説明

腫瘍壊死因子インヒビター

本発明は、腫瘍壊死因子レセプターIのアロステリックインヒビターである化合物、その様な化合物を含む組成物、及びTNF-αを介する疾患の治療におけるその様な化合物及び組成物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書にその全体を参照することによって組み込まれる、2005年1月31日に出願した米国仮出願第60/648,973号の、35 U.S.C 119(e)の下における利益を享受する。
【0002】
本発明は、国立保険研究所認可番号RO1-CA89481及び国立癌研究所認可番号1PO1 CA89480-04に出資を受けた研究の過程の一部でなされた。米国政府は、本発明にいくらかの権利を有する。
【0003】
本発明は、腫瘍壊死因子レセプターIのアロステリックインヒビターである化合物、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
本発明の研究の指揮は、国立保険研究所、国立癌研究所、及びLeonard and Madlyn Abramson Family Cancer Reseach Institute Fundからの資金によって部分的に支持されたものである。
【0005】
タンパク質の構造変化は、pH、溶媒、リガンド結合、及びオリゴマー化を含む各種の物理的な因子によって誘導され得る。コンフォメーション変化は、マルチマー化タンパク質において認められるような一定の局所的な部位において生じるか、又はリガンド結合部位から離れたところで生じ得る(アロステリズム)。
【0006】
タンパク質の機能は、コンフォメーション変化によって変化し得る。免疫グロブリンは、大小のコンフォメーション変化を誘導することによって、及びタンパク質のオリゴマー化に作用することによって、タンパク質の機能を変化することが示されている。例えば、Taq DNAポリメラーゼ複合体の結晶構造において、抗体は、へリックスの大きなコンフォメーション変化を誘導すること及び遷移状態にタンパク質を捕捉することによってDNAポリメラーゼの機能を阻害し、結合部位から離れた部位におけるコンフォメーションの配置の変化がタンパク質の機能調節に使用し得る可能性を示した。
【0007】
コンフォメーション変化が、基質/リガンド認識におけるステップであり得ることは一般的に議論されている。タンパク質-タンパク質複合体の結晶構造からの複数の研究が、サブドメイン間に局所的又は全体における2-20Å(0.2〜2nm)の範囲のコンフォメーション変化を明らかにした。既知のアロステリック部位を有するミオグロブリン又はグリコーゲンホスホリラーゼのようなマルチマー化タンパク質の場合では、所定のコンフォメーション変化が、調節的又は機能的な作用のためのタンパク質の領域を経て伝わる。
【0008】
酵素の種類ではないタンパク質の表面の空洞は、広く探索されているものではないが、酵素の不活性化は、活性部位に結合する競争的又は基質アナログインヒビターを設計することによって達成されている。複数の治療的インヒビターが、基質の構造及び分子特性に基づいて開発され、これらは「基質アナログ」として一般的に知られている。酵素に関しては、小分子エフェクターが同定されている。例えば、既知及び確立したアロステリック結合部位の知識に基づいて、アロステリックインヒビターが設計され、開発されている。活性部位/リガンド結合部位付近の小さなコンフォメーション摂動(perturbation)又は活性部位付近の多型が、基質に基づくインヒビターに対する耐性に関与することが示唆されている。
【0009】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、活性化されたマクロファージ/単球及びリンパ球によって生産される多面的なサイトカインである。TNF-αは、細菌及び他の微生物感染、並びにその後に続く炎症性物質での刺激の間の損傷組織への白血球のリクルートを含む、炎症応答及び免疫応答における主要な媒介因子である。過剰量で存在する際に、TNF-αは組織損傷を誘導することが既知であり、炎症及び自己免疫疾患に関連する病理に関与している。
【0010】
TNF-αの生物学的な作用は、配列及び分子量が異なるTNF-RI及びTNF-RII(ヒトでは各々p55及びp75)という2つの異なる膜タンパク質レセプターを介する。TNF-RIは、大多数(全てではない)のヒトの細胞種において、低レベルで存在することが報告されており、ヒトにおけるTNF-RI遺伝子の発現は、感染、インターフェロン、及びホルボールエステルのようなセカンドメッセンジャーの調節因子によってアップレギュレートされ得る。双方のTNFレセプターの細胞外部分も、細胞表面におけるタンパク質分解的な切断によって、レセプターの膜結合形態から由来する可溶性の形態で存在する。可溶性TNFレセプターは、溶液中でTNF-αに結合する能力を保持している。可溶性TNFレセプターは、健康な個体に由来する尿及び血清において同定され、幾つかの慢性疾患及びその後に続くTNF-αの放出を誘導する薬剤の接種において増加することが示されている。
【0011】
TNF-αの病理学的な作用は、可溶性TNF-Rフラグメント又は抗TNF-α抗体の投与によって緩和され得る。これらの薬剤は、循環するTNF-αに結合し、かくしてTNF-Rに対するTNF-αの結合を妨げて、TNF-αシグナル伝達を低減させる。TNF-Rフラグメント又は抗TNF-α抗体は、慢性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、及び乾癬の治療に関して、米国食品医薬品局によって認可されている。
【0012】
TNF-αを介する疾患の治療におけるTNF-Rフラグメント及び抗TNF-α抗体の効力は、TNF-α/TNF-Rシグナル伝達経路を経るシグナル伝達を低減することが、TNF-αを介する疾患の治療に効果的に使用し得ることを示す。しかしながら、TNF-Rフラグメント及び抗TNF-α抗体は、生産するのが高価である。更にこれらのタンパク質性薬剤は静脈内投与を必要とする。
【特許文献1】米国仮出願第60/648,973号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、TNF-α/TNF-Rシグナル伝達経路を経るシグナル伝達を低減し、TNF-αを介する疾患の治療に使用し得る更なる薬剤が、当該技術分野において必要とされている。よって本発明者は、TNF-R1上のアロステリック部位に結合し、かくしてTNF-R1に対するTNF-αの結合を阻害し、TNF-α/TNF-R1シグナル伝達経路の活性を低減する小分子化合物を発見した。前記化合物は、TNF-αを介する疾患の治療に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、TNF-R1のインヒビターである化合物、その組成物、及びその様な化合物及び組成物を使用してTNF-R1/TNF-αシグナル伝達経路を介する疾患を治療する方法に関する。
【0015】
ある実施態様では、本発明は式(I)、(II)、又は(III)に表わされる化合物に関する。
【0016】
【化1】

【0017】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12は、各々独立に、水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、-NR13R14、ハロ、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CR18=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27 あるいはR4とR5が一緒に-NR28C(O)-、-C(O)NR29-、-C(O)O-、又は-S(O)2NR30-を形成し、あるいはR8とR9が一緒に-O-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-NR29-、又は-S(O)2NHを形成し;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R28、R29、及びR30 は各々独立に、水素、アルキル、又はアリールであり、及びR27はアルキル又はアリールである;
Xは存在しないか、あるいは-O-、-NR28、又は-S-であり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である;
ただし、R4がハロゲンであり、R5が水素であり、且つR1及びR2が独立に水素、メトキシ、飽和アルキル、3-カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phである場合は、R3は水素、飽和アルキル、メトキシ、ハロゲン、カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phではないという条件がある。
【0018】
他の実施態様では、本発明は式(I)、(II)、又は(III)で表わされる化合物に関する。
【0019】
【化2】

【0020】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12は、各々独立に、水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、-NR13R14、ハロ、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CR18=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27 あるいはR4とR5が一緒に-NR28C(O)-、-C(O)NR29-、-C(O)O-、又は-S(O)2NR30-を形成し、あるいはR8とR9が一緒に-O-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-NR29-、又は-S(O)2NH-を形成し;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R28、R29、及びR30は各々独立に、水素、アルキル、又はアリールであり、及びR27はアルキル又はアリールである;
Xは存在しないか、あるいは-O-、-NR28、又は-S-であり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である;
ただし、R4がハロゲンであり、R5が水素であり、且つR1及びR2が独立に水素、メトキシ、飽和アルキル、3-カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phである場合は、R3は水素、飽和アルキル、メトキシ、ハロゲン、カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phではないという条件がある。
【0021】
他の実施態様では、本発明は下式によって表わされる化合物に関する。
【0022】
【化3】

【0023】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12は、各々独立に、水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、-NR13R14、ハロ、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CR18=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27、あるいはR4とR5が一緒に-NR28C(O)-、-C(O)NR29-、-C(O)O-、又は-S(O)2NR30-を形成し、あるいはR8とR9が一緒に-O-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-NR29-、又は-S(O)2NH-を形成し;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R28、R29、及びR30は各々独立に、水素、アルキル、又はアリールであり、及びR27はアルキル又はアリールである;
Xは存在しないか、あるいは-O-、-NR28、又は-S-であり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である;
ただし、R4がハロゲンであり、R5が水素であり、且つR1及びR2が独立に水素、メトキシ、飽和アルキル、3-カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phである場合は、R3は水素、飽和アルキル、メトキシ、ハロゲン、カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phではないという条件があり;
以下の化合物ではないという条件がある。
【0024】
【化4】

【0025】
他の実施態様では、本発明は以下の構造によって表わされる化合物に関する。
【0026】
【化5】

【0027】
式中、R1は、-O(CH2)nCOOR9又は-OC(O)CH2R31であり;
R2、R3、R4、及びR5は、各々独立に、水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、-NR13R14、ハロ、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CR18=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27 あるいはR4とR5が一緒に-NR28C(O)-、-C(O)NR29-、-C(O)O-、又は-S(O)2NR30-を形成し;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R28、R29、及びR30は各々独立に、水素、アルキル、又はアリールであり、及びR27はアルキル又はアリールであり;
R31はハロゲンであり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である;
以下の化合物ではないという条件がある。
【0028】
【化6】

【0029】
他の実施態様では、本発明は下式に表わされる化合物に関する。
【0030】
【化7】

【0031】
他の実施態様では、本発明は下式に表わされる化合物に関する。
【0032】
【化8】

【0033】
式中、R6、R7、及びR9は、各々独立に、水素、C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、ヒドロキシル、C1-6アルコキシ、-NR13R14、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ボロノ、フェニル、ベンジル、ベンゾイル、フェノキシ、ベンジルオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CH=NOH、-CH2NHOH、-SO3H、-SO2CH3、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27、あるいはR8とR9が一緒に-NHC(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、-NR29-、又は-S(O)2NH-を形成し;
R8はNH2であり;
Xは存在しないか、あるいは-O-、-NR28、又は-S-であり;
R13、R14、R15、R16、R17、R22、R23、R24、R25、R26、R28、及びR29は、各々独立に、水素、アルキル、アリール、又はシクロアルキルであり、R27はアルキル、アリール、又はシクロアルキルであり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0034】
他の実施態様では、本発明は下式によって表わされる化合物に関する。
【0035】
【化9】

【0036】
式中、R10、R11、及びR12は、各々独立に、水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、-NR13R14、ハロ、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CR18=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、及びR26は、各々独立に、水素、アルキル、又はアリールであり、R27はアルキル又はアリールであり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0037】
ある実施態様では、本発明は、1000nMか又はそれより強いアフィニティー、好ましくは100nMか又はそれより強いアフィニティー、より好ましくは10nMか又はそれより強いアフィニティーでTNF-R1のアロステリック部位に結合する腫瘍壊死因子レセプター1(TNF-R1)インヒビターである化合物に関する。
【0038】
ある実施態様では、本発明は、K35、G36、C55、E56、S57、G58、S59、F60、T61、A62, S63、C70、L71、S72、C73、S74、K75、C76、R77、K78、E79、M80、G81、Q82、V83、E84、I85、V90、D91、R92、D93、T94、V95、C96、G97、C98、R99、K100、N101、Q102、Y103、R104、H105、Y106、S108、E109、N110、L111、F112、Q113、C114、F115、Q130、E131、K132、及びQ133からなる群から選択されるアミノ酸置換を有するTNF-R1に化合物が示すアフィニティーより少なくとも約10倍強いアフィニティーで野生型のTNF-R1に対するアフィニティーを示す、上述の化合物の1つ又は上述の化合物とは異なる1つの化合物に関する。
【0039】
ある実施態様では、本発明は(i)100nMか又はそれより強いアフィニティーでTNF-R1のアロステリック部位に結合し、(ii)細胞に投与した際にNF-κB及びp38キナーゼのTNF-αを介する活性化を、前記化合物を前記細胞に投与していない際に前記細胞から得られるNF-κB及びp38キナーゼ活性のTNF-αを介する活性化と比較して低減するTNF-R1インヒビター化合物に関する。
【0040】
ある実施態様では、本発明は、式Iの化合物ではないという条件で、上述の化合物に関する。
【0041】
【化10】

【0042】
式中、
R1及びR2は、独立に、水素、メトキシ、飽和アルキル、3-カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phであり、
R3は、水素、エチル、メトキシ、ハロゲン、t-ブチル、カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phであり、
R4はハロゲンであり、及び
R5は水素である。
【0043】
他の実施態様では、本発明は、式(I)、(II)、又は(III)によって表わされる化合物、あるいはその製薬学的に許容される塩に関する。
【0044】
【化11】

【0045】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12は、各々独立に、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、-NR13R14、ハロ、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CR18=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27 あるいはR4とR5が一緒に-NR28C(O)-、-C(O)NR29-、-C(O)O-、又は-S(O)2NR30-を形成し、あるいはR8とR9が一緒に-O-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-NR29-、又は-S(O)2NH-を形成し;あるいはR8とR9が各々独立に水素であり;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R28、R29、及びR30は各々独立に、水素、アルキル、又はアリールであり、及びR27はアルキル又はアリールである;
Xは存在しないか、あるいは-O-、-NR28、又は-S-であり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
q、r、s、t、u、v、w、及びxは、独立に、0、1、2、又は3である;
ただし、R4がハロゲンであり、R5が水素であり、且つR1及びR2が独立に水素、メトキシ、飽和アルキル、3-カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phである場合は、R3は水素、飽和アルキル、メトキシ、ハロゲン、カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phではないという第一の条件があり;
以下の化合物ではないという第二の条件がある。
【0046】
【化12】

【0047】
更なる他の実施態様では、本発明は、下式によって表わされる化合物、又はその製薬学的に許容される塩に関する。
【0048】
【化13】

【0049】
式中、R1は、-O(CH2)nCOOR9又は-OC(O)CH2R31であり;
R2、R3、R4、及びR5は、各々独立に、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、-NR13R14、ハロ、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CR18=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27 あるいはR4とR5が一緒に-NR28C(O)-、-C(O)NR29-、-C(O)O-、又は-S(O)2NR30-を形成し;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R28、R29、及びR30は各々独立に、水素、アルキル、又はアリールであり、及びR27はアルキル又はアリールであり;
R31はハロゲンであり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
q、r、及びsは、各々独立に、0、1、2、又は3であり、
以下の化合物ではないという条件がある。
【0050】
【化14】

【0051】
更なる他の実施態様では、本発明は、下式によって表わされる化合物又はその製薬学的に許容される塩に関する。
【0052】
【化15】

【0053】
式中、R6、R7、及びR9は、各々独立に、水素、C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、ヒドロキシル、C1-6アルコキシ、-NR13R14、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ボロノ、フェニル、ベンジル、ベンゾイル、フェノキシ、ベンジルオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CH=NOH、-CH2NHOH、-SO3H、-SO2CH3、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27、あるいはR8とR9が一緒に-NHC(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、-NR29-、又は-S(O)2NH-であり;
R8はNH2であるか、又はR8とR9は各々独立に水素であり;
Xは存在しないか、あるいは-O-、-NR28、又は-S-であり;
R13、R14、R15、R16、R17、R22、R23、R24、R25、R26、R28、及びR29は、各々独立に、水素、アルキル、アリール、又はシクロアルキルであり、R27はアルキル、アリール、又はシクロアルキルであり;
t及びuは、各々独立に、0、1、2、又は3であり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0054】
更なる他の実施態様では、本発明は、下式によって表わされる化合物、又はその製薬学的に許容される塩に関する。
【0055】
【化16】

【0056】
式中、R10、R11、及びR12は、各々独立に、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、-NR13R14、ハロ、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CR18=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27であり;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、及びR26は、各々独立に、水素、アルキル、又はアリールであり、R27はアルキル又はアリールであり;
v、w、及びxは、各々独立に、0、1、2、又は3であり、並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0057】
他の実施態様では、本発明は、治療上有効量の上述の化合物のいずれか、及び製薬学的に許容される賦形剤を含む製薬組成物に関する。
【0058】
他の実施態様では、本発明は、有効量の上述の化合物又は組成物のいずれかを、TNF-αを介する疾患の治療を必要とする患者に投与する工程を含む、TNF-αを介する疾患の治療方法に関する。他の実施態様では、本発明は、有効量の上述の化合物又は組成物のいずれかを腫瘍壊死因子の作用の阻害を必要とする患者に投与する工程を含む、腫瘍壊死因子の作用を阻害する方法に関する。本発明の好ましい実施態様は、有効量の上述の化合物又は組成物を治療を必要とする患者に投与する工程を含む、関節炎、炎症、乾癬、又は自己免疫疾患の治療方法を含む。
【0059】
更に他の実施態様では、本発明は、関節炎、炎症、及び乾癬のような疾患を含む自己免疫疾患の治療及び/又は予防的治療のための医薬の製造における、上述の化合物又は組成物のいずれかの使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
本発明は、腫瘍壊死因子を介する働きを阻害するための化合物及び方法の領域に関する。その様な化合物及び方法は、腫瘍壊死因子が関与する病気、疾患、及び状態を治療するためにも使用され得る。
【0061】
他に規定しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を一般的に有する。一般的には、本明細書で使用する用語及び細胞培養、分子遺伝学、有機化学、及び核酸化学における実験手法、並びに下記のハイブリダイゼーションは、当該技術分野においてよく知られ、一般的に使用されているものである。標準的な技術が核酸及びペプチドの合成に使用される。一般的に、酵素反応及び精製工程は、製造業者の仕様書に従って実施する。技術及び手法は、当該技術分野の従来の方法及び本明細書を通じて挙げている各種の一般的な参照に従って一般的に実施する。本明細書で使用する下記の分析化学及び有機化学における用語及び実験手法は、当該技術分野においてよく知られたものであり、一般的に利用されている。通常の技術又はその変法を、化学合成及び化学分析に使用する。
【0062】
製薬組成物のための適切な化合物の1つの実施態様は、式(I)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩である。
【0063】
【化17】

【0064】
R1からR5は、例えば、アフィニティー、活性、吸収、分布、代謝、排出、薬物動態、毒物学、及び医薬品としてのそれらの使用に通じる他の特性のような因子を鑑みて、選択される。
【0065】
他の実施態様では、前記化合物は式(I)で表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、R1、R2、R3、R4、及びR5は、各々独立に、水素、アルキル(好ましくは、飽和アルキル)、ヒドロキシル、アルコキシ、-NR13R14、ハロ、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CR18=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27であるか、あるいはR4とR5が一緒に-NR28C(O)-、-C(O)NR29-、-C(O)O-、又は-S(O)2NR30-を形成し;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R28、R29、及びR30は、各々独立に、水素、アルキル(好ましくは飽和アルキル)、又はアリールであり、R27はアルキル(好ましくは飽和アルキル)又はアリールであり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である;
ただし、R4がハロゲンであり、R5が水素であり、且つR1及びR2が独立に水素、メトキシ、飽和アルキル、3-カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phである場合は、R3は水素、飽和アルキル、メトキシ、ハロ、カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phではないという条件がある。
【0066】
その様な化合物の例は以下のものを含む。
【0067】
【化18A】

【化18B】

【化18C】

【0068】
他の実施態様では、前記化合物は式(I)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、R1、R2、R3、R4、及びR5は、各々独立に、水素、アルキル(好ましくは飽和アルキル)、ヒドロキシル、アルコキシ、-NR13R14、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CR18=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27であり、あるいはR4とR5が一緒に-NR28C(O)-、-C(O)NR29-、-C(O)O-、又は-S(O)2NR30-を形成し;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R28、R29、及びR30は、各々独立に、水素、アルキル(好ましくは飽和アルキル)、又はアリールであり、R27は、アルキル(好ましくは飽和アルキル)又はアリールであり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である。好ましくはn及びmは0、1、又は2である。
【0069】
更なる他の実施態様では、前記化合物は式(I)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、R1、R2、R3、R4、及びR5は、各々独立に、水素、C1-6飽和アルキル、C3-7シクロアルキル、ヒドロキシル、C1-6アルコキシ、-NR13R14、ニトロ、シアノ、ボロノ、フェニル、ベンジル、ベンゾイル、フェノキシ、ベンジルオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CH=NOH、-CH2NHOH、-SO3H、-SO2 CH3、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27であり、あるいはR4とR5が一緒に-NR28C(O)-、-C(O)NR29-、-C(O)O-、又は-S(O)2NR30-を形成し;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R28、R29、及びR30は、各々独立に、水素、アルキル(好ましくは飽和アルキル)、又はアリールであり、R27は、アルキル(好ましくは飽和アルキル)又はアリールであり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である。好ましくはn及びmは0、1、又は2である。
【0070】
他の実施態様では、前記化合物は式(I)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、R1、R2、R3、R4、及びR5は、各々独立に、水素、メチル、エチル、メトキシ、-OC(O)H、-OC(O)CH3、-OC(O)CH2Cl、ヒドロキシル、-NH2、-N(CH3)2、-OC(O)CHCH2、又は-OCH2COOCH3であるか、あるいはR4とR5が一緒に-NHC(O)-を形成する。
【0071】
更に他の実施態様では、前記化合物は式(I)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、R1、R2、及びR3は、互いに独立に、水素、メトキシ、-OC(O)H、-OC(O)CH3、-OC(O)CH2Cl、ヒドロキシル、-NH2、-N(CH3)2、-OC(O)CHCH2、-OCH2COOCH3であり; R4は水素であり;並びにR5は水素、メチル、-OC(O)H、又はヒドロキシルであるか、あるいは前記化合物はその製薬学的に許容される塩である。
【0072】
更に他の実施態様では、前記化合物は(I)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、R1は-O(CH2)nCOOR9 (例えば、-OCH2COOCH3)又は-OC(O)CH2Clであり、R2、R3、R4、R5、及びR9は、上式(I)の第一の実施態様に既定されている通りであるが、R1、R2、及びR3の全てが-OCH2COOCH3ではないという条件がある。その様な化合物の例は、上記の化合物I-11、I-12、I-13、I-14、及びI-15を含む。
【0073】
他の実施態様では、前記化合物は式(I)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、R1は-OCH2COOCH3又は-OC(O)CH2Clであり、R2は-OCH2COOCH3、ヒドロキシル、又は-OC(O)CH2Clであり、R3は水素、-OCH2COOCH3、ヒドロキシル、-OC(O)CH3、又は-OC(O)CH2Clであり、R1、R2、及びR3の全てが-OCH2COOCH3ではないという条件がある。好ましくは、R4は水素であり、R5は水素、メチル、ヒドロキシル、又は-COOHである。その様な化合物の例は、式I-11からI-15を有する化合物を含む。
【0074】
前記製薬組成物のための他の適切な化合物は、式(II)によって表わされる化合物又はその製薬学的に許容される塩を含む。
【0075】
【化19】

【0076】
R6からR9は、例えば、アフィニティー、活性、吸収、分布、代謝、排出、薬物動態、毒物学、及び医薬品としてのそれらの使用に通じる他の特性のような因子を鑑みて、選択されて良い。
【0077】
1つの実施態様では、前記化合物は式(II)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、Xが存在しないか、又は-O-、-NR28-、若しくは-S-であり; R6、R7、R8、及びR9は、各々独立に、水素、アルキル(好ましくは飽和アルキル)、ヒドロキシル、アルコキシ、-NR13R14、ハロ、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CH=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27であるか、あるいはR8とR9が一緒に-NHC(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、-NR29-、又は-S(O)2NH-を形成する;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R28、及びR29は、各々独立に、水素、アルキル(好ましくは飽和アルキル)、又はアリールであり、R27は、アルキル(好ましくは飽和アルキル)又はアリールであり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0078】
その様な化合物の例は、以下のものを含む。
【0079】
【化20】

【0080】
他の実施態様では、前記化合物は式(II)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、Xが存在しないか、又は-O-、-NR28-、若しくは-S-であり; R6、R7、R8、及びR9は、各々独立に、C1-6飽和アルキル、C3-7シクロアルキル、ヒドロキシル、C1-6アルコキシ、-NR13R14、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ボロノ、フェニル、ベンジル、ベンゾイル、フェノキシ、ベンジルオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CR18=NOH、-CH2NHOH、-SO3H、-SO2CH3、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27であるか、あるいはR8とR9が一緒に-NHC(O)-、-C(O)NH-、-C(O)O-、-O-、-NR29-、又は-S(O)2NH-を形成し;
R13、R14、R15、R16、R17、R22、R23、R24、R25、R26、R28、及びR29は、各々独立に、水素、アルキル(好ましくは飽和アルキル)、又はアリールであり、R27は、アルキル(好ましくは飽和アルキル)又はアリールであり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である。好ましくはn及びmは0、1、又は2である。
【0081】
他の実施態様では、前記化合物は式(II)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、Xが存在しないか、又は-O-、-NR28-、若しくは-S-であり、R6、R7、R8、及びR9は、各々独立に、水素、-C(O)OH、-C(O)OCH3、ヒドロキシル、-NH2、又はハロであるか、あるいはR8とR9が一緒に-O-を形成する.
【0082】
更に他の実施態様では、前記化合物は式(II)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、Xが存在しないか又は-O-であり、R8は-NH2であり、R6、R7、及びR9は式(II)の化合物の第一の実施態様に関して上述した通りである。好ましくは、Xは-O-であり、R6及びR7はハロであり、R9は水素である。その様な化合物の例は化合物II-6である。
【0083】
他の実施態様では、前記化合物は式(II)の構造を有する化合物の製薬学的に許容される一価の塩であって、Xは存在しないか、あるいは-O-であり、R8は-C(O)OR15であり、R6及びR7はヒドロキシルであり、R9は水素である。
【0084】
前記製薬組成物における使用のための他の適切な化合物は、式(III)によって表わされる化合物又はその製薬学的に許容される塩を含む。
【0085】
【化21】

【0086】
R10からR12は、例えば、アフィニティー、活性、吸収、分布、代謝、排出、薬物動態、毒物学、及び医薬品としてのそれらの使用に通じる他の特性のような因子を鑑みて、選択されて良い。
【0087】
1つの実施態様では、前記化合物は式(III)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、R10、R11、及びR12は、各々独立に、水素、アルキル(好ましくは飽和アルキル)、アルコキシ、-NR13R14、ハロ、ニトロ、シアノ、ボロノ、アリール、アリールオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17, -CR18=NOH、-CR19R20NHOH、-SO3H、-SO2R21、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27であり;
R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、及びR26は、各々独立に、水素、アルキル(好ましくは飽和アルキル)、又はアリールであり、R27は、アルキル(好ましくは飽和アルキル)又はアリールであり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0088】
その様な化合物の例は以下のものを含む。
【0089】
【化22】

【0090】
他の実施態様では、前記化合物は式(III)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、R10、R11、及びR12は、各々独立に、水素、C1-6飽和アルキル、C3-7シクロアルキル、ヒドロキシル、C1-6アルコキシ、-NR13R14、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ボロノ、フェニル、ベンジル、ベンゾイル、フェノキシ、ベンジルオキシ、-(CH2)nCOOR15、-O(CH2)nCOOR16、-OC(O)R17、-CH=NOH、-CH2NHOH、-SO3H、-SO2CH3、-SO2NHR22、-O(CH2)mOR23、-C(OH)=N(OH)、-C(O)NR24OH、-CHR25N(COR26)OH、又は-C(O)R27であり;
R13、R14、R15、R16、R17、R22、R23、R24、R25、及びR26は、各々独立に、水素、アルキル(好ましくは飽和アルキル)、又はアリールであり、R27はアルキル(好ましくは飽和アルキル)又はアリールであり;並びに
n及びmは、独立に、0、1、2、3、4、5、又は6である。好ましくは、n及びmは、0、1、又は2である。
【0091】
他の実施態様では、前記化合物は式(III)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、R10、R11、及びR12は、各々独立に、ヒドロキシル、-OC(O)H、-OC(O)CH3、ハロ、又はニトロである。
【0092】
更に他の実施態様では、前記化合物は式(III)によって表わされるか、又はその製薬学的に許容される塩であって、R12はニトロであり、R10及びR11はヒドロキシル、-OC(O)CH3、又はハロである。
【0093】
用語「アルキル」は、それ自体又は他の置換体の部分として、他に示さない限り、完全に飽和、モノ不飽和、又はポリ不飽和であって良く、二価及び多価の基を含んで良く、任意に指定される複数の炭素原子を有して良い(すなわち、C1-C10は1から10の炭素を意味する)、直鎖若しくは分枝鎖、又は環状炭化水素基(シクロアルキル)あるいはそれらの組み合わせを意味する。飽和炭化水素基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えばn-ペンチル、n-ヘキシル、n-へプチル、及びn-オクチルなどのホモログ及び異性体のような基を含むが、それらに限らない。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合又は三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例は、ビニル、2-プロペニル、クロトニル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-及び3-プロピニル、3-ブチニル、及びより高級のホモログ及び異性体を含むが、それら限らない。用語「アルキル」は、他に示さない限り、「ヘテロアルキル」のような、以下に詳細に既定したアルキルの誘導体を含んで意味する。炭化水素基に限定されたアルキル基は、「ホモアルキル」と称される。アルキル基は、例えばC1-6不飽和アルキル、C3-7不飽和シクロアルキル、トリフルオロメチル、クロロメチル、及びヒドロキシメチルを含む。
【0094】
用語「ヘテロアルキル」は、自体又は他の用語と組み合わせて、他に示さない限り、多数の炭素原子及びO、N、Si、及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなる、安定な直鎖若しくは分枝鎖、又は環状炭化水素基、あるいはそれらの組み合わせであって、前記窒素、炭素、及び硫黄原子は任意に酸化されて良く、前記窒素へテロ原子は任意に四級化されて良い。前記へテロ原子O、N、及びS、並びにSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部の位置、又はアルキル基が残りの分子に結合する位置に置かれて良い。例えば、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、及び-CH=CH-N(CH3)-CH3を含むが、それらに限らない。例えば-CH2-NH-OCH3及び-CH2-O-Si(CH3)3のように、上限2までのヘテロ原子が連続して良い。
【0095】
用語「アルコキシ」はその従来の意味おいて使用され、酸素原子を介して残りの分枝に結合したアルキル基を示す。アルコキシ基は、トリフルオロメトキシ及びジフルオロメトキシを含むが、それらに限らない。
【0096】
用語「シクロアルキル」は、それ自体又は他の用語と組み合わせて、他に示さない限り、環状の置換又は非置換の「アルキル」及び置換又は非置換の「ヘテロアルキル」(「ヘテロシクロアルキル」)を表わす。ヘテロシクロアルキルに関しては、ヘテロ原子は、ヘテロ環が残りの分子に結合する位置を占めて良い。シクロアルキルの例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、及びシクロヘプチルなどを含むが、それらに限らない。ヘテロシクロアルキルの例は、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、及び2-ピペラジニル等を含むが、それらに限らない。環構造のヘテロ原子及び炭素原子は任意に酸化されているか、又はNの場合には四級化されて良い。
【0097】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、それら自体又は他の置換基の一部として、他に示さない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子を意味する。
【0098】
用語「アリール」は、他に示さない限り、単一の環又は一緒に融合若しくは共有結合されている多数の環(好ましくは1から3の環)であって良い、置換又は非置換のポリ不飽和の芳香族炭化水素置換基を意味する。用語「ヘテロアリール」は、N、O、及びSから選択される1から4つのヘテロ原子を含有するアリール基(又は環)であって、前記窒素、炭素、及び硫黄原子が任意に酸化されており、前記窒素原子が任意に四級化されているものを示す。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して残りの分子に結合して良い。アリール及びヘテロアリールの限定されない例は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、及び6-キノリルを含む。上記アリール及びヘテロアリール環系の各々のための置換基は、下記の許容される置換基の群から選択される。「アリール」及び「ヘテロアリール」は、1つ以上の非芳香環系がアリール又はヘテロアリール系に融合又はそうでなければ結合した環系も含む。アリールを含有する基は、フェニル、フェノキシ、フェノキシカルボニル、ベンゾイル、ベンジル、及びベンジルオキシを含むが、それらに限らない。
【0099】
用語「アリールオキシ」は従来の意味で使用され、酸素原子を介して残りの分子に結合するアリール基を示す。
【0100】
上述の用語の各々は(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」、及び「ヘテロアリール」)、他に示さない限り、示した基の置換及び非置換形態の双方を含む。各々のタイプの基の好ましい置換基を以下に挙げる。
【0101】
アルキル基(ヘテロアルキル、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、及びヘテロシクロアルケニルと通常称される基を含む)のための置換基は、一般的に「アルキル置換基」と称され、0から(2m'+1)の範囲の数(m'は基の中の炭素原子の総数)の-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R"、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R"R"'、-OC(O)R'、- C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R"、-OC(O)NR'R"、-NR"C(O)R'、-NR'-C(O)NR"R"'、- NR"C(O)2R'、-NR-C(NR'R"R'")=NR""、-NR-C(NR'R")=NR'"、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R", -NRSO2R', -CN、及び-NO2から選択されるが、それらに限らない各種の基の1つ以上であって良い。R'、R''、R'''、及びR''''の各々は、好ましくは独立に、水素、置換又は非置換のヘテロアルキルを含む置換又は非置換のアルキル、並びに置換又は非置換のアリール、例えば1から3のハロゲンで置換されたアリールを示す。本発明の化合物が、2つ以上のR基を含む際は、例えば、2つ以上のこれらの基が存在する際は、各々のR基がR'、R''、R'''、及びR''''基の各々として独立に選択される。
【0102】
アルキル基に関して記載した置換基と同様に、アリール置換基は一般的に「アリール置換基」と称され、変化するものであり、例えば、0から芳香環系の開原子価(open valence)の総数の範囲の数で、ハロゲン、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R"、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R"R"'、-OC(O)R'、-C(O)R', -CO2R'、-CONR'R"、-OC(O)NR'R"、-NR"C(O)R'、-NR'-C(O)NR"R"'、-NR"C(O)2R'、-NR-C(NR'R")=NR'"、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R"、-NRSO2R'、-CN、-NO2、-R'、及び-N3から選択され、R'、R''、R'''、及びR''''は、好ましくは独立に、水素、置換又は非置換のヘテロアルキルを含む置換又は非置換のアルキル、並びに非置換アリールから選択される。本発明の化合物は2以上のR基を含む際、例えば、2以上のこれらの基が存在する際に、R基の各々がR'、R''、R'''、及びR''''基の各々として独立に選択される。
【0103】
アリールを含有する基は、フェニル、フェノキシ、フェノキシカルボニル、ベンゾイル、ベンジル、及びベンジルオキシを含むが、それらに限らない。
【0104】
本明細書において使用する用語「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ホウ素(B)、及びケイ素(Si)を含む。
【0105】
本発明の化合物は、その様な化合物を構成する1つ以上の原子で非天然の割合の原子同位体を含有しても良い。例えば、前記化合物は、例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)、又は炭素-14(14C)のような放射活性同位体で放射標識されて良い。本発明の化合物のいかなる同位体の種類も、放射活性であろうが無かろうが、本発明の範囲内に包含されることを意図する。
【0106】
腫瘍壊死因子レセプター
腫瘍壊死因子(TNF)レセプターは、炎症の主な調節因子の1つである。TNFレセプター1(TNF-R1)複合体の三次元構造が、リガンド有り又は無しの状態で決定されている。下記の小分子が不連続な表面の空洞に結合することが可能であり、TNFレセプターの機能を無力にすることが可能である。ある特定の理論に繋げることを望まないが、トリプトファン-107(W107)を含有する前記レセプター上のループのコンフォメーション摂動の結果であると考えられている。前記コンフォメーション摂動の手法は、in vitro及びin vivoのTNF-αレセプターの生物学的活性に関与する表面の部位を同定する。
【0107】
TNF-R1は、約55kDaの分子量の膜貫通レセプター糖タンパク質である。TNF-R1の主な翻訳産物は、アミノ末端のシグナル配列の切断によって修飾され、更にシグナル配列切断部位から約11及び12アミノ酸に各々見られるアルギニン及びアスパラギン酸残基の間の切断によって修飾される。約20kDaのTNF-R1の可溶性フラグメントを血清及び尿から単離することが可能である。可溶性フラグメントはTNF-R1結合活性を保持している。本明細書で使用する、TNF-R1におけるアミノ酸の位置は、配列番号1に示す配列を参照して挙げる。
【0108】
ある特定の理論に繋げることを望まないが、リガンド有り及び無しの状態のTNFレセプターの結晶構造分析によっては、リガンドに誘導される適合と一致する任意の変化が明らかにされなかった(Banner et al., Cell 73, 431 (1993))。そのため、リガンドの構造的な役割は、レセプター接合すること、及びレセプターの活性化を容易にすることであると仮定されている。
【0109】
TNF-R1上の3つの接触部位(WP5、WP8、及びWP9)は、安定なリガンド複合体の形成に寄与するものとして同定されている。WP9(アミノ酸105-113)は、TNF-αとの機能的相互作用に重要なようである(Takasaki et al., Nature Biotechnology 15, 1266 (1997))。結晶構造分析から同定されたフレキシブルなヒンジ(G81及びG97)は、リガンドに誘導されるコンフォメーション変化を提供すると仮定されている。その様なフレキシブルヒンジが存在する場合に予測される結果とは逆であるが、TNF-R1単独に対して、TNF-R1/TNF-αの結晶複合体には有意なコンフォメーション変化が認められなかった。かくして、結晶学的試験は、TNF-R1上のアロステリック部位又は空洞の存在を示唆することができなかった。
【0110】
WP9でコンフォメーション摂動を誘導するために使用し得る小分子リガンドが本発明において同定された。次いで、同定した分子は、必要な場合に、分子シミュレーション研究を用いてコンフォメーション変化を誘導するそれらの機能に基づいて、さらに選択し、修飾して良い。リガンド結合部位又は触媒部位のような調節部位から離れたタンパク質の表面上の空洞及び割れ目を利用して、空洞に小分子を収容させた結果としてコンフォメーション変化を誘導することによって、タンパク質/レセプターの機能を調節して良い。阻害の方法は、アロステリックインヒビターと幾つかの特徴を共有して良く、その様な小分子は「空洞誘導アロステリック(cavity induced allosteric)」インヒビターと称されて良く、前記方法は「空洞誘導アロステリック修飾(cavity induced allosteric modification)」(CIAM)と称されて良い。TNF-R1における標的アロステリック空洞は、W9接触部位から離れており、化合物を収容可能な凹型の表面によって結合される。前記アロステリック空洞は、アミノ酸K35-G36、C55からS63、C70からI85、V90からY106、S108からF115、及びQ130からQ133(配列番号1参照)によって結合される。
【0111】
TNFを介する疾患の治療
用語「治療剤」は、治療上の有効量で存在する際に、哺乳動物に対して所望の治療効果を生じる化合物を意味することを意図する。例えば、腫瘍壊死因子の働きを阻害するための化合物の「有効量」は、腫瘍壊死因子の働きの望ましくない効果を阻害、低減、又は和らげるために十分な化合物又は組成物の量である。その様な阻害は、例えば、制限しないが、TNF-R1、TNF-α、又は他の結合タンパク質との直接的な相互作用、及び/又は競争的な相互作用、又はアロステリック相互作用を介して生じて良い。
【0112】
下記の小分子を含有する製薬組成物は、TNFを介する病気、疾患、及び状態に冒された個体を治療するために有用であって良い。TNFを介する病気、疾患、及び状態の例は、炎症性疾患及び自己免疫疾患、例えば、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存性糖尿病 (IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、脈管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、クローン病、潰瘍性大腸炎、狼瘡(SLE)、グレーヴズ病、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、喘息、クリオグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、及び歯周病(歯肉炎)を含む。その様な病気、疾患、状態に冒された個体は、式I、II、又はIIIを有する化合物、あるいはそれらの製薬学的に許容される塩を含有する、治療上有効量の製薬組成物をそれらに投与することによって治療されて良い。他の化合物の例は、本明細書に参照することによって組み込まれる、米国特許出願第09/720,647号において認められて良い。
【0113】
化合物の結合特性
本発明の化合物はTNF-R1に結合する。好ましくは、化合物は、1μM以下のアフィニティー(Kd)でTNF-R1に結合する。本発明の開示を制限せずに、結合活性は、表面にTNF-R1を発現する細胞に化合物を結合させること又は精製された若しくは部分的に精製されたTNF-R1に化合物を結合させることによって測定されて良い。結合は、制限されない例として、天然又は組換えTNF-R1、あるいはそれらのフラグメントを使用して測定されて良い。化合物の結合は、当業者に既知の方法を使用して測定されて良い。TNF-R1に対する化合物の結合活性を測定するための好ましい方法は、等温滴定熱量計である。
【0114】
好ましい実施態様では、化合物は、野生型のTNF-R1又はそのフラグメントに対して、変異体のTNF-R1又はその変異体フラグメントに対する結合よりも、少なくとも約10倍強い結合を示す。より好ましくは、TNF-R1又はそのフラグメントに対して、変異体のTNF-R1又はその変異体フラグメントに対する結合よりも、約100倍より強い結合を示す化合物である。最も好ましくは、TNF-R1又はそのフラグメントに対して、変異体のTNF-R1又はその変異体フラグメントに対する結合よりも、約1000倍より強い結合を示す化合物である。
【0115】
更に好ましくは、K35、G36、C55、E56、S57、G58、S59、F60、T61、A62、S63、C70、L71、S72、C73、S74、K75、C76、R77、K78、E79、M80、G81、Q82、V83、E84、185、V90、D91、R92、D93、T94、V95、C96、G97、C98、R99、KlOO、NlOl、Q102、Y103、R104、H105、Y106、S108、E109、N110、L111、F112、Q113、C114、F115、Q130、E131、K132、及びQ133からなる群から選択されるアミノ酸に置換を有する対応する変異体のTNF-R1又はその変異体フラグメントと比較して、上述のようにTNF-R1又はそのフラグメントに対してより強い結合を示す化合物である。より好ましくは、Q82又はF112に置換を有する変異体である。最も好ましくは、Q82及びF112に置換を有する変異体である。
【0116】
生物学的活性
本発明の化合物の活性は、例えば、限定しないが、TNF-αの生物学的活性を阻害する化合物の能力を測定する、in vivo又はin vitro生物学的アッセイを使用して測定して良い。その様なアッセイの1つの例は、L929細胞又は他の適切な細胞における、TNF-αを介する細胞溶解を阻害する化合物の機能の測定である。その様なアッセイの他の例は、TNF-αで処理した後の細胞内シグナル伝達に関連する事象を妨害又は阻害する化合物の機能をアッセイすることを含む。その様なシグナル伝達の事象の例は、L929細胞及びNE91細胞におけるNFκB及び/又はp38のリン酸化を含む。
【0117】
1つの実施態様では、化合物の生物学的活性は、L929細胞のTNF-αを介する細胞溶解を阻害する化合物の機能によって測定される。本発明の化合物は、100μM以下の濃度で、L929細胞のTNF-αを介する細胞溶解の50%阻害を示す化合物を含む。他の化合物は、25μM以下の濃度で、L929細胞のTNF-αを介する細胞溶解の50%阻害を示すものを含む。更に他の化合物は、10μM以下の濃度でL929細胞のTNF-αを介する細胞溶解の50%阻害を示す。更に他の化合物は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、及び1nM以下からなる群から選択される濃度で、L929細胞のTNF-αを介する細胞溶解の50%阻害を示す。
【0118】
他の実施態様では、化合物の生物学的活性が、TMP1又は他の適切なヒト又はサルの細胞株においてTNF-αを介する細胞溶解を阻害する化合物の能力によって測定されて良い。
【0119】
塩及び誘導体
活性化合物の各種の製薬学的に許容される塩、他の誘導体、エステル誘導体、酸誘導体、及び水溶性を変化させた誘導体も、本発明に包含される。更に、本発明は、化合物の全ての個々のエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、及び他の異性体を含む。本発明は、当該化合物の多形体及び溶媒和物、例えば水和物及び有機溶媒と形成したものも含む。その様な異性体、多形体、及び溶媒和物は、当該技術分野において既知の方法、本明細書に提供した開示に基づいて、例えば放射特異的及び/又はエナンチオ選択的合成並びに分割によって調製されて良い。
【0120】
化合物の適切な塩は、酸付加塩、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、及び2-アセトキシ安息香酸と作製される塩;サッカリンと作製される塩;アルカリ金属塩、例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム及びマグネシウム塩;ルイス酸から形成される塩、例えば、ホウ素トリフルオリド;並びに有機若しくは無機リガンドと形成される塩、例えば四級アンモニウム塩(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩)を含むが、それらに限らない。
【0121】
更に適切な塩は、アセテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ビカルボネート、ビスルフェート、ビタータレート、ボレート、ブロミド、カルシウムエデテート、カムシレート、カルボネート、クロリド、クラブラネート、シトレート、ジヒドロクロリド、エデテート、エジシレート、エストレート、エシレート、フマレート、グルセプテート、グルコネート、グルタメート、グリコリルアルサニレート(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド、ヒロドキシナフトエート、イオジド、イソチオネート、ラクテート、ラクトビオネート、ラウレート、マレート、マレエート、マンデレート、メシレート、メチルブロミド、メチルニトレート、メチルスルフェート、ムケート、ナプシレート、ニトレート、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレエート、パモエート(エンボネート)、パルミテート、パントテネート、ホスフェート/ジホスフェート、ポリガラクツロネート(ポリガラクツロン酸塩)、サリチレート、ステアレート、スルフェート、スバセテート(2次酢酸塩)、スクシネート、タンネート(タンニン酸塩)、タートラート、テオクレート、トシレート、トリエチオジド、及びバレレートの本発明の化合物の塩を含むが、それらに限らない。
【0122】
本明細書に開示した化合物のプロドラッグ及び活性代謝産物も、本発明の範囲内である。
【0123】
プロドラッグは、代謝変換又は任意の他の化学的若しくは生物学的プロセス(例えば加水分解)によって、薬理学的な活性剤に変換される薬理学的に不活性な化合物である。例えば、in vivoで、プロドラッグは天然の酵素に作用されて、薬理学的な活性剤を生じる。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための従来の方法は、例えば「Design of Prodrugs,」el. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載されている。
【0124】
活性代謝産物は、対象に投与した後に他の化合物の代謝から生じる化合物である。代謝産物は、当該技術分野でよく知られた技術によって同定されて良い。
【0125】
製剤及び投与
適切な投与形態は、経口、直腸、舌下、粘膜、経鼻、眼、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、脊髄、鞘内、関節内、クモ膜下、気管支、リンパ、及び子宮内の投与、並びに活性成分の全身送達のための他の投与形態を含むが、それらに限らない。好ましい実施態様では、前記投与形態は、経口投与に適切なものである。
【0126】
その様な製薬学的な投与形態を調製するために、1つ以上の上述の式(I)、(II)、及び(III)の化合物、又はそれらの製薬学的に許容される塩を、従来の製薬学的な配合技術に従って、はじめに製薬学的な担体と混合する。前記担体は、投与に望ましい調製物の形態に依存した広範な種類の形態であって良い。
【0127】
非経口的な製剤に関しては、前記担体は、他の成分、例えば可溶性又は保存の助けになる成分が含まれても良いが、通常滅菌水を含むであろう。注射可能な溶液も調製されて良く、その様な場合には適当な安定剤が使用されて良い。
【0128】
経口投与形態の組成物の調製では、任意の通常の製薬学的な媒体が使用されて良い。かくして、液体の経口製剤、例えば懸濁物、エリクシル、及び溶液のための適切な担体及び添加物は、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、及び着色剤などを含む。固体経口製剤、例えば粉末、カプセル、カプレット、及びタブレットのための適切な担体及び添加物は、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、バインダー、及び崩壊剤などを含む。それらの投与の簡単のために、タブレット及びカプレットが、最も有利な経口投与単位形態である。望ましい場合には、タブレットは、標準的な技術によって糖衣又は腸溶コーティングされて良い。
【0129】
ある応用では、例えば、リポソーム、ミセル、又は他の封入剤媒体に、活性剤を封入させること、又は例えば共有結合、キレート化、集合、若しくは結合的配位によって、適切な生体分子、例えば、タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質、及びポリサッカリドから選択されるものに活性剤を固定化することによる「ベクター化」形態の活性剤を使用することが有利であって良い。
【0130】
経口投与に適切な製剤を使用する本発明の治療方法は、各々所定の量の活性成分を粉末又は顆粒として含有するカプセル、サッシェ、タブレット、又はロゼンジのような個別の単位として提供されて良い。任意に、水性液体又は非水性液体における懸濁物、例えばシロップ、エリクシル、エマルション、又はドラフト(draught)が使用されて良い。
【0131】
タブレットは、任意に1つ以上の補助的な成分とともに、圧縮又は鋳造、あるいは湿式造粒によって作製されて良い。圧縮タブレットは、任意にバインダー、崩壊剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性剤、又は抜染剤と共に混合した粉末若しくは顆粒のような自由に流動する活性化合物を使用して、適切な機械で圧縮することによって調製されて良い。適切な担体と粉末活性化合物の混合物を含む鋳造タブレットは、適切な機械で鋳造によって作製されて良い。
【0132】
シロップは、任意の補助的な成分も添加して良い糖、例えばスクロースの濃縮水溶液に活性化合物を添加することによって作製されて良い。その様な補助的な成分は、香味剤、糖の結晶化を遅らせる適切な保存剤、及び任意の他の成分の可溶性を増大する薬剤、例えばグリセロール又はソルビトールのようなポリヒドロキシアルコールを含んで良い。
【0133】
非経口投与のための適切な製剤は、通常、好ましくは受容者の血液と等張の活性化合物の滅菌水性調製物(例えば、生理食塩水溶液)を含む。その様な製剤は、懸濁剤及び増粘剤、並びにリポソーム、又は血液の成分若しくは1つ以上の器官に前記化合物を標的化するために設計された他の微粒子化システムを含んで良い。前記製剤は、単位投与又は多投与形態で存在して良い。
【0134】
非経口投与は、全身送達又はCNSに直接送達の任意の適切な形態を含んで良い。例えば、投与は、静脈内、動脈内、鞘内、筋肉内、皮下、筋肉内、腹内(例えば腹膜内)などであって良く、注入ポンプ(体外又は移植可能なもの)又は所望の投与様式に適当な任意の他の適切な手段によって達成されて良い。
【0135】
経鼻及び他の粘膜へのスプレー製剤(例えば吸入可能な形態)は、保存剤及び等張剤と活性化合物の精製水溶液を含んで良い。その様な製剤は、好ましくは、経鼻又は他の粘膜に適合するpH及び等張状態に調製される。代替的に、その様な製剤は、気体担体に懸濁した微細な固形粉末の形態であって良い。その様な製剤は、例えばネブライザー又は計量吸入器などの、任意の適切な手段又は方法によって送達されて良い。
【0136】
直腸投与のための製剤は、ココアバター、水素化脂肪、又は水素化脂肪カルボン酸のような適切な担体と坐剤として提供されて良い。
【0137】
経皮製剤は、チキソトロピー又はゼラチン状の担体、例えばメチルセルロール又はヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース媒体に活性剤を含ませ、結果として得られた製剤を携帯者の皮膚に接触させて皮膚に固定するのに適する経皮器具に封入することによって提供されて良い。
【0138】
上述の成分に加えて、本発明の製剤は、希釈剤、バッファー、香味剤、バインダー、崩壊剤、表面活性剤、増粘剤、潤滑剤、及び保存剤(抗酸化剤を含む)などから選択される、1つ以上の補助的な成分も含んで良い。その様な製薬組成物は、当該技術分野においてよく知られた方法によって調製され、よく知られた担体を含有して良い。その様な方法及び成分の一般的に認識されている概説はRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Alfonso R. Gennaro, editor, 20th ed. Lippingcott Williams and Wilkins: Philadelphia, Pa., 2000である。
【0139】
本発明の製剤は、当業者に既知の急速な放出、持続型放出、遅延型放出、又は任意の他の放出プロフィールを有して良い。
【0140】
前記製薬組成物を服用する対象は、好ましくは、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、及びモルモットのような動物を含むが、それらに限らない動物であり、より好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0141】
活性剤の投与量は、典型的には、約0.01から約25mg/kg/日の間、好ましくは約0.1から約10 mg/kg/日の間、及び最も好ましくは約0.2から約5 mg/kg/日の間の範囲であって良い。本発明の製薬製剤は、その様な製薬製剤の複数の用量の投与によって有効量に達して良いため、必ずしも疾患の治療において効果的な薬剤の全量を含有する必要が無いと解されるであろう。
【0142】
本発明の好ましい実施態様では、前記化合物はカプセル又はタブレットに製剤化されて、好ましくは25から200mgの本発明の化合物を含有し、約0.5mgから約2g、好ましくは約7.5mgから約750mg、より好ましくは約15mgから750mg、最も好ましくは約50から約200mgの1日全体の用量で患者に好ましく投与される。
【0143】
非経口投与のための製薬組成物は、100%の重量の製薬組成物全体に基づいて、約0.01重量%から約100重量%の本発明の活性剤を含有する。
【実施例】
【0144】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、これに限定するものではない。
精選された化合物の合成
【0145】
【化23】

【0146】
水酸化ナトリウム水溶液(0.1Nの3mL, 0.3mmol)を、10mLのエタノール中の1,1,1-トリス-(4-カルボキシメトキシフェニル)エタン(48mg, 0.1mmol, Hayakawa, T., et al, Polymer J, 2000, 32(9), 784)に従って作製した)に添加し、その混合物を室温で2時間攪拌した。その混合物を蒸発させて、減圧条件下で乾燥させ、55mg(100%の収率)の所望の化合物を白色の固体、mp>300℃として得た。1H NMR (300 MHz, D2O): δ1.85 [s, 3H, -CH3], 4.18 [s, 2H, -OCH2-], 6.67 [d, 2H, J= 7.7 Hz, Ar-H], 6.83 [d, 2H, J= 7.7 Hz, Ar-H]。
【0147】
【化24】

【0148】
メチルブロモアセテート(0.48mL, 5mmol)を、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(1.53g, 5mmol)、カリウムカーボネート(0.79g, 5mmol)、及びヨウ化カリウム(16mg, 0.1mmol)を含有するアセトン溶液(10mL)に滴々と添加した。前記添加は、アルゴン雰囲気条件下で室温で実施した。その混合物を24時間還流し、次いで室温まで冷却して、酢酸エチルで抽出した。組み合わせた有機層を3%NaHCO3水溶液、飽和食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)して、次いで蒸発させて乾燥し、1.61g(85%の収率)の所望の化合物を無色の半固体として得た。1H-NMR(300MHz, d6-DMSO): 1.96 [s, 3H, -CH3], 3.67 [s, 3H, -OCH3], 4.71 [s, 4H, -OCH2-], 6.57-6.64 [m, 4H, Ar-H], 6.72-6.81 [m, 6H, Ar-H], 6.85-6.92 [m, 2H, Ar-H]。
【0149】
【化25】

【0150】
工程(i)では、メチルブロモアセテート(0.95mL, 10mmol)を、10mLアセトン中の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(1.53g, 5mmol)、カリウムカーボネート(1.38g, 10mmol)、及びヨウ化カリウム(16mg, 0.1mmol)にアルゴン雰囲気下、室温で滴々と添加した。その混合物を更に24時間還流して、室温まで冷却して後に、その溶液を酢酸エチルで抽出した。組み合わせた有機層を、3%NaHCO3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)して、次いで蒸発させて乾燥させ、工程(ii)における更なる精製なしで使用した固体を得た。
【0151】
工程(ii)では、0.1N水酸化ナトリウム水溶液(9mL, 0.9mmol)を、5mLのメタノール中の工程(i)からの132mgの生成物の溶液に添加し、その混合物を室温で更に2時間攪拌した。沈殿物を濾過して、冷エタノールで洗浄し、乾燥して133mg(91%の収率)の所望の化合物を、白色固体、mp>300℃として得た。1H NMR (300 MHz, D2O): δ 1.77 [s, 3H, -CH3], 4.20 [s, 4H, -OCH2-], 6.35 [d, 1H, J= 9.5 Hz, Ar-H], 6.54-6.66 [m, 6H, Ar-H], 6.75-6.86 [m, 5H, Ar-H]。
【0152】
【化26】

【0153】
クロロアセチルクロリド(0.12mL, 1.5mmol)を、10mLのCH2Cl2中に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(0.15g, 0.5mmol)及びトリエチルアミン(0.22mL, 1.5mmol)を含有する氷冷溶液に滴々と添加した。その混合物を室温に一晩放置した。次いで水及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)して、濃縮した。酢酸エチル/へキサンから残留物を再結晶し、0.22g(81%の収率)の所望の化合物を、白色の固体, mp: 144-146℃として得た。1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ2.01 [s, 3H, -CH3], 4.33 [s, 6H, -CH2Cl-], 6.75 [d, 2H, J= 8.4 Hz, Ar-H], 6.99 [d, 2H, J= 8.4 Hz, Ar-H]。
【0154】
【化27】

【0155】
工程(i)では、メチルブロモアセテート(0.95mL, 10mmol)を、10mLアセトン中の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(1.53g, 5mmol)、カリウムカーボネート(1.38g, 10mmol)、及びヨウ化カリウム(16mg, 0.1mmol)にアルゴン雰囲気下、室温で滴々と添加した。その混合物を更に24時間還流して、室温まで冷却した後に、その溶液を酢酸エチルで抽出した。組み合わせた有機層を、3%NaHCO3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)して、次いで蒸発させて乾燥させ、工程(ii)における更なる精製なしで使用した固体を得た。
【0156】
工程(ii)では、工程(i)からの0.45gの生成物を5mLの無水酢酸で3時間還流した。揮発性物質を減圧条件下で除き、残留物をヘキサン-酢酸エチル(1:1)で溶出するフラッシュ・クロマトグラフィーで精製し、0.43g(88%収率)の所望の化合物を無色の半固体として得た。1H-NMR(300MHz, CDCl3): δ1.57 [s, 3H, -CH3], 2.28 [s, 3H, -COCH3], 3.81 [s, 3H, -OCH3], 4.61 [s, 4H, -OCH2-], 6.75-6.82 [m, 4H, Ar-H], 6.92-7.02 [m, 6H, Ar-H], 7.02-7.10 [m, 2H, Ar-H]。
【0157】
【化28】

【0158】
クロロアセチルクロリド(0.08mL, 1mmol)を、10mLのCH2Cl2中の1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン(0.14g, 0.5mmol)及びトリエチルアミン(0.15mL, 1mmol)の氷冷溶液に滴々と添加した。その混合物を室温に一晩放置した。次いで、水及び飽和食塩水で洗浄して、乾燥(Na2SO4)し、次いで濃縮した。酢酸エチル/へキサンから残留物を再結晶し、0.2g(91%収率)の所望の化合物を白色の固体, mp: 97-98℃として得た。1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ2.13 [s, 3H, -CH3], 4.66 [s, 4H, -CH2Cl-], 7.01-7.12 [m,11H, Ar-H], 7.17-7.23 [m, 1H, Ar-H], 7.25-7.33 [m, 1H, Ar-H].
【0159】
【化29】

【0160】
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(12mg, 0.1mmol)を、5mLのエタノール中の2-(3,6-ジヒドロキシ-9H-キサンテン-9-イル)安息香酸[33mg, 0.1mmol, Cui, Y. et al., Yaoxue Tongbao, 1982, 17(9), 528]の溶液に添加して、その混合物を室温で更に2時間攪拌する。その混合物を蒸発させて、減圧条件下で乾燥し、37mg(100%の収率)の所望の化合物をオレンジ色の固体, mp>300℃として得た。1HNMR (300 MHz, D2O): δ3.75 [s, 6H, -CH2-], 5.76 [s, 1H, -CH], 6.94-6.99 [m, 1H, Ar-H], 7.09-7.13 [m, 2H, Ar-H], 7.26-7.31 [m, 6H, Ar-H], 7.49-7.54 [in, 1H, Ar-H]。
【0161】
【化30】

【0162】
2-(3,6-ジクロロ-9H-キサンテン-9-イル)安息香酸(37mg, 0.1mmol, Gronowska, J. and Dabkowska-Naskret, H. Polish J. Chem., 1981, 55(10), 2151)、チオニルクロリド(0.5mL)、及びトルエン(5mL)の混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流し、減圧条件下で濃縮した。残存するチオニルクロリドを、CHCl3(5mL)と共蒸発させて、粗生成物混合物から除去した。次いで濃縮したNH3(5mL)水溶液を添加して、その混合物を室温で一晩攪拌した。沈殿物を濾過して、H2Oで洗浄した。粗生成物をエタノールから再結晶して、33mg(90%収率)の所望の化合物を白色の固体, mp 218-220℃として得た。1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ5.79 [s, IH, -CH], 6.81-6.86 [m, 1H, Ar-H], 7.04-7.11 [m, 2H, Ar-H], 7.16-7.28 [m, 6H, Ar-H], 7.39-7.45 [m, 1H, Ar-H], 7.76 and 8.23 [s, 2H, NH2]。
【0163】
【化31】

【0164】
水酸化カリウム水溶液(0.1Nの1mL 0.1mmol)を、5mLエタノール中の2-(ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メチル)安息香酸[32mg, 0.1mmol, Adamczyk, M. and Grote, J. Organic Preparations and Procedures International, 2001, 33(1), 95]の溶液に添加して、その混合物を室温で更に2時間攪拌した。その混合物を蒸発させて減圧条件下で乾燥させて、36mg(100%収率)の所望の化合物を白色の固体, mp>300℃として得た。1H NMR (D2O, 300 MHz): δ6.41 [s, 1H, -CH], 6.66 [d, 4H, J= 8.8 Hz, Ar-H], 6.80 [d, 4H, J= 8.8 Hz, Ar-H], 7.03 [d, 1H, J= 7.7 Hz, Ar-H], 7.35 [t, IH, J= 7.7 Hz, Ar-H], 7.44 [t, 1H, J= 7.7 Hz, Ar-H], 7.74 [dd, 1H, J1 = 7.7 Hz, J2 = 2.2 Hz5, Ar-H]。
【0165】
【化32】

【0166】
水酸化カリウム水溶液(0.1Nの1mL, 0.1mmol)を、5mLのエタノール中の2-(3,6-ジヒドロキシ-9H-キサンテン-9-イル)-安息香酸[33mg, 0.1mmol, Cui, Y. et al, Yaoxue Tongbao, 1982, 17(9), 528]の溶液に添加して、その混合物を室温で更に2時間攪拌した。その混合物を蒸発させて減圧条件下で乾燥させて、37mg(100%収率)の所望の化合物をオレンジ色の固体, mp>300℃として得た。1H NMR (D2O, 300 MHz): δ5.76 [s, H, -CH], 6.94-6.99 [m, 1H, Ar-H], 7.09-7.13 [m, 2H, Ar-H], 7.26-7.31 [m, 6H, Ar-H], 7.49-7.54 [m, 1H, Ar-H]。
【0167】
【化33】

【0168】
10mLメタノール中の4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン(0.32g, 1.5mmol)溶液を、50℃で10mLメタノール中の3-ニトロフェニルヒドラジン塩酸(0.43g, 2.25mmol)、濃縮硫酸(0.3mL)の溶液に添加した。それを更に2時間50℃で攪拌した。その反応混合物を濃縮し、20mLの水で希釈した。粗生成物を濾過して分離し、3%NaHCO3水溶液及び水で洗浄した。粗生成物をエタノールから再結晶して、0.4g(77%収率)の所望の化合物を黄色の固体, mp 160-162℃として得た。1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ6.71 [d, 2H, J= 8.8 Hz, Ar-H], 6.91 [d, 2H, J= 8.1 Hz, Ar-H], 7.07 [d, 2H, J= 8.8 Hz, Ar-H], 7.27 [d, 2H, J= 8.8 Hz, Ar-H], 7.40 [dd, 1H, J1 = J2 = 8.1 Hz, Ar-H], 7.49 [d, 1H, J = 8.1 Hz, Ar-H], 7.61 (dd, 1H, J1 = 8.4 Hz, J2 = 2.2 Hz, Ar-H], 7.99 [d, 1H, J= 2.2 Hz, Ar- H], 9.25 [s, 1H, NH], 9.78 and 9.62 [s, 1H, OH]。
【0169】
【化34】

【0170】
アセチルクロリド(32μl, 0.41mmol)を、5mLのCH2Cl3中のN-(4,4'-ジヒドロキシベンズヒドリリデン)-N'-(3-ニトロフェニル)ヒドラジン(70mg, 0.2mol)及びトリエチルアミン(60μL, 0.41mmol)の氷冷溶液に添加した。次いで、その混合物を室温で一晩放置した。次いで、それを水及び飽和食塩水で洗浄して、乾燥(Na2SO4)し、次いで濃縮した。その残留物を酢酸エチル/へキサンから再結晶して、76mg(88%の収率)の所望の化合物を黄色の針状結晶, mp: 88-90℃として得た。1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ2.24 and 2.30 [s, 3H, -CH3], 7.07-7.15 [m, 2H, Ar-H], 7.31- 7.40 [m, 4H, Ar-H], 7.42-7.50 [m, 3H, Ar-H], 7.52-7.72 [m, 2H, Ar-H], 7.97-8.05 [m, 1H, Ar-H], 9.56 [s, 1H, NH]。
【0171】
【化35】

【0172】
4,4'ジクロロベンゾフェノン(0.38g, 1.5mmol)の溶液を、50℃で10mLのメタノール中の3-ニトロフェニルヒドラジン塩酸(0.43g, 2.25mmol)、濃縮硫酸(0.3mL)の溶液に添加した。それを更に2時間50℃で攪拌した。その反応混合物を本来の容量の1/4まで濃縮し、20mLの水で希釈した。その沈殿物を濾過によって分離し、3%のNaHCO3水溶液及び水で洗浄した。その粗生成物をエタノールから再結晶して、0.46g(81%収率)の所望の化合物を黄色の針状結晶, mp 170-172℃として得た。1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ7.35 [d, 2H, J= 7.7 Hz, Ar-H], 7.37-7.49 [m, 5H, Ar-H], 7.58 [d, 1H, J= 8.4 Hz, Ar-H], 7.64 [d, 2H, J= 8.4 Hz, Ar-H], 7.69 [d, 1H, J= 8.4 Hz, Ar-H], 8.02 [s, 1H, Ar-H], 9.63 [s, 1H, NH]。
【0173】
以下の化合物は、下記の参照文献(その全体が参照によって組み込まれる)に従って調製することができる。
【0174】
【化36】

【0175】
【化37】

【0176】
【化38】

【0177】
【化39】

【0178】
【化40】

【0179】
【化41】

【0180】
【化42】

【0181】
【化43】

【0182】
【化44】

【0183】
【化45】

【0184】
1,1-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-1-フェニル-メタノール (I-17)
Gilman, H. and Jones, R. G., J. Am. Chem. Soc, 1940, 62, 1243.
【0185】
【化46】

【0186】
【化47】

【0187】
【化48】

【0188】
【化49】

【0189】
【化50】

【0190】
【化51】

【0191】
野生型及び変異型のヒトTNFレセプター1クローニング、発現、及び精製
5'プライマーAAA AAA CAT ATG TAC CCC TCA GGG GTT ATT GG (配列番号2)及び3'プライマーCCG CTC GAG TCA ATG ATG ATG ATG ATG ATG TGT GGT GCC TGA GTC CTC AG (配列番号3)を使用して、pKP13から野生型TNFレセプター1の細胞外ドメインをPCRによって得て(Beutler et el., Annu. Rev. Biochem. 57, 505-518 (1988)に記載のように)、Nde1とXhoTの間でPET21 (Novagen, San Diego, CA)に組込み、配列決定によって評価した。変異型のTNFレセプター1は、QuikChange mutagenesis kit (Stratagene, La Jolla, CA)を使用することによって部位特異的変異誘発より得られた。A600が0.6になるまで細胞を増殖させ、0.2mMのIPTGの添加によって誘導した。次いで細胞を3時間誘導させて、10分間、3500rpmの遠心分離によって回収した。野生型及び変異型のTNF-R1は全て細胞の封入体の中で発現され、Lin et al., Biotechniques 11, 748 (Dec. 1991)に記載のように抽出及び再フォールディングを実施した。簡潔には、100mLの培養物からの細胞ペレットを5mLの氷冷バッファーA(20mM Tris-HCl, pH 7.5, 20% スクロース, 1mM EDTA)中で10分間反応させて、4℃で5分間、6000rpmで遠心分離し、次いで50mLの氷冷水に10分間再懸濁して、4℃で5分間、8200rpmで遠心分離した。そのペレットを10mLのバッファーP(5mM EDTA, 1mM PMSF, 0.1% アプロチニンを含有するPBS)に懸濁し、超音波処理した。超音波処理の後、細胞懸濁物を室温で10分間DNase I (400μg/10mL)でインキュベートした。さらに、その懸濁物を40mLのバッファーPを添加して希釈し、4℃で30分間、11,000rpmで遠心分離した。次いで、そのペレットを4℃で10分間、バッファーW (25% スクロース, 5mM EDTA, 1% Tritonを含有するPBS)で二回洗浄し、4℃で10分間、15,000rpmで遠心分離した。次いで、そのペレットを10mLのバッファー U2 (50mM Tris-HCl, pH 8.0, 8M 尿素)に氷上で1時間再懸濁し、4℃で30分間、11,000rpmで遠心分離した。その上清に、1Lのバッファー R (50mM Tris-HCl, pH8.0, 20% グリセロール, 1mM PMSF, 0.1%アプロチニン)を再フォールディングのために添加し、4℃で一晩穏やかに攪拌してタンパク質を再生した。
【0192】
再フォールディングしたタンパク質溶液を4℃で30分間、11,000rpmで遠心分離し、凝集物を除いた。その上清をTalon metal affinity resin(QIAexpressonstTM, Qiagen, Inc, Valencia, CA)と混合し、4℃で2時間振動させ、次いで300mM NaCl及び20mMイミダゾールを含有する50mM NaH2PO4で三回洗浄した。精製したTNF-R1は最後に、300mM NaCl及び150mMイミダゾール, pH8.0を含有する50mM NaH2PO4で溶出した。
【0193】
市販のTNFレセプター1が、本明細書に開示したいずれの実施例に使用されても良い。
【0194】
アロステリックインヒビターの結合がw107の摂動を生じさせる
単離して精製したTNF-R1に結合する能力について、化合物I-9を試験した。等温滴定熱量計(ITC)を使用して、結合特性を推定し、その結果を図1に示した。I-9は2.2×10-6M-1のアフィニティーで1つの部位でTNF-R1に選択的に結合した。
【0195】
リガンド結合では大きな検出可能なコンフォメーション変化は存在しないようである(Banner et al., Cell 73, 431(1993))。そのため、コンフォメーション変化は、微細なもの、おそらく2Å(0.2nm)のオーダーにおけるコンフォメーション変化であると解されている。蛍光の消光は、タンパク質の小さな調節変化を同定することが可能である。1つのみのトリプトファン残基がTNF-R1細胞外ドメインに存在し、WP9ループに位置する。
【0196】
化合物I-9の結合後にアクリルアミドによって誘導された蛍光の消光からの結果を図2に示す。WP9ループ中のW107残基は約340nmの蛍光を発した。この一連の実験において、消光剤の終濃度は、上限0.25Mまでであり、TNF-R1の本来の蛍光全体の77.4%に消光した。プロットの傾きから算出されたアクリルアミドによるTNF-R1消光についてのStern-Volmer定数は、14.4±0.2M-1であり、それと比較して試験化合物の存在下ではTNF-R1について11.6±0.2M-1であり、I-9のTNF-R1への結合がTNF-R1にコンフォメーション変化を導入し、消光剤からW107を部分的に保護していることを示した。かくして、I-9のレセプターへの結合はトリプトファン-107の配置を変化させた。
【0197】
変異型TNF-R1に対するアロステリックインヒビターの結合
空洞中の82Q及び112F残基でTNF-R1の変異体を作製し、それぞれ82E及び112Eに変異させた。変異型レセプターの構造の完全性を、表面プラズモン共鳴(SPR)試験において、リガンド結合によって評価した。リガンドであるTNF-αは、野生型のTNF-R1 (Kd=3.79×10-10M)、及び変異型のTNF-R1 (Kd=4.65×10-6 M)に結合し、変異体はある程度リガンド結合部位に影響を及ぼしていることを示した。ITCを使用して、化合物I-9がもはや変異型レセプターに結合しないことが認められた(図1B)。ある程度低減したアフィニティーではあるが、TNF-αは変異型レセプターに結合する能力を維持していた。これらの試験は、試験化合物が野生型TNF-R1の単一及び特異的な空洞に結合することを実証した。
【0198】
TNF-αを介する細胞毒性の阻害
L929培養マウス線維芽細胞を、American Type Culture Collection (Manassas, VA)から得た。組織培養試薬を、Invitrogen又はSigma-Aldrichから得た。TNF-α及びアクチノマイシンDはSigma-Aldrichからのものであった。Alamar Blue試薬(Cell Titer BlueTM)はPromegaからのものであった。試験化合物I-1からI-16、II-1からII-8、及びIII-1からIII-3は市販されているものか、又は上述のように調製した。前記試験化合物は、それぞれジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。前記試験化合物を使用しない場合には4℃に維持した。他の試薬は高純度のものであった(ACS-grade、HPLC-grade、MilliQ水など)。
【0199】
10%FBS(ウシ胎仔血清)、NEAA(非必須アミノ酸)、及びグルタミンを添加した完全DMEM(Dulbecco's Modified Eagles Medium)中において、組織培養プラスチック上でストックのL929を増殖させた。使用前に、同じ培地を使用して96穴組織培養プレート上に高密度(すなわち~4×104細胞/ウェルなど)でL929細胞を播種した。
【0200】
播種の約20時間後、96穴プレート上のL929細胞に、「前処理」として100μM、50μM、25μMから選択される濃度で前記試験化合物の1つを含有する新しい培地を提供した。約30-60分後に、TNF-α(200pg/mL)及びアクチノマイシンD(2μM)を含有する培地に調製した追加量の試験化合物(前処理と同じ濃度及び同じ量)で試料を処理した。アッセイにおけるTNF-αの終濃度は100pg/mLであった。アッセイにおけるアクチノマイシンDの終濃度は1μMであった。プレートを更に22から23時間インキュベートして、Alamar Blueアッセイ試薬を添加し、代謝細胞の生存を蛍光発生原であるAlamar Blue誘導体の減少から測定する。
【0201】
温度は37℃、5%CO2に維持し、加湿した。代謝生存率は、TECAN SaFire蛍光プレートリーダー(Tecan Group Ltd., Maennedorf, Switzerland)を使用して、アッセイ試薬/Alamar Blue誘導体の添加から1から2時間後に測定した。
【0202】
所定の濃度(y)における試験化合物(X)によるTNF-α誘導細胞溶解の阻害を以下のように計算した。
【0203】
【数1】

【0204】
TNF-αを介する細胞溶解アッセイにおいて試験した化合物の結果を表1に挙げる。
【0205】
【表1A】

【表1B】

【0206】
L929におけるTNF-αシグナル伝達の阻害
TNF-αシグナル伝達に対する化合物I-9の効果を、L929細胞(American Type Culture Collection, Manassas, VA)において試験した。5%ウシ胎仔血清を含有するRPMI(Invitrogen)において細胞を培養した。細胞(1×106/ウェル)を12時間6穴プレートで培養して、2時間小分子の存在下又は非存在下で処理し、次いで指定の期間、20ng/mlでTNF-αで刺激した。次いで、氷冷リン酸緩衝生理食塩水で細胞を洗浄し、リシスバッファーで溶解した。細胞の溶解物(15から30μg)を12%SDS-PAGEで分離して、ニトロセルロース膜(Osmonics, Westborough, MA)に電気ブロットし、抗ホスホIκBα、抗IκBα、抗ホスホp38、抗p38、及び抗βアクチン抗体(Cell Signaling Technology, Inc., Beverly, MA)で探索し、エンハンストケミルミネセンス(ECL)システム(Amersham Biosciences,Piscataway, NJ)を使用して現像した。結果は、化合物I-9を使用するL929の処理は、TNF-α処理後のホスホIκBα及びホスホp38の生成を低減することを示した(図3A)。
【0207】
THP1細胞におけるTNF-αシグナル伝達の阻害
THP1細胞(ヒト急性単球性白血病細胞株、American Type Culture Collection, Manassas, VA)を、50mM HEPES、1mM ピルビン酸Na、50μMの2-ME、2.5mg/mLのグルコース、50μg/mlのゲンタマイシン、及び10%のFBSを添加したRPMIにおいて培養した。100ng/mL PMAを添加し、6×105/ウェルの密度で、細胞を12穴プレートで培養した。細胞を72時間分化させた。次いで細胞を小分子の存在下又は非存在下で2時間前処理し、続いて指定の期間で20ng/mL TNF-αを使用して処理した。次いで、L929細胞について上述したのと同様に、細胞を溶解し、ウエスタンブロットによって分析した。結果は、化合物I-9を使用する処理が、図3Cに示すように、THP1細胞においてTNF-αを介するIκBα及びp38のリン酸化を阻害することを示した。
【0208】
NE91細胞におけるEGFシグナル伝達に対する効果
I-9の効果がTNF-αシグナル伝達に特異的であることを確認するために、EGF-シグナル伝達に対するI-9の効果をNE91細胞(American Type Culture Collection, Manassas, VA)において試験した。10% FBSを含有するRPMI培地において6穴プレートで、1×106/ウェルの密度で12時間、NE91細胞を培養し、続いてI-9の存在下又は非存在下で2時間処理した。次いで、指定の時間、100ngのEGFを使用して細胞を刺激した。次いでL929細胞においてTNF-αシグナル伝達の分析について上述したのと同様に、細胞を溶解し、ウエスタンブロットによって分析した。結果は、化合物I-9がEGFが誘導したシグナル伝達に変化を誘導することができないことを示し(図3B)、I-9がTNF-R1シグナル伝達経路を特異的に変化することを示唆した。
【0209】
コラーゲンに誘導された関節炎の阻害
化合物I-9の活性を、ヒト関節リウマチのためのモデルである、マウスコラーゲンに誘導された関節炎システムにおいて試験した。等量の完全フロイントアジュバントにおいて乳化した100μlの0.1M酢酸中の100μg チキンタイプIIコラーゲン(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)の多数の皮内注射によって、6から8週齢のオスのDBA/1マウスを免疫し、次いで21日目に同じ抗原調製物を使用して腹腔内に投与した。動物は、21日目から各種の用量(2-4mg/kg/日)で化合物I-9を毎日注射され、ブラインド方式で一日おきに身体を試験した。このモデルでは、典型的に、第2の免疫後7-10日で発症し、疾患の重度を身体の試験、関節の組織化学、及びその双方の技術によって測定することが可能である。化合物I-9で処理したマウスは、未処理又は対照の群と比較して、関節炎の臨床的な症状において用量依存的な低減を示した(図4)。動物の足首の関節の組織学的な分析は、処理したマウスがより滑液の少ない組織及びマトリックスプロテオグリカンの低減を有することを明らかにした。浸潤が顕著に低減し、マトリックスプロテオグリカンが除去されなかった。軟骨の破壊も、I-9処理群において妨げられていた。
【0210】
TNFレセプター1依存性のin vivoでコラーゲンに誘導された関節炎の効果
オスのDBA/1マウス(6-8週齢)を、Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入し、University of Pennsylvania Animal Care Facilitiesにおいて飼育した。University of PennsylvaniaのInstitutional Animal Care and Use Committee (IACUC)のガイドラインに従って、動物を維持した。CIA誘導のために、マウスは、等量の完全フロイントアジュバントにおいて乳化した100μlの0.1M酢酸中の100μgのチキンタイプIIコラーゲン(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)の多数の皮内注射によって免疫した。マウスに21日目に同じ抗原調製物を使用して腹腔内に投与した。動物は、21日目から各種の用量(2-4mg/kg/日)化合物I-9を毎日注射された。2回目の免疫後7-10日で発症した。マウスは、ブラインド方式で一日おきに身体を試験した。それらの足は、以下のように個々に評点した:0=正常;1=足首の関節又はつま先に限定される紅斑及び軽い腫れ;2=足首からミッドフット又は足首の関節に広がった紅斑及び軽い腫れ;3=足首から中足骨関節まで広がった紅斑及び軽い腫れ;及び4=足首、足、及び指を含む紅斑及び重度の腫れ。足ごとの最大の疾患の点数は4であり、マウスごとの最大の疾患の点数は16である。足首の組織学的試験のために、マウスを各種の時点において屠殺して、それらの足を回収して10%ホルマリン中で固定化した。次いで足を塩酸中で脱灰して、パラフィンに包埋し、薄片を作製し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。
【0211】
他の方法
蛍光の消光試験
アクリルアミドを使用する消光試験を、2.5μlのアクリルアミドを各時点で添加することによって1M アクリルアミドのストックから滴下して、25℃で攪拌した細胞において実施した。組換えTNF-R1は1%のDMSO中で5μMの濃度であった。340nmで観察されるトリプトファン放射を、295nmの励起を使用して観察した。消光剤添加後の強度のデータは、10秒のデータ収集に亘って平均を取り、バックグラウンドの放射(タンパク質を欠いたペアの対照)に関して補正した。所定の消光剤の濃度[Q]における強度Fは、Stern-Volmer式を使用して分析した。
【0212】
【数2】

【0213】
式中、F0は消光剤の非存在下におけるタンパク質の放射強度であり、KS.Vは、データをF0/F対[Q]としてプロットした際の傾きによって与えられる消光のStern-Volmer定数である。
【0214】
小分子の合成に関しては、20μMの試験化合物は、1% DMSO中の5μM TNF-R1で30分間前処理して、TNF-R1単独と同様に1Mアクリルアミドを滴下した。F0/FはStern-Volmer式を使用して分析し、TNFレセプター及び試験化合物とTNFレセプターからの2つの傾きを比較した。
【0215】
表面プラズモン共鳴による動力学的な結合試験
組換えTNFレセプターの野生型及び変異型を、2,000共鳴単位の表面密度でCM5センサーチップに固定化した。TNF-R1に対するTNF-αの結合アフィニティーをBiaCORE3000 (BiaCORE, Uppsala, Sweden)によって25℃で概算した。TNF/TNF-R結合相互作用に関する見かけの速度定数(kon及びkoff)及び平衡結合定数(kd)を、BIA evaluation 3.0ソフトウェア(BiaCORE)を使用して、センサグラムの動力学的な分析から概算した。
【0216】
等温滴定熱量計
TNFレセプターに対するインヒビターの結合熱動力学を、高精度VP-ITC滴定熱量測定システム(MicroCal Inc, Northampton, MA)を使用して、等温滴定熱量計(ITC)によって測定した。野生型又は変異型のTNFレセプターを、約1から6μMの濃度で2%DMSOと共に5mM Tris, pH8.0に溶解して含有する熱量測定セルは、同じバッファーに溶解したインヒビターで滴定した。インヒビターの濃度は、バッファー中の溶解度に依存して、50-120μMであった。注入する容量は、10μLであった。全ての溶液は適切に脱気して、攪拌中の熱量計中における気泡の発生を避けた。インヒビターの各注入で発生する熱は、熱量シグナルの全体から得られた。TNFレセプターに対するインヒビターの結合に関連する熱は、反応熱から希釈熱を減じることによって得られた。測定は25℃で実施した。MicorCal(Origin version 5.0)によって提供されたデータ分析ソフトウェアを使用して、データを分析し、操作した。
【0217】
上の記載、実施例、及びデータは、本発明の組成物の製造及び使用の説明を提供するものである。本発明の精神及び範囲を逸脱すること無く、本発明の多数の実施態様が作製されて良いため、本発明は添付の特許請求の範囲に属するものである。
【0218】
本明細書に記載の文献、特許、及び特許出願を含む全ての参照は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】図1は、(A)組換え野生型ヒトTNF-R1レセプター及び(B)変異型ヒトTNF-R1に対するTNF-R1インヒビターI-9の結合を示す、等温滴定熱量計測定の結果を示す。
【図2】TNF-R1単独(黒丸)及びTNF-R1インヒビターI-9の存在下(白三角)に関して、アクリルアミドによるTNF-R1の固有のトリプトファン蛍光の消光に関するStren-Volmerプロットを示す。
【図3】図3は、細胞シグナル伝達に対するTNF-R1インヒビターI-9の効果を示すことを意図する実験結果を示す。(A)L929細胞におけるTNFαに誘導されるp38のリン酸化に対するI-9の効果;(B)NE91細胞におけるEGFに誘導されるMAPK活性化に対するI-9の効果;及び(C)THP1におけるシグナル伝達に対するI-9の効果。細胞は、ビヒクル(レーン1)、LPS(10ng/ml、レーン2)、TNF-α(100ng/mL、レーン3)、インヒビターI-9(20μg/mL、レーン4)、LPS(10ng/ml)+インヒビターI-9(20μg/mL)(レーン5)、及びTNF-α(100ng/mL)+インヒビターI-9(20μg/mL) (レーン6)。
【図4】図4は、ヒト関節リウマチのマウスモデルにおける、コラーゲン誘導関節炎に対するTNF-R1インヒビターI-9の効果を示すことを意図する実験の結果を示す。データは平均±SEMとして表わした。確率は、ビヒクルで処理して対照群のマウスとの比較からのスチューデントのt試験の結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I-9
【化1】

によって表わされる化合物又はその製薬学的に許容される塩の有効量を使用して、腫瘍壊死因子の作用の阻害を必要とする患者を治療する工程を含む、腫瘍壊死因子の作用を阻害する方法。
【請求項2】
式I-9
【化2】

によって表わされる化合物又はその製薬学的に許容される塩の有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、自己免疫疾患、関節炎、炎症、又は乾癬の治療方法。
【請求項3】
下式
【化3】

によって表わされる化合物。
【請求項4】
治療上有効量の請求項3に記載の化合物、及び製薬学的に許容される賦形剤を含む、製薬組成物。
【請求項5】
有効量の請求項4に記載の組成物を使用して、腫瘍壊死因子の作用の阻害を必要とする患者を治療する工程を含む、腫瘍壊死因子の作用を阻害する方法。
【請求項6】
有効量の請求項4に記載の組成物を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、関節炎、炎症、又は乾癬の治療方法。
【請求項7】
有効量の請求項4に記載の組成物を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、自己免疫疾患の治療方法。
【請求項8】
自己免疫疾患の治療及び/又は予防的治療のための医薬の製造における、請求項3に記載の化合物又は請求項4に記載の組成物の使用。
【請求項9】
関節炎、炎症、又は乾癬の治療及び/又は予防的治療のための医薬の製造における、請求項3に記載の化合物又は請求項4に記載の組成物の使用。
【請求項10】
患者において腫瘍壊死因子の作用を阻害して、治療及び/又は予防効果を提供するための医薬の製造における、請求項3に記載の化合物又は請求項4に記載の組成物の使用。
【請求項11】
100nM又はそれよりも強いアフィニティーでTNF-R1のアロステリック部位に結合する、腫瘍壊死因子レセプター1(TNF-R1)インヒビター。
【請求項12】
10nM又はそれよりも強いアフィニティーでTNF-R1のアロステリック部位に結合する、請求項11に記載のインヒビター。
【請求項13】
1nM又はそれよりも強いアフィニティーでTNF-R1のアロステリック部位に結合する、請求項12に記載のインヒビター。
【請求項14】
式I
【化4】

[式中、
R1及びR2は、独立に、水素、メトキシ、飽和アルキル、3-カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phであり、
R3は、水素、飽和アルキル、メトキシ、ハロゲン、カルボキシ-4-クロロフェニルアミノ、-N(CH2CH2OH)2、又はOC(O)Phであり、
R4は、ハロゲンであり、及び
R5は水素である]
の化合物を除く、請求項11から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
K35、G36、C55、E56、S57、G58、S59、F60、T61、A62, S63、C70、L71、S72、C73、S74、K75、C76、R77、K78、E79、M80、G81、Q82、V83、E84、I85、V90、D91、R92、D93、T94、V95、C96、G97、C98、R99、K100、N101、Q102、Y103、R104、H105、Y106、S108、E109、N110、L111、F112、Q113、C114、F115、Q130、E131、K132、及びQ133からなる群から選択されるアミノ酸の置換を有するTNF-R1に示すアフィニティーよりも、少なくとも約10倍より強い野生型のTNF-R1へのアフィニティーを示す、請求項11から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
前記置換を有するTNF-R1に示すアフィニティーよりも、少なくとも約100倍より強い野生型TNF-R1へのアフィニティーを示す、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記置換を有するTNF-R1に示すアフィニティーよりも、少なくとも約1000倍より強い野生型TNF-R1へのアフィニティーを示す、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記TNF-R1がQ82又はF112に置換を有する、請求項15から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
前記TNF-R1がQ82とF112の双方に置換を有する、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
Q82における置換がQ82Eであり、F112における置換がF112Eである、請求項18又は19に記載の化合物。
【請求項21】
(i)100nM以上のアフィニティーでTNF-R1のアロステリック部位に結合し、且つ
(ii)細胞に投与していない際に得られるNF-κB及びp38キナーゼ活性のTNF-αを介する活性化と比較して、細胞に投与した際にNF-κB及びp38キナーゼのTNF-αを介する活性化を低減する、
TNF-R1インヒビター化合物。
【請求項22】
治療上有効量の請求項11から21のいずれか一項に記載の化合物、及び製薬学的に許容される賦形剤を含む、製薬組成物。
【請求項23】
有効量の請求項11から21のいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の組成物を使用して、腫瘍壊死因子の作用の阻害を必要とする患者を治療する工程を含む、腫瘍壊死因子の作用を阻害する方法。
【請求項24】
有効量の請求項11から21のいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の組成物を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、関節炎、炎症、又は乾癬の治療方法。
【請求項25】
有効量の請求項11から21のいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の組成物を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、自己免疫疾患の治療方法。
【請求項26】
自己免疫疾患の治療及び/又は予防的治療のための医薬の製造における、請求項11から21のいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の組成物の使用。
【請求項27】
関節炎、炎症、又は乾癬の治療及び/又は予防的治療のための医薬の製造における、請求項11から21のいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の組成物の使用。
【請求項28】
患者において腫瘍壊死因子の作用を阻害して、治療及び/又は予防効果を提供するための医薬の製造における、請求項11から21のいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−528634(P2008−528634A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553377(P2007−553377)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/003574
【国際公開番号】WO2006/083970
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(507255787)セプション・セラピューティクス・インコーポレーテッド (1)
【出願人】(504433386)トラスティース・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (1)
【Fターム(参考)】