は、単回で2μgの腹腔内注射または皮下注射の30、60または240分後に犠牲にした動物の尿中で測定された。TM−601は、腎クリアランス中に高度に濃縮される。経時的な総尿産生量についてのより詳細な情報がなければ、尿を通して排泄されたTM−601の総量および排泄動態を決定することができない。薬物投与から4時間以内に、循環TM−601がアッセイ検出レベル未満に減少した場合は、尿中の濃度もまた検出レベル未満に低下した。IV、IP、SCまたは強制経口投与の場合、TM−601の薬物動態は大まかには3つの相違するプロファイルに分類することができる。静脈内注射は、測定した最早時点にて血液中の薬物の大きなボーラスピークをもたらす。薬物は次に、およそ18分の半減期で下降する。これとは対照的に、腹腔内送達または皮下送達のいずれかは、TM−601がより緩徐に注射部位から血液区画内に進入するにつれて、推定できるより緩徐な動態プロファイルをもたらした。さらに、半減期は、同様におよそ27分へ増加する。半減期におけるこの増加は、循環レベルが皮下注射部位からの薬物の持続的放出と排出/代謝との間の平衡を表している、より複雑な血液内の薬物動態プロファイルによって説明することができた。第3のタイプの薬物動態プロファイルは、強制経口投与後に示された。血漿中レベルは、アッセイのバックグラウンドよりほんのわずかに上であったが、定量することができた。そこで、現行の製剤では、経口投与の経路は全身性循環に効果的には到達しない。
【0145】
これらをまとめると、得られたインビトロおよびインビボデータは、TM−601が高度の特異性および感受性で腫瘍に結合すること、TM−601が血液脳関門を横断できることを示唆している。動物では、放射標識TM−601の投与は良好に忍容され、腫瘍における高い選択性および優れた滞留を示した。
【0146】
実施例8 動物に静脈内投与されたTM−601の毒性
TM−601の毒物作用は、図11に要約したように、7件のGLP毒物学試験において齧歯類および霊長類において評価した。これら7件の試験中6件では、TM−601を静脈内投与した。全身性毒性の徴候は7件の試験中のいずれにおいても観察されなかったために、各試験における全身性NOAEL(すなわち、無毒性量)は投与された最大用量以上である。
【0147】
マウスにおける単回投与静脈内注射毒性試験:CD−1マウスにおいて0mg/kg(ビヒクル、0.9%塩化ナトリウム)、0.64mg/kgまたは6.4mg/kg(HEDは0.05mg/kgおよび0.5mg/kg)のIV投与後に試験を実施した。TM−601は、注射用の無菌食塩液(0.9%塩化ナトリウム)中で再構成し、単回IV投与(10mL/kg)として10マウス/性別/群に投与した。化合物関連作用についての評価は、臨床観察所見、体重、飼料消費量、眼科学、ならびに血液学パラメーターおよび臨床化学パラメーターに基づいた。試験の第15日に、生存している全動物を犠牲にし、臓器重量ならびに肉眼的死後検査および顕微鏡的死後検査を含む肉眼死後検査に供した。本試験中には、予定外の死亡は発生しなかった。体重、飼料消費量または血液学パラメーターおよび臨床化学パラメーターへのTM−601関連作用は見られなかった。眼科学検査では、化合物関連変化は全く観察されなかった。剖検時には、TM−601投与に帰せられる肉眼的病変または顕微鏡的病変は観察されず、臓器重量における変化も見られなかった。
【0148】
マウスにおける急性静脈内注射毒性試験:TM−601の急性毒性は、0mg/kg(ビヒクル、0.9%塩化ナトリウム)、0.5mg/kgまたは5.0mg/kgでの静脈内(IV)投与後のCD−1マウスにおいて評価した。活性化合物は、化合物重量のおよそ82%であった。TM−601は、注射用の無菌食塩液(0.9%塩化ナトリウム)中で再構成し、単回IV投与(10mL/kg)として5マウス/性別/群に投与した。化合物関連作用についての評価は、臨床観察所見および体重に基づいた。第15日に、生存している全動物を屠殺し、肉眼死後検査に供した。投与溶液は、用量の正確さを検証するために分析された。0.5mg/kg群から、1匹の雌性動物および1匹の雄性動物が第6日に死亡したことがわかり、また別の雄性動物は感触が冷たく、この日には活動を減少させていた。これらの動物は飲料水に十分に近づくことができず、このために脱水が生じたと思われた。5.0mg/kgの用量で死亡した動物はいなかった。体重へのTM−601関連作用は見られず、試験中および最終剖検時に死亡した動物いずれにおいても可視病変は観察されなかった。
【0149】
マウスにおける単回投与静脈内毒物学試験からの知見に基づくと、TM−601は0.64mg/kgおよび6.4mg/kgの単回IV投与後に非毒性であると考えられる。このためIV NOAEL用量は、マウスでは少なくとも6.4mg/kg(HEDは0.5mg/kg)である。
【0150】
反復投与毒性試験
マーモセットへの静脈内投与によるクロロトキシン最大忍容用量試験:TM−601の急性毒性は、ピラミッド化試験設計においてマーモセットサル(Callithryx jacchus)において評価した。この範囲設定試験では、1匹の雄性マーモセットおよび1匹の雌性マーモセットに、各投与間に3日間のウォッシュアウト期間を含めて、TM−601 IVが0.020mg/kg、0.20mg/kg、および2.0mg/kg(HEDは、各々、0.003mg/kg、0.03mg/kgおよび0.3mg/kg)を投与した。TM−601を0.9%塩化ナトリウム中に溶解し、3つの用量について各々0.4mL/kg(体重)、0.4mL/kg(体重)および2.0mL/kg(体重)の量で静脈内投与した。化合物関連作用についての評価は、臨床観察所見、体重、飼料消費量ならびに血液学パラメーター、凝固パラメーター、および臨床化学パラメーターに基づいた。最終用量の投与1日後に、動物を安楽死させ、臓器重量を計量し、任意の異常が観察された組織部および注射部位に対し肉眼的病理検査または顕微鏡的病理検査を実施した。
【0151】
本試験中には、予定外の死亡は発生せず、試験したパラメーターのいずれにおいてもTM−601関連所見もなかった。
【0152】
3日間にわたるマーモセットへの静脈内投与、その後に14日間の観察期間が続く静脈内投与によるクロロトキシン毒性試験:TM−601の毒性については、マーモセットサルにおいて連続3日間のIV投与後に評価した。マーモセット(3/性別/用量)にTM−601を0mg/kg/日(0.9%無菌食塩液)、0.20mg/kg/日または2.0mg/kg/日(HEDは各々、0.03mg/kgおよび0.3mg/kg)で投与した。化合物関連作用についての評価は、臨床観察所見、体重、飼料消費量ならびに血液学パラメーター、凝固パラメーター、および臨床化学パラメーターに基づいた。動物は、最終(第3)用量の投与後14日間にわたり観察し、その後に安楽死させ、臓器重量を計量した。肉眼的病理検査および顕微鏡的病理検査を全組織について実施した。
【0153】
本試験中には、予定外の死亡は発生しなかった。臨床観察所見、体重、飼料消費量ならびに血液学パラメーター、凝固パラメーター、および臨床化学パラメーターに対する化合物関連作用は全く見られなかった。さらに、臓器重量へのTM−601関連作用、剖検時の化合物作用の徴候、および化合物に帰せられる組織病理学的所見はなかった。
【0154】
連続3日間にわたってマーモセットへ静脈内投与されたTM−601の無作用用量は、少なくとも2.0mg/kg(HEDは0.3mg/kg)である。
【0155】
マウスへ静脈内注射によって週1回投与されたTM−601の7週間毒物学試験:静脈内注射によって送達された場合、全身性投与されたTM−601の慢性毒性試験は、マウスにおいて実施した。7週間にわたって週1回尾静脈内へのボーラス注射によって投与された全8回の投与は、5mL/kgの用量で3群のCrl:CD−1(登録商標)(ICR)BRマウスに行った。用量レベルは、0.5mg/kg/回、2mg/kg/回、および5mg/kg/回であった。同時コントロール群は、匹敵するレジメンでビヒクルを投与した。7週間の用量投与後、10マウス/性別/群を安楽死させた。コントロール群および高用量群中の残りの3〜5マウス/性別は、14日間の非投与(回復)期間後に安楽死させた。動物は、死亡率および罹患率について毎日2回観察し、臨床検査は毎日実施した。臨床病理評価(血液学および血清化学)は、一次(試験第7週)および回復時(試験第9週)剖検の直前に実施した。全動物に対して完全剖検を実施し、予定された剖検では選択された臓器を計量した。
【0156】
これらの試験の結果は、生存率、体重、飼料消費量、血液学パラメーターおよび血清化学パラメーターならびに臓器重量がTM−601の投与によって影響を受けないことを示していた。肉眼的検査および顕微鏡的検査は、被験物質関連病変を明らかにしなかった。可能性のある被験物質関連臨床所見は、投与1時間後の2および5mg/kg/回群における低発生率での下垂症および自発運動低下から構成された。全症例において、これらの臨床所見は非投与日には観察されず、有害であるとは見なされなかった。
【0157】
この試験の結果に基づくと、7週間にわたるマウスへのTM−601の週1回静脈内投与(全8回の投与)についてのNOAELは、少なくとも5mg/kg/回(HEDは0.4mg/kg)であった。
【0158】
8回にわたる週1回の注射、その後に2週間の回復期間が続く、マーモセットへの静脈内(ボーラス)投与によるTM−601(クロロトキシン)毒性試験:一般的マーモセット(Callithrix jaccus)へ静脈内注射によって週1回投与した場合のTM−601の全身性慢性潜在毒性を、7週間の期間にわたって評価した。用量レベルは、0.06mg/kgまたは0.2mg/kgであった。7週間にわたる投与後、3匹/性別/群を安楽死させた。コントロール群および高用量群中の残りの2匹/性別/群は、14日間の非投与(回復)期間後に安楽死させた。コントロール群には、同一頻度でビヒクル(リン酸緩衝食塩液)を投与した。臨床状態、体重、飼料消費量、毒物動態、尿分析、臓器重量、肉眼的病理調査および組織病理調査を実施した。
【0159】
用量投与部位で見られた徴候は、主として挫傷、時には肥厚および痂皮形成から構成され、その出現はコントロール動物および処置群動物を同様に含んでおり、投与経路に関連していてTM−601の処置結果とは関連していないと考えられる。
【0160】
体重変化はにはばらつきがあり、マーモセットに特有な周期的変動を示した。さらに、コントロール群と処置群との間に一貫性の差は見られず、処置群間の差は見られず、このパラメーターでは統計的有意性は見られなかった。飼料消費量は、処置群およびコントロール群間で類似であった。
【0161】
臨床病理検査は、処置群およびコントロール群間で差を示さなかった。尿分析も、同様に差を示さなかった。臓器重量は、処置関連群間の差を全く示さなかった。顕微鏡検査は、評価されたいずれの臓器においても処置の作用が見られないことを示した。
【0162】
本試験の結論は、0.06mg/kgおよび0.20mg/kgの用量でTM−601の8回の静脈内注射の投与は、処置の有害作用または全身性毒性の証拠を全く伴わずに極めて良好に忍容されるというものであった。生存中観察所見ならびに肉眼的および顕微鏡的検査で投与部位で見られた徴候は、投与経路によって誘発された低レベルの物理的外傷に関連しており、クロロトキシンへの曝露の結果ではなかった。本試験によって同定されたNOAELは、少なくとも0.2mg/kg(HEDは0.03mg/kg)であると考えられた。
【0163】
実施例9 再発性または難治性体細胞性および/または脳転移性充実性腫瘍を有する患者における静脈内131I−TM−601の第I相イメージングおよび安全性試験
第I相イメージング試験は、計48例の患者にTM−601を静脈内投与した5カ所の臨床試験機関で完了されている。この多施設共同オープンラベル非ランダム化連続「被験者内」用量増量試験は、再発性または難治性いずれかの、標準療法に応答しなかった検出可能な転移性関与の明確な証拠を示した、組織学的に確証された原発性充実性悪性腫瘍を有する患者を含んでいた。
【0164】
この第I相試験の目的は、a)静脈内131I−TM−601の投与によって、再発性もしくは難治性転移性(脳転移を含む)充実性腫瘍を有する患者において腫瘍特異的局在化がもたらされるかどうかを評価すること、b)静脈内投与された131I−TM−601の分布および線量を決定すること、およびc)静脈内投与された131I−TM−601の安全性および忍容性を決定することであった。
患者および処置プロトコール
本試験にはおよそ50例の被験者が登録され、131I−TM−601の増量される2〜3回の静脈内投与を受け、その後に131I−TM−601が標的腫瘍細胞に局在したかどうかを決定するための一連の全身スキャン検査、および131I−TM−601の腫瘍特異的取込みが証明されたらTM−601の1回の静脈内治療投与が実施された。図12のグラフは、投与スキームを例示する。
【0165】
試験患者は、静脈内(IV)注入によって131I−TM−601の3種の増量する用量(10mCi/0.2mg〜30mCi/0.6mgの範囲)を投与された。10mCiまたは20mCi用量の投与24時間後に実施されたイメージングによって、131I−TM−601の腫瘍特異的取込みを示した患者だけが、30mCi用量の131I−TM−601による処置を受けた。
【0166】
131I−TM−601の調製
最終TM−601薬物製品は、栓付きガラスバイアル内に入れられた無菌の白色からオフホワイトの凍結乾燥粉末である。この臨床試験で使用されたイメージングおよび治療用量は、放射標識TM−601の用量であった。
【0167】
131I−TM−601の調製および使用:TM−601の最終薬物製品を0.56mLの放射標識バッファー内で再構成すると131Iで放射標識された1mg/mL溶液が得られたので、これが臨床試験機関へ届けられた。シリンジは注入用のおよそ4mLの溶液を含有しており、放射能含量および放射能量に関して近似的にラベル表示された。試験機関で受領されると、放射線安全管理者または他の適切な試験機関職員は、131I−TM−601の放射線量が規定仕様内にあることを確認した。最終放射標識薬物製品を含有するシリンジは遮蔽され、その後患者へ投与するための適切な病院エリアへ移された。131I−TM−601溶液は、2〜8℃で光から保護して保存され、使用時までは遮蔽された。131Iを用いて放射標識した後、製品は24時間以内に使用された。
131I−TM−601の投与およびイメージング試験
放射標識試験用量の131I−TM−601を投与する全患者に、放射標識131I−TM−601注入の当日の朝および直前ならびに少なくとも3日間にわたって、甲状腺およびその他の器官への131Iの取込みを遮断するために、300mg/日の用量で経口により過飽和ヨウ化カリウム(SSKI)を投与した。SSKIは、医院/病院にいない間の薬物の適正な使用に関して患者に提供された取扱説明書にしたがって、試験薬の投与前に患者に投薬した。
【0168】
131I−TM−601を含有するシリンジは、6インチの静脈内ニードル/カテーテル内の注入ポート内へ「ピギーバック」法で挿入された。100mL/時で0.9%塩化ナトリウムが流れている間に、製品はおよそ5〜10分間にわたって「緩徐IVプッシュ」によって投与された。131I−TM−601注入は、以下の状態のいずれかが発生したら終了した。(1)収縮期血圧における>25mmHgの低下、(2)試験責任医師によって証明された有意な呼吸困難、(3)>102°Fの体温、(4)発作、(5)意識レベルの変化もしくは新規の神経学的欠損の発生、または例えば医師の判定もしくは患者の要請などの他の理由。
【0169】
γカメラによるイメージングおよび一部の症例では、SPECTが、30mCi用量の131I−TM−601を投与することについての局在化および適格性を決定するために、131I−TM−601の投与24時間後に実施された。
【0170】
安全性試験の結果
2007年4月現在、患者17例が少なくとも2種の用量(最大30mCi/0.6mg)のIV投与処置を受けたが、急性の有害作用を経験した患者はいなかった。7例の特異的患者が計7例の重篤な有害作用(SAE)を経験した。これらのSAEはいずれも、試験責任医師によって試験薬と「関連する可能性がある」または「おそらく関連する」とは評価されなかった。患者1例は、投与から30日間以内に死亡した。この患者は、本試験に登録され、2006年10月25日および2006年11月1日に131I−TM−601の2回のIV投与を受けた、転移性小細胞肺癌の病歴を有する60歳の男性であった。この患者は療法への急性反応を全く示さず、腫瘍特異的取込みも示さなかったので、引き続いて脊椎への緩和的放射線療法へ進んだ。この患者はホスピスに登録され、2006年11月24日に自宅で息を引き取った。試験責任医師は、この患者の死亡を試験薬との「関連はありそうもない」と評価し、進行性疾患と関連する可能性がより高いと評価した。患者2例は投与前に各々1回のSAEを経験した(両側性胚塞栓症およびUTI、各々CTCAE悪性度4および3)。患者1例は投与1日後に腹痛および鼓腸を経験した(CTCAE悪性度4)。患者1例は投与10日後に歩行することができず、基礎疾患の進行に続発性と推定される脊髄圧迫を有すると見いだされた(CTCAE悪性度3)。患者2例は投与18〜20日後にDVTを経験した(どちらもCTCAE悪性度3)。
【0171】
有効性試験の結果
静脈内投与後に様々な腫瘍タイプにおいて腫瘍特異的取込みが見られたが、これは悪性神経膠腫を有する患者8例中7例、転移性黒色腫を有する患者7例中7例、前立腺癌を有する患者2例中2例、非小細胞肺癌を有する患者4例中3例、および転移性結腸癌を有する患者7例中5例を含んでいた(図13に要約されているが、さらに図14〜20も参照されたい)。
【0172】
全患者に、試験用量の10mCi(0.2mgのペプチド)131I−TM−601を静脈内投与した。腫瘍局在化および線量分析のために、131I−TM−601注射の直後、3時間後、24時間後、48〜72時間後、および168時間後に5回連続で全身γカメラ画像を得た。γカメラまたはSPECTイメージングによって腫瘍局在化を示した患者に、1週間後に30mCi(0.6mgペプチド)131I−TM−601の第2回治療用量を投与した。取込みを示さなかった患者を、より高用量での局在化の可能性を決定するために、1週間後に20mCi(0.4mgペプチド)131I−TM−601を用いて再処置した。
【0173】
線量決定サブセット分析に含まれた神経膠腫を有する全7例の患者は、131I−TM−601のIV投与後の追跡γカメラまたはSPECTイメージング上で腫瘍特異的局在化を証明した。線量を制限する毒性は観察されなかった。平均放射線量は、全身に対しては0.23cGy/mCi(0.15〜0.31cGy/mCiの範囲)および腫瘍に対しては0.81cGy/mCi(0.36〜1.51cGy/mCiの範囲)であり、計算治療比(腫瘍/身体)はおよそ3.5であった。
【0174】
予備イメージング分析では、悪性神経膠腫を有する患者1例は、処置3週間後に増強した腫瘍容積および水腫における有意な減少を示した(図21を参照されたい)。第21日目の評価時のこの患者についてのMRIイメージングは、T1増強容積およびT2容積の減少を証明した。悪性神経膠腫を有する、131I−TM−601の腫瘍特異的取込みも示し、その後に静脈内処置用量を投与した別の患者は、イメージング改善がない場合明白な臨床改善を示した。
【0175】
これらの結果は、インビボで全身送達されるTM−601などのクロロトキシン薬剤の治療作用を示している。これらの結果はまた、静脈内投与された131I−TM−601が血液脳関門を横断し得ること、手術不能な神経膠腫を有する患者におけるMRイメージング改善をもたらすことができることも証明している。
【0176】
実施例10 クロロトキシン薬剤の治療作用の増加および/または変化
本実施例は、被験者が曝露されるクロロトキシン薬剤の総量を増加させると本薬剤の治療作用を増大および/または変化させることができることを証明する。
【0177】
2008年9月17日に出願された国際出願PCT/US08/76740号に記載されるように、クロロトキシン薬剤のPEG化によって血中半減期が増大し、さらに血管形成を阻害する能力が増大し得る。
【0178】
任意の特定の理論によって拘束されることを望まないが、本発明は、PEG化クロロトキシン薬剤を用いて得られたそのような観察所見が曲線下面積作用を表す可能性があることを提案する。例えば、相違する治療剤は相違する方法で生物学的作用を誘発することは周知である。一部は、例えば特定の時間量内で特定の閾値レベルの達成を必要とする。一部は全曝露のレベルを必要とする。一部はそのような要件の組み合わせを有する。本発明は、クロロトキシン薬剤の一部の作用(例、特異的結合、場合により細胞取込み)は低用量もしくは曝露レベルで達成できるが、血管新生を阻害、および/または他の治療作用を達成するためにはより高い全曝露(例、曲線下面積)が必要とされることがあると提案している。
【0179】
材料および方法
PEG化
TM−601を、多分散性直鎖状40kDaのPEG−プロピオンアルデヒド(DowPharma社製)を用いた還元アミノ化によってペプチドのN末端でPEG化した。
TM−601の半減期測定
非担癌C57BL/6マウスに、単回の尾静脈注射によってTM−601(およそ2mg/kgの用量で)を静脈内注射した。血液サンプルが様々な時点で入手され、抗TM−601抗体を使用するELISAによってTM−601のレベルが決定された。
マウス用マトリゲルプラグ
マトリゲルマトリックス高濃度(BD Biosciences社製)を100ng/mLのVEGF、100ng/mLのbFGF、および3ng/mLのヘパリンと4℃で混合した。8週齢の雌性C57BL/6マウスを、各々マウス6匹を含む各群へ無作為に割り付けした。各マウスに、皮下組織の両側に注射された2つの500μLマトリゲルプラグを投与した。円形のプラグを形成するために、ルーチン的な皮下穿刺後に左右の穿刺点を揺さぶることによって幅広の皮下ポケットが形成された。注射は、全内容物がプラグ内に送達されることを保証するために、21〜25Gニードルを用いて迅速に実施した。マトリゲルプラグは、試験第0日に移植し、処置は第1日に開始した。動物にはビヒクル(食塩液)、TM−601、またはPEG化TM−601のいずれかを静脈内注射によって投与した。3種の投与レジメンを使用した。2週間にわたり週1回(D1に1回およびD8に1回、「Q7D×2」)、2週間にわたり週2回(D1、D4、D8、およびD11、「Q3D×2/2」)、および2週間にわたり週5回(D1、D2、D3、D4、D5、D8、D9、D10、D11、およびD12、「Q1D×5/2」)。プラグを14日後に回収した。マウスを安楽死させ、プラグの上方の皮膚を引き戻した。プラグを細片化し、固定し、組織学分析のためにパラフィン中に包埋した。各評価可能なプラグからの厚さ5μmの3片の切片をCD31抗体で免疫染色し、ヘマトキシリンおよびエオシンで対染色した。各マトリゲルプラグの断面積内の血管数を顕微鏡下で分析した。
結果/考察
図22に示したように、PEG化TM−601は、未修飾TM−601と比較してインビボで増加した半減期を示した。驚くべきことに、PEG化によってTM−601の半減期がおよそ32倍、すなわちおよそ25分(TM−601)からおよそ16時間(TM−601−PEG)に上昇した。
【0180】
血管形成のモデル内で動物に低頻度で投与する能力に変換された、増加した半減期。マウスマトリゲルプラグアッセイでは、動物に、TM−601またはPEG化TM−601(TM−601−PEG)のいずれかを用いて様々なスケジュールによって投与した。微小血管密度を測定し、そのような密度の減少は、抗血管形成作用を示すと解釈した。
【0181】
TM−601およびTM−601−PEGはどちらも、試験された2種の最も頻回な投与スケジュールで抗血管形成作用を有していた(2週間にわたり週2回、「Q3D×2/2」、および2週間にわたり週5回、「Q1D×5/2」)(図23)。TM−601は試験した最小頻度の投与スケジュール(2週間にわたり週1回、「Q7D×2」)で抗血管形成作用を示さなかったが、そのような投与スケジュールでTM−601−PEGを用いた処置は微小血管密度の有意な減少をもたらした(図23)。
【0182】
任意の特定の理論によって拘束されることを望まないが、動物へ低頻度で投与する能力は、TM−601と比較してより長期間にわたるTM−601−PEGの利用可能性に起因する可能性がある。そのような増加した利用可能性は、より長期の治療作用を可能にする、新規な血管形成の部位でのより長時間の曝露をもたらすことができよう。さらに任意の特定の理論によって拘束されることを望まないが、そのようなより長時間の曝露(すなわち、増加した曲線下面積)が実際に、例えばTM−601(または別のクロロトキシン薬剤)の結合および/または取込みを許容する条件下でさえ、観察されない治療作用を可能にすることが考えられる。
【0183】
TM−601−PEGを用いて観察された、TM−601と比較して改善された治療作用は、特に、クロロトキシンが相当に小さなペプチドであり、その結果としてPEG化などの有意な修飾が機能を変化させるか、機能を弱める可能性があると予測し得るので、驚くべきことである。本明細書に提示したデータは、驚くべきことにPEG化クロロトキシン薬剤が活性(例えば、結合活性)を保持するだけではなく、実際に増強された、および/または新規な活性(例、抗血管形成作用)を示すことを証明している。
その他の実施形態
本発明のその他の実施形態は、本明細書に開示した本発明の明細書または実施を考察すれば、当業者には明白になるであろう。本明細書および実施例は例示に過ぎないと考えられ、本発明の真の範囲は下記の特許請求の範囲によって示されることを意図する。
【技術分野】
【0001】
関連出願の情報
本願は、2007年10月12日出願の米国仮特許出願第60/979,714号の利益およびこの仮出願に対する優先権を主張し、この仮出願の内容は、その全体が本明細書により参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
ジャイアント・イエロー・イスラエリサソリ(Leiurus Quinquestriatus)の毒液中で見いだされたクロロトキシンは、癌を診断および処置するための薬剤として大きな将来性を示すことが証明されている。最初は塩化物イオンチャネルブロッカーであると報告された36アミノ酸クロロトキシンペプチドは、131−ヨウ素を用いて神経膠腫を標的とするための候補薬として前臨床試験において調査されてきた(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。神経外胚葉性腫瘍(例えば、神経膠腫および髄膜種)を診断および処置するための組成物(各々の全体を参照として援用する特許文献1および特許文献2を参照されたい)および方法(各々の全体を参照として援用する特許文献3および特許文献4を参照されたい)は、クロロトキシンが神経外胚葉起源の腫瘍細胞に結合する能力に基づいて開発されてきた(非特許文献2;非特許文献4;非特許文献5)。
【0003】
天然型クロロトキシンの合成型であるTM−601は、血液脳関門および組織関門を横断することが証明されている。前臨床試験は、放射性ヨウ化TM−601の安定性、安全性、有効性、および免疫原性の欠如を証明してきた。これらのデータに基づいて、臨床試験(第I/II相)が、再発性高悪性度神経膠腫を有する成人患者における131I−TM−601の腔内送達の安全性、忍容性、生体内分布および線量測定を評価するために実施されてきた。2007年2月現在、第I相試験では131I−TM−601の単回腔内投与を受けた患者18例中、5例は再発から12カ月間以上生存し、2例は再発から36カ月間を超えて生存し、1例の患者は現在も(再発から4年間超)生存している(各々の全体を参照として援用する米国特許出願第11/731,661号および2007年3月30日に出願された国際出願PCT/US2007/08309号を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,905,027号明細書
【特許文献2】米国特許第6,429,187号明細書
【特許文献3】米国特許第6,028,174号明細書
【特許文献4】米国特許第6,319,891号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.A.DeBinら、Am.J.Physiol.(Cell Physiol.),1993,264,33:C361−C369
【非特許文献2】L.Soroceanuら、Cancer Res.,1998,58:4871−4879
【非特許文献3】S.Shenら、Neuro−Oncol.,2005,71:113−119
【非特許文献4】Ullrichら、Neuroreport,1996,7:1020−1024
【非特許文献5】Ullrichら、Am.J.Physiol.,1996,270:C1511−C1521
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの臨床試験で得られた結果は、大いに前途有望であり、腫瘍を診断および処置するためのクロロトキシンの有効性を証明している。上述した臨床試験では、クロロトキシンは腔内経路を使用して投与された。脳内に所在する腫瘍の場合には、腔内送達は手術中に開始される。そこで、手術が必要とされない、または望ましくない場合には、腔内投与が最適な送達経路ではない場合がある。このため、腫瘍を診断および処置するためのクロロトキシンおよびクロロトキシンをベースとする薬剤を投与するための代替戦略が必要である。特に望ましいのは、腔内送達より低侵襲性の投与方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、局所投与(例えば、腔内)ではなくむしろ全身性投与によって被験者にクロロトキシンを効果的に送達できるという知見を含んでいる。詳細には、本出願人は、クロロトキシンを静脈内投与によって効果的に送達できることを証明した。本発明によると、被験者への全身性送達によって、クロロトキシンの腫瘍特異的局在化を達成し、生存期間の改善がもたらされる。
【0008】
本発明のこれらの目的やその他の目的、利点および特徴は、当業者であれば、以下の好ましい実施形態についての詳細な説明を読めば明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、TM−601の様々な培養細胞への結合についての要約を示している表である(実験の詳細については実施例1を参照されたい)。
【図2】図2は、プレート結合アッセイを用いて、ビオチニル化TM−601(TM−602)の多数の癌細胞タイプへの結合を示しているグラフである(実験の詳細については実施例1を参照されたい)。結合は、TM−602が加えられていない細胞に対してストレプトアビジン−HRPコントロールの百分率(%)としてグラフ表示されている。神経膠腫細胞はD54、U251、U373、G26。乳房腫瘍細胞は2LMP、DY3672、LCC6、BT474、SK−BR−3、MCF−7、MDA−MB−231、MDA−MB−468、およびMDA−MB−453。非小細胞性肺癌細胞はA427、WI−62、およびH1466。黒色腫細胞はSKM28。結腸直腸癌細胞はSW948。前立腺癌細胞はPC3、LNCaP、およびDU145。
【図3】図3は、TM−601の様々なヒト組織への結合についての要約を示している表である。
【図4】図4は、TM−601の多形性膠芽腫への特異的結合を示す図である。ヒト正常脳および多形性膠芽腫組織はビオチニル化TM−601(左)または緩衝食塩液(右)を用いて組織化学的に染色した。ビオチニル化TM−601または緩衝食塩液(ペルオキシダーゼ試薬染色コントロールとして)とともに一次インキュベーションした後、組織をペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン、次にペルオキシダーゼ基質とともにインキュベートすると、ビオチニル化TM−601に結合した陽性サンプル中で褐色が生成された。TM−601染色は、腫瘍組織中でのみ見られる(左下)。
【図5】図5は、正常組織と比較した、TM−601のヒト腫瘍組織への特異的結合を示す図である。(A)ビオチニル化TM−601(A、左)または緩衝食塩液(A、右)を用いて組織化学的に染色したヒト腫瘍組織の代表的例を示す図である。(B)ビオチニル化TM−601(B、左)または緩衝食塩液(B、右)を用いて組織化学的に染色した、(A)におけるヒト腫瘍組織に適合させたヒト正常組織の代表的例を示す図である。ビオチニル化TM−601または緩衝食塩液(ペルオキシダーゼ試薬染色コントロールとして)とともに一次インキュベーションした後、(A)および(B)の組織をペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン、次にペルオキシダーゼ基質とともにインキュベートすると、ビオチニル化TM−601に結合したサンプル中で褐色が生成された。陽性染色を示す強い褐色は、ビオチニル化TM−601(A、左)へ曝露した腫瘍組織中でのみ見られた。
【図6】図6Aは、ヌードマウスモデル中のU251−MG脳腫瘍異種移植片における131I−TM−601の有効性を示す図である。グラフ上のデータは、カプラン−マイヤー生存表としてプロットされている。得られた結果は、メジアン生存期間が食塩液群については29日間であり、低温TM−601群については21日間であることを示した。これとは著しく対照的に、131I−TM−601群についてのメジアン生存期間は78日間であった。図6Bは、131I−TM−601の注射後のヒトU251−MG神経膠腫の頭蓋内異種移植片を有する2匹のマウス(第1列:マウス006、第2列:マウス009)のγカメラ画像を示す図である。マウスに腫瘍細胞が移植されてから21日後、131I−TM−601が腫瘍部位内へ注射された。注射の24および96時間後、マウスをγカメラで撮像した。24および96時間後の画像は、腫瘍部位での放射能の優れた残留を示した。
【図7】図7は、マウスモデルにおける静脈内注射後に125I−TM−601および125I−EGFが標的とした脳の結果を要約した表である。
【図8】図8は、未処置およびTM−601処置を受けた、D54MG異種移植片が移植されたマウスについてのカプラン−マイヤー生存曲線を示す図である。
【図9】図9は、マウスにおけるD54MG側腹腫瘍の増殖に対してTM−601および放射線療法(RT)が及ぼす作用を示すグラフである。
【図10】図10は、静脈内(IV)、腹腔内(IP)、皮下(SC)または経口(OP)投与によるTM−601の単回投与後に測定されたマウスの血漿中レベルを示すグラフである。
【図11】図11は、動物においてTM−601を用いて実施されたGLP毒物学試験の結果を要約した表である。
【図12】図12は、再発性または難治性転移性充実性腫瘍を有する患者における静脈内131I−TM−601の第I相イメージングおよび安全性試験において使用された投与スキームを示す図である。
【図13】図13は、相違するタイプの充実性腫瘍を有する患者における静脈内投与後の131I−TM−601の腫瘍特異的取込みについて要約した表である。
【図14】図14は、前立腺癌を有する患者への131I−TM−601(30mCi/0.6mg)の静脈内注射の3時間後、24時間後、および7日間後に記録されたγカメラ画像を示す図である。
【図15】図15は、非小細胞性肺癌を有する患者への131I−TM−601(30mCi/0.6mg)の静脈内注射の3時間後、24時間後、および48時間後に記録されたγカメラ画像を示す図である。
【図16】図16は、悪性神経膠腫を有する患者への131I−TM−601(30mCi/0.6mg)の静脈内注射の3時間後、24時間後、および48時間後に記録されたγカメラ画像を示す図である。
【図17】図17は、脳、肺、肝臓、および右脚の皮下結節へ転移性である黒色腫を有する患者への131I−TM−601の静脈内注射の24時間後および48時間後に記録された全身γカメラ画像を示す図である。
【図18】図18Aは、転移性黒色腫を有する患者の左前頭脳転移を示している処置前磁気共鳴画像(MRI)(左)、および前記患者への131I−TM−601(30mCi/0.2mg)の静脈内注射の24時間後に記録されたSPECT画像(右)を示す図である。図18Bは、転移性黒色腫を有する同一患者の右後頭脳転移を示している処置前MRI(左)、および前記患者への131I−TM−601(10mCi/0.2mg)の静脈内注射の24時間後に記録されたSPECT画像(右)を示す図である。
【図19】図19は、悪性神経膠腫を有する患者の左前頭腫瘍を示している処置前MRI(左)、および前記患者への131I−TM−601の静脈内注射の48時間後に記録されたSPECT画像(右)を示す図である。
【図20】図20は、悪性神経膠腫を有する患者の処置前脳MRI(左)、および前記患者への131I−TM−601(10mCi/0.2mg)の静脈内注射の24時間後に撮像されたSPECT画像(右)を示す図である。
【図21】図21は、悪性神経膠腫を有する患者(図20に示した患者と同一)の処置前に撮像されたMRI(左)、および前記患者への131I−TM−601の静脈内注射の3週間後に撮像されたMRI(右)を示す図である。
【図22】図22は、静脈内注射された非癌性マウスにおける未修飾TM−601と比較した、PEG化クロロトキシン(TM−601−PEG)の半減期を示す図である。PEG化は、TM601の半減期をおよそ32倍増加させた。
【図23】図23は、PEG化TM−601が、マウスCNVモデルにおける未修飾TM−601よりも低頻度の投与で増加した抗血管形成性作用によって証明されるように、増加したAUC(曲線下面積)を達成できることを示している。CNVモデルにおける微小血管密度を未修飾TM−601またはPEG化TM−601に対して様々な投与レジメンについてプロットした。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(用語の定義)
本明細書を通して、以下の段落に規定する様々な用語を使用する。
【0011】
数に関連して本明細書で使用する用語「およそ」および「約」は、一般に、他に特別に規定されていない限り、またはその状況から明白ではない限り(そのような数が100%の可能性値を越える場合を除いて)、その数のいずれかの方向(その数よりも大きい方向または小さい方向)における10%の範囲内に入る数を含んでいる。
【0012】
用語「生物学的に活性」は、ポリペプチドを特徴付けるために本明細書で使用する場合には、前記ポリペプチドと類似もしくは同一特性(例えば、癌細胞に特異的に結合する能力、および/または癌細胞内へ内在化される能力、および/または癌細胞を殺滅する能力)を示すために親ポリペプチドとの十分なアミノ酸配列相同性を共有する分子を意味する。
【0013】
本明細書で使用する用語「癌」は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理的状態を意味するか、またはそれを説明する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が含まれるがそれらに限定されない。より詳細には、そのような癌の例には、肺癌、骨癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚黒色腫もしくは眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、性生殖器癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫が含まれる。
【0014】
本明細書で使用する用語「癌細胞」は、望ましくない無秩序な細胞増殖または組織の異常な残留もしくは異常な侵襲を経験する、インビボにおける哺乳動物(例、人間)の細胞を意味する。インビトロでは、この用語は適切な新鮮培地および空間があることを前提に、無制限に無秩序な方法で増殖する永続的に不死化された株化細胞培養である細胞系もまた意味する。
【0015】
本明細書で使用する用語「癌患者」は、癌に罹患しているか、または癌に感受性である個体を意味し得る。癌患者は、癌であると診断されているか、または診断されていなくてもよい。この用語には、さらにまた以前に癌療法を受けていた個体も含まれる。
【0016】
本明細書で使用する用語「化学療法薬」および「抗癌剤もしくは抗癌薬」は、互換的に使用される。それらは、癌または癌状態を処置するために使用される医薬品を意味する。抗癌薬は、通常以下の群の1つに分類されている:アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物性アルカロイド、挿入抗生物質、アロマターゼ阻害剤、抗代謝薬、細胞分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答修飾剤、抗ホルモン薬および抗アンドロゲン薬。そのような抗癌剤の例には、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、トモゾロミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、デカルバジン、アルトレタミン、メトトレキセート、メルカプトプリン、チオグアニン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、シタラビン、アザシチジン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルチマイド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトーテンおよびアミフォスチンが含まれるがそれらに限定されない。
【0017】
用語「細胞毒性」は、本明細書で成分、化合物、薬物もしくは薬剤を特徴付けるために使用する場合は、細胞の機能を阻害もしくは防止する、および/または細胞の破壊を誘発する成分、化合物、薬物もしくは薬剤を意味する。
【0018】
本明細書で使用する用語「有効量」は、化合物もしくは組成物の、所定の目的、すなわち組織もしくは被験者における所望の生物学的応答もしくは医学的応答を満たすために十分な任意の量を意味する。例えば、本発明の所定の実施形態では、目的は、標的組織へ特異的に結合すること、癌の症状の進行、重大化、もしくは悪化を緩徐化するか、もしくは停止させること、癌の症状の改善を発生させること、および/または癌を治癒させることであってよい。
【0019】
用語「融合タンパク質」は、個々のペプチド骨格を介して共有結合によって連結された、最も好ましくはそれらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を通して生成された2つ以上のタンパク質もしくはそのフラグメントを含む分子を意味する。
【0020】
本明細書で使用する用語「相同」(もしくは「ホモロジー」)は、2つのポリペプチド分子間または2つの核酸分子間の同一性の程度を意味する。両方の比較された配列内の位置が同一塩基もしくはアミノ酸モノマーサブユニットに占められている場合は、各分子はその位置で相同である。2つの配列間のホモロジーのパーセンテージは、2つの配列が共有するマッチングする位置、もしくは相同の位置の数を比較された位置の数で割って100を掛けた数に相当する。一般に、最大ホモロジーを得るために2つの配列が整列されて比較が実施される。相同アミノ酸配列は、同一もしくは類似のアミノ酸残基を共有する。類似の残基は、参照配列内の対応するアミノ酸残基に対する保存的置換、または「許容された点突然変異」である。参照配列内の残基の「保存的置換」は、対応する参照残基と物理的もしくは機能的に類似である、例えば共有結合もしくは水素結合などを形成する能力を含む、類似のサイズ、形状、電荷、化学特性を有する置換である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffらによる「許容された点突然変異」について規定された基準を満たす置換である(“Atlas of Protein Sequence and Structure”,1978,Nat.Biomed.Res.Foundation,Washington,DC,Suppl.3,22:354−352)。
【0021】
用語「個体」および「被験者」は、本明細書では互換的に使用される。それらは疾患もしくは障害(例、癌)に罹患する可能性があるか、または感受性であるが、その疾患もしくは障害を有しているか、または有していない可能性があるヒトもしくは別の哺乳動物(例、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマもしくは霊長類)を意味する。多数の実施形態では、被験者は人間である。他に特に明記しない限り、用語「個体」および「被験者」は、特定の年齢を示さないので、このため成人、小児、および新生児を含んでいる。
【0022】
用語「標識(された)」および「検出可能な薬剤もしくは成分で標識(された)」は、本明細書ではある実体(例、クロロトキシンもしくはクロロトキシンコンジュゲート)が例えば別の実体(例、新生物腫瘍組織)への結合後には可視化できることを明記するために互換的に使用される。好ましくは、検出可能な薬剤もしくは成分は、測定することのできるシグナルを生成し、その強度が結合した実体の量に関連する(例えば、比例する)ように選択される。タンパク質およびペプチドを標識および/または検出するための広範囲の系は、当技術分野において公知である。標識タンパク質およびペプチドは、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段、化学的手段またはその他の手段によって検出可能な標識の組み込み、または標識へのコンジュゲート化によって調製できる。標識成分もしくは標識化成分は、直接的に検出できる(すなわち、検出可能にするためにさらなる反応もしくは操作を全く必要としない、例えば、蛍光体は直接的に検出できる)、または間接的に検出できる(すなわち、検出可能な別の実体との反応もしくは結合を通して検出可能にすることができ、例えば、ハプテンは、蛍光体などのレポーターを含む適切な抗体との反応後に免疫染色によって検出可能である)。適切な検出可能な薬剤には、放射性核種、蛍光体、化学発光剤、微粒子、酵素、比色標識、磁気標識、ハプテン、モレキュラービーコン、アプタマービーコンなどが含まれるがそれらに限定されない。
【0023】
用語「正常」および「健常」は、本明細書では互換的に使用される。それらは、腫瘍を有していない個体もしくは個体の群を意味する。用語「正常」は、本明細書では健常個体から単離された組織サンプルを特定するためにも使用される。
【0024】
「医薬組成物」は、本明細書では、有効量の少なくとも1つの有効成分(例えば、標識できる、もしくは標識できないクロロトキシンもしくはクロロトキシンコンジュゲート)、および少なくとも1つの医薬上許容される担体を含む組成物であると規定されている。
【0025】
本明細書で使用する用語「医薬上許容される担体」は、有効成分の生物学的活性の有効性を妨害せず、かつ投与される濃度で宿主にとって過度に毒性ではない担体媒質を意味する。この用語には、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などが含まれる。医薬活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である(例えば、全体を参照として援用する“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,E.W.Martin,18th Ed.,1990,Mack Publishing Co.:Easton,PAを参照されたい)。
【0026】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、本明細書では互換的に使用され、それらの天然(未荷電)形態または塩としてのいずれかで、また未修飾、またはグリコシル化、側鎖酸化もしくはリン酸化によって修飾されたかのいずれかで、様々な長さのアミノ酸配列を意味する。所定の実施形態では、アミノ酸配列は、全長天然タンパク質である。他の実施形態では、アミノ酸配列は、全長タンパク質のより短いフラグメントである。さらに他の実施形態では、アミノ酸配列は、例えばグリコシル単位などのアミノ酸側鎖へ結合された付加置換、脂質、またはリン酸塩などの無機イオン、ならびに例えばスルフヒドリル基の酸化などの、鎖の化学的変換に関連する修飾によって修飾される。そこで、用語「タンパク質」(もしくはその同等用語)は、その特異的な特性を変化させない修飾を受ける、全長天然タンパク質のアミノ酸配列を含むことが意図されている。詳細には、用語「タンパク質」は、タンパク質アイソフォーム、すなわち、同一遺伝子によってコードされるが、それらのpIもしくはMWまたは両方が相違する変異体を含んでいる。そのようなアイソフォームは、それらのアミノ酸配列において(例えば、選択的スプライシングもしくは制限タンパク分解の結果として)相違する場合があるか、または、示差的翻訳後修飾(例、グリコシル化、アシル化もしくはリン酸化)から発生する可能性がある。
【0027】
本明細書で使用する用語「タンパク質アナログ」は、親ポリペプチドと類似もしくは同一の機能を有するが、必ずしも親ポリペプチドのアミノ酸配列と類似もしくは同一であるアミノ酸配列を含む必要がないか、または親ポリペプチドの構造と類似もしくは同一である構造を有する必要はないポリペプチドを意味する。好ましくは、本発明の状況においては、タンパク質アナログは、親ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも30%(より好ましくは、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を有する。さらに、当業者であれば、タンパク質配列は一般に活性を破壊せずに一部の置換を忍容することを理解できるであろう。そこで、活性を維持しており、通常は少なくとも3〜4、場合によっては20までのアミノ酸を有する1つ以上の高度に保存された領域において、親ポリペプチドと少なくとも約30〜40%、場合によっては約50%、60%、70%、もしくは80%を超える総合配列同一性を共有し、さらに場合によっては90%、96%、97%、98%もしくは99%を超える少なくとも1つの高同一性領域を含む任意のポリペプチドが、用語「タンパク質アナログ」に含まれている。
【0028】
本明細書で使用する用語「タンパク質フラグメント」は、第2ポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも5アミノ酸残基のアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。タンパク質のフラグメントは、親ポリペプチドの機能的活性を有していても、有していなくてもよい。
【0029】
用語「低分子」は、生物学的プロセスに影響を及ぼすように作用できる任意の化学的成分または他の成分を含んでいる。低分子は、現在公知で使用されている任意の数の治療薬を含むことができるか、または生物学的機能をスクリーニングする目的でそのような分子のライブラリー内で合成された低分子であってよい。低分子は、高分子からサイズによって識別される。本発明において使用するために適切な低分子は、通常は約5,000ダルトン(Da)未満、好ましくは約2,500Da未満、より好ましくは1,000Da未満、最も好ましくは約500Da未満の分子量を有する。
【0030】
本明細書で使用する用語「全身性投与」は、薬剤が有意な量で身体内に広く分布され、かつ生物学的作用、例えばその所望の作用を血液中で有し、および/または血管系を介してその所望の作用部位に到達するような薬剤の投与を意味する。典型的な全身性投与経路には、(1)薬剤を血管系内に直接導入するか、または(2)経口、肺、もしくは筋肉内投与による投与であって、ここで薬剤は吸収され、血管系に進入し、血液を介して1つ以上の所望作用部位へ運ばれる投与が含まれる。
【0031】
用語「治療薬」および「薬物」は、本明細書では互換的に使用される。それらは、疾患もしくは臨床状態の処置において有効な物質、分子、化合物、薬剤、因子もしくは組成物を意味する。
【0032】
用語「組織」は、本明細書では広い意味で使用される。組織は、腫瘍細胞を含み得る(しかし、必ずしも含まなくてよい)任意の生物学的実体であってよい。本発明の状況では、インビトロ、インビボおよびエクスビボ組織が考察される。そこで、組織は、個体の一部か、または個体から(例えば、生検によって)入手されてよい。組織は、さらにまた組織学的目的のために採取された冷凍切片、または公知の診断、処置および/もしくは結果履歴を有する記録サンプルなどの組織の切片を含むことができる。用語「組織」は、さらにまた組織サンプルを加工処理することによって引き出された任意の材料を含んでいる。引き出された材料には、組織から単離された細胞(またはそれらの子孫)が含まれるがそれらに限定されない。組織サンプルの加工処理は、濾過、蒸留、抽出、濃縮、干渉成分の不活性化、試薬の添加などのうちの1つ以上を含むことができる。
【0033】
用語「処置」は、本明細書では(1)疾患もしくは状態の発症を遅延させる、もしくは予防すること、(2)疾患もしくは状態の1つ以上の症状の進行、重大化、もしくは悪化を緩徐化もしくは停止させること、(3)疾患もしくは状態の症状の改善を発生させること、(4)疾患もしくは状態の重症度もしくは発生率を減少させること、または(5)疾患もしくは状態を治癒させることを目的とする方法もしくはプロセスを特徴付けるために使用される。処置は、予防もしくは防止作用のために、疾患の発症に先行して投与することができる。あるいは、もしくは追加して、処置は治療作用のために、疾患もしくは状態の開始後に投与することができる。
【0034】
既に上述したように、本発明は、腫瘍を処置および診断するための方法に関する。本明細書に提供した方法は、一般に、検出可能な成分を用いて標識されていてよい、またはされていなくてよいクロロトキシン薬剤の全身性投与を含んでいる。所定の好ましい実施形態では、クロロトキシン薬剤は、静脈内投与される。
【0035】
本発明によると、当該分野の範囲内に含まれる従来型分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術を使用できる。そのような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、Maniatis,Fritsch & Sambrook,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,1982;“DNA Cloning:A Practical Approach,”Volumes I and II,D.N.Glover(Ed.),1985;“Oligonucleotide Synthesis”,M.J.Gait(Ed.),1984;“Nucleic Acid Hybridization”,B.D.Hames & S.J.Higgins(Eds.),1985;“Transcription and Translation”B.D.Hames & S.J.Higgins(Eds.),1984;“Animal Cell Culture”,R.I.Freshney(Ed.),1986;“Immobilized Cells And Enzymes”,IRL Press,1986;B.Perbal,“A Practical Guide To Molecular Cloning”,1984を参照されたい。
I. クロロトキシン薬剤
本発明の処置および診断方法は、有効量の少なくとも1つのクロロトキシン薬剤の、それを必要とする個体への全身性投与を含んでいる。本明細書で使用する用語「クロロトキシン薬剤」は、少なくとも1つのクロロトキシン成分を含む化合物を意味する。所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの治療成分(例えば、抗癌剤)と結合された少なくとも1つのクロロトキシン成分を含んでいる。クロロトキシン成分(および/または治療成分)は、少なくとも1つの標識化成分と結合させることができる。
【0036】
A. クロロトキシン成分
本明細書で使用する用語「クロロトキシン成分」は、クロロトキシン、生物学的に活性なクロロトキシンサブユニットまたはクロロトキシン誘導体を意味する。
【0037】
所定の実施形態では、用語「クロロトキシン」は、配列番号1に規定した天然クロロトキシンのアミノ酸配列を含むLeiurus quinquestriatusサソリ毒に天然に由来する全長36アミノ酸ポリペプチドを意味している(DeBinら、Am.J.Physiol.,1993,264:C361−369)。用語「クロロトキシン」は、例えば米国特許第6,319,891号(本明細書に全体を参照として援用する)に開示されたポリペプチドなどの、合成されたかもしくは組換え生成されている配列番号1を含むポリペプチドを含んでいる。
【0038】
「生物学的に活性なクロロトキシンサブユニット」は、36アミノ酸未満のクロロトキシンを含み、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を保持しているペプチドである。本明細書で使用する、クロロトキシンの「特性もしくは機能」は、異常な細胞増殖を停止させる能力、正常細胞と比較して腫瘍/癌細胞へ特異的に結合する能力、腫瘍/癌細胞内に内在化する能力、および/または腫瘍/癌細胞を殺滅する能力を含むがそれらに限定されない。腫瘍/癌細胞は、インビトロ、エクスビボ、インビトロ、被験者からの一次単離体、培養細胞、または細胞系であってよい。
【0039】
本明細書で使用する用語「生物学的に活性なクロロトキシン誘導体」は、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を保持しているクロロトキシンおよび関連ペプチドの様々な誘導体、アナログ、変異体、ポリペプチドフラグメントおよび模倣物のいずれかを意味する。クロロトキシン誘導体の例には、クロロトキシンのペプチド変異体、クロロトキシンのペプチドフラグメント、例えば、配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7の連続10マーペプチドを含むか、もしくはそれらからなるか、または配列番号1の10〜18もしくは21〜30残基、コア結合配列を含むフラグメント、およびペプチド模倣物が含まれるがそれらに限定されない(内容全体を参照として援用する、国際公開第2003/101474号パンフレットとして公開された国際出願PCT/US03/17410号を参照されたい)。
【0040】
クロロトキシン誘導体の例には、クロロトキシンの活性と関連している、少なくとも約7、8、9、10、15、20、25、30もしくは35連続アミノ酸残基を有する、配列番号1に規定のアミノ酸配列のフラグメントを有するペプチドが含まれる。そのようなフラグメントは、公知のペプチドドメインに対応するアミノ酸配列の領域、ならびに顕著な親水性の領域として同定された、クロロトキシンペプチドの機能的領域を含有していてよい。そのようなフラグメントは、相互に連結された2つのコア配列を、リンカーによって除去または置換された介在アミノ酸配列とともに、任意の順序でさらに含むことができる。
【0041】
クロロトキシンの誘導体には、誘導体配列およびクロロトキシン配列が最大に整列した場合は、少なくとも1つのアミノ酸残基の保存的置換もしくは非保存的置換を含むポリペプチドが含まれる。この置換は、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を増強するか、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を阻害するか、またはクロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能に中立である置換であってよい。
【0042】
本発明を実施する際に使用するために適切なクロロトキシンの誘導体の例は、国際公開第2003/101474号パンフレット(全体を参照として援用する)に記載されている。特定の例には、配列番号8または配列番号13を含むか、またはそれからなるポリペプチド、ならびにその変異体、アナログ、および誘導体が含まれる。
【0043】
クロロトキシンの誘導体の他の例には、例えば、相同組換え、特定部位もしくはPCR突然変異誘発による事前に決定された突然変異を含有するポリペプチド、およびペプチドのファミリーの対立遺伝子もしくは他の天然型変異体;ならびにペプチドが置換、化学的手段、酵素的手段もしくは他の適切な手段によって、天然型アミノ酸以外の成分(例えば、酵素もしくは放射性同位体などの検出可能な成分)を用いて共有結合的に修飾されている誘導体が含まれる。
【0044】
クロロトキシンおよびそのペプチド誘導体は、当技術分野において公知であるように、標準固相(もしくは液相)ペプチド合成法を含む、様々な方法のいずれかを用いて調製できる。さらに、これらのペプチドをコードする核酸は、市販で入手できるオリゴヌクレオチド合成機器を用いて合成することができ、タンパク質は標準組換え生成系を用いて組換え生成することができる。
【0045】
他の適切なクロロトキシン誘導体には、クロロトキシンの三次元構造を模倣するペプチド模倣物が含まれる。そのようなペプチド模倣物は、例えば、より経済的な製造、より大きな化学的安定性、強化された薬理学的特性(半減期、吸収、効能、有効性など)、変化した特異性(例、広域生物学的活性、減少した抗原性など)を含む天然型ペプチドに対して優位な利点を有していてよい。
【0046】
所定の実施形態では、模倣物は、クロロトキシンペプチド二次構造の要素を模倣する分子である。タンパク質のペプチド骨格は、主として、例えば抗体および抗原の相互作用などの、分子相互作用を促進するような方法でアミノ酸側鎖を方向付けるために存在する。ペプチド模倣物は、天然分子に類似する分子相互作用を許容すると予想される。ペプチドアナログは、一般には鋳型ペプチドの特性に類似する特性を有する非ペプチド薬として製薬工業において使用されている。これらのタイプの化合物は、さらにまたペプチド模倣物もしくはペプチドミメティック(例えば、Fauchere,Adv.Drug Res.,1986,15:29−69;Veber & Freidinger,1985,Trends Neurosci.,1985,8:392−396;Evansら、J.Med.Chem.,1987,30:1229−1239)とも呼ばれており、通常はコンピュータ制御分子モデリングを使用して開発されている。
【0047】
一般に、ペプチド模倣物は、パラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的特性もしくは薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、非ペプチド結合によって任意に置換される1つ以上のペプチド結合を有する。ペプチド模倣物の使用は、薬物ライブラリーを作り出すためにコンビナトリアル化学の使用を通して増強することができる。ペプチド模倣物の設計は、例えば、腫瘍細胞へのペプチドの結合を増加または減少させるアミノ酸突然変異を同定することによって補助することができる。使用できるアプローチには、酵母ツーハイブリッド法(例えば、Chienら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1991,88:9578−9582を参照されたい)およびファージ提示法の使用が含まれる。ツーハイブリッド法は、酵母中のタンパク質−タンパク質相互作用を検出する(Fieldら、Nature,1989,340:245−246)。ファージ提示法は、固定化タンパク質とλおよびM13などのファージの表面上で発現するタンパク質との間の相互作用を検出する(Ambergら、Strategies,1993,6:2−4;Hogrefeら、Gene,1993,128:119−126)。これらの方法は、ペプチド−タンパク質相互作用の陽性選択および陰性選択ならびにこれらの相互作用を決定する配列の同定を可能にする。
【0048】
所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、上述したクロロトキシンに類似するか、またはそれに関連する活性を提示する別のサソリ種のポリペプチド毒素を含んでいる。本明細書で使用する用語「クロロトキシンに類似するか、またはそれに関連する活性」は、詳細には、腫瘍/癌細胞への選択的/特異的結合を意味する。適切な関連サソリ毒素の例には、クロロトキシンとのアミノ酸および/またはヌクレオチド配列同一性を提示する、サソリ起源の毒素もしくは関連ペプチドが含まれるがそれらに限定されない。関連サソリ毒素の例には、Mesobuthus martenssi由来のCT神経毒素(GenBankアクセッション番号AAD473730)、Buthus martensii karsch由来の神経毒素BmK 41−2(GenBankアクセッション番号A59356)、Buthus martensii由来の神経毒素Bm12−b(GenBankアクセッション番号AAK16444)、Leiurus quinquestriatus hebraeu由来の推定毒素LGH 8/6(GenBankアクセッション番号P55966)、Mesubutus tamulus sindicus由来の小毒素(GenBankアクセッション番号P15229)が含まれるがそれらに限定されない。
【0049】
本発明において使用するために適切な関連サソリ毒素は、配列番号1に規定した全クロロトキシン配列との少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。所定の実施形態では、関連サソリ毒素には、配列番号8または配列番号13と相同の配列を有する関連サソリ毒素が含まれる。
【0050】
所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤内のクロロトキシン成分が標識される。以下では、標識方法および標識化成分の例について記載する。
【0051】
B. 治療成分
既に上述したように、所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの治療成分に結合した少なくとも1つのクロロトキシン成分を含んでいる。適切な治療成分には、疾患もしくは臨床状態の処置において有効である様々な物質、分子、化合物、薬剤もしくは因子のいずれかが含まれる。所定の好ましい実施形態では、治療成分は、化学療法薬(すなわち、抗癌薬)である。適切な抗癌薬には、癌細胞に対して直接的もしくは間接的に毒性もしくは有害である様々な物質、分子、化合物、薬剤もしくは因子のいずれかが含まれる。
【0052】
当業者であれば理解できるように、治療成分は、合成化合物もしくは天然化合物:単分子、相違する分子の混合物または相違する分子の複合体であってよい。適切な治療成分は、低分子、ペプチド、タンパク質、糖類、ステロイド剤、抗体(そのフラグメントおよび変異体を含む)、融合タンパク質、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、短鎖干渉RNA、ペプチドミメティック、放射性核種などを含むがそれらに限定されない様々なクラスの化合物のいずれかに属し得る。
【0053】
治療成分が抗癌薬を含む場合は、該抗癌薬は、例えば以下のクラスの抗癌薬:アルキル化剤、抗代謝薬、細胞分裂抗生物質、アルカロイド系抗腫瘍剤、ホルモン剤および抗ホルモン剤、インターフェロン、非ステロイド系抗炎症薬、ならびに例えばキナーゼ阻害剤、プロテオソーム阻害剤およびNF−κB阻害剤などの様々な他の抗腫瘍薬の中に見いだすことができる。
【0054】
抗癌薬の例には、一部の名を挙げると、アルキル化剤(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)、抗代謝薬(メトトレキセート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビン(cytarabile)、ゲムシタビン)、紡錘体毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン剤(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)が含まれるがそれらに限定されない。最新の癌療法についてのより包括的な考察については、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmにあるFDA承認抗癌剤の一覧である、http://www.cancer.gov、および全内容を参照として援用するThe Merck Manual、第17版、1999を参照されたい。
【0055】
所定の実施形態では、治療成分は、細胞毒性剤を含んでいる。細胞毒性剤の例には、毒素、他の生物学的に活性なタンパク質、従来型化学療法薬、酵素、および放射性同位体が含まれる。
【0056】
適切な細胞毒性毒素の例には、細菌毒素および植物毒素、例えばゲロニン、リシン、サポニン、シュードモナス属外毒素、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、およびジフテリア毒素が含まれるがそれらに限定されない。
【0057】
適切な細胞毒性生物活性タンパク質の例には、補体系のタンパク質(もしくは補体タンパク質)が含まれるがそれらに限定されない。補体系は、有機体からの病原体を除去して治癒を促進するのに役立つ複雑な生化学的カスケードである(B.P.Morgan,Crit.Rev.Clin.Lab.Sci.,1995,32:265)。補体系は、35を超える可溶性タンパク質および細胞結合タンパク質からなるが、そのうちの12は補体経路に直接的に含まれている。
【0058】
適切な細胞毒性化学療法薬の例には、タキサン系(例、ドセタキセル、パクリタキセル)、マイタンシン系、デュオカルマイシン系、CC−1065、アウリスタチン系、カリチアマイシン系および他のエンジイン系抗腫瘍抗生物質が含まれるがそれらに限定されない。他の例には、抗葉酸塩系(例、アミノプテリン、メトトレキセート、プレメトレキセド、ラルチトレキセド)、ビンカアルカロイド系(例、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、ビンデシン、ビノレルビン)、およびアントラサイクリン系(例、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン)が含まれる。
【0059】
適切な細胞毒性酵素の例には、核酸分解酵素が含まれるがそれらに限定されない。
【0060】
適切な細胞毒性放射性同位体の例には、任意のα−放射体、β−放射体またはγ−放射体が含まれるが、これらは腫瘍部位に局在すると、細胞破壊を生じさせる(S.E. Order, “Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy”, Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwinら、(Eds.),Academic Press,1985)。そのような放射性同位体の例には、ヨウ素−131(131I)、ヨウ素−125(125I)、ビスマス−212(212Bi)、ビスマス−213(213Bi)、アスタチン−211(211At)、レニウム−186(186Re)、レニウム−186(188Re)、リン−32(32P)、イットリウム−90(90Y)、サマリウム−153(153Sm)、およびルテニウム−177(117Lu)が含まれるがそれらに限定されない。
【0061】
あるいは、もしくは追加して、本発明において使用するために適切な治療成分は、全体を参照として援用する2007年8月7日に出願された“Chlorotoxins as Drug Carriers”(米国特許仮出願第60/954,409号)と題する共同所有の仮特許出願に記載された治療成分のいずれかであってよい。そのようなクラスの治療成分の例には、難水溶性抗癌剤、薬物耐性に関連する抗癌剤、アンチセンス核酸、リボザイム、三重らせん剤、短鎖干渉RNA(siRNA)、光増感剤、放射線増感剤、スーパー抗原、プロドラッグ活性化酵素、および抗血管新生剤が含まれるがそれらに限定されない。
【0062】
C. 標識化成分
所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの標識化成分で標識される。例えば、クロロトキシン薬剤内の1つ以上のクロロトキシン成分および/または1つ以上の治療成分は、標識化成分で標識することができる。
【0063】
標識化成分の役割は、試験対象の組織に結合した後にクロロトキシン薬剤の検出を促進することである。好ましくは、標識化成分は、測定できるシグナルを生成し、その強度が組織に結合した診断薬の量に関連する(例、比例する)ように選択される。
【0064】
好ましくは、標識化は、クロロトキシン薬剤の所望の生物学的活性もしくは薬学的活性を実質的に妨害しない。所定の実施形態では、標識化は、1つ以上の標識化成分のクロロトキシン成分への、好ましくはクロロトキシン成分のペプチド配列上の非干渉性位置への結合もしくは組み込みを含んでいる。そのような非干渉位置は、クロロトキシン成分の腫瘍細胞への特異的結合に参加しない位置である。
【0065】
標識化成分は、目的の組織もしくは系に結合した後にクロロトキシン薬剤の検出を可能にする任意の実体であってよい。広範囲の検出可能な薬剤のいずれかは、本発明のクロロトキシン薬剤における標識化成分として使用できる。標識化成分は、直接的に検出可能、または間接的に検出可能である。標識化成分の例としては、様々なリガンド、放射性核種(例、3H、14C、18F、19F、32P、35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu)、蛍光色素(特定の典型的な蛍光色素については、下記を参照)、化学発光色素(例えば、アクリジニウムエステル、安定化ジオキセタンなど)、生物発光剤、スペクトル的に分解可能な無機蛍光半導体ナノ結晶(すなわち、量子ドット)、金属ナノ粒子(例、金、銀、銅および白金)、もしくはナノクラスター、常磁性金属イオン、酵素(酵素の特定の例については以下を参照)、比色標識(例えば、色素、コロイド金など)、ならびにビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、およびタンパク質であってそれらに対する抗血清もしくはモノクローナル抗体を入手できるタンパク質が含まれるがそれらに限定されない。
【0066】
所定の実施形態では、標識化成分は、蛍光標識を含んでいる。様々な化学構造および物理的特性を有する多数の公知の蛍光標識化成分は、本発明の診断方法の実践において使用するために適切である。適切な蛍光色素には、フルオレセインおよびフルオレセイン色素(例、フルオレセインイソチオシアニンもしくはFITC、ナフトフルオレセイン、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセインもしくはFAM)、カルボシアニン、メロシアニン、スチリル色素、オキソノール色素、フィコエリトリン、エリスロシン、エオシン、ローダミン色素(例、カルボキシテトラメチル−ローダミンもしくはTAMRA、カルボキシローダミン6G、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、リサミンローダミンB、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミンもしくはTMR)、クマリンおよびクマリン色素(例、メトキシクマリン、ジアルキルアミノクマリン、ヒドロキシクマリンおよびアミノメチルクマリンもしくはAMCA)、Oregon Green色素(例、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514)、Texas Red、Texas Red−X、Spectrum Red(商標)、Spectrum Green(商標)、シアニン色素(例、Cy−3(商標)、Cy−5(商標)、Cy−3.5(商標)、Cy−5.5(商標))、Alexa Fluor色素(例、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660およびAlexa Fluor 680)、BODIPY色素(例、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY TR、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665)、IRD色素(例、IRD40、IRD 700、IRD 800)などが含まれるがそれらに限定されない。蛍光色素を例えばタンパク質およびペプチドなどの他の化学的実体へ結合させるために適切な蛍光色素および方法のさらなる例については、例えば、“The Handbook of Fluorescent Probes and Research Products”, 9th Ed., Molecular Probes, Inc., Eugene, ORを参照されたい。蛍光標識化剤の好ましい特性には、高いモル吸収係数、高い蛍光量子収量、および光安定性が含まれる。所定の実施形態では、標識化蛍光体は、望ましくはスペクトルの紫外線範囲(すなわち、400nm未満)よりむしろ可視範囲(すなわち、400〜750nm)内の吸収および発光波長を示す。
【0067】
所定の実施形態では、標識化成分は、酵素を含んでいる。適切な酵素の例には、ELISAにおいて使用される酵素、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、およびアルカリホスファターゼが含まれるがそれらに限定されない。他の例には、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ+ペルオキシドおよびアルカリホスファターゼが含まれる。酵素は、例えばカルボジイミド、ジイソシアネート、グルタルアルデヒドなどのリンカー基を使用してクロロトキシン成分にコンジュゲート化することができる。
【0068】
所定の実施形態では、標識化成分は、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)またはポジトロン放射断層撮影法(PET)によって検出可能な放射性同位体を含んでいる。そのような放射性核種の例には、ヨウ素−131(131I)、ヨウ素−125(125I)、ビスマス−212(212Bi)、ビスマス−213(213Bi)、アスタチン−221(211At)、銅−67(67Cu)、銅−64(64Cu)、レニウム−186(186Re)、レニウム−186(188Re)、リン−32(32P)、サマリウム−153(153Sm)、ルテニウム−177(117Lu)、テクネチウム−99m(99mTc)、ガリウム−67(67Ga)、インジウム−111(111In)、およびタリウム−201(201Tl)が含まれるがそれらに限定されない。
【0069】
所定の実施形態では、標識化成分は、γカメラによって検出可能な放射性同位体を含んでいる。そのような放射性同位体の例には、ヨウ素−131(131I)、およびテクネチウム−99m(99mTc)が含まれるがそれらに限定されない。
【0070】
所定の実施形態では、標識化成分は、磁気共鳴イメージング(MRI)における良好なコントラスト増強剤である常磁性金属イオンを含んでいる。そのような常磁性金属イオンの例には、ガドリニウムIII(Gd3+)、クロムIII(Cr3+)、ジスプロシウムIII(Dy3+)、鉄III(Fe3+)、マンガンII(Mn2+)、およびイッテルビウムIII(Yb3+)が含まれるがそれらに限定されない。所定の好ましい実施形態では、標識化成分は、ガドリニウムIII(Gd3+)を含んでいる。ガドリニウムは、MRIのためのFDA承認造影剤であり、異常組織中に蓄積し、これらの異常な領域が磁気共鳴画像上で極めて明るくなる(増強される)原因となる。ガドリニウムは、身体の様々な領域、特に脳内で正常組織と異常組織との間の大きなコントラストを提供することは公知である。
【0071】
所定の実施形態では、標識化成分は、核磁気共鳴分光法(MRS)で検出可能な安定性常磁性同位体を含んでいる。適切な安定性常磁性同位体の例には、炭素−13(13C)およびフッ素−19(19F)が含まれるがそれらに限定されない。
【0072】
D. クロロトキシン薬剤の形成
所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの治療成分と結合された少なくとも1つのクロロトキシン成分を含んでいる。そこで、クロロトキシン剤は、少なくとも2つの他の分子の会合(例、結合、相互作用、融合、またはカップリング)の結果として生じる。
【0073】
クロロトキシン薬剤内のクロロトキシン成分および治療成分の結合は、共有結合もしくは非共有結合であってよい。結合、相互作用、もしくはカップリングの性質には関係なく、クロロトキシン成分および治療成分の結合は、好ましくは、クロロトキシン薬剤が腫瘍および腫瘍中への輸送/送達前または輸送/送達中には解離しないように十分に選択的、特異的および強力である。クロロトキシン薬剤内のクロロトキシン成分および治療成分の結合は、当業者には公知である任意の化学的カップリング、生化学的カップリング、酵素的カップリング、または遺伝学的カップリングを使用して達成することができる。
【0074】
所定の実施形態では、クロロトキシン成分および治療成分の結合は非共有結合である。非共有結合相互作用の例には、疎水性相互作用、静電相互作用、双極子相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、および水素結合が含まれるがそれらに限定されない。
【0075】
所定の実施形態では、クロロトキシン成分および治療成分の結合は共有結合である。当業者には理解されるように、これらの成分は直接的もしくは間接的(例えば、以下で記載するように、リンカーを通して)のいずれかで相互に結合することができる。
【0076】
所定の実施形態では、クロロトキシン成分および治療成分は、相互に直接的に共有結合されている。直接的な共有結合は、アミド結合、エステル結合、炭素−炭素結合、ジスルフィド結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレア結合、アミン結合、またはカーボネート結合などの結合を通してであり得る。共有結合は、クロロトキシン成分および/または治療成分上に存在する官能基を利用することによって達成できる。あるいは、非臨界的アミノ酸は、カップリングのために有用な基(アミノ、カルボキシもしくはスルフヒドリル)を導入する別のアミノ酸によって置換されてよい。あるいは、追加のアミノ酸は、カップリングのために有用な基(アミノ、カルボキシもしくはスルフヒドリル)を導入するためにクロロトキシン成分に追加することができる。成分を一緒に結合するために使用できる適切な官能基には、アミン、無水物、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオールなどが含まれるがそれらに限定されない。例えばカルボジイミドなどの活性化剤は、直接結合を形成するために使用できる。広範囲の活性化剤は当技術分野において公知であり、治療剤およびクロロトキシン成分を結合させるために適する。
【0077】
他の実施形態では、クロロトキシン薬剤の内部のクロロトキシン成分および治療成分は、リンカー基によって相互に間接的に共有結合されている。これは、ホモ官能剤およびヘテロ官能剤を含む、当技術分野において周知の、任意の数の安定性二官能性剤を使用することによって達成できる(そのような薬剤の例については、例えば、Pierce Catalog and Handbookを参照されたい)。二官能性リンカーの使用と活性化剤の使用は、前者は結果として生じるクロロトキシン薬剤中に存在する結合成分を生じさせるが、後者は反応に関与する2つの成分間の直接カップリングを生じさせる点で相違する。二官能性リンカーの役割は、他の不活性である2つの成分間の反応を可能とすることである。あるいは、もしくは追加して、反応生成物の一部になる二官能性リンカーは、それがクロロトキシン薬剤へある程度の立体構造柔軟性を付与するように選択することができる(例、二官能性リンカーは数個の原子を含有する直鎖状アルキル鎖、例えば、2〜10個の炭素原子を含有する直鎖状アルキル鎖を含んでいる)。あるいは、もしくは追加して、二官能性リンカーは、クロロトキシン成分および治療成分の間で形成された結合が切断可能、例えば加水分解可能であるように選択できる(そのようなリンカーの例については、例えば、全体を参照として援用する米国特許第5,773,001号;第5,739,116号および第5,877,296号を参照されたい)。そのようなリンカーは、例えば好ましくは、コンジュゲートの加水分解後にクロロトキシン成分および/または治療成分のより高い活性が観察される場合に使用される。それによって治療成分がクロロトキシン成分から切断され得る典型的な機序には、酸性pHにおけるリソソーム中での加水分解(ヒドラゾン、アセタール、およびcis−アコニテート様アミド)、リソソーム酵素(カプテプシンおよびその他のリソソーム酵素)によるペプチド切断、およびジスルフィドの還元が含まれる。それによって治療成分がクロロトキシン薬剤から切断される別の機序には、細胞外もしくは細胞内での生理的pHでの加水分解が含まれる。この機序は、治療成分をクロロトキシン成分へカップリングさせるために使用される架橋剤が例えばポリデキストランなどの生物分解性/生物腐食性実体である場合に適用される。
【0078】
例えば、ヒドラゾン含有クロロトキシン薬剤は、所望の放出特性を提供する導入されたカルボニル基を用いて作製することができる。クロロトキシン薬剤は、さらに一方の端ではジスルフィド基、他方の端ではヒドラジン誘導体を有するアルキル鎖を含むリンカーを用いて作製することができる。ヒドラゾン以外の官能基を含有するリンカーは、さらにまたリソソームの酸性環境内で切断される可能性もまた有している。例えば、クロロトキシン薬剤は、例えばエステル、アミド、およびアセタール/ケタールなどの細胞内で切断可能な、ヒドラゾン以外の基を含有するチオール反応性リンカーから作製することができる。
【0079】
pH感受性リンカーのクラスの別の例は、アミド基と並置されたカルボン酸基を有する、cis−アコニテートである。カルボン酸は、酸性リソソーム中でアミド加水分解を加速させる。数種の他のタイプの構造を用いて類似タイプの加水分解速度の加速を達成するリンカーもまた使用できる。
【0080】
クロロトキシン薬剤のための別の可能性のある放出法は、リソソーム酵素によるペプチドの酵素的加水分解である。1つの例では、ペプチド毒素はアミド結合によってパラ−アミノベンジルアルコールへ結合し、次にカルバメートもしくはカーボネートがベンジルアルコールおよび治療成分の間で作製される。ペプチドの切断はアミノベンジルカルバメートもしくはカーボネートの崩壊および治療成分の放出を導く。別の例では、フェノールは、カルバメートの代わりにリンカーの崩壊によって切断することができる。別の変形では、ジスルフィド還元がパラ−メルカプトベンジルカルバメートもしくはカーボネートの崩壊を開始させるために使用される。
【0081】
クロロトキシン薬剤内の治療成分がタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドである実施形態では、クロロトキシン薬剤は融合タンパク質であってよい。既に上記で規定したように、融合タンパク質はそれらの個別のペプチド骨格を介して共有結合によって結合された2つ以上のタンパク質もしくはペプチドを含む分子である。本発明の方法において使用する融合タンパク質は、当技術分野において公知である任意の適切な方法によって生成することができる。例えば、それらはポリペプチド合成装置を使用して直接タンパク質合成法によって生成することができる。あるいは、アンカープライマーを使用して遺伝子フラグメントのPCR増幅を実施することができるが、これは2つの連続遺伝子フラグメント間で相補的オーバーハングを発生させ、これは引き続いてアニーリングして再増幅させるとキメラ遺伝子配列を生成することができる。融合タンパク質は、標準組換え法によって入手することができる(例えば、Maniatisら、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,2nd Ed.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring,N.Y.を参照されたい)。これらの方法は、一般に、(1)所望の融合タンパク質をコードする核酸分子の構築;(2)組換え発現ベクター内への核酸分子の挿入;(3)発現ベクターを用いての適切な宿主細胞の形質転換;および(4)宿主細胞内での融合タンパク質の発現、を含んでいる。そのような方法によって生成された融合タンパク質は、当技術分野において公知であるように、培養培地から直接的に、または細胞の溶解のいずれかで回収して単離することができる。形質転換された宿主細胞によって生成されたタンパク質を精製するための多数の方法は、当技術分野において周知である。これらには、沈降法、遠心分離法、ゲル濾過法、および(イオン交換、逆相、および親和性)カラムクロマトグラフィーが含まれるがそれらに限定されない。その他の精製方法は記載されている(例えば、Deutscherら、“Guide to Protein Purification”in Methods in Enzymology,1990,Vol.182,Academic Pressを参照されたい)。
【0082】
当業者であれば容易に理解できるように、本発明の方法において使用されるクロロトキシン薬剤は、任意の数の様々な方法によって相互に結合している、任意の数のクロロトキシン成分および任意の数の治療成分を含むことができる。コンジュゲートの設計は、その所定の目的およびその使用の特定の状況において望ましい特性によって影響を受けるであろう。クロロトキシン薬剤を形成するためにクロロトキシン成分を治療成分に結合させるための方法の選択は、当業者の知識の範囲内に含まれており、一般には、成分間の所望の相互作用の性質(すなわち、共有結合対非共有結合および/または切断可能対切断不可能)、治療成分の性質、含まれる成分上の官能性化学基の存在および性質などに依存するであろう。
【0083】
標識クロロトキシン薬剤では、クロロトキシン成分(もしくは治療成分)および標識化成分の結合は、共有結合であっても非共有結合であってもよい。共有結合の場合には、クロロトキシン成分(もしくは治療成分)および標識化成分は、上述したように、直接的または間接的のいずれかで相互に結合させることができる。
【0084】
所定の実施形態では、クロロトキシン成分(もしくは治療成分)および標識化成分の結合は非共有結合である。非共有結合の例には、疎水性相互作用、静電相互作用、双極子相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、および水素結合が含まれるがそれらに限定されない。例えば、標識化成分は、キレート化によってクロロトキシン成分(もしくは治療成分)に非共有的に結合させることができる(例えば、金属同位体は、クロロトキシン成分に結合、例えば融合されるポリHis領域にキレート化することができる)。
【0085】
所定の実施形態では、クロロトキシン成分(もしくは治療成分)は、同位体標識される(すなわち、通常自然に見いだされる原子質量もしくは質量数とは相違する原子質量もしくは質量数を有する原子によって置換されている1つ以上の原子を含有する)。あるいは、もしくは追加して、同位体をクロロトキシン成分および/または治療成分に結合させることができる。
【0086】
当業者であれば容易に理解できるように、本発明の所定の方法において使用される標識クロロトキシン薬剤は、任意の数の様々な方法によって相互に結合している、任意の数のクロロトキシン成分、任意の数の治療成分、および任意の数の標識化成分を含むことができる。標識クロロトキシン薬剤の設計は、その所定の目的、その使用の状況において望ましい特性、およびその検出から選択される方法によって影響を受けるであろう。
【0087】
II. 処置方法
本発明の処置方法には、有効量のクロロトキシン薬剤、またはその医薬組成物の、それを必要とする個体(すなわち、新生物腫瘍を有する個体)への全身性(例えば、静脈内)投与が含まれる。そこで、本発明の処置方法は、充実性腫瘍のサイズを減少させるため、腫瘍増殖および/または転移を阻害するため、リンパ腺癌を処置するため、および/または癌および癌の状態に罹患している哺乳動物(ヒトを含む)の生存期間を延長させるために使用できる。
【0088】
A. 適応
本発明によって処置できる癌および癌の状態の例には、脳および中枢神経系の腫瘍(例、髄膜、脳、脊髄、脳神経およびCNSの他の部分の腫瘍、例えば膠芽細胞腫もしくは髄質芽細胞腫)、頭頸部癌、乳房腫瘍、循環器系(例、心臓、縦隔および肋膜、その他の強胸郭内器官、血管性腫瘍、および腫瘍関連血管組織)の腫瘍、血管系およびリンパ系の腫瘍(例、ホジキン病、非ホジキン病リンパ腫、バーキットリンパ腫、AIDS関連リンパ腫、悪性免疫増殖性疾患、多発性骨髄腫、および悪性形質細胞新生物、リンパ球性白血病、骨髄性白血病、急性もしくは慢性リンパ球性白血病、単球性白血病、特定細胞型の他の白血病、不特定細胞タイプの白血病、リンパ球組織、造血性組織および関連組織の不特定悪性新生物、例えばびまん性大細胞型リンパ腫、T細胞リンパ腫もしくは皮膚T細胞リンパ腫)、排泄系(例、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、およびその他の泌尿器官)の腫瘍、消化器官(例えば、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸S状結腸移行部、直腸、肛門および肛門管)の腫瘍、肝臓および肝内胆管、胆嚢、および胆道のその他の部分、膵臓、およびその他の消化器官を含む腫瘍、口腔(例、唇、舌、歯茎、口腔底、口蓋、耳下腺、唾液腺、扁桃、中咽頭、鼻咽頭、膿状洞、下咽頭、および口腔の他の部位)の腫瘍、生殖器系(例、外陰部、膣、子宮頸部、子宮、卵巣、および女性生殖器に関連する他の部位、胎盤、陰茎、前立腺、精巣、および男性生殖器に関連する他の部位)の腫瘍、呼吸管の腫瘍(例、鼻腔、中耳、副腔、咽頭、気管、気管支、肺、例えば小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、骨格系(例、下肢の骨および関節軟骨、骨関節軟骨およびその他の部位)の腫瘍、皮膚の腫瘍(例、皮膚の悪性黒色腫、非黒色腫皮膚癌、皮膚の基底細胞癌、皮膚の扁平上皮癌、中皮腫、カポジ肉腫)、ならびに末梢神経系および自律神経系、結合組織および軟組織、腹膜後および腹膜、眼および付属器、甲状腺、副腎、他の内分泌腺および関連構造物、リンパ節の二次および不特定悪性新生物、呼吸器系および消化器系の二次性悪性新生物ならびに他の部位の二次性悪性新生物を含む他の組織を含む腫瘍が含まれるがそれらに限定されない。
【0089】
本発明の所定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、肉腫の処置において使用される。一部の実施形態では、本発明の組成物および方法は、膀胱癌、乳癌、慢性リンパ腫白血病、頭頸部癌、子宮内膜癌、非ホジキン病リンパ腫、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、および前立腺癌の処置において使用される。
【0090】
本発明の所定の実施形態では、組成物および方法は、神経外胚葉起源の腫瘍を処置するために使用される。ヒト患者において存在する神経外胚葉起源の任意の腫瘍は、一般には、本発明の組成物/方法を用いて処置できる。所定の実施形態では、患者が罹患する神経外胚葉起源の腫瘍は、神経膠腫、髄膜種、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経節腫、褐色細胞腫、黒色腫、末梢原始神経外胚葉腫瘍、小細胞肺癌、ユーイング肉腫、および神経外胚葉起源の脳内の転移性腫瘍からなる群の一員である。
【0091】
所定の実施形態では、神経外胚葉起源の腫瘍は、患者の脳を侵す。所定の実施形態では、脳腫瘍は神経膠腫である。すべての原発性脳腫瘍のほぼ半数は神経膠腫である。神経膠腫には4つの主要タイプがある。星状細胞腫(成人および小児の両方において最も一般的な神経膠腫のタイプである)、上衣細胞腫、乏突起膠腫、および混合性神経膠腫。神経膠腫は、それらの位置によって分類できる。テント下(すなわち、脳の下方部分に所在し、小児患者において最も多く見いだされる)またはテント上(すなわち、脳の上方部分に所在し、成人患者において最も多く見いだされる)。
【0092】
神経膠腫は、腫瘍の病理学的評価によって決定される、その悪性度によってさらに類別される。世界保健機関(WHO)は、最も低攻撃性である傾向を示すI度神経膠腫から最も攻撃性および悪性である傾向を示すIV度神経膠腫までの悪性度判定システムを開発している。低悪性度(すなわち、I度もしくはII度)の神経膠腫の例には、毛様細胞性星状細胞腫(若年性毛様細胞性星状細胞腫とも呼ばれる)、線維性星状細胞腫、多形性黄色星状膠細胞腫、および胚芽異形成性神経上皮腫瘍が含まれるがそれらに限定されない。高悪性度神経膠腫は、III度神経膠腫(例、未分化星状細胞腫、AA)およびIV度神経膠腫(多形性膠芽腫、GBM)を含んでいる。未分化星状細胞腫は、30代〜50代の男性および女性間で最も頻回に発生し、全脳腫瘍の4%を占めている。神経膠腫の中で最も侵襲性タイプである多形性膠芽種腫瘍は、50代〜70代の男性および女性間で最も頻回に発生し、全原発性脳腫瘍の23%を占めている。IV度神経膠腫の予後は最も不良であり、平均生存期間は12カ月間である。所定の実施形態では、本発明の方法は、高悪性度神経膠腫を処置するために使用される。
【0093】
積極的な処置にもかかわらず、通常神経膠腫は、頻繁に高悪性度を伴って、ときには様々な形態を伴って再発する。再発率は様々であるが、IV度神経膠腫は常に再発する。そこで所定の実施形態では、本発明の方法は、再発性神経膠腫、特に再発性高悪性度神経膠腫を処置するために使用される。
【0094】
本発明の組成物および方法を用いて処置できる腫瘍には、さらにまた他の化学療法薬を用いた処置に難治性である腫瘍が含まれる。用語「難治性」は、腫瘍に関連して使用する場合は、本発明の組成物以外の少なくとも1つの化学療法薬を用いた処置を受けた際の腫瘍(および/またはその転移)が、そのような化学療法薬を用いた処置後に抗増殖性応答を全く示さないか、または弱い抗増殖性応答しか示さない(すなわち、腫瘍増殖の阻害がないか、そのような阻害が弱い)、すなわち、他の(好ましくは標準の)化学療法薬を用いて全く処置できないか、または満足できない結果しか得られない腫瘍を意味している。本発明は、難治性腫瘍の処置などが言及される場合は、(i)1つ以上の化学療法薬が患者の処置中に既に失敗している腫瘍だけではなく(ii)他の手段、例えば生検および培養によって、化学療法薬の存在下で難治性であると証明できる腫瘍もまた含むと理解すべきである。
【0095】
本発明による処置を受けることのできる患者は、一般に新生物腫瘍を有すると診断された任意の患者を含んでいる。当業者には理解されるように、腫瘍の位置および性質に依存して、イメージング法、生検などの様々な診断方法が実施されてよい。
B. 用量および投与
本発明の処置方法では、クロロトキシン薬剤、もしくはその医薬組成物は、一般には、少なくとも1つの所望の結果を達成するために必要もしくは十分であるような量および時間にわたって投与されるであろう。例えば、クロロトキシン薬剤は、癌細胞を殺滅する、腫瘍サイズを減少させる、腫瘍増殖もしくは転移を阻害もしくは遅延させる、患者の生存期間を延長させる、または臨床的有益性を生み出すような量および時間にわたって投与することができる。
【0096】
本発明による処置は、単回投与またはある期間にわたる複数回投与から構成されてよい。投与は、1日1回もしくは複数回、週1回(もしくは他の複数日間隔で)または断続的スケジュールであってよい。投与すべきクロロトキシン薬剤、もしくはその医薬組成物の正確な量は、被験者毎に変動し、幾つかの因子(下記参照)に依存するであろう。
【0097】
クロロトキシン薬剤、もしくはその医薬組成物は、所望の治療作用を達成するために有効な任意の全身性投与経路を使用して投与されてよい。典型的な全身性投与経路には、筋肉内、静脈内、肺内、および経口経路が含まれるがそれらに限定されない。投与は、さらにまた、例えば、注入もしくはボーラス注射によって、または上皮もしくは皮膚粘膜内膜(例、口腔、粘膜、直腸および腸粘膜など)を通しての吸収によって実施されてよい。所定の好ましい実施形態では、クロロトキシン薬剤は、静脈内投与される。ヒト患者においてクロロトキシン薬剤を静脈内投与するための典型的な方法は、実施例9に記載されている。
【0098】
投与経路に依存して、有効量は、処置対象の被験者の体重、体表面積、または器官/腫瘍サイズによって計算することができる。適切な用量の最適化は、当業者であれば、ヒト臨床試験で観察された薬物動態試験データに照らせば容易に行うことができる。最終用量およびレジメンは、担当医によって、薬物の作用を修飾する様々な因子、例えば薬物の特異的活性、損傷の重症度および患者の応答性、患者の年齢、状態、体重、性別および食事、任意の存在する感染症の重症度、投与時間、他の療法の使用(もしくは不使用)、ならびに他の臨床因子を考察して決定されるであろう。クロロトキシン薬剤を用いた試験が実施されるにつれて、適切な用量レベルおよび処置期間に関する詳細な情報が明らかになるであろう。
【0099】
典型的な用量は、1.0pg/kg(体重)〜100mg/kg(体重)を含んでいる。例えば、全身性投与のためには、用量は100.0ng/kg(体重)〜10.0mg/kg(体重)であり得る。
【0100】
より詳細には、クロロトキシン薬剤が静脈内投与される所定の実施形態では、本薬剤の投与は、約0.001mg/kg〜約5mg/kg、例えば約0.001mg/kg〜約5mg/kg、約0.01mg/kg〜約4mg/kg、約0.02mg/kg〜約3mg/kg、約0.03mg/kg〜約2mg/kgまたは約0.03mg/kg〜約1.5mg/kgのクロロトキシンを含む1つ以上の用量の投与を含むことができる。例えば、所定の実施形態では、各々が約0.03mg/kg、約0.04mg/kg、約0.05mg/kg、約0.06mg/kg、約0.07mg/kg、約0.09mg/kg、約1.0mg/kgまたは1.0mg/kg超のクロロトキシンを含有する1つ以上の用量のクロロトキシン薬剤を投与することができる。他の実施形態では、各々が約0.05mg/kg、約0.10mg/kg、約0.15mg/kg、約0.20mg/kg、約0.25mg/kg、約0.30mg/kg、約0.35mg/kg、約0.40mg/kg、約0.45mg/kg、約0.50mg/kg、約0.55mg/kg、約0.60mg/kg、約0.65mg/kg、約0.70mg/kg、約0.75mg/kg、約0.80mg/kg、約0.85mg/kg、約0.90mg/kg、約0.95mg/kg、約1.0mg/kg、または約1mg/kg超のクロロトキシンを含有する1つ以上の用量のクロロトキシン薬剤を投与することができる。さらにまた別の実施形態では、各々が約1.0mg/kg、約1.05mg/kg、約1.10mg/kg、約1.15mg/kg、約1.20mg/kg、約1.25mg/kg、約1.3mg/kg、約1.35mg/kg、約1.40mg/kg、約1.45mg/kg、約1.50mg/kg、または約1.50mg/kg超のクロロトキシンを含有する1つ以上の用量のクロロトキシン薬剤を投与することができる。そのような実施形態では、処置は、単回用量のクロロトキシン薬剤の投与、または2回、3回、4回、5回、6回、または6回超の投与を含むことができる。2回の連続投与は、1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、7日間隔、または7日間超(例えば、10日間、2週間、または2週間超)の間隔で投与されてよい。
C. 併用療法
本発明の処置方法は、追加の療法と併用して使用できることは理解されるであろう(すなわち、本発明による処置は、1つ以上の所望の治療薬もしくは医療手技と同時か、または先行してか、または引き続いて投与することができる)。そのような併用レジメンにおいて使用するための療法(治療薬もしくは手技)の特定の併用は、所望の治療薬および/または手技の適合性および達成される所望の治療作用を考慮に入れるであろう。
【0101】
例えば、本発明の処置方法は、手術、放射線療法(例、γ線、中性子ビーム放射線療法、電子線放射線療法、陽子線療法、小線源療法、全身性放射性同位体)、内分泌療法、ハイパーサーミア、および凍結療法を含む、処置対象の腫瘍に依存した他の手技と一緒に使用できる。
【0102】
脳腫瘍の多数の症例では、本発明の処置は、術後に極めて頻回に投与されるであろう。脳腫瘍の処置では、手術の主要な目標は、全摘出、すなわち全可視腫瘍の除去を達成することである。そのような目標を達成する際の困難の1つは、これらの腫瘍が浸潤性であること、すなわちそれらは正常脳構造間でジグザグに進行する傾向があることである。さらに、患者の脳から安全に除去できる腫瘍の量には大きな変動性がある。除去は、一般には、腫瘍の全部もしくは一部が臨界的機能を制御する脳の領域内に所在する場合は不可能である。
【0103】
脳腫瘍の多数の症例では、本発明の処置は、しばしば放射線療法と併用して(すなわち、同時か、先行してか、または引き続いて)行われるであろう。従来型処置では、放射線療法は、一般に術後に行われる。放射線は、一般には、数週間にわたって一連の1日1回(分割と呼ばれる)療法として投与される。この放射線を投与するための「分割」アプローチは、腫瘍細胞の破壊を最大化し、正常隣接脳への副作用を最小限に抑えるために重要である。放射線が投与される領域(照射野と呼ばれる)は、実現可能な限り正常脳を含むことを回避できるように注意深く計算される。
【0104】
あるいは、もしくは追加して、本発明の処置方法は、例えば任意の有害作用を減弱させる薬剤(例、制吐薬)などの他の治療薬、および/または他の承認された化学療法薬と併用して行うことができる。化学療法薬の例には、一部の名を挙げると、アルキル化剤(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)、抗代謝薬(メトトレキセート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル、ゲムシタビン)、紡錘体毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン剤(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)が含まれるがそれらに限定されない。最新の癌療法についてのより包括的な考察については、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmにあるFDA承認抗癌剤の一覧である、http://www.cancer.gov、および全内容を参照として援用するThe Merck Manual、第17版、1999を参照されたい。
【0105】
本発明の方法はまた、治療レジメンの一部として細胞毒性剤の1つ以上のさらなる組み合わせと一緒に使用することができるが、細胞毒性剤のさらなる組み合わせは、CHOPP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、COP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、CAP−BOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、プロカルバジン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、m−BACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびロイコボリン)、ProMACE−MOPP(プレドニゾン、メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)、ProMACE−CytaBOM(プレドニゾン、メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、シタラビン、ブレオマイシン、およびビンクリスチン)、MACOP−B(メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン、およびロイコボリン)、MOPP(メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)、ABVD(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、およびダカルバジン)、MOPP(メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾンおよびプロカルバジン)とABV(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、およびビンクリスチン)を交互、MOPP(メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)とABVD(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、およびダカルバジン)を交互、ChlVPP(クロラムブシル、ビンブラスチン、プロカルバジン、およびプレドニゾン)、IMVP−16(イフォスファミド、メトトレキセート、およびエトポシド)、MIME(メチル−gag、イフォスファミド、メトトレキセート、およびエトポシド)、DHAP(デキサメタゾン、高用量シタラビン、およびシスプラチン)、ESHAP(エトポシド、メチルプレドニゾロン、高用量シタラビン、およびシスプラチン)、CEPP(B)(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CAMP(ロムスチン、ミトキサントロン、シタラビン、およびプレドニゾン)、CVP−1(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、ESHOP(エトポシド、メチルプレドニゾロン、高用量シタラビン、ビンクリスチン、およびシスプラチン)、EPOCH(シクロホスファミドのボーラス投与および経口プレドニゾンとともに96時間にわたるエトポシド、ビンクリスチン、およびドキソルビシン)、ICE(イフォスファミド、シクロホスファミド、およびエトポシド)、CEPP(B)(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CHOP−B(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CEPP−B(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、およびブレオマイシン)、ならびにP/DOCE(エピルビシンまたはドキソルビシン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、およびプレドニゾン)から選択される。
【0106】
当業者には理解されるように、本発明の処置方法と併用して投与できる1つ以上の治療薬の選択は、処置対象の腫瘍に依存するであろう。
【0107】
例えば、脳腫瘍のために処方される化学療法薬には、経口摂取されるテモゾロマイド(Temodar(登録商標))、プロカルバジン(Matulane(登録商標))、およびロムスチン(CCNU)、静脈内投与されるビンクリスチン(Oncovin(登録商標)またはVincasar PFS(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、カルムスチン(BCNU、BiCNU)、およびカルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、ならびに経口、静脈内または髄腔内(すなわち、髄液内へ直接的に注射される)投与され得るメトトレキサート(Rheumatrex(登録商標)またはTrexall(登録商標))が含まれるがそれらに限定されない。BCNUはまた、手術中にポリマーウエハインプラントの形態下でも投与される(Giadel(登録商標)ウエハ)。脳腫瘍に対して最も一般的に処方される併用療法の1つは、通常は6週間毎に投与されるPCV(プロカルバジン、CCNU、およびビンクリスチン)である。
【0108】
処置対象の腫瘍が神経外胚葉起源の脳腫瘍である実施形態では、本発明の方法は、例えば発作および脳水腫などの症状を管理するための薬剤と併用して使用できる。脳腫瘍と関連する発作を管理するために成功裏に投与される抗痙攣剤の例には、フェニトイン(Dilantin(登録商標))、カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))およびジバルプロエックスナトリウム(Depakote(登録商標))が含まれるがそれらに限定されない。脳の腫脹は、ステロイド剤(例えば、デキサメタゾン(Decadron(登録商標))を用いて処置できる。
【0109】
D. 医薬組成物
上述したように、本発明の処置方法は、クロロトキシン薬剤それ自体または医薬組成物の形態にあるクロロトキシン薬剤の投与を含んでいる。医薬組成物は、一般には、有効量の少なくとも1つのクロロトキシン薬剤および少なくとも1つの医薬上許容される担体もしくは賦形剤を含むであろう。
【0110】
医薬組成物は、当技術分野において周知の従来方法を使用して製剤化することができる。最適な医薬製剤は、投与経路および所望の用量に依存して変動させることができる。そのような製剤は、投与される化合物の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を及ぼすことがある。製剤化によって、固体、液体または半固体医薬組成物を生成することができる。
【0111】
医薬組成物は、投与の容易さおよび用量の一様性のために投与単位形で製剤化することができる。本明細書で使用する表現「投与単位形」は、処置対象の患者のためのクロロトキシン薬剤の物理的個別単位クロロトキシン薬剤を意味している。各単位は、所望の治療作用を生成するために計算された、事前に規定された量の活性物質を含有している。しかし、組成物の総用量は、堅実な医学的判断の範囲内で担当医によって決定されるであろう。
【0112】
上述したように、所定の実施形態では、クロロトキシン薬剤は、注射または注入によって静脈内投与される。注射または注入によって投与するために適切な医薬組成物は、適切な分散剤もしくは湿潤剤、および懸濁化剤を使用して公知の技術に従って製剤化することができる。医薬組成物はまた、例えば2,3−ブタンジオール中の溶液としての非毒性希釈剤もしくは溶媒中の無菌注射液、懸濁液またはエマルジョンであってよい。特に使用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液、U.S.Pおよび生理食塩液であってよい。さらに、無菌の固定油は、溶液もしくは懸濁媒質として従来から使用されている。このために、合成モノグリセリドもしくはジグリセリドを含む任意のブランドの固定油を使用できる。オレイン酸などの脂肪酸もまた、注射用製剤の調製において使用できる。
【0113】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通しての濾過によって、または使用前に無菌水もしくは他の無菌注射用媒質中に溶解もしくは分散させることのできる無菌固体組成物の形態にある無菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0114】
薬物の作用を延長させるために、注射からの薬物の吸収を緩徐化することがしばしば望ましい。これは、油性ビヒクル中に有効成分を溶解または懸濁させることによって実施することができる。注射用デポー形は、例えばポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって製造される。薬物対ポリマーの比率および使用される特定ポリマーの性質に依存して、薬物の放出速度を制御することができる。デポー注射用製剤はまた、身体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を封入することによって調製することができる。
【0115】
III. 診断方法
A. 投与
別の態様では、本発明は、腫瘍をインビボ診断するための方法を提供する。より詳細には、患者における非新生物組織から新生物腫瘍組織を識別するための方法が提供される。そのような方法は、本明細書に記載した有効量の標識クロロトキシン薬剤、またはその医薬組成物を患者へ、組織が新生物である場合は標識クロロトキシン薬剤の組織への特異的結合が発生できるように、全身性(例えば、静脈内)投与することを含んでいる。
【0116】
一般に、標識クロロトキシン薬剤の用量は、患者の年齢、性別、および体重、試験対象の身体の領域、ならびに投与経路などの検討材料に依存して変動するであろう。禁忌、併用療法、およびその他の変量などの因子もまた、投与すべき標識クロロトキシン薬剤の用量を調整するために考慮に入れるべきである。しかしこれは、経験を積んだ医師によって容易に達成することができる。一般に、標識クロロトキシン薬剤の適切な用量は、患者における新生物腫瘍組織の検出を可能にするために十分である薬剤の最少量に一致する。
【0117】
例えば、クロロトキシン薬剤が131Iで標識されていて静脈内投与される場合は、標識クロロトキシン薬剤の投与は、各々が約5mCi〜約100mCi、例えば、約5mCi〜約80mCi、約10mCi〜約80mCi、または約10mCi〜約50mCiの131Iを含む1つ以上の用量の投与を含むことができる。例えば、各々が約10mCi、約20mCi、約30mCiの131I、約40mCiの131I、約50mCiの131I、約60mCiの131I、約70mCiの131I、約80mCiの131I、約90mCiの131I、または約100mCiの131Iを含有する1つ以上の用量の131I放射標識クロロトキシン薬剤を投与することができる。そのような実施形態では、診断方法は、単回用量の131I−放射標識クロロトキシン薬剤の投与、または例えば、2回、3回もしくは4回などの複数回用量の投与を含むことができる。2回の連続投与は、1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、7日間隔、または7日間超の間隔で投与されてよい。
【0118】
131I−放射標識クロロトキシン薬剤が使用される実施形態では、患者には、好ましくは131I放射標識クロロトキシン薬剤の投与に先行して(例えば、本発明による処置の1日前、2日前、または3日前に)過飽和ヨウ化カリウムが投与される。過飽和ヨウ化カリウムの投与は、甲状腺による131Iの取込みを遮断するので、甲状腺機能低下症などの副作用を予防する。
【0119】
標識クロロトキシン薬剤の投与に続いて特異的結合が発生するために十分な時間が経過した後に、結合した標識クロロトキシンの検出が実施される。
【0120】
B. 腫瘍の検出および局在化
当業者であれば認識できるように、標識クロロトキシン薬剤の目的の組織への結合の検出は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段または化学的手段を含むがそれらに限定されない任意の多種多様な方法によって実施できる。検出方法の選択は、一般には薬剤の標識化成分(すなわち、蛍光成分、放射性核種、常磁性金属イオンなど)の性質に基づくであろう。所定の好ましい実施形態では、患者の体内の腫瘍の検出および局在化は、イメージング技術を用いて実施される。
【0121】
標識化成分の性質に依存して、様々なイメージング技術が使用できる。例えば、結合は、標識化成分が常磁性金属イオン(例、Gd3+)を含む場合には、磁気共鳴イメージング(MRI)を用いて検出することができる。標識化成分が放射性同位体(131Iなど)を含む場合は、結合を検出するために単光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)および/またはポジトロン放射断層撮影(PET)を使用できる。その他のイメージング技術には、γカメライメージングが含まれる。
【0122】
C. 診断
本発明の診断方法によると、組織は、標識クロロトキシン薬剤の目的の組織への結合レベルが標識クロロトキシン薬剤の正常組織への結合レベルと比較して上昇している場合、新生物組織であると同定される。既に上述したように、正常組織は、本明細書では非新生物組織であると規定されている。例えば、本方法がインビボで実施されると、目的の器官(例、脳)の領域内で測定された標識クロロトキシン薬剤の結合レベルは、同一器官の正常領域内で測定された標識クロロトキシン薬剤の結合レベルと比較することができる。
【0123】
所定の実施形態では、目的の組織は、測定された結合レベルが正常組織への結合レベルより高い場合は、新生物組織であると同定される。例えば、結合レベルは、正常組織への結合レベルの少なくとも約2倍より高い、少なくとも約3倍より高い、少なくとも約4倍より高い、少なくとも約5倍より高い、少なくとも約10倍より高い、少なくとも約25倍より高い、少なくとも約50倍より高い、少なくとも約75倍より高い、少なくとも約100倍より高い、少なくとも約150倍より高い、少なくとも約200倍より高い、または200倍より高くてよい。
【実施例】
【0124】
以下の実施例では、本発明を作製および実施する好ましい様式の一部について記載する。しかし、これらの実施例は例示することだけを目的としており、本発明の範囲を制限することは意図していないことを理解されたい。さらに、実施例の中の記載が過去形で記載されていない限り、本文は、本明細書の他の部分と同様に、実験が実施された、またはデータが実際に入手されたと示唆することを意図していない。
【0125】
実施例1 TM−601およびビオチニル化TM−601(TM−602)のインビトロ細胞結合
最初にLeiurus quinquestriatusサソリ毒から単離された36アミノ酸ペプチドであるTM−601の腫瘍細胞系および正常一次細胞培養への結合を試験した。得られた結果は、TM−601が多数の相違する腫瘍タイプへ選択的に結合するという以前の予備試験観察をさらに確証した。ヒト、サル、ラット、ハムスター、およびマウス由来のものを含む、ヒト、ラット、およびマウス神経膠腫細胞系、培養一次細胞、および非神経膠腫細胞系をTM−601結合について試験した。さらに、例えば肺腫瘍、結腸腫瘍、前立腺腫瘍および黒色腫に由来する腫瘍系を含む多数の非神経膠腫細胞系もまたTM−601に結合することが見いだされた。これとは対照的に、使用した実験条件下では、多数の一次培養細胞(ラットおよびヒト星状膠細胞)および非神経膠腫細胞系(ヒト肺線維芽細胞、ヒト皮膚線維芽細胞、ヒト臍血管内皮細胞、ヒトニューロン細胞、および3T3マウス線維芽細胞)はTM−601結合について陰性であることが見いだされた。得られた全データを図1に要約する。
【0126】
プレート結合における、およびFACSアッセイによる細胞上のTM−601結合の証明:様々な癌のタイプを示している広範囲の腫瘍細胞系を標的とすることを証明するために、ビオチニル化TM−601(TM−602)をプレート結合アッセイにおいて使用した。試験したヒト癌細胞系は、転移性および原発性乳癌、肺癌、前立腺癌、脳癌、結腸直腸癌、および黒色腫を含んでいた。より詳細には、試験した神経膠腫細胞はD54、U251、U373、およびG26、乳房腫瘍細胞は2LMP、DY3672、LCC6、BT474、SK−BR−3、MCF−7、MDA−MB−231、MDA−MB−468、およびMDA−MB−453、非小細胞肺癌はA427、WI−62、およびH1466、黒色腫はSKM28、結腸直腸癌はSW948、ならびに前立腺癌細胞はPC3、LNCaP、およびDU145を含んでいた。
【0127】
96ウェルプレート内のサブコンフルエント培養は、TM−602を生存細胞に添加し、その後に色基質を発色させるためにストレプトアビジン−HRPを添加することによって結合についてアッセイした。結合は、TM−602が加えられていない細胞と比較したストレプトアビジン−HRPコントロールの百分率として決定した。試験した全腫瘍細胞系はTM−602に結合することが見いだされたが、3つのヒト乳腺腺癌細胞系への結合は試験した他の腫瘍細胞より低かった(図2を参照されたい)。
【0128】
TM−601の血液系癌との反応性を証明するために、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用した。ビオチニル化TM−601(TM−602)を使用して、ヒト非ホジキンリンパ腫、T細胞白血病、および黒色腫細胞系を染色した。FACS分析によって、全血液系腫瘍細胞系はTM−602に結合した(2種のリンパ腫、1種のT細胞白血病、および1種の骨髄性白血病)。
【0129】
実施例2 非標識TM−601は、インビトロでの腫瘍細胞増殖を減少させない
白血病、黒色腫ならびに肺癌、結腸癌、脳癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌および腎臓癌を提示する56種のヒト腫瘍細胞系を含有するインビトロ細胞系スクリーニングは、米国立癌研究所によって実施された。TM−601をスクリーニング科へ提出した。得られた結果は、TM−601が試験した細胞系のいずれにとっても細胞毒性ではないことを証明した。追跡実験として、低血清増殖条件下で細胞毒性活性が明白であったかどうかを決定するために、単一細胞系であるPanc−1をある範囲の血清濃度(10%、5%、2%、1%)で試験した。クロロトキシンの有意な細胞毒性は観察されず、これはクロロトキシンに対する主要作用機序が腫瘍細胞への直接的な細胞毒性作用を介してではないことを示している。
【0130】
実施例3 ビオチニル化TM−601のインビトロ組織結合
ビオチニル化TM−601(TM−602)を用いた組織化学的染色試験は、ヒト生検標本および/またはヒト剖検標本のパラフィン中に包埋された固定組織または冷凍切片に対してTM−601結合部位を局在化するために実施した。これまで、200片を超える脳腫瘍生検および剖検標本をTM−601結合について評価した。これらの試験には、神経膠腫、他の悪性腫瘍、および非新生物組織が含まれた。本試験およびその後の試験の結果を図3に提示する。
【0131】
一般に、ほぼ全部の神経膠腫はTM−601に対する顕著な染色活性を示したが、正常な非腫瘍組織は示さなかった。所定の腫瘍内のTM−601陽性細胞のパーセンテージは50〜98%の範囲に及び、WHO悪性度の上昇に伴って増加した。TM−601による神経膠腫の特異的な染色の例を図4に示す。さらに、第I相臨床試験からの全患者の脳腫瘍組織サンプルは強固なビオチニル化TM−601染色を示したが、非癌脳組織はほんのわずかなバックグラウンド染色しか示さなかった。
【0132】
本試験におけるその他の陽性組織は、神経膠腫に類似する胚起源を有する末梢神経外胚葉腫瘍(PNET)を含んでいた。TM−601によるPNETの組織化学的染色の例を図5に示す。
【0133】
これらの非神経膠腫における染色の証明は、例えばTM−601などのクロロトキシン薬剤が神経膠腫以外の多数の腫瘍を標的とするために使用できることを示唆している。その後の試験は、TM−601が標的とする腫瘍のタイプを、例として乳癌、乳癌転移、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、およびリンパ腫を含むタイプへと広げた。
【0134】
実施例4 担癌マウスにおける131I−TM−601の有効性
131I−TM−601がヒト神経膠腫異種移植マウスモデルにおいて生存期間を延ばす能力について試験した。各々少なくとも10匹のヌードマウスからなる3つの群に、ヒト神経膠腫細胞系U251−MGを頭蓋内に移植した。U251−MG細胞は、食塩液、非標識(「低温」)TM−601または1.65mCiの131I−TM−601のいずれかを用いてエクスビボで30分間にわたり前処置した。次に細胞を食塩液で洗浄し、およそ1×106細胞を脳内に導入した。131I−TM−601を投与された細胞上の結合放射能量は、エクスビボで細胞に適用された総線量の0.2%に過ぎなかった。これは、0.5mCiのヒト脳線量に一致する。
【0135】
メジアン生存期間は、非標識TM−601および食塩液処置動物各々において、21および29日間に達した。これとは対照的に、この同一期間中に131I−TM−601処置動物においては、動物は1匹も死亡しなかった(図6Aを参照されたい)。第21日に、各群に残っている動物には各エクスビボ化合物(食塩液、非標識TM−601、または0.165mCiの131I−TM−601のいずれか)を頭蓋内に注射し、131I−TM−601処置動物の一部では第22日(処置24時間後)および第25日(処置96時間後)にγカメライメージングを実施した。γカメライメージングは、脳内の131I−TM−601の濃度を示したが、これは放射能が注射部位で24時間にわたり維持されていたことを示していた。イメージングはさらに、TM−601に結合すると、放射能がこの期間にわたって他の組織による取込みをほとんど伴わずに96時間超にわたり腫瘍の領域内に特異的に維持されることを証明した(図6Bを参照されたい)。
【0136】
131I−TM−601処置群のメジアン生存期間は腫瘍移植後78日に達し、本試験が90日目に終了した時点では、14例の131I−TM−601処置動物中5匹の動物が未だ生存していた。131I−TM−601で処置された動物群においては169%の生存率が見られた。薬物は、処置されたマウスに良好に忍容され、化合物関連挙動作用は認められなかった。これらの結果は、ヌードマウスモデルにおける131I−TM−601などの標識クロロトキシン薬剤の治療有効性および診断能力を証明している。これは、U251−MG腫瘍細胞系の放射線耐性およびたった2回の放射線投与を考察すると顕著であり、さらに高悪性度神経膠腫を処置およびイメージングするためのクロロトキシン薬剤の臨床適用を支持している。
【0137】
実施例5 担癌マウスに静脈内投与された125I−TM−601
125I−TM−601が血液脳関門を横断する能力を評価するために一連の実験を実施した。これらの実験は、E54−MG/SCIDマウスモデルを利用した5件の研究試験から構成された。これらの試験では、125I−TM−601を尾静脈を介して注射し、その後のTM−601が脳腫瘍を標的とする能力を24時間後に測定した。1つの実験はまた、コントロールとして125I−EGFを利用したが、これはEGF受容体がこれらの腫瘍内ではアップレギュレートされることが公知であるからである。コントロールとしてのEGFの使用は、TM−601のようなEGFが頭蓋内に注射された場合に神経膠腫細胞に結合することが証明されているために、重要である。図7から明らかなように、125I−TM−601の静脈内注射によって、これらの動物の脳の右半球内に移植されたD54−MG異種移植ヒト神経膠腫を特異的に標的としたが、これは静脈内投与された125I−TM−601が血液脳関門を横断することを証明している。さらに、125I−EGFの静脈内注射が何らかの感知可能な程度まで脳腫瘍へ局在化せず、これは125I−EGFが無傷血液脳関門を横断しなかったことを示していることに注目することが重要である。これらの実験から、例えば125I−TM−601などのクロロトキシン薬剤は血液脳関門を横断し、その生物学的に活性な状態で脳内に所在する腫瘍に到達すると結論付けられた。
【0138】
実施例6 担癌マウスに静脈内投与されたTM−601の有効性
全身性投与された125I−TM−601は、血液脳関門を横断して頭蓋内腫瘍に結合することを前提として、静脈内投与経路を使用して脳内での抗腫瘍活性について試験するために、非標識TM−601を用いた実験を実施した。
【0139】
ヌードマウスの頭蓋内にD54MG神経膠腫細胞を移植した。異種移植片の移植14日後に開始して、週に2度、食塩液または2種の用量のTM−601(マウス1匹当たり、注射1回当たり0.2μgまたは2.0μg)のいずれかで長期尾静脈注射を全試験期間にわたって実施した。この実験からの生存曲線は、高用量のTM−601が与えられた動物において生存期間の強化が発生したことを証明している(図8)。メジアン生存期間(動物の50%が生存している期間)を測定すると、高用量TM−601処置によってメジアン生存期間は34日間(食塩液群)から56日間へ用量依存様式で延長した。低用量TM−601は、同様の寿命延長を示さなかった。さらにこれは、非標識分子の長期全身性投与がマウスモデルに与えられると有効であることを示唆している。生存期間延長が腫瘍細胞への直接的な作用に起因するか、または別の作用に関連するかを識別するためには、D54MG脳腫瘍を有する処置された動物についての詳細な組織学的分析が必要であろう。
【0140】
単剤療法としての非標識TM−601の治療能力を裏付ける追加の1つの予備試験は、マウス側腹腫瘍モデルを用いたTM−601の長期全身性(i.v.)送達である。この異種移植腫瘍モデルを使用して、D54MGヒト神経膠腫細胞をヌードマウス(1群に付き7〜8匹)の側腹部に移植した。14日後に開始して、非標識TM−601は、マウス1匹当たり、注射1回当たり0.26μgの用量で尾静脈を介して2回投与した。1群の動物はTM−601処置を受け、1群は2Gyの放射線(RT)を週2回受け、第3群はRTおよびTM−601を受けた。第52〜53日の間に、TM−601および/またはRTの最終投与を行い、動物は第67日まで試験した。TM−601群ならびにTM−601およびRT併用群についての腫瘍増殖曲線は、療法中および療法終了後に極めて密接に整列している(図9)。
【0141】
RT群についての曲線は、腫瘍がRT単独群より緩徐に増殖することを示唆している。しかし、平均値の標準誤差を示すエラーバーは、特に後期の時点にはばらつきのレベルを示している。このことや小さなサンプリングサイズ(試験終了時に、RT単独群についてはn=5および他の群についてはn=8)のために、腫瘍増殖の差は統計的に有意であるとは思われなかった。このデータは、TM−601およびRTの両方が38〜39日間の治療経過にわたって疾患進行を防止したこと、治療の完了後には腫瘍が増殖し始めたことを示唆している。より結論的に言えば、治療無しでの腫瘍進行速度を確立するためにコントロール群を含めるべきであったが、歴史的には、このD54MG側腹モデルにおける腫瘍はこの実験で観察されたものよりも高速で増殖する。そこでこの予備試験は、単剤療法としてのTM−601の長期全身性送達がこの側腹腫瘍モデルにおいて有効であると示唆している。
【0142】
要約すると、クロロトキシンを用いたインビトロ試験は、神経膠腫、神経外胚葉組織を含む多数の腫瘍細胞タイプ、ならびに例えば乳癌および前立腺癌などの多数の他の腫瘍への特異的結合を証明した。この組織学的結合は、腫瘍細胞系を用いて確証された。この結合は、正常組織への結合が有意に弱かったので、腫瘍に選択的であると思われる。インビボモデルを使用すると、131I−TM−601の頭蓋内注射および非標識TM−601の反復全身性注射は、頭蓋内神経膠腫異種移植片を有する動物の寿命を延長させることが証明されている。これらのデータは、放射標識TM−601が放射活性タグの局所的送達を介して腫瘍増殖に大きな影響を及ぼすのに対し、非標識TM−601は未だ不明確な機序を通して腫瘍増殖に大きな影響を及ぼすことを示唆している。
【0143】
実施例7 動物におけるTM−601の薬物動態および代謝
ヌードマウスにおけるTM−601の薬物動態:TM−601の血漿中レベルおよび尿レベルを、ヌードマウスへの単回用量で2μgのTM−601の静脈内(IV)、腹腔内(IP)、皮下(SC)または強制経口(PO)送達後に測定した。TM−601は、TM−601と交差反応するウサギ抗TM−701抗体を使用するELISAアッセイを使用して検出された。TM−701は、1つのアミノ酸(残基29でのチロシン置換)によってTM−601とは相違する。2μgのTM−601の単回投与後の血漿中レベルを図10に示す。最高ピーク血清レベル(Cmax)は静脈内注射後に観察され、その後に皮下投与、腹腔内投与および強制経口投与が続いた。TM−601の血漿中レベルは、強制経口投与の場合は定量不能であった。
【0144】
血漿中のTM−601の半減期は、静脈内投与については17.7分、皮下投与については27.4分であると計算された。TM−601は、単回で2μgの腹腔内注射または皮下注射の30、60または240分後に犠牲にした動物の尿中で測定された。TM−601は、腎クリアランス中に高度に濃縮される。経時的な総尿産生量についてのより詳細な情報がなければ、尿を通して排泄されたTM−601の総量および排泄動態を決定することができない。薬物投与から4時間以内に、循環TM−601がアッセイ検出レベル未満に減少した場合は、尿中の濃度もまた検出レベル未満に低下した。IV、IP、SCまたは強制経口投与の場合、TM−601の薬物動態は大まかには3つの相違するプロファイルに分類することができる。静脈内注射は、測定した最早時点にて血液中の薬物の大きなボーラスピークをもたらす。薬物は次に、およそ18分の半減期で下降する。これとは対照的に、腹腔内送達または皮下送達のいずれかは、TM−601がより緩徐に注射部位から血液区画内に進入するにつれて、推定できるより緩徐な動態プロファイルをもたらした。さらに、半減期は、同様におよそ27分へ増加する。半減期におけるこの増加は、循環レベルが皮下注射部位からの薬物の持続的放出と排出/代謝との間の平衡を表している、より複雑な血液内の薬物動態プロファイルによって説明することができた。第3のタイプの薬物動態プロファイルは、強制経口投与後に示された。血漿中レベルは、アッセイのバックグラウンドよりほんのわずかに上であったが、定量することができた。そこで、現行の製剤では、経口投与の経路は全身性循環に効果的には到達しない。
【0145】
これらをまとめると、得られたインビトロおよびインビボデータは、TM−601が高度の特異性および感受性で腫瘍に結合すること、TM−601が血液脳関門を横断できることを示唆している。動物では、放射標識TM−601の投与は良好に忍容され、腫瘍における高い選択性および優れた滞留を示した。
【0146】
実施例8 動物に静脈内投与されたTM−601の毒性
TM−601の毒物作用は、図11に要約したように、7件のGLP毒物学試験において齧歯類および霊長類において評価した。これら7件の試験中6件では、TM−601を静脈内投与した。全身性毒性の徴候は7件の試験中のいずれにおいても観察されなかったために、各試験における全身性NOAEL(すなわち、無毒性量)は投与された最大用量以上である。
【0147】
マウスにおける単回投与静脈内注射毒性試験:CD−1マウスにおいて0mg/kg(ビヒクル、0.9%塩化ナトリウム)、0.64mg/kgまたは6.4mg/kg(HEDは0.05mg/kgおよび0.5mg/kg)のIV投与後に試験を実施した。TM−601は、注射用の無菌食塩液(0.9%塩化ナトリウム)中で再構成し、単回IV投与(10mL/kg)として10マウス/性別/群に投与した。化合物関連作用についての評価は、臨床観察所見、体重、飼料消費量、眼科学、ならびに血液学パラメーターおよび臨床化学パラメーターに基づいた。試験の第15日に、生存している全動物を犠牲にし、臓器重量ならびに肉眼的死後検査および顕微鏡的死後検査を含む肉眼死後検査に供した。本試験中には、予定外の死亡は発生しなかった。体重、飼料消費量または血液学パラメーターおよび臨床化学パラメーターへのTM−601関連作用は見られなかった。眼科学検査では、化合物関連変化は全く観察されなかった。剖検時には、TM−601投与に帰せられる肉眼的病変または顕微鏡的病変は観察されず、臓器重量における変化も見られなかった。
【0148】
マウスにおける急性静脈内注射毒性試験:TM−601の急性毒性は、0mg/kg(ビヒクル、0.9%塩化ナトリウム)、0.5mg/kgまたは5.0mg/kgでの静脈内(IV)投与後のCD−1マウスにおいて評価した。活性化合物は、化合物重量のおよそ82%であった。TM−601は、注射用の無菌食塩液(0.9%塩化ナトリウム)中で再構成し、単回IV投与(10mL/kg)として5マウス/性別/群に投与した。化合物関連作用についての評価は、臨床観察所見および体重に基づいた。第15日に、生存している全動物を屠殺し、肉眼死後検査に供した。投与溶液は、用量の正確さを検証するために分析された。0.5mg/kg群から、1匹の雌性動物および1匹の雄性動物が第6日に死亡したことがわかり、また別の雄性動物は感触が冷たく、この日には活動を減少させていた。これらの動物は飲料水に十分に近づくことができず、このために脱水が生じたと思われた。5.0mg/kgの用量で死亡した動物はいなかった。体重へのTM−601関連作用は見られず、試験中および最終剖検時に死亡した動物いずれにおいても可視病変は観察されなかった。
【0149】
マウスにおける単回投与静脈内毒物学試験からの知見に基づくと、TM−601は0.64mg/kgおよび6.4mg/kgの単回IV投与後に非毒性であると考えられる。このためIV NOAEL用量は、マウスでは少なくとも6.4mg/kg(HEDは0.5mg/kg)である。
【0150】
反復投与毒性試験
マーモセットへの静脈内投与によるクロロトキシン最大忍容用量試験:TM−601の急性毒性は、ピラミッド化試験設計においてマーモセットサル(Callithryx jacchus)において評価した。この範囲設定試験では、1匹の雄性マーモセットおよび1匹の雌性マーモセットに、各投与間に3日間のウォッシュアウト期間を含めて、TM−601 IVが0.020mg/kg、0.20mg/kg、および2.0mg/kg(HEDは、各々、0.003mg/kg、0.03mg/kgおよび0.3mg/kg)を投与した。TM−601を0.9%塩化ナトリウム中に溶解し、3つの用量について各々0.4mL/kg(体重)、0.4mL/kg(体重)および2.0mL/kg(体重)の量で静脈内投与した。化合物関連作用についての評価は、臨床観察所見、体重、飼料消費量ならびに血液学パラメーター、凝固パラメーター、および臨床化学パラメーターに基づいた。最終用量の投与1日後に、動物を安楽死させ、臓器重量を計量し、任意の異常が観察された組織部および注射部位に対し肉眼的病理検査または顕微鏡的病理検査を実施した。
【0151】
本試験中には、予定外の死亡は発生せず、試験したパラメーターのいずれにおいてもTM−601関連所見もなかった。
【0152】
3日間にわたるマーモセットへの静脈内投与、その後に14日間の観察期間が続く静脈内投与によるクロロトキシン毒性試験:TM−601の毒性については、マーモセットサルにおいて連続3日間のIV投与後に評価した。マーモセット(3/性別/用量)にTM−601を0mg/kg/日(0.9%無菌食塩液)、0.20mg/kg/日または2.0mg/kg/日(HEDは各々、0.03mg/kgおよび0.3mg/kg)で投与した。化合物関連作用についての評価は、臨床観察所見、体重、飼料消費量ならびに血液学パラメーター、凝固パラメーター、および臨床化学パラメーターに基づいた。動物は、最終(第3)用量の投与後14日間にわたり観察し、その後に安楽死させ、臓器重量を計量した。肉眼的病理検査および顕微鏡的病理検査を全組織について実施した。
【0153】
本試験中には、予定外の死亡は発生しなかった。臨床観察所見、体重、飼料消費量ならびに血液学パラメーター、凝固パラメーター、および臨床化学パラメーターに対する化合物関連作用は全く見られなかった。さらに、臓器重量へのTM−601関連作用、剖検時の化合物作用の徴候、および化合物に帰せられる組織病理学的所見はなかった。
【0154】
連続3日間にわたってマーモセットへ静脈内投与されたTM−601の無作用用量は、少なくとも2.0mg/kg(HEDは0.3mg/kg)である。
【0155】
マウスへ静脈内注射によって週1回投与されたTM−601の7週間毒物学試験:静脈内注射によって送達された場合、全身性投与されたTM−601の慢性毒性試験は、マウスにおいて実施した。7週間にわたって週1回尾静脈内へのボーラス注射によって投与された全8回の投与は、5mL/kgの用量で3群のCrl:CD−1(登録商標)(ICR)BRマウスに行った。用量レベルは、0.5mg/kg/回、2mg/kg/回、および5mg/kg/回であった。同時コントロール群は、匹敵するレジメンでビヒクルを投与した。7週間の用量投与後、10マウス/性別/群を安楽死させた。コントロール群および高用量群中の残りの3〜5マウス/性別は、14日間の非投与(回復)期間後に安楽死させた。動物は、死亡率および罹患率について毎日2回観察し、臨床検査は毎日実施した。臨床病理評価(血液学および血清化学)は、一次(試験第7週)および回復時(試験第9週)剖検の直前に実施した。全動物に対して完全剖検を実施し、予定された剖検では選択された臓器を計量した。
【0156】
これらの試験の結果は、生存率、体重、飼料消費量、血液学パラメーターおよび血清化学パラメーターならびに臓器重量がTM−601の投与によって影響を受けないことを示していた。肉眼的検査および顕微鏡的検査は、被験物質関連病変を明らかにしなかった。可能性のある被験物質関連臨床所見は、投与1時間後の2および5mg/kg/回群における低発生率での下垂症および自発運動低下から構成された。全症例において、これらの臨床所見は非投与日には観察されず、有害であるとは見なされなかった。
【0157】
この試験の結果に基づくと、7週間にわたるマウスへのTM−601の週1回静脈内投与(全8回の投与)についてのNOAELは、少なくとも5mg/kg/回(HEDは0.4mg/kg)であった。
【0158】
8回にわたる週1回の注射、その後に2週間の回復期間が続く、マーモセットへの静脈内(ボーラス)投与によるTM−601(クロロトキシン)毒性試験:一般的マーモセット(Callithrix jaccus)へ静脈内注射によって週1回投与した場合のTM−601の全身性慢性潜在毒性を、7週間の期間にわたって評価した。用量レベルは、0.06mg/kgまたは0.2mg/kgであった。7週間にわたる投与後、3匹/性別/群を安楽死させた。コントロール群および高用量群中の残りの2匹/性別/群は、14日間の非投与(回復)期間後に安楽死させた。コントロール群には、同一頻度でビヒクル(リン酸緩衝食塩液)を投与した。臨床状態、体重、飼料消費量、毒物動態、尿分析、臓器重量、肉眼的病理調査および組織病理調査を実施した。
【0159】
用量投与部位で見られた徴候は、主として挫傷、時には肥厚および痂皮形成から構成され、その出現はコントロール動物および処置群動物を同様に含んでおり、投与経路に関連していてTM−601の処置結果とは関連していないと考えられる。
【0160】
体重変化はにはばらつきがあり、マーモセットに特有な周期的変動を示した。さらに、コントロール群と処置群との間に一貫性の差は見られず、処置群間の差は見られず、このパラメーターでは統計的有意性は見られなかった。飼料消費量は、処置群およびコントロール群間で類似であった。
【0161】
臨床病理検査は、処置群およびコントロール群間で差を示さなかった。尿分析も、同様に差を示さなかった。臓器重量は、処置関連群間の差を全く示さなかった。顕微鏡検査は、評価されたいずれの臓器においても処置の作用が見られないことを示した。
【0162】
本試験の結論は、0.06mg/kgおよび0.20mg/kgの用量でTM−601の8回の静脈内注射の投与は、処置の有害作用または全身性毒性の証拠を全く伴わずに極めて良好に忍容されるというものであった。生存中観察所見ならびに肉眼的および顕微鏡的検査で投与部位で見られた徴候は、投与経路によって誘発された低レベルの物理的外傷に関連しており、クロロトキシンへの曝露の結果ではなかった。本試験によって同定されたNOAELは、少なくとも0.2mg/kg(HEDは0.03mg/kg)であると考えられた。
【0163】
実施例9 再発性または難治性体細胞性および/または脳転移性充実性腫瘍を有する患者における静脈内131I−TM−601の第I相イメージングおよび安全性試験
第I相イメージング試験は、計48例の患者にTM−601を静脈内投与した5カ所の臨床試験機関で完了されている。この多施設共同オープンラベル非ランダム化連続「被験者内」用量増量試験は、再発性または難治性いずれかの、標準療法に応答しなかった検出可能な転移性関与の明確な証拠を示した、組織学的に確証された原発性充実性悪性腫瘍を有する患者を含んでいた。
【0164】
この第I相試験の目的は、a)静脈内131I−TM−601の投与によって、再発性もしくは難治性転移性(脳転移を含む)充実性腫瘍を有する患者において腫瘍特異的局在化がもたらされるかどうかを評価すること、b)静脈内投与された131I−TM−601の分布および線量を決定すること、およびc)静脈内投与された131I−TM−601の安全性および忍容性を決定することであった。
患者および処置プロトコール
本試験にはおよそ50例の被験者が登録され、131I−TM−601の増量される2〜3回の静脈内投与を受け、その後に131I−TM−601が標的腫瘍細胞に局在したかどうかを決定するための一連の全身スキャン検査、および131I−TM−601の腫瘍特異的取込みが証明されたらTM−601の1回の静脈内治療投与が実施された。図12のグラフは、投与スキームを例示する。
【0165】
試験患者は、静脈内(IV)注入によって131I−TM−601の3種の増量する用量(10mCi/0.2mg〜30mCi/0.6mgの範囲)を投与された。10mCiまたは20mCi用量の投与24時間後に実施されたイメージングによって、131I−TM−601の腫瘍特異的取込みを示した患者だけが、30mCi用量の131I−TM−601による処置を受けた。
【0166】
131I−TM−601の調製
最終TM−601薬物製品は、栓付きガラスバイアル内に入れられた無菌の白色からオフホワイトの凍結乾燥粉末である。この臨床試験で使用されたイメージングおよび治療用量は、放射標識TM−601の用量であった。
【0167】
131I−TM−601の調製および使用:TM−601の最終薬物製品を0.56mLの放射標識バッファー内で再構成すると131Iで放射標識された1mg/mL溶液が得られたので、これが臨床試験機関へ届けられた。シリンジは注入用のおよそ4mLの溶液を含有しており、放射能含量および放射能量に関して近似的にラベル表示された。試験機関で受領されると、放射線安全管理者または他の適切な試験機関職員は、131I−TM−601の放射線量が規定仕様内にあることを確認した。最終放射標識薬物製品を含有するシリンジは遮蔽され、その後患者へ投与するための適切な病院エリアへ移された。131I−TM−601溶液は、2〜8℃で光から保護して保存され、使用時までは遮蔽された。131Iを用いて放射標識した後、製品は24時間以内に使用された。
131I−TM−601の投与およびイメージング試験
放射標識試験用量の131I−TM−601を投与する全患者に、放射標識131I−TM−601注入の当日の朝および直前ならびに少なくとも3日間にわたって、甲状腺およびその他の器官への131Iの取込みを遮断するために、300mg/日の用量で経口により過飽和ヨウ化カリウム(SSKI)を投与した。SSKIは、医院/病院にいない間の薬物の適正な使用に関して患者に提供された取扱説明書にしたがって、試験薬の投与前に患者に投薬した。
【0168】
131I−TM−601を含有するシリンジは、6インチの静脈内ニードル/カテーテル内の注入ポート内へ「ピギーバック」法で挿入された。100mL/時で0.9%塩化ナトリウムが流れている間に、製品はおよそ5〜10分間にわたって「緩徐IVプッシュ」によって投与された。131I−TM−601注入は、以下の状態のいずれかが発生したら終了した。(1)収縮期血圧における>25mmHgの低下、(2)試験責任医師によって証明された有意な呼吸困難、(3)>102°Fの体温、(4)発作、(5)意識レベルの変化もしくは新規の神経学的欠損の発生、または例えば医師の判定もしくは患者の要請などの他の理由。
【0169】
γカメラによるイメージングおよび一部の症例では、SPECTが、30mCi用量の131I−TM−601を投与することについての局在化および適格性を決定するために、131I−TM−601の投与24時間後に実施された。
【0170】
安全性試験の結果
2007年4月現在、患者17例が少なくとも2種の用量(最大30mCi/0.6mg)のIV投与処置を受けたが、急性の有害作用を経験した患者はいなかった。7例の特異的患者が計7例の重篤な有害作用(SAE)を経験した。これらのSAEはいずれも、試験責任医師によって試験薬と「関連する可能性がある」または「おそらく関連する」とは評価されなかった。患者1例は、投与から30日間以内に死亡した。この患者は、本試験に登録され、2006年10月25日および2006年11月1日に131I−TM−601の2回のIV投与を受けた、転移性小細胞肺癌の病歴を有する60歳の男性であった。この患者は療法への急性反応を全く示さず、腫瘍特異的取込みも示さなかったので、引き続いて脊椎への緩和的放射線療法へ進んだ。この患者はホスピスに登録され、2006年11月24日に自宅で息を引き取った。試験責任医師は、この患者の死亡を試験薬との「関連はありそうもない」と評価し、進行性疾患と関連する可能性がより高いと評価した。患者2例は投与前に各々1回のSAEを経験した(両側性胚塞栓症およびUTI、各々CTCAE悪性度4および3)。患者1例は投与1日後に腹痛および鼓腸を経験した(CTCAE悪性度4)。患者1例は投与10日後に歩行することができず、基礎疾患の進行に続発性と推定される脊髄圧迫を有すると見いだされた(CTCAE悪性度3)。患者2例は投与18〜20日後にDVTを経験した(どちらもCTCAE悪性度3)。
【0171】
有効性試験の結果
静脈内投与後に様々な腫瘍タイプにおいて腫瘍特異的取込みが見られたが、これは悪性神経膠腫を有する患者8例中7例、転移性黒色腫を有する患者7例中7例、前立腺癌を有する患者2例中2例、非小細胞肺癌を有する患者4例中3例、および転移性結腸癌を有する患者7例中5例を含んでいた(図13に要約されているが、さらに図14〜20も参照されたい)。
【0172】
全患者に、試験用量の10mCi(0.2mgのペプチド)131I−TM−601を静脈内投与した。腫瘍局在化および線量分析のために、131I−TM−601注射の直後、3時間後、24時間後、48〜72時間後、および168時間後に5回連続で全身γカメラ画像を得た。γカメラまたはSPECTイメージングによって腫瘍局在化を示した患者に、1週間後に30mCi(0.6mgペプチド)131I−TM−601の第2回治療用量を投与した。取込みを示さなかった患者を、より高用量での局在化の可能性を決定するために、1週間後に20mCi(0.4mgペプチド)131I−TM−601を用いて再処置した。
【0173】
線量決定サブセット分析に含まれた神経膠腫を有する全7例の患者は、131I−TM−601のIV投与後の追跡γカメラまたはSPECTイメージング上で腫瘍特異的局在化を証明した。線量を制限する毒性は観察されなかった。平均放射線量は、全身に対しては0.23cGy/mCi(0.15〜0.31cGy/mCiの範囲)および腫瘍に対しては0.81cGy/mCi(0.36〜1.51cGy/mCiの範囲)であり、計算治療比(腫瘍/身体)はおよそ3.5であった。
【0174】
予備イメージング分析では、悪性神経膠腫を有する患者1例は、処置3週間後に増強した腫瘍容積および水腫における有意な減少を示した(図21を参照されたい)。第21日目の評価時のこの患者についてのMRIイメージングは、T1増強容積およびT2容積の減少を証明した。悪性神経膠腫を有する、131I−TM−601の腫瘍特異的取込みも示し、その後に静脈内処置用量を投与した別の患者は、イメージング改善がない場合明白な臨床改善を示した。
【0175】
これらの結果は、インビボで全身送達されるTM−601などのクロロトキシン薬剤の治療作用を示している。これらの結果はまた、静脈内投与された131I−TM−601が血液脳関門を横断し得ること、手術不能な神経膠腫を有する患者におけるMRイメージング改善をもたらすことができることも証明している。
【0176】
実施例10 クロロトキシン薬剤の治療作用の増加および/または変化
本実施例は、被験者が曝露されるクロロトキシン薬剤の総量を増加させると本薬剤の治療作用を増大および/または変化させることができることを証明する。
【0177】
2008年9月17日に出願された国際出願PCT/US08/76740号に記載されるように、クロロトキシン薬剤のPEG化によって血中半減期が増大し、さらに血管形成を阻害する能力が増大し得る。
【0178】
任意の特定の理論によって拘束されることを望まないが、本発明は、PEG化クロロトキシン薬剤を用いて得られたそのような観察所見が曲線下面積作用を表す可能性があることを提案する。例えば、相違する治療剤は相違する方法で生物学的作用を誘発することは周知である。一部は、例えば特定の時間量内で特定の閾値レベルの達成を必要とする。一部は全曝露のレベルを必要とする。一部はそのような要件の組み合わせを有する。本発明は、クロロトキシン薬剤の一部の作用(例、特異的結合、場合により細胞取込み)は低用量もしくは曝露レベルで達成できるが、血管新生を阻害、および/または他の治療作用を達成するためにはより高い全曝露(例、曲線下面積)が必要とされることがあると提案している。
【0179】
材料および方法
PEG化
TM−601を、多分散性直鎖状40kDaのPEG−プロピオンアルデヒド(DowPharma社製)を用いた還元アミノ化によってペプチドのN末端でPEG化した。
TM−601の半減期測定
非担癌C57BL/6マウスに、単回の尾静脈注射によってTM−601(およそ2mg/kgの用量で)を静脈内注射した。血液サンプルが様々な時点で入手され、抗TM−601抗体を使用するELISAによってTM−601のレベルが決定された。
マウス用マトリゲルプラグ
マトリゲルマトリックス高濃度(BD Biosciences社製)を100ng/mLのVEGF、100ng/mLのbFGF、および3ng/mLのヘパリンと4℃で混合した。8週齢の雌性C57BL/6マウスを、各々マウス6匹を含む各群へ無作為に割り付けした。各マウスに、皮下組織の両側に注射された2つの500μLマトリゲルプラグを投与した。円形のプラグを形成するために、ルーチン的な皮下穿刺後に左右の穿刺点を揺さぶることによって幅広の皮下ポケットが形成された。注射は、全内容物がプラグ内に送達されることを保証するために、21〜25Gニードルを用いて迅速に実施した。マトリゲルプラグは、試験第0日に移植し、処置は第1日に開始した。動物にはビヒクル(食塩液)、TM−601、またはPEG化TM−601のいずれかを静脈内注射によって投与した。3種の投与レジメンを使用した。2週間にわたり週1回(D1に1回およびD8に1回、「Q7D×2」)、2週間にわたり週2回(D1、D4、D8、およびD11、「Q3D×2/2」)、および2週間にわたり週5回(D1、D2、D3、D4、D5、D8、D9、D10、D11、およびD12、「Q1D×5/2」)。プラグを14日後に回収した。マウスを安楽死させ、プラグの上方の皮膚を引き戻した。プラグを細片化し、固定し、組織学分析のためにパラフィン中に包埋した。各評価可能なプラグからの厚さ5μmの3片の切片をCD31抗体で免疫染色し、ヘマトキシリンおよびエオシンで対染色した。各マトリゲルプラグの断面積内の血管数を顕微鏡下で分析した。
結果/考察
図22に示したように、PEG化TM−601は、未修飾TM−601と比較してインビボで増加した半減期を示した。驚くべきことに、PEG化によってTM−601の半減期がおよそ32倍、すなわちおよそ25分(TM−601)からおよそ16時間(TM−601−PEG)に上昇した。
【0180】
血管形成のモデル内で動物に低頻度で投与する能力に変換された、増加した半減期。マウスマトリゲルプラグアッセイでは、動物に、TM−601またはPEG化TM−601(TM−601−PEG)のいずれかを用いて様々なスケジュールによって投与した。微小血管密度を測定し、そのような密度の減少は、抗血管形成作用を示すと解釈した。
【0181】
TM−601およびTM−601−PEGはどちらも、試験された2種の最も頻回な投与スケジュールで抗血管形成作用を有していた(2週間にわたり週2回、「Q3D×2/2」、および2週間にわたり週5回、「Q1D×5/2」)(図23)。TM−601は試験した最小頻度の投与スケジュール(2週間にわたり週1回、「Q7D×2」)で抗血管形成作用を示さなかったが、そのような投与スケジュールでTM−601−PEGを用いた処置は微小血管密度の有意な減少をもたらした(図23)。
【0182】
任意の特定の理論によって拘束されることを望まないが、動物へ低頻度で投与する能力は、TM−601と比較してより長期間にわたるTM−601−PEGの利用可能性に起因する可能性がある。そのような増加した利用可能性は、より長期の治療作用を可能にする、新規な血管形成の部位でのより長時間の曝露をもたらすことができよう。さらに任意の特定の理論によって拘束されることを望まないが、そのようなより長時間の曝露(すなわち、増加した曲線下面積)が実際に、例えばTM−601(または別のクロロトキシン薬剤)の結合および/または取込みを許容する条件下でさえ、観察されない治療作用を可能にすることが考えられる。
【0183】
TM−601−PEGを用いて観察された、TM−601と比較して改善された治療作用は、特に、クロロトキシンが相当に小さなペプチドであり、その結果としてPEG化などの有意な修飾が機能を変化させるか、機能を弱める可能性があると予測し得るので、驚くべきことである。本明細書に提示したデータは、驚くべきことにPEG化クロロトキシン薬剤が活性(例えば、結合活性)を保持するだけではなく、実際に増強された、および/または新規な活性(例、抗血管形成作用)を示すことを証明している。
その他の実施形態
本発明のその他の実施形態は、本明細書に開示した本発明の明細書または実施を考察すれば、当業者には明白になるであろう。本明細書および実施例は例示に過ぎないと考えられ、本発明の真の範囲は下記の特許請求の範囲によって示されることを意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を有する個体を処置する方法であって、有効量のクロロトキシン薬剤を該個体に投与する工程を含み、該クロロトキシン薬剤は全身性投与される、方法。
【請求項2】
前記クロロトキシン薬剤は、静脈内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クロロトキシン薬剤は、正常細胞を越えて癌細胞を選択的に標的とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クロロトキシン薬剤は、クロロトキシン、生物学的に活性なクロロトキシンサブユニット、およびクロロトキシン誘導体からなる群から選択されるクロロトキシン成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの治療成分に結合したクロロトキシン成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記クロロトキシン成分および治療成分は、直接的に共有結合している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記クロロトキシン成分および治療成分は、融合して融合タンパク質を形成する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記クロロトキシン成分および治療成分は、リンカーを通して共有結合している、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記治療成分は、抗癌剤を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記抗癌剤は、アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物性アルカロイド、挿入抗生物質、アロマターゼ阻害剤、抗代謝薬、細胞分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的反応修飾剤、抗ホルモン薬および抗アンドロゲン薬からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記治療成分は、細胞毒性剤を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞毒性剤は、毒素、生物学的に活性なタンパク質、化学療法抗生物質、核酸分解酵素、および放射性同位体からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞毒性剤は、ゲロニン、リシン、サポニン、シュードモナス属外毒素、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素、および補体タンパク質からなる群の一員を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞毒性剤は、放射性同位体を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞毒性剤は、ヨウ素−131(131I)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記腫瘍は、充実性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記腫瘍は、難治性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍は、再発性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記腫瘍は、転移性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍は、肺癌、骨癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚黒色腫もしくは眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、性生殖器癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、慢性白血病もしくは急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、中枢神経系(CNS)新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫からなる群の一員である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記腫瘍は、神経外胚葉起源の腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記神経外胚葉起源の腫瘍は、神経膠腫、髄膜種、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経節腫、褐色細胞腫、黒色腫、末梢原始神経外胚葉腫瘍、肺の小細胞癌、ユーイング肉腫、および脳内の神経外胚葉起源の転移性腫瘍からなる群の一員である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与する工程は、クロロトキシン薬剤の少なくとも1用量の全身性投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
クロロトキシン薬剤の用量は、およそ0.001mg/kg〜およそ5mg/kgを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記個体に前記クロロトキシン薬剤を投与する前に前記腫瘍を検出する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記腫瘍を検出する工程は、
前記個体に有効量の標識クロロトキシン薬剤を投与する工程であって、該標識クロロトキシン薬剤は全身性投与される工程、および
該標識クロロトキシン薬剤の組織への結合を測定する工程であって、正常組織と比較して上昇した結合レベルは、該組織が腫瘍組織であることを示す工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記標識クロロトキシン薬剤は、静脈内投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記標識クロロトキシン薬剤は、蛍光体、放射性同位体、および常磁性金属イオンからなる群から選択される少なくとも1つの標識化成分を用いて標識される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記標識化成分は、ヨウ素−131(131I)またはヨウ素−125(125I)を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記標識化成分は、テクネチウム−99m(99mTc)を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記標識化成分は、銅−64(64Cu)を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記標識クロロトキシン薬剤の組織への結合を測定する工程は、レーザー誘導性蛍光分光法、γカメラ、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)およびポジトロン放射断層撮影法(PET)からなる群から選択される技術を用いて実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記個体に化学療法剤を投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記化学療法剤は、アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物性アルカロイド、挿入抗生物質、アロマターゼ阻害剤、抗代謝薬、細胞分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的反応修飾剤、抗ホルモン薬および抗アンドロゲン薬からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
個体における腫瘍組織を検出する方法であって、
該個体に有効量の標識クロロトキシン薬剤を投与する工程であって、該標識クロロトキシン薬剤は全身性投与される工程、および
該標識クロロトキシン薬剤の目的の組織への結合を測定する工程であって、正常組織と比較して上昇した結合レベルは、該組織が腫瘍組織であることを示す工程、
を含む、方法。
【請求項36】
前記標識クロロトキシン薬剤は、静脈内投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記標識クロロトキシン薬剤は、正常細胞を越えて癌細胞を選択的に標的とする、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記標識クロロトキシン薬剤は、クロロトキシン、生物学的に活性なクロロトキシンサブユニット、およびクロロトキシン誘導体からなる群から選択されるクロロトキシン成分を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記標識クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの標識化成分を用いて標識され、該標識化成分は、蛍光体、放射性同位体、および常磁性金属イオンからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記標識化成分は、ヨウ素−131(131I)またはヨウ素−125(125I)を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記標識化成分は、テクネチウム−99m(99mTc)を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記標識化成分は、銅−64(64Cu)を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記標識クロロトキシン薬剤の組織への結合を測定する工程は、レーザー誘導性蛍光分光法、γカメラ、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)およびポジトロン放射断層撮影法(PET)からなる群から選択される技術を用いて実施される、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記腫瘍組織は、充実性腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記腫瘍組織は、難治性腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記腫瘍組織は、再発性腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記腫瘍組織は、転移性腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記腫瘍組織は、肺癌、骨癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚黒色腫もしくは眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、性生殖器癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、中枢神経系(CNS)新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫からなる群から選択される腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項49】
前記腫瘍組織は、神経外胚葉起源の腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項50】
前記神経外胚葉起源の腫瘍は、神経膠腫、髄膜種、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経節腫、褐色細胞腫、黒色腫、末梢性原始神経外胚葉腫瘍、肺の小細胞癌、ユーイング肉腫、および脳内の神経外胚葉起源の転移性腫瘍からなる群の一員である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記投与する工程は、標識クロロトキシン薬剤の少なくとも1用量の全身性投与を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項52】
前記投与する工程は、標識クロロトキシン薬剤の第1用量および第2用量の全身性投与を含み、該第2用量は該第1用量より多い、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記投与する工程は、標識クロロトキシン薬剤の第1用量、第2用量および第3用量の全身性投与を含み、該第2用量は該第1用量より多く、該第3用量は該第2容量より多い、請求項51に記載の方法。
【請求項1】
腫瘍を有する個体を処置する方法であって、有効量のクロロトキシン薬剤を該個体に投与する工程を含み、該クロロトキシン薬剤は全身性投与される、方法。
【請求項2】
前記クロロトキシン薬剤は、静脈内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クロロトキシン薬剤は、正常細胞を越えて癌細胞を選択的に標的とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クロロトキシン薬剤は、クロロトキシン、生物学的に活性なクロロトキシンサブユニット、およびクロロトキシン誘導体からなる群から選択されるクロロトキシン成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの治療成分に結合したクロロトキシン成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記クロロトキシン成分および治療成分は、直接的に共有結合している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記クロロトキシン成分および治療成分は、融合して融合タンパク質を形成する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記クロロトキシン成分および治療成分は、リンカーを通して共有結合している、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記治療成分は、抗癌剤を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記抗癌剤は、アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物性アルカロイド、挿入抗生物質、アロマターゼ阻害剤、抗代謝薬、細胞分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的反応修飾剤、抗ホルモン薬および抗アンドロゲン薬からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記治療成分は、細胞毒性剤を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞毒性剤は、毒素、生物学的に活性なタンパク質、化学療法抗生物質、核酸分解酵素、および放射性同位体からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞毒性剤は、ゲロニン、リシン、サポニン、シュードモナス属外毒素、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素、および補体タンパク質からなる群の一員を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞毒性剤は、放射性同位体を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞毒性剤は、ヨウ素−131(131I)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記腫瘍は、充実性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記腫瘍は、難治性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍は、再発性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記腫瘍は、転移性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍は、肺癌、骨癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚黒色腫もしくは眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、性生殖器癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、慢性白血病もしくは急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、中枢神経系(CNS)新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫からなる群の一員である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記腫瘍は、神経外胚葉起源の腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記神経外胚葉起源の腫瘍は、神経膠腫、髄膜種、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経節腫、褐色細胞腫、黒色腫、末梢原始神経外胚葉腫瘍、肺の小細胞癌、ユーイング肉腫、および脳内の神経外胚葉起源の転移性腫瘍からなる群の一員である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与する工程は、クロロトキシン薬剤の少なくとも1用量の全身性投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
クロロトキシン薬剤の用量は、およそ0.001mg/kg〜およそ5mg/kgを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記個体に前記クロロトキシン薬剤を投与する前に前記腫瘍を検出する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記腫瘍を検出する工程は、
前記個体に有効量の標識クロロトキシン薬剤を投与する工程であって、該標識クロロトキシン薬剤は全身性投与される工程、および
該標識クロロトキシン薬剤の組織への結合を測定する工程であって、正常組織と比較して上昇した結合レベルは、該組織が腫瘍組織であることを示す工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記標識クロロトキシン薬剤は、静脈内投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記標識クロロトキシン薬剤は、蛍光体、放射性同位体、および常磁性金属イオンからなる群から選択される少なくとも1つの標識化成分を用いて標識される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記標識化成分は、ヨウ素−131(131I)またはヨウ素−125(125I)を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記標識化成分は、テクネチウム−99m(99mTc)を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記標識化成分は、銅−64(64Cu)を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記標識クロロトキシン薬剤の組織への結合を測定する工程は、レーザー誘導性蛍光分光法、γカメラ、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)およびポジトロン放射断層撮影法(PET)からなる群から選択される技術を用いて実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記個体に化学療法剤を投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記化学療法剤は、アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物性アルカロイド、挿入抗生物質、アロマターゼ阻害剤、抗代謝薬、細胞分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的反応修飾剤、抗ホルモン薬および抗アンドロゲン薬からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
個体における腫瘍組織を検出する方法であって、
該個体に有効量の標識クロロトキシン薬剤を投与する工程であって、該標識クロロトキシン薬剤は全身性投与される工程、および
該標識クロロトキシン薬剤の目的の組織への結合を測定する工程であって、正常組織と比較して上昇した結合レベルは、該組織が腫瘍組織であることを示す工程、
を含む、方法。
【請求項36】
前記標識クロロトキシン薬剤は、静脈内投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記標識クロロトキシン薬剤は、正常細胞を越えて癌細胞を選択的に標的とする、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記標識クロロトキシン薬剤は、クロロトキシン、生物学的に活性なクロロトキシンサブユニット、およびクロロトキシン誘導体からなる群から選択されるクロロトキシン成分を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記標識クロロトキシン薬剤は、少なくとも1つの標識化成分を用いて標識され、該標識化成分は、蛍光体、放射性同位体、および常磁性金属イオンからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記標識化成分は、ヨウ素−131(131I)またはヨウ素−125(125I)を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記標識化成分は、テクネチウム−99m(99mTc)を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記標識化成分は、銅−64(64Cu)を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記標識クロロトキシン薬剤の組織への結合を測定する工程は、レーザー誘導性蛍光分光法、γカメラ、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)およびポジトロン放射断層撮影法(PET)からなる群から選択される技術を用いて実施される、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記腫瘍組織は、充実性腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記腫瘍組織は、難治性腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記腫瘍組織は、再発性腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記腫瘍組織は、転移性腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記腫瘍組織は、肺癌、骨癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚黒色腫もしくは眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、性生殖器癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、中枢神経系(CNS)新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫からなる群から選択される腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項49】
前記腫瘍組織は、神経外胚葉起源の腫瘍由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項50】
前記神経外胚葉起源の腫瘍は、神経膠腫、髄膜種、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経節腫、褐色細胞腫、黒色腫、末梢性原始神経外胚葉腫瘍、肺の小細胞癌、ユーイング肉腫、および脳内の神経外胚葉起源の転移性腫瘍からなる群の一員である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記投与する工程は、標識クロロトキシン薬剤の少なくとも1用量の全身性投与を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項52】
前記投与する工程は、標識クロロトキシン薬剤の第1用量および第2用量の全身性投与を含み、該第2用量は該第1用量より多い、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記投与する工程は、標識クロロトキシン薬剤の第1用量、第2用量および第3用量の全身性投与を含み、該第2用量は該第1用量より多く、該第3用量は該第2容量より多い、請求項51に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図19】
【公表番号】特表2011−500601(P2011−500601A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529095(P2010−529095)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/079547
【国際公開番号】WO2009/049184
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510034764)トランスモレキュラー, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/079547
【国際公開番号】WO2009/049184
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510034764)トランスモレキュラー, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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