説明

腸溶コーティングされたアジスロマイシン多粒子

多粒子を含み、前記多粒子が、アジスロマイシンコアおよび前記アジスロマイシンコア上に配置された腸溶コーティングをさらに含む医薬組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アジスロマイシンは、様々な感染症、特に尿路、気管支管、肺、洞および中耳の感染症を治療するために経口または静脈内投与される抗生物質である。
【0002】
アジスロマイシンの経口投与は、かなりの数の患者に悪心、筋痙攣、下痢および嘔吐などの有害な胃腸(GI)副作用をもたらすことがある。
【0003】
これらの有害作用の頻度は、アジスロマイシンの投与量レベルが高くなるにつれて増加する。成人を治療する際に、経口懸濁液で投与される単回1グラム投与量について、報告された様々なGI副作用の発生率は、下痢/軟便7%、悪心5%、腹痛5%、および嘔吐2%であった(経口懸濁液用のアジスロマイシンであるZithromax(登録商標)の米国添付文書)。しかしながら、例えば、経口懸濁液で投与される単回2グラムについては、報告された様々なGI副作用の発生率は、下痢/軟便14%、腹痛7%、および嘔吐7%であった(同書)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、必要なものは、等価投与量の即時放出性アジスロマイシンに類似したバイオアベイラビリティー、およびそれより少ない胃腸副作用を有するアジスロマイシン剤形である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、多粒子を含む医薬組成物であって、前記多粒子が、アジスロマイシンコアおよび前記コア上に配置された腸溶コーティングをさらに含む医薬組成物に関する。
【0006】
本発明の医薬組成物は、等価投与量を送達する現在入手可能な即時放出アジスロマイシン剤形に比べ、GI副作用の発生率および/または重症度を低下させる、腸溶コーティングされた多粒子制御放出アジスロマイシン剤形を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で使用する用語「約」は、規定値±規定値の10%を意味する。
【0008】
本発明で使用する用語「a」または「an」は、1つまたは複数を意味する。例えば、用語「アルカリ化剤(an alkalizing agent)」は、1種または複数のアルカリ化剤を意味し、用語「担体(a carrier)」は、1種または複数の担体を意味し、用語「溶解促進剤(a dissolution enhancer)」は、1種または複数の溶解促進剤を意味する。
【0009】
本明細書で使用する用語「薬学的に許容できる」は、組成物の他の成分と適合し、そのレシピエントに対して有害でないことを意味する。
【0010】
本明細書で使用する用語「多粒子」は、その全体が、意図する治療的に有用なアジスロマイシンの投与量に相当する多数のコーティングされた粒子を含む剤形を包含することを意図している。粒子は一般に、約10μm〜約3000μm、好ましくは約50μm〜約1000μm、最も好ましくは約100μm〜約300μmの平均直径を有する。多粒子は、任意の形状およびテクスチャを有することができるが、滑らかな表面を有する球状であるのが普通である。これらの物理的特性は、優れた流動性、改善された「口当たり」、嚥下の容易さおよび均一なコーティングの容易さにつながる。そのようなアジスロマイシンの多粒子は、比較的大量の薬物を比較的長時間にわたって制御された速度で送達することができるため、単回投与の薬物の投与に特に適している。
【0011】
アジスロマイシンコア
「アジスロマイシン」は、アジスロマイシンのすべての多形体、同形体、クラスレート、塩、溶媒和物および水和物、ならびに無水アジスロマイシンを含むすべての非晶質形態および結晶形態、または形態の組合せを意味する。本発明のアジスロマイシンは、米国特許第6,268,489B1号に開示されているアジスロマイシン二水和物であることが好ましい。本発明の代替実施形態において、アジスロマイシンは、非二水和アジスロマイシン、非二水和アジスロマイシンの混合物、またはアジスロマイシン二水和物と非二水和アジスロマイシンとの混合物を含む。
【0012】
本明細書で使用する用語「コア」は、コーティング材料でその後にコーティングされる粒子、顆粒、またはビーズなどの組成物の中心部と定義される。本発明のコアは、アジスロマイシンを含む。コアは、担体をさらに含むことが好ましい。用語「担体」は、コアのためのマトリックスとして、あるいはコアからのアジスロマイシン放出速度を制御するために、または両方として主に用いられる薬学的に許容できる材料を指す。担体は、単一材料であるか、あるいは2種以上の材料の混合物であってもよい。コアが、アジスロマイシンおよび担体を含む場合、アジスロマイシンは、コアの総重量の約10wt%〜約95wt%を占めることが好ましい。アジスロマイシンは、コアの約20wt%〜約90wt%を占めることがより好ましく、さらに、少なくともコアの約40wt%〜約70wt%を占めることがより好ましい。
【0013】
経時的な多粒子の物理的特性の変化の可能性を最小限に抑えるためには、高温で保存される場合は特に、担体は、少なくとも約40℃の温度で固体であることが好ましい。担体は、少なくとも約50℃の温度で固体であることがより好ましく、さらに、少なくとも約60℃の温度で固体であることがより好ましい。
【0014】
本発明のコア中で用いるのに適している担体の例には、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナウバワックス、および蜜蝋などのワックス;モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体、水素化植物油、ベヘン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリルなどのグリセリド;ステアリルアルコール、セチルアルコール、およびポリエチレングリコールなどの長鎖アルコール;ならびにそれらの混合物が含まれる。担体は、16個以上の炭素原子からなる少なくとも1個のアルキレート置換基を有するグリセリドを含むことが好ましい。担体は、ベヘン酸グリセリルを含むことがより好ましい。
【0015】
より好ましい実施形態において、アジスロマイシンコアは、アジスロマイシン、担体および溶解促進剤を含む。担体および溶解促進剤は、コアのためのマトリックスとして、あるいはコアからのアジスロマイシン放出速度を制御するために、または両方として機能する。溶解促進剤は、コア中に含まれた場合、溶解促進剤を含むことなく同量のアジスロマイシンを含有する対照コアによって得られるよりも速いアジスロマイシン放出速度をもたらす賦形剤を意味する。一般に、コアからのアジスロマイシン放出速度は、溶解促進剤の量の増加とともに増加する。そのような物質は一般に、高い水溶性を有し、組成物中の他の賦形剤の可溶化を促進することができる界面活性剤または湿潤剤であることが多い。通常、コア中に存在する溶解促進剤の重量百分率は、コア中に存在する担体の重量百分率より小さい。
【0016】
一実施形態において、本発明のコアは、コアの総質量を基準にして、約10〜約100wt%のアジスロマイシン、約0〜約80wt%の担体、および約0wt%〜約30wt%の溶解促進剤を含む。別の実施形態において、コアは、約20〜約75wt%のアジスロマイシン、約25〜約80wt%の担体、および約0.1wt%〜約30wt%の溶解促進剤を含む。さらに別の実施形態において、コアは、約35〜約55wt%のアジスロマイシン、約40〜約65wt%の担体、および約1〜約15wt%の溶解促進剤を含む。
【0017】
適当な溶解促進剤の例には、ステアリルアルコール、セチルアルコール、およびポリエチレングリコールなどのアルコール;ポロキサマー(ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、およびポロキサマー407を含むポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー)、ドキュセート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、ポリソルベート、およびポリオキシエチレンアルキルエステルなどの界面活性剤;ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのエーテル置換セルロース系誘導体;グルコース、スクロース、キシリトール、ソルビトール、およびマルチトールなどの糖;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、およびリン酸カリウムなどの塩;アラニンおよびグリシンなどのアミノ酸;ならびにそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。溶解促進剤は、界面活性剤を含むことが好ましい。
【0018】
溶解促進剤は、ポロキサマーを含むことがより好ましい。ポロキサマーは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの一連の密接に関係したブロックコポリマーである。ポロキサマーは、本明細書の例示に記載されているポロキサマー407であることが好ましい。
【0019】
コアが溶解促進剤をさらに含むこの実施形態において、担体は、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナウバワックス、および蜜蝋などのワックス;モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体、水素化植物油、モノ−、ジ−またはトリベヘン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリルなどのグリセリド;ならびにそれらの混合物からなる群から選択されることがさらに好ましい。
【0020】
アジスロマイシンは、潜在的に、酸性基またはエステル基を有する担体、および溶解促進剤などの任意選択の賦形剤と反応し、アジスロマイシンのエステルを形成することがある。担体および賦形剤は、アジスロマイシンエステルを形成する「低反応性」、「中反応性」、および「高反応性」を有するとして特徴付けることができる。
【0021】
低反応性の担体および任意選択の賦形剤の例には、ステアリルアルコール、セチルアルコール、およびポリエチレングリコールなどの長鎖アルコール;ポロキサマー;ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル;微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびエチルセルロースなどのエーテル置換セルロース系誘導体;グルコース、スクロース、キシリトール、ソルビトール、およびマルチトールなどの糖;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、およびリン酸カリウムなどの塩が含まれる。
【0022】
中反応性の担体および任意選択の賦形剤は、酸またはエステル置換基を含むことが多いが、担体または任意選択の賦形剤の分子量に比較すると比較的数が少ない。例には、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体、水素化植物油、ジベヘン酸グリセリル、ならびにモノ−、ジ−、およびトリ−アルキルグリセリドなどの長鎖脂肪酸エステル;ステアリン酸ポリエチレングリコールおよびジステアリン酸ポリエチレングリコールなどのグリコール化(glycolized)脂肪酸エステル;ポリソルベート;ならびにカルナウバワックスならびに白色および黄色の蜜蝋などのワックスが含まれる。本明細書で定義されているように、ベヘン酸グリセリルは、モノベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、または前記モノ−、ジ−およびトリベヘン酸グリセリルのうちのいずれか2つもしくは3つすべての混合物を含む。
【0023】
高反応性の担体および任意選択の賦形剤は通常、いくつかの酸もしくはエステル置換基または低分子量を有する。例には、ステアリン酸、安息香酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、およびマレイン酸などのカルボン酸;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、クエン酸トリエチル、レシチン、トリアセチン、およびセバシン酸ジブチルなどの短鎖〜中鎖脂肪酸エステル;酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、および酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのエステル置換セルロース系誘導体;ならびに酸またはエステル官能基付きポリメタクリレートおよびポリアクリレートが含まれる。一般に、高反応性の担体および任意選択の賦形剤上の酸/エステル濃度が高いため、これらの担体および任意選択の賦形剤が、製剤中のアジスロマイシンと直接接触した場合、許容できない高濃度のアジスロマイシンエステルが、組成物の加工または保存中に形成する。したがって、そのような高反応性の担体および任意選択の賦形剤は、多粒子中で用いられる担体または任意選択の賦形剤上の酸およびエステル基の総量が低くなるように、より低い反応性を有する担体または任意選択の賦形剤と組み合わせてのみ用いることが好ましい。
【0024】
本発明のアジスロマイシンコアは、低濃度のアジスロマイシンエステルを有していなければならず、コア中に元々存在するアジスロマイシンの総重量に対するコア中のアジスロマイシンエステルの濃度は、5wt%未満、好ましくは1wt%未満、より好ましくは0.5wt%未満でなければならないことを意味する。
【0025】
許容できる量(すなわち、約5wt%未満)のアジスロマイシンエステルを有するコアを得るために、担体上の酸およびエステル置換基の濃度とコア中のアジスロマイシンの結晶化度との間にはトレードオフ関係が存在する。許容できる量のアジスロマイシンエステルを有するコアを得るために、コア中のアジスロマイシンの結晶化度が大きければ大きいほど、担体の酸/エステル置換度が大きくなることがある。この関係は、以下の数式により定量化することができ、
[A]≦0.2/(1−x) (I)
式中、[A]は、アジスロマイシン1g当たりのmeqで表される担体および任意選択の賦形剤上の酸/エステル置換の総濃度であり、2meq/g以下であり、xは、結晶性である組成物中のアジスロマイシンの重量分率である。担体および任意選択の賦形剤が、2種以上の賦形剤を含む場合、[A]の値は、アジスロマイシン1g当たりのmeqの単位で表される、担体および任意選択の賦形剤を構成するすべての賦形剤上の酸/エステル置換の総濃度を指す。
【0026】
約1wt%未満のアジスロマイシンエステルを有するより好ましいコアの場合、アジスロマイシン、担体、および任意選択の賦形剤は、以下の式を満たすであろう。
[A]≦0.04/(1−x) (II)
【0027】
約0.5wt%未満のアジスロマイシンエステルを有するより好ましいコアの場合、アジスロマイシン、担体、および任意選択の賦形剤は、以下の式を満たすであろう。
[A]≦0.02/(1−x) (III)
【0028】
コア中のアジスロマイシンの結晶化度および担体と任意選択の賦形剤の酸/エステル置換度間のトレードオフは、前述の数式(I)〜(III)から決定することができる。
【0029】
アジスロマイシンエステルを形成する反応性の観点から、溶解促進剤は、組成物中に存在するアジスロマイシン1g当たり約0.13meq未満の酸/エステル置換基濃度を有することが好ましい。溶解促進剤は、アジスロマイシン1g当たり約0.10meq未満、より好ましくはアジスロマイシン1g当たり約0.02meq未満、より好ましくは約0.01meq/g未満、最も好ましくは約0.002meq/g未満の酸/エステル置換基濃度を有することが好ましい。
【0030】
低濃度の酸およびエステル置換基を有することに加えて、溶解促進剤は一般に、コアからのアジスロマイシン放出速度が、コア中の溶解促進剤の濃度が増加するにつれて増加するように、親水性でなければならない。
【0031】
適当な溶解促進剤についてのさらなる説明およびアジスロマイシン多粒子コアにとって適切な賦形剤の選択は、「Controlled Release Multiparticulates Formed with Dissolution Enhancers」という表題の米国仮特許出願第60/527,319号に開示されている。
【0032】
さらに他の好ましい実施形態において、本発明のコアは、(a)アジスロマイシン;(b)16個以上の炭素原子からなる少なくとも1個アルキレート置換基を有するグリセリド担体;および(c)ポロキサマー溶解促進剤を含む。これらの特定の担体賦形剤の選択は、広範囲の放出速度にわたるアジスロマイシン放出速度の正確な制御を可能にする。グリセリド担体およびポロキサマーの相対量の小さな変化は、薬物放出速度に大きな変化をもたらす。このことは、薬物、グリセリド担体およびポロキサマーの妥当な比率を選択することにより、コアからの薬物放出速度を正確に制御することを可能にする。これらの材料は、コアからほぼすべての薬物を放出するという他の利点を有する。そのような多粒子コアは、「Multiparticulate Crystalline Drug Compositions Having Controlled Release Profiles」という表題の米国仮特許出願第60/527,329号に、より完全に開示されている。
【0033】
他の好ましい実施形態において、アジスロマイシン剤形は、約45〜約55wt%のアジスロマイシン、約43〜約50wt%のベヘン酸グリセリルおよび約2〜約5wt%のポロキサマーを含むアジスロマイシンコアを含む。
【0034】
アジスロマイシンコアには追加の任意選択の賦形剤も含めることができる。例えば、コアからのアジスロマイシンの放出を阻害するか、あるいは遅延させる物質を担体に含めることもできる。そのような溶解阻害剤は一般に、疎水性である。溶解阻害剤の例には、マイクロクリスタリンワックスおよびパラフィンワックスなどの炭化水素ワックスが含まれる。
【0035】
賦形剤の別の有用なクラスは、溶融フィードの粘度を調整し、例えば、溶融−凝結プロセスによりコアを形成するのに用いられる材料である。そのような粘度調整用賦形剤は一般に、コアの総質量を基準にして、多粒子の0〜25wt%を構成するものとする。溶融フィードの粘度は、狭い粒径分布を有するコアを得る際に鍵となる変数である。例えば、スピニングディスクアトマイザーを用いる場合、溶融混合物の粘度は、少なくとも約1センチポアズ(cp)であって約10,000cp未満、より好ましくは少なくとも50cpであって約1000cp未満であることが好ましい。溶融混合物がこれらの好ましい範囲外の粘度を有する場合、粘度調整用担体を加え、好ましい粘度範囲内の溶融混合物を得ることができる。粘度減少用賦形剤の例には、ステアリルアルコール、セチルアルコール、低分子量ポリエチレングリコール(例えば、約1000ダルトン未満)、イソプロピルアルコール、および水が含まれる。粘度増加用賦形剤の例には、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、高分子量ポリエチレングリコール(例えば、約5000ダルトンを超える)、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウム、糖、および塩が含まれる。
【0036】
他の賦形剤を加え、コア上の静電荷を減少させることができ、そのような静電防止剤の例には、タルクおよび二酸化ケイ素が含まれる。矯味剤、着色剤、および他の賦形剤を、それらの通常の目的のために通常の量で加えてもよい。
【0037】
一実施形態において、担体は、1種または複数の任意選択の賦形剤と一緒に固溶体を形成し、担体および1種または複数の任意選択の賦形剤が、熱力学的に安定な単一の相を形成することを意味する。そのような場合、少なくとも40℃の温度で固体でない賦形剤を用いることができるが、ただし、担体/賦形剤混合物は、少なくとも40℃の温度で固体であることとする。これは、用いられる賦形剤の融点および組成物中に含まれる担体の相対量に依存するはずである。
【0038】
別の実施形態において、担体および1種または複数の任意選択の賦形剤は、固溶体を形成せず、担体および1種または複数の任意選択の賦形剤が、2つ以上の熱力学的に安定な相を形成することを意味する。そのような場合、担体/賦形剤混合物は、コアを形成するのに用いられる加工温度で完全に溶融しているか、あるいは、1つの材料は固体であるが、他の1種または複数は溶融しており、溶融混合物中の1つの材料の懸濁液になっていてもよい。
【0039】
担体および1種または複数の任意選択の賦形剤が固溶体を形成しないが、例えば、特定の放出プロファイルを得るために固溶体が望まれる場合、組成物中に追加の賦形剤を含め、担体、1種または複数の任意選択の賦形剤、および追加の賦形剤を含む固溶体を生成させてもよい。例えば、マイクロクリスタリンワックスおよびポロキサマーを含む担体を用いて望ましい放出プロファイルを有する多粒子を得ることが望ましいことがある。そのような場合、マイクロクリスタリンワックスの疎水性およびポロキサマーの親水性に一部起因して固溶体は形成されない。製剤中にステアリルアルコールなど少量の第3の賦形剤を含めることにより、固溶体を得ることができ、望ましい放出プロファイルを有するコアがもたらされる。
【0040】
代替実施形態において、コアは、非崩壊性マトリックスの形態である。「非崩壊性マトリックス」とは、水性使用環境へのコアの導入後に、担体の少なくとも一部が溶解も崩壊もしないことを意味する。そのような場合、アジスロマイシンおよび任意選択で担体のうちの1種または複数、例えば溶解促進剤の一部は、溶解によってコアから除去される。担体の少なくとも一部は、溶解も崩壊もせず、使用環境がin vivoである場合は排泄されるか、あるいは使用環境がin vitroである場合は試験溶液中に懸濁したままである。この態様において、担体の少なくとも一部は、水性使用環境で低い溶解度を有することが好ましい。水性使用環境における担体の少なくとも一部の溶解度は、約1mg/mL未満であることが好ましく、約0.1mg/mL未満であることがより好ましく、約0.01mg/mL未満であることが最も好ましい。適当な低溶解度担体の例には、合成ワックス、ミクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナウバワックス、および蜜蝋などのワックス;モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリルなどのグリセリド;ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0041】
コアは、コアの外面上に存在するアジスロマイシンの量が最小限に抑えられるように製造されることが好ましい。一実施形態において、コア中に存在するアジスロマイシンのうちの10wt%未満が、コアの外部表面上に存在する。そのようなコアは、以下で本明細書に記載される熱または液体をベースとするプロセスを用いて製造することができる。好ましい実施形態において、そのようなコアは、本明細書に記載されているような溶融−凝結プロセスを用いて製造される。
【0042】
本発明のアジスロマイシンコアは一般に、約5000μm未満の平均直径を有する。好ましい実施形態において、コアの平均直径は、約50〜約3000μm、より好ましくは約100〜約300μmである。コアの直径を用い、コアからのアジスロマイシン放出速度を調整することができることに注目されたい。一般に、コアの直径が小さいほど、特定の製剤からのアジスロマイシン放出速度は速いはずである。これは、溶解媒体と接触している全表面積が、コアの直径が減少するにつれて増加するためである。したがって、コアの平均直径の調整を用い、アジスロマイシン放出プロファイルを調整することができる。
【0043】
一実施形態において、コアは、アジスロマイシンの、水性媒体中へのアジスロマイシンの溶解速度を制限することができるマトリックスを形成するために選択される1種または複数の賦形剤との混合物を含む。この実施形態にとって有用なマトリックス材料は一般に、ワックス、セルロース、または他の水不溶性ポリマーなどの水不溶性材料である。必要な場合、マトリックス材料は、場合により、結合剤としてまたは透過性調整剤として用いることができる水溶性材料と一緒に製剤化することができる。これらの剤形の製造に有用なマトリックス材料には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの結合剤が添加されている微結晶性セルロースの等級を含むAvicel(FMC Corp.、Philadelphia、Pa.の登録商標)などの微結晶性セルロース、パラフィン、修飾植物油、カルナウバワックス、水素化ヒマシ油、蜜蝋などのワックス、ならびにポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、酢酸ビニルとエチレンのコポリマー、ポリスチレンなどの合成ポリマーが含まれる。マトリックス中へ場合により製剤化することができる水溶性結合剤または放出調整剤には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ポリ(N−ビニル−2−ピロリジノン)(PVP)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、キサンタンガム、カラゲナン、ならびに他のそのような天然および合成材料などの水溶性ポリマーが含まれる。さらに、放出調整剤として機能する材料には、糖または塩などの水溶性材料が含まれる。好ましい水溶性材料には、ラクトース、スクロース、グルコース、およびマンニトール、ならびにHPC、HPMC、およびPVPが含まれる。
【0044】
本発明のアジスロマイシンコアは、アジスロマイシンにとって望ましいサイズおよび放出速度特性を有するアジスロマイシンおよび担体を含有する粒子をもたらす任意の知られているプロセスによって製造することができる。そのようなコアを形成するのに好ましいプロセスには、溶融−および噴霧−凝結などの熱をベースとするプロセス;押出/球状化、湿式造粒、噴霧コーティング、および噴霧乾燥などの液体をベースとするプロセス;ならびに乾式造粒および溶融造粒などの他の造粒プロセスが含まれる。
【0045】
アジスロマイシンコアを製造するための他のプロセスは、ワックス顆粒の調製である。このプロセスでは、望ましい量のアジスロマイシンを、液体ワックスと一緒に攪拌して均一な混合物を形成し、冷却し、次いで、スクリーンに強引に通して顆粒を形成する。好ましいマトリックス材料は、ワックス状物質である。水素化ヒマシ油およびカルナウバワックスおよびステアリルアルコールが特に好ましい。
【0046】
アジスロマイシンコアは、(a)アジスロマイシンおよび薬学的に許容できる担体を含む溶融混合物を形成するステップと、(b)ステップ(a)の溶融混合物を微粒化手段に送って溶融混合物から液滴を形成するステップと、(c)ステップ(b)からの液滴を凝結させてコアを形成するステップとを含む溶融−凝結プロセスによって製造することができる。
【0047】
溶融−凝結プロセスなどの熱をベースとするプロセスを用いて本発明のアジスロマイシンコアを製造するために場合、アジスロマイシンへの熱伝達を最小限に抑え、プロセス中のアジスロマイシンの有意な熱分解を防止する。また、担体は、アジスロマイシンの融点未満である融点を有することが好ましい。例えば、アジスロマイシン二水和物は、113℃〜115℃の融点を有する。したがって、本発明のコア中にアジスロマイシン二水和物を用いる場合、担体は、約113℃未満である融点を有することが好ましい。本明細書で使用する用語「担体の融点」または「T」は、担体が、薬物および多粒子中に存在する任意の任意選択の賦形剤を含有する場合、その結晶状態からその液体状態へと遷移する温度を意味する。担体が結晶性でない場合、「担体の融点」は、担体が、圧力、剪断力、および遠心力などの1種または複数の力を受けた場合に、液体状態の結晶性材料と同様に流動するであろうという意味で流体になる温度を意味する。
【0048】
溶融混合物中のアジスロマイシンは、溶融混合物に溶解していてもよく、溶融混合物中に分布した結晶性アジスロマイシンの懸濁液であってもよく、またはそのような状態もしくは両者の間にある状態の任意の組合せであってもよい。溶融混合物は、溶融しているか、あるいは溶融担体中に溶解しているアジスロマイシンの割合が比較的低く保たれている溶融担体中の結晶性アジスロマイシンの均一な懸濁液を含むことが好ましい。全アジスロマイシンのうちの約30wt%未満が、溶融しているか、あるいは溶融担体中に溶解していることが好ましい。アジスロマイシンは、結晶性二水和物として存在することが好ましい。
【0049】
したがって、「溶融混合物」とは、アジスロマイシンと担体の混合物が十分に加熱され、混合物が十分に流動性となり、混合物を液滴に形成するかあるいは微粒化させることができることを意味する。溶融混合物の微粒化は、以下に記載されている任意の微粒化法のいずれかを用いて行うことができる。一般に、混合物は、遠心またはスピニングディスクアトマイザーによって加えられるような与えられる力などの、圧力、剪断力、および遠心力などの1種または複数の力を受けた場合に流動するという意味で溶融している。したがって、アジスロマイシン/担体混合物は、混合物が、全体として、微粒化することができるほど十分に流動性であるように担体およびアジスロマイシンの任意の部分が流動性になる場合に、「溶融している」と見なすことができる。一般に、ある混合物は、溶融混合物の粘度が、約20,000cp未満、好ましくは約15,000cp未満、より好ましくは約10,000cp未満である場合に、微粒化に十分な流動性である。多くの場合、混合物は、担体が比較的鋭い融点を有するのに十分な結晶性である場合は、担体成分のうちの1種または複数の融点以上に;または、担体成分が非晶質である場合は、担体成分のうちの1種または複数の軟化点以上に混合物が加熱された場合に溶融状態になる。したがって、溶融混合物は、流動性マトリックス中の固体粒子の懸濁液であることが多い。1つの好ましい実施形態において、溶融混合物は、実質的に流動性である担体中に懸濁した実質的に結晶性のアジスロマイシン粒子の混合物を含む。そのような場合、アジスロマイシンの一部が流動性担体中に溶解していても、担体の一部が固体のままであってもよい。
【0050】
用語「溶融」は、具体的に、ある結晶性材料の、その融点で起きるその結晶状態からその液体状態への遷移を指し、用語「溶融している」は、その液体状態にあるそのような結晶性材料を指し、本明細書で使用するこれらの用語は、より広く用いられ、「溶融」の場合、液体状態の結晶性材料と同様にポンプ注送または微粒化することができる意味で流動性になるように十分に任意の材料または材料の混合物を加熱することを指す。同様に、「溶融している」は、そのような流動状態にある任意の材料または材料の混合物を指す。
【0051】
事実上任意のプロセスを用い、溶融混合物を形成することができる。一方法は、担体をタンク中で溶融し、溶融担体にアジスロマイシンを加え、次いで、混合物を混合し、アジスロマイシンがその中に均一に分布するようにするものである。あるいは、アジスロマイシンと担体の双方をタンクに加え、混合物を加熱および混合し、溶融混合物を形成してもよい。担体が、2種以上の材料を含む場合、溶融混合物は、2個のタンクを用い、一方のタンクで第1の担体を溶融し、もう一方のタンクで第2の担体を溶融して調製することができる。アジスロマイシンは、これらのタンクのうちの1つに加え、上述のように混合する。別の方法では、連続して攪拌されるタンクシステムを用いることができ、この場合、アジスロマイシンおよび担体を、連続混合用の手段を備えた加熱タンクに連続的に加え、一方、溶融混合物を、タンクから連続的に取り出す。
【0052】
溶融混合物は、Dyno(登録商標)Mill(W.A.Bachofen of Switzerland)などの連続ミルを用いて形成することもできる。アジスロマイシンおよび担体は通常、固体形態で連続ミルに送り込まれ、直径が0.25〜5mmのビーズなどの粉砕媒体が入っている粉砕チャンバーに入る。粉砕チャンバーは通常、ジャケット付きであるため、加熱または冷却液をチャンバーの周りに循環させ、その温度を制御することができる。溶融混合物は、粉砕チャンバー内で形成され、粉砕媒体を除去するためにセパレーターを通ってチャンバーから出る。
【0053】
溶融混合物を形成する特に好ましい方法は、押出機による。「押出機」とは、固体および/または液体(例えば、溶融)フィードから、熱および/または剪断力により溶融押出物を作りだしかつ/または均一に混合された押出物を製造する装置または装置の集合を意味する。そのような装置には、単軸押出機;共回転、逆回転、噛合い、および非噛合い押出機を含む2軸押出機;多軸押出機;加熱シリンダーおよび溶融フィードを押し出すためのピストンからなるラム押出機;溶融フィードを同時に加熱およびポンプ注送する、一般に逆回転の、加熱ギヤーポンプからなるギヤーポンプ押出機;ならびにコンベヤー押出機が含まれるが、これらに限定されるものではない。コンベヤー押出機は、スクリューコンベヤーまたは空気コンベヤーなどの固体および/または粉末フィードを輸送するためのコンベヤー手段、ならびにポンプを含む。コンベヤー手段の少なくとも一部を、溶融混合物を製造するのに十分な高温まで加熱する。溶融混合物を、溶融混合物をアトマイザーに導くポンプに導く前に、蓄積タンクに導いてもよい。場合により、ポンプの前または後にインラインミキサーを用い、溶融混合物が実質的に均一であるようにすることができる。これらの押出機の各々において、溶融混合物を混合し、均一に混合した押出物を形成する。そのような混合は、混合要素、混練要素、および逆流による剪断混合を含む様々な機械的手段および加工手段によって行うことができる。したがって、そのような装置では、組成物を押出機に送り込み、アトマイザーに導くことができる溶融混合物を製造する。
【0054】
溶融混合物がいったん形成されたら、溶融混合物を破壊して小さい液滴にするアトマイザーに送る。事実上、ポンプおよび加圧容器またはピストンポットなどの様々なタイプの空気圧装置の使用を含む任意の方法を用い、溶融混合物をアトマイザーに送ることができる。押出機を用いて溶融混合物を形成する場合、押出機自体を用いて溶融混合物をアトマイザーに送ることができる。通常、溶融混合物を、混合物をアトマイザーに送る間も高温に維持し、混合物の凝固を防止し、溶融混合物を流動性に保つ。
【0055】
一般に、微粒化は、(1)「圧力」または単一流体ノズルによる:(2)二流体ノズルによる;(3)遠心またはスピニングディスクアトマイザーによる;(4)超音波ノズルによる;および(5)機械的振動ノズルによることを含むいくつかの方法のうちの1つで行われる。特定の粒径を得るためのスピニングディスクアトマイザーの使用方法を含む微粒化プロセスの詳細な説明は、Lefebvre、Atomization and Sprays(1989)またはPerry’s Chemical Engineers’Handbook(第7版、1997)中に見出すことができる。
【0056】
溶融混合物がいったん微粒化されたら、液滴を通常、液滴の凝固温度以下の温度の気体または液体との接触により凝結させる。通常、液滴を、約60秒未満で、好ましくは約10秒未満で、より好ましくは約1秒未満で凝結させることが望ましい。多くの場合、周囲温度における凝結は、過剰なアジスロマイシンエステル形成を避けるのに十分に速い液滴の凝固をもたらす。しかしながら、凝結ステップは、コアの捕集を簡単にするために密閉空間で行われることが多い。そのような場合、凝結媒体(気体か液体のどちらか)の温度は、液滴が密閉空間中に導入されるにつれて経時的に上昇し、アジスロマイシンエステルの形成につながる可能性がある。したがって、冷却用の気体または液体を、密閉空間に循環させて一定の凝結温度を維持することが多い。用いられる担体がアジスロマイシンと高反応性であり、アジスロマイシンを溶融担体に暴露する時間を制限しなければならない場合、冷却用の気体または液体を周囲温度以下まで冷却して急速な凝結を促進し、アジスロマイシンエステルの形成を許容できるレベルに保つことができる。
【0057】
適当な熱をベースとするプロセスは、「Azithromycin Multiparticulate Dosage Forms by Melt−Congeal Processes」という表題の米国仮特許出願第60/527,244号、および「Extrusion Process for Forming Chemically Stable Drug Multiparticulates」という表題の米国仮特許出願第60/527,315号に、詳細に開示されている。
【0058】
また、アジスロマイシンコアは、(a)アジスロマイシン、薬学的に許容できる担体、および液体を含む混合物を形成するステップと、(b)ステップ(a)の混合物から粒子を形成するステップと、(c)ステップ(b)の粒子から液体の実質的部分を除去してコアを形成するステップとを含む液体をベースとするプロセスによって製造することができる。ステップ(b)は、(i)混合物の微粒化、(ii)シードコアを混合物でコーティングすること、(iii)混合物を湿式造粒すること、および(iv)混合物を押し出して固体の塊とし、続いて塊を球状化または微粉砕することから選択される方法であることが好ましい。
【0059】
液体は、約150℃未満の沸点を有することが好ましい。液体をベースとするプロセスを用いる多粒子の形成に適している液体の例には、水;メタノール、エタノール、プロパノールの様々な異性体およびブタノールの様々な異性体などのアルコール;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタンおよび鉱油などの炭化水素;メチルtert−ブチルエーテル、エチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル;クロロホルム、二塩化メチレンおよび二塩化エチレンなどのクロロカーボン;テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;N−メチルピロリジノン;N,N−ジメチルアセトアミド;アセトニトリル;ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0060】
一実施形態において、アジスロマイシンコアは、混合物の小さな液滴を形成するための適切なノズルを用いる混合物の微粒化によって形成され、それらを、液体の蒸発のための強い駆動力が存在する乾燥チャンバー中に噴霧し、固体、一般には球状粒子を製造する。液体の蒸発のための強い駆動力は一般に、乾燥チャンバー内の液体の分圧を、粒子の温度において液体の蒸気圧より十分に低く維持することによって提供される。これは、(1)乾燥チャンバー内の圧力を部分真空(例えば、0.01〜0.5atm(約1〜約51kPa))に維持すること;または(2)液滴を温めた乾燥気体と混合すること、または(3)(1)と(2)の双方によって行われる。噴霧乾燥プロセスおよび噴霧乾燥装置についてはPerry’s Chemical Engineers’Handbook、20−54〜20−57ページ(第6版、1984)に、一般的に記載されている。
【0061】
あるいは、アジスロマイシンコアは、シードコア上に液体混合物をコーティングすることによって形成される。シードコアは、デンプン、微結晶性セルロース、糖またはワックスなどの任意の適当な材料から、溶融−または噴霧−凝結、押出/球状化、造粒、噴霧乾燥などの任意の知られている方法によって製造することができる。
【0062】
液体混合物は、パンコーター(例えば、Freund Corp.of Tokyo、Japanから入手可能なHi−Coater、Manesty of Liverpool、U.K.から入手可能なAccela−Cota)、流動層コーター(例えば、Glatt Air Technologies,Inc.of Ramsey、New JerseyおよびNiro Pharma Systems of Bubendorf、Switzerlandから入手可能なWursterコーターまたはトップスプレーコーター)およびロータリーグラニュレーター(例えば、Freund Corpから入手可能なCF−Granulator)などの製薬技術分野において知られているコーティング装置を用いてそのようなシードコア上に噴霧することができる。
【0063】
別の実施形態において、液体混合物を湿式造粒してアジスロマイシンコアを形成することができる。造粒は、比較的小さな粒子を、多くの場合、製薬技術分野において結合剤としても知られている担体の助けによって、より大きな顆粒状粒子にするプロセスである。湿式造粒では、液体を用い、粒子間の分子間力を増加させ、顆粒の「強度」と呼ばれる顆粒の完全性の増強につなげる。多くの場合、顆粒の強度は、造粒プロセス中の粒子間の間隙空間中に存在する液体の量によって決定される。この場合、液体が、理想的には0の接触角で粒子を濡らしていることが重要である。造粒されている粒子の大部分は、極めて親水性のアジスロマイシン結晶であるため、液体は、この判定基準を満たすようにかなり親水性である必要がある。したがって、有効な湿式造粒用液体は、親水性である傾向もある。有効な湿式造粒用液体であることが判明した液体の例には、水、エタノール、イソプロピルアルコールおよびアセトンが含まれる。湿式造粒用液体は、pH7以上の水であることが好ましい。
【0064】
いくつかのタイプの湿式造粒プロセスを用い、アジスロマイシン含有コアを形成することができる。例には、流動層造粒、回転式造粒および高剪断ミキサーが含まれる。流動層造粒では、空気を用い、流動化チャンバー中でアジスロマイシンおよび/または担体の粒子を攪拌または「流動化」する。次いで、この流動層中に液体を噴霧し、顆粒を形成する。回転式造粒では、水平ディスクが高速で回転し、造粒容器の壁にアジスロマイシンおよび/または担体粒子の回転する「ロープ」を形成する。液体を、このロープ中に噴霧し、顆粒を形成する。高剪断ミキサーは、アジスロマイシンおよび/または担体の粒子を混合するための攪拌機または羽根車を含む。液体を、粒子の移動層中に噴霧し、顆粒を形成する。これらのプロセスでは、担体のすべてまたは一部を、粒子上に液体を噴霧するのに先立って液体中に溶解させることができる。したがって、これらのプロセスでは、液体混合物を形成するステップと液体混合物からコアを形成するステップが同時に行われる。
【0065】
別の実施形態において、コアは、液体混合物を押し出して固体塊とし、続いて塊を球状化または微粉砕することにより形成される。このプロセスでは、ペースト様プラスチック懸濁液の形態である液体混合物を、穴あきプレートまたは金型を通して押し出し、長い固体棒の形態であることが多い固体塊を形成する。次いで、固体塊を微粉砕し、アジスロマイシンコアを形成する。一実施形態において、固体塊を、介在する乾燥ステップの有無にかかわらず、材料を破壊して球体、球状体、または丸い棒にする突起を有する回転するディスク上に置く。次いで、そのようにして形成されたコアを乾燥させ、すべての残留液体を除去する。このプロセスは、製薬技術分野において押出/球状化プロセスと呼ばれることもある。
【0066】
粒子がいったん形成されたら、液体の一部を、通常は乾燥ステップで除去し、こうして多粒子を形成する。液体の少なくとも80%が粒子から除去されることが好ましく、少なくとも90%がより好ましく、液体の少なくとも95%が、乾燥ステップ中に粒子から除去されることが最も好ましい。
【0067】
適当な液体をベースとするプロセスは、「Azithromycin Multipariculate Dosage Forms by Liquid−Based Processes」という表題の米国仮特許出願第60/527,405号に、より完全に開示されている。
【0068】
また、アジスロマイシンコアは、(a)アジスロマイシンおよび薬学的に許容できる担体を含む固体混合物を形成するステップと、(b)固体混合物を造粒してコアを形成するステップとを含む造粒プロセスによって製造することができる。そのような造粒プロセスの例には、双方とも当技術分野においてよく知られている乾式造粒および溶融造粒が含まれる。Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、1995)を参照されたい。
【0069】
乾式造粒プロセスの一例は、ローラー圧縮である。ローラー圧縮プロセスでは、固体混合物をローラーの間で圧縮する。ローラーは、得られる圧縮材料が、望ましい直径の小さなビーズまたはペレットの形態であるように設計することができる。あるいは、圧縮材料は、当技術分野でよく知られている方法を用いてコアに微粉砕することができるリボンの形態である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、1995)を参照されたい。
【0070】
溶融造粒プロセスでは、固体混合物を、担体を加熱または溶融する能力を有するグラニュレーターに送り込む。このプロセスで用いるのに適している装置には、溶融−凝結プロセスについて上述したものなどの高剪断グラニュレーターおよび単軸または多軸押出機が含まれる。溶融造粒プロセスでは、固体混合物を、グラニュレーターに入れ、固体混合物が凝集するまで加熱する。次いで、固体混合物を、望ましい粒径が得られるまで混練または混合する。次いで、そのようにして形成された顆粒を冷却し、グラニュレーターから取り出し、望ましいサイズ画分に篩い分けし、こうしてアジスロマイシンコアを形成する。
【0071】
他の実施形態において、コアは、アジスロマイシンの持続放出が得られるように設計された膜で最初にコーティングされたアジスロマイシン含有粒子を含む。次いで、このコアを、後述のような腸溶コーティングでコーティングする。粒子は、アジスロマイシンを含有し、必要に応じて製作および性能のための1種または複数の賦形剤を含有してもよい。結合剤に対して高い割合のアジスロマイシンを含有する粒子が好ましい。粒子は、組成物であり、前に記載した技法のいずれかによって製作してもよい。
【0072】
当技術分野で知られているような持続放出コーティングを用い、膜、特にセルロースエステルまたはエーテル、アクリルポリマー、またはポリマーの混合物などのポリマーコーティングを製作することができる。好ましい材料には、エチルセルロース、酢酸セルロースおよび酢酸酪酸セルロースが含まれる。ポリマーは、有機溶媒中の溶液として、または水性懸濁液もしくはラテックスとして塗布することができる。コーティング操作は、腸溶コーティングについて本明細書に記載されているように、流動層コーター、Wursterコーター、またはロータリーベッドコーターなどの標準的装置で行うことができる。コーティングは、非多孔性であるがアジスロマイシンに対して透過性であるか(例えば、アジスロマイシンは、膜を通って直接拡散することができる)、あるいは多孔性であってもよい。
【0073】
望ましい場合、コーティングの透過性は、2種以上の材料をブレンドすることにより調整することができる。コーティングの多孔性を調整するための特に有用なプロセスは、所定量の糖または塩または水溶性ポリマーなどの微粉化した水溶性材料を、使用すべき膜形成ポリマーの溶液または分散液(例えば、水性ラテックス)に加えることを含む。剤形が、GI管の水性媒体中に取り込まれる場合、これらの水溶性膜添加剤は、膜の外に浸出され、薬物の放出を容易にする細孔を残す。また、膜コーティングは、当技術分野において知られているように、可塑剤の添加により修飾することができる。
【0074】
膜コーティングを塗布するためのプロセスの特に有用な変形形態は、コーティングが乾燥するにつれて、塗布されたコーティング溶液中で相反転が起こり、多孔性構造を有する膜が得られるように、選択された溶媒の混合物にコーティングポリマーを溶解させることを含む。このタイプのコーティングシステムの多くの例は、1990年3月7日公開の欧州特許明細書0 357 369 B1に掲載されている。
【0075】
アジスロマイシンエステルの形成を減少させるため、コア中のアジスロマイシンの少なくとも70wt%が結晶性であることが好ましい。アジスロマイシンの少なくとも80wt%が結晶性であることがより好ましい。さらに、アジスロマイシンの少なくとも90wt%が結晶性であることがより好ましい。アジスロマイシンの少なくとも95wt%が結晶性であることが最も好ましい。結晶性アジスロマイシンは、非晶質形態または溶解したアジスロマイシンよりも化学的および物理的に安定であるため、好ましい。
【0076】
アジスロマイシンの結晶化度は、粉末X線回折(PXRD)分析を用いて決定することができる。例示的手順において、PXRD分析は、Bruker AXS D8 Advance回折計で行うことができる。この分析では、約500mgの試料をLucite試料カップに充填し、試料表面を、ガラスの顕微鏡用スライドを用いて平らにし、試料カップの上部と同じ高さの一貫して平らな試料表面を提供する。試料を、ψ面において30rpmの速度で回転させ、結晶配向効果を最小限に抑える。X線源(S/B KCuα、λ=1.54Å)を、45kVの電圧および40mAの電流で操作する。各試料についてのデータを、連続検出器走査モードにおいて約1.8秒/ステップ〜約12秒/ステップの走査速度および0.02/ステップのステップサイズで約20〜約60分間にわたって集める。回折図を、約10〜16の2θ範囲にわたって集める。
【0077】
試験試料の結晶化度は、以下の通り較正標準との比較により決定する。較正標準品は、20wt%/80wt%アジスロマイシン/担体および80wt%/20wt%アジスロマイシン/担体の物理的混合物からなる。各物理的混合物を、Turbulaミキサーで15分間混ぜ合わせる。機器ソフトウェアを用い、回折図曲線下面積を、直線ベースラインを用いて10°から16°の2θ範囲にわたって積分する。この積分範囲には、担体関連ピークを除外する一方で、できるだけ多くのアジスロマイシン特異的ピークが含まれる。さらに、約10 2θにおける大きなアジスロマイシン特異的ピークを、その積分領域における大きな走査間変動の理由から削除する。結晶性アジスロマイシンパーセントの回折図曲線下面積に対する直線較正曲線を較正標準品から作成する。次いで、試験試料の結晶化度を、これらの較正結果および試験試料についての曲線下面積を用いて決定する。結果は、アジスロマイシン結晶化度平均パーセント(結晶質量による)として報告される。
【0078】
コア中のアジスロマイシンは、非晶質または結晶性であってよいが、実質的な部分のアジスロマイシンは、結晶性、好ましくは結晶性二水和物であることが好ましい。「実質的な部分」とは、アジスロマイシンの少なくとも80%が結晶性であることを意味する。結晶形態が好ましいのは、改善された化学的および物理的安定性のあるコアが得られる傾向があるからである。
【0079】
熱をベースとするプロセスおよび液体をベースとするプロセスを介するコアの形成中にアジスロマイシンの結晶形態を維持するための1つの鍵は、組成物が接触する担体、雰囲気または気体中の水および任意の溶媒和物溶媒の高活性を維持することである。水または溶媒の活性は、結晶状態にある場合以上でなければならない。このことは、アジスロマイシンの結晶形態中に存在する水または溶媒が、雰囲気と平衡状態であり続け、したがって水和水または溶媒和溶媒の損失を妨げるようになるはずである。例えば、コアを形成するためのプロセスが、結晶性アジスロマイシン、結晶性二水和物を、例えば、高温に暴露することを必要とする場合(例えば、溶融−または噴霧−凝結プロセス中に)、アジスロマイシンの近くの雰囲気は、アジスロマイシン結晶からの水和水の損失、したがって、アジスロマイシンの結晶形態の変化を制限するために高湿度に維持されなければならない。
【0080】
必要な湿度レベルは、結晶状態にある水の活性以上のレベルである。これは、実験的に、例えば、動的蒸気収着装置を用いて決定することができる。この試験では、結晶性アジスロマイシンの試料をチャンバーに入れ、一定の温度および相対湿度にて平衡化させる。次いで、試料の重量を記録する。次いで、チャンバー内の雰囲気の相対湿度を低下させながら試料の重量をモニターする。チャンバー内の相対湿度が、結晶状態にある水の活性と同等なレベル以下まで低下した場合、試料は、水和の水が失われるにつれて減量し始めるであろう。したがって、アジスロマイシンの結晶状態を維持するためには、湿度レベルを、アジスロマイシンが減量し始める相対湿度以上に維持しなければならない。類似の試験を用い、アジスロマイシンの結晶性溶媒和物形態を維持するのに必要な溶媒蒸気の適切な量を決定することができる。
【0081】
二水和物形態などの結晶性アジスロマイシンを、ある溶融担体に加える場合、プロセス温度における溶融担体中の水の溶解度のおよそ30〜100wt%の少量の水を担体に加え、アジスロマイシン二水和物結晶形態の損失を防止するのに十分な水が存在するようにすることができる。
【0082】
同様に、液体をベースとするプロセスを用いて組成物を形成する場合、液体は、水和結晶性アジスロマイシンからの水の損失を防止するのに十分な水(例えば、液体中の水の溶解度の30〜100wt%)を含有しなければならない。さらに、液体を除去するための任意の乾燥ステップ中のアジスロマイシンの近くの雰囲気は、水の損失を防止し、それによって結晶性二水和物形態を維持するように十分に加湿されなければならない。一般に、加工温度が高ければ高いほど、アジスロマイシンの水和形態または溶媒和形態を維持するためにアジスロマイシンが暴露される担体、雰囲気または気体中の水蒸気または溶媒の必要濃度は高くなる。
【0083】
アジスロマイシンコアすなわちコーティングされていないアジスロマイシン多粒子を形成しながらアジスロマイシンの結晶形態を維持するためのプロセスは、「Methods for Making Pharmaceutical Multipariculates」という表題の米国仮特許出願第60/527,316号に、より完全に開示されている。
【0084】
本発明のアジスロマイシンコアを後処理し、薬物結晶化度および/または多粒子の安定性を改善することができる。一実施形態において、コアは、アジスロマイシンおよび担体を含み、担体は、コア中にある場合、℃で表されるTの融点を有し;コアは、形成後に、(i)少なくとも35℃であるが(T℃−10℃)未満の温度までコアを加熱すること、および(ii)コアを易動性増強剤に暴露することのうちの少なくとも1つによって処理される。そのような後処理ステップは、コア中の薬物結晶化度の増加、通常はコアの化学的安定性、物理的安定性、および溶解安定性のうちの少なくとも1つの改善をもたらす。後処理プロセスは、「Multipariculate Compositions with Improved Stability」という表題の米国仮特許出願第60/527,245号に、より完全に開示されている。
【0085】
アジスロマイシンコアが、約45〜約55wt%のアジスロマイシン、約43〜約50wt%のベヘン酸グリセリルおよび約2〜約5wt%ポロキサマーを含む場合、アジスロマイシンコアは、それらを約75%の相対湿度で約40℃の温度で維持することによって後処理されるか、あるいは40℃に維持された容器中で水と一緒に2日間以上密封されることが好ましい。
【0086】
アジスロマイシンコアが、約50wt%のアジスロマイシン二水和物、約46〜約48wt%のCompritol(登録商標)888ATO、および約2〜約4wt%のLutrol(登録商標)F127NFを含む場合、アジスロマイシンコアは、それらを約75%の相対湿度で約40℃の温度で維持することによって後処理されるか、あるいは40℃に維持された容器中で水と一緒に約2日間以上密封されることがより好ましい。
【0087】
アジスロマイシンエステルの形成
本発明者らは、アジスロマイシン分解物が、アジスロマイシンエステルの形態であることを発見した。さらに、本発明者らは、アジスロマイシンエステルが、アジスロマイシンの、コーティング材料またはコーティング製剤で用いられる賦形剤との相互作用により形成することがあることを発見した。アジスロマイシンエステルは、アジスロマイシンのヒドロキシル置換基の直接エステル化かエステル転移反応のいずれかにより形成することを発見した。直接エステル化とは、酸置換基を有するコーティングが、アジスロマイシンのヒドロキシル置換基と反応してアジスロマイシンエステルを形成することがあることを意味する。「酸置換基」とは、カルボン酸、スルホン酸、またはリン酸置換基のいずれかを意味する。エステル転移反応とは、エステル置換基、すなわちカルボン酸エステル、スルホニルエステル、またはホスホチル(phosphotyl)エステルを有するコーティングが、アジスロマイシンのヒドロキシル基と反応し、アジスロマイシンにコーティングのカルボキシレートを移動し、したがって、アジスロマイシンエステルの形成をもたらすことを意味する。通常、そのような反応において、コーティング上の1つの酸置換基または1つのエステル置換基は、各々、1個のアジスロマイシン分子と反応することができるが、単一のアジスロマイシン分子上の2個以上のエステルの形成が可能である。
【0088】
アジスロマイシン剤形は、投与に先立って2年間まで、またはさらに長く保存されることがあるため、保存された剤形中のアジスロマイシンエステルの量は、投与に先立って、上記の値を超えないことが好ましい。
【0089】
コア形成中のエステル形成を減少させるためのプロセスは、本発明の譲受人に譲渡された「Azithromycin Multiparticulate Dosage Forms by Melt−Congeal Processes」という表題の米国仮特許出願第60/527,244号、「Controlled Release Multiparticulates Formed with Dissolution Enhancers」という表題の第60/527,319号および「Azithromycin Multipariculate Dosage Form by Liquid−Based Processes」という表題の第60/527,405号に、より詳細に記載されている。
【0090】
エステル形成の速度
本発明者らは、wt%/日で表されるアジスロマイシンエステル形成速度Rが、下式IVに従って、ゼロ次反応モデルを用いて予測することができることを見出した。
=Cエステル÷t (IV)
式中、Cエステルは、形成されるアジスロマイシンエステルの濃度(wt%)であり、tは、温度T(℃)における日数で表されるアジスロマイシンとコーティング間の接触時間である。この式は、Cエステルが約30wt%未満である場合にRを決定するのに適している。
【0091】
コーティング賦形剤のアジスロマイシンとの反応により、様々なアジスロマイシンエステルが形成されることがある。別段の指示がない限り、Cエステルは一般に、混ざり合ったすべてのアジスロマイシンエステルの濃度を指す。
【0092】
コーティングによってアジスロマイシンエステルが形成する反応速度を決定するために、コーティング材料のアジスロマイシンとのブレンドを形成させ、次いで、約20℃〜約50℃の温度で保存する。ブレンドの試料を定期的に抜き取り、後述のようにアジスロマイシンエステルについて分析する。次いで、式IVを用い、アジスロマイシンエステル形成の反応速度を決定する。
【0093】
アジスロマイシンエステルについて組成物を分析する一方法は、様々な分子種を分離するための高速液体クロマトグラフ(HPLC)と、分子種を検出するための質量分析計(MS)を組み合わせた高速液体クロマトグラフィー質量分析計(LCMS)分析による。この方法では、アジスロマイシンおよび任意のアジスロマイシンエステルを、メタノールまたはイソプロピルアルコールなどの適切な溶媒を用いて多粒子から抽出する。次いで、抽出溶媒を、0.45μmナイロンシリンジフィルターで濾過し、溶媒中に存在するすべての粒子を除去することができる。次いで、抽出溶媒中に存在する様々な分子種を、当技術分野においてよく知られている手順を用いてHPLCにより分離することができる。質量分析計を用いて分子種を検出し、内部アジスロマイシン対照か外部アジスロマイシン対照のどちらかを基準にして質量分析計のピーク面積からアジスロマイシンおよびアジスロマイシンエステルの濃度を算出する。エステルの真正標準品が合成されている場合は、アジスロマイシンエステルに対する外部基準を用いることが好ましい。次いで、アジスロマイシンエステル値を、試料中の全アジスロマイシンの百分率として報告する。
【0094】
本発明の組成物は、組成物中に元々存在するアジスロマイシンの総重量に対して、周囲温度および湿度における、またはICHガイドライン、25℃および60相対湿度(RH)のもとでの2年間の保存後に約5wt%未満の全アジスロマイシンエステルを有する。本発明の好ましい実施形態は、そのような保存後に約1wt%未満のアジスロマイシンエステルを有し、より好ましくは約0.5wt%未満であり、最も好ましくは0.1wt%未満である。
【0095】
加速保存試験は、International Conference on Harmonization(ICH)ガイドラインに従って行うことができる。これらのガイドラインのもとで、周囲温度における2年のシミュレーションを、30℃/60%相対湿度(RH)において1年間保存した試料のエステル形成を測定することにより行う。より迅速なシミュレーションは、40℃/75%RHにおいて試料を6ヶ月間保存することによって行うことができる。
【0096】
腸溶コーティング
本発明の医薬組成物は、アジスロマイシンコア上に配置された薬学的に許容できる腸溶コーティングを含む。本明細書で使用する用語「上に配置された」は、コーティングが、アジスロマイシンコアを実質的に取り囲む、覆う、または封入することを意味する。腸溶コーティングは、胃のpHにおいて実質的に不溶性かつ不透過性であり、小腸のpHにおいてより可溶性かつ透過性であるpH感受性コーティングである。腸溶コーティングは、5.0未満のpHにおいて実質的に不溶性かつ不透過性であり、5.0以上のpHにおいて水溶性になることが好ましい。任意のコーティングポリマー、可塑剤、添加剤、および溶媒を含む、コアへの腸溶コーティングの塗布に用いられるすべての材料を、単に「コーティング」と呼ぶ。
【0097】
胃のpHにおいて比較的不溶性かつ不透過性であるが、小腸および大腸のpHにおいてより可溶性かつ透過性である腸溶ポリマーには、ポリアクリルアミド、炭水化物の酸フタレートなどのフタレート誘導体、酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロース、他のフタル酸セルロースエステル、フタル酸セルロースエーテル、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、フタル酸ポリ酢酸ビニル、フタル酸水素ポリ酢酸ビニル、酢酸フタル酸ナトリウムセルロース、デンプン酸フタレート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリ酢酸ビニルフタレートコポリマー、酢酸トリメリット酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、スチレンとマレイン酸のコポリマー、アクリル酸とアクリルエステルのコポリマーなどのポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマー、シェラック、酢酸ビニルとクロトン酸のコポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。
【0098】
酢酸フタル酸セルロース(CAP)をアジスロマイシンコアに塗布し、アジスロマイシン含有多粒子が感受性の十二指腸領域を通過するまでアジスロマイシンの遅延放出を提供する、すなわち、アジスロマイシン含有多粒子が胃から十二指腸へ移行した後、約15分、好ましくは約30分まで胃腸管におけるアジスロマイシンの放出を遅延させることができる。また、CAPコーティング溶液は、フタル酸ジエチル、ポリエチレングリコール−400、トリアセチン、クエン酸トリアセチン、プロピレングリコール、および当技術分野において知られているような他のものなどの1種または複数の可塑剤を含有することができる。好ましい可塑剤は、フタル酸ジエチルおよびトリアセチンである。また、CAPコーティング製剤は、ポリソルベート−80などの1種または複数の乳化剤を含有することができる。
【0099】
また、メタクリル酸とメタクリル酸メチルの陰イオン性アクリルコポリマーは、多粒子が、十二指腸より遠位の小腸内の位置に移動するまでアジスロマイシン含有コアからのアジスロマイシンの放出を遅延させるための特に有用なコーティング材料である。このタイプのコポリマーは、商品名Eudragit−L(登録商標)およびEudragit−S(登録商標)としてRohmPharma Corpから入手可能である。Eudragit−L(登録商標)およびEudragit−S(登録商標)は、メタクリル酸とメタクリル酸メチルの陰イオン性コポリマーである。遊離カルボキシル基のエステルに対する比は、Eudragit−L(登録商標)で約1:1、Eudragit−S(登録商標)で約1:2である。Eudragit−L(登録商標)とEudragit−S(登録商標)の混合物も用いることができる。アジスロマイシン含有コアのコーティングの場合、これらのアクリルコーティングポリマーを、有機溶媒または有機溶媒の混合物に溶解するか、あるいはラテックス製剤として当技術分野において知られている水性分散液を形成することができる。この目的に有用な溶媒は、アセトン、イソプロピルアルコール、水、塩化メチレン、およびそれらの混合物である。一般に、アクリルコポリマーのコーティング製剤には5〜20%の可塑剤を含めることが望ましい。有用な可塑剤は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ヒマシ油、クエン酸トリエチル、およびトリアセチンである。
【0100】
コーティングされた多粒子が胃を出た後のアジスロマイシン放出前の遅延時間は、コーティング中のEudragit−L(登録商標)とEudragit−S(登録商標)の相対量の選択により、およびコーティング厚の選択により制御することができる。Eudragit−L(登録商標)フィルムは、pH6.0以上で溶解し、Eudragit−S(登録商標)フィルムは、7.0以上で溶解し、混合物は、中間のpHで溶解する。十二指腸のpHは、約6.0であり、大腸のpHは、約7.0であるため、Eudragit−L(登録商標)とEudragit−S(登録商標)の混合物からなるコーティングは、アジスロマイシンからの十二指腸の保護を提供する。多粒子が胃を出た後、約15分間以上、好ましくは30分間以上、アジスロマイシンの放出を遅延させるため、好ましいコーティングは、約9:1〜約1:9のEudragit−L(登録商標)/Eudragit−S(登録商標)、より好ましくは約9:1〜約1:4のEudragit−L(登録商標)/Eudragit−S(登録商標)を含む。コーティングは、コーティングされていないコアの重量の約3%〜約200%を占めることができる。コーティングは、コーティングされていないコアの重量の約5%〜約100%を占めることが好ましい。一実施形態において、腸溶コーティング材料は、(i)メタクリル酸とアクリル酸エチルのコポリマーおよび(ii)クエン酸トリエチルを含む。腸溶コーティング材料は、アジスロマイシンエステルの有意な生成を引き起こさないことが好ましい。約5wt%未満の全アジスロマイシンエステル含有量を満足するため、賦形剤および添加剤を含むコーティング材料は、組成物が、R≦1.8×10・e−7070/(T+273)(Tは、℃で表される)のwt%/日で表されるアジスロマイシンエステル形成速度Rを有するように選択される。
【0101】
約1wt%未満の好ましい全アジスロマイシンエステル含有量を満足するため、コーティングは、組成物が、R≦3.6×10・e−7070/(T+273)(Tは、℃で表される)のエステル形成速度を有するように選択される。
【0102】
約0.5wt%未満のより好ましい全アジスロマイシンエステル含有量を満足するため、コーティングは、組成物が、R≦1.8×10・e−7070/(T+273)(Tは、℃で表される)のエステル形成速度を有するように選択される。
【0103】
腸溶コーティング材料の反応性は、反応性置換基の性質および材料の分子量に左右されるはずである。材料が、高分子量(すなわち、>2000ダルトン)を有する場合、材料は一般に、アジスロマイシンとの低反応性を有するであろう。コーティング材料の分子量は、>5000ダルトンであることが好ましく、>10,000ダルトンであることがより好ましい。コーティング材料の例には、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、スチレンとマレイン酸のコポリマー、アクリル酸とアクリルエステルのコポリマーなどのポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、クロトン酸コポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。
【0104】
さらに、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの安定なエステル結合を有する腸溶コーティング材料は、アジスロマイシンとのかなり低い反応性を有する。
【0105】
コーティング材料中に存在する不純物、コーティングを製造する際に用いられる添加剤またはコーティングからの分解生成物は、アジスロマイシンと反応性であることもある。可塑剤などの添加剤は、アジスロマイシンと極めて反応性であることがある。したがって、任意のコーティング候補をスクリーニングし、アジスロマイシンと反応してアジスロマイシンエステルを形成する可能性がある望ましくない量の分子種を含有しないようにしなければならない。
【0106】
フタレート置換基、トリメリテート置換基、または2000ダルトン未満の分子量を含むものなどの他の腸溶コーティング材料は、アジスロマイシンと高反応性であり、望ましくないアジスロマイシンエステルの形成をもたらす可能性がある。本発明において反応性腸溶コーティングを用いるためには、コア中のアジスロマイシンが、腸溶コーティングが物理的に接触しないように、反応性コーティング材料から分離されていることが好ましい。これは、例えば、(1)アジスロマイシンが、外部表面上に実質的に存在せず、アジスロマイシンが、コア賦形剤によって効率よく封入されているコアを用いることにより、または(2)コアと腸溶コーティングの間に保護用バリアーコートを塗布することにより達成することができる。
【0107】
アジスロマイシンが、コアの外部表面に実質的に存在しないコアは、前に記載した熱をベースとするプロセスおよび溶媒をベースとするプロセスを用いて調製することができる。好ましい実施形態において、コアは、溶融−凝結プロセスを用いて製造される。
【0108】
あるいは、バリアーコートを反応性腸溶コーティングと併用する場合、アジスロマイシンコアを、まずバリアーコートでコーティングし、次いで、腸溶コーティングでコーティングする。バリアーコートは、コアと腸溶コーティングの間に位置し、コーティング材料からアジスロマイシン含有コアを効率よく分離する。適当なバリアーコート材料の例には、ステアリルアルコール、セチルアルコール、およびポリエチレングリコールなどの長鎖アルコール;ポロキサマー;ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル;微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびエチルセルロースなどのエーテル置換セルロース系誘導体;グルコース、スクロース、キシリトール、ソルビトール、およびマルチトールなどの糖;ならびに塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、およびリン酸カリウムなどの塩、ならびにそれらの混合物が含まれる。場合により、コーティングの均一性を改善するためにそのような材料と一緒に非反応性結合剤を添加することが望ましいことがある。そのような結合剤の例には、マルトデキストリン、ポリデキストロース、デキストラン、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースが含まれる。バリアーコートは、コーティングされていないアジスロマイシンコアの重量の約1wt%〜約100wt%、好ましくは約2wt%〜約50wt%を占めることができる。
【0109】
バリアーコートを用いる実施形態では、高反応性の腸溶コーティングも用いるができる。この実施形態に適している腸溶コーティング材料の例には、炭水化物の酸フタレートなどのフタレート誘導体、酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロース、他のフタル酸セルロースエステル、フタル酸セルロースエーテル、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、フタル酸ポリ酢酸ビニル、フタル酸水素ポリ酢酸ビニル、酢酸フタル酸ナトリウムセルロース、デンプン酸フタレート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリ酢酸ビニルフタレートコポリマー、酢酸トリメリット酸セルロース、およびそれらの混合物が含まれる。一実施形態において、コーティングされた多粒子は、アジスロマイシン含有コア、バリアーコート、および腸溶コーティングを含み、腸溶コーティングは、フタレート含有コーティングおよびトリメリテート含有コーティングからなる群から選択される。
【0110】
腸内放出コーティングの厚さを調整すると望ましい放出特性が得られる。一般に、より厚いコーティングは、浸食に対してより抵抗性であり、結果として、より長い遅延が得られる。好ましいコーティングは、厚さ約3μm〜厚さ約3mmである。コーティングは、コーティングされていないコアの重量の約5wt%〜約200wt%を占めることが好ましい。コーティングは、コーティングされていないコアの重量の約8wt%〜約100wt%を占めることがより好ましく、コーティングは、コーティングされていないコアの重量の約8wt%〜約40wt%を占めることがより好ましく、コーティングは、コーティングされていないコアの重量の約15wt%〜約30wt%を占めることが最も好ましい。
【0111】
好ましい実施形態において、直径が約0.5〜3.0mmの腸溶コーティングされた多粒子は、その溶解度が、異なるpHで変化するポリマーの混合物でコーティングされる。例えば、好ましいコーティングは、約9:1〜約1:9のEudragit−L(登録商標)/Eudragit−S(登録商標)、より好ましくは約9:1〜約1:4のEudragit−L(登録商標)/Eudragit−S(登録商標)を含む。コーティングは、コーティングされていないコアの重量の約5%〜約200%を占めることができる。
【0112】
別の好ましい実施形態において、直径が約0.01〜0.5mm、好ましくは直径が0.05〜0.5mmのアジスロマイシン多粒子は、コーティングされていないアジスロマイシンコアの重量の約25%〜約200%を占める腸溶コーティング材料のうちの1種または複数でコーティングされる。
【0113】
コーティング添加剤
コーティング製剤には、望ましい放出特性を促進するため、またはコアへのコーティングの塗布を容易にするか、あるいはコアへのコーティングの耐久性または安定性を改善するための添加剤が含まれることが多い。添加剤のタイプには、可塑剤、細孔形成剤(pore former)、および流動促進剤が含まれる。そのような材料は、コーティングの一部であることから、それらのアジスロマイシンとの反応性も考慮しなければならない。
【0114】
コーティング添加剤は、反応性置換基を有しないことが理想的である。それらの純粋な形態で反応性の置換基を有しない適当なコーティング添加剤の例には、鉱油、ワセリン、ラノリンアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトールおよびトリエタノールアミンなどの可塑剤;ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの細孔形成剤;ならびに、コロイド状二酸化ケイ素、タルクおよびコーンスターチなどの流動促進剤が含まれる。
【0115】
安定でかつ耐久性のある一貫して再現性のあるコーティングを得るために、可塑剤などの添加剤を含有する市販のコーティング製剤を用いることが望ましいことが多い。しかしながら、そのような製剤中の添加剤の一部は、反応してアジスロマイシンエステルを形成することがある置換基を有する。そのような材料は一般に、低分子量であるため、高分子量コーティング賦形剤に比べて極めて易動性である。結果として、それらは、アジスロマイシンとの高い反応速度を有し、アジスロマイシンエステルを形成する。したがって、そのようなコーティング添加剤を用いる場合、コアの外部表面上に存在するアジスロマイシンの量が低いことおよび/またはコアにまず保護用コーティングを塗布してコーティング添加剤のアジスロマイシンとの接触を防止し、したがって、アジスロマイシンエステルの量を許容できるレベルに保つことが好ましい。保護用コーティングとして用いることができる材料の例には、高反応性コーティング賦形剤との使用について上記に引用したものが含まれる。
【0116】
コーティング溶媒
コーティングは、溶媒をベースとするコーティングプロセスおよびホットメルトコーティングプロセスを用いて形成することができる。溶媒をベースとするプロセスでは、コーティングを、溶媒、コーティング賦形剤および任意選択のコーティング添加剤を含む溶液または懸濁液をまず形成することにより製造する。コーティング材料は、コーティング溶媒中に完全に溶解しているか、あるいは乳濁液もしくは懸濁液またはその間のいずれかとして溶媒中に分散しているだけであってもよい。溶液として用いられる溶媒は、アジスロマイシンと反応せずかつアジスロマイシンを分解せず、薬学的に許容できるという意味で不活性でなければならない。コーティング溶液中でのアジスロマイシンエステル形成が少量にするため、溶媒上の酸またはエステル置換基の濃度は、溶媒1g当たり約0.1meq未満であることが好ましい。一態様において、溶媒は、室温で液体である。溶媒は、揮発性溶媒であることが好ましい。「揮発性溶媒」とは、材料が、周囲圧力で約150℃未満の沸点を有することを意味するが、より高い沸点の少量の溶媒を用いることができ、それでもなお、許容できる結果が得られる。
【0117】
アジスロマイシン含有コアにコーティングを塗布する際に用いるのに適している溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノールの異性体およびブタノールの異性体などのアルコール;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタンおよび鉱油などの炭化水素;メチルtert−ブチルエーテル、エチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル;クロロホルム、二塩化メチレンおよび二塩化エチレンなどのクロロカーボン;テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;N−メチルピロリジノン;アセトニトリル;水;ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0118】
本発明の別の実施形態において、適当な溶媒は、アジスロマイシンが低い溶解度を有する溶媒である。別段の規定がない限り、溶媒におけるアジスロマイシンの溶解度は、周囲温度で測定する。そのような溶媒におけるアジスロマイシンの低い溶解度は、コーティング操作中に溶解するコア中のアジスロマイシンの量を遅らせる傾向がある。このことが望ましいのは、溶解したアジスロマイシンは、固体アジスロマイシンより反応性であり、溶解したアジスロマイシンのコーティング製剤中またはコア中の材料との反応が増加するからである。さらに、非晶質アジスロマイシンは一般に、結晶性アジスロマイシンより反応性である。コーティングプロセス中の一部の結晶性アジスロマイシンの溶解は、乾燥すると再凝固することがある。しかしながら、この再凝固したアジスロマイシンは、結晶性よりもむしろ非晶質であるため、より反応性であることがある。溶媒におけるアジスロマイシンの溶解度は、約10mg/mL未満であることが好ましく、約5mg/mL未満であることがより好ましく、約1mg/mL未満であることが最も好ましい。
【0119】
アジスロマイシンは、極めて親水性の化合物であるため、アジスロマイシンは、疎水性の傾向のある溶媒において低い溶解度を有する。適当な疎水性溶媒の例には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、鉱油などの炭化水素が含まれる。
【0120】
水へのアジスロマイシンの溶解度も極めてpH依存性であり、その溶解度は、pHが増加するにつれて減少する。コーティングの溶媒をベースとする塗布に好ましい溶媒は、pH7以上の水である。そのような場合、コーティング溶液は、懸濁剤を安定化するための添加剤を含むコーティングポリマーの水懸濁液であることが多い。そのようなコーティング製剤は、製薬技術分野においてラテックスまたはプソイドラテックス製剤と呼ばれることが多い。中性を超えるpHを有する水は、水に少量の塩基を溶解することにより、またはpHを正確に制御する緩衝溶液を調製することにより作製することができる。pHを上げるために水に加えることができる塩基の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化コリンおよび水酸化カリウムなどの水酸化物;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムおよび重炭酸アンモニウムなどの重炭酸塩;炭酸アンモニウムおよび炭酸ナトリウムなどの炭酸塩;リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウムなどのリン酸塩;ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルグルカミン、グルコサミン、エチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミンおよびトリエチルアミンなどのアミン;およびゼラチンなどのタンパク質が含まれる。特に有用な緩衝液は、20mM NaHPO、466mM KHPO、87mM NaClおよび0.2mM KClを含み、pH7に調整された水溶液であるリン酸塩緩衝食塩水(PBS)溶液である。
【0121】
製薬技術分野における当業者には当然のことながら、アジスロマイシンコアは、パンコーター(例えば、Freund Corp.of Tokyo、Japanから入手可能なHi−Coater、Manesty of Liverpool、U.K.から入手可能なAccela−Cota)、流動層コーター(例えば、Glatt Air Technologies,Inc.of Ramsey、New JerseyおよびNiro Pharma Systems of Bubendorf、Switzerlandから入手可能なWursterコーターまたはトップスプレーコーター)およびロータリーグラニュレーター(例えば、Freund Corpから入手可能なCF−Granulator)などの標準的コーティング装置を用いてコーティングすることができる。例えば、コーティングを形成するために溶媒をベースとするプロセスを用いる場合、Wurster流動層システムを用いる。このシステムでは、円筒形部品(Wursterカラム)を、装置内の円錐状の製品容器内に設置する。空気は、製品容器の底に位置する分配プレートを通過してコアを流動化し、上方に移動する空気の大部分は、Wursterカラムを通過する。コアは、コーティング溶液を上方へ噴霧する微粒化ノズルを備えたWursterカラムに引き込まれる。コアは、Wursterカラムを通過しながらコーティングされ、コーティング溶媒は、多粒子がカラムを出る際に除去される。
【0122】
医薬組成物
本発明のコーティングされた多粒子は、界面活性剤、従来のマトリックス材料、充填剤、希釈剤、滑沢剤、保存剤、増粘剤、固結防止剤、崩壊剤、または結合剤などの1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤と混合またはブレンドされ、適当な経口剤形を形成することができる。適当な剤形には、錠剤、カプセル剤、サシェ剤、再構成用経口散剤などが含まれる。
【0123】
用語「錠剤」は、圧縮錠剤、コーティング錠、および当技術分野において知られている他の形態を包含することを意図している。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、1995)を参照されたい。使用環境への投与により、錠剤は、速やかに崩壊し、多粒子を使用環境中に分散させる。
【0124】
一実施形態において、錠剤は、結合剤、崩壊剤、または当技術分野において知られている他の賦形剤と混合し、次いで、圧縮力を用いて錠剤に形成した多粒子を含む。結合剤の例には、微結晶性セルロース、デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、ポリエチレングリコール、ならびにスクロース、グルコース、デキストロース、およびラクトースなどの糖が含まれる。崩壊剤の例には、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムが含まれる。また、錠剤は、使用環境に入れられた場合に二酸化炭素を発生する発泡剤(酸−塩基の組合せ)を含んでいてもよい。発生した二酸化炭素は、錠剤の崩壊を助ける。上記で考察したものなどの他の賦形剤も、錠剤中に含んでいてもよい。錠剤で用いられる多粒子、結合剤、および他の賦形剤は、錠剤の形成に先立って造粒することができる。当技術分野においてよく知られている湿式または乾式造粒プロセスを用いることができるが、ただし、造粒プロセスは、多粒子の放出プロファイルを変化させないこととする。あるいは、材料を、直接圧縮により錠剤を形成することができる。錠剤を形成するのに用いられる圧縮力は、高い強度を有する錠剤を提供するように十分に高くなければならないが、錠剤に含まれる多粒子を損傷するほど高すぎてはならない。一般に、約3〜約10kpの硬度を有する錠剤をもたらす圧縮力が望ましい。
【0125】
別の実施形態において、剤形は、カプセルの形態である。Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、1995)を参照されたい。用語「カプセル」は、多粒子および任意選択の賦形剤が、硬質かまたは軟質の、可溶性の容器またはシェルで包まれている固体剤形を包含することを意図している。
【0126】
剤形は、丸剤であってもよい。用語「丸剤」は、結合剤および上述の他の賦形剤と混合された多粒子を含む小さな、丸い固体剤形を包含することを意図している。投与により、丸剤は、速やかに崩壊し、多粒子をそこに分散させる。
【0127】
別の実施形態において、多粒子剤形は、多粒子および上述の他の賦形剤を含み、次いで、投与に先立って、水性投与ビヒクルを含む液体投与ビヒクル中に懸濁される粉末または顆粒の形態である。そのような剤形は、いくつかの方法によって調製することができる。一方法では、粉末を容器に入れ、一定量の水などの液体を容器に加える。次いで、容器を、混合、攪拌、または振盪させ、剤形を水に懸濁させる。別の方法では、多粒子および投与ビヒクル賦形剤を、2つ以上の別々のパッケージで供給する。投与ビヒクル賦形剤を、まず、水などの液体に溶解または懸濁させ、次いで、多粒子を液体ビヒクル溶液に加える。あるいは、まず、2個以上の個々のパッケージ中の投与ビヒクル賦形剤および多粒子を容器に加え、容器に水を加え、容器を混合または攪拌して懸濁液を形成することができる。適当なビヒクルの例には、水、飲料、および界面活性剤、増粘剤、懸濁化剤などを含む剤形を形成するのに役立つ他の賦形剤と混合された水が含まれる。
【0128】
本剤形は、等価な即時放出剤形に比べて、少なくとも1.1の、投与されたアジスロマイシンの忍容性の相対的改善度を提供する。忍容性の相対的改善度は、少なくとも約1.25であることが好ましい。忍容性の相対的改善は、少なくとも約1.5であることがより好ましい。さらに、忍容性の相対的改善は、少なくとも約2.0であることがより好ましい。忍容性の相対的改善は、少なくとも約3.0であることが最も好ましい。「忍容性の相対的改善度」は、(1)即時放出対照剤形の投与に起因する有害事象百分率の、(2)本発明の腸溶コーティングされた多粒子剤形の投与に起因する有害事象百分率に対する比として定義され、即時放出対照剤形および腸溶コーティングされた多粒子剤形は、同量のアジスロマイシンを含有する。即時放出対照剤形は、Zithromax(登録商標)錠剤、カプセル剤、または経口懸濁液用の単回投与パケットなどの任意の従来型即時放出剤形であってよい。例えば、ある即時放出対照剤形が、20%の投与に起因する有害事象百分率を提供し、本発明の腸溶コーティングされた多粒子剤形が、10%の投与に起因する有害事象百分率を提供する場合、忍容性の相対的改善度は、20%÷10%すなわち2である。
【0129】
また、本剤形は、十二指腸または十二指腸より遠位における投与されたアジスロマイシンのアジスロマイシン放出速度および/または溶解速度を有意に低下させないことにより適当なバイオアベイラビリティーを維持することが好ましい。通常、本剤形は、対照組成物に比べて、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%のバイオアベイラビリティーを有する。
【0130】
本発明の医薬剤形を用い、哺乳類において、前記哺乳類に有効量のアジスロマイシンを投与することにより1種または複数の細菌または原虫感染症を治療する。用語「有効量のアジスロマイシン」は、本発明に従って投与した場合、哺乳類における細菌または原虫感染症の発症を阻止し、その症状を緩和し、その進行を停止させ、またはそれを解消する量のアジスロマイシンを意味する。用語「哺乳類」は、分類学的クラスMammaliaのメンバーである個々の動物である。クラスMammaliaには、例えば、ヒト、サル、チンパンジー、ゴリラ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットが含まれる。本発明において、好ましい哺乳類は、ヒトである。
【0131】
成人ヒトの場合、および30kgを超える体重の小児ヒトの場合、ある投与量で投与されるアジスロマイシンの量は通常、約250mgA〜約7gAである。用語「gA」は、塩ではなく、水和されてもいない、749g/molの分子量を有するアジスロマイシンマクロライド分子を意味する活性アジスロマイシンのグラム数を指す。成人ヒトの場合、および体重が30kg以上の小児ヒトの場合、剤形は、約1.5〜約4gA、より好ましくは約1.5〜約3gA、最も好ましくは約1.8〜約2.2gAを含有することが好ましい。30kg以下の体重の小児ヒトの場合、アジスロマイシン投与量は通常、患者の体重に従って増減され、患者の体重1kg当たり約30〜90mgA、好ましくは約45〜約75mgA/kg、より好ましくは約60mgA/kgを含有する。アジスロマイシンは、単回投与療法または複数回投与療法(例えば、1日に2回以上投与することまたは2〜5日以上の間に1回または複数回投与すること)を用いて投与することができる。1日用量は、等しい投与量で1日に1〜4回投与することができる。アジスロマイシンは、1日1回投与されることが好ましい。アジスロマイシン療法の全過程は、アジスロマイシンの一単回投与からなることがより好ましい。
【0132】
動物/獣医学用途については、量を、例えば、治療されている動物対象のサイズに応じて、これらの限度外であるように調整することができることは言うまでもない。
【0133】
例示
本発明を、以下の実施例によりさらに例示する。続く実施例では、以下の定義を用いる。
【0134】
百分率(%)で表される量は、別段の指示がない限り、総重量を基準とした重量パーセントを意味する。
【0135】
Lutrol(登録商標)F127NF(以後、「Lutrol(登録商標)」と呼ぶ)およびPluronic(登録商標)F127(以後、「Puronic(登録商標)」と呼ぶ)は、Poloxamer 407NFとしても知られ、OH値を元に算出された9,840〜14,600g/molの分子量を有し、一般構造
【0136】
【化1】

(式中、aは、約101であり、bは、約56である)を有する、BASF Corporation、Mount Olive、NJから入手されたポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックコポリマーである。Lutrol(登録商標)は、Pluronic(登録商標)の薬学的等価物である。
【0137】
モノ−、ジ−およびトリベヘン酸グリセリルの混合物からなり、ジエステル画分が支配的であり、ベヘン酸(C22脂肪酸)によるグリセロールのエステル化によって合成され、次いで、噴霧冷却によって微粒化されるCompritol(登録商標)888ATO(以後、「Compritol(登録商標)」と呼ぶ)は、GATTEFOSSE Corporation、Saint Priest、Cedex、Franceから入手した。
【実施例】
【0138】
(実施例1)
この実施例は、主に十二指腸の下方でアジスロマイシンを放出するように設計された遅延放出剤形を製造する際に用いるための多粒子を製造するためのプロセスを例示する。このプロセスは、(1)コーティングされていないアジスロマイシン多粒子コアを調製すること;(2)コアの上に第1の持続放出コーティングを塗布すること;および(3)第1のコートの上に第2の腸溶(pH感受性、遅延放出)コーティングを塗布することからなっていた。
【0139】
薬物を含有する多粒子コアは、ローターインサート付きの流動層プロセッサー(Model GPCG−5)を用いて調製した。初めに、ローターボウルに、アジスロマイシン2,500gを充填し、可塑化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Opadry(登録商標)、Colorcon、West Point、PA)結合剤溶液(10%固体濃度)を、約250μmの平均コア顆粒サイズが得られるまで、回転ベッド中に噴霧した。次に、15wt%固体まで希釈した可塑化エチルセルロース(Surelease(商標))コーティング懸濁液を、コア粒子上に噴霧した。合計で30wt%のコーティングおよび60wt%のコアを有するコーティングされた粒子の第1バッチを製造した。次いで、40wt%のコーティングおよび60wt%のコアを有する第2バッチを製造した。最後に、多粒子の両バッチを、望ましいコーティング終点が得られるまで、流動層ロータープロセッサー(Glatt Model GPCG−1)中、腸溶コーティングでコーティングした。腸溶コーティングは、12.3%メタクリル酸コポリマー(Eudragit(商標)L30D−55)、6.2%タルク、1.5%クエン酸トリエチルおよび80%水を含有する懸濁液であった。40%Surelease(商標)コートでコーティングされた第1バッチについては、20%腸溶コートを塗布した。30%Surelease(商標)コートでコーティングされた第2バッチについては、33.7%腸溶コートを塗布した。最終製品は、粒子が約300μmの平均サイズを有する腸溶コーティングされた多粒子であった。
【0140】
(実施例2)
この実施例は、主に十二指腸の下方でアジスロマイシンを放出するように設計された遅延放出剤形を製造する際に用いるための多粒子を製造するためのプロセスを例示する。このプロセスは、(1)コーティングされていないアジスロマイシン多粒子コアを調製すること;(2)コアの上に第1の持続放出拡散バリアーコーティングを塗布すること;および(3)第1のコートの上に第2の腸溶(pH感受性、遅延放出)コーティングを塗布することを含む。
【0141】
アジスロマイシン含有多粒子コアは、アジスロマイシン化合物を、95:5(w/w)の相対量で微結晶性セルロース(Avicel(商標)PH101、FMC Corp.、Philadelphia、Pa.)とブレンドし、ブレンドの重量の約27wt%に相当する水と一緒にHobartミキサー中でブレンドを湿塊化し、穴あきプレート(Luwa EXKS−1押出機、Fuji Paudal Co.、Osaka、Japan)に通して湿塊を押し出し、押出物を球状化し(Luwa QJ−230マルメライザー、Fuji Paudal Co.)、約1mm直径である最終コアを乾燥することにより調製する。
【0142】
次に、Wursterボトムスプレー流動層プロセッサー(Glatt GPCG−1)を用い、コーティングされていないアジスロマイシン含有多粒子を拡散バリアーコーティングでコーティングする。15%固体まで希釈した可塑化エチルセルロース(Surelease(商標))コーティング懸濁液を、コア粒子上に噴霧する。通常、5%〜20%の拡散バリアーコーティングを塗布する。塗布されたバリアーコーティングの量は、コーティングされていないコアからのアジスロマイシン放出の速度を決定する。
【0143】
最後に、Wursterボトムスプレー流動層プロセッサー(Glatt GPCG−1)を用い、拡散バリアーでコーティングされた粒子の上に腸溶コーティングを塗布する。典型的な腸溶コーティングレベルは、25%〜50%である。腸溶コーティングは、12.3%メタクリル酸コポリマー(Eudragit(商標)L30D−55)、6.2%タルク、1.5%クエン酸トリエチルおよび80%水を含有する懸濁液である。
【0144】
遅延放出コーティングは、pHが5.5を超える環境において可溶であるため、このようにして調製された多粒子は、pHが5.5を超える胃の下方で、バリアーでコーティングされた粒子コアからアジスロマイシンを放出し、主に十二指腸の下方にアジスロマイシンを送達する粒子コアは、持続的にアジスロマイシンを放出する。
【0145】
(実施例3)
この実施例は、主に十二指腸の下方でアジスロマイシンを放出するように設計された遅延放出剤形を製造する際に用いるための多粒子を製造するためのプロセスを例示する。このプロセスは、(1)コーティングされていないアジスロマイシン多粒子コアを調製すること;(2)コア粒子の上に保護コートを塗布すること;および(3)第1のコートの上に第2の腸溶(pH感受性、遅延放出)コーティングを塗布することを含む。
【0146】
薬物を含有する多粒子コアは、ローターインサート付きの流動層プロセッサー(Model GPCG−1)を用いて調製する。初めに、ローターボウルに、アジスロマイシン薬物400gを充填し、5wt%のポリ(アクリル酸エチル、アクリル酸メチル)(Eudragit NE−30−D)、5wt%の可塑化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Opadry(登録商標))および90%の水を含有する結合剤溶液を、約250μmの平均コア顆粒サイズが得られるまで、回転ベッド中に噴霧する。
【0147】
ローターインサート付きの同じ流動層プロセッサー中のコーティングされていないコア粒子上に、5wt%の可塑化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Opadry(登録商標))溶液を含有する結合剤溶液を、10wt%のコーティングが塗布されるまで噴霧する。この中間コーティングは、最終腸溶コーティングのコア粒子への接着を強化する。
【0148】
腸溶コーティング(通常、15wt%〜50wt%)を、上記のように流動層プロセッサーを用いて塗布する。腸溶コーティングは、12.3%メタクリル酸コポリマー(Eudragit(商標)L30D−55)、6.2%タルク、1.5%クエン酸トリエチルおよび80%水を含有する懸濁液である。最終製品は、粒子が約300μmの平均サイズを有する腸溶コーティングされた多粒子である。
【0149】
アジスロマイシンとの適度に低い反応性を有する適当な腸溶コーティングを識別するための方法
表1に列挙した腸溶コーティングを形成するのに有用な材料のアジスロマイシンとの反応性は、以下の通り決定した。アジスロマイシンと、様々な材料、特に酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース(HPMCAS)、酢酸セルロース(CA)、酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、およびトリアセチンとの混合物50/50(w/w)は、乳鉢に等しい重量のアジスロマイシンおよび材料を加え、スパチュラで混合することにより調製した。次いで、混合物を、表1に列挙した保存時間、50℃および20%RHに制御された大気オーブンに入れた。
【0150】
アジスロマイシンエステルは、LC/MS検出により各々の混合物において識別した。試料は、1.25mgアジスロマイシン/mLの濃度におけるメタノールによる抽出および15分間の超音波処理により調製した。次いで、試料溶液を、0.45μmナイロンシリンジフィルターで濾過した。次いで、試料溶液を、Hewlett Packard HP1100液体クロマトグラフでHypersil BDS C18 4.6mm×250mm(5μm)HPLCカラムを用いるHPLCにより分析した。試料溶出に用いた移動相は、以下の通りのイソプロピルアルコールおよび25mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH約7)のグラジエント、すなわち、50/50(v/v)イソプロピルアルコール/酢酸アンモニウムの初期条件とし、次いで、イソプロピルアルコール百分率を、30分かけて100%まで増加させ、さらに15分間は100%に保った。流速は、0.80mL/分であった。この方法は、75μLの注入容積および43℃のカラム温度を用いた。検出には、Finnigan LCQ Classic質量分析計を用いた。大気圧化学イオン化(APCI)源は、選択的イオンモニタリング法による正イオンモードで用いた。アジスロマイシンエステル値は、外部アジスロマイシン標準品を基準としてMSピーク面積から算出した。アジスロマイシンエステル値は、試料中の全アジスロマイシンの百分率として報告した。この分析の結果を、50℃において測定されたエステル形成速度(R)として以下に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
低濃度のアジスロマイシンエステルを有する組成物の形成について上記に示したコーティングについてのR値を用い、エステルの望ましい低濃度を得るための50℃における最高許容エステル形成速度(Remax)を算出した。これらの計算の結果を以下に示す。
【0153】
【表2】

【0154】
エステル形成のこれらの計算された最高速度と、アジスロマイシンと腸溶コーティング材料の混合物を用いて上記で測定された速度との比較は、コーティング材料のうち4つが、トリアセチンを除いて、エステルが5wt%未満という好ましい範囲である組成物を得るのに適していることを示している。トリアセチンによるより高いエステル形成速度は、アジスロマイシンエステルが5wt%未満の組成物を得るためには、この賦形剤を、コアの周囲の保護コーティング、または外部表面上に低濃度のアジスロマイシンを有するコアと一緒に使用すべきであることを示している。アジスロマイシンエステルが1wt%未満の多粒子を得るためには、保護コーティングまたは外部表面上に低濃度のアジスロマイシンを有するコアの使用は、酢酸トリメリット酸セルロースについても必要である。同様に、アジスロマイシンエステルが0.1wt%未満の多粒子を得るためには、保護コーティングまたは外部表面上に低濃度のアジスロマイシンを有するコアは、酢酸フタル酸セルロースについても必要である。また、データは、HPMCAS(No.2)およびCA(No.3)についてのエステル形成速度が、アジスロマイシンエステルが低濃度の組成物を得るための計算された最高値を優に下回っていることを示している。したがって、これらの賦形剤は、保護層または外部表面上のアジスロマイシンが低濃度のコアの必要なしにコーティング材料として用いることができる。
【0155】
コーティングされていないアジスロマイシン多粒子の調製
50wt%のアジスロマイシン、40wt%のステアリルアルコールおよび10wt%のポロキサマー407(PLURONIC F127、BASF Corp.of Parsippany、New Jersey)を含むコーティングされていない多粒子UM1を以下の通り調製した。ステアリルアルコール(1600g)および400gのポロキサマー407を容器に入れ、ホットプレート上で約100℃まで加熱した。次に、2000gのアジスロマイシン二水和物を溶融物に加え、スパチュラを用いて手で約15分間混合すると、溶融組成物中のアジスロマイシンのフィード懸濁液が得られた。フィード懸濁液を、ギヤーポンプ(Zenith Pumps、Sanford、North Carolina)を用い、直径10cmのスピニングディスクアトマイザーの中央に約250g/分の速度でポンプ注送し、アジスロマイシン多粒子を形成させた。注文製作されたスピンニングディスクアトマイザーは、直径が10.1cm(4インチ)の腸形状(bowel−shaped)のステインレススティールディスクからなる。ディスクの表面を、ディスクの下の薄膜ヒーターで約90℃まで加熱する。そのディスクを、約10,000RPMまでディスクを駆動するモーター上に取り付ける。このスピニングディスクアトマイザーに対して適当な市販同等品は、Niro A/S(Soeborg、Denmark)により製造されたFX1 100−mmロータリーアトマイザーである。アジスロマイシン多粒子を形成する間は、スピンニングディスクアトマイザーの表面を100℃に維持し、ディスクを3200rpmで回転させた。スピニングディスクアトマイザーによって形成された粒子を、周囲空気中で凝結させ、集めた。この方法によって調製されたアジスロマイシン多粒子は、走査電子顕微鏡を用いて決定された約180μmの平均粒径を有していた。
【0156】
50wt%のアジスロマイシンおよび50wt%のステアリルアルコールを含むコーティングされていない多粒子UM2は、以下の例外とともにUM1を形成するのに用いられた手順を用いて形成した。フィードは、約85℃で溶融され、750gのステアリルアルコールおよび750gのアジスロマイシン二水和物からなっていた。ディスク速度は、4800rpmであり、その温度は、約95℃であった。得られた粒子は、約250μmの平均粒径を有していた。
【0157】
70wt%のアジスロマイシンおよび30wt%のステアリルアルコールを含むコーティングされていない多粒子UM3は、以下の例外とともにUM1を形成するのに用いられた手順を用いて形成した。フィードは、約100℃で溶融され、121gのステアリルアルコールおよび282gのアジスロマイシン二水和物からなっていた。ディスク速度は、6700rpmであり、その温度は、約95℃であった。得られた粒子は、約180μmの平均粒径を有していた。
【0158】
46wt%のモノ−、ジ−、およびトリ−ベヘン酸グリセリル(Gattefosse of France製のCOMPRITOL888)および4wt%のポロキサマー(BASF of Mount Olive、New Jersey製のLUTROL F127)の担体中に50wt%のアジスロマイシンを含むコーティングされていない多粒子UM4は、以下の手順を用いて調製した。2.5kgのアジスロマイシン二水和物、2.3kgのCOMPRITOLおよび0.2kgのLUTROLの混合物を、Vブレンダー(Blend Master、Patterson−Kelley Co.、East Straudsburg、Pennsylvania)中で20分間ブレンドした。次いで、このブレンドを、3000rpmのFitzpatrick M5Aミル(The Fitzpatrick Company、Elmhurst、IL)を用い、0.065インチ(約0.17cm)スクリーンを用いるナイフ前進(knives forward)で微粉砕した。次いで、微粉砕したブレンドを、さらに20分間、Vブレンダー中に戻した。次いで、このブレンドした材料の3つのバッチを混ぜ合わせ、プレブレンドフィードを形成した。プレブレンドフィードを、140g/分の速度でB&P 19mm二軸押出機(B&P Process Equipment and Systems、LLC、Saginaw、MIから購入した25L/D比のMP19−TC)に送った。押出機を、約90℃の温度でCOMPRITOL/LUTROL中のアジスロマイシンの溶融フィード懸濁液を生成するように設定した。次いで、フィード懸濁液を、UM1について用いたスピニングディスクアトマイザーに送った。スピニングディスクアトマイザーを、直径が約8フィート(約240cm)のプラスチックバッグに入れて凝結させ、アトマイザーによって形成された多粒子を捕捉した。ディスク下方の口から空気を導入し、凝結したばかりの多粒子の冷却を提供し、バッグをその伸びきったサイズおよび形状まで膨張させた。多粒子を形成するために、スピニングディスクアトマイザーを5500rpmで回転させ、表面を約90℃に維持した。得られた多粒子の平均粒径は、約210であると決定された。次いで、多粒子を、浅いトレー中に約2cmの深さで入れることによって後処理した。次いで、このトレーを、40℃および75%RHにて5日間、制御された大気オーブンに入れた。
【0159】
46wt%のモノ−、ジ−、およびトリ−ベヘン酸グリセリル(Gattefosse of France製のCOMPRITOL888)および4wt%のポロキサマー(BASF of Mount Olive、New Jersey製のLUTROL F127)の担体中に50wt%のアジスロマイシンを含むコーティングされていない多粒子UM5は、Leistritz 27mm押出機を使用して溶融混合物を形成したことを除いては、コーティングされていない多粒子UM4について記載したものと類似した手順を用いて調製した。
【0160】
アジスロマイシン多粒子からの薬物放出速度
コーティングされていないアジスロマイシン多粒子UM1、UM2、UM3、およびUM4からのアジスロマイシン放出速度を決定した。UM1、UM2、およびUM3の試料については、以下の溶解手順を用いた。コーティングされていない多粒子の試料750mgを、37.0±0.5℃に維持した0.01N HCl(pH2)模擬胃緩衝液(GB)10mLで濡らし、次いで、50rpmで回転するTeflonでコーティングされたパドルを備えたUSP Type2ディソエット(dissoette)フラスコに入れた。フラスコには、模擬GBがさらに750mL入っていた。次いで、フラスコ中の液体の試料3mLを、多粒子試料のフラスコへの添加後、表4に示す時間の経過で集めた。試料を、0.45μmのシリンジフィルターで濾過した後、HPLC(Hewlett Packard1100、Waters Symmetry Cカラム、1.0mL/分にて45:30:25アセトニトリル:メタノール:25mM KHPO緩衝液、ダイオードアレイ分光光度計で210nmにて測定される吸光度)を介して分析した。
【0161】
同様の溶解プロトコルを用い、UM4多粒子の試料からのアジスロマイシン放出速度を試験した。投与ビヒクルは、pH3.0のクエン酸塩緩衝液に98.2wt%のスクロース、0.2wt%のヒドロキシプロピルセルロース、0.2wt%のキサンタンガム、0.5wt%のコロイド状SiO、0.4wt%のチェリー香味料、および0.6wt%のバナナ香味料からなる混合物21.8gを溶解させることにより調製した。次いで、500mgAのアジスロマイシンを含有する多粒子の試料をバイアルに入れ、37℃まで温めた60mLの投与ビヒクルを多粒子に加えた。バイアルを30秒間混合し、次いで、多粒子の懸濁液を690mLの0.01M HCl模擬GB溶解媒体に加えた。バイアルを、0.01N HClの2つの20mLのアリコートで洗浄し、模擬GBに加えた。模擬GBの総容積は、750mLであった。
【0162】
以下に示すこれらの溶解度試験の結果は、本質的にすべてのアジスロマイシンが、2.5〜60分の間にコーティングされていないアジスロマイシン多粒子のすべてから放出されたことを示している。
【0163】
【表3】

【0164】
腸溶コーティングされたアジスロマイシン多粒子の調製
コーティングされた多粒子CM1、CM2、CM3およびCM4
コーティングされた多粒子(CM1、CM2、CM3およびCM4)は、以下の通り、アジスロマイシンの放出を遅延させる腸溶ポリマーでアジスロマイシン多粒子UM1の試料をコーティングすることにより調製した。スプレー溶液は、87.4wt%のアセトンおよび4.6wt%の水にHG等級の酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Shin Etsu製のHPMCAS−HG)8wt%を溶解させることにより調製した。多粒子を、13mmに設定したWursterカラムを備えたGlatt GPCG−1流動層コーター(Glatt Air Technologies、Ramsey、New Jersey)中で流動化した。流動化気体(窒素)を、36℃の入口温度および28℃〜29℃のベッド温度で1100〜1200L/分の速度にてベッドを通して循環させた。スプレー溶液を、微粒化圧力が2.3バール(230kPa)の窒素を用い、7〜12g/分の速度で二流体ノズルを通してベッドに導入した。コーティングされた多粒子の試料を、CM1多粒子については84分に(コーティング量11wt%)、CM2多粒子については139分に(コーティング量18wt%)、CM3多粒子については237分に(コーティング量28wt%)、およびCM4多粒子については293分に(コーティング量33wt%)に集めると、規定のコーティングを有する多粒子が得られた。コーティング量は、コーティングされたコアの最終重量で除され、100%を乗じた塗布されたコーティング材料の重量として算出した。
【0165】
コーティングされた多粒子CM5は、以下の例外とともに、CM1の方法を用いて多粒子をHPMCAS−HGでコーティングすることによりUM1多粒子から調製した。入口の流動化気体温度を41℃に設定し、微粒化圧力は、2バール(200kPa)に設定した。多粒子を120分間コーティングすると、16.1wt%のコーティング量が得られた。
【0166】
コーティングされた多粒子CM6、CM7およびCM8は、CM1の方法を用いて多粒子をHPMCAS−HGでコーティングすることによりUM2多粒子から調製した。コーティングされた多粒子の試料を、CM6多粒子については91.5に(コーティング量8.7wt%)、CM7多粒子については169分に(コーティング量16.8wt%)、およびCM8多粒子については250分に(コーティング量25.2wt%)集めると、規定のコーティングを有する多粒子が得られた。
【0167】
コーティングされた多粒子CM9は、CM1の方法を用いて多粒子をHPMCAS−HGでコーティングすることによりUM3多粒子から調製した。多粒子を105分間コーティングすると、10.6wt%のコーティング量が得られた。
【0168】
コーティングされた多粒子CM10は、以下の通り、アジスロマイシンの放出を遅延させる腸溶ポリマーで多粒子をコーティングすることによりUM4多粒子から調製した。16wt%のEUDRAGIT L30D−55(Rohm GmbH製のメタクリル酸とアクリル酸エチルの1:1コポリマー)、1.6wt%のクエン酸トリエチルおよび82.4wt%の水を含むラテックススプレー溶液を調製した。多粒子を、15mmに設定したWursterカラムを備えたGlatt GPCG−1流動層コーター中で流動化した。流動化気体(空気)を、39℃〜41℃の入口温度および29℃のベッド温度で850〜960L/分の速度にてベッドを通して循環させた。スプレー溶液を、微粒化圧力が2.1バール(210kPa)の窒素を用い、4.8〜6.0g/分の速度で二流体ノズルを通してベッドに導入した。多粒子を約190分間コーティングすると、平均コーティング重量が約23%の多粒子が得られた。コーティングの塗布後、多粒子を、29〜32℃にて15分間、流動層中で乾燥した。次いで、コーティングされた多粒子を、30℃にて6時間、対流式オーブン中で乾燥した。
【0169】
コーティングされた多粒子CM11は、CM10のプロセスを用いて多粒子を腸溶ポリマーでコーティングすることによりUM5多粒子から調製した。得られたコーティングされた多粒子CM11は、コーティングされた多粒子の重量を基準として24.5wt%のコーティング重量を有していた。
【0170】
コーティングされた多粒子からの薬物放出速度
コーティングされた多粒子CM1、CM2、CM3、CM4、CM6、CM7およびCM8からのアジスロマイシンの放出速度は、コーティングされていないアジスロマイシン多粒子試料の溶解試験について前に記載したプロセスを用いて決定した。以下に示すこれらの溶解度試験の結果は、多粒子への腸溶コーティングの塗布が、アジスロマイシンの放出を遅延させたことを示している。また、データは、多粒子に塗布されたコーティングの量が多ければ多いほど、アジスロマイシン放出速度は低下することを示している。
【0171】
【表4】

【0172】
薬物放出の速度
コーティングされた多粒子CM10からのアジスロマイシンの放出速度は、50rpmおよび37℃にて攪拌しながらフッ素樹脂(テフロン(登録商標))でコーティングされたパドルを備えたUSP Type2溶解フラスコ中で行う以下の手順を用いるGB−IB移行試験で決定した。UM4について用いたのと同じ投与ビヒクルを調製し、コーティングされた多粒子CM10を、0.01N HCl模擬GB溶解媒体750mLに加えた。バイアルを、0.01N HClの20mLのアリコート2つで洗浄し、これらもまた模擬GBに加えた。60分後、得られた溶解媒体が約6.8のpHのIBをシミュレートするように、pH7.2の0.2M KHPO緩衝溶液250mLを模擬GBに加えた。
【0173】
溶解フラスコ中の液体の3mL試料を、フラスコへの多粒子の添加後に、表15に報告されている時間の経過後に集めた。試料を、0.45μmのシリンジフィルターで濾過した後、HPLC(Hewlett Packard1100、Waters Symmetry Cカラム、1.0mL/分にて45:30:25アセトニトリル:メタノール:25mM KHPO緩衝液、ダイオードアレイ分光光度計で210nmにて測定される吸光度)を介して分析した。
【0174】
以下に示すこの溶解試験の結果は、コーティングされた多粒子が、腸溶保護を提供し、模擬GB中で1時間後に、アジスロマイシンの10wt%のみが放出されたことを示している。模擬IBへの移行後、多粒子は、アジスロマイシンを速やかに放出し、90%が3時間後に放出された。
【0175】
【表5】

【0176】
エステル形成の速度
コーティングされた多粒子CM3、CM8およびCM9を、周囲温度(約22℃)および周囲湿度(約40%RH)にてそれぞれ329、316および315日間保存し、LC/MS検出によりアジスロマイシンエステルについて分析した。試料は、1.25mgアジスロマイシン/mLの濃度におけるメタノールによる抽出および15分間の超音波処理により調製した。次いで、試料溶液を、0.45μmナイロンシリンジフィルターで濾過した。次いで、試料溶液を、Hewlett Packard HP1100液体クロマトグラフでHypersil BDS C18 4.6mm×250mm(5μm)HPLCカラムを用いるHPLCにより分析した。試料溶出に用いた移動相は、以下の通りのイソプロピルアルコールおよび25mm酢酸アンモニウム緩衝液(pH約7)のグラジエント、すなわち、50/50(v/v)イソプロピルアルコール/酢酸アンモニウムの初期条件とし、次いで、イソプロピルアルコール百分率を30分かけて100%まで増加させ、さらに15分間を100%に保った。流速は、0.80mL/分とした。75μLの注入容積および43℃のカラム温度を使用した。
【0177】
検出には、Finnigan LCQ Classic質量分析計を使用した。APCI源は、選択的イオンモニタリング法による正イオンモードで使用した。アジスロマイシンエステル値は、外部アジスロマイシン標準品を基準としてMSピーク面積から算出した。アジスロマイシンエステル値は、試料中の全アジスロマイシンの百分率として報告した。これらの試験の結果は、これらの試料中のアジスロマイシンエステルの濃度が、0.001wt%未満であることを示した。また、アジスロマイシンエステルの形成について22℃における反応速度が極めて低く、具体的には3.0×10−6wt%/日であることが決定され、これは、22℃におけるアジスロマイシンエステルが5wt%未満である組成物における最大許容値(<7×10−3wt%/日である式R≦1.8×10・e−7070/(T+273)を用いて算出される)以下である。
【0178】
コーティングされた多粒子CM5を、40℃および75%RHにて21日間ホイル/ホイルポーチ中に保存し、次いで、周囲温度および湿度にて314日間保存した。保存後、コーティングされた多粒子を、アジスロマイシンエステルについて分析した。この分析の結果は、コーティングされた多粒子が、1.3×10−5wt%/日のエステル形成速度に相当する0.004wt%のアジスロマイシンエステル濃度を有し、アジスロマイシンエステルが5wt%未満である組成物を得るためのこれらの保存条件下で優に最大許容反応速度以下であることを示した。
【0179】
コーティングされた多粒子CM18を、40℃および75%RHにて6週間保存し、次いで、アジスロマイシンエステルについて分析した。多粒子中には何も検出されなかった。
【0180】
薬物動態学的臨床試験
経口投与ビヒクル中のコーティングされた多粒子CM11の2000mgA投与量のin vivo薬物動態を、無作為化二元配置交差試験において15名の絶食した健常ヒト被験者で評価した。経口投与ビヒクルは、pH3.0のクエン酸緩衝液に98.2wt%のスクロース、0.17wt%のヒドロキシプロピルセルロース、0.17wt%のキサンタンガム、0.5wt%のコロイド状SiO、0.35wt%のチェリー香味料、および0.583wt%のバナナ香味料からなる混合物21.8gを溶解させることにより調製した。
【0181】
対照として、試験される各群の各メンバーには、各投与量が、1048mgのアジスロマイシン二水和物ならびに不活性成分コロイド状二酸化ケイ素、無水第三リン酸ナトリウム、人工のバナナおよびチェリー香料ならびにスクロースを含有する経口懸濁液用のアジスロマイシン二水和物の単回投与パケット(Zithromax(登録商標)、Pfizer Inc.、New York、NY)2個を与えた。
【0182】
1日目に、7名の被験者には、各々、2gAのCM11剤形を与え、8名の被験者には、各々、2gAの対照剤形を与えた。両剤形は、120mLの蒸留水が入った瓶に各々を加えることにより投与した。各被験者は、中身を飲み、次いで、120mLの蒸留水を再び満たし、被験者が飲んだ。各被験者の血清中のアジスロマイシン濃度を、各剤形の投与後96時間測定した。
【0183】
すべての被験者は、一夜の絶食後に経口投与された。次いで、すべての被験者は、横になること、食べることおよび水以外の飲料を飲むことを投与後の最初の4時間は控えるように要求された。
【0184】
血液試料(各5mL)を、投与前、ならびに投与後0.5、1、2、3、4、6、8、12、16、24、36、48、72および96時間に被験者の静脈から採取した。血清アジスロマイシン濃度は、Shepard他、J Chromatography.565:321−337(1991)に記載されている高速液体クロマトグラフィーアッセイを用いて決定した。アジスロマイシンへの総全身暴露は、群内の各被験者について曲線下面積(AUC)を測定し、次いで、群について平均AUCを算出することにより決定した。Cmaxは、被験者において得られる最高血清アジスロマイシン濃度である。Tmaxは、Cmaxが得られる時間である。
【0185】
15日目には、1日目に対照剤形を与えられた被験者にCM11剤形を投与し、1日目にCM11剤形を与えられた被験者に対照剤形を投与した。
【0186】
この試験の結果を以下に示す。
【0187】
【表6】

【0188】
これらの結果は、コーティングされた多粒子CM11が、即時放出対照と比較して約84%の相対的バイオアベイラビリティーを提供したことを示している。また、最高血清濃度を得るための時間は、即時放出対照剤形の場合に比べてコーティングされたアジスロマイシン多粒子剤形の場合の方が長かった。
【0189】
また、CM11のコーティングされた多粒子について観察されたより低いCmaxは、胃腸副作用の発生率の低下をもたらした。被験者に、投与後1、2、4、8、12、16、24、36、48、72、および96時間の各処置期間中に有害事象(AE)に関して質問した。強度が中等度であると見なされた事象のうち、対照の単回投与後に発生した下痢、悪心、および嘔吐のみが処置に関連していると見なされた。
【0190】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多粒子を含む医薬組成物であって、前記多粒子が、アジスロマイシンコアおよび前記アジスロマイシンコア上に配置された腸溶コーティングを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記腸溶コーティングが、約3μm〜約3mmの厚さを有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物中のアジスロマイシンエステルの濃度が、組成物中に元々存在するアジスロマイシンの総重量に対して約5wt%未満である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記アジスロマイシンが、実質的に結晶性二水和物の形態である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記腸溶コーティングが、ポリアクリルアミド、炭水化物の酸フタレート、酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸セルロースエステル、フタル酸セルロースエーテル、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、フタル酸ポリ酢酸ビニル、フタル酸水素ポリ酢酸ビニル、酢酸フタル酸ナトリウムセルロース、デンプン酸フタレート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリ酢酸ビニルフタレートコポリマー、酢酸トリメリット酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、スチレンとマレイン酸のコポリマー、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマー、シェラック、酢酸ビニルとクロトン酸のコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記腸溶コーティングが、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、スチレンとマレイン酸のコポリマー、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、クロトン酸コポリマー、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記腸溶コーティングが、(i)メタクリル酸とアクリル酸エチルのコポリマーと(ii)クエン酸トリエチルの混合物を含む請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記アジスロマイシンコアが、持続放出コーティングでコーティングされたアジスロマイシン含有粒子を含む請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記腸溶コーティングが、前記医薬組成物の℃で表される温度Tにおけるwt%/日で表されるアジスロマイシンエステル形成速度Rが、1.8×10・e−7070/(T+273)以下であり、Tが、20℃〜50℃であるように選択される請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記腸溶コーティングが、前記医薬組成物の℃で表される温度Tにおけるwt%/日で表されるアジスロマイシンエステル形成速度Rが、3.6×10・e−7070/(T+273)以下であり、Tが、20℃〜50℃であるように選択される請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記腸溶コーティングが、前記医薬組成物の℃で表される温度Tにおけるwt%/日で表されるアジスロマイシンエステル形成速度Rが、1.8×10・e−7070/(T+273)以下であり、Tが、20℃〜50℃であるように選択される請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記コアが、約35〜約55wt%のアジスロマイシン;約40〜約65wt%のワックス、グリセリド、およびそれらの混合物から選択される担体;ならびに約0.1〜約15wt%の溶解促進剤を含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記コアが、約45〜約55wt%のアジスロマイシン;約40〜約55wt%のグリセリド、および約0.1〜約5wt%のポロキサマーを含む請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記多粒子が、前記コアと前記腸溶コーティングの間に位置するバリアーコートをさらに含み、前記バリアーコートが、長鎖アルコール、ポロキサマー、エーテル、エーテル置換セルロース系誘導体、糖、塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記腸溶コーティングが、炭水化物の酸フタレート、酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸セルロースエステル、フタル酸セルロースエーテル、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸メチルセルロース、フタル酸ポリ酢酸ビニル、フタル酸水素ポリ酢酸ビニル、酢酸フタル酸ナトリウムセルロース、デンプン酸フタレート、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン−マレイン酸ポリ酢酸ビニルフタレートコポリマー、酢酸トリメリット酸セルロース、およびそれらの混合物からなる群から選択されるトリメリテート含有コーティングまたはフタレート含有コーティングである請求項20に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2008−524317(P2008−524317A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547688(P2007−547688)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003764
【国際公開番号】WO2006/067576
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】