説明

腸溶性ポリマーでコーティングされたピリミジン−A−オン誘導体を含んでなる医薬製剤

本発明は、ホスホリパーゼA2酵素リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp−PLA2)インヒビターを含んでなる経口投与用の腸溶性ポリマーでコーティングされた錠製剤、このような製剤を調製するための方法、および療法、具体的にはアテローム性動脈硬化症の治療におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホリパーゼA2酵素リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp−PLA2)インヒビターを含んでなる経口投与用の錠製剤、このような製剤を調製するための方法、および療法(具体的にはアテローム性動脈硬化症の治療)におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(スミスクライン・ビーチャムplc(SmithKline Beecham plc))は、ピリミジノン化合物(とりわけN1で置換され、かつ硫黄原子を含有するピリミジノン化合物)の新規のクラスを開示する。
【0003】
特許文献1に記載されるピリミジノン化合物は、酵素リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp−PLA2)のインヒビターであり、それ自体は、療法(具体的には急性冠動脈疾患の発症(例えば、末梢血管アテローム性動脈硬化症および脳血管アテローム性動脈硬化症をはじめとするアテローム性動脈硬化症によって生じる冠動脈疾患)の一次もしくは二次予防)に使用されることが望まれている。本発明に記載される式Iの化合物は、特許文献1に記載される化合物のサブセットである。
【0004】
第I相臨床試験の期間中に、式Iの化合物を投与した後、臭気に関する有害事象が観察された。これらには、糞便、尿、汗および毛髪の臭いを放つ異常臭が含まれる。本発明者らは、胃の酸性環境において上記化合物が分解して、遊離のチオール基を含有する分解生成物を生成したことにより、上記の有害事象が、起こったと提案する。本発明者らは、さらに、この分解が、胃よりも弱酸性である腸環境において、起こることは少ないと確信している。本発明は、腸溶性ポリマーのコーティングで皮膜(cased)した錠製剤において、式Iの化合物を提供することにより、上記の問題に取り組む。用語「腸溶性ポリマー」は、より酸性が強い胃の環境に対してそれより酸性の弱い腸の環境で、優先的に可溶性であるポリマーを意味する当技術分野での専門用語である。
【特許文献1】国際公開第01/60,805号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、第一態様において、本発明は、式(I)
【化1】

(I)
[式中、
およびRは、共に、(CH(nは3もしくは4)であり、それらが結合するピリミジン環炭素原子と一緒になって縮合した5もしくは6員環の炭素環を形成し、および
は、ハロゲンで置換されていてもよいフェニルであり、
は、NRで置換されたC(1−3)アルキルであり、
およびRは、4−(4−トリフルオロメチルフェニル)フェニル部分であり、および
およびRは、同一でも異なってもよく、水素、またはC(1−6)アルキルから各々選択される]
の化合物である薬学的活性成分を含むコアと、
腸溶性ポリマーを含んでなる皮膜と、を含んでなる医薬製剤を提供する。
【0006】
およびRは、共に、それらが結合するピリミジン環炭素原子と一緒になって縮合した5員環の炭素環を形成するのが好ましい。
【0007】
は、パラ位において単一のハロゲンで置換されているのが好ましい。前記ハロゲンは、フルオロであるのが特に好ましい。
【0008】
およびRは、両方ともC(1−6)アルキルであるのが好ましく、それらは、両方ともエチルであるのが特に好ましい。
【0009】
好適な一実施形態において、薬学的活性成分は、1−(N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−N−(4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5,6−トリメチレンピリミジン−4−オンである。
【0010】
コア中の活性物質は、任意の従来型の形態で存在してもよく、つまり、微粉状、破砕状(具体的には湿式ビーズ破砕形態)、または可溶化形態で存在してもよい。活性物質に加えて、コアは、従来型から圧縮錠剤の技術分野までの添加剤を含有してもよい。上記錠剤中の適切な添加剤は、希釈剤(賦形剤として当業者は周知である)(例、微結晶セルロース、マンニトール、無水ラクトース、ラクトース一水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはそれらの混合物等)、結合剤(例、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピル−セルロース、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプンもしくはアラビアゴムまたはそれらの混合物等)、崩壊剤(例、微結晶セルロース(希釈剤と崩壊剤との両方の働きを満たす)、架橋されたポリビニルピロリドン、ナトリウムスターチグリコラート、クロスカルメロースナトリウムまたはそれらの混合物等)、潤滑剤(例、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸等)、滑り剤もしくは流動補助剤(例、コロイドシリカ、タルクまたはデンプン等)、および安定剤(例、ポロクサマー、粉末状非晶質シリカ等)、着色剤、香料などを含んでなりうる。上記錠剤は、希釈剤としてラクトースを含んでなるのが好ましい。結合剤が存在する場合、結合剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースであるのが好ましい。該錠剤は、潤滑剤としてステアリン酸マグネシウムを含んでなるのが好ましい。該錠剤は、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウムを含んでなるのが好ましい。該錠剤は、希釈剤として微結晶セルロースを含んでなるのが好ましい。
【0011】
上記希釈剤は、コアの10〜80重量%の範囲で存在してもよい。上記潤滑剤は、コアの0.25〜2重量%の範囲で存在してもよい。上記崩壊剤は、コアの1〜10重量%の範囲で存在してもよい。微結晶セルロースは、存在するならば、コアの10〜80重量%の範囲で存在してもよい。
【0012】
活性成分は、好ましくはコアの重量の10〜50%、さらに好ましくはコアの重量の15〜40%含んでなる。コアは、任意の治療上適切な用量の活性成分を含有してもよく、好ましくは、遊離塩基の活性成分として最大200mgまで含有する。コアは、遊離塩基の活性成分として、20、30、40、50、60、80、100、120または160mgを含有するのが特に好ましい。
【0013】
コアは、その成分の圧縮混合物から作られうる。該成分は、直接圧縮されてもよく、圧縮の前に、粒状化されてもよい。該顆粒は、当技術分野では公知の従来型の粒状化方法によって、形成されてもよい。別の態様において、コアは、活性の湿式ビーズ破砕の懸濁液の噴霧乾燥を含んでなる方法によって、作られてもよい。代替の実施形態において、該顆粒は、腸溶性皮膜(enteric casing)で個々にコーティングされた後、標準のカプセル皮膜(casing)に密閉されてもよい。
【0014】
コアは、腸溶性ポリマーを含んでなる皮膜によって、包囲されている。腸溶性ポリマーの例は、セルロースアセタートフタレート、セルロースアセタートスクシネート、メチルセルロースフタレート、エチルヒドロキシセルロースフタレート、ポリビニルアセタートフタレート、ポリビニルブチレートアセタート、ビニルアセタートと無水マレイン酸のコポリマー、スチレンとマレイン酸モノエステルのコポリマー、メチルアクリレートとメタクリル酸のコポリマーまたはメタクリレートとメタクリル酸とオクチルアクリレートのコポリマーである。これらは、単独または組み合わせで使用してもよく、或いは、上記以外の他のポリマーと一緒に使用してもよい。上記皮膜は、生体内で分解も溶解もしない不溶性物質(例、(アルキルセルロース誘導体(例、エチルセルロース等)、架橋性ポリマー(例、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー等)、ヒドロキシル基を有する多糖類(例、デキストラン等)、二官能性の架橋剤で処理されたセルロース誘導体(例、エピクロロヒドリン、ジクロロヒドリンまたは1,2−,3,4−ジエポキシブタン等))を含んでもよい。皮膜は、デンプンおよび/またはデキストリンも含んでもよい。
【0015】
好適な腸溶コーティング材料は、単独もしくは可塑剤と共に使用される市販のオイドラギット(Eudragit)(登録商標)腸溶性ポリマー(例、オイドラギット(登録商標)L、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)Sおよびオイドラギット(Eudragit)(登録商標)NE等)である。上記のコーティングは、通常、液状媒質を用いて塗布され、可塑剤の性質は、媒質が水溶性か非水溶性であるかによって、決まる。水溶性媒質で使用される可塑剤として、プロピレングリコール、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレートまたはシトロフレックス(Citroflex)(登録商標)もしくはシトロフレックス(Citroflex)(登録商標)A2が挙げられる。非水溶性の可塑剤として、さらに、ジエチルフタレート、ジブチルフタレートおよびジブチルセバケートが挙げられる。好適な可塑剤は、トリエチルシトレートである。含まれる可塑剤の量は、当業者には明らかである。
【0016】
皮膜には、粘着防止剤(例、タルク、シリカまたはグリセリルモノステアラート等)も含まれる。該粘着防止剤は、グリセリルモノステアラートであるのが好ましい。通常、皮膜は、約5〜25重量%の可塑剤と最大約50重量%までの粘着防止剤、好ましくは1〜10重量%の粘着防止剤を含んでもよい。
【0017】
所望ならば、界面活性剤が、上記ポリマーの水溶性懸濁液を形成する一助となるように、含まれることもある。可能な界面活性剤の多くの例は、当業者に公知である。界面活性剤の好適な例は、ポリソルベート80、ポリソルベート20、またはラウリル硫酸ナトリウムである。界面活性剤が存在するならば、界面活性剤は、皮膜の0.1〜10%、好ましくは0.2〜5%、特に好ましくは0.5〜2%を形成しうる。
【0018】
一実施形態において、コアと腸溶コーティングとの間に含まれるシールコートが存在する。シールコートは、コア中の任意のアルカリ成分による可能な化学的攻撃から腸溶性皮膜を保護するために使用しうるコーティング材料である。該シールコートは、さらに、より平滑な表面を提供し、それによって、腸溶性皮膜の結合をより容易にする。当業者は、適切なコーティングを承知しているだろう。好ましくは、該シールコートは、オパドライ(Opadry)コーティングから作製され、特に好ましくは、それはオパドライ・ホワイト(Opadry White)であり、さらに特に好ましくはオパドライ・ホワイト(Opadry White)OY−S−28876である。
【0019】
本発明は、さらに、活性治療物質として使用される本明細書に記載される医薬製剤を提供する。該製剤は、アテローム性動脈硬化症の治療に使用されるのが好ましい。
【0020】
本発明は、ここで、あくまで例示として記載されるだろう。
【実施例】
【0021】
実施例1
錠剤は、様々な量の1−(N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−N−(4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5,6−トリメチレンピリミジン−4−オン(本実施例において「活性成分」と称される)を遊離塩基として、含んでなる(表1を参照のこと)。
【0022】
ラクトース一水和物、微結晶セルロース、上記の活性成分、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび一部のクロスカルメロースナトリウム(式に基づいて)を10リットルのフライダー(Fielder)の高剪断型ブレンダー(任意の適切な高剪断型ブレンダーを使用しうる)内でスクリーニングして、チョッパーオフの状態で、300rpmで5分間ブレンドした。次に、インペラ(300rpm)とチョッパー(速度II)の両方を用いて、ブレンドを続けながら、約900mLの水を加えて混合物を粒状化した。顆粒をグラット(Glatt)の3/5流動層乾燥機内で乾燥させ、ファーマテック(Pharmatec)の10リットルのビンブレンダー内のコミル(Comil)により、スクリーニングした後、クロスカルメロースナトリウムの残りに加えて、上記の式で付与される任意の無水ラクトースと共に、17rpmで15分にわたってブレンドした。ステアリン酸マグネシウムをブレンダー内でスクリーニングし、混合プロセスを17rpmで2分間続けた。10.5mmの丸型の標準凹面形パンチを取り付けたリヴァ・ピッコラ(Riva Piccola)のロータリー式打錠機(任意の適切な打錠機を使用しうる)を用いて、潤滑混合物を圧縮した。コーティングポリマーの製造業者により推薦されたコーティング方法のためのパラメータを用いるマネスティ(Manesty)XL塗布機(任意の適切な塗布機を使用しうる)において、被覆成分の水溶性懸濁液を噴霧することにより、シールコートを塗布し、そして続いて腸溶コーティングを塗布した。
【0023】
微粉化した活性を用いて、上記の通り、この技法を実行して、遊離塩基として、様々な量の微粉化活性を含有する錠剤を製造することが可能である。
【0024】
実施例2
錠剤は、様々な量の1−(N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−N−(4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5,6−トリメチレンピリミジン−4−オン(本実施例において「活性成分」と称される)を遊離塩基として、含んでなる(表2を参照のこと)。
【0025】
バドル型攪拌機(任意の適切な攪拌機もしくはホモジナイザーを使用しうる)を用いて、上記の活性成分、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロクサマー188およびマンニトールを純水中に溶かした懸濁液を調製した。次に、該懸濁液を、所望の粒度に達するまで、イットリウム/ジルコニウムビーズを含有するドライス・コスモ(Drais Cosmo)湿式ビーズミル(任意の適切な湿式ビーズミルを使用しうる)に通過させる。ニロ・モービル・マイナー(Niro Mobile Minor)噴霧乾燥装置(任意の適切な噴霧乾燥装置を使用しうる)を用いて、粉砕された懸濁液を噴霧乾燥した。次に、噴霧乾燥した粉末製剤をファーマテック(Pharmatec)の5リットルのビンブレンダー内に加えた後、微結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムと共に、17rpmで10分間にわたってブレンドした。ステアリン酸マグネシウムをブレンダー内でスクリーニングし、混合プロセスを17rpmで、さらに1分間続けた。9mmの丸型の標準凹面形パンチを取り付けたコルシュ(Korsch)EKO単発式打錠機(任意の適切な打錠機を使用しうる)を用いて、潤滑混合物を圧縮した。コーティングポリマーの製造業者により推薦されたコーティング方法のためのパラメータを用いるマネスティ(Manesty)XL塗布機(任意の適切な塗布機を使用しうる)において、被覆成分の水溶性懸濁液を噴霧することにより、シールコートを塗布し、そして続いて腸溶コーティングを塗布した。
【0026】
実施例3
錠剤は、60mgの1−(N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−N−(4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5,6−トリメチレンピリミジン−4−オン(本実施例において「活性成分」と称される)を遊離塩基として、含んでなる(表3を参照のこと)。
【0027】
無水ラクトース、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムおよび上記活性成分をブレンダー内でスクリーニングし、30rpmで15分間ブレンドした。ステアリン酸マグネシウムをブレンダー内でスクリーニングし、18rpmで2分間混合プロセスを続けた。9.5mmの丸型の標準凹面形パンチを取り付けたロータリー式打錠機(任意の適切な打錠機を使用しうる)を用いて、潤滑混合物を圧縮した。コーティングポリマーの製造業者により推薦されたコーティング方法のためのパラメータを用いる塗布機(任意の適切な塗布機を使用しうる)において、被覆成分の水溶性懸濁液を噴霧することにより、腸溶コーティングを塗布した。
【0028】
比較例4
錠剤は、様々な量の1−(N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−N−(4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5,6−トリメチレンピリミジン−4−オン(本実施例において「活性成分」と称される)を塩酸塩として、含んでなる(表4を参照のこと)。
【0029】
ラクトース一水和物、微結晶セルロース、上記活性成分、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび半量のクロスカルメロースナトリウムを10リットルのフライダー(Fielder)高剪断型ブレンダー(任意の適切な高剪断型ブレンダーを使用しうる)内でスクリーニングし、チョッパーオフの状態で、300rpmで5分間ブレンドした。ブレンドを続けながら、約750mLの水を加えて混合物を粒状化した。顆粒をグラット(Glatt)の3/5流動層乾燥機内で乾燥させ、ファーマテック(Pharmatec)の5リットルのビンブレンダー内のコミル(Comil)により、スクリーニングした後、クロスカルメロースナトリウムの残りに加えて、上記の式で付与される任意の無水ラクトースと共に、20rpmで5分にわたってブレンドした。ステアリン酸マグネシウムをブレンダー内でスクリーニングし、混合プロセスを10rpmでさらに1分間続けた。9.5mmの丸型の標準凹面形パンチを取り付けたリヴァ・ピッコラ(Riva Piccola)のロータリー式打錠機(任意の適切な打錠機を使用しうる)を用いて、潤滑混合物を圧縮した。コーティングポリマーの製造業者により推薦されたコーティング方法のためのパラメータを用いるマネスティ(Manesty)10塗布機(任意の適切な塗布機を使用しうる)において、被覆成分の水溶性懸濁液を噴霧することにより、シールコートを塗布し、そして続いての腸溶コーティングを塗布した。
【0030】
【表1】


1.水は、プロセス中に除去される。
2.オイドラギット(Eudragit)(登録商標)L30D−55。記載した量は、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)L30D−55中の30%固体含有量を表す。錠剤の表面積当りおよそ6.5mg/cmの乾燥ポリマーを付与するように計算した。
【0031】
【表2】


1.水は、プロセス中に除去される。
2.窒素は、噴霧乾燥中に、加工助剤として使用される。
3.オイドラギット(Eudragit)(登録商標)L30D−55。記載した量は、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)L30D−55中の30%固体含有量を表す。錠剤の表面積当りおよそ6.5mg/cmの乾燥ポリマーを付与するように計算した。
【0032】
【表3】


1.水は、プロセス中に除去される。
2.オイドラギット(Eudragit)(登録商標)L30D−55。記載した量は、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)L30D−55中の30%固体含有量を表す。錠剤の表面積当りおよそ10mg/cmの乾燥ポリマーを付与するように計算した。
【0033】
【表4】


備考:
1.各々20、40、60、80および100mgの活性に等しい。
2.水は、プロセス中に除去される。
3.オイドラギット(Eudragit)(登録商標)L30D−55。記載した量は、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)L30D−55中の30%固体含有量を表す。錠剤の表面積当りおよそ10mg/cmの乾燥ポリマーを付与するように計算した。
【0034】
実施例5
人工胃液および人工腸液中の置換ウラシルの測定
式(I)の化合物は、特に、pHがヒトの胃で最も一般的であるpHに一致する条件下において、加水分解して、チオールとウラシルを1:1の化学量論比で生成する。チオールは、そのクラスの化合物の臭気特性を有し、臭気の強度は、チオールの濃度が増すと共に強くなる。ウラシルの濃度は、臭気の強度に対する代用マーカーである。
【0035】
遊離塩基として1−(N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−N−(4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5,6−トリメチレンピリミジン−4−オン(本実施例において「活性」と称される)のin vivoで異常な臭気を引き起こす性向への腸溶コーティングの効果をin vitroでシミュレートするために、2アーム(two−armed)試験を実施した。両方のアームにおいて、60mgの活性を37℃に保った250mLの人工胃液に浸漬し、USP2溶解装置内において、50rpmで攪拌した。一方のアームにおいて、活性は、腸溶錠として存在した。他方のアームにおいて、活性は、未処方の薬剤物質として存在し、それは、腸溶コーティングを施していない錠剤と、化学的に当量であった。
【0036】
上記活性により生成されるウラシルは、式(II)に示す通り、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−2−(2,4−ジオキソ−2,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[d]ピリミジン−1−イル)−N−{[4'−(トリフルオロメチル)−4−ビフェニリル]メチル}アセトアミドである。
【化2】

(II)

両アームにおいて、溶液中の式(II)の濃度を、該流体のうち低分子量の試料を取り除き、マトリックス−対応外部標準(matrix−matched external standard)(つまり合成式(II))の濃度に対するそのLC−MSを比較することにより、時間経過に関してモニターした。
【0037】
【表5】


QL=式(II)を正確に定量化することが不可能である濃度より低い濃度(それは、1.71ng/mLであると実験的に推定される)。
【0038】
上記に明白に要約された結果は、腸溶コーティングが、典型的なヒトの胃である条件下において、活性により生成した式(II)(および化学量論による、チオール)の濃度を4桁減少させることを示す。拡大解釈すれば、データは、活性錠剤を腸溶コーティングすることは、in vivoで上記活性により生成されうる異常な臭気を減少または除去するという仮説を支持する。
【0039】
その性質により、腸溶コーティングは、ヒトの腸で一般的であるpHと一致したそれらのpHの条件下において、破壊される。
【0040】
ヒト腸で異常な臭気を引き起こす活性錠剤の性向をin vitroでシミュレートするために、80mgに相当する活性を、37℃に保った250mLの人工腸液(ヒトにおいて絶食状態に相当する)に浸漬し、USP2溶解装置内において50rpmで攪拌した。これは、その腸溶コーティングが破壊されて、そのコアが続いて破壊される錠剤と化学的に当量である。
【0041】
溶液中の式(II)の濃度を、該流体のうち低分子量の試料を取り除き、マトリックス−対応外部基準(つまり合成式(II))の濃度に対してそのLC−MSを比較することにより、時間経過に関してモニターした。
【0042】
【表6】


QL:式(II)を正確に定量化することが不可能である濃度より低い濃度(それは、1.71ng/mLであると実験的に推定された)。
【0043】
上記に明白に要約される結果は、人工胃液におけるその挙動と対照的に、活性は、人工腸液中において式(II)を生成する性向が低く、従って、人工胃液に関して考察した通り、ヒトの腸において異常な臭気を生じる性向は低いと思われる。
【0044】
実施例6
腸溶コーティングを施した錠剤と腸溶コーティングを施していない錠剤とに見られる有害事象を比較する臨床試験の結果
60mgの1−(N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−N−(4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5,6−トリメチレンピリミジン−4−オンを用いて、二重盲検、4セッション試験、交差試験、プラセボ対照試験、無作為化臨床試験、反復投与試験、相対生物学的利用能の臨床試験(relative bioavailability study)を実施した。該試験は、腸溶性遊離塩基および腸溶性塩酸塩と比較した標準の遊離塩基製剤に見られる臭気に関する有害事象を考察した。塩酸塩、腸溶性製剤に曝露された被験者の数を、遊離塩基に曝露された被験者の数と比較した。
【0045】
【表7】


^上記の被験者のうち1人が、同一セッションにおいて2種の異なる型の皮膚臭気疾患を報告したが、1回だけとして数える。
−−発症の報告がなかった。
【0046】
明白に観察されるように、化合物が腸溶コーティングを施されている場合、上記化合物の遊離塩基の形態に関連した有害事象のレベルは、かなり低かった。
【0047】
比較例7
塩酸塩の腸溶錠とプラセボとに観察される有害事象を比較する臨床試験の結果
1−(N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−N−(4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5,6−トリメチレンピリミジン−4−オン、塩酸塩の腸溶性製剤の服用量範囲で報告された臭気に関する有害事象の頻度だけでなく薬物動力学も評価する、二重盲検、3セッション試験、交差試験、プラセボ対照試験、反復投与試験を、健常者において、実施した。本臨床試験において、プラセボに対して活性薬剤(塩酸塩)の、臭気に関する有害事象の頻度は、以下の表に要約されるように、より高いことが明記された。
【0048】
【表8】


−−発症の報告なし
【0049】
実施例8
生体増強剤(Formulation Bioenhancement)
湿式粒状化は、医薬品製造において標準的な方法である。
【0050】
1−(N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−N−(4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5,6−トリメチレンピリミジン−4−オン(本明細書において「活性」と称される)は、アミンであるので、ヒトにおいて、典型的な胃のpH(1〜4)よりも典型的な腸のpH(pH6.8)で、溶解しにくい。従って、その効用は、錠剤が腸に到達するまでコアの溶解を遅らせる錠剤に腸溶コーティングを施すことにより、減少されると思われる。活性の粒度が削合によって、縮小されている別の製剤が、開発されている。この縮小による結果は、活性の表面積の増加であり、それは、溶解速度(腸溶コーティングの破壊後)を増加させる結果となる。活性が、腸に常在している期間にわたって、溶解速度におけるこの増加は、より高い効用を導くことを予測しうる。
【0051】
2つの粉砕技法、すなわち、エアジェット破砕化(所謂、「微粉化」)とイットリウム−ジルコニウムビーズで活性の懸濁液を削合する方法(所謂、「湿式ビーズ破砕化」)を研究した。
【0052】
粒子粉砕により溶解速度が増加するという仮説を試験するために、腸溶性活性の錠剤に関して、in vitroで3−アーム臨床試験を実施した。各アームにおいて、80mgと同等である活性を含有する腸溶錠を、37℃に保った500mLの人工腸液(SIF、ヒトの絶食状態に相当、pH6.8)に入れて、USP2溶解装置内で、100rpmで攪拌した。臨床試験の3アームは、コアの性質だけが異なる。第一アームにおいて、粒子粉砕をせずに湿式粒状化方法によって、コアを製造した。第二アームにおいて、微粉化活性から湿式粒状化方法によりコアを製造した。第三アームにおいて、活性の湿式ビーズ破砕化懸濁液の噴霧乾燥を含むプロセスによりコアを製造した。
【0053】
溶液中の活性の濃度は、その最大スペクトルに対応する波長で、その吸光度を測定し、ベールの法則を用いて、遊離した留分を算出することにより、モニターされる。
【0054】
得られたデータ(表9および図1に示す)は、後述の仮説を確証する。
【0055】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0056】
原文に記載なし
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬製剤であって、式(I)
【化1】

(I)
[式中、
およびRは、共に、(CH(nは3もしくは4)であり、それらが結合するピリミジン環炭素原子と一緒になって縮合した5もしくは6員環の炭素環を形成し、および
は、ハロゲンで置換されていてもよいフェニルであり、
は、NRで置換されたC(1−3)アルキルであり、
およびRは、4−(4−トリフルオロメチルフェニル)フェニル部分であり、および
およびRは、同一でも異なってもよく、水素、またはC(1−6)アルキルから各々選択される]
の化合物である薬学的活性物質を含むコアと、
腸溶性ポリマーを含んでなる皮膜と、を含んでなる医薬製剤。
【請求項2】
前記活性成分が、1−(N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−N−(4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5,6−トリメチレンピリミジン−4−オンである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記コアが、さらに、崩壊剤を含んでなる、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウムである、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記コアが、さらに、希釈剤を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記希釈剤が、ラクトースである、請求項5に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記コアが、さらに、結合剤を含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記結合剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記コアが、さらに、微結晶セルロースを含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記腸溶性ポリマーが、オイドラギット(登録商標)腸溶性ポリマーである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記皮膜が、さらに、粘着防止剤を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記皮膜が、さらに、界面活性剤を含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記活性剤が、微粉化されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項14】
湿式ビーズを破砕することを含んでなる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬製剤を製造する方法。
【請求項15】
アテローム性動脈硬化症の治療に使用される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬製剤。

【公表番号】特表2007−504195(P2007−504195A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525098(P2006−525098)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009726
【国際公開番号】WO2005/021002
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】