説明

腫瘍成長、血管新生および転移を妨害する癌標的に対する新規抗体

本発明は、N-カドヘリンと関連する癌の診断および治療のためのN-カドヘリンの第1〜3ドメインおよび第4ドメインを標的とする抗体を提供する。これらの抗体を用いた診断および処置法がまた記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、2008年4月4日に出願された米国特許出願第61/042,604号および2008年11月10日に出願された米国特許出願第61/113,053号に対する優先権を主張するものであり、その全体を引用により本明細書の一部とする。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、NIH/NCI SOMI Training Grant R25 CA 098010およびNIH/NCI UCLA Prostate SPORE, P50 CA 092131により一部支援を受けた。政府は、本発明における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
前立腺癌は、最も一般的な悪性腫瘍であり、米国人男性における癌関連死因の第2位である。前立腺癌は、生物学的および臨床的に不均一な疾患である。この悪性腫瘍を患う多くの男性は、ゆっくりと成長する腫瘍を有し、それは個体の自然の寿命に影響を与えないかもしれないが、他の男性は、急速に進行する転移性の腫瘍に冒される。PSAスクリーニングは、特異性の欠如および患者がホルモン抵抗性転移性疾患を発症するリスクがあることを予測できないために限定的である。診断のためにより低いPSA閾値を支持する最近の研究は、前立腺癌の診断結果の数を増大させ、さらに緩慢性癌と進行性癌を患う患者の同定を複雑にし得る(Punglia et al., N Engl J Med, 349: 335-342 (2003))。臨床結果と相関するか、もしくは潜在的に進行性の疾患を患う患者を同定する新規な血清および組織マーカーが早急に必要とされている(Welsh et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 100: 3410-3415 (2003))。
【0004】
最近の発現プロファイリング研究は、転移性腫瘍と非転移性腫瘍についての発現特性が原発性腫瘍において存在し得ることを示す(Ramaswamy et al., Nat Genet, 33: 49-54 (2003); Sotiriou et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 100: 10393-10398 (2003))。腫瘍を特定の器官に転移させやすくするさらなる特性はまた、ある頻度で原発性腫瘍に存在し得る(Kang et al., Cancer Cell, 3: 537-549 (2003))。これらの最近の観察は、転移前またはホルモン抵抗性前立腺癌前の新規マーカーが早期段階の疾患において同定され得ることを示す。これらのマーカーはまた、転移もしくはホルモン抵抗性前立腺癌進行の生物学に関与し得る。結果と相関し、前立腺癌進行の生物学に関与する原発性腫瘍に存在する遺伝子の最近の例は、EZH2およびLIMキナーゼを含む(Varambally et al., Nature, 419: 624-629 (2002); Yoshioka et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 100: 7247-7252 (2003))。しかしながら、これら2個の遺伝子は両方共に分泌されない。
【0005】
ホルモン抵抗性前立腺癌の新規な候補血清もしくは組織マーカーを同定するために、我々は、ホルモン依存性およびホルモン抵抗性前立腺癌異種移植片対の遺伝子発現プロファイルを比較した。LAPC-9異種移植片は、免疫欠損マウスにおける骨芽細胞骨転移および去勢後のアンドロゲン依存性から非依存性への進行から確立された(Craft et al., Cancer Research, In Press (1999))。それは、以前、前立腺癌における候補治療標的を同定するために使用されていた。異なる発現量の遺伝子を検証し、次いで、分泌型タンパク質または細胞表面タンパク質との配列相同性を調べた。ホルモン抵抗性前立腺癌および膀胱癌の両方で発現するN-カドヘリンの同定、特徴づけおよび初期検証は、以前に報告されている(WO/2007/109347)。
【0006】
我々は、以前に、前立腺癌および膀胱癌における推定上の診断および治療標的としてN-カドヘリンの同定を開示した(WO/2007/109347)。我々の以前の開示は、高リスクならびに進行した前立腺癌および膀胱癌における標的のかなりの発現を証明し、標的の発現が予後不良およびアンドロゲン非依存性への進行と関連することを示した。N-カドヘリンは有用な治療標的であり得ることが以前に予測されていたが、唯一存在する薬剤はペプチドアンタゴニストであり、それは、前立腺癌に対する前臨床活性を全く示さなかった。我々の知る限りでは、本発明は、標的を発現する癌に対して活性な最初のモノクローナル抗体を提供するものである。さらに、存在するN-カドヘリンアンタゴニストは、当該タンパク質の第1細胞外ドメインのみを標的とする。我々は、第1から第4の細胞外ドメインを標的とする抗体を開示する。すべての抗体は、かなりの抗腫瘍活性を有する。我々の知る限りでは、本発明は、第4の細胞外ドメインを標的とする概念の最初の記載である。我々の抗体は、単一薬剤として、または組み合わせて使用され得て、また概念的に、N-カドヘリンと平行して走るか、もしくは下流の経路のアンタゴニストと組み合わせることが可能な薬剤として使用され得る。
【0007】
本発明は、N-カドヘリンタンパク質の第1から第4の細胞外ドメインに対する複数のモノクローナル抗体を包含する。これらの抗体は、前立腺癌および他の癌のインビボモデルにおいて、腫瘍成長、血管新生および転移を妨害する。それらは、腫瘍成長、浸潤、血管新生および転移のために重要なN-カドヘリンシグナル伝達経路を妨害することにより機能する。抗体はまた、N-カドヘリン陽性腫瘍のインビボイメージングのために、および/または組織診断および予後診断のために有用であり得る。
【0008】
本発明は、腫瘍成長および転移を処置または予防するために、単一の抗体として単独で使用され得る。それらは、現存する腫瘍のためのアジュバントもしくは治療薬として使用され得る。それらは、N-カドヘリンタンパク質の複数のドメインを妨害するために組み合わせて使用され得る。それらはまた、化学療法または他の標的化抗癌剤、特に、相乗的なシグナル伝達経路を標的とする薬剤またはN-カドヘリン仲介シグナル伝達に関与する下流もしくは上流経路を標的とする薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0009】
現在のところ、N-カドヘリンを標的とする承認された治療薬または診断法は存在しない。この経路を標的とする唯一の薬剤は、第2相試験で十分に成功しておらず、本発明が活性を示した前臨床試験において活性を示さず、これは、本発明の方法および薬剤が極めて優れていることを示す。
【0010】
したがって、本発明は、N-カドヘリンを発現する癌(前立腺癌および膀胱癌を含むがこれらに限定されない)の診断、予後診断、および処置において、N-カドヘリンを標的とする組成物および方法を提供する。
【発明の概要】
【0011】
発明の概要
1つの局面において、本発明は、ATCC受託番号PTA-9387として寄託されているハイブリドーマ細胞株および当該ハイブリドーマ細胞株により産生される抗体、ならびにATCC受託番号PTA-9388として寄託されているハイブリドーマ細胞株および当該ハイブリドーマ細胞株により産生される抗体を提供する。また、米国微生物株系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託されたATCC受託番号PTA-9387を有するハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体と同様に、インビボまたはインビトロでN-カドヘリンの同一の抗原決定基であるN-カドヘリンのドメイン1-3に結合可能である抗体またはその断片、または米国微生物株系統保存機関に寄託されたATCC受託番号PTA-9388を有するハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体と同様に、インビボまたはインビトロでN-カドヘリンの同一の抗原決定基であるN-カドヘリンのドメイン4に結合可能である抗体またはその断片が提供される。そのような抗体は、ヒト化もしくは完全ヒト抗体であり得るか; またはダイアボディまたは一本鎖抗体(scFv)であり得る。
【0012】
第2の局面において、本発明は、患者における癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。当該方法は、本発明の抗体(またはその断片)がN-カドヘリンペプチドを発現するか、もしくは過剰発現する癌細胞に結合するのに十分な条件下で当該抗体(またはその断片)を患者に投与する工程を含む。抗体(またはその断片)は、(a) NFκ-βシグナル伝達および転写を活性化するか、もしくは阻害すること;(b) N-カドヘリン内在化を活性化するか、もしくは阻害すること;(c) PI3キナーゼもしくはAkt経路を活性化するか、もしくは阻害すること;(d) β-カテニンシグナル伝達を活性化するか、もしくは阻害すること;(e) N-カドヘリンとFGFRもしくは他のチロシンキナーゼ受容体の二量体化を妨害すること; または(f) ADAM10または他のメタロペプチダーゼによる切断を妨害するか、もしくは促進することにより癌細胞の成長を阻害する。ある態様において、癌細部は、泌尿生殖器癌細胞、前立腺癌細胞または膀胱癌細胞である。
【0013】
第2の局面において、本発明は、癌患者を処置する方法を提供する。当該方法は、(a) N-カドヘリンタンパク質を発現する癌を患うリスクのある個体から試験組織サンプルを取得し;(b) 癌について陰性であることが既知の個体からのコントロール組織サンプルと比較した場合の試験組織サンプルにおけるN-カドヘリンタンパク質の存在もしくは非存在またはその量を決定し、それによりN-カドヘリンタンパク質を発現する癌を診断し(ここで、N-カドヘリンタンパク質は、正常もしくは低いレベルで発現しているか、または一部の細胞で発現しているか、または過剰発現している); そして(c) 本発明のN-カドヘリン抗体(またはその断片)の有効量をN-カドヘリンタンパク質を発現する癌を患うリスクのある個体に投与する工程を含む。
【0014】
ある態様において、組織サンプルは、前立腺もしくは膀胱組織である。ある態様において、癌は、前立腺癌または膀胱癌であるか、または転移性癌であり得る。ある態様において、抗体(またはその断片)は、ホルモン抵抗性前立腺癌を妨害するか、または癌幹細胞を妨害する。いくつかの場合における抗体は、モノクローナル抗体、scFv、またはダイアボディである。他のある態様において、組織サンプルは、前立腺もしくは膀胱組織である。
【0015】
第4の局面において、本発明は、癌患者を診断する方法を提供する。当該方法は、(a) N-カドヘリンタンパク質を発現する癌を患うリスクのある個体から試験組織サンプルを取得し;(b) 本発明のN-カドヘリン抗体(またはその断片)の有効量をサンプルと接触させることにより、癌について陰性であることが既知の個体からのコントロール組織サンプルと比較した場合の試験組織サンプルにおけるN-カドヘリンタンパク質の存在もしくは非存在またはその量を決定し、それによりN-カドヘリンタンパク質を発現する癌を診断する(ここで、N-カドヘリンタンパク質は、正常もしくは低いレベルで発現しているか、または一部の細胞で発現しているか、または過剰発現している)工程を含む。
【0016】
第5の局面において、本発明は、癌幹細胞を同定する方法を提供する。当該方法は、(a) N-カドヘリンタンパク質を発現する癌を患うリスクのある個体から試験組織サンプルを取得し;(b) 本発明の抗体(またはその断片)を用いて、癌について陰性であることが既知の個体からのコントロール組織サンプルと比較した場合の試験組織サンプルにおける癌幹細胞の存在もしくは非存在を決定する(ここで、N-カドヘリンタンパク質は、正常もしくは低いレベルで発現しているか、または一部の細胞で発現しており、過剰発現していない)工程を含む。ある態様において、組織サンプルは、前立腺もしくは膀胱組織である。ある態様において、癌は、前立腺癌、膀胱癌、ホルモン抵抗性前立腺癌、または転移性癌である。
【0017】
第6の局面において、本発明は、患者における癌細胞の成長を阻害する抗N-カドヘリン抗体もしくは化合物を同定する方法を提供する。当該方法は、(i) 候補化合物または抗体を、N-カドヘリンポリペプチドを発現するか、もしくは過剰発現する細胞と接触させ; そして(ii) 化合物または抗体が:(a) NFκ-βシグナル伝達および転写を活性化するか、もしくは阻害すること; (b) N-カドヘリン内在化を活性化するか、もしくは阻害すること;(c) PI3キナーゼもしくはAkt経路を活性化するか、もしくは阻害すること;(d) β-カテニンシグナル伝達を活性化するか、もしくは阻害すること;(e) N-カドヘリンとFGFRもしくは他のチロシンキナーゼ受容体の二量体化を妨害すること; または(f) ADAM10または他のメタロペプチダーゼによる切断を妨害するか、もしくは促進することを決定することにより、当該化合物または抗体のN-カドヘリンポリペプチドに関する機能的な効果を決定する工程を含む。候補化合物または抗体が(a)-(f)のいずれか1つにおいて活性を有することが示される場合には、当該抗体または化合物は、患者においてN-カドヘリンを発現する癌の成長を阻害する抗N-カドヘリン抗体または化合物であると考えられる。例えば、抗体または化合物は、当該抗体または化合物がNFκ-βシグナル伝達または転写を阻害する場合に; または当該抗体または化合物がN-カドヘリン内在化を阻害する場合に、患者においてN-カドヘリンを発現する癌の成長を阻害する抗N-カドヘリン抗体または化合物であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】前立腺癌におけるN-カドヘリンシグナル伝達のモデル。
【図2】N-カドヘリンは、NF-κβを活性化する。
【図3】N-カドヘリンは、NF-κβを活性化する。
【図4】N-カドヘリンは、C1細胞の細胞表面上に発現する。
【図5】NF-κβは、N-カドヘリン陽性細胞(C1)の核に局在する。
【図6】N-カドヘリン発現は、IL-6、IL-8、TGFβ2、およびbcl-2の誘導を生じる。
【図7】誘導される遺伝子とN-カドヘリンレベルの相関。
【図8】N-カドヘリンのノックダウンは、IL-6およびIL-8の下方調節を生じる。
【図9】N-カドヘリン抗体処理後のNF-κβ活性。
【図10】PC3細胞におけるN-カドヘリン: 48時間の抗体インキュベーション。
【図11】N-カドヘリンのノックダウンは、活性型Aktの下方調節を生じる。
【図12】N-カドヘリン特異的抗体は、Aktを活性化し、次いで、それを下方調節する。
【図13】N-カドヘリンタンパク質の第1細胞外ドメインを標的とする抗体クローンのFACS解析。
【図14】N-カドヘリンタンパク質の第4細胞外ドメインを標的とする抗体クローンのFACS解析。
【図15】精製されたモノクローナルN-カドヘリン抗体クローンのFACS解析。
【図16】モノクローナルN-カドヘリン抗体クローンのインビトロ浸潤アッセイ。
【図17−1】N-カドヘリンに対する抗体(1H7およびEC4)による処理下でのN-カドヘリン欠損腫瘍の成長曲線(17a)であり、それは有意な阻害効果を示さない。
【図17−2】同じ抗体で処理されたPC3前立腺癌細胞の腫瘍成長曲線(17b)であり、それは成長阻害効果を示す。
【図17−3】1H7およびEC4抗体による処理下での大型の確立されたPC3腫瘍の成長曲線(17c)。
【図17−4】EC4抗体による処理下でのPC3腫瘍の長期成長曲線(17d)。
【図18】N-カドヘリンに対する抗体の効果を示すインビトロ実験。
【図19】(a) アンドロゲン非依存性LAPC9前立腺癌の免疫組織化学染色;(b) N-カドヘリン抗体を用いたアンドロゲン依存性および非依存性LAPC-9腫瘍の処理。
【図20】選別および非選別LAPC9AI細胞の腫瘍成長曲線。
【図21】処理されたN-カドヘリン選別腫瘍についてのFACS結果。
【図22】処理されたN-カドヘリン選別腫瘍についてのFACS結果。
【図23】N-カドヘリン抗体の阻害効果を示すLNCaP-C1腫瘍の成長曲線。
【図24−1】N-カドヘリン抗体は、確立されたLAPC-9アンドロゲン非依存性腫瘍(24a)および大型の確立されたLAPC-9アンドロゲン非依存性腫瘍の成長を阻害する。
【図24−2】N-カドヘリン抗体は、確立されたLAPC-9アンドロゲン非依存性腫瘍(24a)および大型の確立されたLAPC-9アンドロゲン非依存性腫瘍の成長を阻害する。
【図25】ヌードマウスでのEC4抗体によるPC3腫瘍成長の用量相関的な阻害。
【図26−1】N-カドヘリン抗体1H7およびEC4は、2つの試験においてLAPC-9アンドロゲン依存性腫瘍の成長についての阻害効果を示し、ここで、腫瘍進行は、45日間(26a)および70日間(26b)追跡された。
【図26−2】N-カドヘリン抗体1H7およびEC4は、2つの試験においてLAPC-9アンドロゲン依存性腫瘍の成長についての阻害効果を示し、ここで、腫瘍進行は、45日間(26a)および70日間(26b)追跡された。
【図27】N-カドヘリン選別細胞は、去勢SCIDマウスにおける成長利点を示す。
【図28】LAPC9腫瘍細胞の継代株におけるN-カドヘリン発現とアンドロゲン受容体レベル間の相関。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、細胞表面タンパク質N-カドヘリンを発現する癌の処置のためのN-カドヘリンを標的とする新規モノクローナル抗体に関する。当該癌は、前立腺癌、膀胱癌、またはN-カドヘリンを発現する他の癌であり得る。
【0020】
本発明はまた、N-カドヘリンを標的とする抗体を用いて癌を処置する方法に関する。本発明者等は、当該抗体が、NFκ-βシグナル伝達および転写を活性化するか、もしくは阻害するか、またはN-カドヘリン内在化を活性化するか、もしくは阻害するか、またはPI3キナーゼもしくはAkt経路を活性化するか、もしくは阻害するか、またはβ-カテニンシグナル伝達を活性化するか、もしくは阻害するか、またはN-カドヘリンとFGFRもしくは他のチロシンキナーゼ受容体の二量体化を妨害するか、またはADAM10もしくは他のメタロペプチダーゼによる切断を妨害するか、もしくは促進することにより機能し得ることを発見した。図1は、N-カドヘリン仲介シグナル伝達の要約である。図1は、NF-κβ、Akt、およびβ-カテニン経路の活性化を示す。本発明者等は、N-カドヘリン抗体がこれらの経路のうちの1個またはそれ以上を変えることにより機能することを示す証拠を報告する。
【0021】
定義
「N-カドヘリン」および「E-カドヘリン」は、下記で示す核酸、例えば、遺伝子、プレ-mRNA、mRNA、およびポリペプチド、多型変異体、対立遺伝子、突然変異体、ならびに種間ホモログを意味する: (1) 好ましくは、少なくとも約25、50、100、200、500、1000、またはそれ以上のアミノ酸の領域にわたって、本明細書に記載された各々の参照核酸によりコードされるポリペプチドまたはアミノ酸配列、例えば、GenBank受託番号NM_001792 (N-カドヘリンmRNA)、NP_001783 (N-カドヘリンタンパク質)、NM_004360 (E-カドヘリンmRNA)、およびNP_004351 (E-カドヘリンタンパク質)に示されたものと、約60%以上のアミノ酸配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する; (2) GenBank受託番号NP_001783 (N-カドヘリンタンパク質)またはNP_004351 (E-カドヘリンタンパク質)に示された参照アミノ酸配列を含む免疫原; その各々の免疫原性断片、およびその各々の保存的に修飾された変異型に対して作製された抗体、例えば、ポリクローナル抗体に特異的に結合する; (3) GenBank受託番号NP_001783 (N-カドヘリンタンパク質)またはNP_004351 (E-カドヘリンタンパク質)の各々に示された参照アミノ酸配列をコードする核酸、およびその各々の保存的に修飾された変異型とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特異的にハイブリダイズする; (4) 好ましくは、少なくとも約25、50、100、150、200、250、500、1000、またはそれ以上のヌクレオチドの領域にわたって、GenBank受託番号NM_001792 (N-カドヘリンmRNA)またはNM_004360 (E-カドヘリンmRNA)に示された参照核酸配列と、約95%以上、好ましくは、約96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、またはそれ以上のヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を有する。ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、一般に、哺乳類に由来するものであり、霊長類、例えば、ヒト; 齧歯類、例えば、ラット、マウス、ハムスター; ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、または他の哺乳類を含むがこれらに限定されない。本発明の核酸およびタンパク質は、天然で生じる分子または組み換え分子の両方を含む。
【0022】
「癌」は、ヒトの癌および癌腫、肉腫、腺癌、リンパ腫、白血病などを意味し、固形腫瘍およびリンパ性癌、腎臓癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、脳腫瘍、頭頸部癌、皮膚癌、子宮癌、精巣癌、食道癌、および肝臓癌、リンパ腫(非ホジキンおよびホジキンリンパ腫を含む)、白血病、ならびに多発性骨髄腫を含む。
「泌尿生殖器癌」は、ヒト尿路および生殖器組織の癌を意味し、腎臓癌、膀胱癌、尿路癌、尿道癌、前立腺癌、陰茎癌、精巣癌、外陰癌、膣癌、子宮頸部癌および卵巣組織の癌を含むがこれらに限定されない。
【0023】
本明細書において処置されるべき癌は、N-カドヘリンの過剰な発現により特徴づけられる癌であり得る。あるいは、本明細書において処置されるべき癌は、N-カドヘリンタンパク質が正常もしくは低いレベルで発現している癌であるか、またはN-カドヘリンタンパク質が一部の細胞で発現しており、N-カドヘリンタンパク質が過剰発現していない癌であり得る。本発明の1つの態様において、診断もしくは予後診断アッセイは、患者の癌がN-カドヘリンの発現により特徴づけられるか否かを決定するために行われ得る。そのような増幅/発現を決定するためのさまざまなアッセイが意図され、それは、免疫組織化学、FISHおよびシェッド抗原アッセイ、サザンブロッティング、またはPCR技術を含む。さらに、N-カドヘリン発現または増幅は、インビボ診断アッセイを用いて、例えば、検出可能な標識(例えば、放射性同位体)で標識された検出されるべき分子に結合する分子(例えば、抗体)を投与し、当該標識の局在について患者を外部からスキャンすることにより評価され得る。ある態様において、処置されるべき癌は、未だ浸潤的ではないがN-カドヘリンを発現している。
【0024】
「処置抵抗性の」癌、腫瘍細胞および腫瘍は、化学療法、ホルモン療法、放射線治療、および免疫療法を含むアポトーシス仲介(例えば、細胞死受容体シグナル伝達、例えば、Fasリガンド受容体、TRAIL受容体、TNF-R1、化学療法剤、放射線を介した)癌治療および非アポトーシス仲介(例えば、毒性のある薬剤、化学薬品)癌治療のいずれか、もしくは両方に対して抵抗性をもつようになるか、もしくは不応性になった癌を意味する。
【0025】
「過剰発現」は、コントロール組織サンプルにおけるN-カドヘリン、LY6-EおよびE-カドヘリンのRNAもしくはタンパク質発現と比較した場合に、試験組織サンプルにおけるN-カドヘリン、LY6-EおよびE-カドヘリンのRNAもしくはタンパク質発現がかなり高いことを意味する。1つの態様において、組織サンプルは自家である。浸潤、転移、ホルモン非依存性(例えば、アンドロゲン非依存性)、または処置に対する抵抗性もしくはその可能性の増大と関連する癌試験組織サンプル(例えば、膀胱、前立腺)は、転移への進行を示す可能性が低い患者からの癌組織または正常な(すなわち、非癌)組織サンプルと比較した場合に、一般に、少なくとも2倍以上、しばしば、3倍、4倍、5倍、8倍、10倍またはそれ以上までのN-カドヘリンもしくはLY6-E mRNAまたはタンパク質の発現を有する。そのような差異は、ほぼ同じように試験およびコントロールサンプルを載せたゲルのバンドを見ると容易に明らかであり得る。増加した量のN-カドヘリンまたはLy6-Eを発現する前立腺癌は、浸潤性、転移性、またはアンドロゲン非依存性もしくは処置抵抗性癌への進行をより生じやすい。原発性腫瘍におけるわずかな割合のN-カドヘリンもしくはLy6-E陽性細胞が再発および転移の高いリスクを有する腫瘍を同定し得ることが可能であるので、N-カドヘリンもしくはLy6-E陽性についてさまざまなカットオフ値が関連する。「過剰発現する」、「過剰発現」または「過剰発現した」なる用語は交換して使用することが可能であり、正常細胞と比較した場合に通常癌細胞において検出可能なより高いレベルで転写もしくは翻訳される遺伝子を意味する。したがって、過剰発現は、タンパク質およびRNAの両方の過剰発現(増加した転写、転写後プロセッシング、翻訳、翻訳後プロセッシング、改変された安定性、および改変されたタンパク質分解による)、ならびに改変されたタンパク質輸送パターンおよび基質の増加した酵素加水分解のような増大した機能的活性による局所的過剰発現(増加した核局在)を意味する。過剰発現はまた、正常細胞もしくは比較細胞(例えば、BPH細胞)と比較して、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上であり得る。
【0026】
「N-カドヘリンを発現する癌」および「N-カドヘリンの発現と関連する癌」なる用語は、交換して使用することが可能であり、上記定義にしたがって、N-カドヘリンを発現する癌細胞もしくは組織を意味する。
【0027】
「癌関連抗原」または「腫瘍特異的マーカー」または「腫瘍マーカー」なる用語は、交換して使用することが可能であり、正常細胞と比較した場合に癌細胞において選択的に発現し、薬剤の癌細胞への選択的標的化のために有用な分子(典型的には、タンパク質、炭水化物または脂質)を意味する。マーカーまたは抗原は、細胞表面上に、または細胞内で発現し得る。しばしば、癌関連抗原は、正常細胞と比較した場合に、癌細胞において発現し、最小の分解のみを有する安定化した分子であり、例えば、正常細胞と比較して2倍の発現、3倍の発現、またはそれ以上の発現である。しばしば、癌関連抗原は、癌細胞において適当に合成されない分子であり、例えば、正常細胞で発現する分子と比較した場合に、欠損、付加または突然変異を含む分子である。しばしば、癌関連抗原は、専ら癌細胞において発現し、正常細胞において合成されないか、または発現しない。細胞表面腫瘍マーカーは、例えば、乳癌についてのタンパク質c-erbB-2およびヒト上皮成長因子受容体(HER)、前立腺癌についてのPSMA、および多くの癌(乳癌、卵巣癌および結腸直腸癌を含む)における糖鎖ムチンを含む。例示的な細胞内腫瘍マーカーは、例えば、突然変異型腫瘍サプレッサーもしくは細胞周期タンパク質、例えば、p53を含む。
【0028】
逆に、E-カドヘリンは、一般に浸潤性、転移性、またはアンドロゲン非依存性もしくは処置抵抗性癌へ進行する可能性がある癌患者からの組織サンプル中の癌組織サンプルで発現している。この発現は、2倍、3倍、4倍、または少なくとも5倍であり得る。そのような差異は、ほぼ同じように試験およびコントロールサンプルを載せたゲルのバンドを見ると容易に明らかであり得る。したがって、浸潤性、転移性、またはアンドロゲン非依存性もしくは処置抵抗性癌へ進行する可能性がある癌における組み合わせたN-カドヘリン/E-カドヘリン値は大きくて、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または20倍以上であり得る。原発性腫瘍におけるわずかな割合のN-カドヘリン陽性細胞が再発および転移の高いリスクを有する腫瘍を同定し得ることが可能であるので、N-カドヘリン陽性/E-カドヘリン陰性についてさまざまなカットオフ値が関連する。
【0029】
「アゴニスト」は、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに結合し、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性もしくは発現を刺激し、増加させ、活性化し、促進し、増大させ、感受性を高め、または上方調節する薬剤を意味する。
【0030】
「アンタゴニスト」は、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの発現を阻害するか、または部分的もしくは全体的に結合し、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの刺激を妨害し、その活性を減少させ、妨げ、遅延させ、不活性化し、感受性を弱め、または下方調節する薬剤を意味する。
【0031】
発現もしくは活性の「インヒビター」、「アクチベーター」、および「モジュレーター」は、各々、発現もしくは活性についてのインビトロおよびインビボアッセイを用いて同定される阻害分子、活性化分子、または調節分子を意味するために使用され、例えば、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、ならびにそれらのホモログおよび模倣剤である。「モジュレーター」なる用語は、「インヒビター」および「アクチベーター」を含む。インヒビターは、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を阻害するか、またはそれに結合し、刺激もしくは酵素学的活性を部分的もしくは全体的に妨害し、それを減少させ、妨害し、活性を遅延させ、不活性化し、感受性を弱め、またはその活性を下方調節する薬剤、例えば、アンタゴニストである。アクチベーターは、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を誘導するか、もしくは活性化し、またはそれに結合し、刺激し、増加させ、オープンにし、活性化し、促進し、活性もしくは酵素学的活性を促進し、感受性を高め、またはその活性を上方調節する薬剤、例えば、アゴニストである。モジュレーターは、天然および合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、小分子化合物などを含む。インヒビターおよびアクチベーターを同定するためのアッセイは、例えば、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの存在もしくは非存在下で推定上のモジュレーターを細胞に適用し、次いで、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチド活性についての機能的効果を決定することを含む。効果の程度を調べるために、潜在的なアクチベーター、インヒビター、またはモジュレーターで処理される本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを含むサンプルまたはアッセイを、インヒビター、アクチベーター、またはモジュレーターなしのコントロールサンプルと比較する。コントロールサンプル(モジュレーターで処理していない)は、100%の相対活性を割り当てられる。コントロールと比較して本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性値が約80%、所望により50%または25-1%である場合に、阻害が達成される。コントロールと比較して本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性値が110%、所望により150%、所望により200-500%、または1000-3000%高い場合に、活性化が達成される。
【0032】
「試験化合物」または「薬剤候補」または「モジュレーター」なる用語または本明細書で使用される文法的同等物は、天然で生じるか、もしくは合成の任意の分子を意味し、例えば、タンパク質、オリゴペプチド(例えば、約5から約25アミノ酸長、好ましくは、約10から20または12から18アミノ酸長、好ましくは、12、15、または18アミノ酸長)、有機小分子、多糖、脂質、脂肪酸、ポリヌクレオチド、RNAi、siRNA、抗体、オリゴヌクレオチドなどである。試験化合物は、試験化合物のライブラリーの形態、例えば、十分な範囲の多様性を提供するコンビナトリアルもしくは無作為化ライブラリーであり得る。試験化合物は、所望により、融合パートナー、例えば、標的化化合物、レスキュー化合物、二量体化化合物、安定化化合物、接近可能化合物、および他の機能性部分と結合している。慣用的には、有用な特性を有する新規化学的存在は、ある望ましい特性もしくは活性、例えば、阻害活性を有する試験化合物(「リード化合物」と呼ばれる)を同定し、リード化合物の変形を作製し、それらの変形化合物の特性および活性を評価することにより作製される。しばしば、そのような解析のために、ハイスループットスクリーニング(HTS)法が使用される。
【0033】
「有機小分子」は、天然で生じるか、もしくは合成の有機分子であって、約50ダルトンから約2500ダルトン、好ましくは、約50ダルトンから約2000ダルトン、好ましくは、約100ダルトンから約1000ダルトン、より好ましくは、約200ダルトンから約500ダルトンの分子量を有する分子を意味する。
【0034】
細胞毒性剤は、「細胞周期特異的」薬剤または「抗有糸分裂」剤または「細胞骨格相互作用」剤を含む。これらの用語は、交換して使用することが可能であり、細胞分裂を妨害する任意の薬剤を意味する。そのような薬剤は、化学療法において有用である。一般に、細胞周期特異的薬剤は、細胞骨格タンパク質であるチューブリンに結合してチューブリンの微小管に重合する能力を妨害し、その結果、中期での細胞分裂の停止を生じる。例えば、細胞周期特異的薬剤は、ビンカ・アルカロイド、タキサン、コルヒチンおよびポドフィロトキシンを含む。例えば、ビンカ・アルカロイドは、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンを含む。例えば、タキサンは、パクリタキセルおよびドセタキセルを含む。細胞骨格相互作用剤の他の例は、2-メトキシエストラジオールを含む。
【0035】
「siRNA」または「RNAi」は、遺伝子または標的遺伝子と同じ細胞でsiRNAが発現したときに、当該遺伝子または標的遺伝子の発現を減少させるか、もしくは阻害する能力を有する二本鎖RNAを形成する核酸を意味する。したがって、「siRNA」または「RNAi」は、相補鎖により形成される二本鎖RNAを意味する。ハイブリダイズして二本鎖分子を形成するsiRNAの相補性部分は、一般に、実質的にもしくは完全な同一性を有する。1つの態様において、siRNAは、標的遺伝子と実質的にもしくは完全な同一性を有し、二本鎖siRNAを形成する核酸を意味する。一般に、siRNAは、少なくとも約15-50ヌクレオチド長であり、例えば、二本鎖siRNAの各々の相補的な配列は、15-50ヌクレオチド長であり、二本鎖siRNAは、約15-50塩基対長、好ましくは、約20-30塩基ヌクレオチド、好ましくは、約20-25もしくは約24-29ヌクレオチド長、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30ヌクレオチド長である。
【0036】
siRNA分子およびベクターの設計および作製は、当業者に既知である。例えば、適当なsiRNAを設計するための効率的な方法は、mRNA転写産物のAUG開始コドンで開始し(例えば、図5を参照のこと)、AAジヌクレオチド配列についてスキャンすることである(Elbashir et al. EMBO J 20: 6877-6888 (2001)を参照のこと)。各AAおよび3'隣接ヌクレオチドは、潜在的なsiRNA標的部位である。隣接部位配列の長さは、siRNAの長さを決定するであろう。例えば、19個の隣接部位は、21ヌクレオチド長のsiRNAを提供するであろう。3'オーバーハングUUジヌクレオチドを有するsiRNAは、しばしば最も効果的である。この方法はまた、RNA pol IIIを用いてヘアピン型siRNAを転写する場合に適合する。RNA pol IIIは、4-6ヌクレオチドポリ(T)トラクト(tract)で転写を終結し、短いポリ(U)テールを有するRNA分子を生じる。しかしながら、他の3'末端ジヌクレオチドオーバーハングを有するsiRNAがまたRNAiを効率的に誘導し得て、当該配列が経験的に選択され得る。選択性について、他のコード配列と相同な16-17個以上の連続した塩基対を有する標的配列は、BLAST探索(National Center for Biotechnology Information (NCBI)ウェブサイト: ncbi.nlm.nih.gov/BLASTを参照のこと)を行うことにより避けることができる。
【0037】
RNAiを誘導するためにsiRNAが直接投与されるか、またはsiRNA発現ベクターが使用され得て、それらは異なる設計基準を有し得る。ベクターは、短いスペーサー配列により分離された2個の逆位反復配列を挿入したものであり得て、それは転写を終結するために使用されるTのストリングで終結する。発現したRNA転写産物は、低分子ヘアピン型siRNAに折り畳まれることが予測される。siRNA標的配列の選択、推定上のヘアピンのステムをコードする逆位反復配列の長さ、逆位反復配列の順序、ヘアピンのループをコードするスペーサー配列の長さおよび組成、ならびに5'-オーバーハングの存在もしくは非存在は変えることができる。siRNA発現カセットの好ましい順序は、センス鎖、短いスペーサー、およびアンチセンス鎖である。これらのさまざまなステム長(例えば、15から30個)を有するヘアピン型siRNAが適当であり得る。ヘアピン型siRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖を繋ぐループの長さは、種々の長さ(例えば、3から9ヌクレオチドまたはそれ以上の長さ)を有し得る。ベクターは、siRNAをコードするヌクレオチド配列に操作可能に結合したプロモーターおよび発現エンハンサーまたは他の制御エレメントを含み得る。発現「コントロール配列」は、特定の宿主生物において操作可能に結合したコード配列の発現のために必要なDNA配列を意味する。原核生物のために適当な制御配列は、例えば、プロモーター、所望によりオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核生物細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが既知である。これらの制御エレメントは、それが応答性である外部因子を加えるか、またはそれを制御することにより、当業者が遺伝子の発現をオフまたはオンにできるように設計され得る。
【0038】
望まれる治療遺伝子コードおよび制御配列を含む適当なベクターの構築は、当分野において十分に理解されている連結および制限酵素技術を使用する(Maniatis et al., in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1982)を参照のこと)。単離プラスミド、DNA配列、または合成オリゴヌクレオチドは、望まれる形態で、切断、調整、および再連結される。
【0039】
核酸は、それが他の核酸配列と機能的関係に置かれた場合に、「操作可能に結合して」いる。例えば、プレ配列または分泌リーダーについてのDNAは、それがポリペプチドの分泌に参加するプレタンパク質として発現する場合にポリペプチドについてのDNAと操作可能に結合しており; プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合にコード配列と操作可能に結合しており; またはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように位置している場合にコード配列と操作可能に結合している。一般に、「操作可能に結合して」は、結合するDNA配列が互いに近くに存在することを意味しており、分泌リーダーの場合には隣接して、リーディングフェーズ(reading phase)に存在することを意味する。しかしながら、エンハンサーは、隣接している必要がない。結合は、簡便な制限酵素部位における連結により達成される。そのような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプターもしくはリンカーが慣用的な方法にしたがって使用される。
【0040】
「機能的効果を決定する」は、例えば物理的および化学的もしくは表現型効果を測定して、直接もしくは間接的に本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの影響下にあるパラメーターを増大もしくは減少させる化合物についてアッセイすることを意味する。そのような機能的効果は、当業者に既知の任意の方法により測定され得て、当該技術は、例えば、タンパク質についての分光学的(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学的(例えば、形態)、クロマトグラフの、もしくは可溶性特性変化; 誘導性マーカーまたはタンパク質の転写活性の測定; 結合活性または結合アッセイ(例えば、抗体への結合)の測定; リガンド結合親和性における変化の測定; カルシウム流入の測定; 本発明のポリペプチドの酵素学的産物の蓄積または基質の欠損の測定; 酵素学的活性、例えば、キナーゼ活性の変化、本発明のポリペプチドのタンパク質レベルにおける変化の測定; RNA安定性の測定; G-タンパク質結合; G-タンパク質共役受容体(GPCR)リン酸化または脱リン酸化; シグナル伝達、例えば、受容体-リガンド相互作用、セカンドメッセンジャー濃度(例えば、cAMP、IP3、もしくは細胞内Ca2+); 例えば化学発光、蛍光、比色反応、抗体結合、誘導性マーカー、およびリガンド結合アッセイによる、下流のもしくはレポーター遺伝子発現(CAT、ルシフェラーゼ、β-gal、GFPなど)の同定であり得る。
【0041】
阻害の程度を調べるために、潜在的なアクチベーター、インヒビター、またはモジュレーターで処理される本明細書に記載された核酸もしくはタンパク質を含むサンプルまたはアッセイが、インヒビター、アクチベーター、またはモジュレーターなしのコントロールサンプルと比較される。コントロールサンプル(インヒビターで処理していない)は、100%の相対タンパク質活性を割り当てられる。コントロールと比較して活性値が約80%、好ましくは50%、より好ましくは25-0%である場合に、阻害が達成される。コントロール(アクチベーターで処理していない)と比較して活性値が110%、より好ましくは150%、より好ましくは200-500% (すなわち、コントロールと比較して2〜5倍高い)、より好ましくは1000-3000%高い場合に、活性化が達成される。
【0042】
「生物学的サンプル」は、組織切片、例えば、生検および部検サンプル、ならびに組織学的目的のために得られる凍結切片を含む。そのようなサンプルは、血液および血液画分もしくは産物(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球細胞など)、唾液、組織、培養細胞、例えば、初代培養、移植片、および形質転換細胞、排泄物、尿などを含む。生物学的サンプルは、一般に、真核生物、最も好ましくは哺乳類、例えば、霊長類、例えば、チンパンジーもしくはヒト; ウシ; イヌ; ネコ; 齧歯類、例えば、モルモット、ラット、マウス; ウサギ; または鳥類; 爬虫類; または魚類から取得される。
【0043】
「生検」は、診断もしくは予後診断評価のために組織サンプルを取り出す工程、および組織標本自体を意味する。当分野で既知のあらゆる生検技術は、本発明の診断および予後診断法に適用され得る。生検技術は、いくつかある要因の中で特に、評価される組織の型(すなわち、前立腺、リンパ節、肝臓、骨髄、血液細胞)、腫瘍のサイズおよび型(すなわち、固形または懸濁(すなわち、血液または腹水))に依存し得る。代表的な生検技術は、切除生検、切開生検、針生検、外科的生検、および骨髄生検を含む。「切除生検」は、腫瘍塊の全体を、それを取り囲む正常な組織の一部と共に取り出すことを意味する。「切開生検」は、腫瘍の断面直径を含む組織の一部を取り出すことを意味する。内視鏡もしくは蛍光透視により行われる診断または予後診断は、腫瘍塊の「針生検」、または一般に腫瘍塊内からの細胞の懸濁物を得る「穿刺吸引生検」を必要とし得る。生検技術は、例えば、Harrison's Principles of Internal Medicine, Kasper, et al., eds., 16th ed., 2005, Chapter 70, and throughout Part Vに記載されている。
【0044】
2個またはそれ以上の核酸もしくはポリペプチド配列について、「同一の」または%「同一性」なる用語は、同じであるか、または下記の既定パラメーターを有するBLASTもしくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを用いて、またはマニュアルアライメントおよびインスペクション(例えば、NCBIウェブサイト: ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/または同種のものを参照のこと)により測定されたものと同じである特定の割合(すなわち、比較ウィンドウまたは指定された領域にわたり、最大一致のために比較して配列した場合に、特定の領域にわたり約60%の同一性、好ましくは、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性)のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有する2個またはそれ以上の配列もしくはサブ配列を意味する。次いで、そのような配列は、「実質的に同一である」と言われる。この定義はまた、試験配列の相補性配列(compliment)を意味するか、またはそれに適用され得る。この定義はまた、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有する配列を含む。下記したとおり、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを説明し得る。好ましくは、同一性は、少なくとも約25アミノ酸もしくはヌクレオチド長の領域にわたって、またはより好ましくは50-100アミノ酸もしくはヌクレオチド長の領域にわたって存在する。
【0045】
配列比較について、一般に1個の配列が試験配列と比較するための参照配列として使用される。配列比較アルゴリズムを用いる場合に、試験および参照配列をコンピューターに入力し、所望により、サブ配列座標(subsequence coordinates)を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。好ましくは、規定のプログラムパラメーターが使用され得るか、あるいはパラメーターは指定され得る。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比較した場合の試験配列についての%配列同一性を計算する。
【0046】
本明細書で使用される「比較ウィンドウ」は、2個の配列を最適に並べた後に、当該配列を隣接する位置の同じ数の参照配列と比較し得る少なくとも20から600個、一般には約50から約200個、より一般には約100から約150個からなる群から選択される隣接する位置の数のいずれか1個の区分への言及を含む。比較のための配列アライメント法は、当分野において既知である。比較のための最適な配列アライメントは、例えば、Smith & Watermanの局所相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482 (1981))、Needleman & Wunschの相同性アライメントアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:443 (1970))、Pearson & Lipmanの相同性検索法(Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988))、これらのアルゴリズムの電子化実行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、またはマニュアルアライメントおよびインスペクション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)を参照のこと)により行われ得る。
【0047】
%配列同一性および配列類似性を決定するために適当なアルゴリズムの好ましい例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、各々Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0は、本発明の核酸およびタンパク質についての%配列同一性を決定するために、本明細書に記載されたパラメーターを用いて使用される。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (NCBI)ウェブサイトを介して一般に利用可能である。BLASTアルゴリズムは、データベース配列中を同じ長さのワードで整列した場合、ある程度ポジティブな閾値スコアTとマッチするか、もしくはそれを満足させるクエリー配列中の短ワード長Wを同定することによって、高スコア配列ペア(HSP)を同定することを最初に含む。Tは、近傍ワードスコア閾値と称される(上記Altschul et al.)。これらの最初の近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを発見するための検索を開始するためのシーズとして機能する。ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に伸展される。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメーターM (一致残基の対についての報償スコア; 常に > 0)およびN (不一致残基についての罰則スコア; 常に < 0)を用いて計算される。アミノ酸配列について、累積スコアを計算するためにスコアマトリックス(scoring matrix)が使用される。各方向におけるワードヒットの伸長は、下記の場合に停止される: 累積アライメントスコアがその最大到達値から数量X(quantity X)だけ低下する場合; 1以上のネガティブスコアリング残余アライメントの累積により、累積スコアがゼロ以下になる場合; またはいずれかの配列の終わりに達する場合。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、TおよびXは、アライメントの感度およびスピードを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列のために)は、既定値として、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列のために、BLASTPプログラムは、既定値として、3のワード長(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62採点マトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照のこと)、50の配列(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。
【0048】
「核酸」は、一本鎖もしくは二本鎖形態でのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマー、ならびにその相補体を意味する。当該用語は、既知のヌクレオチド類似体または修飾される骨格残基もしくは結合を含む核酸を包含し、それは、合成の、天然で生じる、および非天然で生じるものであり、参照核酸と類似する結合特性を有し、参照ヌクレオチドと類似する方法で代謝される。そのような類似体は、ホスホロチオエート、ホスホロアミダート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)を含むがこれらに限定されない。
【0049】
他に記載がなければ、特定の核酸はまた、その保存的に修飾された変異型(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列、ならびに明確に示された配列を明らかに包含する。特に、縮重コドン置換は、1個またはそれ以上の選択された(またはすべての)コドンの第3の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することにより達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。核酸なる用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと交換して使用することが可能である。
【0050】
特定の核酸配列はまた、黙示的に「スプライス変異体」を包含する。同様に、核酸によりコードされる特定のタンパク質は、当該核酸のスプライス変異体によりコードされる任意のタンパク質を黙示的に包含する。名称が示しているとおり、「スプライス変異体」は、遺伝子の選択的スプライシングの産物である。転写後に最初の核酸転写産物がスプライスされ得て、その結果、異なる(別の)核酸スプライス産物は、異なるポリペプチドをコードする。スプライス変異体の産生メカニズムは変わり得るが、エクソンの選択的スプライシングを含む。読み過し転写(read-through transcription)による同じ核酸に由来する別のポリペプチドはまた、本定義に包含される。スプライス産物の組み換え型を含むスプライシング反応のすべての産物が本定義に包含される。カリウムチャネルスプライス変異体の例は、Leicher, et al., J. Biol. Chem. 273(52):35095-35101 (1998)に記載されている。
【0051】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」なる用語は、本明細書において交換して使用することが可能であり、アミノ酸残基のポリマーを意味する。当該用語は、1個またはそれ以上のアミノ酸残基が対応する天然で生じるアミノ酸の人工的化学模倣剤であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然で生じるアミノ酸ポリマーおよび非天然で生じるアミノ酸ポリマーに適用される。
【0052】
「アミノ酸」なる用語は、天然で生じるアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然で生じるアミノ酸と同様の方法で機能するアミノ酸類似体および模倣剤を意味する。天然で生じるアミノ酸は、遺伝子コードによりコードされるアミノ酸、および後に修飾されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリン)である。アミノ酸類似体は、天然で生じるアミノ酸、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合するα炭素、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムと同様の基本的化学構造を有する化合物を意味する。そのような類似体は、天然で生じるアミノ酸と同様の基本的化学構造を保持しながら、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有する。アミノ酸模倣剤は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然で生じるアミノ酸と同様の方法で機能する化合物を意味する。
【0053】
アミノ酸は、本明細書において、通常既知である三文字表記によるか、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推薦される一文字表記により示され得る。同様にヌクレオチドは、通常受け入れられる一文字コードにより示され得る。
【0054】
「保存的に修飾された変異型」は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異型は、同一のもしくは実質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を意味するか、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一の配列を意味する。遺伝子コードの縮重のために、多くの機能的に同一な核酸が任意の特定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUのすべては、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定されるすべての位置において、コドンは、コードされるポリペプチドを変えることなく、記載された対応するコドンのいずれかに置換され得る。そのような核酸変形は、保存的な修飾変形の1種である「サイレント変形」である。ポリペプチドをコードする本明細書に記載されたすべての核酸配列はまた、可能性のある核酸のすべてのサイレント変形を記載する。当業者は、核酸中の各コドン(通常メチオニンについての唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンについての唯一のコドンであるTGGは除く)が修飾され、機能的に同一な分子を産生し得ることを認識する。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変形は、実際のプローブ配列ではなく発現産物に関して、各々の記載された配列に含まれている。
【0055】
アミノ酸配列について、当業者は、コード配列中の単一のアミノ酸または少数のアミノ酸を変更、付加または欠失する核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列における個々の置換、欠失または付加が保存的に修飾された変異型であり、変更が化学的に類似するアミノ酸でのアミノ酸置換を生じることを認識している。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当分野において既知である。さらに、そのような保存的に修飾された変異型は、本発明の多型変異体、種間ホモログ、および対立遺伝子を除外するものではない。
【0056】
下記の8個の群の各々は、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む: 1) アラニン(A)、グリシン(G); 2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E); 3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q); 4) アルギニン(R)、リシン(K); 5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V); 6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W); 7) セリン(S)、スレオニン(T); および8) システイン(C)、メチオニン(M) (例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
【0057】
「標識」または「検出可能な部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理学的手段により検出可能な組成物である。例えば、有用な標識は、32P、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(例えば、通常ELISAで使用される)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテンおよび例えば放射性標識をペプチドに組み込むことにより検出可能となり得るか、またはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用され得るタンパク質を含む。
【0058】
「組み換え」なる用語は、例えば細胞、核酸、タンパク質またはベクターについての参照として使用されるとき、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが異種核酸もしくはタンパク質の導入または天然の核酸もしくはタンパク質の置換により修飾されているか、または当該細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組み換え細胞は、細胞の天然型(非組み換え型)では見出されていない遺伝子を発現するか、または異常に発現しているか、低発現(under expressed)であるか、または発現していない天然遺伝子を発現する。
【0059】
「異種」なる用語は、核酸の一部について使用されるとき、核酸が天然では互いに同じ関係で見出されない2個またはそれ以上のサブ配列を含むことを示す。例えば、一般に、新規の機能性核酸を作製するように並べられる関連のない遺伝子からの2個またはそれ以上の配列(例えば、ある起源からのプロモーターおよび他の起源からのコード領域)を有する核酸が組み換え的に産生される。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が天然では互いに同じ関係で見出されない2個またはそれ以上のサブ配列(例えば、融合タンパク質)を含むことを示す。
【0060】
「ストリンジェントハイブリダイゼーション条件」なる句は、一般に核酸の複雑な混合物中で、プローブが他の配列ではなくその標的配列にハイブリダイズする条件を意味する。ストリンジェント条件は、配列依存的であり、異なる条件下で変わり得る。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する詳細な手引きは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes, “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays” (1993)に見出される。一般に、ストリンジェント条件は、規定されたイオン強度pHでの特定の配列についての熱融点(Tm)よりも約5-10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする(規定のイオン強度、pH、および核酸濃度で)温度である(標的配列が過剰に存在する場合に、Tmでプローブの50%が平衡状態で占められる)。ストリンジェント条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加により達成され得る。選択的もしくは特異的なハイブリダイゼーションについて、陽性シグナルは、少なくとも2倍のバックグラウンドであり、好ましくは、10倍のバックグラウンドハイブリダイゼーションである。ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、例えば、下記のとおりであり得る: 42℃で、50% ホルムアミド、5x SSC、および1% SDSでインキュベートするか、または65℃で、5x SSC、1% SDSでインキュベートし、65℃で、0.2x SSCおよび0.1% SDSで洗浄する。
【0061】
ストリンジェント条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一である場合には、なお実質的に同一である。これは、例えば、核酸のコピーが遺伝子コードにより許容される最大限のコドン縮重を用いて作製される場合に生じる。そのような場合において、核酸は一般に、中程度のストリンジェントハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。「中程度のストリンジェントハイブリダイゼーション条件」は、例えば、37℃で、40% ホルムアミド、1 M NaCl、1% SDSの緩衝液でのハイブリダイゼーション、および45℃で、1X SSCでの洗浄を含む。陽性ハイブリダイゼーションは、少なくとも2倍のバックグラウンドである。当業者は、類似のストリンジェンシー条件を提供する別のハイブリダイゼーションおよび洗浄条件が利用可能であることを容易に認識し得る。ハイブリダイゼーションパラメーターを決定するためのさらなる指針は、多くの文献、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, ed. Ausubel, et al., John Wiley & Sonsにおいて提供される。
【0062】
PCRについて、アニーリング温度は、プライマーの長さに依存して32℃から48℃の間で変わり得るが、低ストリンジェンシー増幅について約36℃の温度が一般的である。高ストリンジェンシーPCR増幅について、高ストリンジェンシーアニーリング温度は、プライマーの長さおよび特異性に依存して約50℃から約65℃の範囲内であり得るが、約62℃の温度が一般的である。高および低ストリンジェンシー増幅についての一般的なサイクル条件は、90℃ - 95℃で30秒 - 2分間の変性工程、30秒 - 2分間続くアニーリング工程、および72℃で1 - 2分間の伸張工程を含む。低および高ストリンジェンシー増幅反応についてのプロトコールおよび指針は、例えば、Innis et al. (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, Inc. N.Y.)において提供される。
【0063】
「抗体」は、抗原に特異的に結合して認識する免疫グロブリン遺伝子からのフレームワーク領域を含むポリペプチドまたはその断片を意味する。認識される免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμ定常領域遺伝子、ならびに多種多様な免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、κまたはλとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεとして分類され、それは順に免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEとして定義される。一般に、抗体の抗原結合領域は、結合特異性および親和性において最も重要である。
【0064】
例えば、免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各々の四量体は、ポリペプチド鎖の2個の同一な対からなり、各対は、1個の「軽」鎖(約25 kD)および1個の「重」鎖(約50-70 kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100から110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を特徴づける。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)なる用語は、それぞれ、これらの軽鎖および重鎖を意味する。
【0065】
抗体は、例えば、インタクト免疫グロブリンとして、またはさまざまなペプチターゼを用いた消化により産生される十分に特徴づけられた多くの断片として存在する。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域内のジスルフィド結合の下で抗体を消化して、Fab(それ自体はジスルフィド結合によりVH-CH1に付加された軽鎖である)の二量体であるF(ab)'2を産生する。F(ab)'2は、穏やかな条件下で減少し得て、ヒンジ領域内のジスルフィド結合を破壊して、それにより、F(ab)'2二量体をFab'一量体に変換し得る。Fab'単量体は、実質的にヒンジ領域の一部を有するFabである(Fundamental Immunology (Paul ed., 3d ed. 1993)を参照のこと)。さまざまな抗体断片がインタクト抗体の消化の観点で定義されるが、当業者は、そのような断片が化学的にデノボで合成されるか、または組み換えDNA技術を用いて合成され得ることを理解している。したがって、本明細書で使用される抗体なる用語はまた、全抗体の修飾により産生される抗体断片、または組み換えDNA技術を用いてデノボで合成される抗体断片(例えば、一本鎖Fv)もしくはファージディスプレイライブラリー(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)を参照のこと)を用いて同定される抗体断片を含む。
【0066】
本発明の適当な抗体の作製のために、および本発明による使用のために(例えば、組み換えモノクローナルもしくはポリクローナル抗体)、当分野で既知の多くの技術が使用され得る(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4: 72 (1983); Cole et al., pp. 77-96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. (1985); Coligan, Current Protocols in Immunology (1991); Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988); およびGoding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed. 1986)を参照のこと)。関心のある抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子は、細胞からクローン化され得て、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子がハイブリドーマからクローン化され、組み換えモノクローナル抗体を作製するために使用され得る。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーはまた、ハイブリドーマまたは形質細胞から作製され得る。重鎖および軽鎖遺伝子産物の無作為組み換えは、異なる抗原特異性を有する大規模な抗体のプールを産生する(例えば、Kuby, Immunology (3rd ed. 1997)を参照のこと)。一本鎖抗体または組み換え抗体の作製のための技術(米国特許第4,946,778号、米国特許第4,816,567号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体を作製するために適用され得る。トランスジェニックマウスまたは他の哺乳類のような他の生物はまた、ヒト化もしくはヒト抗体を発現するために使用され得る(例えば、米国特許第5,545,807号; 第5,545,806号; 第5,569,825号; 第5,625,126号; 第5,633,425号; 第5,661,016号, Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368:856-859 (1994); Morrison, Nature 368:812-13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14:845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996); およびLonberg & Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)を参照のこと)。あるいは、ファージディスプレイ技術は、選択された抗原に特異的に結合する抗体および異種Fab断片を同定するために使用され得る(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990); Marks et al., Biotechnology 10:779-783 (1992)を参照のこと)。抗体はまた、二重特異性で、すなわち、2個の異なる抗原を認識できるように作製され得る(例えば、WO 93/08829, Traunecker et al., EMBO J. 10:3655-3659 (1991); およびSuresh et al., Methods in Enzymology 121:210 (1986)を参照のこと)。抗体はまた、異種抱合体、例えば、2個の共有結合した抗体、または免疫毒素であり得る(例えば、米国特許第4,676,980号、WO 91/00360; WO 92/200373; およびEP 03089を参照のこと)。
【0067】
非ヒト抗体をヒト化もしくは霊長類化する方法は、当分野において既知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである起源から当該抗体に導入された1個またはそれ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、インポート残基と呼ばれ、一般に、インポート可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的にWinterおよび同僚による方法(例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988)およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと)にしたがって、ヒト抗体の対応する配列を齧歯類CDRもしくはCDR配列で置換することにより行われ得る。したがって、そのようなヒト化抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、実質的にインタクトヒト可変ドメインより少ない配列が非ヒト種由来の対応する配列で置換されている。実際には、ヒト化抗体は、一般に、いくつかのCDR残基および考えられるいくつかのFR残基が齧歯類抗体における類似部位からの残基で置換されたヒト抗体である。
【0068】
「キメラ抗体」は、(a) 抗原結合部位(可変領域)が、異なるか、もしくは改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域と結合するか、またはキメラ抗体に新規な特性を与える全体的に異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬剤などと結合するように、定常領域またはその部分が改変、置換もしくは変換されているか; または(b) 可変領域またはその部分が、異なるか、もしくは改変された抗原特性を有する可変領域で改変、置換もしくは変換されている抗体分子である。本発明のおよび本発明による使用のための好ましい抗体は、ヒト化および/またはキメラモノクローナル抗体を含む。
【0069】
1つの態様において、抗体は、「エフェクター」部分と結合する。エフェクター分子は、標識部分、例えば、放射性標識もしくは蛍光標識を含む任意の数の分子であり得るか、または治療部分であり得る。1つの局面において、抗体は、タンパク質の活性を調節する。そのようなエフェクター部分は、抗腫瘍剤、毒素、放射性薬剤、サイトカイン、二次抗体または酵素を含むがこれらに限定されない。さらに本発明は、本発明の抗体がプロドラッグを細胞毒性剤に変換する酵素と結合した態様を提供する。
【0070】
免疫抱合体は、エフェクター部分をN-カドヘリン陽性細胞、特に、N-カドヘリンもしくはLy6タンパク質を発現する細胞に標的化するために使用され得る。そのような差異は、ほぼ同じように試験およびコントロールサンプルを載せたゲルのバンドを見ると容易に明らかであり得る。細胞毒性剤は、例えば、リシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウムブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE) A、PE40、アブリン、およびグルココルチコイドおよび他の化学治療剤、ならびに放射性同位体を含むがこれらに限定されない。適当な検出可能マーカーは、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレートまたは酵素を含むがこれらに限定されない。
【0071】
ある態様において、本発明は、N-カドヘリンに対する抗体を提供する。N-カドヘリン抗体は、癌(例えば、前立腺もしくは膀胱癌)を処置するために、単独でもしくはエフェクター部分と組み合わせて全身的に使用され得る。毒素、例えば、リシンと結合したN-カドヘリン抗体、および非結合抗体は、天然でN-カドヘリン保有前立腺癌細胞に標的化される有用な治療剤であり得る。そのような抗体は、浸潤活性を妨害するのに有用であり得る。本発明による使用のための適当なN-カドヘリン抗体は、GC4、1H7、1F12および2B3を含むがこれらに限定されない。
【0072】
さらに、本発明のモノクローナル抗体のいずれかの抗原結合領域を含む本発明の組み換えタンパク質が癌を処置するために使用され得る。そのような状況において、組み換えタンパク質の抗原結合領域は、治療活性を有する第2のタンパク質の少なくとも機能的に活性な部分に連結される。第2のタンパク質は、酵素、リンホカイン、オンコスタチンまたは毒素を含むがこれらに限定されない。適当な毒素は、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウムブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE) A、PE40、リシン、アブリン、グルココルチコイドおよび放射性同位体を含む。
【0073】
治療剤と抗体を結合させるための技術は、既知である(例えば、Arnon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery"in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, "Antibody 担体s Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review" in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985); およびThorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev., 62:119-58 (1982)を参照のこと)。
【0074】
抗体と「特異的に(または選択的に)結合する」または「と特異的な(または選択的な)免疫反応性」なる句は、タンパク質またはペプチドについて参照するとき、しばしば、異種タンパク質集団および他の生物製剤(biologics)においてタンパク質の存在を決定する結合反応を意味する。したがって、指定された免疫アッセイ条件下で、特定の抗体は、少なくとも2倍のバックグラウンドで、より一般には、10から100倍以上のバックグラウンドで特定のタンパク質に結合する。そのような条件下での抗体への特異的結合は、特定のタンパク質に対してその特異性について選択される抗体を必要とする。例えば、ポリクローナル抗体は、選択された抗原と特異的な免疫反応性を有するが、他のタンパク質とは有さないポリクローナル抗体のみを得るように選択され得る。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を取り出すことにより達成され得る。特定のタンパク質と特異的な免疫反応性を有する抗体を選択するために、さまざまなイムノアッセイ様式が使用され得る。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的な免疫反応性を有する抗体を選択するために通常使用される(例えば、イムノアッセイ様式および特異的免疫反応活性を決定するために使用され得る条件についてHarlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual (1998)を参照のこと)。
【0075】
本明細書で使用される「治療上有効な用量もしくは量」は、それが投与されると効果を発揮する量を意味する。正確な用量および製剤は、処置の目的に依存しており、既知の技術を用いて当業者により確認され得る(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Gennaro, Editor (2003), およびPickar, Dosage Calculations (1999)を参照のこと)。
【0076】
「薬学的に許容される塩」または「薬学的に許容される担体」なる用語は、本明細書に記載された化合物上に見出される特定の置換基に応じて、相対的に非毒性の酸もしくは塩基で製造される活性化合物の塩を含むことを意味する。本発明の化合物が相対的に酸性官能基を含む場合に、塩基付加塩は、適当な不活性溶媒周辺またはその中で、そのような化合物の中性型を十分な量の望まれる塩基と接触させることにより取得され得る。薬学的に許容される塩基付加塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノもしくはマグネシウム塩、または類似する塩を含む。本発明の化合物が相対的に塩基性官能基を含む場合に、酸付加塩は、適当な不活性溶媒周辺またはその中で、そのような化合物の中性型を十分な量の望まれる酸と接触させることにより取得され得る。薬学的に許容される酸付加塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などのような無機酸に由来する塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような相対的に非毒性である有機酸に由来する塩を含む。また、アルギネート(arginate)などのようなアミノ酸の塩、ならびにグルクロン酸またはガラクツロン酸などのような有機酸の塩が含まれる(例えば、Berge et al., Journal of Pharmaceutical Science 66:1-19 (1977)を参照のこと)。本発明のある特定の化合物は、化合物が塩基もしくは酸付加塩に変換されるのを可能にする塩基性および酸性官能基の両方を含む。当業者に既知の他の薬学的に許容される担体は、本発明のために適当である。
【0077】
化合物の中性形態は、慣用的な方法で塩と塩基または酸を接触させて、本発明の化合物を単離することにより産生され得る。化合物の親型は、極性溶媒中での溶解性のような特定の物理的特性について、さまざまな塩形と異なるが、他の点において塩は、本発明の目的のために化合物の親型と同等である。
【0078】
塩形に加えて、本発明は、プロドラッグ形である化合物を提供する。本明細書に記載された化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で化学的変化を容易に受け、本発明の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、エクスビボ環境において化学的もしくは生化学的方法により本発明の化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、適当な酵素または化学試薬と共に経皮貼布容器に入れられたときに、ゆっくりと本発明の化合物に変換され得る。
【0079】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和物形態および水和物形態を含む溶媒和物形態で存在し得る。一般に、溶媒和物形態は、非溶媒和物形態と同等であり、本発明の範囲内に包含されることが意図される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶もしくは非晶質形態で存在し得る。一般に、すべての物理的形態は、本発明により意図される使用について同等であり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0080】
本発明の特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有しており; ラセミ化合物、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体はすべて、本発明の範囲内に包含されることを意図する。
【0081】
上皮間葉移行(EMT)は、上皮腫瘍細胞による間質性特徴の獲得を意味する。EMTは、癌において浸潤および運動性挙動に関与し、転移の基礎となる中心的な過程であり得る。EMTは、予後不良に関与し、複数の転写因子、例えば、SNAIL、SLUGおよびTWISTにより仲介される。
【0082】
E-カドヘリンは、上皮細胞-細胞間接着に関与する細胞表面タンパク質であり、浸潤および転移性固形腫瘍において通常失われる。
【0083】
詳細な態様
本発明は、N-カドヘリンの抗原決定基に結合可能なモノクローナル抗体を産生する2つのマウスハイブリドーマ細胞株を開示する。当該マウスハイブリドーマ細胞株は、ATCC受託番号PTA-9387(1H7)およびATCC受託番号PTA-9388(EC4)として寄託されている
【0084】
本発明の1つの態様において、抗体は、ATCC受託番号PTA-9387と命名されたハイブリドーマ細胞株により産生される。本発明の他の態様において、抗体は、ATCC受託番号PTA-9388と命名されたハイブリドーマ細胞株により産生される。
【0085】
細胞は、ブタペスト条約に基づいて、2008年7月23日、米国微生物株系統保存機関(ATCC)(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110)にATCC受託番号PTA-9387およびATCC受託番号PTA-9388として寄託された。生存が試験され、2008年8月29日に認証された。
【0086】
本発明のある態様において、米国微生物株系統保存機関に寄託されたATCC受託番号PTA-9387を有するハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体と同様に、インビボまたはインビトロでN-カドヘリンの同一の抗原決定基に結合可能である抗体またはその断片が提供される。本発明のある態様において、米国微生物株系統保存機関に寄託されたATCC受託番号PTA-9388を有するハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体と同様に、インビボまたはインビトロでN-カドヘリンの同一の抗原決定基に結合可能である抗体またはその断片が提供される。
【0087】
ある態様において、抗体は、N-カドヘリンの第1細胞外ドメインに結合することができる。ある態様において、抗体は、N-カドヘリンの第2細胞外ドメインに結合することができる。ある態様において、抗体は、N-カドヘリンの第3細胞外ドメインに結合することができる。ある態様において、抗体は、N-カドヘリンの第1から第3細胞外ドメインに結合することができる。ある態様において、抗体は、N-カドヘリンの第4細胞外ドメインに結合することができる。
【0088】
本発明はさらに、患者における癌細胞の成長を阻害するか、もしくは殺傷する方法に関する。当該方法は、一般に、抗体またはその結合断片が当該腫瘍細胞もしくは前立腺癌腫瘍細胞に結合し; 細胞活性を調節し; 腫瘍細胞の血管新生を阻害し; そして腫瘍細胞の成長阻害もしくは殺傷を引き起こすのに十分な条件下で、請求項5または11に記載の抗体またはその結合断片を患者に投与することを含む(ここで、癌細胞は、N-カドヘリンを発現するか、もしくは過剰発現する)。
【0089】
本発明のある態様において、抗体は、NFκ-βシグナル伝達および転写を活性化するか、もしくは阻害することにより細胞活性を調節する。本発明のある態様において、抗体は、N-カドヘリン内在化を活性化するか、もしくは阻害することにより細胞活性を調節する。本発明のある態様において、抗体は、PI3キナーゼもしくはAkt経路を活性化するか、もしくは阻害することにより細胞活性を調節する。本発明のある態様において、抗体は、β-カテニンシグナル伝達を活性化するか、もしくは阻害することにより細胞活性を調節する。本発明のある態様において、抗体は、N-カドヘリンとFGFRもしくは他のチロシンキナーゼ受容体の二量体化を妨害することにより細胞活性を調節する。本発明のある他の態様において、抗体は、ADAM10または他のメタロペプチダーゼによる切断を妨害するか、もしくは促進することにより細胞活性を調節する。
【0090】
ある態様において、患者における泌尿生殖器癌の成長を阻害するか、もしくは殺傷する抗体が提供される。ある態様において、患者における前立腺癌細胞の成長を阻害するか、もしくは殺傷する抗体が提供される。ある態様において、患者における膀胱細胞の成長を阻害するか、もしくは殺傷する抗体が提供される。
【0091】
製剤および投与
抗-N-カドヘリン抗体または免疫抱合体は、既知の方法で、例えば、静脈内投与で、例えば、ボーラス投与もしくは長期間にわたる継続した点滴で、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、髄腔内、経口、局所、もしくは吸入経路でヒト患者に投与される。抗体の静脈内もしくは皮下投与が好ましい。投与は、局所的または全身的であり得る。
【0092】
投与のための組成物は、一般に、薬学的に許容される担体、好ましくは、水性担体に溶解した本明細書に記載された薬剤(例えば、N-カドヘリンインヒビター、N-カドヘリン抗体および免疫抱合体、N-カドヘリンsiRNAならびにそのベクター)を含み得る。さまざまな水性担体、例えば、緩衝生理食塩水などが使用され得る。これらの溶液は滅菌されており、一般に、望ましくないものが含まれていない。これらの組成物は、慣用的な既知の滅菌技術により滅菌され得る。組成物は、所望により生理学的条件近くでの薬学的に許容される補助物質を含み得て、それは、例えば、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどであり得る。これらの製剤における活性剤の濃度は種々変わり得て、選択される特定の投与形態および患者の必要性に応じて、主に液体量、粘度、体重などに基づいて選択され得る。
【0093】
したがって、静脈内投与のための一般的な医薬組成物は、薬剤に応じて変わり得る。非経口で投与可能な組成物を製造する実際の方法は既知であるか、または当業者に明らかであり、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, 15th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1980)のような公開物に詳述されている。
【0094】
医薬組成物は、投与方法に応じてさまざまな単位用量形で投与され得る。例えば、経口投与のために適当な単位用量形は、粉末、錠剤、糖衣錠、カプセルおよびトローチ剤を含むがこれらに限定されない。経口で投与される抗体は、消化から保護されるべきであることが認識される。これは、一般に、当該分子を組成物に混合して、それらを酸および酵素学的加水分解に耐性にすることによるか、または適当な耐性担体、例えば、リポソームもしくは保護壁中に当該分子をパッケージ化することにより達成される。薬剤を消化から保護する方法は、当業者に既知である。
【0095】
特に本発明での使用のための抗体および免疫抱合体およびインヒビターの医薬製剤は、望まれる程度の純度を有する抗体を所望により薬学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤と混合することにより製造され得る。そのような製剤は、凍結乾燥製剤または水性溶液であり得る。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、使用される用量および濃度で、レシピエントに対して非毒性である。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、酢酸、リン酸、クエン酸、および他の有機酸; 抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、保存剤、低分子量ポリペプチド; タンパク質、例えば、血清アルブミンもしくはゼラチン、または親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン; ならびにアミノ酸、単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の糖質; キレート剤; ならびにイオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート); 塩形成対イオン、例えば、ナトリウム; 金属複合体(例えば、亜鉛-タンパク質複合体); ならびに/または非イオン性界面活性剤であり得る。抗体は、0.5 - 200 mg/mlまたは10 - 50 mg/mlの濃度で製剤化され得る。
【0096】
製剤はまた、化学療法剤、細胞毒性剤、サイトカイン、成長阻害剤および抗ホルモン剤を含むさらなる活性化合物を提供し得る。有効成分はまた、徐放性製剤((例えば、固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス(例えば、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)もしくはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド)))として製造され得る。抗体および免疫抱合体はまた、例えばコアセルベーション技術または界面重合により製造されるマイクロカプセルに封入され得て、それは、例えば、コロイド薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョンにおいて、各々ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリエート)マイクロカプセルであり得る。
【0097】
組成物は、治療的もしくは予防的処置のために投与され得る。治療適用において、組成物は、「治療上有効量」で疾患(例えば、癌)を患う患者に投与される。この使用のための有効量は、疾患の重篤度および患者の健康の一般的な状態に依存する。組成物の単回もしくは複数投与は、患者により必要とされ、耐容である用量および頻度に依存して投与され得る。本発明の目的のための「患者」または「対象」は、ヒトおよび他の動物、特に、哺乳類を含む。したがって、当該方法は、ヒト治療および動物適用の両方において適用可能である。好ましい態様において、患者は哺乳類であり、好ましくは、霊長類であり、最も好ましい態様において、患者はヒトである。他の既知の癌治療が、本発明の方法と組み合わせて使用され得る。例えば、本発明による使用のための組成物はまた、他の癌治療剤、例えば、5FU、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、シスプラチン、メトトレキサートなどを細胞に標的化するか、またはそれらに対する細胞の感受性を高めるために使用され得る。
【0098】
他の態様において、本発明の方法は、他の癌治療(例えば、前立腺全摘出術)、放射線療法(体外照射もしくは近接照射療法)、ホルモン療法(例えば、精巣摘出、テストステロン産生を抑制するLHRHアナログ療法、抗-アンドロゲン療法)、または化学療法と組み合わせることができる。前立腺全摘出術は、前立腺全体とその周辺組織の除去を含む。この処置は、癌が組織を超えて広がっていないと考えられる場合に一般に使用される。放射線療法は、未だ前立腺に限定されているか、または周辺組織に広がった前立腺癌を処置するために一般に使用される。腫瘍がより進行すると、腫瘍のサイズを減少させるために放射線が使用され得る。ホルモン療法は、前立腺癌が前立腺を超えて広がるか、または再発した患者のためにしばしば使用される。ホルモン療法の目的は、男性ホルモンであるアンドロゲンのレベルを低下させ、それにより、前立腺癌の退縮またはより遅延した成長を引き起こすことである。黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストは、テストステロンの産生を減少させる。これらの薬剤は、1ヶ月に1回またはそれ以上の間隔で投与され得る。2個のそのような類似体は、ロイプロリドおよびゴセレリンである。抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド、ビカルタミドおよびニルタミド)がまた使用され得る。全体のアンドロゲン妨害は、精巣摘出またはLHRHアナログと組み合わせた抗-アンドロゲン剤の使用を意味する、the s combination is called。化学療法は、前立腺癌が前立腺の外側に広がった患者、およびホルモン療法が失敗した患者のための選択肢である。それは、癌細胞のすべてを破壊することが期待されないが、腫瘍成長を遅延させて、苦痛を減少させ得る。ホルモン療法での処理後に再発するか(returned)、または成長および拡大し続ける前立腺癌の処置において使用される化学療法剤のいくつかは、ドキソルビシン(Adriamycin)、エストラムスチン、エトポシド、ミトキサントロン、ビンブラスチン、およびパクリタキセルを含む。癌細胞が化学療法に対して耐性となる可能性を減少させるために、2個またはそれ以上の薬剤がしばしば併用される。小細胞癌は、ホルモン療法よりも化学療法に対してより高い応答性を示す前立腺癌の稀な型である。
【0099】
ある態様において、「心臓保護剤」はまた、本発明による使用のためのN-カドヘリン抗体、N-カドヘリン結合インヒビターまたはN-カドヘリンsiRNA分子と共に投与される(米国特許第6,949,245号を参照のこと)。心臓保護剤は、アントラサイクリン抗生物質のような薬剤の患者への投与に付随する心筋機能障害(すなわち、心筋症および/または鬱血性心不全)を予防するか、もしくは減少させる化合物または組成物である。心臓保護剤は、例えば、フリーラジカル仲介心臓毒性効果を妨害もしくは減少させ、および/または酸化ストレス損傷を予防もしくは減少させ得る。本発明の定義により包含される心臓保護剤は、例えば、鉄キレート剤デクスラゾキサン(ICRF-187) (Seifert et al. The Annals of Pharmacotherapy 28:1063-1072 (1994)); 脂質低下剤および/または抗酸化剤、例えば、プロブコール(Singal et al. J. Mol. Cell Cardiol. 27:1055-1063 (1995)); アミホスチン(アミノチオール 2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンエチオール-ジヒドロゲンリン酸エステル(また、WR-2721と呼ばれる)、およびWR-1065と呼ばれるその脱リン酸細胞取り込み型およびS-3-(3-メチルアミノプロピルアミノ)プロピルホスホロ-チオ酸(WR-151327)(Green et al. Cancer Research 54:738-741 (1994)を参照のこと); ジゴキシン(Bristow, M. R. In: Bristow M R, ed. Drug-Induced Heart Disease. New York: Elsevier 191-215 (1980)); β遮断剤、例えば、メトプロロール(Hjalmarson et al. Drugs 47:Suppl 4:31-9 (1994); およびShaddy et al. Am. Heart J. 129:197-9 (1995)); ビタミンE; アスコルビン酸(ビタミンC); フリーラジカルスカベンジャー、例えば、オレアノール酸、ウルソル酸およびN-アセチルシステイン(NAC); スピントラップ化合物、例えば、α-フェニル-tert-ブチルニトロン(PBN); (Paracchini et al., Anticancer Res. 13:1607-1612 (1993)); 有機セレン化合物、例えば、P251 (Elbesen)などを含む。
【0100】
組み合わせ投与は、別々の製剤または単一の医薬製剤を用いた共投与、および各順序での連続した投与を意図し、好ましくは、両方(またはすべて)の活性剤がそれらの生物学的活性を同時に及ぼす期間が存在する。
【0101】
N-カドヘリンタンパク質の発現および/または機能を直接もしくは間接的に調節することが同定される分子および化合物は、その各々がN-カドヘリンを発現する癌の処置において有用であり得る。N-カドヘリンタンパク質モジュレーターは、単独で、または慣用的な化学療法、放射線療法または免疫療法ならびに現在開発された治療と組み合わせて共投与され得る。
【0102】
経口投与のための適当な製剤は、(a) 液体溶液、例えば、水、生理食塩水もしくはPEG 400のような希釈剤に懸濁された有効量のパッケージ化核酸; (b) 各々が液体、固体、顆粒またはゼラチンとして規定量の有効成分を含む、カプセル、小袋または錠剤; (c) 適当な液体での懸濁液; および(d) 適当な乳化剤からなり得る。錠剤形は、1個またはそれ以上のラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ポテトスターチ、微結晶性セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、染料、崩壊剤、ならびに薬学的に許容される担体を含み得る。トローチ剤形は、香味剤、例えば、スクロース中の有効成分、ならびに不活性基材、例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアエマルジョン、ゲルなどの中に有効成分を含む香錠を含み得て、それは、有効成分に加えて当分野で既知の担体を含む。
【0103】
最適な化合物は、単独でまたは他の適当な成分と組み合わせて、吸入で投与されるエアロゾル製剤(すなわち、それらは「霧状にされ」得る)で製造され得る。エアロゾル製剤は、加圧許容高圧ガス、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの中に置かれ得る。
【0104】
直腸投与のための適当な製剤は、例えば、坐剤基材と共にパッケージ化された核酸からなる坐剤を含む。適当な坐剤基材は、天然もしくは合成トリグリセリドまたはパラフィン炭化水素を含む。さらにまた、最適な化合物と例えば液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、およびパラフィン炭化水素を含む基材の組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルを使用することが可能である。
【0105】
例えば関節内(関節での)、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮内、腹腔内、および皮下経路による非経口投与のために適当な製剤は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水性および非水性等張滅菌注射溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および保存剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液を含む。本発明の実施において、組成物は、例えば、静脈内点滴、経口、局所、腹腔内、膀胱内または髄腔内で投与され得る。非経口投与、経口投与および静脈内投与が投与の好ましい方法である。化合物の製剤は、単一用量もしくは複数用量の被覆容器で、例えば、アンプルおよびバイアルで提供され得る。
【0106】
注射用溶液および懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から製造され得る。エクスビボ療法のために核酸が導入された細胞はまた、上記したとおり静脈内または非経口で投与され得る。
【0107】
医薬製剤は、好ましくは、単位用量形である。そのような形態において、製剤は、活性成分の適当な量を含む単位用量に分割される。単位用量形は、別々の量の製剤を含むパッケージであるパッケージ化製剤であり得て、例えば、バイアルまたはアンプル中のパッケージ化錠剤、カプセル、および粉末である。また、単位用量形は、カプセル、錠剤、カプセル、またはトローチ剤自体であり得るか、またはパッケージ化形態でのこれらのいずれかの適当な数であり得る。所望により、組成物はまた、他の適合した治療剤を含む。
【0108】
好ましい医薬製剤は、徐放性製剤において、所望により1個またはそれ以上の化学治療剤または免疫治療剤と組み合わせた1個またはそれ以上の活性化N-カドヘリンタンパク質モジュレーターを送達する。一般に、N-カドヘリンモジュレーターは、腫瘍細胞の他の細胞毒性癌治療(化学療法、放射線療法、免疫療法およびホルモン療法を含む)への感受性を増大させる増感剤として治療的に投与される。
【0109】
癌の処置のための治療的使用において、本発明の医薬的方法で使用されるN-カドヘリンモジュレーターもしくはインヒビターは、1日に約0.001 mg/kgから約1000 mg/kgの初期投与量で投与される。約0.01 mg/kgから約500 mg/kg、または約0.1 mg/kgから約200 mg/kg、または約1 mg/kgから約100 mg/kg、または約10 mg/kgから約50 mg/kgの範囲の1日投与量が使用され得る。しかしながら、投与量は、患者の必要性、処置される状態の重篤度、および使用される化合物に依存して変わり得る。例えば、投与量は、特定の患者において診断される癌の型および段階を考慮して、経験的に決定され得る。本発明の内容において患者に投与される投与量は、長期間にわたり患者に有益な治療応答を及ぼすのに十分であるべきである。投与量のサイズはまた、特定の患者における、特定のベクターまたは形質転換細胞型の投与に伴う任意の副作用の存在、性質、および程度により決定され得る。特定の状況について適当な投与量の決定は、当業者の技術の範囲内である。一般に処置は、より少ない投与量で開始され、それは、化合物の最適投与量未満である。その後、その状況下での最適な効果に到達するまで投与量を少しずつ増加させる。便宜上、全体の1日投与量は分割され、所望により、1日の間の一部で投与され得る。
【0110】
本発明による使用のための医薬製剤(例えば、N-カドヘリンsiRNA、N-カドヘリン抗体、N-カドヘリンワクチン、N-カドヘリンインヒビターおよび免疫抱合体)は、一般に、ヒトおよび非ヒト動物を含む哺乳類に送達される。本発明の方法を用いて処置される非ヒト動物は、家畜(すなわち、イヌ、ネコ、マウス、齧歯目およびウサギ目)ならびに農業用動物(agricultural animal)(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ)を含む。
【実施例】
【0111】
実施例
下記の実施例は、本発明を例示するものであり、それらを限定するものではない。
【0112】
実施例1: ネガティブコントロールとしてTALを用いたNFκ-βレポーターアッセイ
図2-3で示されるとおり、NFκ-βレポーター活性は、安定なN-カドヘリンを発現する細胞で増加する。これは、アンドロゲンが豊富な培地およびそれが除去された培地の両方においてあてはまる。また、NFκ-βの活性は、LNCaP-C1がC2およびC3よりも多くのN-カドヘリンを発現するので、N-カドヘリンの発現量と相関することが示される。
【0113】
実施例2
図4-5で示されるとおり、N-カドヘリンは、LNCaP-C1細胞の細胞表面上で発現しており、これらの細胞は、両方でより高量のNFκ-β発現を有するが、C1細胞における強い核シグナルで示されるとおり、NFκ-βは活性化している。コントロール細胞はまた、NFκ-βを発現するが、それは、主に細胞質に局在する。
【0114】
実施例3
図6-7は、N-カドヘリンによるNFκ-βの活性化がNFκ-βの標的遺伝子であるTGFβ、IL-6、IL-8、およびbcl-2を上方調節することを示す。
【0115】
実施例4
図8で示されるとおり、N-カドヘリンのノックダウンは、NFκ-β標的遺伝子、例えば、IL-6およびIL-8の発現を減少させ、このことは、再び、N-カドヘリンがNFκ-βを制御することを示す。
【0116】
実施例5
図9は、N-カドヘリン標的化抗体を用いた処理前および処理後のNFκ-βプロモーター活性を示す。データは、これらの抗体により仲介されるNFκ-βが急激に上方調節され、その7日後に下方調節されることを示す。これらのデータは、抗体がNFκ-βの下流のシグナル伝達を変えることにより部分的に機能し得ることを示す。
【0117】
実施例6
図10は、N-カドヘリン標的化抗体を用いた処理の有無でのN-カドヘリンの染色を示す。コントロール処理細胞において、多くのN-カドヘリンは、細胞内に見られるが; 抗体の存在下において、N-カドヘリン発現は、細胞表面上で安定化している。これらのデータは、細胞表面上でのN-カドヘリンの安定化がN-カドヘリン抗体の他の作用機構であることを示す。これは、メタロペプチダーゼ、例えば特に、ADAM 10によるN-カドヘリンの切断および内在化により仲介されるβ-カテニンシグナル伝達における変化を生じ得る。
【0118】
実施例7
図11で示されるとおり、N-カドヘリンの下方調節は、PI3K/Aktシグナル伝達経路の活性化における減少を生じ得る。
【0119】
実施例8
図12で示されるとおり、N-カドヘリン標的化抗体を用いた細胞の処理は、Aktリン酸化もしくは活性化の変化(上方および下方の両方)を引き起こし、それは、これらの抗体が全体的または部分的にPI3K-Aktシグナル伝達を変えることにより機能するという考えを支持する。
【0120】
実施例9: N-カドヘリンタンパク質の第1細胞外ドメインを標的とする抗体クローンのスクリーニングを示すFACS解析
図13は、前立腺癌細胞の表面上でのタンパク質の認識を示す。
【0121】
実施例10: N-カドヘリンタンパク質の第4細胞外ドメインを標的とする抗体クローンのスクリーニングを示すFACS解析
図14は、クローンが前立腺癌細胞の表面上でN-カドヘリンを認識することを示す。
【0122】
実施例11: N-カドヘリン抗体のサブクローニング
図15は、精製されたモノクローナルクローンが細胞表面上のタンパク質を認識することを示す。
【0123】
実施例12: インビトロ浸潤アッセイ
図16は、本発明者等のグループにより作製されたモノクローナル抗体1F12、1H7および2B3のすべてがN-カドヘリン陽性癌細胞の浸潤を阻害することを示す。GC4は、コントロールである。
【0124】
実施例13: N-カドヘリンに対する抗体は、PC3前立腺癌細胞の腫瘍成長および転移を妨害するが、N-カドヘリン欠損腫瘍については影響を及ぼさない
PC3細胞を皮下に移植し、成長させた。図17bで示されるとおり、腫瘍が15日で触診可能な段階に到達したときに、2週間、週2回、抗体またはコントロールを投与した(200 μg)。1H7およびEC4は、腫瘍の成長を遅らせることができた。それらはまた、完全に転移を妨害した。1H7およびEC4で処理したマウスにおいて各々0/5および0/5であったのと比較して、コントロールマウスは、5/5リンパ節転移を有していた。対照的に、1H7およびEC4抗体は、N-カドヘリン欠損マウスの成長に影響を及ぼさなかった(図17a)。図17cおよび17dは、主に確立された腫瘍の処理(21日目で処理開始)で、または長期間の処理(62日間続く処理)で、PC3腫瘍の成長におけるN-カドヘリン抗体の明確な阻害効果を示す。
【0125】
実施例14: インビボ実験からの腫瘍は、N-カドヘリンに対する抗体の効果を示す
図18で示されるとおり、2つのコントロール腫瘍は、極めて赤色であり、大規模な血管新生と一致する。それらはまた、側面の筋肉組織(flank musculature)に深く(deeply)接着して、そこに局所的に浸潤する。対照的に、1H7およびEC4で処理したマウスは、筋肉に局所浸潤しない色が薄くて透明な腫瘍を有する。腫瘍は下層組織から容易に剥がれて、これは、抗N-カドヘリン抗体による血管新生の阻害および局所浸潤の妨害を証明しており、これらのマウスが転移性の疾患を有していなかったという結果と一致する。
【0126】
実施例15: 免疫組織化学染色
本発明者等は、アンドロゲン非依存性LAPC 9前立腺癌の免疫組織化学染色を行った。結果は、N-カドヘリンが一部の細胞でのみ発現することを示す(図19a)。
【0127】
実施例16: アンドロゲン依存性および非依存性LAPC-9腫瘍成長
N-カドヘリンが細胞において過剰発現していないか、または一部の細胞においてのみ発現している場合に、N-カドヘリンが処置および診断のための標的であり得るか否かを決定するために、本発明者等は、アンドロゲン依存性および非依存性LAPC-9腫瘍の腫瘍成長を試験した。アンドロゲン依存性および非依存性LAPC-9腫瘍をそれぞれコントロールPBSまたはN-カドヘリン抗体1H7およびEC4で処理した。結果は、N-カドヘリンがアンドロゲン非依存性細胞のごく一部でのみ発現していたとしても、抗体を用いた処理は、アンドロゲン非依存性腫瘍の成長および進行を遅延させるために十分であることを示す(図20)。これらの結果は、N-カドヘリン細胞集団がアンドロゲン非依存性腫瘍形成のために必要とされ、それを妨害することが腫瘍の進行を遅延させるために十分であることを示す。これらの結果は、N-カドヘリンがアンドロゲン非依存性幹細胞の集団を示すという解釈と一致する。幹細胞の成長を妨害することは、腫瘍の成長を妨害するために十分である。これらの結果はまた、正常もしくは低いレベルのN-カドヘリンを発現する細胞で抗体が機能することを示す。
【0128】
実施例17: 選別および非選別N-カドヘリン陽性および陰性腫瘍成長
腫瘍細胞成長におけるN-カドヘリン陽性細胞の効果を決定するために、N-カドヘリン陽性および陰性細胞を選別し、N-カドヘリンについて各々100%および0%陽性の細胞集団を産生した。次いで、去勢マウスに細胞を注射すると、N-カドヘリン陽性細胞は陰性集団よりも迅速かつ効率的に腫瘍を形成し(図20)、これは、N-カドヘリン陽性細胞が成長利点を有するか、またはそれらが幹細胞特性を有し、陰性集団よりも腫瘍形成性がより高いことを示す。非選別細胞は、N-カドヘリン陽性細胞と同様に成長した。
【0129】
実施例18: N-カドヘリン選別細胞からの腫瘍のFACS解析
純粋なN-カドヘリン陽性および陰性細胞とコントロール非選別集団から成長した腫瘍のFACS解析。100% N-cad陽性細胞からの腫瘍は、N-カドヘリンについて41.25%のみ陽性であり(図21および22)、これは、これらの細胞がN-カドヘリン欠損細胞を生じ得ることを示す。これは、N-カドヘリン陽性細胞がより分化したN-カドヘリン陰性細胞を生じ得る幹細胞であるという仮説と一致する。一方で、N-カドヘリン陰性集団は、非選別細胞の場合(図21および22)と同様に、9% N-カドヘリン陽性である腫瘍を生じる(図21および22)。これは、これらの細胞の成長がアンドロゲン非依存性腫瘍を形成するために、幹様集団の獲得または上方調節されたN-カドヘリンを必要とすることを示す。腫瘍形成の遅延は、アンドロゲン非依存性腫瘍の発生においてN-カドヘリンが必要であるために生じる。
【0130】
実施例19: 確立されたLNCaP-C1腫瘍の成長は、N-カドヘリン抗体により阻害される
図23で示されるとおり、N-カドヘリン抗体1H7およびEC4は、45日から56日までLNCaP-C1腫瘍を保有するマウスに投与され、腫瘍成長におけるそれらの阻害効果は、72日までに明らかになった。
【0131】
実施例20: N-カドヘリン抗体は、LAPC-9アンドロゲン非依存性腫瘍の成長を阻害する
24aで示されるとおり、確立されたLAPC-9アンドロゲン非依存性腫瘍(7代継代)を保有するマウスに、週2回、10 mg/kgで、N-カドヘリン抗体1H7およびEC4を投与した(15日目に開始)。阻害効果は、30日までに明らかである。主に確立されたLAPC-9アンドロゲン非依存性腫瘍における1H7およびEC4の阻害効果を図24bで示しており、動物は17日目まで抗体処理を受けていなかった。
【0132】
実施例21: EC4抗体による用量依存性成長阻害
図25で示されるとおり、ヌードマウスにおけるPC3腫瘍の成長は、EC4抗体により阻害され(13日から27日まで投与される)、より高量の抗体を投与した実験においてより顕著な阻害効果が観察された。
【0133】
実施例22: 毒性試験
N-カドヘリンはさまざまな組織で広く発現するので、抗-N-カドヘリン抗体が治療剤として使用される場合にその潜在的な毒性が懸念される。本発明者等は、1H7およびEC4抗体がマウスN-カドヘリンと交差反応するが、マウスでの長期間もしくは用量漸増試験においてインビボ毒性は観察されないことを見出した。
【0134】
実施例23: N-カドヘリン抗体は、LAPC-9アンドロゲン依存性腫瘍のアンドロゲン非依存性への進行を阻害する
図26aおよび26bで示されるとおり、N-カドヘリン抗体1H7およびEC4は、去勢マウスにおけるLAPC-9アンドロゲン依存性腫瘍のアンドロゲン非依存性への進行を効果的に阻害した。最初の試験において(図26a)、0日から31日まで抗体を投与し、45日間動物を観察した。第2の試験において(図26b)、長期間にわたる抗体処理の効果を観察した。1H7は、腫瘍進行における穏やかな遅延を示し、EC4は、腫瘍進行の妨害における延長された効果を示した。
【0135】
実施例24: N-カドヘリン陽性細胞は、去勢マウスにおいて成長利点を有する
図27で示されるとおり、N-カドヘリン陽性LAPC-9腫瘍は、去勢SCIDマウスにおいてN-カドヘリン陰性LAPC-9腫瘍を超える成長利点を示した。一方、図28は、LAPC-9アンドロゲン非依存性細胞におけるN-カドヘリン発現レベルとアンドロゲン受容体発現間の逆相関を示しており: 継代を重ねるにつれて、LAPC-9細胞は、N-カドヘリンの発現を増加させ、アンドロゲン受容体の発現を減少させながら進行的にアンドロゲン非依存性を得た。
【0136】
本明細書に引用されたすべての特許、特許出願および他の公開物(GenBank受託番号を含む)は、その全体をあらゆる目的のために引用により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATCC受託番号PTA-9387として寄託されているハイブリドーマ細胞株。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリドーマ細胞株により産生される抗体。
【請求項3】
ATCC受託番号PTA-9388として寄託されているハイブリドーマ細胞株。
【請求項4】
請求項4に記載のハイブリドーマ細胞株により産生される抗体。
【請求項5】
米国微生物株系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託されたATCC受託番号PTA-9387を有するハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体と同様に、インビボまたはインビトロでN-カドヘリンの同一の抗原決定基であるN-カドヘリンのドメイン1-3に結合可能である、抗体またはその断片。
【請求項6】
抗体がヒト化もしくは完全ヒト抗体である、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
抗体がダイアボディまたはscFvである、請求項5に記載の抗体。
【請求項8】
米国微生物株系統保存機関に寄託されたATCC受託番号PTA-9388を有するハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体と同様に、インビボまたはインビトロでN-カドヘリンの同一の抗原決定基であるN-カドヘリンのドメイン4に結合可能である、抗体またはその断片。
【請求項9】
抗体がヒト化もしくは完全ヒト抗体である、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
抗体がダイアボディまたはscFvである、請求項8に記載の抗体。
【請求項11】
患者における癌細胞の成長を阻害する方法であって、請求項5または8に記載の抗体またはその断片が患者の癌細胞に結合するのに十分な条件下で当該抗体またはその断片を患者に投与する工程を含み、ここで、癌細胞がN-カドヘリンを発現するか、もしくは過剰発現しており、抗体が下記:
(a) NFκ-βシグナル伝達および転写を活性化するか、もしくは阻害すること;
(b) N-カドヘリン内在化を活性化するか、もしくは阻害すること;
(c) PI3キナーゼもしくはAkt経路を活性化するか、もしくは阻害すること;
(d) β-カテニンシグナル伝達を活性化するか、もしくは阻害すること;
(e) N-カドヘリンとFGFRもしくは他のチロシンキナーゼ受容体の二量体化を妨害すること; または
(f) ADAM10または他のメタロペプチダーゼによる切断を妨害するか、もしくは促進すること
により癌細胞の成長を阻害する、方法。
【請求項12】
癌細胞が泌尿生殖器癌細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
癌細胞が前立腺癌細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
癌細胞が膀胱癌細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
癌患者を処置する方法であって、下記:
(a) N-カドヘリンタンパク質を発現する癌を患うリスクのある個体から試験組織サンプルを取得し;
(b) 癌について陰性であることが既知の個体からのコントロール組織サンプルと比較した場合の試験組織サンプルにおけるN-カドヘリンタンパク質の存在もしくは非存在またはその量を決定し、それによりN-カドヘリンタンパク質を発現する癌を診断し(ここで、N-カドヘリンタンパク質は、正常もしくは低いレベルで発現しているか、または一部の細胞で発現しているか、または過剰発現している); そして
(c) 請求項5または8に記載のN-カドヘリン抗体またはその断片の有効量をN-カドヘリンタンパク質を発現する癌を患うリスクのある個体に投与する
工程を含む、方法。
【請求項16】
組織サンプルが前立腺もしくは膀胱組織である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
癌が前立腺癌である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
癌が膀胱癌である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
抗体がホルモン抵抗性前立腺癌を妨害する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
抗体が癌幹細胞を妨害する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
組織サンプルが前立腺もしくは膀胱組織である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
癌が転移性癌である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
抗体がscFvである、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
抗体がダイアボディである、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
癌患者を診断する方法であって、下記:
(a) N-カドヘリンタンパク質を発現する癌を患うリスクのある個体から試験組織サンプルを取得し;
(b) 請求項5または8に記載のN-カドヘリン抗体またはその断片の有効量をサンプルと接触させることにより、癌について陰性であることが既知の個体からのコントロール組織サンプルと比較した場合の試験組織サンプルにおけるN-カドヘリンタンパク質の存在もしくは非存在またはその量を決定し、それによりN-カドヘリンタンパク質を発現する癌を診断する(ここで、N-カドヘリンタンパク質は、正常もしくは低いレベルで発現しているか、または一部の細胞で発現しているか、または過剰発現している)
工程を含む、方法。
【請求項27】
癌幹細胞を同定する方法であって、下記:
(a) N-カドヘリンタンパク質を発現する癌を患うリスクのある個体から試験組織サンプルを取得し;
(b) 請求項5または8に記載の抗体を用いて、癌について陰性であることが既知の個体からのコントロール組織サンプルと比較した場合の試験組織サンプルにおける癌幹細胞の存在もしくは非存在を決定する(ここで、N-カドヘリンタンパク質は、正常もしくは低いレベルで発現しているか、または一部の幹細胞で発現しており、過剰発現していない)
工程を含む、方法。
【請求項28】
組織サンプルが前立腺もしくは膀胱組織である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
癌が前立腺癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
癌が膀胱癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
抗体がホルモン抵抗性前立腺癌を妨害する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
癌が転移性癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
患者における癌細胞の成長を阻害する抗N-カドヘリン抗体もしくは化合物を同定する方法であって、下記:
(i)化合物または抗体を、N-カドヘリンポリペプチドを発現するか、もしくは過剰発現する細胞と接触させ; そして
(ii) 化合物または抗体が下記:
(a) NFκ-βシグナル伝達および転写を活性化するか、もしくは阻害すること;
(b) N-カドヘリン内在化を活性化するか、もしくは阻害すること;
(c) PI3キナーゼもしくはAkt経路を活性化するか、もしくは阻害すること;
(d) β-カテニンシグナル伝達を活性化するか、もしくは阻害すること;
(e) N-カドヘリンとFGFRもしくは他のチロシンキナーゼ受容体の二量体化を妨害すること; または
(f) ADAM10または他のメタロペプチダーゼによる切断を妨害するか、もしくは促進すること
を決定することにより、当該化合物または抗体のN-カドヘリンポリペプチドに関する機能的な効果を決定する
工程を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図17−3】
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【図17−4】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図25】
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【図26−1】
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【図26−2】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2011−521619(P2011−521619A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503226(P2011−503226)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/039526
【国際公開番号】WO2009/124281
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】