膀胱および他の身体の小嚢又は管腔を治療するための埋め込み型薬物供給デバイスおよび方法
膀胱内又は他の身体の小嚢内で薬物を制御供給するための、埋め込み型医療用デバイスを提供する。本デバイスは、薬物を含む少なくとも1つの薬物リザーバ構成材;並びに第1の端部、反対側の第2の端部、およびそれらの間の中間部を有する弾性ワイヤを含む小嚢留置用フレームを備えてもよく、薬物リザーバ構成材は小嚢留置用フレームの中間部に取り付けられている。留置用フレームは、デバイスが膀胱から偶発的に排泄されることを防止し、それは、好ましくは、デバイスが排尿中に膀胱内に有効に留まると共に膀胱の刺激を最小限にするように選択されたばね定数を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年12月11日に出願された米国仮特許出願第61/007,177号、および2008年7月30日に出願された米国仮特許出願第61/084,927号の利益を主張し、これらはそれぞれ、参照によりその内容全体が援用される。
【0002】
本発明は、一般には埋め込み型薬物供給デバイス、具体的には、膀胱又は他の身体の管腔若しくは腔(cavity)に埋め込み可能なデバイスから薬物を制御放出するためのデバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
薬物供給は、医療の重要な側面である。多くの薬物の効果は、投与される方法と直接関係している。様々な全身的薬物供給法としては、経口供給法、静脈内供給法、筋肉内供給法、および経皮供給法が挙げられる。これらの全身的方法では、望ましくない副作用が生じたり、生理学的プロセスによる薬物の代謝が起こって、目的の部位に到達する薬物の量が最終的に減少したりする可能性がある。従って、より標的指向性のある方法で薬物を供給するために、様々なデバイスおよび方法が開発されてきた。例えば、これらのデバイスおよび方法は、薬物を局所供給することができ、全身的薬物供給に伴う問題の多くに対処することができる。
【0004】
近年、着実に進展してきた分野の1つに、局所薬物供給のためのマイクロデバイスの開発がある。薬物放出の作動は、受動的に又は能動的に制御することができる。制御薬物供給デバイスの例は、米国特許第5,797,898号、米国特許第6,730,072号、米国特許第6,808,522号および米国特許第6,875,208号に開示されている。
【0005】
これらのマイクロデバイスは、大まかに2つのカテゴリーに、即ち、吸収性ポリマーをベースにするデバイスと非吸収性デバイスに分類できる。ポリマーデバイスは、生分解性である可能性、従って埋め込み後に除去する必要がない可能性がある。これらのデバイスは、典型的には、患者に投与した後、所定の期間にわたり、ポリマーから薬物を拡散させることによって、および/又はポリマーが分解することによって、生体内で薬物を制御放出するように設計されている。
【0006】
間質性膀胱炎(IC)および慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS)は、有痛性の慢性疾患であり、米国では、女性100,000人当たり約67人(Curhan et al., J.Urol.,161(2):549-52(1999))および男性100,000人当たり7人(Collins et al., J.Urol.159(4):1224‐28(1998))が罹患する。これらの症状は、共に、慢性骨盤痛、頻尿および尿意切迫、並びに様々な程度の性機能不全を特徴とする。ペントサンポリ硫酸ナトリウム(PPS)が、現在、この症状の治療に使用されている。しかし、従来の薬物供給方法およびデバイスには、重大な欠点がある。例えば、経口供給(ELMIRON(商標)、Ortho‐McNeil)は、初回通過効果が高いため、バイオアベイラビリティが3%と低く(Parsons et al., J.Urol.153(1):139-42(1990))、何らかの軽度の副作用(頭痛など)を引き起こす。膀胱鏡検査(カテーテルを尿道に通す)により膀胱内に供給されるPPSは、改善された治療効果を提供すると共に、薬物の副作用を低減することができる(Bade et al., Br.J.Urol.79(2):168-71(1997))。しかし、この点滴注入は痛みを伴い、毎週2回、3ヶ月間処置を繰り返す必要がある。この処置は繰り返し行う性質のものであるため、尿路感染や菌血症の高いリスクを生む。従って、長期間にわたる局所供給に必要なPPS又は他の薬物を有効量供給するのに必要な膀胱鏡処置の回数を実質的に減少させる膀胱内薬物供給デバイスに対する切実な必要性がある。
【0007】
IC/PBSの治療の1つは、点滴注入でリドカイン溶液を膀胱に供給することを必要とする(R.Henry, et al.,"Absorption of alkalized intravesical lidocaine in normal and inflamed bladders:a simple method for improving bladder anesthesia," J.Urol,165:1900‐03,2001;C.L.Parsons, "Successful downregulation of bladder sensory nerves with combination of heparin and alkalinized lidocaine in patients with interstitial cystitis," Urology,65:45‐48,2005)。膀胱内層(bladder lining)は、通常のリドカインがそれを通過するのが困難であるような強い粘液質のバリアを有する。しかし、研究者らは、麻酔薬を正確な量の炭酸水素ナトリウムでアルカリ化すると、それは麻酔薬が粘膜を通過して、その下にある刺激された神経および組織に到達し、それらを鎮める能力を改善することを見出した。従来の処置では、点滴注入により、ボーラス用量のリドカイン(又はマーカイン)、ヘパリン、および炭酸水素ナトリウムが膀胱に供給される。溶液が膀胱内に存在する比較的短い時間の間に、膀胱組織はリドカインを吸収し、患者に痛みや切迫感の即時の軽減を提供する。吸収されたリドカインはまた、膀胱組織からリドカインが分解する時、連続した軽減を提供する。しかし、リドカインの半減期は比較的短く、従って、連続した軽減および持続時間が限られた軽減時間を提供するのに、比較的高い初期リドカイン濃度を必要とする場合がある。持続的な軽減を達成するために、その後で点滴注入を、例えば、毎週3回2週間行うことが必要な場合がある。各点滴注入は、尿路カテーテル法に関連する不都合、不快感、および感染のリスクを伴うため、このような点滴注入の頻度は、望ましくないことがある。軽減の持続時間は、膀胱の中に吸収されるリドカインの初期濃度を高くすることによって、例えば、溶液中の濃度を高くすることによって長くなり得る。しかし、リドカインの初期濃度が高過ぎると、望ましくない全身作用が起こることがある。
【0008】
特に、膀胱に薬物を局所供給することが好ましい又は必要である場合、例えば、薬物の全身供給に伴う副作用が許容できないとき、および/又は経口投与時のバイオアベイラビリティが低過ぎるときなど、他の療法は、改善された膀胱内薬物供給デバイスが有利となる可能性がある。例えば、過活動膀胱症候群の治療にはオキシブチニンが使用される。現在、オキシブチニンは、経口供給又は経皮供給される。しかし、残念ながら、薬物を摂取する患者の約61%に副作用が起こり、患者の約7〜11%は、副作用が深刻であるため、実際に治療を停止する。
【0009】
Situs Corporationは、オキシブチニン(過活動膀胱の治療用)およびマイトマイシンC(膀胱癌の治療用)などの薬物の薬液を供給するための、膀胱内ドラッグデリバリーシステム(UROS注入デバイス)を開発した。UROS注入デバイス並びにデバイスの製造法および埋め込み法は、米国特許第6,171,298号、米国特許第6,183,461号、および6,139,535号に記載されている。UROS注入デバイスは、エラストマーの外管を有し、両方の内端を接続する非伸長性のワイヤを収容している。デバイスは、膀胱鏡で膀胱に挿入される時には直線状の形状を有し、埋め込まれて、デバイスに薬液が充填された後に三日月形の形状に変化し、薬液を全て放出した後に直線状の形状に戻る。長時間の薬液放出は、圧力感応弁および/又は管内の流れ抵抗要素によって制御される。UROS注入デバイスのサイズは、各内部部品のサイズに依存し、内容量のかなりの部分が、薬物溶液ではなく機械部品の収容に使用される。長さ約10cm、外径約0.6cmと、UROS注入デバイスはサイズが大きいため、特に、デバイスを泌尿器に配備し、回収する時、患者に著しい不快感と痛みを引き起こす可能性がある。UROS注入デバイスは、また、埋め込み後に、デバイスに薬液を装填するために、追加の外科処置を必要とする。従って、患者の不要な不快感や痛みを回避するために、サイズが比較的小さい膀胱内薬物供給デバイスが必要とされている。更に、治療期間にわたる薬物の埋め込みや供給に必要な外科処置の回数を最小限にし得る膀胱内薬物供給デバイスを提供することが望ましい。
【0010】
また、ある期間にわたり持続放出を提供すること、および、これを膀胱内で達成することも必要とされており、数日又は数週間の期間にわたって薬物の有効装填量(payload)を供給する必要がある場合であっても、デバイスは、望ましくは、膀胱内に留置されるべきであり、薬物有効装填量を少なくとも実質的に放出し得る前に排泄されるべきではない。一般に、薬物を膀胱に制御供給するための、より優れたデバイスが必要とされている。望ましくは、埋め込み型デバイスは、膀胱への供給(および、必要に応じて、膀胱からの除去)が容易であり、患者の痛み又は不快感が最小限でなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、膀胱又は他の身体の小嚢内で薬物を制御放出するための、埋め込み型医療用デバイスを提供する。一実施形態では、デバイスは、薬物を含む少なくとも1つの薬物リザーバ構成材;並びに、第1の端部、反対側の第2の端部、およびそれらの間の中間部を有する弾性ワイヤを含む小嚢留置用フレームを備え、ここで、薬物リザーバ構成材は、小嚢留置用フレームの中間部に取り付けられている。留置用フレームは、デバイスが膀胱から偶発的に排泄されることを防止するのに重要であることが分かった。それは、好ましくは、排尿中にデバイスが膀胱内に効果的に留まると共に、膀胱への刺激を最小限にするように選択されたばね定数を有する。
【0012】
一実施形態では、弾性ワイヤは、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ(グリセロール−セバケート)又はこれらの組み合わせなどの低弾性率エラストマーを含んでも、又はそれからなってもよい。別の実施形態では、弾性ワイヤは超弾性合金又は他の形状記憶材料を含んでも、又はそれからなってもよい。例えば、超弾性合金は、生体適合性ニッケル−チタン合金(例えば、Nitinol)又はチタン−モリブデン合金(例えば、Flexium)を含んでもよい。一実施形態では、弾性ワイヤは、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、Silitek、Tecoflex、C-flex、およびPercuflexなどの生体適合性ポリマーコーティングを有してもよい。
【0013】
一実施形態では、圧縮されていない状態の弾性ワイヤは、巻かれた形態、例えば、2つ以上のループ、螺旋、又は回転(turn)の形態であってもよい。弾性ワイヤの第1の端部と第2の端部は、前記1つ以上のループ内で結合していてもよい。弾性ワイヤの第1の端部と第2の端部は、好ましくは柔軟で鈍い。圧縮されていない状態の弾性ワイヤは、患者の尿道に挿通されるサイズのカテーテルのルーメンをデバイスが通過できるように、ワイヤをほぼ直線状の形状に真直ぐにすることができるように、2つ以上のループの形態に巻かれていてもよい。
【0014】
一実施形態では、薬物リザーバ構成材は、第1の端部分および反対側の第2の端部分を有し、中に薬物製剤を含む少なくとも1つの細長いエラストマーチューブを備え、チューブは、薬物を生体内で制御された速度で供給するように作動可能である。一実施形態では、チューブは、シリコーンなどの透水性材料で形成される。一実施形態では、チューブは吸収性材料で形成されてもよい。好ましい実施形態では、チューブは、生体適合性で低弾性率のエラストマーを含む、又はそれからなる材料で形成される。
【0015】
薬物製剤は、チューブ内にコアとして配置されてもよい。薬物は、生体内で(例えば、膀胱内で)、浸透によりおよび/又は拡散により制御された速度でデバイスから供給されてもよい、即ち、チューブから放出されてもよい。一実施形態では、チューブは孔を有していなくてもよく、薬物は、その分子サイズおよび/又は構造に応じて、チューブを通って拡散してもよい。一実施形態では、チューブは1つ以上の孔を備えてもよく、薬物は浸透により制御された速度で放出されてもよい。一実施形態では、薬物は、少なくとも一部拡散および/又はマトリックス材料の吸収又は溶解によって制御された速度で供給され、例えば、ここで、チューブは、ポリマー/薬物複合材料などの複合材料を含む。薬物製剤は、好ましくは固体又は半固体の形態である。これは、必要な用量を比較的小さい体積で装填することを容易にし、デバイスの埋め込み中のおよび埋め込み後の患者への過度の刺激および不快感を最小限にし得る。
【0016】
例えば、薬物供給が完了した後、デバイスを膀胱から膀胱鏡で取り除くことを容易にするため、デバイスは少なくとも1つの磁気要素を備えてもよい。ある一定の実施形態では、磁気要素は、小嚢留置用フレームの第1の端部、第2の端部、又は、第1の端部と第2の端部の両方に配置されてもよい。磁気要素を覆うように柔軟なポリマーコーティングが提供されてもよい。
【0017】
代替の実施形態では、デバイスが完全に、又は少なくともデバイスの残存物を排泄するのに十分に分解するという点でデバイスの回収が不要であるように、デバイスは吸収性材料で形成されてもよい。
【0018】
少なくとも好ましい実施形態では、薬物を放出するための孔は、放出が浸透により制御されるサイズ範囲内にある。一実施形態では、孔は円形であり、直径約25μm〜約500μmである。孔が大き過ぎると薬物放出が起こるのが早過ぎ、孔のサイズが小さ過ぎると液圧により薬物リザーバチューブが変形し、ことによると孔が変化する可能性があることが分かった。
【0019】
デバイスは、更に、低密度材料の使用および/又は空気若しくは他のガスをデバイスの何らかの部分に含むことによる浮遊機構を備えてもよい。浮遊機構は、膀胱三角を刺激する可能性を最小限にし得る。デバイスは、また、例えば、デバイスをX線監視できるように放射線不透過性材料が包埋されていてもよい。
【0020】
薬物リザーバ構成材のチューブルーメンのサイズは、可能な薬物有効装填容量を決定する。一実施形態では、薬物リザーバ構成材の中空のチューブは、内径約0.3mm〜約2mmであり、外径約0.6mm〜約3mmであってもよい。端部密封材間のチューブの長さは、いずれか1つの留置用フレームに取り付けられるチューブセグメントの数に応じて変わり得る。
【0021】
特定の実施形態では、薬物を制御供給するための埋め込み型医療用デバイスは、第1の端部および反対側の第2の端部を有する細長い透水性エラストマーチューブ、チューブ内の固体又は半固体の薬物製剤コアを備える少なくとも1つの薬物リザーバ構成材(ここで、チューブは、制御された速度で薬物を供給するための1つ以上の孔を有する);並びに、第1の端部、反対側の第2の端部、およびそれらの間の中間部を有する弾性ワイヤを含む小嚢留置用フレームを備えてもよく、ここで、弾性ワイヤは、超弾性合金若しくは他の形状記憶材料、又は低弾性率エラストマーを含み、薬物リザーバ構成材のエラストマーチューブは、小嚢留置用フレームの中間部の周囲に取り付けられている。好ましい実施形態において、エラストマーチューブはシリコーンから形成される。
【0022】
別の態様では、患者の身体の管腔内の/管腔に隣接した局所組織部位に、例えば、患者の膀胱の中に薬物を投与するための方法を提供する。一例では、本方法は、遠位端、反対側の近位端、およびそれらの間に延びる開放ルーメンを有する尿道カテーテル又は膀胱鏡などのルーメンデバイスを提供する工程;治療を必要とする患者の膀胱に尿道カテーテルの遠位端を挿入し、尿道カテーテルの近位端を患者の体外に残留させる工程;埋め込み型薬物供給デバイスを変形させ(例えば、真直ぐにし)、それを尿道カテーテルのルーメンの近位端に入れる工程;変形したデバイスをルーメンに通して、ルーメンから出し、その時、デバイスが、膀胱内に留置されるように、その変形していない形状に戻る工程;および、患者から尿道カテーテルを抜去する工程を含んでもよい。その後、薬物がデバイスの薬物リザーバ構成材から制御された方法で放出される。この方法のある一定の実施形態では、患者は、間質性膀胱炎、過活動膀胱症候群、又は膀胱癌の治療の必要がある患者であってもよい。
【0023】
更に別の態様では、患者の膀胱の治療方法を提供する。一実施形態では、本方法は、完全に患者の膀胱内に薬物放出デバイスを埋め込む工程;および、膀胱の尿路上皮中に持続的な治療有効麻酔薬濃度を提供すると共に、麻酔薬の高い最高血漿中濃度を回避するように薬物供給デバイスから局所麻酔薬を制御可能に放出する工程を含む。麻酔薬はリドカインであってもよい。一実施形態では、尿路上皮中の麻酔薬の濃度は、血漿中濃度より少なくとも1000倍高い。一実施形態では、尿路上皮中の治療有効麻酔薬濃度は、1〜30日間持続する。
【0024】
更に別の態様では、患者の膀胱を治療する方法を提供し、この方法は、完全に患者の膀胱内に薬物放出デバイスを埋め込む工程;および、膀胱の尿路上皮中に持続的な治療有効薬物濃度を提供するとともに、麻酔薬の高い最高血漿中濃度を回避するように薬物供給デバイスから薬物を制御可能に放出する工程を含み、ここで、薬物の半減期はリドカインの半減期の25%に等しいか、又は25%以内である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】比較的拡張した形状の薬物供給デバイスの一実施形態の平面図である。
【図2】カテーテル内にある比較的低プロファイルの形状の薬物供給デバイスを示す、図1に示されている薬物供給デバイスの実施形態の平面図である。
【図3A】薬物供給デバイスの薬物リザーバ部分の一実施形態を示す側面図である。
【図3B】薬物供給デバイスの薬物リザーバ部分の一実施形態を示す断面図である。
【図3C】薬物供給デバイスの薬物リザーバ部分の一実施形態を示す断面図である。
【図4】仕切り構造で分離された複数のリザーバを備える薬物リザーバ部分の一実施形態の断面図である。
【図5】一端にあるオリフィス構造、およびオリフィス構造を貫通して形成された孔を有する薬物リザーバ部分の一実施形態の断面図である。
【図6】薬物供給デバイスの小嚢留置用フレーム部分の例示的形状を示す図であり、形状は1つ以上のループ、カール、又は部分円(sub-circle)を含む。
【図7】二次元又は三次元の形態に配置された1つ以上の円又は楕円を含むフレームの例示的形状を示す図である。
【図8】1つ以上の薬物リザーバが留置用フレームの中間部に取り付けられているプレッツェル形の留置用フレームの例示的実施形態を示す図である。
【図9A】複数の薬物リザーバ部分が留置用フレームの中間部に取り付けられている留置用フレームの別の実施形態を示す図であり、比較的拡張した形状で示されているデバイスを示す。
【図9B】複数の薬物リザーバ部分が留置用フレームの中間部に取り付けられている留置用フレームの別の実施形態を示す図であり、カテーテル内の比較的低プロファイルの形状のデバイスを示す。
【図10】薬物リザーバ部分が留置用フレームと実質的に整列されている薬物供給デバイスの例示的実施形態の断面図である。
【図11】複数の薬物リザーバ部分が留置用フレームと実質的に整列されている薬物供給デバイスの例示的実施形態の断面図である。
【図12】留置用フレーム構成材が薬物リザーバ構成材の一部を通って延び、2つの構成材が一緒に取り付けられている薬物供給デバイスの一実施形態を示す図である。
【図13】放出孔の近傍に配置された速度制御コーティング又はシースを示す、薬物供給デバイスの一実施形態の側面図であり、デバイスの内部構成材は斜影線で示されている。
【図14】埋め込み型薬物供給デバイスの製造方法の一実施形態を示すブロック図である。
【図15】膀胱内薬物供給デバイスの埋め込み方法を示す図である。
【図16】リドカインを膀胱に供給する方法を示すブロック図である。
【図17】薬物供給デバイスの3つの異なる実施形態の断面図である。
【図18】図17に示す薬物供給デバイスの3つの実施形態の試験管内での薬物放出特性を示すグラフである。
【図19】フレームに圧縮力を加えた圧縮試験中の3つの異なる時点におけるプレッツェル形留置用フレームの一実施形態を示す図である。
【図20】図19に示すデバイスで実施した圧縮試験中に収集された、力と変位のデータを示すグラフである。
【図21】様々な埋め込み型薬物供給デバイスが試験管内で示した経時のリドカイン放出を示すグラフである。
【図22】様々な点滴注入および生体内にウサギの膀胱内に埋め込まれたデバイスに関して示された経時のリドカイン血漿中濃度を示すグラフである。
【図23】様々な点滴注入および生体内にウサギの膀胱内に埋め込まれたデバイスに関して示された経時のリドカイン血漿中濃度を示すグラフであり、y軸が変更されている。
【図24】生体内にウサギの膀胱内に埋め込まれた様々なデバイスに関して示された経時のリドカイン組織濃度を示すグラフである。
【図25】様々な点滴注入および生体内にウサギの膀胱内に埋め込まれたデバイスに関して示されたリドカイン組織濃度とリドカイン血漿中濃度との相関を示すグラフである。
【図26】3日間および6日間、生体内にウサギの膀胱内に埋め込まれたデバイスによって示された組織中および尿中のリドカイン濃度を示すグラフである。
【図27】1時間および1日間、試験管内でラットの膀胱で実施した試験中に示された、リドカインの吸収に対するpHの影響を示すグラフである。
【図28】様々なpHを有する10−5%および1%のリドカイン溶液を用いて試験管内でラットの膀胱で実施した試験中に示された、経時のリドカイン組織濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
膀胱又は他の身体の小嚢若しくは管腔内に埋め込まれ、留置される、改善された薬物供給デバイスを提供する。ボーラス(1回の)薬物供給、律動的薬物供給、又は一定の薬物供給を必要とする療法のために、所定の方法で長期間にわたって1種類以上の薬物を放出するようにデバイスを作製することができる。
【0027】
重要なことには、埋め込み型デバイスは、体内に、例えば、膀胱内に留置されるように設計されている。即ち、デバイスは、例えば、排尿に伴う力に応答した排泄に抵抗するように設計されている。例えば、デバイスは、留置用フレームを備えてもよい。留置用フレームは、身体内に配備されるように、比較的低プロファイルになるように形成されてもよく、埋め込まれた後、留置を容易にするように、比較的拡張したプロファイルを取ってもよい。薬物が装填されたデバイスを、カテーテルのルーメンを通して膀胱の中に配備することを可能にするために、例えば、コイル状の形状から直線状の形状に容易に変形できるように、デバイスは可撓性が高くてもよい。
【0028】
デバイスは、膀胱鏡などにより非外科的に埋め込むことができ、デバイスは、膀胱鏡を抜去したあと長期にわたり薬物供給を継続することができる。細菌が膀胱の中に入る通路の役割をするおそれがある留置カテーテルとは対照的に、埋め込みデバイスは、有利には、完全に膀胱内に配置することができる。従って、本デバイスでは感染の機会が大きく減少する。
【0029】
特に膀胱に関して、本デバイスは、また、点滴注入による薬物供給、全身的薬物供給、および膀胱鏡で膀胱内に埋め込まれるデバイスによる薬物供給などの従来の治療選択肢の欠点の多くに有利に対処する。本デバイスは、一度の埋め込みで済み、手術又は頻繁な介入(従来のデバイスの薬物リザーバを補充することなど)を必要とすることなく、長期間にわたって薬物を放出することができる。治療中、患者に実施することが必要な処置の数を制限することによって、本局所ドラッグデリバリーシステムは、治療中の患者の生活の質を改善することができる。薬物供給デバイスは、また、薬物の全身的投与に伴って起こり得る副作用を回避すると共に、膀胱に局所供給される薬物の量を増加させることができる。
【0030】
一実施形態では、薬物供給デバイスは、比較的長期間にわたって、リドカイン(又は別のコカイン類似体)を膀胱に局所供給することを可能にする。従って、デバイスは、IC/PBSの治療用のリドカイン溶液の頻繁な膀胱内注入療法に代わる有利な代替を提供し得る。デバイスは、従来のカテーテル法、即ち簡単な非外科的外来患者処置で配備および回収を行うことができる受動的で非吸収性のデバイスであってもよい。比較的短時間にわたって比較的高濃度のリドカインを膀胱に装填する膀胱内注入療法と異なり、本デバイスは、比較的長時間にわたって比較的低濃度のリドカインを連続的に放出することを可能にする。従って、患者は、リドカインの高い初期濃度を受けることなく、および、繰り返し行われる膀胱内注入療法の不快感や不都合を経験することなく、IC/PBSの症状が持続的に軽減し得る。更に、有効な膀胱組織濃度を達成するために、リドカインをアルカリ性溶液にして供給する必要がない。
【0031】
I.埋め込み型薬物供給デバイス
実施形態では、薬物供給デバイスは、2つの主要構成材又は部分、即ち、薬物リザーバ部分と小嚢留置用フレーム部分を備えてもよい。薬物リザーバ部分は、本明細書では、「デバイス本体」と称されることがあり、体内に供給される薬物を保持し得る。留置用フレーム部分は、薬物リザーバ部分と結合していてもよく、デバイスを体内に留置することを容易にし得る。図1は、デバイス10の例示的実施形態を示し、デバイスは、薬物リザーバ部分12と留置用フレーム部分14の両方を有する。デバイスが膀胱内に埋め込まれるように設計されている実施形態では、留置用フレーム部分は、デバイス、従って薬物リザーバ部分が膀胱から偶発的に排泄されることを防止し得る。
【0032】
より具体的には、薬物供給デバイスは、比較的拡張した形状と比較的低プロファイルの形状との間で弾性変形可能であってもよい。比較的低プロファイルの形状は、薬物供給デバイスを体内に挿入するのに適していてもよい。例えば、比較的低プロファイルの形状は、薬物供給デバイスをカテーテルに挿通して体腔内に、例えば、尿道カテーテルに挿通して膀胱の中に入れるのに適していてもよい。図2に示す実施例は、チャネル20(例えば、膀胱鏡又は他のカテーテルの作業チャンネルなど)の中にある図1のデバイス10を示す。このような実施形態では、デバイスがカテーテルを通過し得るように、比較的低プロファイルの形状は、図2に示す形状などの比較的管状の形状、細長い形状又は直線状の形状であってもよい。体内に入った後、デバイスは、体腔内に薬物供給デバイスを留置することを容易にし得る、図1に示す形状などの比較的拡張した形状を取り得る。
【0033】
実施形態では、薬物供給デバイスは、比較的拡張した形状を自然に取り得る。デバイスは、体内に挿入されるように、比較的低プロファイルの形状に弾性変形することができ、デバイスは、埋め込まれた後、体内に留置されるように、初期の比較的拡張した形状に自発的に又は自然に戻り得る。
【0034】
留置用フレームは、デバイスが比較的低プロファイルの形状で体内に導入されることを可能にし、体内に入った後、デバイスが比較的拡張した形状に戻ることを可能にする、ある一定の弾性限界及び弾性率を有してもよい。デバイスは、また、予想される力がかかったときデバイスが身体から偶発的に排除されることを制限又は防止するように、埋め込まれた後、デバイスが比較的低プロファイルの形状を取ることを妨げるのに十分な弾性率を有してもよい。例えば、留置用フレームの特性は、排尿又は排尿筋の収縮に伴う流体力学的力などの膀胱内に予想される力が加わるにもかかわらず、デバイスを比較的拡張した形状に保持することを容易にするように選択されてもよい。このようにして、膀胱からの排除が妨げられる又は防止される。
【0035】
薬物供給デバイスが膀胱内に埋め込まれるように設計されている実施形態では、薬物供給デバイスは、膀胱鏡で尿道を通して膀胱に挿入され、膀胱から回収されるように設計されてもよい。従って、デバイスは、膀胱鏡の狭い管状通路を通り抜けるサイズおよび形状に作られてもよい。典型的には、成人用の膀胱鏡は、外径約5mmであり、直径約2.4mmの作業チャンネルを有する。従って、デバイスはサイズが比較的小さくてもよい。例えば、デバイスが比較的低プロファイルの形状に弾性変形するとき、デバイスの全外径は、約2.4mm未満、例えば、約2.0mm〜約2.3mmであってもよい。
【0036】
デバイスのサイズが比較的小さいと、挿入が可能になることの他に、患者の不快感や膀胱の外傷も低減し得る。例えば、デバイスのサイズが比較的小さいと、排尿の切迫感を生じさせる原因である膀胱三角への刺激が低減し得る。また、デバイスが膀胱内で浮遊し得るように、デバイスの密度は、尿又は水の密度より小さくてもよい。このような浮遊は、必要ではないが、膀胱頚部の近傍の敏感な膀胱三角部位にデバイスが接触することを防止し得る。例えば、デバイスは、比較的低密度の構成材料から形成されていてもよく、又は、空気若しくは他の気体がデバイス内に閉じ込められていてもよい。デバイスの外面は、更に、鋭い縁又は先端がなく、柔軟で滑らかであってもよい。
【0037】
膀胱内薬物供給デバイスの正確な形態および形状は、特定の埋め込み部位、埋め込み経路、薬物、投与計画、およびデバイスの治療への適用を含む様々な要因に応じて選択されてもよい。好ましくは、デバイスの設計は、患者の痛みや不快感を最小限にすると共に、患者に治療有効用量の薬物を局所供給する。
【0038】
膀胱内薬物供給デバイスは、薬物製剤の放出後にデバイスを体外に取り出す(explantation)必要がないように、完全に又は部分的に吸収性となるように製造することができる。本明細書で使用する場合、「吸収性」の用語は、デバイス又はその一部が、溶解、酵素による加水分解、腐食、又はこれらの組み合わせにより生体内で分解することを意味する。この分解は、意図されたデバイスからの薬物放出速度論に干渉しない時に起こる。例えば、薬物製剤が実質的に又は完全に放出されるまで、デバイスの実質的な吸収が起こってはならない。あるいは、薬物製剤の放出後にデバイスを除去し得るように、膀胱内薬物供給デバイスは少なくとも部分的に非吸収性であってもよい。このような実施形態では、デバイスは、完全に吸収性ではないことがある;例えば、デバイスは、部分的に吸収された時、分解して、膀胱から排泄されるほど十分に小さい非吸収性の片になるように、デバイスは部分的に吸収性であってもよい。有用な生体適合性吸収性構成材料および非吸収性構成材料が当該技術分野で既知である。実施形態では、デバイスは、医療用シリコーン、天然ラテックス、PTFE、ePTFE、ステンレス鋼、ニチノール、エルジロイ(elgiloy)(非強磁性金属合金)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、又はこれらの組み合わせなどの泌尿器科用途に適した材料から形成されてもよい。
【0039】
薬物リザーバ部分
デバイスの薬物リザーバ部分は、細長いチューブを備えてもよい。チューブは、第1の端部および反対側の第2の端部を有してもよい。チューブの内部はリザーバを画定してもよく、薬物製剤コアはリザーバ内に収容されてもよい。薬物製剤は、棒状の薬物などの実質的に固体の形態であってもよいが、他の形態も可能である。チューブは、とりわけ、浸透、拡散、又はこれらの組み合わせなどにより薬物を供給するための1つ以上の孔を有してもよい。実施形態では、薬物リザーバ部分からの薬物の放出速度を制御してもよい。例えば、リザーバからの薬物製剤の放出の開始を制御するために、分解性膜が孔の1つ以上を覆うように又はその中に配置されてもよい。別の例として、例えば、チューブの浸透表面積を減少させることによって、又はチューブの壁を通した拡散を減少させることによって放出速度を減少させるために、チューブの一部を覆うようにシースを配置してもよい。また、薬物リザーバ部分は、既知の速度で放出するように設計された薬物ポリマー複合材料から形成されてもよい。
【0040】
このような薬物リザーバ部分の例を図3A〜3Cに示す。図示されているように、薬物リザーバ部分は、一般に、エラストマーチューブ30から形成された本体を備える。チューブ30は、棒状の薬物34を収容するリザーバ32を画定する。チューブ30の端部は、下記に詳述する密封構造35で密封されていてもよい。分解性時間調整膜38によって密閉されたチューブ30に孔36の配列が配置されていてもよい。
【0041】
好ましい実施形態では、薬物リザーバ部分は、浸透圧ポンプとして作動する。このような実施形態では、チューブは、シリコーンなどの透水性材料から形成されていてもよい。埋め込み後に、水又は尿が、チューブの壁を透過し、リザーバに入り、薬物製剤に吸収される。可溶化された薬物は、リザーバ内の浸透圧の働きにより、1つ以上の孔を通してリザーバから制御された速度で供給される。供給速度は、とりわけ、チューブの表面積、チューブの肉厚、チューブの形成に使用される材料の液体透過性、並びに、孔の形状、サイズ、数および配置の影響を受ける。供給速度は、例えば、Theeuwes,J.,Pharm.,Sci.,64(12): 1987-91(1975)に記載されている周知の原理によって、特定のドラッグデリバリーシステムを規定する物理化学的パラメータから予測することができる。例示的浸透圧ポンプ設計およびこのような設計を選択するための式を、実施例1〜3に関して後述する。
【0042】
代替の実施形態では、デバイスは、本質的に、例えば、孔の1つ以上、チューブの壁、又はこれらの組み合わせを通ってチューブから薬物が拡散することにより作動してもよい。更に他の実施形態では、デバイスは、浸透と拡散の組み合わせにより作動してもよい。
【0043】
実施形態では、薬物リザーバ部分は、デバイスが挿入されるように弾性変形することを可能にするエラストマー材料から形成されてもよい。例えば、チューブは、下記に更に詳述するように、膀胱内に埋め込まれるように小嚢留置用フレームと一緒に弾性変形してもよい。
【0044】
実施形態では、薬物リザーバ部分は、浸透によりリザーバから薬物を放出することを可能にする、当該技術分野で既知の生体適合性、透水性材料で製造されてもよい。あるいは、薬物リザーバ部分は、実質的に不透水性であってもよい。
【0045】
実施形態では、薬物リザーバ部分は、エラストマーであり且つ透水性である材料から形成されてもよい。例示的な材料は、エラストマーであり且つ透水性であるシリコーンであるが、他の生体適合性材料を使用してもよい。
【0046】
チューブの長さ、直径、および厚さは、とりわけ、収容される薬物製剤の体積、チューブから薬物を供給する所望の速度、体内にデバイスを埋め込む目的の部位、デバイスの所望の機械的完全性(mechanical integrity)、所望の放出速度又は透水性および尿透過性、並びに、体内に挿入する所望の方法又は経路に基いて選択されてもよい。実施形態では、薬物リザーバ部分は、長さ約1cm〜約10cmの範囲、内径約0.3mm〜約2mmの範囲、および外径約0.6mm〜約3mmの範囲である。
【0047】
一実施形態では、デバイス本体は非吸収性である。それは、当該技術分野で既知の、医療用シリコーンチューブで形成されてもよい。好適な非吸収性材料の他の例としては、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、セルロース、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンおよび他のフッ素化ポリマー、ポリシロキサン、これらの共重合体、およびこれらの組み合わせから選択される合成ポリマーが挙げられる。
【0048】
別の実施形態では、デバイス本体は吸収性である。吸収性デバイスの一実施形態では、本体のチューブは、生分解性又は生体内受食性(bioerodible)ポリマーで形成されている。好適な吸収性材料の例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、疑似ポリアミノ酸(pseudo poly(amino acids))、ポリ(グリセロール−セバケート)、これらの共重合体、およびこれらの混合物から選択される合成ポリマーが挙げられる。好ましい実施形態では、吸収性合成ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、およびこれらの混合物から選択される。他の硬化性生体吸収性エラストマーとしては、ポリカプロラクトン(PC)誘導体、アミノアルコールベースのポリエステルアミド(PEA)およびポリ(オクタンジオール−クエン酸)(POC)が挙げられる。PCベースのポリマーは、エラストマー性を得るために、リシンジイソシアネート又は2,2−ビス( −カプロラクトン−4−イル)プロパンなどの追加の架橋剤を必要とする場合がある。
【0049】
薬物リザーバ部分は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2007/0202151号(Leeら)に記載のように製造されてもよい。
【0050】
前述のように、チューブは、中に薬物リザーバが画定されるように、中空であってもよい。例えば、チューブは、実質的に直線状、例えば、実質的に円筒状の形状であってもよい。従って、チューブは、円形の断面積を有してもよいが、チューブの他の断面形状、例えば、とりわけ正方形、三角形、六角形および他の多角形なども考えられる。チューブの端部は、薬物の漏出を制限するように密封されてもよい。例えば、チューブの各端部は、密封構造、医療用シリコーン接着剤、当該技術分野で既知の他の密封手段、又はこれらの組み合わせを使用して密閉されてもよい。チューブが密封構造で密封されている実施形態では、密封構造は、ボール、ディスク、又はチューブの端部を塞ぎ、密閉するのに適した他の任意の形状であってもよい。ボール形の密封構造35の一実施形態を図3Bに示す。このような密封構造は、ステンレス鋼などの生体適合性金属材料、又は、生分解性若しくは生体内受食性ポリマーなどの生体適合性ポリマー材料から形成されてもよいが、他の材料を使用してもよい。チューブが伸張して密封構造の周囲にぴったりと嵌合するように、密封構造の直径は、チューブの内径より比較的大きくてもよい。
【0051】
一実施形態では、チューブは複数のリザーバを有する。複数の孔は、共通の薬物リザーバを共有してもよく、又は別々のリザーバを有してもよい。このようなマルチリザーバデバイスは、少なくとも2種類の特定のデバイス実施形態で;即ち、(1)2つ以上の別々の薬物製剤が単一のデバイスから供給される場合、又は(2)単一の薬物が2つの異なる速度で、又は埋め込み後の異なる時間に供給される場合、例えば、薬物の第1の用量が第1の時間に放出されるように事前プログラムされており、第2の用量が後の第2の時間に放出されるように事前プログラムされている場合に有用である。この異なる事前プログラムは、例えば、2つ以上のリザーバを有する異なるリザーバに異なる時間調整膜を使用することによって達成することができ、リザーバはチューブの内面と少なくとも1つの仕切りによって画定される。チューブの仕切り構造は、セラミックビーズ又は他のマイクロスフェアなどの回転楕円体の形態であってもよい。仕切り構造は、また、ディスク又は円筒状の形状であってもよい。他の形態も可能である。仕切りは、非吸収性であっても、又は吸収性であってもよい。一実施形態では、仕切り構造は、生分解性又は生体内受食性ポリマーなどの生体適合性ポリマー材料で製造されてもよい。
【0052】
図4にこのような薬物リザーバ部分の一実施形態を示す。薬物リザーバ部分は、直線状のチューブ40を備える本体を有する。チューブ40の中空の空間は、3つのリザーバ42a、42b、42cに仕切られており、そのそれぞれが対応する単一の孔44a、44b、44cを有する。リザーバ42は、チューブ40の内面、即ち、チューブの側壁によって、および、チューブの内部空間内に離間配置された球状の仕切り構造46a、46b、46cおよび46dによって画定される。分かるように、仕切り構造は、伸張していないエラストマーチューブの内径より大きい直径を有することによってチューブ40内の所定の位置に固定されており、それによってチューブが伸張して仕切り構造の周囲にぴったりと嵌合し、各リザーバを密封する。
【0053】
実施形態では、仕切られたリザーバは、生分解速度のより速い膜を有する孔が装填された薬物物質の放出を独占し、場合によっては、後で分解する膜を有する孔から薬物物質がほとんど又は全く放出されなくなることを、防止する。各放出孔に別々のリザーバを設けると、複数の生分解性時間調整膜の効果が増加し得る。
【0054】
好ましい実施形態では、リザーバ(又はリザーバを合わせたもの)の全容量は、単一の療法の間に局所供給に必要な薬物を全て収容するのに十分である。即ち、複数の膀胱鏡処置を必要としないように、又は、所与の疾患若しくは症状に対して処方された療法を完了する回数/頻度が減少するように、薬物リザーバ部分は、望ましくは、予想される薬物の用量を全て収容する。
【0055】
孔
一実施形態では、デバイス本体は、チューブの側壁又は端部を通る1つ以上の孔又はオリフィスを備える。1つ以上の孔は、薬物供給デバイスから薬物製剤を放出するための通路を提供する。一実施形態では、デバイスは、チューブの離間配置された位置にある2つ以上の別個の孔の配列を備える。2つ以上の孔は、単一のリザーバと、又は複数のリザーバと流体連通していてもよい。孔のポリマー生分解性膜が引裂する可能性を防止するために、膀胱鏡挿入中に折り曲げられるチューブ部分の近傍に孔を配置することを回避してもよい。孔36の実施形態は、図3Aに示す薬物リザーバ部分のチューブ30上に示されている。
【0056】
孔のサイズは、制御された薬物放出速度を提供するように選択されてもよい。デバイスが主に浸透圧ポンプとして作動することが意図されている実施形態では、孔のサイズは、孔を通した薬物の拡散を最小限にする又は他に減少させるほど孔が小さくなるように選択されてもよい。孔は、また、チューブ内の静水圧が過度に増加し、それによってリザーバ内の流体の体積が増加し、その結果、チューブが膨張し得ることを防止するように形成されてもよい。例えば、リザーバ内の静水圧の増加は、孔のサイズを確実に十分な大きさにすることによって、および/又は、チューブの長さに沿って複数の孔を離間配置することによって防止され得る。放出される薬物の必要な合計速度を提供するために、孔のサイズおよび数についてのこれらの制約内で、単一のデバイスに(又は単一のリザーバに)使用されるこのような孔のサイズおよび数を変化させてもよい。例示的実施形態では、孔の直径は、約20μm〜約300μm(例えば、20〜100μm、25〜75μmなど)である。一実施形態では、孔は円形であり、約25〜約500μmの直径を有する。別の例では、孔は、円形であり、約20〜約75μmの直径を有する。1つの特定の例では、孔の直径は約50μmである。デバイスが主に拡散によって作動する実施形態では、孔はこの範囲内であっても、又はそれより大きくてもよい。
【0057】
単一のデバイスが、2つ以上の異なるサイズの孔を有してもよい。孔の形状は、典型的には円形であるが、他の形状も可能であり、考えられるが、典型的には製造上の考慮事項に依存する。
【0058】
一実施形態では、孔は、レーザーアブレーションにより、チューブ(シリコーンチューブなど)の壁を貫通して穴明けされる。例えば、孔は、紫外エキシマレーザー微細加工システムを使用して、形成されてもよい。このような実施形態では、孔は、チューブの外側からチューブの内側まで僅かに先細りになっていてもよい。例えば、孔は、チューブの壁の外面に沿って約55μmの直径を有してもよく、孔は、チューブの壁の内面に沿って約45μmの直径を有してもよいが、他の任意の形態も可能である。次いで、孔は、生分解性時間調整膜で被覆されてもよい。当業者は、レーザーアブレーションを使用して、貫通孔穴明け又は深さ制御穴明けのどちらかにより医療用ポリマーに穴明けし、0.050mmの小さい直径を有する輪郭のはっきりした穴を形成し得る。従って、穴は、薬物がチューブに装填される前に形成されてもよく、又は薬物がチューブに装填された後で形成されてもよい。
【0059】
別の実施形態では、チューブの端部に配置されたオリフィス構造に、1つ以上の孔が形成されてもよい。このような実施形態を図5に示す。薬物リザーバ部分は、本体の中心穴の一端を塞ぐ精密オリフィス構造52を有する管状のシリコーン本体50を有してもよい。オリフィス構造52は、孔54を備えてもよい。マイクロビーズ56などの密封構造が、チューブの反対側の端部を塞いでもよく、薬物製剤58が、オリフィス構造52とマイクロビーズ56の間に画定されるリザーバ内に配置されてもよい。オリフィス構造は、当該技術分野で既知の精密オリフィス(例えば、Bird Precision Orifices, Swiss Jewel Companyから入手可能)であってもよい。オリフィス構造をシリコーンチューブ内に挿入することができる、および/又はオリフィス構造をシリコーン接着剤でシリコーンチューブに取り付けることができる。一例では、デバイスは、ルビー又はサファイア製で外径約1.5mm以下の精密オリフィス構造を有する、内径305μmおよび外径635μmのシリコーンチューブを備えてもよい。
【0060】
分解性膜
一実施形態では、薬物製剤の放出が開始する時間を制御するために、1つ以上の孔のそれぞれに、分解性膜が各孔を覆うように又は各孔の中に(例えば、孔と位置合わせされて)配置されている。一実施形態では、分解性膜は、デバイス本体のチューブの外面を被覆する均一なコーティングの形態である。別の実施形態では、別個の分解性膜を実質的に孔の中に備えてもよい。2つ以上の分解性膜の組み合わせを使用して、1つの孔からの放出を制御してもよい。
【0061】
特定のシステムの分解性膜の厚さは、例えば、分解性膜に選択された構成材料の化学的および機械的特性(主に分解速度を支配する)、並びに、特定の薬物供給デバイスに関する所望の薬物放出遅延時間に依存する。例えば、Richards Grayson, et al., "Molecular release from a polymeric microreservoir device: Influence of chemistry, polymer swelling, and loading on device performance" Wiley InterScience(6 April 2004); Grayson, et al.,"Multi-pulse drug delivery form a resorbable polymeric microchip device" Nature Materials, Advance Online Publication(19 October 2003); 米国特許第6,808,522号を参照されたい。一実施形態では、分解性膜の厚さは、約100μm〜約200μm、例えば、145μm〜160μmである。
【0062】
膜は、生体適合性材料で形成されてもよい。一実施形態では、膜は、ポリエステル、ポリ酸無水物、又はポリカプロラクトンなどの吸収性合成ポリマーで形成されている。別の実施形態では、膜は、コレステロール、他の脂質および脂肪などの吸収性生物材料で形成されている。
【0063】
短期間にわたって薬物を放出することが望ましいこれらのデバイスの実施形態では、分解性膜は、例えば、高いグリコリド含有率を有するポリ(ラクチド−co−グリコリド)共重合体、速い分解時間を有するポリラクトンの共重合体、ある一定のポリ酸無水物、ヒドロゲル、オリゴ糖、および多糖類を含む、迅速に分解する材料から製造されてもよい。比較的長い又は遅延された放出時間が望ましい用途では、分解性膜は、分解に比較的時間がかかる材料、例えば、コレステロール、他の脂質および脂肪、および脂質二重層などの吸収性生物材料、ポリカプロラクトン又はある一定のポリ酸無水物、および乳酸含有率の高いPLGA共重合体などのポリマーから製造されてもよい。
【0064】
ある一定の実施形態では、分解性膜は、単一の薬物放出デバイスから複雑な放出特性を達成することを可能にする。一実施形態では、これは、同じリザーバ又は異なるリザーバに通じる異なる孔を異なる膜で覆うことによって達成されてもよい。一例では、膜の1つは第1の材料で形成され、別の膜は第2の材料で形成されており、第1の材料は、第2の材料と比較して、生体内で異なる分解速度を有する。別の例では、膜の1つは第1の厚さを有し、別の膜は、より大きい第2の厚さを有する。特定の放出特性を設計するために、これらの手法だけを混合して適合させてもよく、又は、これらの手法を、後述のような、薬物と放出制御添加物との配合、若しくは薬物リザーバ部分の一部を放出変更シースで被覆することに基づく速度論変更方法と組み合わせて、混合し適合させてもよい。
【0065】
薬物製剤
薬物製剤は、本質的に、体腔に局所供給するのに有用などの治療薬、予防薬、又は診断薬を含んでもよい。薬物製剤は、薬物のみからなってもよく、又は、1種類以上の薬学的に許容される添加剤を含んでもよい。
【0066】
好ましい実施形態では、薬物製剤は、埋め込みが容易になるように、薬物製剤の全体積を減少させるために、従って、デバイスのサイズを小さくするために、固体又は半固体の形態である。半固体の形態は、例えば、乳濁液又は懸濁液:ゲル又はペーストであってもよい。一例では、薬物製剤は、固体の棒状の薬物の形態である。棒状の薬物の実施形態、およびこのような棒状の薬物の製造方法は、米国特許出願第11/463,956号に記載されており、参照によりその内容全体が援用される。棒状の薬物は、当該技術分野で既知の他の押出法又は注型法を適応させることによって形成されてもよい。例えば、コンドロイチン6−硫酸又はコンドロイチン硫酸Cを含む棒状の薬物は、チューブにCSC水溶液を充填した後、溶液を蒸発させることによって形成されてもよい。別の例として、リドカインを含む棒状の薬物は、リドカインを含む水溶液をチューブに充填し、溶液を蒸発させた後、得られるゲルを結晶化させることによって形成されてもよい。多くの実施形態では、同様に体積/サイズを最小限にするために、薬物製剤は、望ましくは添加剤を含まないか、又は含まれる添加剤の量が最小限である。
【0067】
他の実施形態では、薬物製剤は、液体、溶液、懸濁液、乳濁液、乳濁液類(emulsions)、コロイド懸濁液、スラリー、ヒドロゲルなどのゲル混合物、又はこれらの組み合わせの形態であってもよい。薬物製剤は、例えば、水和性(hydratable)又は水溶性の固体の、粉末又は微粒子の形態であってもよい。
【0068】
薬学的に許容される添加剤は、当該技術分野で既知であり、粘度調整剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、浸透剤、賦形剤、並びに操作性、安定性、分散性、湿潤性、および/又は薬物(即ち、有効医薬成分又は診断薬)の放出速度論を促進することが意図された、製剤の他の非活性成分を挙げることができる。
【0069】
特定の実施形態では、膀胱内薬物供給デバイスは、患者に鎮痛を提供するために使用される。様々な麻酔薬、鎮痛薬、およびこれらの組み合わせを使用してもよい。このような好適な薬剤の代表例としては、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、サリチルアルコール、塩酸テトラカイン、塩酸フェナゾピリジン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、フルフェニサル、イブプロフェン、インドプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、コデイン、オキシコドン、およびクエン酸フェンタニルが挙げられる。好ましい実施形態では、デバイスは、1種類以上の局所麻酔薬を供給するために使用される。局所麻酔薬は、コカイン類似体であってもよい。デバイスの特定の実施形態では、局所麻酔薬は、アミノアミド、アミノエステル、又はこれらの混合物である。異なるアミノアミドの組み合わせ、又は異なるアミノエステルの組み合わせが考えられる。可能なアミノアミドの代表例としては、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、およびロピバカインが挙げられる。可能なアミノエステルの代表例としては、ベンゾカイン、プロカイン、プロパラカイン、およびテトラカインが挙げられる。これらの局所麻酔薬は、典型的には弱塩基であり、水溶性にするために、通常、塩酸塩などの塩として配合される。
【0070】
好ましい実施形態では、本膀胱内薬物供給デバイスは、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、有痛性膀胱症候群、前立腺炎、および尿道炎などの炎症症状を治療するために使用される。これらの症状のための特定の薬物の非限定例としては、塩酸リドカイン、グリコサミノグリカン(例えば、硫酸コンドロイチン、スロデキシドなど)、ペントサンポリ硫酸ナトリウム(PPS)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オキシブチニン、マイトマイシンC、ヘパリン、フラボキサート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
本膀胱内薬物供給デバイスは、切迫性尿失禁および神経性尿失禁を含む尿失禁の治療に使用することができる。使用され得る薬物としては、抗コリン作用薬、鎮痙薬、抗ムスカリン作用薬、β2作動薬、ノルエピネフリン取り込み阻害薬、セロトニン取り込み阻害薬、カルシウム拮抗薬、カリウムチャンネル開口薬、および筋弛緩剤が挙げられる。尿失禁の治療に適した薬物の代表例としては、オキシブチニン、S−オキシブチニン、エメプロニウム、ベラパミル、イミプラミン、フラボキサート、アトロピン、プロパンテリン、トルテロジン、ロシベリン、クレンブテロール、ダリフェナシン、テロジリン、トロスピウム、ヒヨスチアミン、プロピベリン、デスモプレシン、バミカミド、YM−46303(山之内製薬株式会社、日本)、ランペリソン(lanperisone)(日本化薬株式会社、日本)、イナペリソン(inaperisone)、NS−21(Nippon Shinyaku Orion, Formenti、日本/イタリア)、NC−1800(日本ケミファ株式会社、日本)、ZD−6169(Zeneca, Co.,United Kingdom)、およびヨウ化スチロニウムが挙げられる。
【0072】
別の実施形態では、本膀胱内薬物供給デバイスは、膀胱癌および前立腺癌などの尿路癌の治療に使用される。使用され得る薬物としては、増殖抑制薬、細胞障害剤、化学療法剤、又はこれらの組み合わせが挙げられる。尿路癌の治療に適した薬物の代表例としては、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)ワクチン、シスプラチン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ビンブラスチン、チオテパ、マイトマイシン、フルオロウラシル、リュープロライド、フルタミド、ジエチルスチルベストロール、エストラムスチン、酢酸メゲストロール、シプロテロン、フルタミド、およびシクロホスファミドが挙げられる。薬物療法を、癌組織を標的にした従来の放射線療法又は外科的療法と併用してもよい。
【0073】
更に別の実施形態では、本膀胱内薬物供給デバイスは、膀胱、前立腺、および尿道を含む感染症の治療に使用される。抗生物質、抗菌薬、抗真菌薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、および他の抗感染薬をこのような感染症の治療のために投与することができる。感染症の治療に適した薬物の代表例としては、マイトマイシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、メタンアミン、ニトロフラントイン、アンピシリン、アモキシシリン、ナフシリン、トリメトプリム、サルファ剤、トリメトプリムスルファメトキサゾール、エリスロマイシン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、テトラサイクリン、クナマイシン、ペニシリン、セファロスポリン、およびアミノグリコシドが挙げられる。
【0074】
他の療法および膀胱以外の他の体腔部位に、他の薬物および添加剤を使用してもよい。デバイス中の同じ又は別々のリザーバに貯蔵され(それから放出され)る2種類以上の薬物の組み合わせが考えられる。
【0075】
薬物製剤の添加剤は、リザーバからの薬物の放出速度を調整又は制御するように選択されたマトリックス材料であってもよい。一実施形態では、マトリックス材料は、前述のような吸収性又は非吸収性ポリマーであってもよい。別の実施形態では、添加剤は、脂質(例えば、脂肪酸および誘導体、モノ−、ジ−およびトリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、およびステロイド誘導体、油、ビタミンおよびテルペンから選択される)などの、疎水性又は両親媒性化合物を含む。
【0076】
薬物製剤は、時間的に調整された放出特性、又はより連続的な若しくは一貫した放出特性を提供してもよい。律動的放出は、複数のリザーバから達成することができる。例えば、異なる分解性膜を使用して、数個のリザーバのそれぞれからの放出を時間的にずらすことができる。
【0077】
小嚢留置用フレーム
前述のように、薬物供給デバイスは小嚢留置用フレーム部分を備える。留置用フレーム部分は、薬物リザーバ部分と結合しており、薬物リザーバ部分を体内に(例えば、膀胱内に)留置することを可能にする。留置用フレームは、比較的拡張した形状と比較的低プロファイルの形状との間で弾性変形し得る。例えば、留置用フレームは、比較的拡張した形状を自然に取り、体内に挿入されるように比較的低プロファイルの形状になるように操作され、体内に挿入されると比較的拡張した形状に自発的に戻り得る。
【0078】
比較的拡張した形状の留置用フレームは、体腔内に留置されるような形状であってもよく、比較的低プロファイルの形状の留置用フレームは、カテーテルのルーメンを通して体内に挿入されるような形状であってもよい。例えば、留置用フレームは、膀胱鏡の作業チャンネルを通して体内に挿入されるのに適した形状と、排尿又は排尿筋の収縮に伴う力を受けたときでも膀胱内に留置されるのに適した形状との間で、弾性変形可能であってもよい。このような実施形態の一例を図1〜2に示し、ここで、留置用フレームは、拡張した姿勢のときプレッツェル形状を取り、留置用フレームは、低プロファイルの姿勢のとき比較的細長い直線状の形状を取る。
【0079】
このような結果を達成するために、留置用フレームは、埋め込まれた後、デバイスが比較的低プロファイルの形状を取ることを妨げるように選択された弾性限界、弾性率、および/又はばね定数を有してもよい。このような形態は、予想される力がかかったときデバイスが体内から偶発的に排出されることを制限又は防止し得る。例えば、デバイスは、排尿又は排尿筋の収縮中に膀胱内に留置され得る。
【0080】
好ましい実施形態では、留置用フレームは、弾性ワイヤを備える。一実施形態では、弾性ワイヤは、当該技術分野で既知の超弾性合金又は他の形状記憶材料を含んでもよい。例えば、超弾性合金は、生体適合性ニッケル−チタン合金(例えば、Nitinol)、又はチタン−モリブデン合金(例えば、Flexium)を含んでもよい。生分解性で、生体適合性の形状記憶ポリマーは、米国特許第6,160,084号(Langerら)に記載されている。別の実施形態では、弾性ワイヤは、比較的低弾性率のエラストマーであるか、又はそれを含む。低弾性率のエラストマーは、埋め込まれた後、膀胱への刺激又は潰瘍を比較的引き起こしにくい可能性がある。更に、幾つかの低弾性率エラストマーは、完全に生分解性であってもよく、それによって、埋め込みおよび薬物供給後に除去される必要のないデバイスを作ることが可能になる。低弾性率エラストマーの例としては、ポリウレタン、シリコーン、スチレン系熱可塑性エラストマー、およびポリ(グリセロール−セバケート)(PGS)が挙げられる。弾性ワイヤは、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、Silitek、Tecoflex、C-flex、およびPercuflexの1種類以上から形成されたコーティングなどの、生体適合性ポリマーでコーティングされてもよい。
【0081】
例えば、図1〜2に示されている実施形態では、留置用フレーム14は、超弾性合金から形成され、ポリマーコーティング18中に被覆された弾性ワイヤ16を備える。弾性ワイヤ16は、例えば、ニチノールワイヤであってもよい。ポリマーコーティング18は、例えば、シリコーンシースであってもよい。図1に示す比較的拡張した形状又はプレッツェル形状では、デバイス10は、膀胱から排出されることを妨げるのに適した寸法を有する面積を占めてもよい。図2に示される比較的低プロファイルの形状では、デバイス10は、体内に挿入されるのに適した面積を占めてもよい。従って、デバイス10は、比較的低プロファイルの形状のとき、膀胱鏡の作業チャンネルなどのカテーテル20内に適合してもよい。デバイスは、弾性ワイヤの特性のため、ばねとして機能し得る。従って、デバイスは、圧縮荷重に応答して変形し得るが、荷重が取り除かれると自発的に最初の形状に戻り得る。ポリマーコーティングによって、デバイスの外面が比較的滑らかで柔軟になり得るため、膀胱の刺激が回避される。
【0082】
実施形態では、留置用フレームは、X線又は他の画像法に対するデバイスの視認性を改善し得る、放射線不透過性材料を含んでもよい。図1〜2に示される実施形態では、例えば、放射線不透過性材料は、弾性ワイヤ16の端部に巻き付けられた白金線20であるが、白金線20は弾性ワイヤ16の他の部分に巻き付けられてもよい。また、端部の鈍さを減少させるため、平滑化材料(smoothing material)を弾性ワイヤの端部に塗布してもよい。図1〜2に示されている実施形態では、例えば、平滑化材料22は、端部に塗布された紫外線硬化性エポキシである。紫外線硬化性エポキシは、また白金線20を所定の位置に保持することを助け得る。
【0083】
留置用フレームがプレッツェル形状を取る実施形態では、留置用フレームは、圧縮力に対して比較的抵抗し得る。プレッツェル形状は、本質的に、2つの部分円(sub-circles)を含み、各部分円はそれ自体の比較的小さいアーチを有し、2つの部分円は共通の比較的大きいアーチを共有する。2つの部分円がまず一緒に圧縮されるとき、最も大きいアーチが圧縮力の大部分を吸収し、変形し始める。引き続き圧縮力を加えると、2つの部分円の比較的小さいアーチが重なり合う。その後、3つのアーチは全て圧縮力に抵抗する。2つの部分円が重なり合うと、デバイスの圧縮抵抗は、全体として増加する。このような形態は、排尿中に膀胱が収縮する時、デバイスの圧潰を防止し、膀胱から偶発的に排泄されることを妨げ得る。実施例4は、この結果をより詳細に説明する。
【0084】
留置用フレームが形状記憶材料を含む実施形態では、フレームの形成に使用される材料は、比較的拡張した形状を「記憶」してもよく、デバイスに熱が加えられると、比較的拡張した形状を自発的に取ってもよい。例えば、デバイスが膀胱に入ると拡張し得るように、留置用フレームは、体温に暴露されたとき、比較的拡張した形状に戻るように設計されてもよい。
【0085】
留置用フレームは、膀胱などの体腔内にデバイスが留置されるほど高いばね定数を有する形態であってもよい。これは、高弾性率材料又は低弾性率材料から留置用フレームを形成することによって達成され得る。特に、留置用フレームが比較的低弾性率の材料から形成される実施形態では、留置用フレームは、適切なばね定数を提供する直径および/又は形状を有する形態に形成されてもよい。一例では、弾性ワイヤは、排尿に伴う力を受けたとき、弾性ワイヤが著しく変形しないようなばね定数を有する形態の低弾性率エラストマーを含んでもよい。例えば、留置用フレームの弾性ワイヤは、1つ以上の巻線、コイル、螺旋、又はこれらの組み合わせを含んでもよく、それによって、弾性ワイヤが排尿中に変形する傾向が減少し得る。換言すれば、弾性ワイヤが、ポリウレタン又はシリコーンなどの低弾性率エラストマーから形成される場合でも、弾性ワイヤは、巻線、コイル、および/又は螺旋により、ばねの役割をする。
【0086】
巻線、コイル、又は螺旋は、望ましいばね定数を達成するように特別に設計されてもよい。様々な実施形態では、ばね定数は、約3N/m〜約60N/mの範囲であってもよい。例えば、ばね定数は、約3.6N/m〜約3.8N/mの範囲であってもよい。このようなばね定数は、次の方法:即ち、フレームの形成に使用される弾性ワイヤの直径を大きくすること、弾性ワイヤの1つ以上の巻線の曲率を大きくすること、および、弾性ワイヤに追加の巻きを加えることの1つ以上で達成されてもよい。ある一定の低弾性率ワイヤの例示的ばね定数を、下記の実施例5に記載する。
【0087】
フレームの巻線、コイル、又は螺旋は、複数の形態を有してもよい。例えば、フレームは、1つ以上のループ、カール、又は部分円を含む形態などの巻かれた形態であってもよい。図6は、1つ以上のループ、カール、又は部分円を含むフレームの例示的形状を示す。カールは、実施例B、C、DおよびEに示すように直線状に、又は実施例FおよびGに示すように放射状に一体に接続されていてもよい。カールは、実施例BおよびEに示すように同じ方向に、又は実施例CおよびDに示すように交互の方向を向いていてもよい。カールは、また、図A、BおよびEに示すように重なり合っていてもよい。弾性ワイヤの両端は、組織の刺激や瘢痕化を回避するように製造されてもよい。例えば、端部は、柔軟であっても、鈍くても、内向きであっても、一緒に接合されていても、又はこれらの組み合わせであってもよい。フレームは、また、二次元又は三次元の形態に配置された1つ以上の円又は楕円を含んでもよい。図7は、二次元又は三次元の形態に配置された1つ以上の円又は楕円を含むフレームの例示的形状を示す。フレームは、実施例Aに示すような複数の同心円、又は実施例BおよびCに示すような複数の同心楕円を含んでもよい。円又は楕円はそれぞれ閉じていてもよく、円又は楕円は共通の接続点で接合されていてもよい。あるいは、円又は楕円の1つ以上が開いていてもよい。円および楕円は、また、複数の接続点で接続されていてもよい。フレームはまた、複数の重なり合う円又は楕円を含んでもよい。重なり合う円又は楕円は、実施例Dに示すように、それぞれ実質的に同じサイズであってもよく、又は、円又は楕円は、実施例EおよびFに示すように、サイズが様々であってもよい。円は、また、実施形態に応じて、楕円と組み合わせられてもよい。更に、フレームは、実施例Gに示すように、端部が開いている螺旋であってもよく、又は、フレームは閉じた端部を有する螺旋であってもよい。
【0088】
構成材の組み合わせ
小嚢留置用フレームは、薬物リザーバ部分と結合して、薬物供給デバイスを形成する。様々な異なる結合が考えられる。例えば、薬物リザーバ部分は、小嚢留置用フレームの中間部に取り付けられてもよい。より具体的には、小嚢留置用フレームは、第1の端部、反対側の第2の端部、および、これらの間の中間部を有してもよく、薬物リザーバ部分の第1の端部と第2の端部分は、小嚢留置用フレームの中間部に取り付けられていてもよい。薬物リザーバの端部分は、小嚢留置用フレームで終端してもよく、端部分は小嚢留置用フレームと重なり合ってもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。薬物リザーバ部分が留置用フレームの周縁の内側にある、留置用フレームの周縁を越えている、又はこれらの組み合わせであるような向きに薬物リザーバ部分が留置用フレームに対して配置されていてもよい。更に、複数の薬物リザーバ部分は、デバイスの形態に応じて、単一の留置用フレームと結合していてもよい。
【0089】
図8は、1つ以上の薬物リザーバ82が留置用フレーム80の中間部に取り付けられているプレッツェル形の留置用フレーム80の例示的実施形態を示す。具体的には、実施例Aは、1つの薬物リザーバを有する実施形態を示し、ここで、薬物リザーバは、留置用フレームの周縁の内側にあり、端部分が留置用フレームの中間部に取り付けられており、留置用フレームで終端する。実施例Bは、1つの薬物リザーバを有する実施形態を示し、ここで、薬物リザーバは、留置用フレームの周縁の外側にあり、端部分が留置用フレームの中間部に留置用フレームと僅かに重なり合うように取り付けられている。実施例Cは、複数の薬物リザーバ部分を有する実施形態を示し、各薬物リザーバ部分は、留置用フレームの周縁の内側にあり、実施例Dは、複数の薬物リザーバ部分を有する実施形態を示し、薬物リザーバ部分の幾つかは留置用フレームの周縁の内側にあり、薬物リザーバ部分の幾つかは留置用フレームの周縁の外側にある。
【0090】
一実施形態では、複数の薬物リザーバ部分は、単一の留置用フレームと結合している。例えば、図9は、複数の薬物リザーバ部分92が留置用フレーム90の中間部に取り付けられている留置用フレーム90の実施形態を示し、デバイスは、図9Aでは比較的拡張した形状で示されており、デバイスは、図9Bでは、カテーテル内の比較的低プロファイル形状で示されている。複数の別個の薬物リザーバ部分を備えると、複数の異なる薬物を体内に供給すること、異なる形態の薬物を体内に供給すること、薬物を様々な速度で体内に供給すること、又はこれらの組み合わせが容易になり得る。
【0091】
他の実施形態では、薬物リザーバ部分と小嚢留置用フレーム部分は、少なくとも部分的に整列されていてもよい。換言すれば、薬物リザーバ部分は、留置用フレーム部分の長さの少なくとも一部に沿って、留置用フレーム部分と実質的に平行に又は一致して延びてもよい。例えば、薬物リザーバ部分は、留置用フレーム部分の全長に沿って延びてもよい。このような実施形態の例を図10に示し、図10は、幾つかの代替の実施形態の断面図を示す。1つの断面図しか示していないが、デバイスは、実質的にデバイスの全長に沿って又はデバイスのかなりの部分に沿って同じ断面又は類似の断面形態を有し得る。留置用フレームは、実施例A、B、CおよびDに示すように、薬物リザーバ部分のチューブ100と結合した弾性ワイヤ102を含んでもよい。弾性ワイヤ102は、実施例Aに示すように、チューブ100の外面に沿って延びてもよい。弾性ワイヤ102は、また、実施例Cに示すように、チューブ100の内面に沿って延びてもよい。弾性ワイヤ102は、また、実施例Bに示すように、チューブ100の表面を通って延びてもよい。実施形態では、チューブ100は、弾性ワイヤ102の近傍が補強領域104で補強されていてもよく、それによって、弾性ワイヤ102がチューブ100を引裂させる又はチューブ100から脱離するリスクが減少し得る。例えば、補強領域104は、追加のシリコーンの領域であってもよい。弾性ワイヤ102は、また、実施例E、FおよびGに示すように、ウェブ106によって支持されたチューブ100の内部に配置されてもよい。弾性ワイヤ102を支持することの他に、ウェブ106は、チューブ100を複数の区画に仕切ってもよい。例えば、ウェブ106は、実施例Eではチューブ100を2つの区画に、実施例Fでは3つの区画に、実施例Gでは4つの区画に仕切るが、他の形態も可能である。ウェブ106は、区画が互いに連通するように、穿孔されていても又は他に非連続的であってよい。あるいは、区画が互いに隔離されるように、ウェブ106は比較的連続的であってもよい。このような実施形態では、別個の区画は、異なる薬物製剤を保持するのに適し得る異なるリザーバを形成してもよい。ウェブ106は、実施形態に応じて、チューブと同じ材料から形成されても、又は透水性若しくは尿透過性が異なる材料から形成されてもよい。
【0092】
更に他の実施形態では、弾性ワイヤは、複数のチューブに沿って又はそれらの間に延びて、複数のチューブと結合していてもよい。このような実施形態の例を図11に示し、図11は、幾つかの代替の実施形態の断面図を示す。このような実施形態では、実施例A、BおよびCに示すように、複数の別個のチューブ110は、補強領域114によって一緒に接合され、弾性ワイヤ112が補強領域114に包埋されていてもよい。チューブ110の数は様々であってもよい。例えば、実施例Aには2つのチューブ110が示され、実施例Bには3つのチューブ110が示され、実施例Cには4つのチューブ110が示されているが、図示されていない実施形態で、追加のチューブを備えていてもよい。このような実施形態では、別個のチューブ110に同じ薬物製剤が装填されていても又は異なる薬物製剤が装填されていてもよい。別個のチューブ110は、また、同じ構成材料から形成されていても、又は、尿若しくは他の水性液体若しくは体液の透過性が異なる材料などの異なる構成材料から形成されていてもよい。
【0093】
前述の実施形態を組み合わせて、変化させ、本開示の範囲に入る他の薬物供給デバイスを製造してもよい。例えば、薬物リザーバ部分を任意の方法で、中間部以外の留置用フレームの任意の部分に取り付けてもよい。また、薬物リザーバ部分を留置用フレームの弾性ワイヤの周囲に、1回又は任意の回数巻き付けてもよい。留置用フレームは、一般に、簡略化するために弾性ワイヤとして記載されており、これらの実施形態のいずれかでは、図1に関して前述したように、弾性ワイヤはポリマーチューブでコーティングされてもよいことに留意すべきである。また、「薬物リザーバ部分」の用語は、一般に、留置用フレームと結合している別個のチューブを指すが、このチューブは、図4および図11に関して前述したように、任意の数の別個の薬物リザーバに分離されていても又は他に仕切られていてもよい。複数の薬物リザーバ部分を提供すること、単一の薬物リザーバ部分を複数の薬物リザーバに仕切ること、又はこれらの組み合わせによって、複数の異なる薬物を体内に供給すること、異なる形態の薬物を体内に供給すること、薬物を様々な速度で体内に供給すること、又はこれらの組み合わせが容易になり得る。例えば、デバイスは、埋め込み時に、より早く放出される液体の形態と、薬物が可溶化された後に後で放出される固体又は半固体の形態の両方で、薬物を保持してもよい。
【0094】
本質的にどの生体適合性材料又は構造を使用しても、薬物リザーバ構成材を小嚢留置用フレームに取り付けることができる。例えば、医療用シリコーン接着剤を使用して、薬物リザーバ部分を留置用フレームに取り付けてもよい。
【0095】
実施形態では、留置用フレームの弾性ワイヤを薬物リザーバ部分のエラストマーチューブ内に少なくとも部分的に埋入することによって、薬物リザーバ構成材を小嚢留置用フレームに取り付けてもよい。図12に示す実施形態では、プレッツェル形の弾性ワイヤ120の一部は薬物リザーバ部分122の第1の端部と第2の端部を通って延びるが、他の形態も可能である。このような実施形態では、薬物リザーバ部分のチューブはその中にワイヤが入った状態で形成されてもよく、又は、両方の部分を形成した後でチューブにワイヤを貫通させ、それらを接続してもよい。
【0096】
更に他の実施形態では、薬物リザーバ部分は、留置用フレームと一体形成されてもよい。例えば、硬化性シリコーンを成形型に注ぎ込み、シリコーンを硬化させることを含み得る、注型法を使用してもよい。幾つかのこのような実施形態では、弾性ワイヤをシリコーンと一緒に成形型内に配置してもよい。
【0097】
更に、幾つかの実施形態では、薬物リザーバ部分と留置用フレーム部分は、同じ構成材であってもよい。このような場合、デバイスは、前述のように、体内にデバイスを留置するのに十分なばね定数を有する形態に形成されたシリコーンチューブを含んでもよい。このような場合、取り付けは必要でないことがある。
【0098】
他のデバイス機構
単一のデバイスから供給される薬物の速度および総量は、例えば、とりわけ、薬物リザーバ部分の表面積、薬物リザーバ部分の構成材料の種類および透過性、薬物リザーバ部分を貫通して形成された孔の数、および総薬物装填質量に依存し得る。異なる薬物および療法に関して、特定の体腔に対する特定の標的治療量および許容される埋め込み物寸法、および埋め込み経路を選択することができる。
【0099】
実施形態では、放出速度の制御を容易にし得るコーティング又はシースで薬物リザーバ部分を部分的に又は全体的にコーティングすることができる。コーティング又はシースは、薬物リザーバ部分より透水性が比較的小さくてもよい。従って、コーティング又はシースは、薬物リザーバ部分の透水性を調整し又は低下させ、デバイスからの薬物の放出速度を制御する又は遅くすることができる。幾つかの場合、コーティング又はシースは、部分的に透水性であってもよく、その場合、コーティング又はシースは薬物リザーバ部分の全部又は一部を被覆してもよい。例えば、コーティング又はシースは、実質的にデバイス全体を被覆するメッシュを含んでもよい。他の場合、コーティング又はシースは、実質的に不透水性であってもよく、その場合、コーティング又はシースは、デバイス本体の一部だけを被覆してもよい。それにもかかわらず、コーティング又はシースは、デバイス本体の浸透表面積を減少又は変更させ得る。浸透表面積の減少又は変更により、薬物リザーバ部分からの薬物の放出速度が低下又は変更し得る。
【0100】
コーティング又はシースは放出速度の制御を可能にするため、薬物リザーバ部分は、とりわけ、ある一定の可撓性又はばね定数を達成するように、又は、埋め込み中若しくは埋め込み後に、ある一定の形状を取るように、ある一定の薬物有効装填容量を収容するサイズ、形状、および構成に作られてもよい。放出速度は、コーティング又はシースで浸透表面積を制御することによって、独立して制御され得るため、薬物リザーバ部分のこれらの特徴は、このような特徴が放出速度にどのように影響するかにかかわりなく選択され得る。従って、デバイス本体の全体的なサイズ、デバイス本体の形状、又はデバイス本体の形成に使用される材料を変更することなく、放出速度を変更し得る。
【0101】
薬物リザーバ部分がシリコーンチューブから形成される場合、コーティング又はシースは、シリコーンより透水性又は尿透過性が比較的低い材料から形成されてもよい。例えば、コーティング又はシースは、ポリマー、パリレン、硬化性シリコーン、又は当該技術分野で既知の別の生体適合性コーティング若しくはシース材料から形成されてもよい。一実施形態では、デバイス本体はシリコーンチューブから形成されてもよく、他方、シースはポリウレタンから形成されてもよい。
【0102】
薬物がリザーバから比較的均一に放出されることを容易にするように、コーティング又はシースはデバイス本体に沿って比較的均一であってもよい。あるいは、デバイス本体のある一定の部分の透水性が、デバイス本体の他の部分と比較して高くなる又は低くなるように、コーティング又はシースはデバイス本体に沿って変化してもよい。例えば、コーティング又はシースの1つ以上の特徴は、所望の放出速度を達成するように、デバイス本体の全体にわたって変化してもよい。変化してもよいコーティング又はシースの例示的特徴としては、とりわけ、コーティング又はシースの厚さ、サイズ、又は形状;デバイス本体上でのコーティング又はシースの位置、配置、又は向き;および、コーティング又はシースの形成に使用される材料を挙げることができる。
【0103】
更に、デバイス本体の異なる部分に沿って、複数のコーティング又はシースを備えてもよい。幾つかの場合、複数のコーティング又はシースは、デバイス本体内に形成される複数のリザーバに対応してもよく、複数のリザーバのそれぞれが異なる薬物を収容してもよい。このような場合、異なるリザーバから異なる薬物が比較的均一に放出されることを可能にするため、複数のコーティング又はシースは同じ特徴を有してもよい。あるいは、異なるリザーバから異なる薬物が異なる速度で放出されることを可能にするため、複数のコーティング又はシースは異なる特徴を有してもよい。放出速度を変えるために異なってもよい例示的なコーティング又はシースの特徴としては、前述のように、とりわけ、厚さ、サイズ、形状、位置、および材料が挙げられる。例えば、第1のリザーバの周囲のチューブは、第1の材料と第1の厚さの第1のコーティングでコーティングされてもよく、他方、第2のリザーバの周囲のチューブは、コーティングされなくても、第2の(異なる)コーティング材料でコーティングされても、又は、第1のコーティング材料で第2の(異なる)厚さでコーティングされてもよい。従って、第1のリザーバからの放出速度は、第2のリザーバからの放出速度と異なってもよい。
【0104】
実施形態では、固体又は半固体の形態の薬物の溶解を増加させる又は他に制御するために、デバイス本体の周囲にコーティング又はシースを配置することを選択してもよい。一例を図13に示す。図示するように、デバイス本体130は、シリコーンチューブなどのチューブ132から形成されてもよい。チューブ132は、反対側にある2つの端部133を有してもよい。マイクロスフェア134が各端部133を密閉してもよく、端部133間にリザーバ135が形成されてもよい。チューブ132を貫通して形成されたオリフィス136は、リザーバ135から薬物を放出することを可能にする。オリフィス136からの薬物の放出を制御するため、チューブ132の周囲に少なくとも1つのシース138が配置されてもよい。例えば、チューブ132のオリフィス136と端部133の間のそれぞれの側にシース138が配置されてもよい。そのため、薬物はシース138の下で滞留せず、シース138は端部133から内側に離間配置されてもよい。図示するように、シース138は、端部133よりもオリフィス136に比較的近くてもよく、例えば、オリフィス136に直ぐに隣接していてもよいが、他の形態も可能である。その配置は、端部133に隣接したところで水がチューブ132を透過することを可能にするため、シース138をそのように配置すると、オリフィス136から薬物を放出することが容易になり得る。端部133に隣接したところで水がチューブ132を透過するため、薬物は、シース138で被覆されたチューブ132の部分を通り、オリフィス136から出ることができる。従って、シース138の下に配置された薬物の孤立化又は滞留が回避され得る。下記の実施例11又は12は、シースを有する薬物供給デバイスに関する放出速度データを提供し、また、所望の放出速度を達成するシースの長さを選択するための例示的な式も提供する。
【0105】
好ましい実施形態では、埋め込み又は体外への取り出し(explantation)の一部としてデバイスの検出又は観察を容易にするために、チューブは、好ましくは少なくとも1つの放射線不透過性部分又は構造を備える。一実施形態では、チューブは、硫酸バリウム又は当該技術分野で既知の別の放射線不透過性材料などの、放射線不透過性充填材を含む材料で構成されている。
【0106】
シリコーンチューブは、チューブの加工中に硫酸バリウム又は他の好適な材料などの放射線不透過性充填剤をブレンドすることによって、(X線画像法又は蛍光透視法のために)放射線不透過性にされてもよい。超音波画像法で生体内のシリコーンを検出することもできるが、デバイスを小さく保つ場合、それはデバイスを正確に画像化することができる解像度に欠けることがある。蛍光透視法は、処置を実施する施術者にデバイスの位置および向きの正確なリアルタイム画像化を提供することによって、非吸収性デバイスの配備/回収中に好ましい方法となり得る。
【0107】
一実施形態では、膀胱内薬物供給デバイスの本体は、少なくとも1つの回収機構を更に備える。回収機構は、例えば、薬物製剤の放出後に非吸収性デバイス本体を除去するために、デバイスを体腔から除去することを容易にする構造であってもよい。回収機構の実施形態は、米国特許出願第11/463,956号に記載されている。これらの実施形態および他の実施形態では、デバイスは、ワニ口鉗子、三つ叉又は四つ叉の光学把持具などの従来の内視鏡把持器具を使用して回収されてもよい。例えば、デバイスがO形又はコイル状の部分を有する場合、これらの把持器具によってデバイスの除去が容易になり得る。
【0108】
実施形態では、デバイスは、急性期に即時効果を達成し、慢性期(maintenance phase)には持続的効果を達成するように、薬物を投与するように設計されてもよい。例えば、デバイスは、1つが埋め込み後に比較的迅速に薬物を放出するように形成されており、1つが放出の開始前に誘発時間(induction time)を経る、2つの薬物リザーバ又は薬物リザーバ部分を有してもよい。このような結果を達成するために、2つの薬物リザーバ又は薬物リザーバ部分は、異なる透過性などの異なる形態を有してもよく、又は、2つの薬物リザーバ又は薬物リザーバ部分は、即時放出のための液体の形態、および放出前に可溶化される固体の形態などの異なる形態の薬物を貯蔵してもよい。これらの実施形態を本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせて、変化させ、所望の放出特性を達成することができる。
【0109】
II.デバイスの製造方法
別の態様では、埋め込み型薬物供給デバイスの製造方法を提供する。図14は、このような方法140の一実施形態を示すブロック図である。ブロック142では、薬物リザーバ部分が形成される。ブロック144では、小嚢留置用フレーム部分が形成される。ブロック146では、薬物リザーバ部分を小嚢留置用フレーム部分と結合させる。
【0110】
実施形態では、ブロック142における薬物リザーバ部分の形成は、次の部分工程(sub-steps):即ち、薬物リザーバチューブを形成する工程、比較的固い棒状の薬物を形成する工程、棒状の薬物をチューブに装填する工程、密封材をチューブの棒状薬物の端部とチューブの端部との間に挿入する工程、および、チューブに1つ以上の孔を形成する工程の1つ以上を含んでもよい。
【0111】
薬物リザーバチューブは、射出成形、圧縮成形、押出成形、トランスファー成形、インサート成形、熱成形、注型、又はこれらの組み合わせなどの従来の方法を使用して形成されてもよい。生体適合性、透水性、弾性、又はこれらのいずれかの組み合わせである材料から中空のチューブを形成してもよい。例えば、チューブはシリコーンを含んでもよい。
【0112】
薬物を含む水溶液を成形型に充填し、溶液から溶媒を蒸発させることによって棒状の薬物を形成してもよい。例えば、リドカインの棒状薬物は、リドカインの水溶液を成形型に充填し、溶媒の少なくとも一部を蒸発させて薬物の飽和溶液又は過飽和溶液を形成した後、得られたゲルを結晶化させてリドカインの棒状薬物を形成することによって形成されてもよい。飽和溶液又は過飽和溶液に種結晶を導入して、結晶の成長、従って薬物の沈殿を開始させてもよい。このような場合、蒸発および結晶化工程を、1つ以上の制御された温度で行ってもよい。別の例として、デバイスの操作性を向上させるために、塩酸リドカインを硫酸コンドロイチンCと、例えば、70:30の混合比で混合し、幾らかの剛性を有する棒状の薬物を製造してもよいが、このようなプロセスは、塩酸リドカインの有効装填量を幾らか犠牲にする。その犠牲が許容可能であるかどうかは、特定のデバイス設計および用途/使用に依存する。
【0113】
棒状の薬物が形成される実施形態では、薬物リザーバ部分のチューブが成形型の役割をしても、又は成形型の役割をしなくてもよい。チューブが成形型の役割をしない実施形態では、完成した棒状の薬物は、例えば、ガイドワイヤおよび/又はピンセットを使用して棒状の薬物をチューブに入れることによって、チューブに装填されてもよい。
【0114】
薬物製剤が液体の形態である実施形態では、薬物製剤は、孔を通して、又は、後で密封される別の開口部を通して薬物リザーバ部分に装填されてもよい。しかし、固体又は半固体の形態の薬物を装填することは比較的容易である可能性があり、このような形態では更にデバイスのサイズを小さくすることができ、それによって周囲組織への刺激を低減することが容易になり得る。
【0115】
チューブの側壁、チューブの端部、又はこれらの組み合わせの1つ以上に1つ以上の孔を形成してもよい。チューブに1つ以上の穴をレーザー穴明けすることによって、1つ以上の孔を形成してもよい。レーザー穴明けは、チューブに棒状の薬物を装填する前に行っても又は装填した後に行ってもよい。あるいは、米国特許第6,808,522号(Richardsら)に記載のように圧子を用いて成形することなどにより、デバイス本体と同時に孔を形成してもよい。
【0116】
実施形態では、ブロック142の薬物リザーバ部分を形成する工程は、単一の薬物リザーバ部分に複数の異なる薬物リザーバを形成する工程を含んでもよい。このような実施形態では、例えば、ガイドワイヤを使用して、1つ以上の仕切り構造をチューブの中に挿入し、チューブ内に配置してもよい。複数のリザーバおよび仕切りを使用する場合、仕切り構造の取り付けは薬物製剤の装填と交互に行ってもよい。仕切りの外径がチューブの内径より僅かに大きい場合など、仕切り構造の位置は、接着剤を使用して、又はチューブとの摩擦係合により固定されてもよい。
【0117】
実施形態では、ブロック142の薬物リザーバ部分を形成する工程は、1つ以上の放出制御構造を薬物リザーバ部分と結合させる工程を更に含んでもよい。例えば、薬物の放出速度を制御するために、チューブの表面の少なくとも一部にシース又はコーティングを配置してもよい。更に、孔を通した薬物放出の最初の時間を制御するために、孔の1つ以上を覆うように又は孔の1つ以上の中に、分解性膜を配置してもよい。分解性膜は、液体を微量注入又はインクジェット印刷し、孔の一端に、例えば、チューブの外面開口部の中/上に膜を形成することによって、形成されてもよい。例えば、液体は、溶媒中に溶解した吸収性材料を含む溶液、非溶媒中に吸収性材料を含む懸濁液、又は液化された吸収性材料であってもよい。また、薬物リザーバ部分は、既知の速度で放出するように設計された薬物ポリマー複合材料から形成されてもよい。
【0118】
実施形態では、小嚢留置用フレーム部分を形成する工程は、フレームの形成に使用される材料に応じて変わり得る。留置用フレームが、超弾性合金又は形状記憶材料から形成された弾性ワイヤを含む実施形態では、例えば、小嚢留置用フレームを形成する工程は、弾性ワイヤを比較的拡張した形状に形成し、熱処理によってその形状を弾性ワイヤに「プログラム」することを含んでもよい。例えば、図1に示す留置用フレーム14は、弾性ワイヤ16をプレッツェル形状に形成し、弾性ワイヤ16を5分超の時間、500℃を超える温度で熱処理することによって形成されてもよい。また、このような実施形態では、小嚢留置用フレーム部分を形成する工程は、次:即ち、弾性ワイヤを覆うようにポリマーコーティング又はシースを形成する工程、弾性ワイヤの端部を平滑化する工程、および弾性ワイヤの少なくとも一部に放射線不透過性材料を適用する工程の1つ以上を含んでもよい。このような実施形態では、ポリマーシース、放射線不透過性材料、および平滑化材料は、どの順番で弾性ワイヤに適用されてもよい。例えば、デバイスのX線に対する放射線不透過性を改善するために、白金ワイヤを弾性ワイヤの端部に巻き付けてもよく、弾性ワイヤの端部を紫外線硬化性エポキシで平滑化してもよく、弾性ワイヤを覆うようにポリマーシース又はコーティングを配置してもよい。
【0119】
留置用フレームが低弾性率エラストマーを含む実施形態では、小嚢留置用フレームを形成する工程は、フレームがばねとして機能するように、1つ以上の巻線、コイル、ループ、又は螺旋を形成する工程を含んでもよい。例えば、留置用フレームは、とりわけ、押出成形、液体射出成形、トランスファー成形、又はインサート成形によって形成されてもよい。
【0120】
実施形態では、薬物リザーバ部分を小嚢留置用フレームと結合させる工程は、薬物リザーバ部分を留置用フレーム部分に対して向きを定め、それらの間に接着剤を塗布することを含んでもよい。薬物リザーバ部分は、前述のように、様々な向きに配置されてもよい。他の実施形態では、薬物リザーバ部分を小嚢留置用フレームと結合させる工程は、留置用フレーム部分の弾性ワイヤを、少なくとも部分的に薬物リザーバ部分に挿通することを含んでもよい。更に他の実施形態では、薬物リザーバ部分を小嚢留置用フレームと結合させる工程は、2つの部分を一緒に一体形成することを含んでもよい。
【0121】
III.デバイスの使用および用途
膀胱内薬物供給デバイスは、薬物を本質的にどの体腔部位に局所供給するのにも使用され得る。好ましい実施形態では、体腔は治療の必要な男性又は女性の患者の膀胱であってもよい。例えば、膀胱内薬物供給デバイスは、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、過活動膀胱症候群、又は膀胱癌の治療に使用され得るが、デバイスは、また、他の症状の治療のために薬物を膀胱に供給することもできる。他の実施形態では、本膀胱内デバイスを患者の他の体腔内で使用してもよい。例えば、小さいデバイスを膣、胃腔、腹腔、又は眼腔(ocular cavity)内の空間に埋め込んでもよい。
【0122】
一実施形態では、膀胱内薬物供給デバイスは、どのような原因から生じる痛みも管理するように、局所麻酔薬を局所供給するために患者の膀胱に埋め込まれる。例えば、それは、尿生殖器組織のどのような疾患又は障害から生じる痛みであっても、どのような膀胱カテーテル法処置自体(例えば、術後カテーテル法)から生じる痛みであってもよい。
【0123】
本デバイスは、当該技術分野で既知のように、本明細書では一般にカテーテル、尿道カテーテル又は膀胱鏡と称される、任意の好適なルーメンデバイスで患者の膀胱に埋め込まれてもよい。他に明示されない限り、本明細書では、これらの用語は互換的に使用される。カテーテルは、市販のデバイスであっても、又は本薬物供給デバイスの一実施形態を収容するように特別に製造されたものであってもよい。
【0124】
一例では、膀胱内薬物供給デバイスを体腔内に埋め込む方法は、膀胱内薬物供給デバイスを比較的低プロファイルの形状でカテーテル内を通過させて、デバイスをカテーテルから体腔内に放出することを含み、デバイスがカテーテルから出ると、デバイスは、体腔内に留置されるように比較的拡張した形状を取る。実施形態では、比較的低プロファイルの形状は、比較的直線状の、折り畳まれた、拡張された、又は圧縮された形態であってもよい。カテーテルは、膀胱に接近し得るように尿道に挿入されてもよい。図15は、本方法の放出工程の一実施形態を示す。図15に示すように、スタイレット154を使用して、デバイス152がカテーテル150内を押し通されてもよい。図示されるように、デバイス512は、カテーテル150から出る時、変形し、膀胱内に留置されるように比較的拡張した形状に戻る。米国特許第6,139,535号は、また、尿道を通して膀胱内に医療用デバイスを配置する方法および装置を記載している。
【0125】
実施形態では、膀胱内薬物供給デバイスは、棒状の薬物又は粉末の形態などの比較的固い形態の薬物を含む。棒状の薬物が可溶化されると、デバイスから薬物が溶出する。即ち、デバイスに入る体液に薬物が接触し、その中に可溶化されると、溶解した薬物が、埋め込まれたデバイスから浸透圧で拡散又は流動する。例えば、デバイスは膀胱の中に供給され得るが、この場合、薬物は、膀胱内の尿と接触すると、可溶化され得る。
【0126】
一実施形態では、膀胱内薬物供給デバイスは、非吸収性であるか、又は、他に、埋め込み後に除去されなければならない。このような例の1つでは、前段落に記載した方法は、薬物の放出後に、膀胱内薬物供給デバイスを体腔から除去する工程を更に含む。この目的のための専用の回収デバイスが当該技術分野で既知である、又はこの目的のための専用の回収デバイスを容易に製造することができる。例えば、米国特許第5,499,997号は、内視鏡下把持方法および装置を記載している。
【0127】
全身供給の代替として、本デバイスを使用して膀胱に薬物を局所供給してもよく、それは、全身供給で望ましくない副作用が起こり得る場合、又は薬物のバイオアベイラビリティが不十分になり得る場合に望ましい可能性がある。
【0128】
本膀胱内薬物供給デバイスによる治療方法は、所望の(所定の)期間にわたって、所望の量の薬物を長期間、連続的に、間欠的に、又は定期的に放出する。一実施形態では、デバイスは長期間にわたって、例えば、24時間、5日間、7日間、10日間、14日間、又は20、25、30、45、60、又は90日間、又はそれ以上にわたって、所望の用量の薬物を供給することができる。薬物の供給速度および用量は、供給される薬物、および治療される疾患/症状に応じて選択することができる。デバイス中の孔の数およびサイズを変えると共に、異なる分解速度および/又は添加物を使用することによって、異なる放出速度論を有するようにデバイスを作製することができる。
【0129】
好ましい実施形態では、デバイスは患者の膀胱に投与され(即ち、埋め込まれ)、膀胱に制御された方法で薬物製剤を供給する。特定の実施形態では、薬物製剤は、過活動膀胱症候群、膀胱癌、間質性膀胱炎の治療、又は鎮痛に有用な1種類以上の薬物を含む。
【0130】
例えば、デバイスを使用して、長期間、例えば、1日を超える期間にわたり、リドカインを膀胱に局所供給してもよい。有利には、デバイスは、例えば、高い全身濃度を生じさせることなく膀胱組織におけるリドカインの局所濃度を増加させるように、膀胱にリドカインを供給することを可能にする。
【0131】
図16は、リドカインを膀胱に供給する方法160を示すブロック図である。ブロック162では、有効装填量のリドカインを有するデバイスが膀胱に供給される。ブロック164では、リドカインが、長期間にわたってデバイスから連続的に放出される。このような実施形態では、デバイスは、前述のデバイスの一実施形態であってもよく、又はデバイスは他のいずれかのデバイスであってもよい。実施形態では、リドカインの有効装填量は、約50mg〜約100mgの範囲であってもよい。長期間は、例えば、約1日〜約14日の範囲であってもよい。このような方法により、膀胱の尿路上皮中で持続的なリドカイン濃度が達成され得る。
【0132】
有利には、本デバイスおよび方法で達成し得る尿路上皮中の持続的なリドカイン濃度は、一般に全身的に許容可能であると考えられる濃度を超えることができる。著しく高い全身濃度を生じることなく、高い局所薬物濃度が得られる。これによって、比較的少ない有効装填量のリドカインを有効に使用して、尿路上皮中に治療有効リドカイン濃度を生じさせることが可能になる。尿路上皮中リドカイン濃度は、全身作用を引き起こすことなく、全身で得られる濃度を超えることができる。尿路上皮中リドカイン濃度は、点滴注入によって得られる濃度を超えることができ、更に、点滴注入に伴う高い初期最高濃度を回避することができる。デバイスの故障が起こった場合でも、望ましくない全身作用を回避するほど有効装填量が十分に少ない可能性があるため、少ない有効装填量はデバイスの安全性を促進し得る。それにもかかわらず、供給が局所的に行われるため、少ない有効装填量で、尿路上皮中に有効なリドカイン濃度を生じさせることができる。下記の実施例8を参照されたい。
【0133】
実施形態では、本方法は、尿のpHにかかわりなく、リドカインを供給し得る。例えば、リドカインを炭酸水素ナトリウムなどの緩衝剤と一緒に投与する必要がない。下記の実施例9を参照されたい。
【0134】
実施形態では、本方法は、リドカインを比較的固い形態で供給することができ、それによって、デバイスのサイズを小さくし、膀胱の刺激および患者の不快感を回避することが可能になる。
【0135】
実施形態では、(1)有効装填量のリドカインを有するデバイスを膀胱に供給する工程は、第1および第2の有効装填量のリドカインを有するデバイスを膀胱に供給する工程を含んでもよく、(2)長期間にわたってデバイスからリドカインを連続的に放出する工程は、第1の有効装填量のリドカインの放出を開始する工程、および、その後、第2の有効装填量のリドカインの放出を開始する工程を含んでもよい。第1の有効装填量は、比較的迅速に放出されるように製造されてもよく、他方、第2の有効装填量は、比較的連続的に放出されるように製造されてもよい。例えば、第1の有効装填量は液体の形態であってもよく、他方、第2の有効装填量は固体の形態であってもよい。別の例として、第1の有効装填量は、比較的薄肉のシリコーンチューブなどの比較的速く作動する浸透圧ポンプ内に収容されてもよく、他方、第2の有効装填量は、比較的厚肉のシリコーンチューブなどの、放出前に初期遅延時間又は誘発時間を経る浸透圧ポンプ内に収容されてもよい。従って、本方法は、初期、急性期、および慢性期にリドカインを膀胱に連続的に放出し得る。このような方法は、実施例8に関して後述するように、デバイスの初期誘発時間を補償し得る。
【0136】
以下の非限定例を参照して、本発明を更に理解することができる。
【実施例】
【0137】
実施例1:管状浸透圧ポンプの設計
シリコーン製の管状浸透圧ポンプの設計を以下に記載する。透水性(および薬物透過性)および機械的特性に応じて、ポリウレタンなどの他の生体適合性ポリマーチューブを使用することができる。管状浸透圧ポンプの設計式によって、所望の薬物有効装填量および放出速度を得ることが可能になる。チューブの厚さは、機械的完全性および透水性と関係がある。チューブの内径およびチューブの肉厚は、薬物の有効装填量およびチューブの外径を決定する。チューブの長さは、薬物装填量と管状浸透圧ポンプのマクロサイズ又はループ直径の両方に影響を及ぼす。水又は尿がチューブを透過する浸透表面積は、チューブの外径およびチューブの長さの影響を受ける。これらのパラメータは、浸透圧ポンプの全体的な性能に影響を及ぼす。
【0138】
管状浸透圧ポンプは、内部リザーバに薬物を保持し、薬物を外側の媒体に移動させることができる。管状浸透圧ポンプのパラメータを下記に定義する。
C:デバイスリザーバ内の瞬間薬物濃度
ρ:薬物の密度
S:薬物の溶解度
d:チューブの内径
h:チューブの肉厚
D:チューブで作られたマクロループの直径
L:チューブの全長、L=πD
Ln:透過阻止シースを有していないチューブの長さ
Ls:透過阻止シースを有するチューブの長さ、Ls=L−Ln
V:薬物リザーバの容量、
【数1】
m:デバイスリザーバ内に残存する瞬間薬物量、
【数2】
mp:総薬物有効装填量、
【数3】
ΔΠ:チューブの内側と外側の間の浸透圧の差
ΔΠs:飽和時のチューブの内側と外側の間の浸透圧の差
k:溶媒輸送の透過係数
A:水が透過する浸透表面積、A=π(d+h)Ln
tz:ゼロ次放出の持続時間
【数4】
「m」はデバイスリザーバ内に残存する瞬間薬物量を示すため、パラメータ「dm/dt」は、デバイスリザーバ内での薬物質量減少速度として定義される。式「dm/dt」中のマイナス記号は、デバイスが水又は尿中に浸漬されると、デバイスは浸透放出によりその薬物を失うことを表す。周囲媒体の浸透圧が、薬物リザーバ内の製剤の浸透圧と比較して十分小さいとき、van't Hoffの法則を使用して:
【数5】
を得ることができ、ここで、浸透圧と濃度の比例関係が使用される。
【0139】
薬物リザーバ内の濃度が、装填された薬物の溶解度であるとき、デバイスからの薬物放出速度は、最初の期間、一定のままである。この最初の「ゼロ次放出期間」の間に放出される薬物の量は、
【数6】
と表すことができる。リザーバ内の薬物濃度が低下するため、ゼロ次放出期間の後、薬物放出速度は低下する。リザーバ内の薬物質量の変化速度(dm/dt)は、まだ、ゼロ次放出速度
【数7】
に関して表すことができる:
【数8】
リザーバ内に残存する薬物の量(m)と薬物質量の変化速度(dm/dt)に関する式は、2つの期間、即ち、ゼロ次放出期間と非ゼロ次放出期間では異なる。ゼロ次放出期間(0≦t≦tz)に関する式は:
【数9】
式(1.3)を積分して、非ゼロ次放出期間(t≧tz)に関する式を求めることができる。薬物濃度(C)および薬物質量(m)は、時間依存性の変数であり、次の関係がある:
m=CV (1.6)
式(1.6)を式(1.3)と組み合わせた後、式(1.3)をtz〜tまで積分すると、次式
【数10】
を得ることができる。時間t(≧tz)におけるリザーバ内に残存する薬物質量は、
【数11】
および
【数12】
と表すことができ、式中、
【数13】
である。tzを過ぎた薬物リザーバ内の薬物質量は、
m=αmp(α≦1) (1.11)
として表すことができ、式中、αは、初期装填量と比較した残存薬物質量を示す比率パラメータである(例えば、αが0.05である場合、総有効装填量の5%がデバイス内に残存する、又は総装填量の95%が放出されている)。式(1.11)を式(1.8)に代入すると、時間tが
【数14】
として得られ、式中、tzは式(1.10)で置換される。式(1.12)から、
【数15】
は供給時間尺度を決定する因子であることが分かる。この結果は、総有効装填量および初期ゼロ次放出速度が、経時の薬物放出特性の全体的挙動を決定することを示唆している。
【0140】
実施例2:異なるデバイスに関する放出特性の比較
ここで、式(1.12)の適用例を示す。図17は、3つの異なるデバイスA、BおよびCを示し、図18は、3つの異なるデバイスA、BおよびCに関する試験管内薬物放出特性を示すグラフである。各デバイスは、浸透圧ポンプとして機能するチューブであった。チューブは、シリコーンから形成された。各チューブは内部リザーバを画定し、ある量のリドカインをリザーバに装填した。各チューブは、また、外側浸透表面積を画定し、オリフィスが浸透表面積に形成された。オリフィスは、浸透圧下でリザーバからリドカインを放出することを可能にした。
【0141】
より具体的には、デバイスAは、約2cmの浸透表面積と約2mgのリザーバ容量を有するシリコーンチューブであった。デバイスBは、約1cmの浸透表面積と約1mgのリザーバ容量を有するシリコーンチューブであった。デバイスCは、約2cmの浸透表面積(放出オリフィスの近傍にある半分は2つのポリウレタンシースで被覆された)と約2mgのリザーバ容量を有するシリコーンチューブであった。シースのため、デバイスCの有効浸透表面積は、デバイスBの浸透表面積とほぼ同じであったが、デバイスCのリザーバ容量はデバイスAのリザーバ容量とほぼ同じであった。各デバイスについて、シリコーンチューブの端部をマイクロスフェアで密封し、リザーバにリドカインを装填した。デバイスCの場合、放出中に、リドカインが孤立化することを制限するため、オリフィスの比較的近傍にシースを配置した。
【0142】
次いで、試験管内で、37℃の水中でデバイスを試験し、得られる放出特性を図18にプロットした。各デバイスに関する薬物有効装填量(mp)、ゼロ次薬物放出速度
【数16】
および供給時間尺度
【数17】
を、デバイスAの値に対する相対値として、表1に示す。デバイスBの長さは、デバイスAの長さの約半分であったため、デバイスBに関する薬物有効装填量とゼロ次放出速度は両方とも、デバイスAの値の約半分となったが、その結果、デバイスAとデバイスBに関して同じ供給時間尺度が得られる。図18から、時間に関する全体的な試験管内放出特性は、デバイスAとデバイスBで類似していたことが分かる。デバイスCの長さは、デバイスAの長さとほぼ同じであったが、デバイスCの長さの約半分がポリウレタンシースで被覆され、透水性が低下した又は最小限になった。従って、デバイスCに関するゼロ次放出速度は、デバイスAに関するゼロ次放出速度の約半分であった。従って、デバイスCの供給時間尺度は、デバイスAの供給時間尺度の約2倍であった。図18から、デバイスCに関する薬物放出は、デバイスAに関する薬物放出の2倍遅いことが分かる。
【0143】
【表1】
【0144】
実施例3:所望の放出速度を達成するデバイス特性の選択
所望の放出速度を達成するデバイス特性の選択を可能にする式を、下記に列挙する。より具体的には、式は、ある一定の有効装填量で、ある一定の放出速度を達成するために、デバイスをどれくらいコーティング又はシースで被覆すべきかを決定することを可能にする。試験管内での試験中に、対照の放出特性に基づいて、対照の薬物有効装填量を放出する対照の寸法の対照デバイスに対して、デバイス特性を決定することができる。これらの対照のパラメータが分かると、式により、対照デバイスと比較した、標的放出速度を示す標的デバイスの特性を決定することができる。
【0145】
例示のため、図17のデバイスAは、対照デバイスであった。デバイスAは、次の設計パラメータを有した:
チューブの内径:do=0.3048mm
チューブの肉厚:ho=0.1651mm
チューブの長さ:Lo=2cm
有効装填量:mp,o=2mg
治療持続時間:約3日
図18に、デバイスAに関する対照放出速度mz,oをプロットする。対照デバイスのこのようなパラメータで始めて、下記の式は、対照デバイスと比較した、所望の有効装填量に対して所望の供給速度を示す標的デバイスのデバイス特性を得ることを可能にする。より具体的には、2つの変数、
a=標的のゼロ次供給速度の倍増率
b=標的の有効装填量の倍増率、
がそれぞれ定義される。定義から、次のような所望の標的条件が得られる:
ゼロ次供給速度
【数18】
:基準条件と比較してa倍の増加
薬物有効装填量(mp):基準条件と比較してb倍の増加
ここで、薬物およびチューブ材料は基準条件と標的条件の両方で同じであると仮定する。ここでは、標的条件に関するパラメータには、添え字がない。ゼロ次供給速度条件から、
【数19】
が得られ、薬物有効装填量条件から、
【数20】
が得られる。チューブの肉厚は変化してもよいが、ここでは、簡単にするために一定にする:
h=ho
チューブの壁が薄過ぎると、機械的完全性が十分でない可能性があり、他方、チューブの壁が厚過ぎると、デバイスから最初に薬物が放出されるまでの誘発時間が不要に長くなる可能性があることに留意すべきである。従って、チューブの肉厚の適切な範囲は、ポリマーチューブの形成に使用される材料の機械的特性と透水性に基づいて決定することができる。
【0146】
チューブの壁が適切な薄さであるシリコーンチューブは、薬物がチューブ内に装填されているとき、透水性膜の役割をすることができる。下記の式は、まず、透水性チューブがポリマーシースで被覆されていない場合を考慮する。図18のデバイスAおよびデバイスBは、このような場合を示す。水は、チューブの全長で薬物リザーバの中に透過することができ、従って、
L=Ln
となる。式(1.13)および式(1.14)から、次のような内径に関する二次方程式を得ることができ:
【数21】
ここで、1つの解は正であり、もう1つの解は負である。正の解は、dpと示され、従って、チューブの長さの解は、
【数22】
である。従って、供給速度および薬物有効装填量に関する倍増率を選択すると、チューブの内径およびチューブの長さを算出することができる。下記の表2に2つの実施例を示す。異なるポリマーから形成されたチューブ又は他の薬物を保持するチューブについてポリマーチューブと薬物の特定の組み合わせに関する基準条件を得るために、追加の試験管内放出試験を実施することができる。
【0147】
【表2】
【0148】
前述のように、シースで被覆された長さはLsと示される。前節は、Ls=0の場合に対応し、その場合、しばしば、デバイスの直径を小さくすることが通常望ましい。例えば、シースを省くことにより、膀胱鏡の作業チャンネルにデバイスを挿通させることが容易になり得、その直径は約2.4mm以下となり得る。それにもかかわらず、次式は、チューブの透水性を低下させる材料で透水性のチューブが少なくとも部分的に被覆されている、即ち、Ls>0の場合を考慮する。図18のデバイスCは、このような場合を示す。デバイスCは、ポリウレタンなどの比較的透水性が低いポリマーで製造されたシース又はコーティングで少なくとも部分的にコーティングされてもよく、それによって、チューブに入る水の透過が減少し得る又は最小限になり得る。また、パリレンなどの特殊なコーティングを使用して、水の透過を減少させてもよい。式(1.13)および式(1.14)から、チューブの内径(d)が減少する時、チューブの長さ(L)はシースで被覆された長さ(Ls)より速く増加する(L∝1/d2およびLn∝1/(d+h))ことが分かる。シースで被覆された部分の長さは、
Ls=L−Ln (1.19)
である。式(1.13)、(1.14)および(1.19)を使用して、シースで被覆された長さは、
【数23】
と表されるか、又は式(1.18)を使用して、次式が得られ、
【数24】
式中、添え字1は、シースを使用していない場合を示す。シースで被覆されたチューブの部分の長さは、チューブの内径(d)に関して、次のように表すことができ、
【数25】
又は、ループ直径(D)に関して、次のように表すことができる。
【数26】
【0149】
実施例4:弾性ワイヤの特性の選択
図19に示すプレッツェル形の留置用フレームで圧縮試験を実施し、様々な設計因子が留置用フレームのばね定数にどのように影響を及ぼすかを実証した。プレッツェル形の弾性ワイヤは、直径0.009インチ又は0.2286mmの超弾性ニチノールワイヤ製であった。圧縮試験を実施した時、力および変位に関するデータを収集した。このデータを図20に示すグラフにプロットする。
【0150】
留置用フレームに圧縮荷重を加えた時、フレームは、Aに示す形状からBに示す形状に変形し、最終的にCに示す形状になった。具体的には、図19に示すデバイスA、BおよびCの3つの形状は、図20のグラフの3つのデータ点、A、BおよびCに対応する。
【0151】
図19に示すように、フレームが形状Aおよび形状Bから変形した時、圧縮力は、概ね、プレッツェル形の弾性ワイヤの比較的大きい共通のアーチによって吸収された。フレームが形状Bを取ると、弾性ワイヤを構成する2つの部分円は重なり合った。力/変位プロットは、傾きの増加(約15倍)を示し、それは、フレームが形状Bから形状Cに変形する時、持続した。
【0152】
試験およびその後の分析から、低弾性率エラストマーに関する小さいヤング率は、次:即ち、アーチの半径を小さくすること、ワイヤの直径を大きくすること、および、複数のおよび/又は重なり合った円又は巻線を有すること、の1つ以上によって補償され得ることが分かった。例えば、フレームによって形成されるアーチの半径を2分の1に小さくすること、およびフレームの形成に使用されるワイヤの直径を2倍大きくすることによって、ばね定数を27又は128倍、著しく大きくすることができる。
【0153】
実施例5:ある一定の低弾性率ワイヤに関するサンプルばね定数
ヤング率約30GPa、直径約0.2286mm、弧の半径約1.5cmであり、1つのコイルを有するニチノールワイヤのばね定数は、約3.7N/mとなり得る。ヤング率約25MPa、直径約1mm、弧の半径約1cmであり、1つのコイルを有するポリウレタンワイヤのばね定数は、約3.8N/mとなり得る。ヤング率約2.41MPa、直径約1.2mm、弧の半径約0.75cmであり、2つのコイルを有するシリコーンワイヤのばね定数は、約3.6N/mとなり得る。ヤング率約1.7MPa、直径約1.2mm、弧の半径約0.76cmであり、3つのコイルを有するポリ(グリセロール−セバケート)(PGS)のばね定数は、約3.7N/mとなり得る。
【0154】
実施例6:試験管内における様々なデバイスからのリドカインの供給
5つの異なるデバイスで試験管内リドカイン放出試験を実施した。各デバイスは、結晶化リドカイン片が装填されたシリコーンチューブであった。2つの異なるサイズのシリコーンチューブを使用した。デバイスの仕様を表3に示す。各チューブは、端部にステンレス鋼の微小球を挿入して密封された。対照デバイスを除いて、各チューブの微小球の間にオリフィスを穴明けした。各オリフィスの直径は約50μmであった。直径は、CSCで実施した試験管内放出実験の結果に基づいて、一次放出特性が得られるように選択された。表中のIII型と示されたデバイスは、デバイスの中への水の透過を減少させるために、図13に示したものに類似のポリウレタンシースを有する。表中の対照と示されたデバイスは、オリフィスを有していなかった。実験中、チューブ内部の静水圧が増加したため、微小球は外側に押された。デバイスに関する試験管内リドカイン放出曲線を図21に示す。
【0155】
【表3】
【0156】
実施例7:生体内におけるウサギの膀胱内でのデバイスの供給および留置
小嚢留置用フレームは、シリコーンチューブで被覆されたNitinolワイヤ(直径0.009インチ)で作製された。Nitinolワイヤの先端に白金線を巻き、生体適合性UVエポキシを塗布して硬化させ、Nitinolワイヤの先端が鈍くなるように加工した。小嚢組織表面、例えば、膀胱の刺激および瘢痕化が起こる可能性を回避するため、先端は鈍く、柔軟である。被覆されたワイヤデバイスは、重なり合う2つのループの形状であり、ループによって画定された円状の外周の内側に端部が配置された。小嚢留置用フレームは、実質的にプレッツェル形であった。
【0157】
10Frの尿路カテーテルで留置デバイスをウサギの膀胱に埋め込んだ。2つのループ(即ち、部分円)を圧縮すると圧縮抵抗が増加するように、デバイスの形状を選択した。ばね状の機構は、それが尿道に入らないように、構造の圧潰を防止することが意図された。圧縮が取り除かれると、Nitinolの超弾性のため、デバイスは直ぐに元の形状に戻った。デバイスをカテーテルコアに圧縮して入れる代わりに、デバイスを真直ぐにし、スタイレットを使用してカテーテルルーメン内を押し通した。デバイスは、カテーテルの遠位端から出た後、巻いて元の形状に戻った。デバイスは膀胱から排泄されなかった。
【0158】
実施例8:生体内におけるウサギの膀胱内でのリドカインの供給
ウサギの生体内で薬物暴露試験を実施し、膀胱によるリドカインの吸収を調査した。この試験は、雄性New Zealand White rabbitsで行った。ウサギの幾匹かには、膀胱内に埋め込まれる薬物供給デバイスでリドカインを供給し、他方、比較のために他のウサギで点滴注入を実施した。
【0159】
点滴注入で処置されたウサギでは、リドカイン水溶液10mLを膀胱に点滴注入した。以前の臨床試験に基づいて、リドカイン用量は、体重1kg当たり2mg又は5mgであった。尿道に挿通された10Frの小児用Foleyカテーテルを使用して、溶液を点滴注入し、溶液を膀胱内に1時間又は2時間、保持した。点滴注入の前後の複数の時点で、血液サンプルを採集した。点滴注入の1日後にウサギから膀胱を採集し、その時、尿サンプルも採集した。
【0160】
膀胱内埋め込み物で処置されたウサギには、「3日」デバイスか又は「6日」デバイスのどちらかが入れられた。どちらのデバイスも形態が図1に示すデバイスに匹敵し、それぞれ、シリコーン薬物リザーバ構成材と結合したプレッツェル形の留置用フレームを有した。3日デバイスの薬物リザーバ構成材は、長さ約0.0065インチ、内径約0.012インチ、外径約0.025インチ、薬物装填量リドカイン約2mgであったが、他方、6日デバイスの薬物リザーバ構成材は、長さ約0.0085インチ、内径約0.020インチ、外径約0.037インチ、薬物装填量リドカイン約2mgであった。「3日デバイス」および「6日デバイス」の用語は、デバイスの形態を指し、埋め込みの長さを指すものではない。各ウサギに対して、図16に関して前述した手順を使用し、改良された10Frの尿道カテーテルでデバイスを挿入した。デバイスを埋め込んだ後、カテーテルを抜去した。デバイス埋め込みの前後の複数の時点で血液サンプルを採集した。更に、1匹のウサギでは、埋め込み直後、埋め込みの2日後、および埋め込みの9日後に、右側横臥位と仰臥位の両方でX線像を撮影した。異なる時間に撮影した複数のX線像から、デバイスは1つの位置に留まるのではなく膀胱内を自由に移動することが分かった。デバイスは、なんら健康上の問題なく、生体内試験中、ウサギで忍容性が良好であった。1日、2日、3日および6日を含む、埋め込み後の複数の時点で、ウサギから膀胱を採集した。また、膀胱を除去した時点で尿サンプルも採集した。
【0161】
血液、膀胱、および尿サンプルを分析し、血漿、膀胱組織、および尿中のリドカイン濃度を決定した。図22は、様々な処置に関する経時のリドカイン血漿中濃度を示すグラフであり、図23は、同じグラフであるがX軸が変更されている。これらのグラフでは、点滴注入処置は点線で示し、デバイス処置は実線で示す。記号解説は、各ウサギの重量並びに処置の種類を示す。図22のデータ表示は、一般に、様々な点滴注入処置と様々な膀胱内埋め込み処置の比較を可能にし、他方、図23のデータ表示は、概ね、様々な膀胱内埋め込み処置を互いに比較することを可能にする。
【0162】
図22に示すように、リドカイン溶液の点滴注入の結果、リドカイン血漿中濃度は最初、急激に上昇したが、1日後にはもはやリドカインは血漿中に検出されなかった。従って、点滴注入処置によってリドカイン血漿中濃度は急激に上昇し得るが、この上昇の後、すぐ急激に低下する。5mg/kgのリドカイン溶液の点滴注入で2時間処置されたウサギの場合、最高血漿中濃度は、100ng/mLを超えたが、これは、リドカインの既知の毒性限界の10分の1以内である。しかし、全身的には望ましくないが、繰り返し行われる点滴注入と点滴注入の間に軽減を提供するために、このような高い初期最高濃度が必要な場合がある。
【0163】
また、図22から、点滴注入で処置されたウサギより、埋め込みデバイスで処置されたウサギの方が、リドカイン血漿中濃度が比較的低かったことが分かる。しかし、埋め込みデバイスで処置されたウサギは、経時で比較的高いリドカイン血漿中濃度を維持した。
【0164】
図23から、3日デバイスからの放出は12時間後に遅くなったことが分かるが、それは、実施例6の試験管内放出試験で得られた結果と一致している。3日デバイスの2倍の有効装填量を有する6日デバイスは、比較的長時間の放出特性を示した。しかし、6日デバイスは初期誘発時間を示したが、それは、実施例6の試験管内放出試験で得られた結果と一致する。誘発時間は、6日デバイスに使用されたチューブが比較的厚肉であることによるものであり、それは、誘発時間の間、水和され、デバイスからリドカインの放出が開始される。結果から、全体的に見て、埋め込みデバイスによるリドカインのデポー剤の供給は、点滴注入による供給と比較したとき、経時で比較的高いリドカイン血漿中濃度を維持すると共に、高い最高リドカイン血漿中濃度を回避することを可能にすることが分かる。
【0165】
膀胱内処置の標的部位は膀胱組織であるため、リドカインの膀胱組織濃度は、血漿中濃度よりも、膀胱内埋め込みによる処置の効果のより直接的な指標となる。図24は、膀胱内埋め込みによる様々な処置に関する経時の膀胱組織中のリドカイン濃度を示す。埋め込みの1日後、埋め込みの2日後、および埋め込みの3日後を含む、埋め込み後の複数の時点における、3日デバイスに関するリドカイン組織濃度を示す。換言すれば、デバイスは必ずしも3日間膀胱内に留置されなかった。また、埋め込みの6日後の時点における6日デバイスに関するリドカイン組織濃度も示す。図示するように、3日デバイスは、3日間の間にリドカイン組織濃度が低下することを示したが、他方、6日デバイスは、3日デバイスが1日後に示したリドカイン組織濃度に匹敵するリドカイン組織濃度を6日後に示した。また、膀胱内注入療法の1日後にリドカイン組織濃度を測定したが、組織濃度は検出レベル未満であった。また、リドカイン組織濃度は、組織1グラム当たりのおよそのマイクログラムであることにも留意すべきである。
【0166】
図25は、膀胱内埋め込み物に関するリドカイン血漿中濃度とリドカイン組織濃度との相関を示す。また、点滴注入の1日後の点滴注入処置に関する相関も示すが、デバイス処置と比較して、これらの濃度は無視できるほど低い。図示するように、リドカイン血漿中濃度が高いほど、一般にリドカイン組織濃度が高い。しかし、リドカイン組織濃度は、リドカイン血漿中濃度より約1000倍高い。そのため、埋め込みデバイスでリドカインのデポー剤を供給すると、膀胱組織の方がより高濃度の薬物に暴露されると共に、高い最高血漿中濃度が回避され得る。
【0167】
それぞれ3日デバイスと6日デバイスで処置された2匹の動物に関して、リドカイン尿中濃度も測定した。結果を図26に示す。3日デバイスが埋め込まれたウサギでは埋め込みの3日後に、6日デバイスが埋め込まれたウサギでは埋め込みの6日後に、膀胱組織および尿サンプルを採集した。図示するように、リドカイン尿中濃度の桁はリドカイン組織濃度に匹敵したが、それは、下記の実施例9および図27に関して後述する試験管内試験と一致する。
【0168】
実施例9:試験管内におけるラットの膀胱中でのリドカインの吸収
試験管内でラットの膀胱で試験を実施し、膀胱の尿路上皮へのリドカイン吸収に対するpHと時間の影響を調査した。人口尿と放射線標識されたリドカインから、複数の異なるリドカイン溶液を作製した。各リドカイン溶液は、リドカイン濃度が10−5%(10−4mg/mL)又は1%(10mg/mL)のどちらかであり、pHが4.0〜8.5の範囲であった。
【0169】
ラットの膀胱を裏返して、尿路上皮又は膀胱の内層を露出させた。裏返しにした膀胱をリドカイン溶液に入れたが、各リドカイン溶液は異なる濃度とpHを有した。膀胱をリドカイン溶液中で、次の時間:10分間、1時間、3日間、又は5日間の1つ、インキュベートした。指定されたインキュベート時間が終了した後、各膀胱をリドカイン溶液から除去し、組織中のリドカイン濃度を測定した。
【0170】
図27は、1時間および1日間の試験管内でのラットの膀胱組織へのリドカイン溶液の吸収に対するpHの影響を示すグラフである。グラフは、1%のリドカイン濃度だけを有するリドカイン溶液に関するものである。図示するように、リドカイン溶液のpHは、1時間後の膀胱組織へのリドカインの吸収に僅かに影響を及ぼしたが、pHは、1日後のリドカイン吸収に著しい影響を及ぼさなかった。各膀胱に関して、平坦域組織濃度(又は、膀胱組織質量当たりの吸収されたリドカイン質量)は、約10000mg/kg又は1%であったが、それは、膀胱が浸漬されたリドカイン溶液のリドカイン濃度であった。この結果は、長期間にわたる膀胱へのリドカインの局所吸収は、リドカイン溶液のpHに依存しないことを示唆する。この結果は、また、生体内における長期の膀胱内の暴露で、リドカインが尿路上皮によって局所吸収されるためにはリドカイン溶液の緩衝は必要ではない可能性があることを示す。
【0171】
図28は、様々なpHの10−5%および1%リドカイン溶液を用いて試験管内でラット膀胱で実施された試験中に示された、経時のリドカイン組織濃度を示すグラフである。グラフは、経時のラット膀胱組織中へのリドカインの吸収に対するリドカイン濃度とpHの影響を示す。10−5%の濃度を有するリドカイン溶液に関する結果を、1%の濃度を有するものとは別にプロットする。図示するように、リドカイン組織濃度は、急に(約10分以内に)増加し、10−5%リドカイン溶液と1%リドカイン溶液の両方で平坦域に到達する。図示するように、10−5%リドカイン溶液に関する平坦域リドカイン組織濃度は、約0.1mg/kg又は10−5%であるが、他方、1%リドカイン溶液での平坦域リドカイン組織濃度は、約10000mg/kg又は1%である。この結果から、試験管内での尿路上皮へのリドカイン吸収に関して、リドカイン組織、対、リドカイン溶液の分配係数は、約1であることが分かる。リドカイン濃度が高いほど、尿路上皮中へのリドカイン吸収が高くなる。
【0172】
本明細書に記載される方法およびデバイスの変更および変形は、前述の詳細な説明から当業者に明らかである。このような変更および変形は、添付の特許請求の範囲内にあるものとする。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年12月11日に出願された米国仮特許出願第61/007,177号、および2008年7月30日に出願された米国仮特許出願第61/084,927号の利益を主張し、これらはそれぞれ、参照によりその内容全体が援用される。
【0002】
本発明は、一般には埋め込み型薬物供給デバイス、具体的には、膀胱又は他の身体の管腔若しくは腔(cavity)に埋め込み可能なデバイスから薬物を制御放出するためのデバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
薬物供給は、医療の重要な側面である。多くの薬物の効果は、投与される方法と直接関係している。様々な全身的薬物供給法としては、経口供給法、静脈内供給法、筋肉内供給法、および経皮供給法が挙げられる。これらの全身的方法では、望ましくない副作用が生じたり、生理学的プロセスによる薬物の代謝が起こって、目的の部位に到達する薬物の量が最終的に減少したりする可能性がある。従って、より標的指向性のある方法で薬物を供給するために、様々なデバイスおよび方法が開発されてきた。例えば、これらのデバイスおよび方法は、薬物を局所供給することができ、全身的薬物供給に伴う問題の多くに対処することができる。
【0004】
近年、着実に進展してきた分野の1つに、局所薬物供給のためのマイクロデバイスの開発がある。薬物放出の作動は、受動的に又は能動的に制御することができる。制御薬物供給デバイスの例は、米国特許第5,797,898号、米国特許第6,730,072号、米国特許第6,808,522号および米国特許第6,875,208号に開示されている。
【0005】
これらのマイクロデバイスは、大まかに2つのカテゴリーに、即ち、吸収性ポリマーをベースにするデバイスと非吸収性デバイスに分類できる。ポリマーデバイスは、生分解性である可能性、従って埋め込み後に除去する必要がない可能性がある。これらのデバイスは、典型的には、患者に投与した後、所定の期間にわたり、ポリマーから薬物を拡散させることによって、および/又はポリマーが分解することによって、生体内で薬物を制御放出するように設計されている。
【0006】
間質性膀胱炎(IC)および慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS)は、有痛性の慢性疾患であり、米国では、女性100,000人当たり約67人(Curhan et al., J.Urol.,161(2):549-52(1999))および男性100,000人当たり7人(Collins et al., J.Urol.159(4):1224‐28(1998))が罹患する。これらの症状は、共に、慢性骨盤痛、頻尿および尿意切迫、並びに様々な程度の性機能不全を特徴とする。ペントサンポリ硫酸ナトリウム(PPS)が、現在、この症状の治療に使用されている。しかし、従来の薬物供給方法およびデバイスには、重大な欠点がある。例えば、経口供給(ELMIRON(商標)、Ortho‐McNeil)は、初回通過効果が高いため、バイオアベイラビリティが3%と低く(Parsons et al., J.Urol.153(1):139-42(1990))、何らかの軽度の副作用(頭痛など)を引き起こす。膀胱鏡検査(カテーテルを尿道に通す)により膀胱内に供給されるPPSは、改善された治療効果を提供すると共に、薬物の副作用を低減することができる(Bade et al., Br.J.Urol.79(2):168-71(1997))。しかし、この点滴注入は痛みを伴い、毎週2回、3ヶ月間処置を繰り返す必要がある。この処置は繰り返し行う性質のものであるため、尿路感染や菌血症の高いリスクを生む。従って、長期間にわたる局所供給に必要なPPS又は他の薬物を有効量供給するのに必要な膀胱鏡処置の回数を実質的に減少させる膀胱内薬物供給デバイスに対する切実な必要性がある。
【0007】
IC/PBSの治療の1つは、点滴注入でリドカイン溶液を膀胱に供給することを必要とする(R.Henry, et al.,"Absorption of alkalized intravesical lidocaine in normal and inflamed bladders:a simple method for improving bladder anesthesia," J.Urol,165:1900‐03,2001;C.L.Parsons, "Successful downregulation of bladder sensory nerves with combination of heparin and alkalinized lidocaine in patients with interstitial cystitis," Urology,65:45‐48,2005)。膀胱内層(bladder lining)は、通常のリドカインがそれを通過するのが困難であるような強い粘液質のバリアを有する。しかし、研究者らは、麻酔薬を正確な量の炭酸水素ナトリウムでアルカリ化すると、それは麻酔薬が粘膜を通過して、その下にある刺激された神経および組織に到達し、それらを鎮める能力を改善することを見出した。従来の処置では、点滴注入により、ボーラス用量のリドカイン(又はマーカイン)、ヘパリン、および炭酸水素ナトリウムが膀胱に供給される。溶液が膀胱内に存在する比較的短い時間の間に、膀胱組織はリドカインを吸収し、患者に痛みや切迫感の即時の軽減を提供する。吸収されたリドカインはまた、膀胱組織からリドカインが分解する時、連続した軽減を提供する。しかし、リドカインの半減期は比較的短く、従って、連続した軽減および持続時間が限られた軽減時間を提供するのに、比較的高い初期リドカイン濃度を必要とする場合がある。持続的な軽減を達成するために、その後で点滴注入を、例えば、毎週3回2週間行うことが必要な場合がある。各点滴注入は、尿路カテーテル法に関連する不都合、不快感、および感染のリスクを伴うため、このような点滴注入の頻度は、望ましくないことがある。軽減の持続時間は、膀胱の中に吸収されるリドカインの初期濃度を高くすることによって、例えば、溶液中の濃度を高くすることによって長くなり得る。しかし、リドカインの初期濃度が高過ぎると、望ましくない全身作用が起こることがある。
【0008】
特に、膀胱に薬物を局所供給することが好ましい又は必要である場合、例えば、薬物の全身供給に伴う副作用が許容できないとき、および/又は経口投与時のバイオアベイラビリティが低過ぎるときなど、他の療法は、改善された膀胱内薬物供給デバイスが有利となる可能性がある。例えば、過活動膀胱症候群の治療にはオキシブチニンが使用される。現在、オキシブチニンは、経口供給又は経皮供給される。しかし、残念ながら、薬物を摂取する患者の約61%に副作用が起こり、患者の約7〜11%は、副作用が深刻であるため、実際に治療を停止する。
【0009】
Situs Corporationは、オキシブチニン(過活動膀胱の治療用)およびマイトマイシンC(膀胱癌の治療用)などの薬物の薬液を供給するための、膀胱内ドラッグデリバリーシステム(UROS注入デバイス)を開発した。UROS注入デバイス並びにデバイスの製造法および埋め込み法は、米国特許第6,171,298号、米国特許第6,183,461号、および6,139,535号に記載されている。UROS注入デバイスは、エラストマーの外管を有し、両方の内端を接続する非伸長性のワイヤを収容している。デバイスは、膀胱鏡で膀胱に挿入される時には直線状の形状を有し、埋め込まれて、デバイスに薬液が充填された後に三日月形の形状に変化し、薬液を全て放出した後に直線状の形状に戻る。長時間の薬液放出は、圧力感応弁および/又は管内の流れ抵抗要素によって制御される。UROS注入デバイスのサイズは、各内部部品のサイズに依存し、内容量のかなりの部分が、薬物溶液ではなく機械部品の収容に使用される。長さ約10cm、外径約0.6cmと、UROS注入デバイスはサイズが大きいため、特に、デバイスを泌尿器に配備し、回収する時、患者に著しい不快感と痛みを引き起こす可能性がある。UROS注入デバイスは、また、埋め込み後に、デバイスに薬液を装填するために、追加の外科処置を必要とする。従って、患者の不要な不快感や痛みを回避するために、サイズが比較的小さい膀胱内薬物供給デバイスが必要とされている。更に、治療期間にわたる薬物の埋め込みや供給に必要な外科処置の回数を最小限にし得る膀胱内薬物供給デバイスを提供することが望ましい。
【0010】
また、ある期間にわたり持続放出を提供すること、および、これを膀胱内で達成することも必要とされており、数日又は数週間の期間にわたって薬物の有効装填量(payload)を供給する必要がある場合であっても、デバイスは、望ましくは、膀胱内に留置されるべきであり、薬物有効装填量を少なくとも実質的に放出し得る前に排泄されるべきではない。一般に、薬物を膀胱に制御供給するための、より優れたデバイスが必要とされている。望ましくは、埋め込み型デバイスは、膀胱への供給(および、必要に応じて、膀胱からの除去)が容易であり、患者の痛み又は不快感が最小限でなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、膀胱又は他の身体の小嚢内で薬物を制御放出するための、埋め込み型医療用デバイスを提供する。一実施形態では、デバイスは、薬物を含む少なくとも1つの薬物リザーバ構成材;並びに、第1の端部、反対側の第2の端部、およびそれらの間の中間部を有する弾性ワイヤを含む小嚢留置用フレームを備え、ここで、薬物リザーバ構成材は、小嚢留置用フレームの中間部に取り付けられている。留置用フレームは、デバイスが膀胱から偶発的に排泄されることを防止するのに重要であることが分かった。それは、好ましくは、排尿中にデバイスが膀胱内に効果的に留まると共に、膀胱への刺激を最小限にするように選択されたばね定数を有する。
【0012】
一実施形態では、弾性ワイヤは、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ(グリセロール−セバケート)又はこれらの組み合わせなどの低弾性率エラストマーを含んでも、又はそれからなってもよい。別の実施形態では、弾性ワイヤは超弾性合金又は他の形状記憶材料を含んでも、又はそれからなってもよい。例えば、超弾性合金は、生体適合性ニッケル−チタン合金(例えば、Nitinol)又はチタン−モリブデン合金(例えば、Flexium)を含んでもよい。一実施形態では、弾性ワイヤは、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、Silitek、Tecoflex、C-flex、およびPercuflexなどの生体適合性ポリマーコーティングを有してもよい。
【0013】
一実施形態では、圧縮されていない状態の弾性ワイヤは、巻かれた形態、例えば、2つ以上のループ、螺旋、又は回転(turn)の形態であってもよい。弾性ワイヤの第1の端部と第2の端部は、前記1つ以上のループ内で結合していてもよい。弾性ワイヤの第1の端部と第2の端部は、好ましくは柔軟で鈍い。圧縮されていない状態の弾性ワイヤは、患者の尿道に挿通されるサイズのカテーテルのルーメンをデバイスが通過できるように、ワイヤをほぼ直線状の形状に真直ぐにすることができるように、2つ以上のループの形態に巻かれていてもよい。
【0014】
一実施形態では、薬物リザーバ構成材は、第1の端部分および反対側の第2の端部分を有し、中に薬物製剤を含む少なくとも1つの細長いエラストマーチューブを備え、チューブは、薬物を生体内で制御された速度で供給するように作動可能である。一実施形態では、チューブは、シリコーンなどの透水性材料で形成される。一実施形態では、チューブは吸収性材料で形成されてもよい。好ましい実施形態では、チューブは、生体適合性で低弾性率のエラストマーを含む、又はそれからなる材料で形成される。
【0015】
薬物製剤は、チューブ内にコアとして配置されてもよい。薬物は、生体内で(例えば、膀胱内で)、浸透によりおよび/又は拡散により制御された速度でデバイスから供給されてもよい、即ち、チューブから放出されてもよい。一実施形態では、チューブは孔を有していなくてもよく、薬物は、その分子サイズおよび/又は構造に応じて、チューブを通って拡散してもよい。一実施形態では、チューブは1つ以上の孔を備えてもよく、薬物は浸透により制御された速度で放出されてもよい。一実施形態では、薬物は、少なくとも一部拡散および/又はマトリックス材料の吸収又は溶解によって制御された速度で供給され、例えば、ここで、チューブは、ポリマー/薬物複合材料などの複合材料を含む。薬物製剤は、好ましくは固体又は半固体の形態である。これは、必要な用量を比較的小さい体積で装填することを容易にし、デバイスの埋め込み中のおよび埋め込み後の患者への過度の刺激および不快感を最小限にし得る。
【0016】
例えば、薬物供給が完了した後、デバイスを膀胱から膀胱鏡で取り除くことを容易にするため、デバイスは少なくとも1つの磁気要素を備えてもよい。ある一定の実施形態では、磁気要素は、小嚢留置用フレームの第1の端部、第2の端部、又は、第1の端部と第2の端部の両方に配置されてもよい。磁気要素を覆うように柔軟なポリマーコーティングが提供されてもよい。
【0017】
代替の実施形態では、デバイスが完全に、又は少なくともデバイスの残存物を排泄するのに十分に分解するという点でデバイスの回収が不要であるように、デバイスは吸収性材料で形成されてもよい。
【0018】
少なくとも好ましい実施形態では、薬物を放出するための孔は、放出が浸透により制御されるサイズ範囲内にある。一実施形態では、孔は円形であり、直径約25μm〜約500μmである。孔が大き過ぎると薬物放出が起こるのが早過ぎ、孔のサイズが小さ過ぎると液圧により薬物リザーバチューブが変形し、ことによると孔が変化する可能性があることが分かった。
【0019】
デバイスは、更に、低密度材料の使用および/又は空気若しくは他のガスをデバイスの何らかの部分に含むことによる浮遊機構を備えてもよい。浮遊機構は、膀胱三角を刺激する可能性を最小限にし得る。デバイスは、また、例えば、デバイスをX線監視できるように放射線不透過性材料が包埋されていてもよい。
【0020】
薬物リザーバ構成材のチューブルーメンのサイズは、可能な薬物有効装填容量を決定する。一実施形態では、薬物リザーバ構成材の中空のチューブは、内径約0.3mm〜約2mmであり、外径約0.6mm〜約3mmであってもよい。端部密封材間のチューブの長さは、いずれか1つの留置用フレームに取り付けられるチューブセグメントの数に応じて変わり得る。
【0021】
特定の実施形態では、薬物を制御供給するための埋め込み型医療用デバイスは、第1の端部および反対側の第2の端部を有する細長い透水性エラストマーチューブ、チューブ内の固体又は半固体の薬物製剤コアを備える少なくとも1つの薬物リザーバ構成材(ここで、チューブは、制御された速度で薬物を供給するための1つ以上の孔を有する);並びに、第1の端部、反対側の第2の端部、およびそれらの間の中間部を有する弾性ワイヤを含む小嚢留置用フレームを備えてもよく、ここで、弾性ワイヤは、超弾性合金若しくは他の形状記憶材料、又は低弾性率エラストマーを含み、薬物リザーバ構成材のエラストマーチューブは、小嚢留置用フレームの中間部の周囲に取り付けられている。好ましい実施形態において、エラストマーチューブはシリコーンから形成される。
【0022】
別の態様では、患者の身体の管腔内の/管腔に隣接した局所組織部位に、例えば、患者の膀胱の中に薬物を投与するための方法を提供する。一例では、本方法は、遠位端、反対側の近位端、およびそれらの間に延びる開放ルーメンを有する尿道カテーテル又は膀胱鏡などのルーメンデバイスを提供する工程;治療を必要とする患者の膀胱に尿道カテーテルの遠位端を挿入し、尿道カテーテルの近位端を患者の体外に残留させる工程;埋め込み型薬物供給デバイスを変形させ(例えば、真直ぐにし)、それを尿道カテーテルのルーメンの近位端に入れる工程;変形したデバイスをルーメンに通して、ルーメンから出し、その時、デバイスが、膀胱内に留置されるように、その変形していない形状に戻る工程;および、患者から尿道カテーテルを抜去する工程を含んでもよい。その後、薬物がデバイスの薬物リザーバ構成材から制御された方法で放出される。この方法のある一定の実施形態では、患者は、間質性膀胱炎、過活動膀胱症候群、又は膀胱癌の治療の必要がある患者であってもよい。
【0023】
更に別の態様では、患者の膀胱の治療方法を提供する。一実施形態では、本方法は、完全に患者の膀胱内に薬物放出デバイスを埋め込む工程;および、膀胱の尿路上皮中に持続的な治療有効麻酔薬濃度を提供すると共に、麻酔薬の高い最高血漿中濃度を回避するように薬物供給デバイスから局所麻酔薬を制御可能に放出する工程を含む。麻酔薬はリドカインであってもよい。一実施形態では、尿路上皮中の麻酔薬の濃度は、血漿中濃度より少なくとも1000倍高い。一実施形態では、尿路上皮中の治療有効麻酔薬濃度は、1〜30日間持続する。
【0024】
更に別の態様では、患者の膀胱を治療する方法を提供し、この方法は、完全に患者の膀胱内に薬物放出デバイスを埋め込む工程;および、膀胱の尿路上皮中に持続的な治療有効薬物濃度を提供するとともに、麻酔薬の高い最高血漿中濃度を回避するように薬物供給デバイスから薬物を制御可能に放出する工程を含み、ここで、薬物の半減期はリドカインの半減期の25%に等しいか、又は25%以内である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】比較的拡張した形状の薬物供給デバイスの一実施形態の平面図である。
【図2】カテーテル内にある比較的低プロファイルの形状の薬物供給デバイスを示す、図1に示されている薬物供給デバイスの実施形態の平面図である。
【図3A】薬物供給デバイスの薬物リザーバ部分の一実施形態を示す側面図である。
【図3B】薬物供給デバイスの薬物リザーバ部分の一実施形態を示す断面図である。
【図3C】薬物供給デバイスの薬物リザーバ部分の一実施形態を示す断面図である。
【図4】仕切り構造で分離された複数のリザーバを備える薬物リザーバ部分の一実施形態の断面図である。
【図5】一端にあるオリフィス構造、およびオリフィス構造を貫通して形成された孔を有する薬物リザーバ部分の一実施形態の断面図である。
【図6】薬物供給デバイスの小嚢留置用フレーム部分の例示的形状を示す図であり、形状は1つ以上のループ、カール、又は部分円(sub-circle)を含む。
【図7】二次元又は三次元の形態に配置された1つ以上の円又は楕円を含むフレームの例示的形状を示す図である。
【図8】1つ以上の薬物リザーバが留置用フレームの中間部に取り付けられているプレッツェル形の留置用フレームの例示的実施形態を示す図である。
【図9A】複数の薬物リザーバ部分が留置用フレームの中間部に取り付けられている留置用フレームの別の実施形態を示す図であり、比較的拡張した形状で示されているデバイスを示す。
【図9B】複数の薬物リザーバ部分が留置用フレームの中間部に取り付けられている留置用フレームの別の実施形態を示す図であり、カテーテル内の比較的低プロファイルの形状のデバイスを示す。
【図10】薬物リザーバ部分が留置用フレームと実質的に整列されている薬物供給デバイスの例示的実施形態の断面図である。
【図11】複数の薬物リザーバ部分が留置用フレームと実質的に整列されている薬物供給デバイスの例示的実施形態の断面図である。
【図12】留置用フレーム構成材が薬物リザーバ構成材の一部を通って延び、2つの構成材が一緒に取り付けられている薬物供給デバイスの一実施形態を示す図である。
【図13】放出孔の近傍に配置された速度制御コーティング又はシースを示す、薬物供給デバイスの一実施形態の側面図であり、デバイスの内部構成材は斜影線で示されている。
【図14】埋め込み型薬物供給デバイスの製造方法の一実施形態を示すブロック図である。
【図15】膀胱内薬物供給デバイスの埋め込み方法を示す図である。
【図16】リドカインを膀胱に供給する方法を示すブロック図である。
【図17】薬物供給デバイスの3つの異なる実施形態の断面図である。
【図18】図17に示す薬物供給デバイスの3つの実施形態の試験管内での薬物放出特性を示すグラフである。
【図19】フレームに圧縮力を加えた圧縮試験中の3つの異なる時点におけるプレッツェル形留置用フレームの一実施形態を示す図である。
【図20】図19に示すデバイスで実施した圧縮試験中に収集された、力と変位のデータを示すグラフである。
【図21】様々な埋め込み型薬物供給デバイスが試験管内で示した経時のリドカイン放出を示すグラフである。
【図22】様々な点滴注入および生体内にウサギの膀胱内に埋め込まれたデバイスに関して示された経時のリドカイン血漿中濃度を示すグラフである。
【図23】様々な点滴注入および生体内にウサギの膀胱内に埋め込まれたデバイスに関して示された経時のリドカイン血漿中濃度を示すグラフであり、y軸が変更されている。
【図24】生体内にウサギの膀胱内に埋め込まれた様々なデバイスに関して示された経時のリドカイン組織濃度を示すグラフである。
【図25】様々な点滴注入および生体内にウサギの膀胱内に埋め込まれたデバイスに関して示されたリドカイン組織濃度とリドカイン血漿中濃度との相関を示すグラフである。
【図26】3日間および6日間、生体内にウサギの膀胱内に埋め込まれたデバイスによって示された組織中および尿中のリドカイン濃度を示すグラフである。
【図27】1時間および1日間、試験管内でラットの膀胱で実施した試験中に示された、リドカインの吸収に対するpHの影響を示すグラフである。
【図28】様々なpHを有する10−5%および1%のリドカイン溶液を用いて試験管内でラットの膀胱で実施した試験中に示された、経時のリドカイン組織濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
膀胱又は他の身体の小嚢若しくは管腔内に埋め込まれ、留置される、改善された薬物供給デバイスを提供する。ボーラス(1回の)薬物供給、律動的薬物供給、又は一定の薬物供給を必要とする療法のために、所定の方法で長期間にわたって1種類以上の薬物を放出するようにデバイスを作製することができる。
【0027】
重要なことには、埋め込み型デバイスは、体内に、例えば、膀胱内に留置されるように設計されている。即ち、デバイスは、例えば、排尿に伴う力に応答した排泄に抵抗するように設計されている。例えば、デバイスは、留置用フレームを備えてもよい。留置用フレームは、身体内に配備されるように、比較的低プロファイルになるように形成されてもよく、埋め込まれた後、留置を容易にするように、比較的拡張したプロファイルを取ってもよい。薬物が装填されたデバイスを、カテーテルのルーメンを通して膀胱の中に配備することを可能にするために、例えば、コイル状の形状から直線状の形状に容易に変形できるように、デバイスは可撓性が高くてもよい。
【0028】
デバイスは、膀胱鏡などにより非外科的に埋め込むことができ、デバイスは、膀胱鏡を抜去したあと長期にわたり薬物供給を継続することができる。細菌が膀胱の中に入る通路の役割をするおそれがある留置カテーテルとは対照的に、埋め込みデバイスは、有利には、完全に膀胱内に配置することができる。従って、本デバイスでは感染の機会が大きく減少する。
【0029】
特に膀胱に関して、本デバイスは、また、点滴注入による薬物供給、全身的薬物供給、および膀胱鏡で膀胱内に埋め込まれるデバイスによる薬物供給などの従来の治療選択肢の欠点の多くに有利に対処する。本デバイスは、一度の埋め込みで済み、手術又は頻繁な介入(従来のデバイスの薬物リザーバを補充することなど)を必要とすることなく、長期間にわたって薬物を放出することができる。治療中、患者に実施することが必要な処置の数を制限することによって、本局所ドラッグデリバリーシステムは、治療中の患者の生活の質を改善することができる。薬物供給デバイスは、また、薬物の全身的投与に伴って起こり得る副作用を回避すると共に、膀胱に局所供給される薬物の量を増加させることができる。
【0030】
一実施形態では、薬物供給デバイスは、比較的長期間にわたって、リドカイン(又は別のコカイン類似体)を膀胱に局所供給することを可能にする。従って、デバイスは、IC/PBSの治療用のリドカイン溶液の頻繁な膀胱内注入療法に代わる有利な代替を提供し得る。デバイスは、従来のカテーテル法、即ち簡単な非外科的外来患者処置で配備および回収を行うことができる受動的で非吸収性のデバイスであってもよい。比較的短時間にわたって比較的高濃度のリドカインを膀胱に装填する膀胱内注入療法と異なり、本デバイスは、比較的長時間にわたって比較的低濃度のリドカインを連続的に放出することを可能にする。従って、患者は、リドカインの高い初期濃度を受けることなく、および、繰り返し行われる膀胱内注入療法の不快感や不都合を経験することなく、IC/PBSの症状が持続的に軽減し得る。更に、有効な膀胱組織濃度を達成するために、リドカインをアルカリ性溶液にして供給する必要がない。
【0031】
I.埋め込み型薬物供給デバイス
実施形態では、薬物供給デバイスは、2つの主要構成材又は部分、即ち、薬物リザーバ部分と小嚢留置用フレーム部分を備えてもよい。薬物リザーバ部分は、本明細書では、「デバイス本体」と称されることがあり、体内に供給される薬物を保持し得る。留置用フレーム部分は、薬物リザーバ部分と結合していてもよく、デバイスを体内に留置することを容易にし得る。図1は、デバイス10の例示的実施形態を示し、デバイスは、薬物リザーバ部分12と留置用フレーム部分14の両方を有する。デバイスが膀胱内に埋め込まれるように設計されている実施形態では、留置用フレーム部分は、デバイス、従って薬物リザーバ部分が膀胱から偶発的に排泄されることを防止し得る。
【0032】
より具体的には、薬物供給デバイスは、比較的拡張した形状と比較的低プロファイルの形状との間で弾性変形可能であってもよい。比較的低プロファイルの形状は、薬物供給デバイスを体内に挿入するのに適していてもよい。例えば、比較的低プロファイルの形状は、薬物供給デバイスをカテーテルに挿通して体腔内に、例えば、尿道カテーテルに挿通して膀胱の中に入れるのに適していてもよい。図2に示す実施例は、チャネル20(例えば、膀胱鏡又は他のカテーテルの作業チャンネルなど)の中にある図1のデバイス10を示す。このような実施形態では、デバイスがカテーテルを通過し得るように、比較的低プロファイルの形状は、図2に示す形状などの比較的管状の形状、細長い形状又は直線状の形状であってもよい。体内に入った後、デバイスは、体腔内に薬物供給デバイスを留置することを容易にし得る、図1に示す形状などの比較的拡張した形状を取り得る。
【0033】
実施形態では、薬物供給デバイスは、比較的拡張した形状を自然に取り得る。デバイスは、体内に挿入されるように、比較的低プロファイルの形状に弾性変形することができ、デバイスは、埋め込まれた後、体内に留置されるように、初期の比較的拡張した形状に自発的に又は自然に戻り得る。
【0034】
留置用フレームは、デバイスが比較的低プロファイルの形状で体内に導入されることを可能にし、体内に入った後、デバイスが比較的拡張した形状に戻ることを可能にする、ある一定の弾性限界及び弾性率を有してもよい。デバイスは、また、予想される力がかかったときデバイスが身体から偶発的に排除されることを制限又は防止するように、埋め込まれた後、デバイスが比較的低プロファイルの形状を取ることを妨げるのに十分な弾性率を有してもよい。例えば、留置用フレームの特性は、排尿又は排尿筋の収縮に伴う流体力学的力などの膀胱内に予想される力が加わるにもかかわらず、デバイスを比較的拡張した形状に保持することを容易にするように選択されてもよい。このようにして、膀胱からの排除が妨げられる又は防止される。
【0035】
薬物供給デバイスが膀胱内に埋め込まれるように設計されている実施形態では、薬物供給デバイスは、膀胱鏡で尿道を通して膀胱に挿入され、膀胱から回収されるように設計されてもよい。従って、デバイスは、膀胱鏡の狭い管状通路を通り抜けるサイズおよび形状に作られてもよい。典型的には、成人用の膀胱鏡は、外径約5mmであり、直径約2.4mmの作業チャンネルを有する。従って、デバイスはサイズが比較的小さくてもよい。例えば、デバイスが比較的低プロファイルの形状に弾性変形するとき、デバイスの全外径は、約2.4mm未満、例えば、約2.0mm〜約2.3mmであってもよい。
【0036】
デバイスのサイズが比較的小さいと、挿入が可能になることの他に、患者の不快感や膀胱の外傷も低減し得る。例えば、デバイスのサイズが比較的小さいと、排尿の切迫感を生じさせる原因である膀胱三角への刺激が低減し得る。また、デバイスが膀胱内で浮遊し得るように、デバイスの密度は、尿又は水の密度より小さくてもよい。このような浮遊は、必要ではないが、膀胱頚部の近傍の敏感な膀胱三角部位にデバイスが接触することを防止し得る。例えば、デバイスは、比較的低密度の構成材料から形成されていてもよく、又は、空気若しくは他の気体がデバイス内に閉じ込められていてもよい。デバイスの外面は、更に、鋭い縁又は先端がなく、柔軟で滑らかであってもよい。
【0037】
膀胱内薬物供給デバイスの正確な形態および形状は、特定の埋め込み部位、埋め込み経路、薬物、投与計画、およびデバイスの治療への適用を含む様々な要因に応じて選択されてもよい。好ましくは、デバイスの設計は、患者の痛みや不快感を最小限にすると共に、患者に治療有効用量の薬物を局所供給する。
【0038】
膀胱内薬物供給デバイスは、薬物製剤の放出後にデバイスを体外に取り出す(explantation)必要がないように、完全に又は部分的に吸収性となるように製造することができる。本明細書で使用する場合、「吸収性」の用語は、デバイス又はその一部が、溶解、酵素による加水分解、腐食、又はこれらの組み合わせにより生体内で分解することを意味する。この分解は、意図されたデバイスからの薬物放出速度論に干渉しない時に起こる。例えば、薬物製剤が実質的に又は完全に放出されるまで、デバイスの実質的な吸収が起こってはならない。あるいは、薬物製剤の放出後にデバイスを除去し得るように、膀胱内薬物供給デバイスは少なくとも部分的に非吸収性であってもよい。このような実施形態では、デバイスは、完全に吸収性ではないことがある;例えば、デバイスは、部分的に吸収された時、分解して、膀胱から排泄されるほど十分に小さい非吸収性の片になるように、デバイスは部分的に吸収性であってもよい。有用な生体適合性吸収性構成材料および非吸収性構成材料が当該技術分野で既知である。実施形態では、デバイスは、医療用シリコーン、天然ラテックス、PTFE、ePTFE、ステンレス鋼、ニチノール、エルジロイ(elgiloy)(非強磁性金属合金)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、又はこれらの組み合わせなどの泌尿器科用途に適した材料から形成されてもよい。
【0039】
薬物リザーバ部分
デバイスの薬物リザーバ部分は、細長いチューブを備えてもよい。チューブは、第1の端部および反対側の第2の端部を有してもよい。チューブの内部はリザーバを画定してもよく、薬物製剤コアはリザーバ内に収容されてもよい。薬物製剤は、棒状の薬物などの実質的に固体の形態であってもよいが、他の形態も可能である。チューブは、とりわけ、浸透、拡散、又はこれらの組み合わせなどにより薬物を供給するための1つ以上の孔を有してもよい。実施形態では、薬物リザーバ部分からの薬物の放出速度を制御してもよい。例えば、リザーバからの薬物製剤の放出の開始を制御するために、分解性膜が孔の1つ以上を覆うように又はその中に配置されてもよい。別の例として、例えば、チューブの浸透表面積を減少させることによって、又はチューブの壁を通した拡散を減少させることによって放出速度を減少させるために、チューブの一部を覆うようにシースを配置してもよい。また、薬物リザーバ部分は、既知の速度で放出するように設計された薬物ポリマー複合材料から形成されてもよい。
【0040】
このような薬物リザーバ部分の例を図3A〜3Cに示す。図示されているように、薬物リザーバ部分は、一般に、エラストマーチューブ30から形成された本体を備える。チューブ30は、棒状の薬物34を収容するリザーバ32を画定する。チューブ30の端部は、下記に詳述する密封構造35で密封されていてもよい。分解性時間調整膜38によって密閉されたチューブ30に孔36の配列が配置されていてもよい。
【0041】
好ましい実施形態では、薬物リザーバ部分は、浸透圧ポンプとして作動する。このような実施形態では、チューブは、シリコーンなどの透水性材料から形成されていてもよい。埋め込み後に、水又は尿が、チューブの壁を透過し、リザーバに入り、薬物製剤に吸収される。可溶化された薬物は、リザーバ内の浸透圧の働きにより、1つ以上の孔を通してリザーバから制御された速度で供給される。供給速度は、とりわけ、チューブの表面積、チューブの肉厚、チューブの形成に使用される材料の液体透過性、並びに、孔の形状、サイズ、数および配置の影響を受ける。供給速度は、例えば、Theeuwes,J.,Pharm.,Sci.,64(12): 1987-91(1975)に記載されている周知の原理によって、特定のドラッグデリバリーシステムを規定する物理化学的パラメータから予測することができる。例示的浸透圧ポンプ設計およびこのような設計を選択するための式を、実施例1〜3に関して後述する。
【0042】
代替の実施形態では、デバイスは、本質的に、例えば、孔の1つ以上、チューブの壁、又はこれらの組み合わせを通ってチューブから薬物が拡散することにより作動してもよい。更に他の実施形態では、デバイスは、浸透と拡散の組み合わせにより作動してもよい。
【0043】
実施形態では、薬物リザーバ部分は、デバイスが挿入されるように弾性変形することを可能にするエラストマー材料から形成されてもよい。例えば、チューブは、下記に更に詳述するように、膀胱内に埋め込まれるように小嚢留置用フレームと一緒に弾性変形してもよい。
【0044】
実施形態では、薬物リザーバ部分は、浸透によりリザーバから薬物を放出することを可能にする、当該技術分野で既知の生体適合性、透水性材料で製造されてもよい。あるいは、薬物リザーバ部分は、実質的に不透水性であってもよい。
【0045】
実施形態では、薬物リザーバ部分は、エラストマーであり且つ透水性である材料から形成されてもよい。例示的な材料は、エラストマーであり且つ透水性であるシリコーンであるが、他の生体適合性材料を使用してもよい。
【0046】
チューブの長さ、直径、および厚さは、とりわけ、収容される薬物製剤の体積、チューブから薬物を供給する所望の速度、体内にデバイスを埋め込む目的の部位、デバイスの所望の機械的完全性(mechanical integrity)、所望の放出速度又は透水性および尿透過性、並びに、体内に挿入する所望の方法又は経路に基いて選択されてもよい。実施形態では、薬物リザーバ部分は、長さ約1cm〜約10cmの範囲、内径約0.3mm〜約2mmの範囲、および外径約0.6mm〜約3mmの範囲である。
【0047】
一実施形態では、デバイス本体は非吸収性である。それは、当該技術分野で既知の、医療用シリコーンチューブで形成されてもよい。好適な非吸収性材料の他の例としては、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、セルロース、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンおよび他のフッ素化ポリマー、ポリシロキサン、これらの共重合体、およびこれらの組み合わせから選択される合成ポリマーが挙げられる。
【0048】
別の実施形態では、デバイス本体は吸収性である。吸収性デバイスの一実施形態では、本体のチューブは、生分解性又は生体内受食性(bioerodible)ポリマーで形成されている。好適な吸収性材料の例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、疑似ポリアミノ酸(pseudo poly(amino acids))、ポリ(グリセロール−セバケート)、これらの共重合体、およびこれらの混合物から選択される合成ポリマーが挙げられる。好ましい実施形態では、吸収性合成ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、およびこれらの混合物から選択される。他の硬化性生体吸収性エラストマーとしては、ポリカプロラクトン(PC)誘導体、アミノアルコールベースのポリエステルアミド(PEA)およびポリ(オクタンジオール−クエン酸)(POC)が挙げられる。PCベースのポリマーは、エラストマー性を得るために、リシンジイソシアネート又は2,2−ビス( −カプロラクトン−4−イル)プロパンなどの追加の架橋剤を必要とする場合がある。
【0049】
薬物リザーバ部分は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2007/0202151号(Leeら)に記載のように製造されてもよい。
【0050】
前述のように、チューブは、中に薬物リザーバが画定されるように、中空であってもよい。例えば、チューブは、実質的に直線状、例えば、実質的に円筒状の形状であってもよい。従って、チューブは、円形の断面積を有してもよいが、チューブの他の断面形状、例えば、とりわけ正方形、三角形、六角形および他の多角形なども考えられる。チューブの端部は、薬物の漏出を制限するように密封されてもよい。例えば、チューブの各端部は、密封構造、医療用シリコーン接着剤、当該技術分野で既知の他の密封手段、又はこれらの組み合わせを使用して密閉されてもよい。チューブが密封構造で密封されている実施形態では、密封構造は、ボール、ディスク、又はチューブの端部を塞ぎ、密閉するのに適した他の任意の形状であってもよい。ボール形の密封構造35の一実施形態を図3Bに示す。このような密封構造は、ステンレス鋼などの生体適合性金属材料、又は、生分解性若しくは生体内受食性ポリマーなどの生体適合性ポリマー材料から形成されてもよいが、他の材料を使用してもよい。チューブが伸張して密封構造の周囲にぴったりと嵌合するように、密封構造の直径は、チューブの内径より比較的大きくてもよい。
【0051】
一実施形態では、チューブは複数のリザーバを有する。複数の孔は、共通の薬物リザーバを共有してもよく、又は別々のリザーバを有してもよい。このようなマルチリザーバデバイスは、少なくとも2種類の特定のデバイス実施形態で;即ち、(1)2つ以上の別々の薬物製剤が単一のデバイスから供給される場合、又は(2)単一の薬物が2つの異なる速度で、又は埋め込み後の異なる時間に供給される場合、例えば、薬物の第1の用量が第1の時間に放出されるように事前プログラムされており、第2の用量が後の第2の時間に放出されるように事前プログラムされている場合に有用である。この異なる事前プログラムは、例えば、2つ以上のリザーバを有する異なるリザーバに異なる時間調整膜を使用することによって達成することができ、リザーバはチューブの内面と少なくとも1つの仕切りによって画定される。チューブの仕切り構造は、セラミックビーズ又は他のマイクロスフェアなどの回転楕円体の形態であってもよい。仕切り構造は、また、ディスク又は円筒状の形状であってもよい。他の形態も可能である。仕切りは、非吸収性であっても、又は吸収性であってもよい。一実施形態では、仕切り構造は、生分解性又は生体内受食性ポリマーなどの生体適合性ポリマー材料で製造されてもよい。
【0052】
図4にこのような薬物リザーバ部分の一実施形態を示す。薬物リザーバ部分は、直線状のチューブ40を備える本体を有する。チューブ40の中空の空間は、3つのリザーバ42a、42b、42cに仕切られており、そのそれぞれが対応する単一の孔44a、44b、44cを有する。リザーバ42は、チューブ40の内面、即ち、チューブの側壁によって、および、チューブの内部空間内に離間配置された球状の仕切り構造46a、46b、46cおよび46dによって画定される。分かるように、仕切り構造は、伸張していないエラストマーチューブの内径より大きい直径を有することによってチューブ40内の所定の位置に固定されており、それによってチューブが伸張して仕切り構造の周囲にぴったりと嵌合し、各リザーバを密封する。
【0053】
実施形態では、仕切られたリザーバは、生分解速度のより速い膜を有する孔が装填された薬物物質の放出を独占し、場合によっては、後で分解する膜を有する孔から薬物物質がほとんど又は全く放出されなくなることを、防止する。各放出孔に別々のリザーバを設けると、複数の生分解性時間調整膜の効果が増加し得る。
【0054】
好ましい実施形態では、リザーバ(又はリザーバを合わせたもの)の全容量は、単一の療法の間に局所供給に必要な薬物を全て収容するのに十分である。即ち、複数の膀胱鏡処置を必要としないように、又は、所与の疾患若しくは症状に対して処方された療法を完了する回数/頻度が減少するように、薬物リザーバ部分は、望ましくは、予想される薬物の用量を全て収容する。
【0055】
孔
一実施形態では、デバイス本体は、チューブの側壁又は端部を通る1つ以上の孔又はオリフィスを備える。1つ以上の孔は、薬物供給デバイスから薬物製剤を放出するための通路を提供する。一実施形態では、デバイスは、チューブの離間配置された位置にある2つ以上の別個の孔の配列を備える。2つ以上の孔は、単一のリザーバと、又は複数のリザーバと流体連通していてもよい。孔のポリマー生分解性膜が引裂する可能性を防止するために、膀胱鏡挿入中に折り曲げられるチューブ部分の近傍に孔を配置することを回避してもよい。孔36の実施形態は、図3Aに示す薬物リザーバ部分のチューブ30上に示されている。
【0056】
孔のサイズは、制御された薬物放出速度を提供するように選択されてもよい。デバイスが主に浸透圧ポンプとして作動することが意図されている実施形態では、孔のサイズは、孔を通した薬物の拡散を最小限にする又は他に減少させるほど孔が小さくなるように選択されてもよい。孔は、また、チューブ内の静水圧が過度に増加し、それによってリザーバ内の流体の体積が増加し、その結果、チューブが膨張し得ることを防止するように形成されてもよい。例えば、リザーバ内の静水圧の増加は、孔のサイズを確実に十分な大きさにすることによって、および/又は、チューブの長さに沿って複数の孔を離間配置することによって防止され得る。放出される薬物の必要な合計速度を提供するために、孔のサイズおよび数についてのこれらの制約内で、単一のデバイスに(又は単一のリザーバに)使用されるこのような孔のサイズおよび数を変化させてもよい。例示的実施形態では、孔の直径は、約20μm〜約300μm(例えば、20〜100μm、25〜75μmなど)である。一実施形態では、孔は円形であり、約25〜約500μmの直径を有する。別の例では、孔は、円形であり、約20〜約75μmの直径を有する。1つの特定の例では、孔の直径は約50μmである。デバイスが主に拡散によって作動する実施形態では、孔はこの範囲内であっても、又はそれより大きくてもよい。
【0057】
単一のデバイスが、2つ以上の異なるサイズの孔を有してもよい。孔の形状は、典型的には円形であるが、他の形状も可能であり、考えられるが、典型的には製造上の考慮事項に依存する。
【0058】
一実施形態では、孔は、レーザーアブレーションにより、チューブ(シリコーンチューブなど)の壁を貫通して穴明けされる。例えば、孔は、紫外エキシマレーザー微細加工システムを使用して、形成されてもよい。このような実施形態では、孔は、チューブの外側からチューブの内側まで僅かに先細りになっていてもよい。例えば、孔は、チューブの壁の外面に沿って約55μmの直径を有してもよく、孔は、チューブの壁の内面に沿って約45μmの直径を有してもよいが、他の任意の形態も可能である。次いで、孔は、生分解性時間調整膜で被覆されてもよい。当業者は、レーザーアブレーションを使用して、貫通孔穴明け又は深さ制御穴明けのどちらかにより医療用ポリマーに穴明けし、0.050mmの小さい直径を有する輪郭のはっきりした穴を形成し得る。従って、穴は、薬物がチューブに装填される前に形成されてもよく、又は薬物がチューブに装填された後で形成されてもよい。
【0059】
別の実施形態では、チューブの端部に配置されたオリフィス構造に、1つ以上の孔が形成されてもよい。このような実施形態を図5に示す。薬物リザーバ部分は、本体の中心穴の一端を塞ぐ精密オリフィス構造52を有する管状のシリコーン本体50を有してもよい。オリフィス構造52は、孔54を備えてもよい。マイクロビーズ56などの密封構造が、チューブの反対側の端部を塞いでもよく、薬物製剤58が、オリフィス構造52とマイクロビーズ56の間に画定されるリザーバ内に配置されてもよい。オリフィス構造は、当該技術分野で既知の精密オリフィス(例えば、Bird Precision Orifices, Swiss Jewel Companyから入手可能)であってもよい。オリフィス構造をシリコーンチューブ内に挿入することができる、および/又はオリフィス構造をシリコーン接着剤でシリコーンチューブに取り付けることができる。一例では、デバイスは、ルビー又はサファイア製で外径約1.5mm以下の精密オリフィス構造を有する、内径305μmおよび外径635μmのシリコーンチューブを備えてもよい。
【0060】
分解性膜
一実施形態では、薬物製剤の放出が開始する時間を制御するために、1つ以上の孔のそれぞれに、分解性膜が各孔を覆うように又は各孔の中に(例えば、孔と位置合わせされて)配置されている。一実施形態では、分解性膜は、デバイス本体のチューブの外面を被覆する均一なコーティングの形態である。別の実施形態では、別個の分解性膜を実質的に孔の中に備えてもよい。2つ以上の分解性膜の組み合わせを使用して、1つの孔からの放出を制御してもよい。
【0061】
特定のシステムの分解性膜の厚さは、例えば、分解性膜に選択された構成材料の化学的および機械的特性(主に分解速度を支配する)、並びに、特定の薬物供給デバイスに関する所望の薬物放出遅延時間に依存する。例えば、Richards Grayson, et al., "Molecular release from a polymeric microreservoir device: Influence of chemistry, polymer swelling, and loading on device performance" Wiley InterScience(6 April 2004); Grayson, et al.,"Multi-pulse drug delivery form a resorbable polymeric microchip device" Nature Materials, Advance Online Publication(19 October 2003); 米国特許第6,808,522号を参照されたい。一実施形態では、分解性膜の厚さは、約100μm〜約200μm、例えば、145μm〜160μmである。
【0062】
膜は、生体適合性材料で形成されてもよい。一実施形態では、膜は、ポリエステル、ポリ酸無水物、又はポリカプロラクトンなどの吸収性合成ポリマーで形成されている。別の実施形態では、膜は、コレステロール、他の脂質および脂肪などの吸収性生物材料で形成されている。
【0063】
短期間にわたって薬物を放出することが望ましいこれらのデバイスの実施形態では、分解性膜は、例えば、高いグリコリド含有率を有するポリ(ラクチド−co−グリコリド)共重合体、速い分解時間を有するポリラクトンの共重合体、ある一定のポリ酸無水物、ヒドロゲル、オリゴ糖、および多糖類を含む、迅速に分解する材料から製造されてもよい。比較的長い又は遅延された放出時間が望ましい用途では、分解性膜は、分解に比較的時間がかかる材料、例えば、コレステロール、他の脂質および脂肪、および脂質二重層などの吸収性生物材料、ポリカプロラクトン又はある一定のポリ酸無水物、および乳酸含有率の高いPLGA共重合体などのポリマーから製造されてもよい。
【0064】
ある一定の実施形態では、分解性膜は、単一の薬物放出デバイスから複雑な放出特性を達成することを可能にする。一実施形態では、これは、同じリザーバ又は異なるリザーバに通じる異なる孔を異なる膜で覆うことによって達成されてもよい。一例では、膜の1つは第1の材料で形成され、別の膜は第2の材料で形成されており、第1の材料は、第2の材料と比較して、生体内で異なる分解速度を有する。別の例では、膜の1つは第1の厚さを有し、別の膜は、より大きい第2の厚さを有する。特定の放出特性を設計するために、これらの手法だけを混合して適合させてもよく、又は、これらの手法を、後述のような、薬物と放出制御添加物との配合、若しくは薬物リザーバ部分の一部を放出変更シースで被覆することに基づく速度論変更方法と組み合わせて、混合し適合させてもよい。
【0065】
薬物製剤
薬物製剤は、本質的に、体腔に局所供給するのに有用などの治療薬、予防薬、又は診断薬を含んでもよい。薬物製剤は、薬物のみからなってもよく、又は、1種類以上の薬学的に許容される添加剤を含んでもよい。
【0066】
好ましい実施形態では、薬物製剤は、埋め込みが容易になるように、薬物製剤の全体積を減少させるために、従って、デバイスのサイズを小さくするために、固体又は半固体の形態である。半固体の形態は、例えば、乳濁液又は懸濁液:ゲル又はペーストであってもよい。一例では、薬物製剤は、固体の棒状の薬物の形態である。棒状の薬物の実施形態、およびこのような棒状の薬物の製造方法は、米国特許出願第11/463,956号に記載されており、参照によりその内容全体が援用される。棒状の薬物は、当該技術分野で既知の他の押出法又は注型法を適応させることによって形成されてもよい。例えば、コンドロイチン6−硫酸又はコンドロイチン硫酸Cを含む棒状の薬物は、チューブにCSC水溶液を充填した後、溶液を蒸発させることによって形成されてもよい。別の例として、リドカインを含む棒状の薬物は、リドカインを含む水溶液をチューブに充填し、溶液を蒸発させた後、得られるゲルを結晶化させることによって形成されてもよい。多くの実施形態では、同様に体積/サイズを最小限にするために、薬物製剤は、望ましくは添加剤を含まないか、又は含まれる添加剤の量が最小限である。
【0067】
他の実施形態では、薬物製剤は、液体、溶液、懸濁液、乳濁液、乳濁液類(emulsions)、コロイド懸濁液、スラリー、ヒドロゲルなどのゲル混合物、又はこれらの組み合わせの形態であってもよい。薬物製剤は、例えば、水和性(hydratable)又は水溶性の固体の、粉末又は微粒子の形態であってもよい。
【0068】
薬学的に許容される添加剤は、当該技術分野で既知であり、粘度調整剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、浸透剤、賦形剤、並びに操作性、安定性、分散性、湿潤性、および/又は薬物(即ち、有効医薬成分又は診断薬)の放出速度論を促進することが意図された、製剤の他の非活性成分を挙げることができる。
【0069】
特定の実施形態では、膀胱内薬物供給デバイスは、患者に鎮痛を提供するために使用される。様々な麻酔薬、鎮痛薬、およびこれらの組み合わせを使用してもよい。このような好適な薬剤の代表例としては、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、サリチルアルコール、塩酸テトラカイン、塩酸フェナゾピリジン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、フルフェニサル、イブプロフェン、インドプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、コデイン、オキシコドン、およびクエン酸フェンタニルが挙げられる。好ましい実施形態では、デバイスは、1種類以上の局所麻酔薬を供給するために使用される。局所麻酔薬は、コカイン類似体であってもよい。デバイスの特定の実施形態では、局所麻酔薬は、アミノアミド、アミノエステル、又はこれらの混合物である。異なるアミノアミドの組み合わせ、又は異なるアミノエステルの組み合わせが考えられる。可能なアミノアミドの代表例としては、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、およびロピバカインが挙げられる。可能なアミノエステルの代表例としては、ベンゾカイン、プロカイン、プロパラカイン、およびテトラカインが挙げられる。これらの局所麻酔薬は、典型的には弱塩基であり、水溶性にするために、通常、塩酸塩などの塩として配合される。
【0070】
好ましい実施形態では、本膀胱内薬物供給デバイスは、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、有痛性膀胱症候群、前立腺炎、および尿道炎などの炎症症状を治療するために使用される。これらの症状のための特定の薬物の非限定例としては、塩酸リドカイン、グリコサミノグリカン(例えば、硫酸コンドロイチン、スロデキシドなど)、ペントサンポリ硫酸ナトリウム(PPS)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オキシブチニン、マイトマイシンC、ヘパリン、フラボキサート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
本膀胱内薬物供給デバイスは、切迫性尿失禁および神経性尿失禁を含む尿失禁の治療に使用することができる。使用され得る薬物としては、抗コリン作用薬、鎮痙薬、抗ムスカリン作用薬、β2作動薬、ノルエピネフリン取り込み阻害薬、セロトニン取り込み阻害薬、カルシウム拮抗薬、カリウムチャンネル開口薬、および筋弛緩剤が挙げられる。尿失禁の治療に適した薬物の代表例としては、オキシブチニン、S−オキシブチニン、エメプロニウム、ベラパミル、イミプラミン、フラボキサート、アトロピン、プロパンテリン、トルテロジン、ロシベリン、クレンブテロール、ダリフェナシン、テロジリン、トロスピウム、ヒヨスチアミン、プロピベリン、デスモプレシン、バミカミド、YM−46303(山之内製薬株式会社、日本)、ランペリソン(lanperisone)(日本化薬株式会社、日本)、イナペリソン(inaperisone)、NS−21(Nippon Shinyaku Orion, Formenti、日本/イタリア)、NC−1800(日本ケミファ株式会社、日本)、ZD−6169(Zeneca, Co.,United Kingdom)、およびヨウ化スチロニウムが挙げられる。
【0072】
別の実施形態では、本膀胱内薬物供給デバイスは、膀胱癌および前立腺癌などの尿路癌の治療に使用される。使用され得る薬物としては、増殖抑制薬、細胞障害剤、化学療法剤、又はこれらの組み合わせが挙げられる。尿路癌の治療に適した薬物の代表例としては、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)ワクチン、シスプラチン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ビンブラスチン、チオテパ、マイトマイシン、フルオロウラシル、リュープロライド、フルタミド、ジエチルスチルベストロール、エストラムスチン、酢酸メゲストロール、シプロテロン、フルタミド、およびシクロホスファミドが挙げられる。薬物療法を、癌組織を標的にした従来の放射線療法又は外科的療法と併用してもよい。
【0073】
更に別の実施形態では、本膀胱内薬物供給デバイスは、膀胱、前立腺、および尿道を含む感染症の治療に使用される。抗生物質、抗菌薬、抗真菌薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、および他の抗感染薬をこのような感染症の治療のために投与することができる。感染症の治療に適した薬物の代表例としては、マイトマイシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、メタンアミン、ニトロフラントイン、アンピシリン、アモキシシリン、ナフシリン、トリメトプリム、サルファ剤、トリメトプリムスルファメトキサゾール、エリスロマイシン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、テトラサイクリン、クナマイシン、ペニシリン、セファロスポリン、およびアミノグリコシドが挙げられる。
【0074】
他の療法および膀胱以外の他の体腔部位に、他の薬物および添加剤を使用してもよい。デバイス中の同じ又は別々のリザーバに貯蔵され(それから放出され)る2種類以上の薬物の組み合わせが考えられる。
【0075】
薬物製剤の添加剤は、リザーバからの薬物の放出速度を調整又は制御するように選択されたマトリックス材料であってもよい。一実施形態では、マトリックス材料は、前述のような吸収性又は非吸収性ポリマーであってもよい。別の実施形態では、添加剤は、脂質(例えば、脂肪酸および誘導体、モノ−、ジ−およびトリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、およびステロイド誘導体、油、ビタミンおよびテルペンから選択される)などの、疎水性又は両親媒性化合物を含む。
【0076】
薬物製剤は、時間的に調整された放出特性、又はより連続的な若しくは一貫した放出特性を提供してもよい。律動的放出は、複数のリザーバから達成することができる。例えば、異なる分解性膜を使用して、数個のリザーバのそれぞれからの放出を時間的にずらすことができる。
【0077】
小嚢留置用フレーム
前述のように、薬物供給デバイスは小嚢留置用フレーム部分を備える。留置用フレーム部分は、薬物リザーバ部分と結合しており、薬物リザーバ部分を体内に(例えば、膀胱内に)留置することを可能にする。留置用フレームは、比較的拡張した形状と比較的低プロファイルの形状との間で弾性変形し得る。例えば、留置用フレームは、比較的拡張した形状を自然に取り、体内に挿入されるように比較的低プロファイルの形状になるように操作され、体内に挿入されると比較的拡張した形状に自発的に戻り得る。
【0078】
比較的拡張した形状の留置用フレームは、体腔内に留置されるような形状であってもよく、比較的低プロファイルの形状の留置用フレームは、カテーテルのルーメンを通して体内に挿入されるような形状であってもよい。例えば、留置用フレームは、膀胱鏡の作業チャンネルを通して体内に挿入されるのに適した形状と、排尿又は排尿筋の収縮に伴う力を受けたときでも膀胱内に留置されるのに適した形状との間で、弾性変形可能であってもよい。このような実施形態の一例を図1〜2に示し、ここで、留置用フレームは、拡張した姿勢のときプレッツェル形状を取り、留置用フレームは、低プロファイルの姿勢のとき比較的細長い直線状の形状を取る。
【0079】
このような結果を達成するために、留置用フレームは、埋め込まれた後、デバイスが比較的低プロファイルの形状を取ることを妨げるように選択された弾性限界、弾性率、および/又はばね定数を有してもよい。このような形態は、予想される力がかかったときデバイスが体内から偶発的に排出されることを制限又は防止し得る。例えば、デバイスは、排尿又は排尿筋の収縮中に膀胱内に留置され得る。
【0080】
好ましい実施形態では、留置用フレームは、弾性ワイヤを備える。一実施形態では、弾性ワイヤは、当該技術分野で既知の超弾性合金又は他の形状記憶材料を含んでもよい。例えば、超弾性合金は、生体適合性ニッケル−チタン合金(例えば、Nitinol)、又はチタン−モリブデン合金(例えば、Flexium)を含んでもよい。生分解性で、生体適合性の形状記憶ポリマーは、米国特許第6,160,084号(Langerら)に記載されている。別の実施形態では、弾性ワイヤは、比較的低弾性率のエラストマーであるか、又はそれを含む。低弾性率のエラストマーは、埋め込まれた後、膀胱への刺激又は潰瘍を比較的引き起こしにくい可能性がある。更に、幾つかの低弾性率エラストマーは、完全に生分解性であってもよく、それによって、埋め込みおよび薬物供給後に除去される必要のないデバイスを作ることが可能になる。低弾性率エラストマーの例としては、ポリウレタン、シリコーン、スチレン系熱可塑性エラストマー、およびポリ(グリセロール−セバケート)(PGS)が挙げられる。弾性ワイヤは、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、Silitek、Tecoflex、C-flex、およびPercuflexの1種類以上から形成されたコーティングなどの、生体適合性ポリマーでコーティングされてもよい。
【0081】
例えば、図1〜2に示されている実施形態では、留置用フレーム14は、超弾性合金から形成され、ポリマーコーティング18中に被覆された弾性ワイヤ16を備える。弾性ワイヤ16は、例えば、ニチノールワイヤであってもよい。ポリマーコーティング18は、例えば、シリコーンシースであってもよい。図1に示す比較的拡張した形状又はプレッツェル形状では、デバイス10は、膀胱から排出されることを妨げるのに適した寸法を有する面積を占めてもよい。図2に示される比較的低プロファイルの形状では、デバイス10は、体内に挿入されるのに適した面積を占めてもよい。従って、デバイス10は、比較的低プロファイルの形状のとき、膀胱鏡の作業チャンネルなどのカテーテル20内に適合してもよい。デバイスは、弾性ワイヤの特性のため、ばねとして機能し得る。従って、デバイスは、圧縮荷重に応答して変形し得るが、荷重が取り除かれると自発的に最初の形状に戻り得る。ポリマーコーティングによって、デバイスの外面が比較的滑らかで柔軟になり得るため、膀胱の刺激が回避される。
【0082】
実施形態では、留置用フレームは、X線又は他の画像法に対するデバイスの視認性を改善し得る、放射線不透過性材料を含んでもよい。図1〜2に示される実施形態では、例えば、放射線不透過性材料は、弾性ワイヤ16の端部に巻き付けられた白金線20であるが、白金線20は弾性ワイヤ16の他の部分に巻き付けられてもよい。また、端部の鈍さを減少させるため、平滑化材料(smoothing material)を弾性ワイヤの端部に塗布してもよい。図1〜2に示されている実施形態では、例えば、平滑化材料22は、端部に塗布された紫外線硬化性エポキシである。紫外線硬化性エポキシは、また白金線20を所定の位置に保持することを助け得る。
【0083】
留置用フレームがプレッツェル形状を取る実施形態では、留置用フレームは、圧縮力に対して比較的抵抗し得る。プレッツェル形状は、本質的に、2つの部分円(sub-circles)を含み、各部分円はそれ自体の比較的小さいアーチを有し、2つの部分円は共通の比較的大きいアーチを共有する。2つの部分円がまず一緒に圧縮されるとき、最も大きいアーチが圧縮力の大部分を吸収し、変形し始める。引き続き圧縮力を加えると、2つの部分円の比較的小さいアーチが重なり合う。その後、3つのアーチは全て圧縮力に抵抗する。2つの部分円が重なり合うと、デバイスの圧縮抵抗は、全体として増加する。このような形態は、排尿中に膀胱が収縮する時、デバイスの圧潰を防止し、膀胱から偶発的に排泄されることを妨げ得る。実施例4は、この結果をより詳細に説明する。
【0084】
留置用フレームが形状記憶材料を含む実施形態では、フレームの形成に使用される材料は、比較的拡張した形状を「記憶」してもよく、デバイスに熱が加えられると、比較的拡張した形状を自発的に取ってもよい。例えば、デバイスが膀胱に入ると拡張し得るように、留置用フレームは、体温に暴露されたとき、比較的拡張した形状に戻るように設計されてもよい。
【0085】
留置用フレームは、膀胱などの体腔内にデバイスが留置されるほど高いばね定数を有する形態であってもよい。これは、高弾性率材料又は低弾性率材料から留置用フレームを形成することによって達成され得る。特に、留置用フレームが比較的低弾性率の材料から形成される実施形態では、留置用フレームは、適切なばね定数を提供する直径および/又は形状を有する形態に形成されてもよい。一例では、弾性ワイヤは、排尿に伴う力を受けたとき、弾性ワイヤが著しく変形しないようなばね定数を有する形態の低弾性率エラストマーを含んでもよい。例えば、留置用フレームの弾性ワイヤは、1つ以上の巻線、コイル、螺旋、又はこれらの組み合わせを含んでもよく、それによって、弾性ワイヤが排尿中に変形する傾向が減少し得る。換言すれば、弾性ワイヤが、ポリウレタン又はシリコーンなどの低弾性率エラストマーから形成される場合でも、弾性ワイヤは、巻線、コイル、および/又は螺旋により、ばねの役割をする。
【0086】
巻線、コイル、又は螺旋は、望ましいばね定数を達成するように特別に設計されてもよい。様々な実施形態では、ばね定数は、約3N/m〜約60N/mの範囲であってもよい。例えば、ばね定数は、約3.6N/m〜約3.8N/mの範囲であってもよい。このようなばね定数は、次の方法:即ち、フレームの形成に使用される弾性ワイヤの直径を大きくすること、弾性ワイヤの1つ以上の巻線の曲率を大きくすること、および、弾性ワイヤに追加の巻きを加えることの1つ以上で達成されてもよい。ある一定の低弾性率ワイヤの例示的ばね定数を、下記の実施例5に記載する。
【0087】
フレームの巻線、コイル、又は螺旋は、複数の形態を有してもよい。例えば、フレームは、1つ以上のループ、カール、又は部分円を含む形態などの巻かれた形態であってもよい。図6は、1つ以上のループ、カール、又は部分円を含むフレームの例示的形状を示す。カールは、実施例B、C、DおよびEに示すように直線状に、又は実施例FおよびGに示すように放射状に一体に接続されていてもよい。カールは、実施例BおよびEに示すように同じ方向に、又は実施例CおよびDに示すように交互の方向を向いていてもよい。カールは、また、図A、BおよびEに示すように重なり合っていてもよい。弾性ワイヤの両端は、組織の刺激や瘢痕化を回避するように製造されてもよい。例えば、端部は、柔軟であっても、鈍くても、内向きであっても、一緒に接合されていても、又はこれらの組み合わせであってもよい。フレームは、また、二次元又は三次元の形態に配置された1つ以上の円又は楕円を含んでもよい。図7は、二次元又は三次元の形態に配置された1つ以上の円又は楕円を含むフレームの例示的形状を示す。フレームは、実施例Aに示すような複数の同心円、又は実施例BおよびCに示すような複数の同心楕円を含んでもよい。円又は楕円はそれぞれ閉じていてもよく、円又は楕円は共通の接続点で接合されていてもよい。あるいは、円又は楕円の1つ以上が開いていてもよい。円および楕円は、また、複数の接続点で接続されていてもよい。フレームはまた、複数の重なり合う円又は楕円を含んでもよい。重なり合う円又は楕円は、実施例Dに示すように、それぞれ実質的に同じサイズであってもよく、又は、円又は楕円は、実施例EおよびFに示すように、サイズが様々であってもよい。円は、また、実施形態に応じて、楕円と組み合わせられてもよい。更に、フレームは、実施例Gに示すように、端部が開いている螺旋であってもよく、又は、フレームは閉じた端部を有する螺旋であってもよい。
【0088】
構成材の組み合わせ
小嚢留置用フレームは、薬物リザーバ部分と結合して、薬物供給デバイスを形成する。様々な異なる結合が考えられる。例えば、薬物リザーバ部分は、小嚢留置用フレームの中間部に取り付けられてもよい。より具体的には、小嚢留置用フレームは、第1の端部、反対側の第2の端部、および、これらの間の中間部を有してもよく、薬物リザーバ部分の第1の端部と第2の端部分は、小嚢留置用フレームの中間部に取り付けられていてもよい。薬物リザーバの端部分は、小嚢留置用フレームで終端してもよく、端部分は小嚢留置用フレームと重なり合ってもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。薬物リザーバ部分が留置用フレームの周縁の内側にある、留置用フレームの周縁を越えている、又はこれらの組み合わせであるような向きに薬物リザーバ部分が留置用フレームに対して配置されていてもよい。更に、複数の薬物リザーバ部分は、デバイスの形態に応じて、単一の留置用フレームと結合していてもよい。
【0089】
図8は、1つ以上の薬物リザーバ82が留置用フレーム80の中間部に取り付けられているプレッツェル形の留置用フレーム80の例示的実施形態を示す。具体的には、実施例Aは、1つの薬物リザーバを有する実施形態を示し、ここで、薬物リザーバは、留置用フレームの周縁の内側にあり、端部分が留置用フレームの中間部に取り付けられており、留置用フレームで終端する。実施例Bは、1つの薬物リザーバを有する実施形態を示し、ここで、薬物リザーバは、留置用フレームの周縁の外側にあり、端部分が留置用フレームの中間部に留置用フレームと僅かに重なり合うように取り付けられている。実施例Cは、複数の薬物リザーバ部分を有する実施形態を示し、各薬物リザーバ部分は、留置用フレームの周縁の内側にあり、実施例Dは、複数の薬物リザーバ部分を有する実施形態を示し、薬物リザーバ部分の幾つかは留置用フレームの周縁の内側にあり、薬物リザーバ部分の幾つかは留置用フレームの周縁の外側にある。
【0090】
一実施形態では、複数の薬物リザーバ部分は、単一の留置用フレームと結合している。例えば、図9は、複数の薬物リザーバ部分92が留置用フレーム90の中間部に取り付けられている留置用フレーム90の実施形態を示し、デバイスは、図9Aでは比較的拡張した形状で示されており、デバイスは、図9Bでは、カテーテル内の比較的低プロファイル形状で示されている。複数の別個の薬物リザーバ部分を備えると、複数の異なる薬物を体内に供給すること、異なる形態の薬物を体内に供給すること、薬物を様々な速度で体内に供給すること、又はこれらの組み合わせが容易になり得る。
【0091】
他の実施形態では、薬物リザーバ部分と小嚢留置用フレーム部分は、少なくとも部分的に整列されていてもよい。換言すれば、薬物リザーバ部分は、留置用フレーム部分の長さの少なくとも一部に沿って、留置用フレーム部分と実質的に平行に又は一致して延びてもよい。例えば、薬物リザーバ部分は、留置用フレーム部分の全長に沿って延びてもよい。このような実施形態の例を図10に示し、図10は、幾つかの代替の実施形態の断面図を示す。1つの断面図しか示していないが、デバイスは、実質的にデバイスの全長に沿って又はデバイスのかなりの部分に沿って同じ断面又は類似の断面形態を有し得る。留置用フレームは、実施例A、B、CおよびDに示すように、薬物リザーバ部分のチューブ100と結合した弾性ワイヤ102を含んでもよい。弾性ワイヤ102は、実施例Aに示すように、チューブ100の外面に沿って延びてもよい。弾性ワイヤ102は、また、実施例Cに示すように、チューブ100の内面に沿って延びてもよい。弾性ワイヤ102は、また、実施例Bに示すように、チューブ100の表面を通って延びてもよい。実施形態では、チューブ100は、弾性ワイヤ102の近傍が補強領域104で補強されていてもよく、それによって、弾性ワイヤ102がチューブ100を引裂させる又はチューブ100から脱離するリスクが減少し得る。例えば、補強領域104は、追加のシリコーンの領域であってもよい。弾性ワイヤ102は、また、実施例E、FおよびGに示すように、ウェブ106によって支持されたチューブ100の内部に配置されてもよい。弾性ワイヤ102を支持することの他に、ウェブ106は、チューブ100を複数の区画に仕切ってもよい。例えば、ウェブ106は、実施例Eではチューブ100を2つの区画に、実施例Fでは3つの区画に、実施例Gでは4つの区画に仕切るが、他の形態も可能である。ウェブ106は、区画が互いに連通するように、穿孔されていても又は他に非連続的であってよい。あるいは、区画が互いに隔離されるように、ウェブ106は比較的連続的であってもよい。このような実施形態では、別個の区画は、異なる薬物製剤を保持するのに適し得る異なるリザーバを形成してもよい。ウェブ106は、実施形態に応じて、チューブと同じ材料から形成されても、又は透水性若しくは尿透過性が異なる材料から形成されてもよい。
【0092】
更に他の実施形態では、弾性ワイヤは、複数のチューブに沿って又はそれらの間に延びて、複数のチューブと結合していてもよい。このような実施形態の例を図11に示し、図11は、幾つかの代替の実施形態の断面図を示す。このような実施形態では、実施例A、BおよびCに示すように、複数の別個のチューブ110は、補強領域114によって一緒に接合され、弾性ワイヤ112が補強領域114に包埋されていてもよい。チューブ110の数は様々であってもよい。例えば、実施例Aには2つのチューブ110が示され、実施例Bには3つのチューブ110が示され、実施例Cには4つのチューブ110が示されているが、図示されていない実施形態で、追加のチューブを備えていてもよい。このような実施形態では、別個のチューブ110に同じ薬物製剤が装填されていても又は異なる薬物製剤が装填されていてもよい。別個のチューブ110は、また、同じ構成材料から形成されていても、又は、尿若しくは他の水性液体若しくは体液の透過性が異なる材料などの異なる構成材料から形成されていてもよい。
【0093】
前述の実施形態を組み合わせて、変化させ、本開示の範囲に入る他の薬物供給デバイスを製造してもよい。例えば、薬物リザーバ部分を任意の方法で、中間部以外の留置用フレームの任意の部分に取り付けてもよい。また、薬物リザーバ部分を留置用フレームの弾性ワイヤの周囲に、1回又は任意の回数巻き付けてもよい。留置用フレームは、一般に、簡略化するために弾性ワイヤとして記載されており、これらの実施形態のいずれかでは、図1に関して前述したように、弾性ワイヤはポリマーチューブでコーティングされてもよいことに留意すべきである。また、「薬物リザーバ部分」の用語は、一般に、留置用フレームと結合している別個のチューブを指すが、このチューブは、図4および図11に関して前述したように、任意の数の別個の薬物リザーバに分離されていても又は他に仕切られていてもよい。複数の薬物リザーバ部分を提供すること、単一の薬物リザーバ部分を複数の薬物リザーバに仕切ること、又はこれらの組み合わせによって、複数の異なる薬物を体内に供給すること、異なる形態の薬物を体内に供給すること、薬物を様々な速度で体内に供給すること、又はこれらの組み合わせが容易になり得る。例えば、デバイスは、埋め込み時に、より早く放出される液体の形態と、薬物が可溶化された後に後で放出される固体又は半固体の形態の両方で、薬物を保持してもよい。
【0094】
本質的にどの生体適合性材料又は構造を使用しても、薬物リザーバ構成材を小嚢留置用フレームに取り付けることができる。例えば、医療用シリコーン接着剤を使用して、薬物リザーバ部分を留置用フレームに取り付けてもよい。
【0095】
実施形態では、留置用フレームの弾性ワイヤを薬物リザーバ部分のエラストマーチューブ内に少なくとも部分的に埋入することによって、薬物リザーバ構成材を小嚢留置用フレームに取り付けてもよい。図12に示す実施形態では、プレッツェル形の弾性ワイヤ120の一部は薬物リザーバ部分122の第1の端部と第2の端部を通って延びるが、他の形態も可能である。このような実施形態では、薬物リザーバ部分のチューブはその中にワイヤが入った状態で形成されてもよく、又は、両方の部分を形成した後でチューブにワイヤを貫通させ、それらを接続してもよい。
【0096】
更に他の実施形態では、薬物リザーバ部分は、留置用フレームと一体形成されてもよい。例えば、硬化性シリコーンを成形型に注ぎ込み、シリコーンを硬化させることを含み得る、注型法を使用してもよい。幾つかのこのような実施形態では、弾性ワイヤをシリコーンと一緒に成形型内に配置してもよい。
【0097】
更に、幾つかの実施形態では、薬物リザーバ部分と留置用フレーム部分は、同じ構成材であってもよい。このような場合、デバイスは、前述のように、体内にデバイスを留置するのに十分なばね定数を有する形態に形成されたシリコーンチューブを含んでもよい。このような場合、取り付けは必要でないことがある。
【0098】
他のデバイス機構
単一のデバイスから供給される薬物の速度および総量は、例えば、とりわけ、薬物リザーバ部分の表面積、薬物リザーバ部分の構成材料の種類および透過性、薬物リザーバ部分を貫通して形成された孔の数、および総薬物装填質量に依存し得る。異なる薬物および療法に関して、特定の体腔に対する特定の標的治療量および許容される埋め込み物寸法、および埋め込み経路を選択することができる。
【0099】
実施形態では、放出速度の制御を容易にし得るコーティング又はシースで薬物リザーバ部分を部分的に又は全体的にコーティングすることができる。コーティング又はシースは、薬物リザーバ部分より透水性が比較的小さくてもよい。従って、コーティング又はシースは、薬物リザーバ部分の透水性を調整し又は低下させ、デバイスからの薬物の放出速度を制御する又は遅くすることができる。幾つかの場合、コーティング又はシースは、部分的に透水性であってもよく、その場合、コーティング又はシースは薬物リザーバ部分の全部又は一部を被覆してもよい。例えば、コーティング又はシースは、実質的にデバイス全体を被覆するメッシュを含んでもよい。他の場合、コーティング又はシースは、実質的に不透水性であってもよく、その場合、コーティング又はシースは、デバイス本体の一部だけを被覆してもよい。それにもかかわらず、コーティング又はシースは、デバイス本体の浸透表面積を減少又は変更させ得る。浸透表面積の減少又は変更により、薬物リザーバ部分からの薬物の放出速度が低下又は変更し得る。
【0100】
コーティング又はシースは放出速度の制御を可能にするため、薬物リザーバ部分は、とりわけ、ある一定の可撓性又はばね定数を達成するように、又は、埋め込み中若しくは埋め込み後に、ある一定の形状を取るように、ある一定の薬物有効装填容量を収容するサイズ、形状、および構成に作られてもよい。放出速度は、コーティング又はシースで浸透表面積を制御することによって、独立して制御され得るため、薬物リザーバ部分のこれらの特徴は、このような特徴が放出速度にどのように影響するかにかかわりなく選択され得る。従って、デバイス本体の全体的なサイズ、デバイス本体の形状、又はデバイス本体の形成に使用される材料を変更することなく、放出速度を変更し得る。
【0101】
薬物リザーバ部分がシリコーンチューブから形成される場合、コーティング又はシースは、シリコーンより透水性又は尿透過性が比較的低い材料から形成されてもよい。例えば、コーティング又はシースは、ポリマー、パリレン、硬化性シリコーン、又は当該技術分野で既知の別の生体適合性コーティング若しくはシース材料から形成されてもよい。一実施形態では、デバイス本体はシリコーンチューブから形成されてもよく、他方、シースはポリウレタンから形成されてもよい。
【0102】
薬物がリザーバから比較的均一に放出されることを容易にするように、コーティング又はシースはデバイス本体に沿って比較的均一であってもよい。あるいは、デバイス本体のある一定の部分の透水性が、デバイス本体の他の部分と比較して高くなる又は低くなるように、コーティング又はシースはデバイス本体に沿って変化してもよい。例えば、コーティング又はシースの1つ以上の特徴は、所望の放出速度を達成するように、デバイス本体の全体にわたって変化してもよい。変化してもよいコーティング又はシースの例示的特徴としては、とりわけ、コーティング又はシースの厚さ、サイズ、又は形状;デバイス本体上でのコーティング又はシースの位置、配置、又は向き;および、コーティング又はシースの形成に使用される材料を挙げることができる。
【0103】
更に、デバイス本体の異なる部分に沿って、複数のコーティング又はシースを備えてもよい。幾つかの場合、複数のコーティング又はシースは、デバイス本体内に形成される複数のリザーバに対応してもよく、複数のリザーバのそれぞれが異なる薬物を収容してもよい。このような場合、異なるリザーバから異なる薬物が比較的均一に放出されることを可能にするため、複数のコーティング又はシースは同じ特徴を有してもよい。あるいは、異なるリザーバから異なる薬物が異なる速度で放出されることを可能にするため、複数のコーティング又はシースは異なる特徴を有してもよい。放出速度を変えるために異なってもよい例示的なコーティング又はシースの特徴としては、前述のように、とりわけ、厚さ、サイズ、形状、位置、および材料が挙げられる。例えば、第1のリザーバの周囲のチューブは、第1の材料と第1の厚さの第1のコーティングでコーティングされてもよく、他方、第2のリザーバの周囲のチューブは、コーティングされなくても、第2の(異なる)コーティング材料でコーティングされても、又は、第1のコーティング材料で第2の(異なる)厚さでコーティングされてもよい。従って、第1のリザーバからの放出速度は、第2のリザーバからの放出速度と異なってもよい。
【0104】
実施形態では、固体又は半固体の形態の薬物の溶解を増加させる又は他に制御するために、デバイス本体の周囲にコーティング又はシースを配置することを選択してもよい。一例を図13に示す。図示するように、デバイス本体130は、シリコーンチューブなどのチューブ132から形成されてもよい。チューブ132は、反対側にある2つの端部133を有してもよい。マイクロスフェア134が各端部133を密閉してもよく、端部133間にリザーバ135が形成されてもよい。チューブ132を貫通して形成されたオリフィス136は、リザーバ135から薬物を放出することを可能にする。オリフィス136からの薬物の放出を制御するため、チューブ132の周囲に少なくとも1つのシース138が配置されてもよい。例えば、チューブ132のオリフィス136と端部133の間のそれぞれの側にシース138が配置されてもよい。そのため、薬物はシース138の下で滞留せず、シース138は端部133から内側に離間配置されてもよい。図示するように、シース138は、端部133よりもオリフィス136に比較的近くてもよく、例えば、オリフィス136に直ぐに隣接していてもよいが、他の形態も可能である。その配置は、端部133に隣接したところで水がチューブ132を透過することを可能にするため、シース138をそのように配置すると、オリフィス136から薬物を放出することが容易になり得る。端部133に隣接したところで水がチューブ132を透過するため、薬物は、シース138で被覆されたチューブ132の部分を通り、オリフィス136から出ることができる。従って、シース138の下に配置された薬物の孤立化又は滞留が回避され得る。下記の実施例11又は12は、シースを有する薬物供給デバイスに関する放出速度データを提供し、また、所望の放出速度を達成するシースの長さを選択するための例示的な式も提供する。
【0105】
好ましい実施形態では、埋め込み又は体外への取り出し(explantation)の一部としてデバイスの検出又は観察を容易にするために、チューブは、好ましくは少なくとも1つの放射線不透過性部分又は構造を備える。一実施形態では、チューブは、硫酸バリウム又は当該技術分野で既知の別の放射線不透過性材料などの、放射線不透過性充填材を含む材料で構成されている。
【0106】
シリコーンチューブは、チューブの加工中に硫酸バリウム又は他の好適な材料などの放射線不透過性充填剤をブレンドすることによって、(X線画像法又は蛍光透視法のために)放射線不透過性にされてもよい。超音波画像法で生体内のシリコーンを検出することもできるが、デバイスを小さく保つ場合、それはデバイスを正確に画像化することができる解像度に欠けることがある。蛍光透視法は、処置を実施する施術者にデバイスの位置および向きの正確なリアルタイム画像化を提供することによって、非吸収性デバイスの配備/回収中に好ましい方法となり得る。
【0107】
一実施形態では、膀胱内薬物供給デバイスの本体は、少なくとも1つの回収機構を更に備える。回収機構は、例えば、薬物製剤の放出後に非吸収性デバイス本体を除去するために、デバイスを体腔から除去することを容易にする構造であってもよい。回収機構の実施形態は、米国特許出願第11/463,956号に記載されている。これらの実施形態および他の実施形態では、デバイスは、ワニ口鉗子、三つ叉又は四つ叉の光学把持具などの従来の内視鏡把持器具を使用して回収されてもよい。例えば、デバイスがO形又はコイル状の部分を有する場合、これらの把持器具によってデバイスの除去が容易になり得る。
【0108】
実施形態では、デバイスは、急性期に即時効果を達成し、慢性期(maintenance phase)には持続的効果を達成するように、薬物を投与するように設計されてもよい。例えば、デバイスは、1つが埋め込み後に比較的迅速に薬物を放出するように形成されており、1つが放出の開始前に誘発時間(induction time)を経る、2つの薬物リザーバ又は薬物リザーバ部分を有してもよい。このような結果を達成するために、2つの薬物リザーバ又は薬物リザーバ部分は、異なる透過性などの異なる形態を有してもよく、又は、2つの薬物リザーバ又は薬物リザーバ部分は、即時放出のための液体の形態、および放出前に可溶化される固体の形態などの異なる形態の薬物を貯蔵してもよい。これらの実施形態を本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせて、変化させ、所望の放出特性を達成することができる。
【0109】
II.デバイスの製造方法
別の態様では、埋め込み型薬物供給デバイスの製造方法を提供する。図14は、このような方法140の一実施形態を示すブロック図である。ブロック142では、薬物リザーバ部分が形成される。ブロック144では、小嚢留置用フレーム部分が形成される。ブロック146では、薬物リザーバ部分を小嚢留置用フレーム部分と結合させる。
【0110】
実施形態では、ブロック142における薬物リザーバ部分の形成は、次の部分工程(sub-steps):即ち、薬物リザーバチューブを形成する工程、比較的固い棒状の薬物を形成する工程、棒状の薬物をチューブに装填する工程、密封材をチューブの棒状薬物の端部とチューブの端部との間に挿入する工程、および、チューブに1つ以上の孔を形成する工程の1つ以上を含んでもよい。
【0111】
薬物リザーバチューブは、射出成形、圧縮成形、押出成形、トランスファー成形、インサート成形、熱成形、注型、又はこれらの組み合わせなどの従来の方法を使用して形成されてもよい。生体適合性、透水性、弾性、又はこれらのいずれかの組み合わせである材料から中空のチューブを形成してもよい。例えば、チューブはシリコーンを含んでもよい。
【0112】
薬物を含む水溶液を成形型に充填し、溶液から溶媒を蒸発させることによって棒状の薬物を形成してもよい。例えば、リドカインの棒状薬物は、リドカインの水溶液を成形型に充填し、溶媒の少なくとも一部を蒸発させて薬物の飽和溶液又は過飽和溶液を形成した後、得られたゲルを結晶化させてリドカインの棒状薬物を形成することによって形成されてもよい。飽和溶液又は過飽和溶液に種結晶を導入して、結晶の成長、従って薬物の沈殿を開始させてもよい。このような場合、蒸発および結晶化工程を、1つ以上の制御された温度で行ってもよい。別の例として、デバイスの操作性を向上させるために、塩酸リドカインを硫酸コンドロイチンCと、例えば、70:30の混合比で混合し、幾らかの剛性を有する棒状の薬物を製造してもよいが、このようなプロセスは、塩酸リドカインの有効装填量を幾らか犠牲にする。その犠牲が許容可能であるかどうかは、特定のデバイス設計および用途/使用に依存する。
【0113】
棒状の薬物が形成される実施形態では、薬物リザーバ部分のチューブが成形型の役割をしても、又は成形型の役割をしなくてもよい。チューブが成形型の役割をしない実施形態では、完成した棒状の薬物は、例えば、ガイドワイヤおよび/又はピンセットを使用して棒状の薬物をチューブに入れることによって、チューブに装填されてもよい。
【0114】
薬物製剤が液体の形態である実施形態では、薬物製剤は、孔を通して、又は、後で密封される別の開口部を通して薬物リザーバ部分に装填されてもよい。しかし、固体又は半固体の形態の薬物を装填することは比較的容易である可能性があり、このような形態では更にデバイスのサイズを小さくすることができ、それによって周囲組織への刺激を低減することが容易になり得る。
【0115】
チューブの側壁、チューブの端部、又はこれらの組み合わせの1つ以上に1つ以上の孔を形成してもよい。チューブに1つ以上の穴をレーザー穴明けすることによって、1つ以上の孔を形成してもよい。レーザー穴明けは、チューブに棒状の薬物を装填する前に行っても又は装填した後に行ってもよい。あるいは、米国特許第6,808,522号(Richardsら)に記載のように圧子を用いて成形することなどにより、デバイス本体と同時に孔を形成してもよい。
【0116】
実施形態では、ブロック142の薬物リザーバ部分を形成する工程は、単一の薬物リザーバ部分に複数の異なる薬物リザーバを形成する工程を含んでもよい。このような実施形態では、例えば、ガイドワイヤを使用して、1つ以上の仕切り構造をチューブの中に挿入し、チューブ内に配置してもよい。複数のリザーバおよび仕切りを使用する場合、仕切り構造の取り付けは薬物製剤の装填と交互に行ってもよい。仕切りの外径がチューブの内径より僅かに大きい場合など、仕切り構造の位置は、接着剤を使用して、又はチューブとの摩擦係合により固定されてもよい。
【0117】
実施形態では、ブロック142の薬物リザーバ部分を形成する工程は、1つ以上の放出制御構造を薬物リザーバ部分と結合させる工程を更に含んでもよい。例えば、薬物の放出速度を制御するために、チューブの表面の少なくとも一部にシース又はコーティングを配置してもよい。更に、孔を通した薬物放出の最初の時間を制御するために、孔の1つ以上を覆うように又は孔の1つ以上の中に、分解性膜を配置してもよい。分解性膜は、液体を微量注入又はインクジェット印刷し、孔の一端に、例えば、チューブの外面開口部の中/上に膜を形成することによって、形成されてもよい。例えば、液体は、溶媒中に溶解した吸収性材料を含む溶液、非溶媒中に吸収性材料を含む懸濁液、又は液化された吸収性材料であってもよい。また、薬物リザーバ部分は、既知の速度で放出するように設計された薬物ポリマー複合材料から形成されてもよい。
【0118】
実施形態では、小嚢留置用フレーム部分を形成する工程は、フレームの形成に使用される材料に応じて変わり得る。留置用フレームが、超弾性合金又は形状記憶材料から形成された弾性ワイヤを含む実施形態では、例えば、小嚢留置用フレームを形成する工程は、弾性ワイヤを比較的拡張した形状に形成し、熱処理によってその形状を弾性ワイヤに「プログラム」することを含んでもよい。例えば、図1に示す留置用フレーム14は、弾性ワイヤ16をプレッツェル形状に形成し、弾性ワイヤ16を5分超の時間、500℃を超える温度で熱処理することによって形成されてもよい。また、このような実施形態では、小嚢留置用フレーム部分を形成する工程は、次:即ち、弾性ワイヤを覆うようにポリマーコーティング又はシースを形成する工程、弾性ワイヤの端部を平滑化する工程、および弾性ワイヤの少なくとも一部に放射線不透過性材料を適用する工程の1つ以上を含んでもよい。このような実施形態では、ポリマーシース、放射線不透過性材料、および平滑化材料は、どの順番で弾性ワイヤに適用されてもよい。例えば、デバイスのX線に対する放射線不透過性を改善するために、白金ワイヤを弾性ワイヤの端部に巻き付けてもよく、弾性ワイヤの端部を紫外線硬化性エポキシで平滑化してもよく、弾性ワイヤを覆うようにポリマーシース又はコーティングを配置してもよい。
【0119】
留置用フレームが低弾性率エラストマーを含む実施形態では、小嚢留置用フレームを形成する工程は、フレームがばねとして機能するように、1つ以上の巻線、コイル、ループ、又は螺旋を形成する工程を含んでもよい。例えば、留置用フレームは、とりわけ、押出成形、液体射出成形、トランスファー成形、又はインサート成形によって形成されてもよい。
【0120】
実施形態では、薬物リザーバ部分を小嚢留置用フレームと結合させる工程は、薬物リザーバ部分を留置用フレーム部分に対して向きを定め、それらの間に接着剤を塗布することを含んでもよい。薬物リザーバ部分は、前述のように、様々な向きに配置されてもよい。他の実施形態では、薬物リザーバ部分を小嚢留置用フレームと結合させる工程は、留置用フレーム部分の弾性ワイヤを、少なくとも部分的に薬物リザーバ部分に挿通することを含んでもよい。更に他の実施形態では、薬物リザーバ部分を小嚢留置用フレームと結合させる工程は、2つの部分を一緒に一体形成することを含んでもよい。
【0121】
III.デバイスの使用および用途
膀胱内薬物供給デバイスは、薬物を本質的にどの体腔部位に局所供給するのにも使用され得る。好ましい実施形態では、体腔は治療の必要な男性又は女性の患者の膀胱であってもよい。例えば、膀胱内薬物供給デバイスは、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、過活動膀胱症候群、又は膀胱癌の治療に使用され得るが、デバイスは、また、他の症状の治療のために薬物を膀胱に供給することもできる。他の実施形態では、本膀胱内デバイスを患者の他の体腔内で使用してもよい。例えば、小さいデバイスを膣、胃腔、腹腔、又は眼腔(ocular cavity)内の空間に埋め込んでもよい。
【0122】
一実施形態では、膀胱内薬物供給デバイスは、どのような原因から生じる痛みも管理するように、局所麻酔薬を局所供給するために患者の膀胱に埋め込まれる。例えば、それは、尿生殖器組織のどのような疾患又は障害から生じる痛みであっても、どのような膀胱カテーテル法処置自体(例えば、術後カテーテル法)から生じる痛みであってもよい。
【0123】
本デバイスは、当該技術分野で既知のように、本明細書では一般にカテーテル、尿道カテーテル又は膀胱鏡と称される、任意の好適なルーメンデバイスで患者の膀胱に埋め込まれてもよい。他に明示されない限り、本明細書では、これらの用語は互換的に使用される。カテーテルは、市販のデバイスであっても、又は本薬物供給デバイスの一実施形態を収容するように特別に製造されたものであってもよい。
【0124】
一例では、膀胱内薬物供給デバイスを体腔内に埋め込む方法は、膀胱内薬物供給デバイスを比較的低プロファイルの形状でカテーテル内を通過させて、デバイスをカテーテルから体腔内に放出することを含み、デバイスがカテーテルから出ると、デバイスは、体腔内に留置されるように比較的拡張した形状を取る。実施形態では、比較的低プロファイルの形状は、比較的直線状の、折り畳まれた、拡張された、又は圧縮された形態であってもよい。カテーテルは、膀胱に接近し得るように尿道に挿入されてもよい。図15は、本方法の放出工程の一実施形態を示す。図15に示すように、スタイレット154を使用して、デバイス152がカテーテル150内を押し通されてもよい。図示されるように、デバイス512は、カテーテル150から出る時、変形し、膀胱内に留置されるように比較的拡張した形状に戻る。米国特許第6,139,535号は、また、尿道を通して膀胱内に医療用デバイスを配置する方法および装置を記載している。
【0125】
実施形態では、膀胱内薬物供給デバイスは、棒状の薬物又は粉末の形態などの比較的固い形態の薬物を含む。棒状の薬物が可溶化されると、デバイスから薬物が溶出する。即ち、デバイスに入る体液に薬物が接触し、その中に可溶化されると、溶解した薬物が、埋め込まれたデバイスから浸透圧で拡散又は流動する。例えば、デバイスは膀胱の中に供給され得るが、この場合、薬物は、膀胱内の尿と接触すると、可溶化され得る。
【0126】
一実施形態では、膀胱内薬物供給デバイスは、非吸収性であるか、又は、他に、埋め込み後に除去されなければならない。このような例の1つでは、前段落に記載した方法は、薬物の放出後に、膀胱内薬物供給デバイスを体腔から除去する工程を更に含む。この目的のための専用の回収デバイスが当該技術分野で既知である、又はこの目的のための専用の回収デバイスを容易に製造することができる。例えば、米国特許第5,499,997号は、内視鏡下把持方法および装置を記載している。
【0127】
全身供給の代替として、本デバイスを使用して膀胱に薬物を局所供給してもよく、それは、全身供給で望ましくない副作用が起こり得る場合、又は薬物のバイオアベイラビリティが不十分になり得る場合に望ましい可能性がある。
【0128】
本膀胱内薬物供給デバイスによる治療方法は、所望の(所定の)期間にわたって、所望の量の薬物を長期間、連続的に、間欠的に、又は定期的に放出する。一実施形態では、デバイスは長期間にわたって、例えば、24時間、5日間、7日間、10日間、14日間、又は20、25、30、45、60、又は90日間、又はそれ以上にわたって、所望の用量の薬物を供給することができる。薬物の供給速度および用量は、供給される薬物、および治療される疾患/症状に応じて選択することができる。デバイス中の孔の数およびサイズを変えると共に、異なる分解速度および/又は添加物を使用することによって、異なる放出速度論を有するようにデバイスを作製することができる。
【0129】
好ましい実施形態では、デバイスは患者の膀胱に投与され(即ち、埋め込まれ)、膀胱に制御された方法で薬物製剤を供給する。特定の実施形態では、薬物製剤は、過活動膀胱症候群、膀胱癌、間質性膀胱炎の治療、又は鎮痛に有用な1種類以上の薬物を含む。
【0130】
例えば、デバイスを使用して、長期間、例えば、1日を超える期間にわたり、リドカインを膀胱に局所供給してもよい。有利には、デバイスは、例えば、高い全身濃度を生じさせることなく膀胱組織におけるリドカインの局所濃度を増加させるように、膀胱にリドカインを供給することを可能にする。
【0131】
図16は、リドカインを膀胱に供給する方法160を示すブロック図である。ブロック162では、有効装填量のリドカインを有するデバイスが膀胱に供給される。ブロック164では、リドカインが、長期間にわたってデバイスから連続的に放出される。このような実施形態では、デバイスは、前述のデバイスの一実施形態であってもよく、又はデバイスは他のいずれかのデバイスであってもよい。実施形態では、リドカインの有効装填量は、約50mg〜約100mgの範囲であってもよい。長期間は、例えば、約1日〜約14日の範囲であってもよい。このような方法により、膀胱の尿路上皮中で持続的なリドカイン濃度が達成され得る。
【0132】
有利には、本デバイスおよび方法で達成し得る尿路上皮中の持続的なリドカイン濃度は、一般に全身的に許容可能であると考えられる濃度を超えることができる。著しく高い全身濃度を生じることなく、高い局所薬物濃度が得られる。これによって、比較的少ない有効装填量のリドカインを有効に使用して、尿路上皮中に治療有効リドカイン濃度を生じさせることが可能になる。尿路上皮中リドカイン濃度は、全身作用を引き起こすことなく、全身で得られる濃度を超えることができる。尿路上皮中リドカイン濃度は、点滴注入によって得られる濃度を超えることができ、更に、点滴注入に伴う高い初期最高濃度を回避することができる。デバイスの故障が起こった場合でも、望ましくない全身作用を回避するほど有効装填量が十分に少ない可能性があるため、少ない有効装填量はデバイスの安全性を促進し得る。それにもかかわらず、供給が局所的に行われるため、少ない有効装填量で、尿路上皮中に有効なリドカイン濃度を生じさせることができる。下記の実施例8を参照されたい。
【0133】
実施形態では、本方法は、尿のpHにかかわりなく、リドカインを供給し得る。例えば、リドカインを炭酸水素ナトリウムなどの緩衝剤と一緒に投与する必要がない。下記の実施例9を参照されたい。
【0134】
実施形態では、本方法は、リドカインを比較的固い形態で供給することができ、それによって、デバイスのサイズを小さくし、膀胱の刺激および患者の不快感を回避することが可能になる。
【0135】
実施形態では、(1)有効装填量のリドカインを有するデバイスを膀胱に供給する工程は、第1および第2の有効装填量のリドカインを有するデバイスを膀胱に供給する工程を含んでもよく、(2)長期間にわたってデバイスからリドカインを連続的に放出する工程は、第1の有効装填量のリドカインの放出を開始する工程、および、その後、第2の有効装填量のリドカインの放出を開始する工程を含んでもよい。第1の有効装填量は、比較的迅速に放出されるように製造されてもよく、他方、第2の有効装填量は、比較的連続的に放出されるように製造されてもよい。例えば、第1の有効装填量は液体の形態であってもよく、他方、第2の有効装填量は固体の形態であってもよい。別の例として、第1の有効装填量は、比較的薄肉のシリコーンチューブなどの比較的速く作動する浸透圧ポンプ内に収容されてもよく、他方、第2の有効装填量は、比較的厚肉のシリコーンチューブなどの、放出前に初期遅延時間又は誘発時間を経る浸透圧ポンプ内に収容されてもよい。従って、本方法は、初期、急性期、および慢性期にリドカインを膀胱に連続的に放出し得る。このような方法は、実施例8に関して後述するように、デバイスの初期誘発時間を補償し得る。
【0136】
以下の非限定例を参照して、本発明を更に理解することができる。
【実施例】
【0137】
実施例1:管状浸透圧ポンプの設計
シリコーン製の管状浸透圧ポンプの設計を以下に記載する。透水性(および薬物透過性)および機械的特性に応じて、ポリウレタンなどの他の生体適合性ポリマーチューブを使用することができる。管状浸透圧ポンプの設計式によって、所望の薬物有効装填量および放出速度を得ることが可能になる。チューブの厚さは、機械的完全性および透水性と関係がある。チューブの内径およびチューブの肉厚は、薬物の有効装填量およびチューブの外径を決定する。チューブの長さは、薬物装填量と管状浸透圧ポンプのマクロサイズ又はループ直径の両方に影響を及ぼす。水又は尿がチューブを透過する浸透表面積は、チューブの外径およびチューブの長さの影響を受ける。これらのパラメータは、浸透圧ポンプの全体的な性能に影響を及ぼす。
【0138】
管状浸透圧ポンプは、内部リザーバに薬物を保持し、薬物を外側の媒体に移動させることができる。管状浸透圧ポンプのパラメータを下記に定義する。
C:デバイスリザーバ内の瞬間薬物濃度
ρ:薬物の密度
S:薬物の溶解度
d:チューブの内径
h:チューブの肉厚
D:チューブで作られたマクロループの直径
L:チューブの全長、L=πD
Ln:透過阻止シースを有していないチューブの長さ
Ls:透過阻止シースを有するチューブの長さ、Ls=L−Ln
V:薬物リザーバの容量、
【数1】
m:デバイスリザーバ内に残存する瞬間薬物量、
【数2】
mp:総薬物有効装填量、
【数3】
ΔΠ:チューブの内側と外側の間の浸透圧の差
ΔΠs:飽和時のチューブの内側と外側の間の浸透圧の差
k:溶媒輸送の透過係数
A:水が透過する浸透表面積、A=π(d+h)Ln
tz:ゼロ次放出の持続時間
【数4】
「m」はデバイスリザーバ内に残存する瞬間薬物量を示すため、パラメータ「dm/dt」は、デバイスリザーバ内での薬物質量減少速度として定義される。式「dm/dt」中のマイナス記号は、デバイスが水又は尿中に浸漬されると、デバイスは浸透放出によりその薬物を失うことを表す。周囲媒体の浸透圧が、薬物リザーバ内の製剤の浸透圧と比較して十分小さいとき、van't Hoffの法則を使用して:
【数5】
を得ることができ、ここで、浸透圧と濃度の比例関係が使用される。
【0139】
薬物リザーバ内の濃度が、装填された薬物の溶解度であるとき、デバイスからの薬物放出速度は、最初の期間、一定のままである。この最初の「ゼロ次放出期間」の間に放出される薬物の量は、
【数6】
と表すことができる。リザーバ内の薬物濃度が低下するため、ゼロ次放出期間の後、薬物放出速度は低下する。リザーバ内の薬物質量の変化速度(dm/dt)は、まだ、ゼロ次放出速度
【数7】
に関して表すことができる:
【数8】
リザーバ内に残存する薬物の量(m)と薬物質量の変化速度(dm/dt)に関する式は、2つの期間、即ち、ゼロ次放出期間と非ゼロ次放出期間では異なる。ゼロ次放出期間(0≦t≦tz)に関する式は:
【数9】
式(1.3)を積分して、非ゼロ次放出期間(t≧tz)に関する式を求めることができる。薬物濃度(C)および薬物質量(m)は、時間依存性の変数であり、次の関係がある:
m=CV (1.6)
式(1.6)を式(1.3)と組み合わせた後、式(1.3)をtz〜tまで積分すると、次式
【数10】
を得ることができる。時間t(≧tz)におけるリザーバ内に残存する薬物質量は、
【数11】
および
【数12】
と表すことができ、式中、
【数13】
である。tzを過ぎた薬物リザーバ内の薬物質量は、
m=αmp(α≦1) (1.11)
として表すことができ、式中、αは、初期装填量と比較した残存薬物質量を示す比率パラメータである(例えば、αが0.05である場合、総有効装填量の5%がデバイス内に残存する、又は総装填量の95%が放出されている)。式(1.11)を式(1.8)に代入すると、時間tが
【数14】
として得られ、式中、tzは式(1.10)で置換される。式(1.12)から、
【数15】
は供給時間尺度を決定する因子であることが分かる。この結果は、総有効装填量および初期ゼロ次放出速度が、経時の薬物放出特性の全体的挙動を決定することを示唆している。
【0140】
実施例2:異なるデバイスに関する放出特性の比較
ここで、式(1.12)の適用例を示す。図17は、3つの異なるデバイスA、BおよびCを示し、図18は、3つの異なるデバイスA、BおよびCに関する試験管内薬物放出特性を示すグラフである。各デバイスは、浸透圧ポンプとして機能するチューブであった。チューブは、シリコーンから形成された。各チューブは内部リザーバを画定し、ある量のリドカインをリザーバに装填した。各チューブは、また、外側浸透表面積を画定し、オリフィスが浸透表面積に形成された。オリフィスは、浸透圧下でリザーバからリドカインを放出することを可能にした。
【0141】
より具体的には、デバイスAは、約2cmの浸透表面積と約2mgのリザーバ容量を有するシリコーンチューブであった。デバイスBは、約1cmの浸透表面積と約1mgのリザーバ容量を有するシリコーンチューブであった。デバイスCは、約2cmの浸透表面積(放出オリフィスの近傍にある半分は2つのポリウレタンシースで被覆された)と約2mgのリザーバ容量を有するシリコーンチューブであった。シースのため、デバイスCの有効浸透表面積は、デバイスBの浸透表面積とほぼ同じであったが、デバイスCのリザーバ容量はデバイスAのリザーバ容量とほぼ同じであった。各デバイスについて、シリコーンチューブの端部をマイクロスフェアで密封し、リザーバにリドカインを装填した。デバイスCの場合、放出中に、リドカインが孤立化することを制限するため、オリフィスの比較的近傍にシースを配置した。
【0142】
次いで、試験管内で、37℃の水中でデバイスを試験し、得られる放出特性を図18にプロットした。各デバイスに関する薬物有効装填量(mp)、ゼロ次薬物放出速度
【数16】
および供給時間尺度
【数17】
を、デバイスAの値に対する相対値として、表1に示す。デバイスBの長さは、デバイスAの長さの約半分であったため、デバイスBに関する薬物有効装填量とゼロ次放出速度は両方とも、デバイスAの値の約半分となったが、その結果、デバイスAとデバイスBに関して同じ供給時間尺度が得られる。図18から、時間に関する全体的な試験管内放出特性は、デバイスAとデバイスBで類似していたことが分かる。デバイスCの長さは、デバイスAの長さとほぼ同じであったが、デバイスCの長さの約半分がポリウレタンシースで被覆され、透水性が低下した又は最小限になった。従って、デバイスCに関するゼロ次放出速度は、デバイスAに関するゼロ次放出速度の約半分であった。従って、デバイスCの供給時間尺度は、デバイスAの供給時間尺度の約2倍であった。図18から、デバイスCに関する薬物放出は、デバイスAに関する薬物放出の2倍遅いことが分かる。
【0143】
【表1】
【0144】
実施例3:所望の放出速度を達成するデバイス特性の選択
所望の放出速度を達成するデバイス特性の選択を可能にする式を、下記に列挙する。より具体的には、式は、ある一定の有効装填量で、ある一定の放出速度を達成するために、デバイスをどれくらいコーティング又はシースで被覆すべきかを決定することを可能にする。試験管内での試験中に、対照の放出特性に基づいて、対照の薬物有効装填量を放出する対照の寸法の対照デバイスに対して、デバイス特性を決定することができる。これらの対照のパラメータが分かると、式により、対照デバイスと比較した、標的放出速度を示す標的デバイスの特性を決定することができる。
【0145】
例示のため、図17のデバイスAは、対照デバイスであった。デバイスAは、次の設計パラメータを有した:
チューブの内径:do=0.3048mm
チューブの肉厚:ho=0.1651mm
チューブの長さ:Lo=2cm
有効装填量:mp,o=2mg
治療持続時間:約3日
図18に、デバイスAに関する対照放出速度mz,oをプロットする。対照デバイスのこのようなパラメータで始めて、下記の式は、対照デバイスと比較した、所望の有効装填量に対して所望の供給速度を示す標的デバイスのデバイス特性を得ることを可能にする。より具体的には、2つの変数、
a=標的のゼロ次供給速度の倍増率
b=標的の有効装填量の倍増率、
がそれぞれ定義される。定義から、次のような所望の標的条件が得られる:
ゼロ次供給速度
【数18】
:基準条件と比較してa倍の増加
薬物有効装填量(mp):基準条件と比較してb倍の増加
ここで、薬物およびチューブ材料は基準条件と標的条件の両方で同じであると仮定する。ここでは、標的条件に関するパラメータには、添え字がない。ゼロ次供給速度条件から、
【数19】
が得られ、薬物有効装填量条件から、
【数20】
が得られる。チューブの肉厚は変化してもよいが、ここでは、簡単にするために一定にする:
h=ho
チューブの壁が薄過ぎると、機械的完全性が十分でない可能性があり、他方、チューブの壁が厚過ぎると、デバイスから最初に薬物が放出されるまでの誘発時間が不要に長くなる可能性があることに留意すべきである。従って、チューブの肉厚の適切な範囲は、ポリマーチューブの形成に使用される材料の機械的特性と透水性に基づいて決定することができる。
【0146】
チューブの壁が適切な薄さであるシリコーンチューブは、薬物がチューブ内に装填されているとき、透水性膜の役割をすることができる。下記の式は、まず、透水性チューブがポリマーシースで被覆されていない場合を考慮する。図18のデバイスAおよびデバイスBは、このような場合を示す。水は、チューブの全長で薬物リザーバの中に透過することができ、従って、
L=Ln
となる。式(1.13)および式(1.14)から、次のような内径に関する二次方程式を得ることができ:
【数21】
ここで、1つの解は正であり、もう1つの解は負である。正の解は、dpと示され、従って、チューブの長さの解は、
【数22】
である。従って、供給速度および薬物有効装填量に関する倍増率を選択すると、チューブの内径およびチューブの長さを算出することができる。下記の表2に2つの実施例を示す。異なるポリマーから形成されたチューブ又は他の薬物を保持するチューブについてポリマーチューブと薬物の特定の組み合わせに関する基準条件を得るために、追加の試験管内放出試験を実施することができる。
【0147】
【表2】
【0148】
前述のように、シースで被覆された長さはLsと示される。前節は、Ls=0の場合に対応し、その場合、しばしば、デバイスの直径を小さくすることが通常望ましい。例えば、シースを省くことにより、膀胱鏡の作業チャンネルにデバイスを挿通させることが容易になり得、その直径は約2.4mm以下となり得る。それにもかかわらず、次式は、チューブの透水性を低下させる材料で透水性のチューブが少なくとも部分的に被覆されている、即ち、Ls>0の場合を考慮する。図18のデバイスCは、このような場合を示す。デバイスCは、ポリウレタンなどの比較的透水性が低いポリマーで製造されたシース又はコーティングで少なくとも部分的にコーティングされてもよく、それによって、チューブに入る水の透過が減少し得る又は最小限になり得る。また、パリレンなどの特殊なコーティングを使用して、水の透過を減少させてもよい。式(1.13)および式(1.14)から、チューブの内径(d)が減少する時、チューブの長さ(L)はシースで被覆された長さ(Ls)より速く増加する(L∝1/d2およびLn∝1/(d+h))ことが分かる。シースで被覆された部分の長さは、
Ls=L−Ln (1.19)
である。式(1.13)、(1.14)および(1.19)を使用して、シースで被覆された長さは、
【数23】
と表されるか、又は式(1.18)を使用して、次式が得られ、
【数24】
式中、添え字1は、シースを使用していない場合を示す。シースで被覆されたチューブの部分の長さは、チューブの内径(d)に関して、次のように表すことができ、
【数25】
又は、ループ直径(D)に関して、次のように表すことができる。
【数26】
【0149】
実施例4:弾性ワイヤの特性の選択
図19に示すプレッツェル形の留置用フレームで圧縮試験を実施し、様々な設計因子が留置用フレームのばね定数にどのように影響を及ぼすかを実証した。プレッツェル形の弾性ワイヤは、直径0.009インチ又は0.2286mmの超弾性ニチノールワイヤ製であった。圧縮試験を実施した時、力および変位に関するデータを収集した。このデータを図20に示すグラフにプロットする。
【0150】
留置用フレームに圧縮荷重を加えた時、フレームは、Aに示す形状からBに示す形状に変形し、最終的にCに示す形状になった。具体的には、図19に示すデバイスA、BおよびCの3つの形状は、図20のグラフの3つのデータ点、A、BおよびCに対応する。
【0151】
図19に示すように、フレームが形状Aおよび形状Bから変形した時、圧縮力は、概ね、プレッツェル形の弾性ワイヤの比較的大きい共通のアーチによって吸収された。フレームが形状Bを取ると、弾性ワイヤを構成する2つの部分円は重なり合った。力/変位プロットは、傾きの増加(約15倍)を示し、それは、フレームが形状Bから形状Cに変形する時、持続した。
【0152】
試験およびその後の分析から、低弾性率エラストマーに関する小さいヤング率は、次:即ち、アーチの半径を小さくすること、ワイヤの直径を大きくすること、および、複数のおよび/又は重なり合った円又は巻線を有すること、の1つ以上によって補償され得ることが分かった。例えば、フレームによって形成されるアーチの半径を2分の1に小さくすること、およびフレームの形成に使用されるワイヤの直径を2倍大きくすることによって、ばね定数を27又は128倍、著しく大きくすることができる。
【0153】
実施例5:ある一定の低弾性率ワイヤに関するサンプルばね定数
ヤング率約30GPa、直径約0.2286mm、弧の半径約1.5cmであり、1つのコイルを有するニチノールワイヤのばね定数は、約3.7N/mとなり得る。ヤング率約25MPa、直径約1mm、弧の半径約1cmであり、1つのコイルを有するポリウレタンワイヤのばね定数は、約3.8N/mとなり得る。ヤング率約2.41MPa、直径約1.2mm、弧の半径約0.75cmであり、2つのコイルを有するシリコーンワイヤのばね定数は、約3.6N/mとなり得る。ヤング率約1.7MPa、直径約1.2mm、弧の半径約0.76cmであり、3つのコイルを有するポリ(グリセロール−セバケート)(PGS)のばね定数は、約3.7N/mとなり得る。
【0154】
実施例6:試験管内における様々なデバイスからのリドカインの供給
5つの異なるデバイスで試験管内リドカイン放出試験を実施した。各デバイスは、結晶化リドカイン片が装填されたシリコーンチューブであった。2つの異なるサイズのシリコーンチューブを使用した。デバイスの仕様を表3に示す。各チューブは、端部にステンレス鋼の微小球を挿入して密封された。対照デバイスを除いて、各チューブの微小球の間にオリフィスを穴明けした。各オリフィスの直径は約50μmであった。直径は、CSCで実施した試験管内放出実験の結果に基づいて、一次放出特性が得られるように選択された。表中のIII型と示されたデバイスは、デバイスの中への水の透過を減少させるために、図13に示したものに類似のポリウレタンシースを有する。表中の対照と示されたデバイスは、オリフィスを有していなかった。実験中、チューブ内部の静水圧が増加したため、微小球は外側に押された。デバイスに関する試験管内リドカイン放出曲線を図21に示す。
【0155】
【表3】
【0156】
実施例7:生体内におけるウサギの膀胱内でのデバイスの供給および留置
小嚢留置用フレームは、シリコーンチューブで被覆されたNitinolワイヤ(直径0.009インチ)で作製された。Nitinolワイヤの先端に白金線を巻き、生体適合性UVエポキシを塗布して硬化させ、Nitinolワイヤの先端が鈍くなるように加工した。小嚢組織表面、例えば、膀胱の刺激および瘢痕化が起こる可能性を回避するため、先端は鈍く、柔軟である。被覆されたワイヤデバイスは、重なり合う2つのループの形状であり、ループによって画定された円状の外周の内側に端部が配置された。小嚢留置用フレームは、実質的にプレッツェル形であった。
【0157】
10Frの尿路カテーテルで留置デバイスをウサギの膀胱に埋め込んだ。2つのループ(即ち、部分円)を圧縮すると圧縮抵抗が増加するように、デバイスの形状を選択した。ばね状の機構は、それが尿道に入らないように、構造の圧潰を防止することが意図された。圧縮が取り除かれると、Nitinolの超弾性のため、デバイスは直ぐに元の形状に戻った。デバイスをカテーテルコアに圧縮して入れる代わりに、デバイスを真直ぐにし、スタイレットを使用してカテーテルルーメン内を押し通した。デバイスは、カテーテルの遠位端から出た後、巻いて元の形状に戻った。デバイスは膀胱から排泄されなかった。
【0158】
実施例8:生体内におけるウサギの膀胱内でのリドカインの供給
ウサギの生体内で薬物暴露試験を実施し、膀胱によるリドカインの吸収を調査した。この試験は、雄性New Zealand White rabbitsで行った。ウサギの幾匹かには、膀胱内に埋め込まれる薬物供給デバイスでリドカインを供給し、他方、比較のために他のウサギで点滴注入を実施した。
【0159】
点滴注入で処置されたウサギでは、リドカイン水溶液10mLを膀胱に点滴注入した。以前の臨床試験に基づいて、リドカイン用量は、体重1kg当たり2mg又は5mgであった。尿道に挿通された10Frの小児用Foleyカテーテルを使用して、溶液を点滴注入し、溶液を膀胱内に1時間又は2時間、保持した。点滴注入の前後の複数の時点で、血液サンプルを採集した。点滴注入の1日後にウサギから膀胱を採集し、その時、尿サンプルも採集した。
【0160】
膀胱内埋め込み物で処置されたウサギには、「3日」デバイスか又は「6日」デバイスのどちらかが入れられた。どちらのデバイスも形態が図1に示すデバイスに匹敵し、それぞれ、シリコーン薬物リザーバ構成材と結合したプレッツェル形の留置用フレームを有した。3日デバイスの薬物リザーバ構成材は、長さ約0.0065インチ、内径約0.012インチ、外径約0.025インチ、薬物装填量リドカイン約2mgであったが、他方、6日デバイスの薬物リザーバ構成材は、長さ約0.0085インチ、内径約0.020インチ、外径約0.037インチ、薬物装填量リドカイン約2mgであった。「3日デバイス」および「6日デバイス」の用語は、デバイスの形態を指し、埋め込みの長さを指すものではない。各ウサギに対して、図16に関して前述した手順を使用し、改良された10Frの尿道カテーテルでデバイスを挿入した。デバイスを埋め込んだ後、カテーテルを抜去した。デバイス埋め込みの前後の複数の時点で血液サンプルを採集した。更に、1匹のウサギでは、埋め込み直後、埋め込みの2日後、および埋め込みの9日後に、右側横臥位と仰臥位の両方でX線像を撮影した。異なる時間に撮影した複数のX線像から、デバイスは1つの位置に留まるのではなく膀胱内を自由に移動することが分かった。デバイスは、なんら健康上の問題なく、生体内試験中、ウサギで忍容性が良好であった。1日、2日、3日および6日を含む、埋め込み後の複数の時点で、ウサギから膀胱を採集した。また、膀胱を除去した時点で尿サンプルも採集した。
【0161】
血液、膀胱、および尿サンプルを分析し、血漿、膀胱組織、および尿中のリドカイン濃度を決定した。図22は、様々な処置に関する経時のリドカイン血漿中濃度を示すグラフであり、図23は、同じグラフであるがX軸が変更されている。これらのグラフでは、点滴注入処置は点線で示し、デバイス処置は実線で示す。記号解説は、各ウサギの重量並びに処置の種類を示す。図22のデータ表示は、一般に、様々な点滴注入処置と様々な膀胱内埋め込み処置の比較を可能にし、他方、図23のデータ表示は、概ね、様々な膀胱内埋め込み処置を互いに比較することを可能にする。
【0162】
図22に示すように、リドカイン溶液の点滴注入の結果、リドカイン血漿中濃度は最初、急激に上昇したが、1日後にはもはやリドカインは血漿中に検出されなかった。従って、点滴注入処置によってリドカイン血漿中濃度は急激に上昇し得るが、この上昇の後、すぐ急激に低下する。5mg/kgのリドカイン溶液の点滴注入で2時間処置されたウサギの場合、最高血漿中濃度は、100ng/mLを超えたが、これは、リドカインの既知の毒性限界の10分の1以内である。しかし、全身的には望ましくないが、繰り返し行われる点滴注入と点滴注入の間に軽減を提供するために、このような高い初期最高濃度が必要な場合がある。
【0163】
また、図22から、点滴注入で処置されたウサギより、埋め込みデバイスで処置されたウサギの方が、リドカイン血漿中濃度が比較的低かったことが分かる。しかし、埋め込みデバイスで処置されたウサギは、経時で比較的高いリドカイン血漿中濃度を維持した。
【0164】
図23から、3日デバイスからの放出は12時間後に遅くなったことが分かるが、それは、実施例6の試験管内放出試験で得られた結果と一致している。3日デバイスの2倍の有効装填量を有する6日デバイスは、比較的長時間の放出特性を示した。しかし、6日デバイスは初期誘発時間を示したが、それは、実施例6の試験管内放出試験で得られた結果と一致する。誘発時間は、6日デバイスに使用されたチューブが比較的厚肉であることによるものであり、それは、誘発時間の間、水和され、デバイスからリドカインの放出が開始される。結果から、全体的に見て、埋め込みデバイスによるリドカインのデポー剤の供給は、点滴注入による供給と比較したとき、経時で比較的高いリドカイン血漿中濃度を維持すると共に、高い最高リドカイン血漿中濃度を回避することを可能にすることが分かる。
【0165】
膀胱内処置の標的部位は膀胱組織であるため、リドカインの膀胱組織濃度は、血漿中濃度よりも、膀胱内埋め込みによる処置の効果のより直接的な指標となる。図24は、膀胱内埋め込みによる様々な処置に関する経時の膀胱組織中のリドカイン濃度を示す。埋め込みの1日後、埋め込みの2日後、および埋め込みの3日後を含む、埋め込み後の複数の時点における、3日デバイスに関するリドカイン組織濃度を示す。換言すれば、デバイスは必ずしも3日間膀胱内に留置されなかった。また、埋め込みの6日後の時点における6日デバイスに関するリドカイン組織濃度も示す。図示するように、3日デバイスは、3日間の間にリドカイン組織濃度が低下することを示したが、他方、6日デバイスは、3日デバイスが1日後に示したリドカイン組織濃度に匹敵するリドカイン組織濃度を6日後に示した。また、膀胱内注入療法の1日後にリドカイン組織濃度を測定したが、組織濃度は検出レベル未満であった。また、リドカイン組織濃度は、組織1グラム当たりのおよそのマイクログラムであることにも留意すべきである。
【0166】
図25は、膀胱内埋め込み物に関するリドカイン血漿中濃度とリドカイン組織濃度との相関を示す。また、点滴注入の1日後の点滴注入処置に関する相関も示すが、デバイス処置と比較して、これらの濃度は無視できるほど低い。図示するように、リドカイン血漿中濃度が高いほど、一般にリドカイン組織濃度が高い。しかし、リドカイン組織濃度は、リドカイン血漿中濃度より約1000倍高い。そのため、埋め込みデバイスでリドカインのデポー剤を供給すると、膀胱組織の方がより高濃度の薬物に暴露されると共に、高い最高血漿中濃度が回避され得る。
【0167】
それぞれ3日デバイスと6日デバイスで処置された2匹の動物に関して、リドカイン尿中濃度も測定した。結果を図26に示す。3日デバイスが埋め込まれたウサギでは埋め込みの3日後に、6日デバイスが埋め込まれたウサギでは埋め込みの6日後に、膀胱組織および尿サンプルを採集した。図示するように、リドカイン尿中濃度の桁はリドカイン組織濃度に匹敵したが、それは、下記の実施例9および図27に関して後述する試験管内試験と一致する。
【0168】
実施例9:試験管内におけるラットの膀胱中でのリドカインの吸収
試験管内でラットの膀胱で試験を実施し、膀胱の尿路上皮へのリドカイン吸収に対するpHと時間の影響を調査した。人口尿と放射線標識されたリドカインから、複数の異なるリドカイン溶液を作製した。各リドカイン溶液は、リドカイン濃度が10−5%(10−4mg/mL)又は1%(10mg/mL)のどちらかであり、pHが4.0〜8.5の範囲であった。
【0169】
ラットの膀胱を裏返して、尿路上皮又は膀胱の内層を露出させた。裏返しにした膀胱をリドカイン溶液に入れたが、各リドカイン溶液は異なる濃度とpHを有した。膀胱をリドカイン溶液中で、次の時間:10分間、1時間、3日間、又は5日間の1つ、インキュベートした。指定されたインキュベート時間が終了した後、各膀胱をリドカイン溶液から除去し、組織中のリドカイン濃度を測定した。
【0170】
図27は、1時間および1日間の試験管内でのラットの膀胱組織へのリドカイン溶液の吸収に対するpHの影響を示すグラフである。グラフは、1%のリドカイン濃度だけを有するリドカイン溶液に関するものである。図示するように、リドカイン溶液のpHは、1時間後の膀胱組織へのリドカインの吸収に僅かに影響を及ぼしたが、pHは、1日後のリドカイン吸収に著しい影響を及ぼさなかった。各膀胱に関して、平坦域組織濃度(又は、膀胱組織質量当たりの吸収されたリドカイン質量)は、約10000mg/kg又は1%であったが、それは、膀胱が浸漬されたリドカイン溶液のリドカイン濃度であった。この結果は、長期間にわたる膀胱へのリドカインの局所吸収は、リドカイン溶液のpHに依存しないことを示唆する。この結果は、また、生体内における長期の膀胱内の暴露で、リドカインが尿路上皮によって局所吸収されるためにはリドカイン溶液の緩衝は必要ではない可能性があることを示す。
【0171】
図28は、様々なpHの10−5%および1%リドカイン溶液を用いて試験管内でラット膀胱で実施された試験中に示された、経時のリドカイン組織濃度を示すグラフである。グラフは、経時のラット膀胱組織中へのリドカインの吸収に対するリドカイン濃度とpHの影響を示す。10−5%の濃度を有するリドカイン溶液に関する結果を、1%の濃度を有するものとは別にプロットする。図示するように、リドカイン組織濃度は、急に(約10分以内に)増加し、10−5%リドカイン溶液と1%リドカイン溶液の両方で平坦域に到達する。図示するように、10−5%リドカイン溶液に関する平坦域リドカイン組織濃度は、約0.1mg/kg又は10−5%であるが、他方、1%リドカイン溶液での平坦域リドカイン組織濃度は、約10000mg/kg又は1%である。この結果から、試験管内での尿路上皮へのリドカイン吸収に関して、リドカイン組織、対、リドカイン溶液の分配係数は、約1であることが分かる。リドカイン濃度が高いほど、尿路上皮中へのリドカイン吸収が高くなる。
【0172】
本明細書に記載される方法およびデバイスの変更および変形は、前述の詳細な説明から当業者に明らかである。このような変更および変形は、添付の特許請求の範囲内にあるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を含む少なくとも1つの薬物リザーバ構成材;並びに
第1の端部、反対側の第2の端部、およびそれらの間の中間部を有する弾性ワイヤを含む小嚢留置用フレーム、
を含み、
前記薬物リザーバ構成材が前記小嚢留置用フレームの中間部に取り付けられている、
薬物を制御供給するための埋め込み型医療用デバイス。
【請求項2】
前記弾性ワイヤが、3N/m〜60N/mのばね定数を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記弾性ワイヤが、約3.6N/m〜約3.8N/mのばね定数を有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記弾性ワイヤが、低弾性率エラストマーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記低弾性率エラストマーが、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、又はポリ(グリセロール−セバケート)を含む、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記弾性ワイヤが、生体適合性ニッケル−チタン合金、チタン−モリブデン合金、又は別の超弾性合金、もしくは形状記憶材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記弾性ワイヤが、2つ以上のループの形態に巻かれている非圧縮状態を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記弾性ワイヤの第1の端部と第2の端部が前記1つ以上のループ内で結合している、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
薬物リザーバ構成材が、(i)第1の端部分および反対側の第2の端部分を有する少なくとも1つの細長いエラストマーチューブ、並びに(ii)前記エラストマーチューブ内に収容されている薬物を含み、前記チューブが、制御された速度で前記薬物を供給するように生体内で作動可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記エラストマーチューブが、透水性シリコーン又は他の透水性材料で形成されている、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記エラストマーチューブが、浸透、拡散、又はこれらの組み合わせにより前記薬物の放出を制御する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記エラストマーチューブが、浸透により前記薬物の放出を制御する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項13】
前記エラストマーチューブが、前記薬物を制御された速度で供給するために、1つ以上の孔を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記1つ以上の孔がそれぞれ円形であり、約25μm〜約500μmの直径を有する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記エラストマーチューブが、内径約0.3mm〜約2mm、外径約0.6mm〜約3mmの円筒状である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項16】
前記薬物が、前記エラストマーチューブの中心チャンネル内に配置された薬物製剤コア中にある、請求項9に記載のデバイス。
【請求項17】
前記薬物製剤が、固体又は半固体の形態である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記エラストマーチューブが、生体吸収性マトリックス材料と前記薬物との複合材料を含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項19】
前記薬物が、局所麻酔薬、ヘパリン、ヒアルロン酸ナトリウム、グリコサミノグリカン、ジメチルスルホキシド、オキシブチニン、マイトマイシンC、フラボキサート、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記薬物が、アミノアミドの塩又はアミノエステルの塩である局所麻酔薬を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記薬物が、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、ロピバカイン、ベンゾカイン、プロカイン、プロパラカイン、テトラカイン、ブピバカイン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
生体内吸収性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記薬物リザーバ部分が、
前記小嚢留置用フレームの中間部の第1の位置に取り付けられている第1の端部、および、
前記小嚢留置用フレームの中間部の第2の位置に取り付けられている第2の端部、
を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記薬物リザーバ部分が、前記第1の端部と前記第2の端部の間の中心部分を含み、前記中心部分が前記小嚢留置用フレームに取り付けられていない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
前記薬物リザーバ部分が、少なくとも前記中間部に沿って前記小嚢留置用フレームと実質的に整列されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
前記デバイスが、少なくとも前記中間部に沿って前記小嚢留置用フレームと実質的に整列された、少なくとも2つの薬物リザーバ部分を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項27】
少なくとも1つの薬物リザーバ構成材であって、
第1の端部および反対側の第2の端部を有する細長く透水性のエラストマーチューブ、
前記チューブ内の固体又は半固体の薬物製剤コア、
を含み、
前記チューブが生体内で制御された速度で前記薬物を供給する、少なくとも1つの薬物リザーバ構成材、並びに、
第1の端部、反対側の第2の端部、およびそれらの間の中間部を有する弾性ワイヤを含む小嚢留置用フレームであって、前記弾性ワイヤが低弾性率エラストマー又は超弾性合金を含む、小嚢留置用フレーム、
を含み、
前記薬物リザーバ構成材の前記エラストマーシリコーンチューブが、前記小嚢留置用フレームの前記中間部の周囲に取り付けられている、
薬物を制御供給するための埋め込み型医療用デバイス。
【請求項28】
前記弾性ワイヤが、カテーテルのルーメンを通過できない2つ以上のループに巻かれている高プロファイルの形態と、前記デバイスが前記カテーテルルーメンを通過できる低プロファイルの形態とを有する、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
前記弾性ワイヤが、3N/m〜60N/mのばね定数を有する、請求項27に記載のデバイス。
【請求項30】
前記エラストマーチューブが、生体内で浸透により制御された速度で薬物を放出できる孔を有する、請求項27に記載のデバイス。
【請求項31】
前記弾性ワイヤが、約3.6N/m〜約3.8N/mのばね定数を有する、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記低弾性率エラストマーが、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、又はポリ(グリセロール−セバケート)を含む、請求項27に記載のデバイス。
【請求項33】
前記薬物製剤が、局所麻酔薬を含む、請求項27に記載のデバイス。
【請求項34】
前記エラストマーチューブが、外側浸透表面、前記リザーバから薬物を連通するために前記浸透表面を貫通して形成されたオリフィス、および、前記浸透表面の透過性を低下させるために前記浸透表面の少なくとも一部を被覆するコーティング又はシースを有する、請求項27に記載のデバイス。
【請求項35】
患者の膀胱に薬物を投与する方法であって、
遠位端、反対側の近位端、およびそれらの間に延びる開放ルーメンを有するルーメンデバイスを提供する工程、
治療の必要がある患者の膀胱に前記ルーメンデバイスの遠位端を挿入する工程であって、前記ルーメンデバイスの近位端が患者の体外に残留する工程、
請求項1〜34のいずれか1項に記載のデバイスを変形させ、それを前記ルーメンデバイスのルーメンの近位端に入れる工程、
前記変形したデバイスを前記ルーメン内に強制的に挿通させ、前記ルーメンから出す工程であって、その時、前記デバイスが、膀胱内に留置されるように、変形していない形状に戻る工程、
前記ルーメンデバイスを患者から抜去する工程、および
請求項1〜34のいずれか1項に記載のデバイスから前記薬物を放出する工程、
を含む、方法。
【請求項36】
前記患者が、間質性膀胱炎、過活動膀胱炎、又は膀胱癌の治療を必要としている、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
透水性材料で形成され、内側リザーバ、外側浸透表面、および、前記リザーバから薬物を連通するために前記浸透表面を貫通して形成されたオリフィスを含むチューブ、並びに
前記浸透表面の透過性を低下させるために前記浸透表面の少なくとも一部を被覆するコーティング又はシース、
を含む、薬物を制御供給するための埋め込み型医療用デバイス。
【請求項38】
前記透水性材料がシリコーンを含み、前記コーティング又はシースがポリウレタンを含む、請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
前記コーティング又はシースは、前記チューブを形成する透水性材料より、比較的透水性が低い、請求項37に記載のデバイス。
【請求項40】
前記チューブが2つのリザーバを含み、前記2つのリザーバからの放出速度が異なるように、前記コーティング又はシースの少なくとも1つの特徴が前記チューブに沿って変化する、請求項37に記載のデバイス。
【請求項41】
前記コーティング又はシースの少なくとも1つの特徴が、前記コーティング又はシースの厚さ、前記コーティング又はシースのサイズ、前記コーティング又はシースの形状、前記チューブ上での前記コーティング又はシースの位置、前記チューブ上での前記コーティング又はシースの配置、前記チューブ上での前記コーティング又はシースの向き、および前記コーティング又はシースの形成に使用される材料からなる群から選択される、請求項40に記載のデバイス。
【請求項42】
前記端部に隣接する前記チューブの部分が前記コーティング又はシースで被覆されないように、前記コーティング又はシースが前記チューブの一端から内側に離間配置されている、請求項37に記載のデバイス。
【請求項43】
前記コーティング又はシースが、前記オリフィスの近傍の前記チューブの周囲に配置されている、請求項37に記載のデバイス。
【請求項44】
前記チューブと結合している小嚢留置用フレームを更に備える、請求項37に記載のデバイス。
【請求項45】
患者の膀胱の治療方法であって、
患者の膀胱内に完全に薬物放出デバイスを埋め込む工程、および
膀胱の尿路上皮中に持続的な治療有効麻酔薬濃度を提供すると共に、麻酔薬の高い最高血漿中濃度を回避するように、前記薬物供給デバイスから局所麻酔薬を制御可能に放出する工程、
を含む、方法。
【請求項46】
前記麻酔薬がリドカインを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記尿路上皮中の麻酔薬濃度が、血漿中濃度より少なくとも1000倍高い、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記尿路上皮中の治療有効麻酔薬濃度が、1日間〜30日間持続する、請求項45〜47に記載の方法。
【請求項49】
患者の膀胱の治療方法であって、
患者の膀胱内に完全に薬物放出デバイスを埋め込む工程、および
膀胱の尿路上皮中に持続的な治療有効薬物濃度を提供すると共に、麻酔薬の高い最高血漿中濃度を回避するように、前記薬物供給デバイスから薬物を制御可能に放出する工程、
を含み、
前記薬物の半減期が、リドカインの半減期の25%に等しいか又は25%以内である、方法。
【請求項1】
薬物を含む少なくとも1つの薬物リザーバ構成材;並びに
第1の端部、反対側の第2の端部、およびそれらの間の中間部を有する弾性ワイヤを含む小嚢留置用フレーム、
を含み、
前記薬物リザーバ構成材が前記小嚢留置用フレームの中間部に取り付けられている、
薬物を制御供給するための埋め込み型医療用デバイス。
【請求項2】
前記弾性ワイヤが、3N/m〜60N/mのばね定数を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記弾性ワイヤが、約3.6N/m〜約3.8N/mのばね定数を有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記弾性ワイヤが、低弾性率エラストマーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記低弾性率エラストマーが、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、又はポリ(グリセロール−セバケート)を含む、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記弾性ワイヤが、生体適合性ニッケル−チタン合金、チタン−モリブデン合金、又は別の超弾性合金、もしくは形状記憶材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記弾性ワイヤが、2つ以上のループの形態に巻かれている非圧縮状態を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記弾性ワイヤの第1の端部と第2の端部が前記1つ以上のループ内で結合している、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
薬物リザーバ構成材が、(i)第1の端部分および反対側の第2の端部分を有する少なくとも1つの細長いエラストマーチューブ、並びに(ii)前記エラストマーチューブ内に収容されている薬物を含み、前記チューブが、制御された速度で前記薬物を供給するように生体内で作動可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記エラストマーチューブが、透水性シリコーン又は他の透水性材料で形成されている、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記エラストマーチューブが、浸透、拡散、又はこれらの組み合わせにより前記薬物の放出を制御する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記エラストマーチューブが、浸透により前記薬物の放出を制御する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項13】
前記エラストマーチューブが、前記薬物を制御された速度で供給するために、1つ以上の孔を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記1つ以上の孔がそれぞれ円形であり、約25μm〜約500μmの直径を有する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記エラストマーチューブが、内径約0.3mm〜約2mm、外径約0.6mm〜約3mmの円筒状である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項16】
前記薬物が、前記エラストマーチューブの中心チャンネル内に配置された薬物製剤コア中にある、請求項9に記載のデバイス。
【請求項17】
前記薬物製剤が、固体又は半固体の形態である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記エラストマーチューブが、生体吸収性マトリックス材料と前記薬物との複合材料を含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項19】
前記薬物が、局所麻酔薬、ヘパリン、ヒアルロン酸ナトリウム、グリコサミノグリカン、ジメチルスルホキシド、オキシブチニン、マイトマイシンC、フラボキサート、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記薬物が、アミノアミドの塩又はアミノエステルの塩である局所麻酔薬を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記薬物が、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、ロピバカイン、ベンゾカイン、プロカイン、プロパラカイン、テトラカイン、ブピバカイン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
生体内吸収性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記薬物リザーバ部分が、
前記小嚢留置用フレームの中間部の第1の位置に取り付けられている第1の端部、および、
前記小嚢留置用フレームの中間部の第2の位置に取り付けられている第2の端部、
を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記薬物リザーバ部分が、前記第1の端部と前記第2の端部の間の中心部分を含み、前記中心部分が前記小嚢留置用フレームに取り付けられていない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
前記薬物リザーバ部分が、少なくとも前記中間部に沿って前記小嚢留置用フレームと実質的に整列されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
前記デバイスが、少なくとも前記中間部に沿って前記小嚢留置用フレームと実質的に整列された、少なくとも2つの薬物リザーバ部分を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項27】
少なくとも1つの薬物リザーバ構成材であって、
第1の端部および反対側の第2の端部を有する細長く透水性のエラストマーチューブ、
前記チューブ内の固体又は半固体の薬物製剤コア、
を含み、
前記チューブが生体内で制御された速度で前記薬物を供給する、少なくとも1つの薬物リザーバ構成材、並びに、
第1の端部、反対側の第2の端部、およびそれらの間の中間部を有する弾性ワイヤを含む小嚢留置用フレームであって、前記弾性ワイヤが低弾性率エラストマー又は超弾性合金を含む、小嚢留置用フレーム、
を含み、
前記薬物リザーバ構成材の前記エラストマーシリコーンチューブが、前記小嚢留置用フレームの前記中間部の周囲に取り付けられている、
薬物を制御供給するための埋め込み型医療用デバイス。
【請求項28】
前記弾性ワイヤが、カテーテルのルーメンを通過できない2つ以上のループに巻かれている高プロファイルの形態と、前記デバイスが前記カテーテルルーメンを通過できる低プロファイルの形態とを有する、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
前記弾性ワイヤが、3N/m〜60N/mのばね定数を有する、請求項27に記載のデバイス。
【請求項30】
前記エラストマーチューブが、生体内で浸透により制御された速度で薬物を放出できる孔を有する、請求項27に記載のデバイス。
【請求項31】
前記弾性ワイヤが、約3.6N/m〜約3.8N/mのばね定数を有する、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記低弾性率エラストマーが、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、又はポリ(グリセロール−セバケート)を含む、請求項27に記載のデバイス。
【請求項33】
前記薬物製剤が、局所麻酔薬を含む、請求項27に記載のデバイス。
【請求項34】
前記エラストマーチューブが、外側浸透表面、前記リザーバから薬物を連通するために前記浸透表面を貫通して形成されたオリフィス、および、前記浸透表面の透過性を低下させるために前記浸透表面の少なくとも一部を被覆するコーティング又はシースを有する、請求項27に記載のデバイス。
【請求項35】
患者の膀胱に薬物を投与する方法であって、
遠位端、反対側の近位端、およびそれらの間に延びる開放ルーメンを有するルーメンデバイスを提供する工程、
治療の必要がある患者の膀胱に前記ルーメンデバイスの遠位端を挿入する工程であって、前記ルーメンデバイスの近位端が患者の体外に残留する工程、
請求項1〜34のいずれか1項に記載のデバイスを変形させ、それを前記ルーメンデバイスのルーメンの近位端に入れる工程、
前記変形したデバイスを前記ルーメン内に強制的に挿通させ、前記ルーメンから出す工程であって、その時、前記デバイスが、膀胱内に留置されるように、変形していない形状に戻る工程、
前記ルーメンデバイスを患者から抜去する工程、および
請求項1〜34のいずれか1項に記載のデバイスから前記薬物を放出する工程、
を含む、方法。
【請求項36】
前記患者が、間質性膀胱炎、過活動膀胱炎、又は膀胱癌の治療を必要としている、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
透水性材料で形成され、内側リザーバ、外側浸透表面、および、前記リザーバから薬物を連通するために前記浸透表面を貫通して形成されたオリフィスを含むチューブ、並びに
前記浸透表面の透過性を低下させるために前記浸透表面の少なくとも一部を被覆するコーティング又はシース、
を含む、薬物を制御供給するための埋め込み型医療用デバイス。
【請求項38】
前記透水性材料がシリコーンを含み、前記コーティング又はシースがポリウレタンを含む、請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
前記コーティング又はシースは、前記チューブを形成する透水性材料より、比較的透水性が低い、請求項37に記載のデバイス。
【請求項40】
前記チューブが2つのリザーバを含み、前記2つのリザーバからの放出速度が異なるように、前記コーティング又はシースの少なくとも1つの特徴が前記チューブに沿って変化する、請求項37に記載のデバイス。
【請求項41】
前記コーティング又はシースの少なくとも1つの特徴が、前記コーティング又はシースの厚さ、前記コーティング又はシースのサイズ、前記コーティング又はシースの形状、前記チューブ上での前記コーティング又はシースの位置、前記チューブ上での前記コーティング又はシースの配置、前記チューブ上での前記コーティング又はシースの向き、および前記コーティング又はシースの形成に使用される材料からなる群から選択される、請求項40に記載のデバイス。
【請求項42】
前記端部に隣接する前記チューブの部分が前記コーティング又はシースで被覆されないように、前記コーティング又はシースが前記チューブの一端から内側に離間配置されている、請求項37に記載のデバイス。
【請求項43】
前記コーティング又はシースが、前記オリフィスの近傍の前記チューブの周囲に配置されている、請求項37に記載のデバイス。
【請求項44】
前記チューブと結合している小嚢留置用フレームを更に備える、請求項37に記載のデバイス。
【請求項45】
患者の膀胱の治療方法であって、
患者の膀胱内に完全に薬物放出デバイスを埋め込む工程、および
膀胱の尿路上皮中に持続的な治療有効麻酔薬濃度を提供すると共に、麻酔薬の高い最高血漿中濃度を回避するように、前記薬物供給デバイスから局所麻酔薬を制御可能に放出する工程、
を含む、方法。
【請求項46】
前記麻酔薬がリドカインを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記尿路上皮中の麻酔薬濃度が、血漿中濃度より少なくとも1000倍高い、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記尿路上皮中の治療有効麻酔薬濃度が、1日間〜30日間持続する、請求項45〜47に記載の方法。
【請求項49】
患者の膀胱の治療方法であって、
患者の膀胱内に完全に薬物放出デバイスを埋め込む工程、および
膀胱の尿路上皮中に持続的な治療有効薬物濃度を提供すると共に、麻酔薬の高い最高血漿中濃度を回避するように、前記薬物供給デバイスから薬物を制御可能に放出する工程、
を含み、
前記薬物の半減期が、リドカインの半減期の25%に等しいか又は25%以内である、方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2011−505988(P2011−505988A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538164(P2010−538164)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/086467
【国際公開番号】WO2009/076547
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(591177277)マサチューセッツ インスチテュート オブ テクノロジー (6)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/086467
【国際公開番号】WO2009/076547
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(591177277)マサチューセッツ インスチテュート オブ テクノロジー (6)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【Fターム(参考)】
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