説明

膜モジュール洗浄システム

【課題】処理後の水の取り出しラインが薬品によって汚染されるのを防止する。
【解決手段】夫々の膜分離ユニット30に対して、処理水を取り出す複数の共通ヘッダー40が配設され、夫々の共通ヘッダー40の所定の部分に接続継ぎ手42a及び42bが配設されている。この洗浄システムはさらに、42a又は42bと接続可能な接続継ぎ手110が接続継ぎ手42a又は42bに対して移動して結合可能である配管接続装置100と、接続継ぎ手110に可撓性配管105を介して接続された薬剤タンク2100a,2100bと、共通ヘッダー40にバルブ50,52を介して接続された処理済み水タンク2000と、を備える。指定された膜分離ユニット30の膜モジュール31を薬剤で洗浄するときのみ、配管接続装置100は、その指定された膜分離ユニット30に42a又は42bを介して110を接続し、かつ、バルブ50,52を閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜モジュール(膜分離ユニットとも呼ばれる。)を用いる膜分離活性汚泥法を利用して廃水を処理する廃水処理設備に関するものである。より詳しくは、膜モジュールが内設された活性汚泥槽と、膜モジュールを洗浄する薬剤を供給する薬剤供給ラインとを接続して膜モジュールの洗浄を行う膜モジュール洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
活性汚泥槽内に膜モジュールを設置し、その膜モジュール下部近傍へ外部からのブロワーで空気を供給して、活性汚泥槽内の活性汚泥へ酸素を供給することにより、活性汚泥を含む水を膜モジュールに通し廃水処理を行う膜分離活性汚泥処理法が広く用いられている(特許文献1等)。
【0003】
この膜分離活性汚泥処理方法として、分離型と称される方法がある。この方法では、標準活性汚泥槽(以下では標準槽と称する)と、膜モジュールが内部に設置されている膜分離活性汚泥槽(以下では膜分離槽と称する)とで構成されている。
【0004】
標準槽内には膜モジュールは設置されておらずに、空気供給ラインのみが該槽内部の底部近傍に設置されている。一方、標準槽とは別に、膜分離ユニットを内部に含む膜分離槽が設けられている。膜分離槽は標準槽とほぼ同じ大きさとされるが、その内部は隔壁で区画されており、個々の区画内に複数個の膜モジュールが設置される。
【0005】
通常の運転時には、膜分離槽の底部に供給される空気ラインを用いて活性汚泥に大気(酸素)を供給し、廃水の処理が行われる。膜モジュールを通過して得られる処理水(清浄水)は、膜モジュール上部で集約されてヘッダーを通して系外へ取り出される。図6に示す従来例によると、膜分離槽101の底部に空気ライン102によって大気が供給され、膜モジュール103で廃水処理された後の清浄な水は配管104を通り、膜分離槽101の外に配置された清浄水タンク105に貯留される。
【0006】
膜分離ユニットは膜分離槽に浸漬されて、膜分離ユニット周囲に空気の泡が常時流動している。しかし、廃水処理を継続すると膜モジュールの外側表面に汚泥が付着して処理性能の低下(膜モジュールの目の閉塞による流量低下)を招く。このために、以下のような各種の洗浄が必要とされる。
【0007】
1)膜モジュールの外側に汚泥が付着することで目詰まりを起こすために、比較的に短い時間間隔で逆洗浄を行って目詰まりを防止する。一例では、この逆洗浄は、約10分毎に行われる。逆洗浄時の継続時間は約1分程度とされる。このときの逆洗浄には清浄水タンクに貯留されている処理済み水の一部が用いられる。この運転は、バルブによる切替えにより実現される。図6を参照すると、配管104に三方バルブ106が設置され、三方バルブ106と膜分離槽101の間の配管部分104aに、清浄水タンク105内の清浄水を送る配管107が接続されている。この配管107にも三方バルブ108が設置され、三方バルブ106,108同士が圧送ポンプ109を有する配管110で接続されている。上記のような逆洗浄時には、清浄水が洗浄水タンク105から配管107、圧送ポンプ109および配管部分104aを経由して膜モジュール103へ送られるように、圧送ポンプ109が動作されるとともに三方バルブ106,108が切替えられる。
【0008】
2)また比較的長期には膜モジュールの外側表面への微生物、有機物、スケール、コロイド、たんぱく質などが付着(ファウリング)するために、処理性能が劣化する。このために、定期的に膜モジュールの外側表面を薬剤にて清浄化処理する必要がある。
【0009】
この薬剤洗浄は、概ね3カ月に1回程度の頻度でインラインにて行われる。この作業はインライン洗浄と呼ばれる。この洗浄では、例えば次亜塩素酸ナトリウムなどが用いられる。次亜塩素酸ナトリウムを失活させる必要がある場合には、重亜硫酸ソーダーが用いられる。このときに、薬剤を希釈するために、清浄水タンクに貯留されている処理済み水の一部が用いられる。図6を参照すると、複数の薬剤ごとに薬剤タンク111,112等が用意され、それぞれの薬剤タンク111,112から上記の配管部分104aへ薬剤供給用の配管113,114が設けられている。薬剤供給用の配管113,114は二方向バルブ115,116を介して配管部分104aと接続されている。さらに、それぞれの配管113,114は圧送ポンプ117,118を介して清浄水タンク105と接続されている。上記のような薬剤洗浄時には、二方向バルブ115または116を開き、薬剤タンク111または112から膜分離槽101へ薬剤が圧送される。このとき、薬剤が、洗浄水タンク105に繋がる配管104および107に進入しないように、三方バルブ106および108が切替えられている。二方向バルブ115,116は薬剤洗浄時以外では閉じられている。
【0010】
3)さらに長期には、膜モジュールにバイオファウリングが進む場合がある。このような事態では、膜モジュールの透過水量が減少して生産水量が減少することにより、生産性がかなりの程度低下することになる。この場合には、膜モジュールを膜分離槽から引き上げて、膜分離槽とは別の場所に設けられた洗浄槽(図6には不図示。)の中に膜モジュールを移し入れ、高濃度の薬品液中に浸漬した状態で洗浄を行い、膜モジュール表面のファウリングを取り除くことが行われている。この作業は浸漬洗浄と呼ばれる。
【0011】
上記のように、膜分離槽の周りには、清浄水の取り出しライン、逆洗浄の際の切り替えバルブ、薬剤供給ライン、および薬剤の切り替えバルブなどの複雑な配管システムを構成する必要がある。また、それだけではなく、別置きの洗浄槽や、多数の膜モジュールを膜分離槽から引き上げたり膜分離槽に取り付けたりする作業のためのクレーン設備などが付随して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11-057799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図6に示したような従来の膜モジュール洗浄システムでは、上記の操作を、固定された配管とバルブの切り替えによって可能にしている。このため、図6のような複雑な配管システムとなるだけではなく、次のような品質上の問題もあった。
【0014】
1)薬剤供給ラインが、清浄水の取り出しラインに固定的にバルブを介してつながっている。図6では膜分離処理後の水を流す配管部分104aに薬剤供給用の配管113,114が二方バルブ115,116を介して接続されている。このために、薬剤供給ライン側のバルブ(図6では二方バルブ115,116)に不具合があると、薬剤が水取り出しラインに漏れ出してしまい、結果、処理後の水の品質に大きな問題が発生する。
【0015】
2)薬剤の供給においては、例えば、アルカリ→リンス→酸→リンス→アルカリ→リンスなどの手順を追って実施する必要があり、薬剤供給ラインの切り替えがより複雑になる。さらに、清浄水の取り出しと薬剤供給との切り替えにおいても複雑なバルブ操作を要し、処理後の水に対する汚染リスクが増大する。
【0016】
3)廃水処理量を上げるために膜分離槽の数を増やすと、薬剤供給時の配管切り替え操作の複雑さも増大し、上記のような品質上の問題が顕著となる。
【0017】
4)長期的に、高濃度の薬品液の中にて浸漬洗浄するために、背の高い膜モジュールを膜分離槽から取り出したりする作業が付随して発生する。活性汚泥蒸気の雰囲気で行われるこの作業の多くは人手による作業であるため、異臭のする雰囲気により作業員の健康に影響を及ぼすという懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、膜モジュールを多数用いる膜分離活性汚泥処理設備にあって、上記の問題を軽減することを目的とする。例えば、処理後の水の取り出しラインが薬品によって汚染されるのを防止することを目的の一つとする。また、他の目的の例としては、膜モジュールの膜分離槽からの取り出しを必要とせずに、膜モジュールの浸漬洗浄を実現できるようにして、作業員への活性汚泥蒸気の暴露を防止することである。
【0019】
そこで本発明の一つの態様は、
活性汚泥を含む廃水が入れられ、該廃水の中に、膜分離用の任意の数の膜モジュールからなる複数の膜分離ユニットが浸漬された処理槽と、
それぞれの膜分離ユニットに対して配設された、膜モジュールにて膜分離処理した後の処理済み水を取り出す複数の取出し管と、
それぞれの取出し管の所定の部分に配設された第1の接続継ぎ手と、
第1の接続継ぎ手と接続可能な第2の接続継ぎ手を持ち、該第2の接続継ぎ手をそれぞれの取出し管の第1の接続継ぎ手に対して移動して結合可能である接続装置と、
接続装置の第2の接続継ぎ手に可撓性配管を介して接続された、膜モジュールを洗浄する薬剤を貯留する薬剤タンクと、
取出し管にバルブを介して接続された、処理済み水を貯留する処理済み水タンクと、を備えた、膜モジュール洗浄システムを提供する。
【0020】
このような態様では、指定された膜分離ユニットの膜モジュールを薬剤で洗浄するときのみ、接続装置は、該指定された膜分離ユニットに配設された取出し管の第1の接続継ぎ手に対して第2の接続継ぎ手を接続し、かつ、バルブが閉じる。したがって、常時は薬剤供給ラインが、膜分離ユニットに配設された取出し管と繋がっていないので、処理後の水の取り出しの際に薬液が交じり合うことが全く無い。
【0021】
また、他の態様としては、上記の態様の膜モジュール洗浄システムが、
活性汚泥を含む廃水のみが入れられた槽(すなわち標準槽)と、
膜分離槽から標準槽へ活性汚泥を含む廃水を戻して膜分離槽内を膜分離ユニットのみにする配管と、
膜モジュールを洗浄する薬剤を貯留する第2の薬剤タンクと、
第2の薬剤タンクから膜分離槽へ第2の薬剤タンクの薬剤を供給して該薬剤の中に膜分離ユニットを浸漬させる配管と、
膜分離槽の膜分離ユニットを浸漬させた薬剤を該膜分離槽から抜き取る配管と、
標準槽から、第2の薬剤タンクの薬剤が抜き取られた膜分離槽へ、活性汚泥を含む廃水を供給する配管と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
このような態様では、膜分離ユニットを浸漬洗浄するとき、膜分離ユニットを膜分離槽から抜き出す必要が無いので、作業員が汚泥雰囲気に曝されずに済む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、処理後の水の取り出しラインが薬品によって汚染されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態による膜モジュール洗浄システムを備えた膜分離活性汚泥処理設備を模式的に示した正面図。
【図2】本発明の実施形態による膜分離活性汚泥処理設備のインライン洗浄用の薬剤供給用配管接続装置を模式的に示した上面図である。
【図3】図2中のX方向から見た構造図。
【図4】図3中の薬剤供給ラインの接続機構部の拡大図。
【図5】図4中のY方向から見た構造図。
【図6】従来の膜分離活性汚泥処理設備を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1は本発明の実施形態による膜モジュール洗浄システムを備えた膜分離活性汚泥処理設備の正面図を模式的に示している。
【0027】
図1を参照すると、本実施形態の膜分離活性汚泥処理設備は、標準槽(標準活性汚泥槽)10と膜分離槽(膜分離活性汚泥槽)20とを備える。膜分離槽20は生産水量に応じて複数槽配設されている。
【0028】
それぞれの膜分離槽20の内部は隔壁で区画されており、個々の区画内に膜分離ユニット30が設置される。膜分離ユニット30は複数の膜モジュール31の束から構成されており、膜分離ユニット30の上部には、各膜モジュール31を通過して得られる清浄な水を排出する管を集約する共通ヘッダー40としての配管が位置する。
【0029】
共通ヘッダー40の配管は、膜分離槽20の外部に延伸されている。この延伸された共通ヘッダー40の配管には第一の接続継ぎ手42a、42b(例えばカプラーが設けられている。
【0030】
延伸された共通ヘッダー40の配管の端部は2経路に分岐され、一方の経路の分岐点付近に清浄水取り出し用のバルブ50が配設され、もう一方の経路の分岐点付近に逆洗浄用バルブ52が配設されている。また、共通ヘッダー40へ流出される清浄水を貯留しておく清浄水タンク2000が配備され、清浄水タンク2000と清浄水取り出し用のバルブ50とが配管43で接続されている。清浄水タンク2000と逆洗浄用バルブ52とが配管45で接続されている。配管45には清浄水タンク2000の水を逆洗浄用バルブ52側へ圧送する圧力ポンプ45が配設されている。
【0031】
共通ヘッダー40に設けられた第一の接続継ぎ手42a、42bの上部には、薬剤供給用配管接続装置100が配備されている。
【0032】
薬剤供給用配管接続装置100は、所定の膜分離槽20の膜モジュール31に関するインライン洗浄の都度に、その膜分離槽から延伸された共通ヘッダー40の接続継ぎ手42a、42bと接続される。さらに、異なる種類のインライン洗浄用薬剤を貯留するインライン洗浄用薬剤タンク2100a,2100bが配備され、それぞれのインライン洗浄用薬剤タンク2100a,2100bと薬剤供給用配管接続装置100とが配管2101,2102で接続されている。
【0033】
また、それぞれの膜分離槽20には、標準槽10から膜分離槽20へ汚泥をポンプ等で移送するライン1000と、膜分離槽20の下部にブロワー等で空気を送り込むライン1100と、活性汚泥を標準槽10へポンプ等で戻すライン1200とが設けられている。膜分離槽20の底部には、この膜分離槽内のそれぞれの膜モジュール31を曝気するためのヘッダー25が配設されており、ヘッダー25はエアーライン1100と接続されている。
【0034】
さらに膜分離槽20には、浸漬洗浄用の薬剤供給ライン1300、浸漬洗浄用薬剤タンクに浸漬洗浄用薬剤を戻すライン1400、ドレーン1500などが設けられている。なお、浸漬洗浄用のライン1300,1400と膜分離槽20との接続継ぎ手は、膜分離槽20と必要な時だけ接続可能なものとしてもよい。これにより、誤操作で浸漬洗浄用の薬剤が膜分離槽20に入って活性汚泥そのものが失活するというリスクを避けられる。
【0035】
さらに、浸漬洗浄液を貯留するタンク3100と、それぞれ異なる種類の浸漬洗浄用薬剤を貯留するタンク3200a,3200bとが配備され、それぞれのタンク3200a,3200bはタンク3100と配管接続されている。そして、浸漬洗浄用の薬剤供給ライン1300と浸漬洗浄用の薬剤を戻すライン1400はそれぞれポンプを介してタンク3100と接続されている。
【0036】
次に、薬剤供給用配管接続装置100についてさらに詳細に説明する。図2は接続継ぎ手42a、42bの上部に位置する薬剤供給用配管接続装置100を模式的に示した上面図である。図1では複数の膜分離槽20が上下に設置されているように図示されているが、実際は図1の紙面に対して垂直方向に複数の膜分離槽を並べてある。そのため、膜分離活性汚泥処理設備の膜分離槽20の周辺部を上から見ると、図2のようになる。さらに、図3は図2中のX方向から見た構造図で、図4は図3中の薬剤供給ラインの接続機構部の拡大図で、図5は図4中のY方向から見た構造図である。
【0037】
図2〜図5を参照すると、それぞれの膜分離槽20から横方向に延伸された共通ヘッダー40上には、インライン洗浄で用いる薬剤の数に応じて、必要な個数(本例では2個)の第一の接続継ぎ手42a,42bが設置されている。第一の接続継ぎ手42a,42bは内弁(一種の逆止弁)を有しており、接続すべき配管が結合されていない場合にあっても、共通ヘッダー40からの水漏れは無い。
【0038】
上から見て共通ヘッダー40と直交する方向に関してインライン洗浄用の薬剤供給ラインが移動可能に構成されている。このために、可撓性配管(フレキシブルホース)121が用いられている。
【0039】
延伸された共通ヘッダー40に固定された第一の接続継ぎ手42a,42bと接続可能な第二の接続継ぎ手110が、フレキシブルホース121の先端に取り付けられている(図4,図5)。第二の接続継ぎ手110およびフレキシブルホース121は、図3および図4の紙面に垂直な方向に移動可能である。具体的には、フレキシブルホース121は横U字状に曲げられており、第二の接続継ぎ手110の移動とともに、フレキシブルホース121が移動することとなる。
【0040】
第二の接続継ぎ手110を移動させる駆動機構は次のように構成される。図3および図4の紙面に垂直な方向に沿って2つのレール120が略平行に設けられている。各レール120上にはレール120上を案内されるガイド機構125が備わる。2つのレール120を跨るように支持板122が配置され、支持板122の両端がガイド機構125に固定されている。これにより、支持板122は図3および図4の紙面に垂直な方向に沿って移動自在にされている。
【0041】
支持板122には、第二の接続継ぎ手110を上下方向(図4では上下)に昇降するための空気シリンダー130が取り付けられている。空気シリンダー130のシリンダーロッドの端部には、第二の接続継ぎ手110を取り付け可能なブラケット135があり、ブラケット135と第二の接続継ぎ手110が固定的に取り付けられている。このため、第二の接続継ぎ手110と空気シリンダー130が一体化している。
【0042】
空気シリンダー130による第二の接続継ぎ手110の昇降(上下)動作を円滑におこなうために、支持板122には直線ガイド140が設けられており、ブラケット135に取り付けられた軸145がその直線ガイド140に嵌まり込んでいる。これにより、第二の接続継ぎ手110の円滑な直線運動を可能とする。このようにして第二の接続継ぎ手110が取り付いている支持板122は、図示しない直線駆動機構、例えば、サーボモータなどの駆動装置とベルト機構により、レールの任意の位置(図3の紙面に垂直方向の位置)に自由に移動することができる。
【0043】
さらに、延伸された共通ヘッダー40側の第一の接続継ぎ手42a又は42bと、インライン洗浄用の薬剤供給ライン側の支持板122上の第二の接続継ぎ手110とが簡易に接続されるには、継ぎ手間の接続面のたわみを吸収するガイド機構や、継ぎ手同士の芯合わせをするコンプライアンス機構を適宜用いると良い。また、結合する2つの接続継ぎ手にはボールロック式の雌型カプラーと雄型カプラーを使用することが考えられる。
【0044】
このようなインライン洗浄の薬剤供給用配管接続装置100は、インライン洗浄を必要する膜分離ユニット30に対応する共通ヘッダー40の第一の接続継ぎ手42a又は42bが指定されると、これに支持板122側の第二の接続継ぎ手110が相対するように支持板122の移動および位置決め動作を指令される。そして位置決め後、空気シリンダー130を作動して、第一の接続継ぎ手42a又は42bと第二の接続継ぎ手110とを液漏れなく接続させることにより、インライン洗浄用の薬剤供給ラインを形成することができる。つまり、指定の膜分離ユニット30に対してインライン洗浄が必要なときだけ、インライン洗浄用の薬剤供給ラインが形成される。
【0045】
次に、各膜分離槽30における膜モジュール31の洗浄方法について説明する。
【0046】
逆洗浄
通常の運転では、膜分離処理された後の水の取り出しと、短時間で行われる逆洗浄とが中心となる。図1に示す実施形態によると、膜分離槽101の底部に空気ライン1100によって大気が供給され、膜モジュール31で廃水処理された後の清浄な水は共通ヘッダー40、開いたバルブ50、および配管43をこの順に通り、清浄水タンク2000貯留される。また逆洗浄時には、バルブ50を閉じ、バルブ52を開き、圧送ポンプ45を作動することによって、清浄水タンク2000内の清浄水が配管44、バルブ52、および共通ヘッダー40をこの順に経て膜モジュール31の内側に入り、その膜モジュール内側から外側表面へと通過する。結果、膜モジュールの外側表面に付着した汚泥を剥がす。
【0047】
このように、廃水処理された清浄水タンク内の水を逆洗浄に使用しているので、廃水処理後の水の取り出しと逆洗浄との切替え操作において交差汚染の問題は無い。また、これらの操作ではいずれも清浄な水が扱われ、また、比較的に短時間での操作でもあるので、バルブによる切り替えが便利である。
【0048】
インライン洗浄
薬剤によるインライン洗浄は、所定の膜分離槽の膜分離ユニット30に対してその洗浄の都度、インライン洗浄用薬剤供給ラインを形成して行われる。図1に示す実施形態によると、前述した薬剤供給用配管接続装置100を用いて、薬剤洗浄を必要とする膜分離ユニット30に対応する共通ヘッダー40の第一の接続継ぎ手42a又は42bに対して、第二の接続継ぎ手110が移動して接続されることで、インライン洗浄用薬剤供給ラインが形成される。このため、薬剤を必要なタイミングでのみ膜モジュール31に供給できる。膜モジュールへの薬剤供給ラインがその膜モジュールの洗浄が必要な時だけ形成され、常時はインライン洗浄用薬剤供給ラインが共通ヘッダー40と繋がっていないので、処理後の水の取り出しの際に薬液が交じり合うことが全く無い。勿論、インライン洗浄時はバルブ50及び52は閉じられている。
【0049】
また、膜モジュール31に対して薬剤の種類を変えて洗浄するときは、複数本のインライン洗浄用薬剤供給配管2101,2102のそれぞれ先端に位置する各第二の接続継ぎ手110が、共通ヘッダー40の第一の接続継ぎ手42a又は42bに対して選択的に接続される。これにより、任意の膜モジュール31に対して薬剤の種類を変えながら洗浄することができる。なお、図1ではインライン洗浄用薬剤の薬剤供給配管が2本であるが、薬液の数に応じて複数本設けることができる。
【0050】
浸漬洗浄
長期的には、膜分離ユニット30を浸漬洗浄する必要がある場合がある。図1に示す実施形態では、浸漬洗浄の際、まず、膜分離槽20内の活性汚泥を含む廃水がライン1200を通して標準槽10に戻される。その後、浸漬洗浄用の薬剤供給ライン1300によって、浸漬洗浄用薬液が膜分離槽20内に張り込まれる。
【0051】
所要の浸漬洗浄が終了した後には、張り込まれた浸漬洗浄用薬液がドレーン1500経由で抜き去られて廃棄されるか、または再利用のためにライン1400経由で浸漬洗浄液タンク3100に戻される。
【0052】
なお、この場合、膜分離槽の区画内に高濃度の薬液が残存することにより、次に膜分離槽に張り込まれる活性汚泥の活性に影響を与えるような場合がありうる。このような場合には失活処理を行う。また、浸漬洗浄を効率的に行うために、膜分離槽の各区画内に、高圧ジェット洗浄ノズルなどの強制的な洗浄方法を行ってもよい。
【0053】
また、浸漬洗浄が終了した膜分離槽20には、再度、標準槽10から活性汚泥を含む廃水がライン1000経由で移送されて、空気ライン1100からのエアーによって膜モジュール31の曝気が行われる。
【0054】
このような浸漬洗浄によれば、全自動での作業が可能となる。このため、膜モジュールユニットの浸漬洗浄に際して行われていた、膜分離ユニットの人手による交換作業が無くなることになる。
【0055】
以上説明した、膜分離ユニットの洗浄システムは、次のような効果を奏する。
【0056】
1)膜分離槽へのインライン洗浄用薬剤供給について、万が一のバルブリークによる清浄水汚染を防止することができる。
【0057】
2)膜分離ユニットの浸漬洗浄に際して、膜分離ユニットを膜分離槽から抜き出す必要が無いので、作業員を汚泥雰囲気に曝すことを防止できる。
【0058】
3)膜分離ユニットを膜分離槽から抜き出す必要が無いので、人手を要せずに済み、全自動での運転を可能にする。
【符号の説明】
【0059】
10 標準槽(標準活性汚泥槽)
20 膜分離槽(膜分離活性汚泥槽)
25 曝気用ヘッダー
30 膜分離ユニット
31 膜モジュール
40 共通ヘッダー
42a,42b 共通ヘッダー側の第一の接続継ぎ手
43,44 配管
45 圧送ポンプ
50,52 バルブ
100 薬剤供給用配管接続装置
110 インライン洗浄用の第二の接続継ぎ手
120 レール
121 可撓性配管(フレキシブルホース)
122 支持板
125 ガイド機構
130 空気シリンダー
135 ブラケット
140 直線ガイド
145 軸
1000 活性汚泥供給用ライン
1100 エアーライン
1200 活性汚泥の戻し用ライン
1300 浸漬洗浄液供給用ライン
1400 浸漬洗浄液の戻し用ライン
1500 ドレーン
2000 清浄水ランク
2100a,2100b インライン洗浄用薬剤タンク
3100 浸漬洗浄液タンク
3200a,3200b 浸漬洗浄用薬剤タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥を含む廃水が入れられ、該廃水の中に、膜分離用の任意の数の膜モジュールからなる複数の膜分離ユニットが浸漬された処理槽と、
それぞれの前記膜分離ユニットに対して配設された、前記膜モジュールにて膜分離処理した後の処理済み水を取り出す複数の取出し管と、
それぞれの前記取出し管の所定の部分に配設された第1の接続継ぎ手と、
前記第1の接続継ぎ手と接続可能な第2の接続継ぎ手を持ち、該第2の接続継ぎ手を任意の前記取出し管の前記第1の接続継ぎ手に対して移動して結合可能である接続装置と、
前記接続装置の前記第2の接続継ぎ手に可撓性配管を介して接続された、前記膜モジュールを洗浄する薬剤を貯留する薬剤タンクと、
前記取出し管にバルブを介して接続された、前記処理済み水を貯留する処理済み水タンクと、を備え、
指定された前記膜分離ユニットの前記膜モジュールを前記薬剤で洗浄するときのみ、前記接続装置は、該指定された前記膜分離ユニットに配設された前記取出し管の前記第1の接続継ぎ手に対して前記第2の接続継ぎ手を接続し、かつ、前記バルブが閉じることを特徴とする膜モジュール洗浄システム。
【請求項2】
請求項1に記載の膜モジュール洗浄システムであって、
前記薬剤タンクを複数備えており、
それぞれの前記薬剤タンクに対応して前記接続装置および前記第1の接続継ぎ手が配設されている、膜モジュール洗浄システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の膜モジュール洗浄システムであって、
前記取出し管は2経路に分岐しており、
前記バルブは、前記液取出し管から分岐した一方の経路に配設された第1バルブと、前記液取出し管から分岐した他方の経路に配設された第2バルブとを含み、
前記膜モジュール洗浄システムは、
前記第1バルブと前記処理済み水タンクの間に接続されており、前記第1バルブが開き前記第2バルブが閉じられている状態で前記取出し管からの処理済み水を前記処理済タンクへ向かわせる第1配管と、
前記第2バルブと前記処理済み水タンクの間に接続されており、前記第2バルブが開き前記第1バルブが閉じられている状態で前記処理済み水タンク内の処理済み水を前記取出し管の側へ向かわせる第2配管と、を備えた、膜モジュール洗浄システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の膜モジュール洗浄システムであって、
前記活性汚泥を含む廃水のみが入れられた槽と、
前記膜分離槽から前記槽へ前記活性汚泥を含む廃水を戻して前記膜分離槽内を前記膜分離ユニットのみにする配管と、
前記膜モジュールを洗浄する薬剤を貯留する第2の薬剤タンクと、
前記第2の薬剤タンクから前記膜分離槽へ前記第2の薬剤タンクの薬剤を供給して該薬剤の中に前記膜分離ユニットを浸漬させる配管と、
前記膜分離槽の前記膜分離ユニットを浸漬させた薬剤を該膜分離槽から抜き取る配管と、
前記槽から、前記第2の薬剤タンクの薬剤が抜き取られた前記膜分離槽へ、前記活性汚泥を含む廃水を供給する配管と、を備えた、膜モジュール洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−200751(P2011−200751A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68186(P2010−68186)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000222174)東洋エンジニアリング株式会社 (69)
【Fターム(参考)】