説明

腫瘍崩解性レオウイルス療法中の炎症性サイトカイン産生の排除

本明細書は、1つもしくは複数のレオウイルスならびに炎症性サイトカインの発現もしくは活性を調節する1つもしくは複数の薬剤を対象に投与することを含む、対象の増殖性疾患を治療する方法を提供する。例えば、該薬剤は、炎症性サイトカインの発現または活性を阻害し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍崩解性レオウイルス療法中の炎症性サイトカイン産生の排除に関する。
【背景技術】
【0002】
レオウイルスは、Ras経路が活性化された癌細胞向性のdsRNAウイルスである。腫瘍を有する動物にレオウイルスを投与すると、体液性免疫系と細胞性免疫系の両方に媒介される強い抗ウイルス反応が生じることが示されている。この抗ウイルス反応は、治療的ウイルスの腫瘍溶解効果を抑制する可能性がある。したがって、このレオウイルス腫瘍溶解の免疫拮抗作用に耐えるために免疫抑制剤の併用使用が探求されている。抗レオウイルス中和抗体(NARA)産生を排除する薬剤の併用投与は被験動物を罹患させる可能性があることが示されている。被験動物における該反応は標的腫瘍組織外におけるレオウイルス複製を特徴とし、体液性免疫が宿主のレオウイルス感染を予防する保護的役割を担うことが示唆されている(Qiao et al., Clin. Cancer Res. 14(1):259−69 (2008))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Qiao et al., Clin. Cancer Res. 14(1):259−69 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書は、1つもしくは複数のレオウイルスならびに炎症性サイトカインの発現もしくは活性を調節する1つもしくは複数の薬剤を対象に投与することを含む、対象の増殖性疾患を治療する方法を提供する。例えば、該薬剤は、炎症性サイトカインの発現または活性を阻害し得る。
【0005】
1つもしくは複数の態様の詳細について、添付の図面および下記の本明細書中で説明する。他の特徴、目的、および利点は、本明細書および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】レオウイルス/シスプラチン併用療法後に低減した腫瘍増殖および上昇した生存率を示す。皮下のB16/F10およびK1735腫瘍を有するC57Bl/6(図1Aおよび1C)およびC3H(図1Bおよび1D)マウスのそれぞれを、1日目および4日目に、レオウイルス単独の腫瘍内(i.t.)注射(四角)、シスプラチン単独の腹腔内(i.p.)投与(三角)、またはレオウイルスとシスプラチンの併用(丸)のいずれかによって処理した。対照処理マウス(菱形)にはPBSを投与した。腫瘍は、所定日に測定し、腫瘍体積は処理開始時の体積と比較した相対的腫瘍体積として表した(図1Aおよび1B)。腫瘍が任意の一次元で15mmを超えた場合、マウスを安楽死させた。生存率はカプランマイヤープロットとして表した(図1Cおよび1D)。
【図1B】レオウイルス/シスプラチン併用療法後に低減した腫瘍増殖および上昇した生存率を示す。皮下のB16/F10およびK1735腫瘍を有するC57Bl/6(図1Aおよび1C)およびC3H(図1Bおよび1D)マウスのそれぞれを、1日目および4日目に、レオウイルス単独の腫瘍内(i.t.)注射(四角)、シスプラチン単独の腹腔内(i.p.)投与(三角)、またはレオウイルスとシスプラチンの併用(丸)のいずれかによって処理した。対照処理マウス(菱形)にはPBSを投与した。腫瘍は、所定日に測定し、腫瘍体積は処理開始時の体積と比較した相対的腫瘍体積として表した(図1Aおよび1B)。腫瘍が任意の一次元で15mmを超えた場合、マウスを安楽死させた。生存率はカプランマイヤープロットとして表した(図1Cおよび1D)。
【図1C】レオウイルス/シスプラチン併用療法後に低減した腫瘍増殖および上昇した生存率を示す。皮下のB16/F10およびK1735腫瘍を有するC57Bl/6(図1Aおよび1C)およびC3H(図1Bおよび1D)マウスのそれぞれを、1日目および4日目に、レオウイルス単独の腫瘍内(i.t.)注射(四角)、シスプラチン単独の腹腔内(i.p.)投与(三角)、またはレオウイルスとシスプラチンの併用(丸)のいずれかによって処理した。対照処理マウス(菱形)にはPBSを投与した。腫瘍は、所定日に測定し、腫瘍体積は処理開始時の体積と比較した相対的腫瘍体積として表した(図1Aおよび1B)。腫瘍が任意の一次元で15mmを超えた場合、マウスを安楽死させた。生存率はカプランマイヤープロットとして表した(図1Cおよび1D)。
【図1D】レオウイルス/シスプラチン併用療法後に低減した腫瘍増殖および上昇した生存率を示す。皮下のB16/F10およびK1735腫瘍を有するC57Bl/6(図1Aおよび1C)およびC3H(図1Bおよび1D)マウスのそれぞれを、1日目および4日目に、レオウイルス単独の腫瘍内(i.t.)注射(四角)、シスプラチン単独の腹腔内(i.p.)投与(三角)、またはレオウイルスとシスプラチンの併用(丸)のいずれかによって処理した。対照処理マウス(菱形)にはPBSを投与した。腫瘍は、所定日に測定し、腫瘍体積は処理開始時の体積と比較した相対的腫瘍体積として表した(図1Aおよび1B)。腫瘍が任意の一次元で15mmを超えた場合、マウスを安楽死させた。生存率はカプランマイヤープロットとして表した(図1Cおよび1D)。
【図2】未処理(対照)、レオウイルス処理、シスプラチン処理またはレオウイルスとシスプラチンの併用処理の後における抗レオウイルス中和抗体(NARA)反応を示すグラフである。
【図3A】炎症性サイトカイン反応がシスプラチンによって排除されることを示すグラフである。未処理(対照)、レオウイルス処理、シスプラチン処理またはレオウイルスとシスプラチンの併用処理の後におけるIL−1α(図3A)、IL−3(図3B)、IL−6(図3C)、IL−12(図3D)、IL−17(図3E)、MIP−1α(図3F)およびRANTES(図3G)の反応を測定した。
【図3B】炎症性サイトカイン反応がシスプラチンによって排除されることを示すグラフである。未処理(対照)、レオウイルス処理、シスプラチン処理またはレオウイルスとシスプラチンの併用処理の後におけるIL−1α(図3A)、IL−3(図3B)、IL−6(図3C)、IL−12(図3D)、IL−17(図3E)、MIP−1α(図3F)およびRANTES(図3G)の反応を測定した。
【図3C】炎症性サイトカイン反応がシスプラチンによって排除されることを示すグラフである。未処理(対照)、レオウイルス処理、シスプラチン処理またはレオウイルスとシスプラチンの併用処理の後におけるIL−1α(図3A)、IL−3(図3B)、IL−6(図3C)、IL−12(図3D)、IL−17(図3E)、MIP−1α(図3F)およびRANTES(図3G)の反応を測定した。
【図3D】炎症性サイトカイン反応がシスプラチンによって排除されることを示すグラフである。未処理(対照)、レオウイルス処理、シスプラチン処理またはレオウイルスとシスプラチンの併用処理の後におけるIL−1α(図3A)、IL−3(図3B)、IL−6(図3C)、IL−12(図3D)、IL−17(図3E)、MIP−1α(図3F)およびRANTES(図3G)の反応を測定した。
【図3E】炎症性サイトカイン反応がシスプラチンによって排除されることを示すグラフである。未処理(対照)、レオウイルス処理、シスプラチン処理またはレオウイルスとシスプラチンの併用処理の後におけるIL−1α(図3A)、IL−3(図3B)、IL−6(図3C)、IL−12(図3D)、IL−17(図3E)、MIP−1α(図3F)およびRANTES(図3G)の反応を測定した。
【図3F】炎症性サイトカイン反応がシスプラチンによって排除されることを示すグラフである。未処理(対照)、レオウイルス処理、シスプラチン処理またはレオウイルスとシスプラチンの併用処理の後におけるIL−1α(図3A)、IL−3(図3B)、IL−6(図3C)、IL−12(図3D)、IL−17(図3E)、MIP−1α(図3F)およびRANTES(図3G)の反応を測定した。
【図3G】炎症性サイトカイン反応がシスプラチンによって排除されることを示すグラフである。未処理(対照)、レオウイルス処理、シスプラチン処理またはレオウイルスとシスプラチンの併用処理の後におけるIL−1α(図3A)、IL−3(図3B)、IL−6(図3C)、IL−12(図3D)、IL−17(図3E)、MIP−1α(図3F)およびRANTES(図3G)の反応を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0007】
既報のとおり(例えば、米国特許第6,110,461号;同第6,136,307号;同第6,261,555号;同第6,344,195号;同第6,576,234号;および同第6,811,775号を参照されたい)、レオウイルスは、宿主細胞のRas経路機構を用いて二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ(PKR)を下方制御し、そうして細胞内で複製する。これらの発見に基づき、増殖性疾患を治療するためのレオウイルスの使用方法が開発されている。レオウイルス療法は炎症性サイトカインを放出させることが示されている。炎症性サイトカインは、レオウイルス感染および腫瘍組織内に侵入するレオウイルスを抑制する。さらに、無胸腺マウスはレオウイルス感染罹患率をはっきりと示さない一方、SClDマウスおよびB細胞ノックアウト動物はレオウイルス感染により必ず死亡するという観察によって、レオウイルス毒性予防における体液性免疫系の保護的機能が示唆されている。
【0008】
レオウイルスの腫瘍溶解は、細胞傷害性薬剤の使用によってインビトロで増強できる。驚くべきことに、本明細書に記載の白金化合物の併用使用は、NARA産生には影響を与えないが、炎症性サイトカイン(IL−lα、IL−3、IL−6、IL−12p70、IL−17、MIP−lα、およびRANTESなど)の産生に対しては顕著な効果を有する。シスプラチンによる炎症性サイトカインの阻害は、T細胞がレオウイルス感染細胞を認識することを防止するため、細胞性免疫の拮抗作用なしにウイルスの複製が続くことを可能にする。しかしながら、シスプラチンは、保護的な抗レオウイルス中和抗体(NARA)の産生、およびそれに付随する利益(例えば、患者におけるレオウイルス毒性の予防)は可能にする。白金化合物はB細胞活性に対して影響を与えないが、T細胞による先天性反応と適応的反応の両方を選択的に遮断するための白金化合物の使用についてはこれまでに述べられていない。
【0009】
本明細書は、レオウイルスを対象に投与することおよび炎症性サイトカインを調節する薬剤を対象に投与することを含む、対象の増殖性疾患を治療する方法を提供する。
【0010】
例えば、該薬剤は、炎症性サイトカインの発現または活性を阻害する。本明細書で使用される場合、調節するという用語は、対照値と比較して10、20、30、40、50、60、70、80、90%またはそれを超える(正または負の)変化を指す。本明細書で使用される場合、対照とは、未処理試料または対象による標準的基準を指す。例として、対照値は、未刺激の対照試料における発現値または活性値である。対照は、回復前、回復後、または未刺激であり得る。
【0011】
任意に、サイトカイン調節剤は、T細胞反応を遮断する一方、B細胞活性に対しては全くまたはほとんど影響を及ぼさない。したがって、該薬剤は炎症性サイトカインを阻害するが、NARA産生は阻害しないか最小限しか阻害しない。任意に、該薬剤は白金化合物である。適切な白金化合物としては、限定されないが、シスプラチン、カルボプラチン、メタプラチンおよびオキサリプラチンが挙げられる。
【0012】
炎症性サイトカインを阻害する他の薬剤としては、限定されないが、TNF−α抗体(インフリキシマブ、CDP571、CDP870、およびアダリムマブなど);組換え型ヒト可溶性p55TNF受容体(オネルセプトなど);可溶性TNF受容体およびFc断片融合タンパク質(エタネルセプトなど);TNFに対するヒト化抗体のペグ化Fab断片(セルトリズマブペゴルなど);IL−2受容体抗α鎖に対するキメラ抗体(バシリキシマブまたはダクリズマブなど);IL−12p40抗体(ABT−874など);IL−6受容体抗体(MRA、すなわちトシリズマブなど);IFN−γ抗体(フォントリズマブなど);IL−1受容体に結合するIL−1を阻害する抗体(AMG108など);サイトカイン放出を阻害するカスパーゼ1阻害剤(ジアリールスルホニル尿素など);IL−15抗体(メポリズマブなど);IL−8抗体(ABX−IL−8など);IL−9抗体(IL−9モノクローナル抗体など);組換え型ヒトIL−21(494C10とも呼ばれる);TNF−α、IL−1β、IL−6および顆粒球単球コロニー刺激因子発現の阻害剤(オサバフウロ(Biophytum sensitivum)など);炎症性サイトカイン発現を阻害するNF−PBシグナル伝達遮断薬(シンバスタチンなど);ならびにIL−6発現およびNF−PB活性化阻害剤((−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)など)が挙げられる。
【0013】
他の薬剤としては、炎症性サイトカインおよび転移促進性サイトカイン(IL−6、IL−8、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子およびTNF−αなど)の細胞放出を阻害するヒト組換えラクトフェリンが挙げられる。樹状細胞に由来するIL−12およびIL−18の阻害剤(ラパマイシンおよびサングリフェリンなど)も、提供する方法における使用に適している。ラパマイシンは、T細胞mTORキナーゼの活性化を阻害する免疫抑制剤であり、サングリフェリンAはIL−2依存性T細胞増殖も阻害するシクロフィリン結合免疫抑制剤である。また、炎症性サイトカイン(IL−1β、IL−6、およびGM−CSなど)の誘導を抑制する食事性ルチンも、提供する方法における使用に適している。
【0014】
任意に、該方法はさらに、増殖性疾患に罹患しており、炎症性サイトカイン反応の阻害を必要としている対象を選択することを含む。例えば、かかる対象は、レオウイルス単独がほとんど奏効しないか、またはレオウイルス療法に対して累進的に耐性を獲得した対象を含み得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、増殖性疾患という用語は、細胞が正常組織の増殖よりも急速に増殖する任意の細胞疾患を指す。増殖性疾患としては、限定されないが、新生物(腫瘍とも呼ばれる)が挙げられる。新生物としては、限定されないが、膵臓癌、乳癌、脳癌(例えば、神経膠芽腫)、肺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、腎臓癌、副腎癌、肝臓癌、神経線維腫症I型、および白血病を挙げ得る。新生物は、固形新生物(例えば、肉腫もしくは癌腫)であり得るし、造血系に影響を与える癌性増殖(例えば、リンパ腫もしくは白血病)でもあり得る。他の増殖性疾患としては、限定されないが、神経線維腫症が挙げられる。
【0016】
一般的に、レオウイルスが治療に使用される増殖性疾患において、該疾患に関連した増殖性細胞の少なくとも一部に、Ras遺伝子(またはRasシグナル伝達経路因子)が直接的に(例えば、Ras突然変異の活性化により)または間接的に(例えば、Ras経路における上流因子または下流因子の活性化により)活性化した突然変異が存在し得る。Ras経路における上流因子の活性化としては、例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)またはSosによる形質転換が挙げられる。例えば、Wiessmuller and Wittinghofer, 1994, Cellular Signaling 6(3):247−267;およびBarbacid, 1987, Ann. Rev. Biochem. 56, 779−827を参照されたい。Ras経路における下流因子の活性化としては、例えば、B−Rafにおける突然変異が挙げられる。例えば、Brose et al., 2002, Cancer Res. 62:6997−7000を参照されたい。ras、ras上流因子、またはrasシグナル伝達経路因子の活性化に少なくとも部分的に起因する増殖性疾患は、本明細書において、ras媒介性増殖性疾患と呼ぶ。さらに、レオウイルスは、突然変異またはPKR制御不能により惹起される増殖性疾患を治療するのに有用である。例えば、Strong et al., 1998, EMBO J. 17:3351−62を参照されたい。
【0017】
任意に、提供する方法はさらにras媒介性増殖性疾患に罹患した対象を選択する工程を含む。任意に、提供する方法は、増殖性疾患がras媒介性増殖性疾患か否かを決定する工程を含む。増殖性疾患が、ある表現型を有するか否かを決定する方法は既知である。例えば、参照によりその全体が本明細書中で援用される米国特許第7,306,902号を参照されたい。
【0018】
本明細書で使用される場合、レオウイルスとは、天然型か、修飾型か、または組換え型かを問わず、レオウイルス属に分類される任意のウイルスを指す。レオウイルスは、二本鎖の分節されたRNAゲノムを有するウイルスである。該ビリオンは直径60〜80nmであり、2つの同心性のキャプシド殻を有し、それぞれの殻は正二十面体である。該ゲノムは、別個の10〜12分節の二本鎖RNAから構成され、総ゲノムサイズは16〜27kbpである。個々のRNA分節のサイズは様々である。互いに異なるが関連性のある3つの型のレオウイルスが、多くの種から回収されている。3つの型はすべて、共通の補体結合抗原を共有している。
【0019】
ヒトレオウイルスには3つの血清型、すなわち、1型(Lang株またはT1L)、2型(Jones株、T2J)、および3型(Dearing株またはAbney株、T3D)がある。この3つの血清型は、中和反応および血球凝集素阻害アッセイに基づいて容易に同定できる。本開示によるレオウイルスは、3型の哺乳動物オルソレオウイルスであり得る。3型の哺乳動物オルソレオウイルスとしては、限定されないが、Dearing株およびAbney株(それぞれ、T3DまたはT3A)が挙げられる。例えば、ATCC寄託番号VR−232およびVR−824を参照されたい。
【0020】
レオウイルスは、天然型でも修飾型でもよい。レオウイルスは、天然での供給源から単離され得、かつ実験室において人為的、意図的に修飾されていない場合に天然型である。例えば、レオウイルスは、現場の供給源、すなわち、レオウイルスに感染したヒトに由来し得る。レオウイルスは、増強された腫瘍崩解性活性を得るために選択してもよいし、変異を導入してもよい。
【0021】
レオウイルスは修飾され得るが、それでもなお、活性のあるras経路を有する哺乳動物細胞に溶解的に感染することが可能である。レオウイルスは、増殖性細胞への投与前に、化学的にまたは生化学的に(例えば、キモトリプシンまたはトリプシンなどのプロテアーゼ処理によって)前処理し得る。プロテアーゼ前処理により、ウイルスの外殻、すなわちキャプシドが除去され、ウイルスの感染性が増大し得る。レオウイルスは、リポソームまたはミセルで被覆し得る(Chandran and Nibert, J. of Virology 72(1):467−75 1998)。例えば、該ビリオンを、ミセルを形成させる濃度でのアルキルサルフェート洗浄剤の存在下でキモトリプシン処理して、新しい感染性のサブウイルス粒子(ISVP)を生成し得る。
【0022】
レオウイルスは、組換えレオウイルスであり得る。例えば、組換えレオウイルスは、2つ以上の遺伝的に異なるレオウイルスに由来したゲノム分節の再集合体レオウイルスであり得る。レオウイルスのゲノム分節の再集合は、宿主生物の、少なくとも2つの遺伝的に異なるレオウイルスによる感染後に生じ得る。ウイルスの再集合は、例えば、許容状態の宿主細胞に対する遺伝的に異なるレオウイルスによる共感染によって、細胞培養において生成できる。したがって、提供する方法は、2つ以上の遺伝的に異なるレオウイルス(限定されないが、1型(例えば、Lang株)、2型(例えば、Jones株)、および3型(例えば、Dearing株またはAbney株)などのヒトレオウイルス;非ヒト哺乳動物のレオウイルス;または鳥類のレオウイルスなど)に由来したゲノム分節の再集合から生じる組換えレオウイルスの使用を含む。組換えレオウイルスは、遺伝子工学、化学的合成、または化学的変異原もしくは物理的変異原による処理によっても作製できる。任意に、提供する方法は、2つ以上の遺伝的に異なるレオウイルスに由来したゲノム分節の再集合から生じる組換えレオウイルス(少なくとも1つの親ウイルスが遺伝子工学的に処理されているか、化学的に合成された1つもしくは複数のゲノム分節を含むか、化学的変異原もしくは物理的変異原で処理されているか、または組換え事象の結果物そのもの)の使用を含む。任意に、提供する方法は、化学的変異原(限定されないが、硫酸ジメチルおよびエチジウムブロマイドなど)、または物理的変異原(限定されないが、紫外線およびその他の形態の放射線など)の存在下で組換えられた組換えレオウイルスの使用を含む。
【0023】
任意に、提供する方法は、1つまたは複数のゲノム分節に突然変異(挿入、置換、欠失または重複など)を有するレオウイルスの使用を含む。かかる突然変異は、宿主細胞のゲノムとの組換えの結果としてさらなる遺伝情報を含んでもよいし、合成遺伝子を含んでもよい。例えば、本明細書に記載の突然変異体レオウイルスは、参照によりその全体が本明細書中で援用される米国特許出願第12/124,522号に記載されているようなσ3ポリペプチド発現を低減もしくは本質的に排除する、または機能性σ3ポリペプチドを欠失させる突然変異を含み得る。σ3ポリペプチド発現を排除するまたは機能性σ3ポリペプチドを欠失させる突然変異は、σ3ポリペプチドをコードする核酸(すなわち、S4遺伝子)中、またはσ3ポリペプチドの発現もしくは機能を制御するポリペプチドをコードする核酸中で存在し得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、σ3ポリペプチド発現を低減する突然変異とは、σ3ポリペプチド量を、野生型σ3ポリペプチド値を発現するレオウイルスと比較して少なくとも30%(例えば、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%)低下させる突然変異を指す。本明細書で使用される場合、σ3ポリペプチド発現を本質的に排除する突然変異とは、σ3ポリペプチド量を、野生型レオウイルスの産生するσ3ポリペプチド量に対して少なくとも95%(例えば、96%、97%、98%、99%、または100%)低下させる突然変異を指す。本明細書で使用される場合、機能性σ3ポリペプチドを低減するまたは欠失させる突然変異とは、σ3ポリペプチドの発現は可能にするが、σ3ポリペプチドが会合することまたはウイルスのキャプシド中に取り込まれることができないようにする突然変異を指す。突然変異体レオウイルスが繁殖能を保持するために、σ3ポリペプチドの他の機能性(例えば、RNAとの結合能)を保持することが望ましいまたは必要である場合があることが理解されるであろう。
【0025】
本明細書に記載のσ3ポリペプチドの突然変異によって、σ3ポリペプチドは、突然変異を有さないσ3ポリペプチド(例えば、野生型σ3ポリペプチド)に対して低値でキャプシド中に取り込まれることがある。また、本明細書に記載のσ3ポリペプチドの突然変異によって、σ3ポリペプチドはウイルスのキャプシド中に取り込まれなくなることもある。σ3ポリペプチドは、いずれの特定の機序にも限定されずに、機能低下または機能喪失を呈し得る(例えば、σ3ポリペプチドとmu1ポリペプチドが適切に結合できないため、またはσ3ポリペプチドのキャプシド中への取り込みを低減もしくは防止する立体配座変化のため)。
【0026】
σ3ポリペプチド発現を完全に排除もしくは低減する、またはσ3ポリペプチドの機能を喪失もしくは低下させる突然変異の他に、本明細書に記載の突然変異体レオウイルスは、他のレオウイルスキャプシドポリペプチドの1つ(例えば、mu1、λ2、および/またはσ1)において1つまたは複数の突然変異(例えば、2番目、3番目、または4番目の突然変異)をさらに含むこともできる。σ3ポリペプチドに影響を及ぼす突然変異を有するレオウイルス、および任意に、任意のまたはすべての他の外キャプシドタンパク質におけるさらなる突然変異は、かかる突然変異体レオウイルスの感染能および細胞溶解能についてスクリーニングできる。例えば、野生型レオウイルスによる溶解耐性の新生細胞を、本明細書に記載の効果的な突然変異体レオウイルスのスクリーニングのために使用できる。
【0027】
さらなる突然変異は、例えば、mu1ポリペプチド発現を低減もしくは本質的に排除し得るか、または機能性mu1ポリペプチドを欠失させ得る。M2遺伝子にコードされるmu1ポリペプチドは、細胞透過に関与する可能性が高く、転写酵素の活性化において役割を果たし得る。各ビリオンは、σ3ポリペプチドと1対1で複合体を形成して存在するmu1ポリペプチドの約600コピーを有する。mu1ポリペプチドは、そのN末端上でミリストイル化し、次いでミリストイル化したN末端42残基は切断され、C末端断片(mu1C)が生成される。さらに、または代わりに、さらなる突然変異はλ2ポリペプチド発現を低減もしくは本質的に排除でき、または機能性λ2ポリペプチドを欠失させ得、および/またはさらなる突然変異はσ1ポリペプチド発現を低減もしくは本質的に排除し得、または機能性σ1ポリペプチドを欠失させ得る。λ2ポリペプチドはL2遺伝子によりコードされ、粒子会合に関与し、グアニリルトランスフェラーゼおよびメチルトランスフェラーゼ活性を示す。σ1ポリペプチドはS1遺伝子によってコードされ、細胞結合に関与し、ウイルスの血球凝集素として働く。
【0028】
例えば、レオウイルスは、参照によりその全体が本明細書中で援用される米国特許出願第12/046,095号に記載されているような1つもしくは複数のアミノ酸修飾を有するλ3ポリペプチド;1つもしくは複数のアミノ酸修飾を有するσ3ポリペプチド;1つもしくは複数のアミノ酸修飾を有するmu1ポリペプチド;および/または1つもしくは複数のアミノ酸修飾を有するmu2ポリペプチドを有する。例として、λ3ポリペプチド中の1つもしくは複数のアミノ酸修飾は、GenBank寄託番号M24734.1に関連して番号付けされた残基214がVal、残基267がAla、残基557がThr、残基755がLys、残基756がMet、残基926がPro、残基963がPro、残基979がLeu、残基1045がArg、残基1071がVal、またはそれらの任意の組み合わせである。アミノ酸配列の残基214がValまたは残基1071がValである場合、該アミノ酸配列はさらにアミノ酸配列中に少なくとも1つの付加的変化を含むことに留意されたい。任意に、λ3ポリペプチドは、配列番号18に示される配列を含む。さらに例として、σ3ポリペプチドの1つもしくは複数のアミノ酸修飾は、GenBank寄託番号K02739に関連して番号付けされた残基14がLeu、残基198がLys、またはそれらの任意の組み合わせである。アミノ酸配列の残基14がLeuである場合、該アミノ酸配列はさらにアミノ酸配列中に少なくとも1つの付加的変化を含むことに留意されたい。任意に、σ3ポリペプチドは、配列番号14に示される配列を含む。さらに例として、mu1ポリペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸修飾は、GenBank寄託番号M20161.1に関連して番号付けされた残基73がAspである。任意に、mu1ポリペプチドは、配列番号16に示される配列を含む。また、例として、mu2ポリペプチド中のアミノ酸修飾は、GenBank寄託番号AF461684.1に関連して番号付けされた残基528がSerである。任意に、mu1ポリペプチドは配列番号15に示される配列を含む。1つまたは複数の修飾を有する本明細書に記載のレオウイルスは、さらにレオウイルスσ2ポリペプチドを含むことができる。かかるσ2ポリペプチドは、GenBank寄託番号NP_694684.1に関連して番号付けされた70、127、195、241、255、294、296、または340位の1つもしくは複数がCysである。任意に、σ2ポリペプチドは、配列番号12に示される配列を含む。
【0029】
任意に、レオウイルスは、参照によりその全体が本明細書中で援用される米国特許出願第12/046,095号に記載されているような1つもしくは複数の核酸修飾を有するL1ゲノム分節;1つもしくは複数の核酸修飾を有するS4ゲノム分節;1つもしくは複数の核酸修飾を有するM1ゲノム分節;および/または1つもしくは複数の核酸修飾を有するM2ゲノム分節を有する。例として、L1ゲノム分節中の1つもしくは複数の核酸修飾は、GenBank寄託番号M24734.1に関連して番号付けされた660位がT、817位がG、1687位がA、2283位がG、2284位〜2286位がATG、2794位がC、2905位がC、2953位がC、3153位がA、または3231位がGである。任意に、L1ゲノム分節は、配列番号8に示される配列を含む。さらに例として、S4ゲノム分節中の1つもしくは複数の核酸修飾は、GenBank寄託番号K02739に関連して番号付けされた74位がAおよび624位がAである。任意に、S4ゲノム分節は、配列番号4に示される配列を含む。さらに例として、M2ゲノム分節中の核酸修飾は、GenBank寄託番号M20161.1に関連して番号付けされた248位がCであり得る。一実施形態では、M2ゲノム分節は、配列番号6に示される配列を含む。また、例として、M1ゲノム分節中の核酸修飾は、GenBank寄託番号AF461684.1に関連して番号付けされた1595位がTである。任意に、M1ゲノム分節は、配列番号5に示される配列を含む。本明細書に記載のレオウイルスは、本明細書に開示の任意の修飾または修飾の組み合わせを含み得る。任意に、本明細書に記載のレオウイルスは、配列番号1〜10に示される配列を含むゲノム分節、または配列番号11、12、および16〜21、ならびに配列番号13もしくは14のいずれか一方または両方に示されるポリペプチドを含む。任意に、本明細書に開示のレオウイルスは、IDAC寄託番号190907−01として同定される。
【0030】
本明細書で言及した突然変異または修飾は、1つもしくは複数のヌクレオチドの置換、挿入または欠失であり得る。点突然変異としては、例えば、単一ヌクレオチドのトランジション(プリンからプリン、またはピリミジンからピリミジン)またはトランスバージョン(プリンからピリミジンまたはその逆)ならびに単ヌクレオチドもしくは複数ヌクレオチドの欠失もしくは挿入が挙げられる。核酸の突然変異は、コードされたポリペプチドにおいて1つもしくは複数、保存的もしくは非保存的にアミノ酸を置換し得、すなわち立体配座変化、または機能の喪失もしくは一部喪失、該位置からコードされたポリペプチドが完全に異なる翻訳の読み枠移動(フレームシフト)、切断されたポリペプチド(切断型)を生成する中途終止コドンを生じる場合もあるが、レオウイルス核酸の突然変異がコードされたポリペプチドを全く変化させない(サイレントまたはナンセンス)場合もある。保存的および非保存的アミノ酸置換の開示については、例えば、Johnson and Overington, 1993, J. Mol. Biol. 233:716−38; Henikoff and Henikoff, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915−19;および米国特許第4,554,101号を参照されたい。
【0031】
突然変異は、当該分野において既知の任意の数の方法を用いてレオウイルス核酸中に産生できる。例えば、部位特異的変異導入法を使用してレオウイルス核酸配列を修飾できる。部位特異的変異導入法の最も一般的な方法の1つは、オリゴヌクレオチド指定突然変異導入法である。オリゴヌクレオチド指定突然変異導入法では、配列中の所望の変化(1つまたは複数)をコードするオリゴヌクレオチドを関心あるDNAの一本鎖にアニーリングし、DNA合成開始のためのプライマーとして使用する。このようにして、配列が変化したオリゴヌクレオチドを新しく合成された鎖に組み込む。例えば、Kunkel, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488; Kunkel et al., 1987, Meth. Enzymol. 154:367; Lewis and Thompson, 1990, Nucl. Acids Res. 18:3439; Bohnsack, 1996, Meth. Mol. Biol. 57:1; Deng and Nickoloff, 1992, Anal. Biochem. 200:81;およびShimada, 1996, Meth. Mol. Biol. 57:157を参照されたい。タンパク質またはポリペプチド配列を修飾する他の方法は、当技術分野において日常的に使用されている。例えば、突然変異を有する核酸は、PCRもしくは化学的合成を用いて産生できるし、あるいはアミノ酸配列中に所望の変化を有するポリペプチドは化学的に合成できる。例えば、Bang and Kent, 2005, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:5014−9およびその中に引用されている参考文献を参照されたい。
【0032】
レオウイルス粒子由来の核酸は、標準的な市販されている核酸方法を用いて単離できる。例えば、Schiff et al., “Orthoreoviruses and Their Replication,” Ch 52, in Fields Virology, Knipe and Howley編, 2006, Lippincott Williams and Wilkinsも参照されたい。本明細書で使用される場合、単離された核酸とは、通常結合している他の核酸から分離された核酸を指す。したがって、単離された核酸としては、限定されないが、非レオウイルス性(例えば、宿主細胞の)核酸が本質的にないレオウイルス性核酸、または他のゲノム分節に対応する核酸が本質的にないレオウイルス性ゲノム分節が挙げられる。さらに、単離された核酸は、加工された核酸(組換え核酸または合成核酸など)を含み得る。
【0033】
本明細書に記載の突然変異体レオウイルスは、当該分野において既知の方法を用いて、少なくとも突然変異または修飾を有するゲノム分節を再構成することによって産生できる。例えば、Schiff et al., “Orthoreoviruses and Their Replication,” Ch 52, in Fields Virology, Knipe and Howley編, 2006, Lippincott Williams and Wilkins; Smith et al., 1969, Virology 39(4):791−810;および米国特許第7,186,542号;同第7,049,127号;同第6,808,916号;および同第6,528,305号を参照されたい。突然変異体レオウイルスは、ISVPを産生するためにプラスミドに基づく逆遺伝学を用いてレオウイルスゲノム分節を発現させることによっても産生できる。例えば、Kobayashi et al., 2007, Cell Host and Microbe 1:147−57を参照されたい。本明細書で使用される場合、遺伝子組換えもしくは突然変異体ISVPとは、突然変異体レオウイルスであり、少なくともσ3ポリペプチドに影響を与える遺伝子組換え突然変異または自然発生した突然変異を保因するレオウイルスから生じたISVPを指す。本明細書に記載のISVPとは安定しており、複数(例えば、1を超える、例えば、2、3、4、5、10、20、50、またはそれを超える)継代のISVPとして繁殖できる。
【0034】
本明細書に記載の突然変異体レオウイルスは、遺伝子組換えISVPを介して、またはプラスミドに基づく逆遺伝学を介して産生され、例えば、ヒト新生細胞もしくはL929マウス線維芽細胞中で培養できる。本明細書に開示の突然変異体レオウイルスは、σ3ポリペプチド欠失レオウイルス株のみに許容状態の細胞中で培養できる。本明細書に記載の突然変異体レオウイルスを継代させるかかる細胞系を用いることによって、突然変異体の選択が可能となり、突然変異(1つもしくは複数)復活の低減もしくは防止のためにも使用できる。
【0035】
本明細書に記載の突然変異体レオウイルスは、任意に、非突然変異体レオウイルス(例えば、対照レオウイルス)と比較して増大した感染性および/または低減した免疫原性を示し、かつ、かかる特徴に基づき選択され得る。増大した感染性は、機能性σ3ポリペプチド発現レオウイルス(例えば、無傷のビリオン;例えば、野生型レオウイルス)に比べて、新生細胞内での増大および/または突然変異体レオウイルス感染細胞数の増加によって示され得る。突然変異体レオウイルスの低減した免疫原性は、かかる突然変異体レオウイルスの対象における有意な免疫反応の誘発不能によって示され得る。本明細書に記載の突然変異体レオウイルスは、限定されないが、速い複製速度;速い収容速度;アポトーシス誘導能;ヒト新生細胞株の溶解への影響能および効果的な殺傷能;効果的な腫瘍エピトープ放出能;標準的な化学療法との相互作用;ならびに増加したウイルス子孫数などを含む他の望ましい特徴のためにスクリーニングおよび選択もできる。さらに、突然変異体レオウイルスは、新生細胞(例えば、活性のあるras経路を有する哺乳動物細胞)への溶解的感染能のために選択できる。例えば、米国特許第7,052,832号を参照されたい。
【0036】
レオウイルスは、任意に、レオウイルスに対する免疫反応を低減または排除すべく修飾されたレオウイルスである。かかる修飾レオウイルスは、本明細書において、免疫保護されたレオウイルスと呼ぶ。かかる修飾としては、限定されないが、免疫系からレオウイルスを隠すために、リポソーム、ミセル、または他のビヒクルにレオウイルスを収容することが挙げられる。あるいは、レオウイルスのビリオン粒子の外キャプシドは除去し得る。なぜならば、該外キャプシドに存在するタンパク質は宿主の体液性および細胞性反応の主要な決定因子だからである。
【0037】
レオウイルスは標準的な方法を用いて精製できる。例えば、Schiff et al., “Orthoreoviruses and Their Replication,” Ch 52, in Fields Virology, Knipe and Howley編, 2006, Lippincott Williams and Wilkins; Smith et al., 1969, Virology 39(4):791−810;ならびに米国特許第7,186,542号;同第7,049,127号;同第6,808,916号;および同第6,528,305号を参照されたい。本明細書で使用される場合、精製された突然変異体レオウイルスとは、天然で付随している細胞成分から分離されたレオウイルスを指す。典型的に、レオウイルスは、天然で結合しているタンパク質およびその他の細胞成分から乾燥重量で少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%)離れている場合に精製されたとみなされる。
【0038】
本明細書で提供するレオウイルスおよび薬剤は、製薬上許容可能な担体内でインビトロまたはインビボ投与できる。したがって、本明細書に記載のレオウイルスおよび/または炎症性サイトカインを阻害する薬剤を含む医薬組成物を提供する。レオウイルスについては、例えば、米国特許第6,576,234号を参照されたい。さらに1つまたは複数のレオウイルスおよび/または炎症性サイトカインを阻害する薬剤の他、医薬組成物は、典型的に、製薬上許容可能な担体を含む。製薬上許容可能な担体は、レオウイルスのビヒクル、担体もしくは媒体として作用できる固体、半固体、もしくは液体材料であり得る。したがって、レオウイルスおよび/または提供する薬剤を含有する組成物は、錠剤、丸剤、散剤、トローチ剤、サシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳剤、液剤、シロップ剤、エアゾール剤(固体もしくは液体媒体として)、軟膏であって例えば、最大10重量%の活性化合物を含有するもの、軟質および硬質ゼラチンカプセル剤、坐薬、無菌注射溶液、ならびに無菌包装散剤の形態であり得る。
【0039】
任意に、レオウイルス含有組成物は、注入用に適している。静脈内注入用としては、一般的に使用される2種類の流体、すなわち晶質液および膠質液がある。晶質液はミネラル塩または他の水溶性分子の水溶液である。膠質液は、不溶性の高分子(ゼラチンなど)を含み、血液はそれ自体がコロイドである。最も一般的に使用されるクリスタロイド液体は、正常生理食塩水、すなわち0.9%濃度の塩化ナトリウム溶液であり、これは血中濃度に近い(等張)。乳酸リンゲル液または酢酸リンゲル液は、大量液体置換にしばしば使用される別の等張溶液である。5%デキストロース水溶液(D5Wと呼ばれることもある)は、患者が低血糖または高ナトリウムリスクを有する場合にしばしば代替的に使用される。
【0040】
適切な担体の幾つかの例としては、リン酸緩衝生理食塩水もしくは別の生理上許容可能な緩衝剤、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、ならびにメチルセルロースが挙げられる。医薬組成物としては、限定されないが、さらに、滑沢剤(タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油など);湿潤剤;乳化剤および懸濁剤;防腐剤(安息香酸メチルおよび安息香酸プロピルヒドロキシなど);甘味剤;ならびに香味剤を挙げ得る。医薬組成物は、当該分野において既知の手順を用いることによって、投与後に、突然変異体レオウイルスを急速に、持続放出もしくは遅延放出させるように製剤化できる。下記の代表的な製剤の他に、医薬組成物において使用するために適切な他の製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (21th ed.) (編)David B. Troy, Lippincott Williams & Wilkins, 2005に見出すことができる。固体組成物(錠剤など)の調製において、突然変異体レオウイルスを製薬的担体と混合して固体組成物を形成できる。任意に、錠剤または丸剤は、長期作用という利点のある投与形態が得られるように被覆または調合できる。例えば、錠剤または丸剤は、内部投与成分および外部投与成分を含有でき、後者は前者を包むエンベロープの形態で存在する。該2成分は胃内分解に耐え、内部成分がそのまま十二指腸に入ること、またはその遅延放出を可能にするように働く腸溶層によって分離できる。かかる腸溶層または被覆には種々の材料を用いることができ、かかる材料としては、幾つかのポリマー酸、ならびにポリマー酸と材料(セラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースなど)との混合物が挙げられる。
【0041】
レオウイルスおよび/または他剤を含む経口投与用または注射用の液体製剤としては、一般的に、水溶液、適切に香味付けされたシロップ、水性懸濁液もしくは油性懸濁液、ならびに食用油(トウモロコシ油、綿実油、胡麻油、椰子油、または落花生油など)を含む香味乳剤、ならびにエリキシル剤および同様の医薬的ビヒクルが挙げられる。
【0042】
吸入用または吹送用組成物としては、製薬上許容可能な水性溶媒もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物の溶液および懸濁液、ならびに粉末が挙げられる。これらの液体組成物または固体組成物は、本明細書に記載の適切な、製薬上許容可能な賦形剤を含み得る。かかる組成物は、局所効果または全身効果のために、経口または鼻呼吸の経路によって投与できる。製薬上許容可能な溶媒における組成物は、不活性ガスの使用により霧状にさせ得る。霧状になった溶液は、噴霧装置から直接吸入してもよいし、噴霧装置をフェイスマスクのテントまたは間欠的陽圧呼吸機に取り付けてもよい。溶液、懸濁液、または粉末の組成物は、製剤を適切な様態で送達する装置から、経口的にまたは経鼻的に投与し得る。
【0043】
本開示の方法において任意に使用される別の製剤としては、経皮送達装置(例えば、パッチ)が挙げられる。かかる経皮的パッチを用いて、本明細書に記載の突然変異体レオウイルスの持続的な、もしくは断続的な注入を提供し得る。医薬品送達のための経皮的なパッチの構造および使用は、当該分野において周知である。例えば、米国特許第5,023,252号を参照されたい。かかるパッチは、突然変異体レオウイルスの持続的、拍動的、または要求に応じた送達のために構築できる。
【0044】
上述のとおり、レオウイルスおよび/または他剤は、必要に応じて、リポソームまたはミセルで被覆し、レオウイルスに対する免疫性を発達させた哺乳動物における免疫反応を低減または防止する。かかる組成物は、免疫保護されたレオウイルスおよび/または薬剤と呼ばれる。例えば、米国特許第6,565,831号および同7,014,847号を参照されたい。さらに、本明細書に開示の突然変異体レオウイルス(例えば、σ3ポリペプチドが欠失もしくは不足、またはσ3ポリペプチドの機能が喪失もしくは一部喪失しているもの)は、タンパク質分解的に酵素処理して、存在する他の任意の外キャプシドタンパク質を除去または部分的に除去できる。
【0045】
提供する方法において、レオウイルスは、最終的には標的腫瘍または腫瘍細胞に接触することが可能であるように、例えば、全身投与される。レオウイルスの投与経路、ならびに製剤、担体またはビヒクルは、標的細胞の位置および種類に応じて変わる。多種多様の投与経路を使用できる。例えば、接近しやすい固形腫瘍の場合、レオウイルスは直接腫瘍内に注射して投与できる。造血系腫瘍の場合、例えば、レオウイルスは静脈内または血管内に投与できる。体内で容易に接近できない腫瘍(転移癌など)の場合、レオウイルスは、哺乳動物体内を全身的に輸送されて腫瘍に到達するように(例えば、静脈内または筋肉内に)投与される。あるいは、レオウイルスは、単一の固形腫瘍に対して直接投与でき、その場合は、投与後に全身的に体内を通って転移癌まで運ばれる。レオウイルスは、皮下に、腹腔内に、髄腔内に(例えば、脳腫瘍に対して)、局所的に(例えば、メラノーマに対して)、経口的に(例えば、口腔癌または食道癌に対して)、直腸内に(例えば、結腸直腸癌に対して)、経膣的に(例えば、子宮頸癌または膣癌に対して)、吸入スプレーによってまたはエアゾール製剤によって経鼻的に(例えば、肺癌に対して)投与することもできる。
【0046】
任意に、ウイルスは、一定期間、連日、少なくとも1日1回または1日中、対象に持続投与される。したがって、ウイルスは、例えば、任意の製薬上許容可能な溶液中で静脈内投与によって、または注入によって、一定期間、対象に投与される。例えば、該物質は、連日少なくとも1日1回の注射(例えば、IMまたは皮下)または経口投与によって全身投与してもよいし、対象の組織または血流内へ連日送達される形で注入してもよい。ウイルスが一定期間注入される場合、該期間は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、もしくは24時間、または1時間以上24時間以下の任意の時間、または24時間よりも長い時間である。任意に、該期間は5、15、30、60、90、120、150もしくは180分間、または5分間以上180分間以下の任意の時間、または180分よりも長い時間である。したがって、例えば、ウイルスは、60分間または約60分間注入される。投与は、連日2、3、4、5、6、7、8、9、10、14、21、28日間、または2日間以上28日間以下の任意の日数、または28日間よりも長い日数反復できる。
【0047】
提供する方法の治療薬(炎症性サイトカイン産生を阻害する薬剤など)は、多種多様の投与経路によっても投与される。したがって、該薬剤は、任意の幾つもの投与経路(局所的、経口的、非経口的、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、体腔内、経皮的、肝臓内、脳内、噴霧/吸入、または気管支鏡を介した気管内注入など)によって投与される。任意に、治療薬は、腫瘍崩解性ウイルスに関して上に説明した様態において持続投与される。したがって、例えば、薬剤は、例えば、任意の薬理学上許容可能な溶液中で静脈内投与によって、または注入として一定期間、対象に投与される。任意に、薬剤は腫瘍部位またはその近傍に局所投与される。あるいは、薬剤は全身投与される。炎症性サイトカインを阻害する薬剤は、1つまたは複数の炎症性サイトカインを阻害するために十分な量(すなわち、有効量)で投与される。例として、白金化合物の有効量としては、腫瘍体積の約5〜1000mg/m、または5mg/m以上1000mg/m以下の任意の量、または1000mg/mを超える量が挙げられる。したがって、例えばシスプラチン有効量としては約175〜200mg/m、カルボプラチン有効量としては約100〜600mg/mが挙げられる。他剤の有効量範囲は、0.001〜10,000mg/kg体重または0.001mg/kg体重以上10,000mg/kg体重以下の任意の量である。任意に、白金化合物の有効量としては、カルバート式によって算出された約2〜7mg/mL×分(AUC)が挙げられる。任意に、白金化合物の有効量としては、カルバート式によって算出された約5または6mg/mL×分(AUC)が挙げられる。任意に、白金化合物は30分かけて静脈内注入により投与される。
【0048】
レオウイルスは、増殖性疾患を治療するために十分な量(例えば、有効量)で投与される。増殖性細胞へのレオウイルス投与が患部細胞の溶解(例えば、腫瘍崩解)に影響を及ぼす際に増殖性疾患は治療され、異常に増殖する細胞の数を低減し、新生物サイズを縮小させ、および/または増殖性疾患の関連症状(例えば、疼痛)を低減または排除する。本明細書で使用される場合、腫瘍崩解という用語は、増殖性細胞の少なくとも10%が溶解している(例えば、該細胞の少なくとも約20%、30%、40%、50%、または75%が溶解している)ことを意味する。溶解率は、例えば、新生物サイズの縮小または哺乳動物における増殖性細胞の低減数を測定することによって、またはインビトロで(例えば、増殖性細胞の生検由来)細胞の溶解量を測定することによって決定できる。ウイルスの有効量は、個別基準で決定され、少なくとも部分的には、使用される特定ウイルス;個体のサイズ、年齢、性別;ならびに異常に増殖する細胞のサイズその他の特徴に基づき得る。例えば、ヒト治療において、存在する増殖性細胞または新生物の種類、サイズおよび数に応じて、ウイルスのプラーク形成単位(PFU)約10〜1012が使用される。有効量は、例えば、約1.0PFU/kg体重〜約1015PFU/kg体重(例えば、約10PFU/kg体重〜約1013PFU/kg体重)であり得る。任意に、有効量は、約1×10〜約1×1012TCID50である。任意に、有効量は約1×1010TCID50である。
【0049】
例として、炎症性サイトカインを阻害する薬剤(カルボプラチンなど)は5〜6mg/mL×分(カルバート式により算出したAUC)で前記対象に投与され、レオウイルスは1×1010TCID50〜3×1010TCID50で前記対象に投与される。任意に、炎症性サイトカインを阻害する薬剤は30分〜1時間静脈内注入される。任意に、レオウイルスは1時間静脈内注入される。
【0050】
ウイルスおよび治療薬ならびにウイルスおよび薬剤を含む組成物の最適投与量は、種々の要素に応じて変わる。必要な正確な量は、対象ごとに異なり、対象の種、年齢、体重および全身状態、治療される疾病の重症度、使用される特定のウイルスもしくはベクター、およびその投与方法に応じて変わる。したがって、各組成物の正確な量を具体的に述べることは不可能である。しかしながら、適切な量は、本明細書で提供する指針による日常的な実験のみを用いて、当業者が決定できる。
【0051】
組成物を投与するための有効な投与量およびスケジュールは、実験的に決定し得る。例えば、種々の増殖性疾患動物モデルは、The Jackson Laboratory, 600 Main Street, Bar Harbor, Maine 04609 USAから入手できる。直接的(例えば、腫瘍組織学)および機能的な測定(例えば、対象の生存率または腫瘍サイズ)の両方を用いて、療法に対する反応をモニタリングできる。これらの方法は、実験に必要な動物数を増大させる、集団評価のための代表的な動物の屠殺を含む。腫瘍におけるルシフェラーゼ活性測定は、動物を屠殺せずに腫瘍体積を評価し、療法の縦断的集団ベース解析が可能な代替的方法を提供する。
【0052】
組成物の投与のための投与量範囲は、疾病症状に対して所望の効果をもたらすのに十分な高用量である。投与量は、有害な副作用(望ましくない交差反応およびアナフィラキシー反応など)を惹起するほど高すぎるべきではない。投与量は、任意のカウンター指標によって、個々の医師が調整できる。
【0053】
投与量は様々であり、1日間または数日間、連日、単回または複数回投与される。提供するウイルスおよび治療薬は、単回または複数回(例えば、2回、3回、4回、6回、または7回以上)投与される。例えば、注入投与の場合、注入は単回の持続投与とすることもできるし、複数回注入によって送達することもできる。治療は、数日間から数ヶ月間、または疾病の軽減がなし遂げられるまで継続し得る。
【0054】
提供するウイルスと治療薬の併用は、配合して(例えば、混和剤として)、別々だが同時に(例えば、同一対象内への別々の静脈ラインを介して)、または逐次的に(例えば、化合物または薬剤の1つをまず投与し、次に2つ目を投与して)投与される。したがって、併用という用語は、2種以上の薬剤の併用投与、同時投与、または逐次投与を指すために使用される。例として、炎症性サイトカインを阻害する薬剤は、腫瘍崩解性ウイルスの前または腫瘍崩解性ウイルスと同時に投与される。1つの化合物が別の化合物の前に投与される際、最初の化合物は、2番目の化合物を投与する数分、数時間、数日、または数週間前に投与される。例えば、最初の化合物は、2番目の化合物を投与する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、24、36、48、60、または72時間、または1時間以上72時間以下の任意の時間前に投与できる。任意に、最初の化合物は、2番目の化合物の72時間より前に投与される。別の例として、最初の化合物は、2番目の化合物を投与する1、5、15、30、60、90、または120分前、または1分以上120分以下の任意の時間前に投与できる。任意に、最初の化合物は、2番目の化合物を投与する1、2、3、4、5、6、7、14、21、または28日、または1日以上28日以下の任意の日数前に投与される。任意に、最初の化合物は、2番目の化合物の28日間より前に投与される。例えば、炎症性サイトカインを阻害する薬剤は、腫瘍崩解性ウイルスを投与する約1〜8時間前に投与される。別の例として、炎症性サイトカインを阻害する薬剤は、腫瘍崩解性ウイルスを投与する約1時間前に投与される。
【0055】
例として、1治療サイクルは、1日目に、炎症性サイトカインを阻害する薬剤および腫瘍崩解性ウイルスを投与することを含む。2、3、4および5日目は、腫瘍崩解性ウイルスのみを対象に投与する。任意に、該対象は、複数サイクルの治療、例えば、2、3、4、5または6サイクル以上の治療を受ける。
【0056】
レオウイルスまたはレオウイルスを含有する医薬組成物は、任意にキットに包装される。該キットは、1つもしくは複数の薬剤またはかかる炎症性サイトカインを阻害する薬剤を含有する医薬組成物も含む。キットは、任意に、1つもしくは複数の化学療法剤、1つもしくは複数の免疫抑制剤、および/または1つもしくは複数の抗レオウイルスに拮抗する抗体も含むものと意図する。医薬組成物は、投与量単位形態で製剤化できる。用語「投与量単位形態」とは、ヒト対象およびその他の哺乳動物に対する一単位投与量として適した物理的に不連続な単位であって、各単位が、適切な製薬上許容可能な担体と関連して、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の突然変異体レオウイルスを含む、物理的に不連続な単位を指す。
【0057】
提供する方法は、他の腫瘍療法(化学療法、放射線療法、外科手術、ホルモン療法および/または免疫療法など)と併用し得るものと意図する。したがって、腫瘍崩解性ウイルスは、外科手術、すなわち新生物の除去と併用して投与し得る。したがって、本明細書で提供するのは、新生物の外科的な除去ならびに新生物部位もしくはその近傍での腫瘍崩解性ウイルスの投与を含む、固形新生物の治療方法である。
【0058】
さらに、提供する方法における組成物は、任意に、既知の抗癌化合物または化学療法剤と併用してまたは追加して投与されるものと意図する。化学療法剤は、腫瘍の増殖を阻害し得る化合物である。かかる薬剤としては、限定されないが、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、メトトレキサート、ヒドロキシウレア、シクロフォスファミド、ダカルバジン、ミトキサントロン、アントラサイクリン(エピルビシンおよびドキソルビシン)、受容体に対する抗体(ハーセプチン、エトポシド、プレグナソームなど)、ホルモン療法(タモキシフェンおよび抗エストロゲン薬、インターフェロン、アロマターゼ阻害剤、プロゲステロン剤、ならびにLHRH類似体など)が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用される場合、治療(treatment)、治療する(treat)、治療(treating)または改善するという用語は、疾病もしくは病態の作用、または疾病もしくは病態の症状を低減する方法を指す。したがって開示された方法において、治療とは、確立されている疾病もしくは病態の重症度または疾病もしくは病態の症状を10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%低減もしくは改善することを指し得る。例えば、癌を治療する方法は、対照と比較して、対象の疾病の1つまたは複数の症状が10%低減する場合、治療であるとみなされる。したがって低減とは、元々の値または対照値と比較して10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%または10〜100%の間の任意の割合の低減であり得る。治療とは、疾病、病態または疾病もしくは病態の症状の治癒もしくは完全な除去を必ずしも指さないものと理解される。
【0060】
本明細書で使用される場合、低減(decreasing)、低減(reducing)、または阻害とは、対照値からの10、20、30、40、50、60、70、80、90%またはそれを超える変化を含む。かかる用語は、完全な排除を含み得るが必須ではない。
【0061】
本明細書で使用される場合、対象という用語は、脊椎動物であり得、より具体的には哺乳動物(例えば、ヒト、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、非ヒト霊長類、ウシ、ネコ、モルモットまたは齧歯類)、魚類、鳥類または爬虫類もしくは両生類であり得る。該用語は、特定の年齢または性別を示さない。したがって、成体および新生児の対象が、雌雄を問わず、包含されるものと意図する。本明細書で使用される場合、患者(患畜)または対象とは同義的に使用し得、疾病または疾患を呈する対象を指し得る。患者(患畜)または対象という用語は、ヒトおよび脊椎動物の対象を含む。
【0062】
本明細書には、使用できる、併用使用できる、調製するために使用できる材料、組成物、および成分、または開示された方法および組成物の生産物が開示されている。これらおよびその他の材料は本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、一部の組み合わせ、相互作用、群などが開示されている場合、これらの化合物のそれぞれ、様々な個々の組み合わせおよび集合的な組み合わせならびに置換の特定基準が明白に開示されていない場合があるが、それぞれは本明細書において具体的に意図され、述べられているものと理解される。例えば、阻害剤が開示かつ論述され、該阻害剤を含む幾つかの分子に対して幾つかの修飾を行い得ることが論述されている場合、別段の指定がない限り、該阻害剤のそれぞれの組み合わせおよび置換、ならびに可能な修飾が具体的に意図されている。同様に、これらの一部の組み合わせまたは組み合わせのいずれも具体的に意図され、開示されている。本概念は、本開示のすべての態様(限定されないが、開示された組成物を用いた方法における工程を含む)に適用される。したがって、追加できる種々の工程がある場合、各追加工程は、開示された方法における任意の特定の工程もしくは工程の組み合わせとともに実施できることが理解され、かかるそれぞれの組み合わせもしくは組み合わせの一部が具体的に意図され、かつ開示されているものとみなすべきである。
【0063】
本願全体を通じて、様々な刊行物が参照されている。これらの刊行物の開示は、参照によりそれらの全体が本願中で援用される。
【0064】
幾つかの態様について記載しているが、それでもなお、様々な修正を行い得ることが理解されるであろう。さらに、1つの特徴または工程が記載されている場合、併用に関してたとえ明白に述べられていないとしても、本明細書の任意の他の特徴または工程と併用できる。したがって、他の態様は特許請求の範囲内である。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
マウスメラノーマモデルにおけるレオウイルスおよびシスプラチンの抗腫瘍活性。
【0066】
レオウイルス3型のDearing(RV)は、幾多のインビトロ系、インビボマウスモデルおよび早期臨床試験において腫瘍崩解性活性を示している。これらの試験に加えて、広範囲に及ぶ癌においてDNA架橋を惹起する活性ある化学療法薬の擬似アルキル化剤であるシスプラチン(CP)と併用したRVのインビトロおよびインビボ腫瘍崩解性活性を検討した。RVとCPの効果において、相乗的な腫瘍殺傷および腫瘍死機序をインビトロで評価した。B16.F10細胞において、相乗作用(併用指標値(CIV)1未満)がRVとCPの間で観察された(CIV:ED50、0.42±0.03;ED75、0.30±0.02;ED90、0.24±0.01)。フローサイトメトリー解析により、併用曝露後に、単剤曝露に比しアポトーシス細胞の顕著な増加が示された。
【0067】
インビボ評価において、C57Bl/6マウスのB16.F10皮下腫瘍またはC3HマウスのK1735腫瘍を、腫瘍内(i.t.)RVおよび腹腔内(i.p.)CPの単独または併用のいずれかで処理した。腫瘍体積は週3回測定した。処理後、ウイルスの採取および組織学的検査のために腫瘍および臓器を採取した。血清試料中のサイトカイン産生、抗レオウイルス中和抗体(NARA)誘導について検査した。図1A、1B、1Cおよび1Dは、レオウイルス/シスプラチン併用療法後に低減した腫瘍増殖および上昇した生存率を示す。皮下のB16.F10およびK1735腫瘍を有するC57Bl/6(図1Aおよび1C)およびC3H(図1Bおよび1D)マウスのそれぞれを、1日目および4日目、レオウイルス単独i.t.(四角)、シスプラチン単独i.p.(三角)、またはレオウイルスとシスプラチンの併用(丸)のいずれかで処理した。対照処理マウス(菱形)にはPBSを投与した。腫瘍は所定日に測定し、腫瘍体積を処理開始時の体積と比較した相対的腫瘍体積として表した(図1Aおよび1B)。腫瘍が任意の一次元で15mmを超えた場合、マウスを屠殺した。生存率はカプランマイヤープロットとして表す(図1Cおよび1D)。これらのデータは、低減した腫瘍増殖を示し、RV/CP併用療法で処理したマウスにおいて、単剤処理に比し延長した中央値生存期間が観察された(図1A、1B、1Cおよび1D)。12日目の平均相対的腫瘍体積±SDは、対照:すべてエンドポイントに到達、RV単独:8.92±6.94、CP単独:9.87±2.80、RV+CP:3.86±2.24であった。中央値生存期間(日数)は、対照:6、RV:12、CP:8、RVとCPの併用:17であった。生ウイルスは、RV単独処理動物の全腫瘍ならびにマウス1/6匹の肝臓および心臓から回収された。一方、併用処理マウスからは生ウイルスは腫瘍の50%のみだがマウス4/6匹の肝臓中で検出された。CPはRVに対する抗レオウイルス中和抗体(NARA)反応に影響を及ぼさなかったが(図2)、併用使用時、RVに対する炎症性サイトカイン産生を顕著に減弱化した(図3A、3B、3C、3D、3E、3F、および3G)。
【0068】
まとめると、これらの結果は、化学療法剤の追加によって、RV療法の抗腫瘍効果を有意に増強できることを示す。さらに、併用化学療法による、重要臓器におけるウイルスの炎症性反応の低減は、より集中的な投与スケジュールによってレオウイルスの全体的効果を増強させることを可能とし得る。
【0069】
(実施例2)
ヒトにおけるレオウイルスとカルボプラチンのプロトコール。
【0070】
これは、3週間毎のカルボプラチンと併用したレオウイルス静脈内投与の試験設計である。
【0071】
カルボプラチンは、カルバート式により算出した用量(AUC 5mg/mL×分もしくは6mg/mL×分、および51Cr−EDTA法により測定したGFR)で30分間静脈内注入する。次いでレオウイルスを1×1010または3×1010TCID50用量で1時間静脈内注入する。
【0072】
2〜5日目、レオウイルスのみ1日目と同じ用量および方法を用いて投与する。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の増殖性疾患を治療する方法であり、該工程が、
(a)1つもしくは複数のレオウイルスを対象に投与すること;および
(b)炎症性サイトカインの発現もしくは活性を阻害する1つもしくは複数の薬剤を対象に投与すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記腫瘍崩解性ウイルスは約10〜1012プラーク形成単位(PFU)で前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腫瘍崩解性ウイルスは約10〜1012プラーク形成単位(PFU)で前記対象に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記腫瘍崩解性ウイルスは約10〜1012TCID50で前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
炎症性サイトカインを阻害する薬剤は約5〜1000mg/mで前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
炎症性サイトカインを阻害する薬剤は約0.001〜10,000mg/kg体重で前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
炎症性サイトカインを阻害する薬剤は2〜7mg/mL×分(AUC)で前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤は炎症性サイトカインを阻害するが、抗レオウイルス中和抗体(NARA)の産生は阻害しない、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤は白金化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記白金化合物はシスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記シスプラチンは約175〜200mg/mで前記対象に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カルボプラチンは約200〜600mg/mで前記対象に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記カルボプラチンは5または6mg/mL×分(AUC)で前記対象に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記レオウイルスは哺乳動物のレオウイルスまたはヒトレオウイルスである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒトレオウイルスは血清型1のレオウイルス、血清型2のレオウイルスおよび血清型3のレオウイルスからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒトレオウイルスは血清型3のレオウイルスである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒトレオウイルスはIDAC寄託番号190907−01として同定される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
炎症性サイトカインを阻害する前記薬剤は前記レオウイルス投与と同時に、投与前に、または投与後に投与される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
炎症性サイトカインを阻害する前記薬剤は前記レオウイルスと同時に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
炎症性サイトカインを阻害する前記薬剤は前記レオウイルスの前に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤は前記腫瘍崩解性ウイルスの1〜12時間前に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤は前記腫瘍崩解性ウイルスの1〜60分前に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記レオウイルスは複数回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
炎症性サイトカインを阻害する前記薬剤は単回投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
炎症性サイトカインを阻害する前記薬剤は複数回投与される、請求項23に記載の方法。

【図1C】
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【図1D】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【公表番号】特表2011−520994(P2011−520994A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510788(P2011−510788)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000721
【国際公開番号】WO2009/143611
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(501332264)オンコリティクス バイオテク,インコーポレーテッド (16)
【Fターム(参考)】