説明

腸球菌抗原およびワクチン

【課題】ワクチンとして有用な腸球菌抗原、ならびに該抗原を獲得する方法および該抗原の使用方法の提供。
【解決手段】エンテロコッカス・フェカーリス(E.faecalis)およびエンテロコッカス・フェシウム(E.faecium)臨床単離株の大多数はそれぞれ2つおよび3つの群に分類される。この5つの群の各々には別個の抗原が関連する。腸球菌抗原はエンテロコッカス・フェカーリス(E.faecalis)およびエンテロコッカス・フェシウム(E.faecium)の株から容易に得られ、防御抗体の産生を誘発することができる。従って、これらの抗原は、臨床的に重要な(病原性)腸球菌単離株による感染症から防御する為のワクチンとして有用である。抗原およびこれらの抗原に対して形成される抗体は診断アッセイ法にも有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、ワクチンとして有用な腸球菌抗原、ならびに該抗原を獲得する方法および該抗原の使用方法に関する。
【0002】
腸球菌感染症の罹病率は着実に増加している。腸球菌株は今や入院患者の院内感染症全体の12%の原因となっており、院内感染症患者から単離される2番目に多い生物である。このような腸球菌の罹病率の増加は少なくとも一部には、抗菌剤に抵抗性であるので、現在利用できる抗生物質での治療が困難な腸球菌株の出現による。腸球菌に抗生物質抵抗性が増加することにより、腸球菌感染症の別の防御方法および治療方法の重要性が増してきた。
【0003】
種々の研究グループが腸球菌から単離した多糖類について開示している。例えば、1,3-結合ポリグリセロリン酸塩骨格を含有するリポタイコ酸が、現在の分類によるとE. フェカーリス(E. faecalis)である「S. フェカーリス(S. faecalis)」から単離された。2位は、アラニル残基でエステル化されてもよいグリコシル残基のジサッカライドまたはトリサッカライドでグリコシル化され、細胞壁とプロトプラスト膜との間に多量に存在するために細胞内タイコ酸を示す。ウィッケン(Wicken)ら、J. Gen. Microbiol. 33: 231-39(1963)(非特許文献1)。
【0004】
パズア(Pazur)ら、J. Biol. Chem. 246: 1793-98(1971)(非特許文献2)は、E. フェカーリス(E. faecalis)株Nの細胞壁から2種の他の多糖類を単離した。これらの多糖類の一方はグルコースとD-ガラクトースとからなるジヘテログリカンと特徴づけられ、もう一方の多糖類は2-アセタミド-2-デオキシ-ガラクトース、ガラクトース、ラムノースおよびグルコースが1:1:2:4のモル比からなるテトラヘテログリカンであると言われている。
【0005】
ブレイウェイス(Bleiweis)ら、J. Bacteriol. 94: 1381-87(1967)(非特許文献3)は、D群連鎖球菌のD76株から第3の多糖類を単離した。この物質の糖組成にはグルコース、グルコサミン、ガラクトサミン、ラムノース、リビトールおよびリンが含まれるが、構造に関する情報は提供されていない。この物質は、糖置換基が結合したリン酸リビトールタイコ酸であると仮定されている。また、グルコースおよびN-アセチルグルコサミンが抗原性部位成分の可能性があると仮定されている。
【0006】
防御抗体を誘発することができる腸球菌抗原は、腸球菌感染症を防御するおよび/またはそれを治療する有効な手段となると思われる。当技術分野では種々の腸球菌抗原が開示されているが、全ての抗原がワクチンとして有効ではない。実際、文献に報告されている材料はどれも腸球菌による感染症を防御する際に有効であると報告されていない。これに関しては、抗原が免疫原性である、すなわち抗原が抗体の形成を生ずるという開示でさえ、その抗体が防御的でり、従ってその抗原がワクチンに有用であると結論づけるには根拠が不十分である。
【0007】
最後に、当技術分野においては、腸球菌は血清学的に非常に多様な種であることが示唆されている。この血清学的な多様性は、実用的な数の活性成分を含むワクチンが可能でないことを示唆した。マエカワ(Maekawa)ら、Microbiol. Immunol. 36: 671-681(1992)(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ウィッケン(Wicken)ら、J. Gen. Microbiol. 33: 231-39(1963)
【非特許文献2】パズア(Pazur)ら、J. Biol. Chem. 246: 1793-98(1971)
【非特許文献3】ブレイウェイス(Bleiweis)ら、J. Bacteriol. 94: 1381-87(1967)
【非特許文献4】マエカワ(Maekawa)ら、Microbiol. Immunol. 36: 671-681(1992)
【発明の概要】
【0009】
従って、本発明の目的は、腸球菌抗原、特に、防御抗体の形成を誘発することができるE. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faecium)由来の抗原を提供することである。
【0010】
さらなる目的は、腸球菌抗原を含有するワクチン、さらに詳細には、E. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faecium)双方に由来する抗原を含有するワクチンを提供することである。
【0011】
さらに別の目的は、腸球菌抗原、特にE. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faecium)由来の抗原を指向する抗体を含有する高度免疫グロブリン組成物を提供することである。
【0012】
本発明に係るこれらの目的および他の目的によると、ATCC202013、ATCC202014、ATCC202015、ATCC202016およびATCC202017の1つの細胞に対して抗体が反応する単離された腸球菌抗原が提供される。さらに詳細には、単離された腸球菌抗原は2-アセタミド-2-デオキシ-グルコースおよびラムノースを約1:2のモル比で含むE. フェカーリス(E. faecalis)抗原、6-デオキシ糖を含むトリサッカライドリピートを含むE. フェカーリス(E. faecalis)抗原並びに2-アセタミド-2-デオキシ-ガラクトースおよびガラクトースを含むE. フェシウム(E. faecium)抗原からなる群より選択される。
【0013】
抗原は診断的アッセイ法または免疫療法的方法に使用することができる。抗原が免疫キャリアーに共有結合された複合体、好ましくは緑膿菌エンドトキシンAまたはジフテリアトキソイドの組換えによって作製された無毒性変異株が提供される。抗原-キャリアー複合体は、能動免疫療法のためのワクチン、特に多価ワクチンに有用である。抗原またはワクチンは、受動免疫療法のための免疫グロブリンを作製するために使用することができ、また診断用途もしくは治療用途のためのモノクローナル抗体を作製する際に使用することもできる。
【0014】
本発明の他の目的、特徴および利点は以下の詳細な説明から明らかになると思われる。しかし、本発明の精神および範囲内において種々の変更および改良が加えられることはこれらの詳細な説明から当業者には明らかなので、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい態様を示してあるが、例示のみの目的で与えられていることを理解するべきである。
【0015】
好ましい態様の詳細な説明
驚くべきことに、大多数のE. フェカーリス(E. faecalis)臨床単離株は2つの群に分類されること、および大多数のE. フェシウム(E. faecium)ヒト臨床単離株は3つの群に分類されることが見出されている。臨床単離株の大多数がごく少数の共通抗原によって特徴づけられるという所見は当技術分野では知られておらず、最小数の活性成分を含むが、大多数の臨床単離株に対する防御作用がある多価ワクチンの開発を可能にする。
【0016】
E. フェカーリス(E. faecalis)の2つの群およびE. フェシウム(E. faecium)の3つの群の各々に特徴的である抗原を抽出し、精製し、同定することができる。これに関しては、1つの群または菌株の全細胞ワクチンが動物に注射されるとき、有意な免疫応答を生ずるのに十分な量の抗原が細菌によって発現される場合、すなわち、そのように注射されるとき、動物が防御抗体を形成する場合には、抗原はその群または菌株に特徴づけられる。
【0017】
E. フェカーリス(E. faecalis)に特徴的な抗原は本明細書においてEFS1およびEFS2と示され、E. フェシウム(E. faecium)に特徴的な抗原はEFM3、EFM4およびEFM5と示される。これらの抗原は本明細書において集合的に「腸球菌抗原」と呼ばれる。1種の細菌株の全細胞ワクチンが、被験者に注射されたとき、主にEFS1に対する有意な免疫応答を形成し、EFS2に対してはわずかな応答しか形成しない場合には、その菌株はEFS1株と呼ばれる。同様に、菌株の全細胞ワクチンが被験者に注射されたとき、主にEFS2に対する有意な免疫応答を形成する場合にはその菌株はEFS2株と呼ばれる。
【0018】
E. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faecium)の主要な臨床群の各々は、回収可能な量で容易に抽出および精製することができる異なる特徴的な抗原を発現するが、群はまた他の群に特徴的な抗原を少量発現することもある。しかし、この群の1種の全細胞で免疫するとき、免疫したウサギの抗体と他の群に特徴的な精製抗原との間に沈降線が見られないことによって示されるように、ウサギはその群の特徴的な抗原に対して有意な免疫応答を形成し、他の群に最も特徴的な少量の抗原に対しては全くまたはわずかにしか免疫応答を形成しない。
【0019】
特徴的でない抗原が細胞によって発現される程度は異なる。例えば、EFS1株の全細胞ワクチンに対して形成される抗血清は、スライド凝集反応およびオプソニン食菌アッセイ法(前述)の両方によって検出可能な量のEFS2に対する抗体を含有する。一方、EFS2株の全細胞ワクチンに対して形成された抗血清はEFS1と沈降する抗体を含有しない。
【0020】
腸球菌抗原は、本明細書に提供するプロトコールによって、E.フェカーリス(E. faecalis)株およびE.フェシウム(E. faecium)株から容易に得られ、免疫キャリアーと複合体を形成させると、防御抗体の形成を誘発することができる。従って、それらを使用して、臨床的に重要な腸球菌単離株による感染症に対してヒトおよび例えば、ウマ、ウシ、ブタ、イヌおよびネコのようなヒト以外の哺乳類を防御するワクチンを調製することができる。これに関しては、「臨床的に重要な」単離株は、ヒトまたは他の哺乳類に対して病原性であるものである。
【0021】
E.フェカーリス(E. faecalis)およびE.フェシウム(E. faecium)臨床単離株は、細菌を凝集するための適当な抗体調製物を使用してスライド凝集反応によって分類することができる。E.フェカーリス(E. faecalis)のスライド凝集反応は、臨床的な単離株の大多数は2つの群、EFS1およびEFS2に分類されることを示している。E.フェカーリス(E. faecalis)のEFS1株に対して形成される抗血清はE.フェカーリス(E. faecalis)のEFS1株およびEFS2株の両方を凝集する。E.フェカーリス(E. faecalis)のEFS1株に対して形成される抗血清の反応性はEFS1株の細胞で吸収することができる。吸収された血清はEFS2株だけを凝集しつづけることができる。
【0022】
E.フェカーリス(E. faecalis)のEFS2株に対して形成される抗血清はEFS2株だけを凝集し、この反応性はEFS1細菌に吸収され得ない。予期されるように、EFS2株細胞による吸収はこの抗血清とEFS2株細胞との反応性を除去する。理論に拘束されたくはないが、E.フェカーリス(E. faecalis)のEFS1およびEFS2株はEFS2抗原を含有するが、この抗原はEFS1細胞上のEFS1抗原によってカバーまたは隠蔽されることが仮定される。
【0023】
E.フェシウム(E. faecium)のスライド凝集反応実験は、臨床単離株の大多数は3つの群に分類されることを示している。群の2つに対して形成される抗血清は、E.フェカーリス(E. faecalis)で得られたものと同様の結果を示す。すなわち、E.フェシウム(E. faecium)のEFM3株に対して形成される抗血清はEFM3およびEFM5細菌の両方を凝集し、この抗血清とEFM3株との反応性はEFM3株の細胞に吸収され得る。吸収された血清はEFM5株の細菌だけを凝集する。この吸収によりEFM5株の細胞の反応性が低下する。これは、少量のEFM5抗原がEFM3細胞の表面に露出されていることを示している。
【0024】
E.フェシウム(E. faecium)のEFM5株に対して形成される抗血清はその群の単離株だけを凝集し、この反応性はEFM3株の細胞で容易に吸収され得ない。予期されるように、EFM5株の細胞による吸収はこの抗血清と細胞との反応性を低下させる。同様に、E.フェシウム(E. faecium)のEFM3およびEFM5株は共にEFM5抗原を含有する。また、この抗原はEFM3細胞上のEFM3抗原によってカバーまたは隠蔽されていると仮定される。
【0025】
E.フェシウム(E. faecium)のEFM4株に対して形成される抗血清はスライド凝集反応実験ではEFM4株の細胞にのみ特異的である。この抗血清はEFM3およびEFM5細菌との交差反応を持たないことを実証している。
【0026】
ホルマリンで死滅させた細胞をプロナーゼEで処理することによって示されるように、全細胞ワクチンに対して形成される抗体は、一般に、細胞表面のタンパク質を指向しない。死滅細胞を500μg/mlのプロナーゼEと共に37℃において3時間インキュベーションし、次いでスライド凝集反応において全細胞血清に対して試験すると、未処理のE.フェシウム(E. faecium)またはE.フェカーリス(E. faecalis)で観察されたものと凝集パターンに差がない。すなわち、プロナーゼ処理は抗体が指向する表面抗原を除去しない。
【0027】
2種のE.フェカーリス(E. faecalis)および3種のE.フェシウム(E. faecium)株の各々の代表的なものはブタペスト条約に基づいてアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)に寄託されており、それぞれ、寄託番号202013(E.フェカーリス(E. faecalis)EFS1)、202014(E.フェカーリス(E. faecalis)EFS2)、202015(E.フェシウム(E. faecium)EFM3)、202016(E.フェシウム(E. faecium)EFM4)および202017(E.フェシウム(E. faecium)EFM5)が付与されている。本発明に係る抗原は寄託された株から単離することができ、または寄託された株を使用して、本発明に係る抗原を発現する他の株を同定することができ、本明細書に記載するプロトコールにより抗原を抽出および精製することができる。
【0028】
本発明に係る腸球菌抗原は、本明細書に記載するプロトコールにより、それぞれの培養中のE.フェカーリス(E. faecalis)およびE.フェシウム(E. faecium)単離株から、回収可能な量および実質的に純粋な形態で得ることができる。これに関して「回収可能な」量とは、抗原の単離された量が、放射性標識法より感度の低い、イムノアッセイなどの方法によって検出可能であることおよび抗原自体を溶液にすることを含むさらなる操作を実施することができることを意味する。
【0029】
本発明に係る抗原を獲得する例示的な方法において、E.フェカーリス(E. faecalis)またはE.フェシウム(E. faecium)株は最初に血液寒天培地で増殖され、次いで、2% NaCl/コロンビアスターターフラスコに移される。4%グルコースを添加した同じ培地を入れた80リッターの発酵槽にスターターフラスコを接種する。細胞を16〜24時間発酵させる。細胞を遠心分離して、上清を分離する。5種の抗原の各々を各細胞ペーストまたは上清から抽出することができる。
【0030】
細胞ペーストを使用する場合には、冷却した10%トリクロロ酢酸(TCA)と共にペーストを撹拌することによって抗原を抽出し、冷却したエタノール/CaCl2で1回または複数回逐次的に沈殿させることによってTCA溶液から沈殿させる。上清を使用する場合には、上清を直接冷却したエタノール/CaCl2で沈殿させる。こうすることによって粗製抗原抽出物が得られる。
【0031】
粗抽出物を水に溶解し、透析し、凍結乾燥する。凍結乾燥した材料を緩衝液に溶解し、イオン交換クロマトグラフィーによって精製する。抗原を含有する画分を貯留し、透析し、濃縮し、凍結乾燥し、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して好適なカラムでサイズ別に抗原をさらに精製する。抗原を含有する画分を貯留し、濃縮し、透析し、凍結乾燥する。精製した抗原を1H-NMR分光光度計によって分析する。
【0032】
本発明に係る腸球菌抗原の組成物は該抗原または該抗原の結合物を「から本質的に成り」、このことは、該組成物を治療に用いる場合抗原に対する免疫応答の誘発を妨害する、または診断アッセイ法の特徴である抗原抗体結合を妨害する如何なる材料も組成物が含まないことを意味する。好ましい態様において、組成物はE. フェカーリス(E. faecalis)抗原、E. フェシウム(E. faecium)抗原の両方を含む。
【0033】
本発明の抗原は、試料中の腸球菌抗原および/または抗腸球菌抗体の有無を検出する診断アッセイ法の作製に有用である。腸球菌抗原または腸球菌抗原に特異的な抗体を、腸球菌抗体または抗原を含むことが疑われる試料と混合し、抗原-抗体結合をモニターする。抗原または抗体は放射活性または酵素標識によって標識する。好ましい態様において、抗原または抗体が、マトリクス表面に接する相補的抗体または抗原に近づけるように、抗原または抗体を固相支持体に固定する。次に試料をマトリクス表面と接触させ、表面の抗原-抗体結合をモニターする。
【0034】
例えば、抗原または抗体は、抗原または抗体が固相に結合して、酵素-抗体または酵素-抗原結合物を用いて試料中に存在する抗体または抗原を検出および/または定量する、酵素結合イムノソルベント解析(ELISA)において用いることができる。または、可溶化して分離された抗原がニトロセルロース濾紙と結合するウェスタンブロット解析を用いることができる。次に、抗体を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ-Ig結合物のような酵素または標識結合抗免疫グロブリン(Ig)を、沈殿可能または検出可能な基質の存在下で濾紙とインキュベートすることによって検出する。ウェスタンブロット解析は、所望の抗原の純度が50%以上である必要はないという利点を有する。ELISAおよびウェスタンブロット技術に関する記述は、その本文が本明細書に参照として組み入れられる、アウスベルら(Ausubel)編、「分子生物学の最新プロトコル(CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY)」、John Willy and Sons(1988)の第10章および第11章に見られる。
【0035】
ワクチンに関して、抗原に対する免疫応答を誘導するためのT細胞とB細胞との相互作用を改善するために、該抗原を、通常ポリペプチドまたは蛋白質のような免疫担体に結合することが好ましい。これは抵抗性が低下した患者での使用を意図したワクチンの場合には特に重要である。免疫担体は、能動免疫の場合にも、および受動免疫の場合のボランティアにおける高力価の抗血清を調製する際にも免疫原性を増強する。本発明の適した免疫担体には、例えば、ファトムら(Fattom)、Inf. and Imm. 61:1023〜1032(1993)が記述しているように、免疫担体として一般的に用いられる他の蛋白質と共に、破傷風毒素、ジフテリア毒素、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)エンドトキシンAまたはその誘導体、エンドトキシンAの組換え型非毒性変異株が含まれる。
【0036】
抗原をキャリアーと複合体形成するために、まず抗原を誘導体化する。種々の方法を使用して抗原を誘導体化することができ、共有結合で抗原を免疫キャリアーに結合することができる。好ましい方法において、コーン(Kohn)ら、FEBS Lett. 154: 209: 210(1993)の方法により、当技術分野で公知の技術にしたがい、抗原のヒドロキシル基を1-シアノ-4-ジメチルアミノ-ピリジニウムテトラフルオロボレートを使用して活性化し、次いで抗原を6炭素2官能性アジピン酸ジヒドラジド(ADH)で誘導体化する。次いで、この物質を、ジフテリアトキソイド(DT)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の組換えエキソプロテインA(rEPA)、破傷風トキソイド(TT)または別の好適なキャリアー蛋白質に1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)で結合する。得られた複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって未反応の抗原から分離することができる。
【0037】
好ましくは、抗原結合物は、保護的なIgGサブタイプ2抗体を促進するアジュバントと共に投与する。典型的なアジュバントには、フロイントの完全アジュバント(CFA)およびフロイントの不完全アジュバント(IFA)、ミョウバンならびにヒトおよび動物への使用に適したその他のアジュバントが含まれる。硫酸デキストランは、ブドウ球菌細胞表面抗原に対するIgG2抗体の強力な刺激剤であることが示されており、同様にアジュバントとして適している。
【0038】
例えば、実験動物のような数種の哺乳類において菌血症を誘発するには、極めて大量の生物または宿主の抵抗性を低下するためのいくつかの前もっての操作が必要である。しかし、インビトロにおける食作用はヒトおよび他の哺乳類のインビボにおける防御免疫と関連のあるものとして研究することができる。このモデルでは、抗原特異的なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体がインビトロにおいて腸球菌株をオプソニン処理する能力を、コジマ(Kojima)ら、Infect. Dis. Immun. 58: 2367-74(1990)に記載されている方法により、食作用によって測定する。インビトロにおけるオプソニン食菌作用アッセイ法は、当技術分野において、ワクチンとしての有効性を予測するものと認識されている。例えば、フィッシャー(Fisher)らは、インビトロオプソニンアッセイ法で求めた機能性抗体とインビボにおける活性との相関について開示している。J. Infect. Dis. 169:324-9(1994)。
【0039】
本発明に係る腸球菌抗原によって誘発される抗体はオプソニン作用があり、種特異的な食作用を促進する。腸球菌抗原に対して形成されたウサギ抗体は、ヒト補体の存在下においてヒト多形核白血球(PMN)細胞による抗原を保有する株のオプソニン食菌作用を特異的に仲介することができる。従って、インビトロにおける食作用アッセイ法は、腸球菌抗原に対する抗体はE.フェカーリス(E. faecalis)およびE.フェシウム(E. faecium)による感染症を防御することを示す。E.フェカーリス(E. faecalis)およびE.フェシウム(E. faecium)抗原の組み合わせに基づいたワクチンを使用して、臨床腸球菌株の大多数による感染症を防御することができる。
【0040】
インビボの結果は、インビトロオプソニン食作用アッセイ法の結果と一致している。EFS1複合体に対する抗体はE.フェカーリスでチャレンジされたマウスにおいて菌血症を低下させた。
【0041】
本発明はまた、腸球菌に結合または中和するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(マウスまたはヒト)の産生に腸球菌抗原を用いることにも関する。これらの抗体を産生する実例となるプロトコルは、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY、第11章;ビテッタら(Vitetta)、Immunol. Rev. 62:159〜83(1982);およびラソ(Raso)、Immunol. Rev. 62:93〜117(1982)に記述されている。
【0042】
ポリクローナル抗体産生のために接種物は、典型的に抗原-免疫担体を、生理食塩液のような生理学的に許容される希釈剤に分散させて、水性組成物を形成することによって調製する。アジュバントの有無によらず、接種物の免疫刺激量を哺乳類に投与し、次に、抗原が保護的な抗腸球菌抗原抗体を誘導するために十分な期間、接種した哺乳動物を維持する。抗原に対する反応にプライミングされていない個体には抗原-免疫担体の追加免疫量を用いてもよい。
【0043】
抗体には、一般的に用いられる多様な動物、例えばヤギ、霊長類、ロバ、ブタ、ウサギ、ウマ、雌鶏、モルモット、ラット、およびマウスなどの抗体調製物を含んでもよく、適当な選択、分画および精製を行った後のヒト抗体であってもよい。動物の抗血清はまた、E. フェカーリス(E. faecalis)および/またはE. フェシウム(E. faecium)のホルマリンで死滅させた株を動物に接種することによって、従来の方法によって、動物を飼育し、さらに加工するために血清または血漿を回収することによって、作製してもよい。
【0044】
このようにして誘導された抗体は、アルコール分画およびカラムクロマトグラフィーまたは免疫アフィニティクロマトグラフィーのような周知の技法によって望ましい程度に回収および単離することができる;すなわちセファデックス登録商標のような材料を充填したクロマトグラフィーカラムに抗原を結合させ、抗血清をカラムに通過させ、それによって特異的抗体を保持して、その他の免疫グロブリン(IgGs)および混入物質を分離し、その後カオトロピック剤によって溶出して精製抗体を回収するが、選択的にその後例えば、血液型抗原またはその他の非病原性種を結合させたカラムを通過させることによってさらに精製する。この技法は、問題の病原菌に対する抗体力価を生じたヒトの血清または血漿から望ましい抗体を単離し、このように抗原に結合することができる抗体を確実に保持させる場合には好ましい可能性がある。次に、E. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faecium)株に対する受動免疫用製剤にそれらを用いることができる。
【0045】
モノクローナル抗体組成物は、検出限界の範囲内で、腸球菌抗原と有効に結合することができる1種類のみの抗体結合部位を含む。モノクローナル抗体型の適した抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて調製することができる。
【0046】
本発明のモノクローナル抗体組成物を産生するハイブリドーマを作製するためには、骨髄腫またはその他の自己不死化細胞株を、腸球菌抗原で高度免疫した哺乳類の末梢血、リンパ節、または脾臓から得たリンパ球と融合させる。骨髄腫細胞株はリンパ球と同じ種に由来することが好ましい。脾細胞は典型的に、ポリエチレングリコール1500を用いて骨髄腫細胞と融合する。融合したハイブリッドをHATに対する感受性によって選択する。本発明の抗体分子を分泌するハイブリドーマはELISAを用いて同定することができる。
【0047】
Balb/cマウスの脾臓、ヒト末梢血、リンパ節または脾細胞は、マウスまたはヒトハイブリドーマの調製に用いられる好ましい材料である。本発明において用いられる適したマウス骨髄腫は、ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン-感受性(HAT)細胞株が含まれ、好ましい骨髄腫はP3X63-Ag8.653である。ヒトモノクローナル抗体産生のための好ましい融合パートナーはSHM-D33で、これはメリーランド州、ロックビルのATCCから、CRL 1668の名称で入手可能なヘテロ骨髄腫である。
【0048】
本発明のモノクローナル抗体組成物は、適当な特異性の抗体分子を分泌するハイブリドーマ1個を含む栄養培地からなるモノクローナルハイブリドーマ培養を開始することによって産生することができる。培養はハイブリドーマが培地中に抗体分子を分泌するために十分な条件および期間維持する。次に、抗体含有培地を回収する。次に抗体分子を周知の技法によってさらに単離することができる。
【0049】
これらの組成物の調製に有用な媒体は、当技術分野で周知でしかも市販されており、その中には、合成培養培地、近交系動物等が含まれる。一例としての合成培地は、20%仔ウシ胎児血清を加えたダルベッコの最少基本培地である。一例としての近交系マウス株はBalb/cである。
【0050】
本発明におけるそれらの有用性に影響を及ぼすのは、主に抗体の抗原特異性であるため、種間融合のようなその他のモノクローナル抗体組成物の調製法もまた含まれる。感染した人から得たヒトリンパ球をヒト骨髄腫細胞株と融合して、腸球菌抗原を認識する抗体産生をスクリーニングすることができるハイブリドーマを産生することができる。しかし、この点においてより好ましいのは、感染したヒト被験者からの生物試料の使用を伴わないプロセスである。例えば、本明細書に記述のワクチンで免疫した被験者は、本発明内の抗体組成物に用いることが適している抗体源となることができる。精製したモノクローナル抗体は、臨床単離株の回収物を使用した細菌凝集アッセイ法によって、または精製した抗原をコーティングしたプレートを使用したELISAによって特徴づけることができる。
【0051】
本説明によって産生されたモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体組成物を受動免疫によって用いて、E. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faecium)菌株による感染症の予防または治療を目的とした免疫応答を誘導することができる。この点において、抗体の調製物はポリクローナル組成物であってもよい。そのようなポリクローナル組成物は、腸球菌抗原に結合する抗体を含む。ポリクローナル抗体成分はポリクローナル抗血清であってもよく、好ましくは、腸球菌抗原をチャレンジした動物からのアフィニティ精製抗体である。または、E. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faecium)の双方に由来する腸球菌抗原に対するモノクローナル抗体の混合物である、「遺伝子操作したオリゴクローナル」混合物を用いてもよい。
【0052】
双方のタイプの混合物において、抗体を化学結合させて、E. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faecium)抗原に結合することができる単一の多特異的分子を形成すると有利となりうる。そのような結合を行う1つの方法は、例えば、二つの異なる抗体のペプシン消化によって得られた2つの異なるF(ab')2断片を混合することによって、二価F(ab')2 ハイブリッド断片を作製し、還元的に開裂してFab'断片の混合物を形成し、その後ジスルフィド結合の酸化的再形成によって、最初の抗原のそれぞれに特異的なFab'部分を含むハイブリッド断片を含むF(ab')2断片の混合物を生成することである。そのようなハイブリッド抗体断片の調製法は、フェテアヌ(Feteanu)「生物学と医学における標識抗体(LABELED ANTIBODIES IN BIOLOGY AND MEDICINE)」、321〜23、McGraw-Hill Int'l Book Co.(1978);ニソノフら(Nisonoff)、Arch Biochem. Biolphys. 93:470(1961);およびハンマーリングら(Hammerling)、J. Exp. Med. 128:1461(1968);ならびに米国特許第4,331,647号に開示されている。
【0053】
完全にヘテロ特異的な二価断片を作製するその他の方法、例えば、開裂した断片を結合させるための二機能リンカーを用いることも当技術分野で既知である。抗体の軽鎖および重鎖を組み込んだ組換え型分子が知られている。例えば、ボス(Boss)ら、米国特許第4,816,397号に記載の方法による産物を参照のこと。抗体の特徴を有する組換えまたは合成結合分子を産生する類似の方法も本発明に含まれる。2つ以上の異なる単特異的抗体または抗体断片は、当技術分野で既知の様々なリンカーを用いて結合することができる。
【0054】
本発明に従って産生された抗体成分は、抗体全体、抗体断片、または小断片を含むことができる。抗体は例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、キメラ抗体または二価もしくは多種抗原もしくはエピトープ特異性を有するハイブリッド抗体のような如何なるタイプの免疫グロブリン全体であってもよく、または断片、例えばハイブリッド断片を含むF(ab')2、Fab'、Fab等の断片であってもよく、さらに特異的な抗原と結合して複合体を形成することによって抗体のような挙動を示す、如何なる免疫グロブリンまたは如何なる天然、合成、もしくは遺伝子操作した蛋白であってもよい。特に、Fab断片は、大腸菌(E. Coli)のような遺伝的に形質転換した宿主において発現または集合させることができる。このように、ラムダベクター系は、祖先の抗体を産生する被験者の潜在的多様性と同等の、またはそれ以上の潜在的多様性を有するFab'の集団を発現するために利用することができる。ヒューズ(Huse, W.D.)ら、Science 246:1275〜81(1989)を参照のこと。
【0055】
本発明に係る抗原結合物は、組成物中の活性成分であることができ、さらに細胞免疫応答および/または腸球菌感染症と闘う抗体のインビボ産生を誘導するワクチンとして用いることができる、活性成分のための薬学的に許容される担体をさらに含む。この点において、薬学的に許容される担体は、材料が不活性である、またはそうでなければワクチン投与という意味において、活性剤と両立しうると共に医学的に認容されるという理由から、薬剤を投与するための溶媒として用いることができる材料である。適した賦形剤の他に、薬学的に許容される担体は、希釈剤、アジュバント、抗酸化剤、保存剤および可溶化剤のような従来のワクチン添加剤を含んでもよい。
【0056】
本発明に従って、そのようなワクチンは、E. フェカーリス(E. faecalis)またはE. フェシウム(E. faecium)にまだ感染していない被験者に投与することができ、それによって、その被験者に腸球菌保護免疫応答(液性または細胞性)を誘導することができる。または、本発明のワクチンは、E. フェカーリス(E. faecalis)および/またはE. フェシウム(E. faecium)感染症を既に発症しているが、ワクチンに対して生じた免疫応答が感染症のさらなる広がりを抑制できるほど十分に初期段階である被験者に投与することができる。
【0057】
もう一つのアプローチによって、本発明のワクチンは、腸球菌に対して作製された抗体を含む、特異的なワクチンによるチャレンジに対して生成された免疫グロブリン源となる被験者に投与することができる。このように処置した被験者は、従来の血漿分画法によって免疫グロブリンが得られるような血漿を提供し、腸球菌感染症に対する耐性を付与するために、またはこれを治療するためにこのグロブリンが別の被験者に投与される。本発明に係る免疫グロブリンは、免疫無防備状態の個体、侵襲性技法を受ける個体、またはワクチン接種に反応して自身の抗体を産生する時間がない個体にとって特に有用である。
【0058】
同様に、本発明によって産生されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗腸球菌抗体は、免疫毒素と結合して、腸球菌感染症を既に発症しているが広範囲には広がっていない被験者に投与することができる。この目的のため、本発明の説明に従って産生された抗体材料は、本明細書において定義したような薬学的に許容される担体と共に投与する。
本発明はさらに、以下の説明的な実施例を参考にすることによって説明する。
【0059】
実施例1:E. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faeciumの発酵
E. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faecium)を、37℃でブロス培地60 Lを含む80 L発酵器中で、2%NaClおよび4%グルコースを含むコロンビアブロス中で培養した。16時間播種培養1Lを加えて発酵を開始させた。細胞を200 rpmで16〜24時間攪拌しながら増殖させた。
【0060】
全細胞抗血清を調製するためのワクチンとして用いることができる細胞を室温で一晩ホルマリン固定した。精製するために細胞を、14,500×gで遠心することによって回収し、使用するまで-70℃で保存した。EFS1、EFS2、およびEFM3についてそれぞれ細胞ペーストの約500g、180g、および350g(正味の重量)を80 Lの発酵から得た。
【0061】
実施例2:全細胞抗血清の調製
実施例1のように培養したE. フェカーリス(E. faecalis)2株およびE. フェシウム(E. faecium)3株から得た死滅させてホルマリン固定した細胞をOD540=1となるように調製して、ウサギに静脈内注射した。アジュバントは用いなかった。ウサギに10回注射を行い、最後の注射後一週間毎に採血を行い、陽性の全細胞血清を採取してプールした。IgGはプロテインGアフィニティカラムによって全細胞血清から精製した。
【0062】
実施例3:E. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faecium)の凝集試験
死滅させてホルマリン固定したE. フェカーリス(E. faecalis)2株および死滅させてホルマリン固定したE. フェシウム(E. faecium)3株で免疫したウサギから得た免疫ウサギ血清を用いて、スライド凝集試験によってE. フェカーリス(E. faecalis)およびE. フェシウム(E. faecium)の単離菌をタイピングした。抗血清を用いてE. フェカーリス(E. faecalis)の臨床単離菌67株およびE. フェシウム(E. faecium)の臨床単離菌85株をタイピングした。E. フェカーリスの単離菌67株中60株(89.5%)は、ATCC202013の細胞でウサギを免疫することによって得られた抗血清に反応した。E. フェシウムの臨床単離菌85株中41株は、ATCC202015の細胞でウサギを免疫することによって得られた抗血清に反応した。
【0063】
実施例4:抗原の精製
実施例3に報告する結果に基づいて、抗原をATCC202013、ATCC202014、およびATCC202015からそれぞれ単離した。抗原を細胞ペーストまたは実施例1に従って得られた上清から抽出した。
【0064】
EFS1抗原の精製
この抗原はATCC202013の細胞ペーストから単離した。抗原は細胞ペースト(434g)を冷却した10%TCA(1735 ml)と共に4℃で48時間攪拌することによって細胞表面から抽出した。遠心によって透明な上清を得た。この上清を40℃以下の減圧下で蒸発させることによって元の容積の5分の1に濃縮した。この溶液に95%エタノールを等量加えて、溶液を4℃で一晩インキュベートした。遠心によって少量の沈殿物を上清から分離した。透明な上清に4倍量のエタノールをさらに加えて、溶液でのCaCl2の最終濃度が10 mMとなるように十分量の1M CaCl2を加えた。混合液を4℃でさらに一晩インキュベートした。沈殿物を遠心によって回収した。
【0065】
沈殿物を最小量の冷却した10%TCAに再溶解して、上記の50%および80%エタノール沈殿段階を繰り返してより多くの不純物を除去した。80%エタノール沈殿段階後に回収した最終沈殿物を水に溶解して、冷蒸留水で透析して凍結乾燥した。この材料を0.01 Mトリス塩酸緩衝液、pH 7.0に溶解して、Q-セファロース陰イオン交換カラムにローディングした。カラムを、0.1および0.2 M NaClを含む0.01 Mトリス塩酸緩衝液で連続的に溶出した。0.2 M NaCl分画を冷蒸留水に対して透析して、凍結乾燥した。凍結乾燥材料をセファクリルS-300カラムでさらに精製して、燐酸緩衝生理食塩液(PBS)を用いて溶出し、最終精製抗原258 mgを得た。
【0066】
EFS2抗原の精製
抗原はATCC 202014の発酵から得た上清から精製した。原材料は10 mM CaCl2を含む25〜75%エタノール沈殿によって上清から得た。75%エタノール調製物から得た分画を、Q-セファロースカラム上でのイオン交換クロマトグラフィーによって部分精製した。カラムは0.2および0.5 M NaClを含む0.01 Mトリス塩酸緩衝液で連続的に溶出した。0.5 M NaCl分画をプロテアーゼで一晩処理して混入している蛋白質を除去し、その後セファクリルS-300カラム上でのサイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した。ATCC202014に対する全細胞抗血清に反応する分画をプールして、Q-セファロースカラム上での第二のイオン交換段階によってさらに精製した。材料をトリス塩酸緩衝液中における0.2〜0.5 Mの塩化ナトリウム直線勾配でpH 7で溶出した。同じ材料をまた、化学的処理または酵素処理によって細胞表面からこの材料を抽出した後に同様の段階を経て、細胞から単離した。
【0067】
EFM3抗原の精製
EFS1の場合と同様に、細胞ペーストを冷却した10%TCAと共に4℃で48時間攪拌することによって、抗原をATCC202015から抽出した。遠心によって透明な上清を得た。この上清を40℃以下の減圧下での蒸発によって元の容積の5分の1に濃縮した。この溶液に95%エタノールを等量加えて、溶液を4℃で一晩インキュベートした。遠心によって少量の沈殿物を上清から分離した。透明な上清に4倍量のエタノールをさらに加えて、溶液でのCaCl2の最終濃度が10 mMとなるように十分量の1M CaCl2を加えた。混合物を4℃でさらに一晩インキュベートした。沈殿物を遠心によって回収した。
【0068】
沈殿物を最小量の冷却した10%TCAに再溶解して、上記の50%および80%エタノール沈殿段階を繰り返してより多くの不純物を除去した。80%エタノール沈殿段階後に回収した最終沈殿物を0.01 Mトリス塩酸緩衝液、pH 7.0に溶解して、Q-セファロース陰イオン交換カラムにローディングした。カラムを、0.1M NaClを含む上記緩衝液によって溶出した。分画を冷蒸留水に対して透析して、凍結乾燥した。凍結乾燥材料をセファクリルS-300カラムでさらに精製して、PBSで溶出した。抗原含有分画をプールして、冷蒸留水に対して透析して、凍結乾燥した。
【0069】
実施例5:抗原の特徴付け
実施例4において単離された抗原を分析してその組成物を決定した。EFS1は主要な成分として4つの糖:2-アセトアミド-2-デオキシ-グルコース、ラムノース、グルコースおよび2-アセトアミド-2-デオキシ-ガラクトースを概算モル比1:2:2:2で含む。抗原の完全な生化学分析を表1に示す。
【表1】

材料はまた、1H-NMR分光法によって分析した。認められた主な低磁場ピークは、δ5.14(s)、5.03(s)、5.01(d、J1.2=7.8 Hz)、4.78〜4.67(複合体)であった。高磁場領域では、スペクトルは2.21および2.18でN-アセチル基による共鳴を示し、1.43(d、J5.6=6Hz)では、6-デオキシ糖の6-メチル基による共鳴を示した。材料の完全なスペクトルを図1に示す。
【0070】
EFS2抗原は1H-NMRによって測定すると3糖類のリピートを含む(図2)。糖の一つは6-デオキシ糖である。構成糖はN-またはO-アセチル置換基を含まない。抗原はフェノール硫酸解析において陽性発色を示し、これは中性の糖残基が存在することを示している。抗原は>0.20 M NaClを含む緩衝液で陰イオン交換カラムから溶出し、ロケット免疫電気泳動において陽極に向かって移動することから、酸性基を含むことを意味する。
【0071】
EFM3抗原の糖分析から、2つの主な糖として2-アセトアミド-2-デオキシ-ガラクトースおよびガラクトースが存在することが明らかになった。抗原の完全な生化学分析を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
EFM3抗原を1H-NMR分光法によっても分析した。完全なスペクトルを図3に示す。低磁場領域において認められた特徴的な共鳴はδ5.01(s)、4.73(d、J=7.8 Hz)、4.6〜4.55(複合体)、および4.52(d、J=7.8 Hz)であった。N-アセチル基からのプロトンは高磁場領域においてδ2.14、2.20、および2.21で共鳴した。
【0074】
EFS1およびEFS2はそれぞれ、ATCC202013およびATCC202014の全細胞ワクチンで免疫したウサギから得た抗血清に対して毛細管において特異的に反応した。さらに、EFS1株ではEFS2が少量発現されるためにEFS2は毛細管においてATCC202013に対する全細胞抗血清に反応した。EFS1は毛細管においてATCC202014に対する全細胞抗血清に反応せず、EFS2で免疫したウサギ血清においてEFS1特異的抗体の存在を検出するためには、ドットブロットのようなより感受性の高い技法が必要である。EFM3抗原はATCC202015の細胞によって免疫したウサギからの血清に特異的に反応した。EFM3抗原はATCC202013またはATCC202014のいずれかで免疫したウサギから得た特異的抗血清と交叉反応しなかった。
【0075】
インビトロ解析において、ATCC202013に対するウサギ抗血清は、EFS1抗原をコーティングしたプレート上でヒト補体のC3b成分を特異的に沈殿させ、ATCC202015に対するウサギ抗血清は、EFM3抗原をコーティングしたプレート上でヒト補体のC3b成分を特異的に沈殿させた。C3bの交叉沈殿は起こらなかった。
【0076】
実施例6:抗原免疫担体結合物の調製
抗原水溶液(10 mg/ml)を氷水浴中で冷却した。1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジン・テトラフルオロボレート(CDAP)の冷水溶液(100 mg/ml)を、上記抗原溶液の1.2倍量でこの溶液に加えた。0.2 Mトリエチルアミン水溶液を先に加えたCDAPと等しい容量で滴下した。混合物を4℃で全体で3分間攪拌した後、0.5 M炭酸水素ナトリウムで調製した0.5 M ADH溶液を等量加えた。上記溶液を4℃で一晩攪拌し、冷蒸留水に対して透析して、凍結乾燥すると誘導体化した最終産物が得られた。抗原に取り込まれたADHの量は、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)解析によって比色定量した。
【0077】
等量のADH-誘導体化多糖およびDTを水に溶解して、それぞれの成分について最終濃度5〜10 mg/mlを得た。この溶液を0.1 M塩酸を用いてpH 5.6に調整した。この溶液に、新たに調製した1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)を最小量の水に溶解した溶液を抗原重量の4倍量で加えた。溶液を室温で十分に攪拌して、0.1 M HClを用いて溶液のpHを5.6に維持した。0.1 M NaOHによってpHを7.0にすることによって、1時間後に反応を停止させた。セファクリルS-100カラムによるサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、PBSで溶出して、純粋な結合物を得た。結合物中の抗原および蛋白質の量はそれぞれ、フェノール硫酸解析および対応する抗原またはBSAを標準物質として用いるBCA解析によって定量した。
【0078】
実施例7:腸球菌抗原・免疫担体結合物に対する抗血清の調製
雌性の白色ニュージーランドウサギに、実施例6に従って調製した抗原・免疫担体結合物50 μgを0、14および28日目に皮下注射することによって免疫した。1回目の注射は等量の完全フロイントアジュバント(CFA)と共に行い、その後の注射は不完全フロイントアジュバント(IFA)と共に行った。ウサギから採取した被験血液を、免疫した抗原に対して特異的なウサギ抗体の沈殿の有無をモニターした。力価を増大させるために必要であればさらに注射を行った。
【0079】
ウサギを出血させて、免疫した抗原に特異的な抗体を含む高力価ウサギ抗血清を得た。抗血清を用いて、インビトロ解析において特異的抗体がHL-60細胞による対応する腸球菌のオプソニン食作用を媒介するか否かを評価した。
【0080】
E. フェカーリス(E. faecalis)EFS1-DT結合物で免疫したウサギから得た血清は高力価であり、毛細管においてEFS1と沈殿を生成した。抗体は補体の存在下でHL 60によるEFS1を有する細胞の死滅を媒介することができた。E. フェシウム(E. faecium)抗原-DT結合物で免疫したウサギは抗原特異的抗体を誘発することができた。これらの抗体は毛細管においてE. フェシウム(E. faecium)抗原と沈殿物を形成した。
【0081】
実施例8:インビトロオプソニン食作用アッセイ法
細菌を保存用ビーズから新しいトッド・ヒュイット・チオグリコレート寒天プレートに移した。プレートを37℃で5%CO2条件下で18〜20時間インキュベートした。細菌をプレートから掻き取って滅菌生理食塩水2mlに懸濁した。チューブを25〜35℃で2000 rpmで10分間遠心して上清を除去した。ペレットにした細菌を滅菌生理食塩水2mlに再懸濁して、540 nmで吸光度0.1となる細菌懸濁液を調製した。
【0082】
上記細菌懸濁液から調製した試料をRP-5培地で100倍に希釈した液を、細菌溶液の作業保存液として用いた。この細菌調製物をスライド凝集反応が陽性か否かに関して対応する抗血清に対して調べた。細菌作業保存液をRP-5培地で適当に希釈してマイクロタイタープレートにローディングした。
【0083】
HL-60細胞からPMNを得て、RP-5培地で1.0×107個/mlの濃度となるように調整した。PMN細胞を30〜35℃で1000 rpmで10分遠心した。沈殿した細胞をRP-5培地5mlに再懸濁し、1000 rpmで10分間遠心した。沈殿した細胞をRP-5培地1mlに再懸濁させて、作業濃度1×107個/mlを得た。
【0084】
ヒト血清から調製したヒト補体をRP-5培地で40倍希釈した。マイクロタイタープレート中の、反応混合液は、細菌[106〜107個/ml]50 μl、希釈血清50 μl、PMN [1×107個/ml]50 μl、および補体50 μl[1:40]、を含み、総容量は200 μlであった。ゼロ時間で、反応プレートからの試料20 μlを10-1、10-2、10-3、および10-4倍に連続希釈した。それぞれの希釈から得た試料10 μlをトリプシン大豆(TSA)プレート上に播種した。TSAプレートを37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。ゼロ時間希釈の後、反応プレートを37℃で90分間インキュベートした。試料を再度混合した。反応プレートからの試料20 μlを10-1、10-2、10-3、および10-4倍に連続希釈した。それぞれの希釈からの試料10 μlをTSAプレート上に播種し、これを37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。
【0085】
それぞれの希釈/試料/プレートに関して細菌コロニーを計数して、殺細菌百分率を以下の式によって計算した:

【0086】
ATCC202013によって免疫したウサギからの全細胞抗血清およびEFS1-DT結合物に対して作製されたウサギ抗体はいずれも、ヒト補体の存在下でHL-60によるE. フェカーリス(E. faecalis)のオプソニン食作用を媒介した。抗EFS1-DT結合ウサギ抗体のオプソニン活性は、EFS1-DT結合物によって完全に吸収された。全細胞抗血清のオプソニン活性はEFS1-DT結合物ではごく部分的に吸収されたに過ぎず、このことは全細胞抗血清のオプソニン活性の一部がEFS1以外の抗原に対して作製された抗体から生じていることを示している。抗EFS1-DT結合物および全細胞抗体のオプソニン活性はいずれも、ATCC202013によって完全に吸収された。ATCC202014に対して作製された全細胞抗体は、凝集解析においてEFS1と反応せず、EFS1とEFS2が異なる抗原であることを明らかに示している。
【0087】
ATCC202014で免疫したウサギからの全細胞抗血清は、ヒト補体の存在下でHL-60によるE. フェカーリス(E. faecalis)のオプソニン食作用を媒介した。全細胞ウサギ抗体はまた、ヒト補体の存在下でHL-60によるEFS1単離菌を含む多数のE. フェカーリス単離菌のオプソニン食作用を媒介することができた。このオプソニン活性はEFS2によって吸収することができた。EFS1-DT結合物はATCC202014で免疫したウサギからの全細胞抗血清のオプソニン活性を吸収することができなかった。この知見は、ウサギにおいてEFS2単離菌によって誘発された免疫応答がEFS2抗原に対するものであること、およびEFS2抗原に対する抗体はヒト補体の存在下でHL-60による多数のE. フェカーリス単離菌のオプソニン食作用を媒介することができることを示唆している。
【0088】
実施例9:EFS1-DT結合抗体によるE. フェカーリスのチャレンジからのインビボにおけるマウスの保護
全体で42匹のICRマウスを3群に分けて、最初の2群では一群あたりマウス15匹および第3の群では1群あたり12匹とした。最初の2群のマウスは、結合物免疫ウサギ(I-IgG)または正常ウサギ(N-IgG)のいずれかから得たプロテインGカラム精製ウサギIgG 0.75 mgを腹腔内注射することによって免疫した。第3の群はPBSで免疫した。24時間後、全ての動物に、5%雄ブタムチンと混合したATCC202013以外のEFS1株5×107 CFUをチャレンジした。全てのマウスの眼から血液試料を6、24、48、72および168時間後に採取した。これらの試料をTSAプレート上に播種して、マウスにおける菌血症のレベルを血液中の細菌数によって定量した。結果を表3に示す。
【0089】
48時間後、I-IgG群では菌血症を示したのはマウスの17%に過ぎなかったのに対し、N-IgGおよびPBS免疫群ではその値はそれぞれ60%および79%であった。7日後、全ての動物を屠殺して、肝臓および腎臓を摘出し、これらの臓器を細菌コロニー形成の試料とした。I-IgG群では、N-IgG群(9/30)またはPBS群(13/24)と比べて腎臓に検出可能なコロニーを形成した動物は少なかった(4/30)。これらの知見は、EFS1抗原に特異的な抗体がE.フェカーリス細菌チャレンジに対してマウスを保護することができることを明らかに示している。
【0090】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は本発明に係る腸球菌抗原のNMRスペクトルである。
【図2】図2は本発明に係る腸球菌抗原のNMRスペクトルである。
【図3】図3は本発明に係る腸球菌抗原のNMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-アセトアミド-2-デオキシ-グルコースおよびラムノースを1:2のモル比で含むE. フェカーリス(E. faecalis)抗原、6-デオキシ糖を含む三炭糖反復構造を含むE. フェカーリス(E. faecalis)抗原、ならびに2-アセトアミド-2-デオキシガラクトースおよびガラクトースを含むE. フェシウム(E. faecium)抗原からなる群より選択される単離腸球菌抗原。
【請求項2】
免疫担体に共有結合された請求項1記載の抗原を含む、抗原・担体結合物。
【請求項3】
免疫担体がジフテリアトキソイドまたは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)エンドトキシンAの組換えにより産生された非毒性変異体である、請求項2記載の抗原・担体結合物。
【請求項4】
請求項1記載の抗原と、滅菌した薬学的に許容されるその担体とから本質的に成る組成物。
【請求項5】
請求項2記載の抗原・免疫担体結合物と、滅菌した薬学的に許容されるその担体とから本質的に成る組成物。
【請求項6】
免疫担体がジフテリアトキソイドまたは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)エンドトキシンAの組換えにより産生された非毒性変異体である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
E. フェカーリス(E. faecalis)抗原およびE. フェシウム(E. faecium)抗原、ならびに滅菌した薬学的に許容されるその担体を含む組成物。
【請求項8】
抗原のそれぞれが免疫担体に結合している、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
抗原のそれぞれが同じ免疫担体に結合している、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
免疫担体が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)エンドトキシンAの組換えにより産生された非毒性変異体である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
ATCC202013に対する抗体に反応する抗原と免疫担体との結合物、ATCC202014に対する抗体に反応する抗原と免疫担体との結合物、ATCC202015に対する抗体に反応する抗原と免疫担体との結合物、ATCC202016に対する抗体に反応する抗原と免疫担体との結合物、およびATCC202017に対する抗体に反応する抗原と免疫担体との結合物、ならびに滅菌した薬学的に許容されるその担体を含む多価ワクチン。
【請求項12】
請求項5記載の組成物の免疫刺激量を被験者に投与する段階を含む免疫療法。
【請求項13】
請求項8記載の組成物の免疫刺激量を被験者に投与する段階を含む免疫療法。
【請求項14】
請求項5記載の組成物で被験者を免疫する段階、免疫した被験者から血漿を採取する段階、および採取した血漿から腸球菌に対して作製された抗体を含む免疫グロブリンを回収する段階を含む、腸球菌感染症に対する免疫療法剤を調製する方法。
【請求項15】
請求項8記載の組成物で被験者を免疫する段階、免疫した被験者から血漿を採取する段階、および採取した血漿から腸球菌に対して作製された抗体を含む免疫グロブリンを回収する段階を含む、腸球菌感染症に対する免疫療法剤を調製する方法。
【請求項16】
請求項1記載の抗原に対して作製された抗体を含む免疫グロブリン。
【請求項17】
E. フェカーリス(E. faecalis)抗原、およびE. フェシウム(E. faecium)抗原の双方に対して作製された抗体を含む免疫グロブリン。
【請求項18】
E. フェカーリス(E. faecalis)抗原に対して作製されたモノクローナル抗体、およびE. フェシウム(E. faecium)抗原に対して作製されたモノクローナル抗体を含む、請求項16記載の免疫グロブリン。
【請求項19】
請求項16記載の免疫グロブリンを被験者に投与する段階を含む免疫療法。
【請求項20】
請求項18記載の免疫グロブリンを被験者に投与する段階を含む免疫療法。
【請求項21】
請求項1記載の腸球菌抗原に対する抗体。
【請求項22】
請求項1記載の腸球菌抗原に対するモノクローナル抗体。
【請求項23】
以下の段階を含む、試料中の抗腸球菌抗体の有無を検出する診断アッセイ法:
請求項1記載の腸球菌抗原と、腸球菌特異的抗体を含むことが疑われる試料とを混合する段階;および
該混合物に関して、該試料中の該抗原と腸球菌特異的抗体との結合をモニターする段階。
【請求項24】
抗原が固相マトリクス上に固定されている、請求項23記載の診断アッセイ法。
【請求項25】
以下の段階を含む、試料中の抗腸球菌抗体の有無を検出する診断アッセイ法:
請求項21記載のモノクローナル腸球菌抗体と、腸球菌抗原を含むことが疑われる試料とを混合する段階;および
該混合物に関して、該抗原と該モノクローナル腸球菌抗体との結合をモニターする段階。
【請求項26】
抗体が固相マトリクス上に固定されている、請求項25記載の診断アッセイ法。
【請求項27】
ATCC202013、ATCC202014、ATCC202015、ATCC202016、およびATCC202017の一つに対する抗体と反応する単離腸球菌抗原。
【請求項28】
ATCC202013に対する抗体に反応し、2-アセトアミド-2-デオキシ-グルコースおよびラムノースを1:2のモル比で含むE. フェカーリス(E. faecalis)抗原、ATCC202014に対する抗体に反応し、6-デオキシ糖を含む三炭糖反復構造を含むE. フェカーリス(E. faecalis)抗原、ならびにATCC202015に対する抗体に反応し、2-アセトアミド-2-デオキシガラクトースおよびガラクトースを含むE. フェシウム(E. faecium)抗原からなる群より選択される、請求項27記載の単離腸球菌抗原。
【請求項29】
以下を含む、試料中の抗腸球菌抗原の有無を検出するキット:
放射性同位元素標識または酵素標識によって標識されている、ATCC202013、ATCC202014、ATCC202015、ATCC202016、およびATCC202017の一つと特異的に結合するモノクローナル腸球菌抗体;および
請求項25記載のアッセイ法を実施するための説明書。
【請求項30】
抗体が固相マトリクス上に固定されている、請求項29記載の診断アッセイ法。
【請求項31】
以下を含む、試料中の抗腸球菌抗体の有無を検出するキット:
放射性同位元素標識または酵素標識によって標識されている、ATCC202013、ATCC202014、ATCC202015、ATCC202016、およびATCC202017の一つに対する抗体と反応する少なくとも1つの単離腸球菌抗原;および
請求項23記載のアッセイ法を実施するための説明書。
【請求項32】
抗原が固相マトリクス上で固定されている、請求項31記載の診断アッセイ法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−227680(P2009−227680A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119505(P2009−119505)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願2000−515628(P2000−515628)の分割
【原出願日】平成10年10月14日(1998.10.14)
【出願人】(500175130)ナビ バイオファーマシューティカルズ (7)
【Fターム(参考)】