説明

腰痛ベルト

【課題】 長時間の装着に際しても使用者に負担を感じさせることなく、腰痛を効果的に緩和することは勿論、腰痛ベルトの上方へのズレを防止するとともに、特に、素肌に直接装着しても、前述する排泄時における支障を回避し得る新規な腰痛ベルトを提供すること。
【解決手段】 腰痛ベルトの構成は、腹部と臀部の上部を包含して緊縛する腹帯部と、該腹帯部に大腿部外側をカバーする左右一対の大腿部保護帯を腹帯部と一体的に形成し、前記保護帯の下端縁に保護帯を大腿部に止着するための紐体を設けた点に存するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰痛ベルトに関し、詳しくは、腰痛を緩和し、あるいは、腰痛の発症の防止をする長時間装着可能な腰痛ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体の体重を支承する背骨は、頸椎、胸椎、さらに、腰椎からなる脊椎から構成され、この3部分からなる脊椎が形成する緩やかなカーブがバランスをとり、さらに、これら脊椎をとり巻く多数の筋肉とがあいまって体重を支承するとともに配分し、腰へ負荷する上半身の体重の負担を緩和している。
【0003】
腰痛は、老齢化に伴い腰椎の顕著な老化現象にくわえて筋肉が減退して筋力が低下することにより、また、若年者にあっても日常生活において無理な姿勢、前かがみの姿勢をとる等、姿勢が悪くなると、この3つのカーブのバランスが崩れ、特に、腰部への負担が増えることとなり、この姿勢の崩れに起因して脊椎と脊椎の間に存在する椎間板が圧迫され、圧迫された椎間板が変形して押し出され、股関節の近傍にある大腿神経や仙腸関節近傍に存在する座骨神経の神経根を圧迫し、腰痛の発生原因となる。また、過度の肥満により椎間板を圧迫し、この場合も腰痛が生じる。
【0004】
腰痛を防止し、あるいは、腰痛を回避するためには、正しい姿勢を保つことが必要なものであるが、正しい姿勢を保つためには腹筋と背筋のバランスが重要なものであり、とりわけ腹筋(内腹圧)の機能が重要な役割を占めるものであって適度な運動により腹筋を強化することが必要であるものの、年齢とともに腹筋が衰え、運動により強化することにも限界を生じることとなる。
【0005】
このため、腰痛の発症時においては、腰の動きを妨げず、正しい姿勢を保持し、脊椎の変形を防止でき、腹筋(内腹圧)を強化することから、腰椎部分を固定するコルセット(あるいは、腰痛ベルトとも称する。)を着用することが推奨されている。従来から種々の構造を有する腰痛ベルトが提案されているが、これらの腰痛ベルトにあっては、腰部を巻回する弾力あるベルトの後部中心部に柔軟性を有するボーンを着装し、ベルト前部両端は自由にアジャストでき得るそれぞれ係止具にて一体に連結する構成のものが採用されている。
【0006】
ところで、腰痛ベルトは、常時装着することによって、腰痛の軽減・緩和に効果が発揮できる。しかしながら、長時間の使用に際しては、日常生活上において種々の障害をもたらすこととなり、すなわち、一日24時間の生活リズムの中には、当然、排泄・入浴などの行動を伴うが、かかる行動を行うに際して腰痛症を発症している者にとって腰部に負担がかかる。従来の腰痛ベルトでは、その素材としてデニム地のごとく強度を有する素材を使用し、また、柔軟性を有するとはいえボーンを着装していることから下着の上に装着することを余儀なくされるために、特に、排泄時にあっては下着のあげおろしが困難で、このことから下着のあげおろし時に腰痛ベルトの装着を取り外す必要があり、また、入浴時においても同様に腰痛ベルトを取り外す必要がある。しかしながら、腰痛症を発症している高齢者にとって、スムースな行動を支える腰痛ベルトを取り外すことには痛みの発生という不安を感じ、腰痛のために排泄行動が単独に行うことが困難となれば、当然、介護が必要となり、このことから日常生活における行動を自ら制約し、いたずらに身体機能である歩行機能の低下をもたらし、はなはだしい場合には歩行できなくなって、寝たきり状態になる。
【0007】
前述の問題を解消するためには腰痛ベルトを素肌に直接に着用することが考えられるが、前述するとおり従来の腰痛ベルト構造における問題、即ち、その素材としてデニム地のごとく強度を有する素材を使用し、また、柔軟性を有するとはいえボーンを着装する構造を有することから、腰痛ベルトを緊縛したときに素材と肌との擦れ合いによる不快な摩擦感、あるいは、皮膚の炎症を生起し、また、前記ボーンが素肌に食い込むことから苦痛を感じることになる。
【0008】
加えて、ボーンの存在によって、体形に密着せずに使用中にずれ上がりを生じ、その効果を減退させる虞を有し、これを解決する腰痛ベルトも提案されている。即ち、腰椎部位を緊縛するベルトの移動を防止する大腿部に巻回させる固定用のベルトを一体的に具備するものであるが、かかる構成にあっては、固定用のベルトを腰部から大腿部へ移行する所謂、そ頸部の近傍において巻回させるものであることから、時として排泄時において汚損することになる。
【特許文献1】特開平09−135856号公報
【特許文献2】特開平10−137276号公報
【特許文献3】特開平10−155826号公報
【特許文献4】特開2002−238931号公報
【特許文献5】登録実用新案第3071838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前述の諸点に鑑みなされたものであって、長時間の装着に際しても使用者に負担を感じさせることなく、腰痛を効果的に緩和することは勿論、腰痛ベルトの上方へのズレを防止するとともに、特に、素肌に直接装着しても、前述する排泄時における支障を回避し得る新規な腰痛ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するための本発明にかかる腰痛ベルトの構成は、腹部と臀部の上部を包含して緊縛する腹帯部と、該腹帯部に大腿部外側をカバーする左右一対の大腿部保護帯を腹帯部と一体的に形成し、前記保護帯の下端縁に保護帯を大腿部に止着するための紐体を設けた点に存するものである。
【0011】
また、本発明にかかる腰痛ベルトの構成は、腹帯部に腰椎部位を緊縛する少なくとも一以上のゴム帯を介装した点に存するものである。
【0012】
さらに、本発明にかかる腰痛ベルトの構成は、請求項1記載の腰痛ベルトにおいて、腹帯部と大腿部保護帯をポリエステル繊維で形成した点に存するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる腰痛ベルトにあっては、腹帯部と、大腿部外側をカバーする左右一対の大腿部保護帯とを一体的に形成することにより、股関節部の近傍における筋肉は適度に保温された、常にウォームアップ状態を保て、筋肉の損傷を防止できる。また、大腿部保護帯によって、ズレ上がりを防止することで常に身体にフィットした締めつけ状態が持続でき、腰痛ベルトを装着することによって、睡眠時における寝返りなどの運動も支障なく行い得ることから、苦痛を感じることなく十分なな睡眠をとることが可能となり、さらに、大腿部の内側、つまり股間の空間を大きくすることによって、排泄の際に生じる尿・便の飛散による汚損を防ぎ、長時間の装着することを可能にし、日常生活における行動を支障なく、快適なものとする。
【0014】
また、本発明にかかる腰痛ベルトを構成する素材としてポリエステル繊維で作製すれば、入浴時にあっても装着することが可能となり、入浴も一人で行うことが可能となり、介護者の必要を無くし、より自立した生活を送ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかる腰痛ベルトの実施の形態を図1ないし図3に基づいて説明する。
1は本発明にかかる腰痛ベルトを示し、臀部の上部を包含して腰椎部から下腹部を緊縛するための腹帯部2を具備すると共に、その下辺には腰部から大腿部の外側を保護する左右一対の大腿部保護帯3,4を左右対称となる位置に一体的に連設され、腹帯部2における一方の端部近傍の表面側には平面ファスナの雄具5が、また、他方の端部近傍の表面側には平面ファスナの雌具6が縫い付けて固定されてなり、前記平面ファスナ5,6の一方、平面ファスナの雌具6を大きくすることによって使用者の体型に合わせた緊縛力を調整するようにしている。
【0016】
また、前記大腿部保護帯3,4は、大腿部の外側を骨盤から膝の直上のところまで延在する長さとするのが好ましく、この保護帯3,4の下縁に該保護帯3,4を大腿部下方の止着するための紐体7、8を固着してなり、この紐体7、8にも一方の端部近傍の表面側には平面ファスナの雄具9を、他方の端部近傍の表面側には平面ファスナの雌具10が縫い付けて固定されてなり、前記平面ファスナ9,10の一方、平面ファスナの雌具10を大きくすることによって使用者の大腿部に合わせた緊縛力を調整するようにしている。さらに、腰痛ベルト1の外周縁をバイアステープで縁巻きにすることにより、身体への密着性を付与している。
【0017】
本発明にかかる腰痛ベルト1の装着時において、図2に示すように、前記大腿部保護帯3,4を大腿部の外側に位置せしめることによって、大腿部の内側、即ち、内股部分に空間が形成されることとなり、ベルトを装着したままでの排泄時における飛散、飛沫による汚損が回避される。
【0018】
本発明にかかる腰痛ベルト1は、素材として伸縮性を有するものであれば種々に採用しうるもので、特に、入浴時においても着用する場合にあっては、ポリエステル繊維を採用するのが好ましいもので、また、腹帯部2と保護帯3,4とは縫い目のない一枚布で構成するのがよく、両者を別異のもので構成する場合にあっては、素肌に直接に着用することを考慮して裏地を縫着するのが望ましい。
【0019】
上記腰痛ベルト1は図2に示すように身体に装着される。腹帯部2を臀部側から下腹部に捲回し、その両端を重ね合わせて平面ファスナの雄具5と雌具6で結合することで腰椎部分に対して緊縛固定する。次に、大腿部の側面に延在する保護帯3、4を大腿部の外側に当接し、膝の直上部において夫々の紐体7,8に設けた平面ファスナの雄・雌具9、10で結合し、大腿部に固定する。
腰痛ベルト1の装着状態は、図2(a)に示す正面側、(b)に示す背面図の状態を示すが、これから理解されるように、腹帯部2によって患部である腰椎部分を緊縛するが、腹帯部2を保護帯3,4によって大腿部の外側を保温するとともに係止するもので、大腿部の内側、即ち、股間部に大きな空間が形成されており、ベルトを装着したままでの排泄時における飛散、飛沫による汚損が回避され、また、装着者の動作に伴う腰痛ベルト1のズレは保護帯3、4を大腿部に固定することで防止することが可能となる。
【0020】
図3に本発明にかかる腰痛ベルトの他の実施例について説明するが、同一部分には同一の符号を付して説明する。
本発明にかかる腰痛ベルト1は、臀部の上部を包含して腰椎部から下腹部を緊縛するための腹帯部2を具備すると共に、その下辺には腰部から大腿部の外側を保護する左右一対の大腿部保護帯3,4を左右対称となる位置に一体的に連設され、腹帯部2における一方の端部近傍の表面側には平面ファスナの雄具5が、また、他方の端部近傍の表面側には平面ファスナの雌具6が縫い付けられ、固定されている。
【0021】
また、前述の実施例と同様に大腿部保護帯3,4は、大腿部の外側を骨盤から膝の直上のところまで延在する長さとするのが好ましく、この保護帯3,4の下縁に該保護帯3,4を大腿部下方の止着するための紐体7、8を固着してなり、この紐体7、8にも一方の端部近傍の表面側には平面ファスナの雄具9を、他方の端部近傍の表面側には平面ファスナの雌具10が縫い付けられ、固定されてなり、腰痛ベルト1の外周縁をバイアステープで縁巻きにすることにより、身体への密着性を付与している。
【0022】
この実施例における腰痛ベルト1は、腹帯部2に少なくとも1本の緊縛帯20を装着するもので、この緊縛帯20は弾性を有するゴム紐が好ましく、腹帯部2に設けたベルト通し21に挿通するようにされ、自在に緊縛力を調整しつつ腰部を緊縛可能とし、また、緊縛帯20の両端部は、一方の端部近傍の表面側には平面ファスナの雄具22が、また、他方の端部近傍の表面側には平面ファスナの雌具23が縫い付けて固定されてなり、前記平面ファスナ22、23の一方、平面ファスナの雌具23を大きくすることによって使用者の体型に合わせた緊縛力を調整するようにしている。
【0023】
このような構成を採用することによって、腰椎の発症者が装着するに当たり、腹帯部2を臀部側から下腹部側に捲回し、その両端を重ね合わせて平面ファスナの雄具5と雌具6で結合することで腰椎部分に対して緊縛固定する。さらに、緊縛帯20を使用して腰椎部分を緊縛するが、緊縛帯20を適宜に展長させて平面ファスナ22,23の結合位置を変更することによって苦痛のない、腰痛を緩和する緊縛力に調整する。さらに、大腿部の側面に延在する保護帯3、4を大腿部の外側に当接し、膝の直上部において夫々の紐体7,8に設けた平面ファスナの雄・雌具9、10で結合し、大腿部に固定して使用することは前述の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる腰痛ベルトの展開図
【図2】本発明にかかる腰痛ベルトを装着状態を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は背面図
【図3】本発明の第2の実施例をしめす腰痛ベルトの展開図
【符号の説明】
【0025】
1 腰痛ベルト
2 腹帯部
3、4 大腿部保護帯
5、9 平面ファスナ(雄)
6、10 平面ファスナ(雌)
11 バイアステープ
20 緊縛帯
21 ベルト通し
22 平面ファスナ(雄)
23 平面ファスナ(雌)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹部と臀部の上部を包含して緊縛する腹帯部と、該腹帯部に大腿部外側をカバーする左右一対の大腿部保護帯を腹帯部と一体的に形成し、前記保護帯の下端縁に保護帯を大腿部に止着するための紐体を設けたことを特徴とする腰痛ベルト。
【請求項2】
請求項1記載の腰痛ベルトにおいて、腹帯部に腰椎部位を緊縛する少なくとも一以上のゴム帯を介装したことを特徴とする腰痛ベルト。
【請求項3】
請求項1、2記載の腰痛ベルトにおいて、腹帯部と大腿部保護帯をポリエステル繊維で形成したことを特徴とする腰痛ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−239343(P2006−239343A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96019(P2005−96019)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(505113861)
【Fターム(参考)】