説明

腫瘍特異的ワクチンとしての合成タンパク質

本発明は、ワクチン接種用組成物中で有利に使用できる、生物学的夾雑物を含まないタンパク質を化学的に合成する、GMPに適合した方法を提供する。この方法は、ペプチドの従来の合成を用い、それらを連結させて、好ましくは、ある抗原のすべてのT細胞エピトープを含む合成タンパク質を産生する。合成蛋白質にアジュバントを結合させて完全に合成のワクチンを産生することが好ましい。本発明は、主として、HPVタンパク質によって誘発された免疫をモデルとして用いることによって例示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね医学分野に関し、より詳細には、抗原に対するT細胞応答の誘発及び/又は促進に関し、これは、合成ペプチドを使用し、これらを連結させて、前記抗原のT細胞エピトープのすべてを含む合成タンパク質を産生させて行う。合成タンパク質にアジュバントを共有結合させて合成ワクチンを産生するのが好ましい。主として、HPVによって誘発された免疫をモデルとして用いることによって本発明を例示する。しかし、本発明は、HPVに限定されるものではなく、免疫に関連しているか、或いは関連している可能性のある広範な疾患に重要なものとして理解するべきである。
【背景技術】
【0002】
HPV感染は、若く、性的に活発な男女の個体間で広く蔓延している。大規模な前向き研究において、男性パートナーからのHPVの獲得が3年間の追跡期間中、対象の40〜60%で起こり、それが一般的であることが示された(Koutskyら、Am J Med 102(5a)3、1997年、Hoら、N Eng J Med 338(7)、1998年、Marrazzoら、Am J Obstet Gynecol 183(3)、2000年)。したがって、HPVは、おそらく最も一般的な性行為感染症である。高リスク型の乳頭腫ウイルス(例えば、HPV−16、−18、−31、−33、及び−45)は、子宮頚部癌の原因となっている(Boschら、Natl Cancer Inst 87、1995年、Zur Hausen、Bioch Biophys Acta 1288,F55、1996年)。基底上皮細胞の感染に続いて、即時型HPV初期遺伝子E1、E2、E6、及びE7が発現される。E6及びE7腫瘍性タンパク質の発現の長期化及び上昇は、HPVによって誘発された異形成及び子宮頚部癌への形質転換と緊密に関連している。
【0003】
免疫抑制された腎臓移植患者及びHIVに感染した患者における生殖器のHPV感染の発生頻度が、正常対照と比較して17倍大きいという事実によって、ヒトにおけるHPV関連疾患、及びHPVによって誘発された癌に対する防御での免疫系の防護的役割が示唆されている(Matorrasら、Am J Obstet Gynecol 164、42、1991年、Halpertら、Obstet Gynecol 68(2)、1986年)。免疫抑制された個体の、HPV感染を自然治癒する能力の低下は、感染の初期における免疫系の防護的役割を間接的に指摘するものである。HPV特異的なTh免疫の積極的な役割が、CD4+T細胞の優勢による陰部疣贅の退縮(Colemanら、J.Clin.Pathol.,102、1994年)によって、また、自然退縮しているCIN病変を有する対象の大多数で、HPV16 E7に対する遅延型過敏性応答が検出された(Hopflら、第18回乳頭腫ウイルス国際会議、2000年)ことによって示された。ヒトにおけるHPV16に特異的なT細胞性免疫に関する試験によって、HPV16に特異的な防御免疫は、3つのHPV16初期タンパク質E2、E6、及びE7に対して反応する、IFN−γ及びインターロイキン5を伴った強いTh1/Th2型メモリーTヘルパー細胞反応を特徴とする(de Jongら、Cancer Res 62、4729頁、2002年;Weltersら、Cancer Res 63、636〜41、2003年)ことが示唆された。HPV16陽性の前悪性病変又は子宮頚部癌を有する患者の大多数がこのタイプのT細胞反応を誘導せず、このT細胞による補助の欠失によって、これらの患者におけるHPV16特異的CD8+細胞傷害Tリンパ球の一般的不在が説明されうる(Ressingら、Cancer Res.56、1996年;Nimakoら、Cancer Res.57、1997年)。重要なことに、ビーグル犬及びウサギで乳頭腫ウイルスに対して自然に誘導された防御免疫に関する研究は、ウイルスによって誘発された病変の退縮中にE2及びE6特異的なT細胞反応がピークに達したという点で、本発明者らの新知見を確証する(Moore RA、Virology、2003年)。さらに、早期抗原E2、E6、及びE7をコードするDNAワクチンの使用は、これらの動物モデルにおける持続感染及びそれに伴う上皮異形成を予防した(Hanら、1999年、Selvakumarら、J Virol 69(1)、1995年)。これらのデータは、E2、E6、及びE7に対する免疫が、パピローマウイルス感染の免疫予防として、また、HPVによって誘発された病変及び癌の治療に効果的でありうることを示す。
【0004】
慢性のウイルス感染又はウイルスによって誘発された腫瘍に対する効果的な攻撃を導く分子イベント及び細胞イベントに関する新たな洞察が最近になって初めて得られた。溶解を行うエフェクター細胞の完全動員は、Toll様受容体(TLR)の微生物性リガンドなどの先天性免疫の誘発因子、及び/又は、活性CD4Tヘルパー(Th)細胞上のCD40リガンド(CD40L)などの適応免疫の誘発因子による、DCの適切な活性化(成熟)に決定的に依存している(Meliefら、lmmunol Rev 188、2002年)。HPV16による上皮の感染は、少なくとも早期には、この組織及び/又は強度の炎症誘発性刺激の著しい撹乱を伴わないため、効果的な免疫応答は、HPV16特異的なCD4+T細胞の補助に依存している可能性が高い。機能が分子的に特定されていない組換え体ベクター及びアジュバントなど、十分に特定されていない、免疫系の誘発因子に依存する替わりに、現在では、エフェクターT細胞の完全規模のバースト、及びT細胞記憶を誘導するのに適した抗原性シグナル及びアクセサリーシグナルを提供する、完全に合成されたワクチンを設計することが可能である。そのようなワクチンの特徴は、それらが、CD4+及びCD8+両方のT細胞を刺激する抗原を提供するのみでなく、樹状細胞(DC)活性化の、最も成功した天然の誘発因子を厳密に模擬した化合物も含有することである(Meliefら、Immunol.Rev.188、2002年;Zwaveling、J.Immunol 169、2002年)。対象を、例えば(ミコ)バクテリア及び/又はウイルス、詳細にはHPVに感染した細胞又は腫瘍細胞に対して免疫化する臨床的に適切なアプローチでは、特異的なTヘルパー細胞及びCTLの両方を誘導するのが好ましい。本発明者らは、最小CTLエピトープを用いた免疫処置の結果として、いくつかのモデルでは腫瘍に対する防御が得られ(Feltkampら、Eur.J.Immunol 23、1993年、Kastら、PNAS、88(6)、1991年)、一方、他のモデルでは、それによって、他の方法によって誘導した場合には防御的である、ウイルス−及び腫瘍−特異的なCTLの寛容又は機能欠損を導く場合があることを既に示した(Toesら、PNAS 93(15)、1996年、Toesら、J Immunol 156(10)、1996年)。寛容又は機能欠損の存在は、ワクチン接種の効果をかなり低下させる。したがって、この作用に関与するエピトープは、免疫化の目的には適していなかった。MHCクラスI分子による提示に供する外因性抗原の、クロスプライミング及び他の機構によるプロセシングは、現在では、周知の内因性経路に次ぐ、MHCクラスIによる提示のための第2のプロセシング経路として広く認識されている(Jondalら、Immunity 5(4)、1996年、Reimannら、Curr.Opin Immunol 9(4)、1997年)。CD4+T細胞によるAPC活性化が起こらない限り、この経路を介した抗原プロセシングの正常な結果はCTL寛容である(Kurtsら、J Exp Med 186(12)、1997年)さらに、マウスのウイルス感染を用いたいくつかの研究では、CTL前駆体の頻度と防御免疫との間に正の相関関係が検出された(Sedlikら、J Virol 74(13)、2000年、Fuら、J Immunol 162(7)、1999年)。最適のCTL誘導を得るには、CTLエピトープの提示が樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)の表面で行われることが好ましい(Mellmanら、Trends Cell Biol 8、1998年、Rodriguezら、Nat Cell Biol、1999年)。一方、最小CTLエピトープは、プロフェッショナル抗原提示細胞によるプロセシングの必要がなく、いかなる体細胞もT細胞にそれらを提示することができるが、MHCクラスI及びMHCクラスIIで、それぞれ、最適のCTLエピトープ及びThエピトープの提示が起こりうるには、プロフェッショナル抗原提示細胞によってタンパク質が取り込まれて、プロセシングされる必要がある(Mancaら、J Acquir Immune Defic Syndr 7、1994年)。
【0005】
天然源のものであれ、宿主系で発現された組換体タンパク質であれ、生物源から得られたタンパク質を使用するならば、小型のタンパク質も、より大型のタンパク質も、精製された形態又は未精製の調製物としてワクチン接種を行う目的で使用することが可能となり、これらは、ワクチン接種に関する技術分野において日常的に投与されている。しかし、生物源から得られたタンパク質又は組換体タンパク質の使用は、徹底した精製と品質管理とを必要とする。生物源からのタンパク質又は組換体タンパク質の産生は、本質的に、生物学的変異、様々な夾雑物、及び誤りを免れないものである。生物源に固有の可変性及び予測不可能性と、使用される細胞系、細菌、ウイルス、及びベクターにおける高率の変異及び後成的変化と、DNA、とりわけウイルスDNA又は組換え体DNAの混入の脅威のため、EMEA(欧州医薬品審査庁)、米国FDA(食品医薬品局)、又は、日本国厚生労働省医薬局などの監督機関によって定められた安全性及び品質管理の要求事項は、広範且つ非常に厳密な臨床検証であり、医療当局によるワクチン接種用製剤の承認、並びにGMPグレードの材料、設備、及び操作法の使用義務は、生物源からのタンパク質及び組換体タンパク質の使用を、極めて重労働で、危険性が高く、費用がかかり、概して魅力のないものとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
国際公開第02/070006号は、CTLエピトープとTヘルパーエピトープとを併せ、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)によって取り込まれるのに十分な大きさの22〜45アミノ酸の中型の合成ペプチドの使用を例示する。小型又は中型の大きさの合成ペプチドの使用に伴う1つの問題は、in vivoにおけるそれらの半減期が短く、血流から急速に除去されることであり、これによって、ワクチン接種用組成物又はワクチンの総合的な有効性が制限されている。さらに、アミノ酸のひとつづきが短いことは、合成ペプチド中に含有される利用可能なエピトープの数を制限する。それらよりかなり大きなタンパク質、場合によっては完全長のタンパク質であって、免疫処置される対象の全てのHLA分子に対する、所与のタンパク質の利用可能なエピトープの大部分又はすべてを含有するタンパク質の使用が非常に望ましいであろう。当技術分野の現状では、アミノ酸含量に応じて、約60アミノ酸までの合成ペプチドの合成が可能である。理論的には、はるかに長いペプチドで合成できるが、ペプチドの大きさが増大するに従って、収率及び品質が漸次に低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一方、詳細に特定され、且つ厳密に制御及びモニターされた化学過程を使用して、合成タンパク質を取得すれば、生物源由来のタンパク質の使用に付随した問題が回避されるであろう。しかし他方で、化学合成されたペプチドの長さの制限は、それらのワクチンとして免疫学的有効性を制限する。本発明の目的は、これらの短所を克服し、化学合成によって生成された、免疫学的に効果的なタンパク質性ワクチンを提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
定義
本明細書では、合成又は人工のペプチドを、ペプチド結合によって連結された天然の20種のアミノ酸の重合体の化学的合成によって産生された、化学的に産生されたアミノ酸の重合体すなわちポリペプチドとして定義する。合成タンパク質は、化学合成された、長さが2から80アミノ酸までの範囲にある少なくとも2つ以上の合成ペプチドの融合産物として定義する。2つ以上の合成ペプチドの連結によって、合成タンパク質が産生され、この合成タンパク質は、天然のタンパク質の一部又は全長に対応する場合があり、また、その長さは、約80アミノ酸から約1000アミノ酸まで、好ましくは85から400アミノ酸まで、より好ましくは90から200アミノ酸までの範囲で変動しうる。対照的に、天然又は組換え体のタンパク質は、コードしているRNAテンプレートの翻訳によってin vivo又はin vitroで酵素的に産生された、酵素的に産生されたタンパク質又はポリペプチドとして定義する。
【0009】
GMPグレードペプチドは、適正製造基準プロトコルに従って生産されており、その際、操作の全ステップが標準化されており、完全に記録され、且つ、絶えずモニターされる。ドキュメンテーションシステムは、FDA又はEMEAなどの当局による監査用に追跡が論理的且つ容易なバッチ記録をもたらし、これは、承認及び人工タンパク質の臨床使用に必要な品質管理及びモニタリングを容易にするであろう。
【0010】
GMPグレードのタンパク質は、ワクチン中での臨床使用の前に、以下の非網羅的なリストに示す技法によって徹底的に試験されたものでありうる。すなわち、質量分析、アミノ酸分析(AAA)、ペプチドシーケンシング、逆相−HPLC、残留有機揮発性物質、細菌内毒素評価、汚染微生物数評価、AAAによる正味ペプチド含有量、対イオン含有量(酢酸、トリフルオロ酢酸、ヒドロクロリドなど)、二次対イオン含有量、含水量、及び物質収支計算であり、また、追加の試験には、比旋光度(同一性)、キャピラリーゾーン電気泳動法(純度)、力価測定、並びに当業者に明らかな他の化学的及び生物学的分析技術が含まれることがある。
【0011】
ワクチン接種用製剤中の合成タンパク質に対する免疫応答を強化及び刺激するために、組成物にアジュバントを添加してもよい。ワクチン接種用の様々なアジュバントの使用が当技術分野で知られている(例えば、Melief、Immunol Rev 188、2002年;Zwaveling、J.Immunol.169、2002年)。本発明の合成タンパク質と共に使用される特に好ましいアジュバントは、細菌LPS、CpG DNA、及び他のToll様受容体活性化アジュバント、並びに樹状細胞を刺激するアジュバントである。本発明のより好ましい一実施形態では、プロフェッショナル抗原提示細胞表面に存在するToll様受容体(TLR)によって認識されるアジュバントを使用する。TLRによって認識される様々なアジュバントは、当技術分野で知られており、それらには、例えば、リポペプチド、リポ多糖、ペプチドグリカン、リポテイコ酸、リポタンパク質(マイコプラズマ、ミコバクテリア、又はスピロヘータ由来)、二本鎖RNA(ポリI:C)、非メチル化DNA、リポアラビノマンナン、フラジェリン、CpG含有DNA、及びイミダゾキノリンが含まれる。アジュバントは、抗原と共に投与してもよく、或いは、当技術分野で知られている化学修飾、合成、結合、及び他の方法で抗原に物理的に結合させてもよい。
【0012】
本発明の合成タンパク質は、天然のそれらの対応物とは何らかの配列の相違を示すものでありうる。「配列同一性」という用語は、比較のウィンドウ全体にわたって、2つのポリペプチド配列が同一である(すなわち、アミノ酸対アミノ酸ベースで)ことを意味する。「配列同一性の百分率」という用語は、最適に整列された2つの配列を比較のウィンドウ全体にわたって比較し、両方の配列で同一の残基が存在する位置の数を決定して、一致している位置の数を取得し、一致している位置の数を比較のウィンドウの中にある位置の総数(すなわちウィンドウサイズ)で割り、その結果に100に掛けて、配列同一性の百分率を取得することによって計算する。
【0013】
本発明のペプチドに適用される場合、「実質的同一性」という用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトパラメータを用いたGAP又はBESTFITプログラムなどによって最適となるように整列された際に、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセント又はそれを超える配列同一性(例えば99パーセントの配列同一性)を共有することを意味する。GAPは、Needleman及びWunschのグローバルアラインメントアルゴリズムを用いて、2つの配列を、それらの全長にわたって整列させるが、その際、一致している数が最大になり、ギャップの数が最小になるようにする。通常は、GAPデフォルトパラメータを使用し、ギャップ生成ペナルティ=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)、ギャップ伸長ペナルティ=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)である。ヌクレオチド用に使用するデフォルトスコアリングマトリックスは、nwsgapdnaであり、タンパク質用のデフォルトスコアリングマトリックスはBlosum62である(Henikoff及びHenikoff、1992年)。
【0014】
同一でない残基の位置は、保存性のアミノ酸置換によって相違していることが好ましい。保存性のアミノ酸置換は、類似した側鎖を有する残基の互換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の一群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の一群は、セリン及びトレオニンであり;アミドを含有する側鎖を有するアミノ酸の一群は、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の一群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の一群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり;そして、硫黄を含有する側鎖を有するアミノ酸の一群は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存アミノ酸置換のグループは、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンである。
【0015】
比較的短いアミノ酸配列(約30残基未満)のアライメント及び比較は通常、単純に行えるものである。比較ウィンドウを整列させる最適の配列アライメントは、Smith及びWaterman(1981年)、Adv.Appl.Math 2:482の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman及びWunsch(1970年)、J.Mol.Biol.48:443の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson及びLipman(1988年)、Proc.Natl.Acad.Sci(USA)85:2444の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実施形態(ウィスコンシン遺伝学ソフトウェアパッケージバージョン10.2中のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、遺伝学コンピュータグループ、575 Science Dr.,Madison,Wisconsin 53711,USA)によって、或いは、目視検査によって行うことができ、様々な方法によって作成されたものの中で最良のアライメント(すなわち比較ウィンドウ全体にわたって最も高い配列類似性の百分率をもたらす)を選択する。
【0016】
したがって、第1の態様では、本発明は、合成タンパク質を生成する方法に関する。合成タンパク質は、病原体又は腫瘍の天然存在の抗原タンパク質における連続した少なくとも46アミノ酸に少なくとも80、85、90、95、97、98、99、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むことが好ましい。本発明の方法は、(a)それぞれが上記アミノ酸配列における連続した2から80アミノ酸から成る2つ以上の断片を化学合成し、それによって、上記2つ以上の断片が、上記アミノ酸配列中で隣接し、且つオーバーラップしていないステップと、(b)一断片のC末端を、隣接した断片のN末端に化学的に連結させて、合成タンパク質又はその一部分を生成させるステップと、(c)任意選択で、ステップCを反復して、ステップC又はステップBから得られたさらに別の隣接した断片を順次に連結させて、合成タンパク質を生成させるステップとを含む。
【0017】
合成タンパク質は、病原体又は腫瘍の天然の抗原タンパク質における連続した少なくとも46、47、48、50、55、60、70、又は80アミノ酸に少なくとも80、85、90、95、97、98、99、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むことが好ましい。合成タンパク質は、病原体又は腫瘍の天然の抗原タンパク質の全(すなわち完全長)アミノ酸配列に少なくとも80、85、90、95、97、98、99、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むことがより好ましい。好ましい天然の抗原タンパク質はHPVタンパク質であり、より好ましくは、HPV E2、E6、又はE7タンパク質であり、より好ましくは、天然のHPVタンパク質がHPV16、−18、−31、−33、又は−45タンパク質であり、これらの中でも、HPV16及びHPV18タンパク質が最も好ましい。したがって、対象の発明で利用される合成タンパク質は、病原体又は腫瘍の天然の抗原タンパク質に、実質的に同一であることはあっても、同一である必要はない。したがって、合成タンパク質は、挿入、欠失、及び置換など、保存性又は非保存性の様々な改変の対象となることがあり、その場合、そのような変化は、それらの使用における特定の利点を提供するかもしれない。同様に、本発明の、HPV由来の合成タンパク質は、多くの方法で修飾することができ、その場合、そのタンパク質は、配列番号1〜6のうちの1つと少なくとも80、85、90、95、97、98、99、又は100%の配列同一性を維持しながら、配列番号1〜6から選択されたHPV由来の抗原配列のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列に実質的に同一な(上記に定義した通り)配列を含むことが好ましい。
【0018】
本発明の方法では、この出願に開示した、合成ペプチドの逐次的な連結によって、より大きな合成タンパク質を合成することができる。この方法では、第1のステップで合成ペプチドを基質上に固定することが好ましい。これに続くステップで、第2の合成ペプチド、及び、任意選択でさらに多くの合成ペプチドを化学的方法によって、支持体上のペプチドに共有結合、すなわち融合させる。実施例では、同様のストラテジーに従って、免疫原性の高い他のHPVタンパク質を化学合成する。HPV16及びHPV18のE6タンパク質は、4つの人工のペプチドから好都合に合成することができる(実施例番号2及び5)。さらに大きなタンパク質である、HPV16及びHPV18のE2タンパク質用には、この方法の柔軟性を例示する非限定的な例として、2つの異なったストラテジーを本発明は提供する(実施例番号3及び6)。個々のペプチドの効率的な連結を確実にするために、適当な選択肢を選択して人工タンパク質を取得することによって、配列特異的な困難を回避することができる。
【0019】
好ましい実施形態では、隣接して、且つオーバーラップしていない断片(すなわち、化学的連結によって合成タンパク質を合成するための建築ブロックとして使用される個々の合成ペプチド)が、N末端システイン残基又はグリシン残基を含むように選択される。合成される、個々の隣接し且つオーバーラップしていない断片は、中程度の長さ(20〜80アミノ酸、好ましくは最大約65アミノ酸まで、より好ましくは最大55アミノ酸までの長さ、より好ましくは最大45アミノ酸までの長さ、最も好ましくは最大35アミノ酸までの長さ)であることが好ましく、また、それらのチオエステルとして、通常の固相ペプチド合成によって、例えばFmocベース又はBocベースの化学によって、適切なハンドル、例えば安全装置ハンドルを含有する通常の固形支持体上、例えばポリスチレンベース、又はポリスチレン/ポリエチレングリコール共重合体ベースの物質上で、許容される純度、例えば、好ましくは80%超の純度に合成されることが好ましい。プロリンチオエステルとの結合は扱いにくいので、カルボキシ末端にプロリン(P)を有する建築ブロックを使用しないことが好ましい。合成されるタンパク質が、例えば配列中でシステイン同士が遠く離れているため、好ましい実施形態に適合した天然存在のシステインを含有しない場合、アミノ末端にグリシン(G)を有する1つ又は複数のブロックを使用する改変された連結ストラテジーを適用するのが好ましい。その場合、N末端のGを、N−2,3,4−トリメトキシ−5−メルカプトフェニル基などの保護/活性化基で修飾することができ、N−2,3,4−トリメトキシ−5−メルカプトフェニル基は、グリシンに、システインのそれに匹敵する、チオエステルに対する反応性を与え、そしてなお、最終生成物中にグリシンを産生する(J.Am.Chem.Soc.124,4642(2002年))。
【0020】
本発明は、毒性の高いタンパク質又は不安定なタンパク質の産生にもよく適している。記載した方法は、それらの固有の毒性(例えばHPV16 E2、野生型p53)、又は細菌/ウイルス/真核生物の発現系におけるin vivoでのそれらの不安定性のために現在のところ組換え技術によって生成させるのが困難であるタンパク質を生成させるための代替手段を提供しうる。
【0021】
in vivo注入されたタンパク質は、細胞外マトリックス中に存在するエキソペプチダーゼによって迅速に分解されることが多い。本発明の好ましい一実施形態では、N及びC末端、並びにタンパク質配列中の戦略的な部位にD−アミノ酸を導入するなどのタンパク質修飾によって、そのような分解を克服することができる。さらに、配列中の特定の部位に非天然のアミノ酸を導入することによって、そのタンパク質を、酵素による分解に対してより安定にすることができる。例えば、非天然アミノ酸は、様々な形態の合成α−アミノ酸、合成β−アミノ酸、及び/又はN−メチル化合成アミノ酸である場合があり、タンパク質生産の従来のin vivo法では容易に実現できない特徴を示す。
【0022】
最短(9AA)又はそれより長い(35AA)合成ペプチドと比較して、合成E7タンパク質の免疫原性活性が著しく増強されていることは、少なくとも部分的には、in vivoでの合成タンパク質の安定性が増大したためである。これは、合成E7タンパク質とは対照的に、等モル用量の長いE7ペプチドを用いたワクチン接種が、CD8+IFNγを産生するHPV16 E7特異的なT細胞の誘導に効率的でなかったこと、そして、これが腫瘍の誘発に対する防御の欠如に反映されたという事実によって例証される。しかし、長いペプチドを約8倍高い用量で用いてワクチン接種を行ったところ、その結果、強いE7特異的なT細胞反応と、腫瘍に対する防御とが得られた。より大きな合成タンパク質若しくは完全長の合成タンパク質(あるタンパク質の天然に発現される対応物と比較して)の使用、又は、特定のドメインの使用、化学修飾、若しくは合成タンパク質からの分解用標的シグナルの除去が、in vivoにおける半減期の延長を示す合成タンパク質の設計を補助する技術的手段である。安定性が強化された合成タンパク質は、免疫原性反応の、より強力な誘発因子となる。強化された免疫原性活性、すなわち、マウスでの予防試験及び治療試験において、短い合成ペプチドと比較して、等モルベースの合成タンパク質ワクチンでより効果的な免疫原活性は、タンパク質が大きいほど、その分解が遅く、血流からの除去が低減又は遅延されることによって、少なくとも部分的に説明される。より大きな合成タンパク質の残留断片は、部分的な分解及び部分タンパク質分解の後でもなお、プロフェッショナル抗原提示細胞によって取り込まれ、活発な免疫応答を誘発するのに十分に大きなものでありうる。
【0023】
化学的に連結されて本発明の合成タンパク質を形成する(ポリ)ペプチドの修飾を、様々な望ましい属性が得られるように、例えば、無改変ペプチドの実質的にすべての生物活性を増強又は少なくとも維持しながら、薬理学的特性の改善が得られるように行うことができる。例えば、ペプチドは、アジュバントの結合によって修飾することができ、それによって合成ペプチド融合過程における安定性又は補助が強化され、タンパク質のアミノ酸配列を改変、伸長、又は短縮することによって、免疫特性を強化する。異なったアミノ酸又はアミノ酸ミメティックで置換することもできる。
【0024】
本発明の合成タンパク質に由来する免疫原性タンパク質の個々の残基は、ペプチド結合又は擬似ペプチド結合によって合成タンパク質に組み込むことができる。本発明の擬似ペプチド結合には、当業者に周知のペプチド骨格修飾が含まれる。そのような修飾には、アミド窒素、α−炭素、若しくはアミドカルボニルの修飾、アミド結合の完全な置換、伸長、欠失、又はバックボーン架橋が含まれる。全般的には、Spatola、「アミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の化学及び生化学(Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides and Proteins)」、Vol.VII、(Weinstein編集、1983年)を参照のこと。いくつかのペプチド骨格修飾が知られており、これらには、ψ[CHS]、ψ[CHNH]、ψ[CSNH]、ψ[NHCO]、ψ[COCH]、及びψ[(E)又は(Z)CH=CH]が含まれる。上記で使用された用語体系は、上記のSpatolaによって提案されたものである。この文脈では、ψはアミド結合の不在を示す。アミド基を置換する構造が括弧内に指定される。
【0025】
アミノ酸ミメティックを合成タンパク質に組み込むことができる。本明細書で使用する場合、「アミノ酸ミメティック」は、本発明のペプチド中にあるアミノ酸の代替物として立体配置的に、且つ機能的に働く天然のアミノ酸以外の部分である。そのような部分は、例えばHPV由来のエピトープなど、関係するエピトープに対して免疫応答を誘発するペプチドの能力を妨害しない場合、アミノ酸残基の代替物として働く。アミノ酸ミメティックには、L−α−アミノ酸の多数の誘導体に加えて、β−、γ−、δ−アミノ酸、β−、γ−、δ−イミノ酸(ピペリジン−4−カルボン酸など)などの非タンパク質アミノ酸も含まれる。多くの適当なアミノ酸ミメティックが当業者に知られており、それらには、シクロヘキシルアラニン、3−シクロヘキシルプロピオン酸、L−アダマンチルアラニン、アダマンチル酢酸、及び同様のものが含まれる。本発明のペプチドに適したペプチドミメティックは、Morgan及びGainor(1989年)、Ann.Repts.Med.Chem 24:243−252に論じられている。
【0026】
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、合成タンパク質がアジュバントに化学的に結合されている。好ましいアジュバントは、化学合成されたアジュバントである。抗原への(合成)アジュバントの結合は、当技術分野で知られている(Shirotaら、2000年、J.Immunol 164:5575、Cho,H.J.、K.ら、2000年、Nat.Biotechnol.18:509、Tighe,H.、K.ら、2000年、J.Allergy Clin.Immunol 106:124、Tighe,H、K.ら、2000年、Eur.J.Immunol.30:1939)。
【0027】
例えば樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞を、例えばTOLL様受容体を介して特異的に活性化できるアジュバントに抗原を結合させたものは、両方の成分が共に混合されているワクチンと比較して、優れたワクチンであることも、上記の技術分野で知られている。一実施形態では、アジュバント、好ましくは合成アジュバントが本発明の合成タンパク質に結合され、その結果、純粋に合成されたものであり、そしてそれによって、化学的に完全に特定されているワクチン接種用の組成物が得られる。
【0028】
生体分子を結合するのに適した技法の1つは、当技術分野で「クリックケミストリー」として知られている。この技法では、結合体を生成するために、1分子中のアジ化物部分が、別の分子中のアルキン基と反応し、両分子が1,2,3トリアゾール環を介して共有結合によって連結される。この反応は、通常、生体分子中に存在する実質的にすべての反応性基と直交し、銅(l)イオンによって触媒され、水性媒体中で、比較的温和な反応条件で実施できる;Kolb.H.C.ら、Angew.Chem.Int.Ed.40,2004−2021(2003年)、及びWang,Q.ら、J.Am.Chem.Soc.125,3192−3193(2003年)を参照。しかし、本発明のアジュバント及び抗原に適用できる、生体分子を結合する他の方法も、当技術分野で周知である。
【0029】
本発明の抗原と併用及び/又は結合するための好ましいアジュバントは、樹状突起細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞を刺激するアジュバントである。そのようなアジュバントは、好ましくは、TOLL様受容体(TLR)によって認識され、当技術分野で知られており、それらには、例えば、リポペプチド、リポ多糖、ペプチドグリカン、リポテイコ酸、リポタンパク質(マイコプラズマ、ミコバクテリア、又はスピロヘータ由来)、二本鎖RNA(ポリI;C)、非メチル化DNA、リポアラビノマンナン、フラジェリン、CpG含有DNA、及びイミダゾキノリンが含まれる。
【0030】
本発明の好ましい一実施形態では、TLR活性化アジュバントとしてCpG DNAを使用し、合成タンパク質のN及び/又はC末端、或いは特定のアミノ酸に共有結合によって結合させる。CpG DNA及びその類似体は、TLR9の強力な活性化物質であることが知られている。CpGをタンパク質に結合する方法は、参考文献(Shirotaら、2000年 J.Immunol164: 5575Cho,H.J.、K.ら、2000年、Nat.Biotechnol.18:509、Tighe,H.、K.ら、2000年、J.Allergy Clin.Immunol.106:124、Tighe,H.、K.ら、2000年、Eur.J.Immunol 30:1939)に詳細に記載されている。分子の1つにあるチオール基などの求核基は、もう一方の分子にあるハロアセチル基又はマレイミド基などの求電子基と反応しうる。別法では、分子の1つにあるアミン基が、もう一方の分子にある、ヒドロキシサクシニミドエステルのような活性カルボン酸基と反応しうる。分子の1つにあるアミン基は、もう一方の分子にあるアミン基とも、グルタルアルデヒドのような二機能性架橋剤との反応によって反応しうる(W.C.Chan及びP.D、White、第10章におけるDrijfhout,J.W.及びHoogerhout,P、Oxford University Press社、2000年)。
【0031】
ポリICはTLR3に作用するが、これも、本発明の合成タンパク質に共有結合させてもよい。ポリIC(ポリイノシン:ポリシチジル酸)は、二本鎖ウイルスRNAの「模倣体」であり、インターフェロンを誘導する。したがって、それをワクチン接種におけるアジュバントとして用いることができる(Monshouwer M.ら、Biochem.Pharmacol.52,1195−1200(1996年)、及び、Moriyama H.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99,5539−5544(2002年))。ポリICは、参考文献に記載されている方法を介して、合成タンパク質に共有結合させてもよい(Shirotaら、2000年、J.Immunol 164:5575、Cho、H.J.、K.ら、2000年、Nat.Biotechnol.18:509 、Tighe、H.、K.ら、2000年、J.Allergy Clin.Immunol.106:124。Tighe、H.、K.ら、2000年、Eur.J.Immunol 30:1939)。
【0032】
イミキモド及び類似体はTLR7及び8に作用し、Pam3 CysはTLR2に作用するが、これらも、単独で、或いは、他の合成アジュバントと併用して、本発明に記載の合成タンパク質への結合に有利に用いることができる。Pam3Cysは、3つのパルミチン酸ユニットがグリセロール分子を介してシステインに結合している化合物であり、強力なアジュバントである(Rabanal,F.、ら、J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,945−952(1991年)、及び、Metzger J.W.ら、Biochim.Biophys.Acta、1149,29−39(1993年))。
【0033】
さらに別の好ましい実施形態では、この方法は、上記合成タンパク質を、下記に特定する薬学的に許容される担体と混合することによって、上記タンパク質を医薬組成物に配合するステップを含む。したがって、一態様では、本発明は、本発明の合成タンパク質を含む医薬組成物を生成する方法にも関する。この方法は少なくとも、上述した方法で得られた本発明の合成タンパク質を、薬学的に許容される担体、並びに上記及び下記のアジュバントのようなさらに別の成分と混合するステップを含む。
【0034】
さらに別の態様では、本発明は、上述した方法で得られた合成タンパク質を含む組成物に関する。合成タンパク質は上記に定義した通りのものが好ましい。本発明の方法の化学合成によって得られた合成タンパク質を含む組成物は、生物システムから得られた抗原タンパク質を含む従来の組成物にまさるいくつかの利点を有する。本質的に、生物システムでタンパク質を生産する過程は、生物学的変動を免れない。この変動に加えて、生物源から単離された成分には、それが組換え体宿主に由来するものであれ、非GMO、又は無細胞系に由来するものでさえ、生物生産システムからの他の生体分子が混入するという固有の危険性があり、それらの一部は極めて有害なものでありうる。対照的に、本発明の組成物は、生物学的夾雑物を実質的に含んでいない。好ましくは、組成物が生物学的夾雑物を含んでおらず、その程度は、そのような夾雑物のレベルが、利用可能なアッセイの検出レベル未満となる程度である。本発明の組成物中に存在しない生物学的夾雑物には、生産生物又は生産システムに由来するいかなる生体分子も含まれる。したがって、そのような夾雑物には、例えば細菌内毒素など、タンパク質、炭水化物、DNA及びRNAを含めた核酸、脂質、並びにこれらの組合せが含まれ、ヒトを感染させることのできるウイルスさえも含まれる場合がある。組成物は、上記天然のタンパク質が得られた生物又はウイルス、すなわち、そのタンパク質がその中に天然の生物又はウイルス、或いは、組換えによる生産の場合には、そのタンパク質がその中で生産された生物又はウイルスからの夾雑物(生体分子)を実質的に含まないことが好ましい。重大な問題の1つは、核酸による、とりわけ、例えばウイルス及び/又は組換え体の核酸など、病原性及び/又は発癌性の核酸によるタンパク質性製剤の潜在的汚染である。したがって、本発明による合成タンパク質を含む組成物は、核酸による汚染が本質的に皆無であり、より詳細にはウイルス性及び/又は発癌性の核酸、その中でもとりわけDNAを含んでいない。核酸による汚染、そして詳細にはウイルス性及び/又は発癌性の核酸による汚染、より詳細にはHPV核酸による汚染は、当技術分野で知られているPCR増幅技法によって実証することができる(Ausubelら、「カレントプロトコル(Current protocols)」、1989年)。組成物は合成タンパク質を含み(例えば、病原体又は腫瘍の天然存在の抗原タンパク質における連続した少なくとも46アミノ酸に少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質)、それによって、合成タンパク質の上記アミノ酸配列をコードする核酸を組成物が含まないことが好ましい。本発明による合成タンパク質を含む組成物は、ウイルス性及び/又は発癌性の核酸の増幅に適したプライマーを用いたPCR増幅によってアッセイした場合に、好ましくは30サイクル、より好ましくは40サイクル、そして最も好ましくは50サイクルのPCR増幅の後でも検出可能なDNA汚染を示さない。組成物は、適当なHPV特異的プライマーを用いた30、40、又は50サイクルのPCR増幅によって検出可能なHPV核酸(DNA)断片を含まないことがより好ましい。組成物は、配列番号1から6までのアミノ酸配列をコードするDNAを実質的に含まないことが最も好ましい。
【0035】
さらに別の好ましい組成物はアジュバントを含む。このアジュバントは、樹状細胞を活性化できるアジュバントであることが好ましい。このアジュバントは、上記に特定したものなど、TLRを活性化できるアジュバントであることがより好ましい。組成物は、合成タンパク質と混合されたアジュバントを含んでもよく、また、タンパク質に共有結合されたアジュバントを含有してもよく、また、これら両方を含有してもよい。加えて、複数のアジュバントが存在していてもよい。多数のアジュバントが当業者に周知となっている。適当なアジュバントには、不完全フロインドアジュバント、ミョウバン、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637、ノル−MDPと呼ばれる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリロキシ)−エチルアミン(CGP 19835A、MTP−PEと呼ばれる)、及びRIBIが含まれ、RIBIは、細菌から抽出された3成分、すなわち、モノホスホリル脂質A、トレハロースジミコール酸、及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を、2%スクアレン/トウィーン80エマルジョン中に含有する。アジュバントの有効性は、免疫原性ペプチドに対する抗体の量を測定することによって決定できる。特に有用なアジュバント及び免疫処置スケジュールが、Kwakら、New Eng.J.Med.327:1209−1215(1992年)に記載されている。そこに記載されている免疫アジュバントは、5%(wt/vol)スクアレン、2.5%プルロニックL121重合体、及び0.2%ポリソルベートをリン酸緩衝生理食塩水中に含む。本発明の好ましい一実施形態では、抗原提示細胞表面に存在するToll様受容体(TLR)によって、アジュバントが認識され、したがって、アジュバントがTLRリガンドである。TLRによって認識される様々なアジュバントは、上述されており、本発明の合成タンパク質との混合及び/又は結合にそれらを使用してよい。
【0036】
アジュバントは、生物源から精製されたものではなく、化学合成された合成アジュバントであることが最も好ましい。本発明の好ましい一実施形態では、TLRによって認識可能な合成アジュバント(1つ又は複数)に合成タンパク質を結合させ、それが、ワクチン接種用の完全に特定された合成の組成物の基礎を形成する。さらに別の好ましい組成物は抗CD40抗体を含む。
【0037】
本発明の組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。これらの医薬組成物(ワクチン接種用)は、非経口投与、経口投与、経皮投与、又は経粘膜投与用であると意図されている。これらの医薬組成物は、非経口投与、例えば、皮下投与、皮内投与、又は筋肉内投与してよい。したがって、本発明は、経口投与用、又は好ましくは非経口投与用の組成物を提供し、それらは、許容される担体、好ましくは水性担体中に溶解又は懸濁された免疫原性の合成タンパク質又は合成ワクチンの溶液を含む。様々な水性担体、例えば、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸、及び同様のものが使用できる。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技法で滅菌しても、或いは濾過滅菌してもよい。その結果得られる水溶液は、そのまま使用するように包装しても、凍結乾燥してもよく、凍結乾燥された製剤は投与前に無菌液と併せる。組成物を生理的条件に近づけるために、必要に応じて、これに、緩衝剤、等張化剤、湿潤剤、及び同様のもの、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、及びオレイン酸トリエタノールアミンなど、薬学的に許容される補助剤を含有させてもよい。
【0038】
固体組成物には、従来の非毒性固体担体を用いることができ、それらは、例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、滑石、セルロース、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウム及び同様のものを含有する。経口投与用には、上記に列挙した担体など、通常利用される賦形剤のうち任意のものと、概ね10〜95%、より好ましくは25%〜75%の濃度の活性成分、すなわち本発明の1つ又は複数の合成タンパク質とを組み入れて、薬学的に許容される非毒性組成物を形成させる。上述のように、組成物は、合成タンパク質に対する免疫応答を誘導するように意図されている。したがって、免疫応答を最大にするのに適した組成物及び投与方法が好ましい。例えば、合成タンパク質は、担体に連結させて、或いは活性タンパク質ユニットのホモ重合体又はヘテロ重合体として、ヒトを含めた宿主に導入することができる。有用な担体は、当技術分野で周知であり、例えば、チログロブリン、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン、破傷風トキソイド、ポリ(リジン:グルタミン酸)などのポリアミノ酸、インフルエンザ、B型肝炎ウイルスコアタンパク質、B型肝炎ウイルス組換え体ワクチン、及び同様のものが含まれる。別法では、合成タンパク質の「カクテル」を用いることができ、これは、E7、E6、及びE2、又はそれらの部分、並びにそれらのアジュバント結合体など、選択された免疫原性HPV合成タンパク質を含む。複数の合成タンパク質の混合物には、免疫学的反応が増強されるという利点がある。
【0039】
本発明の免疫原性合成タンパク質の製剤中濃度は、広い範囲で変動しうるが、それは、重量比で約0.1%未満から、通常は約2%又は少なくとも2%、多くて20%から50%、又はそれを超える量までであり、選択された特定の投与方法に従って、主として、液量、粘度などによって選択されるであろう。
【0040】
様々なタイプの投与に適した製剤に関するさらなる手引きは、「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Science)」、Mace Publishing Company社、Philadelphia,PA、第17版(1985年)に見出すことができる。薬物送達の方法に関する簡単な概説としては、Langer、Science 249:1527−1533(1990年)を参照のこと。例えば、経皮送達系には、貼付剤、ゲル、テープ、及びクリームが含まれ、それらは、溶解補助剤、透過性促進剤(例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、及びアミノ酸)、親水性重合体(例えばポリカルボフィル及びポリビニルピリリジン(polyvinyl pyrillidine))、並びに接着剤及び粘着付与剤(例えば、ポリイソブチレン、シリコーンベースの接着剤、アクリレート、及びポリブテン)などの賦形剤を含有する場合がある。経粘膜送達系には、貼付剤、錠剤、坐剤、腟坐剤、ゲル、及びクリームが含まれ、それらは、溶解補助剤及び促進剤(例えばプロピレングリコール、胆汁酸塩、及びアミノ酸)、並びに他の媒体(例えば、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル及び誘導体、並びにヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒアルロン酸などの親水性重合体)などの賦形剤を含有する場合がある。注射用の送達系には、溶液、懸濁液、ゲル、微細球、及び重合体注射剤が含まれ、溶解性改変薬剤(例えばエタノール、プロピレングリコール、及びショ糖)、及び重合体(例えばポリカプリラクトン及びPLGA)などの賦形剤を含有する場合がある。移植可能な系には、桿体及びディスクが含まれ、PLGA及びポリカプリラクトンなどの賦形剤を含有する場合がある。本発明の医薬組成物を投与するのに使用できる他の送達系には、噴霧剤及び粉末薬などの鼻腔内送達系、舌下送達系、及び吸入法による送達系が含まる。吸入による投与には、適当な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適当な気体を使用して、加圧されたパック又はネブライザーからエアゾール噴霧剤投与の形態で本発明の医薬組成物を送達するのが好都合である。気密エアゾールの場合には、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって、用量単位を決定できる。吸入器又はインサフレーターで使用するための、例えばゼラチンのカプセル剤及びカートリッジは、本発明のペプチドと、ラクトース又はデンプンなどの適当な粉末ベースとの粉末混合物を含有するように製剤できる。本発明の医薬組成物は、吸入法による投与用に、例えば米国特許第6,358,530号に記載の通りにさらに製剤することができる。本発明の好ましい組成物は、ワクチンとして使用するための組成物である。
【0041】
さらに別の態様では、本発明は、腫瘍又は感染症を治療又は予防する方法に関し、この方法は、上記に特定した通りに生成された合成タンパク質、又は上記に特定した組成物を治療有効量で対象に投与することを含む。それによって、この合成タンパク質は、上記に定義した腫瘍又は感染性因子の天然の抗原タンパク質のアミノ酸配列を含む。好ましい方法は、HPV感染、詳細には生殖器感染の予防又は治療、性器疣贅又は上皮異形成などのHPVウイルス誘発病変の予防又は退縮、詳細にはHPVによって誘発された異形成、及び癌、詳細には子宮頚部癌、肛門性器癌、又は頭部及び頚部癌、並びに他のHPV誘発癌への形質転換の予防及び治療を含めたHPV関連疾患の治療又は予防の方法である。
【0042】
法律によって、治療の方法が特許可能でない管轄区では、本発明は、同様に、腫瘍又は上記に特定した感染症を治療又は予防する(方法で使用する)ための薬物を製造するための、上記に特定した通りに生成された合成タンパク質の使用、又は上記に特定した組成物の使用に関する。
【0043】
したがって、本発明は、対象にワクチン接種する方法における、ワクチン接種用の合成タンパク質及び合成組成物の使用に関する。このワクチン接種の方法は、好ましくはHPVに対するもの、より好ましくは発癌性タイプのHPV16、18、31、33、及び45に対するものである。この方法は、上記に特定した合成タンパク質を含む医薬組成物を、対象に投与することを含む。好ましい方法では、この医薬組成物は、TLRを活性化するアジュバント、好ましくは合成アジュバント、より好ましくは本発明の合成タンパク質への合成アジュバントの結合体も含む。
【0044】
別の態様では、本発明は、対象におけるHPV感染の予防及び/又は治療を目的とした、ワクチン接種用のワクチン又は組成物を製造するための、上記に特定したHPV由来の抗原性合成タンパク質の使用に関する。このワクチンは、経口投与、非経口投与、経皮投与、又は経粘膜投与に適した医薬組成物であることが好ましい。
【0045】
本発明の合成タンパク質を少なくとも1つ含む医薬(ワクチン)組成物も、本発明の一実施形態である。本発明の合成タンパク質及び医薬組成物は、上記に示した疾患を治療及び/又は予防するための、哺乳動物、詳細にはヒトへの投与に有用である。適当な製剤は、例えば、「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Science)」、Mack Publishing Company社、Philadelphia、Pa、第17版(1985年)中に記載されており、それらは当技術分野で周知であり、且つ、当業者ならば容易に適合させることができる。
【0046】
本発明の免疫原性合成タンパク質は、予防的に投与するか、或いは既に疾患を患っている個体に投与する。これらの組成物は、効果的な免疫応答を誘発するのに有効な量で患者に投与する。これを実現するために適した量を、「治療上有効な用量」又は「免疫原性的に(immunogenically)有効な用量」として定義する。この使用に有効な量は、例えば、ペプチドの組成、投与方法、治療される疾患の段階及び重篤度、患者の体重及び全般的健康状態、並びに処方を行う医師の判断に依存するであろうが、概ね、最初の免疫処置(すなわち治療用又は予防用の投与)には、患者の体重1キログラム(kg)あたり約0.1μgから約50μgまで、より一般的には、体重1kgあたり約1μgから約20μgまでの範囲にある。追加免疫のための用量は、通常、体重1kgあたり約1μgから約20μgであり、患者の反応及び状態に応じて、何週間かの間から何カ月かの間にわたって追加免疫用の投与計画を用いる。適当なプロトコルとしては、3週間の間隔を置いて3〜4回の初回刺激注射を行い、それの最後に続いて、一定の間隔(例えば6カ月)を置いて追加免疫用の注射を行うものが含まれる。
【0047】
以下の非限定的な実施例は、本発明のHPV由来の抗原性合成タンパク質の調製を記述するものである。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
HPV16 E7ペプチドの化学合成とペプチドの連結
HPV16 E7ペプチド及びタンパク質の化学合成
均質な合成E7タンパク質を、Fmoc固相合成法で別々に組み立てられた2つのオリゴペプチドの化学的連結によって調製した。E7のN末端60量体セグメントを、スルホンアミド安全つかみ樹脂で調製し、公表されている操作法に従ってチオエステル1[E7(1−60)]に変換した(Ingenito,R.ら、J.Am.Chem.Soc.121,11369−11374(1999年))。C末端38量体カルボキサミド[E7(61−98),2]は、標準的なのFmoc固相プロトコルを介して生成させた。続いて、RP−HPLCで精製された断片1及び2を連結させて、完全長E7タンパク質(3)を得た。元の無改変の連結操作法(Hackeng T.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,10068−10073(1999年)、及びDawson P.E.ら、J.Am.Chem.Soc.119,4325−4329(1997年))の1つに従って、添加物としてチオフェノール/ベンジルメルカプタンを用いて、連結反応を成功裏に実施することができた。しかし、本発明者らは、メルカプトエチルスルホン酸ナトリウム塩(Flavell R.R.ら、Org.Lett.4、165〜168頁、2002年)が、均質且つ無臭の反応混合物を与えるので、より好都合な添加物であることを見出した。
【0049】
許容できるタンパク質収率を得るために、合成経路全体に次の通りの必要な改変を導入した。第1に、産物/反応中間体の完全且つ不可逆的な沈殿を防止するために、連結緩衝液に20mM EDTAを含有させる必要があることが明らかになった。本発明者らは、RP−HPLCを用いたE7タンパク質の準備精製は、このステップの収率が悪いため実施できないことも見出した。満足できる精製プロトコルは、強い変性条件(6M塩酸グアニジン)下におけるスーパーデックス75カラムでの反応混合物のゲル濾過と、それに続く、標的タンパク質を含有するプールされた画分の、水に対する透析とを含む。非変性条件(リン酸緩衝液)又は弱い変性条件(7M尿素)で行ったゲル濾過ステップは、依然としてE7(61−98)が混入している産物を産生したことに留意しなければならない。これは、おそらく後者の断片と完全長E7との混合凝集によるものである。これらの結果は、周知(Alonso,L.G.ら、Biochemistry 41,10510−10518(2002年)のE7の凝集能、及びE7のC末端部分がこのタンパク質のオリゴマー形成の原因となるという観測の報告(Clemens,K.E.ら、Virol 214,289−293(1995年)と完全に一致している。
【0050】
実験
ペプチド合成
断片E7(1−60)チオエステル(1)及びE7(61−98)C末端カルボキサミド(2)は、PyBOP活性化を伴ったFmoc−SPPSによってABI433A測定器を用いて0.25mmolスケールで調製した。Cys残基のラセミ化を最小にするために、(Han,Y.X.ら、J.Org.Chem 62,4307−4312(1997年))で提案されたin situプロトコルを用いた。各合成サイクルは、NMP中の20%ピペリジンを用いたFmocの除去、NMP洗浄、2mmol DIPEAの存在下におけるPyBOPに補助された1mmol Fmocアミノ酸との1hの連結ステップ、第2のNMP洗浄、AcO/DIPEAキャッピングステップ、及び、最後にNMP洗浄を含む。
【0051】
ペプチドチオエステルE7(1〜60)(1)
断片1の組み立ては、4−スルファミルブチリルAM樹脂(Novabiochem社)から開始した。N末端メチオニン残基は、Boc−Met−OHとして導入した。チオエステルは、固定され、且つ保護されたオリゴペプチドから生成させた。簡潔には、樹脂をTMSCHNでアルキル化し、ペプチドをNaSPhの存在下でエチル3−メルカプトプロピオン酸で切断し、96/1.2/1.2/0.8/0.8のTFA/エチル3−メルカプトプロピオン酸/TIS/m−クレゾール/HOで脱保護した。
【0052】
ペプチドアミドE7(61−98)(2)
断片2は、RAM Tentagel樹脂(Rapp Polymere社)上で組み立てた。ペプチド鎖組み立てが完了したときに、(Dick,F.、「分子生物学の方法、第35巻:ペプチド合成プロトコル(Molecular Biology,Vol.35:Peptide Synthesis Protocols)」(Pennington,M.W.及びDunn,B.M編集)中63〜72頁(Humana Press社、Totowa,NJ、1994年))に記載の通り、切断混合物(96/1.2/1.2/0.8/0.8のTFA/EDT/TIS/m−クレゾール/HO)で2時間処理することによってペプチドを脱保護し、樹脂から切断した。
【0053】
完全長E7タンパク質(3)を得るための連結
方法A
ペプチドチオエステル1(22mg、3.1μmol)を、ペプチド2(11.3mg、2.7μmol)と混合し、3.0mLの緩衝液(100mMリン酸、20mM EDTA、6M Gdn・HCl、pH8)中に溶解させた。次に60μLチオフェノール及び60μLベンジルメルカプタンを添加し、混合物を22℃で65時間撹拌した。混合物を100mg DTTで処理し、25mM NaHPO、25mM NaHPO、5mM EDTA、5mM DTT、pH7中で平衡化されたスーパーデックス75 HL 16/60カラム(Pharmacia社)に添加した。37mL(1mL/分)において溶出された産物を収集し、RP HPLC(Vydac C−4 214TP510カラム;250×10mm、5mL/分;0.1%TFA水溶液中のアセトニトリル勾配で溶出))によって再精製し、質量分光分析法、RP HPLC、及び定量的アミノ酸分析による測定で、0.6mg(収率2%)の均質なE7タンパク質を得た。PE Sciex API165シングル四重極質量分析計で電気スプレー電離MSを行った。α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸をマトリックスとして用いて、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)MSスペクトルを、Voyager−DE PRO測定器に記録した。
【0054】
方法B
ペプチドチオエステル1(10.5mg、1.4μmol)をペプチド2(16mg、2μmol)と混合し、1.8mLのライゲーション緩衝液(200mMリン酸、20mM EDTA、6M 塩酸グアニジン、75mM MesNa、pH8.5)中に溶解させ、混合物を22℃で65h撹拌し、精製緩衝液(6M塩酸グアニジン、25mM NaHPO、25mM NaHPO、5mM EDTA、5mM DTT、pH7)中で平衡化されたスーパーデックス75 HL 16/60カラム(Pharmacia社)に添加し、0.8mL/分で溶出した。50mLにおいて溶出された産物を収集し(5.5mL)、3kDカットオフを有する透析チューブを用いて水中で透析し(2Lの水、40hにわたって3回交換した)、6.7mg(収率44%)のE7タンパク質を含有する7.5mLの溶液を得た。この物質のクロマトグラフィー特性、分光器特性、及び免疫原性特性は、方法Aで得られたタンパク質と区別できないものであった。
【0055】
(実施例2)
HPV16 E6の化学合成
HPV16−E6タンパク質配列
【化1】

【0056】
完全長HPV16E6合成タンパク質を得るためのペプチド合成のために選択された4つの断片:
【化2】

【0057】
断片は、それらのチオエステル(−SR)として示されており、配列中、Xは、特定の断片が結合された後に除去される一時的な保護基(例えばMSC基)を表す。合成プロセスは以下の通りである。すなわち、断片04を断片03に結合し、それに続いて、構築物03/04からXを除去し、断片03/04を断片02に結合し、Xを構築物02/03/04から除去し、断片02/03/04を断片01に結合する。
【0058】
(実施例3)
HPV16−E2の化学合成
HPV16−E2タンパク質配列
【化3】

【0059】
完全長HPV16 E2合成タンパク質を得るためのペプチド合成のために選択された7つの断片:
【化4】

【0060】
断片は、それらのチオエステル(−SR)として示されており、配列中、Xは、特定の断片が結合された後に除去される一時的な保護基(例えばMSC基)を表す。合成ストラテジーは、HPV16 E6と同様である。
【0061】
注意:構築物06/07と断片05との間の連結は、この連結がPへの連結であるため困難な場合がある。
【0062】
HPVI6−E2、代替ストラテジー、このタンパク質のオーバーラップした2つ部分、グリシン連結。
【0063】
通常、化学的連結は、長さ制限及び/又は好ましくない配列のために、ある断片のC末端チオエステルを別の断片のN末端Cに連結させることによって進行する。HPV16E2の場合には、代替ストラテジーを用いることができる:
【化5】

【0064】
断片は、それらのチオエステル(−SR)として示されており配列中、Xは、特定の断片が結合された後に除去される一時的な保護基(例えばMSC基)を表し、XXは、N末端のGに結合した、S保護されているN−(2,3,4−トリメトキシ−5−メルカプトフェニル)基を表す[J.Chem.Soc.124、4642(2002年)]。
【0065】
(実施例4)
HPV18 E7の化学合成
HPV18−E7タンパク質配列
【化6】

【0066】
完全長HPV18 E2合成タンパク質を得るためのペプチド合成のために選択された2つの断片、詳細は実施例1と同じ:
【化7】

【0067】
(実施例5)
HPV18 E6の化学合成
HPV18−E6タンパク質配列
【化8】

【0068】
完全長HPV18 E6合成タンパク質を得るためのペプチド合成のために選択された4つの断片:
【化9】

【0069】
断片は、それらのチオエステル(−SR)として示されており、配列中、Xは、特定の断片が結合された後に除去される一時的な保護基(例えばMSC基)を表す。
【0070】
(実施例6)
HPV18 E2の化学合成
HPV18−E2タンパク質配列
【化10】

【0071】
完全長HPV18 E2合成タンパク質を得るためのペプチド合成のために選択された7つの断片:
【化11】

【0072】
断片は、それらのチオエステル(−SR)として示されており、配列中、Xは、特定の断片が結合された後に除去される一時的な保護基(例えばMSC基)を表す。
【0073】
HPV18−E2、代替ストラテジー、このタンパク質のオーバーラップした2つ部分、グリシン連結。
【0074】
化学的連結は、長さ制限及び/又は好ましくない配列のために、ある断片のC末端チオエステルを別の断片のN末端Cに連結させることによって進行することが好ましい。HPV16E2の場合には、代替ストラテジーを用いることができる:
【化12】

【0075】
断片は、それらのチオエステル(−SR)として示されており、配列中、Xは、特定の断片が結合された後に除去される一時的な保護基(例えばMSC基)を表し、XXは、N末端のGに結合した、S保護されているN−(2,3,4−トリメトキシ−5−メルカプトフェニル)基を表す[J.Am.Chem.Soc.124、4642(2002年)]。
【0076】
(実施例7)
合成HPV16−E7タンパク質ワクチンの抗原性
方法
対照抗原及びアジュバント
H−2D−拘束性CTLエピトープHPV16−E749−57(RAHYNIVTF)と、E743−77の長さ35残基ペプチドGQAEPDRAHYNIVTFCCKCDSTLRLCVQSTHVDIRとの2つのペプチドを生成させた。ペプチドの純度は、RP−HPLCによって測定し、日常的に、90%超の純度となっていることが判明した。ペプチドを、0.5%DMSOを含むPBS中に溶解させ、即座に使用しない場合には、−20℃で保存した。組換え体は、Pet−19b−HPV16−E7で形質転換された組換え体大腸菌(E.coli)中で産生させ、前述の通りに精製した(De Bruijn,M.L.ら、Cancer Res.58、724〜31頁、1999年)。配列TTCATGACGTTCCTGACGTTのCpG−オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)1826は、Coley Pharmaceutical社によって提供され、50μg/マウスの作業濃度で使用した(Zwaveling S.ら、J.Immunol.169、350〜8頁、2002年)。
【0077】
マウス、免疫、細胞系、及びT細胞培養
C57BL/6(B6、H−2)マウスは、IFFA Credo社(仏国、Paris)から入手した。腫瘍細胞系13.2は、アデノウイルス5型由来のE1タンパク質で形質転換されたMEC(B6)から派生しており、このタンパク質中では、H−2D E1Aエピトープが、HPV16−E749−57CTLエピトープで置換されている。TC−1は、HPV−16 E6及びE7並びにc−Ha−ras発癌遺伝子で同時形質転換されたC57BL/6マウスの初代上皮細胞に由来し、IMDM+10%FCS中で培養された(Van der Burg S.H.ら、Vaccine 19,3652〜60、2001年)。D1細胞は、C57BL/6マウスから派生した長期の成長因子依存性の未成熟脾臓樹状細胞(DC)であり、記載されている通りに培養した(Winzler,C.ら、J.Exp.Med.185、317〜28頁、1997年)。PBS中に溶解させたE749−57の短いペプチド(5.0μg)又はE743−77の長さ35残基のペプチド(18μg)のいずれか、組換え体HPV16−E7(50μg)タンパク質又は合成HPV16−E7タンパク質(50μg)を等モルレベル(4.5nmol)でC57BL/6マウスに皮下注射した。ODN−CpG1826(50μg)はPBS中に溶解させて、皮下ワクチン接種の前にペプチドと混合した。陽性対照として、PBS中に溶解され、ODN−CpG1826と混合された約8倍多い用量のペプチド(37.7nmo1、150μg)もマウスに注射した(Zwavelingら、J.Immunol 169、350〜8頁、2002年)。注射された総容積は、200μl/マウスであった。脾臓は10日後に採取した。免疫処置されたマウスからの脾細胞を、完全培地中、5×10のE749−57発現細胞(腫瘍細胞系13.2)存在下で培養する(24ウェルプレートのウェルあたり4×10細胞)ことによってT細胞を得た。培養は、5%COを含有する加湿された空気中で、37℃で維持した。外因性のIL−2は添加しなかった。6日目に、フィコール密度勾配中での遠心によって死んでいる細胞を培養から除去し、残った生存細胞を24ウェルプレート中に1.5×10細胞/ウェルで播種した。7日目に、四量体染色又は細胞内サイトカイン染色を行った。
【0078】
HPV16−E7特異的CD8+T細胞の分析
以前に記載された(Van der Burgら、Vaccine 19、3652〜60頁、2001年)通り、PE標識された、E749−57(IVTF)含有H−2Dエピトープ四量体を構築し、ペプチド特異的CTL免疫の分析に用いた。以前に記載された(Zwaveling S.ら、J.Immunol 169、350〜8頁、2002年)通り、HPV16−E7特異的CTLの抗原特異的なIFNγ産生の分析にFITC標識された抗CD8b.2 Ab(Ly−3.2)(クローン53−5.8)と、PE標識された抗IFNγ Ab(クローンXMG1.2)(BD PharMingen社、米国、San Diego)とを使用した。
【0079】
腫瘍曝露実験
予防ワクチン接種ストラテジー実験では、28日目及び14日目に、指示されたワクチンをマウスの左側の腹に皮下ワクチン接種した。0日目に、50000のTC−1腫瘍細胞をマウスに皮下注射し、腫瘍の成長を100日間追跡した。治療用ワクチン接種の設定では、マウスを左側の腹で50000のTC−1腫瘍細胞に曝露した。腫瘍が触診可能であった9日目に、マウスの右側の腹に、指示されたワクチンを接種した。14日後、これらのマウスに上記のワクチンを追加注射した。腫瘍の成長は、95日間モニターした。
【0080】
合成HPV16−E7タンパク質のin vivo抗原性
多数の研究によって、(1)HPV16−E7を発現する腫瘍に対するC57BL/6マウスの防御が、主としてE749−57特異的CD8+T細胞に依存していること(De Bruijn M.L.ら、Cancer Res.58、724〜31頁、1998年、Greenstone H.L.ら、PNAS 95、1800〜5頁、1998年、Lin K.Y.ら、Cancer Res.56、21〜6頁、1996年、Feltkamp M.C.ら、Eur.J.Immunol.23、2242〜9頁、1993年)、及び、(2)腫瘍の進行に対して防御するか、或いは確立された腫瘍を根絶するHPV16−E7特異的T細胞の能力が、E749−57四量体陽性CD8+T細胞の割合と相関すること(Van der Burgら、Vaccine 19,3652〜60頁、2001年)が示されているので、そのようなHPV16−E749−57特異的なCD8+T細胞を誘導する能力によって、合成HPV16−E7タンパク質の抗原性を評価した。最小CTLエピトープ(E749−57:RAHYNIVTF)、E749−57特異的CD8+T細胞の活発な反応を誘導することが知られていたより長いペプチド(E743−77)、組換え体のHPV16−E7又は合成HPV16−E7タンパク質を含めた、過去に成功裏に使用されてきたいくつかのワクチンを最小CTLエピトープと等モル濃度でCpGと併用してC57BL/6マウスに注射した。ワクチン接種の10日後に脾臓を採取し、H2−D E749−57(RAHYNIVTF)四量体の染色によって細胞を直接分析し(Van der Burg S.H.ら、Vaccine 19,3652〜60頁、2001年)(図3a)、E749−57(RAHYNIVTF)ペプチド特異的なCD8+T細胞の割合を測定する前に、さらに、付加的なもう1ラウンドのin vitro刺激も与えたところ、それは、in vivoで誘発されたCD8+T細胞応答を拡大したが、それらのヒエラルキーは変化させなかった(図3b)。予測された通り、より長いE7ペプチドは、抗原の用量が高くても、またより低い用量でも、HPV16−E7特異的なCD8+T細胞を強く誘導することができ、一方、最小CTLエピトープによって誘導された反応は有意に弱かった。重要なことに、合成E7タンパク質を1回注射することによって誘導されたHPV16−E7特異的CD8+T細胞の反応は、組換え体HPV16−E7タンパク質の反応に匹敵するものであり、また、他のワクチンよりもいくらか強いものであった。合成E7タンパク質で1回ワクチン接種した後に、機能的なCD8+T細胞応答が誘発されたことを確認するために、樹状細胞(DC)のみで刺激した際、又は、長いE743−77ペプチド又は組換え体E7タンパク質のいずれかでパルス刺激した際のINF−γ産生CD8+細胞の数を測定した。合成E7タンパク質でワクチン注射されたマウスの脾臓で多数のINF−γ産生CD8T細胞が検出され、H2−D E749−57四量体によって検出されたCD8+T細胞が機能的に活性であったことが確認された(図4)。さらに、これらのマウスからのCD8+T細胞は、組換え体E7タンパク質でパルス刺激されたDCに対して反応したが、これは、合成HPV16−E7タンパク質がその最大限の抗原性潜在能を保持していることを示す。
【0081】
合成E7タンパク質ワクチン接種はTC−1腫瘍細胞の根絶をもたらす
50000のTC−1腫瘍細胞に曝露された後、未処置のマウスでは、11日目からその先、触診可能な腫瘍の進行が開始し、すべてのマウスが、腫瘍接種の後41日以内に死亡した。初回−追加接種プロトコルにおいて4.5nmolの合成E7タンパク質でワクチン接種されたマウスは、70日目まで保護された。この日の後には、合成E7でワクチン接種された10匹のマウスのうち1匹のみが腫瘍を発症し、一方、組換え体E7タンパク質でワクチン接種されたマウスのグループでは3匹のマウスが死亡した。等モル量の長いE7ペプチドでマウスにワクチン接種した場合、すべてのマウスが腫瘍を発症した(図5a)が、以前に防御的であることが確立されている約8倍多い用量の長いペプチド(13)を注射されたマウスの中では、4匹のみが腫瘍を発症した。確立されている腫瘍をこのワクチンが根絶する能力を試験するために、最初にマウスをTC−1腫瘍細胞に曝露し、腫瘍が触診可能であった9日目にワクチン接種した。14日後にワクチンを追加接種した。未処置のマウスはすべて、腫瘍曝露後39日以内に死亡した。低用量(合成タンパク質と等モル量)の長いペプチドを注射されたマウスのうち、>40%が40日目にまだ生きていたが、最終的には、すべてのマウスが56日目の前に死亡した。合成E7タンパク質でワクチン接種された8匹のマウスのうち、6匹のマウスは、50日目と70日目との間に死亡したが、最後2匹のマウスは、少なくとも95日目まで生き残った。組換え体E7タンパク質でワクチン接種されたマウスはいくらか早めに死亡したが生存動態は、合成タンパク質でワクチン接種されたグループのものと同様であった(図5b)。
【0082】
上記の実験は、合成E7タンパク質が、予防用及び治療用の両方の設定でマウスを腫瘍に対して防御できる、IFNγ産生CD8+T細胞の強い免疫を誘導することを実証するものである。合成E7での治療用ワクチン接種は、すべてのマウスにおける腫瘍を根絶する結果とはならなかったが、これは、これらの実験で観測されたTC−1腫瘍成長の病原力の強さに関係するかもしれない。TC−1細胞の注射の後、触診可能な腫瘍がかなり早期に現れただけではなく、すべてのマウスが7日以内に死亡した(図5b)ので、それらの成長速度もさらに速いものでもあった。一方、本発明者らの以前の実験では、未処置のマウスが14〜21日以内に死亡した(Van der Burg S.H.、Vaccine 19、3652〜60、2001年)。本発明者らの以前の研究(Zwaveling S.ら、J.Immunol.169、350〜8、2002年)でマウスを極めて良好に保護した、高用量の長いペプチドを用いた場合でさえ、本発明者らの今回の研究では腫瘍の発症を完全に予防することができなかった。
【0083】
組換え体E7タンパク質又は合成E7タンパク質と比較して、等モル用量の長いE7ペプチドによるワクチン接種は、CD8+IFNγ産生HPV16 E7特異的T細胞の誘導に効率的でなく、これが腫瘍曝露に対する防御の不足に反映された。約8倍高い用量の長いペプチドによるワクチン接種は、強いE7特異的なT細胞反応と腫瘍防御とをもたらしたし、CpGに媒介されたDC活性化の部位における抗原提示の寿命が重要な役割を果たすので、これは、タンパク分解に対するペプチド及びタンパク質のin vitroの/vivo感受性と、タンパク質及びペプチド、並びにアジュバントCpG、身体全体での拡散の相違とに関係する。等モル基礎では、合成タンパク質が、ワクチン接種の目的により好都合なプロフィールを有することを、本発明者らのデータは示す。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】HPV16−E7タンパク質を合成するための合成スキームを示す図である。
【図2】精製された合成HPV16−E7タンパク質のMaldi−tof質量スペクトルを示す図である。
【図3】4.5nmolの合成HPV16−E7タンパク質の1回の注射によって、多数のHPV16−E749−57特異的CD8+T細胞が誘導される結果となることを示す図である。最小CTLエピトープ(E749−57)と等モル濃度の、指示された抗原を、CpGと混合して、又は、陽性対照として使用する150μgのE743−77(高用量)ペプチド+CpGと混合してC57BL/6マウスに皮下注射したか、或いはワクチン接種しなかった(未処置)。PEに結合したH−2D−E749−57四量体(TM)で染色された脾臓由来のCD8+T細胞の割合は、ex−vivoで直接示す(A)か、或いは1ラウンドのin vitro刺激の後に示した(B)。棒グラフは、3匹のマウスの平均百分率及びSEMを示す。
【図4】合成HPV16−E7タンパク質によるワクチン接種が、機能的なlFNγ産生CD8+T細胞を誘導することを示す図である。脾臓細胞培養を、樹状細胞系D1のみか、又はE743−77ペプチドでパルス刺激されたD1細胞、又は組換え体HPV16−E7タンパク質でパルス刺激されたD1細胞で刺激し、細胞内サイトカイン染色によってフローサイトメーターで分析した。等モル濃度の組換え体HPV16−E7又は高用量のペプチドE743−77を注射されたマウス、及び非接種(未処置)マウスの代表例を組み合わせて、合成HPV16−E7タンパク質を注射された3匹のマウスを示す図である。
【図5a】28日目及び14日目に、4.5nmolの合成E7タンパク質(n=10)、及び等モル量の組換え体E7タンパク質(n=9)、又は50μgのCpGと混合された長いペプチド(ペプチド低用量、n=10)、又はPBSのみ(未処置、n=7)でマウスのグループをワクチン接種した結果を示す図である。対照として、長いペプチドは、約8倍多い用量の(n=5)でも使用した。これは、80%のマウスを防御することが以前に確立されている。0日目に、50000のTC−1腫瘍細胞を体の反対側にs.c.で注入し、腫瘍の成長を2〜3日ごとに100日間までモニターし、生存曲線をプロットした。
【図5b】腫瘍が触診可能であった9日目に、TC−1腫瘍細胞に曝露されたマウスに、指示されたワクチンを体の反対側に接種し(1グループあたりn=8)、23日目(矢印)に追加接種した。腫瘍の成長を95日目までモニターし、生存曲線をプロットした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体又は腫瘍の天然の抗原タンパク質における連続した少なくとも46アミノ酸に少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む合成タンパク質を生成する方法であって、
a)それぞれが、前記アミノ酸配列における連続した2から80アミノ酸から成る2つ以上の断片を化学合成し、それによって、前記2つ以上の断片が、前記アミノ酸配列中で隣接して、且つオーバーラップしていないステップと、
b)一断片のC末端を、隣接した断片のN末端に化学的に連結させて、前記合成タンパク質又はその一部分を生成させるステップと、
c)任意選択で、ステップBを反復して、ステップB又はステップCから得られたさらに別の隣接した断片を順次に連結させて、前記合成タンパク質を生成させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記隣接し且つオーバーラップしていない断片が、N末端システイン残基又はグリシン残基を含むように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記天然のタンパク質が、HPVタンパク質である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記HPVタンパク質が、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33又はHPV45からのE2、E6又はE7タンパク質である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップB又はCから得られた前記合成タンパク質が、アジュバントに化学的に結合されている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アジュバントが化学的に合成されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アジュバントが、樹状細胞を活性化できる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記アジュバントが、ポリIC、CpG DNA、イミキモド、Pam3Cys、LPS、及びこれらの組合せから成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記合成タンパク質を薬学的に許容される担体と混合することによって、前記タンパク質を医薬組成物に配合するステップをさらに含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
合成タンパク質を含む組成物であって、前記タンパク質が、病原体又は腫瘍の天然の抗原タンパク質における連続した少なくとも46アミノ酸に少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、それによって、前記組成物は、前記アミノ酸配列をコードする核酸を含まない組成物。
【請求項11】
前記タンパク質が、配列番号1から6までのうちの1つにおける連続した少なくとも46アミノ酸に少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、それによって、前記組成物は、配列番号1から6までのアミノ酸配列をコードするDNAを含まない、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物がアジュバントをさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記アジュバントが、樹状細胞を活性化できる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記TLR−活性化アジュバントが、ポリIC、CpG DNA、イミキモド、Pam3Cys、LPS、及びこれらの組合せから成る群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記アジュバントが共有結合によって前記タンパク質に結合されている、請求項10から14までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項9から15までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
抗CD40抗体をさらに含む、請求項9から16までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
ワクチンとして使用するための、請求項9から17までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
HPV関連疾患を治療又は予防する方法であって、請求項1から9までに記載の通りに生成された合成タンパク質、又は請求項10から18までに記載の組成物を治療有効量、対象に投与することを含む方法。
【請求項20】
前記HPV関連疾患が、HPVによって誘発された癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から9までに記載の通りに生成された合成タンパク質、又は請求項10から18までに記載の組成物の、HPV関連疾患を治療又は予防する薬物を製造するための使用。
【請求項22】
前記HPV関連疾患が、HPVによって誘発された癌である、請求項21に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−528838(P2007−528838A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512345(P2005−512345)
【出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000929
【国際公開番号】WO2005/060993
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504369557)ライデン ユニバーシティ メディカル センター (4)
【Fターム(参考)】