説明

腸洗浄方法

【課題】診断検査または外科手術を可能にするために哺乳動物の腸及び結腸を十分に洗浄する方法を提供する。
【解決手段】刺激性緩下剤と浸透圧性緩下剤との組み合わせによって、少量の液体投入量で、腸および結腸が安全かつ有効に洗浄される。経口刺激性緩下剤(例えば、ビサコジル)を患者に投与し、生物学的に決められた間隔の後に少量のPEG水溶液を投与すると、典型的には、多量の等張洗浄液または少量の高張洗浄液の摂取後に起こる、多量の制御不能な下痢を引き起こすことなく、診断的大腸内視鏡検査のための準備において腸および結腸が洗浄される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
今や、本発明者らは、患者の腸(特に、診断手順または外科手術手順の前の結腸)を安全かつ有効に洗浄するのに使用することができる新規の方法を発見している。
【背景技術】
【0002】
背景情報
臨床的な優先順位が高い結腸直腸癌(CRC)を早期検出するために何年も臨床研究がなされてきたが、この疾患は、依然として、米国における2番目に大きな癌関連死因である。1999年、CRCが原因で推定60,000人が死亡し、CRCはその年の3番目に多い新規癌症例を占めた。それより多い数は、男性の場合、前立腺癌および呼吸器癌、女性では、乳癌および呼吸器癌にしか見られない。研究者らは、1999年のみで129,000件の新規症例があったと推定している。従って、米国において、CRCを発症する生涯リスクは18人に1件である。
【0003】
早期癌または前悪性ポリープを検出することによって死亡率を下げることができるスクリーニング法の成功にもかかわらず、対象となる患者の約30%しかスクリーニングされない。この低いスクリーニング率の理由には、これらの手順を奨励し、受け入れ、そのお金を払うことへの医師、患者、および医療提供者の抵抗が含まれる。このことは、つい最近、2002年7月10日に、連邦政府レベルで認識された。この時、米国上院委員会は、50歳もしくはそれ以上の人またはこの疾患を発症するリスクの高い人における結腸癌検出のための大腸内視鏡検査および他の検査を保険の対象とするように、米国の全ての民間健康保険に求めることを可決した。
【0004】
大腸の外科手術手順または診断検査を受けている患者には、通常、この手順の前に腸から糞便が全て十分に無くなるように準備が行われる。これは、例えば、可能性のある塊を診査するための外科手術または腸切除手術の間に、手術部位の汚染を最小限にするのに役立つ。さらなる目的は、例えば、結腸癌を検出するための診断検査としての内視鏡検査の間に、診断検査のために結腸の内面をきれいにすることである。
【0005】
S状結腸鏡検査、大腸内視鏡検査、X線検査、腸手術を受ける患者の準備、および腸または結腸に対する他の医学的手順または診断手順では、腸および結腸から内容物を徹底的に取り除き、きれいにすることが重要である。特に、腸粘膜を十分に視覚化するためには、可能な限りの量の糞便を結腸から取り除くことが必要不可欠である。これは、例えば、結腸の疾患があるかどうか患者をスクリーニングするために広く行われている診断検査である軟性S状結腸鏡検査または大腸内視鏡検査などの診断手順の前に重要である。さらに、満足の行く結腸X線写真を得るためには、腸を徹底的に洗浄することが重要である。同じ条件が、糞便汚物の除去が患者の安全に極めて重要な外科手術のために、結腸に手術前準備が行われる時にも適用される。
【0006】
CRC検出のための手順の中でどれが最も費用対効果が大きいかという議論が続いているが、現在、ほとんどの医師は、大腸内視鏡検査によって最も高い割合の癌が検出され、同時に内視鏡的除去の機会が得られることに同意している。内視鏡検査のために結腸を準備するために、現行の洗浄法は、食物摂取を少なくすることと、緩下剤、浣腸、坐剤、腸瀉下薬、または順行性結腸洗浄液(orthograde colonic lavage)の組み合わせを含んでいる。ポリエチレングリコール/電解質溶液(PEG-ELS, GoLYTELY(登録商標)またはSF-ELS, NuLYTELY(登録商標))を用いた順行性洗浄液が、よく処方される調製物である。これらの「調製物」は4Lの溶液からなり、患者が完了するには一般的に不快感を与えるものである。患者は、多くの場合、満腹感、悪心、痙攣、および嘔吐を訴え、時として、処方されたレジメを完了しないような重大なことを訴える。レジメの不完了は不十分な腸洗浄のよく挙げられる原因であり、これによって大腸内視鏡検査が打ち切られることが多い。大腸内視鏡検査を受け、完了しようとする患者の意欲を改善するやり方の1つは、洗浄液の体積を減らすことであろう。
【0007】
内医師および外科医は、望ましい結腸洗浄レベルを実現するために様々な手段を開発してきた。食事の制限、緩下剤、浣腸、および全腸洗浄液を単独でまたは一緒に使用することが用いられてきた。この腸洗浄法の2つの構成要素、すなわち、医学的手順を助けるきれいな結腸と、安全で、取り入れやすく、快適な「患者に優しい」結腸洗浄法は、現在の医療行為において同時に達成することができていない。医師が「最もきれいな」結腸を得るために発見し得るものは、何日もの絶食、緩下剤の使用、および患者による多量の液体の摂取が必要なものかもしれない。患者が最も快適な準備レジメと認識するものでは、十分に洗浄された結腸は得られない可能性がある。多くの場合、患者は、不便すぎるまたは不快すぎると感じる準備レジメに従わない。さらに、多くの準備は、体内の体液および電解質を乱すために健康リスクを生じさせる可能性がある。体液および電解質の乱れは有害であり、一部の患者では命にさえかかわることが知られている。結腸瀉出に現在用いられている方法が多様にあることは、その目的を達成するための理想的な手段が無いことの証拠である。必要とされているのは、非常に効果的で安全であると同時に、頻繁な検査のための服用遵守を促すために患者が忍容できる手順である。
【0008】
診断目的の胃腸洗浄液として使用するために、または下剤緩下剤として使用するために、多量経口投与組成物が開発されている。このような経口投与調製物は、通常、電解質(例えば、硫酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および塩化カリウム)の希釈液または等張液として処方される。これらの経口投与組成物は、診断目的の迅速な結腸洗浄において有用である。これらの製剤は、ポリエチレングリコールなどの他の薬剤を含むことがある。これらの製剤は、一般的に、等張液として約4リットルの量で投与されてきた。組成物の一例が、GoLYTELY(登録商標)(以下:ポリエチレングリコール59g、硫酸ナトリウム5.68g、重炭酸ナトリウム1.69g、塩化ナトリウム1.46g、塩化カリウム0.745gに従って、水1リットルに溶解して処方される) (Davis et al. Gastroenterology 1980; 78:991-995)(非特許文献1)である。
【0009】
これらの製剤を具体化している市販の製品は、時として、非吸収性浸透圧剤であるポリエチレングリコールと、患者が脱水しないように、または臨床的に重大な電解質変化を経験しないように補充用電解質の等張混合物を使用する。この溶液は等張であるので、効果的な瀉下を実現するために、これらの溶液を多量に(10分間ごとに8オンスグラス1杯まで、合計1ガロンの液体)摂取することが患者に求められる。
【0010】
このタイプの洗浄用製剤を効果的に使用するのに必要な体積の多さは、膨満、悪心、痙攣、嘔吐、および患者の重度の不快感と頻繁に関連する。従って、これらの製剤は一般的に有効であるが、忍容性は高くない。こまめな監視がなければ、多くの患者は完全な準備経過をたどらない。
【0011】
緩下剤として硫酸ナトリウムおよびリン酸塩が用いられてきた(緩下剤として使用する時には、少量(約300ml)の高濃度溶液に希釈され、食さじ大(15ml)の一日量で服用される)。この使用の一例がグラウバー塩(硫酸ナトリウムを含有する)である。しかしながら、体積が少ないために、このやり方で用いられると、診断手順または外科手術手順のために結腸は十分に洗浄されない。また、これらの少量調製物はポリエチレングリコールを含まない。多量(1ガロン)に短期間投与される、硫酸ナトリウムとポリエチレングリコールおよび様々な他の塩の組み合わせは、前記のように大腸内視鏡検査または外科手術手順の前に結腸を洗浄する有効な胃腸洗浄液である。
【0012】
これらの先行技術調製物の別の欠点は、いやな、苦く、塩からい味である。これは敏感な患者において悪心および嘔吐を促し、それによって摂取を妨げる。このいやな味を克服することは難しい。最も一般的な天然甘味料(例えば、グルコース、フルクトース、サッカロース、およびソルビトール)でさえ、これらの経口投与溶液のオスモル濃度を変えることがあり、この変化は潜在的に危険な電解質不均衡の原因となる。
【0013】
多量タイプの調製物に関連する問題を避けようとして、他の研究者らは、高濃度リン酸塩水溶液からなる摂取可能な調製物を使用している。高濃度リン酸塩水溶液は、腸の管腔内内容物に対して極めて大きな浸透圧作用を生じさせ、従って、腸の瀉出は、水および電解質が身体から結腸へ多量に流入することよって起こる。これらのリン酸塩調製物は、結腸瀉下において必要な体積を減らす目的で開発されている。このような調製物の1つは、基本的に、安定化された緩衝水溶液に溶解した480グラム/リットルのリン酸二水素ナトリウムおよび180グラム/リットルのリン酸水素二ナトリウムからなり、商品名Fleets Phospho-Soda(登録商標)で販売されている。患者は、典型的に、3〜12時間の間隔を開けて、この調製物の2(2)3オンス用量(合計6オンス(180ml))を服用することが求められる。6オンス(180ml)は、多量調製物に必要とされる大量の1ガロン体積と比較してかなり少ない。さらに、リン酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムの非水性錠剤またはカプセル製剤が用いられている(米国特許第5,997,906号(特許文献1)、同第6,162,464号(特許文献2)、および同第5,616,346号(特許文献3))。
【0014】
これらの少量の硫酸塩/リン酸塩溶液ならびに非水性製剤は、患者にとって臨床的に重大な、電解質および体液の大規模な変化を引き起こすことが示されている(US Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research, September 17, 2001(非特許文献2); 2002 Physician's Desk Reference, prescribing information for Fleet's Phospho Soda and InKine Pharmaceutical's Visicol(登録商標)(非特許文献3))。本明細書で使用する用語「臨床的に重大な」は、正常範囲の正常な上限もしくは下限を超えた血液化学的特性の変化または他の不都合な効果を表すことが意図される。これらの溶液は高浸透圧性である。すなわち、溶液の電解質濃度はヒト体内の電解質濃度よりかなり高い。Fleet's Phospho-Sodaのような入手可能な製品およびVisicol錠剤(リン酸ナトリウム塩)のような固形剤形が少量電解質調製物の例である。これらの製品は全て、患者に投与した時に、臨床的に重大な電解質の乱れおよび体液の変化ならびに心臓機能および腎臓機能の乱れを引き起こすことが分かっている(US Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research, September 17, 2001(非特許文献2))。
【0015】
少量緩下剤調製物によって起こるリスクおよび電解質の乱れを克服するために、等張性になるように多量「洗浄」液が開発された。結腸への外科手術手順または診断手順のために、このような等張洗浄液を用いて患者を準備すれば、患者における体液および電解質の変化は最小限しか起こらないだろう。GOLYTELY(登録商標)、NULYTELY(登録商標)、およびCoLyte(登録商標)は、このような多量洗浄液の例である。これらの洗浄液は等張性であるので、投与した際に、体液および電解質の変化が患者に起こったとしても、極めてわずかであり、臨床的に重大でない。
【0016】
DavisおよびFordtran(Gastroenterology 78:991-5, 1980)(非特許文献1)は、4リットルポリエチレングリコール-電解質腸洗浄液(GoLYTELY)を開発した。GoLYTELYは、大腸内視鏡検査、バリウム浣腸、および外科手術の準備において結腸を迅速に空にする手段として安全かつ有効であることが示されている。GoLYTELYは摂取されると、患者の水および電解質のバランスを最小限しか変えずに、大量の液状糞便を生じさせる。従って、患者の結腸を最大限にきれいにしたい医師は、洗浄液を「金基準(gold standard)」と呼ぶことが多い。溶液の風味を改善するために、この薬物の処方が変更されるが、多くの患者は、多量に摂取しなければならないことに嫌悪感を表している。実際に、この種の調製物によく見られる、ラベルに貼られている有害反応の多く(例えば、悪心および嘔吐)は体積効果に起因し得る。理想的には、腸洗浄の質を損ねることなく、なんとかして用量を減らし、それによって患者の快適さを高めることが望ましい。
【0017】
20年にわたる臨床研究は、PEGベースの洗浄調製物と緩下剤(最も注目に値するのは、ビサコジル)を組み合わせることによって、PEGベースの洗浄調製物の体積を減らそうと試みてきた。これらの初期の試みの多くでは、ビサコジルが添加されても、溶液の体積は4Lに維持された。他の実験では、ビサコジルも緩下剤も含まない、さらに少量のPEGベース溶液を使用する試みがなされた。一般的に、これらの試みは患者の症状を改善したが、許容可能な基準以下に大腸内視鏡検査の質を落とした。
【0018】
VilienおよびRytkonen(Endoscopy 22:168-170, 1999)(非特許文献4)は、大腸内視鏡検査のために少量GoLYTELYレジメと標準的なGoLYTELY調製物を比較した、50人の患者からなる試験を発表した。患者が受けた洗浄レジメを知らないコロノスコピストが洗浄効力を評価した。検査前日に、患者全員に10mgビサコジルを投与し、その後に流動食を与えた。次いで、検査の朝に、患者は(無作為化スケジュールに応じて)1.5リットルまたは3リットルのGoLYTELYを飲んだ。著者らは、少ない洗浄液体積を使用した時に完全な洗浄が減ったと結論付けた。しかしながら、標準的な4リットル洗浄液のみと比較して、これらの2種類の処置がどれくらい良好に腸を洗浄したかは分からない。
【0019】
他の著者らは、きれいで忍容性が良好な準備を実現するために、結腸洗浄モダリティーを組み合わせる試みをしている。Adamsら(Dis. Colon Rectum 37: 229-234, 1994)(非特許文献5)は、ビサコジルの8時間後に2リットルGoLYTELYを用いた準備と、「標準的な」4リットルGoLYTELYを用いた準備を比較した。これらの著者らは、患者が検査の28〜30時間前にビサコジルを服用し、試験前30時間以上にわたって透明な流動食になった時に、腸洗浄の質は2種類の準備の間で同等であるように見えたが、ビサコジル+2リットルGoLYTELY法の方が忍容性が高いことを見出した。しかしながら、ビサコジル+2リットルGoLYTELYを服用したが、試験前30時間以上にわたって液体に制限されなかった患者の準備は、満足のゆくものではなかった。
【0020】
結腸手術が予定されていた患者からなる同様の試験において、結腸洗浄の結果は視覚的な質が同じであると判断されたが、患者は不快感の程度の改善を全く見出さなかった(Grundel K, Schwenk W., Bohm B, and Muller JM, Dis Colon Rectum 1997 Nov; 40(11): 1348-52)(非特許文献6)。
【0021】
緩下剤と少量の洗浄液が併用された時の医師および患者の評価の良好な組み合わせは、他の試験では見出されていない。実際に、Bokemeyer(Verdauungskrankheiten, 18:17-24, 2000)(非特許文献7)は、緩下剤+少量の洗浄液が、「少量のPEG洗浄液と緩下剤(X-Prep)を併用した大腸内視鏡検査の準備によって、かなり悪い結果が得られた」原因となったことを見出した。他の失敗した試みについては、LindおよびWiig(Tidsskr Nor Laegeforen 110:1357-1358,1990)(非特許文献8)ならびにBradyおよびその他(Ann Clin Research 19:34-38,1987)(非特許文献9)の研究も参照されたい。
【0022】
洗浄液を投与した後に緩下剤を患者に投与するという代替法が試みられており、全量洗浄液を投与することに比べて患者の症状を改善しないことが見出されている(Clarkston and Smith J. Clin Gastroenterology 17:146-148, 1993)(非特許文献10)。
【0023】
最後に、緩下剤と少量PEG-ELSの同時投与は4L PEG-ELSのみと同様の洗浄を生じ、患者の症状を少なくしたが、患者は抗ガス薬(anti-gas medication)シメチコンによる前処置も受けた(Sharma et al., Gastrointestinal Endoscopy, 47(2):167-71, 1998)(非特許文献11)。
【0024】
このように、他の人の試みにもかかわらず、緩下剤による前処置と少量の洗浄液を使用した後に、患者の症状は必ずしも改善するとは限らない。この組み合わせでは、多量の洗浄液を使用した時に得られる結腸準備と同じくらい良好な結腸準備は確実に得られない。
【0025】
さらに、少量の洗浄液と緩下剤を併用して結腸を洗浄する試みがなされており、患者および医師は準備のために長期間の絶食および面倒な計画に参加する。例えば、Grundelらは、手術前2日間、透明な液体およびスープを摂取することを患者に求めた。そのため、最小限の量の洗浄液を用いて良好な結腸洗浄が得られたことは、恐らく驚くべきことではない。Adamsは、検査前28〜32時間、透明な液体のみを摂取するように患者に求めた。
【0026】
前記のように、本発明者らが発見したものは、十分な準備と改善した患者の快適さと同時に得ようとする以前の試みが失敗していることである。失敗の理由は、これらの試みが、患者への投薬における重要なパラメータ(すなわち、緩下剤の摂取と洗浄液の摂取の間の期間、および洗浄液の前の緩下剤の効果)を見落としたことである。Adamsは、検査前28〜32時間、透明な液体のみを摂取するように患者に求めた。
【0027】
前記から、過去に用いられていた2種類の結腸洗浄法は、以前の試みでは解決されなかった重大な欠点を有することが分かる。等張液は、体液または電解質の臨床的に重大な変化を引き起こさないとはいえ、必ず体積が大きく、患者が摂取するには難しい。高張液または高濃度の非水性製剤は、時として、結腸の準備に不十分であり、より重要なことには、電解質または体液の臨床的に重大な変化を引き起こし得る。電解質または体液の変化は死亡の原因になることが知られている。従って、簡単にかつ都合よく投与することができ、公知製剤の臨床的に重大な問題および不快な味を避ける、少量で経口投与される結腸瀉下剤を有することが望ましい。従来の製剤において必要な大きな体積が無く投与することができ、潜在的に刺激性の他の化学物質またはオスモル濃度に影響を及ぼす可能性のある化学物質を避ける、このような瀉下剤を有することが望ましいことも分かる。多量結腸洗浄液が出現してから約20年間、体液または電解質の変化を最小限にした、有効な少量胃腸洗浄調製物の発見は成功していなかった。多量洗浄液を少量に濃縮しても同じ効果は得られず、安全ではない。これは、成分が、必要な小さな体積に溶けないためであり、濃度が、危険な電解質変化が起こり得るような濃度であるためである。本研究の目的の1つは、少量の溶液を必要とする、安全で、有効で、かつ忍容性の高い結腸洗浄法を開発することであった。
【0028】
利用可能な結腸洗浄法は患者に最適に忍容されず、潜在的に危険な副作用を有する。今や、本発明者らは、診断手順または外科手術手順の前に、浸透圧性緩下剤(例えば、ポリエチレングリコール) を含有する少量の溶液と刺激性緩下剤を投与することによって、結腸を安全かつ有効に洗浄できることを発見している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】米国特許第5,997,906号
【特許文献2】米国特許第6,162,464号
【特許文献3】米国特許第5,616,346号
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Davis et al. Gastroenterology 1980; 78:991-995
【非特許文献2】US Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research, September 17, 2001
【非特許文献3】2002 Physician's Desk Reference, prescribing information for Fleet's Phospho Soda and InKine Pharmaceutical's Visicol(登録商標)
【非特許文献4】Vilien and Rytkonen, Endoscopy 22:168-170, 1999
【非特許文献5】Adams et al., Dis. Clon Rectum 37: 229-234, 1994
【非特許文献6】Grundel K, Schwenk W., Bohm B; and Muller JM, Dis Colon Rectum 1997 Nov; 40(11): 1348-52
【非特許文献7】Bokemeyer, Verdauungskrankheiten, 18:17-24, 2000
【非特許文献8】Lind and Wiig, Tidsskr Nor Laegeforen 110:1357-1358,1990
【非特許文献9】Brady and others, Ann Clin Research 19:34-38,1987
【非特許文献10】Clarkston and Smith J. Clin Gastroenterology 17:146-148, 1993
【非特許文献11】Sharma et al., Gastrointestinal Endoscopy, 47(2):167-71, 1998
【発明の概要】
【0031】
今や、本発明者らは、刺激性緩下剤と浸透圧性緩下剤を組み合わせて投与することによって、少量の液体投入量で、結腸が安全かつ有効に洗浄されることを発見している。
【0032】
今や、本発明者らは、まず最初に、刺激性緩下剤(例えば、ビサコジル)を、患者に腸運動を生じさせるのに十分な量で投与し、次いで、刺激性緩下剤によって腸運動を生じさせ、この腸運動後に、少量の浸透圧性緩下剤を患者に経口投与することによって、診断手順または外科手術手順のために結腸を十分に洗浄できることを理解している。
【0033】
このプロトコールを使用すると、本発明者らは、刺激性緩下剤によって促進された腸運動後に、患者がPEG水溶液を2リットルだけ摂取することで、十分な洗浄を実現できることを理解している。
【0034】
本発明者らは、このレジメによって、不快感、悪心、または嘔吐などの症状が少ししか現れずに、検査または外科手術のために結腸が十分に準備されることを理解している。
【0035】
このレジメによって、標準的な4L調製物と等価な腸洗浄が得られるが、他の2L調製物と比較して改善した洗浄が得られる。また、このレジメによって、4L調製物および他の2L調製物と比較して、患者の症状が少なくなり、準備時間が短くなった。
【発明を実施するための形態】
【0036】
例示的な態様の詳細な説明
驚くべきことに、刺激性緩下剤(例えば、ビサコジル)の後に生物学的に規定された間隔を開けて、少量の順行性洗浄液を摂取する特定のレジメによって、腸の清浄(これは医師によって判断される)、短いレジメ準備時間、および患者による手順許容の、優れた組み合わせが得られることが確かめられている。緩下剤および洗浄液のこのレジメによって、緩下剤もしくは少量の洗浄液のみ、または純粋に付加的なやり方での前記の組み合わせから予想され得るもの、または前記の特定のレジメに従わなかった場合に予想されるものより優れた結果およびこれらとは異なる結果が得られる。さらに、この方法は、単独で使用した場合より少ない体積の洗浄液の使用を可能にする。さらに、このレジメは、患者が訴える最も一般的な症状の出現を少なくする。最後に、この二様式処置は、2種類の成分のタイミングが適切に制御されている場合に最も有利であることが発見されている。この発見は、この投与計画の採用が当技術分野において以前に認められていなかった点で、まったく予想外のものである。
【0037】
この発見は、大腸内視鏡検査において使用するための改善した洗浄液-緩下剤レジメの開発中になされた。従って、これらの結果は、内科医または外科医が患者にきれいな腸を求めるどのような状況にも該当する。
【0038】
結腸を十分に洗浄するためには、制御されていない大量の下痢が必要であると考えられてきた。今や、本発明者らは、多量の洗浄液を摂取することなく、いやな、苦く、かつ危険な高張塩溶液を使用することなく、結腸を安全かつ有効に洗浄できることを理解している。
【0039】
刺激性緩下剤は大腸においてリズミカルな筋肉収縮を引き起こす。有効量の刺激性緩下剤には、アロエ,250〜1000mg;ビサコジル,約5〜80mg;カサントラノール,30〜360mg;カスカラ芳香流エキス剤,2〜24ml.;カスカラサグラダ(Cascara sagrada)樹皮,300〜4000mg;カスカダサグラダ(Cascada sagrada)エキス剤,300〜2000mg;カスカラサグラダ流エキス剤,0.5〜5ml.;ヒマシ油,15〜240ml.;ダントロン,75〜300mg;デヒドロコール酸,250〜2000mg;フェノールフタレイン,30〜1000mg;センノシドAおよびB,12〜200mg;ならびにピコスルフェート,1〜100mgが含まれる。刺激性緩下剤は、時として、痙攣、ガス、下痢を引き起こし、習慣性を生じ得る。もちろん、不必要な不快感を避けながら、約12時間未満の範囲内で腸運動を生じさせるために、必要に応じて、より多いまたはより少ない用量を使用することができる。
【0040】
ビサコジルは、便秘を治療するのに用いられる、処方箋なしで入手可能な刺激性緩下剤である。ビサコジルは、錠剤、坐剤、および予め混合された浣腸製剤で入手することができる。ビサコジル浣腸は、通常、約20分で腸運動を生じさせるのに有効であり、坐剤は、通常、約1時間で腸運動を生じさせ、錠剤の経口投与は、通常、約3〜6時間で腸運動をもたらす。ビサコジルは、腸および直腸を刺激して腸運動を生じさせるように働く。刺激性緩下剤は単独では便秘を治療するのに有効であり得るが、大腸内視鏡検査または外科手術手順の前に患者の結腸を満足のいくように洗浄するには有効でなかった。
【0041】
投与後、約3〜約6時間以内に腸運動を生じさせるには、約5〜約40mgのビサコジルの経口投与が通常有効である。腸運動を生じさせるために、約5〜約80mgのビサコジルを患者に投与することができる。好ましくは、約10〜約20mgの用量のビサコジルを使用することができる。妥当な時間で腸運動を生じさせるために、20mgの用量のビサコジルが有効であることが分かっている。
【0042】
米国特許第5,710,183号に示されているように、腸運動、糞便形成、またはその両方を改善することによって便秘を治療する薬剤として、ポリエチレングリコール(PEG)3350が単独で使用されている。PEGはまた、安全かつ有効な緩下剤を作るために可溶性繊維と組み合わされている(これも米国特許第5,710,183号に示されている)。PEGは、腸の機能を改善するために、または過敏性腸症候群を治療するために可溶性繊維と組み合わせることができる。便秘を治療するためのPEGの通常用量は17〜34グラムPEG/日であり、腸運動の最も大きな改善が2週間の治療後に見られる。多量の下痢を引き起こすことなく、24時間以内に腸運動を1回または2回生じさせるために、さらに大きな用量のPEGを使用することができる。
【0043】
一例において、パッケージは、2LのNuLYTELYと、2リットル容器の外側に取り付けられた4個のビサコジル錠剤20mg(各5mg)からなる。NuLYTELY溶液の各用量は、2Lを作るために、水の中に、ポリエチレングリコール 3350, NF, 210 g、塩化ナトリウム, USP 5.60g、重炭酸ナトリウム, USP 2.86g、塩化カリウム, USP 0.74g、任意に、フレーバー成分1gを含んだ。
【0044】
PEGはまた、多量のPEGが多量の薄い塩溶液に溶解して投与された時に、結腸瀉下薬として有効であることが示されている。通常、約250〜約400グラムのPEGを約4リットルの電解質水溶液に溶解して患者に投与する。
【0045】
腸運動を一晩生じさせるために、PEGを経口投与することができる。必要な用量は多種多様にあるが、8オンスの水に溶解した約10〜約100グラムのPEGが有効であると考えられている。多量の下痢が無く、腸運動を一晩生じさせるために、約68〜約85グラム用量のPEGが有効なことが示されている。しかしながら、約200グラム未満の用量のPEGの使用が腸を十分に洗浄するとは示されていない。
【0046】
今や、本発明者らは、有効量のビサコジルを投与し、ビサコジルによって腸運動を生じさせ、その後に、処方されることが多い4リットル「金基準」溶液より実質的に少ない量のPEG溶液を投与することによって、約3時間〜一晩の範囲内で、患者において結腸瀉下を快適に誘導できることを発見している。十分に洗浄された腸を生じる体積の、等張液に溶解したPEG溶液が、有効量の浸透圧性緩下剤である。約0.5L〜約4Lの体積が有効であると考えられる。好ましくは、有効体積は約1.5L〜約2.5Lである。2リットルの等張液の経口投与が有効であった。
【0047】
2種類の実験を行った。日常的な大腸内視鏡検査を受けている患者を、異なる腸準備処置に割り当てた。次いで、患者に内視鏡による大腸内視鏡検査を受けさせた。全体的な臨床印象に基づいて、医師が大腸内視鏡検査の質を「十分」または「不十分」と評価した。医師は、使用した準備の種類を知らなかった。F38-13/14と呼ぶ第1の実験では、93人の患者が、日常的な大腸内視鏡検査の前日に軽い朝食をとり、次いで、正午に、透明な液状の昼食の後に、20mgのビサコジルを服用した。この6時間後に、2リットルのNuLYTELYを服用した。この組み合わされた処置を受けた、この群は、表中では「bis+6時間+2L NuLYTELY」で示される。78人の患者を含み、F38-20と呼ぶ第2の実験において、本発明者らは、再度、前記のように20mgのビサコジルを投与した。しかし、今回は、洗浄液の投与を始める前に、6時間または8時間、一定の間隔を開けるのではなく、本発明者らは、緩下剤を服用した後、NuLYTELYを開始する前に、腸運動が起こるのを待つように患者に指示した。この組み合わされた処置を受けた、この群は、表中では「bis+BM+2L NuLYTELY」で示される。比較される対照群として、両実験において同様に処置された188人の他の患者が軽い朝食をとり、透明な液状の昼食をとり、大腸内視鏡検査前日の午後6時に4リットルのNuLYTELYを飲み始めた(便宜上、対照群のデータが本明細書において組み合わされる)。この群は、以下の表中では「4L NuLYTELY」で示される。患者全員について、通常、翌日の朝に大腸内視鏡検査を予定に組み込んだ。表1に示した第1の実験では、20mgのビサコジル緩下剤の約6時間後に(ビサコジルの後に患者に腸運動があったかどうかは考慮せずに)、2リットルのNuLYTELY(登録商標)洗浄液が投与された。他の人が示しているように、この実験において、緩下剤と6時間後の2リットル洗浄液との組み合わせ(「bis+6時間+2L NuLYTELY」群)によって得られる臨床的に「十分な」大腸内視鏡検査の準備は、全4リットル洗浄液を使用した時と比較して少ないように見えた。この差はわずかであったが、統計学的および臨床的に重大である。「不十分な」準備のパーセントのわずかな差でさえも、臨床的に重大である可能性がある。なぜなら、「不十分な」準備が再準備をもたらし、大腸内視鏡検査に関連する固有のリスクに繰り返して曝露する可能性があるためである。
【0048】
(表1)
腸準備の妥当性(パーセント)
BraintreeプロトコールF38-13/14
20mgビサコジルの6時間後の2L NuLYTELY洗浄液投与

【0049】
しかしながら、表1Aに示したように、刺激性緩下剤の6時間後に(患者に腸運動があったかどうかは考慮せずに)2L洗浄液を投与した時、先行技術と比較して、もたらされる十分な準備に改善は見られなかった。Adamsは、20mgビサコジルの8時間後に投与される2L PEG溶液を使用した(これも、患者に腸運動があったかどうかは考慮しなかった)。
【0050】
(表1A)
Adams:20mgビサコジルの8時間後の2L PEG-ELS洗浄液投与
F38-13/14:20mgビサコジルの6時間後の2L NuLYTELY洗浄液投与

P=0.903 (Adams vs. F38-13/14)
【0051】
表2は、2L NuLYTELY+bis準備(患者に腸運動があったかどうかは考慮せずに、刺激性緩下剤の6時間後に洗浄液を投与した)を受けた患者において、準備関連症状が、4L洗浄液を服用した患者に起こった症状と比較して有意に少なくはなかったことを示している。
【0052】
(表2)
厄介〜重篤な準備症状
患者の%
BraintreeプロトコールF38-13/14
20mgビサコジルの6時間後の2L NuLYTELY洗浄液投与

【0053】
再度、表2A (Adamsの先行技術のレジメ(患者に腸運動があったかどうかは考慮せずに、刺激性緩下剤の8時間後に2L洗浄液を投与した)と比較した)が示すように、報告された準備関連症状の統計的に有意な減少が観察されたが、全ての測定では観察されなかった。
【0054】
(表2A)

【0055】
Adamsは、「不快感」などの症状を5点スケールで評価した。このスケールでは、スコア1が「不快感なし」であり、スコア5は「我慢できない」であったが、スコア3は「はっきりしない」であった。表2Aにおいて、Adamsらについては、「不快感」スコアが3またはそれ以上と報告した患者を計数した。これらのスコアは、本発明者らが行った試験における「厄介〜重篤な」症状スコアと等価であるとみなした。F38-13/14試験については、ある特定のカテゴリーにおいて症状スコアが3またはそれ以上の患者を計数した。カテゴリーを5点スケールで評価した。このスケールでは、スコア1が「なし」であり、スコア5が「重篤」であった。スコア3は「厄介」であったのに対して、スコア4は「苦痛」であった。
【0056】
従って、2リットル洗浄液調製物(ビサコジル投与に反応して患者に腸運動があったかどうかは考慮せずに、一定の間隔(例えば、6時間または8時間)を開けて患者が摂取する)による洗浄は、ビサコジルを含まない4L洗浄液調製物と比較して臨床的に劣っているように見え、2リットル洗浄液調製物は、5つの患者症状カテゴリーのうちの1つの症状発生率しか下げなかった。これらの結果は、ビサコジル投与後および洗浄液投与前に、腸運動などの生物学的に関連する事象が起こるようにすることによって、準備の質および患者の症状を改善できるかどうかを試験するように、本発明者らを促した。
【0057】
従って、次の試験で(F38/20)、本発明者らは20mgのビサコジルを投与した。しかし、今回は、洗浄液の投与の前に、6時間または8時間、一定の間隔を開けるのではなく、本発明者らは、(緩下剤を服用した後)NuLYTELYを開始する前に腸運動が起こるのを待つように患者に指示した。これによって、かなり改善した結果が得られた。
【0058】
表3は、表1に示した実験での発見とは反対に、20mgビサコジルによって誘導される腸運動が起こった後でしか少量洗浄液が始められない時に「十分な」腸準備のパーセントが試験F-38-13/14の結果と比較して増加することを示している。これはまた、「金基準」である4リットル洗浄液によって得られる結果と等価であることも証明された。表3は、この臨床プロトコールに従った患者しか含まない(すなわち、協力的であり、2LのNuLytelyを飲む前に腸運動を待った患者しか含まない)。(14人の非協力的な患者がいた。3/14すなわち21%の腸準備は医師に「不十分」と判断された。このことは、改善された準備の価値をさらに裏付けている)。
【0059】
(表3)
腸準備が成功したパーセント
BraintreeプロトコールF38-20
20mgビサコジルによって誘導された腸運動後の2L NuLYTELY洗浄液投与

【0060】
改善したレジメの価値をさらに裏付けるように、表3Aは、本発明者らが発見した結果と先行技術の結果とを比較している。ある一定の間隔を開けるのではなく、20mgビサコジルの後に患者に腸運動が起こった後に2リットル洗浄液を摂取し始めるように患者に指示した時に、臨床的に優れた腸洗浄を得ることができる。
【0061】
(表3A)
先行技術とBraintreeプロトコールF38-20との比較
腸準備が成功したパーセント
Adams:20mgビサコジルの8時間後の2L PEG-ELS洗浄液投与
F38/20:20mgビサコジル後の腸運動後の2L NuLYTELY洗浄液投与

P=0.02675, (Adams vs. F38/20)
【0062】
表4は、この新たな投与計画が採用された時に、大腸内視鏡検査の質が改善されるだけでなく、患者の症状および有害事象が著しく減ることも示している。表2に示した実験と比較すると、緩下剤ビサコジルの結果として患者に完全な腸運動が起こるまで洗浄液を差し控えると、全ての症状測定において患者の不快感がほぼ50%減少することは明らかである。これらの5つの症状カテゴリーのうち4つにおいて、統計学的な有意性が得られた。
【0063】
(表4)
厄介〜重篤な準備症状
患者(n)の%
BraintreeプロトコールF38-20
20mgビサコジルによって誘導された腸運動後の2L NuLYTELY洗浄液投与

【0064】
先行技術と比較して、ある一定の間隔を開けるのではなく、刺激性緩下剤の働きによって腸運動が起こった後に患者が洗浄液を摂取し始める時に、患者の症状が減少することを表5に示す。表5は、F38-20において2リットルの洗浄液を摂取した患者の症状スコアを比較している。比較を容易にするために、ビサコジルの6時間後に2リットルの洗浄液を投与した試験F38-13/14の結果を含めた。
【0065】
(表5)
先行技術とBraintreeプロトコールF38-20との比較
症状を有する患者の%
Adams:20mgビサコジルの8時間後の2L PEG-ELS洗浄液投与
F38-20:ビサコジルによって始まる腸運動後の2L NuLYTELY洗浄液投与
F38-13/14:20mgビサコジルの6時間後の2L NuLYTELY洗浄液投与

【0066】
前記の表2Aのように、Adamsらについては、「不快感」などの症状スコアが3またはそれ以上と報告した患者を計数した。Adamsは症状を5点スケールで評価した。このスケールでは、スコア1が「不快感なし」であり、スコア5が「我慢できない」であったが、スコア3は「はっきりしない」であった。これらのスコアは、表2Aのための「厄介〜重篤な」スコアと等価であるとみなした。F38-20およびF38-13/14については、症状カテゴリーで症状スコアが3またはそれ以上の患者を計数した。症状は5点スケールで評価した。このスケールでは、スコア1が「満腹感なし」であり、スコア5が「重篤」であった。スコア3は「厄介」であり、スコア4は「苦痛」であった。
【0067】
本発明が特定の詳細に関して説明されたが、このような詳細は、添付の特許請求の範囲に含まれる場合を除いて、および添付の特許請求の範囲に含まれる程度まで、本発明の範囲に対する限定とみなさなければならないということは意図されない。
【0068】
患者に対する、この組み合わせられた瀉下剤の利点は、第1に、前記の多量等張洗浄液および高張塩溶液の欠点を回避することを含む。別の利点は、先行技術と比較して、短い準備時間で、安全かつ有効な結腸瀉下を実現できることである。第4の利点は、患者が我慢する不快感および症状がかなり減ることである。
【0069】
前述の明細書は、少量結腸洗浄液として有用な組成物および処置の1つの態様、ならびにそれを使用する方法について述べている。他の刺激性緩下剤もPEG緩下剤と組み合わせて有用なことが意図される。同様に、PEG3350が実施例において用いられたが、室温で固体の任意のPEGを使用することができる。特に、約2500〜約5000の分子量を有するPEGを使用することができる。約25,000までの平均分子量を有するPEGが有用であると考えられる。ある特定の状態を予防または治療するための化合物を被験体に投与する、いくつかの方法が本明細書において開示される。本発明のこのようなそれぞれの局面において、本発明は、具体的には、特定の状態の治療または予防において使用するための化合物、ならびに特定の状態を治療または予防するための薬剤を製造するための化合物の使用も含むことが理解されるはずである。
【0070】
同様に、典型的に、本明細書において「結腸洗浄」について言及されたが、本発明には、腸管全体および直腸(盲腸から肛門まで)の洗浄において価値があることが理解される。さらに、洗浄液は、患者に洗浄液を投与する前に2L体積に再構成されるように、高濃度のPEG溶液および電解質を含むキットとして包装および保管することができる。
【0071】
例示的な態様の前述の説明は、本方法の一般的な性質を明らかにする。当業者であれば、通常の技術の適用によって、過度の実験なく、開示された方法が容易に変更または適合され得ることを理解するだろう。例示的な態様の説明は例示であり、限定するものではない。本方法は例示のために詳細に説明された。当業者であれば、特定の詳細に変化を加えることができる。
【0072】
有用なクラスまたは範囲の説明は、そのクラスまたは範囲に含まれる任意の部分範囲またはサブクラスの説明、ならびにそのクラスに含まれる各メンバーまたは値の別個の説明を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、哺乳動物の腸および結腸を洗浄するための方法:
a)該哺乳動物に、有効量の刺激性緩下剤を経口投与する工程;
b)該刺激性緩下剤によって腸運動を生じさせる工程;
c)該哺乳動物に、有効量の浸透圧性緩下剤を経口投与する工程;および
d)該哺乳動物の該腸および結腸を空にし、それによって、診断検査または外科手術を可能にするために該結腸が十分に洗浄される工程。
【請求項2】
有効量の刺激性緩下剤を投与した後に、透明な液体を哺乳動物に投与するさらなる工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
浸透圧性緩下剤が、室温で固体であるPEGの水性懸濁液である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
有効量の浸透圧性緩下剤が、約50g〜約400gのPEGを含む約2Lの等張液である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
浸透圧性緩下剤がPEGの分割量で2時間にわたって投与され、各分割量は、約8液量オンスの等張液中に約68g〜約75gのPEGを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
刺激性緩下剤がビサコジルである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
ビサコジルの有効量が約5mg〜約40mgである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ビサコジルの有効量が約10mg〜約20mgである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
浸透圧性緩下剤がPEG3350であり、有効量の浸透圧性緩下剤が、約118グラム〜約210グラムのPEG3350を含む約2リットルの水溶液であり、刺激性緩下剤がビサコジルであり、ビサコジルの有効量が約10mg〜約20mgである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
以下の工程を含む、哺乳動物の腸および結腸を洗浄するための方法:
a)該哺乳動物に、約10mg〜約40mgのビサコジルを経口投与する工程;
b)該哺乳動物に、有効量の浸透圧性緩下剤を含む溶液を経口投与する工程;および
c)患者に約16〜24液量オンスの水を投与する工程。
【請求項11】
以下を含む、大腸内視鏡検査または外科手術のために患者の腸および結腸を準備するための調製物:
a)有効量の刺激性緩下剤、ならびに
b)有効量のPEGおよび等張液を作るための電解質塩を含む、体積が約2リットル未満の腸/結腸洗浄液
【請求項12】
結腸洗浄液が、約210グラムのPEG3350を含む等張水溶液を含む、請求項11記載の患者の腸および結腸を準備するための調製物。
【請求項13】
結腸洗浄液が、約210グラムのPEG3350を電解質に溶解した約2Lの等張液から本質的になる、請求項12記載の患者の腸および結腸を準備するための調製物。
【請求項14】
準備時間が短く、有害な症状が少ない、請求項1記載の哺乳動物の腸および結腸を洗浄するための方法。

【公開番号】特開2011−157383(P2011−157383A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84193(P2011−84193)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【分割の表示】特願2007−515021(P2007−515021)の分割
【原出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(504405545)ブレーントリー ラボラトリーズ インコーポレーティッド (6)
【Fターム(参考)】