説明

膜ろ過システム

【課題】膜モジュールへ供給するポンプ動力を低減させ、トータルの運転コストを低減することができる膜ろ過システムを提供する。
【解決手段】原水槽2と、前処理膜モジュール3と、前処理膜モジュールの後段に設けられた高圧逆浸透膜モジュール6と、高圧逆浸透膜モジュールの後段に設けられた低圧逆浸透膜モジュール10と、容積式ポンプを有する前段の動力回収装置7と、容積式ポンプを有する後段の動力回収装置8と、前段および後段の動力回収装置7,8を連通させる連通ラインL7と、後段の動力回収装置8からの濃縮水を排出するためのドレインラインL8と、前処理膜モジュールにおける圧力損失に応じて後段の動力回収装置からの濃縮水の排出を調整する圧力調整弁V1と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載する実施の形態は、イオンや塩類のような溶質を含む汽水、海水、地下水、埋立地浸出水、産業廃水などを逆浸透膜モジュールによりろ過処理する膜ろ過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理分野において、イオンや塩類のような溶質を含む汽水、海水、地下水又は埋立地浸出水、産業廃水などから生活用水、工業用水や農業用水を得る方法として逆浸透膜モジュールによる膜ろ過が利用されている。逆浸透膜(RO膜)は、水分子を透過させ、イオンや塩類などの不純物を透過させない性質を有する膜であり、溶質濃度に応じた浸透圧以上の圧力をかけることにより水と溶質とを分離する。このようなRO膜を用いる膜ろ過システムでは、海水をRO膜モジュールに通して脱塩する前に、取水した海水中に含まれる濁度、藻類、微生物などの不溶解性成分を除去するために前処理を行う。この前処理には、砂充填層に海水を透過させる砂ろ過法が一般に用いられている。しかし、砂ろ過法は、RO膜モジュールの透過性能を維持するために、より清澄な前処理水を得ようとした場合に、除濁性能が低く効率的でない。
【0003】
水処理システムにおいて効率的な前処理法として精密ろ過膜(MF膜)及び/又は限外ろ過膜(UF膜)を有する膜モジュールが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−172462号公報
【特許文献2】特開2008−100219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来システムでは、RO膜モジュールの前処理にMF膜またはUF膜のような膜モジュールを用いると、そのMF膜/UF膜モジュール(前処理膜モジュール)に圧力を掛けて海水を供給するための圧力ポンプがさらに必要になる。このため、膜モジュールを前処理に用いるシステムでは、追加の圧力ポンプの動力費がさらに加算されるので、砂ろ過法を前処理に用いるシステムに比べて動力費が高くなり、トータルの運転コストが増大する。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、膜モジュールへ供給するポンプ動力を低減させ、トータルの運転コストを低減することができる膜ろ過システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の膜ろ過システムは、(A)溶質および不溶解性成分を含む原水が収容される原水槽と、(B)前記原水槽から供給される原水から不溶解性成分を分離除去する前処理膜モジュールと、(C)前記原水槽から前記前処理膜モジュールへ原水を供給するための原水供給ポンプを有する原水供給ラインと、(D)前記前処理膜モジュールの後段に設けられ、前処理水から溶質を分離除去し、膜透過水としての処理水と膜不透過水としての濃縮水とを提供する高圧逆浸透膜モジュールと、(E)前記高圧逆浸透膜モジュールの後段に設けられ、前記高圧逆浸透膜モジュールよりも低い圧力がかかり、前記高圧逆浸透膜モジュールを通過した処理水から残りの溶質を分離除去する低圧逆浸透膜モジュールと、(F)前記前処理水を前記高圧逆浸透膜モジュールに所定の高圧力で供給するための高圧ポンプを有する高圧ラインと、(G)前記濃縮水と前記前処理水の一部とがそれぞれ供給され、前記濃縮水の圧力を前記前処理水に伝達することにより該前処理水を加圧する容積式ポンプを有する前段の動力回収装置と、(H)前記前段の動力回収装置からの濃縮水と前記原水の一部とがそれぞれ供給され、前記濃縮水の残圧力を前記原水に伝達することにより該原水を加圧する容積式ポンプを有する後段の動力回収装置と、(I)前記高圧逆浸透膜モジュールから排出される濃縮水が流れ、排出される濃縮水の圧力を前記前段の動力回収装置の容積式ポンプに伝達する濃縮水排出ラインと、(J)前記前段の動力回収装置と前記後段の動力回収装置とを連通させ、前記前段の動力回収装置からの濃縮水が流れる連通ラインと、(K)前記高圧ラインから分岐して前記前段の動力回収装置に連通し、前記高圧逆浸透膜モジュールに供給されるべき前処理水の一部が流れる第1の圧力伝達ラインと、(L)前記原水供給ラインから分岐して前記後段の動力回収装置に連通し、前記前処理膜モジュールに供給されるべき原水の一部が流れる第2の圧力伝達ラインと、(M)前記後段の動力回収装置からの濃縮水を排出するためのドレインラインと、(N)前記ドレインラインに設けられ、前記前処理膜モジュールにおける圧力損失に応じて前記後段の動力回収装置からの濃縮水の排出を調整する圧力調整弁と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は第1実施形態の膜ろ過システムを示す構成ブロック図。
【図2】図2は前段の動力回収装置を含む流体回路を示すブロック回路図。
【図3】図3は流路を切り替えたときの前段の動力回収装置を含む流体回路を示すブロック回路図。
【図4】図4は後段の動力回収装置を含む流体回路を示すブロック回路図。
【図5】図5は圧力調整弁の開閉制御によるライン圧力の制御を説明するためのフローチャート。
【図6】図6は第2実施形態の膜ろ過システムを示す構成ブロック図。
【図7】図7は第3実施形態の膜ろ過システムを示す構成ブロック図。
【図8】図8は第4実施形態の膜ろ過システムを示す構成ブロック図。
【図9】図9は第5実施形態の膜ろ過システムを示す構成ブロック図。
【図10】図10は第6実施形態の膜ろ過システムを示す構成ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に種々の好ましい実施の形態を説明する。
【0010】
(1)実施形態の膜ろ過システムは、
(A)溶質および不溶解性成分を含む原水が収容される原水槽2と、
(B)前記原水槽から供給される原水から不溶解性成分を分離除去する前処理膜モジュール3と、
(C)前記原水槽から前記前処理膜モジュールへ原水を供給するための原水供給ポンプP1を有する原水供給ラインL2と、
(D)前記前処理膜モジュールの後段に設けられ、前処理水から溶質を分離除去し、膜透過水としての処理水と膜不透過水としての濃縮水とを提供する高圧逆浸透膜モジュール6と、
(E)前記高圧逆浸透膜モジュールの後段に設けられ、前記高圧逆浸透膜モジュールよりも低い圧力がかかり、前記高圧逆浸透膜モジュールを通過した処理水から残りの溶質を分離除去する低圧逆浸透膜モジュール10と、
(F)前記前処理水を前記高圧逆浸透膜モジュールに所定の高圧力で供給するための高圧ポンプP4を有する高圧ラインL5と、
(G)前記濃縮水と前記前処理水の一部とがそれぞれ供給され、前記濃縮水の圧力を前記前処理水に伝達することにより該前処理水を加圧する容積式ポンプ71,72を有する前段の動力回収装置7と、
(H)前記前段の動力回収装置からの濃縮水と前記原水の一部とがそれぞれ供給され、前記濃縮水の残圧力を前記原水に伝達することにより該原水を加圧する容積式ポンプ81,82を有する後段の動力回収装置8と、
(I)前記高圧逆浸透膜モジュールから排出される濃縮水が流れ、排出される濃縮水の圧力を前記前段の動力回収装置の容積式ポンプ71,72に伝達する濃縮水排出ラインL61と、
(J)前記前段の動力回収装置7と前記後段の動力回収装置8とを連通させ、前記前段の動力回収装置7からの濃縮水が流れる連通ラインL7と、
(K)前記高圧ラインL5から分岐して前記前段の動力回収装置7に連通し、前記高圧逆浸透膜モジュールに供給されるべき前処理水の一部が流れる第1の圧力伝達ラインL52と、
(L)前記原水供給ラインL2から分岐して前記後段の動力回収装置8に連通し、前記前処理膜モジュールに供給されるべき原水の一部が流れる第2の圧力伝達ラインL22と、
(M)前記後段の動力回収装置8からの濃縮水を排出するためのドレインラインL8と、
(N)前記ドレインラインL8に設けられ、前記前処理膜モジュールにおける圧力損失に応じて前記後段の動力回収装置からの濃縮水の排出を調整する圧力調整弁V1と、を有する。
【0011】
実施形態の膜ろ過システムでは、第1の圧力伝達ライン L52を介して高圧ポンプP4による前処理水の供給圧力が前段の動力回収装置7に伝達され、この伝達圧力が動力回収装置7により回収され、この回収圧力が第1の圧力伝達ラインL52を介して高圧逆浸透膜モジュールの上流側の高圧ラインL5を流れる前処理水に与えられる。また、連通ラインL7を介して前段の動力回収装置7から濃縮水の残圧力が後段の動力回収装置8に伝達され、この伝達圧力が動力回収装置8により回収される。この回収圧力が第2の圧力伝達ラインL22を介して前処理膜モジュール上流側の原水供給ラインL2を流れる原水に与えられる(図1、図4〜図10)。
【0012】
実施形態の膜ろ過システムによれば、前段の動力回収装置7で回収した圧力を逆浸透膜モジュールの上流側ラインに印加することにより高圧ポンプP4の動力を低減させるとともに、後段の動力回収装置8で回収した回収圧力を前処理膜モジュールの上流側ラインに印加することにより原水供給ポンプP1の動力を低減しているので、トータルのランニングコストを大幅に低減することができる。このとき、前処理膜モジュール3における圧力損失ΔPに応じて圧力調整弁V1を開閉制御し、後段の動力回収装置8から排出される濃縮水の圧力を調整することにより、後段の動力回収装置から伝達される回収圧力が調整され、その調整された回収圧力が付加されることによって原水の供給圧力が昇圧される。
【0013】
(2)上記(1)の膜ろ過システムにおいて、前記前処理膜モジュールの上流側の圧力P17を測定する第1の圧力計G1と、前記前処理膜モジュールの下流側の圧力P18を測定する第2の圧力計G2と、前記第1及び第2の圧力計の測定圧力から前記前処理膜モジュールの膜差圧ΔPを求め、求めた膜差圧ΔPが設定圧力値Pcより小さいか又は等しいときは前記圧力調整弁V1を開けて前記高圧逆浸透膜モジュールから排出される濃縮水の圧力を調整し、求めた膜差圧ΔPが設定圧力値Pcを超えるときは前記圧力調整弁V2を閉じたままにしておくコントローラ20と、をさらに有することが好ましい。
【0014】
実施形態の膜ろ過システムでは、第1の圧力計G1で前処理膜モジュールの上流側の圧力P17を測定し、第2の圧力計G2で前処理膜モジュールの下流側の圧力P18を測定し、両測定圧力P17,P18の差圧ΔPを求め、求めた膜差圧ΔPが所定の設定圧力値Pcより小さいか又は等しいときは圧力調整弁V1を開けて逆浸透膜モジュールから排出される濃縮水の圧力を所望の値に調整する(図5、図1)。なお、求めた膜差圧ΔPが所定の設定圧力値Pcを超えるときは圧力調整弁V1を閉じたままの状態で、上流側と下流側の圧力を再度測定し、膜差圧の算出を継続する。
【0015】
処理時間の経過とともに高圧逆浸透膜モジュールの一次側での濃縮水の溶質濃度が上昇すると、浸透圧が高まり、RO膜の負荷と高圧ポンプP4の負荷がともに過大になる。しかし、本実施形態の膜ろ過システムによれば、高圧逆浸透膜モジュールから濃縮水(ブライン)を適正な溶質濃度で排出することができ、RO膜や高圧ポンプP4に損傷を生じることなく高圧RO膜モジュールにおける処理効率を向上させることができる。
【0016】
(3)上記(1)の膜ろ過システムにおいて、前処理膜モジュールの後段に配置され、前処理膜モジュールを通過した前処理水を収容する処理水槽と、この処理水槽から高圧ポンプに前処理水を供給するための送水ポンプP3を有する送水ラインL4と、この送水ラインL4から分岐して前処理膜モジュールに連通し、送水ポンプP3の駆動により前処理水を前処理膜モジュール3に導く逆洗浄ラインL42と、をさらに有することが好ましい。
【0017】
本実施形態の膜ろ過システムでは、前処理水を処理水槽4内に一時的に収容し、切替弁により送水ラインL4から逆洗浄ラインL42に流路を切替え、送水ポンプP3の駆動により処理水槽4から逆洗浄ラインL42を通って前処理膜モジュール3へ前処理水を供給し、前処理水により前処理膜モジュール内のろ過膜を逆洗浄する(図4図6)。
【0018】
実施形態の膜ろ過システムによれば、システム外部から新たに逆洗浄用水を導入することなく、システム内で生じる前処理水を逆洗浄用水として利用できるため、低コストで前処理膜モジュール内のろ過膜を洗浄することができる。
【0019】
(4)上記(1)の膜ろ過システムにおいて、前記高圧ラインに接続され、前記前処理膜モジュールを通過した前処理水を前記高圧逆浸透膜モジュールに直接導く直送ラインL31と、前記高圧逆浸透膜モジュールを通過した処理水を収容する処理水槽9と、前記処理水槽から前記低圧逆浸透膜モジュールに前記処理水を供給するための送水ポンプP6を有する送水ラインL91と、前記送水ラインから分岐して前記前処理膜モジュールに連通し、前記送水ポンプの駆動により処理水を前処理膜モジュールに導く逆洗浄ラインL92と、をさらに有することが好ましい。
【0020】
実施形態の膜ろ過システムでは、高圧逆浸透膜モジュール6から処理水槽9へ直送ラインL31を介して逆浸透膜モジュールを通過した処理水を送り、処理水槽9内に一時的に処理水を収容し、通常処理を行う場合は送水ポンプP6の駆動により送水ラインL91を介して2段目以降の逆浸透膜モジュール10に処理水を送り、逆洗浄処理を行う場合は切替弁により送水ラインL91から逆洗浄ラインL92に流路を切替え、送水ポンプP6の駆動により逆洗浄ラインL92を介して前処理膜モジュール3に処理水を送り、前処理膜モジュール3のろ過膜を逆洗浄する(図7)。
【0021】
実施形態の膜ろ過システムによれば、システム外部から新たに逆洗浄用水を導入することなく、システム内で生じる前処理水を逆洗浄用水として利用できるため、低コストで前処理膜モジュール内のろ過膜を洗浄することができる。
【0022】
(5)上記(1)の膜ろ過システムにおいて、前記後段の逆浸透膜モジュール10が複数あり、これらのうちの最終段の逆浸透膜モジュール10を通過した生産水を収容する処理水槽11と、前記処理水槽から前記生産水を外部に送り出すための送水ポンプP7を有する送水ラインL111と、前記送水ラインから分岐して前記前処理膜モジュールに連通し、前記送水ポンプP7の駆動により前記処理水を前記前処理膜モジュールに導く逆洗浄ラインL112と、をさらに有することが好ましい。
【0023】
本実施形態の膜ろ過システムでは、生産水を処理水槽11内に一時的に収容し、送水ポンプP7の駆動により処理水槽11から逆洗浄ラインL112を通って前処理膜モジュール3へ生産水を供給し、生産水により前処理膜モジュール内のろ過膜を逆洗浄する(図8)。
【0024】
実施形態の膜ろ過システムによれば、システム外部から新たに逆洗浄用水を導入することなく、システム内で生産される生産水を逆洗浄用水として利用できるため、低コストで前処理膜モジュール内のろ過膜を洗浄することができる。
【0025】
(6)上記(1)の膜ろ過システムにおいて、前記高圧逆浸透膜モジュールから排出される濃縮水を収容する濃縮水槽23と、前記濃縮水槽から前記前処理膜モジュールに濃縮水を供給するための洗浄ポンプP8を有する逆洗浄ラインL82と、をさらに有することが好ましい。
【0026】
実施形態の膜ろ過システムでは、逆浸透膜モジュールから排出される濃縮水を濃縮水槽23内に一時的に収容し、洗浄ポンプP8の駆動により濃縮水槽23から逆洗浄ラインL82を通って前処理膜モジュール3へ濃縮水を供給し、濃縮水により前処理膜モジュール内のろ過膜を逆洗浄する(図9)。
【0027】
実施形態の膜ろ過システムによれば、システム外部から新たに逆洗浄用水を導入することなく、システム内で生じる濃縮水を逆洗浄用水として利用できるため、低コストで前処理膜モジュール内のろ過膜を洗浄することができる。
【0028】
(7)上記(1)の膜ろ過システムにおいて、温水を収容する温水槽と、前記前処理膜モジュール、前記高圧逆浸透膜モジュールおよび前記低圧逆浸透膜モジュールのうちの少なくとも1つから前記温水槽までの間に設けられ、前記前処理膜モジュール、前記高圧逆浸透膜モジュールおよび前記低圧逆浸透膜モジュールのうちの少なくとも1つに温水を供給するための送水ポンプを有する洗浄ラインと、予め設定された時間間隔でまたは予め設定された時刻のタイミングで前記送水ポンプの駆動を制御し、前記前処理膜モジュール、前記高圧逆浸透膜モジュールおよび前記低圧逆浸透膜モジュールのうちの少なくとも1つに温水を供給させるコントローラと、をさらに有することが好ましい。
【0029】
実施形態の膜ろ過システムでは、切替弁により送水ラインL111から逆洗浄ラインL112に流路を切替え、送水ポンプP7の駆動により温水槽27から逆洗浄ラインL112を通って前処理膜モジュール3へ温水を供給し、温水により前処理膜モジュール内のろ過膜を逆洗浄する(図10)。
【0030】
実施形態の膜ろ過システムによれば、通常の洗浄に加え定期的な頻度で通常の洗浄水よりも高い温度の温水で逆洗浄を行うことで、ろ過膜の目詰まりを短時間で効率よく解消することができ、前処理膜モジュールおよび逆浸透膜モジュールの圧力上昇を低減させ、トータルのランニングコストを低減することができる。
【0031】
以下、添付の図面を参照して種々の実施の形態をそれぞれ説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
図1〜図5を参照して第1の実施形態について説明する。
【0033】
図1に示すように、第1の実施形態の膜ろ過システム1は、原水槽2、原水供給ポンプP1、前処理膜モジュール3、第1の処理水槽4、送水ポンプP3、保安フィルタ5、高圧ポンプP4、1段目の高圧逆浸透膜モジュール6、第2の処理水槽9、低圧ポンプP6、2段目の低圧逆浸透膜モジュール10、第3の処理水槽11および送水ポンプP7を備えている。これらの装置や機器類は、主要ラインL1〜L11上に上流側から順に直列に配置されている。さらに、膜ろ過システム1は、周辺付帯設備としてコンプレッサC1、第1の圧力計G1、第2の圧力計G2、洗浄ポンプP2、前段の動力回収装置7、後段の動力回収装置8、ブースターポンプP5、圧力調整弁V1、各種バルブ(図示せず)およびコントローラ20を備えている。膜ろ過システム1はコントローラ20により統括的に制御されるようになっている。
【0034】
原水槽2は、海中に連通するラインL1を介して図示しない揚水ポンプの駆動により海中から汲み上げられた海水を原水として収容している。原水槽2の出口にはポンプP1を有する圧送ラインL2が接続され、原水供給ポンプP1の駆動によりラインL2を通って原水槽2から前処理膜モジュール3に原水が所定の圧力で圧送されるようになっている。
【0035】
前処理膜モジュール3は、内部を一次側と二次側とに仕切るMF膜またはUF膜を内蔵している。前処理膜モジュール3の一次側には、原水供給ラインL2、コンプレッサC1からの圧縮空気供給ラインおよび排出ラインL32がそれぞれ連通している。また、前処理膜モジュール3の二次側には直送ラインL31が連通している。原水は、原水供給ラインL2を通って前処理膜モジュール3内に導入され、MF膜またはUF膜を透過し、固形分(砂や浮遊物質など)が除去された前処理水として直送ラインL31を通って第1の処理水槽4に送られるようになっている。
【0036】
前処理膜モジュール3の上流側のラインL2に第1の圧力計G1が取り付けられている。第1の圧力計G1は、前処理膜モジュール3の上流側の圧力P17を測定し、その測定信号S1をコントローラ20に送るようになっている。また、前処理膜モジュール3の下流側のラインL31に第2の圧力計G2が取り付けられている。第2の圧力計G2は、前処理膜モジュール3の下流側の圧力P18を測定し、その測定信号S2をコントローラ20に送るようになっている。コントローラ20は、入力信号S1,S2に基づいて上流側測定圧力P17と下流側測定圧力P18をそれぞれ求め、両測定圧力P17,P18から差分ΔPを算出し、算出した差分ΔPに対応する制御信号S3を後述する圧力調整弁V1の駆動電源に送るようになっている。
【0037】
第1の処理水槽4は、前処理膜モジュール3で膜ろ過された前処理水を収容するための貯水槽である。第1の処理水槽4の出口は、ポンプP3を有する送水ラインL4に接続され、このラインL4を介して保安フィルタ5に連通している。また、第1の処理水槽4の下部にポンプP2を有する逆洗浄ラインL12が接続されている。この逆洗浄ラインL12は上記直送ラインL31の適所に接続されている。洗浄ポンプP2の駆動により第1の処理水槽4からの前処理水がラインL12→L31を通って前処理膜モジュール3の二次側に供給され、目詰まりしたMF膜またはUF膜が逆洗浄されるようになっている。
【0038】
保安フィルタ5は、第1の処理水槽4から高圧逆浸透膜モジュール6までの間に設けられ、高圧逆浸透膜モジュール6内に固形分などの異物が侵入しないようにするために、第1の処理水槽4から送られてくる前処理水から異物を除去するものである。保安フィルタ5の内部にはフィルタエレメントが充填され、保安フィルタ5の入口には送水ラインL4が接続され、保安フィルタ5の出口には高圧ラインL5が接続されている。
【0039】
高圧ポンプP4は、保安フィルタ5を通過した水を所定の高圧力P4(例えば6MPa)で高圧逆浸透膜モジュール6に供給するために高圧ラインL5に取り付けられている。高圧ポンプP4には往復ポンプや渦巻きポンプなど各種タイプのポンプを用いることができる。
【0040】
高圧逆浸透膜モジュール6は、内部を一次側と二次側とに仕切るRO膜を内蔵している。高圧逆浸透膜モジュール6の一次側には、高圧ラインL5およびブライン排出ラインL61がそれぞれ接続されている。高圧逆浸透膜モジュール6の二次側には、送水ラインL62が接続されている。
【0041】
高圧ラインL5は2つに分岐している。すなわち、高圧ポンプP4を経由して高圧逆浸透膜モジュール6に連通する主要ラインL5からラインL51が分岐している。この分岐ライン51は、図2と図3に示すように前段の動力回収装置7の容積式ポンプ71,72の高圧側チャンバ(ピストン72a,72bで仕切られたシリンダ71a,71b 内の一方側のスペース)に連通しており、ピストン72a,72b に前処理水(前処理された海水)からの圧力が伝達される第1の伝達ラインをなしている。
【0042】
また、他の第1の圧力伝達ラインL53が動力回収装置7のシリンダ71a,71bの低圧側チャンバ(ピストン72a,72bで仕切られたシリンダ71a,71b 内の他方側のスペース)に連通している。この圧力伝達ラインL53は、高圧逆浸透膜モジュール6の一次側に回収圧力を伝達するために、圧力伝達回路79および他の圧力伝達ラインL52を介して高圧ラインL5に合流している。ラインL52のブースターポンプP5は、前段の動力回収装置7による回収圧力の不足分の圧力を補うものであり、前段の動力回収装置7で必要十分な圧力を回収できる場合は省略してもよい任意の機器である。
【0043】
濃縮水排出ラインL61が前段の動力回収装置7の4ポート切替弁61に連通している。この濃縮水排出ラインL61は、高圧逆浸透膜モジュール6の一次側から排出される濃縮水(ブライン)を前段の動力回収装置7に導き、ブラインが保有する高い圧力がピストン72a,72bに伝達されるようになっている。
【0044】
連通ラインL7が、前段の動力回収装置7の4ポート切替弁61から後段動力回収装置8の4ポート切替弁62までの間に設けられている。この連通ラインL7は、前段の動力回収装置7から排出されるブラインの圧力エネルギを後段の動力回収装置8側の原水に回収させるための圧力伝達流路である。
【0045】
第2の圧力伝達ラインL22が、後段動力回収装置8の低圧側チャンバからポンプP1の下流側ラインL2までの間に設けられている。また、原水導入ラインL21が、ポンプP1の上流側ラインL2から後段の動力回収装置8の低圧側チャンバまでの間に設けられている。このラインL21から後段の動力回収装置8の低圧側チャンバに導入された原水は、ピストン82a,82bを介して高圧側チャンバの圧力流体(ブライン)から圧力エネルギが伝達され、この圧力エネルギを第2の圧力伝達ラインL22を通ってラインL2を流れる原水に与えるようになっている。
【0046】
ドレインラインL8が、後段動力回収装置8の高圧側チャンバから圧力調整弁V1を経由して図示しない濃縮水槽までの間に設けられている。なお、圧力調整弁V1の駆動電源はコントローラ20により制御されるようになっている。すなわち、コントローラ20から制御信号S3を受け取ると、圧力調整弁V1が開いてブラインが大気圧中に排出されるようになっている。なお、圧力制御信号S3は、2つの圧力測定信号S1,S2に基づいてコントローラ20により求めたものである。この詳細については図5を参照して後述する。
【0047】
高圧RO膜モジュール6の二次側空間は、送水ラインL62を介して第2の処理水槽9に連通している。すなわち、RO膜を透過した一次処理水が高圧RO膜モジュール6からラインL62を通って第2の処理水槽9に送られるようになっている。
【0048】
第2の処理水槽9は、高圧RO膜モジュール6で膜ろ過された一次処理水を収容するための貯水槽である。第2の処理水槽9の出口は、低圧ポンプP6を有するラインL9に接続され、このラインL9を介して低圧RO膜モジュール10の一次側に連通している。低圧ポンプP6は、高圧ポンプP4が流体に印加する所定の高圧力P4(6MPa)よりも低い圧力を流体に印加するものである。
【0049】
低圧RO膜モジュール10の二次側には2つのラインL101,L102がそれぞれ連通している。一方のラインL101は第1の処理水槽4に連通している。他方のラインL102は第3の処理水槽11に連通している。
【0050】
第3の処理水槽11は、低圧RO膜モジュール10で処理された生産水(低溶質濃度の処理水)を収容するための貯水槽である。第3の処理水槽11の出口は、送水ポンプP7を有するラインL11に接続され、このラインL11を介して図示しない生産水処理装置の淡水浄化槽に連通している。
【0051】
図2〜図4を参照して2段の動力回収装置を詳しく説明する。
【0052】
前段の動力回収装置7は、図2と図3に示すように、圧力制御弁PV1、4ポート切替弁61、1対の容積式ポンプ71,72、2組のロッド位置検出部(77a,78a),(77b,78b)、および4つの逆止弁CV1,CV2,CV3,CV4を含む圧力伝達回路79を備えている。これらは高圧RO膜モジュール6から排出される濃縮水の圧力P6を高圧RO膜モジュール6へ供給される前処理水に追加される追加圧力P11に変換する圧力変換部として機能するものである。これらのうち圧力制御弁PV1および4ポート切替弁61は、上述のコントローラ20により動作がそれぞれ制御されるようになっている。
【0053】
圧力制御弁PV1は、4ポート切替弁 61より上流のブライン排出ラインL61に設けられ、高圧RO膜モジュール6から排出されるブライン(高濃度海水)の圧力 P6を制限することで、4ポート切替弁61へ導出されるブライン圧力 P7を制御するものである。高圧RO膜モジュール6からのブライン排出圧力 P6は、RO膜を長期間使用することによりRO膜に詰まりを生じて減少する。圧力制御弁PV1は、このブライン排出圧力 P6の減少分を調整するために用いられる。コントローラ20が圧力制御弁PV1を制御することにより、前段の動力回収装置7から出力される前処理水の圧力 P11と高圧ポンプP4から出力される前処理水の圧力 P4とが常に等しくなるように制御されている。
【0054】
4ポート切替弁61は、ラインL61において圧力制御弁 PV1の下流側に配置され、コントローラ20からの制御信号に従って、容積式ポンプ71,72へのブラインの流入と、容積式ポンプ71,72からのブラインの排出とを切り替えるものである。なお、4ポート切替弁61を切り替える方式としては、空圧式、水圧式、油圧式およびソレノイドコイルによる方式等を用いることができる。
【0055】
1対の容積式ポンプ71,72は、ラインL61の圧力制御弁PV1および4ポート切替弁61を介して高圧RO膜モジュール6の一次側に連通接続されている。第1の容積式ポンプ 71と第2の容積式ポンプ 72とは実質的に同じ構成である。4ポート切替弁61によりポンプ71,72への入力流路が切り替えられ、第1の容積式ポンプ 71と第2の容積式ポンプ 72との間でブライン圧力 P7が交互に負荷されるようになっている。図2はブライン圧力 P7が第1の容積式ポンプ 71に負荷された状態を示す。図3はブライン圧力 P7が第2の容積式ポンプ 72に負荷された状態を示す。
【0056】
第1の容積式ポンプ71は、シリンダ 71a、ピストン 72a及びロッド 73aを備えている。シリンダ 71aは、密閉空間を形成するための円筒または角筒状の容器からなり、この容器には圧力流体の出入口とロッド 73aの挿通口との合計3つの開口部が形成されている。ピストン 72aは、シリンダ 71a内を往復摺動しうるように可動に支持され、シリンダ 71aの内部空間を第1の空間と第2の空間とに仕切っている。ピストン 72aの外周には図示しないシールリングが嵌め込まれ、シリンダ 71a内で第1の空間から第2の空間へ流体が漏れないように液密にシールされている。シリンダ 71aの第1の空間にはラインL61の4ポート切替弁61を通ってブラインが導入されるようになっている。シリンダ 71aの第2の空間にはラインL51を通って前処理水が供給されるようになっている。
【0057】
ロッド 73aは、一端が第2の空間側からピストン 72aに接合され、他端がシリンダ71aのシール孔を通って外方へ突出している。ロッド 73aがシリンダ71aの第2の空間側からピストン 72aに接合されているので、ピストン 72aがシリンダ71aの第2の空間に面する面積A2はピストン 72aがシリンダ71aの第1の空間に面する面積A1より小さい(A2<A1)。ここで、面積A1,A2の比率は、高圧RO膜モジュール6からのブラインの圧力、高圧ポンプP4からの前処理水の圧力、シリンダ 71aとピストン 72aとの間の摩擦力、及び、シリンダ 71aとロッド 73aとの間の摩擦力等に基づいて予め設定されている。
【0058】
圧力伝達回路79は、一方側が分岐ライン L51により保安フィルタ5に接続され、他方側がラインL53により各シリンダ 71a,71bに接続されている。この圧力伝達回路79は、第1の処理水槽4から保安フィルタ5を介して送水ポンプP3の駆動により前処理水が通流するループ状の回路と、このループ状回路に取り付けられた4つの逆止弁CV1,CV2,CV3,CV4とを備えている。これら4つの逆止弁CV1,CV2,CV3,CV4は、周囲の圧力差に応じてそれぞれ独立して開閉するものである。
【0059】
1対の検出部 77a,78aは、第1の容積式ポンプ 71のシリンダ 71aから外方に突出したロッド 73aの位置を検出する位置検出センサである。一方の検出部 77aは、ピストン 72aがシリンダ 71aの左端に近接したときにロッド 73aを検出できる位置に取り付けられている。他方の検出部 78aは、ピストン 72aがシリンダ 71aの右端に近接したときにロッド 73aが非検出となる位置に取り付けられている。一方の検出部 77aがロッド 73aを検出する状態となるか、または、他方の検出部 78aがロッド 73aを検出しない状態(非検出の状態)となった場合に、それらの信号がコントローラ 20に送られるようになっている。
【0060】
第2の容積式ポンプ 72の検出部 77b,78bは、上述した第1の容積式ポンプ 71の検出部 77a,78aと実質的に構成が同じであり、シリンダ 71bから突出したロッド 73bの位置を検出するものである。一方の検出部 77bがロッド 73bを検出するか、または、他方の検出部 78bがロッド 73bを検出しない状態(非検出の状態)となった場合に、それらの信号がコントローラ 20に送られるようになっている。
【0061】
前段の動力回収装置7の動作の概要を説明する。
【0062】
コントローラ 20は、第1の検出部 77a,78aから送られてくる信号に基づいて第1のシリンダ 71a内におけるピストン72aの位置を算出するとともに、第2の検出部 77b,78bから送られてくる信号に基づいて第2のシリンダ 71b内におけるピストン 72bの位置を算出する。コントローラ 20は、算出した第1及び第2のピストン 72bの位置に基づいて4ポート切替弁61に切り替え動作をさせるかさせないかを判定し、4ポート切替弁61に切り替え動作をさせる場合はその指令信号を切替弁61に送る。
【0063】
コントローラ 20は、検出部 77a,78bから検出信号を受けた場合は、第1のピストン 72aが第1のシリンダ 71aの左端近傍に位置し、第2のピストン 72bが第2のシリンダ 71bの右端近傍に位置すると判断し、切替弁61に対して信号を出力し、第1の容積式ポンプ 71からブラインを排水させるとともに、第2の容積式ポンプ 72へブラインを給水させる。この場合のブライン圧力の伝達経路は、モジュール6→ラインL61→切替弁61→第2のポンプ72→ラインL53→逆止弁CV3→ラインL52→ラインL5→モジュール6である(図3)。
【0064】
一方、コントローラ 20は、検出部 78a,77bから検出信号を受けた場合は、第1のピストン 72aがシリンダ 71aの右端近傍に位置し、第2のピストン 72bがシリンダ 71bの左端近傍に位置していると判断し、4ポート切替弁 61に対して信号を出力し、第1の容積式ポンプ 71へブラインを給水させるとともに、第2の容積式ポンプ 72からブラインを排水させる。この場合のブライン圧力の伝達経路は、モジュール6→ラインL61→切替弁61→第1のポンプ71→ラインL53→逆止弁CV2→ラインL52→ラインL5→モジュール6である(図2)。
【0065】
次に図4を参照して後段の動力回収装置8について説明する。
【0066】
後段の動力回収装置8は、連通ラインL7により前段の動力回収装置7に接続されている。すなわち、前段の動力回収装置7の切替弁61の出口が連通ラインL7を介して後段の動力回収装置8の切替弁62の入口に連通し、前段の動力回収装置7を通過したブラインの残圧力 P9が後段の動力回収装置8側の原水に伝達されるようになっている。
【0067】
後段の動力回収装置8は、4ポート切替弁62、1対の容積式ポンプ81,82、2組のロッド位置検出部(87a,88a),(87b,88b)、および4つの逆止弁CV5,CV6,CV7,CV8を含む圧力伝達回路89を備えている。これらはブラインの残圧力 P9を前処理膜モジュール3へ供給される原水に追加される追加圧力 P15に変換する圧力変換部として機能するものである。これらのうち4ポート切替弁62は、上述のコントローラ20により動作が制御されるようになっている。
【0068】
後段の動力回収装置8において、4ポート切替弁62は上述した前段の4ポート切替弁61と実質的に同じ構成であるが、容積式ポンプ81,82のほうは上述した前段の容積式ポンプ71,72とは異なる型式のものである。すなわち、容積式ポンプ81(82)は、両端に異径のピストン82a,84a(82b,84b)が取り付けられた連結ロッド83a(83b)を有している。第1の容積式ポンプ 81は、1組の大径シリンダ81a/ピストン82aと、1組の小径シリンダ85a/ピストン84aと、大径ピストン82aを小径ピストン84aに連結する連結ロッド83aと、を備えている。
【0069】
両シリンダ81a,85aは、密閉空間を形成するための円筒または角筒状の容器からなり、一方端が開口し、他方端が閉じている。両シリンダ81a,85aの開口部は対向している。シリンダ81a,85aには圧力流体(ブラインまたは原水)の出入口と連結ロッド83aの挿通口とが形成されている。
【0070】
連結ロッド83aの一端に大径ピストン82aが取り付けられ、ロッド83aの他端に小径ピストン84aが取り付けられている。すなわち、2つのピストン82a,84aが1本のロッド83aを共有している。連結ロッド83aの長手中央にドグ 86aが形成されている。大径ピストン82aはロッド83aに支持された状態で大径シリンダ81a内に摺動可能に配置され、小径ピストン84aはロッド83aに支持された状態で小径シリンダ85a内に摺動可能に配置されている。
【0071】
大径ピストン82aと大径シリンダ81aとで高圧側チャンバが形成されている。大径ピストン82aと大径シリンダ81aとの間には図示しないシール材が挿入されている。大径シリンダ81aの1つの開口は連通ラインL7に連通し、高圧側チャンバに前段の動力回収装置7からブラインが導入されるようになっている。この高圧側チャンバ内に導入されるブラインから圧力を受ける大径ピストン82aの面の面積はA3である。
【0072】
一方、小径ピストン84aと小径シリンダ85aとで低圧側チャンバが形成されている。小径ピストン84aと小径シリンダ85aとの間に図示しないシール材が挿入されている。小径シリンダ85aの1つの開口はラインL21に連通し、低圧側チャンバに原水槽2からの原水が導入されるようになっている。この低圧側チャンバ内に導入される原水から圧力を受ける小径ピストン84aの面の面積はA4である。面積A3は面積A4よりも大きい(A3>A4)。ここで、面積A3と面積A4との比率は、前段の動力回収装置7からのブラインの残圧力 P9、原水槽2からの原水の供給圧力 P16、ポンプP1からの原水供給圧力P17、大径シリンダ81aと大径ピストン82aとの間の摩擦力、および小径シリンダ85aと小径ピストン84aとの間の摩擦力等に基づいて予め設定されている。
【0073】
第2の容積式ポンプ 82は、1組の大径シリンダ81b/ピストン82bと、1組の小径シリンダ85b/ピストン84bと、大径ピストン82bを小径ピストン84bに連結する連結ロッド83bと、を備えている。
【0074】
両シリンダ 81b,85bは、密閉空間を形成するための円筒または角筒状の容器からなり、一方端が開口し、他方端が閉じている。両シリンダ 81b,85bの開口部は対向している。シリンダ 81b,85bには圧力流体(ブラインまたは原水)の出入口と連結ロッド83bの挿通口とが形成されている。
【0075】
連結ロッド83bの一端に大径ピストン82bが取り付けられ、ロッド83bの他端に小径ピストン84bが取り付けられている。すなわち、2つのピストン82b,84bが1本のロッド83bを共有している。連結ロッド83bの長手中央にドグ 86bが形成されている。大径ピストン82bはロッド83bに支持された状態で大径シリンダ81b内に摺動可能に配置され、小径ピストン84bはロッド83bに支持された状態で小径シリンダ85b内に摺動可能に配置されている。
【0076】
大径ピストン82bと大径シリンダ81bとで高圧側チャンバが形成されている。大径ピストン82bと大径シリンダ81bとの間に図示しないシール材が挿入されている。大径シリンダ81bの1つの開口はラインL8に連通し、第3の空間から圧力流体(ブライン)が排出されるようになっている。この第3の空間内に導入される圧力流体(ブライン)から圧力を受ける大径ピストン 82bの面の面積はA3である。
【0077】
一方、小径ピストン84bと小径シリンダ 85bとで低圧側チャンバが形成されている。小径ピストン84bと小径シリンダ 85bとの間に図示しないシール材が挿入されている。小径シリンダ 85bの1つの開口はラインL22に連通し、低圧側チャンバに原水槽2からの原水が導入されるようになっている。この低圧側チャンバ内に導入される原水から圧力を受ける小径ピストン84bの面の面積はA4である。面積A3は面積A4よりも大きい(A3>A4)。ここで、面積A3と面積A4との比率は、前段の動力回収装置7からのブラインの圧力 P9、送水ポンプP1からの原水の圧力 P17、大径シリンダ 81bと大径ピストン 82bとの間の摩擦力、および小径シリンダ85bと小径ピストン 84bとの間の摩擦力等に基づいて予め設定されている。
【0078】
第1組の検出部 87a,88aは、第1の連結ロッド83aにおけるドグ 86aの位置を検出するものである。一方の検出部 87aは、ピストン 84aがシリンダ 85aの左端に近接したときにドグ 86aが接触したことを検出できる位置に取り付けられている。他方の検出部 88aは、ピストン 82aがシリンダ 81aの右端に近接したときにドグ 86aが接触したことを検出できる位置に取り付けられている。検出部 87a,88aがドグ 86aを検出した場合、検出信号がコントローラ 20に送られ、これにより第1の容積式ポンプ 81における両ピストン 82a,84aの位置が把握される。
【0079】
第2組の検出部 87b,88bは、第2の連結ロッド83bに取り付けたドグ 86bの位置を検出するものである。第2組の検出部 87b,88bは、上述の第1組の検出部 87a,88aと同様の構成であり、ロッド83bにおけるドグ 86bの位置を検出するものである。検出部 87b,88bがドグ 86bを検出した場合、検出信号がコントローラ 20に送られ、これにより第2の容積式ポンプ 82における両ピストン 82b,84bの位置が把握される。
【0080】
コントローラ 20は、検出部 87a,88a,87b,88bからの検出信号に応じて切替弁 62に対して切替信号を出力するようになっている。すなわち、コントローラ 20は、検出部 87a,88bから検出信号を受けた場合は、ピストン 84aがシリンダ 85aの左端近傍に位置し、ピストン 82bがシリンダ 81bの右端近傍に位置すると判断する。そして、コントローラ 20は、第1の容積式ポンプ 81からブラインを排出するように、かつ、第2の容積式ポンプ 82へブラインを供給するように、切替弁 62に切替信号を送る。また、コントローラ 20は、検出部 88a,87bから検出信号を受けた場合は、ピストン 82aがシリンダ 81aの右端近傍に位置し、ピストン 84bがシリンダ 85bの左端近傍に位置すると判断する。そして、コントローラ 20は、第1の容積式ポンプ 81へブラインを供給するように、かつ、第2の容積式ポンプ 82からブラインを排出するように、切替弁 62に切替信号を送る。
【0081】
なお、上述した実施形態では2シリンダ方式の動力回収装置を用いる場合を説明したが、動力回収装置はこれらの構造のみに限定されるものではなく、3シリンダ方式とすることもできる。また、実施形態の動力回収装置では圧力伝達機構としてピストンロッドを用いる場合を説明したが、これ以外の圧力伝達機構としてクランクシャフトを用いることもできる。
【0082】
後段の動力回収装置8の動作の概要を説明する。
【0083】
コントローラ 20は、第1の検出部 87a,88aから送られてくる信号に基づいて第1及び第2のシリンダ 81a,85a内における第1及び第2のピストン 82a,85aの位置をそれぞれ算出するとともに、第2の検出部 87b,88bから送られてくる信号に基づいて第3及び第4のシリンダ 81b,85b内における第3及び第4のピストン 82b,84bの位置をそれぞれ算出する。コントローラ 20は、これらの算出したピストン 82a,84a, 82b,84bの位置に基づいて4ポート切替弁62に切り替え動作をさせるかさせないかを判定し、4ポート切替弁62に切り替え動作をさせる場合はその指令信号を切替弁62に送る。
【0084】
コントローラ 20は、検出部 87a,88bから検出信号を受けた場合は、第1のピストン 82aがシリンダ 81aの右端近傍に位置し、第4のピストン 84bがシリンダ 85bの左端近傍に位置していると判断し、4ポート切替弁 62に対して信号を出力し、第1の容積式ポンプ 81へブラインを給水させるとともに、第2の容積式ポンプ 82からブラインを排水させる。この場合のブライン圧力の伝達経路は、動力回収装置7→ライン L7→切替弁62→第1のポンプ81→ラインL23→逆止弁CV6→ラインL22→ラインL2→モジュール3である(図4)。
【0085】
一方、コントローラ 20は、検出部 88a,87bから検出信号を受けた場合は、第2のピストン 84aが第2のシリンダ 85aの左端近傍に位置し、第3のピストン 82bが第3のシリンダ 81bの右端近傍に位置すると判断し、切替弁62に対して信号を出力し、第1の容積式ポンプ 81からブラインを排水させるとともに、第2の容積式ポンプ 82へブラインを給水させる。この場合のブライン圧力の伝達経路は、動力回収装置7→ライン L7→切替弁62→第2のポンプ82→ラインL23→逆止弁CV7→ラインL22→ラインL2→モジュール3である。
【0086】
次に、実施形態の膜ろ過システムの作用の概要を説明する。
【0087】
原水はポンプP1により前処理膜モジュール3に所定圧力P17で供給され、MF膜またはUF膜を透過して溶質の一部が除去された前処理水となり、第1の処理水槽4に貯留される。送水ポンプP3により、高圧ポンプP4および前段の動力回収装置7へ第1の処理水槽4の前処理水を送水し、高圧ポンプP4は水を所定の高圧力P4(6MPa程度)まで昇圧して高圧RO膜モジュール6へ送水する。高圧RO膜モジュール6は、原水に含まれるイオンや塩類などの溶質を除去し、溶質濃度を低下させた一次処理水を生成する。生成された一次処理水は第2の処理水槽9に貯留される。さらに良好な水質の水を得るために、低圧ポンプP6により第2の処理水槽9の水を低圧RO膜モジュール10に送水する。低圧RO膜モジュール10では水中に残留するイオンや塩類などの溶質をさらに除去し、溶質濃度を大幅に低下させた二次処理水(生産水)を生成する。生成された生産水は第3の処理水槽11に貯留される。
【0088】
一方、高圧RO膜モジュール6から排出されるブライン(濃縮海水)は、前段の動力回収装置7へ送られる。前段の動力回収装置7は、第1の容積式ポンプ 71にブラインが給水され、第2の容積式ポンプ 72からブラインが排水される状態となっている。前段の動力回収装置7では、ブラインの圧力を回収し、回収した圧力をラインL53→圧力伝達回路79→ラインL52→高圧ラインL5の経路を通って前処理水へ伝達する。この回収圧力が付加された前処理水は、ブースターポンプP5によりさらに昇圧され、高圧ラインL5の高圧の前処理水を押す。
【0089】
一方、保安フィルタ5からの前処理水は、主要ラインL5を通って例えば0.2MPaで高圧ポンプP4へ供給されると共に、分岐ラインL5から逆止弁CV4を通過して、第2の容積式ポンプ 72のシリンダの第2の空間へ供給される(図2)。
【0090】
高圧ポンプP4で例えば6.0MPaに昇圧された前処理水は、前段の動力回収装置7からの前処理水と合流され、高圧RO膜モジュール6へ導入される。このとき、前段の動力回収装置7からの前処理水は、第1の容積式ポンプのシリンダ71aの第2の空間から排出され、逆止弁 CV2を通過したものである。高圧RO膜モジュール6は、処理水とブラインとを排出する。
【0091】
高圧RO膜モジュール6から排出されたブラインは、圧力制御弁 PV1と切替弁61を通過し、第1の容積式ポンプのシリンダ 71aの第1の空間へ流入する。このとき、第1の容積式ポンプのシリンダ 71aの第2の空間には前処理水が充填されている。ブラインは、シリンダ 71a内にあるピストン 72aを第2の空間方向へ押し、前処理水を加圧しながら第2の空間から排出させる。
【0092】
ここで、ピストン 72aが第1の空間に面する面積がA1であり、ピストン 72aが第2の空間に面する面積がA2であることから、シリンダ 71aの第2の空間から排出される前処理水の圧力 P8は、切替弁61からのブライン圧力 P7を用いて、P8=P7×(A1/A2)となる。これにより、圧力P8は、高圧RO膜モジュール6に導入される圧力P4と同等か少し高い圧力となる。
【0093】
保安フィルタ5からの前処理水は、逆止弁CV4を通過して第2の容積式ポンプ 72のシリンダ71bの第2の空間へ流入する。このとき、第2の容積式ポンプ 72のシリンダ71bの第1の空間にはブラインが充填されている。
【0094】
第4の逆止弁CV4を通過した前処理水は、例えば0.2MPaの圧力を有し、シリンダ 71b内にあるピストン 72bを第1の空間方向へ押す。ピストン 72bが第1の空間方向へ移動することにより、4ポート切換弁 61を介してシリンダ 71bの第1の空間からブラインを排出させる。
【0095】
これにより、上記の動作が持続された場合、一方のピストン 72aはシリンダ 71aの左端へ近接し、他方のピストン 72bはシリンダ 71bの右端へ近接する。すると、第1の検出部 77aにロッド 73aが接触し、その検出信号(接触信号)がコントローラ 20に送られる。また、第4の検出部 78bからロッド 73aが離れ、その検出信号(非接触信号)がコントローラ 20に送られる。コントローラ 20は、第1及び第4の検出部 77a,78bからの検出信号を受信すると、ブラインの流入及び排出の方向を切り換えるように4ポート切替弁61に対して制御信号を送る。これによりブラインの流入と排出が切り替わり、矢印方向にピストン 72a,72bが動く。すなわち、図3に示すように、第2の容積式ポンプ 72にブラインが導入され、第1の容積式ポンプ 71からブラインが排出される。
【0096】
高圧RO膜モジュール6から排出されたブラインは、圧力制御弁 PV1および4ポート切替弁 61をそれぞれ通過し、第2の容積式ポンプ 72のシリンダ 71bの第1の空間へ流入する。このとき、第2の容積式ポンプ 72のシリンダ 71bの第2の空間には前処理水が充填されている。ブラインはシリンダ 71b内にあるピストン 72bを第2の空間方向へ押し、前処理水を加圧しながら第2の空間からブラインを排出させる。
【0097】
第2のピストン 72bが第1の空間に面する面積がA1であり、第2のピストン 72bが第2の空間に面する面積がA2であることから、シリンダ 71bの第2の空間から排出される前処理水の圧力 P10は、4ポート切換弁 61からのブラインの圧力 P7を用いて、P10=P7×(A1/A2)となる。これにより、圧力 P10は、RO膜モジュール6に導入される圧力 P4と同等か少し高い圧力となる。
【0098】
前段の動力回収装置7で圧力を回収されたブラインは、さらに後段の動力回収装置8に送られる。後段の動力回収装置8ではブラインの残圧力 P9が回収され、回収した圧力をポンプP1の下流ライン L2の原水に伝達する。この追加圧力が付加された原水は、前処理膜モジュール3へ送られる。このとき原水の昇圧は、第1の圧力計G1で測定した膜モジュール3の上流側の測定圧力P17と第2の圧力計G2で測定した膜モジュール3の下流側の測定圧力P18との差分(膜間差圧)ΔPに応じて圧力調整弁V1を制御し、前処理膜モジュール3へ原水を供給するために必要な圧力を得る。ここで、圧力調整弁V1の一端は、大気開放されているため、第2の容積式ポンプ 72のシリンダ71bの第1の空間のゲージ圧はほぼ零である。第4の逆止弁CV4を通過した前処理水は、例えば0.2MPaの圧力を有し、シリンダ 71b内にあるピストン 72bを第1の空間方向へ移動させる。前処理水はピストン 72bを第1の空間方向へ押し、第1の空間からブラインを排出させる。
【0099】
また、所定の間隔で定期的に洗浄ポンプP2を駆動させ、逆洗浄ラインL12を介して第1の処理水槽4の前処理水を前処理膜モジュール3に逆流させ、モジュール内のMF膜またはUF膜を逆洗浄する。このときコンプレッサC1から膜モジュール3内に圧縮空気を供給するバブリングを併用するようにしてもよい。
【0100】
次に図5を参照して圧力調整弁V1の動作の概要について説明する。
【0101】
ポンプP1を起動して原水槽2から前処理膜モジュール3への原水の供給を開始する。ポンプP3を起動して第1の処理水槽4から保安フィルタ5への前処理水の供給を開始し、さらに、ブースターポンプP5を起動して動力回収ラインL52に保安フィルタ5を通過した水を供給した後、高圧ポンプP4を起動して保安フィルタ5を通過した水に高圧を印加して高圧RO膜モジュール6に供給するとともに、ブースターポンプP5により圧力伝達ラインL52を通過する流体に補充圧力を印加して処理を開始する(工程K1)。処理開始時の圧力調整弁V1は開いた状態にある。
【0102】
圧力調整弁V1を閉じた後に(工程K2)、第1の圧力計G1により前処理膜モジュール3の上流側の圧力P17を測定する(工程K3)。圧力調整弁V1を閉じた後に(工程K2)、第2の圧力計G2により前処理膜モジュール3の下流側の圧力P18を測定する(工程K4)。コントローラ20は、両測定圧力P17,P18間の差圧ΔPを算出し(工程K5)、算出した差圧ΔPを予め設定された許容圧力Pcと比較し、差圧ΔPが許容圧力Pc以下であるか否かを判定する(工程K6)。求めた膜差圧ΔPが所定の設定圧力値Pcより小さいか又は等しいときは圧力調整弁V1を開けて高圧RO膜モジュール6から排出されるブライン圧力P6を所望の値に調整する。なお、求めた膜差圧ΔPが所定の設定圧力値Pcを超えるときは圧力調整弁V1を閉じたままの状態で、上流側の圧力P17と下流側の圧力P18を再度測定し、膜差圧ΔPの算出を継続する。すなわち、工程K6の判定結果がNOのときは、上記工程K2の前に戻り、工程K2〜K6の動作を繰り返す。工程K6の判定結果がYES(ΔP≦Pc)のときは、圧力調整弁V1を開け(工程K7)、工程K2の後に戻り、工程K3〜K6の動作を繰り返す。
【0103】
前処理膜モジュール3の逆洗浄操作について説明する。
【0104】
所定の時間間隔で洗浄ポンプP2を定期的に駆動させ、逆洗浄ラインL12を介して第1の処理水槽4の前処理水を前処理膜モジュール3に逆流させ、前処理膜モジュール3内のMF膜またはUF膜を逆洗浄する。このときコンプレッサC1から膜モジュール3内に圧縮空気を供給するバブリングを併用する。これによりMF膜またはUF膜に付着した固形分などの異物が除去され、膜の目詰まりが解消される。
【0105】
本実施形態の膜ろ過システムによれば、逆浸透膜モジュールへ供給するポンプ動力を低減させるとともに、前処理膜モジュールへ供給するポンプ動力を低減させることができ、トータルのランニングコストを低減することができる。
【0106】
(第2の実施形態)
次に図4を参照して第2の実施形態の膜ろ過システムを説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0107】
第2の実施形態の膜ろ過システム1Aは、上記第1実施形態のシステム1から洗浄ポンプP2を省略した構成となっている。その代わりとして、逆洗浄ラインL42が送水ポンプP3の直ぐ下流側から前処理膜モジュール3の二次側までの間に設けられている。
【0108】
本実施形態では、送水ポンプP3の駆動力により逆洗浄ラインL42を通って第1の処理水槽4から前処理膜モジュール3へ前処理水を送り、膜モジュール3内のMF膜またはUF膜を逆洗浄する。
【0109】
本実施形態によれば、逆洗浄に専用の洗浄ポンプを省略することにより、トータルの装置コストとランニングコストを低減することができる。
【0110】
(第3の実施形態)
次に図5を参照して第3の実施形態の膜ろ過システムを説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0111】
第3の実施形態の膜ろ過システム1Bは、上記第1実施形態のシステム1から第1の処理水槽4、洗浄ポンプP2、送水ポンプP3、保安フィルタ5を省略した構成となっている。その代わりとして、逆洗浄ラインL92が低圧ポンプP6の直ぐ下流側から前処理膜モジュール3の二次側までの間に設けられている。
【0112】
本実施形態では、低圧ポンプP6の駆動力により逆洗浄ラインL92を通って処理水槽9から前処理膜モジュール3へ一次処理水を送り、膜モジュール3内のMF膜またはUF膜を逆洗浄する。
【0113】
本実施形態によれば、第1の処理水槽4、洗浄ポンプP2、送水ポンプP3、保安フィルタ5を省略することにより、トータルの装置コストとランニングコストを低減することができる。
【0114】
(第4の実施形態)
次に図6を参照して第4の実施形態の膜ろ過システムを説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0115】
第4の実施形態の膜ろ過システム1Cは、上記第1実施形態のシステム1から第1の処理水槽4、洗浄ポンプP2、送水ポンプP3、保安フィルタ5を省略した構成となっている。その代わりとして、逆洗浄ラインL112が送水ポンプP7の直ぐ下流側から前処理膜モジュール3の二次側までの間に設けられている。
【0116】
本実施形態では、送水ポンプP7の駆動力により逆洗浄ラインL112を通って処理水槽11から前処理膜モジュール3へ生産水を送り、膜モジュール3内のMF膜またはUF膜を逆洗浄する。
【0117】
本実施形態によれば、第1の処理水槽4、洗浄ポンプP2、送水ポンプP3、保安フィルタ5を省略することにより、トータルの装置コストとランニングコストを低減することができる。
【0118】
(第5の実施形態)
次に図7を参照して第5の実施形態の膜ろ過システムを説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0119】
第5の実施形態の膜ろ過システム1Dは、上記第1実施形態のシステム1に濃縮水槽23、洗浄ポンプP8および逆洗浄ラインL82を追加した構成となっている。
【0120】
本実施形態では、洗浄ポンプP8の駆動力により逆洗浄ラインL82を通って濃縮水槽23から前処理膜モジュール3へ生産水を送り、膜モジュール3内のMF膜またはUF膜を逆洗浄する。
【0121】
本実施形態によれば、ろ過膜を濃縮水で洗浄することでシステムの回収率を向上させ、トータルのランニングコストを低減することができる。
【0122】
(第6の実施形態)
図8を参照して第6の実施形態の膜ろ過システムを説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0123】
第6の実施形態の膜ろ過システム1Eは、上記第1実施形態のシステム1にヒータ28付き温水槽27および洗浄ラインL112,L121,L122,L123を加えた構成となっている。なお、温水を製造する手段としてはヒータ28の代わりに省エネ型のヒートポンプや自然エネルギを用いてもよい。
【0124】
本実施形態では、送水ポンプP7の駆動力により第3の処理水槽11から温水槽27へ生産水を送り、さらに洗浄ラインL112,L123を通って前処理膜モジュール3へ温水を送りMF膜モジュールまたはUF膜モジュールを通常の洗浄に加え定期的な頻度で通常の洗浄水よりも高い温度の水で逆通水を行う。また、送水ポンプP7の駆動力により第3の処理水槽11から温水槽27へ生産水を送り、洗浄ラインL112,L122を通って1段目の逆浸透膜モジュール6へ温水を送り、RO膜を洗浄するとともに、洗浄ラインL112,L121を通って2段目の逆浸透膜モジュール10へ温水を送り、RO膜を洗浄する。
【0125】
本実施形態によれば、MF膜またはUF膜およびRO膜を温水で洗浄することでシステムの回収率を向上させ、トータルのランニングコストを低減することができる。
【0126】
本発明によれば、原水供給ポンプおよび高圧ポンプの動力を低減させ、トータルのランニングコストを低減することができる。
【符号の説明】
【0127】
1,1A,1B,1C,1D,1E…膜ろ過システム、2…原水槽、
3…前処理膜モジュール(MF膜モジュールまたはUF膜モジュール)、
4,9,11…処理水槽、5…保安フィルタ、
6,10…逆浸透膜モジュール、7,8…動力回収装置、
20…コントローラ、
23…濃縮水槽、27…温水槽、28…ヒータ、
61,62…切替弁、71,72,81,82…容積式ポンプ、
P1…原水供給ポンプ、P2…洗浄ポンプ、P3…送水ポンプ、
P4…高圧ポンプ、P5…ブースターポンプ、P6…低圧ポンプ、
P7…送水ポンプ、P8…洗浄ポンプ、
L12,L42,L82,L92,L112…逆洗浄ライン、
L2…圧送ライン、L22…第2の圧力伝達ライン、L31…直送ライン、
L52…第1の圧力伝達ライン、L61…濃縮水排出ライン、
L5…高圧ライン、
G1…第1の圧力計、G2…第2の圧力計、
C1…コンプレッサ、V1…圧力調整弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)溶質および不溶解性成分を含む原水が収容される原水槽と、
(B)前記原水槽から供給される原水から不溶解性成分を分離除去する前処理膜モジュールと、
(C)前記原水槽から前記前処理膜モジュールへ原水を供給するための原水供給ポンプを有する原水供給ラインと、
(D)前記前処理膜モジュールの後段に設けられ、前処理水から溶質を分離除去し、膜透過水としての処理水と膜不透過水としての濃縮水とを提供する高圧逆浸透膜モジュールと、
(E)前記高圧逆浸透膜モジュールの後段に設けられ、前記高圧逆浸透膜モジュールよりも低い圧力がかかり、前記高圧逆浸透膜モジュールを通過した処理水から残りの溶質を分離除去する低圧逆浸透膜モジュールと、
(F)前記前処理水を前記高圧逆浸透膜モジュールに所定の高圧力で供給するための高圧ポンプを有する高圧ラインと、
(G)前記濃縮水と前記前処理水の一部とがそれぞれ供給され、前記濃縮水の圧力を前記前処理水に伝達することにより該前処理水を加圧する容積式ポンプを有する前段の動力回収装置と、
(H)前記前段の動力回収装置からの濃縮水と前記原水の一部とがそれぞれ供給され、前記濃縮水の残圧力を前記原水に伝達することにより該原水を加圧する容積式ポンプを有する後段の動力回収装置と、
(I)前記高圧逆浸透膜モジュールから排出される濃縮水が流れ、排出される濃縮水の圧力を前記前段の動力回収装置の容積式ポンプに伝達する濃縮水排出ラインと、
(J)前記前段の動力回収装置と前記後段の動力回収装置とを連通させ、前記前段の動力回収装置からの濃縮水が流れる連通ラインと、
(K)前記高圧ラインから分岐して前記前段の動力回収装置に連通し、前記高圧逆浸透膜モジュールに供給されるべき前処理水の一部が流れる第1の圧力伝達ラインと、
(L)前記原水供給ラインから分岐して前記後段の動力回収装置に連通し、前記前処理膜モジュールに供給されるべき原水の一部が流れる第2の圧力伝達ラインと、
(M)前記後段の動力回収装置からの濃縮水を排出するためのドレインラインと、
(N)前記ドレインラインに設けられ、前記前処理膜モジュールにおける圧力損失に応じて前記後段の動力回収装置からの濃縮水の排出を調整する圧力調整弁と、
を有することを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項2】
前記前処理膜モジュールの上流側の圧力を測定する第1の圧力計と、
前記前処理膜モジュールの下流側の圧力を測定する第2の圧力計と、
前記第1及び第2の圧力計の測定圧力から前記前処理膜モジュールの膜差圧ΔPを求め、求めた膜差圧ΔPが設定圧力値Pcより小さいか又は等しいときは前記圧力調整弁を開けて前記高圧逆浸透膜モジュールから排出される濃縮水の圧力を調整し、求めた膜差圧ΔPが設定圧力値Pcを超えるときは前記圧力調整弁を閉じたままにしておくコントローラと、
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の膜ろ過システム。
【請求項3】
前記前処理膜モジュールの後段に配置され、前記前処理膜モジュールを通過した前処理水を収容する処理水槽と、
前記処理水槽から前記高圧ポンプに前記前処理水を供給するための送水ポンプを有する送水ラインと、
前記送水ラインから分岐して前記前処理膜モジュールに連通し、前記送水ポンプの駆動により前記前処理水を前記前処理膜モジュールに導く逆洗浄ラインと、
をさらに有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の膜ろ過システム。
【請求項4】
前記高圧ラインに接続され、前記前処理膜モジュールを通過した前処理水を高圧逆浸透膜モジュールに直接導く直送ラインと、
前記高圧逆浸透膜モジュールを通過した処理水を収容する処理水槽と、
前記処理水槽から前記低圧逆浸透膜モジュールに前記処理水を供給するための送水ポンプを有する送水ラインと、
前記送水ラインから分岐して前記前処理膜モジュールに連通し、前記送水ポンプの駆動により前記処理水を前記前処理膜モジュールに導く逆洗浄ラインと、
をさらに有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の膜ろ過システム。
【請求項5】
前記後段の逆浸透膜モジュールが複数あり、これらのうちの最終段の逆浸透膜モジュールを通過した生産水を収容する処理水槽と、
前記処理水槽から前記生産水を外部に送り出すための送水ポンプを有する送水ラインと、
前記送水ラインから分岐して前記前処理膜モジュールに連通し、前記送水ポンプの駆動により前記処理水を前記前処理膜モジュールに導く逆洗浄ラインと、
をさらに有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の膜ろ過システム。
【請求項6】
前記逆浸透膜モジュールから排出される濃縮水を収容する濃縮水槽と、
前記濃縮水槽から前記前処理膜モジュールに濃縮水を供給するための洗浄ポンプを有する逆洗浄ラインと、
をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の膜ろ過システム。
【請求項7】
温水を収容する温水槽と、
前記前処理膜モジュール、前記高圧逆浸透膜モジュールおよび前記低圧逆浸透膜モジュールのうちの少なくとも1つから前記温水槽までの間に設けられ、前記高圧逆浸透膜モジュールおよび前記低圧逆浸透膜モジュールのうちの少なくとも1つに温水を供給するための送水ポンプを有する洗浄ラインと、
予め設定された時間間隔でまたは予め設定された時刻のタイミングで前記送水ポンプの駆動を制御し、前記高圧逆浸透膜モジュールおよび前記低圧逆浸透膜モジュールのうちの少なくとも1つに温水を供給させるコントローラと、
をさらに有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の膜ろ過システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−81462(P2012−81462A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198323(P2011−198323)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】