説明

腫瘍性組織等の生物組織を局部的に熱剥離するための装置

切り離すべき病変組織又は腫瘍組織に設けられた端部チップを有するプローブ又はニードルと、電磁照射エネルギーのエネルギー源の活性化/非活性化を制御する手段と、前記病変組織に作用する熱作用を分配する手段と、を備え、前記プローブ又はニードルが細いワイヤ状の少なくとも一つの光ガイドを支持し、その一端は加熱用電磁放射エネルギーを放射し、他端は前記電磁放射エネルギーを生成するエネルギー源と接続し、一定量の流体を処置すべき領域の異なるゾーンに沿って運搬及び/又は分配することによって、及び/又は前記流体を処置すべき異なるゾーン又は全体領域の内側に含むことによって、又は処置すべき領域の外側に運搬又は含むことによって、流体から組織への熱移動を制御する手段をさらに備えたことを特徴とする、病変組織、特に腫瘍組織等の局部的な熱剥離のための装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍性組織等の生物組織を局部的に熱剥離するための装置に関し、この装置は、取り除くべき病変組織又は腫瘍性組織領域の末端と共に位置付けられるためのプローブまたはニードルであって、一端がプローブ又はニードルの末端と一致して発光し放熱しレーザー光のような電磁エネルギーを照射し、他端が前記電磁エネルギーを生成する発生源と接続される、少なくとも細い針金又は糸状の細長いライトガイドを支持するプローブ又はニードルと、前記電磁エネルギーを生成する発生源の活性化と非活性化とを制御する手段と、所定のサイズの体積内に存在する発光チップから放射される電磁エネルギーによる発熱作用を、前記病変組織領域に分配する手段であって、蓄熱及び/又は熱搬送する液体又は固体又はこれらの混合物で構成された手段と、を備える。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は既知であり、医療分野で特に腫瘍組織を剥離するための装置として用いられている。この種の装置の大きな特長は、剥離行為が体内に与える影響が小さく、患者がベッドにいる期間が非常に短いことである。
【0003】
文献US-A-2002177846には、蒸気を用いた組織の熱剥離を実行するシステムが開示されている。蒸気は身体の外で生成され、挿管によって、身体の内側の処置すべき組織領域に供給される。カニューレによって、処置すべき組織の場所で蒸気を生成することも可能である。温度を測定する手段も提供される。熱は蒸気によって直接処置すべき組織に伝わるか、又は処置すべき組織の部位で液体を熱することで間接的に伝わる。このように、両方のケースで、流体を供給する必要があり、身体の外側で蒸気を生成するか、又は身体の内側で処置すべき組織を加熱する。
【0004】
文献US-A-5 944 713には、病変組織、特に空洞器官の熱剥離システムが開示されている。このシステムは、電磁エネルギーを放射する光ファイバーがカニューレの内側に用いられている。このエネルギーは、電磁エネルギーで生成される熱の処置すべき組織への伝達手段として用いられる流体を加熱するために用いられる。
【0005】
文献EP-A-0 292 622には、熱剥離を考慮した医療用の特殊な針が開示されている。この針は、内側にレーザー発光体を備えている。その発光チップの近傍には、二酸化マンガンが供給されている。電磁エネルギーは、処置すべき組織に直接熱を放射すると同時に、二酸化マンガンをも加熱し、二酸化マンガンは後ほど吸収した熱を処置すべき組織に放射する伝熱媒体として働く。
【0006】
文献US-A-2002015159には、強磁性粒子の使用をベースにした熱剥離法が開示されている。この粒子は、処置すべき領域に充満し、その後、所定の強度の外部磁場が照射される。この磁場によって、強磁性粒子は加熱され、発熱体として働き、組織に熱を伝える。この粒子は、患者に危険が及ばないように、バイコンパチブルポリマーで覆われている。
【0007】
上述のどのシステムも方法も、熱伝導を制御する手段を備えていない。熱を伝導する媒体は、単に加熱され、処置すべき組織に接触する。
【0008】
現在の種々の研究において、これらの装置が、約10mm径程度の腫瘍性組織を切り取ることに関し、良い結果を示している。より大きな腫瘍組織に関しては、この治療方法ではいまだに困難であり、腫瘍組織の完全な除去には、プローブの移動や他の手段が要求される。
【0009】
光ガイドは、一般的に光ファイバのフィラメントからなり、搬送される光量の減衰が少ないという大きな長所を有し、挿入される光ガイドの端部が非常に小さな径で済むことから、ニードル又はプローブの浸潤作用を制限することを可能にしている。他方で、幾つかの病変腫瘍は生命維持に必要な臓器と密集して存在するので、プローブやニードルを挿入することは、高いダメージを与える恐れがあるので、前記特徴は有利に働く。
【0010】
光源は、一般的に、照射された組織の温度を治療に必要なレベルにまで上昇させるために必要な強度を提供することに適したレーザー光源からなる。
【0011】
しかし、電磁エネルギーを照射する装置による熱剥離の実用的用途は、まだ非常に大きな病変組織を扱う場合に、問題がある。この場合、大きな病変組織を扱う問題は、単にプローブ又はニードルのチップをマーキングすることで解決できるように考えられる。例えば、超音波等の種々の画像処理手段を用い、処置すべき組織の全体のサイズに対してニードル又はプローブを動かす。しかしこの場合、現在放射されている部位が完全に治療され、病変組織の異なる部位を照射するために、電磁エネルギーを放射するチップを方向付けることによって、処置すべき領域に対してニードル又はプローブを動かすことには問題がある。従って、大きな病変組織に属する部分領域を、治療上所望の効果が得られるように治療した後に、残りの病変組織を決定することに問題がある。この問題に加えて、電磁放射エネルギーで治療する熱剥離装置に関して、別の問題があった。即ち、組織を加熱することによって、水蒸気を発生させることである。蒸気の存在は、例えば超音波画像で治療をモニタするといった、単純で安価な技術の使用を不可能にする。超音波は、蒸気が存在した場合に使えない。
【0012】
より一般的な観点から、レーザー光により病変組織を照射して熱剥離をさせることに関し、ガイドファイバーや光線、いわゆるファイバーチップ又はチップの出力端に直接晒される組織領域より大きな領域にわたって、熱的効果の均等な分布を得ることには問題があった。レーザービームのガイドファイバーの出力端に直接隣接した領域は、小さい領域又は非常に小さい体積であって、熱的効果はこの小さな領域に深く浸透するが、一方で、この熱的効果は、出力端からの距離が増加すると、急激に減少する。従って、チップに直接隣接する領域には、過度の熱的効果を及ぼし、より遠くの領域には、不十分な作用を及ぼすというリスクがある。従って、チップからの距離に依存して熱的効果と所望の治療を制御するために、チップ周辺の体積に対する熱又は熱的効果の実空間分布を学習し、制御する手段を有することが必要である。
【0013】
組織と電磁エネルギー、特にレーザービームとの相互作用を理解するために、種々の研究がなされてきた。図1に非常に概略的に組織のレーザー蒸発と呼んでいるプロセスにおける組織上へのレーザー照射のエネルギーが、どのように働くかを示した。それは、切断と腫瘍剥離のために用いられるプロセスである。組織除去の間に、以下で定義される組織の温度に言及した3つのステップが挙げられる。凝固ステップは、組織加熱条件が55から100℃の間で定義される。水蒸気ステップは、100から400℃の間で定義される。加熱が400℃を超えると、燃焼ステップが発生する。組織の質量損失は、処置した領域の放射フラックスにまず第一に依存することがわかっている。1000J/cm2を超えるフラックスに関しては、列挙された効果は、組織の白色化に相当する。いわゆるポップコーン蒸発という現象が、熱エネルギーフラックスが1100から1500J/cm2の間で発生し、一方で炭化と燃焼が、放射フラックスが1500J/cm2を超えると発生する。
【0014】
どのように熱が組織、特に健康な組織と病変組織の境界で分布するかについて、非常に綿密な研究がなされてきた。本質的に、研究により、熱の分布を決定するパラメータは複雑であって、法則化することや、近似的にせよすべての条件に対して適用可能な一般則を抽出することは不可能であることがわかった。特に、レーザー光照射後の組織に働く熱拡散が従う過程は、放射フラックスのみならず、電磁放射の吸収に関連した組織組織の質にも依存する。この場合、組織の異なる種類毎に、異なる挙動を有し、従って、演繹的に一般則を求めることは困難である。
【0015】
異なる組織成分に異なる放射応答を用いることによって、蒸気の生成無しで組織に対して最大の加熱効果を得るために、エネルギー供給を変調しようとしない限り、現時点では、蒸気生成に関しては問題とならない。蒸気生成を避けるために採用される解決策は、レーザー源の交互操作であり、レーザー光パルスによって組織を照射することである。しかし、熱剥離効果が常時照射で得られる場合に較べて小さいため、この解決策は、十分なものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、第一に既知の方法の欠点を克服して上述のタイプの既知の熱剥離装置を向上させることであって、実質的に単純で安全な方法で、部分的に燃やすことなく、部分的に不十分な加熱をすることなく、相対的に大きな病変組織を治療することであって、また同時にできるだけ安全に病変組織の全体を治療することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、自動的又は半自動的な手段によって、オペレータの直接的な制御への介入をできる限り減らし、剥離プロセスを標準化することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一定量の流体を処置すべき領域の異なるゾーンに沿って運搬及び/又は分配することによって、及び/又は前記流体を処置すべき異なるゾーン又は全体領域の内側に含むことによって、又は処置すべき領域の外側に運搬又は含むことによって、流体から組織への熱伝導を制御する手段を備えた、上述のタイプの装置を提供することにより、本発明は、上記目標を達成する。
【0019】
本発明の実施例によれば、熱を分配する手段は、電磁放射によって生成した熱を、分配手段に分配する手段である。
【0020】
一つの実施例において、装置は蓄熱/熱制御物質、特に例えば液体から気体、固体から液体、又はその逆のような所定の温度で状態を変化させる物質を注入する手段を備え、その温度は、病変組織の熱処理温度に一致する。上記物質との組み合わせにおいて、所定の体積の内側に及び/又は外側に、前記物質を含む及び/又は保持する手段が提供可能であり、特に所定の体積の体積とは、熱剥離処置が施される病変組織の体積と略一致する。
【0021】
この場合、熱調節物質の含有動作は、その強磁性挙動によって、又は強磁性の特性を有する物質からなる運搬キャリアと前記物質を結合させることによって、得ることができる。従って、処置すべき組織領域に略一致する体積に、又は処置すべき組織領域を取り囲む表面に沿って、熱調節物質を分配するために、病変組織のみに浸透するだけの及び/又は処置すべき病変組織を取り囲むだけの空間位置とサイズを有する局部的な磁場を生成する手段を提供することもまた可能である。
【0022】
この最後の変形に関して、熱調節/保持物質が処置すべき病変組織の外側で熱伝播のバリアとして働く際に、生成した磁場によって、処置すべき病変組織の包囲ジャケット内に強磁性キャリアが熱調節物質を凝縮し、熱調節物質が35から38℃の蒸発又は溶融温度を有することは特に有利に働く。
【0023】
熱調節物質及び/又は強磁性特性を有する物質は、マイクロバブル又はマイクロボールに含まれることができ、及び/又はマイクロバブル又はマイクロボールは、熱調節物質及び/又は強磁性物質であることができる。
【0024】
追加の変形は、注入手段によって蓄熱流体、特に所定の温度つまり病変組織の熱処理温度で液体から気体に状態変化する物質、が局所的に設けられ、注入器は、放射チップの電磁ビームを放射する出力のところで、前記流体を機械的に押し込む際に現れる。
【0025】
蓄熱流体の機械的押し込みは、種々の方法によって達せられ、例えば前記流体の押し込み手段は、リンパ管又は血流からなる直接搬送するキャリアからなる。
【0026】
代替案として、又は組み合わせとして、前記流体押し込み手段は、プローブ又はニードルの先端に設けた流体ジェットによって形成することができるか、少なくとも前記ジェットを供給するノズルによって形成することができる。
【0027】
また、代替案として、又は組み合わせとして、前記流体押し込み手段は、特に超音波を用いた音波源によって生成される機械的圧力波によっても形成される。この場合、低周波超音波で三角波やのこぎり波などが、利点がある。
【0028】
特定の実施例が、放射チップからの電磁ビームによって組織を加熱することによって生成される蒸気に、熱エネルギーを搬送するための蓄熱流体を提供する。
【0029】
また、熱拡散を制御する手段に関する可能な変形例としては、血流及び/又はリンパ流を病変組織に対応する領域で制御する手段を備える。
【0030】
この変形例において、血流又はリンパ流を制御する手段は、灌流によって熱拡散に対するバリアを生成する血流及び/又はリンパ流を局所的に防止するための塊を形成するための磁性流体を操作する局所的磁場を生成する手段を提供する磁性流体物質からなる。
【0031】
変形例としては、病変組織領域で局所的に血液を凝固させる手段からなるものとすることができる。
【0032】
この場合、そこから遠ざかる方向へのプローブ又はニードルの放射チップからの熱転写作用を有利に変化させることができる。
【0033】
熱効果の分配の制御は、例えば非常に大きな病変組織領域の部分的に生じた処置をチェックするために、病変組織の温度に従って変化する病変組織の物理的パラメータを検出することによっても行うことができる。この場合、搬送される異なる部分の処置のためのニードル又はプローブの自動移動手段及び/又は一つ以上の上述した異なる実施例で言及した一つ以上の手段の操作と組合わせて測定をすることができる。
【0034】
この場合、本発明に係る装置は、加熱温度に依存した病変組織の物理パラメータを測定する少なくとも一つのセンサを備え、このセンサは、所定の位置にある放射チップから一定の距離をおいて支持され、またこのセンサは、放射チップとセンサ間に含まれる病変素組織の前記物理パラメータの変化を測定する。また、本発明に係る装置は、信号伝達手段及び/又は測定信号に基づいて動作する放射チップを自動的に移動させる手段と同様に、測定信号に基づいて前記病変組織の加熱温度を決定するセンサの測定信号の加工手段を備える。
【0035】
代替的に、又は組み合わせにおいて、このセンサは、電気的、温度、音響的、光学的、レーザー、化学的、電気化学的、ルミネッセンス、RF波変化、pH、位置、マイクロムーブメント、選択的組織タイプである。
【0036】
病変組織の所定のタイプに対して、所定の解剖学的部位において、熱効果と熱拡散と測定すべき物理パラメータの変化との間の相関関数が求められ、前記関数は、サンプリングされ前記物理パラメータを測定するセンサによって生成された信号を比較し評価するテーブルに保存される。
【0037】
数多くのもの、そしてより安全なものとして切り離される病変組織の全てのサイズに分配される熱を制御するために技術的にコンパチブルなものは、上述の各実施例の組み合わせとして実現できることに注目すべきである。
【0038】
本発明は、特に腫瘍組織等の病変組織の局所的熱剥離のための方法であって、所定のエネルギーと周波数を有する電磁放射を生成するステップと、病変領域又はその一部を所定の温度にまで加熱するために、前記所定の時間前記電磁放射を病変領域又はその一部に局所的に放射するステップと、からなり、これらとの組み合わせにおいて、所定のサイズを有する体積の内側に電磁エネルギーで生成された加熱作用を前記病変組織領域に分配することを能動的に制御するステップをさらに備えることを特徴とする。
【0039】
熱分配の制御は、蓄熱/熱調節物質を病変組織内に灌流させることで得られ、特に前記物質は、例えば液体から気体及び/又は固体から液体又はその逆への状態の変化をもたらす所定の温度を有し、前記温度は、病変組織を熱的に処置する際の温度に対応している。
【0040】
この変形例において、熱分配の制御は、病変組織周辺の外側に蓄熱/熱調節物質を灌流させることで得られ、特に前記物質は、例えば液体から気体及び/又は固体から液体又はその逆への状態の変化をもたらす所定の温度を有し、前記温度は、病変組織周りの健康な組織の平均温度に対応している。
【0041】
この場合、病変組織の内側又は周囲で局所的に含む又は保持する動作は、強磁性の特性を有するか、又は強磁性の特性を有するキャリアとの組み合わせられた強磁性又は保持性物質によって得られ、また、処置すべき組織領域に対応する体積又は処置すべき組織を包む表面に沿って熱調節物質を分配するために、病変組織領域及び/又は処置すべき病変組織領域の周りにのみ、浸透するような空間的位置と大きさを有する局所的磁場を生成することによって得られる。
【0042】
有利なことに、熱調節物質は、処置すべき病変組織領域の外側の熱伝播のバリヤとして働く物質であればよく、生成された磁場は、強磁性キャリアが処置すべき病変組織領域を包むジャケットに熱調節物質を集中させ、熱調節物質は、35から38℃の蒸発又は溶融温度である。
【0043】
また別の変形例において、前記方法は、蓄熱流体を電磁放射によって加熱し、特に、物質は例えば液体から気体への状態の変化をもたらす所定の温度を有し、前記温度は、病変組織を熱的に処置する際の温度に対応しており、前記流体を病変組織に押し込む手段が提供される。
【0044】
熱拡散の制御は、病変組織に対応する領域での血流及び/又はリンパ流の制御によっても実行することができる。
【0045】
この場合、血流又はリンパ流の制御は、局所的磁場によって磁性流体を活性化することにより、塊を形成して血流及び/又はリンパ流の流れを局所的に妨げることで、灌流による熱拡散に対するバリアを形成することで達成される。
【0046】
また、方法の変形例は、加熱温度に依存した病変組織の物理パラメータを測定することを提供し、この測定は、放射チップから所定の距離にある所定の位置で行われ、前記物理パラメータの変化は、放射チップと測定点との間に含まれ、一方測定信号に基づいて、病変組織の加熱温度が求められ、また、前記測定信号に基づいて、信号の生成及び/又は電磁ビームの変調及び/又は放射チップの移動の自動制御が行われる。
【0047】
代替的に、又は組み合わせにおいて、電気、温度、音響、光学、レーザー、化学、電気化学、ルミネッセンス、RF波変化、pH、位置、マイクロムーブメント、選択的組織パラメータの測定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
レーザー光で加熱することによって、病変組織、特に腫瘍組織を熱剥離するプローブ又はニードル自体は、既知である。レーザー光による加熱による熱剥離のための装置や方法は、例えば以下の文献に記載されている。「Low Power Interstitial Photocoagulation in rat Liver, Proc. of SPIE Vol. 1882, Laser-Tissue Interaction IV, ed S. L. Jacques, A. Katzir 8 Luglio 1993」や、US4,592,353やUS4,692,244やUS4,736,743。
【0049】
図1に本発明の一実施例を示す。ここで、電磁放射によって生成された熱を分配する手段は、治療すべき組織領域内を分配又は拡散又は灌流するように意図された物質からなり、この物質はレーザー放射によって加熱されて、治療すべき組織に灌流することで熱を分配する。この図において、ニードルの放射チップは、熱を分配するため又は調整するため又は熱作用を与えるための物質を局所的に注入するためのノズル7を備える。
【0050】
第一の変形例によれば、注入手段は、蓄熱又は熱調節物質の注入を提供し、特に物質は
例えば液体から気体及び/又は固体から液体又はその逆への状態の変化をもたらす所定の温度を有し、前記温度は、病変組織を熱的に処置する際の温度に対応している。前記物質との組み合わせにおいて、所定の体積及び/又はその外側特にその周囲における前記物質を含む及び/又は保持する手段は提供可能であり、ここで体積は熱剥離によって治療されるべき病変組織が提供される体積と略一致する。
【0051】
この場合、熱調節物質の含有動作は、その強磁性的ふるまいによって又は強磁性特性を有する物質からなる搬送キャリアと前記物質との結び付けによって得ることができる。従って、熱調節物質を治療すべき組織領域に略対応した体積又は前記治療すべき組織領域を包む表面に沿って分配するために、病変組織領域のみを灌流するような及び/又は治療すべき組織領域を囲むような空間的位置とサイズを有する局所磁場生成手段を提供することも可能である。
【0052】
この最後の変形例に関して、熱調節/蓄熱物質が、治療すべき病変組織領域の外側への熱伝播のバリアとして働く際に、強磁性キャリアが熱調節物質を治療すべき病変組織領域の包囲ジャケット内に集中させ、そして、熱調節物質が蒸発又は溶融温度である35から38℃であるように、生成された磁場があることは、特に有利である。
【0053】
熱調節物質及び/又は強磁性特性を備えた物質は、マイクロバブル又はマイクロボールにも含まれることができ、及び/又はマイクロバブル又はマイクロボールは、熱調節物質及び/又は強磁性物質であることができる。
【0054】
別の変形例としては、注入手段によって、蓄熱流体が局所的に供給され、特にこの流体は、液体からガスへの状態の変化がある所定の温度を有し、温度は病変組織の熱治療温度に一致する。この注入器は、機械的に前記流体を押し出す手段が提供される、放射チップが電磁ビームを放射する出口に備えられる。
【0055】
機械的に蓄熱流体を押し出す方法は、種々の方法で達成することができ、例えば、自然のリンパ流又は血流からなる搬送キャリアによって形成されてもよい。
【0056】
その代替案又は組み合わせとして、前記流体の押出し手段は、プローブ又はニードルの先端に設けられた流体ジェットで、少なくともジェットを供給するノズルからなることができる。
【0057】
また、代替案又は組み合わせとして、前記流体の押出し手段は、特に超音波用の音響波ソースによって生成された機械的圧力波からなることができる。この場合、低周波超音波で、三角波又はのこぎり波のものが有利である。
【0058】
特定の実施例が、熱エネルギーを輸送するための蓄熱流体として、放射チップからの電磁ビームによって組織を加熱することによって生成される蒸気を提供する。
【0059】
また、可能な変形例によれば、熱拡散を制御する物質に関して、病変組織に対応した領域での血流及び/又はリンパ流を変調する物質の使用が提供される。この変形例において、血流又はリンパ流を制御する手段は、磁性流体によって有利に構成され、そこで磁性流体を塊にして局所的に血流及び/又はリンパ流を妨げるように、灌流の熱拡散のバリアを生成するように作用する局所磁場生成手段が提供される。変形例としては、病変組織領域において血液を局所的に凝固させる手段によって構成することができる。
【0060】
この場合、プローブ又はニードルの放射チップから遠ざかる方向への熱輸送の機能に有利な変化が得られる。
【0061】
特に図2に関し、この図2はレーザー放射ビーム又は光線を放射するチップに対応した熱剥離のためのニードル又はプローブの端部を示している。上述の文献から判る様に、後者はレーザー源によって生成され、放射チップの設けられたニードル又はプローブの端部へ細い光ファイバーを通って送られる。図2において、ニードルとファイバーは共に参照番号1で示されており、一方矢印2はレーザー放射光又はビームの伝送方向を示している。出射点であり、治療すべき領域へと向かう点である放射チップは、参照番号101で示されている。
【0062】
病変組織への作用を得るために必要な熱設計仕様に対応した熱処理を可能にするために、本発明は、放射チップから一定の距離において端部処理条件の検出器を結び付けるようにしている。実質上図2の参照番号3で示された検出器は、温度に関係して変化する照射された組織の物理的又は化学的パラメータを検出するようになっている。加熱作用は照射チップからの距離に応じて変化するので、組織の物理的又は化学的パラメータに依存した距離と検出された閾値温度は、前記物理的又は化学的パラメータに従って変化し、最も高温の領域においては、温度は所定の可能な最高加熱温度以下である。
【0063】
実質的に、治療された組織の所定の物理的又は化学的パラメータの変化に関連した加熱作用の移動関数が定義され、従って、前記物理的又は化学的パラメータを測定するプローブが位置可能な最大距離が定義されて、最適治療温度が前記プローブによって検出された際に、照射チップに最も近い組織は、所定の最大温度を超える温度には達しない。
【0064】
伝播軸に沿った二方向へのレーザー照射の分配のための適切な拡散器を備えたチップを提供すると、プローブ又はニードルの放射チップから前方又は後方への放射チップに関連して実質的に対称的に設けられた治療した領域の自動決定が可能となる。
【0065】
温度に依存した物理的又は化学的パラメータとしては、あらゆる物理的又は化学的パラメータが選択可能である。まず、それは治療すべき組織の種類に依存し、その物理的又は化学的特性に依存する。
【0066】
幾つかの代表的な物理的又は化学的パラメータは、電気的、熱的、音響的、光学的、電気化学的パラメータである。
【0067】
例えば、RF信号の伝播の効果を測定したり、組織の加熱によって生じる発光効果を測定することが可能である。pHや位置の変化、又はマイクロムーブメントも、測定可能な効果である。
【0068】
ひとたび熱移動機能の測定に使用される物理的又は化学的パラメータが決定されると、用いられる測定用プローブの種類を決めることができる。
【0069】
上記との組み合わせにおいて、レーザー照射によって生じる熱的効果を移動させる既知のタスクを有する物質と共に、治療される領域を灌流することが可能である。この場合、ニードル又はプローブが前記物質の注入手段と共に提供され、又は、種々の個別の管理装置によって生じる局所的管理が発生する。
【0070】
例えば、もし病変領域、例えば図3の円4で区切られた領域を考えた場合、ひとたび検知器3が理想的な治療温度を検出すると、熱作用の等方性分配を考慮して、この円の体積すべて、理想的治療をされていると考える。参照番号Dで示された照射チップからプローブまでの距離は、実質的に円の半径に相当し、照射チップ101に直接接する組織の温度は、プローブが理想治療温度を検知した際に、所定の最高温度を超えない。
【0071】
従って、組織を過度に加熱する恐れ無しに、照射チップに隣接した比較的大きな病変組織を剥離することが可能である。
【0072】
本発明によれば、温度センサによって測定される熱の分配の自動制御のために、図2と3に示されたプローブの特性は、熱効果の拡散を制御する手段との組み合わせとして提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】熱剥離プローブ又はニードルが、熱を分配する熱調節物質のための注入器を備えた、本発明に係る実施例である。
【図2】処置すべき病変組織領域に対応する領域又は体積において処置終了条件の検出手段を備えた本発明の第一実施例である。
【図3】図2に係る装置によって得られた処置領域である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り離すべき病変組織又は腫瘍組織に位置付けられたチップを端部に有するプローブ又はニードルと、
電磁照射エネルギーのエネルギー源の活性化/非活性化を制御する手段と、
前記病変組織に作用する熱作用を分配する手段と、を備えた病変組織、特に腫瘍組織等の局部的な熱剥離のための装置であって、
前記プローブ又はニードルには細いワイヤ状の少なくとも一つの光ガイドが支持され、その一端からは加熱用電磁放射エネルギーが放射され、他端には前記電磁放射エネルギーを生成するエネルギー源が接続され、そして、
一定量の流体を処置すべき領域の異なるゾーンに沿って運搬及び/又は分配することによって、或いは前記流体を処置すべき異なるゾーン又は全体領域の内側に含むことによって、或いは処置すべき領域の外側に運搬又は含むことによって、流体から組織への熱移動を制御する手段がさらに備えられていることを特徴とする、病変組織、特に腫瘍組織等の局部的な熱剥離のための装置。
【請求項2】
電磁放射によって生成された熱を分配する手段が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
液体から気体へ及び/又は固体から液体へまたはその逆へと状態が変化する所定の温度である、病変組織の熱治療温度を有する熱調節物質を注入する手段が更に備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
熱剥離治療される組織の体積に略等しい体積の内側及び/又は外側に前記物質を含有し、及び/又は、保持する手段が更に備えられていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
熱調節物質を治療すべき組織に略対応する体積又は治療すべき組織を囲む表面に沿って分配するために、強磁性の性質を有し、又は、強磁性の性質を有する物質からなる搬送キャリアと関連する前記熱調節物質を注入する手段と、
治療すべき病変組織及び/又は病変組織の周囲にのみ浸透するような空間的位置とサイズを有する局所磁場を生成する手段と、が更に備えられていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記熱調節物質が、処置すべき病変組織の外側で熱伝播のバリアとして機能し、そして、生成した磁場によって処置すべき病変組織の包囲ジャケット内で強磁性キャリアによって前記熱調節物質が凝縮され、前記熱調節物質が35から38℃の蒸発又は溶融温度を有するものとされていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記熱調節物質が、治療温度以下で強磁性体の性質を備えると共に、治療温度以上で反磁性体の性質を備えたキュリー温度を有する流体とされていることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記熱調節物質及び/又は強磁性体の性質を有する物質が、マイクロバブル又はマイクロボールに含まれ、或いはマイクロバブル又はマイクロボールが熱調節物質及び/又は強磁性物質であることを特徴とする請求項3ないし7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
特に病変組織の熱処理温度に対応した温度で液体から気体に状態変化する物質で構成される流体からなる蓄熱流体の注入手段をさらに備え、前記注入手段が、放射チップが電磁ビームを放射する出力のところで、流体押し込み手段と共に存していることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記流体押し込み手段が、リンパ流又は血流からなる直接搬送キャリアであることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記流体押し込み手段が、プローブ又はニードルの先端に設けた流体ジェットによって形成することができるか、少なくとも前記ジェットを供給するノズルによって形成することができることを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記流体押し込み手段が、特に超音波を用いた音波源によって生成される機械的圧力波であることを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項13】
前記超音波が、低周波で三角波やのこぎり波であることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
熱エネルギーを輸送する物質が、放射チップからの電磁ビームによって組織を加熱することによって生成される蒸気であることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
熱拡散を制御する手段が、病変組織に対応する領域で血流及び/又はリンパ流を制御する手段から成ることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
血流又はリンパ流を制御する手段が、磁性流体物質と磁性流体物質を操作する局所的磁場生成手段と、からなり、前記局所磁場生成手段が、血流及び/又はリンパ流を局所的に防止するための塊を形成して、灌流による熱拡散に対するバリアを生成していることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
局所的に血液を凝固させる手段をさらに備えていることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
加熱温度に依存した病変組織の物理パラメータを測定する少なくとも一つのセンサを備え、このセンサが所定の位置にある前記放射チップから一定の距離をおいて支持され、またこのセンサが前記放射チップとセンサ間に含まれる病変素組織の前記物理パラメータの変化を測定し、測定信号に基づいて前記病変組織の加熱温度を決定するセンサの測定信号の加工手段を備え、信号伝達手段及び/又は電磁ビーム自動変調手段及び/又は前記測定信号に基づいて動作する放射チップを自動的に移動させる手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記センサが、電気的、温度、音響的、光学的、レーザー、化学的、電気化学的、ルミネッセンス、RF波変化、pH、位置、マイクロムーブメント、選択的組織タイプのいずれか又はその組み合わせであることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
病変組織の所定のタイプに対して、所定の解剖学的部位において、熱効果と熱拡散と測定すべき物理パラメータの変化との間の相関関数が求められ、前記関数が、サンプリングされ前記物理パラメータを測定するセンサによって生成された信号を比較し評価するテーブルに保存されていることを特徴とする請求項18又は19に記載の装置。
【請求項21】
特に腫瘍組織等の病変組織の局所的熱剥離のための方法であって、
所定のエネルギーと周波数を有する電磁放射を生成するステップと、
病変領域又はその一部を所定の温度にまで加熱するために、前記所定の時間前記電磁放射を病変領域又はその一部に局所的に放射するステップと、からなり、
これらとの組み合わせにおいて、所定のサイズを有する体積の内側に電磁エネルギーで生成された加熱作用を前記病変組織領域に分配することを能動的に制御するステップをさらに備えていることを特徴とする。
【請求項22】
熱分配の制御が、蓄熱/熱調節物質を病変組織内に灌流させることで得られ、特に前記物質が、例えば液体から気体及び/又は固体から液体又はその逆への状態の変化をもたらす所定の温度を有し、前記温度は、病変組織を熱的に処置する際の温度に対応していることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
熱分配の制御が、病変組織周辺の外側に蓄熱/熱調節物質を灌流させることで得られ、特に前記物質が、例えば液体から気体及び/又は固体から液体又はその逆への状態の変化をもたらす所定の温度を有し、前記温度は、病変組織周りの健康な組織の平均温度に対応していることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
熱調節物質を治療すべき領域に略対応した体積又はその周囲に沿った表面に分配するために、病変組織の内側又は周囲で局所的に含む又は保持する動作が、強磁性の特性を有するか、又は強磁性の特性を有するキャリアとの組み合わせられた強磁性又は保持性物質によって得られ、また、病変組織領域及び/又は処置すべき病変組織領域の周りにのみ、浸透するような空間的位置と大きさを有する局所的磁場を生成することによって得られることを特徴とする請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記熱調節物質が処置すべき病変組織領域の外側の熱伝播のバリヤとして働く物質であって、強磁性キャリアが処置すべき病変組織領域を包むジャケットに熱調節物質を集中させ、熱調節物質が35から38℃の蒸発又は溶融温度であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
蓄熱流体を電磁放射によって加熱し、特に、物質は例えば液体から気体への状態の変化をもたらす所定の温度を有し、前記温度は、病変組織を熱的に処置する際の温度に対応し、前記流体を病変組織に押し込む手段が提供されていることを特徴とする請求項21ないし25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記押出し手段が、血流又はリンパ流であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記流体の押出し手段が、流体ジェットであることを特徴とする請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記流体の押出し手段が、特に超音波の音響波源によって生成された機械的圧力波からなることを特徴とする請求項26又は27に記載の方法。
【請求項30】
前記超音波が、低周波で三角波又はのこぎり波であることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記熱エネルギーを輸送する物質が、電磁ビームによって組織を加熱することで生成された蒸気であることを特徴とする請求項26ないし30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記熱拡散の制御が、病変組織に対応する領域での血流及び/又はリンパ流の循環の制御によって実行されることを特徴とする請求項26ないし31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
血流又はリンパ流の循環の制御が、局所的磁場によって磁性流体を活性化することにより、塊を形成して血流及び/又はリンパ流の流れを局所的に妨げることで、灌流による熱拡散に対するバリアを形成することで得られることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
局所的な血液の凝固を提供することを特徴とする請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−540992(P2009−540992A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517215(P2009−517215)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056508
【国際公開番号】WO2008/003641
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(503427359)ブラッコ イメージング ソチエタ ペル アチオニ (19)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
【Fターム(参考)】