腹部大動脈瘤を治療するための装置及び方法
腹部大動脈瘤を治療するための方法、及びこのために動脈瘤を迂回して上部大動脈から腸骨動脈に配置された2つの個々の管を含む装置を提供する。管を動脈瘤の上に固定するために別個の上側カフを設けることもできる。1つの実施形態は、腹部大動脈瘤(AAA)治療用エンドグラフトシステムを含み、このシステムは、カフと少なくとも2つのエンドグラフトユニットとを含み、個々のエンドグラフトユニットが、管腔と、近位端と、遠位端とを有し、前記エンドグラフトユニットが、カフに配置され固定された近位端と腸骨動脈の各々に配置され固定される遠位端とを有する可撓性の防水性管で作成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2008年5月15日に出願された米国仮特許出願第61/053,378号に関するとともに該特許出願の利益を主張するものであり、該特許出願は、その全体が引用により本明細書に組み入れられて本明細書の一部を成す。
【0002】
本発明は、一般に、腹部大動脈のような大血管の限局性拡張を治療するためのモジュール式二管腔エンドグラフトシステム(endograft system)に関する。より詳細には、本発明は、血管径を縮小させて血管破裂の可能性を最小限に抑えるとともに、複数の管腔を作り出して下流流を持続させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
大動脈は、人体の全ての動脈枝に血液及び酸素を供給し、それ自体が人体中で最大の動脈である。大動脈は、横隔膜に関連するいずれかの特定の部分の場所に基づいて、胸部大動脈又は腹部大動脈と呼ばれる。胸部大動脈は、大動脈基部と脳に至る血管を含む管状部とを含む上行胸部と、下行胸部大動脈とにさらに細分化される。腹部大動脈は、横隔膜に始まって、下肢に血液を送る動脈が始まる大動脈腸骨動脈分岐点で終わり、その経路に沿って様々な内臓枝腸間膜動脈枝、並びに腎動脈を分岐する。大動脈の直径は部分によって異なる。胸部大動脈の標準直径は、管状上行部分で約3cm、下行胸部大動脈で2.5cm、及び腎臓下腹部大動脈で2cm程度である。大動脈寸法は、体表面積、年齢及び性別によって相対的に異なり、男性の大動脈寸法は女性のものよりも大きい。
【0004】
大動脈が標準直径を超えて拡大することを動脈瘤と呼ぶ。動脈瘤という用語は、拡張又は膨張を意味する。大動脈の最大直径が、隣接する最も近い標準部分の直径の1.5倍よりも大きい場合、この部分を動脈瘤と呼ぶ。大動脈瘤は、腹部大動脈に多く見られ、この1つの理由として、大動脈の壁内に存在する主な耐力蛋白質であるエラスチンが、(より心臓に近い)胸部大動脈と比べたときに腹部大動脈において少ないことが挙げられる。別の理由は、腹部大動脈瘤が栄養血管を保有していないことであり、これが修復を妨げる。動脈瘤の大半は、3つの層(内膜、中膜及び外膜)全てに関わる真性動脈瘤であり、一般に破裂前には無症状である。
【0005】
腹部大動脈瘤(AAA)の患者数は年齢とともに増加し、診断時の平均年齢は65〜70歳である。AAAは、アテローム性動脈硬化に起因するとされてきたが、これらの形成にはその他の要因も関与する。AAAは、いつまでも無症状のままのこともある。サイズが5cmに達すると破裂のリスクが大きくなるが、AAAによっては、直径15cmを超えるまで膨らんでから破裂するものもある。破裂前、AAAは、へその上部の大きな拍動性腫瘤として現れることがある。重度のアテローム硬化性動脈瘤では、又は血栓が生じた場合、乱流から雑音が聞こえることがある。しかしながら、通常は不幸にも破裂がAAAの最初の兆候となる。動脈瘤が破裂すると、痛み−低血圧−腫瘤の3つを示すことが典型的である。古くから、痛みは腹部、背中又は脇腹で報告される。この痛みは、強烈で激しく、持続することが通例であり、腹部を貫いて背中に放散することもある。
【0006】
腹部大動脈瘤の診断として、ベッドサイドで超音波を使用してこれを確認することができる。「モリソン」窩、脾腎腔、横隔膜下腔及び膀胱周囲腔などの潜在的腹腔内に遊離流体が存在することにより、破裂が示される場合がある。確認には、腹部造影CTスキャンが必要となる。術前及び術後死亡率が高いため、破裂を切り抜けて生き延びる患者はたった10〜25%である。破裂性腹部動脈瘤による年間死亡率は、米国だけで約15,000人である。AAAの別の重要な合併症に、動脈瘤内の血栓の形成がある。
【0007】
大動脈瘤の決定的な治療法は、大動脈の外科的修復術である。通常、この手術では、大動脈の拡張部分を開いて合成(ダクロン又はゴアテックス)パッチ管を挿入する。管を大動脈の近位及び遠位部分に縫い付けたら、人工管の周囲で動脈瘤嚢を閉鎖する。縫い付ける代わりに、ニチノールワイヤフレームで硬質かつ拡張可能にした管端部を血管断端にはるかに単純かつ迅速に挿入し、外部結紮によってここに恒久的に固定することができる。
【0008】
近年、開腹手術による修復の低侵襲的代替方法として、腹部大動脈瘤の管腔内治療が登場した。血管内手術では、細い管(カテーテル)の端部に人工グラフト(金属円筒内部のポリエステル管からなるステントグラフト)を取り付け、これを通常は脚の動脈を通じて血流内に挿入する。外科医は、X線モニタでカテーテルの進み具合を見ながら、動脈瘤が位置する大動脈の脆弱部分にステントグラフトを螺入させる。適所に収まると、グラフトを拡張させる。ステントグラフトが大動脈の脆弱部を強化して、動脈瘤の破裂を防ぐ。金属フレームをバネのように拡張させて大動脈の壁に対してしっかりと保持し、動脈瘤への血液供給を遮断する。この結果、血液は動脈瘤を避け、ステントグラフトを通じて流れる。通常、動脈瘤は時間とともに収縮する。この技術は、開腹手術による修復と比べて死亡率が低いことが報告されており、現在では、開腹手術に対するリスクの高い併存疾患のある患者に広く用いられている。センターによっては、手術リスクの高いグループの一員ではない患者における特定の方法に関して非常に期待できる結果を報告するところもある。
【0009】
患者の全身状態が思わしくないため、通常であれば開腹手術による修復で治療される破裂性腹部大動脈瘤の血管内治療に関する報告も多く存在する。中間結果は非常に期待が持てるものであった。利用可能なステント技術が持続的に発展するとともに、この技術を使用する血管専門医の経験が増えることにより、この技術の安全性及び効率は、今後数年内にさらに高まると思われる。しかしながら、最新の研究によれば、現在のステントグラフト及び処置は、全体的な延命効果をもたらさない。
【0010】
1997年10月14日に取得された米国特許第5,676,697号には、主要血管の分岐点に関して腔内グラフトを2つの分枝血管内に導入して動脈瘤による異常又は損傷を迂回させるための、2つの協働するグラフトプロテーゼで形成された腔内グラフトが開示されており、該特許は、その内容全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0011】
今日の市場は、開腹手術が介入する必要性を実質的に排除するカテーテル、ガイドワイヤ及び付属装置を利用する外科的軽減方法の必要性を求める約20F以上の装置で溢れている。この軽減方法は、多くの場合開腹手術の介入に伴って生じる急性合併症を著しく減少させるが、この方法の最終的目標及び市場動向は、送達システムの断面を縮小し、エンドグラフトを経皮的に送達する手順を実施できるようにして、この軽減手順の必要性を排除することである。内部の漏れ及び装置の定着/移動の問題に対処して、AAA患者にモジュール式二管腔エンドグラフトシステムを備えた新製品の設計及び特徴による恩恵をもたらすようにするための臨床的必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/053,378号
【特許文献2】米国特許第5,676,697号
【特許文献3】米国特許第6,383,193号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記で簡単に説明したように、エンドグラフトが大型であることに関連する不都合を克服するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のいくつかの態様は、腹部大動脈のような大血管の限局性拡張を治療するためのモジュール式二管腔エンドグラフトシステムに関する。本発明の1つの態様は、血管径を縮小させて血管破裂の可能性を最小限に抑えるとともに、複数の管腔を作り出して下流流を持続させる方法に関する。
【0015】
本発明のいくつかの態様では、血管に挿入するための可撓性の又は成形可能なステントグラフトを提供し、このグラフトは、遠位部と、近位部と、これらを接続するグラフト体とを含むとともに、防水性の可撓管からなる内層と、半剛性又は剛性材料からなる中間層と、防水性(water tight)の可撓性オーバーラップからなる外層とを有し、少なくとも2つの防水層を含むことを特徴とする。1つの実施形態では、ステントグラフトが、中間層及び外層のみを有する。別の実施形態では、中間層が、メッシュ状又は螺旋状構成の半剛性又は剛性材料を含む。
【0016】
本発明のいくつかの態様では、径方向に拡張可能なシースをガイドシースとして提供し、このシースは、外向きの力によって径方向に拡張可能な連続した一体型のシース体を含み、圧縮状態である第1の構成から拡張状態である第2の構成にかけて軸方向の伸縮性が実質的にほとんど又は全く無く、逆もまた同様であることを特徴とする。
【0017】
本発明のいくつかの態様では、カフ(cuff)と少なくとも2つのエンドグラフトユニットとを含むAAA治療用エンドグラフトシステムを提供し、個々のエングラフトユニットは、近位端及び遠位端を有し、カフに配置されてこれに取り付け/固定された近位端と、腸骨動脈の各々の中に配置されてこれらに取り付け/固定された遠位端とを有する圧縮可能な防水性発泡管(foam tube)で作られる。1つの実施形態では、第1のエンドグラフトの第1の近位端が、第2のエンドグラフトの第2の近位端に実質的に近い距離にある。
【0018】
本発明のいくつかの態様では、エンドグラフトの管腔と周辺の動脈瘤嚢との間の血液連通を排除するための不透過性部分と、腎動脈口を横切って配置されるように構成された多孔性部分とを含むAAA治療用エンドグラフトを提供する。
【0019】
本発明のいくつかの態様では、ネック取り付け部分と、グラフト体と、2つの脚部とを含むAAA治療用エンドグラフトを提供し、ネック取り付け部分は、腎動脈の近位に配置するための少なくとも第1の定着要素と、この第1の定着要素から軸方向に離間して配置された、腎動脈の遠位に配置するための第2の定着要素とを含む複数の定着機構を有する。
【0020】
本発明のいくつかの態様では、ネック取り付け部分と、ネック取り付け部分から第1の腸骨動脈まで延びる長さを有する、第1の腸骨動脈内部に固定するための第1の発泡管と、ネック取り付け部分から第2の腸骨動脈まで延びる長さを有する、第2の腸骨動脈内部に固定するための第2の発泡管とを含むAAA治療用エンドグラフトを提供し、両発泡管はネック取り付け部分に固定される。
【0021】
本発明のいくつかの態様では、ネック取り付け部材と、本体と、2つの分岐した遠位端とを含むバルーンエンドグラフトを提供し、このエンドグラフトは、二重層とこれらの層間の空間とを含み、この空間は、流体又は硬化性発泡体で満たされてバルーンエンドグラフトを膨張させるように構成される。
【0022】
添付図面を参照しながら以下の例示的な実施形態の詳細な説明を読めば、これらから本発明のさらなる目的及び特徴がより明らかになるとともに、本発明自体を最も良く理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】Dグラフトの詳細な構造を示す図である。
【図1B】2つのDグラフトの接面に逆帯電した磁石を埋め込んだ1対のDグラフトを示す図である。
【図1C】非対称的に配置した場合でも自己密封式となる2つのグラフトを示す図である。
【図1D】定着用の返しを有する1対のDグラフトを示す図である。
【図2A】カテーテル又はシースを送達するように構成されたエンドグラフトの圧縮状態にある実施形態を示す図である。
【図2B】カテーテル又はシースを送達するように構成されたエンドグラフトの圧縮状態にある実施形態を示す図である。
【図3A】エンドグラフトを送達するための径方向に拡張可能なシースを示す図である。
【図3B】エンドグラフトを送達するための径方向に拡張可能なシースを示す図である。
【図3C】エンドグラフトを送達するための径方向に拡張可能なシースを示す図である。
【図4A】エンドグラフトを血管内に進入させるための拡張可能なシース上に止血用カフを配置した概略図である。
【図4B】エンドグラフトを血管内に進入させるための拡張可能なシース上に止血用カフを配置した概略図である。
【図4C】エンドグラフトを血管内に進入させるための拡張可能なシース上に止血用カフを配置した概略図である。
【図5A】腸骨動脈を通じて大動脈にエンドグラフトを進めるステップを示す図である。
【図5B】腸骨動脈を通じて大動脈にエンドグラフトを進めるステップを示す図である。
【図5C】腸骨動脈を通じて大動脈にエンドグラフトを進めるステップを示す図である。
【図6A】エンドグラフトのネックサブアセンブリを、腎ステントを覆って原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図6B】エンドグラフトのネックサブアセンブリを、腎ステントを覆って原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図6C】エンドグラフトのネックサブアセンブリを、腎ステントを覆って原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図7A】エンドグラフトのネックサブアセンブリを原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図7B】エンドグラフトのネックサブアセンブリを原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図7C】エンドグラフトのネックサブアセンブリを原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図7D】エンドグラフトのネックサブアセンブリを原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図8A】AAAエンドグラフトを埋め込む際に腎動脈を迂回する1つの方法を示す図である。
【図8B】AAAエンドグラフトを埋め込む際に腎動脈を迂回する1つの方法を示す図である。
【図8C】AAAエンドグラフトを埋め込む際に腎動脈を迂回する1つの方法を示す図である。
【図9A】AAA治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する1つの方法を示す図である。
【図9B】AAA治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する1つの方法を示す図である。
【図9C】AAA治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する1つの方法を示す図である。
【図9D】AAA治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する1つの方法を示す図である。
【図10A】AAAの治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示す図である。
【図10B】AAAの治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示す図である。
【図10C】AAAの治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示す図である。
【図10D】AAAの治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示す図である。
【図10E】AAAの治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示す図である。
【図11】AAA治療用エンドグラフトの実施形態を示す図である。
【図12】腹部大動脈瘤治療用の、二重ネック取り付け要素を有するステントグラフトの1つの実施形態を示す図である。
【図13】腹部大動脈瘤治療用の、コーティング面を有するステントグラフトの1つの実施形態を示す図である。
【図14A】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図14B】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図14C】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図14D】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図14E】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図14F】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図15】図14Eのステントグラフトシステムの詳細な近位部分を示す図である。
【図16A】血管内で連結シールを提供するための「二重D」スポンジプラグを示す図である。
【図16B】血管内で連結シールを提供するための「波型スポンジ」プラグを示す図である。
【図17A】定着構造で補強又は支持したスポンジプラグを示す図である。
【図17B】X線不透過マーカーで補強又は支持したスポンジプラグを示す図である。
【図17C】X線不透過体で補強又は支持したスポンジプラグを示す図である。
【図18】スポンジプラグの様々な構成を示す図である。
【図19】AAA嚢に軟質の血栓形成「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を挿入するための送達システムを示す図である。
【図20】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を先端機構によってAAA嚢内に引き込むための送達システムを示す図である。
【図21A】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を、二管腔送達カテーテルの第2の管腔内に位置できる再配置可能スネアによってAAA嚢内に引き込むための送達システムを示す図である。
【図21B】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を、二管腔送達カテーテルの第2の管腔内に位置できる再配置可能スネアによってAAA嚢内に引き込むための送達システムを示す図である。
【図21C】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を、二管腔送達カテーテルの第2の管腔内に位置できる再配置可能スネアによってAAA嚢内に引き込むための送達システムを示す図である。
【図22A】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を二重管腔送達カテーテルのバルーンによってAAA嚢に挿入するための送達システムを示す図である。
【図22B】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を二重管腔送達カテーテルのバルーンによってAAA嚢に挿入するための送達システムを示す図である。
【図23】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料をノズル送達カテーテルによってAAA嚢に押し込むための送達システムを示す図である。
【図24A】従来のAAA装置を示す図である。
【図24B】本発明の改良したAAA装置を示す図である。
【図25A】硬化性発泡管で作成したエンドグラフトの実施形態を示す図である。
【図25B】硬化性発泡管で作成したエンドグラフトの実施形態を示す図である。
【図25C】硬化性発泡管で作成したエンドグラフトの実施形態を示す図である。
【図26A】展開時にグラフトを適所に保持する突起物を有するカフを個々の端部に含む管状グラフトの側面図である。
【図26B】展開時にグラフトを適所に保持する突起物を有するカフを個々の端部に含む管状グラフトの平面図である。
【図27A】可膨張性端部及び/又は膨張体を有する目立たない、経皮送達式の、耐内部漏出性血管グラフトを作成するための装置を示す図である。
【図27B】可膨張性端部及び/又は膨張体を有する目立たない、経皮送達式の、耐内部漏出性血管グラフトを作成するための装置を示す図である。
【図27C】可膨張性端部及び/又は膨張体を有する目立たない、経皮送達式の、耐内部漏出性血管グラフトを作成するための装置を示す図である。
【図27D】可膨張性端部及び/又は膨張体を有する目立たない、経皮送達式の、耐内部漏出性血管グラフトを作成するための装置を示す図である。
【図28A】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図28B】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図28C】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図28D】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図28E】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図28F】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図29】複数の貫通管腔を備えて複数の流路を形成できるようにしたカフ構成を示す図である。
【図30A】AAA治療用カフ及びエンドグラフトを大動脈領域に導入する方法を示す図である。
【図30B】AAA治療用カフ及びエンドグラフトを大動脈領域に導入する方法を示す図である。
【図30C】AAA治療用カフ及びエンドグラフトを大動脈領域に導入する方法を示す図である。
【図30D】AAA治療用カフ及びエンドグラフトを大動脈領域に導入する方法を示す図である。
【図31】金属又は剛性支持要素を使用しない二重層可膨張性バルーンで作成したエンドグラフトの1つの実施形態を示す図である。
【図32】金属又は剛性の/強固な支持要素を使用しない2つの二重層可膨張性バルーン体で作成したエンドグラフトの1つの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下で説明する本発明の好ましい実施形態は、特に動脈瘤の治療又は修復で使用するための装置システム、又はシステムの要素/サブアセンブリに関する。説明には様々な実施形態の具体的な詳細を記載しているが、この説明は例示にすぎず、決して本発明を限定するものであると解釈すべきではない。さらに、当業者に思い浮かぶであろう本発明の様々な用途及び本発明に対する修正も、後述する一般的概念に含まれる。
【0025】
大動脈は体内最大の動脈であり、血液を心臓から遠くへ運ぶ。大動脈は胸部を走り、ここでは胸部大動脈と呼ばれる。大動脈は、腹部に達すると腹部大動脈と呼ばれる。腹部大動脈は、下半身に血液を供給する。大動脈は、腹部直下で、個々の脚部に血液を運ぶ2つの枝に分かれる。腹部大動脈の脆弱領域が膨張又は隆起すると、腹部大動脈瘤(AAA)と呼ばれる。腹部大動脈を貫流する血液からの圧力により、大動脈の脆弱部分がバルーンそっくりに膨らむことがある。標準的な大動脈の直径は約1インチ(すなわち約2.5センチメートル)である。しかしながら、AAAは、この安全域を超えて大動脈を引き伸ばすことがある。動脈瘤は、爆発又は破裂することがあるので健康上のリスクである。AAAは、別の重大な健康問題を引き起こす可能性もある。動脈瘤の内部で血餅又はデブリが生じ、体内のその他の器官につながる血管にこれらが移動する可能性がある。これらの血管の1つが閉塞した場合、重度の痛み、さらには四肢欠損などのより重大な問題を引き起こす恐れがある。ほとんどの場合、腹部大動脈瘤は、医師が腹部超音波、コンピュータ断層(CT)撮影、又は磁気共鳴画像(MRI)などの画像検査を行っているときに発見される。
【0026】
腹部大動脈瘤及び胸部大動脈瘤などの動脈瘤を治療又は修復するためのシステムには多くの形がある。代表的なシステムは、動脈瘤上部の健常組織に配置される定着及び/又は密封要素と、この定着及び/又は密封要素と流体連通状態にあり、動脈瘤内を延びて動脈瘤下部の健常組織に定着される1又はそれ以上のグラフトとを含む。基本的に、グラフトは、動脈の1つの部分から同じ又は異なる動脈の別の部分までの流体流路を構築することによって動脈の病的部分を迂回するために利用するシステムの要素である。基本的に、本発明の血管内グラフトは、モジュール式システムを構成するいくつかの要素を含む。血管内グラフト全体には数多くの要素が含まれるが、これらの種類のシステムに関連する課題として、目立ち具合、柔軟性及びアクセスし易さが挙げられる。腹部大動脈瘤を治療するための経皮的装置の主な故障モードとしては、アクセス不良、破裂、AAA拡張による内部漏出、装置の移動又は位置ずれ、AAA拡張、内部漏出などが挙げられる。装置の完全性の問題としては、とりわけ構造破壊、内部漏出、移動、腸骨肢の分離、ステントグラフトの破砕、近位の折れ、及びグラフトの頭部位置の分離が臨床的に挙げられる。
【0027】
結合可能なグラフト対
腹部大動脈瘤のEVAR(血管内動脈瘤修復)問題を治療するためのステントグラフトが、目立ちにくい導入、短い頸部、長下肢/短下肢のカテーテル法、グラフトのサイズ、グラフトの構成などの特徴を含むことができる。1つの好ましい実施形態では、ステントグラフトの要素が、(金属、ニチノール金属、形状記憶金属、プラスチック、形状記憶プラスチック又はその他の可撓性材料などの)レーザ切断した弾性材料又は半剛性材料のフラットシート、螺旋、又はメッシュからなる中間層、及び延伸PTFEオーバーラップからなる外層を含む少なくとも2つの層を含むことができる。ステントグラフトは、任意に伸縮性延伸PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)管からなる第3の内層をさらに含む。これらの層は、ステントグラフト複合材料の構築材として機能するように圧縮される。ステントグラフトの遠位部(1ac)は、グラフトが腸骨動脈に適合するように成形することができる。ステントグラフトは、半円状の側面と平らな側面とを有するD型グラフト(Dグラフト)(図1A)のような異なる形状に成形することができる。1つの実施形態では、延伸PTFEが液体又は水を透過させない。内側PTFE層及び外側PTFE層が、複合構成材料の液体密封性を確実にする働きをする。
【0028】
本発明の2つのD型ステントグラフトは、これらの平らな側面が互いに向き合い、又は互いに密接に結合した場合、円筒状の管の外観を形成することができる。1つの実施形態では、内側PTFE管(1ad)を反転させることにより、ステントグラフト(1aa)の端部(1ab)にスリーブを形成することができる。さらなる実施形態では、縫合(1ae)、ステープリング、接着、結合などのあらゆる締結手段により、PTFE管の反転部分を中間層又は内層の内側部分に固定することができる。1つの実施形態では、内層及び外層に、(ダクロンなどの)ポリエステル繊維材料又は実質的に防水性の織った形のマイクロファイバーなどのその他の好適な材料を使用することができる。別の実施形態では、Dグラフトが、腎動脈に血流を送り込むための開口部(1ak)を含み、この開口部は、移植前に作成することができ、又はDグラフトを原位置に配置した後にワイヤ穿孔を行い、その後任意にバルーン拡張することにより作成することができる。開口部が腎ステントグラフトの外周を受け入れてこれに密接に適合するとともに、内部漏出を防ぐように防水処理することが重要である。
【0029】
手術時には、個々のD型グラフトを送達器具のシースに取り付けて、第1のD型グラフトを、第2のD型グラフトと嵌り合う形で正確に展開できるようにすることができる。1つの好ましい実施形態では、グラフトが、両側大腿鞘を通じて大動脈に挿入される。グラフトを回転させ、平らな側面を互いに一致させて嵌め合うことができる。1つの実施形態では、2つのDグラフトの平らな側面を手動で操作又は回転させてこれらが互いに向き合うようにする。別の実施形態では、(図1Aに示すように)結合可能な側面を手動で操作してこれらが互いに向き合うようにする。1つの実施形態では、グラフトの平らな側面の少なくとも一部に、一方のグラフト表面上に正電荷(1af)の希土類磁石を、逆のグラフト表面上に負電荷(1ag)の希土類磁石を埋め込んで、結合時の制御シール(例えば、液密シール)及びこの部分の密接な接触を確実にする(図1B)。別の実施形態では、結合を密接にするために、第1のグラフトの第1の表面に正電荷磁石(positive charged magnet)を、第2のグラフトの第2の適合する表面に負電荷磁石(negative charged magnet)を形成するための手段が提供される。この適合する表面は、Dグラフトのように平らなものであってもよい。
【0030】
別の実施形態では、D型グラフトの近位部分の周囲に返しを組み込んでこれらを離間して配置し、これらの返し(1ah)を径方向外向きに展開してグラフト(図1D)を大動脈に定着するようにすることができる。1つの実施形態では、一般にこの返しのサイズ及び構成が、グラフトがほとんど抵抗を受けずに進行方向へ移動できるようにする一方で、グラフトが逆方向に移動し始めると返しが大動脈に係合するようにされる。別の実施形態では、バネ特性を有するように返しを構成して、グラフトをシースから展開した際に返しが外向きに延びる(例えば、飛び出る)ようにする。さらに別の実施形態では、返しを形状記憶材料又は感温材料で作成して、返しが高温生理食塩水又はその他の電気、化学又は生物学的手段によって閾値高温で活性化されるようにする。さらに別の実施形態では、グラフトが、非対称的に配置した場合(図1C)でも自己密封又は自己結合して、接触面の一部が互いに結合する。図1Cに示すようなグラフトは、2つの点(1ai及び1aj)の間の領域を密接にシールする1対のフォームチューブグラフト又はその他の径方向に拡張可能なグラフトを含むことができる。この密接なシール領域は、グラフトの近位端の周囲又は近位端の遠位近くに及ぶことができる。グラフトをこのように特大にして、動脈壁と密接に接触させてグラフトをシールし、血液の漏出(内部漏出)を防ぐことができる。
【0031】
Dグラフトは、両腎動脈の治療を切り離すことにより、非カスタムな上静脈EVARの方法を可能にする。Dグラフト内の腎臓の口(renal ostia)の位置は、様々な生体構造に対応するように変更することができる。必要に応じて直径(近位及び遠位)、長さ及び腎臓の口に関して選択した2つの要素のみを使用して完全なEVARを実施することができる。例えば、160mmの長さ、26mmの遠位直径、16mmの近位直径、及び遠位端近くの約20mmの腎臓の口を有する第1のDグラフトと、140mmの長さ、26mmの遠位直径、12mmの近位直径、及び遠位端近くの10mmの腎臓の口を有する第2のDグラフトとを選択することができる。上記の例では、第2のDグラフト近位端が、第1のDグラフトの近位端から遠くの平面に位置することができる。
【0032】
シート技術により、グラフトを図2A及び図2Bに示すように回転させることによってDグラフト(1aa)をうまく圧縮してより小さなシース(2aa)内に導入できるようになる。Dグラフトの断面は、その長さに沿って大動脈部分内のD構成から腸骨部分内の円形又は円形状構成に移行させることができる。グラフト構造を部分的弾性部材から周方向部材に縦方向に変更することにより、この移行構成を実現することができる。大動脈部分のDグラフトは、複雑な血管を通じた送達又は複雑な血管での配置に対応するように可撓性マルチセグメントで構成することができる。
【0033】
本発明のいくつかの態様は、血管に挿入するための可撓性ステントグラフトに関し、このグラフトは、遠位部と、近位部と、これらを接続する管腔を有するグラフト体とを含むとともに、可撓性の剛性又は半剛性材料からなる第1の層と、防水性の可撓性オーバーラップからなる第2の層とを有し、折り畳み式であり、挿入手術中に目立たないことを特徴とする。1つの実施形態では、第1の層が、挿入手術中にシース内で圧縮可能な螺旋状ワイヤを含む。別の実施形態では、第1の層を適所に配置した後に、第1の層上に第2の層が重積する。さらに別の実施形態では、ステントグラフトが、防水性の可撓管からなる第3の層をさらに含み、このグラフトは、少なくとも2つの防水層を有することを特徴とし、第3の層は伸縮性PTFE管で作成され、第2の層は伸縮性PTFEオーバーラップで作成される。
【0034】
本発明の第1の態様は可撓性ステントグラフトに関し、第1及び第2の層を覆って第3の層の余長を反転させることにより、ステントグラフトの端部にスリーブが形成される。1つの実施形態では、反転シースを第1の層に固定するための締結手段により反転シースが第1の層に固定され、この締結手段は、縫合、ステープリング、接着又は結合を含む。別の実施形態では、第3の層が可撓性繊維又はポリマー管で作成され、第2の層が可撓性繊維又はポリマーオーバーラップで作成される。さらに別の実施形態では、第2の層又は第3の層が、実質的に防水性のマイクロファイバー織布で作られる。
【0035】
本発明の1つの態様は可撓性ステントグラフトに関し、グラフトを血管壁に定着させるように構成されたステントグラフトの近位部分の周囲に、形状記憶材料又は感温材料で作成できる返しが組み込まれ、適当に離間して配置される。1つの実施形態では、グラフトを血管壁に定着させるように構成されたグラフトの近位部分の周囲に定着具が二次手術として提供される。
【0036】
本発明のいくつかの態様は、第1及び第2のステントグラフトを含むステントグラフトシステムに関し、このグラフトは、伸縮性延伸PTFE管からなる内層と、半剛性又は剛性材料からなる中間層と、伸縮性延伸PTFEオーバーラップからなる外層とを有し、いずれかのステントグラフトの近位部が半円状の側面と結合側面とを有するように成形され、2つのグラフトの近位部が互いに結合して円筒状の管状構成を形成する場合、第1のステントグラフトの第1の結合側面が、第2のステントグラフトの第2の結合側面に結合して密接に適合する。1つの実施形態では、第1のステントグラフトの第1の遠位部が、右腸骨動脈に挿入できるように可撓性であり、第2のステントグラフトの第2の遠位部が、左腸骨動脈に挿入できるように可撓性である。別の実施形態では、第1のステントグラフトの第1の結合側面を正電荷磁石を有するように構成し、第2のステントグラフトの対向する第2の結合側面を負電荷磁石を有するように構成して、結合時に制御シール及び密接な接触を確実にする。さらに別の実施形態では、円筒状の管状構成の2つのステントグラフトの近位部分を径方向に拡張可能にして、血管に密接に適合させて固定する。
【0037】
1つの実施形態では、第1の結合側面を正電荷磁石を有するように構成し、対向する第2の結合側面を負電荷を有するように構成して、制御シール及び/又は密接な接触を確実にする。
【0038】
1つの実施形態では、内側PTFE管を反転させることにより、ステントグラフトの端部にスリーブが形成され、この反転PTFEは、縫合、ステープリング、接着及び結合などの固定目的の締結手段により中間層に固定される。
【0039】
1つの実施形態では、本発明のPTFE層が、例えば、ポリエステル繊維又は実質的に防水性のマイクロファイバーで作成した層などのその他の可撓性繊維又はポリマーに置き換えられる。
【0040】
1つの実施形態では、ステントグラフトの近位部分の周囲に返しを適当に組み込んでこれらを離間して配置し、これらの返しを径方向外向きに展開してグラフトを動脈壁に定着させるようにする。別の実施形態では、返しを形状記憶材料又は感温材料で作成して、返しが閾値高温で活性化又は展開されるようにする。
【0041】
シースサブアセンブリ
本発明の1つの態様は、拡張可能な可撓性シースに関する。1つの実施形態では、可撓性シースが、必要時に径方向に拡張できるように構成される。図3A〜図3Cは、外向きの力により径方向に拡張できる連続した一体型のシースを含む、軸方向の伸縮性/圧縮性が実質的にほとんど又は全く無い径方向拡張可能シースを示している。この拡張可能な可撓性シースは、軸方向の伸縮性を制限するように実質的に軸方向に配向した非伸縮性繊維又は糸を組み込んだ弾性ポリマーで作成することができる。1つの実施形態では、収縮状態(3aa)にある可撓性シースを、複雑な又は小径の血管内に通し、その後このシースを通じてより大きな装置(3ab)を挿入することができる。従って、この拡張可能なシースにより、大きなシースの前進が不可能な、通り抜けできない、非実用的な、又は解離を生じ得る複雑な又は小径の血管を通じて本発明のエンドグラフト又はDグラフトなどの大きな装置を配置できるようになる。大きな装置を配置した後、患者から拡張シース(3ac)を除去し、又は引き抜くことができる。1つの実施形態では、拡張可能な可撓性シースが径方向に伸縮自在である。拡張可能な可撓性シースは、「ガイドシース」として機能することができる。
【0042】
図4A〜図4Cは、エンドグラフト(4ab)を血管(4ac)内に進入させるように構成された、後退させた状態にある拡張可能なシース(3aa)上に止血用カフ(4aa)を配置する概略図を示している。エンドグラフトを適所に配置した後に拡張シース(3ac)を除去する一方で、血管(4ac)の開口部(4ad)周囲にエンドグラフトを覆って一時的に止血用カフを配置する。
【0043】
図5は、腸骨動脈(13a)を通じて大動脈にエンドグラフトを進めるステップを示している。腸骨動脈が小さく又は狭窄していると、大きなシースを進めることが不可能な又は危険なことがある。従って、図5Aから図5Cに示すように、縮んだ状態(3aa)にある拡張可能シースを前進させ、その後径方向に拡張させて大きな装置(5aa)を通過できるようにする。
【0044】
本発明のいくつかの態様では、外向きの力によって径方向に拡張可能な薄壁を有する連続した一体型のシース体を含む径方向に拡張可能なシースをガイドシースとして提供し、この径方向に拡張可能なシースは、圧縮状態である第1の構成から拡張状態である第2の構成まで軸方向の伸縮性又は収縮を実質的にほとんど又は全く有しておらず、逆もまた同様であることを特徴とする。
【0045】
患者にエンドグラフトを挿入する際に血管の切開部に止血用カフを一時的に配置する方法は、(a)第1の構成にある請求項1に記載の拡張可能なシース上に止血用カフを取り付けるステップと、(b)切開部を通じて圧縮シースを血管に挿入するステップと、(c)シース管腔を通じてエンドグラフトを血管内に進入させてシースを第2の構成に拡張するステップと、(d)止血用カフを切開部の近くに保持するステップと、(e)エンドグラフト及びカフを適所に正しく位置決めした後に拡張シースを除去するステップとを含む。
【0046】
ネックサブアセンブリ
短いネックのエンドグラフトを使用するための1つの実施形態では、腎動脈に腎ステントグラフトを埋め込むことができ、この腎ステントグラフトの金属メッシュ部分が、外部RFソースに電気的に接続されたRF電極(6ad)に取り外し可能に接続される。図6Aに示すように、腎ステントグラフト(6aa)の露出端部(6ab)が、大動脈内壁(6ac)を越えて延び又は突出する。図6Bは、大動脈内部に位置するエンドグラフト(6ae)を示しており、腎ステントグラフト(6aa)の露出端部がエンドグラフト外部と密接に接触してこれを圧迫している。ステント端部(6ab)にRF電流を印加することにより、(図6Cに示す)エンドグラフト繊維内に孔(6ah)を形成して、大動脈(6ag)と腎動脈(6af)の間に血液が通るようにする。エンドグラフトを腎動脈口の境界に密接かつ緊密に圧迫して血液の漏出又は浸出を防ぐ。
【0047】
本発明のいくつかの態様では、大動脈から腎動脈への血液連通を保持しながらAAA治療用エンドグラフトを配置する方法を提供し、この方法は、(a)第1の端部が腎動脈内部にある一方で第2の端部が腎動脈口を越えて突出する腎ステントを腎動脈内部に配置するステップと、(b)AAA領域にエンドグラフトを配置して、エンドグラフトが腎動脈と密接に接触するようにするステップと、(c)腎ステントの第2の端部にRFエネルギを印加してこのRFエネルギにより孔を形成し、腎ステントをエンドグラフトの管腔内に突出させるステップとを含む。1つの実施形態では、エンドグラフトが1対のDグラフトを含む。別の実施形態では、エンドグラフトが、結合可能な近位部分を有する1対のグラフトを含む。
【0048】
図7は、エンドグラフトのネックサブアセンブリを配置する1つの方法を示している。図7Aに示すように、共通ポリマー物理データを使用して、腎臓近位の大動脈の弾性グラフト円柱構成(7aa)を作成することができる。使用する材料は、多孔性、生体適合性、耐久性及び弾性のものとすることができる。構成は、ラピッドプロトタイププロセスと同様のものであってもよい。図7Bに示す第2のステップでは、リム(7ab)を圧縮してゼラチンで鋳造する。この構成(7aa)では、ガイド管を挿入してワイヤ(7ac)を受け入れるようにする。図7Cに示すように、手術時には、構成(7aa)を圧縮して送達シース(7ad)内に取り付ける。その後、この構成を腎動脈領域の周囲で解放する一方で、ガイドワイヤを導入すること(図7Dを参照)により腎動脈(6af)に個々のリム(7ab)を挿入する。
【0049】
図8は、AAAエンドグラフトを埋め込む際に腎動脈を迂回する1つの方法を示している。図8Aに示すように、上腕動脈から挿入した管状ステントグラフト(8aa)を大動脈及び腎臓領域の周囲に埋め込み、遠位端を腎動脈(6af)に挿入し、近位端を大動脈(6ag)内部に留める。次に、(図8Bに示す)上腸間膜を固定して、移植ステントグラフト(8aa)の近位端に腎臓近位発泡体カフ(8ab)を適用する。次に、エンドグラフトのような1対の大動脈腸骨動脈グラフト(8ac)をカフ(図8Cに示す)から挿入する一方で、大動脈腸骨動脈グラフトの遠位端を腸骨動脈に挿入する。腎臓近位発泡体カフは、正常な血流に対する移動、内部漏出又は閉塞を避けるような大きさ及び構成にされる。
【0050】
本発明の1つの態様では、カフと4つのエンドグラフトユニットとを含むAAA治療用エンドグラフトシステムを提供し、個々のエンドグラフトユニットが近位端及び遠位端を有し、4つの近位端を全てカフに配置して固定する一方で、第1の遠位端を延ばして右腎動脈に固定し、第2の遠位端を延ばして左腎動脈に固定し、第3の遠位端を延ばして右腸骨動脈に固定し、第4の遠位端を延ばして左腸骨動脈に固定する。1つの実施形態では、内部漏出を防ぐための手段として、エンドグラフトシステムが、血液を動脈瘤ゾーンに流れ込ませないようにし、又は動脈瘤ゾーンと流体連通しないようにする。
【0051】
図9は、AAA治療用エンドグラフト及び腎ステントを患者の体内に配置する1つの方法を示している。手術時には、エンドグラフト(9aa)を腎動脈(6af)の上の大動脈(6ag)内に配置する。図9Aは、ワイヤ(9ab)を挿入してグラフトを腎動脈領域(9ac)の周囲に刺し通すことを示している。図9Bは、特別な二管腔ステントカテーテル(9ad)を使用してグラフトを貫通点(9ac)に押し進めることを示している。その後、(図9C及び9Dに示すように)二管腔ステントカテーテルのバルーン(9ae)が膨張して腎ステントを操作するための管腔を作り出し、腎ステント(6aa)の一端を腎動脈内部に配置し、他端を大動脈内に配置する。
【0052】
図10は、AAA治療用エンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示している。手術時には、グラフト(10aa)を腎動脈(6af)の上の大動脈(6ag)内に配置する。図10Aは、好ましくは尖った端部を有するワイヤ(10ab)を挿入してグラフトを腎動脈領域(10ac)の周りに刺し通すことを示している。図10Bは、特別な二管腔ガイドカテーテル(10ad)を使用し、第2の管腔がワイヤを受け入れてグラフトを貫通点(10ac)に押し進めることを示している。その後、二管腔ガイドカテーテルのバルーン(10ae)が膨張して腎動脈のためのオリフィス(10af)を作り出す。湾曲ワイヤをガイド内に挿入して引き下げ、(図10Cに示すような)オリフィスを中心に置く。その後、(図10Dに示すように)腎動脈にカテーテル及びステントを挿入して、(図10Eに示すように)腎ステント(10ag)の一端を腎動脈内部に配置し、他端をエンドグラフト内に配置する。
【0053】
本発明のいくつかの態様では、大動脈から腎動脈への血液連通を保持しながらAAA治療用エンドグラフトを配置するための方法を提供し、この方法は、(a)腎ステントを腎動脈内部に配置して、腎ステントの第1の端部を腎動脈内部に存在させる一方で、第2の端部を腎動脈口の周囲に配置するステップと、(b)エンドグラフトをAAA領域に配置して、エンドグラフトが腎動脈口と密接に及び圧力をかけて接触するようにするステップと、(c)口部位周囲にワイヤを提供してエンドグラフトを刺し通し、大動脈から腎動脈に血液連通するように構成された孔を腎動脈内に形成するステップとを含む。1つの実施形態では、この方法の後に、孔の周囲でバルーンを拡張して孔のサイズを拡大させる別のステップが続く。
【0054】
図11は、AAA治療用の代替のエンドグラフトを示している。エンドグラフト(11aa)は、腎動脈口(11af)よりも下に位置するエンドグラフトの近位端(11ac)から始まって腸骨動脈内に延びる不透過性部分と、腎動脈を横切って配置された多孔性部分とを含む。この多孔性部分は、多孔性スリーブの近位端(11ac)から遠位端(11ae)まで延びるオーバーラップゾーン(11ad)などの不透過性部分の上にマクロ多孔性スリーブ(11ab)を固定することにより形成することができる。従って、血液は、大動脈(6ag)から多孔性スリーブを介して腎動脈へ、及びエンドグラフトを介して腸骨動脈へ流れる一方で、動脈瘤ゾーンを迂回することができる。
【0055】
本発明のいくつかの態様は、エンドグラフトの管腔と周辺の動脈瘤嚢との間の血液連通を排除するための不透過性部分と、腎動脈口を横切って配置するように構成された多孔性部分とを含む腹部大動脈瘤(AAA)治療用エンドグラフトに関する。1つの実施形態では、エンドグラフトが、不透過性部分よりも長いマクロ多孔性スリーブを含み、不透過性部分の少なくとも一部の上にマクロ多孔性スリーブを固定することにより多孔性部分が形成される。
【0056】
図12〜図14は、ステントグラフト又はエンドグラフト、システム、及び腹部大動脈瘤の治療に使用する方法の1つの又は別の代替の実施形態を示している。具体的には、図12は、埋め込み目的で動脈瘤大動脈領域(10)内に経皮的に展開する本発明のステントグラフト(21)の1つの実施形態を示している。1つの実施形態では、ステントグラフト(21)が、ネック取り付け部分(22)と、グラフト体又はトランク(23)と、2つの脚部(24a)、(24b)とを含む。ネック取り付け部分(22)は、図13に示すような単一のネック取り付け要素(32)又は図12に示す二重のネック取り付け要素(22a)及び(22b)を含むことができる。グラフトを適所に送達した後の例示的な実施形態では、ネック取り付け要素を径方向に拡張させることができ、大動脈壁の組織に密接に接して、装置がほとんど又は全く動かない状態でネック取り付け部分を適所に固定するような大きさ及び構成にされる。この固定操作は、ネック取り付け要素から突出する数多くの定着用の返しにより実現することができる。これらの返しは、ネック取り付け要素の拡張と同期して外向きに展開するように構成することができる。単一のネック取り付け要素(32)は、(例えば、布カバー又はグラフト材料を使用しない)メッシュ状又は多孔性であってもよく、一般に腎動脈(12)の大動脈から遠位側に取り付けられる。二重ネック取り付け要素の第1の要素(22a)は、少なくとも1つの腎動脈(12)の大動脈から近位側に固定できる一方で、二重ネック取り付け要素の第2の要素(22b)は、腎動脈の大動脈から遠位側に固定される。1つの実施形態では、二重ネック取り付けの第1の要素の拡がった直径が、第2の要素の拡がった直径とは異なる。
【0057】
図13に示すような単一のネック取り付け要素(32)、又は図12に示すような複数のネック取り付け要素を有するネック取り付け部分では、頸部大動脈をシール及び固定するための取り付け要素の遠位にあるグラフトトランクの長さが、測定した頸部大動脈の直径に合う適当な大きさ及び構成にされる。同様に、腸骨動脈内にシールするための個々の脚部の長さ及び直径も、測定した腸骨動脈の固有の直径に合う適当な大きさ及び構成にされる。1つの好ましい実施形態では、単一のネック取り付け要素(32)及び/又は二重ネック取り付け要素の第2のネック取り付け要素(22b)が、グラフトトランクから一体的に延びるグラフト材料を有することができる。
【0058】
2002年5月7日に取得された米国特許第6,383,193号には、自己拡張式大静脈フィルタ装置システムを経皮挿入するための送達システムにおいて、フィルタを、細長く、径方向に可撓性で、軸方向に強固な管状部材内に詰め込んだ状態で制約することが開示されており、該特許は、その内容全体が引用により本明細書に組み入れられる。ネック取り付け部分を、軸方向に剛直で径方向に拡張可能な形状記憶ワイヤフレームとすることにより、この部分をはるかに単純かつ迅速に挿入及び展開して、ワイヤフレーム上の返し又は定着具などの関連する外部結紮糸により恒久的に固定されるようにすることができる。ワイヤフレームは、径方向の拡張及び定着に適した実質的にジグザグなパターン、メッシュ状又はその他の適当なパターンを含むことができる。
【0059】
形状記憶合金で作ったワイヤフレームは、元々の熱安定構成から第2の熱不安定構成に変形することができる。所望の温度を適用することにより、合金が元々の熱安定構成に戻るようになる。この用途に特に好ましい形状記憶合金は、ニチノールという銘柄で市販されている約55.8重量パーセントのNiを含む二元ニッケルチタン合金(NiTi合金)である。このNiTi合金を、生理的温度で相変態を受けるように構成することができる。この材料で作ったステント又はワイヤフレームは、冷却時に変形することができる。従って、例えば摂氏20度を下回るような低温ではステントが圧縮され、これを所望の場所に送達できるようになる。冷却生理食塩溶液を循環させることにより、このステントを低温に保持することができる。このステントは、冷却生理食塩水を除去した場合、及び患者の体内のより高い温度、一般には摂氏約37度に曝された場合に拡張する。
【0060】
血管内でステントグラフトを定着及びシールするように構成された、実質的に管状のステント構造を含むグラフトトランク(23)は、内部にグラフト材料を含む拡張可能な管状金属ステントとすることができる。グラフト材料又は要素は、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、シリコン、ウレタン、及びSpectra(商標)という銘柄で市販されているもののような超軽量ポリエチレンを含む織布、編み布、縫合材、押出材、又は鋳造材料を含むあらゆる数の適当な生体適合材料から作ることができる。材料は、多孔性であっても、又は非多孔性であってもよい。例示的な材料としては、Dacron(商標)又はその他の好適なPET型ポリマーで作られた織りポリエステル繊維が挙げられ、これを折り重ねてサイズを縮小させ、径方向に拡張可能なステントの一端又は両端に縫合又は接着手段によって取り付ける。ステントが自己拡張するか又はバルーンで拡張されると、グラフトがステントの周囲で開く。1つの実施形態では、自己拡張式ステントと組み合わせたポリウレタンの紡糸マトリクスで作られた多孔性管腔内グラフトを提供する。弾性ポリウレタン繊維が、グラフトをステントとともに圧縮できるようにし、これにより比較的小さなカテーテルを通じてステントグラフトを送達できるようになる。
【0061】
グラフト材料は、トランク部分(23)の少なくとも一部及び脚部(24a、24b)全てに加えられる。縫合により、下にある構造の様々な部分にグラフト材料を取り付けることができる。1つの実施形態では、グラフト材料が、トランク部分(23)の端部上に連続ステッチパターンで、及び他の部分に単一のステッチによって加えられる。あらゆるパターンを利用して、またステープルなどのその他の装置を利用して、下にある構造にグラフト材料を接続できることを注記しておくことが重要である。縫合は、好ましくは高耐久性かつ耐摩耗性のあらゆる好適な生体適合材料を含むことができる。1つの実施形態では、グラフトトランクが、上側接触領域(14)及び下側接触領域(15)において大動脈と密接に接触して、血液が腹部大動脈の動脈瘤領域(11)に浸出するのを防ぐ。
【0062】
例示的な実施形態では、ステントグラフト(21)の第1の脚部(24a)が右総腸骨動脈(13a)内に配置され、第1の脚部(24a)の遠位端部材(25a)に、自己拡張可能又はバルーン拡張可能なニチノールワイヤフレームが使用される。同様に、第2の脚部(24b)は、自己拡張可能又はバルーン拡張可能遠位端部材(25b)を含む左総腸骨動脈(13b)に挿入される。ステントグラフトを適所に配置して展開した後に、大動脈(コア流路の外側)の動脈瘤領域(28)を発泡体の塞栓でさらに治療することができる。脚部(24a)及び(24b)の端部を広げ、下流の動脈により良好に定着してシールすることができる。この広がる部分は、ステント要素の最終部分を広げることにより形成することができる。脚部は、大動脈の動脈瘤部分において血液が貫流するバイパス導管である。患部への血流を排除することにより圧力が減少し、ひいては動脈瘤破裂の可能性がほとんどなくなる。
【0063】
ここで図13を参照すると、本発明による個々の端部に定着要素及び密封要素を有するグラフトトランク(33)を含むエンドグラフト又はステントグラフト(31)の例示的な実施形態を示している。1つの実施形態では、ステントグラフト(31)が、トランク(33)のいずれかの端部から徐々に狭くなる中心トランク部を有することを特徴とする。別の実施形態では、グラフトトランク(33)の中間部が、少なくとも1つの発泡体注入ポート(36)を備える。この発泡体注入ポートは、針の付いた発泡体含有カテーテルにアクセスするための自己密封部位であってもよく、或いは丸い先端の発泡体含有カテーテルにアクセスするための一方向弁であってもよい。さらに別の実施形態では、ステントグラフト(31)が、トランクの外面にポリマー被膜又はポリマー膜(38)を有し、このポリマー被膜又は膜を血栓形成性として発泡体の塞栓を促進してもよく、或いは非血栓形成性として発泡体のステントグラフトへの接着を軽減させてもよいことを特徴とする。
【0064】
本発明のいくつかの態様は、ネック取り付け部分と、グラフト体と、脚部とを含む腹部大動脈瘤(AAA)治療用エンドグラフトに関し、ネック取り付け部分は、腎動脈の近位に配置されるための少なくとも第1の定着要素と、第1の定着要素から軸方向に離間して配置された、腎動脈の遠位に配置されるように構成された第2の定着要素とを含む複数定着機構を有する。1つの実施形態では、複数定着機構が、2つの腎動脈間の領域の周囲に配置されるように構成された第3の定着要素を含む。
【0065】
本発明の1つの態様は、ネック取り付け部分と、近位端と第1の腸骨動脈内部に固定されるべくネック取り付け部分から第1の腸骨動脈へ延びる長さとを有する第1の発泡管と、近位端と第2の腸骨動脈内部に固定されるべくネック取り付け部分から第2の腸骨動脈へ延びる長さとを有する第2の発泡管とを含むAAA治療用エンドグラフトに関し、両発泡管はネック取り付け部分に固定される。1つの実施形態では、第1の発泡管の第1の近位端が、第2の発泡管の第2の近位端に実質的に近い距離に位置する。別の実施形態では、ネック取り付け要素がハンガーを含み、第1の発泡管の近位端がフックで構成されて、フックをハンガーに確実に連結する。さらに別の実施形態では、第1の発泡管の近位端が、ネック取り付け要素に磁気的に連結される。好ましい実施形態では、第1の発泡管の遠位端を広げ、この遠位端を第1の腸骨動脈の周辺組織に定着させてシールし、又は第1の発泡管の遠位端をバルーン拡張し、この遠位端を第1の腸骨動脈の周辺組織に定着させてシールし、或いは第1の発泡管の遠位端を形状記憶材料で作成し、この遠位端を第1の腸骨動脈の周辺組織に定着させてシールする。
【0066】
本発明の1つの態様は、発泡管の近位部が可膨張性要素で作成されたエンドグラフトに関し、この近位部を膨張させて血管の壁に定着させ固定することができる。1つの実施形態では、発泡管の少なくとも1つが可膨張性管体をさらに含む。別の実施形態では、発泡管の少なくとも1つが、径方向の位置決め構造を使用しないように十分なフープ強度を有する可撓性グラフトとして機能する、成形充填材料で満たされた二重壁バッフル管体を含む。さらに別の実施形態では、発泡管の少なくとも1つの端部のバッフル層の一部を裏返してカフを形成する。好ましい実施形態では、第1の発泡管上に取り付けられた一方向弁を介して動脈瘤嚢に導入される、ポリビニルアルコール発泡体、ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、セルロースアセテート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、アクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択した発泡材料でAAAの動脈瘤嚢を満たし、その後これを原位置で硬化させる。発泡材料は、原位置においてUV光又は熱で処理される。
【0067】
カフサブアセンブリ
ここで図14を参照すると、本発明によるモジュール式二管腔エンドグラフトシステムの例示的な実施形態を、このようなシステムを体内に配置するため要素及び手順とともに示している。本発明のいくつかの態様は、大動脈及び左右腸骨動脈周辺の動脈壁にある腹部大動脈瘤を修復する方法に関し、この方法は、(a)左右大腿動脈の一方にガイドワイヤを経皮的に導入して、左右腸骨動脈のそれぞれ一方に進入させ、その後動脈瘤の領域を越えて大動脈の管腔に進入させるステップと、(b)ガイドワイヤ上に嵌合するようになっているガイドワイヤ管腔を内部に形成した第1の展開カテーテルの遠位端部分の周囲に崩壊状態のネック取り付け要素を組み立てるステップと、(c)ネック取り付け要素を腎動脈口近くの大動脈の部位に送達し、大動脈管腔の直径に近似した所定のサイズの取り付けシートを動脈瘤の領域を越えて施すステップと、(d)ネック取り付け要素を自己拡張又はバルーン拡張により展開して、この要素を返しなどで適所に定着又は固定させるステップと、(e)第1の展開カテーテルを回収するステップと、(f)遠位端と近位端の間に延びる連続する側壁を有し、いずれかの端部又は両端を金属メッシュ又はステント挿入要素で補強することができる第1の細長い管状グラフトプロテーゼを第2の展開カテーテルの遠位端部分の周囲に組み立てるステップと、(g)第1のグラフトプロテーゼを送達して、近位端がネック取り付け要素の周囲に、及び遠位端が右腸骨動脈の1つの周囲に位置するようにするステップと、(h)第1のグラフトプロテーゼの近位端を定着具によってネック取り付け要素上に展開する一方で、右腸骨動脈内に金属メッシュを展開するステップと、(i)第2の展開カテーテルを経皮的に回収するステップと、(j)第2の細長い管状プロテーゼ及び第3の展開カテーテルを使用してステップfからステップiまでを繰り返し、左腸骨動脈内に金属メッシュを展開させるステップとを含む。好ましい実施形態では、2つのグラフトプロテーゼの近位端の管腔開口部に隣接する円周領域をシールして、腹部動脈瘤内の2つのプロテーゼの外部に血液が流れ込むのを防ぐ。別の好ましい実施形態では、遠位端が、展開後にグラフト管腔及び腸骨動脈を動脈瘤部分からシールするような大きさ及び構成にされる。
【0068】
図14Aに示すように、腹部大動脈瘤の治療目標は、血液が点線(12)の周囲に沿って流れるのを維持することにより、腹部大動脈内の血流を実質的に一定に制限することである。第2の目標は、動脈瘤の動脈部分(11)を迂回することにより、胸部動脈から腸骨動脈(13a、13b)に十分な血液量を供給することである。図14Bに示すような例示的な実施形態では、エンドグラフトシステムを位置決めするための手順の第1のステップは、動脈瘤の上ではあるが腎動脈(12)から遠位にある健常組織にネック取り付け要素(41)を経皮的に送達することである。その後、返し(42)などの定着部材を使用してネック取り付け要素を適所に展開する。
【0069】
1つの実施形態では、ネック取り付け要素のバルーン拡張が、ステント状要素を径方向に拡張させて要素を周辺組織に定着させるのに十分な圧力で行われる。
【0070】
第2のステップは、図14Cに示すように十分な強度、可撓性及び長さの第1の管(43)を経皮的に送達して、管(43)の近位端(44)をネック取り付け要素(41)の一部に固定する一方で、遠位端部分(45)を右腸骨動脈(13a)内に配置することである。1つの実施形態では、ネック取り付け要素がハンガー(62)を備え、第1の管の近位端(44)をフック(61)で構成して、フックをハンガーに確実に連結するようにする。磁石連結又はボタンスロット連結などの他の連結機構も実現可能である。上述したように第1の管の遠位端(46)を広げ、バルーン拡張させ、又は形状記憶材料で作って、この遠位端を周辺組織に定着させシールすることができる。
【0071】
ここで図14Dを参照すると、十分な強度、可撓性及び長さの第2の管(53)を腹部大動脈領域に経皮的に送達して、管(53)の近位端(54)をネック取り付け要素(41)の部分に固定する一方で、遠位端部分(55)を左腸骨動脈(13b)内に配置している。上述したように、第2の管の遠位端(56)を広げ、バルーン拡張させ、又は形状記憶材料で作って、この遠位端を周辺組織に定着させシールすることができる。
【0072】
発泡体の塞栓が始まる前に、血管を流れる血液の残り部分から動脈瘤大動脈領域(11)をシールすることができる。図14Eに示すような1つの実施形態では、第1の管(43)に第1の近位密封部材(47)が設けられ、第2の管(53)に第2の近位密封要素(57)が設けられる。密封要素(47、57)は、互いに重なって配置され、上部健常大動脈領域の周囲で管を越えて開放領域を覆うような大きさ、構成、及び配置にされる。密封部材(47,57)を管の一体部分として設けることもできる。図15に示すような1つの好ましい実施形態では、管(43a、53a)の近位端(44a、54a)が図15に示すようにトランペット形状(59)に構成され、ネック固定領域(63)周囲の空間を密接に占有するような大きさにされる。1つの実施形態では、形状記憶材料を使用することにより、トランペット形の近位端が拡張可能となる。
【0073】
代替の実施形態では、第1及び第2の管(43、53)用のストッパ(48、58)で、遠位部がそれぞれ血管壁に対してシールされる。動脈瘤(11)内に発泡材料を導入し、原位置で硬化させることができる(図14F)。この場合、近位密封部材(47及び57)を使用しなくても、発泡材料は動脈瘤内に留まると考えられる。例示的な実施形態では、硬化前の発泡材料を、管(43、53)を通じて送達ポート(49及び59)内に送達することができる。上述したように、送達ポートは自己密封部位であってもよく、或いは発泡体含有カテーテルにアクセス可能な一方向弁を有していてもよい。
【0074】
本発明のいくつかの態様は、ネック定着機構及び2つの発泡管を有するエンドグラフトシステムに関し、血液が発泡管内を上部大動脈から腸骨動脈へ流れることにより動脈瘤を迂回する。1つの実施形態では、動脈瘤が、実質的に原位置で硬化される発泡材料で満たされる。別の実施形態では、発泡材料が、発泡管上に取り付けられた一方向弁を介して動脈瘤に導入され、その後原位置で硬化される。発泡材料は、ポリビニルアルコール発泡体、EVALポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、セルロースアセテート、p−HEMA(ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、アクリレート、これらの組み合わせなどであってもよい。
【0075】
ポリビニルアルコール発泡体(PAF)は、生体適合性、進行性血栓症及び線維症の促進、不変性、圧縮性、及び管理容易性を含む、他の塞栓材料に勝る数多くの利点を示す。臨床例として、動静脈奇形、動静脈瘻、髄膜腫、鼻咽頭腫瘍を含む塞栓の影響を受ける病気の種類、特にAAA治療の例が示されている。
【0076】
圧縮可能な発泡材料で形成された血管インプラントは圧縮構成を有しており、ここから具体化すべき血管部位の形状及びサイズに実質的に一致する構成に拡張させることができる。インプラントは、小型化した血管部位モデルの初期構成を有する疎水性のマクロ多孔性発泡材料で形成され、ここから圧縮構成に圧縮できることが好ましい。このインプラントは、血管部位を走査してデジタル化した走査データセットを作成し、この走査データセットを使用して血管部位の3次元デジタル仮想モデルを作成し、この仮想モデルを使用して血管部位の小型物理モールドを作成し、このモールドを使用して小型化した血管部位モデルの形の血管インプラントを作成することにより作成することができる。血管部位を塞栓させるために、遠位端を血管部位に通した送達カテーテル内にインプラントを圧縮して通す。インプラントは、血管部位に入ると原位置で拡張して実質的に血管部位を満たす。カテーテル内には保持要素が含まれ、その遠位端がインプラントに着脱可能に接続されている。可撓性の管状展開要素を使用して、インプラント及び保持要素をカテーテルに通し、その後インプラントがカテーテルから排出されて血管部位に入ると、インプラントを保持要素から分離する。1つの好ましい実施形態では、圧縮可能発泡材料が原位置で凝固し、具体化すべき血管部位の形状及びサイズと実質的に一致する可搬型移動材料として注入される。
【0077】
エンドプラグ
(例えば、700、300、30ミクロンなどの)異なる気孔を含むPVAスポンジを、例えば7mmの管腔を有する25mmの「二重D」構成又は7mmの管腔を有する10mm長の管などの異なるサイズの管として作成することができる。乾燥状態のPVAスポンジは容易に圧縮され、完全に再水和して数分で元の状態に拡張することができる。本発明の1つの態様は、最適な気孔を含むPVAスポンジ管をエンドプラグとして圧縮乾燥形態で導入すること、及びこれが動脈瘤全体にわたって原位置で拡張できるようにすることである。次いで、管の貫通管腔を、拡張したスポンジの直径よりも小さな直径でステント挿入するか又はステント移植する。真空を印加すること、ラップすることによって多孔性スポンジプラグを圧縮し又はファネルに注入することができる。乾燥スポンジプラグをステント又はバルーン上に圧接し、シースを通じてワイヤ上に押し付け、或いは独自の送達装置に予め取り付けることができる。
【0078】
送達シース法は、チップマーカー付きの長いシースを患者の挿入部位まで挿入する第1のステップを含む。プッシャー/カニューレ上に圧縮プラグを取り付け、その後シースを通じてプラグ/カニューレを所望の展開部位まで挿入する。展開後、カニューレマーカー及びシース先端マーカーが整列するまでシースを引っ込める。これにより、シース内のスポンジの遠位約1cmが固定されるが、スポンジの大部分は水和される。この後、遠位1cmを超えるシースを引っ込めてスポンジを適所に解放することにより展開を完了する。
【0079】
図16Aは「二重D」スポンジを示しており、図16Bは血管に連結シールを施すための「波型スポンジ」を示す。適合する1対のスポンジが、分岐グラフトを個々の鼠径部から2つの部品の形で挿入できるようにするため、これが目立ちにくくなる。1つの実施形態では、送達カニューレが、複数の水和孔を有してスポンジの拡張を加速させる。別の実施形態では、温生理食塩水をパルス送達することによってもスポンジの拡張を加速させる。
【0080】
本発明の1つの態様では、動脈瘤血管治療用の1対の適合するスポンジエンドプラグを提供し、このプラグを第1の構成に圧縮して血管に送達し、再水和を介して第2の構成へと拡張して血管を塞ぐ。1つの実施形態では、プラグが貫通管腔を有する。別の実施形態では、個々のプラグが、互いに向かい合う一致する平らな表面を有する。さらに別の実施形態では、個々のプラグが、調和する波型表面を有して血管に連結シールを施す。代替の実施形態では、エンドプラグの拡張が、形状記憶ニチノールワイヤで強化される。
【0081】
図17Aに示すように、スポンジプラグ(17aa)を定着構造で補強又は支持することができる。スポンジプラグは、埋め込みワイヤ支柱(17ab)、フック(17ac)及び貫通管腔(17ad)を有する。スポンジ付加物は、x線を視覚化するためのマーカー(17ae)又はタンタル粉末(17af)としてX線不透過性要素を組み入れることもできる(図17B及び図17C)。
【0082】
図18は、縫合を締め付けることにより形状を変化させることができる縫合支持スポンジプラグと、ワイヤを形状記憶ニチノール材料などで作成した場合に形状を変化させることができるワイヤ支持スポンジプラグとを含むスポンジエンドプラグの様々な構成を示している。
【0083】
本発明の1つの態様は、プラグを過度に移動させることなく適所に固定するための定着手段を含む、動脈瘤血管治療用のスポンジエンドプラグを提供する。別の実施形態では、エンドプラグをX線不透過性に構成し、又はこれに少なくとも1つのX線不透過性マーカーを組み込む。
【0084】
内部漏出
動脈瘤嚢の排除はステントグラフト治療の主な目標であり、動脈瘤の「全排除」により臨床的成果が定義される。しかしながら、時には、動脈瘤嚢への血流を全て排除するためのステントグラフトに障害が起こることがある。実際のところ、内部漏出が合併症の、従ってAAAの管腔内治療における障害の主要な原因となる。内部漏出とは、装置配置後に動脈瘤嚢に持続的に流れる血液が存在することを表す用語である。いくつかの種類の内部漏出の管理についてはまだ議論の余地があるが、ほとんどは、手術、さらなるステント移植、又は塞栓でうまく閉塞させることができる。これらの提案される病因に基づいて4つの種類の内部漏出が定義されてきた。
【0085】
血管内大動脈瘤修復の0〜10パーセントで発生するタイプIの内部漏出は、近位又は遠位取り付け部位のいずれかにおける不適格なシールに起因する。病因としては、取り付け部位におけるエンドグラフトの直径が標準よりも小さいこと、及び大きく石灰化した又は厚い血栓に囲まれた血管壁への取り付けが非効果的であることが挙げられる。このような漏出は配置直後に起きる可能性もあるが、時間とともに拡張する大動脈の病的部分に装置を展開した場合の追跡調査時に遅れたタイプIの内部漏出を見いだすことができ、取り付け部位のシールの裂け目を招く。
【0086】
タイプIの内部漏出は、動脈瘤嚢が組織圧に曝されたままとなり、動脈瘤破裂になりやすく、漏出の自然閉鎖は希であるので、これらを発見し次第修復しなければならない。初期配置時に発見した場合には、長期間における抗凝血の反転及び展開バルーンの再膨張により修復することができる。これらの漏出はまた、病気に冒された端部上に小さな拡張グラフトを配置することで修復することもできる。通常、これらの方法は、動脈瘤を排除するのに十分なものである。経皮的治療が漏出に無効である希な状況では、開腹手術による修復への転換が必要となることがある。
【0087】
タイプIIの内部漏出は最も一般的な種類であり、血管内大動脈瘤の修復の10〜25パーセントで発生し、患者の血管枝から動脈瘤嚢の内外への流れを表す。これらは、ほとんどの場合処置後のCT時に同定され、エンドグラフトの外側ではあるが、動脈瘤嚢内に一群のコントラストとして現れる。タイプIIの内部漏出の最も頻度の高い発生源は、患者の腰動脈及び患者の下腸間膜動脈を通じた側副逆流である。嚢は側副血行路を通じて満たされるので、CT走査の動脈相上では内部漏出を視覚化することができず、従って遅延撮像が必要となる。
【0088】
タイプIIの内部漏出の重要性及び管理については議論の余地がある。研究者によっては、症例の30〜100パーセントで自然溶解が起きるので、注意深くCT画像上の動脈瘤容積及び形状に従いながら、「成り行きを見る」方法が好ましいと主張する者もある。しかしながら、タイプIIの内部漏出の存在下における動脈瘤嚢内の組織圧が注目され、より微妙な状況を示している。
【0089】
タイプIII及びタイプIVの内部漏出はそれほど多くない。タイプIIIの内部漏出は、モジュール式システムの要素間の分離から動脈瘤嚢内への流れ、又はエンドグラフト繊維の断裂を表す。タイプIVの内部漏出は、繊維の細孔を通じた出血に起因する。タイプIVの漏出は自然治癒するが、タイプIIIの漏出は追加のエンドグラフトで動脈瘤内の組織流及び組織圧を取り除くことにより修復される。
【0090】
動脈瘤嚢内で同定した流れ(内部漏出)は、取り付け部位(タイプI)又は装置(タイプIII)の障害を表すことがある。これらの障害モードは、血流及び組織圧が動脈瘤嚢内に伝えられ続け、患者を持続的に動脈瘤拡大及び破裂の危険に曝すことになるので緊急修復を要するということが一般的な合意である。
【0091】
本発明の1つの態様は、軟質の血栓形成「パイプクリーナ」状軟質充填材料(19aa)をAAA嚢内に、好ましくは送達カテーテル(図19に示す)を通じて押し出し又は挿入することによる内部漏出溶液のための装置及び方法に関する。この材料は、PVA(ポリビニルアルコール)、ダクロン(ポリエステル)糸及び血栓形成特性を強化した同様のものとすることができる。「パイプクリーナ」状材料の直径は、糸状(0、0〜0)から最大10〜20mmまでとすることができる。材料は軟質で押すことができないので、1つの解決策は、(図20に示すような)先端機構によってカテーテル(19ab)を通じて「パイプクリーナ」状材料を引くことである。1つの実施形態では、先端(20aa)の向きを一方向に変えて材料を外向きに引くと、先端が前方に螺旋状に移動するように構成される。先端の向きは、カテーテル(19ab)の近位ハンドルにトルクを伝える接続マンドリル又はワイヤを介して、又は先端部を押して向きを変えるための生理食塩水の注入を通じてのいずれかによって変えることができる。材料を嚢の内側に配置して先端から分離した後に、先端の向きを反対方向に変えると先端がカテーテル管腔に回収される。そして患者からカテーテルが回収される。
【0092】
別の実施形態では、二管腔カテーテルの第2の管腔(21ac)に移動可能に配置することができる再位置決め可能スネアにより、図19に示すような軟質充填材料をカテーテルから引き抜くことができる。図21Aは、二管腔カテーテルの第1の管腔(21ab)内の点AAにおいて軟質充填材料と係合したスネア(21aa)を示しており、図21Bは、軟質充填材料(19aa)がスネアによって上方に引っ張られていることを示している。その後、スネアを点AAで軟質充填材料から緩め、点BBで再位置決めして、軟質充填材料にさらに係合させ(図21Cに示す)、軟質充填材料(19aa)が望むように嚢に挿入されるまで係合−引き込み−係合解除−再位置決め操作を繰り返す。
【0093】
代替の実施形態では、同心の内側カテーテル(22ab)及び外側カテーテル(22aa)を含むカテーテルの組を使用して、軟質充填材料(19aa)を嚢内に送達し、外側カテーテルの管腔と内側カテーテルのシースとの間の隙間内部にバルーン(22ac)を移動可能に配置する。1つの実施形態では、バルーンが、円周凹面を示すような大きさ及び構成にされる。挿入ステップ前には、軟質充填材料が内側カテーテルの管腔を緊密及び/又は密接に占有する。次にカテーテルの組を嚢領域に送達する。操作時には、図22Aに示すように、最初に内側カテーテルを外向きに押して、軟質充填材料の一部を嚢の内部に送達する。内側カテーテルの遠位端を外向きに押してバルーンの近位端周囲でバルーンと係合させる。次に、バルーン(22ac)を膨張させ、軟質充填材料を外側カテーテルのシースに対してピン留めし、内側カテーテルが内向きに後退できるようにする。軟質充填材料が全て嚢の内部に送達されるまで操作を繰り返すことができる。
【0094】
さらに別の実施形態では、遠位部分が狭くなったノズルカテーテルを使用して、軟質充填材料を嚢内に油圧送達することができる。図23は、カテーテル管腔(23ab)、ネックダウン管腔(23ac)を含み、軟質充填材が緩んだ形でカテーテル管腔の一部を占有する本発明のノズルカテーテル(23aa)を示している。生理食塩水又は適切な流体(23ad)を、ネックダウン部を通じて実質的に軟質充填材料を押しつぶす速度で油圧導入して軟質材料を嚢内に押し込み又は運び込む。
【0095】
本発明のいくつかの態様は、軟質血栓形成「パイプクリーナ」状軟質充填材料(19aa)をAAA嚢内に、好ましくは送達カテーテルを通じて挿入する方法に関する。この材料は、PVA(ポリビニルアルコール)、ダクロン(ポリエステル)糸及び血栓形成特性を強化した同様のもので作ることができる。
【0096】
AAA装置及び方法
本発明のいくつかの態様は、カテーテル室内で局所麻酔を使用して経皮的送達(好ましくは12フレンチ以下の小型送達カテーテル)を行うという臨床的ニーズを満たす改良したモジュール式AAA装置に関する。モジュール式装置は複数のサイズを有することができるが、特注ではない。装置は、とりわけネック取り付け、ねじれ及び腸骨生体構造に対して解剖学的に完全に適合できるように構成される。最新の装置は、大動脈に沿って同じ軸方向立面にない短頸及び/又は2つの腎動脈を有する患者に移植を行うのに特に適している。図7は、大動脈に沿って同じ軸方向立面にない2つの腎動脈の問題を解決するためのいくつかの手順及び手段を示している。図9は、短頸の問題を解決するためのいくつかの手順及び手段を示している。
【0097】
図24は、(A)従来のAAA装置と、(B)本発明の改良したAAA装置との比較を示している。通常、従来技術の装置は、腸骨動脈に挿入するための分岐した遠位部分を有する管状グラフトである。従来の装置の限界として、とりわけ大きなイントロデューサーサイズ、金属/繊維構成、内部漏出する傾向、正確なサイズの必要性、及び多くの装置在庫の必要性を挙げることができる。本発明の新たな改良した装置は、圧縮可能な発泡管、経皮的送達、2〜10mmの管腔、UV、熱又は化学反応によって原位置で矯正される導入軟質材料、及び発泡体充填血管の格子を含むことができる。
【0098】
発泡体が硬化するとより硬くなることにより、原位置で動脈瘤(25ac)上の拍動性壁応力を緩和する。初期軟質構成では、(図25Aに示すように)発泡体(25ab)が管腔を満たしてこれを密封する。発泡管を、送達器具(25ae)からバルーン(25ad)又は圧縮発泡管(25aa)を拡張するためのその他の拡張可能手段(ステント、バスケット、その他)を覆って(図25Bに示すような)圧縮構成で導入した。発泡管は、流体接触及び/又はバルーン拡張(図25Cに示すような)により拡張する。発泡体の格子は、バルーン送達を通じてUV、熱、化学物質又は生物学的製剤で硬化させることにより硬くなる。硬化時間は、臨床的ニーズを満たす材料の選択に応じて約1分から数週間とすることができる。
【0099】
1つの実施形態では、(図26Aに示すように)管状グラフト(26aa)が個々の端部にカフ(26ab)を含み、このカフは、カフが治療を行う間にグラフトを適所に保持する突起物(26ac)を有する。図26Bは、管状グラフト(26aa)の平面断面図を示している。別の実施形態では、本発明のエンドグラフトシステムのカフが発泡体カフを含み、この発泡体は、硬化性発泡材料から作られて原位置で硬化することができる。さらに別の実施形態では、第1のエンドグラフトの第1の近位端が、第2のエンドグラフトの第2の近位端に実質的に近い距離にある。
【0100】
別の実施形態では、目立たない、経皮的送達による、耐内部漏出性血管グラフトを作成するための装置を図27Aに示している。このような装置(27aa)のための主要概念は、貫通管腔を有し、好ましくは可膨張性端部(27ab)及び/又は膨張体(27ac)を含む可膨張性プロテーゼである。このプロテーゼは、従来技術のステントグラフトの、大きな導入サイズ及び内部漏出を生じる困難な血管サイズという2つの主な不利点を解決する。プロテーゼを圧縮形態で導入し、(対照及び/又は生理食塩水などの)流体で膨張させて位置決めし、漏出を試験することができる。正しく位置決めされるとカフが収縮し、定位置に取り付いて硬化する液体ポリマーで再膨張する。硬化性液体ポリマーとしては、EVAL(ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、セルロースアセテート、p−HEMA(ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート))、アクリレート、これらの組み合わせなどを挙げることができる。プロテーゼは、PTFE、ポリエステルなどの超薄型微小孔性材料で作られる。個々の層は、圧縮した際の目立ち具合を減少させるように非常に薄く(例えば、50mμ未満)される。p−HEMAは、水中でヒドロゲルを生成するポリマーである。p−HEMAは、その中心炭素の周囲で回転することによりヒドロゲルとして機能する。空気中では、非極性メチル側が外向きに向きを変え、材料を脆弱化し、粉砕して正しいレンズ形状にし易くする。水中では、極性ヒドロキシエチル側が外向きに向きを変えて、材料が可撓性になる。
【0101】
カフ(27ab)は、(図27Bに示すような)より小さな血管で使用するためのグラフトよりは最低限大きく、又は(図27Cに示すような)大動脈などの血管内では有意に大きくなるような大きさ及び構成にすることができる。例えば、管腔直径D1を約2〜10mmにすることができるのに対し、カフ外径D2は約4〜12mmにすることができる。別の用途では、管腔直径D3を約6〜14mmにすることができるのに対し、カフ外径D4を約24〜36mmにできることが好ましい。
【0102】
カフは、別個に導入してもよいし、或いはこれらをエンドグラフトの一体型部品としてもよい。図27Dは、膨張中にカフ及び/又はグラフトを一時的に適所に固定して、血管形成術用バルーン(25ad)上に配置することにより相を位置決めできることを示している。
【0103】
別の実施形態では、硬化又は成形充填材料で満たした二重壁バッフル管が、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないだけの十分なフープ強度を有する可撓性グラフトとして機能する。管グラフト(28aa)のバッフル(28ab)は、液体の自己硬化ポリマー(図28Aに示すような)で満たされる。1つの実施形態では、十分なフープ保持強度を提供するように構成された正しい短距離の場合、バッフルが管グラフトの端部から内向きに(反対端に向かって)しか延びない。図28B及び28Cに示すように、バッフル管を構成する1つの方法は、支持バッフルを有する2層の単一の又は複数の管腔構成においてPTFEを押し出すことであってもよい。内層(28ac)及び外層(28ad)の両方は、約10〜30ミクロンの壁厚を有する。押し出し後に端部をシールして、基本的に(図28Dに示すような)貫通管腔を含むバルーンとなるものを作り出す。(図28Eに示すように)バッフルを有する二管腔押し出しを行うことも有用である。代替の実施形態では、管の少なくとも一端のバッフル層の一部を裏返して(図28Eに示すような)カフを作り出すことができる。
【0104】
別の実施形態では、カフを複数の貫通管腔で構成して、分岐流路を形成できるようにすることができる(図29参照)。このようにして、目立たない「2孔」カフ及び2つの小さな直径のグラフトを使用して大動脈を閉塞することができる。例えば、2つの10mmステントグラフトを経皮的に挿入することはできるが、単一の24mmグラフトは挿入することができない(従来技術)。
【0105】
原位置発泡グラフトの導入方法
第1のカフを(図30Aに示すような)腎動脈よりも下の大動脈領域内に導入してここを占有した後、第1のカフにバルーンカテーテルを導入してバルーン膨張させる(ステップ1)。カフ管腔内でマイクロカテーテル又はその他の適当な手段を使用して流体でカフを膨張させる(ステップ2)。次に、第1のカフ領域に第2の管腔にカテーテルを挿入する(ステップ3)。血管造影図を使用して位置及びシールをチェックし、必要であれば再位置決めする(ステップ4)。図30Bは、第2のカフを小径方式で腸骨動脈に挿入するステップ(ステップ5)を示している。液体ポリマーでカフを満たし、熱、UV、溶剤溶解、化学反応又は沈降反応を使用して液体ポリマーを硬化させる(ステップ6)。次に、図30Cに示すようなステントグラフトを挿入する(ステップ7)。代替の実施形態では、(図30Dに示すような)一致する又はD型のカフを有する2カフグラフトを適用することができる。
【0106】
バルーンエンドグラフト
図31は、金属又は剛性支持要素(「バルーンエンドグラフト」)を使用せずに二重層可膨張性バルーンで作成したエンドグラフトの1つの実施形態を示している。バルーンエンドグラフト(31aa)は、流体、生理食塩水又は硬化性軟質ポリマーで膨張できる空間を間に有する二重層で作られる。1つの実施形態では、エンドグラフト(31aa)が、ネック取り付け部材(31ab)と、管状本体(31ac)と、分岐遠位端(31ad、31ae)とを含み、ネック取り付け部材は、上側ネック取り付けリングユニット(31ba)と、下側ネック取り付けリングユニット(31bb)と、流体連通のためのスループット管腔を備えた、上側ネック取り付けリングユニットと下側ネック取り付けリングユニットとを接続する少なくとも2つの接続ユニット(31bc)とを含むことができる。1つの好ましい実施形態では、上側ネック取り付けリングユニット(31ba)が、近位腎動脈(31ca)と遠位腎動脈(31cb)との間に配置されるように構成されるのに対し、下側ネック取り付けリングユニット(31bb)は、遠位腎動脈(31cb)の遠位に配置されるように構成される。別の好ましい実施形態では、接続ユニット(31bc)の数を3又はそれ以上として、実質的に互いに平行な2つのネック取り付けリングユニットを保持するようにする。1つの実施形態では、片方又は両方の遠位端に任意の導入ポートが設けられ、この導入ポートは自己密封式であり、或いは空間に流体を注ぎ込んで可膨張性エンドグラフトを膨張させるための一方向弁を有する。
【0107】
1つの例示的な実施形態では、バルーンエンドグラフトを折り畳み、送達シース又はカテーテルを介して最小限目立たないようにAAA部位に送達する。腎動脈口の周囲にネック取り付け部材を配置し、右及び左腸骨動脈に2つの分岐遠位端をそれぞれ配置したら、注入カテーテル(31ag)を介して第1の導入ポート(31af)を通じて流体又は硬化性ポリマー発泡体を導入する。空間全体が発泡体で満たされるまで硬化性ポリマー発泡体を注ぎ、その後原位置で硬化させる。1つの好ましい実施形態では、ネック取り付け部材が膨張したら、上側及び下側ネック取り付けリングユニットが大動脈壁に確実に定着する。
【0108】
代替の実施形態では、バルーンエンドグラフトが、波形構成(31ah)を有するように構成される。この内部空間を有する波形は、第2の導入ポート(31ai)と流体連通状態にある。注入カテーテル(31aj)を介して第2の導入ポート(31aj)を通じて硬化性ポリマー発泡体を導入し、波形空間(31ah)を満たすことができる。バルーンエンドグラフトの波形は、エンドグラフトを支持するとともに内部漏出に対して補強するような大きさ及び構成にされる。本発明のいくつかの態様は、ネック取り付け部材と、本体と、2つの分岐遠位端とを含む(展開前に金属又は剛性支持部材を使用しない)バルーンエンドグラフトに関し、このエンドグラフトは、二重層と層間の空間とを含み、この空間は、流体又は硬化性発泡体で満たされてバルーンエンドグラフトを膨張させるように構成される。1つの実施形態では、本体が波形構成で構成される。別の実施形態では、本体が、動脈瘤を迂回する血流を導く働きをする。
【0109】
図32は、金属又は剛性の/強固な支持要素(「バルーンエンドグラフト」)を使用せずに2つの二重層の可膨張性バルーン体で作成したエンドグラフトの1つの実施形態を示している。2つの個々のグラフト体(32aa、32ab)を有するバルーンエンドグラフトは、間に空間を有する二重層で作成され、この空間は、可膨張性流体、生理食塩水又は硬化性軟質ポリマーで満たされる。1つの実施形態では、エンドグラフトが、ネック取り付け部材(32ba)と、それぞれの遠位端(32ad、32ae)を有する2つの管状本体(32aa、32ab)とを含み、ネック取り付け部材は、上側ネック取り付けリング(32bb)と、中間ネック取り付けリング(32bc)と、下側ネック取り付けリング(32bd)と、流体連通のためのスループット管腔を備えた、上側リングを中間リングに又は中間リングを下側ネック取り付けリングに接続する少なくとも2つの接続ユニット(32be)を含むことができる。1つの好ましい実施形態では、上側ネック取り付けリング(32bb)が膨張して上側腎動脈(31ca)の近位に確実に位置するように構成される。中間ネック取り付けリング(32bc)が近位腎動脈(31ca)と遠位腎動脈(31cb)との間に配置されるように構成されるのに対し、下側ネック取り付けリングユニット(32bd)は、遠位腎動脈(31cb)の遠位に配置されるように構成される。別の好ましい実施形態では、接続ユニット(32be)の数を3又はそれ以上にして、実質的に離間して配置された互いに平行なネック取り付けリングを保持するようにする。1つの実施形態では、片方又は両方の遠位端に任意の導入ポートが設けられ、この導入ポートは自己密封式であり、或いは空間に流体を注ぎ込んで可膨張性エンドグラフトを膨張させるための一方向弁を有する。
【0110】
本発明のいくつかの態様は、ネック取り付け部材と、本体と、少なくとも1つの遠位端とを含むバルーンエンドグラフトに関し、このエンドグラフトは、二重層と層間の空間とを含み、この空間は、可膨張性流体又は硬化性発泡体で満たされてバルーンエンドグラフトを膨張させるように構成される。1つの実施形態では、エンドグラフトが、バルーンエンドグラフトを膨張させる前に強固な又は剛性の支持要素を使用しないことを特徴とする。別の実施形態では、本体が2つの可膨張性管を含み、個々の可膨張性管が、ネック取り付け部材に固定された近位端と、遠位端と、間に空間を含む二重層とを有する。さらに別の実施形態では、フープ強度を強化してグラフト体が崩壊するのを防ぐためにグラフト体が波形構成で構成される。好ましい実施形態では、ネック取り付け部材が、可膨張性ネック取り付けリングと、これらの2つのリングを接続する少なくとも2つの接続ユニットとを含み、このネック取り付けリングは、膨張して血管壁に確実に定着することができる。
【0111】
上記内容から、腹部大動脈瘤を治療するための装置システムを開示したことを理解すべきである。具体的な実施形態を参照しながら本発明について説明したが、この説明は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するものであると解釈すべきではない。当業者には、添付の特許請求の範囲に記載するような本発明の真の思想及び範囲から逸脱することなく様々な修正及び用途が思い浮かぶであろう。
【符号の説明】
【0112】
3ac 拡張シース
4ab エンドグラフト
4ac 血管
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2008年5月15日に出願された米国仮特許出願第61/053,378号に関するとともに該特許出願の利益を主張するものであり、該特許出願は、その全体が引用により本明細書に組み入れられて本明細書の一部を成す。
【0002】
本発明は、一般に、腹部大動脈のような大血管の限局性拡張を治療するためのモジュール式二管腔エンドグラフトシステム(endograft system)に関する。より詳細には、本発明は、血管径を縮小させて血管破裂の可能性を最小限に抑えるとともに、複数の管腔を作り出して下流流を持続させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
大動脈は、人体の全ての動脈枝に血液及び酸素を供給し、それ自体が人体中で最大の動脈である。大動脈は、横隔膜に関連するいずれかの特定の部分の場所に基づいて、胸部大動脈又は腹部大動脈と呼ばれる。胸部大動脈は、大動脈基部と脳に至る血管を含む管状部とを含む上行胸部と、下行胸部大動脈とにさらに細分化される。腹部大動脈は、横隔膜に始まって、下肢に血液を送る動脈が始まる大動脈腸骨動脈分岐点で終わり、その経路に沿って様々な内臓枝腸間膜動脈枝、並びに腎動脈を分岐する。大動脈の直径は部分によって異なる。胸部大動脈の標準直径は、管状上行部分で約3cm、下行胸部大動脈で2.5cm、及び腎臓下腹部大動脈で2cm程度である。大動脈寸法は、体表面積、年齢及び性別によって相対的に異なり、男性の大動脈寸法は女性のものよりも大きい。
【0004】
大動脈が標準直径を超えて拡大することを動脈瘤と呼ぶ。動脈瘤という用語は、拡張又は膨張を意味する。大動脈の最大直径が、隣接する最も近い標準部分の直径の1.5倍よりも大きい場合、この部分を動脈瘤と呼ぶ。大動脈瘤は、腹部大動脈に多く見られ、この1つの理由として、大動脈の壁内に存在する主な耐力蛋白質であるエラスチンが、(より心臓に近い)胸部大動脈と比べたときに腹部大動脈において少ないことが挙げられる。別の理由は、腹部大動脈瘤が栄養血管を保有していないことであり、これが修復を妨げる。動脈瘤の大半は、3つの層(内膜、中膜及び外膜)全てに関わる真性動脈瘤であり、一般に破裂前には無症状である。
【0005】
腹部大動脈瘤(AAA)の患者数は年齢とともに増加し、診断時の平均年齢は65〜70歳である。AAAは、アテローム性動脈硬化に起因するとされてきたが、これらの形成にはその他の要因も関与する。AAAは、いつまでも無症状のままのこともある。サイズが5cmに達すると破裂のリスクが大きくなるが、AAAによっては、直径15cmを超えるまで膨らんでから破裂するものもある。破裂前、AAAは、へその上部の大きな拍動性腫瘤として現れることがある。重度のアテローム硬化性動脈瘤では、又は血栓が生じた場合、乱流から雑音が聞こえることがある。しかしながら、通常は不幸にも破裂がAAAの最初の兆候となる。動脈瘤が破裂すると、痛み−低血圧−腫瘤の3つを示すことが典型的である。古くから、痛みは腹部、背中又は脇腹で報告される。この痛みは、強烈で激しく、持続することが通例であり、腹部を貫いて背中に放散することもある。
【0006】
腹部大動脈瘤の診断として、ベッドサイドで超音波を使用してこれを確認することができる。「モリソン」窩、脾腎腔、横隔膜下腔及び膀胱周囲腔などの潜在的腹腔内に遊離流体が存在することにより、破裂が示される場合がある。確認には、腹部造影CTスキャンが必要となる。術前及び術後死亡率が高いため、破裂を切り抜けて生き延びる患者はたった10〜25%である。破裂性腹部動脈瘤による年間死亡率は、米国だけで約15,000人である。AAAの別の重要な合併症に、動脈瘤内の血栓の形成がある。
【0007】
大動脈瘤の決定的な治療法は、大動脈の外科的修復術である。通常、この手術では、大動脈の拡張部分を開いて合成(ダクロン又はゴアテックス)パッチ管を挿入する。管を大動脈の近位及び遠位部分に縫い付けたら、人工管の周囲で動脈瘤嚢を閉鎖する。縫い付ける代わりに、ニチノールワイヤフレームで硬質かつ拡張可能にした管端部を血管断端にはるかに単純かつ迅速に挿入し、外部結紮によってここに恒久的に固定することができる。
【0008】
近年、開腹手術による修復の低侵襲的代替方法として、腹部大動脈瘤の管腔内治療が登場した。血管内手術では、細い管(カテーテル)の端部に人工グラフト(金属円筒内部のポリエステル管からなるステントグラフト)を取り付け、これを通常は脚の動脈を通じて血流内に挿入する。外科医は、X線モニタでカテーテルの進み具合を見ながら、動脈瘤が位置する大動脈の脆弱部分にステントグラフトを螺入させる。適所に収まると、グラフトを拡張させる。ステントグラフトが大動脈の脆弱部を強化して、動脈瘤の破裂を防ぐ。金属フレームをバネのように拡張させて大動脈の壁に対してしっかりと保持し、動脈瘤への血液供給を遮断する。この結果、血液は動脈瘤を避け、ステントグラフトを通じて流れる。通常、動脈瘤は時間とともに収縮する。この技術は、開腹手術による修復と比べて死亡率が低いことが報告されており、現在では、開腹手術に対するリスクの高い併存疾患のある患者に広く用いられている。センターによっては、手術リスクの高いグループの一員ではない患者における特定の方法に関して非常に期待できる結果を報告するところもある。
【0009】
患者の全身状態が思わしくないため、通常であれば開腹手術による修復で治療される破裂性腹部大動脈瘤の血管内治療に関する報告も多く存在する。中間結果は非常に期待が持てるものであった。利用可能なステント技術が持続的に発展するとともに、この技術を使用する血管専門医の経験が増えることにより、この技術の安全性及び効率は、今後数年内にさらに高まると思われる。しかしながら、最新の研究によれば、現在のステントグラフト及び処置は、全体的な延命効果をもたらさない。
【0010】
1997年10月14日に取得された米国特許第5,676,697号には、主要血管の分岐点に関して腔内グラフトを2つの分枝血管内に導入して動脈瘤による異常又は損傷を迂回させるための、2つの協働するグラフトプロテーゼで形成された腔内グラフトが開示されており、該特許は、その内容全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0011】
今日の市場は、開腹手術が介入する必要性を実質的に排除するカテーテル、ガイドワイヤ及び付属装置を利用する外科的軽減方法の必要性を求める約20F以上の装置で溢れている。この軽減方法は、多くの場合開腹手術の介入に伴って生じる急性合併症を著しく減少させるが、この方法の最終的目標及び市場動向は、送達システムの断面を縮小し、エンドグラフトを経皮的に送達する手順を実施できるようにして、この軽減手順の必要性を排除することである。内部の漏れ及び装置の定着/移動の問題に対処して、AAA患者にモジュール式二管腔エンドグラフトシステムを備えた新製品の設計及び特徴による恩恵をもたらすようにするための臨床的必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/053,378号
【特許文献2】米国特許第5,676,697号
【特許文献3】米国特許第6,383,193号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記で簡単に説明したように、エンドグラフトが大型であることに関連する不都合を克服するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のいくつかの態様は、腹部大動脈のような大血管の限局性拡張を治療するためのモジュール式二管腔エンドグラフトシステムに関する。本発明の1つの態様は、血管径を縮小させて血管破裂の可能性を最小限に抑えるとともに、複数の管腔を作り出して下流流を持続させる方法に関する。
【0015】
本発明のいくつかの態様では、血管に挿入するための可撓性の又は成形可能なステントグラフトを提供し、このグラフトは、遠位部と、近位部と、これらを接続するグラフト体とを含むとともに、防水性の可撓管からなる内層と、半剛性又は剛性材料からなる中間層と、防水性(water tight)の可撓性オーバーラップからなる外層とを有し、少なくとも2つの防水層を含むことを特徴とする。1つの実施形態では、ステントグラフトが、中間層及び外層のみを有する。別の実施形態では、中間層が、メッシュ状又は螺旋状構成の半剛性又は剛性材料を含む。
【0016】
本発明のいくつかの態様では、径方向に拡張可能なシースをガイドシースとして提供し、このシースは、外向きの力によって径方向に拡張可能な連続した一体型のシース体を含み、圧縮状態である第1の構成から拡張状態である第2の構成にかけて軸方向の伸縮性が実質的にほとんど又は全く無く、逆もまた同様であることを特徴とする。
【0017】
本発明のいくつかの態様では、カフ(cuff)と少なくとも2つのエンドグラフトユニットとを含むAAA治療用エンドグラフトシステムを提供し、個々のエングラフトユニットは、近位端及び遠位端を有し、カフに配置されてこれに取り付け/固定された近位端と、腸骨動脈の各々の中に配置されてこれらに取り付け/固定された遠位端とを有する圧縮可能な防水性発泡管(foam tube)で作られる。1つの実施形態では、第1のエンドグラフトの第1の近位端が、第2のエンドグラフトの第2の近位端に実質的に近い距離にある。
【0018】
本発明のいくつかの態様では、エンドグラフトの管腔と周辺の動脈瘤嚢との間の血液連通を排除するための不透過性部分と、腎動脈口を横切って配置されるように構成された多孔性部分とを含むAAA治療用エンドグラフトを提供する。
【0019】
本発明のいくつかの態様では、ネック取り付け部分と、グラフト体と、2つの脚部とを含むAAA治療用エンドグラフトを提供し、ネック取り付け部分は、腎動脈の近位に配置するための少なくとも第1の定着要素と、この第1の定着要素から軸方向に離間して配置された、腎動脈の遠位に配置するための第2の定着要素とを含む複数の定着機構を有する。
【0020】
本発明のいくつかの態様では、ネック取り付け部分と、ネック取り付け部分から第1の腸骨動脈まで延びる長さを有する、第1の腸骨動脈内部に固定するための第1の発泡管と、ネック取り付け部分から第2の腸骨動脈まで延びる長さを有する、第2の腸骨動脈内部に固定するための第2の発泡管とを含むAAA治療用エンドグラフトを提供し、両発泡管はネック取り付け部分に固定される。
【0021】
本発明のいくつかの態様では、ネック取り付け部材と、本体と、2つの分岐した遠位端とを含むバルーンエンドグラフトを提供し、このエンドグラフトは、二重層とこれらの層間の空間とを含み、この空間は、流体又は硬化性発泡体で満たされてバルーンエンドグラフトを膨張させるように構成される。
【0022】
添付図面を参照しながら以下の例示的な実施形態の詳細な説明を読めば、これらから本発明のさらなる目的及び特徴がより明らかになるとともに、本発明自体を最も良く理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】Dグラフトの詳細な構造を示す図である。
【図1B】2つのDグラフトの接面に逆帯電した磁石を埋め込んだ1対のDグラフトを示す図である。
【図1C】非対称的に配置した場合でも自己密封式となる2つのグラフトを示す図である。
【図1D】定着用の返しを有する1対のDグラフトを示す図である。
【図2A】カテーテル又はシースを送達するように構成されたエンドグラフトの圧縮状態にある実施形態を示す図である。
【図2B】カテーテル又はシースを送達するように構成されたエンドグラフトの圧縮状態にある実施形態を示す図である。
【図3A】エンドグラフトを送達するための径方向に拡張可能なシースを示す図である。
【図3B】エンドグラフトを送達するための径方向に拡張可能なシースを示す図である。
【図3C】エンドグラフトを送達するための径方向に拡張可能なシースを示す図である。
【図4A】エンドグラフトを血管内に進入させるための拡張可能なシース上に止血用カフを配置した概略図である。
【図4B】エンドグラフトを血管内に進入させるための拡張可能なシース上に止血用カフを配置した概略図である。
【図4C】エンドグラフトを血管内に進入させるための拡張可能なシース上に止血用カフを配置した概略図である。
【図5A】腸骨動脈を通じて大動脈にエンドグラフトを進めるステップを示す図である。
【図5B】腸骨動脈を通じて大動脈にエンドグラフトを進めるステップを示す図である。
【図5C】腸骨動脈を通じて大動脈にエンドグラフトを進めるステップを示す図である。
【図6A】エンドグラフトのネックサブアセンブリを、腎ステントを覆って原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図6B】エンドグラフトのネックサブアセンブリを、腎ステントを覆って原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図6C】エンドグラフトのネックサブアセンブリを、腎ステントを覆って原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図7A】エンドグラフトのネックサブアセンブリを原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図7B】エンドグラフトのネックサブアセンブリを原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図7C】エンドグラフトのネックサブアセンブリを原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図7D】エンドグラフトのネックサブアセンブリを原位置で配置する1つの方法を示す図である。
【図8A】AAAエンドグラフトを埋め込む際に腎動脈を迂回する1つの方法を示す図である。
【図8B】AAAエンドグラフトを埋め込む際に腎動脈を迂回する1つの方法を示す図である。
【図8C】AAAエンドグラフトを埋め込む際に腎動脈を迂回する1つの方法を示す図である。
【図9A】AAA治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する1つの方法を示す図である。
【図9B】AAA治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する1つの方法を示す図である。
【図9C】AAA治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する1つの方法を示す図である。
【図9D】AAA治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する1つの方法を示す図である。
【図10A】AAAの治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示す図である。
【図10B】AAAの治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示す図である。
【図10C】AAAの治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示す図である。
【図10D】AAAの治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示す図である。
【図10E】AAAの治療用のエンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示す図である。
【図11】AAA治療用エンドグラフトの実施形態を示す図である。
【図12】腹部大動脈瘤治療用の、二重ネック取り付け要素を有するステントグラフトの1つの実施形態を示す図である。
【図13】腹部大動脈瘤治療用の、コーティング面を有するステントグラフトの1つの実施形態を示す図である。
【図14A】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図14B】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図14C】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図14D】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図14E】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図14F】腹部大動脈瘤治療用システムを位置決めするための手順ステップを示す図である。
【図15】図14Eのステントグラフトシステムの詳細な近位部分を示す図である。
【図16A】血管内で連結シールを提供するための「二重D」スポンジプラグを示す図である。
【図16B】血管内で連結シールを提供するための「波型スポンジ」プラグを示す図である。
【図17A】定着構造で補強又は支持したスポンジプラグを示す図である。
【図17B】X線不透過マーカーで補強又は支持したスポンジプラグを示す図である。
【図17C】X線不透過体で補強又は支持したスポンジプラグを示す図である。
【図18】スポンジプラグの様々な構成を示す図である。
【図19】AAA嚢に軟質の血栓形成「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を挿入するための送達システムを示す図である。
【図20】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を先端機構によってAAA嚢内に引き込むための送達システムを示す図である。
【図21A】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を、二管腔送達カテーテルの第2の管腔内に位置できる再配置可能スネアによってAAA嚢内に引き込むための送達システムを示す図である。
【図21B】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を、二管腔送達カテーテルの第2の管腔内に位置できる再配置可能スネアによってAAA嚢内に引き込むための送達システムを示す図である。
【図21C】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を、二管腔送達カテーテルの第2の管腔内に位置できる再配置可能スネアによってAAA嚢内に引き込むための送達システムを示す図である。
【図22A】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を二重管腔送達カテーテルのバルーンによってAAA嚢に挿入するための送達システムを示す図である。
【図22B】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料を二重管腔送達カテーテルのバルーンによってAAA嚢に挿入するための送達システムを示す図である。
【図23】「パイプクリーナ」状の軟質充填材料をノズル送達カテーテルによってAAA嚢に押し込むための送達システムを示す図である。
【図24A】従来のAAA装置を示す図である。
【図24B】本発明の改良したAAA装置を示す図である。
【図25A】硬化性発泡管で作成したエンドグラフトの実施形態を示す図である。
【図25B】硬化性発泡管で作成したエンドグラフトの実施形態を示す図である。
【図25C】硬化性発泡管で作成したエンドグラフトの実施形態を示す図である。
【図26A】展開時にグラフトを適所に保持する突起物を有するカフを個々の端部に含む管状グラフトの側面図である。
【図26B】展開時にグラフトを適所に保持する突起物を有するカフを個々の端部に含む管状グラフトの平面図である。
【図27A】可膨張性端部及び/又は膨張体を有する目立たない、経皮送達式の、耐内部漏出性血管グラフトを作成するための装置を示す図である。
【図27B】可膨張性端部及び/又は膨張体を有する目立たない、経皮送達式の、耐内部漏出性血管グラフトを作成するための装置を示す図である。
【図27C】可膨張性端部及び/又は膨張体を有する目立たない、経皮送達式の、耐内部漏出性血管グラフトを作成するための装置を示す図である。
【図27D】可膨張性端部及び/又は膨張体を有する目立たない、経皮送達式の、耐内部漏出性血管グラフトを作成するための装置を示す図である。
【図28A】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図28B】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図28C】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図28D】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図28E】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図28F】硬化性又は成形充填材料を充填した、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないように十分なフープ強度を有する二重壁バッフル管を示す図である。
【図29】複数の貫通管腔を備えて複数の流路を形成できるようにしたカフ構成を示す図である。
【図30A】AAA治療用カフ及びエンドグラフトを大動脈領域に導入する方法を示す図である。
【図30B】AAA治療用カフ及びエンドグラフトを大動脈領域に導入する方法を示す図である。
【図30C】AAA治療用カフ及びエンドグラフトを大動脈領域に導入する方法を示す図である。
【図30D】AAA治療用カフ及びエンドグラフトを大動脈領域に導入する方法を示す図である。
【図31】金属又は剛性支持要素を使用しない二重層可膨張性バルーンで作成したエンドグラフトの1つの実施形態を示す図である。
【図32】金属又は剛性の/強固な支持要素を使用しない2つの二重層可膨張性バルーン体で作成したエンドグラフトの1つの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下で説明する本発明の好ましい実施形態は、特に動脈瘤の治療又は修復で使用するための装置システム、又はシステムの要素/サブアセンブリに関する。説明には様々な実施形態の具体的な詳細を記載しているが、この説明は例示にすぎず、決して本発明を限定するものであると解釈すべきではない。さらに、当業者に思い浮かぶであろう本発明の様々な用途及び本発明に対する修正も、後述する一般的概念に含まれる。
【0025】
大動脈は体内最大の動脈であり、血液を心臓から遠くへ運ぶ。大動脈は胸部を走り、ここでは胸部大動脈と呼ばれる。大動脈は、腹部に達すると腹部大動脈と呼ばれる。腹部大動脈は、下半身に血液を供給する。大動脈は、腹部直下で、個々の脚部に血液を運ぶ2つの枝に分かれる。腹部大動脈の脆弱領域が膨張又は隆起すると、腹部大動脈瘤(AAA)と呼ばれる。腹部大動脈を貫流する血液からの圧力により、大動脈の脆弱部分がバルーンそっくりに膨らむことがある。標準的な大動脈の直径は約1インチ(すなわち約2.5センチメートル)である。しかしながら、AAAは、この安全域を超えて大動脈を引き伸ばすことがある。動脈瘤は、爆発又は破裂することがあるので健康上のリスクである。AAAは、別の重大な健康問題を引き起こす可能性もある。動脈瘤の内部で血餅又はデブリが生じ、体内のその他の器官につながる血管にこれらが移動する可能性がある。これらの血管の1つが閉塞した場合、重度の痛み、さらには四肢欠損などのより重大な問題を引き起こす恐れがある。ほとんどの場合、腹部大動脈瘤は、医師が腹部超音波、コンピュータ断層(CT)撮影、又は磁気共鳴画像(MRI)などの画像検査を行っているときに発見される。
【0026】
腹部大動脈瘤及び胸部大動脈瘤などの動脈瘤を治療又は修復するためのシステムには多くの形がある。代表的なシステムは、動脈瘤上部の健常組織に配置される定着及び/又は密封要素と、この定着及び/又は密封要素と流体連通状態にあり、動脈瘤内を延びて動脈瘤下部の健常組織に定着される1又はそれ以上のグラフトとを含む。基本的に、グラフトは、動脈の1つの部分から同じ又は異なる動脈の別の部分までの流体流路を構築することによって動脈の病的部分を迂回するために利用するシステムの要素である。基本的に、本発明の血管内グラフトは、モジュール式システムを構成するいくつかの要素を含む。血管内グラフト全体には数多くの要素が含まれるが、これらの種類のシステムに関連する課題として、目立ち具合、柔軟性及びアクセスし易さが挙げられる。腹部大動脈瘤を治療するための経皮的装置の主な故障モードとしては、アクセス不良、破裂、AAA拡張による内部漏出、装置の移動又は位置ずれ、AAA拡張、内部漏出などが挙げられる。装置の完全性の問題としては、とりわけ構造破壊、内部漏出、移動、腸骨肢の分離、ステントグラフトの破砕、近位の折れ、及びグラフトの頭部位置の分離が臨床的に挙げられる。
【0027】
結合可能なグラフト対
腹部大動脈瘤のEVAR(血管内動脈瘤修復)問題を治療するためのステントグラフトが、目立ちにくい導入、短い頸部、長下肢/短下肢のカテーテル法、グラフトのサイズ、グラフトの構成などの特徴を含むことができる。1つの好ましい実施形態では、ステントグラフトの要素が、(金属、ニチノール金属、形状記憶金属、プラスチック、形状記憶プラスチック又はその他の可撓性材料などの)レーザ切断した弾性材料又は半剛性材料のフラットシート、螺旋、又はメッシュからなる中間層、及び延伸PTFEオーバーラップからなる外層を含む少なくとも2つの層を含むことができる。ステントグラフトは、任意に伸縮性延伸PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)管からなる第3の内層をさらに含む。これらの層は、ステントグラフト複合材料の構築材として機能するように圧縮される。ステントグラフトの遠位部(1ac)は、グラフトが腸骨動脈に適合するように成形することができる。ステントグラフトは、半円状の側面と平らな側面とを有するD型グラフト(Dグラフト)(図1A)のような異なる形状に成形することができる。1つの実施形態では、延伸PTFEが液体又は水を透過させない。内側PTFE層及び外側PTFE層が、複合構成材料の液体密封性を確実にする働きをする。
【0028】
本発明の2つのD型ステントグラフトは、これらの平らな側面が互いに向き合い、又は互いに密接に結合した場合、円筒状の管の外観を形成することができる。1つの実施形態では、内側PTFE管(1ad)を反転させることにより、ステントグラフト(1aa)の端部(1ab)にスリーブを形成することができる。さらなる実施形態では、縫合(1ae)、ステープリング、接着、結合などのあらゆる締結手段により、PTFE管の反転部分を中間層又は内層の内側部分に固定することができる。1つの実施形態では、内層及び外層に、(ダクロンなどの)ポリエステル繊維材料又は実質的に防水性の織った形のマイクロファイバーなどのその他の好適な材料を使用することができる。別の実施形態では、Dグラフトが、腎動脈に血流を送り込むための開口部(1ak)を含み、この開口部は、移植前に作成することができ、又はDグラフトを原位置に配置した後にワイヤ穿孔を行い、その後任意にバルーン拡張することにより作成することができる。開口部が腎ステントグラフトの外周を受け入れてこれに密接に適合するとともに、内部漏出を防ぐように防水処理することが重要である。
【0029】
手術時には、個々のD型グラフトを送達器具のシースに取り付けて、第1のD型グラフトを、第2のD型グラフトと嵌り合う形で正確に展開できるようにすることができる。1つの好ましい実施形態では、グラフトが、両側大腿鞘を通じて大動脈に挿入される。グラフトを回転させ、平らな側面を互いに一致させて嵌め合うことができる。1つの実施形態では、2つのDグラフトの平らな側面を手動で操作又は回転させてこれらが互いに向き合うようにする。別の実施形態では、(図1Aに示すように)結合可能な側面を手動で操作してこれらが互いに向き合うようにする。1つの実施形態では、グラフトの平らな側面の少なくとも一部に、一方のグラフト表面上に正電荷(1af)の希土類磁石を、逆のグラフト表面上に負電荷(1ag)の希土類磁石を埋め込んで、結合時の制御シール(例えば、液密シール)及びこの部分の密接な接触を確実にする(図1B)。別の実施形態では、結合を密接にするために、第1のグラフトの第1の表面に正電荷磁石(positive charged magnet)を、第2のグラフトの第2の適合する表面に負電荷磁石(negative charged magnet)を形成するための手段が提供される。この適合する表面は、Dグラフトのように平らなものであってもよい。
【0030】
別の実施形態では、D型グラフトの近位部分の周囲に返しを組み込んでこれらを離間して配置し、これらの返し(1ah)を径方向外向きに展開してグラフト(図1D)を大動脈に定着するようにすることができる。1つの実施形態では、一般にこの返しのサイズ及び構成が、グラフトがほとんど抵抗を受けずに進行方向へ移動できるようにする一方で、グラフトが逆方向に移動し始めると返しが大動脈に係合するようにされる。別の実施形態では、バネ特性を有するように返しを構成して、グラフトをシースから展開した際に返しが外向きに延びる(例えば、飛び出る)ようにする。さらに別の実施形態では、返しを形状記憶材料又は感温材料で作成して、返しが高温生理食塩水又はその他の電気、化学又は生物学的手段によって閾値高温で活性化されるようにする。さらに別の実施形態では、グラフトが、非対称的に配置した場合(図1C)でも自己密封又は自己結合して、接触面の一部が互いに結合する。図1Cに示すようなグラフトは、2つの点(1ai及び1aj)の間の領域を密接にシールする1対のフォームチューブグラフト又はその他の径方向に拡張可能なグラフトを含むことができる。この密接なシール領域は、グラフトの近位端の周囲又は近位端の遠位近くに及ぶことができる。グラフトをこのように特大にして、動脈壁と密接に接触させてグラフトをシールし、血液の漏出(内部漏出)を防ぐことができる。
【0031】
Dグラフトは、両腎動脈の治療を切り離すことにより、非カスタムな上静脈EVARの方法を可能にする。Dグラフト内の腎臓の口(renal ostia)の位置は、様々な生体構造に対応するように変更することができる。必要に応じて直径(近位及び遠位)、長さ及び腎臓の口に関して選択した2つの要素のみを使用して完全なEVARを実施することができる。例えば、160mmの長さ、26mmの遠位直径、16mmの近位直径、及び遠位端近くの約20mmの腎臓の口を有する第1のDグラフトと、140mmの長さ、26mmの遠位直径、12mmの近位直径、及び遠位端近くの10mmの腎臓の口を有する第2のDグラフトとを選択することができる。上記の例では、第2のDグラフト近位端が、第1のDグラフトの近位端から遠くの平面に位置することができる。
【0032】
シート技術により、グラフトを図2A及び図2Bに示すように回転させることによってDグラフト(1aa)をうまく圧縮してより小さなシース(2aa)内に導入できるようになる。Dグラフトの断面は、その長さに沿って大動脈部分内のD構成から腸骨部分内の円形又は円形状構成に移行させることができる。グラフト構造を部分的弾性部材から周方向部材に縦方向に変更することにより、この移行構成を実現することができる。大動脈部分のDグラフトは、複雑な血管を通じた送達又は複雑な血管での配置に対応するように可撓性マルチセグメントで構成することができる。
【0033】
本発明のいくつかの態様は、血管に挿入するための可撓性ステントグラフトに関し、このグラフトは、遠位部と、近位部と、これらを接続する管腔を有するグラフト体とを含むとともに、可撓性の剛性又は半剛性材料からなる第1の層と、防水性の可撓性オーバーラップからなる第2の層とを有し、折り畳み式であり、挿入手術中に目立たないことを特徴とする。1つの実施形態では、第1の層が、挿入手術中にシース内で圧縮可能な螺旋状ワイヤを含む。別の実施形態では、第1の層を適所に配置した後に、第1の層上に第2の層が重積する。さらに別の実施形態では、ステントグラフトが、防水性の可撓管からなる第3の層をさらに含み、このグラフトは、少なくとも2つの防水層を有することを特徴とし、第3の層は伸縮性PTFE管で作成され、第2の層は伸縮性PTFEオーバーラップで作成される。
【0034】
本発明の第1の態様は可撓性ステントグラフトに関し、第1及び第2の層を覆って第3の層の余長を反転させることにより、ステントグラフトの端部にスリーブが形成される。1つの実施形態では、反転シースを第1の層に固定するための締結手段により反転シースが第1の層に固定され、この締結手段は、縫合、ステープリング、接着又は結合を含む。別の実施形態では、第3の層が可撓性繊維又はポリマー管で作成され、第2の層が可撓性繊維又はポリマーオーバーラップで作成される。さらに別の実施形態では、第2の層又は第3の層が、実質的に防水性のマイクロファイバー織布で作られる。
【0035】
本発明の1つの態様は可撓性ステントグラフトに関し、グラフトを血管壁に定着させるように構成されたステントグラフトの近位部分の周囲に、形状記憶材料又は感温材料で作成できる返しが組み込まれ、適当に離間して配置される。1つの実施形態では、グラフトを血管壁に定着させるように構成されたグラフトの近位部分の周囲に定着具が二次手術として提供される。
【0036】
本発明のいくつかの態様は、第1及び第2のステントグラフトを含むステントグラフトシステムに関し、このグラフトは、伸縮性延伸PTFE管からなる内層と、半剛性又は剛性材料からなる中間層と、伸縮性延伸PTFEオーバーラップからなる外層とを有し、いずれかのステントグラフトの近位部が半円状の側面と結合側面とを有するように成形され、2つのグラフトの近位部が互いに結合して円筒状の管状構成を形成する場合、第1のステントグラフトの第1の結合側面が、第2のステントグラフトの第2の結合側面に結合して密接に適合する。1つの実施形態では、第1のステントグラフトの第1の遠位部が、右腸骨動脈に挿入できるように可撓性であり、第2のステントグラフトの第2の遠位部が、左腸骨動脈に挿入できるように可撓性である。別の実施形態では、第1のステントグラフトの第1の結合側面を正電荷磁石を有するように構成し、第2のステントグラフトの対向する第2の結合側面を負電荷磁石を有するように構成して、結合時に制御シール及び密接な接触を確実にする。さらに別の実施形態では、円筒状の管状構成の2つのステントグラフトの近位部分を径方向に拡張可能にして、血管に密接に適合させて固定する。
【0037】
1つの実施形態では、第1の結合側面を正電荷磁石を有するように構成し、対向する第2の結合側面を負電荷を有するように構成して、制御シール及び/又は密接な接触を確実にする。
【0038】
1つの実施形態では、内側PTFE管を反転させることにより、ステントグラフトの端部にスリーブが形成され、この反転PTFEは、縫合、ステープリング、接着及び結合などの固定目的の締結手段により中間層に固定される。
【0039】
1つの実施形態では、本発明のPTFE層が、例えば、ポリエステル繊維又は実質的に防水性のマイクロファイバーで作成した層などのその他の可撓性繊維又はポリマーに置き換えられる。
【0040】
1つの実施形態では、ステントグラフトの近位部分の周囲に返しを適当に組み込んでこれらを離間して配置し、これらの返しを径方向外向きに展開してグラフトを動脈壁に定着させるようにする。別の実施形態では、返しを形状記憶材料又は感温材料で作成して、返しが閾値高温で活性化又は展開されるようにする。
【0041】
シースサブアセンブリ
本発明の1つの態様は、拡張可能な可撓性シースに関する。1つの実施形態では、可撓性シースが、必要時に径方向に拡張できるように構成される。図3A〜図3Cは、外向きの力により径方向に拡張できる連続した一体型のシースを含む、軸方向の伸縮性/圧縮性が実質的にほとんど又は全く無い径方向拡張可能シースを示している。この拡張可能な可撓性シースは、軸方向の伸縮性を制限するように実質的に軸方向に配向した非伸縮性繊維又は糸を組み込んだ弾性ポリマーで作成することができる。1つの実施形態では、収縮状態(3aa)にある可撓性シースを、複雑な又は小径の血管内に通し、その後このシースを通じてより大きな装置(3ab)を挿入することができる。従って、この拡張可能なシースにより、大きなシースの前進が不可能な、通り抜けできない、非実用的な、又は解離を生じ得る複雑な又は小径の血管を通じて本発明のエンドグラフト又はDグラフトなどの大きな装置を配置できるようになる。大きな装置を配置した後、患者から拡張シース(3ac)を除去し、又は引き抜くことができる。1つの実施形態では、拡張可能な可撓性シースが径方向に伸縮自在である。拡張可能な可撓性シースは、「ガイドシース」として機能することができる。
【0042】
図4A〜図4Cは、エンドグラフト(4ab)を血管(4ac)内に進入させるように構成された、後退させた状態にある拡張可能なシース(3aa)上に止血用カフ(4aa)を配置する概略図を示している。エンドグラフトを適所に配置した後に拡張シース(3ac)を除去する一方で、血管(4ac)の開口部(4ad)周囲にエンドグラフトを覆って一時的に止血用カフを配置する。
【0043】
図5は、腸骨動脈(13a)を通じて大動脈にエンドグラフトを進めるステップを示している。腸骨動脈が小さく又は狭窄していると、大きなシースを進めることが不可能な又は危険なことがある。従って、図5Aから図5Cに示すように、縮んだ状態(3aa)にある拡張可能シースを前進させ、その後径方向に拡張させて大きな装置(5aa)を通過できるようにする。
【0044】
本発明のいくつかの態様では、外向きの力によって径方向に拡張可能な薄壁を有する連続した一体型のシース体を含む径方向に拡張可能なシースをガイドシースとして提供し、この径方向に拡張可能なシースは、圧縮状態である第1の構成から拡張状態である第2の構成まで軸方向の伸縮性又は収縮を実質的にほとんど又は全く有しておらず、逆もまた同様であることを特徴とする。
【0045】
患者にエンドグラフトを挿入する際に血管の切開部に止血用カフを一時的に配置する方法は、(a)第1の構成にある請求項1に記載の拡張可能なシース上に止血用カフを取り付けるステップと、(b)切開部を通じて圧縮シースを血管に挿入するステップと、(c)シース管腔を通じてエンドグラフトを血管内に進入させてシースを第2の構成に拡張するステップと、(d)止血用カフを切開部の近くに保持するステップと、(e)エンドグラフト及びカフを適所に正しく位置決めした後に拡張シースを除去するステップとを含む。
【0046】
ネックサブアセンブリ
短いネックのエンドグラフトを使用するための1つの実施形態では、腎動脈に腎ステントグラフトを埋め込むことができ、この腎ステントグラフトの金属メッシュ部分が、外部RFソースに電気的に接続されたRF電極(6ad)に取り外し可能に接続される。図6Aに示すように、腎ステントグラフト(6aa)の露出端部(6ab)が、大動脈内壁(6ac)を越えて延び又は突出する。図6Bは、大動脈内部に位置するエンドグラフト(6ae)を示しており、腎ステントグラフト(6aa)の露出端部がエンドグラフト外部と密接に接触してこれを圧迫している。ステント端部(6ab)にRF電流を印加することにより、(図6Cに示す)エンドグラフト繊維内に孔(6ah)を形成して、大動脈(6ag)と腎動脈(6af)の間に血液が通るようにする。エンドグラフトを腎動脈口の境界に密接かつ緊密に圧迫して血液の漏出又は浸出を防ぐ。
【0047】
本発明のいくつかの態様では、大動脈から腎動脈への血液連通を保持しながらAAA治療用エンドグラフトを配置する方法を提供し、この方法は、(a)第1の端部が腎動脈内部にある一方で第2の端部が腎動脈口を越えて突出する腎ステントを腎動脈内部に配置するステップと、(b)AAA領域にエンドグラフトを配置して、エンドグラフトが腎動脈と密接に接触するようにするステップと、(c)腎ステントの第2の端部にRFエネルギを印加してこのRFエネルギにより孔を形成し、腎ステントをエンドグラフトの管腔内に突出させるステップとを含む。1つの実施形態では、エンドグラフトが1対のDグラフトを含む。別の実施形態では、エンドグラフトが、結合可能な近位部分を有する1対のグラフトを含む。
【0048】
図7は、エンドグラフトのネックサブアセンブリを配置する1つの方法を示している。図7Aに示すように、共通ポリマー物理データを使用して、腎臓近位の大動脈の弾性グラフト円柱構成(7aa)を作成することができる。使用する材料は、多孔性、生体適合性、耐久性及び弾性のものとすることができる。構成は、ラピッドプロトタイププロセスと同様のものであってもよい。図7Bに示す第2のステップでは、リム(7ab)を圧縮してゼラチンで鋳造する。この構成(7aa)では、ガイド管を挿入してワイヤ(7ac)を受け入れるようにする。図7Cに示すように、手術時には、構成(7aa)を圧縮して送達シース(7ad)内に取り付ける。その後、この構成を腎動脈領域の周囲で解放する一方で、ガイドワイヤを導入すること(図7Dを参照)により腎動脈(6af)に個々のリム(7ab)を挿入する。
【0049】
図8は、AAAエンドグラフトを埋め込む際に腎動脈を迂回する1つの方法を示している。図8Aに示すように、上腕動脈から挿入した管状ステントグラフト(8aa)を大動脈及び腎臓領域の周囲に埋め込み、遠位端を腎動脈(6af)に挿入し、近位端を大動脈(6ag)内部に留める。次に、(図8Bに示す)上腸間膜を固定して、移植ステントグラフト(8aa)の近位端に腎臓近位発泡体カフ(8ab)を適用する。次に、エンドグラフトのような1対の大動脈腸骨動脈グラフト(8ac)をカフ(図8Cに示す)から挿入する一方で、大動脈腸骨動脈グラフトの遠位端を腸骨動脈に挿入する。腎臓近位発泡体カフは、正常な血流に対する移動、内部漏出又は閉塞を避けるような大きさ及び構成にされる。
【0050】
本発明の1つの態様では、カフと4つのエンドグラフトユニットとを含むAAA治療用エンドグラフトシステムを提供し、個々のエンドグラフトユニットが近位端及び遠位端を有し、4つの近位端を全てカフに配置して固定する一方で、第1の遠位端を延ばして右腎動脈に固定し、第2の遠位端を延ばして左腎動脈に固定し、第3の遠位端を延ばして右腸骨動脈に固定し、第4の遠位端を延ばして左腸骨動脈に固定する。1つの実施形態では、内部漏出を防ぐための手段として、エンドグラフトシステムが、血液を動脈瘤ゾーンに流れ込ませないようにし、又は動脈瘤ゾーンと流体連通しないようにする。
【0051】
図9は、AAA治療用エンドグラフト及び腎ステントを患者の体内に配置する1つの方法を示している。手術時には、エンドグラフト(9aa)を腎動脈(6af)の上の大動脈(6ag)内に配置する。図9Aは、ワイヤ(9ab)を挿入してグラフトを腎動脈領域(9ac)の周囲に刺し通すことを示している。図9Bは、特別な二管腔ステントカテーテル(9ad)を使用してグラフトを貫通点(9ac)に押し進めることを示している。その後、(図9C及び9Dに示すように)二管腔ステントカテーテルのバルーン(9ae)が膨張して腎ステントを操作するための管腔を作り出し、腎ステント(6aa)の一端を腎動脈内部に配置し、他端を大動脈内に配置する。
【0052】
図10は、AAA治療用エンドグラフト及び腎ステントを配置する代替の方法を示している。手術時には、グラフト(10aa)を腎動脈(6af)の上の大動脈(6ag)内に配置する。図10Aは、好ましくは尖った端部を有するワイヤ(10ab)を挿入してグラフトを腎動脈領域(10ac)の周りに刺し通すことを示している。図10Bは、特別な二管腔ガイドカテーテル(10ad)を使用し、第2の管腔がワイヤを受け入れてグラフトを貫通点(10ac)に押し進めることを示している。その後、二管腔ガイドカテーテルのバルーン(10ae)が膨張して腎動脈のためのオリフィス(10af)を作り出す。湾曲ワイヤをガイド内に挿入して引き下げ、(図10Cに示すような)オリフィスを中心に置く。その後、(図10Dに示すように)腎動脈にカテーテル及びステントを挿入して、(図10Eに示すように)腎ステント(10ag)の一端を腎動脈内部に配置し、他端をエンドグラフト内に配置する。
【0053】
本発明のいくつかの態様では、大動脈から腎動脈への血液連通を保持しながらAAA治療用エンドグラフトを配置するための方法を提供し、この方法は、(a)腎ステントを腎動脈内部に配置して、腎ステントの第1の端部を腎動脈内部に存在させる一方で、第2の端部を腎動脈口の周囲に配置するステップと、(b)エンドグラフトをAAA領域に配置して、エンドグラフトが腎動脈口と密接に及び圧力をかけて接触するようにするステップと、(c)口部位周囲にワイヤを提供してエンドグラフトを刺し通し、大動脈から腎動脈に血液連通するように構成された孔を腎動脈内に形成するステップとを含む。1つの実施形態では、この方法の後に、孔の周囲でバルーンを拡張して孔のサイズを拡大させる別のステップが続く。
【0054】
図11は、AAA治療用の代替のエンドグラフトを示している。エンドグラフト(11aa)は、腎動脈口(11af)よりも下に位置するエンドグラフトの近位端(11ac)から始まって腸骨動脈内に延びる不透過性部分と、腎動脈を横切って配置された多孔性部分とを含む。この多孔性部分は、多孔性スリーブの近位端(11ac)から遠位端(11ae)まで延びるオーバーラップゾーン(11ad)などの不透過性部分の上にマクロ多孔性スリーブ(11ab)を固定することにより形成することができる。従って、血液は、大動脈(6ag)から多孔性スリーブを介して腎動脈へ、及びエンドグラフトを介して腸骨動脈へ流れる一方で、動脈瘤ゾーンを迂回することができる。
【0055】
本発明のいくつかの態様は、エンドグラフトの管腔と周辺の動脈瘤嚢との間の血液連通を排除するための不透過性部分と、腎動脈口を横切って配置するように構成された多孔性部分とを含む腹部大動脈瘤(AAA)治療用エンドグラフトに関する。1つの実施形態では、エンドグラフトが、不透過性部分よりも長いマクロ多孔性スリーブを含み、不透過性部分の少なくとも一部の上にマクロ多孔性スリーブを固定することにより多孔性部分が形成される。
【0056】
図12〜図14は、ステントグラフト又はエンドグラフト、システム、及び腹部大動脈瘤の治療に使用する方法の1つの又は別の代替の実施形態を示している。具体的には、図12は、埋め込み目的で動脈瘤大動脈領域(10)内に経皮的に展開する本発明のステントグラフト(21)の1つの実施形態を示している。1つの実施形態では、ステントグラフト(21)が、ネック取り付け部分(22)と、グラフト体又はトランク(23)と、2つの脚部(24a)、(24b)とを含む。ネック取り付け部分(22)は、図13に示すような単一のネック取り付け要素(32)又は図12に示す二重のネック取り付け要素(22a)及び(22b)を含むことができる。グラフトを適所に送達した後の例示的な実施形態では、ネック取り付け要素を径方向に拡張させることができ、大動脈壁の組織に密接に接して、装置がほとんど又は全く動かない状態でネック取り付け部分を適所に固定するような大きさ及び構成にされる。この固定操作は、ネック取り付け要素から突出する数多くの定着用の返しにより実現することができる。これらの返しは、ネック取り付け要素の拡張と同期して外向きに展開するように構成することができる。単一のネック取り付け要素(32)は、(例えば、布カバー又はグラフト材料を使用しない)メッシュ状又は多孔性であってもよく、一般に腎動脈(12)の大動脈から遠位側に取り付けられる。二重ネック取り付け要素の第1の要素(22a)は、少なくとも1つの腎動脈(12)の大動脈から近位側に固定できる一方で、二重ネック取り付け要素の第2の要素(22b)は、腎動脈の大動脈から遠位側に固定される。1つの実施形態では、二重ネック取り付けの第1の要素の拡がった直径が、第2の要素の拡がった直径とは異なる。
【0057】
図13に示すような単一のネック取り付け要素(32)、又は図12に示すような複数のネック取り付け要素を有するネック取り付け部分では、頸部大動脈をシール及び固定するための取り付け要素の遠位にあるグラフトトランクの長さが、測定した頸部大動脈の直径に合う適当な大きさ及び構成にされる。同様に、腸骨動脈内にシールするための個々の脚部の長さ及び直径も、測定した腸骨動脈の固有の直径に合う適当な大きさ及び構成にされる。1つの好ましい実施形態では、単一のネック取り付け要素(32)及び/又は二重ネック取り付け要素の第2のネック取り付け要素(22b)が、グラフトトランクから一体的に延びるグラフト材料を有することができる。
【0058】
2002年5月7日に取得された米国特許第6,383,193号には、自己拡張式大静脈フィルタ装置システムを経皮挿入するための送達システムにおいて、フィルタを、細長く、径方向に可撓性で、軸方向に強固な管状部材内に詰め込んだ状態で制約することが開示されており、該特許は、その内容全体が引用により本明細書に組み入れられる。ネック取り付け部分を、軸方向に剛直で径方向に拡張可能な形状記憶ワイヤフレームとすることにより、この部分をはるかに単純かつ迅速に挿入及び展開して、ワイヤフレーム上の返し又は定着具などの関連する外部結紮糸により恒久的に固定されるようにすることができる。ワイヤフレームは、径方向の拡張及び定着に適した実質的にジグザグなパターン、メッシュ状又はその他の適当なパターンを含むことができる。
【0059】
形状記憶合金で作ったワイヤフレームは、元々の熱安定構成から第2の熱不安定構成に変形することができる。所望の温度を適用することにより、合金が元々の熱安定構成に戻るようになる。この用途に特に好ましい形状記憶合金は、ニチノールという銘柄で市販されている約55.8重量パーセントのNiを含む二元ニッケルチタン合金(NiTi合金)である。このNiTi合金を、生理的温度で相変態を受けるように構成することができる。この材料で作ったステント又はワイヤフレームは、冷却時に変形することができる。従って、例えば摂氏20度を下回るような低温ではステントが圧縮され、これを所望の場所に送達できるようになる。冷却生理食塩溶液を循環させることにより、このステントを低温に保持することができる。このステントは、冷却生理食塩水を除去した場合、及び患者の体内のより高い温度、一般には摂氏約37度に曝された場合に拡張する。
【0060】
血管内でステントグラフトを定着及びシールするように構成された、実質的に管状のステント構造を含むグラフトトランク(23)は、内部にグラフト材料を含む拡張可能な管状金属ステントとすることができる。グラフト材料又は要素は、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、シリコン、ウレタン、及びSpectra(商標)という銘柄で市販されているもののような超軽量ポリエチレンを含む織布、編み布、縫合材、押出材、又は鋳造材料を含むあらゆる数の適当な生体適合材料から作ることができる。材料は、多孔性であっても、又は非多孔性であってもよい。例示的な材料としては、Dacron(商標)又はその他の好適なPET型ポリマーで作られた織りポリエステル繊維が挙げられ、これを折り重ねてサイズを縮小させ、径方向に拡張可能なステントの一端又は両端に縫合又は接着手段によって取り付ける。ステントが自己拡張するか又はバルーンで拡張されると、グラフトがステントの周囲で開く。1つの実施形態では、自己拡張式ステントと組み合わせたポリウレタンの紡糸マトリクスで作られた多孔性管腔内グラフトを提供する。弾性ポリウレタン繊維が、グラフトをステントとともに圧縮できるようにし、これにより比較的小さなカテーテルを通じてステントグラフトを送達できるようになる。
【0061】
グラフト材料は、トランク部分(23)の少なくとも一部及び脚部(24a、24b)全てに加えられる。縫合により、下にある構造の様々な部分にグラフト材料を取り付けることができる。1つの実施形態では、グラフト材料が、トランク部分(23)の端部上に連続ステッチパターンで、及び他の部分に単一のステッチによって加えられる。あらゆるパターンを利用して、またステープルなどのその他の装置を利用して、下にある構造にグラフト材料を接続できることを注記しておくことが重要である。縫合は、好ましくは高耐久性かつ耐摩耗性のあらゆる好適な生体適合材料を含むことができる。1つの実施形態では、グラフトトランクが、上側接触領域(14)及び下側接触領域(15)において大動脈と密接に接触して、血液が腹部大動脈の動脈瘤領域(11)に浸出するのを防ぐ。
【0062】
例示的な実施形態では、ステントグラフト(21)の第1の脚部(24a)が右総腸骨動脈(13a)内に配置され、第1の脚部(24a)の遠位端部材(25a)に、自己拡張可能又はバルーン拡張可能なニチノールワイヤフレームが使用される。同様に、第2の脚部(24b)は、自己拡張可能又はバルーン拡張可能遠位端部材(25b)を含む左総腸骨動脈(13b)に挿入される。ステントグラフトを適所に配置して展開した後に、大動脈(コア流路の外側)の動脈瘤領域(28)を発泡体の塞栓でさらに治療することができる。脚部(24a)及び(24b)の端部を広げ、下流の動脈により良好に定着してシールすることができる。この広がる部分は、ステント要素の最終部分を広げることにより形成することができる。脚部は、大動脈の動脈瘤部分において血液が貫流するバイパス導管である。患部への血流を排除することにより圧力が減少し、ひいては動脈瘤破裂の可能性がほとんどなくなる。
【0063】
ここで図13を参照すると、本発明による個々の端部に定着要素及び密封要素を有するグラフトトランク(33)を含むエンドグラフト又はステントグラフト(31)の例示的な実施形態を示している。1つの実施形態では、ステントグラフト(31)が、トランク(33)のいずれかの端部から徐々に狭くなる中心トランク部を有することを特徴とする。別の実施形態では、グラフトトランク(33)の中間部が、少なくとも1つの発泡体注入ポート(36)を備える。この発泡体注入ポートは、針の付いた発泡体含有カテーテルにアクセスするための自己密封部位であってもよく、或いは丸い先端の発泡体含有カテーテルにアクセスするための一方向弁であってもよい。さらに別の実施形態では、ステントグラフト(31)が、トランクの外面にポリマー被膜又はポリマー膜(38)を有し、このポリマー被膜又は膜を血栓形成性として発泡体の塞栓を促進してもよく、或いは非血栓形成性として発泡体のステントグラフトへの接着を軽減させてもよいことを特徴とする。
【0064】
本発明のいくつかの態様は、ネック取り付け部分と、グラフト体と、脚部とを含む腹部大動脈瘤(AAA)治療用エンドグラフトに関し、ネック取り付け部分は、腎動脈の近位に配置されるための少なくとも第1の定着要素と、第1の定着要素から軸方向に離間して配置された、腎動脈の遠位に配置されるように構成された第2の定着要素とを含む複数定着機構を有する。1つの実施形態では、複数定着機構が、2つの腎動脈間の領域の周囲に配置されるように構成された第3の定着要素を含む。
【0065】
本発明の1つの態様は、ネック取り付け部分と、近位端と第1の腸骨動脈内部に固定されるべくネック取り付け部分から第1の腸骨動脈へ延びる長さとを有する第1の発泡管と、近位端と第2の腸骨動脈内部に固定されるべくネック取り付け部分から第2の腸骨動脈へ延びる長さとを有する第2の発泡管とを含むAAA治療用エンドグラフトに関し、両発泡管はネック取り付け部分に固定される。1つの実施形態では、第1の発泡管の第1の近位端が、第2の発泡管の第2の近位端に実質的に近い距離に位置する。別の実施形態では、ネック取り付け要素がハンガーを含み、第1の発泡管の近位端がフックで構成されて、フックをハンガーに確実に連結する。さらに別の実施形態では、第1の発泡管の近位端が、ネック取り付け要素に磁気的に連結される。好ましい実施形態では、第1の発泡管の遠位端を広げ、この遠位端を第1の腸骨動脈の周辺組織に定着させてシールし、又は第1の発泡管の遠位端をバルーン拡張し、この遠位端を第1の腸骨動脈の周辺組織に定着させてシールし、或いは第1の発泡管の遠位端を形状記憶材料で作成し、この遠位端を第1の腸骨動脈の周辺組織に定着させてシールする。
【0066】
本発明の1つの態様は、発泡管の近位部が可膨張性要素で作成されたエンドグラフトに関し、この近位部を膨張させて血管の壁に定着させ固定することができる。1つの実施形態では、発泡管の少なくとも1つが可膨張性管体をさらに含む。別の実施形態では、発泡管の少なくとも1つが、径方向の位置決め構造を使用しないように十分なフープ強度を有する可撓性グラフトとして機能する、成形充填材料で満たされた二重壁バッフル管体を含む。さらに別の実施形態では、発泡管の少なくとも1つの端部のバッフル層の一部を裏返してカフを形成する。好ましい実施形態では、第1の発泡管上に取り付けられた一方向弁を介して動脈瘤嚢に導入される、ポリビニルアルコール発泡体、ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、セルロースアセテート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、アクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択した発泡材料でAAAの動脈瘤嚢を満たし、その後これを原位置で硬化させる。発泡材料は、原位置においてUV光又は熱で処理される。
【0067】
カフサブアセンブリ
ここで図14を参照すると、本発明によるモジュール式二管腔エンドグラフトシステムの例示的な実施形態を、このようなシステムを体内に配置するため要素及び手順とともに示している。本発明のいくつかの態様は、大動脈及び左右腸骨動脈周辺の動脈壁にある腹部大動脈瘤を修復する方法に関し、この方法は、(a)左右大腿動脈の一方にガイドワイヤを経皮的に導入して、左右腸骨動脈のそれぞれ一方に進入させ、その後動脈瘤の領域を越えて大動脈の管腔に進入させるステップと、(b)ガイドワイヤ上に嵌合するようになっているガイドワイヤ管腔を内部に形成した第1の展開カテーテルの遠位端部分の周囲に崩壊状態のネック取り付け要素を組み立てるステップと、(c)ネック取り付け要素を腎動脈口近くの大動脈の部位に送達し、大動脈管腔の直径に近似した所定のサイズの取り付けシートを動脈瘤の領域を越えて施すステップと、(d)ネック取り付け要素を自己拡張又はバルーン拡張により展開して、この要素を返しなどで適所に定着又は固定させるステップと、(e)第1の展開カテーテルを回収するステップと、(f)遠位端と近位端の間に延びる連続する側壁を有し、いずれかの端部又は両端を金属メッシュ又はステント挿入要素で補強することができる第1の細長い管状グラフトプロテーゼを第2の展開カテーテルの遠位端部分の周囲に組み立てるステップと、(g)第1のグラフトプロテーゼを送達して、近位端がネック取り付け要素の周囲に、及び遠位端が右腸骨動脈の1つの周囲に位置するようにするステップと、(h)第1のグラフトプロテーゼの近位端を定着具によってネック取り付け要素上に展開する一方で、右腸骨動脈内に金属メッシュを展開するステップと、(i)第2の展開カテーテルを経皮的に回収するステップと、(j)第2の細長い管状プロテーゼ及び第3の展開カテーテルを使用してステップfからステップiまでを繰り返し、左腸骨動脈内に金属メッシュを展開させるステップとを含む。好ましい実施形態では、2つのグラフトプロテーゼの近位端の管腔開口部に隣接する円周領域をシールして、腹部動脈瘤内の2つのプロテーゼの外部に血液が流れ込むのを防ぐ。別の好ましい実施形態では、遠位端が、展開後にグラフト管腔及び腸骨動脈を動脈瘤部分からシールするような大きさ及び構成にされる。
【0068】
図14Aに示すように、腹部大動脈瘤の治療目標は、血液が点線(12)の周囲に沿って流れるのを維持することにより、腹部大動脈内の血流を実質的に一定に制限することである。第2の目標は、動脈瘤の動脈部分(11)を迂回することにより、胸部動脈から腸骨動脈(13a、13b)に十分な血液量を供給することである。図14Bに示すような例示的な実施形態では、エンドグラフトシステムを位置決めするための手順の第1のステップは、動脈瘤の上ではあるが腎動脈(12)から遠位にある健常組織にネック取り付け要素(41)を経皮的に送達することである。その後、返し(42)などの定着部材を使用してネック取り付け要素を適所に展開する。
【0069】
1つの実施形態では、ネック取り付け要素のバルーン拡張が、ステント状要素を径方向に拡張させて要素を周辺組織に定着させるのに十分な圧力で行われる。
【0070】
第2のステップは、図14Cに示すように十分な強度、可撓性及び長さの第1の管(43)を経皮的に送達して、管(43)の近位端(44)をネック取り付け要素(41)の一部に固定する一方で、遠位端部分(45)を右腸骨動脈(13a)内に配置することである。1つの実施形態では、ネック取り付け要素がハンガー(62)を備え、第1の管の近位端(44)をフック(61)で構成して、フックをハンガーに確実に連結するようにする。磁石連結又はボタンスロット連結などの他の連結機構も実現可能である。上述したように第1の管の遠位端(46)を広げ、バルーン拡張させ、又は形状記憶材料で作って、この遠位端を周辺組織に定着させシールすることができる。
【0071】
ここで図14Dを参照すると、十分な強度、可撓性及び長さの第2の管(53)を腹部大動脈領域に経皮的に送達して、管(53)の近位端(54)をネック取り付け要素(41)の部分に固定する一方で、遠位端部分(55)を左腸骨動脈(13b)内に配置している。上述したように、第2の管の遠位端(56)を広げ、バルーン拡張させ、又は形状記憶材料で作って、この遠位端を周辺組織に定着させシールすることができる。
【0072】
発泡体の塞栓が始まる前に、血管を流れる血液の残り部分から動脈瘤大動脈領域(11)をシールすることができる。図14Eに示すような1つの実施形態では、第1の管(43)に第1の近位密封部材(47)が設けられ、第2の管(53)に第2の近位密封要素(57)が設けられる。密封要素(47、57)は、互いに重なって配置され、上部健常大動脈領域の周囲で管を越えて開放領域を覆うような大きさ、構成、及び配置にされる。密封部材(47,57)を管の一体部分として設けることもできる。図15に示すような1つの好ましい実施形態では、管(43a、53a)の近位端(44a、54a)が図15に示すようにトランペット形状(59)に構成され、ネック固定領域(63)周囲の空間を密接に占有するような大きさにされる。1つの実施形態では、形状記憶材料を使用することにより、トランペット形の近位端が拡張可能となる。
【0073】
代替の実施形態では、第1及び第2の管(43、53)用のストッパ(48、58)で、遠位部がそれぞれ血管壁に対してシールされる。動脈瘤(11)内に発泡材料を導入し、原位置で硬化させることができる(図14F)。この場合、近位密封部材(47及び57)を使用しなくても、発泡材料は動脈瘤内に留まると考えられる。例示的な実施形態では、硬化前の発泡材料を、管(43、53)を通じて送達ポート(49及び59)内に送達することができる。上述したように、送達ポートは自己密封部位であってもよく、或いは発泡体含有カテーテルにアクセス可能な一方向弁を有していてもよい。
【0074】
本発明のいくつかの態様は、ネック定着機構及び2つの発泡管を有するエンドグラフトシステムに関し、血液が発泡管内を上部大動脈から腸骨動脈へ流れることにより動脈瘤を迂回する。1つの実施形態では、動脈瘤が、実質的に原位置で硬化される発泡材料で満たされる。別の実施形態では、発泡材料が、発泡管上に取り付けられた一方向弁を介して動脈瘤に導入され、その後原位置で硬化される。発泡材料は、ポリビニルアルコール発泡体、EVALポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、セルロースアセテート、p−HEMA(ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、アクリレート、これらの組み合わせなどであってもよい。
【0075】
ポリビニルアルコール発泡体(PAF)は、生体適合性、進行性血栓症及び線維症の促進、不変性、圧縮性、及び管理容易性を含む、他の塞栓材料に勝る数多くの利点を示す。臨床例として、動静脈奇形、動静脈瘻、髄膜腫、鼻咽頭腫瘍を含む塞栓の影響を受ける病気の種類、特にAAA治療の例が示されている。
【0076】
圧縮可能な発泡材料で形成された血管インプラントは圧縮構成を有しており、ここから具体化すべき血管部位の形状及びサイズに実質的に一致する構成に拡張させることができる。インプラントは、小型化した血管部位モデルの初期構成を有する疎水性のマクロ多孔性発泡材料で形成され、ここから圧縮構成に圧縮できることが好ましい。このインプラントは、血管部位を走査してデジタル化した走査データセットを作成し、この走査データセットを使用して血管部位の3次元デジタル仮想モデルを作成し、この仮想モデルを使用して血管部位の小型物理モールドを作成し、このモールドを使用して小型化した血管部位モデルの形の血管インプラントを作成することにより作成することができる。血管部位を塞栓させるために、遠位端を血管部位に通した送達カテーテル内にインプラントを圧縮して通す。インプラントは、血管部位に入ると原位置で拡張して実質的に血管部位を満たす。カテーテル内には保持要素が含まれ、その遠位端がインプラントに着脱可能に接続されている。可撓性の管状展開要素を使用して、インプラント及び保持要素をカテーテルに通し、その後インプラントがカテーテルから排出されて血管部位に入ると、インプラントを保持要素から分離する。1つの好ましい実施形態では、圧縮可能発泡材料が原位置で凝固し、具体化すべき血管部位の形状及びサイズと実質的に一致する可搬型移動材料として注入される。
【0077】
エンドプラグ
(例えば、700、300、30ミクロンなどの)異なる気孔を含むPVAスポンジを、例えば7mmの管腔を有する25mmの「二重D」構成又は7mmの管腔を有する10mm長の管などの異なるサイズの管として作成することができる。乾燥状態のPVAスポンジは容易に圧縮され、完全に再水和して数分で元の状態に拡張することができる。本発明の1つの態様は、最適な気孔を含むPVAスポンジ管をエンドプラグとして圧縮乾燥形態で導入すること、及びこれが動脈瘤全体にわたって原位置で拡張できるようにすることである。次いで、管の貫通管腔を、拡張したスポンジの直径よりも小さな直径でステント挿入するか又はステント移植する。真空を印加すること、ラップすることによって多孔性スポンジプラグを圧縮し又はファネルに注入することができる。乾燥スポンジプラグをステント又はバルーン上に圧接し、シースを通じてワイヤ上に押し付け、或いは独自の送達装置に予め取り付けることができる。
【0078】
送達シース法は、チップマーカー付きの長いシースを患者の挿入部位まで挿入する第1のステップを含む。プッシャー/カニューレ上に圧縮プラグを取り付け、その後シースを通じてプラグ/カニューレを所望の展開部位まで挿入する。展開後、カニューレマーカー及びシース先端マーカーが整列するまでシースを引っ込める。これにより、シース内のスポンジの遠位約1cmが固定されるが、スポンジの大部分は水和される。この後、遠位1cmを超えるシースを引っ込めてスポンジを適所に解放することにより展開を完了する。
【0079】
図16Aは「二重D」スポンジを示しており、図16Bは血管に連結シールを施すための「波型スポンジ」を示す。適合する1対のスポンジが、分岐グラフトを個々の鼠径部から2つの部品の形で挿入できるようにするため、これが目立ちにくくなる。1つの実施形態では、送達カニューレが、複数の水和孔を有してスポンジの拡張を加速させる。別の実施形態では、温生理食塩水をパルス送達することによってもスポンジの拡張を加速させる。
【0080】
本発明の1つの態様では、動脈瘤血管治療用の1対の適合するスポンジエンドプラグを提供し、このプラグを第1の構成に圧縮して血管に送達し、再水和を介して第2の構成へと拡張して血管を塞ぐ。1つの実施形態では、プラグが貫通管腔を有する。別の実施形態では、個々のプラグが、互いに向かい合う一致する平らな表面を有する。さらに別の実施形態では、個々のプラグが、調和する波型表面を有して血管に連結シールを施す。代替の実施形態では、エンドプラグの拡張が、形状記憶ニチノールワイヤで強化される。
【0081】
図17Aに示すように、スポンジプラグ(17aa)を定着構造で補強又は支持することができる。スポンジプラグは、埋め込みワイヤ支柱(17ab)、フック(17ac)及び貫通管腔(17ad)を有する。スポンジ付加物は、x線を視覚化するためのマーカー(17ae)又はタンタル粉末(17af)としてX線不透過性要素を組み入れることもできる(図17B及び図17C)。
【0082】
図18は、縫合を締め付けることにより形状を変化させることができる縫合支持スポンジプラグと、ワイヤを形状記憶ニチノール材料などで作成した場合に形状を変化させることができるワイヤ支持スポンジプラグとを含むスポンジエンドプラグの様々な構成を示している。
【0083】
本発明の1つの態様は、プラグを過度に移動させることなく適所に固定するための定着手段を含む、動脈瘤血管治療用のスポンジエンドプラグを提供する。別の実施形態では、エンドプラグをX線不透過性に構成し、又はこれに少なくとも1つのX線不透過性マーカーを組み込む。
【0084】
内部漏出
動脈瘤嚢の排除はステントグラフト治療の主な目標であり、動脈瘤の「全排除」により臨床的成果が定義される。しかしながら、時には、動脈瘤嚢への血流を全て排除するためのステントグラフトに障害が起こることがある。実際のところ、内部漏出が合併症の、従ってAAAの管腔内治療における障害の主要な原因となる。内部漏出とは、装置配置後に動脈瘤嚢に持続的に流れる血液が存在することを表す用語である。いくつかの種類の内部漏出の管理についてはまだ議論の余地があるが、ほとんどは、手術、さらなるステント移植、又は塞栓でうまく閉塞させることができる。これらの提案される病因に基づいて4つの種類の内部漏出が定義されてきた。
【0085】
血管内大動脈瘤修復の0〜10パーセントで発生するタイプIの内部漏出は、近位又は遠位取り付け部位のいずれかにおける不適格なシールに起因する。病因としては、取り付け部位におけるエンドグラフトの直径が標準よりも小さいこと、及び大きく石灰化した又は厚い血栓に囲まれた血管壁への取り付けが非効果的であることが挙げられる。このような漏出は配置直後に起きる可能性もあるが、時間とともに拡張する大動脈の病的部分に装置を展開した場合の追跡調査時に遅れたタイプIの内部漏出を見いだすことができ、取り付け部位のシールの裂け目を招く。
【0086】
タイプIの内部漏出は、動脈瘤嚢が組織圧に曝されたままとなり、動脈瘤破裂になりやすく、漏出の自然閉鎖は希であるので、これらを発見し次第修復しなければならない。初期配置時に発見した場合には、長期間における抗凝血の反転及び展開バルーンの再膨張により修復することができる。これらの漏出はまた、病気に冒された端部上に小さな拡張グラフトを配置することで修復することもできる。通常、これらの方法は、動脈瘤を排除するのに十分なものである。経皮的治療が漏出に無効である希な状況では、開腹手術による修復への転換が必要となることがある。
【0087】
タイプIIの内部漏出は最も一般的な種類であり、血管内大動脈瘤の修復の10〜25パーセントで発生し、患者の血管枝から動脈瘤嚢の内外への流れを表す。これらは、ほとんどの場合処置後のCT時に同定され、エンドグラフトの外側ではあるが、動脈瘤嚢内に一群のコントラストとして現れる。タイプIIの内部漏出の最も頻度の高い発生源は、患者の腰動脈及び患者の下腸間膜動脈を通じた側副逆流である。嚢は側副血行路を通じて満たされるので、CT走査の動脈相上では内部漏出を視覚化することができず、従って遅延撮像が必要となる。
【0088】
タイプIIの内部漏出の重要性及び管理については議論の余地がある。研究者によっては、症例の30〜100パーセントで自然溶解が起きるので、注意深くCT画像上の動脈瘤容積及び形状に従いながら、「成り行きを見る」方法が好ましいと主張する者もある。しかしながら、タイプIIの内部漏出の存在下における動脈瘤嚢内の組織圧が注目され、より微妙な状況を示している。
【0089】
タイプIII及びタイプIVの内部漏出はそれほど多くない。タイプIIIの内部漏出は、モジュール式システムの要素間の分離から動脈瘤嚢内への流れ、又はエンドグラフト繊維の断裂を表す。タイプIVの内部漏出は、繊維の細孔を通じた出血に起因する。タイプIVの漏出は自然治癒するが、タイプIIIの漏出は追加のエンドグラフトで動脈瘤内の組織流及び組織圧を取り除くことにより修復される。
【0090】
動脈瘤嚢内で同定した流れ(内部漏出)は、取り付け部位(タイプI)又は装置(タイプIII)の障害を表すことがある。これらの障害モードは、血流及び組織圧が動脈瘤嚢内に伝えられ続け、患者を持続的に動脈瘤拡大及び破裂の危険に曝すことになるので緊急修復を要するということが一般的な合意である。
【0091】
本発明の1つの態様は、軟質の血栓形成「パイプクリーナ」状軟質充填材料(19aa)をAAA嚢内に、好ましくは送達カテーテル(図19に示す)を通じて押し出し又は挿入することによる内部漏出溶液のための装置及び方法に関する。この材料は、PVA(ポリビニルアルコール)、ダクロン(ポリエステル)糸及び血栓形成特性を強化した同様のものとすることができる。「パイプクリーナ」状材料の直径は、糸状(0、0〜0)から最大10〜20mmまでとすることができる。材料は軟質で押すことができないので、1つの解決策は、(図20に示すような)先端機構によってカテーテル(19ab)を通じて「パイプクリーナ」状材料を引くことである。1つの実施形態では、先端(20aa)の向きを一方向に変えて材料を外向きに引くと、先端が前方に螺旋状に移動するように構成される。先端の向きは、カテーテル(19ab)の近位ハンドルにトルクを伝える接続マンドリル又はワイヤを介して、又は先端部を押して向きを変えるための生理食塩水の注入を通じてのいずれかによって変えることができる。材料を嚢の内側に配置して先端から分離した後に、先端の向きを反対方向に変えると先端がカテーテル管腔に回収される。そして患者からカテーテルが回収される。
【0092】
別の実施形態では、二管腔カテーテルの第2の管腔(21ac)に移動可能に配置することができる再位置決め可能スネアにより、図19に示すような軟質充填材料をカテーテルから引き抜くことができる。図21Aは、二管腔カテーテルの第1の管腔(21ab)内の点AAにおいて軟質充填材料と係合したスネア(21aa)を示しており、図21Bは、軟質充填材料(19aa)がスネアによって上方に引っ張られていることを示している。その後、スネアを点AAで軟質充填材料から緩め、点BBで再位置決めして、軟質充填材料にさらに係合させ(図21Cに示す)、軟質充填材料(19aa)が望むように嚢に挿入されるまで係合−引き込み−係合解除−再位置決め操作を繰り返す。
【0093】
代替の実施形態では、同心の内側カテーテル(22ab)及び外側カテーテル(22aa)を含むカテーテルの組を使用して、軟質充填材料(19aa)を嚢内に送達し、外側カテーテルの管腔と内側カテーテルのシースとの間の隙間内部にバルーン(22ac)を移動可能に配置する。1つの実施形態では、バルーンが、円周凹面を示すような大きさ及び構成にされる。挿入ステップ前には、軟質充填材料が内側カテーテルの管腔を緊密及び/又は密接に占有する。次にカテーテルの組を嚢領域に送達する。操作時には、図22Aに示すように、最初に内側カテーテルを外向きに押して、軟質充填材料の一部を嚢の内部に送達する。内側カテーテルの遠位端を外向きに押してバルーンの近位端周囲でバルーンと係合させる。次に、バルーン(22ac)を膨張させ、軟質充填材料を外側カテーテルのシースに対してピン留めし、内側カテーテルが内向きに後退できるようにする。軟質充填材料が全て嚢の内部に送達されるまで操作を繰り返すことができる。
【0094】
さらに別の実施形態では、遠位部分が狭くなったノズルカテーテルを使用して、軟質充填材料を嚢内に油圧送達することができる。図23は、カテーテル管腔(23ab)、ネックダウン管腔(23ac)を含み、軟質充填材が緩んだ形でカテーテル管腔の一部を占有する本発明のノズルカテーテル(23aa)を示している。生理食塩水又は適切な流体(23ad)を、ネックダウン部を通じて実質的に軟質充填材料を押しつぶす速度で油圧導入して軟質材料を嚢内に押し込み又は運び込む。
【0095】
本発明のいくつかの態様は、軟質血栓形成「パイプクリーナ」状軟質充填材料(19aa)をAAA嚢内に、好ましくは送達カテーテルを通じて挿入する方法に関する。この材料は、PVA(ポリビニルアルコール)、ダクロン(ポリエステル)糸及び血栓形成特性を強化した同様のもので作ることができる。
【0096】
AAA装置及び方法
本発明のいくつかの態様は、カテーテル室内で局所麻酔を使用して経皮的送達(好ましくは12フレンチ以下の小型送達カテーテル)を行うという臨床的ニーズを満たす改良したモジュール式AAA装置に関する。モジュール式装置は複数のサイズを有することができるが、特注ではない。装置は、とりわけネック取り付け、ねじれ及び腸骨生体構造に対して解剖学的に完全に適合できるように構成される。最新の装置は、大動脈に沿って同じ軸方向立面にない短頸及び/又は2つの腎動脈を有する患者に移植を行うのに特に適している。図7は、大動脈に沿って同じ軸方向立面にない2つの腎動脈の問題を解決するためのいくつかの手順及び手段を示している。図9は、短頸の問題を解決するためのいくつかの手順及び手段を示している。
【0097】
図24は、(A)従来のAAA装置と、(B)本発明の改良したAAA装置との比較を示している。通常、従来技術の装置は、腸骨動脈に挿入するための分岐した遠位部分を有する管状グラフトである。従来の装置の限界として、とりわけ大きなイントロデューサーサイズ、金属/繊維構成、内部漏出する傾向、正確なサイズの必要性、及び多くの装置在庫の必要性を挙げることができる。本発明の新たな改良した装置は、圧縮可能な発泡管、経皮的送達、2〜10mmの管腔、UV、熱又は化学反応によって原位置で矯正される導入軟質材料、及び発泡体充填血管の格子を含むことができる。
【0098】
発泡体が硬化するとより硬くなることにより、原位置で動脈瘤(25ac)上の拍動性壁応力を緩和する。初期軟質構成では、(図25Aに示すように)発泡体(25ab)が管腔を満たしてこれを密封する。発泡管を、送達器具(25ae)からバルーン(25ad)又は圧縮発泡管(25aa)を拡張するためのその他の拡張可能手段(ステント、バスケット、その他)を覆って(図25Bに示すような)圧縮構成で導入した。発泡管は、流体接触及び/又はバルーン拡張(図25Cに示すような)により拡張する。発泡体の格子は、バルーン送達を通じてUV、熱、化学物質又は生物学的製剤で硬化させることにより硬くなる。硬化時間は、臨床的ニーズを満たす材料の選択に応じて約1分から数週間とすることができる。
【0099】
1つの実施形態では、(図26Aに示すように)管状グラフト(26aa)が個々の端部にカフ(26ab)を含み、このカフは、カフが治療を行う間にグラフトを適所に保持する突起物(26ac)を有する。図26Bは、管状グラフト(26aa)の平面断面図を示している。別の実施形態では、本発明のエンドグラフトシステムのカフが発泡体カフを含み、この発泡体は、硬化性発泡材料から作られて原位置で硬化することができる。さらに別の実施形態では、第1のエンドグラフトの第1の近位端が、第2のエンドグラフトの第2の近位端に実質的に近い距離にある。
【0100】
別の実施形態では、目立たない、経皮的送達による、耐内部漏出性血管グラフトを作成するための装置を図27Aに示している。このような装置(27aa)のための主要概念は、貫通管腔を有し、好ましくは可膨張性端部(27ab)及び/又は膨張体(27ac)を含む可膨張性プロテーゼである。このプロテーゼは、従来技術のステントグラフトの、大きな導入サイズ及び内部漏出を生じる困難な血管サイズという2つの主な不利点を解決する。プロテーゼを圧縮形態で導入し、(対照及び/又は生理食塩水などの)流体で膨張させて位置決めし、漏出を試験することができる。正しく位置決めされるとカフが収縮し、定位置に取り付いて硬化する液体ポリマーで再膨張する。硬化性液体ポリマーとしては、EVAL(ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、セルロースアセテート、p−HEMA(ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート))、アクリレート、これらの組み合わせなどを挙げることができる。プロテーゼは、PTFE、ポリエステルなどの超薄型微小孔性材料で作られる。個々の層は、圧縮した際の目立ち具合を減少させるように非常に薄く(例えば、50mμ未満)される。p−HEMAは、水中でヒドロゲルを生成するポリマーである。p−HEMAは、その中心炭素の周囲で回転することによりヒドロゲルとして機能する。空気中では、非極性メチル側が外向きに向きを変え、材料を脆弱化し、粉砕して正しいレンズ形状にし易くする。水中では、極性ヒドロキシエチル側が外向きに向きを変えて、材料が可撓性になる。
【0101】
カフ(27ab)は、(図27Bに示すような)より小さな血管で使用するためのグラフトよりは最低限大きく、又は(図27Cに示すような)大動脈などの血管内では有意に大きくなるような大きさ及び構成にすることができる。例えば、管腔直径D1を約2〜10mmにすることができるのに対し、カフ外径D2は約4〜12mmにすることができる。別の用途では、管腔直径D3を約6〜14mmにすることができるのに対し、カフ外径D4を約24〜36mmにできることが好ましい。
【0102】
カフは、別個に導入してもよいし、或いはこれらをエンドグラフトの一体型部品としてもよい。図27Dは、膨張中にカフ及び/又はグラフトを一時的に適所に固定して、血管形成術用バルーン(25ad)上に配置することにより相を位置決めできることを示している。
【0103】
別の実施形態では、硬化又は成形充填材料で満たした二重壁バッフル管が、金属ステントなどの別の支持構造を使用しないだけの十分なフープ強度を有する可撓性グラフトとして機能する。管グラフト(28aa)のバッフル(28ab)は、液体の自己硬化ポリマー(図28Aに示すような)で満たされる。1つの実施形態では、十分なフープ保持強度を提供するように構成された正しい短距離の場合、バッフルが管グラフトの端部から内向きに(反対端に向かって)しか延びない。図28B及び28Cに示すように、バッフル管を構成する1つの方法は、支持バッフルを有する2層の単一の又は複数の管腔構成においてPTFEを押し出すことであってもよい。内層(28ac)及び外層(28ad)の両方は、約10〜30ミクロンの壁厚を有する。押し出し後に端部をシールして、基本的に(図28Dに示すような)貫通管腔を含むバルーンとなるものを作り出す。(図28Eに示すように)バッフルを有する二管腔押し出しを行うことも有用である。代替の実施形態では、管の少なくとも一端のバッフル層の一部を裏返して(図28Eに示すような)カフを作り出すことができる。
【0104】
別の実施形態では、カフを複数の貫通管腔で構成して、分岐流路を形成できるようにすることができる(図29参照)。このようにして、目立たない「2孔」カフ及び2つの小さな直径のグラフトを使用して大動脈を閉塞することができる。例えば、2つの10mmステントグラフトを経皮的に挿入することはできるが、単一の24mmグラフトは挿入することができない(従来技術)。
【0105】
原位置発泡グラフトの導入方法
第1のカフを(図30Aに示すような)腎動脈よりも下の大動脈領域内に導入してここを占有した後、第1のカフにバルーンカテーテルを導入してバルーン膨張させる(ステップ1)。カフ管腔内でマイクロカテーテル又はその他の適当な手段を使用して流体でカフを膨張させる(ステップ2)。次に、第1のカフ領域に第2の管腔にカテーテルを挿入する(ステップ3)。血管造影図を使用して位置及びシールをチェックし、必要であれば再位置決めする(ステップ4)。図30Bは、第2のカフを小径方式で腸骨動脈に挿入するステップ(ステップ5)を示している。液体ポリマーでカフを満たし、熱、UV、溶剤溶解、化学反応又は沈降反応を使用して液体ポリマーを硬化させる(ステップ6)。次に、図30Cに示すようなステントグラフトを挿入する(ステップ7)。代替の実施形態では、(図30Dに示すような)一致する又はD型のカフを有する2カフグラフトを適用することができる。
【0106】
バルーンエンドグラフト
図31は、金属又は剛性支持要素(「バルーンエンドグラフト」)を使用せずに二重層可膨張性バルーンで作成したエンドグラフトの1つの実施形態を示している。バルーンエンドグラフト(31aa)は、流体、生理食塩水又は硬化性軟質ポリマーで膨張できる空間を間に有する二重層で作られる。1つの実施形態では、エンドグラフト(31aa)が、ネック取り付け部材(31ab)と、管状本体(31ac)と、分岐遠位端(31ad、31ae)とを含み、ネック取り付け部材は、上側ネック取り付けリングユニット(31ba)と、下側ネック取り付けリングユニット(31bb)と、流体連通のためのスループット管腔を備えた、上側ネック取り付けリングユニットと下側ネック取り付けリングユニットとを接続する少なくとも2つの接続ユニット(31bc)とを含むことができる。1つの好ましい実施形態では、上側ネック取り付けリングユニット(31ba)が、近位腎動脈(31ca)と遠位腎動脈(31cb)との間に配置されるように構成されるのに対し、下側ネック取り付けリングユニット(31bb)は、遠位腎動脈(31cb)の遠位に配置されるように構成される。別の好ましい実施形態では、接続ユニット(31bc)の数を3又はそれ以上として、実質的に互いに平行な2つのネック取り付けリングユニットを保持するようにする。1つの実施形態では、片方又は両方の遠位端に任意の導入ポートが設けられ、この導入ポートは自己密封式であり、或いは空間に流体を注ぎ込んで可膨張性エンドグラフトを膨張させるための一方向弁を有する。
【0107】
1つの例示的な実施形態では、バルーンエンドグラフトを折り畳み、送達シース又はカテーテルを介して最小限目立たないようにAAA部位に送達する。腎動脈口の周囲にネック取り付け部材を配置し、右及び左腸骨動脈に2つの分岐遠位端をそれぞれ配置したら、注入カテーテル(31ag)を介して第1の導入ポート(31af)を通じて流体又は硬化性ポリマー発泡体を導入する。空間全体が発泡体で満たされるまで硬化性ポリマー発泡体を注ぎ、その後原位置で硬化させる。1つの好ましい実施形態では、ネック取り付け部材が膨張したら、上側及び下側ネック取り付けリングユニットが大動脈壁に確実に定着する。
【0108】
代替の実施形態では、バルーンエンドグラフトが、波形構成(31ah)を有するように構成される。この内部空間を有する波形は、第2の導入ポート(31ai)と流体連通状態にある。注入カテーテル(31aj)を介して第2の導入ポート(31aj)を通じて硬化性ポリマー発泡体を導入し、波形空間(31ah)を満たすことができる。バルーンエンドグラフトの波形は、エンドグラフトを支持するとともに内部漏出に対して補強するような大きさ及び構成にされる。本発明のいくつかの態様は、ネック取り付け部材と、本体と、2つの分岐遠位端とを含む(展開前に金属又は剛性支持部材を使用しない)バルーンエンドグラフトに関し、このエンドグラフトは、二重層と層間の空間とを含み、この空間は、流体又は硬化性発泡体で満たされてバルーンエンドグラフトを膨張させるように構成される。1つの実施形態では、本体が波形構成で構成される。別の実施形態では、本体が、動脈瘤を迂回する血流を導く働きをする。
【0109】
図32は、金属又は剛性の/強固な支持要素(「バルーンエンドグラフト」)を使用せずに2つの二重層の可膨張性バルーン体で作成したエンドグラフトの1つの実施形態を示している。2つの個々のグラフト体(32aa、32ab)を有するバルーンエンドグラフトは、間に空間を有する二重層で作成され、この空間は、可膨張性流体、生理食塩水又は硬化性軟質ポリマーで満たされる。1つの実施形態では、エンドグラフトが、ネック取り付け部材(32ba)と、それぞれの遠位端(32ad、32ae)を有する2つの管状本体(32aa、32ab)とを含み、ネック取り付け部材は、上側ネック取り付けリング(32bb)と、中間ネック取り付けリング(32bc)と、下側ネック取り付けリング(32bd)と、流体連通のためのスループット管腔を備えた、上側リングを中間リングに又は中間リングを下側ネック取り付けリングに接続する少なくとも2つの接続ユニット(32be)を含むことができる。1つの好ましい実施形態では、上側ネック取り付けリング(32bb)が膨張して上側腎動脈(31ca)の近位に確実に位置するように構成される。中間ネック取り付けリング(32bc)が近位腎動脈(31ca)と遠位腎動脈(31cb)との間に配置されるように構成されるのに対し、下側ネック取り付けリングユニット(32bd)は、遠位腎動脈(31cb)の遠位に配置されるように構成される。別の好ましい実施形態では、接続ユニット(32be)の数を3又はそれ以上にして、実質的に離間して配置された互いに平行なネック取り付けリングを保持するようにする。1つの実施形態では、片方又は両方の遠位端に任意の導入ポートが設けられ、この導入ポートは自己密封式であり、或いは空間に流体を注ぎ込んで可膨張性エンドグラフトを膨張させるための一方向弁を有する。
【0110】
本発明のいくつかの態様は、ネック取り付け部材と、本体と、少なくとも1つの遠位端とを含むバルーンエンドグラフトに関し、このエンドグラフトは、二重層と層間の空間とを含み、この空間は、可膨張性流体又は硬化性発泡体で満たされてバルーンエンドグラフトを膨張させるように構成される。1つの実施形態では、エンドグラフトが、バルーンエンドグラフトを膨張させる前に強固な又は剛性の支持要素を使用しないことを特徴とする。別の実施形態では、本体が2つの可膨張性管を含み、個々の可膨張性管が、ネック取り付け部材に固定された近位端と、遠位端と、間に空間を含む二重層とを有する。さらに別の実施形態では、フープ強度を強化してグラフト体が崩壊するのを防ぐためにグラフト体が波形構成で構成される。好ましい実施形態では、ネック取り付け部材が、可膨張性ネック取り付けリングと、これらの2つのリングを接続する少なくとも2つの接続ユニットとを含み、このネック取り付けリングは、膨張して血管壁に確実に定着することができる。
【0111】
上記内容から、腹部大動脈瘤を治療するための装置システムを開示したことを理解すべきである。具体的な実施形態を参照しながら本発明について説明したが、この説明は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するものであると解釈すべきではない。当業者には、添付の特許請求の範囲に記載するような本発明の真の思想及び範囲から逸脱することなく様々な修正及び用途が思い浮かぶであろう。
【符号の説明】
【0112】
3ac 拡張シース
4ab エンドグラフト
4ac 血管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフと少なくとも2つのエンドグラフトユニットとを含む大動脈瘤(AAA)治療用エンドグラフトシステムであって、個々のエングラフトユニットが、管腔と、近位端と、遠位端とを有し、前記エンドグラフトユニットが、前記カフに配置され固定された近位端と腸骨動脈の各々に配置され固定される前記遠位端とを有する可撓性の防水性管で作成される、ことを特徴とするエンドグラフトシステム。
【請求項2】
前記エンドグラフトユニットが、圧縮可能な防水性発泡管で作成される、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項3】
前記システムが、4つのエンドグラフトユニットを含み、個々のエンドグラフトユニットが、管腔と、近位端と、遠位端とを有し、4つの近位端が全て前記カフに配置され固定されるのに対し、第1の遠位端が延びて右腸骨動脈に固定されるようになり、第2の遠位端が延びて左腸骨動脈に固定されるようになり、第3の遠位端が延びて右腎動脈に固定されるようになり、第4の遠位端が延びて左腎動脈に固定されるようになる、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項4】
前記カフが、前記エンドグラフトユニットを適所に保持する突起を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項5】
前記カフが発泡体カフを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項6】
前記発泡体が、硬化性発泡材料で作成される、ことを特徴とする請求項5に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項7】
前記発泡材料が、ポリビニルアルコール発泡体、ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、セルロースアセテート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、アクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項6に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項8】
前記発泡材料が、UV光又は熱で処理される、ことを特徴とする請求項6に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項9】
第1のエンドグラフトユニットの前記第1の近位端が、第2のエンドグラフトユニットの第2の近位端に実質的に近い距離に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項10】
前記エンドグラフトユニットが、防水性可撓管からなる内層と、半剛性メッシュ状材料からなる中間層と、防水性の可撓性オーバーラップからなる外層とを含み、前記エンドグラフトユニットが少なくとも2つの防水層を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項11】
前記内層が伸縮性PTFE管で作成され、前記外層が伸縮性PTFEオーバーラップで作成される、ことを特徴とする請求項10に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項12】
前記エンドグラフトユニットが、マイクロファイバー織布で作成される、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項13】
腹部大動脈瘤(AAA)治療用エンドグラフトであって、ネック取り付け部分と、グラフト体と、脚部とを含み、前記ネック取り付け部分が、腎動脈の近位に配置されるための少なくとも第1の定着要素と、該第1の定着要素から軸方向に離間して配置された、前記腎動脈の遠位に配置されるように構成された第2の定着要素とを含む複数の定着機構を有する、ことを特徴とするエンドグラフト。
【請求項14】
複数の定着機構が、2つの腎動脈間の領域の周囲に配置されるように構成された第3の定着要素を含む、ことを特徴とする請求項13に記載のエンドグラフト。
【請求項15】
AAA治療用エンドグラフトであって、ネック取り付け部分と、近位端と第1の腸骨動脈内部に固定されるべく前記ネック取り付け部分から前記第1の腸骨動脈へ延びる長さとを有する第1の発泡管と、近位端と第2の腸骨動脈内部に固定されるべく前記ネック取り付け部分から前記第2の腸骨動脈へ延びる長さとを有する第2の発泡管とを含み、両発泡管が前記ネック取り付け部分に固定される、ことを特徴とするエンドグラフト。
【請求項16】
第1の発泡管の前記第1の近位端が、第2の発泡管の前記第2の近位端に実質的に近い距離に位置する、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項17】
前記ネック取り付け要素がハンガーを含み、前記第1の発泡管の前記近位端がフックで構成されて前記フックを前記ハンガーに確実に連結する、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項18】
前記第1の発泡管の遠位端を広げ、該遠位端を前記第1の腸骨動脈の周辺組織に定着させてシールする、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項19】
前記発泡管の近位部分を可膨張性要素で作成し、前記近位部分が膨張して前記近位部を血管壁に定着させて固定する、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項20】
前記発泡管の少なくとも1つが、可膨張性管体をさらに含む、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項21】
前記発泡管の少なくとも1つが、径方向の位置決め構造を使用しないように十分なフープ強度を有する可撓性グラフトとして機能する、成形充填材料で満たされた二重壁バッフル管体を含む、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項22】
前記発泡管の少なくとも一端の前記バッフル層の一部を裏返してカフを形成する、ことを特徴とする請求項21に記載のエンドグラフト。
【請求項23】
血管に挿入するための可撓性ステントグラフトであって、遠位部と、近位部と、該遠位部及び近位部を接続する管腔とを有するグラフト体を含み、前記グラフトが、可撓性の剛性又は半剛性材料からなる第1の層と、防水性の可撓性オーバーラップからなる第2の層とを有し、前記グラフトが折り畳み式であり、挿入手術中に目立たない、ことを特徴とするステントグラフト。
【請求項24】
前記第1の層が、前記挿入手術中にシース内で圧縮可能な螺旋状ワイヤを含む、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項25】
前記第1の層を適所に位置決めした後に、前記第2の層が前記第1の層上に重積する、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項26】
防水性の可撓管からなる第3の層をさらに含み、前記グラフトが少なくとも2つの防水層を含む、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項27】
前記ステントグラフトの端部にあるスリーブが、前記第1及び第2の層上に前記第3の層の余長を反転させることにより形成される、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項28】
前記第3の層が可撓性繊維又はポリマー管で作成され、前記第2の層が可撓性繊維又はポリマーオーバーラップで作成される、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項29】
前記グラフトの前記近位部分の周囲に、前記グラフトを血管壁に定着させるように構成された定着具が二次手術として設けられる、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項30】
請求項4に記載の第1及び第2のステントグラフトを含むステントグラフトシステムであって、いずれかのステントグラフトの近位部分が、半円状側面及び結合側面を有するように成形され、前記2つのグラフトの前記近位部分が互いに結合して円筒状管状構成を形成する際に、前記第1のステントグラフトの前記第1の結合側面が、前記第2のステントグラフトの前記第2の結合側面に結合して密接に一致する、ことを特徴とするステントグラフトシステム。
【請求項31】
前記第1のステントグラフトの前記第1の結合側面が、正電荷磁石を有するように構成され、前記第2のステントグラフトの前記対向する第2の結合側面が、負電荷磁石を有するように構成されて、結合時に制御シール及び密接な接触を確実にするようにされる、ことを特徴とする請求項30に記載のステントグラフトシステム。
【請求項32】
大動脈瘤(AAA)治療用エンドグラフトであって、前記エンドグラフトの管腔と周辺動脈瘤嚢との間の血液連通を排除するための不透過性部分と、腎動脈口を横切って配置されるように構成された多孔性部分と、を含むことを特徴とするエンドグラフト。
【請求項33】
前記エンドグラフトが、前記不透過性部分よりも長いマクロ多孔性スリーブを含み、前記多孔性部分が、前記不透過性部分の少なくとも一部の上に前記マクロ多孔性スリーブを固定することにより作成される、ことを特徴とする請求項32に記載のエンドグラフト。
【請求項1】
カフと少なくとも2つのエンドグラフトユニットとを含む大動脈瘤(AAA)治療用エンドグラフトシステムであって、個々のエングラフトユニットが、管腔と、近位端と、遠位端とを有し、前記エンドグラフトユニットが、前記カフに配置され固定された近位端と腸骨動脈の各々に配置され固定される前記遠位端とを有する可撓性の防水性管で作成される、ことを特徴とするエンドグラフトシステム。
【請求項2】
前記エンドグラフトユニットが、圧縮可能な防水性発泡管で作成される、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項3】
前記システムが、4つのエンドグラフトユニットを含み、個々のエンドグラフトユニットが、管腔と、近位端と、遠位端とを有し、4つの近位端が全て前記カフに配置され固定されるのに対し、第1の遠位端が延びて右腸骨動脈に固定されるようになり、第2の遠位端が延びて左腸骨動脈に固定されるようになり、第3の遠位端が延びて右腎動脈に固定されるようになり、第4の遠位端が延びて左腎動脈に固定されるようになる、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項4】
前記カフが、前記エンドグラフトユニットを適所に保持する突起を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項5】
前記カフが発泡体カフを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項6】
前記発泡体が、硬化性発泡材料で作成される、ことを特徴とする請求項5に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項7】
前記発泡材料が、ポリビニルアルコール発泡体、ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、セルロースアセテート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、アクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項6に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項8】
前記発泡材料が、UV光又は熱で処理される、ことを特徴とする請求項6に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項9】
第1のエンドグラフトユニットの前記第1の近位端が、第2のエンドグラフトユニットの第2の近位端に実質的に近い距離に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項10】
前記エンドグラフトユニットが、防水性可撓管からなる内層と、半剛性メッシュ状材料からなる中間層と、防水性の可撓性オーバーラップからなる外層とを含み、前記エンドグラフトユニットが少なくとも2つの防水層を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項11】
前記内層が伸縮性PTFE管で作成され、前記外層が伸縮性PTFEオーバーラップで作成される、ことを特徴とする請求項10に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項12】
前記エンドグラフトユニットが、マイクロファイバー織布で作成される、ことを特徴とする請求項1に記載のエンドグラフトシステム。
【請求項13】
腹部大動脈瘤(AAA)治療用エンドグラフトであって、ネック取り付け部分と、グラフト体と、脚部とを含み、前記ネック取り付け部分が、腎動脈の近位に配置されるための少なくとも第1の定着要素と、該第1の定着要素から軸方向に離間して配置された、前記腎動脈の遠位に配置されるように構成された第2の定着要素とを含む複数の定着機構を有する、ことを特徴とするエンドグラフト。
【請求項14】
複数の定着機構が、2つの腎動脈間の領域の周囲に配置されるように構成された第3の定着要素を含む、ことを特徴とする請求項13に記載のエンドグラフト。
【請求項15】
AAA治療用エンドグラフトであって、ネック取り付け部分と、近位端と第1の腸骨動脈内部に固定されるべく前記ネック取り付け部分から前記第1の腸骨動脈へ延びる長さとを有する第1の発泡管と、近位端と第2の腸骨動脈内部に固定されるべく前記ネック取り付け部分から前記第2の腸骨動脈へ延びる長さとを有する第2の発泡管とを含み、両発泡管が前記ネック取り付け部分に固定される、ことを特徴とするエンドグラフト。
【請求項16】
第1の発泡管の前記第1の近位端が、第2の発泡管の前記第2の近位端に実質的に近い距離に位置する、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項17】
前記ネック取り付け要素がハンガーを含み、前記第1の発泡管の前記近位端がフックで構成されて前記フックを前記ハンガーに確実に連結する、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項18】
前記第1の発泡管の遠位端を広げ、該遠位端を前記第1の腸骨動脈の周辺組織に定着させてシールする、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項19】
前記発泡管の近位部分を可膨張性要素で作成し、前記近位部分が膨張して前記近位部を血管壁に定着させて固定する、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項20】
前記発泡管の少なくとも1つが、可膨張性管体をさらに含む、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項21】
前記発泡管の少なくとも1つが、径方向の位置決め構造を使用しないように十分なフープ強度を有する可撓性グラフトとして機能する、成形充填材料で満たされた二重壁バッフル管体を含む、ことを特徴とする請求項15に記載のエンドグラフト。
【請求項22】
前記発泡管の少なくとも一端の前記バッフル層の一部を裏返してカフを形成する、ことを特徴とする請求項21に記載のエンドグラフト。
【請求項23】
血管に挿入するための可撓性ステントグラフトであって、遠位部と、近位部と、該遠位部及び近位部を接続する管腔とを有するグラフト体を含み、前記グラフトが、可撓性の剛性又は半剛性材料からなる第1の層と、防水性の可撓性オーバーラップからなる第2の層とを有し、前記グラフトが折り畳み式であり、挿入手術中に目立たない、ことを特徴とするステントグラフト。
【請求項24】
前記第1の層が、前記挿入手術中にシース内で圧縮可能な螺旋状ワイヤを含む、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項25】
前記第1の層を適所に位置決めした後に、前記第2の層が前記第1の層上に重積する、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項26】
防水性の可撓管からなる第3の層をさらに含み、前記グラフトが少なくとも2つの防水層を含む、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項27】
前記ステントグラフトの端部にあるスリーブが、前記第1及び第2の層上に前記第3の層の余長を反転させることにより形成される、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項28】
前記第3の層が可撓性繊維又はポリマー管で作成され、前記第2の層が可撓性繊維又はポリマーオーバーラップで作成される、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項29】
前記グラフトの前記近位部分の周囲に、前記グラフトを血管壁に定着させるように構成された定着具が二次手術として設けられる、ことを特徴とする請求項23に記載のステントグラフト。
【請求項30】
請求項4に記載の第1及び第2のステントグラフトを含むステントグラフトシステムであって、いずれかのステントグラフトの近位部分が、半円状側面及び結合側面を有するように成形され、前記2つのグラフトの前記近位部分が互いに結合して円筒状管状構成を形成する際に、前記第1のステントグラフトの前記第1の結合側面が、前記第2のステントグラフトの前記第2の結合側面に結合して密接に一致する、ことを特徴とするステントグラフトシステム。
【請求項31】
前記第1のステントグラフトの前記第1の結合側面が、正電荷磁石を有するように構成され、前記第2のステントグラフトの前記対向する第2の結合側面が、負電荷磁石を有するように構成されて、結合時に制御シール及び密接な接触を確実にするようにされる、ことを特徴とする請求項30に記載のステントグラフトシステム。
【請求項32】
大動脈瘤(AAA)治療用エンドグラフトであって、前記エンドグラフトの管腔と周辺動脈瘤嚢との間の血液連通を排除するための不透過性部分と、腎動脈口を横切って配置されるように構成された多孔性部分と、を含むことを特徴とするエンドグラフト。
【請求項33】
前記エンドグラフトが、前記不透過性部分よりも長いマクロ多孔性スリーブを含み、前記多孔性部分が、前記不透過性部分の少なくとも一部の上に前記マクロ多孔性スリーブを固定することにより作成される、ことを特徴とする請求項32に記載のエンドグラフト。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図26A】
【図26B】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図27D】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【図28F】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【図30D】
【図31】
【図32】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図26A】
【図26B】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図27D】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【図28F】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【図30D】
【図31】
【図32】
【公表番号】特表2011−520527(P2011−520527A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509771(P2011−509771)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/044212
【国際公開番号】WO2009/140638
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510302205)アルツラ メディカル インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/044212
【国際公開番号】WO2009/140638
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510302205)アルツラ メディカル インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
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