説明

腹膜透析液バッグ

【課題】ゴミの量を低減し衛生的であって漏出防止性に優れ、簡便な継合を実現する腹膜透析液バッグを提供すること。
【解決手段】 透析液を充填した薬液バッグ101と、薬液バッグ101から延伸したチューブであって中途で分岐し、一端には雄コネクタ121を他端には雄コネクタ121と液密に継合する雌コネクタ122を設けたチューブ102と、薬液バッグ101からト形連結管126までのチューブ部分に挿通したクランプ103と、を備えたことを特徴とする腹膜透析液バッグ100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹膜透析液バッグに関し、特に、ゴミの量を減らすことが可能な腹膜透析液バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腹膜透析液バッグとして図8に示すものがあった。これは、薬液バッグと排液バッグとがチューブによりY接続し、先端を患者の腹腔カテーテルへ接続するものであって、バッグから分岐点までの間にそれぞれクランプを設けた構成のものである。薬液バッグには透析液が封入され、排液バッグは空となっている。
【0003】
使用に際しては、腹腔カテーテルと腹膜透析液バッグとを接続し、排液バッグ側のクランプを開放し薬液バッグ側のクランプは閉鎖した状態として腹腔排液を排液バッグへ排出し、次いで排液バッグ側のクランプを閉鎖し薬液バッグ側のクランプを開放して透析液を腹腔へ送入する。
【0004】
使用後は、両方のクランプを閉じ、適宜便所等でクランプを開放して排液を流し捨てる。その後は、家庭ゴミとして腹膜透析液バッグを廃棄する。また、定期検診時には腹腔排液を入れたまま病院まで持参する。
【0005】
このような腹膜透析液バッグは、特開昭61−185275号公報(特許文献1)にも開示されており、これにより、カテーテルとバッグの接続操作を別個の2つのバッグを用いる場合に比して低減される。
【0006】
また、特開平5−269202号公報(特許文献2)に開示される腹膜透析用器具は、排液収用バッグを別構成として、分離可能にする技術が開示され、これにより、排液廃棄やサンプリングを簡便に行えるようになっている。
【0007】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
腹膜透析は、一日に4回から5回必要であり、また、バッグの大きさも、たとえば、1500mlのバッグであれば、40cm×25cm程の大きさであって嵩張るため、特許文献1に開示されるような2バッグがセットとなった腹膜透析液バッグはゴミの量が多くなりすぎるという問題点があった。
【0008】
これは、特許文献2でも同じであり、排液バッグが分離できるとしても、持ち運びが便利となるだけであって、ゴミの量としては変わらない。しかも、いずれの場合も、新品の排液バッグを用いるため、不経済であるという問題点があった。
【0009】
なお、特許文献2では、排液バッグを再利用するのであればゴミの量は半減するが、次第に不衛生となってくるという別の問題点が生じてくる。
【0010】
また、いずれの場合も、腹腔カテーテルに接続する部分が使用後には遊んでしまうため、クランプが外れた場合には液が漏れてしまい、この点でも不衛生となるという問題点があった。特に、病院で腹腔排液の検査があるときは、持ち運びの際、振動等によりクランプが外れ、液漏れが生じ周囲が汚れるという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61−185275号公報
【特許文献2】特開平5−269202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
すなわち、解決しようとする問題点であり本発明の目的は、ゴミの量を低減し衛生的であって漏出防止性に優れ、簡便な継合を実現する腹膜透析液バッグを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の問題を解決するために、請求項1に記載の腹膜透析液バッグは、透析液を充填した薬液バッグと、薬液バッグから延伸したチューブであって中途で分岐し、一端には雄コネクタを他端には当該雄コネクタと液密に継合する雌コネクタを設けたチューブと、薬液バッグから分岐点までのチューブ部分に装着したチューブ開閉具と、を備えたことを最も主要な特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項1に係る発明は、前回使用した空バッグを排液バッグとして継合しゴミの量を半減可能とすると共に、つなぎ替えなしに腹腔排液を排出して薬液を送入でき、また、使用後にはそれぞれの雄雌コネクタを短絡して漏れなく衛生的に排液を持ち運びでき、また、短絡時には端部を外気に触れさせることなく、空バッグとして保管可能となる。なお、腹腔排液を収容したバッグは、チューブを閉止して雄雌コネクタも短絡することにより、漏出が二重に防止されることとなる。また、注排液の際だけでなく、バッグをつなぎ合わせれば、注液を行う場合のみ或いは排液を行う場合のみでも、薬液や腹腔排液の容量を任意に変更可能となるため、用途が広がり利便性が向上する。
【0015】
なお、雄コネクタと雌コネクタとは相補的に液密に継合するものであれば特に限定されず、適宜螺合用の溝が設けられた例を挙げることができる。チューブ開閉具も特に限定されない。たとえば、チューブに挿通するクランプを挙げることができる。この場合、適宜係止爪を備え、チューブを遮断するときにはこの係止爪を利用し、チューブを開放するときには係止爪の弾性力を利用して開放するようにすれば、片手でワンタッチの開閉が可能となる。なお、チューブ開閉具をチューブに挿通させる場合は散逸せず作業の確実性が確保される。
【0016】
また、請求項2に記載の腹膜透析液バッグは、請求項1に記載の腹膜透析液バッグにおいて、雌コネクタにセプタムを設けて雄コネクタと液密に継合させることを主要な特徴とする。
【0017】
すなわち、請求項2に係る発明は、従来は腹膜透析液バッグには用いられていなかったセプタムを転用することにより、液密な継合を簡便に実現する。セプタムは、スリット入りの混注用ゴム弁機構であり、突体がスリットに進入する場合以外は液密に閉じているため、液体が漏出することがなく、また、雄雌コネクタが外れたとしても雌コネクタ側からは液漏れは生じなくすることができる。
【0018】
また、請求項3に記載の腹膜透析液バッグは、請求項1に記載の腹膜透析液バッグにおいて、前記雄コネクタから前記分岐点までのチューブ部分および/または前記雌コネクタから前記分岐点までのチューブ部分にチューブ開閉具を備えたことを特徴とする。
【0019】
すなわち、請求項3に係る発明は、流路(注入/排出)選択および封止を行い、流路の切替えを行うことが可能となる。ここで、両方にチューブ開閉具を設けた場合は液漏れの確実性が更に向上する。また、片方の場合には、開閉に手間取らず簡便な操作を実現する。
【0020】
また、請求項4に記載の腹膜透析液バッグは、請求項1、2または3に記載の腹膜透析液バッグにおいて、前記雄コネクタから前記分岐点までのチューブ長を前記雌コネクタから前記分岐点までのチューブ長よりも短くし、前記薬液バッグから前記分岐点までのチューブ長を前記雌コネクタから前記分岐点までのチューブ長より長くしたことを主要な特徴とする。
【0021】
すなわち、請求項4に係る発明は、腹腔カテーテルに接続される雄コネクタ側のチューブ部分の長さを短くすることができ、薬液バッグ側のチューブ部分に装着されたチューブ開閉具の開閉操作を患者が楽に行うことができる。また、雌コネクタ側のチューブ部分をある程度長くして排液が終了した際の排液バッグの雄雌短絡接合を容易にする。更に、雌コネクタ側のチューブ部分より薬液バッグ側のチューブ分が長いため、チューブ長さがそれぞれ異なり、取り違えをなくして操作性が向上する。
【0022】
また、請求項5に記載の腹膜透析液バッグは、請求項1〜4のいずれか一つに記載の腹膜透析液バッグにおいて、チューブを雄コネクタ近傍で、雄コネクタからみて先に広がるようにト形に分岐させたことを主要な特徴とする。
【0023】
すなわち、請求項5に係る発明は、分岐を非対称として雄コネクタを峻別可能とし、かつ、分岐部分も含めてまとめて握りこむことができ、継合作業を容易化する。なお、ト形は、Y形を含むものとする。
【0024】
また、請求項6に記載の腹膜透析液バッグセットは、透析液を充填した薬液バッグと、薬液バッグから延伸したチューブであって中途で分岐し、一端には雄コネクタを他端には当該雄コネクタと液密に継合する雌コネクタを設けたチューブと、薬液バッグから分岐点までのチューブ部分に装着したチューブ開閉具と、を備えた第1の腹膜透析液バッグと、第1の腹膜透析液バッグと同形であって薬液バッグが空である第2の腹膜透析液バッグと、を、透析の際には、第1の腹膜透析液バッグの雄コネクタと雌コネクタをそれぞれ腹腔カテーテル端部と第2の腹膜透析液バッグの雄コネクタに継合して、腹腔排液は腹腔から第2の腹膜透析液バッグの薬液バッグへ、薬液は第1の腹膜透析液バッグの薬液バッグから腹腔へ、それぞれ一経路のみが確立された通液を可能とし、透析後には、各腹膜透析液バッグを分離して雄コネクタと雌コネクタを継合して無端経路を構築可能としたことを最も主要な特徴とする。
【0025】
すなわち、請求項6に係る発明は、前回使用した空バッグを第2の腹膜透析液バッグとして継合しゴミの量を半減可能とすると共に、つなぎ替えなしに腹腔排液を排出して薬液を送入でき、また、使用後にはそれぞれの雄雌コネクタを短絡して漏れなく衛生的に排液を持ち運びでき、また、短絡時には端部を外気に触れさせることなく、空バッグとして保管可能となる。ここで、腹腔排液を腹腔から第2の腹膜透析液バッグへ排出する際には第1の腹膜透析液バッグのチューブ開閉具を閉めて第2の腹膜透析液バッグのチューブ開閉具を開ければ実質的な直通経路が確立され、薬液を第1の腹腔透析バッグから腹腔へ送入する際には、第1の腹膜透析液バッグのチューブ開閉具を開ければ実質的な直通経路が確立される。このとき、第2の腹膜透析液バッグはチューブ開閉具を閉めればよく、また、セプタムを設けているときには第2の腹膜透析液バッグを事前に分離していてもよい。なお、腹腔排液を収容したバッグは、チューブを閉止して雄雌コネクタも短絡することにより、漏出が二重に防止されることとなる。また、バッグをつなぎ合わせれば、薬液や腹腔排液の容量を任意に変更可能となる。
【0026】
ここで、同形とは、同様の構成であることを意味し、コネクタの液密な継合が可能であればチューブの長さや薬液バッグの容量は異なっていても同形に含まれるものとする。また、一経路のみが確立されるとは、経路が分岐してそれぞれに通液が可能となることがないことを意味する。
【0027】
なお、請求項6に係る発明については、請求項2〜5に記載した構成を当然に備えるものであってもよい。すなわち、雌コネクタにセプタムを設けて雄コネクタと液密に継合させる構成としてもよいし、雄コネクタから分岐点までのチューブ部分および/または雌コネクタから分岐点までのチューブ部分にチューブ開閉具を備えてもよい。また、雄コネクタから分岐点までのチューブ長を雌コネクタから分岐点までのチューブ長よりも短くし、薬液バッグから分岐点までのチューブ長を雌コネクタから分岐点までのチューブ長より長くしてもよい。更には、チューブを雄コネクタ近傍で、雄コネクタからみて先に広がるようにト形に分岐させた構成としてもよい。場合によっては、溶着チューブで液密に継合させる構成としてもよい。
【0028】
また、請求項7に記載の腹膜透析液バッグは、請求項4に記載の腹膜透析液バッグセットにおいて、第2の腹膜透析液バッグを前回使用した第1の腹膜透析液バッグとしたことを主要な特徴とする。
【0029】
すなわち、請求項7に係る発明は、ゴミの量を半減させる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ゴミの量を低減し衛生的であって漏出防止性に優れ、簡便な継合を実現する腹膜透析液バッグを提供可能となる。
より具体的には、本発明(請求項1)によれば、前回使用した空バッグを排液バッグとして継合しゴミの量を半減可能とすると共に、つなぎ替えなしに腹腔排液を排出して薬液を送入できるので、腹腔への感染や汚染を抑止可能となる。また、使用後にはそれぞれの雄雌コネクタを短絡して漏れなく衛生的に排液を持ち運びでき、また、短絡時は端部を外気に触れさせることなく空バッグとして保管可能となる。また、本発明(請求項2)によれば、従来は腹膜透析液バッグには用いられていなかったセプタムを転用することにより、液密な継合を簡便に実現する。
【0031】
また、本発明(請求項3)によれば、流路(注入/排出)選択および封止を行い、流路の切替えを行うことが可能となる。また、本発明(請求項4)によれば、腹腔カテーテルに接続される雄コネクタ側のチューブ部分の長さを短くすることができ、薬液バッグ側のチューブ部分に装着されたチューブ開閉具の開閉操作を患者が楽に行うことができるまた、本発明(請求項5)によれば、分岐を非対称として雄コネクタを峻別可能とし、かつ、分岐部分も含めてまとめて握りこむことができ、継合作業を容易化する。
【0032】
また、本発明(請求項6)によれば、前回使用した空バッグを第2の腹膜透析液バッグとして継合しゴミの量を半減可能とすると共に、つなぎ替えなしに腹腔排液を排出して薬液を送入できるので、前述の感染等を抑止できる。また、使用後にはそれぞれの雄雌コネクタを短絡して漏れなく衛生的に排液を持ち運びでき、また、端部を外気に触れさせることなく空バッグとして保管可能となる。また、本発明(請求項7)によれば、ゴミの量を半減させる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の腹膜透析液バッグの外観構成図である。
【図2】雄コネクタの概要図である。このうち、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)はリングキャップの側面図である。
【図3】雌コネクタの概要図である。このうち、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は凸キャップの側面図である。
【図4】クランプの概要図である。このうち、(a)は外観斜視図、(b)はチューブを閉鎖したときの側面図である。
【図5】腹膜透析液バッグを二つつないだ腹膜透析液バッグセットを用いた腹膜透析の説明図である。
【図6】他の態様の腹膜透析液バッグであってチューブ部分を中心としたクランプ装着の様子を示した説明図である。
【図7】複数の薬液バッグを接合した使用状態を説明する図である。
【図8】従来の2バッグを備えた腹膜透析液バッグの構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の腹膜透析液バッグの外観構成図である。図2は、雄コネクタの概要図、図3は、雌コネクタの概要図、図4は、クランプの概要図である。
【0035】
腹膜透析液バッグ100は、薬液バッグ101と、チューブ102と、クランプ103と、により構成される。次に各部を説明する。
【0036】
薬液バッグ101は、透析液を充填したポリプロピレン製のバッグである。本実施の形態における容積は1500mlであるが、500ml、1000ml、2000ml、2500ml、3000ml、5000mlのものであってもよい。1500mlの容量であると、縦横の大きさは、約40cm×25cmである。薬液はクリップ111で大室液(960ml)と小室液(540ml)に分断され、使用時にクリップ111を取り除き、二室を交互に手のひらで押して液を混合する。なお、クリップ111に替えて弱シールである薬液バッグであ場合もあり、このときは、弱シールを取り除いて使用する。
【0037】
これらの薬液は、充填チューブ112a(小室液)、112b(大室液)を介してそれぞれ充填され、熱処理や栓止めして封止される。透析時には適宜、架け孔113を用いて薬液バッグ101をある程度高い位置につるす。このとき、混合された薬液は、封着口114で一体的に封着されたバッグ側チューブ端127から、重力に従って腹腔へ送入される。
【0038】
チューブ102は、ポリプロピレンと水添スチレン-ポリエチレン-ブタジエン共重合体とのブレンドで、封着口114から延伸し、中途で二つに分岐する。その一端には雄コネクタ121を備え、他端には雄コネクタ121と液密に継合する雌コネクタ122を備える。分岐は、雄コネクタ121の近傍およそ8cmのところにあり、雄コネクタ121側からみた場合に先に広がるように、ト形連結管126を介して接合されている。このように左右非対称に分岐していると、雄コネクタ121と雌コネクタ122を峻別でき、操作性を高める。また、分岐点が雄コネクタ121の近傍にあるので、雄コネクタ121とト形連結管126を一緒に握りこめる。これにより、雌コネクタ122をもう片方の手で捕まえやすくなり、この点からも操作性が高まる。
【0039】
未使用の状態では、雄コネクタ121にはリングキャップ124が、雌コネクタ122には凸キャップ125がそれぞれはめ込まれている。一方を指が差し込めるリング形状とし、他方を一般的なキャップ形状として、先端形状を異ならせているため、この点からも、いずれが雄コネクタ121であるかを峻別可能としている。
【0040】
なお、チューブ102の長さは限定されないが、たとえば、バッグ側チューブ端127からト形連結管126までは70cm、ト形連結管126から雄コネクタ121までは8cm、ト形連結管126から雌コネクタ122までは50cmとすることができる。このように、雄コネクタ側チューブ長<雌コネクタ側チューブ長<薬液バッグ側チューブ長とすると、視認性が向上し、また、患者による操作性を高めることが可能となる。
【0041】
腹膜透析液バッグ100の特徴として雄コネクタ121と雌コネクタ122が相補的に継合する点を挙げることができる。図2に示したように、雄コネクタ121は、セプタム155に侵入する凸管部141と、雌コネクタ122と螺合して密に継合するための螺合凸142と、チューブ102を差し込む差込口143と、を有する。リングキャップ124には、凸管部141を内包させる筒体144と、螺合凸142を介して雄コネクタ121に係合させる螺合溝145が設けられている。筒体144および雄コネクタ121の筐体により、凸管部141が外気から二重に遮断され衛生的に保管可能となる。また、螺合溝145は、左右対称に溝が切られており、リングキャップ124を右回りでも左回りでも雄コネクタ121から離脱できるようにしている。離脱に際しては、人差指をリング146に差し入れいずれかに回転させるか、リング146を引っ張って、リングキャップ124を抜去する。
【0042】
雌コネクタ122は、図3に示したように、先端をスリットSとしたセプタム155を有し、雄コネクタ121の凸管部141を液密に継合する。継合に際しては、雄コネクタ121を右回りにねじり入れると、螺合凸151と螺合溝152により雄コネクタ121の螺合凸142が案内され、継合穴153により雄コネクタ121が係止される。雌コネクタ122は、また、チューブ102を差し込む差込口157を有する。凸キャップ125は、内部に突条156を有し、雌コネクタ122の突条154を超えてはまりこみ、凸キャップ125を安定的に雌コネクタ122に取り付ける。これにより衛生的に保管を実現する。なお、凸キャップ125とリングキャップ124とは、突条156と突条147により相互に接合可能な構成ともなっている。
【0043】
雄コネクタ121と雌コネクタ122は、ポリプロピレン製であり、リングキャップ124と、凸キャップ125も同じく、ポリプロピレン製であるが、これに限定されず、たとえばポリカーボネート製、ポリアセタール製とすることもできる。
【0044】
クランプ103は、図4に示したように、一部が開放したくさび形であり、チューブ102を挿通する通し孔131および通し孔132を設け、挿通されたチューブ102を、圧止部133および134により通液遮断する構成となっている。通し孔131および132にチューブ102を通すため、クランプ103が散逸せず、利便性を高めている。なお、クランプ103に限定されず、チューブ102を開閉できれば他の機構を用いても良い。
【0045】
圧止部133および134は、押下部135を押下して、その先端をかえしが形成された爪部136に係止させて固定する。開放の際は、爪部136を押してやれば、全体の弾性力により外れるようになっている。クランプ103は以上のような構成により片手で圧止や開放を可能としている。
【0046】
次に、腹膜透析液バッグ100を二つつないだ腹膜透析液バッグセットを用いた腹膜透析について説明する。図5は、腹膜透析液バッグ100を二つつないだ腹膜透析液バッグセットを用いた腹膜透析の説明図である。なお、ここでは、薬液バッグ101の容量はいずれも1500mlであるものとする。
【0047】
なお、本実施の形態では、患者の腹腔からは腹腔カテーテルが延伸し、その端部には雌コネクタ122と同一のコネクタ(以降ではこれを適宜コネクタCと表記する。)が形成されているものとする。このコネクタCは透析時以外では凸キャップ125と同一のキャップ(これを適宜キャップKと表記する。)が接合され、セプタムが衛生的に保護される。
【0048】
腹膜透析液バッグセット200は、薬液の入った新品の第1の腹膜透析液バッグ100Aと前回の腹膜透析で用いた空の第2の腹膜透析液バッグ100Bを接続したものである(以降では、説明の便宜上、第1の腹膜透析液バッグ100Aに属する各部の符号末尾にはAを、第2の腹膜透析液バッグ100Bに属する各部の符号末尾にはBを付加する)。
【0049】
使用に際しては、まず、クランプ103Aとクランプ103Bとが閉じていることを確認し、第1の腹膜透析液バッグ100Aの雄コネクタ121Aと雌コネクタ122Aをそれぞれ、コネクタCと第2の腹膜透析液バッグ100Bの雄コネクタ121Bに継合する(図5(a))。次に、第2の腹膜透析液バッグ100Bのクランプ103Bを開放し、腹腔排液を第2の腹膜透析液バッグ100Bの薬液バッグ101B排出する(図5(b)参照)。
【0050】
次に、第2の腹膜透析液バッグ100Bのクランプ103Bを閉止し、第1の腹膜透析液バッグ100Aのクランプ103Aを開放し、腹腔内へ透析液を送入する(図5(c))。
【0051】
最後に、第1の腹膜透析液バッグ100Aのクランプ103Aを閉じ、各接合を外し、第1の腹膜透析液バッグ100Aの雄コネクタ121Aと雌コネクタ122Aを継合し、第2の腹膜透析液バッグ100Bの雄コネクタ121Bと雌コネクタ122Bを継合する(図5(d))。
【0052】
第1の腹膜透析液バッグ100Aは、次回の第2の腹膜透析液バッグ100Bとして保管する。また、腹腔排液が充填された第2の腹膜透析液バッグ100Bは、適宜、便所等で雄コネクタ121Bと雌コネクタ122Bを外し、クランプ103Bを開き、雄コネクタ121Bから腹腔排液を廃棄する。空になった腹膜透析液バッグ100Bは、家庭ゴミとして処理する。
【0053】
以上のように、腹膜透析液バッグ100は、使用後に排液バッグとして再利用できるので新品の薬液バッグと新品の排液バッグが接合された特許文献1に掲げるような従来の2バッグ製品に比してゴミが半減するという利点がある。また、クランプ閉止と雄雌コネクタの短絡による二重閉鎖により、特に、腹腔排液の移送時の漏れが生じず、衛生さを向上させている。リングキャップ124や凸キャップ125を紛失した場合であっても、雄コネクタ121および雌コネクタ122を外気に曝露させなくて済むのでこの点からも利便性を向上させている。
【0054】
使用の態様によっては、各端部を消毒した後短絡若しくは、キャップ留めするようにしても良い。
【0055】
また、雌コネクタ122にセプタムを設けず、ト形連結管126と雌コネクタ122間のチューブ102部分、ト形連結管126と雄コネクタ121間のチューブ102部分のそれぞれに、または、片方(雌コネクタ122側が好ましい)に、クランプを設けるようにしても良い。図6は、他の態様の腹膜透析液バッグであってチューブ部分を中心としたクランプ装着の様子を示した説明図である。ここでは、雄コネクタ121側と雌コネクタ122側の両方にスライド式のクランプ103’を装着し、雄コネクタ121側はチューブを閉止し、雌コネクタ122側はチューブを開放した状態を示している。
【産業上の利用可能性】
【0056】
上記の実施の形態では、薬液バッグの容量は1500mlのもの同士を結合したが、これに限らず、未使用の薬液バッグについても、使用済みの薬液バッグについても、適宜接合して、薬液量や排液量を変更するようにしてもよい。たとえば、図7(a)に示したように、注入液として、複数の新しい薬液バッグを連結して、容器(バッグ)の規定量を超える腹膜透析液を患者に注入することもできるし、図7(b)に示したように、排液用として、複数の使用済み薬液バッグを連結して、規定量を超える腹腔貯留液を収容することもできる(図では片方は既に腹腔貯留液が排出された状態を示している)。
【符号の説明】
【0057】
100、100A、100B 腹膜透析液バッグ
101、101B 薬液バッグ
102 チューブ
103、103A、103B、103’ クランプ
111 クリップ
112a、112b 充填チューブ
113 架け孔
114 封着口
121、121A、121B 雄コネクタ
122、122A、122B 雌コネクタ
124 リングキャップ
125 凸キャップ
126 ト形連結管
127 バッグ側チューブ端
131、132 通し孔
133、134 圧止部
135 押下部
136 爪部
141 凸管部
142 螺合凸
143 差込口
144 筒体
145 螺合溝
146 リング
147 突条
151 螺合凸
152 螺合溝
153 継合穴
154 突条
155 セプタム
157 差込口
156 突条
200 腹膜透析液バッグセット
C コネクタ(腹腔側)
K キャップ(腹腔側)
S スリット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液を充填した薬液バッグと、
薬液バッグから延伸したチューブであって中途で分岐し、一端には雄コネクタを他端には当該雄コネクタと液密に継合する雌コネクタを設けたチューブと、
薬液バッグから分岐点までのチューブ部分に装着したチューブ開閉具と、
を備えたことを特徴とする腹膜透析液バッグ。
【請求項2】
雌コネクタにセプタムを設けて雄コネクタと液密に継合させることを特徴とする請求項1に記載の腹膜透析液バッグ。
【請求項3】
前記雄コネクタから前記分岐点までのチューブ部分および/または前記雌コネクタから前記分岐点までのチューブ部分にチューブ開閉具を備えたことを特徴とする請求項1に記載の腹膜透析液バッグ。
【請求項4】
前記雄コネクタから前記分岐点までのチューブ長を前記雌コネクタから前記分岐点までのチューブ長よりも短くし、前記薬液バッグから前記分岐点までのチューブ長を前記雌コネクタから前記分岐点までのチューブ長より長くしたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の腹膜透析液バッグ。
【請求項5】
チューブを雄コネクタ近傍で、雄コネクタからみて先に広がるようにト形に分岐させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の腹膜透析液バッグ。
【請求項6】
透析液を充填した薬液バッグと、
薬液バッグから延伸したチューブであって中途で分岐し、一端には雄コネクタを他端には当該雄コネクタと液密に継合する雌コネクタを設けたチューブと、
薬液バッグから分岐点までのチューブ部分に装着したチューブ開閉具と、
を備えた第1の腹膜透析液バッグと、
第1の腹膜透析液バッグと同形であって薬液バッグが空である第2の腹膜透析液バッグと、を、
透析の際には、第1の腹膜透析液バッグの雄コネクタと雌コネクタをそれぞれ腹腔カテーテル端部と第2の腹膜透析液バッグの雄コネクタに継合して、腹腔排液は腹腔から第2の腹膜透析液バッグの薬液バッグへ、薬液は第1の腹膜透析液バッグの薬液バッグから腹腔へ、それぞれ一経路のみが確立された通液を可能とし、
透析後には、各腹膜透析液バッグを分離して雄コネクタと雌コネクタを継合して無端経路を構築可能としたことを特徴とする腹膜透析液バッグセット。
【請求項7】
第2の腹膜透析液バッグを前回使用した第1の腹膜透析液バッグとしたことを特徴とする請求項6に記載の腹膜透析液バッグセット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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