説明

腸管免疫亢進用乳酸菌、これを用いた腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品及びその製造方法

【課題】 IgA活性機能とともに新たな腸管免疫亢進作用を用途とするラクトバチルス・ガセリ乳酸菌を提供する。
【解決手段】 ラクトバチルス・ガセリ乳酸菌から選別したFERM P−21399に、自然免疫系の免疫応答を引起す腸上皮細胞内レセプターのNOD2、腸管指向性を示すリンパ球に特有のケモカインレセプターCCR9、リンパ球が腸管へ遊走する際に必要な小腸の高内皮細静脈における接着因子のMAdCAM1の顕著な発現誘導が認められ、従って該乳酸菌には自然免疫系の活性化と腸管へのリンパ球遊走促進機能があると認められる。該乳酸菌の摂取によって、腸上皮細胞のNOD2発現の誘導、CCR9陽性リンパ球の腸管への遊走による免疫応答の活性化とこれによる腸管免疫機能の回復乃至亢進作用が期待される。乳酸菌として、発酵乳等の各種食品、サプリメント、医薬品等、経口投与のための食品として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸管免疫亢進用乳酸菌に関し、腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト由来の乳酸菌中のラクトバチルス属ガセリ種(以下ラクトバチルス・ガセリ又はガセリと省略表記し、他の属及び種の乳酸菌についても同様に・で属と種を区別し又は種によって省略表記する。)が、免疫グロブリンA(以下IgAという)産生誘導機能を発揮し、特に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター寄託番号:FERM P−21399のガセリ菌株が、他のガセリ菌株の5〜7倍程度に高度なIgA産生誘導機能を発揮する事実を知見することによって、本出願人は、該ガセリ菌株を、免疫賦活作用を有する乳酸菌とすること、該乳酸菌を添加含有して免疫賦活作用を有する製品とすること、更に該乳酸菌を添加含有して該免疫賦活作用を有する製品の製造方法とすることを提案済みである。
【0003】
即ち、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・クリスパタスの多数の乳酸菌株についてマウスパイエル板細胞を用いてそのIgA誘導活性能を研究評価した結果、IgA誘導活性能を強く呈するもの(菌体無添加時のIgA値を1とした場合のIgA量の相対値が3以上のもの)は、クリスパタス、ガセリに認められるが、ガゼリ、中でも上記特許生物寄託センターに寄託した乳酸菌の菌株FERM P−21399の相対値は6.4倍という顕著なIgA産生誘導活性を発揮するものであり、また同時に乳発酵性、耐酸・耐胆汁酸性及び腸管接着性においても好適なものと認められ、従ってガセリ菌株、特に上記FERM P−21399のガセリ菌株は免疫賦活作用に優れた免疫機能を発揮するものであった。
【0004】
【特許文献1】特開2008−179630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにガセリ菌株、特に上記FERM P−21399のガセリ菌株は、その免疫賦活作用に優れた免疫機能を発揮するものであるところ、このガセリ菌株の免疫機能は、上記IgA産生誘導活性による獲得免疫に対する賦活作用に止まるのか否かについては、必ずしも明瞭ではなく、この点の解明が求められる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、その解決課題は、上記IgA産生誘導活性に加えてガセリ菌株が備えたその余の有用な免疫機能に対する作用を明らかにすることにより、該免疫作用を用途とする乳酸菌を提供し、該乳酸菌を添加含有した製品を提供し、また該製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に沿って、更に研究を重ねたところ、ガセリ乳酸菌、特にFERM P−21399ガセリ乳酸菌の菌株が、上記IgA産生誘導作用に止まらず、腸管の自然免疫系を活性化する機能及び腸管へのリンパ球遊走を促進する機能を有しており、該リンパ球遊走の促進で腸管免疫における免疫応答の活性化とこれによる腸管免疫機能の回復乃至亢進作用が期待されるとの知見を得た。このリンパ球遊走促進の機能は、上記ガセリ乳酸菌が、細菌構成成分に対する腸上皮細胞内レセプターとして自然免疫系を活性化するとされるNODタンパク質ファミリーのNOD2の発現誘導機能を発揮すること、腸管指向性を有するリンパ球に特有のケモカインレセプターCCR9、CCR6、CCR10等の発現誘導機能を発揮すること、該CCR9を有するリンパ球の腸管への遊走に必要な高内皮細静脈における接着因子MAdCAM1やその余の接着因子の発現作用を発揮すること、の各発現誘導機能を発揮するとの事実を見出した。即ちこの各発現誘導機能は、ヒトの免疫機能にあって、NOD2が自然免疫系を活性化し、CCR9を備えて腸管指向性を有するリンパ球の遊走をMAdCAM1が促進し、特にヒトの腸管免疫機能の回復亢進作用、即ち腸管免疫亢進作用を顕著に呈するに至るものと認められ、従って該ガセリ乳酸菌を摂取することによって、例えば、低下・抑制・破壊・破綻した腸管免疫を活性化させるように、腸管免疫の異常に伴う感染症・炎症性疾患・アレルギー疾患の治療・予防および改善に活用し得るとの知見を得るに至った。
【0008】
本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、即ち、請求項1に記載の発明を、腸管の自然免疫系活性化及び腸管へのリンパ球遊走促進機能を有するラクトバチルス・ガセリ乳酸菌であることを特徴とする腸管免疫亢進用乳酸菌とし、請求項2に記載の発明を、上記ラクトバチルス・ガセリ乳酸菌が、NOD2の発現誘導機能及びCCR9等のケモカインレセプターの発現誘導機能、MAdCAM1等の接着因子の発現誘導機能を有し且つ上記自然免疫系活性化をNOD2の発現誘導機能により、リンパ球遊走促進機能を上記ケモカインレセプター及び接着因子の発現誘導機能によるものとしてなることを特徴とする請求項1に記載の腸管免疫亢進用乳酸菌とし、請求項3に記載の発明を、上記ラクトバチルス・ガセリ乳酸菌を、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター寄託番号:FERM P−21399のラクトバチルス・ガセリ菌株としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の腸管免疫亢進用乳酸菌とし、請求項4に記載の発明を、請求項1、2又は3に記載のラクトバチルス・ガセリ乳酸菌を、腸管の自然免疫系活性化と腸管へのリンパ球遊走促進機能を発揮させるために添加含有してなることを特徴とする腸管免疫亢進用製品とし、請求項5に記載の発明を、上記ラクトバチルス・ガセリ乳酸菌を含有した製品を、発酵乳、乳酸菌飲料、清涼飲料水、ガム、グミ、その他の食品又は顆粒、粉末、錠剤、その他のサプリメント乃至医薬品としてなることを特徴とする請求項4に記載の腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品とし、請求項6に記載の発明を、請求項1、2又は3に記載のラクトバチルス・ガセリ乳酸菌を、腸管の自然免疫系活性化と腸管へのリンパ球遊走促進機能を発揮させるために添加して含有させることを特徴とする腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品の製造方法としたものであり、本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として、上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1乃至3に記載の発明は、自然免疫系の活性化と腸管へのリンパ球遊走の促進で腸管免疫における免疫応答の活性化、これによる腸管免疫機能の回復乃至亢進作用を有して、低下、抑制、破壊、破綻した腸管免疫機能を活性化させ、該腸管免疫の異常に伴う感染症・炎症性疾患・アレルギー疾患の治療、予防及び改善に有効に用いられる腸管免疫亢進用乳酸菌を提供することができ、請求項4及び5に記載の発明は、該乳酸菌を添加含有することによって、同じく腸管免疫機能の低下、抑制、破壊、破綻に伴う各種疾患の治療、予防及び改善に有効に用いられる各種の腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品を提供することができ、請求項6に記載の発明は、該製品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の乳酸菌は、腸管の自然免疫系活性化及び腸管へのリンパ球遊走促進機能を有するラクトバチルス・ガセリ乳酸菌である腸管免疫亢進用乳酸菌であり、また該ラクトバチルス・ガセリ乳酸菌が、NOD2の発現誘導機能及びCCR9等のケモカインレセプターの発現誘導機能、MAdCAM1等の接着因子の発現誘導機能を有し且つ上記自然免疫系活性化をNOD2の発現誘導機能により、リンパ球遊走促進機能を上記ケモカインレセプター及び接着因子の発現誘導機能によるものとしており、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター寄託番号:FERM P−21399のラクトバチルス・ガセリ菌株にあって、該腸管へのリンパ球遊走促進機能が特に顕著に見られ、有効な腸管免疫亢進作用を呈する。
【0011】
即ち、マウス実験によれば、ヒト由来のガセリ乳酸菌には、腸管へのリンパ球遊走促進機能が認められ、該リンパ球遊走の促進によって有効な腸管免疫亢進作用を呈するものである。該ガセリ乳酸菌には、自然免疫系を活性化するNOD2の発現誘導機能、CCR9等のケモカインレセプターの発現誘導機能、MAdCAM1等の接着因子の発現誘導機能が顕著に見られ、上記リンパ球遊走促進機能は、これらCCR9及びMAdCAM1等の発現誘導機能に依存するものと認められる。即ちNOD2は、腸上皮細胞の細胞内レセプターとして、自然免疫系の感染や貪食能によって細胞内に取り込んだバクテリア菌体構成成分であるペプチドグリカンのムラミルジペプチドを認識し、NF−κBを活性化して、種々の免疫応答を引き起こすレセプターとされ、CCR9は、腸管指向性を有するリンパ球に発現している特有のケモカインレセプターであり、またMAdCAM1は小腸の高内皮細静脈に発現して、リンパ球のインテグリン分子と接着して、高内皮細静脈を通って腸管に遊走してくるCCR9陽性細胞の遊走を促進する接着因子であるとされる。従って、自然免疫系の活性化、ガセリ乳酸菌の腸管へのリンパ球遊走促進機能とこれによる腸管免疫亢進作用のメカニズムは必ずしも明らかではないが、最大の免疫臓器である腸管にあって、ガセリ乳酸菌がNOD2を発現して腸管の自然免疫系を活性化するとともにリンパ球に特有のケモカインレセプターCCR9を発現し且つこれとは別に高内皮細静脈において接着因子MAdCAM1を発現することから、該ガセリ乳酸菌の摂取によって、腸上皮細胞のNOD2の発現が誘導されて、NF−κBの活性化を介して種々の免疫応答を促進する一方、MAdCAM1の発現が誘導されて、CCR9陽性のリンパ球の腸管への遊走を活性化させ、その結果、リンパ球の有効な遊走が得られて、腸管での免疫応答を活性化とこれによる腸内免疫機能を回復乃至亢進の作用を発揮するに至るためと認められる。
【0012】
本発明にあってこのようにガセリ乳酸菌が腸管免疫機能を回復乃至亢進するのは、次のマウスを用いて行なった遺伝子発現試験によって、これを確認することができる。
【0013】
即ち、該試験の乳酸菌には、既にIgA産生誘導作用を高度に発揮することが認められ且つその生理生化学的性状が確認されているFERM P−21399乳酸菌(出願人において保有するラクトバチルス・ガセリGCL1355を使用した。該菌種は特許文献1におけるラクトバチルス・ガセリA10−02Cと同一菌種である。)を用い、該乳酸菌をMRS培地で終夜培養後、PBSで2回洗浄し、その後菌液0.1mlあたり1×1010 CFUとなるように調整して被検菌株液とした。遺伝子発現試験における、被検動物の飼育および被検菌株の投与、試料の採取、試料からのRNA抽出、リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析は、以下のとおりである。
【0014】
1. 被検動物の飼育および被検菌株の投与
妊娠14日目のBalb/cマウス(日本SLC株式会社製)を4腹購入し、分娩させた。仔は生後10日目までは自身の親に哺育させ、生後10日目で全ての仔を混合し群分けを行った。群分けは、母マウス毎に腹ごとの偏りがでないよう考慮し、さらに仔の平均体重にばらつきが出ないよう配慮してそれぞれの母マウスに割り付けた。2群を対照群とし、残り2群を乳酸菌投与群とした。乳酸菌投与群には被検菌株液を、20日齢から22日齢の3日間、仔マウスに0.1ml経口投与した。離乳は生後21日目に強制的に行った。母マウスおよび離乳後の仔マウスの飼料には実験基礎飼料(ラボMRストック;日本農産工業株式会社製)を用いた。飼料と飲水は未滅菌のものを使用し、自由摂取とした。飼育室は、9時点灯、21時消灯の明暗周期で室温25℃±2℃に設定した。
【0015】
2. 試料の採取
生後28日目に以下に示すように剖検を行った。ソムノペンチル(シェリング・プラウ・アニマルヘルス社製)をPBSで20倍希釈したもの100μlを腹腔内に注射し、全身麻酔下においた。その後開腹し小腸組織を採取した。小腸は、腸間膜脂肪を取り除いてから、小腸を8等分し、胃側から8番目の部分から5mmずつRNA抽出用の組織を採取し、RNAlater(登録商標)に浸漬した。
【0016】
3. 試料からのRNA抽出
採取した小腸組織を上記RNAlaterから取り出し2mlのジルコニアビーズ(アズワン社製)入りねじ口チューブに移した。QuickGene RNA tissue kit S II(FUJIFILM社製)付属のLRT溶液とβ-メルカプトエタノールの混合液(LRT溶液:β‐ME=100:1)500μlを試料の入ったチューブに入れ、FastPrepでspeed6.0、20秒間の組織破砕を3回行った。その後、QuickGene RNA tissue kit S IIのプロトコールに従い、RNA抽出、DNase処理を行った。DNaseは、RNase Free DNase I(TaKaRa社製)を用いた。cDNAの合成にはPrimeScript(登録商標)RT reagant Kit(Perfect Real Time)(TaKaRa社製)を使用し、全RNA200ngを逆転写に供した。
【0017】
4. リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析
小腸組織におけるmRNAの定量を行うため、得られたcDNAを滅菌水で10倍希釈したものを鋳型としてReal‐time PCR(Light Cycler480:Roche社製)による遺伝子発現解析を行った。Real‐time PCRはLight Cycler(登録商標)480 ProbesMaster(Roche社製)を用いて行った。PCRに使用したプライマーとプローブは表1のとおりである。全てのReal‐time PCRの反応液組成は2.86μl蒸留水、5μlProbesMaster、それぞれ0.02μlのForwardとReverseのプライマー(100pmol)、0.1μlのプローブ、2.0μlのDNAテンプレート、計10μlで行った。反応条件は、95℃、5分間の初期変性後、95℃、10秒間、60℃、20秒間を55サイクルで行った。得られたデータをLight Cycler480付属のソフトウェア(Light Cycler480 SW 1.5)およびMicrosoft Excel(Microsoft社製)で解析しそれぞれの遺伝子の発現量を、Gapdh遺伝子をハウスキーピング遺伝子とし、比較Ct法に基づき、相対定量を行った。
【0018】
以上の遺伝子発現誘導試験による採取した組織中の遺伝子発現量の測定結果(n=5の平均値)を表2に示す。表2によれば、ガセリGCL1355株を投与した群では、対照群の1.0に対して、自然免疫系のレセプターであるNOD2の発現は24.0倍と、その顕著な増加が認められた。また、腸管指向性を示すリンパ球に特有のCCR9及びリンパ球が腸管へ遊走する際に必要な接着因子であるMAdCAM1の発現も453倍、22.6倍と対照群に比して顕著な増加が認められた。これらNOD2、CCR9及びMAdCAM1の顕著な発現誘導機能は、ガセリ菌の投与によって腸管へのリンパ球の遊走が活性化し、該ガセリ菌株の経口投与が、腸管免疫の低下・抑制・破壊・破綻といった異常に対してその回復乃至亢進機能を有意に発揮するものであると認められる。
【0019】
このように腸管免疫亢進機能を発揮するラクトバチルス・ガセリ乳酸菌は、これを、該菌株として、例えば凍結乾燥した乳酸菌粉末として、市場に供給することができるが、更に該ガセリ乳酸菌を、自然免疫系の活性化と腸管へのリンパ球遊走促進機能を発揮させるために添加含有した腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品、即ちNOD2の発現誘導機能及びCCR9等のケモカインレセプターの発現誘導機能、MAdCAM1等の接着因子の発現誘導機能を発揮させる製品とすることができる。該腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品として、発酵乳、乳酸菌飲料、清涼飲料水、ガム、グミ、その他の食品又は顆粒、粉末、錠剤、その他のサプリメント乃至医薬品があげられる。即ち、例えばヨーグルト等発酵食品のスターターとして添加発酵して、該菌株を含有する発酵食品とする他、一般に用いられる各種の飲料、食品、食品素材、食品添加物、医薬品、サプリメント等に添加することによって、腸管免疫亢進機能を発揮する製品とすることができる。これら製品は、上記乳酸菌又はその乳酸菌粉末を、組成原料の製造段階を含めて、その製造工程の適宜段階に添加して含有させることによって、その製造方法とすることができる。更に、例えばオリゴ糖を同時に添加することによって、これら製品を、プロバイオティクス用途とともにプレバイオティクス用途のものとすることができ、また各種ビタミン類やその他の人体に有益な成分を添加することができ、更に家畜類の飼料としても同様に使用することができる。
【0020】
これら腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品の製造及び組成は、常法に従ってこれを行なうことができ、そのリンパ球遊走促進機能とこれによる腸管免疫亢進作用の発揮に、特段の条件や製造方法を採用する必要はない。
【0021】
これらラクトバチルス・ガセリの乳酸菌には、人体に害を及ぼす可能性はないものと認められるから、乳児用の飲料、食品等の製品に、上記と同様に使用することができる上、特殊用途の医薬品にも特段の制限なく使用することができる。またその添加量についても制限がないが、一般には極く微量を添加することで、腸管免疫亢進作用を発揮することができる。なお該ラクトバチルス・ガセリ乳酸菌は、上記のとおりIgA活性作用を有しているので、該腸管免疫亢進作用とIgA活性作用の双方の作用発揮により有効な免疫機能を有するものとすることができる。
【0022】
本説明は以上のとおりとしたが、本発明の実施に当って、上記ラクトバチルス・ガセリ乳酸菌、これによる腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品、その製造方法等の、各具体的な形態は、上記発明の要旨に反しない限り、様々な形態のものとすることができる。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸管の自然免疫系活性化及び腸管へのリンパ球遊走促進機能を有するラクトバチルス・ガセリ乳酸菌であることを特徴とする腸管免疫亢進用乳酸菌。
【請求項2】
上記ラクトバチルス・ガセリ乳酸菌が、NOD2の発現誘導機能及びCCR9等のケモカインレセプターの発現誘導機能、MAdCAM1等の接着因子の発現誘導機能を有し且つ上記自然免疫系活性化をNOD2の発現誘導機能により、リンパ球遊走促進機能を上記ケモカインレセプター及び接着因子の発現誘導機能によるものとしてなることを特徴とする請求項1に記載の腸管免疫亢進用乳酸菌。
【請求項3】
上記ラクトバチルス・ガセリ乳酸菌を、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター寄託番号:FERM P−21399のラクトバチルス・ガセリ菌株としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の腸管免疫亢進用乳酸菌。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のラクトバチルス・ガセリ乳酸菌を、腸管の自然免疫系活性化と腸管へのリンパ球遊走促進機能を発揮させるために添加含有してなることを特徴とする腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品。
【請求項5】
上記ラクトバチルス・ガセリ乳酸菌を含有した製品を、発酵乳、乳酸菌飲料、清涼飲料水、ガム、グミ、その他の食品又は顆粒、粉末、錠剤、その他のサプリメント乃至医薬品としてなることを特徴とする請求項4に記載の腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品。
【請求項6】
請求項1、2又は3に記載のラクトバチルス・ガセリ乳酸菌を、腸管の自然免疫系活性化と腸管へのリンパ球遊走促進機能を発揮させるために添加して含有させることを特徴とする腸管免疫亢進用乳酸菌添加含有製品の製造方法。

【公開番号】特開2010−130954(P2010−130954A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310223(P2008−310223)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(390001270)グリコ乳業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】