説明

腸癌の予防及び治療のためのER−ベータ選択的リガンドとしての9−アルファエストラリエン誘導体

腸癌、特に十二指腸、回腸、結腸及び直腸の腺腫及び腺癌の予防及び治療のための9α-エストラ-1,3,5(10)-トリエン誘導体の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸癌、特に十二指腸、回腸、結腸及び直腸の腺腫及び腺癌の予防及び治療のための、式(I)の9α-エストラ-1,3,5(10)-トリエン誘導体の使用に関し、
【化1】

ここで、基であるR3、R9、R16、R17及びR17'は、互いに独立して以下の本発明の開示において定義された意味を有する。
【0002】
より詳細には、本発明は、腸癌、特に十二指腸、回腸、結腸及び直腸の腺腫及び腺癌の予防及び治療のための、9α-ビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α-ジオールの使用に関する。本発明の更なる目的は、腸癌、特に十二指腸、回腸、結腸及び直腸の腺腫及び腺癌の予防及び治療のための、一般式(I)の9-アルファエストラリエン誘導体、特に17β-フルオロ 9α-ビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α-ジオールを含む薬剤である。
【背景技術】
【0003】
閉経後ホルモン補充療法(HRT)は、腸管において保護的効果を媒介し、効果的に腫瘍成長を妨げる可能性がある(1;2;3)。このため、閉経後の女性に対するエストロゲン及びプロゲスチンの長期補給によって、結腸直腸癌の発生率が低くなる。(4;5;6)。エストロゲン受容体ノックアウトマウス(ERKOs)を用いた近年の研究およびERサブタイプ特異的アゴニストを用いて行ったものにおいて、心臓血管系、前立腺、骨格筋及び腸上皮のような体内の新規エストロゲン標的に対する関心が高まった(7)。
【0004】
このため、ERαが主に発現される子宮及び乳腺のような典型的なエストロゲン感受性組織とは異なり、消化管の上皮細胞は主にERβ(8;9)を発現し、小腸及び結腸においてこのERサブタイプが主に重要であると関連づけられる。
【0005】
興味深いことに、いくつかの研究において、ERαの発現とは対照的に、結腸腫瘍細胞及び結腸癌細胞系においてERβ発現が顕著に減少することが示された(9; 10; 11 ; 12)。CRCの予防におけるERβ特異的リガンドの潜在的な役割、結腸組織ホメオスタシスの維持のためのERβ特異的シグナル伝達の重要性の洞察(13)、東洋及び西洋の母集団におけるCRCの発生の疫学的な違い(14)は、結果的にCRCの予防における植物エストロゲンの潜在的な役割の調査に導いた。
【0006】
更に、ERβKOsを用いて行われた研究において、ERβ特異的アゴニスト並びにゲニステイン(GEN)及びクメストロール(COU)のようなERβ選択的植物エストロゲンが腸組織ホメオスタシスの潜在的な調節因子として機能する可能性があることを示唆する。
【0007】
大豆イソフラボンゲニステイン及びクメストロールを含む植物エストロゲンは、HRTの代替として多くの女性に一般的に用いられている。
【0008】
この理由により、卵巣摘出及びエストロゲン補充の効果について、マウスApcにおいて生殖細胞系列変異を有する動物であるC57BL/6J-Min/+(Min/+)マウスにおける腫瘍形成を調べた。これらのマウスは、野生型Apcタンパク質の損失を示す多発性の腸腫瘍を成長させる。この研究の結果は、内因性エストロゲンがApc関連腫瘍形成に対して保護し、17ベータエストラジオールによる腫瘍予防が標的組織におけるERベータの増大とERアルファの低下と関連していることを示唆する(15,16)。
【0009】
更に、ERベータが腸上皮のホメオスタシスの重要な役割を担うことが明らかに見える。
【0010】
国際特許出願WO01/77139 A1において、R8が直鎖又は分枝鎖の、最大で5個の炭素原子を有する随意に部分的又は完全にハロゲン化されたアルキル又はアルケニル基、エチニル-又はプロパ-1-イニル基を意味する8β−置換エストラトリエン、インビトロでラットの前立腺のエストロゲン受容体調製物に対してラットの子宮のエストロゲン受容体調製物よりも高い親和性を有する医薬活性成分としてのこれらの生成、これらの治療的使用、該化合物を含有する医薬調剤形態が記載されている。強力なエストロゲン活性及びラットの前立腺のエストロゲン受容体調製に対してラットの子宮のエストロゲン受容体調製よりも高い親和性を有する化合物はER-β選択的リガンドである。消化管の新形成の予防及び治療のための上記化合物の使用は、WO01/77139 A1で主張されている。
【0011】
本発明の化合物は既にWO03/104253 A1に記載されているが、腸癌、特に十二指腸、回腸、結腸及び直腸の腺腫及び腺癌の予防及び治療におけるこれらの活性については報告されていなかった。
【0012】
文書WO 2007/062877 A1において、基Zがステロイドに結合されている一般式(I)の9α-置換エストラトリエンのプロドラッグ、これらの調製方法、これらの化合物を含む医薬組成物及びその使用が記載されている。本発明の式Iの化合物は、直接的にエストロゲン受容体α及び/又はβに結合しない。これらはカルボアンヒドラーゼ(carboanhydrases)に結合し、これらの酵素を抑制する。
【0013】
結腸直腸癌は先進国において癌死亡率の主な原因となっているため、化学的予防策略及び効果的な治療は非常に重要である。
【発明の概要】
【0014】
本発明は式(I)の9α-エストラ-1,3,5(10)-トリエン誘導体の使用に関する。
【化2】

ここで、基R3, R9, R16, R17and R17'は、互いに独立して以下の意味を有する:
R3は水素原子又は基R18を意味し、
ここでR18は直鎖又は分枝鎖の、飽和又は不飽和C1-C6アルキル基、トリフルオロメチル基、アリール、ヘテロアリール又はアラルキル基、あるいはメチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、メトキシ、エトキシ、ニトロ、シアノ、ハロ-(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C1-C8アルキル)又は両方のアルキル基が同一もしくは異なるジ(C1-C8アルキル)アミノ、両方のアラルキル基が同一もしくは異なるジ(アラルキル)アミノ、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、置換基としてのC1-C20-アシル又はC1-C20-アシルオキシ、アシル基C(=O)R19(ここでR19は最大で3箇所飽和又は不飽和であり、部分的に又は完全にハロゲン化された、最大で10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素基である)から独立して選ばれる少なくとも1つの基を有する置換されたアリール又はヘテロアリール基を意味し、又は
R18はR20SO2を意味し、
ここでR20はR21R22N基であり、ここでR21及びR22は、互いに独立して、水素原子、C1-C5-アルキル基、基C(O)R23(ここで、R23は最大で3箇所飽和又は不飽和であり、部分的に又は完全にハロゲン化された、最大で10個の炭素原子を有する非置換又は置換直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する)、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基、シクロアルキル部分に3〜7個の炭素原子を有し、最大で8個の炭素原子のアルキル部分を有するC4-C15-シクロアルキルアルキル基、あるいはアリール、ヘテロアリール又はアラルキル基、あるいはメチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、メトキシ、エトキシ、ニトロ、シアノ、ハロ-(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C1-C8アルキル)又は両方のアルキル基が同一もしくは異なるジ(C1-C8アルキル)アミノ、両方のアラルキル基が同一もしくは異なるジ(アラルキル)アミノ、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、置換基としてのC1-C20-アシル又はC1-C20-アシルオキシ基、又はN原子と共に4〜6個のC原子を有するポリメチレンイミノ基又はモルホリノ基から独立して選ばれる少なくとも1つの基を有する置換されたアリール又はヘテロアリール基を意味し、
R9は随意に部分的に又は完全にフッ素化できる2〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルケニル又はアルキニル基あるいはエチニル又はプロパ-1-イニル基であり、
R16はヒドロキシ基又は基R18O-、R20SO2-又はOC(O)R23を意味し、R18、R20及びR23の各場合はR3で示された意味であり、あるいはハロゲン原子、二トリル基、ニトロ基、C1-C5-アルキル基、p=1〜3のCpF2p+1基、基OC(O)-C1-5-アルキル、COOC1-5-アルキル、OC1-5-アルキル、C(O)NHC1-5-アルキル又はOC(O)NH-C1-5-アルキルから独立して選ばれる少なくとも1つの基によって随意に置換されるパラ-又はメタ-スルファモイル-ベンゾアート基を意味し、
R17及びR17'は各場合において、互いに独立して水素原子又はハロゲン原子である。
【0015】
本発明は更に、R3が水素原子である一般式Iの化合物に関する。
【0016】
本発明の更なる実施形態によれば、式Iの化合物は基R9、R16、R17及びR17'を含み、ここでR9はビニル、エチニル又はプロパ-1-イニル基、R16はヒドロキシ基、R17及びR17'はそれぞれ水素原子及びフッ素原子であり、又はR17及びR17'の両方が水素である。
【0017】
本発明を実現するための特定の形態によれば、R17'はβ位にある。
【0018】
更に、R16が基R18-O-又はR19SO2-O-を表し、R18及びR19は各場合においてR3で示された意味を有する一般式Iの化合物も本発明の更なる実施形態である。
【0019】
本発明の他の実施形態は、R16が水素、フッ素又は塩素原子あるいはヒドロキシ又はメトキシ基から独立して選ばれる少なくとも1つの基で随意に置換されるパラ-又はメタ-スルファモイル-ベンゾアート基を意味する一般式Iの化合物である。
【0020】
特に、本発明は化合物に関する:
9α-ビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α-ジオール
9α-(2'-2'-ジフルオロビニル)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α-ジオール
17β-フルオロ-9α-ビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α-ジオール
17,17ジフルオロ-9αビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16αジオール
3-ヒドロキシ-17β-フルオロ-9α-ビニルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-16α-イル3'-スルファモイルベンゾアート
3-ヒドロキシ-9-ビニルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-16α-イル3'-スルファモイルベンゾアート
3-ヒドロキシ-17β-フルオロ-9α-ビニルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-16α-イル-2'クロル-5'-スルファモイルベンゾアート
3-ヒドロキシ-17β-フルオロ-9α-ビニルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-16α-イル-4'-スルファモイルベンゾアート
【0021】
本発明によれば、ハロ-又はハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子が意図される。
【0022】
アルキル基としては、異なって特定されない限り、一般的に(C1-C6)アルキル基が意図される。該アルキル基は直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和である。本発明のアルキル基の代表的な基は、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソ-プロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)及びn-ヘキシルである。C1-C6-アルキル基は、部分的に又は完全にハロゲン原子、ヒドロキシ基又はC1-C6-アルコキシ基によって置換され得る。
【0023】
上記定義によれば、R18は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル又はヘキシル基である。
【0024】
各場合における一般式Iの化合物のアルコキシ基OR18は、上記で与えられた定義によるアルキル基を含有することができ、ここで、メチル、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ及びt-ブチルオキシ基が好ましいアルコキシ基である。
【0025】

C1-C5-アルキル基R21及びR22の代表例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル及びネオペンチルである。
【0026】
直鎖又は分枝鎖C1-C10-アルキル基R23の代表例として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘプチル、ヘキシル及びデシルが挙げられる。メチル、エチル、プロピル及びイソプロピルが好ましい。
【0027】
C3-C7-シクロアルキル基として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基が挙げられる。
【0028】
C4-C15-シクロアルキルアルキル基は、シクロアルキル部分において3〜7個の炭素原子を有する。典型的な代表例は、すぐ上に示されたシクロアルキル基である。アルキル部分は最大で8個の炭素原子を有する。
【0029】
C4-C15-シクロアルキルアルキル基の例として、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルプロピル基等が挙げられる。
【0030】
本発明に関して、アリール基はフェニル、1-又は2-ナフチル、フリル、チエニル及びピリジル基である。フェニル基が好ましい。
【0031】
本発明のヘテロアリール基の例として、2-、3-又は4-ピリジニル、2-又は3-フリル、2-又は3-チエニル、2-又は3-ピロリル、2-、4-又は5-イミダゾリル、ピラジニル、2-、4-又は5-ピリミジニル又は3-又は4-ピリダジニル基が挙げられる。
【0032】
アリール又はヘテロアリール基に存在し得る置換基として、例えば、メチル-、エチル-、トリフルオロメチル-、ペンタフルオロエチル-、トリフルオロメチルチオ-、メトキシ-、エトキシ-、ニトロ-、シアノ-、ハロゲン-(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシ-、アミノ-、モノ(C1-C8-アルキル)又は両方のアルキル基が同一もしくは異なるジ(C1-C8-アルキル)アミノ、両方のアラルキル基が同一もしくは異なるジ(アラルキル)アミノ、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、C1-C20-アシル又はC1-C20-アシルオキシ基が挙げられる。
【0033】
アラルキル基とは、環に最大で14個、好ましくは6〜10個のC原子、アルキル鎖に1〜8個、好ましくは1〜4個のC原子を含有する基である。このため、アラルキル基として、例えば、ベンジル、フェニルエチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル、フリルメチル、チエニルエチル及びピリジルプロピルが好適である。
【0034】
ビニル又はアリル基は、主としてC2-C6-アルケニル基で定義される。
【0035】
C2-C6-アルキニル基は、エチニル基又はプロパ-1-イニル基として定義されるのが好ましい。
【0036】
C1-C10-アシル基とは、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレロイル、イソバレロイル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクチル、ノニル又はデカノイルを意味する。
【0037】
3及び16のC原子における1つ又は2つのヒドロキシル基は、脂肪族の直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和C1-C14-モノ又はポリカルボン酸又は芳香族カルボン酸によってエステル化され得る。
【0038】
このようなカルボン酸のエステル化のために好適なものは、例えば:
−モノカルボン酸:ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、アクリル酸、プロピオン酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸及びエライジン酸。酢酸、吉草酸又はピバル酸で行うエステル化が好ましい。
−ジカルボン酸:シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、ムコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸。
−芳香族カルボン酸:安臭香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフトエ酸、o-、m-及びp-トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、桂皮酸、ニコチン酸及びイソニコチン酸。安臭香酸で行うエステル化が好ましい。
【0039】
投与する方法、作用形態、作用の強度及び期間について、本発明の9α-置換エストラトリエンのエステルはプロドラッグとして、非エステル化活性成分と比べて利点を有する
【0040】
本発明の化合物は、ER-βアゴニストとして特に活性である。
【0041】
特に、本発明の9α-置換エストラトリエンのスルファメートは、薬物動態及び薬力学的な利点を有する。これに関係する効果は、既に他のステロイド-スルファメートにおいて記載された(J. Steroid Biochem. Molec. Biol, 55, 395-403 (1995); Exp. Opinion Invest. Drugs 7, 575-589 (1998))。
【0042】
腸癌、特に十二指腸又は結腸直腸腺腫及び腺癌の予防及び治療のための特異的エストロゲン受容体β(ERβ)リガンドとして投与される一般式Iの化合物の量は、広範囲の中で変動し、いかなる有効量も網羅することができる。
【0043】
治療する状態及び投与の種類に基づいて、投与される化合物の量を一日につき0.01μg/kg体重〜100mg/kg体重、好ましくは0.04μg/kg体重〜1mg/kg体重とすることができる。ヒトにおいてこれは、1日につき0.8μg〜8g、好ましくは3.2μg〜80mgの投与量に相当する。本発明によれば、投与単位は一般式Iの1つ以上の化合物の1.6μg〜2000mgを含有する。
【0044】
本発明の化合物及び酸添加塩は、医薬組成物及び調製品の生産に好適である。医薬組成物又は医薬品は、随意に他の薬理学的に又は製薬学的に活性のある物質と混合される、本発明の1つ以上の化合物又はこれらの酸添加塩を活性成分として含有する。医薬品の生産は、既知で一般的に用いられる補助薬並びに他の一般的に用いられる賦形剤及び希釈剤を用いられ得る既知の方法で行われる。
【0045】
このような賦形剤及び補助剤として、例えば、薬剤学、化粧品及び関連した分野で補助剤として次の書誌参照で推奨又は示されているものが好適である:Ullmans Encyklopadie der technischen Chemie [Ullman's Encyclopedia of Industrial Chemistry], Volume 4 (1953), pages 1 to 39; Journal of Pharmaceutical Sciences, Volume 52 (1963), page 918 ff., issued by Czetsch-Lindenwald, Hilfsstoffe fur Pharmazie und angrenzende Gebiete [Adjuvants for Pharmaceutics and Related Fields]; Pharm. Ind., Issue 2, 1961 , p. 72 and ff.: Dr. H. P. Fiedler, Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete [Dictionary of Adjuvants for Pharmaceutics, Cosmetics and Related Fields], Cantor KG, Aulendorf in Wurttemberg 1971。
【0046】
化合物を経口又は非経口で、例えば、腹腔内、筋肉内、皮下又は経皮的に投与することができる。化合物を組織内に埋め込むこともできる。
【0047】
経口投与の場合、カプセル、丸薬、錠剤、被覆錠剤等が好適である。活性成分に加え、投与単位は、例えば、でんぷん、砂糖、ソルビトール、ゼラチン、滑剤、ケイ酸、滑石等の医薬的に適合した賦形剤を含有することができる。
【0048】
非経口投与の場合、活性成分を生理学的に適合した希釈剤に溶解又は懸濁することができる。希釈剤として、非常に多くの場合に、可溶化剤、界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤を添加した又はしていない油が用いられる。用いられる油の例として、オリーブ油、落花生油、綿実油、大豆油、ヒマシ油及びごま油が挙げられる。
【0049】
化合物は、活性成分の遅延放出が可能となるように配合できるデポ注射又は埋め込み調製品の形態で用いることもできる。
【0050】
不活性物質として、埋め込むものは、例えば、生分解性高分子又は例えばシリコーンゴム等の合成シリコーンを含有することができる。更に、経皮投与の場合、活性成分を、例えば、パッチに加えることができる。
【0051】
局所投与のために一般式Iの活性化合物を積み込んだ膣内システム(例えば、膣リング)又は子宮内システム(例えば、ペッサリー、コイル、IUDs、ミレナ(Mirena、登録商標))の生産について、例えばシリコーン重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン又はポリプロピレン等の様々な重合体が好適である。
【0052】
活性成分のより良い生物学的利用能を達成するために、化合物をシクロデキストリン包接化合物として配合することもできる。この目的のために、化合物をα-、β-又はγ-シクロデキストリン又は後者の誘導体と反応させる(PCT/EP95/02656)。
【0053】
本発明によれば、一般式Iの化合物をリポソームに封入することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1A】選ばれた化合物及びエストロゲン効果−ER選択的アゴニスト ゲニステイン(Gen)、17β-エストラジオール(E2)及びアゴニスト作用を有する特異的ERリガンドの化学構造:3,17-ジヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-1,3,5(10)-トリエン-21,16α-ラクトン(アルファ)、8β-ビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール(ベータI)及び17β-フルオロ-9α-ビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α-ジオール(ベータII)。
【図1B】選ばれた化合物及びエストロゲン効果−子宮湿重量 E2、アルファ、ベータI、ベータI+ICI及びGENで治療した3週間後の子宮湿重量。OVX=卵巣摘出対照グループ。 材料と方法の項目において、実験条件及び治療方法を説明する。 (*)は、卵巣摘出グループとは有意に異なる値を示す。 (OVX) P< 0.01 , ANOVA, n=6
【0055】
【図2】回腸粘膜細胞におけるPCNAの免疫組織化学的染色 示されているのは、PCNA陽核の免疫組織化学的染色後のOVXラットの回腸の断面である。 材料と方法の項目において、実験条件と治療方法を説明する。倍率:200x
【0056】
【図3A】増殖及びアポトーシスのためのマーカーのウエスタンブロット分析。示されているのは、代表的なウエスタンブロットと、PCNA及び活性型カスパーゼ-3の濃度測定の評価である。アクチンは対照である。材料と方法の項目において、実験条件及び治療方法を説明する。
【0057】
【図3B】腸粘膜におけるPCNA mRNA発現に対するE2、Gen、ベータI及びアルファの効果。 腸粘膜におけるmRNA発現を測定する。材料及び方法の項目において、実験条件及び治療方法を説明する。 試験グループGen及びベータIにおける減少したPCNA mRNA発現を明確に認識することができる。
【0058】
【図4】ベータ1の拮抗効果の痕跡 プール化された回腸組織におけるPCNA及び活性型カスパーゼ-3のウエスタンブロットと濃度測定評価が示される。アクチンは対照である。材料と方法の項目において、実験条件と治療方法を説明する。
【0059】
【図5】腸粘膜上のベータIIの用量効果 腸粘膜の用量効果を決定するために、5、15及び50μg kg-1 b.wt d-1でベータIIを試験した。材料と方法の項目において、実験条件と治療方法を説明する。
【0060】
【図6】ベータIと比較した際のベータIIの効果 示されているのは、プール化された回腸組織におけるPCNA及び活性型カスパーゼ-3タンパク質発現の代表的なウエスタンブロット及び濃度測定評価である。アクチンは対照である。材料と方法の項目において、実験条件と治療方法を説明する。
【0061】
略称:5μg量のベータ1治療グループ、5μg量のベータII治療グループ、OVX=卵巣摘出対照グループ
【0062】
【図7】結腸におけるアポトーシスに対する5μgでのE2、Gen、ベータIIの結腸粘膜細胞におけるPCNAの免疫組織化学的染色 示されているのは、PCNA陽性核の免疫組織化学的染色後のOVXラットの結腸の断面及び染色結果の定量的評価である。各動物の8個の腺窩を数え、統計的に平均した。材料と方法の項目において、実験条件と治療方法を説明する。倍率:50x
【0063】
【図8】結腸におけるアポトーシスに対する5μgのE2、Gen及びベータIIの効果ベータIIは既に5μgの量で、サイトケラチン18開裂の顕著な刺激の原因となっている(M30)。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明を支持するために、いくつかの実験的活動が行われた。最初に、E2、アルファ、ベータI及びGENで治療した卵巣摘出動物の子宮に対する効果を分析した。
【0065】
E2で治療したOVXラットは子宮湿重量の強い刺激につながり、一方、GENの使用は有意ではあるがほんの僅かな増加を生じた(図1B)。アルファの使用により子宮湿重量が強く増加し、一方、ベータIで治療した動物において有意な子宮刺激はなかった(図1B)。
【0066】
腸組織ホメオスタシスに対する異なるエストロゲン化合物の効果を調べるために、増殖マーカーPCNAのタンパク質発現を免疫組織化学及びウエスタンブロット分析で測定した。
【0067】
回腸断面の免疫染色により、消化管のこの範囲において、E2及びアルファの投与により
OVX動物におけるPCNAタンパク質発現が僅かに誘導されることが明らかになった(図2)。
【0068】
興味深いことに、ベータI及びGENを用いてOVX動物を治療すると、回腸組織断面におけるPCNAタンパク質発現が顕著に減少した(図2)。
【0069】
この観察は、回腸粘膜細胞のウエスタンブロット分析により支持される(図3)。
【0070】
濃度測定評価によって、OVXラットの腸粘膜細胞のPCNA発現がE2の使用に影響を受けないことが明らかとなり、一方、アルファで治療するとPCNA発現が高くなる(図3A-B)。対照的に、ベータI及びGENで治療したOVX動物において、増殖のこのマーカーの発現パターンが減少した(図3A-B)。
【0071】
更に、カスパーゼ-3の活性は、ベータIの使用により劇的に、GEN及びアルファ治療により中程度に促進され、一方で、このアポトーシスに重要な酵素の活性はOVX及びE2治療動物において低レベルのままであった(図3)。ICIの同時投与は、ベータIのプロアポトーシス及び増殖抑制効果の拮抗を生じた。
【0072】
上述した試験の結果は、ERベータ選択的アゴニストベータIの投与により、腸上皮で細胞増殖が抑制され、アポトーシス速度が増加することを示す。これにより明らかに、癌の予防及び治療における必須なパラメータである組織細胞数の減少が生じる。
【0073】
続く試験において、本発明の化合物である17β-フルオロ-9α-ビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α-ジオール(ベータII)の有効性を、同一の実験設計下で記載の効果との関係で測定する(図5-6)。
【0074】
驚くべきことに、ベータIIがその一番強い効果を5μg/kgの最低試験量で有することが見出された。該量において、本発明の化合物は子宮重量に対する測定可能ないかなる効果も示さず、上述した腸ホメオスタシスを制御する効果に関して、ベータIに比べ約20倍も高い活性を有する(図5)。
【0075】
当該技術分野において既知の化合物が達成する効果よりも高いレベルでカスパーゼ-3の活性を明らかに促進する本発明の化合物の良好なプロフィールは、同じ濃度でベータIとベータIIを試験した時に確認された(図6)。ベータIIにより達成された改善した効果は、増殖マーカーPCNAの発現のダウンレギュレーションに関連しても、明白である。
【0076】
一方ではカスパーゼ-3の活性、もう一方ではPCNAの同時ダウンレギュレーションにより本発明のERベータ選択的リガンドの明らかな相乗作用が明らかになった。選ばれたマーカーに対するこのような好ましい相乗効果は、明らかに、ベータIIを参照したカスパーゼ及びPCNAの灰色スケールレベル間の図6の図に示されたデルタから明らかである。
【0077】
本発明のE2、GEN及びベータIIのER特異的効果が通常の直腸結腸組織ホメオスタシスで調べられる、更なる試験を行う。この調査の一環として、直腸結腸断面におけるPCNAタンパク質発現を免疫組織化学により分析する。更に、結腸直腸組織におけるアポトーシスの評価に有用なツールとして知られているM30抗体をウエスタンブロット分析に用いる(図8)。
【0078】
E2とは対照的に、小腸に対するその効果によれば、GEN、より具体的には、本発明の化合物であるベータIIがPCNA発現を既に5μg/Kgの量で結腸粘膜細胞にて減少させた。
【0079】
図8で描かれているように、本発明のベータIIの使用により、OVXラットの結腸粘膜細胞において劇的にサイトケラチン18(M30)の開裂を誘導し、一方で上皮結腸細胞における開裂したサイトケラチン18の量は、E2治療後にごく僅かにのみ増えた。
【0080】
図7及び図8に示された結果は更に、結腸上皮のホメオスタシスにおける本発明の化合物の増殖抑制及びプロアポトーシス効果を示す。このような効果は、腸癌、特に十二指腸、回腸、結腸及び直腸の腺腫及び腺癌の予防及び治療に不可欠である。
【0081】
材料と方法
物質
17β-エストラジオール(エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α, 17β-ジオール) E2、ゲニステイン(4',5,7-トリヒドロキシイソフラボン) Gen、特異的ER-αアゴニスト(3,17-ジヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-1,3,5(10)-トリエン-21,16α-ラクトン)アルファ、特異的ER-βアゴニスト(8-ビニルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール)ベータI及び8β-ビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール(ベータI)及び17β-フルオロ-9α-ビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α-ジオール(ベータII)、ファスロデックス(Faslodex)(ICI)
【0082】

全てのラットは自由に植物エストロゲン含量の少ない餌(ILD)(SSniff GmbH, Soest, Germany)を食べ、水を自由に飲んだ。
【0083】
動物
メスの成体ウィスター系ラット(200〜220g)をJanvier (Janvier, Le Genest St Isle, France)から得て、温度(20℃±1、相対湿度50〜80%)、照明(12時間明、12時間暗)の制御された条件下で管理した。全ての動物実験は動物実験委員会(Committee on Animal Care)から承認され、許可された獣医業を順守した。
【0084】
動物治療及び組織調製
年齢が3ヶ月で200〜220gの思春期後の動物の卵巣摘出(OVX)を行った。14日の内因性ホルモン減少の後、動物を試験化合物又は賦形剤で3週間治療した。動物は無作為に治療及び賦形剤グループに割り当てられた(n=6)。S.C.投与のために、E2(4 μg kg-1 b.wt d-1)、GEN(10 mg kg-1 b.wt d- 1)、アルファ(10 μg kg-1 b.wt d-1)、ベータI(100 μg kg-1 b.wt d-1)、ベータII(5-15-50 μg kg-1 b.wt d-1)及びICI (3 mg kg-1 b.wt d-1)
をジメチルスルホキシド(DMSO)(200 μl/KG b. wt/d)及びコーン油(800 μl/KG b. wt/d)に溶解した。
【0085】
各物質の治療量を前の実験に基づいて選択した(18)。GENは10 mg/kg/dの量で有効であることが実証されている(19;20)。アイソタイプ特異的ER活性について、選択的ERアゴニストであるアルファとベータIを用いた(図1A)。これらの化合物は高めの濃度で両方の受容体を活性化させるため、それぞれ10μg kg-1 b.wt d-1(アルファ)及び100 μg kg-1 b.wt d-1(ベータI)の量が選択された。これらの量から、ERα又はERβのそれぞれを通じた作用が予想される(21;22)。
【0086】
ベータIのER特異的効果を拮抗させるために、OVX動物をベータI(100 μg kg-1 b.wt d-1)及びICI (3 mg kg-1 b.wt d-1)で同時治療した。
【0087】
ベータIIを5、15及び50 μg kg-1 b.wt d-1で試験した。
【0088】
CO2吸入で浅麻酔を行った後、断頭により動物を屠殺した。子宮及び腸組織の脂肪を取り除いて調製し、4%ホルマリン(免疫組織化学分析用)及び液体窒素(分子生物学用)で固定した。子宮湿重量を測定した。
【0089】
ウエスタンブロット分析
回腸粘膜及び直腸結腸を動物から解剖し、液体窒素にすぐに保存した。プール化された凍結組織(n=グループにつき6匹の動物)を粉末状にし、酵素阻害薬(5 mg/mlアプロトニン、5 mg/mlロイペプチン、1 mg/mlペプスタチン-A、5 mg/mlアンチパイン、0.5 M EDTA中の100 mM ペファック(pefac)、pH 8)を含有する緩衝剤(623.5 nM トリス pH 8 EDTA)中で均質化した。タンパク質濃度をローリー法(Dc Protein Assay, Bio-Rad)で決定した。サンプルの等量(40μgタンパク質)をProtean II ready Gel(Bio-Rad)上に負荷した。
【0090】
電気泳動と分離の後、サンプルをニトロセルロース膜に移し、室温で2時間、リン酸塩(100mM)緩衝化生理食塩溶液(pH7.4)中の5%BSAでブロックした。アクチン及びGAPDHに対する特異的な抗体(A5060及びG8795, Sigma-Aldrich, Steinheim, Germany)、PCNA Clone PC 10 (Dako, Glostrup, Denmark)、M30 Cytodeath (ALX-804-590, Alexis, San Diego, CA, USA)及び活性型カスパーゼ-3 (557035, BD Pharmingen, Heidelberg, Germany)を用いて、固定したタンパク質を定量的に検出した。
【0091】
ポリクローナルブタ抗ウサギ免疫グロブリン/HRP及びポリクローナルウサギ抗マウス免疫グロブリン/HRP(P0217及びP0260, Dako, Glostrup, Denmark)を、種特異的HRP-結合二次抗体として用いた。
【0092】
化学発光POD-基質(Lumi-Light Plus, Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)及びフルオルケム発光撮像装置(Fluorchem Luminescent Imager)(Alpha Innotech, CA, USA)によって、ブロットシグナルを可視化した。
【0093】
ImageJ 1.38を用いた濃度測定により、タンパク質バンドを定量化した。スロットの均質タンパク質負荷量を明らかにするために、参照タンパク質(アクチン、GAPDH)対標的タンパク質(PCNA、M30、活性型カスパーゼ-3)の比を計算した。
【0094】
免疫組織化学
ホルマリンで固定した腸サンプルを、パラフィンに埋設し、ミクロトーム(7μm断片)で薄切りにした。脱パラフィン後、0.01Mクエン酸塩緩衝剤pH6.0中、60℃で2時間、インキュベーター中で抗原回復を行った。
【0095】
続いて、3%過酸化水素を用いて内因性ペルオキシダーゼを20分間ブロックし、スライドを0.25%TritonX-100溶液で10分間覆った。
【0096】
一次抗体であるPCNAクローンPC10 (Dako, Glostrup, Denmark)をそれぞれ1:100の希釈で用いた。
【0097】
一次抗体と共に1時間インキュベートした後、サンプルを二次抗体(ポリクローナルヤギ抗マウス免疫グロブリン/ビオチン化(Dako, Glostrup, Denmark))と共にインキュベートした。
【0098】
その後、1:400の希釈で、断片をストレプトアビジン-ビオチン化西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体(GE Healthcare, Little Chalfont Buckinghamshire, UK)で覆った。サンプルをDABで10分間、展開した。負の対照については、一次抗体なしでスライドを免疫染色した。
【0099】
染色結果の評価
正常の粘膜の完全な腺窩において定量分析を行った。茶色の核染色は、陽性のPCNAシグナルを示す。
【0100】
統計分析
全てのデータは標準誤差と共に算術的平均で表される。適切な場合に、次のテューキーHSD検定と共に一元配置分散分析を用いて、差の統計的有意性を計算した。統計的検定を2グループ毎の比較に用い、P<0.01を用いて評価した。
【0101】
Booth C, Hargreaves DF, O'Shea JA, Potten CS (1999)。ゲニステインのインビボ投与は、小腸上皮の増殖及びアポトーシスに何ら効果がないが、 クローン的生存(clonogen survival)には適度の効果がある。Cancer Lett 144(2): 169-75。
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸癌の予防及び治療のための特異的エストロゲン受容体β(ERβ)リガンドとしての式(I)の9α-エストラ-1,3,5(10)-トリエン誘導体の使用
【化1】

(ここで、基R3, R9, R16, R17and R17'は、互いに独立して以下の意味を有する:
R3は水素原子又は基R18を意味し、
ここでR18は直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和C1-C6アルキル基、トリフルオロメチル基、アリール、ヘテロアリール又はアラルキル基、あるいはメチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、メトキシ、エトキシ、ニトロ、シアノ、ハロ-(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C1-C8アルキル)又は両方のアルキル基が同一もしくは異なるジ(C1-C8アルキル)アミノ、両方のアラルキル基が同一もしくは異なるジ(アラルキル)アミノ、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、置換基としてのC1-C20-アシル又はC1-C20-アシルオキシ、アシル基-C(=O)R19(ここでR19は最大で3箇所飽和又は不飽和であり、部分的に又は完全にハロゲン化された、最大で10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素基である)から独立して選ばれる少なくとも1つの基を有する、置換されたアリール又はヘテロアリール基を意味し、又は
R18はR20SO2を意味し、
ここでR20はR21R22N基であり、ここでR21及びR22は、互いに独立して、水素原子、C1-C5-アルキル基、基C(O)R23(ここで、R23は最大で3箇所飽和又は不飽和であり、部分的に又は完全にハロゲン化された、最大で10個の炭素原子を有する非置換の又は置換された直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する)、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基、シクロアルキル部分に3〜7個の炭素原子を有し、最大で8個の炭素原子のアルキル部分を有するC4-C15-シクロアルキルアルキル基、あるいはアリール、ヘテロアリール又はアラルキル基、あるいはメチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、メトキシ、エトキシ、ニトロ、シアノ、ハロ-(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C1-C8アルキル)又は両方のアルキル基が同一もしくは異なるジ(C1-C8アルキル)アミノ、両方のアラルキル基が同一もしくは異なるジ(アラルキル)アミノ、カルボキシル、カルボキシアルコキシ、置換基としてのC1-C20-アシル又はC1-C20-アシルオキシ基、又はN原子と共に4〜6個のC原子を有するポリメチレンイミノ基又はモルホリノ基から独立して選ばれる少なくとも1つの基を有する置換されたアリール又はヘテロアリール基を意味し、
R9は随意に部分的に又は完全にフッ素化できる2〜6個の炭素原子を有する直鎖又分枝鎖アルケニル又はアルキニル基あるいはエチニル又はプロパ-1-イニル基であり、
R16はヒドロキシ基又は基R18O-、R20SO2-又はOC(O)R23を意味し、R18、R20及びR23の各場合はR3で示された意味であり、あるいはハロゲン原子、二トリル基、ニトロ基、C1-C5-アルキル基、p=1〜3のCpF2p+1基、基OC(O)-C1-5-アルキル、COOC1-5-アルキル、OC1-5-アルキル、C(O)NHC1-5-アルキル又はOC(O)NH-C1-5-アルキルから独立して選ばれる少なくとも1つの基によって随意に置換されるパラ-又はメタ-スルファモイル-ベンゾアート基を意味し、
R17及びR17'は各場合において、互いに独立して水素原子又はハロゲン原子である。)。
【請求項2】
R3が水素原子である、請求項1記載の式(I)の9α-エストラ-1,3,5(10)-トリエン誘導体。
【請求項3】
R9がビニル、エチニル又はプロパ-1-イニル基であり、R16がヒドロキシ基であり、R17及びR17'がそれぞれ水素原子及びフッ素原子であり、あるいはR17及びR17'の両方が水素である、請求項1記載の式(I)の9α-エストラ-1,3,5(10)-トリエン誘導体。
【請求項4】
R16が、水素、フッ素又は塩素あるいはヒドロキシル又はメトキシ基から独立して選ばれる少なくとも1つの基で随意に置換されるパラ又はメタ-スルファモイル-ベンゾアート基を意味する請求項1又は3記載の式(I)の9α-エストラ-1,3,5(10)トリエン誘導体。
【請求項5】
以下の化学式:
9α-ビニロエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α-ジオール
9α-(2'-2'-ジフルオロビニル)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン,16α-ジオール
17β-フルオロ-9α-ビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α-ジオール
17,17-ジフルオロ-9α ビニル-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,16α ジオール
3-ヒドロキシ-17β-フルオロ-9α-ビニロエストラ-1,3,5(10)-トリエン-16α-イル 3'-スルファモイルベンゾアート
3-ヒドロキシ-9-ビニロエストラ-1,3,5(10)-トリエン-16α-yl 3'-スルファモイルベンゾアート
3-ヒドロキシ-17β-フルオロ-9α-ビニロエストラ-1,3,5(10)-トリエン-16α-イル-2'クロル-5'-スルファモイルベンゾアート
3-ヒドロキシ-17β-フルオロ-9α-ビニロエストラ-1,3,5(10)-トリエン-16α-イル-4'-スルファモイルベンゾアート
を有する請求項1記載の式(I)の9α-エストラ-1,3,5(10)トリエン誘導体。
【請求項6】
十二指腸、回腸、結腸及び直腸の腺腫の予防及び治療のための請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の9α-エストラ-1,3,5(10)-トリエン誘導体。
【請求項7】
十二指腸、回腸、結腸及び直腸の腺癌の予防及び治療のための請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の9α-エストラ-1,3,5(10)-トリエン誘導体。
【請求項8】
十二指腸又は結腸直腸腺腫の予防又は治療のための、請求項1〜5のいずれか1項記載の式(I)の9α-エストラ-1,3,5(10)を含む医薬組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−527302(P2011−527302A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517044(P2011−517044)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005097
【国際公開番号】WO2010/003700
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(300049958)バイエル ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】