説明

腸内投与のための担体

生理活性化合物の腸内投与に使用される担体が提供され、該担体は、1つ以上の電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体の有効量を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性化合物の腸内投与のために使用される担体に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、知識に関する書類、行為または項目が参照または考察される場合、この参照または考察は、該知識に関する書類、行為または項目が、優先日において、一般常識の一部であったか;または本明細書が関与する問題を解決しようとする試みに関連することが知られていたことを自白するものであると解釈されるべきではない。
【0003】
ドラッグデリバリーにおける主要な目的は、所望の作用部位において適切な生物学的効果を得ることである。製剤が標的作用部位における薬物の放出を可能とする正しい生理化学的性質を有さない場合に、薬物の生理活性は不十分なものとなるため、製剤の選択は、薬物の有効性にとって重要である。
【0004】
薬物は、通常、腸内または腸管外として分類される異なる形態で表される。腸内とは、胃腸(GI)管を通って体内に入ることを含む投与形態をさす。腸管外とは、GI管を含まないすべての投与形態をさす。この分類は、GI管が、腸管外経路では生じない特異的な薬物動態に関する問題、特に肝臓を通る初回通過代謝を導入するという事実を強調する。一般に、以下の表に例解するように投与形態は著しく異なる。
【0005】
【表1】

【0006】
腸内送達は、薬物が吸収されそして血流を介して標的作用部位に分配されるGI管を介して薬物を投与することを含む。経口で送達された薬物は、小腸を通って吸収され、頬側に送達された薬物は口を通って吸収され、そして直腸に送達された薬物は直腸を通って吸収される。
【0007】
経口送達は、GI管の正常な消化過程に依存する。経口薬物製剤が飲み込まれたら、それは食道を通って胃へ移動する。胃は以下の3つの任務:(1)胃の上部が弛緩しそして大量の飲み込まれた物質を受容することを必要とする、格納;(2)胃の下部がその筋肉作用によって飲み込まれた物質と消化液を混合することを必要とする、飲み込まれた物質と消化液の併合;及び(3)その内容物をゆっくりと小腸へ空けること、を有する。(主にその脂肪及びタンパク質含量である)食物の性質並びに胃及び小腸を空にする筋肉作用の程度を含む、いくつかの因子が胃を空にすることに影響する。食物が小腸中で消化され、そして膵臓、肝臓及び小腸からの分泌液中に溶解されるため、小腸の内容物は混合され、そしてさらなる消化を可能とするために先に押し進められる。最後に、すべての消化された栄養分は腸壁を通って吸収される。未消化の物質は、結腸中へ推し進められ、そして排泄される。標的部位への薬物送達/標的部位からの除去の速度を制御する正常な消化過程は、(1)胃が薬物を小腸中へ空けるとき、及び(2)吸収の前に腸管中で費やす時間である。あいにく、これらの過程は制御することができない。しかしながら、食物の前、後または食物とともに薬物を摂取するように患者に指導することによって、これらの過程の効果を最適化することができる。
【0008】
GI管の化学的環境も経口薬物送達に重要である。薬物は、GI管の様々な部分の異なるpHにおいて安定な形態でなくてはならない。薬物が非吸収性の錯体を形成するかまたは化学的または酵素的に分解される場合、これは吸収を低下させるであろう。薬物は吸収されるために、胃腸液中に溶解してもいなければならない。薬物の沈殿作用は、薬物が固体粒子を形成し、そして溶液中からなくなることを含む。管腔の固体粒子上への吸着は、固体が薬物を吸着し、すなわち、薬物を溶液から除去することを含む。沈殿作用及び吸着のどちらも薬物の吸収を減少させる。多くの場合、分解及び錯体形成は、それらが薬物取り込みを制限しないように、化学的または製剤的アプローチによって避けることができるかまたは少なくとも最小化することができる。
【0009】
さらに、薬物が腸または胃の壁を通って吸収される場合、それは次に肝臓を通過しなくてはならない。肝臓は、体から外来性化合物を除去するように設計されている。結果として、かなりの比率(例えば、40〜50%)の薬物が血流に到達する前に代謝され、そして排泄されることができる。口の内側(頬側/舌下)または直腸の内側(坐剤)を通って薬物を吸収させることによって、腸内投与に対する肝臓の影響を減少させることができるが、これらの経路は常に適切であるとは限らない。
【0010】
薬物の標的作用部位への送達における薬物製剤の役割は、無視してはならない。どんな薬物でも、製剤の改変によってそのバイオアベイラビリティーをかなり変化させることができる。GI管から吸収されるためには薬物は溶液中になくてはならないため、薬物のバイオアベイラビリティーは以下の順番:溶液>懸濁液>カプセル>錠剤>被覆錠剤で減少することが予想される。いつもこの順番ではないかもしれないが、これは有用な指針である。
【0011】
腸内投与された生理活性化合物のバイオアベイラビリティーを改善する試みは、硫酸モルヒネなどのプロドラッグの形成または吸収を改善する賦形剤の使用のいずれかを含む。生理活性化合物のバイオアベイラビリティーをさらに改善する腸内製剤がなお必要とされている。
【発明の開示】
【0012】
発明の要約
電子移動剤(electron transfer agent)のホスフェートを含む担体組成物が腸内投与された生理活性化合物の有効性を増加させることが発見された。
【0013】
本発明の第一の側面によれば、生理活性化合物の腸内投与に使用されるための担体が提供され、該担体は1つ以上の電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体の有効量を含む。
【0014】
本発明の第二の側面によれば、腸内投与された生理活性化合物の有効性及び輸送を改善するための方法が提供され、該方法は、生理活性化合物を1つ以上の電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体の有効量を含む担体と併合するステップを含む。
【0015】
好ましくは、電子移動剤のホスフェート誘導体は、トコフェロールのホスフェート誘導体、トコトリエノールのホスフェート誘導体及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0016】
本発明はまた、トコフェロールまたはトコトリエノールのホスフェート誘導体などの1つ以上の電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体の有効量と他の賦形剤の、生理活性化合物の腸内投与のための担体の製造における使用も提供する。
【0017】
本発明はまた、1つ以上の生理活性化合物、及びトコフェロールまたはトコトリエノールのホスフェート誘導体などの1つ以上の電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体の有効量を含む担体を含む腸内投与用医薬組成物も提供する。
【0018】
本発明の第三の側面によれば、腸内投与された生理活性化合物の有効性及び輸送を改善する方法も提供され、ここで、該方法は、生理活性化合物を、電子移動剤のホスフェート誘導体の1つ以上の錯体の有効量を含む担体と併合するステップを含む。
【0019】
本発明の第四の側面によれば、生理活性化合物の腸内投与において使用される担体が提供され、ここで、該担体は、電子移動剤のホスフェート誘導体の1つ以上の錯体の有効量を含む。
【0020】
本発明の1つの好ましい態様においては、担体及び生理活性化合物は腸溶性コーティングによって保護された形態である。腸溶性コーティングは、胃の中(低pH)で不溶性であり、かつ、唾液中の酵素に対して持ちこたえなければならないが、胃の直後の6を越えるpHの吸収部位において分解しなくてはならない。典型的には、コーティングは、セルロースエーテル、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコールなどの水溶性ポリマーである。腸溶性コーティングの利益は、それが、担体及び生理活性化合物がお互いに吸収部位において近接しており、そしてしたがって生理活性化合物の有効性および輸送に対する担体の効果を最大化する可能性を増加させることである。例えば、錠剤またはカプセルは腸溶性コーティングを有することができ、あるいは機能性食品は腸溶性コーティングを有するマイクロカプセル化粒子を含むことができる。
【0021】
「担体」という用語は、本明細書中において、すべての形態の腸内投与を含むように使用される。それは、ピル、錠剤、カプセル、液体製剤、機能性食品、栄養補助食品、ロゼンジ、坐剤を含むが、これらに限定されない。
【0022】
「有効量」という用語は、本明細書中において、患者によって表される1つ以上の症状の減少に対して測定可能に有効である量の生理活性化合物が吸収されることを支援する、電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体の量を意味する。有効量は、担体の総重量の99.99%以下の範囲であることができる。当業者は、実際の量が生理活性化合物に依存して変動することを理解するであろう。有効量は、生理活性化合物の治療域内の該生理活性化合物の量を送達するのに十分であろう。使用される有効量は、電子移動剤のホスフェート誘導体が、可溶化特性または界面活性などの製剤の性質を支援するために使用されるか否かにも依存するであろう。電子移動剤のホスフェート誘導体が溶解剤として作用する場合、有効量は、製剤中の薬物の濃度に依存し、40%〜90%w/w、好ましくは45〜75%w/w、より好ましくは50〜60%w/wの範囲であることができる。電子移動剤のホスフェート誘導体が可溶化特性に必要でない場合、有効量は、0.01〜20%w/w、好ましくは1〜15%w/w及びより好ましくは5〜10%w/wの範囲であることができる。
【0023】
好ましくは(可溶化特性が必要でない場合)、電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体の有効量は、担体の総重量の0.1〜10%w/wの範囲にある。より好ましくは、5〜10%の範囲、そして最も好ましくは7.5%w/wである。
【0024】
「電子移動剤」という用語は、本明細書中において、リン酸化されることができ、そして、(非リン酸化形態において)1つの電子を受容して比較的安定な分子ラジカルを生成するか又は2つの電子を受容して化合物が可逆的な酸化還元系に参加することを可能とすることができる、化学物質のクラスを意味するために使用される。リン酸化されることのできる電子移動剤化合物のクラスは、エナンチオマー及びラセミ体のアルファ、ベータ、ガンマ及びデルタトコフェロールを含むヒドロキシクロマン;電子移動剤K1及びユビキノンの還元された形態であるキノール;レチノールを含むヒドロキシカロテノイド;カルシフェロール及びアスコルビン酸を含む。好ましくは、電子移動剤は、トコフェロール及び他のトコール、レチノール、電子移動剤K1、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる。
【0025】
より好ましくは、電子移動剤は、トコール及びそれらの混合物から成る群から選ばれる。トコールは、6:ヒドロキシ2:メチルクロマン(以下の構造を参照のこと)のすべての誘導体の異性体、ここで、R1、R2及びR3は、水素またはメチル基であることができ、すなわち、α−5:7:8トリ−メチル;β−5:8ジ−メチル;γ−7:8ジ−メチル;及びδ8メチル誘導体、を含む。トコフェロール中では、R4は、4:8:12トリ−メチルトリデカンによって置換され、2、4及び8位(*を参照)はRまたはS活性を有する立体異性体或いはラセミ体であることができる。トコトリエノール中では、R4は、4:8:12トリ−メチルトリデカ−3:7:11トリエンで置換され、2位はRまたはS立体異性体あるいはラセミ体として立体的に活性であることができる。最も好ましくは、電子移動剤は、α−トコフェロールまたはトコトリエノールである。
【0026】
【化1】

【0027】
「ホスフェート誘導体」という用語は、本明細書中において、リン酸化された電子移動物質の酸形態、ナトリウム、マグネシウム、カリウム及びカルシウムなどの金属塩を含むホスフェートの塩、及びホスフェートプロトンがエチルまたはメチル基或いはホスファチジル基などの他の置換基で置換されている任意の他の誘導体を意味するために使用される。該用語は、特にリン酸化反応により生じたものであるホスフェート誘導体の混合物、並びにホスフェート誘導体それぞれ単独を含む。例えば、該用語は、モノ−トコフェリルホスフェート(TP)及びジ−トコフェリルホスフェート(T2P)の混合物並びにTP及びT2Pそれぞれ単独を含む。好適な混合物は、国際特許出願PCT/AU01/01475中に記載されている。
【0028】
好ましくは、1つ以上の電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体は、モノ−トコフェリルホスフェート、ジ−トコフェリルホスフェート、モノ−トコトリエニルホスフェート、ジ−トコトリエニルホスフェート及びそれらの混合物から成る群から選ばれる。最も好ましくは、1つ以上の電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体は、モノ−トコフェリルホスフェート、ジ−トコフェリルホスフェート、モノ−トコトリエニルホスフェート及びジ−トコトリエニルホスフェートのうちの1つ以上の混合物である。
【0029】
いくつかの状況においては、増加した水溶解性などのさらなる性質が好ましい場合、ホスファチドなどのホスフェート誘導体を使用することが必要であるかもしれない。ホスファチジル誘導体は、有機ホスフェートのアミノアルキル誘導体である。これらの誘導体は、R1R2N(CH2)nOHの構造を有するアミンから調製されることができ、ここで、nは1及び6の間の整数であり、R1及びR2はHまたは炭素数3以下の短いアルキル鎖のいずれかであることができる。R1及びR2は、同じまたは異なっても良い。ホスファチジル誘導体は、電子移動剤のヒドロキシルプロトンを、次にエタノールアミンまたはN、N'ジメチルエタノールアミンなどのアミンと反応して電子移動剤のホスファチジル誘導体を生成するホスフェートで置換することによって調製される。ホスファチジル誘導体の1つの調製方法は、ピリジンまたはトリエチルアミンなどの塩基性溶媒をオキシ塩化リンとともに使用して、中間体を調製し、これをアミンのヒドロキシ基と反応させて、PコリルPトコフェリルジハイドロゲンホスフェートなどの対応するホスファチジル誘導体を生成する。
【0030】
いくつかの状況においては、改善された安定性または送達性などのさらなる性質が有用であるかもしれない場合、電子移動剤のホスフェート誘導体の錯体も利用されることができる。「ホスフェート誘導体の錯体」という用語は、電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体と、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸及び本明細書中に参考文献として援用されている国際出願PCT/AU01/01476に開示されたこれらのアミノ酸に富むタンパク質から成る群から選ばれる1つ以上の錯化剤との反応生成物を意味する。
【0031】
好ましい錯化剤は、アルギニン、リジン及び以下の式:
【化2】

{式中、
R1は、直鎖または分岐鎖の、C6〜C22の混合アルキルラジカル及びそれらの誘導体から成る群から選ばれ;
R2及びR3は、独立して、H、CH2COOX、CH2CHOHCH2SO3X、CH2CHOHCH2OPO3X、CH2CH2COOX、CH2COOX、CH2CH2CHOHCH2SO3X、及びCH2CH2CHOHCH2OPO3Xから成る群から選ばれ、かつ、XはH、Na、Kまたはアルカノールアミンであり、ただし、R2及びR3が両方ともHであることはなく;かつ
R1がRCOである場合、R2はCH3であってよく、かつR3は(CH2CH2)N(C2H4OH)-H2CHOPO3であってよい、またはR2及びR3は一緒になってN(CH2)2N(C2H4OH)CH2COO-であってよい。}
により表される3置換アミンからなる群から選ばれる。
【0032】
好ましい錯化剤は、アルギニン、リジンまたはラウリルイミノジプロピオン酸であり、ここで、錯体形成はアルカリ性窒素中心とリン酸エステルの間で起こり、安定な錯体を形成する。
【0033】
「生理活性化合物」という用語は、本明細書中において、医学または獣医学的適用において、ヒトまたは動物において生物学的効果を有する化合物を意味するために使用される。生理活性化合物は、医薬、栄養補助食品、薬物、ビタミン、植物化学物質、薬用化粧品、栄養補助食品、栄養剤及び予防または治療のためのヒトまたは他の動物の処置に有用な他の健康補助剤(health supplement)を含む。生理活性化合物の例は、モルヒネ及びレボルファノールなどの麻薬性鎮痛薬、コデイン及びアセトアミノフェンなどの非麻酔性鎮痛薬、コルチゾンなどのコルチコステロイド、プロポフォールなどの麻酔剤、スコポラミンなどの制吐薬、アドレナリン及びドパミンなどの交感神経模倣薬、ホスフェニトインなどの抗てんかん薬、イブプロフェンなどの抗炎症薬、チロキシンを含む甲状腺ホルモン及び抗甲状腺薬、α−ビサボロール、オイゲノール、シリビン、大豆イソフラボンを含む植物化学物質、アウクビン及びカタルポールを含むイリドイドグリコシド、アルニカ・カミッソニス由来のシュードグアイアノリド(pseudoguaianolide)を含むセスキテルペンラクトン、ロスマリン酸及びロスマノールを含むテルペン、サリチル酸サリシン、サリゲニン及びサリチル酸を含むフェノール性グリコシド、トリテルペンタキサステロールまたはα−ラクツセロール、及びイソラクツセロール、p−ヒドロキシフェニル酢酸誘導体、タラキサコシド、アルブチンを含むヒドロキノン誘導体、ジンゲロール及びシャガオールを含むフェニルアルカノン、ヒペリシン、スタチン、及びキサントフモール、ルプロン、フムロン及び2−メチルブト−3−エン−2−オールを含むアシルフロログルシド(acylphloroglucide)を含むが、これらに限定されない。栄養剤及び栄養補助食品の例は、ホルモンの生成のための重要な前駆体分子であるビタミン、ミネラル、タンパク質、ミネラル、アミノ酸、グレープシードエキスなどの植物抽出物、エフェドリン、DHEA、イソフラボン、植物ステロール及び類似の生物物質を含む。生理活性化合物は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であることもできる。生理活性化合物は、ホスフェート誘導体を含む任意の好適な形態であることができる。
【0034】
当業者は、どの他の賦形剤が担体中に含まれることができるかを知っているであろう。他の賦形剤の選択は、生理活性化合物の特徴に依存するであろう。他の賦形剤の例は、溶媒、界面活性剤、エモリエント、保存剤などを含む。他の賦形剤の選択は、使用される投与形態にも依存するであろう。
【実施例】
【0035】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明されそして例解される。
【0036】
実施例1
この実験においては、本発明によるモルヒネ組成物の有効性を、現在使用されているモルヒネの腸内製剤である硫酸モルヒネの有効性と比較した。効果を、ラットが熱に応答してその肢を引っ込めるのにかかる時間を、モルヒネを投薬した場合としない場合で比較することによって測定した。
【0037】
材料
動物:それぞれ体重350〜450グラムの9匹の意識のあるSprague-Dawleyラット
処置群:
1.対照:水
2.硫酸モルヒネ
3.TPmとモルヒネ:水(59%)及びトコフェリルホスフェート(27%)(TPm )混合物を含む担体中のモルヒネHCl(14%)。TPmはモノ−トコフェリルホ スフェートとジ−トコフェリルホスフェートを含んだ。
製剤2及び3を、水で希釈し、最終モルヒネ濃度を5mg/mlとした。例えば、0.357グラムの製剤3を0.643グラムの水と混合して最終モルヒネ濃度5%をえた。そして、この液体製剤を強制経口投与(胃の中へのチューブ)によって送達した。
【0038】
方法
実験では、3つの群に分けた9匹のラットを使用した。最初の処置の後、ラットを休ませ、そして各群に異なる処置をした。各ラットが3回の処置をそれぞれ受けるまで、該プロセスをもう一回繰り返した。
【0039】
水、硫酸モルヒネ及びモルヒネとTPmを強制経口投与によって5mg/kg体重の濃度で与えた。鎮痛試験を1、2、4及び6時間で実施し、そして、各時点で(同じ肢を用いる場合には、少なくとも5分休ませて)引っ込め潜時を各ラットについて3回測定した。
【0040】
実験小動物における鎮痛レベルの迅速かつ有効なスクリーニングのために設計された、足底無痛覚計を使用した。該装置は、動物の後ろ足に熱源(赤外線ライトからの約45℃)を適用し、熱源から足を引っ込めるのにかかる時間を測定した(肢引っ込め潜時)。熱源(プレート)は、一定の表面温度を提供した。それは、0.1℃の精度のビルトインデジタル温度計及び0.1秒の精度のタイマーを有した。動物をホットプレート上に置き、プレートを取り囲む透明のアクリルケージによって拘束し、そして肢引っ込め反応をモニターした。肢の引っ込め反応前の時間の増加は、鎮痛を示す。各動物を各時点において、3回測定した(すなわち、1匹のラットに、各時点においてその後ろ足に3回熱を適用した)。
【0041】
結果を図1に例解する。硫酸モルヒネ及びトコフェリルホスフェート担体中のモルヒネはどちらも、鎮痛を示す潜時の増加を引き起こした。トコフェリルホスフェート担体中のモルヒネは、硫酸モルヒネよりも長い時間維持された、より長い潜時を引き起こした。すなわち、本発明の担体中に製剤されたモルヒネは、経口投与後2時間まで持続する鎮痛効果を提供したが、硫酸モルヒネは最初の1時間しか鎮痛効果を提供しなかった。グラフの点上の標準誤差のバーは、水性硫酸モルヒネとモルヒネTPm製剤が同様に活性であった1時間の時点以外は重複していない。より後の時点については、モルヒネTPm製剤は持続的な鎮痛を与えた。
【0042】
統計学的分析:硫酸モルヒネとモルヒネTPm製剤との比較
・60分において t=2.598(p<0.02)
・120分において t=4.815(p<0.0005)
・240分において t=4.351(p<0.001)
・360分において t=3.094(p=0.005)
【0043】
結論
TPm担体の使用は、同量のモルヒネを硫酸モルヒネ製剤として使用するよりもより長い時間にわたって持続的な鎮痛を提供した。結果は1時間の時点では有意でなかったにもかかわらず、TPm製剤は後のすべての時点において統計学的に有意であった。
【0044】
実施例2
この実施例は、以下の製剤中で投与されたCoQ10のモルモットにおけるバイオアベイラビリティーを調査する:
A. CoQsol
B. MCT中、CoQsol+TPM
C. MCTオイル(対照)
【0045】
材料と方法
製剤
モノトコフェリルホスフェート(TP)及びジトコフェリルホスフェート(T2P)を2:1w/w比で含むトコフェリルホスフェート混合物(TPM)をPhosphagenics Ltdが調製した。
CoQsolをDoctor's Trust Vitamins, U.S.A.から購入した。
中鎖トリグリセリド(MCT)をAbitec Corp, U.S.A.が製造した。
【0046】
製剤は以下のものから成る:
A. CoQsol:各ソフトゲルカプセルは、60mgのCoQを、0.44mlの体積と測定されたピルの油性成分とともに含む。したがって、CoQの濃度は、60mg/0.44ml=136mgCoQ/mlのカプセル内容物である。CoQsol製剤1ミリリッターは、136IUのd-α‐トコフェロール及び3705IUのビタミンAを含む。賦形剤は、ぬか油、ゼラチン、グリセリン、水、蜜蝋、アナトーエキス及び二酸化チタニウムである。
B. CoQsol+TPM:製剤を、処置群の体重に対して同じ体積で、すなわち、体重1kgあたり約0.21mlの体積で30mg/kgが投与されるような濃度のCoQで調製した。製剤1mlはCoQ及びTRMをそれぞれ140mg/mlで、MCTを希釈剤として一緒に含んだ。
C. MCT:(ビヒクル):対照群は0.21ml/kg体重のMCTを受容した。
【0047】
動物
成体の雌性モルモットをAnimal Services, Monash Universityから購入し、処置開始前の最低5日間、Departmental Animal Houseに環境順化させた。動物を無作為に処置群(n=10)に割り当て、特有の識別マーカーをそれらの背中につけ(クリップをつけた毛および色コード)、そして約1×4mのサイズの環境富化した囲いの中に群として入れた。CoQsol処置群の平均体重は、第0日で0.795kgであった。CoQsol+TPM処理群の平均体重は、第0日で0.746kgであった。対照群の平均体重は第0日で0.796kgであった。
【0048】
食餌及び水:ウサギ及びモルモット用標準実験用ペレット(Barastoc, Australia)。水は自由に提供した。
【0049】
投薬経路及び方法:デリバリーシリンジに取付けたプラスチックカニューレを用いる強制経口投与によって、約0.21ml/kg体重の体積を動物に投薬した。
【0050】
方法
CoQsolの用量:30mg/kg体重/日
TPMの用量:30mg/kg体重/日
投薬計画:1日1回
投薬期間:26日
【0051】
体重を毎週測定した。
処置期間の完了時に、CO2ガスを用いてモルモットを窒息死させた。心臓穿刺により血液をヘパリン加採集管中に移し、そして血漿を分離するために遠心分離して、CoQの抽出まで−80℃で保存した。
【0052】
CoQの抽出及びHPLCによる分析は、本質的にAberg et al,. (1992) "Distribution and redox state of ubiquinones in rat and human tissues" Arch. Biochem. Biophys. 295:230-34の方法にしたがって実施した。
【0053】
CoQ10及びCoQ9の増加したレベルは、増加したバイオアベイラビリティー及び取り込みの指標である。モルモットはCoQ(9及び10)の両方の形態を合成できるため、CoQ9及びCoQ10の両方を測定した。したがって、CoQ10の投与がインビボで両方のレベルを増加させることができるため、両方の形態のレベルを評価することが重要である。
【0054】
結果:
血漿中のCoQ10及びCoQ9濃度
【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
上記の結果は、いかなる統計学的情報も含まない、なぜなら、微量栄養素の研究の分野で知られているとおり、それぞれの動物は異なるCoQ10要求性をもっており、そして必要とされるときに吸収されるだけであることによって、動物間には常に顕著な変動があるからである。大きな動物間の変動は、大きな標準偏差の値に導き、これは結果の有意性を正確に反映しない。
【0058】
図2は、サンプルをHPLCにかける前に血漿中CoQ10及びCoQ9の分析において得られた標準曲線を示す(r2が1に近いほど結果は正確である)。
【0059】
考察
図2及び上記の表における結果は、血漿中のCoQレベルが、CoQsolのみで処置した動物または対照よりもCoQsol+TPMで処置した動物において高いことを示す。これは、トコフェリルホスフェート混合物が、CoQ10のバイオアベイラビリティーを増加させることを例解している。「含む」という用語とこの説明及び請求項中で使用される「含む」という用語の形態は、権利請求された発明からいかなる変更または付加も除外するものではない。
【0060】
本発明の修飾及び改善は、当業者に容易に明らかとなるであろう。かかる修飾及び改善は、本発明の範囲内にあると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】硫酸モルヒネ5mg/kg、硫酸モルヒネと本発明のトコフェリルホスフェート担体、5mg/kg及び対照の、ラットにおいて3時間にわたって試験した肢引っ込め潜時に対する効果。
【図2】CoQ10及びCoQ9の標準曲線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸内投与された生理活性化合物の有効性及び輸送を改善する方法であって、該生理活性化合物を、1つ以上の電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体の有効量を含む担体と併合するステップを含む、前記方法。
【請求項2】
前記電子移動剤が、エナンチオマー及びラセミ体のアルファ、ベータ、ガンマ、及びデルタトコールを含むヒドロキシクロマン;電子移動剤K1及びユビキノンの還元形態であるキノール;レチノールを含むヒドロキシカロテノイド;カルシフェロール及びアスコルビン酸から成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子移動剤が、トコフェロール及び他のトコール、レチノール、電子移動剤K1及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電子移動剤が、トコール及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電子移動剤のホスフェート誘導体が、トコフェロールのホスフェート誘導体、トコトリエノールのホスフェート誘導体及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電子移動剤のホスフェート誘導体が、モノ−トコフェリルホスフェート、ジ−トコフェリルホスフェート、モノ−トコトリエニルホスフェート、ジ−トコトリエニルホスフェート及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ホスフェート誘導体が、ホスフェート、ホスファチド、ホスフェート錯体及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記併合された担体及び生理活性化合物を腸溶性コーティングで保護するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記生理活性化合物がモルヒネである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記生理活性化合物がコエンザイムQ10である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
生理活性化合物の腸内投与に使用される担体であって、1つ以上の電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体を含む、前記担体。
【請求項12】
1つ以上の電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体の有効量と他の賦形剤の、生理活性化合物の腸内投与に使用するための担体の製造における使用。
【請求項13】
腸内投与用の医薬組成物であって、1つ以上の生理活性化合物及び1つ以上の電子移動剤の1つ以上のホスフェート誘導体の有効量を含む担体を含む、前記医薬組成物。
【請求項14】
腸内投与される生理活性化合物の有効性及び輸送を改善する方法であって、前記生理活性化合物を、電子移動剤のホスフェート誘導体の1つ以上の錯体の有効量を含む担体と併合するステップを含む、前記方法。
【請求項15】
生理活性化合物の腸内投与に使用される担体であって、電子移動剤のホスフェート誘導体の1つ以上の錯体の有効量を含む、前記担体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−508326(P2008−508326A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524135(P2007−524135)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001159
【国際公開番号】WO2006/012692
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(503129590)バイタル ヘルス サイエンシズ プロプライアタリー リミティド (11)
【Fターム(参考)】