説明

腱、靭帯および骨の治療のための二糖

本発明は、腱、靭帯または骨の疾患、障害または損傷の治療または予防用の薬剤を調製するための、一連の二糖、ならびにそれらを含む組成物の使用に関する。本発明はまた、二糖を、イヌリンポリ硫酸、グリコサミノグリカン、成長因子または細胞と組み合わせて含む新規組成物にも関する。グリコサミノグリカンは、好ましくはコンドロイチン硫酸またはヒアルロン酸であり、成長因子はIFG−1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腱、靭帯または骨の疾患、障害または損傷の治療または予防用の薬剤を調製するための一連の二糖の使用に関する。同様に、本発明は、二糖を含む新規組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
多数の研究から、骨および軟組織、例えば靭帯および腱は、特に成人において、自己修復能力に限界があることが確認されている。
【0003】
腱および靭帯の機能特性および構造特性はとてもよく似ている。腱は筋肉を骨につなぐ解剖学的構造であり、靭帯は骨を他の骨につなぐ類似構造である。どちらも、密性結合組織から形成された、張力に一方向に適応する、コラーゲン(主としてI型コラーゲン)繊維が平行する円柱状の細長い構造である。前記組織の血管新生が少ないことが腱および靭帯の治癒が遅い原因の1つである。
【0004】
腱の主要細胞は腱細胞と呼ばれている。腱細胞の働きは、分解過程と合成過程を通じてマトリックス構造を維持することである。しかし、腱は細胞密度が比較的低く、有糸分裂活性はほとんどない。このことから、この組織の置換率が低いことは明らかであり、そしてこれらの細胞に本来備わっている治癒作用を促進することができる程度は疑わしい。
【0005】
腱の損傷は、最もよくある整形外科的損傷である。例えば、米国では1年に少なくとも100,000例のアキレス腱損傷が診断され、治療されている(A.Praemerら、「Musculoskeletal condition in the United States」,1st ed.American Academy of Orthopaedic Surgeons,Park Ridge,IL,1992)。また、米国では毎年150,000〜200,000例の前十字靱帯(ACL)損傷があると推定されている(S.L.Wooら、「Contribution of biomechanics,orthopaedics and rehabilitation:the past present and future」,Surgeon 2(3),125−136(2004))。
【0006】
腱および靭帯の損傷は、スポーツの実施または事故による損傷、膨脹、不適切な姿勢、細菌感染、薬物の副作用、関節の関節炎をはじめとする様々な要因によって、そして様々な疾患の結果として起こる。
【0007】
最適水準に達しない治癒、長いリハビリテーション期間、そして高い再発率が腱および靭帯の損傷を適切に治療することを困難にしている。
【0008】
腱障害(腱疾患)および靭帯病(靭帯疾患)の最も多い薬物学的治療としては、以下が挙げられる:安静、理学療法(運動、マッサージ、超音波、レーザー、水治療法、温冷)、栄養補助食品、外科手術、ならびに非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、グルココルチコイドおよび抗生物質を含む薬剤(薬剤は疾患が感染によって起こった場合である)。NSAIDおよびグルココルチコイドの両方に副作用があることは知られている。NSAIDの副作用には、胃酸過多、むかつき、下痢、めまいが含まれ、場合によっては、胃潰瘍および肝炎も含まれる。グルココルチコイドの副作用は、出血、腱断裂および感染であり得、コラーゲン合成までも減速し得る。さらに、最近の刊行物では腱再生におけるNSAIDの効力を疑問視している(D.Marsolaisら、「Nonsteroidal anti−inflammatory drug reduces neutrophil and macrophage accumulation but does not improve tendon regeneration」,Lab.Invest.83(7),991−999(2003))。
【0009】
ここ数年の間に、幹細胞(R.G.Youngら、「Use of mesenchymal stem cells in a collagen matrix for Achilles tendon repair」,J.Orthop.Res.16(4),406−413(1998))、腱細胞(米国特許出願公開第2005060033号)、靭帯細胞(J.A.Cooper,Jr.,「Evaluation of the anterior cruciate ligament,medial collateral ligament,Achilles tendon and patellar tendon as cell sources for tissue−engineered ligament」,Biomaterials 27,2747−2754(2006))、成長因子(国際公開第01/82951号パンフレット;L.A.Dahlgrenら、「Insulin−like growth factor−I improves cellular and molecular aspects of healing in a collagenase−induced model of flexor tendonitis」,J.Orthop.Res.20,910−919(2002))で、または遺伝子(R.S.Goomerら、「Nonviral in vivo gene therapy for tissue engineering of articular cartilage and tendon repair」,Clin.Orthop.Oct(379 Suppl),S189−200(2000))での、腱障害および靭帯病の治療について調査が行われている。
【0010】
骨組織は、特殊化した結合組織であり、残りの結合組織と同様に、細胞、繊維および細胞質基質によって形成されるが、他の結合組織とは違って、その細胞外成分が石灰化し、それによりその支持および保護機能に適した硬質の、堅固な物質となる。骨組織は、体を内部支持し、運動に不可欠である筋肉、腱および靭帯に付着部位を提供する。
【0011】
骨欠損は、大きな医学的かつ社会経済的課題である。例えば、最新の調査には、損傷した骨組織の再建のための様々な種類の生体材料の適用(U.Kneser,ら、「Tissue engineering of bone:the reconstructive surgeon’s point of view」,J.Cell.Mol.Med.10(1),7−19(2006))、ならびに成長因子(国際公開第2006/044334号パンフレット)および幹細胞(米国特許第6,863,900号)の使用がある。
【0012】
上述の骨、腱および靭帯は、筋骨格系の要素であり、それらの全ては胚レベルにおいて中胚葉から生じる。
【0013】
本発明の化合物は、特許文献1(欧州特許第1300411号(米国特許第6,680,304号))において初めて記載された二糖であり、変形性関節症(関節症)の治療において有用性がある。また、前記特許文献は、炎症性疾患、例えば炎症性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、リウマチ熱、回帰性リウマチ、ライター症候群、紅斑性狼瘡および強直性脊椎炎の治療における、ならびに血液凝固制御におけるそれらの有用性についても言及している。これらの化合物の基本構造は、β−(1−>3)結合によって結合された単糖のグルクロン酸とグルコサミンを含み、単糖のグルコサミンのC−4および/またはC−6に硫酸基を有する。
【0014】
本発明のいくつかの組成物の一部をなすグリコサミノグリカン(GAG)は、生きた生物に本来存在している高分子量のポリマー生体分子であり、生きた生物においてそれらは異なる生理学的機能を発揮する。
【0015】
コンドロイチン硫酸は、N−アセチル−D−ガラクトサミンとD−グルクロン酸により形成された、反復する二糖を特徴とするポリマー構造を有する天然硫酸化グリコサミノグリカンである。N−アセチル−D−ガラクトサミン残基の大部分は硫酸化されている。コンドロイチン硫酸は、関節軟骨中に存在するアグリカンの必須成分である。
【0016】
異なる疾患を治療するための、例えば心血管疾患の治療における(米国特許第3,895,106号)または乾癬の治療における(国際公開第2005/014012号パンフレット)、コンドロイチン硫酸の使用は既に記載されているが、しかし、その最も拡張された使用は、ヒアリン関節軟骨の変性を特徴とする変形性関節症の治療にある(M.G.Lequesne,Rev.Rhum.Eng.Ed.,61,69−73(1994);G.Verbruggenら、Osteoarthritis Cart.,6(Supplement A),37−38(1998))。
【0017】
ヒアルロン酸は、単糖のN−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロン酸により形成された、反復する二糖を特徴とするポリマー構造を有する非硫酸化グリコサミノグリカンである。ヒアルロン酸は、軟骨、滑膜および滑液の主成分の1つである。変形性関節症、一般的には関節内の治療におけるヒアルロン酸の使用は特に重要である。創傷治癒を速めるための眼科学、ならびに化粧品におけるヒアルロン酸の使用もまた記載されている。
【0018】
腱障害の治療におけるコンドロイチン硫酸、コンドロイチンポリ硫酸およびヒアルロン酸の使用について、矛盾した結果が発表されている。化合物の有益な効果を記載している著者らがいる一方で(E.M.Gaughanら、「Effects of sodium hyaluronate on tendon healing and adhesion formation in horses」,Am.J.Vet.Res.52(5),764−773(1991);H.Sundqvistら、「A promising novel therapy for Achilles peritendinitis」,Int.J.Sports Med.8,298−303(1987))、治療した腱と対照群との間には有意な差は認められないとする著者らもいる(S.J.Dyson,「Medical management of superficial digital flexor tendonitis:a comparative study in 219 horses(1992−2000)」,Equine Vet.J.36(5),415−419(2004);J.W.Folandら、「Effect of sodium hyaluronate in collagenase−induced superficial digital flexor tendinitis in horses」,Am.J.Vet.Res.53(12),2371−2376(1992))。
【0019】
本発明の組成物の一部をなすイヌリンポリ硫酸は、天然多糖イヌリンから得られる。異なる硫酸化度のイヌリン硫酸のアルカリ塩は、化学工業において増粘剤、接着剤として、そして石油採掘に用いるマッド用の添加剤として用いられている。イヌリン硫酸が抗凝固活性(Arkiv for kemi,mineralogi o.geologi.,Bd 24B(5),1−4(1946))および抗高脂血活性(Arch.Int.Pharmacodyn,XCIX,334(1954))を有することが記載されている。
【0020】
イヌリンポリ硫酸(米国特許第4,021,545号)が補体阻害活性を有することは記載されている;そのため、イヌリンポリ硫酸を、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡およびある特定の種類の脈管炎などの疾患の治療に用いることができた。変形性関節症の治療におけるイヌリンポリ硫酸の使用もまた記載されている(国際公開第2005/084610号パンフレット)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許第1300411号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、腱、靭帯または骨の疾患、障害または損傷の治療または予防において有用である代替薬物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
腱、靭帯または骨の治療における本発明の二糖の使用は、今まで記載されていない。
【0024】
二糖を含む本発明の組成物もまた記載されていない。
【0025】
思いがけなく、特許文献1に記載された化合物が、腱、靭帯または骨の疾患、障害または損傷の治療において有用であることはこれまでに見出されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】化合物Icについての、3つの濃度(200μg/mL、1,000μg/mLおよび3,000μg/mL)における、付着ヒト腱細胞の数に対する71時間にわたる効果を示すグラフである。0時点での対照およびIGF−1も含まれる。
【図2】成長因子IGF−1および対照(化合物の不在下での培養)についての、付着ヒト腱細胞の数に対する71時間にわたる効果を示すグラフである。
【図3】化合物の不在下で1時間の培養後の、透過型電子顕微鏡によるヒト腱細胞(対照)を示す図である。
【図4】化合物Icとの1時間のインキュベーション後の、透過型電子顕微鏡によるヒト腱細胞を示す図である。
【図5】化合物の不在下で培養したヒト腱細胞(対照)によるI型コラーゲンの発現を、赤色免疫蛍光により示す図である。
【図6】化合物Icとの1時間のインキュベーション後のヒト腱細胞によるI型コラーゲンの発現を、赤色免疫蛍光により示す図である。
【図7】化合物の不在下で培養したヒト腱細胞(対照)による接着分子β1−インテグリンの発現を、赤色免疫蛍光により示す図である。
【図8】化合物Icとの1時間のインキュベーション後のヒト腱細胞(対照)による接着分子β1−インテグリンの発現を、赤色免疫蛍光により示す図である。
【図9】コンドロイチン硫酸と化合物Icで作製した混合物(CS/Ic)についての、3つの濃度(500/500μg/mL、1,000/200μg/mLおよび1,000/500μg/mL)における、付着ヒト腱細胞の数に対する14日間にわたる効果を示すグラフである。0時点での対照およびIGF−1も含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施形態は、哺乳類における腱、靭帯または骨の疾患、障害または損傷の治療または予防用の薬剤を調製するための、式(I):
【化1】

(式中、Rは、水素、直鎖状もしくは分枝状のC−Cアルキル、10個未満の炭素原子のフェニルアルキルまたは−COCHであり、Rは、水素、−COCHまたは−SOYであり、Rは、水素、直鎖状もしくは分枝状のC−Cアルキル、10個未満の炭素原子のフェニルアルキル、−COCHまたは−COPh(式中、Phはフェニルである)であり、Gは、−COORまたは−COOY(式中、Rは、水素、C−Cアルキルまたは16個未満の炭素原子のアリールアルキルである)であり、Aは、水素、−SOH、−SOYまたは−COCHであり、およびBは、水素、−SOH、−SOY、または−COCHであり、この際、AまたはBは、必ず−SOHまたは−SOY(式中、Yは、有機もしくは無機カチオンである)のいずれかである)の化合物、ならびにその溶媒和物および製薬上許容される塩の使用に関する。
【0028】
本実施形態において用語「治療」とは、腱、靭帯または骨の修復または再生を含む。
【0029】
式(I)の化合物は、構造中にアノマー炭素を含む。本発明は、アノマー型αおよびβの混合物と個別のアノマー型αおよびβの両方を含む。
【0030】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、Rが、水素または直鎖状C−Cアルキルであり、Gが、−COORまたは−COOY(式中、Rは、水素またはC−Cアルキルである)であり、Yが無機カチオンである、化合物である。
【0031】
より好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、Rが水素であり、Rが−COCHであり、Rが水素である、化合物である。Rがメチルであり、Rが−COCHであり、Rが水素である式(I)の化合物も同様に好ましい。
【0032】
特に好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、Aが水素であり、Bが−SOYであり、Gが−COOY(式中、Yは無機カチオンである)である、化合物である。Aが−SOYであり、Bが水素であり、Gが−COOY(式中、Yは無機カチオンである)である式(I)の化合物もまた特に好ましい。AおよびBが−SOYであり、Gが−COOY(式中、Yは無機カチオンである)である式(I)の化合物も同様に特に好ましい。
【0033】
本発明の特に好ましい個別化合物は、下式で表される
【化2】

のメチル2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(β−D−グルコピラノシルウロン酸)−4−O−スルホ−α−D−グルコピラノシド、二ナトリウム塩である。
【0034】
本発明の別の特に好ましい個別化合物は、下式で表される
【化3】

のメチル2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(β−D−グルコピラノシルウロン酸)−6−O−スルホ−α−D−グルコピラノシド、二ナトリウム塩である。
【0035】
本発明の別の特に好ましい個別化合物は、下式で表される
【化4】

のメチル2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(β−D−グルコピラノシルウロン酸)−4,6−ジ−O−スルホ−α−D−グルコピラノシド、三ナトリウム塩である。
【0036】
靭帯は、好ましくは関節または歯周の靱帯であり、骨は歯周骨である。
【0037】
別の好ましい実施形態では、薬剤は、グリコサミノグリカン、好ましくはコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸またはデルマタン硫酸をさらに含む。
【0038】
別のさらに好ましい実施形態では、薬剤はイヌリンポリ硫酸をさらに含む。
【0039】
別のさらに好ましい実施形態では、薬剤は、成長因子、好ましくはIGF−1をさらに含む。
【0040】
別のさらに好ましい実施形態では、薬剤は、腱細胞、エピテノン細胞(epitenon cells)、靭帯細胞、歯周靱帯繊維芽細胞、セメント芽細胞、骨芽細胞、骨細胞および幹細胞からなる群より選択される細胞をさらに含む。
【0041】
疾患、障害または損傷は、好ましくは、腱症、腱炎、リウマチ様腱炎、腱鞘炎、腱滑膜炎、パラテノン炎(paratenonitis)、骨損失、歯周炎、歯周炎に関連する歯肉炎および任意の靭帯病からなる群より選択される。同様に、疾患、障害または損傷は、外傷、酷使または病状、例えば、感染性疾患、代謝性疾患もしくは内分泌疾患の結果である。
【0042】
薬剤は、好ましくは、経口投与、病変内投与、病変部周囲投与、関節内投与に、インプラントによる投与にまたは露出した腱、靭帯または骨への局所投与に適している。
【0043】
本実施形態はまた、式(I)により表される化合物とグリコサミノグリカンを含む医薬組成物を記載する。グリコサミノグリカンは、好ましくはコンドロイチン硫酸またはヒアルロン酸である。
【0044】
式(I)により表される化合物とイヌリンポリ硫酸を含む医薬組成物もまた好ましい。
【0045】
式(I)により表される化合物と成長因子を含む医薬組成物もまた好ましい。成長因子は、好ましくはIGF−1である。
【0046】
式(I)により表される化合物と、腱細胞、エピテノン細胞、靭帯細胞、歯周靱帯繊維芽細胞、セメント芽細胞、骨芽細胞、骨細胞および幹細胞からなる群より選択される細胞を含む医薬組成物もまた好ましい。
【0047】
式(I)の化合物が、下式で表される
【化5】

のメチル2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(β−D−グルコピラノシルウロン酸)−4−O−スルホ−α−D−グルコピラノシド、二ナトリウム塩である医薬組成物が特に好ましい。
【0048】
同様に、式(I)の化合物が、下式で表される
【化6】

のメチル2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(β−D−グルコピラノシルウロン酸)−6−O−スルホ−α−D−グルコピラノシド、二ナトリウム塩である医薬組成物が特に好ましい。
【0049】
同様に、式(I)の化合物が、下式で表される
【化7】

のメチル2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(β−D−グルコピラノシルウロン酸)−4,6−ジ−O−スルホ−α−D−グルコピラノシド、三ナトリウム塩である医薬組成物が特に好ましい。
【0050】
本実施形態はまた、哺乳類における腱、靭帯または骨の疾患、障害または損傷の治療または予防に使用するための、上記に定義した式(I)により表される化合物、またはその溶媒和物もしくは製薬上許容される塩にも関する。
【0051】
本実施形態による式(I)の化合物の調製は、欧州特許第1300411号に記載されている合成経路に従って行うことができる。
【0052】
カチオンYの性質(有機または無機、金属カチオン、無機金属カチオンであることが好ましい)に応じて、有機または無機塩が得られる。無機塩の例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩およびリチウム塩が挙げられる。有機塩の例としては、例えば、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩および塩基性アミノ酸塩が挙げられる。
【0053】
本実施形態による医薬組成物は、式(I)の化合物とグリコサミノグリカン、例えばコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸またはデルマタン硫酸を含み得る。
【0054】
本実施形態のいくつかの組成物の成分であるコンドロイチン硫酸は、それを得るための起源およびプロセスによって、10,000ダルトン〜60,000ダルトン間に含まれる分子量を有する硫酸化グリコサミノグリカンである。コンドロイチン硫酸は、文献(ES547769)に記載されている方法に従って、動物軟骨組織、例えばブタまたはウシ気管、およびサメ軟骨性骨格から得ることができる。コンドロイチン硫酸のポリマー構造は、N−アセチルガラクトサミンとD−グルクロン酸により形成された、反復する二糖を特徴とする。N−アセチルガラクトサミン残基の大部分は硫酸化されている。
【0055】
軟骨流出物からのコンドロイチン硫酸は、主に、N−アセチルガラクトサミン残基中に存在する硫酸基の位置が異なる2つの異性体、コンドロイチン4−硫酸(コンドロイチン硫酸A)およびコンドロイチン6−硫酸(コンドロイチン硫酸C)で見られ、これらの異性体は次の構造により表される。
【化8】

【0056】
用語「コンドロイチン硫酸」は、コンドロイチン4−硫酸およびコンドロイチン6−硫酸に加えて、デルマタン硫酸としても知られるコンドロイチン硫酸B、コンドロイチン2,6−二硫酸として知られるコンドロイチン硫酸D、コンドロイチン4,6−二硫酸として知られるコンドロイチン硫酸Eも含む。
【0057】
本実施形態において、用語「コンドロイチン硫酸」とは、これら化合物全て、ならびにその混合物を包含する。
【0058】
本実施形態の組成物に用いるヒアルロン酸は、100,000ダルトン〜3,000,000ダルトン間に含まれる分子量を有する非硫酸化グリコサミノグリカンである。ヒアルロン酸は、文献(D.A.Swann,Biochim.Biophys.Acta 156,17−30(1968);米国特許第4,780,414号)に記載されている方法に従って、鳥類または哺乳類組織から、例えば、硝子体液、哺乳類皮膚、臍帯、鳥冠から、抽出によって、また微生物、例えば、連鎖球菌の発酵によって得ることができる。
【0059】
ヒアルロン酸のポリマー構造は、N−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロン酸により形成された、反復する二糖を特徴とする。
【化9】

【0060】
本実施形態において用いるいくつかの組成物の成分であるイヌリンポリ硫酸は、文献(国際公開第2005/084610号パンフレット)に記載されている方法に従って、天然多糖イヌリン構造中に存在する遊離ヒドロキシル基のスルホン化によって得ることができる。イヌリンポリ硫酸は次の構造により表される。
【化10】

【0061】
デルマタン硫酸は、コンドロイチン硫酸Bとも呼ばれ、文献(N.Volpi,Anal.Biochem.218,382−391(1994);米国特許第5,116,963号)に記載されている方法に従って、鳥類または哺乳類組織から、例えば、ウシまたはブタ粘膜および鳥冠から得ることができる。
【0062】
本実施形態において成長因子について言及する場合には、骨、腱または靭帯の成長において重要な役割を有する成長因子を指す、これらの成長因子には、数ある中でも、IGF−1(インスリン様成長因子1)およびBMP−2(骨形成タンパク質2)が特に含まれる。
【0063】
本実施形態において幹細胞について言及する場合には、胚幹細胞と成人幹細胞の両方を指す。成人幹細胞には間葉細胞が含まれる。
【0064】
本実施形態において病変内投与について言及する場合には、実際の損傷への直接投与を指す。
【0065】
本実施形態において病変部周囲投与について言及する場合には、損傷周囲への投与を指す。
【0066】
本実施形態の化合物は、腱、靭帯または骨の疾患、障害または損傷の治療または予防に使用するために、従来の技術および賦形剤または担体、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy 2000,edited by Lippincott Williams and Wilkins,20th edition,Philadelphiaに記載されているものを用いて、適した医薬組成物に処方される。
【0067】
本実施形態の医薬組成物は、患者に必要用量で投与することができる。組成物の投与は、異なる経路、例えば、経口経路、静脈内経路、腹腔内経路、関節内経路、病変内経路、病変部周囲経路、腱内経路、腱周囲経路、くも膜下腔内経路、皮下経路、筋肉内経路、局所経路、舌下経路、皮内経路または鼻腔内経路によって行うことができる。本発明の医薬組成物は、治療上有効な量の有効成分を含み、その量は、例えば患者の健康状態、年齢、性別、特定の化合物、投与経路、症状の重篤度などの多くの因子や当技術分野で周知の他の因子によって決まる。さらに、当然のことながら、所望の治療効果を提供するために、前記用量の有効成分を単回または複数回用量単位で投与することができる。
【0068】
本実施形態の医薬調製物は、一般的に、固体形態、液体形態でまたはゲルとして存在する。本発明に従って調製することができる固体形態の医薬調製物には、粉末、ペレット、ミクロスフェア、ナノ粒子、錠剤、分散性顆粒、カプセル剤、シールおよび坐剤が含まれる。液体形態の医薬調製物には、溶液、懸濁液、乳濁液、シロップおよびエリキシルが含まれる。使用直前に液体形態の調製物に変換される固体形態の医薬調製物も企図される。液体形態には、溶液、懸濁液および乳濁液が含まれる。
【0069】
本実施形態の化合物の使用には、(i)ヒト腱細胞増殖および接着の刺激を測定するためのインビトロアッセイにおいて、本発明の化合物の作用が成長因子IGF−1の作用よりも速く;(ii)そのアッセイ後に、腱細胞には大量の小胞体および細胞外マトリックスが存在するため、腱細胞に対する毒性効果がなく、および(iii)I型コラーゲンおよび接着分子β1−インテグリンの発現には変化がない、などの利点があることが見出されている。
【0070】
本実施形態に記載する図および実施例では、Icは、式:
【化11】

の化合物である。
【実施例】
【0071】
次の実施例は、単なる例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
<実施例1:ヒト腱細胞接着および増殖に対する化合物Icの効果>
この目的は、薬物刺激腱細胞増殖および接着が腱の治療または修復において特に有用であったことから、インビトロ培養モデルにおけるヒト腱細胞増殖および接着に対する化合物Icの効果を判定することであった。
【0073】
比較目的のため、同じ種類のインビトロ培養モデルにおけるヒト腱細胞増殖および接着に対する成長因子IGF−1の効果を判定した。
【0074】
10箇所の顕微鏡視野内で手集計によって、付着腱細胞の増加を定量した。
【0075】
<実施例1の材料と方法>
ヒト腱外植片(およそ3〜5mm)を、10%FCS、DMEM/Ham−12(50/50)(Ham−12を含む「ダルベッコ改変イーグル培地」)、50IU/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、25μg/mLのアスコルビン酸、2.5μg/mLのアムホテリシンB、1%グルタミンおよび1%必須アミノ酸で作製した培地を入れた培養フラスコ内で培養した。1〜2週間後に、腱細胞は腱組織から移動し始め、培養フラスコに付着し、単層を形成した。十分な量の腱細胞を得るまで、数回継代を行った。
【0076】
12−ウェルプレートを15,000腱細胞/ウェルで調製し、それらのプレートを10%FCS(ウシ胎児血清)とともにインキュベートした。翌日、細胞を無血清培地(0.5%FCS)で3回洗浄し、無血清培地とともに30分間インキュベートし、その後、対照培養物を計数した(時間「0時間」)。アッセイする化合物Ic(このアッセイは、3つの濃度:200μg/mL、1,000μg/mLおよび3,000μg/mLにおいて行った)を加え、細胞を、無血清培地(0.5%FCSのみ)を用いてインキュベートした。対照培養物および成長因子IGF−1培養物(10ng/mL)も無血清培地でインキュベートした。
【0077】
全てのアッセイにおいて、細胞を71時間インキュベートし、各時点において、10箇所の顕微鏡視野内で手集計によって、各ウェルを評価した。
【0078】
<実施例1の結果>
本発明の化合物Icの3つのアッセイ濃度のうち、最適な濃度は1,000μg/mLである(図1)。この濃度で5時間後に、化合物Icは、対照(化合物を含まない)に対して付着腱細胞数のおよそ45%の増加をもたらし、このレベルは24時間まで維持されるが、一方、IGF−1の場合では、この同じ増加は9時間後に達成される(図2)。
【0079】
本発明の化合物Icはヒト腱細胞増殖および接着を刺激し、その作用はIGF−1の作用よりも速いと結論付けることができる。
【0080】
<実施例2:ヒト腱細胞接着および増殖に対するコンドロイチン硫酸と化合物Icの混合物の効果>
実施例1に記載した手順に従ったが、この際、12−ウェルプレートを10,000腱細胞/ウェルで調製した。コンドロイチン硫酸と化合物Icの混合物(CS/Ic)を3つの濃度:500/500μg/mL、1,000/200μg/mLおよび1,000/500μg/mLにおいてアッセイした。
【0081】
<実施例2の結果>
コンドロイチン硫酸と化合物Icで作製した混合物(CS/Ic)の3つのアッセイ濃度のうち、最適濃度は1,000/500μg/mLである(図9)。この濃度で72時間後に、CS/Ic混合物は、対照(化合物を含めない)に対して付着腱細胞数のおよそ33%の増加をもたらす。そのため、CS/Ic混合物はヒト腱細胞増殖および接着を刺激すると結論付けることができる。
【0082】
<実施例3:化合物Icとともにインキュベートした後の透過型電子顕微鏡による腱細胞の評価>
この目的は、本発明の化合物の毒性を判定できるように、化合物を含めなかった(対照)または本発明の化合物Icを含めた1時間のインキュベーション後に腱細胞の活力およびアポトーシスの兆候を観察することであった。
【0083】
<実施例3の材料と方法>
実施例1に記載の手順に従って、十分な量の単層腱細胞を調製した。次いで、35mmペトリ皿当たり100,000腱細胞を、10%FCS、DMEM/Ham−12(50/50)(Ham−12を含む「ダルベッコ改変イーグル培地」)、50IU/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、25μg/mLのアスコルビン酸、2.5μg/mLのアムホテリシンB、1%グルタミンおよび1%必須アミノ酸で作製した培地4mLとともに播種し、腱細胞をコンフルエンスに達するまでインキュベートした。細胞を無血清培地(0.5%FCS)で3回洗浄し、この同じ無血清培地とともに30分間インキュベートした。アッセイする化合物を加える前に、0時間においてKarnovskyの固定液を用いて対照を調製した。次いで、アッセイする化合物Ic(この化合物を3つの濃度:200μg/mL、1,000μg/mLおよび3,000μg/mLでアッセイした)を加え、細胞を無血清培地とともに1時間インキュベートした。対照培養物およびIGF−1培養物(10ng/mL)も無血清培地とともにインキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、Karnovskyの固定液で処理した。その後、cell−scraper(登録商標)を用いてペトリカプセルから細胞を取り出し、それらをエッペンドルフチューブに入れ、400gで5分間遠心分離した。さらに、細胞のペレットをアルコールで脱水し、続いて、それを2%OsOで1時間固定した。アルコールでさらに脱水した後、細胞ペレットをエポン包埋した。超微細な切片を作製し、酢酸ウラニルを用いて対比した。これらの切片を透過型電子顕微鏡(Zeiss)で検査した。
【0084】
<実施例3の結果>
図3(対照、化合物を含まない)と図4(化合物を含む)を比較すると気付くように、化合物Icの存在下での1時間の培養後に、腱細胞に対する毒性効果は認められず、化合物Icは腱細胞には異化効果を及ぼさない。それというのも腱細胞には大量の小胞体および細胞外マトリックスが存在するためである。
【0085】
<実施例4:コンドロイチン硫酸と化合物Icの混合物とともにインキュベートした後の透過型電子顕微鏡による腱細胞の評価>
実施例3に記載した手順に従った。コンドロイチン硫酸と化合物Icで作製した混合物(CS/Ic)を500/500μg/mLの濃度でアッセイした。
【0086】
<実施例4の結果>
コンドロイチン硫酸と化合物Icの混合物の存在下での1時間の培養後に、腱細胞に対する毒性効果は認められなかった。
【0087】
<実施例5:ヒト腱細胞を化合物Icとともにインキュベートした後の免疫蛍光によるI型コラーゲンおよびβ1−インテグリンの判定>
この目的は、本発明の化合物Icとともにおよび化合物の不在下で(対照)1時間のインキュベーション後に、ヒト腱細胞によるI型コラーゲンおよび接着分子β1−インテグリンの発現を判定することであった。
【0088】
I型コラーゲンは、腱でも靭帯でも見られ、それらの張力に対する抵抗に関与する。健康な腱は、主としてI型コラーゲンを含み、少量のIII型コラーゲンを含む。しかし、腱症という問題においては、例えば、コラーゲンの一部が失われると、その構造はIII型コラーゲンを合成することにより修復される(不完全な腱構造)。そのため、再生過程においてIII型コラーゲンがI型コラーゲンに置き換えられることが望ましい。
【0089】
β1−インテグリンは、細胞が細胞外マトリックスと結合し、反応すること(接着)ができるようにする膜受容体である。そのため、β1−インテグリンは、腱細胞の増殖特性、分化特性および生存特性を維持することが必要である。
【0090】
<実施例5の材料と方法>
実施例1に記載の手順に従って、十分な量の単層腱細胞を調製した。次いで、1ウェル当たりおよそ5,000腱細胞を8−ウェルNunc培養プレートに播種した。腱細胞を、10%FCS、DMEM/Ham−12(50/50)(Ham−12を含む「ダルベッコ改変イーグル培地」)、50IU/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、25μg/mLのアスコルビン酸、2.5μg/mLのアムホテリシンB、1%グルタミンおよび1%必須アミノ酸で作製した培地を用いて一晩インキュベートした。翌日、細胞を無血清培地(0.5%FCS)で3回洗浄し、この同じ無血清培地とともに30分間インキュベートした。アッセイする化合物Ic(この化合物を3つの濃度:200μg/mL、1,000μg/mLおよび3,000μg/mLにおいてアッセイした)を加え、細胞を、無血清培地(0.5%FCSのみ)を用いてインキュベートした。対照およびIGF−1(10ng/mL)の培養も無血清培地を用いて行った。1時間のインキュベーション後に、細胞をPBSで3回洗浄し、メタノールで室温にて10分間固定した。
【0091】
免疫蛍光標識では次の手順を用いた:細胞をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)+1%BSA(ウシ血清アルブミン)とともに30分間インキュベートし、一次抗体をPBS+1%BSAで1:50希釈し(I型コラーゲン、Chemicon、PAB;β1−インテグリン、Sigma、MAB)、細胞を一次抗体とともに湿式チャンバー内で37℃でインキュベートした(2時間 MAB、1時間 PAB)。続いて、細胞を攪拌しながらPBSで洗浄し、二次抗体をPBS+1%BSAで1:50希釈した(FITC−GAMまたはFITC−GAR、Dianova)。細胞を二次抗体とともに湿式チャンバー内で2時間インキュベートした。この後、細胞を(光の不在下で)攪拌しながらPBSで洗浄し、Mowiol封入剤(Fluka)で処理した。その後、それらを蛍光顕微鏡で検査した。
【0092】
<実施例5の結果>
図6から見出されるように、腱細胞は、化合物Icの存在下での1時間の培養後もI型コラーゲンを発現し続ける。対照(図5)との相違は認められない。
【0093】
図8は、化合物Icの存在下での1時間の培養後の接着分子β1−インテグリンの発現を示している。対照(図7)との相違は認められない。
【0094】
判定の全てにおいて、細胞が健康な腱細胞の典型的な細長い形態を維持することが観察された。
【0095】
<実施例6:ヒト腱細胞をコンドロイチン硫酸と化合物Icの混合物とともにインキュベートした後の免疫蛍光によるI型コラーゲンおよびβ1−インテグリンの判定>
実施例5に記載した手順に従ったが、この際、1ウェル当たり2,500腱細胞を播種した。コンドロイチン硫酸と化合物Icの混合物(CS/Ic)を500/500μg/mLの濃度でアッセイした。
【0096】
<実施例6の結果>
腱細胞は、コンドロイチン硫酸と化合物Icの混合物とともに1時間の培養後にも、I型コラーゲンおよび接着分子β1−インテグリンを発現し続けた。対照(CS/Ic混合物の不在下でインキュベートした健康なヒト腱細胞)との相違は認められなかった。
【0097】
判定の全てにおいて、腱細胞が健康な腱細胞の典型的な細長い形態を維持することが観察された。
【0098】
<実施例7:コンドロイチン硫酸と化合物Icの錠剤>
従来の方法に従って錠剤を調製した。
1錠剤当たりの有効成分含量:
コンドロイチン硫酸、ナトリウム塩 400.0mg
化合物Ic 400.0mg
【0099】
<実施例8:コンドロイチン硫酸と化合物Icの注射可能物質>
従来の方法に従って2mLの注射用製剤を調製した。
1mL当たりの有効成分含量:
コンドロイチン硫酸、ナトリウム塩 75mg/mL
化合物Ic 75mg/mL
【0100】
<実施例9:ヒアルロン酸と化合物Icの注射可能物質>
従来の方法に従って2mLの注射用製剤を調製した。
1mL当たりの有効成分含量:
ヒアルロン酸ナトリウム 5mg/mL
化合物Ic 100mg/mL

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における腱、靭帯または骨の疾患、障害または損傷の治療または予防用の薬剤を調製するための、式(I)の化合物、ならびにその溶媒和物及び製薬上許容される塩の使用。
【化1】

(式中、Rは、水素、直鎖状もしくは分枝状のC−Cアルキル、10個未満の炭素原子のフェニルアルキルまたは−COCHであり、
は、水素、−COCHまたは−SOYであり、
は、水素、直鎖状もしくは分枝状のC−Cアルキル、10個未満の炭素原子のフェニルアルキル、−COCHまたは−COPh(式中、Phはフェニルである)であり、
Gは、−COORまたは−COOY(式中、Rは、水素、C−Cアルキルまたは16個未満の炭素原子のアリールアルキルである)であり、
Aは、水素、−SOH、−SOYまたは−COCHであり、
Bは、水素、−SOH、−SOY、または−COCHであり、
この際、AまたはBのいずれかは、必ず−SOHまたは−SOY(式中、Yは、有機もしくは無機カチオンである)のいずれかである。)
【請求項2】
前記薬剤が腱の疾患、前記障害または損傷の治療または予防用である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記薬剤が靭帯の疾患、前記障害または損傷の治療または予防用である請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記薬剤が骨の疾患、前記障害または損傷の治療または予防用である請求項1に記載の使用。
【請求項5】
が、水素または直鎖状C−Cアルキルであり、Gが、−COORまたは−COOY(式中、Rは、水素またはC−Cアルキルである)であり、Yが無機カチオンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
が水素であり、Rが−COCHであり、Rが水素である請求項5に記載の使用。
【請求項7】
がメチルであり、Rが−COCHであり、Rが水素である請求項5に記載の使用。
【請求項8】
Aが水素であり、Bが−SOYであり、Gが−COOY(式中、Yは無機カチオンである)である請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
Aが−SOYであり、Bが水素であり、Gが−COOY(式中、Yは無機カチオンである)である請求項6又は7に記載の使用。
【請求項10】
AおよびBが−SOYであり、Gが−COOY(式中、Yは無機カチオンである)である請求項6又は7に記載の使用。
【請求項11】
式(I)の化合物が、次式で表される請求項8に記載の使用。
【化2】

【請求項12】
式(I)の化合物が、次式で表される請求項9に記載の使用。
【化3】

【請求項13】
式(I)の化合物が、次式で表される請求項10に記載の使用。
【化4】

【請求項14】
前記靭帯が関節靱帯である請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記靭帯が歯周靱帯である請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記骨が歯周骨である請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記薬剤がグリコサミノグリカンをさらに含む請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記グリコサミノグリカンがコンドロイチン硫酸である請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記グリコサミノグリカンがヒアルロン酸である請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記薬剤がイヌリンポリ硫酸をさらに含む請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記薬剤が成長因子をさらに含む請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記成長因子がIGF−1である請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記薬剤が、腱細胞、エピテノン細胞(epitenon cell)、靭帯細胞、歯周靱帯繊維芽細胞、セメント芽細胞、骨芽細胞、骨細胞および幹細胞からなる群より選択される細胞をさらに含む請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記疾患、障害または損傷が、腱症、腱炎、リウマチ様腱炎、腱鞘炎、腱滑膜炎、パラテノン炎(paratenonitis)、骨損失、歯周炎、歯周炎に関連する歯肉炎および任意の靭帯病からなる群より選択される請求項1〜23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記薬剤が経口投与に適している請求項1〜22,24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記薬剤が病変内投与に適している請求項1〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
前記薬剤が病変部周囲投与に適している請求項1〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記薬剤がインプラントによる投与に適している請求項1〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
前記薬剤が、露出した腱、靭帯または骨への局所投与に適している請求項1〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
請求項1に記載の式(I)により表される化合物とグリコサミノグリカンを含む医薬組成物。
【請求項31】
前記グリコサミノグリカンがコンドロイチン硫酸である請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記グリコサミノグリカンがヒアルロン酸である請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項33】
請求項1に記載の式(I)により表される化合物とイヌリンポリ硫酸を含む医薬組成物。
【請求項34】
請求項1に記載の式(I)により表される化合物と成長因子を含む医薬組成物。
【請求項35】
前記成長因子がIGF−1である請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
請求項1に記載の式(I)により表される化合物と、腱細胞、エピテノン細胞、靭帯細胞、歯周靱帯繊維芽細胞、セメント芽細胞、骨芽細胞、骨細胞および幹細胞からなる群より選択される細胞を含む医薬組成物。
【請求項37】
式(I)の化合物が、次式で表される請求項30〜36のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【化5】

【請求項38】
式(I)の化合物が、次式で表される請求項30〜36のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【化6】

【請求項39】
式(I)の化合物が、次式で表される請求項30〜36のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【化7】

【請求項40】
哺乳類における腱、靭帯または骨の疾患、障害または損傷の治療または予防に使用するための、請求項1において定義した、式(I)の化合物、またはその溶媒和物もしくは製薬上許容される塩。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−529972(P2010−529972A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511563(P2010−511563)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055959
【国際公開番号】WO2008/151898
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(506041707)バイオイベリカ ソシエダッド アノニマ (6)
【Fターム(参考)】