説明

腹膜透析を実施するためのシステムおよび方法

【課題】改善された透析システムおよび透析を行う方法を提供する。
【解決手段】腹膜透析の実施形態では、患者16の腹膜腔からの使用済み透析液は、患者ループ12に沿って、使用済み透析液からの老廃成分を分離する膜28を有する透析器26を通過し、患者ループ12は、新鮮な透析液を患者16の腹膜腔に戻す。老廃成分は、第2の再生ループ14に入って老廃成分を吸収する再生ユニットまたは吸収剤カートリッジ32へ運び去られる。再生ユニットは、透析器26によって患者ループ12から除去された透析液中の望ましくない成分、例えば余剰水分(限外濾過液すなわちUF)、毒素および代謝老廃物を除去する。グルコースおよび電解質のような望ましい成分は、システムによって透析液に加えることができる。添加物は、透析を行うのに適切な患者の浸透勾配を維持するのを支援し、且つ患者16に必要な化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、全体として透析システムに関する。より具体的には、本発明は、再生透析システムおよび持続注入透析システムに関する。本発明はまた、透析治療を行う方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
疾病、発作またはその他の原因により、人の腎臓系は不全になる可能性がある。何らかの原因による腎不全では、いくつかの生理的障害がある。水分、無機物および日常の代謝負荷の排出のバランスは、腎不全において不可能になる。腎不全では、有毒な窒素代謝の最終生成物(たとえば、尿素、クレアチニン、尿酸およびその他)が血液および組織中に蓄積する可能性がある。
【0003】
腎機能障害および腎機能低下は、透析で処置されてきた。透析は、さもなければ正常に機能する腎臓により除去されていたはずの老廃物、毒素および過剰な水分を人体から除去する。腎機能補充のための透析治療は、この治療が救命処置であるというため、多くの人にとって重大である。機能不全腎を有する人は、少なくとも腎臓の濾過機能を補充しなければ、生存し続けることはできないであろう。
【0004】
血液透析および腹膜透析は、腎機能の損失を治療するために一般に使用されている2種類の透析療法である。血液透析処置は、患者の血液を使用して、老廃物、毒素および過剰な水分を直接患者から除去する。患者は、血液透析機械に接続され、患者の血液はこの機械を通してポンプ輸送される。カテーテルは、患者の静脈および動脈内に挿入され、血液透析機械との間で血流を接続する。血液が血液透析機械内の透析装置を通過すると、透析装置は、老廃物、毒素および過剰な水分を患者の血液から除去し、血液を戻して患者の体内に逆に注入する。多量、たとえば約120リットルの透析液は、1回の血液透析療法の間に血液を透析するために使用される。次いで、使用済み透析液は廃棄される。血液透析処置は数時間持続し、一般に、処置センターにおいて毎週約3回または4回実施される。
【0005】
血液透析治療の1つの種類は、再生型血液透析である。この治療法は、透析液再生用のカートリッジを備える血液透析システムを用いる。このようなカートリッジの1つが、オクラホマ州、オクラホマシティー所在のSorb TechnologyによってREDY(商標)の名称で製造されている。このシステムでは、透析液流体の流路は、血液透析機を別の患者に対して使用することができる前に適切に洗浄されなければならない。また、透析液流体の流路は、閉鎖システムではない。すなわち、透析液流体の流路は、大気に対して開かれており、これにより大気からの酸素がシステム内の流体に接触しシステム内でのバクテリアの増殖を助長する可能性がある。その結果、このような透析システムの汚染が関心事となる可能性がある。さらに、REDYTMカートリッジを出る透析液流体は、該流体が比較的酸性であり、従って生理的ではないために腹膜透析には適していない。さらに、このシステムは、治療中に医療関係者の注意を必要とする。
【0006】
腹膜透析は、無菌の透析溶液つまり「透析液(dialysate)」を使用し、これは、患者の腹膜腔内に注入される。透析液は、腹膜腔内で患者の腹膜と接触する。老廃物、毒素および過剰な水分は、患者の血流から腹膜を通過して透析液中に至る。血流から透析液中への老廃物、毒素および水分の移送は、拡散および浸透(すなわち、膜全体に浸透圧勾配を生じること)により行なわれる。使用済みの透析液は、患者の腹腔から排出されて、老廃物、毒素および過剰な水分が患者から除去される。このサイクルは、半連続的基礎(basis)または連続的基礎に基づいて繰り返される。
【0007】
様々なタイプの腹膜透析療法があり、連続的な歩行可能腹膜透析(「CAPD」)および自動化腹膜透析が挙げられる。CAPDは、手動の透析処置であり、ここで患者は、移植されたカテーテルを排出容器に接続し、使用済み透析液を腹膜腔から排出させる。患者はカテーテルを新たな透析液のバッグに接続し、手動で新たな透析液をカテーテルから患者の腹腔内に注入する。患者は、カテーテルを新たな透析液バッグから取り外して、透析液を腹腔内に滞留させて、老廃物、毒素および過剰な水分を患者の血流から透析液溶液中に移送することができる。滞留期間の終わりに、患者は、手動透析手順を繰り返す。
【0008】
CAPDでは、患者は、排水、充填および滞留サイクルを数回、日中、たとえば1日当たり約4回行なう。排水、充填および滞留を含む各々の交換または処置サイクルは、約4時間を要する。患者が行なう手動腹膜透析は、非常に多量の時間および努力を患者に要求する。この不便な手順は、患者の生活の質(quality of life)を改善するために、改善および治療強化の余地がある。
【0009】
自動腹膜透析は、透析治療が排液、充填および貯留のサイクルを含む点で持続腹膜透析に類似している。しかしながら、透析機は、通常、患者が眠っている一夜の間に3サイクルから4サイクルの腹膜透析治療を自動的に行う。
【0010】
自動腹膜透析に関しては、自動透析機は、埋め込まれたカテーテルに流体接続する。自動透析機はまた、新鮮な透析液の供給源またはバッグおよび流体排液設備にも流体接続する。透析機は、使用済み透析液を腹膜腔からポンプで吸引し、カテーテルを通し、排液設備へ送る。次いで、透析機は、透析液源から新鮮な透析液をポンプで吸引し、カテーテルを通し、患者の腹膜腔内に注入する。自動機械は、患者の血流からの老廃物、毒素および余剰水分の透析物溶液への移送を行うことができるように、透析液が腔内に貯留することを可能にする。コンピュータは、患者が透析機に接続されているとき、例えば患者が眠っているときに自動的に透析治療が行われるように自動透析機を制御する。すなわち、透析システムは、自動的に且つ連続してポンプで流体を腹膜腔内に注入し、貯留させ、ポンプで流体を腹膜腔の外に排出し、この手順を反復する。
【0011】
幾つかの排液、充填、および貯留のサイクルは、治療中に行われることになる。また、自動透析治療の最後の日に患者が透析機を外すときに患者の腹膜腔に残る「最終充填液」は、自動透析治療の最後に使用されることが多い。自動腹膜透析は、患者が手動で排液、貯留、および充填の工程を実行する必要性をなくす。自動透析は、患者の透析治療を改善することができ、且つ間違いなく患者の生活の質を改善する。
【0012】
持続的に透析液を注入するとされているいわゆる「持続注入」腹膜透析(「CFPD」)システムが存在する。しかしながら、これらのシステムは一般に、単一経路の流体流を有する。すなわち、透析液は、一回腹膜腔へ流入し、それを通り、その外へ流出し、その後排液容器へ送られる。患者からの「使用済み」透析液(負荷状態の廃透析液)は、排液バッグに収集され、廃棄されるか、または家庭の排水管もしくは他の排水管内に流れる。従って、既知のCFPDシステムは一般に、或る量の透析液を一度使用し、その後それを廃棄する。すなわち、このシステムは、或る量の透析液を再生または再利用する能力を有しない。
【0013】
既存の腹膜透析治療、およびこの治療を行う既存のシステムの有効性は、使用される透析液の量に依存する。例えば、代表的な腹膜透析治療は、各交換に対して約2リットル〜約3リットルの透析液で、透析液を約4回〜約6回交換(排出、充填、貯留)する必要がある。腹膜透析は、1週間に7日行われる毎日の治療である。結果として、毎月240リットル〜540リットルの新鮮な透析液が患者の家に配達され保存されなければならない。治療効果を高めるために透析液の用量を増やすことは、よりさらに透析液を必要とすることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、改善された透析システムおよび透析を行う方法を提供する必要性が存在する。特に、閉鎖ループ腹膜透析システムおよび使用済み透析液を再生または再利用する方法を提供する必要性が存在する。患者が過度の量の新鮮な透析液バッグを保存する必要なく家庭で手順を実行することができるように、CFPD治療と互換性を有するシステムおよび方法に対する必要性が存在する。手順を患者が睡眠をとっている夜間に主として実行することができるように、自動化されることになるシステムおよび方法に対する必要性がさらに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
全体として、本発明は、改善された透析システムおよび透析を行う改善された方法を提供する。より詳細には、本発明は、持続注入透析(「CFD」)および再生型透析、ならびに組み合わせられた持続注入再生型透析(「CFRD」)用のシステムおよび方法を提供する。本発明はまた、血液透析を行うための改善されたシステムおよび方法をも含む。
【0016】
本発明の透析システムは、例えば、患者が眠っている夜間に患者に対して自動的に透析治療を行う。本発明は、自動的に使用済み透析液を新鮮な透析液に再生し、該新鮮な透析液は、患者の体内に再導入され、透析治療のために再び使用される。さらに、本透析システムは、患者を同時に往復する持続的な流体の流れを提供する。
【0017】
この目的のために、本発明の一実施形態において、透析を行うシステムを提供する。本システムは、第1のポンプおよび複数の患者管腔を有する患者流体ループを含む。本システムは、第2のポンプおよび医療用流体再生装置を含む第2の流体ループを含む。膜装置が患者流体ループおよび第2の流体ループに流体接続して配置され、それらを分離する。膜装置は、患者流体ループ内の流体の少なくとも1つの選択された成分が第2の流体ループに移動することを可能にする。第2のループは、膜装置を介した選択された成分の移動を除き、他の点では閉鎖されている。第1と第2のポンプを作動させて患者ループおよび第2のループ内の流体を再循環させる制御装置も提供されている。
【0018】
本システムは、種々の異なる種類の構成要素と共に用いるのに、そして様々な様式で配列するのに適合性を有する。
【0019】
例えば、一実施形態では、膜装置は、透析器である。
【0020】
一実施形態では、膜装置の両側に圧力勾配が存在する。
【0021】
一実施形態では、患者ループも、膜装置を介した選択された成分の移送および空気/ガスの排気を除き閉鎖されている。
【0022】
一実施形態では、膜装置は、尿素が患者流体ループから第2の流体ループへ移ることを可能にするナノフィルタを含む。
【0023】
一実施形態では、医療用流体再生装置は、尿毒症毒素吸収剤を含む。
【0024】
一実施形態では、医療用流体再生装置は、以下の材料:ウレアーゼ、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、および炭素のうちのいずれかまたは全てを含むことができる。
【0025】
一実施形態では、本システムは、患者流体ループおよび第2の流体ループのうちの1つまたは両方からガスを除去するガス分離器を含む。
【0026】
一実施形態では、ガス分離器および医療用流体再生装置は、単一の装置内に備えられる。
【0027】
一実施形態では、本システムは、患者流体ループおよび第2の流体ループからガスを排気するガス排気口を含む。
【0028】
一実施形態では、第2の流体ループは、医療用流体中の電解質の濃度を監視する多検体センサを含む。
【0029】
一実施形態では、腹膜透析流体が患者流体ループを通して循環される。
【0030】
一実施形態では、血液が患者流体ループを通して循環される。
【0031】
一実施形態では、患者流体ループおよび第2の流体ループの少なくとも部分は、使い捨て装置内に配置される。
【0032】
一実施形態では、第2の流体ループは、第2の流体ループ内の流れのバランスをとるバランスチャンバを含む。
【0033】
一実施形態では、制御装置は、流体が複数の患者を通って反対方向に流れることを可能にする。
【0034】
一実施形態では、本システムは、複数の患者管腔を規定する二重管腔カテーテルを含む。
【0035】
一実施形態では、患者流体ループおよび第2の流体ループのうちの1つまたは両方が、インライン流体ヒータを含む。
【0036】
一実施形態では、インライン流体ヒータは、放射ヒータおよびプレートヒータを含む。
【0037】
一実施形態では、本システムは、アンモニア、アンモニウムおよびpHを含む1つまたはそれ以上の指標を感知する医療用流体センサを含む。
【0038】
一実施形態では、本システムは、患者流体ループおよび第2の流体ループのうちの1つまたは両方に流体量センサを含む。
【0039】
一実施形態では、流体量センサは、流体ループの1つまたは両方と流体連通するチャンバを用いるキャパシタンス流体量センサを含む。
【0040】
一実施形態では、チャンバは、ポンプチャンバである。
【0041】
一実施形態では、本システムは、患者流体ループおよび第2の流体ループのうちの少なくとも1つと流体連通する限外濾過液容器を含む。
【0042】
一実施形態では、本システムは、患者流体ループおよび第2の流体ループのうちの1つまたは両方と流体連通する流体濃縮液容器を含む。
【0043】
一実施形態では、本明細書に説明するシステムは、使い捨て透析カセットを用いる。本カセットは、患者ポンプチャンバおよび再生ポンプチャンバを覆う可撓性の膜を含む。本カセットは、患者ポンプチャンバを閉鎖ループ患者流体経路に流体接続する装置を含む。本カセットは、再生ポンプチャンバを閉鎖ループ再生流体経路に流体接続する装置をさらに含む。患者経路および再生経路は各々、透析器と流体連通する。
【0044】
本カセットは、種々の異なる種類の構成要素と共に用いるのに、そして様々な様式で配列するのに適合性を有する。
【0045】
例えば、一実施形態では、使い捨てカセットは、透析物吸収剤カートリッジと流体連通するポートにつながる流体経路を規定する。
【0046】
一実施形態では、使い捨てカセットは、ガス分離器と流体連通するポートにつながる流体経路を規定する。
【0047】
一実施形態では、使い捨てカセットは、透析濃縮液容器と流体連通するポートにつながる流体経路を規定する。
【0048】
一実施形態では、使い捨てカセットは、透析液の最終バッグと流体連通するポートにつながる流体経路を規定する。
【0049】
一実施形態では、使い捨てカセットは、透析液バッグと流体連通するポートにつながる流体経路を規定する。
【0050】
一実施形態では、使い捨てカセットは、排液容器と流体連通するポートにつながる流体経路を規定する。
【0051】
一実施形態では、使い捨てカセットは、患者流体コネクタと流体連通するポートにつながる流体経路を規定する。
【0052】
さらに、使い捨てカセットは、24時間収集および/または遠隔検体センサ用の流体経路を規定することができる。
【0053】
使い捨てカセットは、透析治療装置と共に作動する。治療装置は、使い捨てカセットを受け入れる部分を有するハウジングを含む。ハウジングは、少なくとも部分的に使い捨てカセットによって規定される患者経路にポンプで流体を通す患者ポンプ作動装置を格納する。ハウジングはまた、少なくとも部分的に使い捨てカセットによって規定される再生経路に流体をポンプで通す再生ポンプ作動装置をも格納する。
【0054】
透析治療装置はまた、種々の異なる種類の構成要素と共に用いるのに、そして様々な様式で配列するのに適合性を有する。
【0055】
例えば、一実施形態では、透析治療装置は、患者ポンプ作動装置および再生ポンプ作動装置と協働する少なくとも1つの流体量測定センサ構成要素を含む。
【0056】
一実施形態では、ハウジングは、流体ヒータを格納する。
【0057】
一実施形態では、ハウジングは、アンモニアセンサ、アンモニウムセンサ、およびpHセンサなどの少なくとも1つのセンサを格納する。
【0058】
一実施形態では、ハウジングは、使い捨てカセットと共に作動する少なくとも1つのバルブ作動装置を格納する。
【0059】
本発明は、本明細書に説明するシステムおよび装置を操作するための複数の異なる方法を含む。一実施形態では、透析システム内の流体を移動させる方法を提供する。本方法は、患者ループを通して第1の流体を持続的に再循環させる工程を含む。本方法は、再生ループを通して第2の流体を持続的に再循環させる工程を含む。少なくとも1つの老廃成分が、両方のループによって共有される装置を通して、患者ループから再生ループへ同時に移送される。ループは、本装置を通って移動する流体を除き、他の点では閉鎖されている。本方法はまた、再生ループから少なくとも1つの老廃成分を除去する工程をも含む。
【0060】
第1と第2の流体は両方とも、透析液を含むことができる。代替的に、第1の流体は血液を含み、第2の流体は透析液を含む。
【0061】
一実施形態では、本方法は、老廃物吸収剤を通して第2の流体を再生ループ内に流す工程と、老廃成分の少なくとも一部を吸収する工程とを含む。
【0062】
一実施形態では、本方法は、第1と第2の流体のうちの少なくとも1つを加熱する工程を含む。
【0063】
一実施形態では、本方法は、第1と第2の流体のうちの少なくとも1つから限外濾過液を除去する工程を含む。
【0064】
一実施形態では、本方法は、第1と第2の流体のうちの少なくとも1つに透析液を加える工程を含む。
【0065】
一実施形態では、本方法は、第1と第2の流体のうちの少なくとも1つに濃縮液を加える工程を含む。
【0066】
一実施形態では、本方法は、第1と第2の流体のうちの少なくとも1つからガスを除去する工程を含む。
【0067】
一実施形態では、本方法は、患者ループおよび再生ループのうちの少なくとも1つの中の流体の流れのバランスをとる工程を含む。
【0068】
一実施形態では、本方法は、患者ループおよび再生ループのうちの少なくとも1つの中の流体の流れの量を感知する工程を含む。
【0069】
本明細書に説明するいずれの方法の実施形態でも、患者ループを通して透析液流体を再循環させる工程は、患者の一部位を通して流体を通過させる工程を含む。
【0070】
一実施形態では、本方法は、持続注入腹膜透析に対してであり、透析液流体および再生流体に透析器の膜の反対側を通過させる工程と、再生流体が透析器を出た後に再生流体を再生する工程とを含む。
【0071】
持続注入腹膜透析法の一実施形態では、閉鎖患者ループを通して透析液流体を再循環させる工程は、眠っている患者を通して流体を通過させる工程を含む。
【0072】
持続注入腹膜透析法の一実施形態では、閉鎖患者ループを通して透析液流体を再循環させる工程は、夜間に患者を通して流体を通過させる工程を含む。
【0073】
別の実施形態では、腹膜透析システム内の流体を移動させる方法を提供する。本腹膜透析法は、(i)患者ループ内の容器を通して透析液を持続的に再循環させる工程と、(ii)再生ループ内の容器を通して透析液を持続的に再循環させる工程と、(iii)両方のループによって共有される容器を通して、少なくとも1つの老廃成分を患者ループから再生ループへ持続的に移動させる工程とを含み、該ループは、前記容器を通る前記移動を除いて閉鎖されている。
【0074】
一実施形態では、腹膜透析法は、患者ループを通して透析液が再循環される速度と異なる速度で再生ループを通して透析液を再循環させる工程を含む。
【0075】
本発明のさらに別の方法では、持続注入透析を行う工程は、複数の透析専門領域を含む。本方法は、第1の時点で閉鎖ループ透析装置で持続注入腹膜透析を行う工程と、第2の時点で同一の閉鎖ループ透析装置を介して持続注入血液透析を行う工程とを含む。
【0076】
一実施形態では、持続注入腹膜透析および持続注入血液透析は、同一の患者に対して行われる。
【0077】
一実施形態では、本方法は、本装置と共に用いられた使い捨てカセットを除去し、新しい使い捨てカセットを本装置に連結する中間工程を含む。
【0078】
一実施形態では、本方法は、二重管腔腹膜透析カテーテルを除去し、該カテーテルを血液透析針と交換する中間工程を含む。
【0079】
一実施形態では、本方法は、血液透析針を除去し、該針を二重管腔腹膜透析カテーテルと交換する中間工程を含む。
【0080】
本発明の1つの利点は、透析を行うための改善されたシステムおよび方法を提供することである。
【0081】
本発明の別の利点は、自動持続注入透析システムおよび方法を実行するための改善されたシステムおよび方法を提供することである。
【0082】
本発明のさらなる利点は、再生型透析システムおよびそれを行う方法を提供することである。
【0083】
本発明のさらに別の利点は、臨床的利点を有する再生型透析システムを提供することである。
【0084】
本発明のさらに別の利点は、経済的利点を有する再生型透析システムを提供することである。
【0085】
本発明のさらに別の利点は、生活の質における利点を有する再生型透析システムを提供することである。
【0086】
本発明のさらに別の利点は、透析を行うのに必要な透析液の量を低減する再生型透析システムを提供することである。
【0087】
本発明の別の利点は、閉鎖ループ透析システムを提供することである。
【0088】
本発明の他の利点は、腹膜透析および血液透析の両方を行うためのシステムおよび方法を提供することである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
透析を提供するシステムであって、
第1のポンプおよび複数の患者管腔を含む患者流体ループと、
第2のポンプおよび医療用流体再生装置を含む第2の流体ループと、
該患者流体ループ内の該流体の少なくとも1つの選択された成分が該第2の流体ループへ移動することを可能にする、該患者流体ループおよび該第2の流体ループと流体接触し且つそれらを分離する膜装置とを備え、
該第2のループは、該膜装置を介する該選択された成分の移動を除いて閉鎖されており、
該第1のポンプと第2のポンプを作動させて該患者ループおよび該第2のループ内に流体を再循環させる制御装置と、
を備えるシステム。
(項目2)
前記膜装置は透析器である、項目1に記載の透析システム。
(項目3)
前記膜装置の両側に圧力勾配が存在する、項目1に記載の透析システム。
(項目4)
前記患者ループは、前記膜装置を介する前記選択された成分の移動を除いて閉鎖されている、項目1に記載の透析システム。
(項目5)
前記膜装置は、尿素が前記患者流体ループから前記第2の流体ループへ通過することを可能にするナノフィルタを含む、項目1に記載の透析システム。
(項目6)
前記医療用流体再生装置は、尿毒症毒素吸収剤を含む、項目1に記載の透析システム。
(項目7)
前記医療用流体再生装置は、ウレアーゼ、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、および炭素のうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載の透析システム。
(項目8)
前記患者流体ループおよび第2の流体ループのうちの少なくとも1つからガスを除去するガス分離器を含む、項目1に記載の透析システム。
(項目9)
前記ガス分離器および前記医療用流体再生装置が、単一の装置内に備えられている、項目8に記載の透析システム。
(項目10)
前記患者流体ループおよび第2の流体ループからガスを排気するガス排気口を含む、項目1に記載の透析システム。
(項目11)
前記第2の流体ループは、前記医療用流体内の電解質の濃度を監視する多検体センサを含む、項目1に記載の透析システム。
(項目12)
腹膜透析用流体が前記患者流体ループを通って循環する、項目1に記載の透析システム。
(項目13)
血液が前記患者流体ループを通って循環する、項目1に記載の透析システム。
(項目14)
前記患者流体ループおよび前記第2の流体ループの少なくとも部分が使い捨て装置内に備えられる、項目1に記載の透析システム。
(項目15)
前記第2の流体ループは、前記第2の流体ループ内の流れのバランスをとるバランスチャンバを含む、項目1に記載の透析システム。
(項目16)
前記制御装置は、流体が前記複数の患者を通って反対方向に流れることを可能にする、項目1に記載の透析システム。
(項目17)
前記複数の患者管腔を規定する二重管腔カテーテルを含む、項目1に記載の透析システム。
(項目18)
前記患者流体ループおよび前記第2の流体ループのうちの少なくとも1つは、インライン流体ヒータを含む、項目1に記載の透析システム。
(項目19)
前記インライン流体ヒータは、放射ヒータおよびプレートヒータを含む、項目18に記載の透析システム。
(項目20)
アンモニア、アンモニウムおよびpHからなる群から選択される少なくとも1つの指標を感知する少なくとも1つの医療用流体センサを含む、項目1に記載の透析システム。
(項目21)
前記患者流体ループおよび第2の流体ループのうちの少なくとも1つに流体量センサを含む、項目1に記載の透析システム。
(項目22)
前記流体量センサは、前記少なくとも1つの流体ループと流体連通するチャンバを用いるキャパシタンス流体量センサを含む、項目21に記載の透析システム。
(項目23)
前記チャンバは、ポンプチャンバである、項目22に記載の透析システム。
(項目24)
前記患者流体ループおよび第2の流体ループのうちの少なくとも1つと流体連通する限外濾過液容器を含む、項目1に記載の透析システム。
(項目25)
前記患者流体ループおよび第2の流体ループのうちの少なくとも1つと流体連通する流体濃縮液容器を含む、項目1に記載の透析システム。
(項目26)
前記制御装置は、前記第1のポンプを作動させて患者の内外へ持続的に流体をポンプ輸送する、項目1に記載のシステム。
(項目27)
使い捨て透析カセットであって、以下:
患者ポンプチャンバおよび再生ポンプチャンバを覆う可撓性の膜と、
該患者ポンプチャンバを閉鎖ループ患者流体経路に流体接続する手段と、
該再生ポンプチャンバを閉鎖ループ再生流体経路へ流体接続する手段であって、ここで、該患者経路は、透析器を介して該再生経路と流体接続する、手段
を備える、使い捨て透析カセット。
(項目28)
透析物吸収剤カートリッジと流体連通する流体経路を規定する、項目27に記載の使い捨て透析カセット。
(項目29)
ガス分離器と流体連通する流体経路を規定する、項目27に記載の使い捨て透析カセット。
(項目30)
透析濃縮液容器と流体連通する流体経路を規定する、項目27に記載の使い捨て透析カセット。
(項目31)
透析液の最終バッグと流体連通する流体経路を規定する、項目27に記載の使い捨て透析カセット。
(項目32)
透析液バッグと流体連通する流体経路を規定する、項目27に記載の使い捨て透析カセット。
(項目33)
排液容器と流体連通する流体経路を規定する、項目27に記載の使い捨て透析カセット。
(項目34)
患者流体コネクタと流体連通する流体経路を規定する、項目27に記載の使い捨て透析カセット。
(項目35)
使い捨てカセットと共に用いるための透析治療装置であって、以下:
該使い捨てカセットを受け入れる部分を有するハウジングと、
少なくとも一部分が該使い捨てカセットによって規定される患者経路を通して流体をポンプ輸送する、該ハウジング内の患者ポンプ作動装置と、
少なくとも一部分が該使い捨てカセットによって規定される再生経路を通して流体をポンプ輸送する、該ハウジング内の再生ポンプ作動装置
を備える、透析治療装置。
(項目36)
前記患者ポンプ作動装置および前記再生ポンプ作動装置のうちの少なくとも1つと協働する少なくとも1つの流体量測定センサ構成要素を含む、項目35に記載の透析治療装置。
(項目37)
前記ハウジングは、流体ヒータを格納する、項目35に記載の透析治療装置。
(項目38)
前記ハウジングは、アンモニアセンサ、アンモニウムセンサおよびpHセンサからなる群から選択される少なくとも1つのセンサを格納する、項目35に記載の透析治療装置。
(項目39)
前記ハウジングは、前記使い捨てカセットと共に作動する少なくとも1つのバルブ作動装置を格納する、項目35に記載の透析治療装置。
(項目40)
透析システム内の流体を移動させる方法であって、
患者ループを通して第1の流体を持続的に再循環させる工程と、
再生ループを通して第2の流体を持続的に再循環させる工程と、
該患者ループから該再生ループへ、両方のループによって共有される装置を通して少なくとも1つの老廃成分を移送する工程であって、該ループは、該装置を通る該移送を除き閉鎖されている工程と、
該再生ループから少なくとも1つの老廃成分を除去する工程を含む、
方法。
(項目41)
前記第1の流体と第2の流体が、透析液を含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記第1の流体は血液を含み、前記第2の流体は透析液を含む、項目40に記載の方法。
(項目43)
前記老廃成分を除去する工程が、前記再生ループ内の前記第2の流体を老廃物吸収剤を通して流し、前記老廃成分のうちの少なくとも一部を吸収する工程を包含する、項目40に記載の方法。
(項目44)
前記第1の流体と第2の流体のうちの少なくとも1つを加熱する工程を含む、項目40に記載の方法。
(項目45)
前記第1の流体と第2の流体のうちの少なくとも1つから限外濾過液を除去する工程を含む、項目40に記載の方法。
(項目46)
前記第1の流体と第2の流体のうちの少なくとも1つに透析液を加える工程を含む、項目40に記載の方法。
(項目47)
前記第1の流体と第2の流体のうちの少なくとも1つに濃縮液を加える工程を含む、項目40に記載の方法。
(項目48)
前記第1の流体と第2の流体のうちの少なくとも1つからガスを除去する工程を含む、項目40に記載の方法。
(項目49)
前記患者ループおよび前記再生ループのうちの少なくとも1つの中の流体の流れのバランスをとる工程を含む、項目40に記載の方法。
(項目50)
前記患者ループおよび前記再生ループのうちの少なくとも1つの中の流体の流れの量を感知する工程を含む、項目40に記載の方法。
(項目51)
腹膜透析システムにおいて流体を移動させる方法であって、以下の工程:
患者ループ内の容器を通して透析液を持続的に再循環させる工程と、
再生ループ内の該容器を通して透析液を持続的に再循環させる工程と、
両方のループによって共有される該容器を通して該患者ループから該再生ループへ少なくとも1つの老廃成分を持続的に移動させる工程とを含み、該ループは、該容器を通る移送を除き閉鎖されている、
方法。
(項目52)
透析液が前記患者ループを通じて再循環される速度と異なる速度で前記再生ループを通じて透析液を再循環させる工程を含む、項目51に記載の方法。
(項目53)
持続注入腹膜透析を行う方法であって、以下の工程:
閉鎖患者ループを通じて透析流体を持続的に再循環させる工程と、
閉鎖再生ループを通じて再生流体を持続的に再循環させる工程と、
該透析流体および該再生流体を透析器の膜の反対側へ通過させる工程と、
該再生流体が該透析器を出た後に該再生流体を再生する工程と、
を含む、方法。
(項目54)
前記閉鎖患者ループを通じて透析液流体を再循環させる工程は、患者の一部位を通して前記流体を通過させる工程を含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記閉鎖患者ループを通じて透析液流体を再循環させる工程は、眠っている患者を通して前記流体を通過させる工程を含む、項目53に記載の方法。
(項目56)
前記閉鎖患者ループを通じて透析液流体を再循環させる工程は、夜間に患者を通して前記流体を通過させる工程を含む、項目53に記載の方法。
(項目57)
持続注入透析を行う方法であって、以下の工程:
第1の時点で閉鎖ループ透析装置で持続注入腹膜透析を行う工程と、
第2の時点で同一の閉鎖ループ透析装置を介して持続注入血液透析を行う工程
を含む、方法。
(項目58)
前記持続注入腹膜透析および前記持続注入血液透析は、同一の患者に対して行われる、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記装置と共に使用された使い捨てカセットを除去して新しい使い捨てカセットを前記装置に連結する中間工程を含む、項目57に記載の方法。
(項目60)
二重管腔腹膜透析カテーテルを除去して該カテーテルを血液透析針と交換する中間工程を含む、項目57に記載の方法。
(項目61)
血液透析針を除去して該針を二重管腔腹膜透析カテーテルと交換する中間工程を含む、項目57に記載の方法。
【0089】
本発明の付加的な特徴および利点は、以下の発明の詳細な説明および図面に記載し、且つそれらから明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、本発明の原理に基づく透析システムの一実施形態を概略的に示す。
【図2】図2は、本発明の原理に基づく多管腔患者流体コネクタを示す。
【図3】図3は、本発明の原理に基づく透析システムの別の実施形態を概略的に示す。
【図4】図4は、本発明の原理に基づく透析システムのさらなる実施形態を概略的に示す。
【図5】図5は、本発明による使い捨てカセットの一実施形態を示す。
【図6】図6は、本発明による使い捨てカセットの別の実施形態を示す。
【図7】図7は、種々の流体容器に接続された本発明の使い捨てカセットを示す。
【図8】図8は、本発明の原理に基づく透析システムのさらに別の実施形態を概略的に示す。
【図9】図9は、血液透析を提供する本発明の原理に基づく透析システムの一実施形態を概略的に示す。
【図10】図10は、本発明の透析システムに用いられる種々の構成要素を提供する一体型容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0091】
(発明の詳細な説明)
全体として、本発明は、透析システムおよび透析を行う方法に関する。一実施形態では、本発明は、持続注入再生腹膜透析システムおよび方法に関する。別の実施形態では、本発明は、非持続注入再生腹膜透析、および持続注入型であり且つ非持続注入型の両方である再生血液透析に関する。
透析システムは、例えば患者が眠っている夜間に患者に対して透析治療を自動的に行う。本発明は、真の持続注入透析治療法(流体が患者の身体の内部および外部へ同時に流れる)を提供し得、且つ使用済み透析液を、透析治療に再度用いられる新鮮な透析液に自動的に再生することができる。透析液の持続注入は、腹膜の両側の浸透勾配を最大化するかまたは最大浸透勾配を維持することによって治療の効率を向上させがちである。本発明による透析液の再生は、治療に要する透析液の量を大幅に減少させる。例えば、既存のサイクラによって行われる場合、透析液流体の量を、CFPD治療に対する約50リットルから、本発明を用いる治療に対する約6リットル〜約8リットルにまで減少させることができる。
【0092】
本発明の腹膜透析の実施形態では、患者の腹膜腔からの使用済み透析液は、再生ユニットを通過して使用可能な透析液に再生される。患者流体ループ内の再生透析液は、患者の腹膜腔に戻されてさらに患者を透析する。再生ユニットは、患者から除去された透析液中の望ましくない成分、例えば余剰水分(限外濾過液すなわちUF)、毒素、および代謝老廃物を除去し、これにより透析液をさらに透析に使用することができる。例えばグルコースおよび電解質などの望ましい成分は、本システムによって透析液に添加することができる。添加物は、透析を行うのに適切な患者内の浸透勾配を維持するのを支援し、且つ患者に必要な化合物を提供する。
【0093】
本発明による持続注入腹膜透析とは、患者が透析を受けているとき(例えば、透析液がポンプで腹膜腔に注入され且つそこから除去されているとき)に透析液が絶えず且つ同時に患者の身体の中および外に流れていることを意味する。本透析システムは、患者の腹膜腔内にポンプで新鮮な透析液を注入し、その一方で同時に、使用済み透析液をポンプで腹膜腔の外に排出する。従って、本透析システムは、既存の透析システムに対して代表的な腹膜腔内部における貯留時間を省くことができる。持続的透析液流の流速は、所望に応じて、一定であっても変化してもよく、通常約100ml/分〜300ml/分である。
【0094】
本発明の透析システムは、所望に応じて種々の透析治療を提供するように制御することができる。従って、本透析システムは、連続注入を提供することができるが、本発明はまた、非持続注入または一括処理型のシステムおよび方法にも対応する。また、腹膜腔内外への持続的注入・排出は、例えば、最終バッグからの注液中の貯留により連続注入特性が低下しないように、主要な治療処置中に行われる。さらに、本発明の流体ポンピング機構は、例えばポンプチャンバの充填のような短時間の間欠流体注入を行うことができる。本発明の持続的流体注入は、そのような短時間の間欠流体注入を含むものと考えられる。
【0095】
本発明の透析システムおよび方法は、他の透析システムおよび治療法と比較して、例えば、臨床上の利点、経済的利点、ならびに生活の質における利点などの利点を提供する。本発明は、血圧(「BP」)制御の向上、ヘマトクリット(「HCT」)制御の向上、液量制御の向上、残留腎機能(「RRF」)維持の向上、透析適正性対全米腎臓財団のDOQI基準の向上、効率(クリアランス/時間)の向上、グルコース吸収の低下、グルコースプロファイリングおよび限外濾過液の管理、ならびにカテーテル配線管の低減のような臨床上の利点を有するものと考えられる。
【0096】
本発明はまた、治療費の削減、エポゲン(「EPO」)使用の削減のような経済的利点をも有すると考えられる。さらに、本発明は、透析装置から開放された覚醒時間の増加、患者アクセスの向上、複雑性の減少、薬物の自己管理の低減、治療訓練の低減、家庭用水道設備を持つ必要性の排除、患者が取り扱いおよび管理を行わなければならない液体の量の減少、より簡単な処方ならびに透析センターへの患者輸送をなくすことのような生活の質における利点を有するものと考えられる。
【0097】
本発明の透析システムおよび方法は、間欠的透析治療に比較して、持続的腎臓機能をより忠実にシミュレートし且つその代役を務める。今度は、これにより患者のライフスタイルへの影響を最小限に抑えながら臨床結果(例えばRRF、HCT、BP)の改善に寄与することができる。本発明の効率性および利便性は、患者に対して相対的に非制限的な腎代替治療を提供する。これにより、透析装置および透析治療によって受ける制限から患者をより大きく開放することが可能となる。本システムは医師が患者のライフスタイルへの影響を最小限に抑えながら患者のRRFを保持することを可能にすることができるために、本発明により、より容易に早期透析治療を開始することができる。
【0098】
(二重ループシステム)
ここで図面、特に図1を参照すると、透析治療を必要とする患者にそれを提供するシステム10が示されている。図1に示すように、2つのループ、すなわち患者ループ(患者の流体流路を再循環する)12および再生ループ14(透析液流体の流路を再循環する)が提供されている。しかしながら、本発明は、1つのみまたは2つより多いループを含むシステムに用いることができることに留意されたい。患者ループ12は、腹膜透析の実施形態において患者16を透析液で透析するために用いられる。再生ループ14も透析液を含んでおり、患者ループ12内の透析液を再生するために用いられる。血液透析の実施形態では、患者ループ12が患者の血液を搬送し、再生ループ14が血液を透析し且つループ14内の透析液を再生する。
【0099】
全体として図1に示すように、患者ループ12および再生ループ14は、最初に、限外濾過液ポンプ19のようなポンプを通じて透析液をポンプで供給することによってバッグ18から透析流体が充填またはプライミングされる。図1には患者ループ12および再生ループ14の両方のための1つの透析液バッグ18を示しているが、別個の透析液バッグおよび/または流体ポンプを患者ループ12および再生ループ14に対して個々に用いることもできる。血液透析の実施形態では、患者ループ12は、生理食塩水のような適したプライミング溶液でプライミングし得、次いで患者の血液循環系に接続することができる。
【0100】
患者ループ12は、多管腔患者流体コネクタ20およびカテーテルによって患者16に流体接続される。図1および図2を参照すると、多管腔患者流体コネクタ20は、例えば、1つより多い別個の管腔72(患者への管腔)および管腔74(患者からの管腔)を有する1つのハウジング70、または各々が管腔72ならびに管腔74のうちの1つを有する別個のハウジングを有することができる。腹膜透析の実施形態では、多管腔患者流体コネクタ20は、参考として組み込まれる、「Peritoneal Dialysis Catheters」と題する同時係属中の米国特許出願第09/689、508号に開示されているカテーテルまたは他の多流体経路患者アクセスのような二重管腔カテーテル22(図1に示す)に接続することができる。
【0101】
二重管腔カテーテル22は、患者16の体内に埋め込まれ、患者の腹膜腔への流体注入アクセスを提供する。多管腔患者コネクタ20の2つの別個の管腔72および管腔74は、二重管腔カテーテル22の別個の管腔(図示せず)に流体接続される。患者ループ12内の流体は、患者流体コネクタ20を通り、同時に且つ持続的に多方向、例えば2つの異なる方向、カテーテル22および患者16の内外へ持続的に流れることができる。多管腔患者流体コネクタ20を以下で図2においてさらに詳細に説明する。
【0102】
持続注入の実施形態では、患者ループ12は、流体が患者の身体の内外へ同時に流れるようにする任意の1つまたは複数の装置によって患者に流体接続することができる。例えば、患者ループ12は、二重管腔カテーテル、2つの単一の管腔カテーテルに接続することができる。
【0103】
図1では、患者ループ12は、ポンプで患者ループ12に流体を貫流させる患者流体ポンプ24を有する。患者ループ12内の流体は、ポンプで患者16(腹膜透析実施形態では患者の腹膜腔)から排出され、患者流体コネクタ20を通り、透析器26を通り、患者流体コネクタ20へ還流し、患者16に戻される。腹膜透析の実施形態では、患者16から出る患者ループ12内の使用済み透析液(老廃物および余剰水分を含んだ)は、透析器26を通過させることによって浄化もしくは再生される。尿素、クレアチニンおよび余剰水分のような老廃物は、患者ループ12から透析器の膜28を透過して再生ループ14に入り、新鮮な透析液が生成され、該新鮮な透析液は患者ループ12内で透析器を出る。新鮮な透析液は、更なる透析治療のために患者16に戻される。一実施形態では、患者ループ12内の流体は、患者ポンプ24によって、患者ループ12を通して持続的に再循環される。また、透析器26は、患者ループ12と再生ループ14との間における無菌の独立障壁となる。例えば、透析治療に用いられる既存の透析器は、本発明と共に用いるのに適している。また、透析器26において表される膜28は、中空の透析器用繊維のような何らかの適したフィルタ材料を含んでいる。
【0104】
血液透析の実施形態では、患者ループ12は、腹膜腔ではなく患者の血液回路に接続される。透析器26が老廃物および余剰物を血液から除去する際に、患者ポンプ24が血液を持続的に再循環させる。
【0105】
再生ループ14は、患者ループ12から老廃物および余剰水分を除去する。図1に示す実施形態では、流体ポンプ30が再生ループ14内に透析液流体をポンプで持続的に送り込み、ループ14を通して透析液を再循環させる。透析液流体ポンプ30は、ポンプで透析液を透析器26から吸収剤カートリッジ32に通し、透析器26に戻す。再生ループ14内の流体は、患者ループ12内の流体を有する膜28の側部と対向する透析器の膜28の側部を通過する。一実施形態では、再生ループ14は、例えば、等流透析液流体ポンプ30、および/またはバランスチャンバを提供することにより、透析器26を通るバランスのとれた流体の流れを提供する。
【0106】
上述したように、老廃物および余剰水分は、患者ループ12内の流体から透析器の膜28を通過して再生ループ14内の流体に入る。透析器の膜28を通過する移動は、少なくとも部分的には、膜28全体にわたる拡散および濃度勾配によって発生する。また、一実施形態におけるシステム10は、再生ループ14内の流体圧力を、患者ループ12と比べてより低く維持する。すなわち、透析器の膜28全体にわたって膜圧(「TMP」)が存在する。流体の圧力差によって患者ループ12から流体が引き出され、透析器の膜28を通過して再生ループ14に入る。この流体圧力差は、例えば限外濾過液ポンプ19を用いて再生ループ14内の流体の一部を排出することによって再生ループ14から流体を除去することにより維持することができる。限外濾過液ポンプ19によって再生ループ14から除去される流体の量または速度が、患者ループ12から透析器の膜28を通過して再生ループ14へ移動する流体の量もしくは速度を決定する。この量または割合は、患者16から除去されて患者ループ12に入る流体の量もしくは速度と等しい。
【0107】
吸収剤カートリッジまたは吸収剤容器32は、透析液から特定の化合物を吸収する物質を含んでいる。例えば、吸収剤カートリッジ32内の特定の吸収剤は、尿素、クレアチニン、尿酸、および他の代謝副産物のような尿毒症毒素を吸収することができる。これらの望ましくない老廃物を除去することにより、吸収剤カートリッジ32は、少なくとも部分的に透析液を再生する。吸収剤カートリッジ32は、流体の入り口34および流体の出口36を有する本体を含む。本発明による1つの吸収剤カートリッジ32は、第1のウレアーゼの層、第2のリン酸ジルコニウムの層、第3の酸化ジルコニウムの層および第4の炭素の層を含む4つの材料層を含む。カートリッジ32の内部は、入り口34から内部に入る流体が第1の層、第2の層、第3の層、第4の層、最終的に出口36を通って流れる(好ましくは上方に且つ均等に)ように構成ならびに配列がなされている。
【0108】
吸収剤カートリッジ32には、透析液から特定の溶質を選択的に除去する材料を用いることもできる。選択性を有する材料は、尿素を選択的に除去することのできる結合剤もしくは反応性吸収剤、リン酸塩および/またはその類似物を選択的に除去することのできる結合剤もしくは反応性吸収剤材料を含むことができる。溶質、特に尿素を選択的に除去することのできる材料の使用は、本発明のシステムの洗浄効率を向上させ、それにより効果的治療に必要な透析液の量を最小化することができる。
【0109】
結合剤材料のような溶液から溶質を選択的に除去することのできる材料は、例えば、溶液中の尿素、クレアチニン、他の類似の代謝老廃物および/またはその類似物のような窒素含有化合物を除去することのできるポリマー材料を含む種々の適した異なる材料を含むことができる。一般に、これらの種類の材料は、尿素または他の類似の溶質と化学的に結合する官能基を含む。
【0110】
例えば、各々が本明細書に参考として組み込まれる米国特許第3、933、753号および第4、012、317号は、化学的に尿素を結合する働きをすることのできるフェニルグリオキサールを含むアルケニル芳香族ポリマーを開示している。一般に、フェニルグリオキサールポリマー材料は、例えば、米国特許第3、933、753号および第4、012、317号に開示されている、ニトロベンゼン中で行われるアセチル化に続くアセチル基のハロゲン化ならびにジメチルスルホキシドによる処理を介して製造される。溶液から尿素のような溶質を選択的に除去することのできるポリマー材料の別の例には、参考として本明細書に組み込まれる米国特許第4、897、200号に開示されている、ニンヒドリンとして一般に知られたトリカルボニル機能を含むポリマー材料が含まれる。しかしながら、本発明は先に論じた溶液から尿素のような溶質を選択的に除去する任意の適した種類の材料または材料の組み合わせを含むことができることを理解されたい。
【0111】
透析液から特定の物質を吸収することに加えて、吸収剤カートリッジ32は、他の方法で再生ループ14内の透析液を変更することもできる。例えば、上に述べた吸収剤カートリッジ32内の材料またはカートリッジ32に追加された追加材料は、カートリッジ32を通過する流体のpHを変更することができる。一実施形態では、再生ループ14内の透析液のpHは、生理的レベルを維持する必要に応じて変更される。1つの吸収剤カートリッジ32が、参考として本明細書に組み込まれる、「Method and Composition for Removing Uremic Toxins in Dialysis Processes」と題する米国特許出願第09/990、673号にさらに詳細に説明されている。
【0112】
吸収剤カートリッジ32は、透析液溶液から溶質を除去することのできる吸収剤材料に加えて多くの成分を含むこともできる。例えば、洗浄カートリッジは、透析溶液からナトリウム、カリウムなどのような電解質の全てまたは一部分を除去する機能を有することができる。この場合、透析液が洗浄された後にそれを補給するために溶液中に追加の電解質源が必要となり得る。本カートリッジは、用いられる吸収剤材料の種類に応じて、システム内に重炭酸イオンなどを放出するように構成することもできる。これにより、透析液のpH調節を容易にすることができる。必要に応じ、カートリッジをフィルタ処理して蛋白質、粒子状物質などの構成物質がカートリッジから透析液内へ浸出または流出するのを防止することができる。
【0113】
患者16から除去された限外濾過液(余剰水分)は、限外濾過液を排液バッグ38または他の排液手段に排液することにより透析システム10から除去することができる。一実施形態では、限外濾過液ポンプ19が、透析器26の出口端で、再生ループ14からの流体を、バルブ40および42を通じて排液バッグ38へ除去し、ここでこの流体は、透析器26によって患者ループ12から除去された老廃物および余剰水分を含む。排液ポンプ19は、所望に応じて、再生ループ14からの流体を持続的にまたは間欠的に(例えば、バッチ操作)除去することができる。
【0114】
再生ループ14内の透析溶液は、限外濾過液と共にシステムから除去される。その結果、濃縮透析液が濃縮液容器44内に供給され、再生ループ14に必要な化合物が供給される。容器44からの濃縮液は、再生ループ14内の透析液と混合され、透析液に化合物を加える。一実施形態における濃縮液はまた、患者16に供給される他の化合物、例えば電解質も含んでいる。濃縮液ポンプ46およびバルブ48は、濃縮液容器44から再生ループ14へ選択的にポンプで濃縮液を輸送するために設けられている。濃縮液は、再生ループ14内の透析溶液の再生に寄与する。
【0115】
一実施形態では、患者ループ12内の流体と再生ループ14内の流体の両方ともがそれらのそれぞれのループを通して持続的に再循環されるが、所望であれば、本明細書において集合的に「制御装置」(図示せず)と呼ばれるコンピュータ、プロセッサ、またはマイクロプロセッサによって種々の流体ポンプを制御して、それらのそれぞれの流体を間欠的にポンプ輸送することができる。
【0116】
一実施形態における透析システム10は、閉鎖型の無菌システムである。透析システム10の周囲の環境からの空気、湿気および流体は、患者ループ12または再生ループ14内に入ることができない。透析システム10は、流体(限外濾過液のような)および空気が流体ループ12、14を出ることを許容せず、流体(濃縮液のような)は、制御された状況下で流体ループ12、14に追加される。透析システム10は、患者ループ12および再生ループ14の周囲環境との制御されない接触を防止するように設計されている。
【0117】
図1に、透析システム10内のガス分離器50の一例を概略的に示す。本明細書では、用語「ガス」は、本明細書中で、空気、二酸化炭素(「CO」)および流体ループ12ならびに14内に混入することのできる何らかの他の種類のガスを含む一般的なガスを含むように使用される。再生流体ループ12および14は、様々な理由で空気を蓄積する可能性がある。例えば、流体ループ12および14がシステム10を流体でプライミングする前に空気を含み得るが、もしくは保存容器が流体ループ12ならびに14内に空気を導入するかもしれない。吸収剤カートリッジ32は、COを生成し得且つCOガスをループ12および14内に導入し得る。患者16も、透析液に含まれてループ12および14に入る特定のガスを生成することができる。
【0118】
ガスを流体ループ12および14から除去することが望ましい。ガス分離器50は、再生ループ14内の流体から含まれているガスを除去し、ガスを透析システム10の外部へ排気する。このようにして、ガスは、再生ループ14からパージされる。ガス分離器50は、一方向の排気口を備える。すなわち、それは、ガスが流体ループ12および14から大気へ出ることを可能にするが、流体ループ12ならびに14の外部のガスがループに入るのを防止する。
【0119】
図3に示す一実施形態では、図1のガス分離器50および吸収剤カートリッジ32は、単一の装置102に組み合わせられている。ガス分離器50/吸収剤カートリッジ32の組み合わせの一例が、上に言及した「Method and Composition for Removing Uremic Toxins in Dialysis Processes」と題する特許出願第09/990、673号に示されている。しかしながら、図1に示すように、ガス分離器50は、別個のシステム構成要素であってもよいし、または吸収剤カートリッジ32以外のシステム構成要素に組み込んでもよい。
【0120】
ガスを患者ループ12からパージすることもまた望ましい。一実施形態では、大気へ排気する付加的なガス分離器(図示せず)を患者ループ12内に設けることができる。別の実施形態では、ガスは、例えばライン51を介して患者ループ12から除去し得、再生ループ14内のガス分離器50に供給し、大気へ排気することができる。
【0121】
一実施形態では、システム10内のガスを検出するために、1つまたはそれ以上のガスセンサ52が、患者ループ12および/もしくは再生ループ14に沿った所望の位置に設けられる。一実施形態では、ガスセンサ52は、ループ12および14のガス含有量を監視するシステム制御装置と電気的に接続しているか、または他の方法でシステム制御装置と通信する。本制御装置は、ガスに応じて、流体の流れを停止する機能、流体の流れの方向を変える機能、またはガスを除去する機能などの任意の所望の機能を実行するようにシステムを制御することができる。ガス分離器50は、ガスを流体から分離する当業者に既知の任意の適した装置であり得る。分離器50のようなガス分離器は、システム制御装置によって制御されることなくガスを分離して排気するために用いることができる。一実施形態では、図に示すように、ガス分離器50は、ガスを大気へ排気せずに、吸収する。
【0122】
図1に概略的に示すように、一実施形態では、透析システム10は、流体ヒータ54を含む。流体ヒータ54は、患者ループ12内の流体を所望の温度に加熱して該流体を患者16に供給する。流体ヒータ54はインラインヒータ(連続流ヒータ)であり、流体がヒータ54を連続的に流れる際に、該流体を所望の温度に加熱する。別の実施形態では、インラインヒータ以外のヒータ、例えばバルクヒータを用いることができる。図1には、流体ヒータ54は、患者ループ12内の患者16への流体供給部分に示されている。しかしながら、所望であれば、流体ヒータ54は、患者ループ12および再生ループ14内の他の位置に配置することができる。別の実施形態では、ループ12および14のうちの1つもしくは両方が1つまたは複数のヒータ54を含む。
【0123】
一実施形態では、流体ヒータ54は、赤外線ヒータ56およびプレートヒータ58を含む二重ヒータである。そのような二重ヒータ54の一例が、参考として本明細書に組み込まれる、「Medical Fluid Heater Using Radiant Energy」と題する特許出願第10/051、609号に開示されている。赤外線ヒータ56およびプレートヒータ58の両方とも、ヒータ56、58を連続的に通過する医療用流体を加熱するインラインヒータである。放射エネルギーまたは赤外線ヒータ56が赤外線エネルギーを放出し、該赤外線エネルギーが患者ループ12内の流体に向けられてこの流体によって吸収され、それにより流体が加熱される。放射エネルギーまたは赤外線ヒータ56は、一次ヒータもしくは高熱容量ヒータであり、比較的大量の低温流体を短時間で所望の温度に加熱することができる。
【0124】
プレートヒータ58は、赤外線ヒータ56に比較して相対的に低いヒータ容量を有する二次ヒータまたは維持ヒータ(maintenance heater)である。プレートヒータ58は、電気抵抗を利用してプレートの温度を上昇させ、次いで該プレートの近傍を流れる流体を加熱する。
【0125】
高熱容量ヒータと低熱容量ヒータとの両方を含むヒータ54は、種々の流体加熱要件に対応する効率的なヒータ設計を提供する。例えば、放射ヒータまたは赤外線ヒータ56は、初期システム充填時などに透析システム10に供給される低温の透析液を迅速に加熱する(高熱エネルギー所要量)のに、または透析治療中に重大な熱損失があった場合に特に有用である。流体が低温の周囲温度で保存されている場合、初期システム充填時の透析液の温度は、5℃〜10℃のように極めて低い可能性がある。
【0126】
プレートヒータ58は、例えば透析治療中の通常量の熱損失のために患者に供給中の流体の所望の温度(低熱エネルギー所要量)を維持するのに特に有用である。赤外線ヒータ56は、少量の流体露出空間に高い熱所要量を提供し、一方、プレートヒータ58は、熱の維持に必要な熱所要量を提供し、赤外線ヒータまたは放射ヒータ56に比較して必要な入力エネルギー量が少ない。さらに、赤外線ヒータ56とプレートヒータ58の両方を共に用いて流体を加熱する場合、ヒータ54のヒータ容量が増大される。
【0127】
赤外線ヒータ56およびプレートヒータ58は、互いに対して種々の構成で配列することができる。一実施形態におけるヒータ56および58は、流体がヒータのそばを順次通過する(例えば、最初に放射ヒータまたは赤外線ヒータ、次いでプレートヒータ)ように配列される。別の実施形態では、流体は、これらのヒータのそばを同時に(同時に両方のヒータを)または逆の順序で通過する。ヒータ56および58のそばを通過する流体の流路は、ヒータ56および58の両方のための共通の流路であってもよく、各ヒータ56および58用の独立した流路を含んでいてもよい。放射または赤外線による電気抵抗加熱方式に加えて、対流加熱方式、誘導加熱方式、マイクロ波加熱方式および高周波(「RF」)加熱方式のような他の種類の加熱方式を用いてもよい。
【0128】
一実施形態では、患者ループ12および再生ループ14の一方または両方に沿った所望の位置に温度センサが設けられる。温度センサは、様々な流体温度を監視し、ヒータ54で流体温度を制御するシステム制御装置に接続される。赤外線ヒータ56およびプレートヒータ58のような2つまたはそれ以上のヒータが透析システム10に備えられる場合は、一実施形態において、システム10は、各ヒータを個々に制御することができるように、各ヒータに対して別個の温度センサを含むことができる。
【0129】
一実施形態における透析システム10は、種々のパラメータを監視するための様々な他のセンサをも含む。例えば、流体圧力センサ60および62が、図1の患者ループ12内に備えられている。流体圧力センサ60および62は、制御装置に電気的に連結されるかもしくは他の方法で制御装置と通信し、その位置におけるそれぞれの流体圧力を示す信号を提供する。圧力センサ60および62からの信号に基づいて、制御装置が流体ポンプおよびバルブを作動させ、患者16を往復して走るループ12内の所望の流体圧力を獲得および維持する。
【0130】
一実施形態では、圧力センサ60および62は、非侵襲性圧力センサである。すなわち、圧力センサ60および62は、医療用流体すなわち透析液と物理的に接触しない(且つおそらくは汚染しない)。圧力センサ60および62は、医療用流体の圧力を測定し、閉鎖流体システム内の定流を維持するのに役立つ。もちろん、図1には示していない流速センサ、圧力計、流量計、または圧力調整装置のような他の流体装置を、任意の適した量で、患者ループ12および再生ループ14のいずれかもしくは両方の任意の所望の位置に備えることができる。
【0131】
図示した実施形態では、システム10は、アンモニアセンサ64を含む。アンモニアセンサ64は、流体中のアンモニア(NH3)および/またはアンモニウム(NH4)の濃度を測定する。アンモニアおよびアンモニウムは、ウレアーゼによる尿素触媒反応の副産物として再生吸収剤カートリッジ32によって生成される。アンモニアおよびアンモニウムは、通常は吸収剤カートリッジ32内の陽イオン交換体によって除去される。しかしながら、透析システム10は、アンモニア/アンモニウム濃度に対して流体をセンサ64で監視し、アンモニアおよびアンモニウムが除去されつつあり且つ患者16にとって安全な閾値レベルより下に留まっていることを確認する。溶液中のアンモニアおよびアンモニウムの総量は、主としてアンモニアまたはアンモニウム、pH、および溶液温度の3つのパラメータによって求められる。これらのパラメータを測定することにより(またはpHを所望のレベルに調整するなど、1つのパラメータを調整することにより)、透析液中のアンモニアおよび/またはアンモニウムの総量を求めることができる。
【0132】
本発明による1つのセンサ64が、参考として本明細書に組み込まれる、「Ammonia and Ammonium Sensors」と題する特許出願第10/024、170号に記載されている。センサ64は、水溶液のアンモニアおよびアンモニウムの総含有量を測定する。センサ64は、疎水性アンモニア感知膜、pH指示薬またはpH調整剤、温度センサおよび光学式センサを含む。制御装置に格納されたアルゴリズムが、3つのパラメータ(例えば、NH3、pHおよび温度)から合わされたアンモニアおよびアンモニウムの総含有量を計算する。高度に水溶性のアンモニアガスは、侵入拡散するアンモニアガスの量に基づいて色を変える疎水性感知膜によって計量される。多波長光学式センサは、透明な窓を通して膜の色を連続的に測定する。センサ64は、光学式センサを用いて流体経路の内部に配置された使い捨て膜の色の変化を監視することにより、貫入法によらない測定を達成する。
【0133】
図1に示す実施形態では、透析システム10はまた、1つまたはそれ以上の流体流測定装置もしくはループ12および14のうちの1つ或いは両方を通して間欠的または累加的のいずれかでポンプ輸送される医療用流体の量を測定する流量センサ66をも含む。一実施形態では、流体流測定装置66は、患者ループ12によって患者16に供給される流体の量を測定する。付加的にまたは代替的に、再生ループ14および/または限外濾過液排出ラインは、1つまたはそれ以上の流体流測定装置66を用いて患者16から除去された限外濾過液の量を測定する。オリフィスプレート、質量流量計または他の当業者に既知の流れ測定装置のような様々な種類の流体量測定装置もしくは流速測定装置を透析システム10と共に用いることができる。
【0134】
図1に、ポンプチャンバのようなチャンバを通してポンプで送られる流体の量を測定するキャパシタンスセンサを含む流れ測定装置または流量感知装置66(ポンプ19、24および30を取り囲んで示す装置66を示す破線)の一実施形態を概略的に示す。容量性流体センサ66は、参考として本明細書に組み込まれる、「Capacitance Fluid Volume Measurement」と題する特許出願第10/054、487号にさらに詳細に開示されている。
【0135】
2つのコンデンサープレート間のキャパシタンスCは、kが誘電率、Sが個々のプレートの表面積、dがプレート間の距離である関数-C=kx(S/d)によって変化する。
プレート間のキャパシタンスは、Rが既知の抵抗、Vがコンデンサープレートの両端で測定される電圧である関数1/(RxV)によって比例的に変化する。
【0136】
キャパシタンスセンサ66の一実施形態では、センサは、ポンプチャンバと協働する。一実施形態におけるポンプチャンバは、一定の既知の量を規定するシェルまたは壁、およびシェル間で作動する一対の可撓性の膜を含んでおり、該膜が膨張して流体を満たし、接触して流体を排出する。キャパシタンスセンサ66は、ポンプチャンバの対向する両側に配置されたコンデンサープレートを含む。チャンバまたは流体ポンプ内の流体の量が変化する(すなわち、ポンプチャンバが満たされるかもしくは空になる)につれて、キャパシタンスプレート間で変化する流体の誘電特性が変化する。例えば、定容量チャンバのシェル内で透析液が空気と入れ代わる(または空気が透析液と入れ代わる)際に、透析液と空気との組み合わせられた誘電率が変化する。この全体的誘電率の変化が2つのプレート間のキャパシタンスの変化に影響を及ぼし、それによってキャパシタンスプレートの両端の電圧に変化が生じ、該電圧の変化を電圧感知装置で感知することができる。制御装置は、電圧感知装置で電圧の変化を監視し、キャパシタンスの変化をチャンバを通してポンプで送られる流体の量と相関させる(センサのキャリブレーション後)。
【0137】
別の実施形態では、チャンバまたはポンプチャンバの容積は、例えばチャンバのシェルの一方または両方の移動によって変わり得る。この実施形態では、コンデンサープレート間のキャパシタンスは、プレート間の距離dを変えることによりそして/またはプレートの1つまたはそれ以上の表面積Sを変えることにより変化し、ここで、1つの流体のみがコンデンサープレート間に常時存在するために、誘電率kは変化しない。測定装置66のさらなる代替的実施形態では、コンデンサープレート間のキャパシタンスCは、誘電率k、距離dおよび表面積Sの変更の任意の組み合わせまたは3つ全ての変更に基づいて変化する。
【0138】
制御装置は、提供された複数のチャンバの充填および排出のサイクルによるセンサ66からのキャパシタンスの変動から多数の電圧信号を収集し、ここで、制御装置は、或る長さの時間にわたってポンプで送られた医療用流体の総量またはポンプのサイクル数を計算する。キャパシタンスセンサ66は、医療用流体、例えば透析液がポンプチャンバに流入またはポンプチャンバから流出するのをリアルタイムベースで、且つ非侵襲的な方法で監視する。
【0139】
キャパシタンスセンサ66は、透析システム10が患者16に供給される流体の量を所望の量および流速に維持することを可能にする。患者16への流体の流れを所望のレベル内に維持することは、腹膜透析治療に対しては特に好都合である。
【0140】
また、患者に供給される流体を生理学的レベルに維持することも望ましい。流体のパラメータを感知および/または調整することのような生理学的制御は、患者ループ12および再生ループ14を含む透析システム10の様々な位置において行うことができる。例えば、上述したように、吸収剤カートリッジ32はpHセンサを含むことができ、該pHセンサが再生ループ14内の流体を調整し、次いで、透析器を介して患者ループ12内の流体を所望の生理学的レベルになるように調整する。
【0141】
(二重管腔コネクタ)
ここで図2を参照すると、本発明の二重管腔患者流体コネクタ20の一実施形態が、さらに詳細に説明されている。上述したように、二重管腔コネクタ20は、患者管腔に流体を供給するための管腔72および患者から流体を除去するための別個の管腔74を有するハウジング70を含む。各々が管腔72および74のうちの1つを有する別個のハウジングを提供してもよい。患者流入管腔72は、患者ループ12の患者流入チューブ76に接続している。同様に、患者流出管腔74は、患者ループ12の患者流出チューブ78に接続している。ハウジング70によって規定されるキャビティ82を密封するために、除去可能なエンドキャップ80が提供されている。キャビティ82は、管腔72および74を取り囲むかまたはそれらに隣接しており、二重管腔カテーテル22(図1)がキャビティ82内に入って管腔72および74と結合するための接続領域を提供する。
【0142】
一実施形態におけるハウジング70、管腔72および74ならびにエンドキャップ80は、例えばプラスチックのような医療用途に適した何らかの材料で製造される。一実施形態では、管腔のうちの1つ、例えば患者流入管腔72は、他の管腔よりもさらにキャビティ82内に延びており、それが、カテーテル22へのコネクタ20の結合を促進するのに役立っている。別の実施形態では、管腔72および74の両方が、同じまたは異なる距離だけキャビティ82内に延びている。
【0143】
透析システム10、特に患者ループ12は、ハウジング70と密封して係合するエンドキャップ80でプライミング、例えば充填することができる。矢印84および86は、二重管腔ネクタ20を通って流れる再循環流体を比喩的に示す。従って、システム10は、流体接続なくして患者に通じることができる。また、システム10は、患者流入チューブ76と患者流出チューブ78との間に患者バイパスラインを含み、流体が患者16を迂回しながら患者ループ12を通って流れることを可能にすることができる。エンドキャップ80は、例えば引っ張って外すかまたはねじって外して除去され、キャビティ82および患者流入管腔72ならびに患者流出管腔74がそれぞれ露出され、二重管腔カテーテル22に接続される。
【0144】
一代替的実施形態では、患者流体ループ12は、二重管腔カテーテル22または2つの別個の単管腔カテーテルに直接接続する。さらなる代替的実施形態では、コネクタ20は、2つの別個の単管腔カテーテルに接続するように適合されている。さらに別の代替的実施形態では、2つの別個のコネクタが、単管腔カテーテルを患者流体ループ12の入出ラインに連結している。他の構成も、本発明によって企図される。
【0145】
(流れのバランスのとれた代替的二重ループシステム)
ここで図3を参照すると、患者に透析治療を施すためのシステム100が示されている。図3のシステム100は、図1のシステム10と同じ多くの構成要素を含む。例えば、システム100は、2つのループ、患者ループ12および再生ループ14を含む。患者ループ12は、医療用流体、透析液または血液を患者16を往復して送る。腹膜透析の実施形態では、患者ループ12および再生ループ14は、最初に透析液バッグ18からの透析液で充填ならびにプライミングされる。患者ループ12は、図2に関連して上述した多管腔患者流体コネクタ20によって患者16に流体接続する。腹膜透析の実施形態では、多管腔コネクタ20は、二重管腔カテーテル22に接続する。血液透析の実施形態では、患者ループ12は、多管腔血液透析針または他の患者血液アクセス装置に流体接続する。
【0146】
システム100は、複数の患者流体ポンプ24aおよび24bを含む。患者流体ポンプ24aおよび24bのような複数のポンプを用いることによって患者ループ12内の患者16を往復する流体のより安定した流れが生成されることが見出された。例えば、流体は、流体ポンプ24bが流体を充填している間に流体ポンプ24aから出ていることができる。一実施形態では、流体の流れのバランスをとるためにバランスチャンバを設けることができる。
【0147】
システム100は、透析器の膜28を有する透析器26を含む。患者流体ループ12内の老廃物および余剰水分を含んだ使用済み透析液(または血液透析の実施形態では血液)は、透析器26を通して再循環される際に浄化または再生される。老廃物は、患者ループ12から透析器の膜28を通過して再生ループ14へ移動する。再生ループ14内では、流体ポンプ30、30が、吸収剤カートリッジ32およびガス分離器50を含む一体型装置102にポンプで持続的に再生透析液を通過させる。システム100は、二つの部分からなる透析液流体ポンプ30を含み、再生ループ14内にバランスのとれた流れを提供する。すなわち、流体ポンプ30のうちの1つは、他方のポンプ30が流体を充填されている間に流体を空にされている。一実施形態では、流体の流れのバランスをとるためのバランスチャンバを設けることができる。
【0148】
システム100は、排液バッグ38に限外濾過液および他の流体を排出させることができる。限外濾過液ポンプ19は、例えばバルブ40および42を通じて、患者ループ12または再生ループ14からの限外濾過液および流体をポンプで排液容器38に排出する。システム100はまた、透析治療の評価のために24時間収集バッグ39に流体を収集する機能をも提供する。
【0149】
一実施形態では、患者流体ポンプ24aまたは24bの1つは、透析液バッグもしくは透析液容器18あるいは最終バッグ21のいずれかから透析液流体を吸引する。最終バッグ21は、透析治療の終了直前に患者の腹膜腔に配置されるある量の流体を含む。最終バッグ21からの透析液を腹膜腔内に有する患者は、システム100を外し、日常活動を行うことができる。次回の透析治療は、最終バッグを患者から排出させる工程で開始する。
【0150】
システム100は、濃縮液容器44、濃縮液ポンプ46およびバルブ48を含む。濃縮液ポンプ46は、濃縮液容器44から再生ループ14、例えば一体型吸収剤カートリッジの出口36および排気口102から出る流体ラインへ濃縮液を提供する。濃縮液容器44は、電解質および浸透物質のような必要な化合物をシステム100の再生ループ14に供給し、それらの成分の所望の濃度を維持する。
【0151】
濃縮液容器44に入れた濃縮液に加えて、システム100は、再生ループ14を通して透析液を再生し、外部の供給源からの流体を必要としない。従って、本明細書に説明するシステムの各々がそうであるように、システム100は、外部に対して完全に閉鎖されている。従って、本発明のシステムは、「閉鎖ループシステム」である。患者ループ12および再生ループ14の閉鎖ループの性質により、ループが外部の汚染物質を吸収または取り込むことなく持続的に流れることが可能となる。本発明の閉鎖ループシステムは、環境由来の汚染を防止することにより無菌性をも維持する。
【0152】
システム10と同様に、システム100は、空気およびCOのようなガスを経時的に生成し得る。システム100は、システム100内に存在する可能性のある種々のガスを検出する複数のガスセンサ52を提供する。システム100では、ガスセンサ52は、ガスを患者ループ12内の流体から分離する空気分離器に備えられる。ガス分離ライン51は、患者ループ12から分離されたガスを吸収剤カートリッジおよびガス分離器の一体型装置102の入り口側34へ送り込む。次いで、ガスは、ガス分離器50によってシステム100の外へパージされる。ガス分離器50は、汚染物質がシステム100に入るのを防止することにより、システム100の閉鎖ループ構造を維持する。例えば、ガス分離器50は、ガスがシステム100から出ることを可能にするが汚染物質がシステム100に入るのを防止する微生物フィルタを含むことができる。別の実施形態では、患者ループ12からのガスは、患者ループ12での別個のガスパージ装置によってシステム100からパージすることができる。一実施形態において、ガスセンサ52は、制御装置(図示せず)に電気信号を送信することができる。制御装置がガスを検出する場合、制御装置によって1つまたはそれ以上のバルブが開けられ、ここでループ12からのガスは、一方向排気口に供給され、システム100からパージされる。
【0153】
システム100は、上述したように、一実施形態では赤外線ヒータまたは放射ヒータ56を含むインラインヒータ54およびプレートヒータ58をさらに含む。一実施形態では、ヒータ54は、空気がシステムからパージされる際にポート59から出ることを可能にする空気分離器を有する。
【0154】
システム100は、透析器26内の膜28両側の圧力差を一定にするオリフィス装置61をさらに含む。すなわち、オリフィス装置61は、患者ループ12内の流れを制限して、透析器26の患者側と再生側との間に圧力差を生成することができる。圧力勾配または圧力差は、患者ループ12の方が再生ループ14よりも高い流体圧力を有する膜28の両側で生じる。オリフィス装置は、固定されたまたは可変の流れ制限装置であることができ、一定のまたは可変の圧力差を提供することができる。また、オリフィス装置61は、制御装置に電気的に接続され得それによって操作することができ、該制御装置は、必要な場合、オリフィス装置を作動させ得る、例えば開けるまたは閉じることができる。
【0155】
オリフィス61によって生成される膜28両側の圧力差(患者ループ12内のより高い圧力および再生ループ14内のより低い圧力)は、システム100外部の大気圧力に対してより高い圧力を再生ループ14内に維持するのを支援する。再生ループ14内の外部大気圧力に対する陽圧は、外気が周囲環境から空気孔50を通って再生ループ14内へ引き込まれないこと、すなわち空気はシステム100から出ることのみができシステム100内に入ることはできないことを保証するのに役立つ。従って、オリフィス61は、システム100の閉鎖ループの性質に寄与する。
【0156】
システム100は、センサ63、65および67のような多くの温度センサを備えており、該センサが、患者ループ12内の様々な点における温度を監視する。制御装置は、感知された温度を使用して患者ループ12内の所望の温度を維持する。図に示すように、温度センサ63は、ヒータ54の位置にまたはヒータ54上に配置され、それによりシステム100が構成ヒータ56および58に極めて近接する点で温度を感知してヒータ56、58を制御することが可能となる。
【0157】
システム100は、患者流体ループ12に沿った様々な点に存在する1つまたはそれ以上の圧力センサ60および62をさらに含む。圧力センサ60および62は、過度の陽圧または陰圧が患者に印加されるのを防止するために用いることができる。システム内の圧力は、例えば、患者流体ポンプ24a、24bの起動によって制御することができる。
【0158】
システム100はまた、アンモニア/アンモニウムセンサで吸収剤カートリッジ32をも監視する。吸収剤カートリッジ32を出るサンプル流体をpH調整装置71を通る方向に向け、アンモニア/アンモニウム平衡バランスを特定のレベルに強制することができる。サンプル流体中のアンモニアおよび/またはアンモニウムの量は、センサ73によって測定される。従って、尿素からの変換後アンモニア/アンモニウムを除去するカートリッジ32の有効性を監視することができる。アンモニアおよび/またはアンモニウムの濃度が閾値レベルに達する場合、システムは、信号を生成するか、もしくはシャットダウンなどの他の措置を取り、カートリッジ32を交換する必要があることを示す。
【0159】
もちろん、システム100は、所望に応じて、他の流体パラメータを監視し得、適切な措置を取ることができる。また、サンプル流体は、システム100内の任意の所望の位置で採取することができる。さらに、患者ループ12および再生ループ14内の流体は、サンプルを採取せずに、直接試験または監視することができる。
【0160】
システム100はまた、一実施形態では2つのコンデンサープレート間に生じるキャパシタンスの変化を感知するキャパシタンスセンサである流体量センサ66をも含む。コンデンサープレートは、患者ループ12のポンプ24、再生ループ14のポンプ30および流体容器につながるポンプを取り囲む。ポンプ24a、24b、ポンプ30、ポンプ19およびポンプ46の各々に、本発明のキャパシタンス量センサ66を備えることができる。センサ66の各々が、制御装置(図示せず)へ別個の信号を送信し、該制御装置が、それぞれのポンプのポンプチャンバを通って流れる流体の量を測定および監視する。別の実施形態では、任意の適した流体量測定装置を用いることができる。
【0161】
(ガスを分離する代替的二重ループシステム)
ここで図4を参照すると、本発明のシステム110が示されている。図4のシステム110は図3のシステム100に類似しており、閉鎖ループシステムである。システム110は、前述したシステム100の種々の構成要素を含む。システム110は、ポンプ30と共に作動する一対のチャンバ75によって作り出される一対のバランスのとれた(balanced)透析液流体ポンプを有する再生ループ14を有する。各バランスチャンバ75は、膜で分離された一対のチャンバを含む。ポンプ30のうちの1つがバランスチャンバ75の一方のチャンバに医療用流体を充填する場合、膜が他方のチャンバに向けて押され、それにより流体がそのチャンバの外に押し出される。このようにして、膜が再生ループ14内の透析液流体の流れのバランスをとる働きをし、その結果、限外濾過液ポンプ19によって除去される流体と入れ代わるために必要な流れを除き、透析器の膜を通過する流体の正味の流れがなくなる。
【0162】
図3のシステム100と比較して図4のシステム110の別の相違点は、ガス分離器50である。システム110の図示の実施形態におけるガス分離器50は、吸収剤カートリッジ32から独立している。ガス分離器50は、患者流体ループ12内のヒータ54の出口59から走る通気ライン51を通じてガスを受け取る。図に示すように、1つまたはそれ以上のガスセンサ52が、通気ライン51内のガスを監視する。
【0163】
(使い捨てカセット)
ここで図5を参照すると、本発明に従う使い捨てカセット120を有する透析システムが示されている。図3のシステム100のこのバリエーションでは、システム120のポンプ30が、アキュムレータA4およびA6から流体を吸引し、アキュムレータA3およびA5内に排出する。アキュムレータA3〜A6は、ポンピング中の圧力変動を抑制することによって透析液の流れをスムーズにする。一実施形態では、上述した多くの流れの論理および流れ装置の少なくとも幾つかの部分が使い捨てカセット120に備えられている。一実施形態では、カセット120は、種々の流体流チャネルを有する硬質プラスチックの本体122および本体122内に規定された流体チャンバを有する。可撓性の膜が、図5に示すカセット本体122の正面に結合されている。膜は、流体チャネルおよび流体チャンバを覆いかつチャネルおよびチャンバの周りで本体122に密封されている。従って、膜は、流体流経路および流体チャンバの壁を形成している。同様に、カセット本体122の背面も膜で覆うことができる。
【0164】
一実施形態では、本体122は、高さが約12インチ、幅が約8インチ、深さが約1インチである。本体122によって規定される流れ構成要素および流れラインは、他のシステム構成要素に流体接続する。また、ポンプ作動装置、バルブ作動装置、センサおよび他のシステム構成要素は、カセット120と相互作用することができる。
【0165】
具体的には、本体122は、閉鎖された患者ループ12および再生ループ14の一部を提供する。患者16の腹膜腔内に挿入される二重管腔カテーテル22は、使い捨てカセット120の本体122外部の二重管腔コネクタ20に接続する。患者ループ12は、透析器26の出口124から本体122によって規定されるバルブチャンバ126へ延びる。患者流体ループ12は、患者流体ポンプ24に流体接続する一連のマニホールドおよび流体流路を含む。患者流体ポンプ24は、透析液をポンプで患者16に通して透析器26の入り口128へ送る。
【0166】
患者流体ループ12は、使い捨てカセット120の本体122によって規定される経路を介して種々の医療用流体バッグにも接続する。例えば、使い捨てカセット120の外部に維持される透析液流体バッグ18は、患者流体ループ12につながるライン130に流体接続する。同様に、最終バッグ21も本体122によって規定されるラインを介して、患者流体ループ12と流体連通するライン130に接続する。本体122によって規定されるライン130も限外濾過液排出容器38と流体連通する。
【0167】
使い捨てカセット120の本体122はまた、濃縮液ポンプ46および限外濾過液ポンプ19用のチャンバをも規定する。濃縮液ポンプ46は、外部の濃縮バッグ44に流体接続する。上述した24時間収集バッグ39は、排液容器38と共に、限外濾過液ポンプ19に通じる本体122によって規定される流体ラインに流体接続する。
【0168】
使い捨てカセット120は、流体の流路を提供し、且つチャンバおよび上述した流体の流れ構成要素用の他の種類の流体オリフィスを規定する。具体的には、使い捨てカセット120の本体122は、患者流体ポンプチャンバ24および透析液流体ポンプチャンバ30を規定する。使い捨てカセット120は、ポンプのような流れ構成要素の機械的作業装置を含む別個の非使い捨てハウジングに取り付けられる。ポンプチャンバには、非使い捨てハウジングのポンププランジャに隣接して配置され且つそれによって駆動される可撓性の膜(図示せず)により1つの側部が限られている。
【0169】
カセット120の少なくとも1つの側部は、可撓性の、例えばプラスチックの膜(図示せず)で覆われている。使い捨てカセット120は、キャビティまたは非使い捨てハウジング(図示せず)の一部にプラグ接続する。ハウジングは、本明細書に記載するポンプの各々、例えば、患者ポンプ24、透析液ポンプ30、限外濾過液ポンプ19、および濃縮液ポンプ46用の作動装置を提供する。ハウジングはまた、カセット120の本体122によって規定される種々のバルブチャンバ、例えばバルブチャンバ126用の作動装置をも提供する。流れ構成要素のうちのより高価な機械部品および電気機械部品、例えばポンプ作動装置およびバルブ作動装置は、ハウジング内に保持され且つ再使用される。
【0170】
使い捨てカセット120は、ポンプチャンバおよびバルブチャンバのような無菌の使い捨て流体経路を提供する。非使い捨てハウジングの作動装置は、ポンプチャンバおよびバルブチャンバの可撓性プラスチック膜を押圧し、流体がシステムを通るのを強制するかまたは可能にする。ポンプ作動装置が膜を押圧するのを停止する場合、膜はその通常の形状に戻り、もはやポンプチャンバ内の流体に力を加えることはない。ポンプチャンバは、膜が引き戻されている際に流体で満ちる。また、膜は、例えばポンプ作動装置または減圧によって積極的に引き戻すこともできる。このようにして、ポンプはサイクルを作っている。
【0171】
使い捨てカセット120の本体122はまた、アンモニア、アンモニウムまたはpHのセンサもしくは調整装置を格納するための取り付け領域の少なくとも一部分をも規定する。図示した実施形態では、使い捨てカセット120は、pH調整装置71およびアンモニア/アンモニウムセンサ73の使い捨て色測定膜(アンモニア/アンモニウム濃度に基づいて色を変化させる)を格納するための領域を規定し、ここでカセット120の本体122内の流体がセンサに流体接続することができる。アンモニア/アンモニウムセンサ64の光学式色読み取り装置は、非使い捨てハウジング(図示せず)内に配置され、該センサは、必要に応じて電力を受け取り得る。pH調整装置71の代わりにpHセンサが用いられる場合、pHセンサの再使用可能な部分もハウジング内に配置することができる。
【0172】
ハウジングはまた、インラインヒータ54をも備え、一実施形態では、上述の「Medical Fluid Heater Using Radiant Energy」と題する特許出願第10/051、609号に詳細に説明されている放射ヒータ56およびプレートヒータ58のうちのいずれか1つをも備える。さらに、ハウジングは、上述の「Capacitance Fluid Volume Measurement」と題する特許出願第10/054、487号に詳細に説明されている、流体量センサ66のコンデンサープレートのうちの1つを1つまたはそれ以上のポンプ作動装置の下に備える。
【0173】
図5のカセット120に戻ってこれを参照すると、カセット120は、流体を加熱するためのインラインの加熱用流体加熱路123を有する。加熱路123内の流体は、カセット外部のヒータによって加熱される。
【0174】
カセット120はまた、カセット120内の流体からガスを分離する1つまたはそれ以上のガス分離器125をも有する。ガス分離器125は、分離したガスをライン127を通じて排気口129へ送り込む。
【0175】
本発明の閉鎖ループシステムは、少なくとも1つの老廃成分が透析器26の膜28を通過して患者流体ループ12から再生ループ14へ移動することを可能にする。本体122の外側へ延びる患者ループ12は、本体122によって規定されるバルブチャンバ132に流体接続する。再生ループ14は、本体122によって規定されるマニホールド部分を含み、ポンプチャンバ30につながる。閉鎖ループシステムは、空気または他の流体がシステムに入るのを防止する。
【0176】
ポンプチャンバ30は、一体型装置102の吸収剤化学カートリッジ32およびガス分離器50に流体連通する。再生ループ14は、一体型装置102の出口36から延び、バルブチャンバ134を通って使い捨てカセット120の本体122に戻る。バルブチャンバ134から、再生された透析液が、ポンプチャンバ30を通って本体122によって規定されるマニホールドシステム内にポンプで供給される。
【0177】
ここで図6を参照すると、別の使い捨てカセット140を有する別の閉鎖ループシステムが示されている。本発明の使い捨てカセット140のこの実施形態は、多数の図5のカセット120と同じ流れ構成要素および流れチャンバを含む。しかしながら、カセット140は、1つの再生用ポンプ体30のみを含む。一般に、カセット140はカセット120よりも複雑性が少なく、本発明の使い捨てカセットを本明細書に記載する閉鎖ループ透析液再生システムの種々の実施形態に適合させることができることを示している。
【0178】
図5のカセット120と同様に、カセット140の少なくとも1つの側部は、可撓性の、例えばプラスチックの膜(図示せず)で覆われている。使い捨てカセット140は、種々のポンプ、例えば患者ポンプ24、透析液ポンプ30、限外濾過液ポンプ19および濃縮液ポンプ46の作動装置を備える非使い捨てハウジング(図示せず)にプラグ接続する。ハウジングはまた、カセット140の本体122によって規定される種々のバルブチャンバの作動装置をも備える。流れ構成要素のより高価な機械部品および電気機械部品(例えば、ポンプ作動装置)が、再びハウジング内に保持され、再使用される。上述したように、作動装置は、ポンプチャンバの可撓性プラスチック膜を押圧して流体をシステム内に強制的に流通させる。
【0179】
図5および図6の両方に示すように、使い捨てカセット120または140は、透析器26、吸収剤カートリッジとガス分離器との装置102ならびに充填バッグおよび廃液バッグのような幾つかの外部装置と共に完全な閉鎖ループシステムを提供する。再生システムが使用する唯一の補給流体または追加流体は、カセット120および140の本体122内の装置を密封する濃縮液バッグ44からの濃縮液のそれである。また、患者に接続されているシステム以外、流体および空気は、閉鎖ループシステムに入ることはできない。
【0180】
ここで図7を参照すると、本発明の再生システムの使い捨てセットの異なる物理的構成要素の概略図が示されている。使い捨てセットは、1回の透析治療に使用してその後廃棄されることを意図している。別の使い捨てセットは、次回の透析治療に用いられる。一実施形態における上述のシステム10、100および110の各々は、カセット120または140のような使い捨てカセットを含む。使い捨てカセット120または140は、ライン147を介して濃縮液バッグ44に接続するポート141を備える。本カセットは、ライン148を介して排液バッグ38に流体接続するポート142を備える。本カセットは、ライン149を介して最終バッグ21に流体接続するポート143を備える。本カセットは、ライン150を介して透析液バッグ18に流体接続するポート144を規定する。本カセットは、患者ライン151および152を介して二重管腔コネクタ20を往復するポート145および146をそれぞれ備える。
【0181】
一実施形態では、ライン147〜152の各々は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンまたはポリ塩化ビニル(「PVC」)などの可撓性、無菌性且つ不活性のプラスチックのような医療グレードのチュービングで作られている。一実施形態では、患者またはオペレータがバッグからラインを通ってカセット120または140へ移動する流体を見ることができるように、バッグおよびラインは透明である。ライン147〜152は、当業者に既知のいずれかの種類の医療用流体接続によってポート141〜146に接続する。一実施形態では、接続がクイックタイプ接続であり、患者またはオペレータは、ラインをその接続ポートから容易に除去することができる。
【0182】
使い捨てカセット120または140は、ガス分離器50または一体型装置102の少なくとも1つの出口ポート154に流体接続する少なくとも1つのポート153を含む。使い捨てカセット120または140は、吸収剤カートリッジ32または一体型装置102の少なくとも1つの入り口ポート156に流体接続する少なくとも1つのポート155を含む。使い捨てカセット120または140を吸収剤カートリッジ32、ガス分離器50またはそれらを含む一体型装置102に接続するラインは、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンまたはポリ塩化ビニルなどの可撓性、無菌性且つ不活性のプラスチックのような医療グレードのチュービングで作られている。
【0183】
(代替的二重ループシステム)
ここで図8を参照すると、代替的閉鎖ループ再生システム160が示されている。システム160は概略的に示されているが、システム160は、使い捨てカセット、流体ポンプ、種々のセンサ、バルブおよび制御装置などの上述した使い捨てセットを採用することができる。システム160は、患者流体ループ12および再生ループ14を含む。
【0184】
透析液が患者16の腹膜腔から除去される場合、溶液が活性炭および陰イオン交換体162を通過する。フィルタまたは交換体162の活性炭が、尿酸、クレアチニン、低分子量の有機体および中程度の分子量の分子を除去する。交換体162の陰イオン交換カラムは、リン酸塩を除去する。フィルタまたは交換体162を出た溶液は、溶液バッグまたは透析液バッグ18に入る。溶液バッグに入る透析液は、2つの可能な排出箇所を有する。1つの可能性は、ポート163から溶液バッグ18を出る段階と、フィルタ166に入る段階と、患者16の腹膜腔に戻る段階とを含む。別の可能性は、ポート165において溶液バッグ18を出る工程と、ナノフィルタ164に入る段階とを含む。システム160は、溶液バッグまたは溶液容器18を出る透析液流体を分割する。
【0185】
ナノフィルタ164は、上述した透析器26と同様に機能する。ナノフィルタ164は、膜を含む。ナノフィルタ164の膜は、殆どの電解質を受け入れない。すなわち、殆どの電解質が溶液バッグに戻ることができる。しかしながら、ナノフィルタ164は、殆ど全ての尿素および少量のナトリウムを膜を通して濾過し、上述の吸収剤カートリッジと同様の吸収剤システムカートリッジ32に入れる。上述の吸収剤カートリッジ32は、ナノフィルタ164の膜を通って浸透することのできる流体から尿素を吸収する。
【0186】
複数のポンプ(図示せず)が備えられ、個別に医療用流体または透析液を患者ループ12および再生ループ14を通して循環させる。再生ループ14を通る再循環を制御する1つまたは複数のポンプは、異なる流速、すなわち、ポンプで患者ループ12に通される流体の流速よりかなり速く再生流体を循環するように適合されている。この方法を用いることにより上述した濃縮バッグ44のような濃縮バッグの必要性がなくなるであろうと考えられる。従って、システム160は、流体以外のどのような種類の補給物質またはどのような連続的供給源も必要としない閉鎖ループシステムであることを理解されたい。従って、システム160は、空気および他の汚染物質がシステムに入らないように保つのに極めて精通している。
【0187】
一代替的実施形態では、逆浸透膜または電解酸化システムが吸収剤カートリッジ32に代わっている。この代替的実施形態では、濃縮バッグ44のような再構成バッグまたは濃縮バッグが必要となる可能性が高い。
【0188】
再生ループ14は、約50%〜約80%の割合で尿素を除去する。透析液は、尿酸、クレアチニン、低分子量有機体および中程度の分子量の分子が実質的に無い状態で患者16の腹膜腔に戻される。さらに、ナノフィルタ164は、カルシウム、マグネシウムを約98%の割合で、グルコースを約80%の割合で退けることができる。ナノフィルタ164を出る透過物の流れは、尿素、約70%の塩化ナトリウムおよび約20%のグルコースを含む。システム160は持続注入腹膜透析を行うのに有益であることを理解されたい。
【0189】
(血液透析用二重ループシステム)
ここで図9を参照すると、システム170が示されている。先の図1、図3および図4のシステム10、100および110の各々はそれぞれ、腹膜透析または血液透析に用いることができる。しかしながら、上述のシステムの各々は、主として腹膜透析を使用し説明および図示してきた。すなわち、透析溶液を使用する患者ループを示してきた。システム170は、二重管腔カテーテルまたは2つの単管腔カテーテルを、患者16の腕(もしくは他の適した部位)に接続して血液透析針171を通じて血液を吸引する血液透析針171に代えることができることを示している。
【0190】
システム170は、透析液が再生ループ14を通って流れる間に患者の血液が患者ループ12を通って流れることを示している。患者の血液は、透析器26の膜28の片側に沿って流れ、一方で透析液は、透析器26の膜28の外側または反対側に沿って流れる。老廃成分および限外濾過液は、患者ループ12内の患者の血液から膜28を通過し、再生ループ14内の透析液内に移動する。
【0191】
システム170は、患者流体ループ12を透析する定量再循環再生ループ14を含む。単一のポンプ172は、患者16から限外濾過液を除去して限外濾過液容器38へ移すために作動する。ポンプ172は、透析バッグ18から透析流体を追加するかまたは濃縮液バッグ44から再生ループ14へ濃縮液を追加する。一代替的実施形態では、濃縮液は、治療に先立ちまたは治療中に、固体として、計量しながら再生ループ14の透析液中に供給することができる。
【0192】
上述したキャパシタンス量感知の代替的方法として、再生ループ14を通って流れる透析流体の量は、透析バッグの下に示す電子天秤174を用いて測定することができる。電子天秤174は、システムのプライミング中にシステムに供給される透析液の量の軌跡を保持する。電子天秤174はまた、透析治療中に患者ループ12に追加される全ての付加的透析液を監視する。電子天秤174は、システムから引き出される限外濾過液の量および濃縮液バッグ44から追加される濃縮液の量を測定する。別の代替的実施形態では、本明細書に記載するどのようなシステムも、他の種類の流量計または当業者に既知のボイルの法則を採り入れた装置を用いて感知することができる。
【0193】
システム170は、バルブチャンバを開けて既知の量の流体を限外濾過液バッグ38内に移送することにより限外濾過液を除去する。流体の除去によって透析器26の膜28の両側に圧力差が生成され、それにより流体が透析器の膜28を通して濾過されて再生回路14に入ることになる。供給バッグ18からの無菌の透析液は、必要に応じて患者回路12内に注入される。濃縮液バッグ44からの濃縮液も、必要に応じて再生回路14内に注入することができる。圧力センサ176は、システム170が限外濾過液を容器38内に引き入れる速度を監視および制御する。
【0194】
ガスセンサ52は、空気が患者16へ送達されるのを防止するために用いられる。一実施形態では、多検体センサ178を用いて、尿毒症毒素を除去する再生システムの効率と同時に再生された透析液中の電解質の濃度が監視される。多検体センサ178の出力が、濃縮液バッグ44からの再構成の速度、再生システムの効率を制御し、且つ透析器内の漏れの存在を検出することができる。排気口180は、システム内に捕捉される空気または吸収剤カートリッジ32によって生成されるCOを排出する。一代替的実施形態では、吸収剤カートリッジ32と一体に備えられた自動化されたバルブが、機械的排気口180に取って代わる。
【0195】
システム170は血液透析システムとして示されているが、システム170は、カテーテルを患者の腹膜腔内に配置し、患者の血液ではなく透析液を患者ループ12を通って流れさせることによって腹膜透析システムへ容易に変換される。各々再生ループ14および患者回路に流体接続する限外濾過液バッグ38、透析液容器18および濃縮液容器44は、比較的簡素に保たれる。システム170は、腹膜透析の連続フロー用に特に伝導性であるが、標準的なAPD治療およびTIDAL治療をシステム170内で行うこともできるであろう。
【0196】
(多目的容器)
ここで図10を参照すると、一体型の吸収剤カートリッジ、ポンプおよびバルブのシステムが、1つの容器、例えばキャニスタ、カートリッジまたはカセット190内に収納されている。一体型容器190は特に図9のシステム170で説明した構成要素を収容した状態で示されている。しかしながら、一体型容器190は、上述のシステム、すなわちシステム10、100および110のいずれの構成要素の収容に対しても適応可能である。キャニスタ、カートリッジまたはカセットは、プラスチックもしくは金属などの任意の材料から製造するのに適応可能である。容器190は、上述したように構成された吸収剤カートリッジ32を含む。代替的に、容器は、吸収剤カートリッジ32およびガス分離器50を備える一体型装置102を含む。
【0197】
容器190は、透析液バッグ18から透析液を吸引することまたは濃縮液バッグ44から濃縮液を吸引することを可能にするポンプ172を含む図9に示すポンプを含む。さらに、ポンプ172は、限外濾過液をバッグ38に排液することを可能にする。一実施形態では、容器190は、図9のシステム170で説明した多検体センサ178およびガスセンサ52を含む。容器190はまた、システム170で説明した機械的排気口または自動排気口180をも含む。従って、容器190の外部にある装置は、透析液バッグと血液透析を行うために患者の腕または他の末端部位に挿入される血液透析針171のみである。明らかに、針171を多管腔コネクタ20およびカテーテル22に置き換えて腹膜透析を行うことができる。
【0198】
容器190が使い捨てカセットの形態で提供される場合、図5および図6のカセット120および140と同様に、カセット190は、少なくとも1つの側部を可撓性の、例えばプラスチックの膜(図示せず)で覆われる。この使い捨てカセット190は、種々のポンプ、例えば患者ポンプ24、透析液ポンプ30、限外濾過液ポンプ19および濃縮液ポンプ46の作動装置を備える非使い捨てハウジングにプラグ接続する。流れ構成要素のより高価な機械的部品および電気機械的部品、例えばポンプ作動装置は、再びハウジング内に保持され、再使用される。吸収剤カートリッジ32およびガス排気口180は使い捨てとすることができる。
【0199】
上の明細は、可読性、明確化の目的上、且つ本発明の実施可能性を促進するために、項目に分類されている。各項目は、決して本発明の一体とした教示を限定することを意図するものではない。いずれかの特定の見出しのもとに教示された特徴は、該見出しのもとに開示した実施形態に限定されるものではない。本発明は、本明細書に設けた異なる見出しのもとにおける開示由来の特徴のどのような組み合わせも包含する。さらに、現在好ましい実施形態を例示し、説明してきたが、本発明の精神および範囲を有意に逸脱することなく、多くの変更および改変を行うことができる。従って、発明者は、そのような変更および改変が添付の特許請求の範囲によって包含されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−172961(P2011−172961A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100145(P2011−100145)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【分割の表示】特願2009−179279(P2009−179279)の分割
【原出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】