説明

腫瘍生細胞から選択されたアプタマ及びその使用

本発明は、腫瘍生細胞から選択されるアプタマ、ならびにある特定の癌及びその他の疾患の診断及び治療のためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍生細胞(live tumor cells)から選択されたアプタマ、並びにある種の癌及びその他の病理の診断及び治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍学の分野において、インビボイメージング(放射線撮影法、X線スキャナ、MRI、ガンマ-シンチグラフィ、陽電子射出断層撮影法)による非侵襲性診断法は、診断又は治療されるべき腫瘍に特徴的な分子決定因子(又はマーカー)にほとんど特異的ではない。このことは、インビトロで得られる知見の精度とは対照的であり、インビトロで得られる知見は癌のプロセスの原因となる分子の異常をより詳細に表し、分子科学の現在のデータには診断ツールが適切ではないという結果をもたらす。インビトロとインビボとの間の同様の相違は、抗癌治療の分野においてしばしば見られ、許容できる治療係数(有効量/毒性量)を用いて治療を進めることが困難になる。
【0003】
腫瘍の特定のタイプ若しくはその進行の特定の段階を知らせるか、又は腫瘍の代謝状態を知らせる分子決定因子(又はマーカー)を認識できるリガンドの探索は、よって、よりよいフォローアップ及び癌のよりよい治療のために必須である。残念なことに、これらのリガンドは、通常、生物学的関係から離れて精製及び単離され、よってその本来の環境にある標的とは異なる標的から得られる。
【0004】
よって、最も一般的には、試験管において有効なリガンドは、それらの標的と相互作用できない。なぜなら:
- それらは組織境界を横切ることができないからであり、
- それらは生物体において不安定であるか、又はその他の生体分子との非常に多くの有害な相互作用の原因であるからであり、
- その本来の細胞環境の外におかれた標的の本来の構造が保存されなかったか、又はこの構造のある必須の修飾、例えば:(i) タンパク質の翻訳後修飾又は(ii) 他のタンパク質との相互作用がインビトロで再現できないからである。
【0005】
後者の2つの制限は、脂質細胞膜に挿入される親油性セグメントを含む膜貫通タンパク質のような標的の場合に特に頻度が高い。この親油性セグメントはインビトロで保存されないが、これらのタンパク質の膜への挿入は、それらの構造を決定しかつそれらの活性に必須である。
【0006】
さらに、利用可能なリガンドが、腫瘍において同定される標的を認識する特異性の問題も存在する。よって、ある癌、特に変異チロシンキナーゼ受容体の存在に関係し、この受容体の構成的活性化又は過剰発現をもたらすものの診断及び/又は治療のための特異的リガンドを提供できることは、重要である。
【0007】
よって、分子薬剤は、
- 特異的で
- 調節可能で、かつ
- 妥当な費用で簡単に製造される
新規な分子認識プローブを必要とする。
【0008】
薬理学的研究は、腫瘍において同定される標的に対して有効な新規リガンドを見出すための新規なストラテジを設定した。
- 小分子のコンビナトリアルライブラリは、特定のタンパク質に対するリガンドを見出す機会を増加させ得る(例:コンビナトリアルライブラリのサブクラス、酵素を阻害する偽物質、例えばMMP (マトリックスメタロプロテアーゼ)を阻害するもの)。これらの主要な欠点は、これらがインビトロで分類されることである。さらに、それらの選択性は保証されないので、これらの作用剤を用いて、有効なように充分に選択性がありかつ副作用がない化合物を得ることは困難である。例外的に、異常タンパク質の形に特異的な化合物が得られ、これは非特異的結合及び有害作用を導き、乏しい治療係数をもたらす。
【0009】
- モノクローナル抗体は、特異的ターゲティング用の優れた作用剤であり、治療目的で最近用いられている(例:乳癌におけるハーセプチン)。しかし、これらは、それらのサイズ、イディオタイプ及び免疫原性のためにインビボで用いるのが難しく、製造して最適化するのに非常に費用がかかる。さらに、モノクローナル抗体は、タンパク質の単一アミノ酸に影響する点突然変異の認識が含まれる場合に、その限界に達する。特に、Retタンパク質の異常形の一つを同定できるモノクローナル抗体は存在しない。
【0010】
- 診断及び治療の代替手段を構成し、以下の表1に示すような、抗体と比較していくつかの利点を有するアプタマ。
【表1】

【0011】
予め規定された標的に特異的に結合しかつ高い親和性を有するアプタマを選択する方法は、1990年代の初めに発表され、SELEX法(Systematic Evolution of Ligands by Exponential enrichment(試験管内人工分子進化法))として知られている。この方法は、選択−増幅サイクルの反復において操作される。この方法並びにこの方法のいくつかの改良及び応用は、特に、次の米国特許:米国特許第5270163号、第5475096号、第5496938号、第5567588号、第5580737号、第5637459号、第5660985号、第5683867号、第5707796号、第5763177号及び第5789157号に記載される。
【0012】
簡単に、SELEX法の原理は、与えられた標的に対する規定された結合親和性及び規定された特異性を示す核酸分子(アプタマ)の、結合、分離及び増幅工程の連続する繰り返しによるランダム配列を含む核酸混合物からの選択を含む。よって、ランダムな核酸の混合物から始まって、SELEX法は、より具体的には次の工程を含む:
- 核酸混合物を標的要素(天然又は合成のポリマー:タンパク質、多糖類、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、細胞表面;小分子:薬剤、代謝産物、補因子、基質、遷移状態類似体;組織、特に全細胞;ウイルスなど)と、結合を促進させる条件下に接触させ、
- 結合しなかった配列を分離し、
- 核酸−標的要素複合体を解離させ(dissociating)、
- 解離した核酸を、リガンド(アプタマ)が富化された混合物を得るように増幅し、そして
- 所望の回数、結合、分離、解離及び増幅の工程を繰り返す。
【0013】
上記の米国特許のうち、
- 米国特許第5270163号は、SELEX法の最初の原理を記載し;
- 米国特許第5580737号は、類似の構造の2つの物質、すなわちカフェインとテオフィリンを識別できるアプタマの選択への、対抗選択工程を含むこの方法の応用について記載し;
- 米国特許第5660985号は、ピリミジンのレベルでの修飾ヌクレオチドを含む(5位又は2'位での修飾)修飾アプタマの選択へのこの方法の応用について記載し;
- 米国特許第5789157号は、組織の表面、特に細胞の表面に存在するタンパク質に結合できるアプタマの選択へのこの方法の応用について記載している。この特許は、SELEX法を、特に、特定の標的、すなわち組織、特に他の引用した特許において用いられたものよりもより複雑な標的であると考えられ、かつ、通常は分子的に同定された標的(タンパク質など)である腫瘍細胞に適用することを勧めている。この米国特許第5789157号は、SELEX法を行う前、間又は後に対抗選択(又はネガティブ選択)を用いることができることを記載している。米国特許第5580737号により具体的に記載されるネガティブ選択は、異なるが、にもかかわらず非常に似ている組織タイプ間を識別することを可能にする。例えば、ネガティブ選択は、腫瘍細胞に対して高い特異性を示すが、対応する正常細胞に対しては示さないリガンドを同定するのに用いることができる。この特許は、ある受容体を発現する細胞タイプのリガンドである核酸が、該受容体を発現しないようにして構築された細胞系統を用いて対抗選択され得る場合も想定している。しかし、このようなストラテジの使用は、タンパク質が細胞において実質的な表現型の変化を誘導する場合には、実行するのが困難であり得る;
- 米国特許第6232071号は、テネイシンCに特異的なアプタマの選択へのこの方法の応用について記載している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、本出願人は、ある条件の下で、標的生細胞に対してSELEXとして知られる方法を行うことにより、細胞受容体、特に腫瘍マーカーに特異的なアプタマを得ることができることを見出した。
【0015】
よって、第一の観点によると、本発明の主題は、核酸混合物を用いて、細胞により活性化された形で(活性の起源又は原因にかかわらず)又は活性化されていない形で(好ましくは活性化された形で)発現されるチロシンキナーゼ活性を有する膜受容体(RPTK、受容体タンパク質−チロシンキナーゼ)に特異的なリガンド又はアプタマを同定する方法であり、該方法は、少なくとも以下の工程を含む:
(a) 核酸混合物を、上記の受容体タンパク質−チロシンキナーゼを発現しないか又はそれを活性化されていない形で発現する細胞(CN細胞)と接触させ、該細胞は、同じ受容体タンパク質−チロシンキナーゼを細胞外ドメインにおける少なくとも1つの変異の存在により活性化された形で発現する細胞と同じ細胞タイプであり(CTe細胞);
(b) 工程(a)においてCN細胞に結合しない核酸の第一部分集合S1を回収し;
(c) 該第一部分集合S1を、CTe細胞と同じ細胞タイプであるが細胞内部分において変異した上記の受容体タンパク質−チロシンキナーゼを発現するCi細胞と接触させ、該Ci細胞は、CTe細胞のものと同じタイプの表現型を示し;
(d) 工程(c)においてCi細胞に結合しない核酸の第二部分集合S2を回収し;
(e) 第二部分集合S2をCTe細胞と接触させ;
(f) 上記のCTe細胞に結合する核酸、すなわち細胞外ドメインにおいて変異した上記の受容体タンパク質−チロシンキナーゼ(活性化された受容体)を発現する細胞について高親和性を有するものを、細胞−核酸複合体の解離の後に回収し;
(g) 細胞外ドメインにおいて変異した前記受容体タンパク質−チロシンキナーゼ(活性化された受容体)を発現する細胞について高親和性を有する上記の核酸を増幅して、上記のCTe細胞について高親和性を有する核酸が富化された核酸混合物を得て;そして
(h) (g)で得られた混合物から、活性化された形で受容体タンパク質−チロシンキナーゼ(RPTK)を発現する細胞に特異的なリガンド又はアプタマを同定する。
【0016】
驚くべきことに、このような方法は、RPTKの活性化されていない形に結合するアプタマを除く工程を含むが、RPTKに特異的なアプタマ、すなわち、上記のRPTKに結合することができるか又は上記のRPTKの活性を阻害することができるか(キナーゼカスケードの活性化)のいずれかのアプタマ、あるいは上記のRPTKに結合のみできるアプタマ(イメージングでの適用において有利である)を選択することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
定義
- 受容体タンパク質−チロシンキナーゼ (RPTK)
受容体タンパク質−チロシンキナーゼ (RPTK)は、タンパク質の非常に大きいファミリーを構成する。現在、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)をコードする90を越える既知の遺伝子がヒトゲノムに存在する(Blume-Jensen P.ら, Nature, 2001, 411, 355〜365)。20のファミリーに分類される58個が膜貫通RPTKをコードし、32個が細胞質PKTをコードする。癌に関係するヒト受容体タンパク質−チロシンキナーゼ (RPTK)のうち、次のファミリーを挙げることができる:EGFR (上皮成長因子受容体)、インスリンR (インスリン受容体)、PDGFR (血小板由来成長因子受容体)、VEGFR (血管内皮成長因子受容体)、FGFR (繊維芽細胞成長因子受容体)、NGFR (神経成長因子受容体)、HGFR (肝細胞成長因子受容体)、EPHR (エフリン受容体)、AXL (Tyro 3 PTK)、TIE (内皮細胞のチロシンキナーゼ受容体)、RET (トランスフェクション時の再編成(Rearranged During Transfection))、ROS (ある上皮細胞で発現されるRPTK)及びLTK (白血球チロシンキナーゼ)。以下の記載において、特定の記載なしに用いられる用語「RPTK」は、いずれの受容体(活性化されたか又は活性化されていない;活性化された形又は活性化されていない形)をも包含する。
【0018】
- 活性化されていない(Nonactivated)RPTK
その正常な形において、該受容体は活性化されていない。活性化は、該正常な受容体を発現する細胞の適切な刺激の後にのみ観察される(刺激後に活性化されたRPTK)。
【0019】
- 細胞外ドメインにおいて変異したRPTK (活性化された受容体)
ある異常な形において、受容体タンパク質−チロシンキナーゼの細胞外ドメインにおける変異のために(1つ又は複数の点突然変異、挿入、欠失及び/又は再編成(rearrangements))、受容体の構成性活性化又は過剰発現が観察される。細胞外部分において変異したこのような活性化された受容体は、キナーゼカスケードの構成性アクチベータである。
【0020】
- 細胞内ドメインにおいて変異したRPTK
このような受容体は、ある細胞内カスケードを活性化できる。本発明の目的のために、これは活性化された受容体とは考えない。一方、活性化された形にあるか又は活性化された形としての受容体の定義に含まれる。
【0021】
- 活性化された形にあるか又は活性化された形としてのRPTK
「活性化された形にあるか又は活性化された形としての受容体」の表現は、その理由にかかわらずキナーゼカスケードを活性化するRPTKを意味することを意図する:
・ 成長因子を用いた刺激による活性化(ある条件下での正常活性化)、
・ 受容体の細胞外部分又は細胞内部分のいずれかにおける1又は複数の変異の存在による、受容体の構成性活性化又は過剰発現。
【0022】
驚くべきことに、本発明による方法の特定の条件は、予め選択された受容体タンパク質−チロシンキナーゼに特異的な、すなわち該受容体に結合するリガンド又はアプタマを選択及び同定すること、さらになかでも、その活性化された形にある該受容体を阻害することができるものを選択することを効果的に可能にする。実際に、上記で規定するCN、CTe及びCi細胞を用いるアプタマの選択は、特に、工程a)〜g)の繰り返しの後に、予め選択された受容体タンパク質−チロシンキナーゼ (RPTK)を発現する細胞に特異的なアプタマを得ることを効果的に可能にする。
【0023】
本発明によると、工程(a)〜(g)のいくつかのサイクルは、前のサイクルからのリガンド又はアプタマが富化された混合物を用いて、解離定数(Kd)により規定されるその親和性が測定できかつ医薬用途に適切な少なくとも1つのアプタマが得られるまで有利に繰り返すことができる。
【0024】
また、本発明によると:
・始めの核酸コンビナトリアルライブラリが、上記のSELEX特許に記載されるものと同じタイプのランダム配列を含むオリゴヌクレオチドからなるのが有利である。これは、少なくとも102核酸、好ましくは109〜1015核酸を含有する。該コンビナトリアルライブラリを構成する核酸は、好ましくは、5'及び3'の端にそれぞれPCR増幅のための固定された配列、好ましくは配列番号1及び配列番号2の配列のオリゴヌクレオチド、又はこれらのオリゴヌクレオチドの少なくとも8つのヌクレオチドを含むランダム配列からなる天然の核酸配列(RNA又はDNA)又は修飾核酸配列(例えば、リボースの2'位においてフッ素原子で修飾されたピリミジン)である。上記のランダム配列はそれぞれ10〜1000ヌクレオチド、好ましくは50ヌクレオチドを含有する。
【0025】
・選択されるアプタマは、それらの一次配列及びそれらの二次構造により規定される。後者は、ヘアピンループの形又はより複雑な構造の形(例えば、シュードノット(pseudo-knot)、トリプルへリックス、グアニンカルテットなど)のいずれかである。これらは、好ましくは20〜100ヌクレオチドの核酸配列からなるのが有利である。
【0026】
有利には、上記の条件は、まさにその未来の使用条件下、すなわちインビボで実際に有効であり得る、病理の分子的決定因子(又はマーカー)に対するリガンド又はアプタマを同定することを可能にする。
【0027】
よって、特定の標的、すなわち上記のCN、Ci及びCTe細胞に対する選択により、予め選択された受容体タンパク質−チロシンキナーゼを特にその活性化された形で発現する細胞を特異的に認識するアプタマが効率的に得られる。
【0028】
上記の方法の有利な実施形態によると、工程(h)によるCTe細胞に特異的なリガンド又はアプタマの同定は、該アプタマの上記のCTe細胞についての生物活性の評価を含む。
【0029】
有利に評価される生物活性は、選択される受容体に依存する。これらは、特に:
(a) 受容体 (RPTK)の自己リン酸化の阻害又は活性化、
(b) キナーゼ活性化カスケードの阻害又は活性化、
(c) 適切な刺激(例えば適切な成長因子)により活性化された正常細胞(CN細胞)の正常なRPTKのリン酸化の阻害、
(d) RPTKの活性化に関連する表現型の復帰
である。
【0030】
本発明の目的のために、次の用語は同等であると考えられる:核酸断片、オリゴヌクレオチド、リガンド又はアプタマ。
【0031】
第二の観点によると、本発明の主題は、活性化された形又は活性化されていない形(好ましくは活性化された形)の受容体タンパク質−チロシンキナーゼ (RPTK)、特に細胞外ドメインにおいて変異したRPTKを発現する細胞に特異的であり、かつ上記で規定したアプタマを同定する方法により同定できるリガンド又はアプタマである。
【0032】
上記のアプタマの有利な実施形態によると、これは、限定しない例として与えられる次の膜受容体:
EGFR (上皮成長因子受容体)、インスリンR (インスリン受容体)、PDGFR (血小板由来成長因子受容体)、VEGFR (血管内皮成長因子受容体)、FGFR (繊維芽細胞成長因子受容体)、NGFR (神経成長因子受容体)、HGFR (肝細胞成長因子受容体)、EPHR (エフリン受容体)、AXL (Tyro 3 PTK)、TIE (内皮細胞のチロシンキナーゼ受容体)、RET (トランスフェクション時の再編成)、ROS (ある上皮細胞で発現されるRPTK)及びLTK (白血球チロシンキナーゼ)
からなる群より特に選択される活性化されたか又は活性化されていない形の受容体タンパク質−チロシンキナーゼ (RPTK)を発現する細胞に特異的である。
【0033】
この実施形態の有利な配置(arrangement)によると、上記のアプタマは、細胞外ドメインに位置するシステイン、好ましくはコドン609、611、618、620又は634での変異により活性化されたRet受容体を特に認識する。
【0034】
この配置の好ましい形態によると、上記のアプタマは、
(a) 核酸の混合物を、活性化された形のいずれのRet受容体を発現しないCN細胞と接触させ;
(b) 工程(a)において、前記CN細胞に結合しない核酸の第一部分集合S1を回収し;
(c) 前記第一部分集合S1を、細胞内ドメインにおいて変異したRet受容体、特に変異受容体RetM918Tを発現するCi細胞と接触させ;
(d) 前記Ci細胞に結合しない核酸の第二の部分集合S2を回収し;
(e) 第二部分集合S2を、細胞外ドメインにおける変異により活性化されたRet受容体を発現するCTe細胞と接触させ、該受容体は、細胞外ドメインに位置するシステインの1つ、好ましくはCys609、Cys611、Cys618、Cys620又はCys634に変異を有する変異Ret受容体、好ましくはRetC634Y受容体からなる群より選択され;
(f) 前記CTe細胞に結合する核酸、すなわち工程(e)で規定される変異Ret受容体(活性化された受容体)を発現する細胞について高い親和性及び結合特異性の両方を示す核酸を回収し;
(g) 工程(f)で得られた前記核酸を増幅して、CTe細胞について高親和性を有する核酸が富化された核酸混合物を得て;
(h) 工程(a)〜(g)を、解離定数(Kd)で規定されるCTe細胞に対する親和性が測定可能でありかつ薬理活性に適切な少なくとも1つのアプタマが得られるまで繰り返し;
(i) (h)で得られた混合物から選択される、活性化された形のRet受容体を発現する細胞に特異的なアプタマを同定する
を含む上記で規定されるような方法により同定できる。
【0035】
Ret受容体に適用される本発明によるアプタマを得るためのサイクルを、図1に示す。
Ret (トランスフェクション時に再編成された)腫瘍遺伝子は、チロシンキナーゼファミリーの受容体タイプ表面タンパク質の異常な形をコードする。この癌原遺伝子は、染色体10q11.2に位置する。Ret癌原遺伝子における変異は、種々の疾患、特にヒルシュスプルング病、ならびにMENタイプ2A (MEN 2A)、MENタイプ2B (MEN 2B)及び家族性甲状腺髄様癌(又はFMTC)を含む多発性内分泌腫瘍タイプII (又はMEN 2)に関連する。MEN 2Aは、甲状腺髄様癌、クロム親和細胞腫及び副甲状腺過形成(原発性副甲状腺機能亢進症)を特徴とする。MEN 2Bは、甲状腺髄様癌の特に進行性の形、クロム親和細胞腫、多発性粘膜神経膠腫及び腸節神経腫症を特徴とする。retの短縮された形は、乳頭甲状腺癌(PTC)に関係する細胞内タンパク質をコードする。
【0036】
腫瘍遺伝子は、癌原遺伝子の変異された形であり、これは、特に適切な(例えば、Ret受容体をコードする癌原遺伝子についてのGDNFのような)成長因子による活性化の後の細胞増殖及び細胞分裂を制御する機能を有する正常タンパク質である。これらの癌原遺伝子のある変異は、通常の成長因子による刺激がなくても永遠に活性なこれらのタンパク質の形をもたらす(調節解除(deregulation))。この構成性(永遠の)活性化は、細胞増殖及び分裂の永遠の刺激作用をもたらし、結局、癌化をもたらす。癌原遺伝子の変異された形は、次いで、腫瘍活性化腫瘍遺伝子とよばれる。腫瘍遺伝子は、例えば、成長因子の過剰発現によるか、又は複製シグナルで細胞を充満させること(inundation)によるか、又は中間経路の制御されていない刺激によるか、又は高レベルの転写因子に連結した無秩序の細胞増殖により、癌化を誘導できる。ある腫瘍遺伝子は、生殖細胞において癌原遺伝子が変異するときには、世代から世代へ伝えられる。このことは、遺伝性及び優性の腫瘍素因を包含する。例えば、多発性内分泌腫瘍タイプII (又はMEN 2)は、活性化されたRet腫瘍遺伝子の生殖細胞伝達の結果である。
【0037】
癌原遺伝子のエキソン10及び11における変異は、MEN 2Aの事例の95%を超えて、及びMTCの事例の80%を超えて観察される。これらの変異のほとんどは、細胞外ドメインに位置する5つの保存されたシステイン(コドン609、611、618、620及び634)に位置する。Ret受容体のこれらの変異は、細胞の表面で活性なホモダイマーを自発的に形成し、これが形態的及び生化学的変化を誘導し、MEN2症候群のRet受容体に依存してクロム親和細胞腫タイプの表現型の原因となる。コドン634での変異は、MEN 2Aにおいて最も頻度が高い。Ret受容体の活性化は、リン酸化カスケードにより追跡できる(Jhiang SM, Oncogene, 2000, 19, 5590〜5597; Califano Dら, PNAS, 1996, 93, 7933〜7937)。
【0038】
MEN 2Bに関して、ret遺伝子のコドン918での癌原遺伝子のエキソン16における点突然変異が、約95%の事例で同定されている。この変異は、Ret受容体の触媒ドメインのスレオニンのメチオニンでの置換を導く。この変異は、モノマーの形での受容体の活性化をもたらす。
【0039】
驚くべきことに、上記で規定したCN、CTe及びCi細胞を用いるアプタマの選択は、工程a)〜g)の反復の後に、Ret受容体のヒト型、特にその活性化された形のRet受容体、例えば変異されたCTe細胞により発現される変異RetC634Y受容体、活性化されてもされていなくてもよい正常な受容体、又は細胞内部分において変異された受容体(定義を参照されたい)に特異的なアプタマを得ることを可能にする。
【0040】
本発明によると:
- CN細胞は、特に、野生型PC12細胞(参照ECACC番号88022)又は野生型NIH 3T3細胞(参照ECACC番号93061524)であり、
- Ci及びCTe細胞は、それぞれ細胞内及び細胞外に(図2)変異を有する腫瘍遺伝子を、培養CN細胞に、後者が腫瘍遺伝子を発現するように導入することにより得られる。本発明の関係において、類似の形質転換された表現型(図3)が、2つの場合に得られる。PC12細胞は、比較的非接着性の球形から、良好な接着能力を示す偽神経突起を有する伸長された形状に変化する(Califano Dら, PNAS, 1996, 93, 7933〜7937)。
【0041】
次いで、実質的に同一の表現型であって、腫瘍遺伝子変異の細胞での位置によってのみ異なる表現型についての選択及び対抗選択を行うことができる(図1)。より具体的には、得られるCi細胞はPC12/MEN 2B (又はNIH/MEN 2B)細胞とよばれ、得られるCTe細胞はPC12/MEN 2A (又はNIH/MEN 2A)細胞とよばれる。
有利には、上記の条件は、まさにその未来の使用、すなわちインビボの条件下で実際に有効な、病理の分子的決定因子(又はマーカー)に対するリガンド又はアプタマを同定することを可能にする。
【0042】
よって、特定の標的、すなわち上記で規定するCN、Ci及びCTe細胞を選択することにより、活性化されたか又はされていない形、好ましくは活性化された形のRet受容体のヒト型を発現する細胞を特異的に認識するアプタマが効率的に得られる。
上記のような活性化されたか又はされていない形のRet受容体のヒト型を発現する細胞に特異的なアプタマの同定は、上記のCTe細胞に対する生物活性を評価することにあるさらなる工程(j)含むのが有利である。
【0043】
有利には評価される生物活性は、次のとおりである:
(a) Ret受容体の自己リン酸化の阻害又は活性化、
(b) Erkキナーゼ活性化カスケードの阻害又は活性化(Erkはカスケード中でRetの下流の細胞内タンパク質である)、
(c) GDNFで活性化されたPC12細胞の正常なRet受容体のリン酸化の阻害、及びそれと関連する表現型の復帰、
(d) 腫瘍遺伝子を過剰発現するRPTK (RetC634Y)の活性化に関連する表現型の復帰。
【0044】
上記のアプタマは、上記の同定方法により得ることができ、式(I):
R1-R-R2 (I)
(式中:
R1は、5' GGGAGACAAGAAUAAACGCUCAA 3' (配列番号1)又は該配列番号1の1〜23ヌクレオチドの断片を表し;
R2は、5' AACGACAGGAGGCUCACAACAGGA 3' (配列番号2)又は該配列番号2の1〜24ヌクレオチドの断片を表し;かつ
Rは、10〜1000ヌクレオチド、好ましくは50ヌクレオチドのランダム配列を表す)
のアプタマからなる群より選択される。
【0045】
この実施形態の有利な配置によると、Rは、好ましくは次の配列から選択される:
【化1】

【0046】
Rが上記で規定するものである好ましいアプタマは、配列番号22 (D4;図11)、配列番号25 (D24;図12)、配列番号31 (D30;図13)、配列番号32 (D12;図14)、配列番号33 (D71;図15)の配列により表される。
【0047】
本発明によると、上記のアプタマにおいて、プリンのリボースは、天然のRNAの場合と同様に、2'位における炭素上にヒドロキシル(OH)官能基を有するが、ピリミジンのリボースは、2'位における炭素上にフッ素原子を有する。この2'位の修飾は、核酸に、ヌクレアーゼについてより大きい耐性を与えることが知られている。
【0048】
式R1-R-R2 (R1は配列番号1を表し、R2は配列番号2を表す)の核酸混合物を増幅することにある工程(g)を行うのに用いられるプライマの配列は、有利には次のとおりである:
- センスプライマ(プライマP10):
TAATACGACTCACTATAGGGAGACAAGAATAAACGCTCAA (配列番号16);
- アンチセンスプライマ(プライマP30):
TCCTGTTGTGAGCCTCCTGTCGTT (配列番号17)。
【0049】
選択されたアプタマの二次及び三次構造の予測は、David H. Mathewsにより作製されたRNAstructureソフトウェア:http://rna.chem.rochester.eduを用いて行われる。このソフトウェアにより用いられるアルゴリズムは、刊行物に記載されたサーチに基づく:D.H. Mathewsら, J. Mol. Biol., 1999, 288, 911〜940。同じ予測は、Michael Zuker ラボラトリーのサイト:http://bioinfo.math.rpi.edu/~zukerm/で入手可能なmfoldアルゴリズムを用いて得ることができる。このソフトウェアにより用いられるアルゴリズムも、上記のD.H. Mathewsらの刊行物に記載されたサーチに基づく。
【0050】
上記のアプタマのうち、いくつかは次の式IIにより規定される共通の構造を有する:
5'R4X6X5X4X3GGAAUAGX2X1R3X'1X'2CGUAUACX'3X'4X'5X'6R5 3' (II)
(この二次構造は、図10に示され、式中:
- プリンのリボースが2'位にOH基を有し、ピリミジンのリボースが2'位にフッ素原子を有し、
- R3は存在するか又は存在せずに、
・ C6〜C30アルキル基又はC6〜C30アリール基からなる群より選択される直鎖状又は分枝鎖状の炭素鎖;
・ ポリマー、例えばPEG又はPEIなど;
・ 官能基、例えばビオチン、ストレプトアビジン、ペルオキシダーゼなど;
・ 興味対象のその他の分子、例えば有効成分、標識タグ、特に蛍光タグ又は放射性同位体のキレート化剤;
・ 天然(DNA又はRNA)又は修飾ヌクレオチド配列(例えば2'-フルオロ、2'-O-メチル、PNA、LNAなど)
を含む頂端部のバルジ(又はループ)を表し;好ましくは、R3は、次のバルジ又はループ(1)〜(4):
ループ(1):5' UGGAAGGA 3' (配列番号29)
ループ(2):5' CUUUUUU 3' (配列番号30)
ループ(3):5' GNPuA 3'
ループ(4):5' UNCG 3'
を表し、ここでプリンのリボースは2'位の炭素上にヒドロキシル官能基を有し、ピリミジンのリボースが2'位の炭素上にフッ素原子を有し;
【0051】
- X1、X'1、X2、X'2、X3、X'3、X4、X'4、X5、X'5、X6及びX'6は、好ましくは
X1-X'1がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当し、
X2-X'2がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当し、
X3-X'3がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当し、
X4-X'4がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当し、
X5-X'5がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当し、
X6-X'6がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当して
Py又はPuを表し、
NはG又はC又はA又はUに相当し、
Puは、リボースが2'位にOH基を有するG又はAに相当し(天然のRNA化学)、
Pyは、リボースが2'位にフッ素原子を有するU又はCに相当し、
- R4及びR5は存在するか又は存在せずに、
・ 1〜数千ヌクレオチド、好ましくは1〜39ヌクレオチドを含む天然(DNA又はRNA)又は修飾ヌクレオチド配列(例えば2'-フルオロ、2'-O-メチル、PNA、LNAなど);該ヌクレオチド配列の一部分又は該配列は、好ましくは、次の配列:
R4
5'-R1-Z1-3'、ここでZ1=G:
5' GGGAGACAAGAAUAAACGCUCAAG 3' (配列番号18)又は
5'-R1-Z1-3'、ここでZ1=GCGGUAU (配列番号26):
5' GGGAGACAAGAAUAAACGCUCAAGCGGUAU (配列番号19)、及び
R5
5'-Z2-R2-3'、ここでZ2=CAAUCCAGGGCAACG (配列番号27):
5' CAAUCCAGGGCAACGAACGACAGGAGGCUCACAACAGGA 3' (配列番号20)又は
5'-Z2-R2-3'、ここでZ2=ACCGCAGCG (配列番号28):
5' ACCGCAGCGAACGACAGGAGGCUCACAACAGGA 3' (配列番号21)、
の1つを含む
【0052】
・ C6〜C30アルキル基又はC6〜C30アリール基からなる群より選択される直鎖状又は分枝鎖状の炭素鎖;
・ ポリマー、例えばPEG又はPEIなど;
・ 官能基、例えばビオチン、ストレプトアビジン、ペルオキシダーゼなど;
・ 興味対象のその他の分子、例えば有効成分、標識タグ、特に蛍光タグ又は放射性同位体のキレート化剤
を表す)。
【0053】
式II及び図10で規定される構造を有するアプタマのうち、以下に記載するような特性の差が観察される。
R3、R4及びR5が存在しない式IIの構造は、RetC634Y受容体への結合に充分であるが、R3、R4及びR5が存在する式IIの構造は、結合特性のみ又は結合特性と阻害特性との両方のいずれかを示す。これらの特性は、R3、R4及びR5の関数として変動する:
- R3が5' UGGAAGGA 3' (配列番号29:ループ(1))を表し、R4が配列番号18を表しかつR5が配列番号20を表すときに、そのような構造を示すアプタマ(ファミリーD4)は、活性化された形のRet受容体に結合する特性と、該受容体の活性の阻害の特性との両方を有する。この物質の二次構造を図11に示す。これは、R4及びR5がRet受容体の活性の阻害をもたらす充分な数のヌクレオチドを含むファミリーD4の物質を含む。この定義に対応する好ましいアプタマは、5'から3'に、連続して以下の配列を含む:式Iに関して、配列番号1+配列番号3+配列番号2 (配列番号22) (D4:図5A及び図11)。
【0054】
- R3が5' CUUUUUU 3' (配列番号30:ループ(2))、5'GNPuA 3' (ループ3)又は5'UNCG 3' (ループ4)を表し、R4が配列番号19から選択される1〜30ヌクレオチド又は配列番号18から選択される1〜24ヌクレオチドを含み、かつR5が配列番号21から選択される1〜33ヌクレオチド又は配列番号20から選択される1〜39ヌクレオチドを含むときに、このような構造を示すアプタマは、活性化された形のRet受容体、特に細胞外ドメインにおいて変異したRet受容体に結合する特性のみを有する。R3が5' CUUUUUU 3' (ループ2)を表し、R4が配列番号19を表しかつR5が配列番号21を表すときのこの物質の二次構造を、図12に示す。好ましい物質は配列番号25で表され、R4及びR5が少なくとも1ヌクレオチドを含むファミリーD24に属する。このアプタマは、5'から3'に連続して:式Iに関して、配列番号1+配列番号7+配列番号2を含む。
【0055】
- R3が5' UGGAAGGA 3' (ループ1)を表しかつR4及びR5が存在しないときに、このような構造を示すアプタマは、活性化された形のRet受容体に結合する特性のみを有する。後者の定義に対応する好ましいアプタマは、ファミリーD4の配列番号3の一部分に相当する(配列番号23)。
【0056】
式I R1-R-R2におけるR1及びR2の定義と式IIにおけるR4及びR5の定義との間の違いは、図10のコンセンサス配列と式IのR (ランダム配列)の定義とが重なり合わないことに起因する。
図5A及び10〜12は、2つの式(I及びII)の間の連結を示す。
【0057】
本発明によるリガンド又はアプタマは、以下の適用において有利に用いることができる:
- 診断試薬として:インビトロ(診断キット;組織学的マーカー;チップ)及びインビボ(造影剤;放射性医薬品)の両方において。実際に、活性化されたか又はされていない形のRet受容体に特異的に結合する能力を有する本発明によるアプタマは、該受容体を活性化されたか又はされていない形で発現する細胞の検出に適切である。特に、Ret受容体がその細胞外ドメインにおいて変異している場合、上記のアプタマは該受容体を発現する異常細胞の検出に特に適切である。活性化された形の受容体が変異していない場合、タンパク質発現レベルの違いが追跡される。
【0058】
- 薬剤、特に抗癌剤として;特にRet受容体への結合能力と、特に変異RetC634Y受容体に関する阻害作用との両方を示すアプタマに関して。
【0059】
実際に、驚くべきことに:
- 選択されたアプタマのいくつかは、結合活性のみを有し、診断試薬として好ましく用いられる;
- 選択されたその他のアプタマも、細胞外ドメインのシステインで特に変異したヒトRet腫瘍遺伝子により媒介される発癌性の変換(transformation)についての阻害活性、及びそれ自体のリガンド(ファミリーD4又は化学修飾により式IIに由来する配列)による刺激の後の正常Retタンパク質の活性についての阻害効果を示す。このような活性を示すアプタマは、診断試薬又は薬剤のいずれかとして用いることができる。これらの特性決定のために、以下に記載される4種の試験を有利に行うことができる:
(a) Retの自己リン酸化の阻害又は活性化、
(b) Erkキナーゼ活性化カスケードの阻害又は活性化、ErkはカスケードにおいてRetの下流の細胞内タンパク質である、
(c) GDNFにより活性化されたRetリン酸化の阻害、
(d) Ret (特にRetC634Y)の活性化に関連する表現型の復帰。
【0060】
本発明の主題は、上記で規定される少なくとも1つのアプタマからなることを特徴とする腫瘍の診断用試薬でもある。
上記の試薬の有利な実施形態によると、これは、上記で規定するような式II:
5'R4X6X5X4X3GGAAUAGX2X1R3X'1X'2CGUAUACX'3X'4X'5X'6R53'
(式中、R3、R4及びR5は存在しない)
のアプタマに対応する。
【0061】
この実施形態の有利な配置によると、上記の試薬は配列:
5'GUAGGGAAUAGCACGUAUACCUAC3'(配列番号24),
(ここで、X1-X'1 = A-U、X2-X'2 = C-G X3-X'3 = G-C、X4-X'4 = A-U、X5-X'5 = U-A及びX6-X'6 = G-C)
のアプタマに相当する。
【0062】
上記の試薬の別の有利な実施形態によると、これは、R3が5' CUUUUUU 3' (ループ(2))を表し、R4が配列番号19の配列を表し、かつR5が配列番号21の配列を表す式IIのアプタマに相当する。このアプタマは、配列番号25に相当し、5'から3'に連続して、式Iに関して:上記で規定するように配列番号1+配列番号7+配列番号2を含む。
【0063】
本発明の主題は、上記で規定される少なくとも1つのアプタマからなることを特徴とする、活性化されたか又はされていない形のRet受容体を診断(diagnosing)又は検出するための試薬でもある。
【0064】
本発明の主題は、RPTK受容体に結合する能力と活性化された形の該受容体についての阻害作用との両方を有する上記で規定されるアプタマを含むことを特徴とする薬剤でもある。
【0065】
本発明の主題は、活性化されたRPTK受容体、特に細胞外ドメインにおいて変異した受容体、特に例えば細胞外ドメインに位置するシステイン(コドン609、611、618、620及び634)の1つで変異したRet受容体に結合する能力と、この活性化された受容体についての阻害作用との両方を有する上記で規定されるアプタマを含むことを特徴とする、腫瘍の治療用の薬剤でもある。
上記の薬剤の有利な実施形態によると、これは、上記で規定するアプタマファミリーD4のアプタマに相当する。
【0066】
本発明の主題は、RPTK受容体に結合する能力と、活性化された形の上記の受容体についての阻害作用との両方を有する上記で規定されるアプタマを含むことを特徴とする医薬組成物でもある。
【0067】
本発明の主題は:
- 細胞外ドメインにおいて変異したRPTK受容体、特に例えば細胞外ドメインに位置するシステイン(コドン609、611、618、620及び634)の1つで変異したRet受容体に結合する能力と、この変異された受容体についての阻害作用との両方を有する上記で規定されるアプタマ、
- 別の抗癌性分子、及び
- 少なくとも1つの医薬的に許容される媒体(vehicle)
を含むことを特徴とする医薬組成物でもある。
【0068】
本発明の主題は、RPTK受容体に結合する能力と、おそらくこのRPTK受容体についての阻害作用との両方を有するアプタマの、RPTK受容体と相互作用しかつそれを阻害できるか又はできない物質をスクリーニングするための使用でもある。
【0069】
本発明の主題は、活性化された形のRPTK受容体、特に細胞外ドメインに位置するシステイン(コドン609、611、618、620及び634)の1つで変異したRet受容体に結合する能力と、おそらくこの変異されたRPTK受容体についての阻害作用との両方を有するアプタマの、RPTK受容体と相互作用しかつそれを阻害できるか又はできない物質をスクリーニングするための使用でもある。
【0070】
本発明の主題は、RPTK受容体又はRPTK (活性化されたか又はされていない形)と複合体を形成する標的と相互作用する物質をスクリーニングする方法でもあり、該方法は:
- 活性化されたか又はされていない形のRPTKを発現する細胞を、試験すべき物質と接触させ、
- 適切な条件下で、上記で規定する任意に標識されたアプタマを、試験すべき物質の前、同時又はその後に加え、そして
- アプタマと試験すべき物質との間の競合的結合を評価する(例えば放射活性、蛍光、発光、表面プラズモン共鳴、BRET、FRETの測定又は分子相互作用を明らかにするいずれのその他の方法により)
ことを含むことを特徴とする。
【0071】
本発明によると、活性化された形のRPTKを示す細胞にアプタマと競合的に結合する物質を同定した後に、該細胞の生物活性に対するこれらの物質の影響を、活性化された形のRPTKを発現する細胞の生物活性を阻害又は活性化する物質を見つけるために評価することができる。
【0072】
上記の配置の他に、本発明は、本発明の主題である方法の実施例及び添付の図面に言及する以下の記載から明らかになるその他の配置をも含む。添付の図面では:
- 図1:PC12 MEN 2A細胞に特異的なアプタマの選択の概略。
・工程a)及びb):対抗選択
2'-F-Py RNAのコンビナトリアルライブラリを、懸濁液中の野生型PC12細胞(PC12 wt)とインキュベートする。結合しない配列を遠心分離により回収し、PC12 MEN 2B細胞とインキュベートする。上清に存在する結合しない配列を回収して、PC12 MEN 2A細胞とインキュベートする。
【0073】
・工程c):選択
結合しない配列を、細胞の数回の洗浄により除き、結合した配列をフェノール抽出により回収する。
・工程d)及びe):増幅
選択された配列を、さらなる選択サイクルの前に、RT-PCR及びインビトロ転写により増幅する。
【0074】
- 図2:種々のRet受容体の構造:正常なRet;MEN 2A Ret (RetC634Y);MEN 2B Ret (RetM918T)。
- 図3:ヒト変異受容体RetC634Y (PC12 MEN 2A)又は変異受容体RetM918T (PC12/EN 2B)をコードする配列を含む発現ベクターで安定にトランスフェクションされたPC12細胞の表現型の図。
【0075】
- 図4:GDNF依存性Ret受容体活性化の概略図。
- 図5 (A):D4及びD24アプタマの二次構造の予測の比較。二次構造予測は、David H. Mathewsにより作製されたRNAstructureソフトウェアhttp://rna.chem.rochester.edu.を用いて行う。アルゴリズムは、D.H. Mathewsら(Journal of Molecular Biology, 1999, 288, 911〜940, 上記)に記載されるサーチに基づく。
同じ予測は、http://bioinfo.math.rpi.edu/~zukerm/サイトで入手可能なmfoldアルゴリズムを用いて得ることもできる。後者のアルゴリズムは、上記のD.H. Mathewsらの名での文献に記載されるサーチに基づく。コンセンサス構造を太字で示す。(B):D4アプタマのPC12 MEN 2A細胞との結合曲線。D4アプタマは32Pで放射性標識され、細胞単層と種々の濃度でインキュベートする。数回の洗浄の後に、結合したアプタマを定量する。得られた各ポイントについて、スクランブル配列(すなわち同じヌクレオチドを異なる順序で含む)を有する変性した(destructured) D4アプタマ(D4Sc)を用いて得られた値を減ずることにより、バックグラウンドノイズを考慮に入れる。Scatchard分析(挿入)を用いて、結合定数及び標的の数を評価する。
【0076】
- 図6:RetC634Y受容体の活性への種々の選択されたアプタマの影響:(A) PC12 MEN 2A細胞を、記載されたアプタマ若しくは始めのRNAプール(コンビナトリアルライブラリ)の150 nMとともに16時間処理するか、又は処理しない。(B) PC12 MEN 2A細胞を増加する用量のD4 (式IIの物質)と1時間(左)、又は200 nMの物質D4と記載されたインキュベーション時間(右)処理する。細胞溶解物を、記載されるように、抗Ret (Tyr-リン酸化された)抗体又は抗(ホスホ) Erk抗体を用いるイムノブロッティングによる分析に付す。等しいロードを確かめるために、ブロッティングメンブレンを、上記の抗−全Ret抗体及び抗−全Erk抗体の存在下でのさらなる分析に付す。未処理のコントロール細胞を「C」で表す。コントロールを1の値とするリン酸化の値を、Erkに特異的な2つのバンドの合計に基づいて、NIHイメージプログラムを用いて計算した。標準偏差を、4つの独立した実験から得る。
【0077】
- 図7:野生型Ret受容体 (Retwt)及び変異したRetM918T受容体の活性に対するD4アプタマの影響。(A) 変異していないRet受容体を安定に発現するようにトランスフェクションされたPC12細胞(PC12/wt)を、10分間、GDNF (50 ng/ml)及び可溶性GFRα1 (1.6 nM)と、又は5分間、NGF (100 ng/ml)と、かつ同時にD4アプタマ又は始めのRNAプール200 nMのいずれかと処理した。(B) PC12 MEN 2B細胞は、6時間、血清欠乏性にされ(serum-deprived)、次いで200 nMのD4アプタマ又は始めのRNAプールと1時間処理した。細胞溶解物を、次の抗体を用いるイムノブロッティングにより分析する:記載されるように、抗-Ret (Tyr-リン酸化された)抗体又は抗-(ホスホ) Erk抗体。標準偏差を、5つの独立した実験から得る。
【0078】
- 図8:D4アプタマは、GDNFにより誘導された、変異していないRet受容体及びGFRα1共受容体(coreceptor)を安定発現するようにトランスフェクションされたPC12細胞(PC12-α1/wt)の分化を阻害する。細胞は、刺激しないか(A)、又はGDNFのみで刺激するか(B)、又はD4アプタマ若しくは変性したD4アプタマ(D4Sc)の存在下にGDNFを用いて刺激する(それぞれC及びD)。GDNFを用いて48時間の処理の後、突起(process)のパーセンテージ伸長(extension)を算出する。データは、計数した細胞の全数に対する突起を有する細胞のパーセンテージとして表す。各実験を少なくとも3回繰り返し(E)、細胞溶解物を、抗-VGF抗体を用いるイムノブロッティングにより分析する(F) (VGFは、GDNF-誘導Ret活性化により誘導される分化のマーカーである)。
【0079】
- 図9:D4アプタマは、形質転換されたNIH/MEN 2A細胞の形態を変更する。記載される細胞系統を、12ウェルを含む培養プレートに、等しい密度で播種する。播種の1日後に、3μMのD4又は変性D4を培地に加え、3μMの各アプタマを24時間ごとに加えながら細胞を72時間培養に維持する。15%血清中でアプタマの半減期とすると、このプロトコルは、培地中に少なくとも200 nMのアプタマが連続して存在することを確実にする。細胞の写真を、位相差顕微鏡を用いて撮影する。
【0080】
- 図10〜15:次のアプタマの二次構造:式II (図10);D4 (図11);D24 (図12);D30 (図13);D12 (図14)及びD71 (図15)。
【0081】
- 図16:D4アプタマとの競合的結合による、PC12 MEN 2A細胞上のRETと相互作用するアプタマのスクリーニング。D4アプタマを32Pで放射性標識し、400 nMの種々のアプタマの存在下に、50 nMでPC12 MEN 2A細胞の単層とインキュベートする。数回の洗浄の後、結合したD4アプタマを定量する。得られた各ポイントについて、スクランブル配列(すなわち同じヌクレオチドを異なる順序で含む)を有する変性D4アプタマ(D4Sc)を用いて得られた値を減じることにより、バックグラウンドノイズを考慮に入れる。
【0082】
- 図17:種々のD4アプタマの存在下でのPC12 MEN 2A細胞へのE38アプタマの競合的結合。E38アプタマは、32Pで放射性標識し、増加する濃度のD4アプタマの存在下で、100 nMで、PC12 MEN 2A細胞の単層とインキュベートする。数回の洗浄の後に、結合したE38アプタマの量を定量する。得られた各ポイントについて、スクランブル配列(すなわち同じヌクレオチドを異なる順序で含む)を有する変性D4アプタマ(D4Sc)を用いて得られた値を減じることにより、バックグラウンドノイズを考慮に入れる。
【実施例】
【0083】
これらの実施例は、本発明の主題を説明するためにのみ与えられ、限定を構成するものではないことが明確に理解されるべきである。
【0084】
実施例1:2'-F-Py RNAのコンビナトリアルライブラリの作製
2'-F-Py RNAを得るために、3つの方法により得られる二本鎖DNA鋳型からのインビトロ転写を行うことが必要である:
1. 選択前に、DNA配列のPCR増幅による方法:
B2S0: 5'TCCTGTTGTGAGCCTCCTGTCGTT-N-TTGAGCGTTTATTCTTGTCTCCC3'
(ここで、Nは50ヌクレオチドのランダム配列を表す)
【0085】
1回目のPCRサイクル:
* ハイブリダイゼーション
【化2】

* 伸長
【化3】

(ここで、太字は重合された配列を表し、MはNに相補的な配列を表す)。
【0086】
2回目のPCRサイクル:
* 変性
【化4】

* ハイブリダイゼーション
【化5】

* 伸長
【化6】

(太字は重合された配列を表し、MはNに相補的な配列を表す)。
【0087】
この2回目のPCRサイクルを、15〜30回繰り返して、インビトロで2'-F-Py RNAに転写される二本鎖DNAを得る。
【0088】
2. 選択の間に、上記で規定する式R1-R-R2の選択された2'-F-Py RNAのRT-PCR増幅による方法:
5'GGGAGACAAGAAUAAACGCUCAA-R-AACGACAGGAGGCUCACAACAGGA3',
(ここで、Rは選択された2'-F-Py RNAの配列を表す)。
【0089】
逆転写(RT):
* ハイブリダイゼーション
【化7】

* 伸長
【化8】

(ここで、太字は重合された配列を表し、SはRに相補的な配列を表す)。
【0090】
1回目のPCRサイクル:
* 変性
【化9】

(2'-F-Py RNAのcDNA)。
* ハイブリダイゼーション
【化10】

* 伸長
【化11】

(ここで、太字は重合された配列を表し、SはRに相補的な配列を表す)。
【0091】
2回目のPCRサイクル:
* 変性
【化12】

* ハイブリダイゼーション
【化13】

* 伸長
【化14】

(ここで、太字は重合された配列を表し、SはRに相補的な配列を表す)。
【0092】
この2回目のPCRサイクルを15〜30回繰り返して、インビトロで2'-F-Py RNAに転写される二本鎖DNAを得る。
【0093】
3. 選択の後の、アプタマがクローニングされたプラスミドからのアプタマのPCR増幅による方法
プラスミドは、配列:
【化15】

(ここで、Rは、アプタマに特異的なDNA配列を表し、SはRに相補的な配列を表す)
を含む。
【0094】
1回目のPCRサイクル:
* 変性
【化16】

* ハイブリダイゼーション
【化17】

* 伸長
【化18】

(ここで、太字は重合された配列を表し、SはRに相補的な配列を表す)。
【0095】
このPCRサイクルを15〜30回繰り返して、インビトロで2'-F-Py RNAに転写される二本鎖DNAを得る。
【0096】
インビトロ転写:
PCR増幅されたDNAの2本鎖のうち1本が、二本鎖2'-F-Py RNAのインビトロ転写のための鋳型として働く。下線を引いた配列は、T7ファージRNAポリメラーゼプロモータの領域に相当する。
【化19】

【0097】
2'-F-Py RNAにおいて、プライマP30に相補的な配列は、3'端にあり:
5'AACGACAGGAGGCUCACAACAGGA3' (R2=配列番号2)
プライマP10と同一の配列の一部分は、5'端にある:
5'GGGAGACAAGAAUAAACGCUCAA3' (R1= 配列番号1)。
【0098】
実施例2:材料及び方法
- 細胞培養及びイムノブロッティング分析
PC12細胞及び派生細胞系統の増殖条件は、D'Alessio A.ら(Endocrinology 2003; 144, 10, 4298〜4305)に記載された。
NIH/MEN2A及びNIH/MEN2B細胞は、RetC634Y及びRetM918Tについての発現ベクターで安定にトランスフェクションされたNIH 3T3細胞から得る。Ret活性に対する本発明によるアプタマの影響を評価するために、細胞(160000細胞/プレート3.5 cm)を2時間血清欠乏性にし、短い変性−復元工程の後に、図に記載の量(200 nM)のアプタマ又は最初のRNAのプールで処理した。
【0099】
記載される場合、100 ng/mlの2.5 S NGF (神経成長因子、Upstate Biotechnology Inc., Lake Placid)、50 ng/mlのGDNF (Promega)又は1.6 nMのGFRα1-FCキメラ (R&D Systems Ltd., UK)を培養培地に加える。
細胞抽出物及びイムノブロッティング分析は、Cerchia L.ら(Biochem. J. 2003, 372, 897〜903)に記載のようにして行う。
【0100】
用いた一次抗体は、次のとおりである:抗-Ret抗体(C-19)、抗-VGF抗体(R-15)、抗-ERKI抗体(C-16) (Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz CA)、抗-Ret (Tyr リン酸化された)抗体(Cell Signaling)、抗-ホスホ44/42 MAPキナーゼモノクローナル抗体(E10) (Cell Signaling)。図に示すイムノブロットについて、統計学的分析を、少なくとも4つの独立した実験で行った。
【0101】
- 細胞突起伸長アッセイ
PC12-α1/wt細胞を、12ウェルを含む培養プレートに等しい密度で播種する。D4アプタマの細胞分化に対する影響を評価するために、細胞を、400 nMのD4アプタマ又は変性D4アプタマと6時間予備処理し、次いで50 ng/mlのGDNF及び最終濃度3μMの適切なアプタマとインキュベートする。GDNFでの24時間の刺激の後に、3μMのD4アプタマ又は変性D4アプタマを細胞に再び加え、刺激を48時間まで続行する。GDNFでの刺激の24時間及び48時間後に、位相差顕微鏡を用いて少なくとも15の視野をランダムに撮影し、フレームあたり50の細胞を計数する。突起の伸長の有無を記録する。細胞体の直径の2倍より大きい直径を有する伸長突起が観察される場合に、突起の伸長が存在するとみなす。
【0102】
- ex vivoでのSELEX
SELEXサイクルを、本質的に以前に記載されたようにして行う(Tuerk Cら, Science 1990, 249, 4968, 505〜510; Ellington ADら, Nature, 1990, 346, 6287, 818〜22)。収率を増大させるために、転写を、1 mMの2'-F-ピリミジン及びT7 RNAポリメラーゼの変異形(T7Y639F)の存在下で行う(Padilla, Rら, Nucleic Acids Res, 1999, 27, 6, 1561〜1563)。2'-F-Py RNAを用いるのは、血清ヌクレアーゼによる分解に対するそれらの耐性のためである。
【0103】
始めのサンプルの複雑度は、約1014の異なる配列である。50ヌクレオチドのランダム配列を含有する2'-F-Py RNAライブラリ(1〜5 nmol)を、3 mlのRPMI 1640中に85℃で5分間加熱し、氷上で2分間迅速に冷却し、次いで37℃に再び加熱してから細胞とインキュベートする。
【0104】
2つの対抗選択工程を各サイクルで行う。
細胞表面を非特異的に認識するアプタマの選択を避けるために、最初のRNAのコンビナトリアルライブラリを、まず、5×106のPC12細胞(参照ECACC No. 88022)と37℃で30分間インキュベートし、結合しなかった配列を遠心分離により回収する。後者の配列を、次いで、細胞内ドメインにおいて変異したRet受容体(RetM918T)を発現する5×106の接着性PC12 MEN B2細胞とインキュベートし、結合しなかった配列を選択段階のために回収する。この工程は、細胞外ドメインにおいて変異したRet受容体(Ret9C634Y)を発現するPC12 MEN 2A細胞を特異的に認識する配列を選択することを可能にする。
【0105】
回収された配列を、非特異的競合RNA (酵母全RNA、Sigma)の存在下に5×106のPC12 MEN 2A細胞と37℃で30分間インキュベートし、数回の洗浄の後に、RNAの全抽出により(Trizol、Sigma)回収する。
【0106】
次のプライマ対:
【化20】

を用いるRT-PCRによる増幅と、Padilla, Rら(N.A.R., 1999, 上記)に記載される条件により、修飾バッファー(40 mM Tris、pH 7.5;6 mM MgCl2、4 mM NaCl;2 mM スペルミジン;10 mM DTT)を用いる変異T7ポリメラーゼを用いるインビトロ転写との後に、プロセスを繰り返す。細胞とのインキュベーションは、できるだけ生理条件に近くなるように全てRPMI 1640培養培地中に37℃で行う。
【0107】
選択プロセスの間に、次の表2に示すように、洗浄の回数及び非特異的競合RNAの量の増加とインキュベーション時間及びアプタマに曝露する細胞数の減少とにより、選択圧を増大させる。
【0108】
【表2】

【0109】
プールの進化を追跡するために、集団中の4塩基を含む制限部位の発生をRFLPにより分析し、SELEXプロセスの間に選択された、特定の制限部位に相当する配列の出現を明らかにする(Bartel DPら, Science, 1993, 261, 5127, 1411〜8)。
15回の選択サイクルの後に、配列をTOPO-TAクローニングキット(Invitrogen)を用いてクローニングし、配列決定により分析する。
【0110】
- 結合アッセイ
種々のアプタマ (又はコントロールとしての始めのプール)の、PC12 MEN 2A細胞への結合を、5'-32P-標識したRNAを用いて24ウェルプレートで行う(実験は三重で行う)。ウェルあたり105細胞を、200μlのRPMI中の種々の濃度のアプタマと、非特異的競合剤である100μg/mlのポリイノシンの存在下に、37℃で10分間インキュベートする。数回の洗浄の後に、結合した配列を350μlの0.6% SDS中に回収し、回収された放射活性の量を、各ウェルでのタンパク質含量の測定により細胞数と関連づける。
【0111】
各アプタマについての解離定数(Kd)及び標的の数(Tmax)を:
* 次の等式によるScatchard分析:
[結合したアプタマ]/[アプタマ]= -(1/Kd)×[結合したアプタマ]+[Tmax]/Kd
又は
* 次の等式によるLineweaver-Burk法による分析:
1/[結合したアプタマ]=Kd/([Tmax]×[アプタマ])+1/[Tmax]
により決定する。
個々の配列の種々の細胞系統への結合は、50 nMの単一の濃度で、同じ条件下で行う。
【0112】
実施例3:結果
- ex vivoでのSELEX:アプタマの選択
Ret受容体を認識するアプタマを同定するために、SELEX変更プロトコルを実施例1に記載のようにして行った。
- 方法は、ヒト変異受容体 RetC634Yを発現する無傷の細胞、すなわちPC12細胞由来の細胞系統(PC12 MEN 2A)について行う。
- 2'-F-ピリミジンRNAを用いて、生物学的流体中に存在するアプタマのヌクレアーゼ耐性を増大させる。
- 各サイクルで2回:(1) ヒトRet受容体を発現しないPC12細胞について、及び(2) Ret受容体の細胞内チロシンキナーゼドメインにおいて変異した(RetM918T)対立遺伝子を発現するPC12 MEN 2B細胞についての対抗選択工程を行って、Ret受容体に特異的なアプタマの選択を最適化する。
【0113】
用いた条件は、PC12 MEN 2A細胞に特異的な表面エピトープを標的することができるアプタマ、及びRet受容体の細胞外ドメインを認識することができるアプタマを選択することを可能にした。
この技術は、組換えRet受容体の使用を避けるという利点を有する。
【0114】
15回目のサイクルで得られた配列のプールから69のクローンを得て配列決定し、約100 nMのKdでの飽和可能な様式でPC12 MEN 2A細胞に結合させた。結果を、次の表3に示す。
【0115】
【表3】

【0116】
2つの配列(D14及びD12)は、選択において優位を占め、クローンの50%より多くを構成する。4つのその他の配列は、より少なく(クローンの25%)、その他は1回しか存在しない(7配列)。
【0117】
標的の複雑度のために(全生細胞)、あるモチーフ及び共通構造を共有する(図5A、式II並びに図11及び12を参照されたい)クローンD24及びD4に関する以外の種々のアプタマ配列の間に、類似性は観察されなかった。
【0118】
各アプタマの、PC12 MEN 2A細胞への結合能力を試験した。
1回以上見出された全ての配列は、より少ない量で存在する配列(D4及びD24を含む)に加えて試験された。その豊富さにもかかわらず、D14は、PC12 MEN 2A細胞にバックグラウンドノイズを超えて顕著には結合しない。
その他の配列は、PC12 MEN 2A細胞に、30〜70 nMのKdで結合する。
ほとんどのアプタマは、親のPC12細胞、ラット膀胱癌腫細胞(NBTII)及びヒトHeLa細胞に結合しない。
【0119】
- Ret受容体に対するD4アプタマの作用
正常細胞(Cn)の正常Ret受容体の活性化は、いくつかの栄養因子についてのGRF-α共通受容体との相互作用を介して起こり、該栄養因子の最も広まったものはGDNF (グリア由来成長因子)である(図4)。Retの正常形を発現する細胞において、カスケードはGDNFの存在下でのみ活性化される。D4の存在下でのこれらの細胞におけるGDNFによるRetのリン酸化の阻害は、D4がRetシグナリング経路と相互作用することの証明であり、このことは、Erkに対するその活性がRetにより媒介されない別の栄養因子であるNGFによる活性化に対するD4の活性が存在しないことを確かにする。D4が、変異が細胞内であるMEN 2B細胞におけるRet及びErkの活性化のいずれかに対するいずれの活性も有さないという事実は、D4とRetとの間の相互作用がRetの細胞外部分を巻き込み、二量体化部位であり得ることを示唆する。しかし、このことは証明されていない。
【0120】
注目すべきことに、D4の活性は、Retが構成的に活性化された細胞での変換された表現型の復帰を導く。培養にあるこれらの細胞は、軸索伸長を有する「ニューロン様」形態型をとる。D4は、軸索伸長の数の著しい減少を誘導し、神経分泌系系統(PC 12)及び繊維芽細胞系統(NIH 3T3)の両方において、非活性化細胞の表現型に細胞の表現型を戻すが、同じ化学組成を有するが活性構造におけるその配列の順序ではない変性されたD4であるD4Scでは起こらない。
【0121】
PC12 MEN 2A細胞により発現される変異RetC634Y受容体は、細胞表面においてホモダイマーを形成し、これがチロシンキナーゼ活性の構成性の活性化を導き(Santoro Mら, Science, 1995, 20, 267, 5196, 381〜383)、Erkキナーゼ活性化を含むいくつかの下流のシグナリングカスケードを誘導する(Colucci-D'Amatoら, J. Biol. Chem., 2000, 275, 19306〜19314; Jhiang SM, Oncogene, 2000, 19, 5590〜5597)。インビトロ細胞系としてRetC634Y腫瘍遺伝子を発現するPC12細胞を用いて、RetC634Y受容体の自己リン酸化と受容体に依存する下流のシグナリングとを阻害する各アプタマの能力(図6)を評価する。
【0122】
PC12 MEN 2A細胞を、次のアプタマの1つと、最終濃度150 nMで一晩インキュベートする:D4 (配列番号3)、D12 (配列番号4)、D30 (配列番号8)及びD71 (配列番号14)。細胞溶解物を、抗(Tyr-リン酸化された) Ret抗体(図6B)又は抗-ホスホ-Erk抗体(図6B)を用いるイムノブロッティングにより分析する。すでに証明されているように(Colucciら, 上記)、リン酸化されたRet受容体及びリン酸化されたErkタンパク質のレベルは、活性RetC634Y対立遺伝子の存在のために、未処理のPC12 MEN 2A細胞において構成的に高い。試験したアプタマのいくつかは、始めのコンビナトリアルライブラリ及びその他のアプタマに比べて(図6A)、RetC634Y受容体の自己リン酸化及びこれに起因するErkタンパク質のリン酸化を阻害する。これらの実験条件を用いて、D4アプタマは最も効果的な阻害剤であることが見出され、よって以下の研究に用いた。
【0123】
これらの条件下では、用量応答実験(図6B、左)は、D4アプタマの200 nMの濃度がRetC634Y受容体の自己リン酸化を70%まで阻害するのに充分であり、Erkタンパク質のリン酸化を実質的に減少させるのに充分であることを明らかにする。細胞を200 nMのD4アプタマと1時間処理することは、RetC634Y受容体の自己リン酸化を著しく阻害するのに充分であり、Erkタンパク質のリン酸化を完全に廃止させるのに充分である(図6B、右)。
【0124】
全ての実験において、Erkタンパク質のリン酸化の阻害は、RetC634Y受容体のリン酸化の阻害よりもより迅速かつより定量的であり、このことが、Ret受容体のチロシンキナーゼ活性の変更のための2つのプロセスの感受性が異なることによることは疑いがない。
【0125】
D4アプタマの予測される二次構造は、D24アプタマのものと同様に図5Aに示す。2つの構造の比較は、細胞結合がテイル又は先端ループ(apical loop)の配列に依存しないことを示唆する。実際に、先端ループを4ヌクレオチド(UUGC)を含む超安定(extra-stable)ループで置換するか、又は上記で規定するR4及びR5で表されるヌクレオチドの欠失により置換すると、PC12 MEN 2A細胞への結合に著しい差は観察されない。しかし、RetC634Y受容体により誘導されるシグナリング経路の阻害において最も活性な物質は、完全D4アプタマである。同じ組成であるが変性した配列を有する2'-F-Py RNA (D4Sc)は、結合及び阻害の両方の点で効果がない。
【0126】
D4アプタマは、PC12 MEN 2A細胞を、35 nMの推定Kdで認識する(図5B)。さらに、これは、Ret受容体を発現しない親のPC12細胞又はラットNBTII細胞又はヒトHeLa細胞のいずれも認識しない。
【0127】
D4アプタマが変異RetC634Y受容体を発現する細胞で選択される限りにおいて、D4アプタマが野生型Ret受容体も阻害できるかを調べるための試みを行った。この狙いを持って、野生型Ret受容体を発現するPC12細胞に由来する細胞系統(PC12/wt)を用いた。細胞を、GDNF及び可溶性GFRα1を含有する混合物を用いて刺激し、D4アプタマ又はネガティブコントロールとして始めのコンビナトリアルライブラリを用いて処理した。図7Aに示すように、D4アプタマのみが、GDNFにより誘導されるRet受容体のリン酸化(図7A)及びErkタンパク質のリン酸化(図7B)を実質的に阻害する(そしてコントロールのコンビナトリアルRNAライブラリは阻害しない)。類似の阻害効果は、ヒトRet受容体及びGFRα1の両方を安定に発現するPC12細胞に由来する細胞系統であるPC12-α1/wt細胞を用いて観察された。D4アプタマは、チロシンキナーゼ受容体TrkAのNGFにより誘導されるシグナリング経路に対して活性がないことに注目することが重要である。NGFを用いる細胞の刺激の後に、D4アプタマでの処理は、ホスホ-Erkの量を変化させず、このことは、Erkタンパク質のリン酸化のD4-アプタマ-誘導阻害が、Ret受容体のGDNF-刺激細胞内シグナリング経路に特異的であることを示唆する(図7)。
【0128】
D4アプタマはPC12 MEN 2B細胞に結合するが、これらの細胞を200 nMのD4で1時間処理しても(図7B)、モノマーRetM918T受容体により誘導されるシグナリング経路を妨げない。このことは、D4アプタマによるErkタンパク質のリン酸化の阻害が、Ret受容体の二量体化により活性化された形に特異的であることを確かにする。RetM918T受容体のキナーゼ活性及び生物活性は、構成的ではあるが、GFRα1の存在下でGDNFでの刺激に応答する(Carlomagno Fら, Endocrinology, 1998, 139, 8, 3613〜3619)。しかしながら、D4アプタマによる野生型Ret受容体 (Ret wt)の活性の阻害により、PC12 MEN 2B細胞のD4アプタマとの処理は、GDNF依存性のRet受容体及びErkタンパク質のリン酸化の過剰刺激を廃止する。これらの実験は、D4アプタマが、Ret受容体及びErkタンパク質の両方の活性を、その他の細胞標的に対する作用、例えばチロシンホスファターゼによるのではなく、Ret受容体への直接の作用により阻害することを示す。
【0129】
- D4アプタマの、Ret受容体依存性細胞分化及び形質転換に対する生物学的影響
野生型(wt)又は変異の受容体の二量体化がシグナリング経路に必要である全ての場合に、阻害が起こるという知見は、二量体化がD4アプタマの作用の標的であることを示唆する。
この目的を持って、軸索伸長(又は神経堤)を、GDNFを用いる刺激後のPC12-α1/wt細胞における分化の反映として測定した(実施例1を参照されたい)。
【0130】
細胞を、50 ng/mlのGDNFを用いて処理し、軸索伸長を有する細胞のパーセンテージを、実施例1に記載するようにして、処理後24及び48時間に測定する。図8に示すように、細胞は、刺激していないコントロール細胞に比べて(図8A)、GDNFへの2日間の曝露に応答して軸索伸長突起を示す(図8B)。D4アプタマを用いての細胞の処理(図8C)は、おそらくRet受容体とGDNF/GFRα1との間の機能的複合体の形成を妨げることにより、軸索の数及び長さを著しく阻害するが、コントロールとして用いた変性D4アプタマ(D4Sc)を用いては阻害がなかった(図8D)。分化を生化学的に評価するために、細胞抽出物中のVGFレベルを、処理の48時間後に測定した。Vgfは、PC12細胞においてNGF及びGDNFにより迅速に誘導される初期遺伝子である(Salton SR, Mt Sinai J Med., 2003, 70, 2, 93〜100)。GDNFで処理した細胞において、VGFの発現が刺激され、上記の表現型の影響により、D4アプタマでの処理はVGFレベルを基底のレベル近くに保持するが、変性D4アプタマでの処理では保持されないことが観察された(図8F)。
【0131】
RetC634Y受容体又はRetM918T受容体の発現の後に、NIH 3T3細胞を形質転換すると、これらはその形態に顕著な変化を示す(Santoroら, Science, 1995, 上記)。変異Ret受容体を安定に発現するNIH/ MEN 2A細胞及びNIH/MEN 2B細胞を、D4アプタマを用いて72時間処理し、このアプタマにより誘導された形態学的変化を分析する。図9に示すように、NIH/MEN 2A細胞及びNIH/MEN 2B細胞は、紡錘形で長い突出部を有し、高度に屈折した(refringent)見かけを有する(それぞれ図9B及び9E)。D4アプタマで処理したNIH/MEN 2A細胞は、親のNIH 3T3細胞のものに類似の多角形で平坦な形態に戻るが(図9C)、NIH/MEN 2B細胞(図9F)又はNIH-Ras細胞においては、形態学的変化は観察されない。このことは、RetC634Y受容体により誘導されるシグナリング経路はD4アプタマにより阻害されるが、RetM918T受容体により誘導されるものは阻害されないことを示す以前の結果と一致する。
【0132】
さらに、変性D4アプタマを用いる処理は、種々の細胞系統に影響を及ぼさない(図9D)。結果として、D4アプタマとの72時間のNIH/MEN 2A細胞の処理は、RetC634Y受容体及びErkタンパク質の両方のリン酸化により、Erkタンパク質の活性化の影響の程度を阻害する。
【0133】
実施例4:PC12 MEN 2A細胞上のRet受容体又はRetタンパク質と複合体を形成する標的と相互作用する物質をスクリーニングするためのD4アプタマの使用
PC12 MEN 2A細胞上のRet受容体又は該タンパク質と複合体を形成する標的と相互作用する分子をスクリーニングするためのD4アプタマの使用を確認するために、2つのアプローチを用いた。
1. 32Pで放射性標識したD4アプタマを50 nMで、細胞又は単離された組換えRetタンパク質のいずれかについて選択された種々のアプタマ400 nMの存在下に、PC12 MEN 2A細胞の単層とインキュベートした。数回の洗浄の後に、結合したD4アプタマの量を定量する。使用した分子の関数としてのD4アプタマの結合の量を比較することにより、その標的がRet受容体であるD12アプタマのみ、特にE38アプタマが、D4アプタマの細胞への結合を減少させることができたことに注目できる。よって、これらの2つのアプタマは、おそらくD4アプタマと同じ部位で該タンパク質に直接存在するか又はRetタンパク質との複合体に存在する別の標的に存在するいずれかのRetタンパク質に関連する標的に結合すると結論付けることができる。
【0134】
2. 32Pで放射性標識したE38アプタマを100 nMで、増加する濃度のD4アプタマの存在下にPC12 MEN 2A細胞の単層とインキュベートした。数回の洗浄の後に、細胞に結合したE38アプタマの量を定量した。D4アプタマの濃度の関数として、E38アプタマの結合の阻害が増加することに注目できる。よって、E38アプタマは、おそらくD4アプタマと同じ部位で該タンパク質に直接存在するか又はRetとの複合体に存在する別の標的に存在するいずれかのRetタンパク質に関連する標的に結合すると結論付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】PC12 MEN 2A細胞に特異的なアプタマの選択の概略。
【図2】種々のRet受容体の構造:正常なRet;MEN 2A Ret (RetC634Y);MEN 2B Ret (RetM918T)。
【図3】ヒト変異受容体RetC634Y (PC12 MEN 2A)又は変異受容体RetM918T (PC12/EN 2B)をコードする配列を含む発現ベクターで安定にトランスフェクションされたPC12細胞の表現型の図。
【図4】GDNF依存性Ret受容体活性化の概略図。
【図5A】D4及びD24アプタマの二次構造の予測の比較。
【図5B】D4アプタマのPC12 MEN 2A細胞との結合曲線。
【図6】RetC634Y受容体の活性への種々の選択されたアプタマの影響。
【図7】野生型Ret受容体 (Retwt)及び変異したRetM918T受容体の活性に対するD4アプタマの影響。
【図8】D4アプタマは、GDNFにより誘導された、変異していないRet受容体及びGFRα1共通受容体(coreceptor)を安定発現するようにトランスフェクションされたPC12細胞(PC12-α1/wt)の分化を阻害する。
【図9】D4アプタマは、形質転換されたNIH/MEN 2A細胞の形態を変更する。
【図10】式IIのアプタマの二次構造。
【図11】D4のアプタマの二次構造。
【図12】D24のアプタマの二次構造。
【図13】D30のアプタマの二次構造。
【図14】D12のアプタマの二次構造。
【図15】D71のアプタマの二次構造。
【図16】D4アプタマとの競合的結合による、PC12 MEN 2A細胞上のRETと相互作用するアプタマのスクリーニング。
【図17】種々のD4アプタマの存在下でのPC12 MEN 2A細胞へのE38アプタマの競合的結合。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸混合物を用いて、細胞により活性化された形又は活性化されていない形で発現される膜受容体タンパク質−チロシンキナーゼ(RPTK)に特異的なリガンド又はアプタマを同定する方法であって、少なくとも以下の工程:
(a) 核酸混合物を、前記受容体タンパク質−チロシンキナーゼを発現しないか又はそれを活性化されていない形で発現する細胞(CN細胞)と接触させ、前記細胞は、同じ受容体タンパク質−チロシンキナーゼを細胞外ドメインにおける変異の存在により活性化された形で発現する細胞(CTe細胞)と同じ細胞タイプであり;
(b) 工程(a)においてCN細胞に結合しない核酸の第一部分集合S1を回収し;
(c) 前記第一部分集合S1を、CTe細胞と同じ細胞タイプであるが細胞内部分において変異した前記受容体タンパク質−チロシンキナーゼを発現するCi細胞と接触させ、前記Ci細胞は、CTe細胞のものと同じタイプの表現型を示し;
(d) 工程(c)においてCi細胞に結合しない核酸の第二部分集合S2を回収し;
(e) 前記第二部分集合S2をCTe細胞と接触させ;
(f) 前記CTe細胞に結合する核酸、すなわち細胞外ドメインにおいて変異した前記受容体タンパク質−チロシンキナーゼを発現する細胞について高親和性を示すものを、細胞−核酸複合体の解離の後に回収し;
(g) 細胞外ドメインにおいて変異した前記受容体タンパク質−チロシンキナーゼを発現する細胞について高親和性を有する前記核酸を増幅して、前記CTe細胞について高親和性を有する核酸が富化された核酸混合物を得て;そして
(h) (g)で得られた混合物から、活性化された形で受容体タンパク質−チロシンキナーゼ(RPTK)を発現する細胞に特異的なリガンド又はアプタマを同定する
を含む方法。
【請求項2】
工程(a)〜(g)が、解離定数(Kd)により規定される親和性が測定できかつ医薬用途に適切な少なくとも1つのアプタマが得られるまで、前のサイクルからのリガンド又はアプタマが富化された混合物を用いて繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
始めの核酸コンビナトリアルライブラリが、少なくとも102の核酸、好ましくは109〜1015の核酸を含み、かつ有利には、5'及び3'端にそれぞれPCR増幅のための固定配列、好ましくは配列番号1及び配列番号2の配列又はこれらの配列の少なくとも8ヌクレオチドの断片を含むランダム配列を含む核酸からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ランダム配列がそれぞれ、10〜1000ヌクレオチド、好ましくは50ヌクレオチドを含み、かつ有利にはDNA、RNA又は修飾核酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程(h)によるCTe細胞に特異的なリガンド又はアプタマの同定が、該アプタマの前記CTe細胞についての生物活性の評価を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
有利には評価される前記生物活性が:
(a) RPTKの自己リン酸化の阻害又は活性化;
(b) キナーゼ活性化カスケードの阻害又は活性化;
(c) 適切な刺激により活性化されたCN細胞の正常なRPTKのリン酸化の阻害;及び
(d) RPTKの活性化に関連する表現型の復帰
であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
活性化された形又は活性化されていない形の受容体タンパク質−チロシンキナーゼ(RPTK)を発現する細胞に特異的であり、かつ請求項1〜6のいずれか1つに記載のアプタマを同定する方法により同定できるアプタマ。
【請求項8】
以下の膜受容体:
EGFR (上皮成長因子受容体)、インスリンR (インスリン受容体)、PDGFR (血小板由来成長因子受容体)、VEGFR (血管内皮成長因子受容体)、FGFR (繊維芽成長因子受容体)、NGFR (神経成長因子受容体)、HGFR (肝細胞成長因子受容体)、EPHR (エフリン受容体)、AXL (Tyro 3 PTK)、TIE (内皮細胞のチロシンキナーゼ受容体)、RET (トランスフェクション時の再編成)、ROS (ある上皮細胞で発現されるRPTK)及びLTK (白血球チロシンキナーゼ)
からなる群より特に選択される活性化された形又は活性化されていない形の受容体タンパク質−チロシンキナーゼ (RPTK)を発現する細胞に特異的であることを特徴とする請求項7に記載のアプタマ。
【請求項9】
活性化された形のRet受容体、特に、細胞外ドメインに位置するシステイン、好ましくは609、611、618、620又は634のコドンでの変異により活性化されたRet受容体を認識することを特徴とする請求項7又は8に記載のアプタマ。
【請求項10】
(a) 核酸の混合物を、活性化された形のいずれのRet受容体も発現しないCN細胞と接触させ;
(b) 工程(a)において、前記CN細胞に結合しない核酸の第一部分集合S1を回収し;
(c) 前記第一部分集合S1を、細胞内ドメインにおいて変異したRet受容体、特に変異受容体RetM918Tを発現するCi細胞と接触させ;
(d) 前記Ci細胞に結合しない核酸の第二部分集合S2を回収し;
(e) 第二部分集合S2を、細胞外ドメインにおける変異により活性化されたRet受容体を発現するCTe細胞と接触させ、該受容体は、細胞外ドメインに位置するシステインの1つ、好ましくはCys609、Cys611、Cys618、Cys620又はCys634に変異を有する変異Ret受容体、好ましくはRetC634Y受容体からなる群より選択され;
(f) 前記CTe細胞に結合する核酸、すなわち工程(e)で規定される変異Ret受容体を発現する細胞について高い親和性及び結合特性の両方を示す核酸を回収し;
(g) 工程(f)で得られた前記核酸を増幅して、CTe細胞について高親和性を有する核酸が富化された核酸混合物を得て;
(h) 工程(a)〜(g)を、解離定数(Kd)で規定されるCTe細胞に対するその親和性が測定可能でありかつ薬理活性に適切な少なくとも1つのアプタマが得られるまで繰り返し;
(i) (h)で得られた混合物から選択される、活性化された形のRet受容体を発現する細胞に特異的なアプタマを同定する
ことを含む方法により同定できることを特徴とする請求項9に記載のアプタマ。
【請求項11】
- 前記CN細胞が、特に、野生型PC12細胞(参照ECACC番号88022)又は野生型NIH 3T3細胞(参照ECACC番号93061524)であり、
- 前記Ci及びCTe細胞が、それぞれ細胞内及び細胞外に変異を有する腫瘍遺伝子を、培養にあるCN細胞に、後者が腫瘍遺伝子を発現するように導入することにより得られる
ことを特徴とする請求項10に記載のアプタマ。
【請求項12】
請求項1〜11で規定される同定の方法により得ることができ、かつ式(I):
R1-R-R2 (I)
(式中:
R1は、5' GGGAGACAAGAAUAAACGCUCAA 3' (配列番号1)又は前記配列番号1の1〜23ヌクレオチドの断片を表し;
R2は、5' AACGACAGGAGGCUCACAACAGGA 3' (配列番号2)又は前記配列番号2の1〜24ヌクレオチドの断片を表し;そして
Rは、10〜1000ヌクレオチド、好ましくは50ヌクレオチドのランダム配列を表す)
のアプタマからなる群より選択されることを特徴とするアプタマ。
【請求項13】
Rが、以下の配列:
【化1】

から好ましくは選択されることを特徴とする請求項12に記載のアプタマ。
【請求項14】
プリンのリボースが2'位の炭素上にヒドロキシル官能基を有し、ピリミジンのリボースが2'位の炭素上にフッ素原子を有することを特徴とする請求項12又は13に記載のアプタマ。
【請求項15】
次の配列:配列番号31〜33の1つを有することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1つに記載のアプタマ。
【請求項16】
二次構造が図10に示される、次の式(II):
5'R4X6X5X4X3GGAAUAGX2X1R3X'1X'2CGUAUACX'3X'4X'5X'6R53' (II)
(式中:
- プリンのリボースが2'位にOH基を有し、ピリミジンのリボースが2'位にフッ素原子を有し、
- R3は存在するか又は存在せずに、
・ C6〜C30アルキル基又はC6〜C30アリール基からなる群より選択される直鎖状又は分枝鎖状の炭素鎖;
・ ポリマー、例えばPEG又はPEIなど;
・ 官能基、例えばビオチン、ストレプトアビジン、ペルオキシダーゼ;
・ 興味対象のその他の分子、例えば有効成分、標識タグ、特に蛍光タグ又は放射性同位体のキレート化剤;
・ 天然又は修飾ヌクレオチド配列
を含む頂端部のバルジ(又はループ)を表し;
好ましくは、R3は、次のバルジ又はループ(1)〜(4):
ループ(1):5' UGGAAGGA 3' (配列番号29)
ループ(2):5' CUUUUUU 3' (配列番号30)
ループ(3):5' GNPuA 3'
ループ(4):5' UNCG 3'
を表し、ここでプリンのリボースは2'位の炭素上にヒドロキシル官能基を有し、ピリミジンのリボースは2'位の炭素上にフッ素原子を有し;
- X1、X'1、X2、X'2、X3、X'3、X4、X'4、X5、X'5、X6及びX'6は、好ましくは
X1-X'1がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当し、
X2-X'2がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当し、
X3-X'3がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当し、
X4-X'4がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当し、
X5-X'5がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当し、
X6-X'6がC-G、A-U、G-C又はU-Aに相当して
Py又はPuを表し、
NはG又はC又はA又はUに相当し、
Puは、リボースが2'位にOH基を有するG又はAに相当し、
Pyは、リボースが2'位にフッ素原子を有するU又はCに相当し、
- R4及びR5は存在するか又は存在せずに、
・ 1〜数千ヌクレオチド、好ましくは1〜39ヌクレオチドを含む天然又は修飾ヌクレオチド配列;該ヌクレオチド配列の一部分又は該配列は、好ましくは、次の配列:
R4
5'-R1-Z1-3'(ここでZ1=G):
5' GGGAGACAAGAAUAAACGCUCAAG 3' (配列番号18)又は
5'-R1-Z1-3'(ここでZ1=GCGGUAU (配列番号26)):
5' GGGAGACAAGAAUAAACGCUCAAGCGGUAU (配列番号19)、及び
R5
5'-Z2-R2-3'(ここでZ2=CAAUCCAGGGCAACG (配列番号27)):
5' CAAUCCAGGGCAACGAACGACAGGAGGCUCACAACAGGA 3' (配列番号20)又は
5'-Z2-R2-3'(ここでZ2=ACCGCAGCG (配列番号28)):
5' ACCGCAGCGAACGACAGGAGGCUCACAACAGGA 3' (配列番号21)、
R4について
5' GGGAGACAAGAAUAAACGCUCAAG 3' (配列番号18)又は
5' GGGAGACAAGAAUAAACGCUCAAGCGGUAU (配列番号19)、及び
R5について
5' CAAUCCAGGGCAACGAACGACAGGAGGCUCACAACAGGA 3' (配列番号 20)又は
5' ACCGCAGCGAACGACAGGAGGCUCACAACAGGA 3' (配列番号21)
の1つを含む
・ C6〜C30アルキル基又はC6〜C30アリール基からなる群より選択される直鎖状又は分枝鎖状の炭素鎖;
・ ポリマー、例えばPEG又はPEIなど;
・ 官能基、例えばビオチン、ストレプトアビジン、ペルオキシダーゼ;
・ 興味対象のその他の分子、例えば有効成分、標識タグ、特に蛍光タグ又は放射性同位体のキレート化剤
を表す)
を有することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1つに記載のアプタマ。
【請求項17】
R3が5' UGGAAGGA 3' (ループ(1))を表し、R4が配列番号18を表し、R5が配列番号20を表し、そのような構造を示すアプタマ(ファミリーD4)が、前記Ret受容体に結合する特性と前記受容体の活性を阻害する特性との両方を有することを特徴とする請求項16に記載のアプタマ。
【請求項18】
配列番号22の配列を有することを特徴とする請求項17に記載のアプタマ。
【請求項19】
R3が5' CUUUUUU 3' (ループ(2))、5' GNPuA 3' (ループ(3))又は5' UNCG 3' (ループ(4))を表し、R4が配列番号19から選択される1〜30ヌクレオチド、又は配列番号18から選択される1〜24ヌクレオチドを含み、R5が配列番号21から選択される1〜33ヌクレオチド、又は配列番号20から選択される1〜39ヌクレオチドを含み、そのような構造を示すアプタマが、活性化された形又は活性化されていない形の前記Ret受容体、特に細胞外ドメインにおいて変異したRet受容体に結合する特性のみを有することを特徴とする請求項16に記載のアプタマ。
【請求項20】
R3が5' CUUUUUU 3' (ループ(2))を表し、R4が配列番号19を表し、R5が配列番号21を表すことを特徴とする請求項19に記載のアプタマ。
【請求項21】
配列番号25を有することを特徴とする請求項19又は20に記載のアプタマ。
【請求項22】
R3が5' UGGAAGGA 3' (ループ(1))を表し、R4及びR5が存在せず、このような構造を示すアプタマが活性化された形又は活性化されていない形の前記Ret受容体に結合する特性のみを有し、配列番号23の配列を有することを特徴とする請求項16に記載のアプタマ。
【請求項23】
請求項12〜22のいずれか1つに記載のアプタマからなることを特徴とする腫瘍の診断試薬。
【請求項24】
式(II):
5'R4X6X5X4X3GGAAUAGX2X1R3X'1X'2CGUAUACX'3X'4X'5X'6R53'
(式中、R3、R4及びR5は存在しない)
のアプタマに相当することを特徴とする請求項23に記載の試薬。
【請求項25】
配列:
5' GUAGGGAAUAGCACGUAUACCUAC 3' (配列番号24)
のアプタマに相当することを特徴とする請求項24に記載の試薬。
【請求項26】
式(II)のアプタマ(ここで、R3は5' CUUUUUU 3'を表す)に相当し、配列番号25の配列に相当することを特徴とする請求項23に記載の試薬。
【請求項27】
請求項12〜22のいずれか1つに記載の少なくとも1つのアプタマからなることを特徴とする、活性化された形又は活性化されていない形のRet受容体の診断又は検出試薬。
【請求項28】
RPTK受容体に結合する能力と活性化された形の前記受容体についての阻害活性との両方を有する請求項7〜22のいずれか1つに記載のアプタマを含むことを特徴とする薬剤。
【請求項29】
活性化されたRPTK受容体、特に細胞外ドメインにおいて変異した受容体、特に細胞外ドメインに位置するシステイン(コドン609、611、618、620及び634)の1つで変異したRet受容体に結合する能力と、この変異した受容体についての阻害作用との両方を有する請求項7〜22のいずれか1つに記載のアプタマを含むことを特徴とする、腫瘍の治療用の薬剤。
【請求項30】
請求項13、16又は17で規定されるアプタマファミリーD4のアプタマに相当することを特徴とする請求項28又は29に記載の薬剤。
【請求項31】
RPTK受容体に結合する能力と活性化された形の前記受容体についての阻害作用との両方を有する請求項7〜22のいずれか1つに記載のアプタマを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項32】
- 活性化されたRPTK受容体、特に細胞外ドメインにおいて変異した受容体、特に細胞外ドメインに位置するシステイン(コドン609、611、618、620及び634)の1つで変異したRet受容体に結合する能力と、この変異した受容体についての阻害作用との両方を有する請求項7〜22のいずれか1つに記載のアプタマ、
- 別の抗癌性分子、及び
- 少なくとも1つの医薬的に許容される媒体
を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項33】
RPTK受容体に結合する能力とこのRPTK受容体についての阻害作用との両方を有するアプタマの、RPTK受容体と相互作用しかつこれを阻害し得るか又はできない物質をスクリーニングするための使用。
【請求項34】
活性化されたRPTK受容体、特に細胞外ドメインに位置するシステイン(コドン609、611、618、620及び634)の1つで変異したRet受容体に結合する能力と、この活性化されたRPTK受容体についての阻害作用との両方を有するアプタマの、該RPTK受容体と相互作用する物質をスクリーニングするための使用。
【請求項35】
RPTK受容体又は活性化された形若しくは活性化されていない形の該RPTKとの複合体を形成する標的と相互作用する物質をスクリーニングする方法であって:
- 活性化された形又は活性化されていない形のRPTKを発現する細胞を、試験すべき物質と接触させ、
- 適切な条件下で、請求項7〜22のいずれか1つに記載のアプタマを、試験すべき物質の前、同時又は後に加え、
- (例えば、放射活性、蛍光、発光、表面プラズモン共鳴、BRET、FRET又は分子相互作用を明らかにするいずれのその他の方法により)該アプタマと試験すべき分子との競合的結合を評価する
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
RPTKを示す細胞にアプタマと競合的に結合する物質を同定した後に、該細胞の生物活性に対するこれらの物質の影響を、RPTKを示す細胞の前記生物活性を阻害又は活性化する物質を見つけるために評価できることを特徴とする請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5A】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図3】
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【図5B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−529213(P2007−529213A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503381(P2007−503381)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000656
【国際公開番号】WO2005/093097
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506315103)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】25,rue Leblanc Immeuble(Le Ponant D),75015 PARIS,France
【Fターム(参考)】