説明

膜厚測定方法、膜厚測定システムおよび膜厚測定装置

【課題】化学反応性の高いアルカリ金属、アルカリ土類金属等からなる薄膜であっても、簡便かつ高い精度で膜厚を測定できる膜厚測定方法、膜厚測定システムおよび膜厚測定装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る膜厚測定方法は、成膜室2内のステージ22に設置された測定用基板10上に複数配置された振動子11に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる薄膜を形成することを含む。上記測定用基板10は、外部より低湿度に調節された測定室3の内部へ搬送される。測定室3内で、振動子11を検出ユニット32に接続し発振させることで、薄膜の膜厚が測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子を用いた膜厚測定方法ならびにそれに用いる膜厚測定システムおよび膜厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、真空蒸着またはスパッタリングにおいて、成膜される膜の膜厚をモニタするために、水晶振動子を用いた膜厚測定方法が用いられている。この方法は、成膜室内に配置されている水晶振動子の表面に被処理基板に成膜される材料と同じ成膜材料を付着させ、それによる水晶振動子の応答周波数の変化から被処理基板上の成膜材料の膜厚を測定するものである。
【0003】
この方法によって測定された膜厚は、成膜源からの距離が水晶振動子と被処理基板とで異なるために、被処理基板上の実際の膜厚とは必ずしも一致せず、誤差が生じることがあった。この誤差を補正する方法として、例えば特許文献1には、成膜対象物表面に薄膜を形成する前に準備工程を設けて、基板ホルダ上の測定用基板と、校正用水晶振動子の表面とに同じ時間だけ薄膜を成長させ、測定用基板上の薄膜の膜厚を触針式段差計等によって測定し、校正用振動子の膜厚を補正する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−122200号公報
【特許文献2】特開2007−24909号公報
【特許文献3】特開2006−78302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、電池等に用いるリチウム(Li)等のアルカリ金属およびマグネシウム(Mg)等のアルカリ土類金属からなる薄膜の膜厚を測定する際には、これらの材料の化学反応性が非常に高いため、成膜室の外に出すと大気中の水分と反応し、正確な膜厚測定が困難であった。また、これらの薄膜がやわらかいため、触針式段差計等では正確に膜厚が測定できないという問題もあった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、簡便かつ高い精度で膜厚を測定できる膜厚測定方法、膜厚測定システムおよび膜厚測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る膜厚測定方法は、成膜室内のステージに設置された測定用基板上に複数配置された振動子に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる薄膜を形成することを含む。
上記測定用基板は、外部より低湿度に調節された測定室の内部へ搬送される。
上記測定室内で上記振動子を検出ユニットに接続し発振させることで上記薄膜の膜厚が測定される。
【0008】
本発明の一形態に係る膜厚測定システムは、成膜室と、測定用基板と、測定室と、調節機構と、検出ユニットとを具備する。
上記成膜室は、ステージを有する。
上記測定用基板は、本体と、上記本体の一表面に配置された単数又は複数の振動子とを有し、上記ステージに設置されることが可能である。
上記測定室は、上記成膜室と隣接して設置される。
上記調節機構は、上記測定室内部の湿度を外部より低く調節可能である。
上記検出ユニットは、上記測定室に配置され上記振動子と接続されることが可能な接続部と、上記振動子を発振させる発振部と、上記発振によって得られた信号を処理する処理部とを有する。
【0009】
本発明の一形態に係る膜厚測定装置は、測定室と、調節機構と、測定用基板と、検出ユニットとを具備する。
上記調節機構は、上記測定室内部の湿度を外部より低く調節可能である。
上記測定用基板は、本体と、上記本体の一表面に配置された単数又は複数の振動子とを有する。
上記検出ユニットは、上記測定室に配置され上記振動子と接続されることが可能な接続部と、上記振動子を発振させる発振部と、上記発振によって得られた信号を処理する処理部とを有する。
【0010】
本発明の一形態に係る膜厚測定方法は、振動子が配置された測定用基板を成膜室内のステージに設置する工程を含む。
膜厚測定器によって第1の膜厚が検出されるまで上記振動子上に薄膜が形成される。
上記振動子を検出ユニットに接続し発振させることで上記薄膜の第2の膜厚が測定される。
上記第1の膜厚と上記第2の膜厚との比に基づいて、上記膜厚測定器の出力が補正される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る膜厚測定システムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る測定用基板の構成を示す図であり、(A)は概略平面図、(B)は(A)の[A]−[A]方向における要部断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る膜厚測定方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る膜厚測定方法は、成膜室内のステージに設置された測定用基板上に複数配置された振動子上に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる薄膜を形成することを含む。
上記測定用基板は、外部より低湿度に調節された測定室の内部へ搬送される。
上記測定室内で上記振動子を検出ユニットに接続し発振させることで上記薄膜の膜厚が測定される。
【0013】
上記膜厚測定方法は、外部より低湿度に調節された測定室内で膜厚を測定するため、Li,Na,Kなどのアルカリ金属、または、Be,Mg,Ca等のアルカリ土類金属からなる薄膜の化学反応を抑制できる。また、測定用基板上に設置された振動子を用いることから、被処理基板に近い条件で薄膜を形成することができ、薄膜の形状を変化させずに測定が可能である。したがって、精度よく、かつ簡便な方法で膜厚を測定することができる。
【0014】
上記薄膜を形成する工程は、上記膜厚を、上記成膜室に設置された膜厚測定器の出力に基づいてモニタすることを含んでもよい。この場合、上記膜厚測定方法は、さらに、上記検出ユニットで測定された膜厚に基づいて上記膜厚測定器の出力を補正し、補正された上記膜厚測定器の出力に基づいて上記ステージに設置された被処理基板上に上記薄膜を形成する。
【0015】
これにより、上記測定用基板を用いた精度よい膜厚測定の結果を用いて上記膜厚測定器の出力を補正することができ、被処理基板を用いた実際の成膜工程においても、膜厚測定器によって成膜中の膜厚を精度よくモニタすることができる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る膜厚測定システムは、成膜室と、測定用基板と、測定室と、調節機構と、検出ユニットとを具備する。
上記成膜室は、ステージを有する。
上記測定用基板は、本体と、上記本体の一表面に配置された単数又は複数の振動子とを有し、上記ステージに設置されることが可能である。
上記測定室は、上記成膜室と隣接して設置される。
上記調節機構は、上記測定室内部の湿度を外部より低く調節可能である。
上記検出ユニットは、上記測定室に配置され上記振動子と接続されることが可能な接続部と、上記振動子を発振させる発振部と、上記発振によって得られた信号を処理する処理部とを有する。
【0017】
上記膜厚測定システムは、測定用基板上に設置された振動子を用いることから、被処理基板に近い条件で薄膜を形成することができ、薄膜の形状を変化させずに測定が可能である。また、測定室は成膜室に隣接し、外部より低湿度に調節されているため、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる材料の薄膜であってもその化学反応を抑制できる。したがって、精度よく膜厚を測定することができる。さらに、成膜前の準備工程と、成膜工程とを連続的に行うことができるため、簡便な方法で効率的に膜厚を測定することができる。
【0018】
上記膜厚測定システムは、上記成膜室と上記測定室との間に設置された搬送室と、上記成膜室と上記搬送室の間に設置された第1の仕切りバルブと、上記測定室と上記搬送室との間に設置された第2の仕切りバルブと、上記測定用基板を上記成膜室から上記測定室へ搬送する搬送ユニットを有する搬送機構をさらに具備してもよい。
これによって、成膜室または測定室の雰囲気を維持しつつ、上記測定用基板を自動で成膜室から測定室へ搬送することができ、さらに効率的に膜厚を測定することができる。
【0019】
上記膜厚測定システムは、上記成膜室に設置され、上記ステージ上の被処理基板に形成される薄膜の膜厚をモニタし出力する膜厚測定器と、上記検出ユニットによって測定された上記膜厚に基づいて上記膜厚測定器の出力を補正する補正部とをさらに具備してもよい。
このことによって、上記測定用基板を用いた精度よい膜厚測定の結果を用いて上記膜厚測定器の出力を簡便に補正することができ、被処理基板を用いた実際の成膜工程においても、膜厚測定器によって成膜中の膜厚を精度よくモニタすることができる。
【0020】
上記振動子は、上記本体の一表面の中央から周辺に向かって複数配置されてもよい。
これによって、上記測定用基板を用いて成膜面内での膜厚の分布も測定することができる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る膜厚測定装置は、測定室と、調節機構と、測定用基板と、検出ユニットとを具備する。
上記調節機構は、上記測定室内部の湿度を外部より低く調節可能である。
上記測定用基板は、本体と、上記本体の一表面に配置された単数又は複数の振動子とを有する。
上記検出ユニットは、上記測定室に配置され上記振動子と接続されることが可能な接続部と、上記振動子を発振させる発振部と、上記発振によって得られた信号を処理する処理部とを有する。
【0022】
上記膜厚測定装置は、測定用基板上に設置された振動子を用いることから、被処理基板に近い条件で形成した薄膜を測定可能である。また、測定室は外部より低湿度に調節されているため、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる材料の薄膜であっても化学反応を抑制できる。したがって、精度よく膜厚を測定することができる。
【0023】
本発明の一実施形態に係る膜厚測定方法は、振動子が配置された測定用基板を成膜室内のステージに設置する工程を含む。
膜厚測定器によって第1の膜厚が検出されるまで上記振動子上に薄膜が形成される。
上記振動子を検出ユニットに接続し発振させることで上記薄膜の第2の膜厚が測定される。
上記第1の膜厚と上記第2の膜厚との比に基づいて、上記膜厚測定器の出力が補正される。
【0024】
上記膜厚測定方法では、実際の成膜前に、測定用基板に複数配置された振動子を用いて被処理基板に近い条件で形成した薄膜の膜厚を測定し、この膜厚に基づいて予め上記膜厚測定器の出力を補正することができる。このことから、被処理基板の成膜工程において、膜厚測定器を用いて精度よく膜厚をモニタすることができる。
【0025】
上記薄膜は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であってもよい。この場合、上記第2の薄膜の測定は、外部より低湿度に調整された測定室の内部で行われる。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0027】
<第1の実施形態>
[膜厚測定システムの構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る膜厚測定システムを示す概略構成図である。膜厚測定システム1は、成膜室2と、測定室3と、成膜室2と測定室3との間に設置された搬送室4とを有する。
【0028】
(成膜室)
成膜室2は、Li等を蒸着する蒸着室として構成される。成膜室2の内部には、抵抗加熱源や電子ビーム加熱源等の蒸発源21と、測定用基板10または半導体ウェーハやガラス基板等の被処理基板Wを支持する基板固定ジグ(ステージ)22と、膜厚モニタ用のセンサヘッド(膜厚測定器)23とが設置されている。また、基板固定ジグ22は、静電チャック、メカニカルチャック等の基板保持機構を有し、図示しない駆動源に接続された回転機構24によって回転可能に支持されている。なお、成膜室2の内部は、真空ポンプP1によって所定の真空度に維持可能に構成されている。
【0029】
センサヘッド23は、水晶発振式の膜厚センサであり、例えば(株)アルバック社製「CRTS」を用いることができる。センサヘッド23は、蒸発源21から見て基板固定ジグ22の基板支持面と幾何学的に略等距離の位置に設置されており、蒸着源21からの蒸着材料を表面に付着させることが可能な水晶振動子230を支持している。
【0030】
また、センサヘッド23は、成膜室2の外部に設置された発振器Os1に接続される。発振器Os1は水晶振動子230を発振することで、成膜材料の堆積量に応じた周波数変化を検出し、さらにこれを出力V1としてコントローラ6へ出力する。
【0031】
コントローラ6は、センサヘッド23からの出力V1に基づいて、測定用基板10または被処理基板W上の堆積膜の膜厚を測定し、モニタする。コントローラ6は、蒸着源21を制御することで、成膜の停止や成膜レートを制御する。このようなコントローラ6として、例えば(株)アルバック社製「CRTM−9000G」を用いることができる。
【0032】
(測定用基板)
図2(A)は、測定用基板10の構成を示す平面図であり、図2(B)は、図2(A)の[A]−[A]方向における要部断面図である。測定用基板10は、本体12と、本体12の一表面上に配置された単数又は複数の水晶振動子11とを有する。本体12の形状は、図示する矩形状に限られず、円形でもよい。本体12を構成する材料は特に制限されず、例えばセラミクス、ガラス、半導体ウェーハ等を用いることができる。
【0033】
本実施形態において、水晶振動子11は、本体12の一表面の中央から周縁に向かって複数配置されている。各々の水晶振動子11は、例えば薄膜が形成される表面の周縁および裏面の所定位置に測定プローブ32の端子と接続するための図示しない電極パターンを有している。
【0034】
測定用基板10は、水晶振動子11を本体12の一表面上に配置するための構造として、座台13と、第1のカバー14と、固定具15と、第2のカバー16とをさらに有する。水晶振動子11は、例えば以下のように本体12の一表面へ配置される。
【0035】
まず座台13の配置面13aに、水晶振動子11を配置する。座台13は、例えば円形に形成されている。次に、水晶振動子11表面の電極が形成された周縁と座台13とを第1のカバー14によって被覆する。第1のカバー14は開口を有しており、当該開口を介して水晶振動子11表面の中央部に薄膜を形成することが可能に構成されている。第1のカバー14は、水晶振動子11表面の周縁に形成された電極への成膜材料の付着を防止するマスクとして機能する。また、第1のカバー14は、図2(B)で示すように、開口から漸次厚みが増すようなテーパ面14aを有している。これにより、開口によって露出された水晶振動子11表面に均一に薄膜を形成することができる。
【0036】
そして、固定具15によって、一体化された水晶振動子11、座台13および第1のカバー14を本体12の一表面上の所定の位置に配置する。第2のカバー16は、座台12、固定具15および第1のカバー14を被覆し、これらを本体12の一表面上に保持する。
【0037】
水晶振動子11は、測定用基板10に成膜される薄膜の膜厚分布測定に用いられる。水晶振動子11の大きさ、基本振動数等は特に限定されず、適宜の振動子を用いることが可能である。また後述するように、水晶振動子11の出力がセンサヘッド23の校正に用いられる場合には、水晶振動子11としては、センサヘッド23の振動子230と同一の振動子が用いられる。
【0038】
以上のような構成の測定用基板10を基板固定ジグ22に保持させ、回転機構24によって回転させながら成膜することによって、成膜面13上での膜厚の分布を検出することができる。
【0039】
(測定室)
測定室3は、本実施形態において、大気から隔離した環境で作業を行うためのグローブボックスで構成される。測定室3の内部には、測定用基板10のための支持台31と、測定プローブ(接続部)32と、外部から測定者が作業するためのグローブ34が備えられている。
【0040】
測定室3には、内部の湿度を外部より低く調節可能な調節機構として、真空ポンプP2、ドライエア供給源G等が接続されている。これによって、測定室3内部は、例えば真空ポンプP2によって排気後、ドライエア供給源Gからのドライエアに置換され、露点−40から−70℃程度の外部より低湿度の環境に維持することが可能である。なお、所定の低湿度雰囲気が維持できればこの構成に限られず、例えばドライエア供給源に替えてアルゴンガス供給源等を用いることもできる。
【0041】
測定プローブ32は、フィードスルー33を介して測定室3外部の発振器Os2と接続される。測定プローブ32は、水晶振動子11と電気的に接続可能な複数の端子を有する。これらの端子が水晶振動子11の表面および裏面の電極パターンと各々接続されることによって、発振器Os2による水晶振動子11の励振が可能となる。そして発振器Os2は、水晶振動子11表面に形成された成膜材料の堆積量に応じた周波数変化を検出する。
【0042】
発振器Os2は、検出した周波数変化を出力V2としてコントローラ(処理部)6へ出力する。本実施形態においては、測定プローブ32、発振器Os2およびコントローラ6が検出ユニットを構成する。
【0043】
コントローラ6では、測定プローブ32からの出力V2に基づいて、水晶振動子11上の堆積膜の膜厚を測定する。本実施形態では、センサヘッド23からの出力V1と、測定プローブ32からの出力V2とが同じコントローラ6によって処理されるよう構成されている。さらに、コントローラ6は、出力V2に基づいて出力V1を補正する補正部7と接続されている。
【0044】
(搬送室)
搬送室4は、成膜室2との間に設置された第1の仕切りバルブ41と、測定室3との間に設置された第2の仕切りバルブ42とによって仕切られており、測定室3と同様の雰囲気を維持可能とするため、真空ポンプP3、ドライエア供給源G等の調節機構によって内部の真空度及び湿度を調節可能に構成されている。また、内部には搬送ロボット(搬送ユニット)43が設置されている。なお、搬送室4、第1の仕切りバルブ41と、第2の仕切りバルブ42と、搬送ロボット43とが搬送機構40を構成している。
【0045】
搬送ロボット43は、図示しないコントローラによって、基板固定ジグ22上の測定用基板10等を移載する工程と、搬送室4内に搬送し、さらに測定室3内に搬送する工程と、支持台31上へ移載する工程とが制御されている。なお、この制御はコントローラ6によって行われてもよい。
【0046】
次に、以上のような構成の膜厚測定システム1および測定用基板10を用いた膜厚の測定方法について説明する。
【0047】
(膜厚測定方法)
図3は、本発明の膜厚測定方法を説明するフローチャートである。
【0048】
まず、所定の真空度に調節された成膜室2内の基板固定ジグ22に、測定用基板10を保持させる。この際、測定用基板10を支持台31上に配置し、搬送ロボット43を用いて基板固定ジグ22に移載することができる。
【0049】
蒸着源21は、蒸発材料を加熱蒸発させる加熱源を内蔵しており、その加熱蒸発によって生成された蒸発粒子が堆積することによって、測定用基板10上の水晶振動子11表面に薄膜が形成される(ステップS1)。本実施形態において、蒸着材料はLiである。また、センサヘッド23を駆動し、水晶振動子230上にも同様に薄膜を形成させることで、その膜厚がコントローラ6によってモニタされる(ステップS2)。
【0050】
コントローラ6は、センサヘッド23からの出力V1を膜厚に換算してモニタしており、予め設定された膜厚T1を検出すると、蒸着源21による成膜を停止させる(ステップS4)。なお、検出された膜厚が膜厚T1より薄い場合は、膜厚T1が検出されるまで膜厚をモニタしつつ、成膜を続ける(ステップS2)。
【0051】
搬送室4は、予め真空ポンプP3によって成膜室2内とほぼ等しい真空度に調節されている。そしてステップS4の後、そして第1の仕切りバルブ41が開放され、測定用基板10が基板固定ジグ22から搬送ロボット43に移載される。測定用基板10は、搬送室4へ搬送され、第1の仕切りバルブ41は閉じられる。その後、ドライエア供給源G等によって搬送室4内部が測定室3とほぼ等しい雰囲気に置換される。続いて第2の仕切りバルブ42が開放され、測定室3内部へ搬送されて支持台31に移載される(ステップS5)。
【0052】
測定室3内部は、第2の仕切りバルブ42が開放される前に、予めドライエア供給源等によってドライエア等に置換され、例えばおよそ露点−40℃から−70℃程度の外部より低湿度の雰囲気に管理されている。これにより、測定室3へ搬送された測定用基板10上のLi膜の反応を抑制することができる。
【0053】
なお、支持台31に移載された測定用基板10の表面は、支持台31に対向していてもよい。また、搬送ロボット43によって、測定用基板10の表面を上向きに反転して支持台31上に載置するようにしてもよい。
【0054】
次に、測定室3内において、支持台31上の測定用基板10に配置された水晶振動子11を測定プローブ32と接続し、水晶振動子11上の膜厚を測定する(ステップS6)。この工程は、例えば作業者がグローブ34を介して測定用基板10から振動子11を取り外し、当該振動子11を測定プローブ32へ装着する。そして、発振器Os2によって水晶振動子11を発振させ、その出力V2をコントローラ6で測定する。このとき測定された膜厚を膜厚T2とする。測定に使用される振動子11は、例えば、測定用基板10の中央部に配置された振動子11(図2(A))が用いられるが、これに限られない。
【0055】
続いて、センサヘッド23を用いて測定された膜厚T1と、測定用基板10を用いて測定された膜厚T2とを比較する(ステップS7)。これらの差が予め決められた許容範囲内であれば、膜厚T1と膜厚T2とが等しいとみなして、以後、被処理基板を用いた成膜(生産)を行う(ステップS9)。すなわち、成膜室2内の基板固定ジグ22に被処理基板Wを保持させ、センサヘッド23を駆動して膜厚をモニタしつつ、Li膜を成膜する。
【0056】
一方、膜厚T1と膜厚T2との差が許容範囲を超えていた場合、これらの値が補正部7へと出力される。そして補正部7によって、出力V1が出力V2となるようセンサヘッド23からの出力が補正される(ステップS8)。その後、ステップS9の成膜工程が行われる。
【0057】
補正部7による補正の方法としては、例えば、膜厚T1と膜厚T2との比を補正係数として算出し、それを用いて出力V1を補正する方法が挙げられるが、これに限られない。
【0058】
以上のような膜厚測定方法では、測定用基板10を大気に曝されることなく測定室3へ搬送することができ、膜厚の測定においても外部より低湿度に調節された測定室内で行うことが可能である。したがって、Li等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる薄膜を形成した際でも、これらの化学反応を抑制し、精度よく膜厚を測定することができる。
【0059】
また、触針型の膜厚測定器等のように、形成された薄膜に触れることなく膜厚の測定をすることができるため、柔らかいLi膜等であってもその形状を変化させることなく、精度よく膜厚を測定することができる。
【0060】
一方、形成された薄膜の膜厚を精度よく測定する方法として、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて実際に膜を観察して膜厚を測定する方法が挙げられる。この方法と比較しても、本実施形態に係る膜厚測定方法は精度よく測定でき、かつ非常に簡便に行うことができる。
【0061】
表1は、センサヘッド23によって測定したLi膜の膜厚(狙い膜厚)を膜厚T1とした際に、本実施形態の水晶振動子11によって測定した膜厚T2と、同じLi膜の膜厚を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した値とを示している。なお、水晶振動子11は、測定用基板10の略中央に配置された水晶振動子11Aの結果を示している。
【0062】
【表1】

【0063】
この結果から、水晶振動子11によって測定された膜厚T2の値は、SEMによる観察結果と比較して誤差の範囲の値に収まっており、非常に精度が高いことがわかる。したがって本実施形態では、この膜厚T2に基づいてセンサヘッド23の出力を補正するため、実際の成膜工程においても精度の高いモニタリングが可能となる。
【0064】
さらに、測定用基板10にはその中央部から周辺部に向かって複数の振動子11が配置されているので、各振動子の膜厚を検出することで、基板上における膜厚の面内分布を測定することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0066】
例えば以上の実施形態では、測定用基板10上において水晶振動子11は図2のように直線的に配置されたが、これに限られず、基板の大きさや形状等に応じて、各振動子の配置は任意に設定可能である。
【0067】
また、以上の実施形態では、センサヘッド23からの出力V1と、測定プローブ32からの出力V2とが同じコントローラ6によって処理されるように構成されたが、別々のコントローラが用いられてもよい。また、補正部7はコントローラ6と独立した構成として説明したが、コントローラ6内に設けることもできる。さらに、コントローラ6は膜厚測定システム1全体の制御を行う構成とすることもできる。
【0068】
さらに、水晶振動子に限らず、圧電セラミック振動子等の他の振動子を用いることもできる。また、膜厚測定器として、例えば光学式の膜厚モニタ等を使用することもできる。
【0069】
以上の実施形態では、Li膜を蒸着する際の膜厚測定方法について説明したが、これに限らず、ナトリウム(Na)膜等の他のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)等のアルカリ土類金属からなる薄膜の形成に用いることも、その他の材料の薄膜形成に用いることもできる。
【0070】
また、成膜室2を真空蒸着装置として説明したが、スパッタリング装置等の他の成膜装置を用いることもできる。さらに、測定室3における測定プローブ32への振動子11の接続は作業者による手作業としたが、この作業を自動で行うことも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1・・・膜厚測定システム
2・・・成膜室
3・・・測定室
4・・・搬送室
6・・・コントローラ
7・・・補正部
10・・・測定用基板
11・・・水晶振動子
12・・・本体
21・・・蒸着源
22・・・基板固定ジグ
23・・・センサヘッド
31・・・支持台
32・・・測定プローブ
40・・・搬送システム
41・・・第1の仕切りバルブ
42・・・第2の仕切りバルブ
43・・・搬送ロボット
Os1,Os2・・・発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜室内のステージに設置された測定用基板上に複数配置された振動子に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる薄膜を形成し、
外部より低湿度に調節された測定室の内部へ前記測定用基板を搬送し、
前記測定室内で前記振動子を検出ユニットに接続し発振させることで前記薄膜の膜厚を測定する
膜厚測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の膜厚測定方法であって、
前記薄膜を形成する工程は、前記膜厚を、前記成膜室に設置された膜厚測定器の出力に基づいてモニタすることを含み、
前記膜厚測定方法は、さらに
前記検出ユニットで測定された膜厚に基づいて前記膜厚測定器の出力を補正し、
補正された前記膜厚測定器の出力に基づいて前記ステージに設置された被処理基板上に前記薄膜を形成する
膜厚測定方法。
【請求項3】
ステージを有する成膜室と、
本体と、前記本体の一表面に配置された単数又は複数の振動子とを有し、前記ステージに設置されることが可能な測定用基板と、
前記成膜室と隣接して設置された測定室と、
前記測定室内部の湿度を外部より低く調節可能な調節機構と、
前記測定室に配置され前記振動子と接続されることが可能な接続部と、前記振動子を発振させる発振部と、前記発振によって得られた信号を処理する処理部とを有する検出ユニットと、
を具備する膜厚測定システム。
【請求項4】
請求項3に記載の膜厚測定システムであって、
前記成膜室と前記測定室との間に設置された搬送室と、前記成膜室と前記搬送室の間に設置された第1の仕切りバルブと、前記測定室と前記搬送室との間に設置された第2の仕切りバルブと、前記測定用基板を前記成膜室から前記測定室へ搬送する搬送ユニットとを有する搬送機構をさらに具備する
膜厚測定システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の膜厚測定システムであって、
前記成膜室に設置され、前記ステージ上の被処理基板に形成される薄膜の膜厚をモニタし出力する膜厚測定器と、
前記検出ユニットによって測定された前記膜厚に基づいて前記膜厚測定器の出力を補正する補正部とをさらに具備する
膜厚測定システム。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1つに記載の膜厚測定システムであって、
前記振動子は、前記本体の一表面の中央から周縁に向かって複数配置されている
膜厚測定システム。
【請求項7】
測定室と、
前記測定室内部の湿度を外部より低く調節可能な調節機構と、
本体と、前記本体の一表面に配置された単数又は複数の振動子とを有する測定用基板と、
前記測定室に配置され前記振動子と接続されることが可能な接続部と、前記振動子を発振させる発振部と、前記発振によって得られた信号を処理する処理部とを有する検出ユニットと
を具備する膜厚測定装置。
【請求項8】
振動子が配置された測定用基板を成膜室内のステージに設置し、
膜厚測定器によって第1の膜厚が検出されるまで前記振動子上に薄膜を形成し、
前記振動子を検出ユニットに接続し発振させることで前記薄膜の第2の膜厚を測定し、
前記第1の膜厚と前記第2の膜厚との比に基づいて、前記膜厚測定器の出力を補正する
膜厚測定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の膜厚測定方法であって、
前記薄膜はアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなり、
前記第2の膜厚の測定は、外部より低湿度に調整された測定室の内部で行う
膜厚測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−19854(P2013−19854A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155406(P2011−155406)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】