説明

膜状成形体およびその製造方法

【課題】網状支持体に金属酸化物微粒子が付着した、触媒、吸着剤等として有用な膜状成形体を提供する。
【解決手段】網状支持体に金属酸化物微粒子が付着した膜状成形体であって、該網状支持体が導電性を有し、網目の大きさが0.03〜10mmの範囲にあり、金属酸化物微粒子がIA族、IIA族、IIIA族、IVA族、VA族、VIA族、VIIA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIII族から選ばれる1種以上からなることを特徴とする膜状成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網状支持体に金属酸化物微粒子が付着した膜状成形体に関する。
さらに詳しくは、網状支持体に触媒機能、吸着機能等を有する金属酸化物微粒子が緻密に付着し、耐摩耗性、強度等にも優れ、かつ可撓性、変形性を有し、膜状成形体の使用方法あるいは充填方法等によっては拡散性に優れ、このため高い有効係数を有し、高空間速度の触媒反応、吸着、分離等にも好適に用いることができる膜状成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不均一系触媒、吸着剤等として多くの金属酸化物が用いられており、反応の種類によっては高空塔速度(SV)で用いられている。その際、固定床の反応では触媒の多くは粒状、ペレット状、ハニカム状等の成形体として用いられている。触媒を粒状、ペレット状の成形体として用いる場合、触媒の大きさが小さい場合、活性は比較的高いが高SV運転などでは差圧が生じて運転が困難になる場合がある。触媒の大きさが大きい場合、あるいはハニカム状の場合は有効係数が低下し、性能が不充分であったり、そのため触媒の使用量を増加させたり、大きな反応塔を用いる等の必要があった。また、いずれの場合も反応容器等に充填したり取り出す際に粉化する問題があり、このため強度、耐摩耗性等に優れた成形体が求められていた。
【0003】
このような粒状あるいはペレット状の成形体は、例えば触媒成分を捏和し、押し出し成型し、これを適当な長さに切断してペレット状成形体を得、このペレット状成形体を乾燥前にマルメライザー等により粒状とした粒状成形体を得ることができる。
【0004】
また、ハニカム成形体の場合は、例えば触媒成分を捏和し、多穴のダイスを用いて押し出し成型しやすくすることによって得られるが、歪み、撓みが生じたり、乾燥、焼成時にクラックが入りやすく、生産性に問題があった。また、このため大きなハニカム成形体を得ることが困難であった。他に、金属製またはセラミックス製ハニカム基材表面に触媒層を形成する方法があるが、基材との密着性に問題があった。
【0005】
近年、燃料電池などに見られるように反応系を含めシステムとして装置に組み込むことが検討されている。このとき装置の小型化、高性能化のためにメンブランリアクターの開発が盛んに行われている。
【0006】
例えば、ガス拡散電極材料としてフッ素樹脂微粒子とカーボンブラック微粒子を、必要に応じて金、銀、白金族金属、これらの合金から選ばれる金属微粒子あるいはこれらの金属酸化物微粒子を含有する分散液において、分散液のpHを調整したり、イオン解離性化合物を添加することによって微粒子のゼータ電位を調製し、電気泳動法によって金網等の導電性基材の表面に析出させたガス拡散電極用フッ素樹脂含有多孔質体が開示されている。即ち、導電性基材上に電気泳動法で微粒子を析出させることが開示されている。(特開2002−121697号公報)
【特許文献1】特開2002−121697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記方法は用途が限定されているとともに、微粒子層の基材への密着性や、耐摩耗性、強度等が不充分で、得られるガス拡散電極をそのまま高温の触媒反応、吸着、分離等には使用することは困難であった。
【0008】
このため、網状支持体に金属酸化物微粒子が付着した、触媒、吸着剤等として有用な膜状成形体を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、工業用触媒として有用な金属酸化物を担体とする高活性で高SVでも使用可能な触媒の開発を目的に鋭意検討した結果、所定の大きさの網目を有する導電性の網状支持体を微粒の金属酸化物微粒子分散液に浸漬し、網状支持体と金属酸化物微粒子分散液に直流電圧を印加すると網状支持体に金属酸化物微粒子が迅速に付着し、しかも緻密で強固に積層することを見出して本発明を完成するに至った。
[1]網状支持体に金属酸化物微粒子が付着した膜状成形体であって、該網状支持体が導電
性を有し、網目の大きさが0.03〜10mmの範囲にあり、金属酸化物微粒子がIA族、IIA族、IIIA族、IVA族、VA族、VIA族、VIIA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIII族から選ばれる1種以上からなることを特徴とする膜状成形体。
[2]前記網状支持体が銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレスから選ばれる1種以上の金属または合金である[1]に記載の膜状成形体。
[3]前記金属酸化物微粒子の平均粒子径が10nm〜10μmの範囲にある[1]または[2]
の膜状成形体。
[4]前記金属酸化物微粒子に金属が担持されており、該金属がIB族、IIB族、VIII族から選ばれる1種以上である[1]〜[3]の膜状成形体。
[5]前記金属酸化物微粒子がSiO2、Al23、TiO2、ZrO2、NiO、Fe23、CoO、CuO、Re23から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜4の
いずれかに記載の膜状成形体。
[6]金属酸化物微粒子分散液に導電性の網状支持体を浸漬し、該分散液と網状支持体に直
流電圧を印加して、導電性網状支持体上に膜状の金属酸化物微粒子層を形成することを特徴とする膜状成型体の製造方法。
[7]前記金属酸化物微粒子に金属が担持されており、該金属がIB族、IIB族、VIII族から選ばれる1種以上である[6]の膜状成型体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、網状支持体に金属酸化物微粒子が緻密に、密着性よく付着し、耐摩耗性、強度等に優れ、吸着材、触媒等として好適に用いることのできる膜状成形体を提供することができる。特に拡散性に優れ、高SV運転においても差圧を抑制することができ、また、有効係数が高く高活性が得られ、メンブランリアクターとしても好適に用いることのできる膜状成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る膜状成形体について具体的に説明する。
本発明に係る膜状成形体は、網状支持体に金属酸化物微粒子が付着した膜状成形体であって、該網状支持体が導電性を有し、網目の大きさが0.03〜10mmの範囲にあり、金属酸化物微粒子がIA族、IIA族、IIIA族、IVA族、VA族、VIA族、VIIA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIII族から選ばれる1種以上からなることを特徴としている。
【0012】
網状支持体
本発明に用いる網状支持体としては導電性を有し、網目の大きさ(目開きということがある)が0.03〜10mm、さらには0.1〜5mmの範囲にある網状支持体を用いることが好ましい。
【0013】
導電性を有する網状支持体としては金、銀、銅、ニッケル、アルミ、錫、各種ステンレス等およびこれらの合金、さらにセラミックス製の絶縁性網状支持体等に無電解メッキにより金属をメッキして導電性を発現させた網状支持体が挙げられる。
【0014】
なかでも銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレスから選ばれる1種以上の金属または
合金は安価で導電性が比較的良好で、特にステンレス製網状支持体は強度に優れ高温で使用することができるので好ましい。
【0015】
網状支持体の網目の大きさが0.03mm未満の場合は、通常線の太さが細く、支持体が柔軟すぎたり、強度が不充分で用途に制限がある。
網状支持体の網目の大きさが10mmを越えると後述する通気孔が大きくなり過ぎ、触媒性能、吸着性能等が不充分となることがある。
【0016】
網状支持体は平板状でもよく、さらに予め波状、円筒状等に加工したものを使用することもできる。さらに、平板状の網状支持体に金属酸化物微粒子を付着させた後波状、円筒状等に加工して使用することもできる。
【0017】
金属酸化物微粒子
本発明に用いる金属酸化物微粒子としては吸着性能、触媒性能、抗菌性能、導電性等を有する有用な金属酸化物微粒子を用いることができる。なお、吸着性能には臭気成分、環境物質、VOC等の吸着を含み、触媒性能にはこれらを分解する性能を含めることができる。
【0018】
なかでも、IA族、IIA族、IIIA族、IVA族、VA族、VIA族、VIIA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIII族から選ばれる1種以上元素の金属酸化物微粒子が好適に用いられる。具体的にはNa、Mg、Ca、Ba、La、Ce、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Zn、Al、Si、P、Sb、Cu、Fe、Co、Reなどから選ばれる1種以上の元素の金属酸化物からなる金属酸化物粒子(複合金属酸化物微粒子を含む)は好適に用いることができる。
【0019】
これらの金属酸化物のなかでも、前記金属酸化物微粒子がSiO2、Al23、TiO2、ZrO2、NiO、Fe23、CoO、CuO、Re23から選ばれる1種以上の酸化物・複合酸化物であることが好ましい。このような金属酸化物微粒子、複合金属酸化物微粒子は直流電圧の印加により容易に網状支持体に付着させることができ、また比表面積が高いために触媒、触媒担体、吸着剤として好適に用いることができる。
【0020】
金属酸化物微粒子の平均粒子径は10nm〜5μm、さらには20nm〜1μmの範囲にあることが好ましい。
金属酸化物微粒子の平均粒子径が小さいと、微粒子層を形成した後、乾燥あるいは焼成した際に微粒子層の収縮が激しく、微粒子層にクラックが生じることがある。金属酸化物微粒子の平均粒子径が大きすぎても、導電性基材上への積層が不充分になったり、積層しても基材との密着性が不充分となることがある。
【0021】
本発明に用いる金属酸化物微粒子には、IB族、IIB族、VIII族から選ばれる1種以上の金属が担持されていてもよい。具体的にはCu、Au、Ag、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Zn等から選ばれる1種以上の金属が挙げられる。このような金属を含んでいると、
触媒活性、選択性、吸着性能等を大幅に向上させることができる。
【0022】
金属酸化物微粒子への金属の担持量は、金属担持金属酸化物微粒子中の金属の含有量が金属として0.1〜15重量%、さらには0.5〜10重量%の範囲にあることが好ましい。金属の担持量が少なければ、触媒活性、選択性、吸着性能等の向上が不充分であり、多すぎるものは、担持自体が困難であり、担持できたとしてもさらに触媒活性、選択性、吸着性能等が向上することもなく、貴金属を担持する場合は高価で経済性が低下する。
【0023】
本発明の網状支持体に金属酸化物微粒子が付着した膜状成形体は通気孔を有していてもよく、該通気孔の大きさは網状支持体の網目の大きさによっても異なるが概ね0.02〜9mmφ、さらには0.1〜8mmφの範囲にあることが好ましい。ここで、通気孔とは網状支持体の網目を完全に閉塞しない程度に金属酸化物微粒子が付着した状態で形成された孔をいい、反応等で反応物、生成物の拡散を良好にすることのできる有用な孔として有効である。
【0024】
つぎに、前記した膜状成形体の製造方法について説明する。
本発明にかかる製造方法は、金属酸化物微粒子分散液に導電性の網状支持体を浸漬し、該分散液と網状支持体に直流電圧を印加して、導電性網状支持体上に膜状の金属酸化物微粒子層を形成することを特徴としている。
金属酸化物微粒子分散液
本発明に用いる金属酸化物微粒子分散液、後述する必要に応じて用いるコロイド粒子を含む混合分散液の分散媒としては水、アルコール類、ケトン類、グリコール類から選ばれる1種以上が用いられる。
【0025】
具体的には、アルコール類としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等、ケトン類としてはアセトンなどグリコール類としてエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0026】
なかでも、水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の比較的低沸点のアルコール類を含む水性分散媒は前記金属酸化物微粒子、コロイド粒子を均一に分散できるとともに、微粒子層を形成した後分散媒を容易に蒸発させることができるので好適に用いることができる。
【0027】
金属酸化物微粒子と必要に応じて用いるコロイド粒子を含む分散液の固形分濃度は1〜30重量%、さらには2〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
前記濃度が薄いと、網状支持体の面積にもよるが、1回の操作で所望の厚さに積層できない場合があり、繰り返し積層操作を必要となる。前記濃度が高すぎると、分散液の粘度が高くなり、積層した微粒子層の緻密度が低下し、強度、耐摩耗性が不充分となることがある。
【0028】
本発明では、金属酸化物微粒子と必要に応じて用いるコロイド粒子を含む分散液に網状支持体を浸漬し、網状支持体と分散液に直流電圧を印加する。
印加電圧は金属酸化物微粒子の種類、網状支持体の種類、面積等によって異なるが0.5〜100V(DC)、さらには1〜50V(DC)の範囲にあることが好ましい。
【0029】
印加電圧が低いと、微粒子の積層が不充分となり、微粒子が斑に積層したり、積層に長時間を要することがある。また、印加電圧が高いと、積層速度は速いものの、得られる微粒子層の緻密度が低下し、強度、耐摩耗性が不充分となることがある。
【0030】
印加する時間は金属酸化物微粒子の種類および量等によって異なるが、概ね1〜60分程度である。
微粒子を積層させた後、積層させた基材を取り出し、乾燥し、必要に応じて加熱処理する。
【0031】
乾燥方法は従来公知の方法を採用することができ、風乾することも可能であるが、通常50〜200℃で0.2〜5時間程度乾燥する。加熱処理は、通常、200〜800℃、さらには300〜600℃で概ね1〜48時間処理する。加熱処理する際の雰囲気は用いる微粒子層の種類、用途等によって異なり、酸化ガス雰囲気、還元ガス雰囲気あるいは不
活性ガス雰囲気を適宜選択することができる。
【0032】
さらに、上記のようにして得られた微粒子層を形成した基材に、乾燥後あるいは加熱処理後、新たな成分を担持することができる。
新たな成分としては、用途によって異なるものの、従来公知の金属成分、酸化物成分、金属錯体成分、金属成分、複合酸化物成分、希土類成分等が挙げられる。
【0033】
例えば、金属成分を担持する場合は、微粒子層を形成した基材に金属塩水溶液を含浸し、乾燥し、還元雰囲気下で加熱処理することに得ることができ、また予め調製した金属コロイド粒子分散液を用いて含浸し、乾燥し、必要に応じて還元雰囲気下、あるいは不活性雰囲気下で加熱処理することによって得ることができ、さらには、微粒子層を形成した基材を金属塩水溶液に浸漬し、還元剤を加えて金属成分を析出させ、乾燥し、必要に応じて還元雰囲気下、あるいは不活性雰囲気下で加熱処理することによって得ることができる。
【0034】
さらに、金属酸化物微粒子を積層させた後、金属塩または金属塩水溶液を加え、引き続き直流電圧を印可することによって金属成分を担持することができる。
また、酸化物成分を担持する場合は、微粒子層を形成し、乾燥、加熱処理した後、金属塩水溶液を含浸し、乾燥し、酸化雰囲気下で加熱処理することに得ることができ、また予め調製した酸化物コロイド粒子分散液を用いて含浸し、乾燥し、必要に応じて酸化雰囲気下で加熱処理することによって得ることができ、さらには、微粒子層を形成した基材を金属塩水溶液に浸漬し、金属塩の加水分解剤を加えて金属水酸化物を析出させ、乾燥し、酸化雰囲気下で加熱処理することによって得ることができる。
【0035】
このようにして形成された金属酸化物微粒子層は、厚さが10nm〜1mm、さらには20nm〜0.5mmの範囲にあることが好ましい。
微粒子層の厚さが薄いと、微粒子の特性(吸着性能、触媒性能、導電性、抗菌性能、消臭性能等)が充分発揮されず、微粒子層の厚さを厚くすること自体、微粒子層の積層が困難であったり、積層することができたとしても、基材への密着性が不充分であったり、微粒子層の強度、耐摩耗性等が不充分となることがある。
【0036】
[実施例]
以下、実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
金属酸化物微粒子(1)の調製
塩化ジルコニウム水溶液(第1稀元素化学工業(株)製:ジルコンゾール、ZrO2
度25.1重量%)329.5gと硝酸コバルト(関西化学(株)製:CoO濃度25.7
7重量%)260.6gとを純水3630gに溶解した混合水溶液を調製した。
【0037】
水酸化ナトリウム(関東化学(株)製)129.9gを純水11000gに溶解したアルカリ水溶液を室温で撹拌しながら、これに上記混合水溶液を10分で添加して水酸化ジルコニウム、水酸化コバルトの混合ヒドロゲルを調製した。
【0038】
ついで、70℃で2時間熟成した後、濃度63重量%の硝酸を用いてヒドロゲルのpHを7.5〜8になるように調整した。その後、ヒドロゲルを濾過し、洗浄し、120℃で乾燥し、ついで、500℃で2時間焼成してZrO2・CoO複合酸化物を得た。これを粉砕して平均粒子径1.4μmの粒子とし、金属酸化物微粒子(1)を調製した。金属酸化物
微粒子(1)の組成を表1に示した。
金属酸化物微粒子分散液(1)の調製
金属酸化物微粒子(1)100gを純水900gに分散させ、30分撹拌した後、20分
間超音波を照射して金属酸化物微粒子分散液(1)を調製した。
膜状成形体(1)の調製
ステンレス製バット(300mmx80mmx50mm)に金属酸化物微粒子分散液(1)1000gを入れ、この分散液に負極として網状支持体(ステンレス製、目開177μm、長さ250mm、幅50mm)を入れ、正極としてステンレス製の250mmX50mmの平板を挿入した。金属酸化物微粒子分散液(1)をマグネチックスターラーで攪拌しながら、1mmφの銅線で直流電源として直流電圧装置(菊水電気(株)型式PAD35―10L)と正極および負極を接続し、20V(DC)の電圧を5分間印加して金属酸化物微粒子層を形成した。ついで、微粒子層を形成した網状支持体を取り出し、120℃で1時間乾燥して膜状成形体(1)を調製した。
【0039】
触媒用膜状成形体(1)の調製
ステンレス製バット(300mmx80mmx50mm)にRuとして濃度5重量%の硝酸ルテニウム(小島化学(株)製)200gと純水800gを入れ、この中に負極として膜状成形体(1)を入れ、正極としてステンレス製の250mmX50mmの平板を挿入し、ついで直流電圧装置(菊水電気(株)型式PAD35―10L)と正極および負極を1mmφの銅線で接続し、マグネチックスターラーで攪拌しながら、20V(DC)の電圧を2分間印加し、ルテニウムを析出させた。ついで、金属酸化物微粒子層付基材(1)を取り出し、120℃で3時間乾燥した。その後、窒素中で500℃、2時間加熱処理してルテニウムを担持した触媒用膜状成形体(1)を調製した。Ruの担持量は金属として5.0重量%であった。
【0040】
得られた触媒用膜状成形体(1)について、金属酸化物微粒子層の厚さ、密着性、微粒子
層の均一性を評価した結果および担持金属量を表1に示した。
金属酸化物微粒子層の厚さ
触媒用膜状成形体(1)の金属酸化物微粒子層の厚さをノギスにより測定し、網状支持体
の厚さを差し引き、これを厚さとして表1に示した。
【0041】
密着性
金属酸化物微粒子層を親指の腹で擦り、
指に金属酸化物微粒子が全く付着しない :◎
指に金属酸化物微粒子が僅かに付着する :○
指に金属酸化物微粒子がかなり付着する :△
指で擦ると金属酸化物微粒子層が剥離する :×
金属酸化物微粒子層の均一性
SEM写真を目視観察し、以下の基準で評価した。
【0042】
網状支持体に金属酸化物微粒子が均一な厚みで層を形成している :◎
網状支持体に金属酸化物微粒子が不均一な厚みで層を形成している:○
網状支持体に金属酸化物微粒子が斑に付着している :△
網状支持体に金属酸化物微粒子が殆ど付着していない :×
性能評価
触媒用膜状成形体(1)について、下記の方法でCOのメタネーション反応を行い、触媒
性能を評価し、結果を表1に示した。
【0043】
触媒用膜状成形体(1)(長さ250mm、幅50mm)2枚を準備し、これを重ねて巻
いた後、30mmφx50mmのステンレス管に入れ、これを固定床焼流通式反応装置の反応管に装填後、水素ガス(窒素50Vol%混合ガス)を流しながら、500℃で1時間で還元した。ついで、160℃まで降温し、反応ガス(組成CO:5vol%、CO2
:20vol%、CH:2vol%、H2:バランス)をSV:2000hr−1にな
るように流通させ、約1時間後の定常状態での生成ガスをガスクロマトグラーフイーおよび赤外分光型ガス濃度計で分析した。CO濃度は16ppmと良好な結果を得た。
[実施例2]
触媒用膜状成形体(2)の調製
実施例1と同様にして調製したZrO2・CoO複合酸化物を平均粒子径3.2μmに粉砕して金属酸化物微粒子(2)を調製して用いた以外は同様にして触媒用膜状成形体(2)を調製した。
【0044】
得られた触媒用膜状成形体(2)について、金属酸化物微粒子層の厚さ、密着性、微粒子
層の均一性を評価した結果および担持金属量を表1に示した。
性能評価
実施例1と同様にして触媒用膜状成形体(2)についてCOのメタネーション反応を行っ
た。CO濃度は14ppmと良好な結果を得た。
[実施例3]
触媒用膜状成形体(3)の調製
実施例1と同様にして調製したZrO2・CoO複合酸化物を平均粒子径0.9μmに粉砕して金属酸化物微粒子(3)を調製して用いた以外は同様にして触媒用膜状成形体(3)を調製した。
【0045】
得られた触媒用膜状成形体(3)について、金属酸化物微粒子層の厚さ、密着性、微粒子
層の均一性を評価した結果および担持金属量を表1に示した。
性能評価
実施例1と同様にして触媒用膜状成形体(3)についてCOのメタネーション反応を行っ
た。CO濃度は20ppmと良好な結果を得た。
[実施例4]
金属酸化物微粒子(4)の調製
塩化ジルコニウム水溶液(第1稀元素化学工業(株)製:ジルコンゾール、ZrO2
度25.1重量%)329.5gと硝酸コバルト(関西化学(株)製:CoO濃度25.7
7重量%)260.6gとを純水3630gに溶解した混合水溶液を調製した。
【0046】
水酸化ナトリウム(関東化学(株)製)129.9gを純水11000gに溶解したアルカリ水溶液を室温で撹拌しながら、これに上記混合水溶液を10分で添加して水酸化ジルコニウム、水酸化コバルトの混合ヒドロゲルを調製した。
【0047】
ついで、70℃で2時間熟成した後、濃度63重量%の硝酸を用いてヒドロゲルのpHを7.5〜8になるように調整した。その後、ヒドロゲルを濾過し、洗浄し、120℃で乾燥し、ついで、500℃で2時間焼成してZrO2・CoO複合酸化物を得た。
【0048】
ZrO2・CoO複合酸化物100gを粉砕して平均粒子径1.4μmの粒子とした。
この粉体に、Ruとして濃度5重量%の塩化ルテニウム水溶液(小島化学(株)製)1
00gを吸収させ、ついで、120℃で16時間乾燥した。その後、この乾燥粉体を濃度5重量%のアンモニア水1666gに分散させ、1時間撹拌した後、濾過し、洗浄して塩素を除去し、再び、120℃で16時間乾燥して、ZrO2・CoO複合酸化物にRuを担持した金属酸化物微粒子(4)を調製した。金属酸化物微粒子(4)の組成を表1に示した。
金属酸化物微粒子分散液(4)の調製
金属酸化物微粒子(4)100gを純水900gに分散させ、30分撹拌した後、20分
間超音波を照射して金属酸化物微粒子分散液(4)を調製した。
【0049】
触媒用膜状成形体(4)の調製
ステンレス製バット(300mmx80mmx50mm)に金属酸化物微粒子分散液(1
)1000gを入れ、この分散液に負極として網状支持体(ステンレス製、目開177μ
m、長さ250mm、幅50mm)を入れ、正極としてステンレス製の250mmX50
mmの平板を挿入した。金属酸化物微粒子分散液(4)をマグネチックスターラーで攪拌し
ながら、1mmφの銅線で直流電源として直流電圧装置(菊水電気(株)型式PAD35―10L)と正極および負極を接続し、20V(DC)の電圧を4分間印加して金属酸化物微粒子層を形成した。ついで、微粒子層を形成した網状支持体を取り出し、120℃で3時間乾燥した。その後、窒素中で500℃、2時間加熱処理して触媒用膜状成形体(4)を調製した。
【0050】
得られた触媒用膜状成形体(4)について、金属酸化物微粒子層の厚さ、密着性、微粒子
層の均一性を評価した結果を表1に示した。
性能評価
実施例1と同様にして触媒用膜状成形体(4)についてCOのメタネーション反応を行っ
た。CO濃度は26ppmと良好な結果を得た。
[実施例5]
触媒用膜状成形体(5)の調製
実施例1において、網状支持体(ステンレス製、目開300μm、長さ250mm、幅50mm)を用いた以外は同様にして触媒用膜状成形体(5)を調製した。
【0051】
得られた触媒用膜状成形体(5)について、金属酸化物微粒子層の厚さ、密着性、微粒子
層の均一性を評価した結果および担持金属量を表1に示した。
性能評価
実施例1と同様にして触媒用膜状成形体(5)についてCOのメタネーション反応を行っ
た。CO濃度は46ppmと良好な結果を得た。
[実施例6]
触媒用膜状成形体(6)の調製
実施例1において、網状支持体(ステンレス製、目開63μm、長さ250mm、幅50mm)を用い、60V(DC)の電圧を2分間印加して金属酸化物微粒子層を形成した以外は同様にして触媒用膜状成形体(6)を調製した。
【0052】
得られた触媒触媒用膜状成形体(6)について、金属酸化物微粒子層の厚さ、密着性、微
粒子層の均一性を評価した結果および担持金属量を表1に示した。
性能評価
実施例1と同様にして触媒触媒用膜状成形体(6)についてCOのメタネーション反応を
行った。CO濃度は15ppmと良好な結果を得た。
[実施例7]
膜状成形体(7)の調製
実施例1と同様にして膜状成形体(7)を調製した。
触媒用膜状成形体(7)の調製
250mlのガラスビーカーに濃度5重量%の硝酸パラジウム(関東化学(株)製)200gと純水800gを入れて溶解し、この中に負極として膜状成形体(7)を入れ、正極としてステンレス製の250mmX50mmの平板を挿入し、ついで、直流電圧装置(菊水電気(株)型式PAD35―10L)と正極および負極を1mmφのSUS線で接続し、マグネチックスターラーで攪拌しながら、40V(DC)の電圧を2分間印加しパラジウムを析出させた。
【0053】
ついで、膜状成形体(7)を取り出し、120℃で3時間乾燥した。その後、窒素中で5
00℃、2時間加熱処理してパラジウムを担持した触媒用膜状成形体(7)を調製した。P
dの担持量は金属として5.0重量%であった。
【0054】
得られた触媒用膜状成形体(7)について、金属酸化物微粒子層の厚さ、密着性、微粒子
層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
性能評価
実施例1と同様にして触媒用膜状成形体(7)についてCOのメタネーション反応を行っ
た。CO濃度は30ppmと良好な結果を得た。
[比較例1]
触媒(R1)の調製
実施例1と同様にして、先ず、塩化ジルコニウム水溶液(第1稀元素化学工業(株)製:ジルコンゾール、ZrO2濃度25.1重量%)329.5gと硝酸コバルト(関西化学(株)製:CoO濃度25.77重量%)260.6gとを純水3630gに溶解した混合水溶液を調製した。ついで、水酸化ナトリウム(関東化学(株)製)129.9gを純水11000gに溶解したアルカリ水溶液を室温で撹拌しながら、これに上記混合水溶液を10分で添加して水酸化ジルコニウム、水酸化コバルトの混合ヒドロゲルを調製した。
【0055】
ついで、70℃で2時間熟成した後、濃度63重量%の硝酸を用いてヒドロゲルのpHを7.5〜8になるように調整した。その後、ヒドロゲルを濾過し、洗浄し、固形分濃度40重量%に調整し、ニーダーで混練後、二軸押し出し成型機を用い1/16インチφのヌードル状に押し出し成型を行った。これらを120℃で10時間乾燥し、長さを約3mmに切断し、ついで、550℃で2時間の焼成してZrO2・CoO複合酸化物のペレットを調製した。
【0056】
ついで、ペレットに、Ruとして濃度5重量%の塩化ルテニウム水溶液(小島化学(株
)製)100gを吸収させ、ついで、120℃で16時間乾燥した。その後、濃度5重量%のアンモニア水1666gに分散させ、1時間撹拌した後、濾過し、洗浄して塩素を除去し、再び、120℃で16時間乾燥して触媒(R1)を調製した。Ruの担持量はRuとして5.0重量%であった。
【0057】
性能評価
触媒(R1)を固定床焼流通式反応装置の反応管に充填後、水素ガス(窒素50Vol%混合ガス)を流しながら、500℃で1時間で還元した。ついで、160℃まで降温し、反応ガス(組成CO:5vol%、CO2:20vol%、CH:2vol%、H2:バランス)をSV:2000hr-1になるように流通させ、約1時間後の定常状態での生成ガスをガスクロマトグラーフイーおよび赤外分光型ガス濃度計で分析した。CO濃度は96ppmであった。
[比較例2]
触媒用膜状成形体(R2)の調製
実施例1において、平板支持体(ステンレス製、長さ250mm、幅50mm)を用いた以外は同様にして触媒用膜状成形体(R2)を調製した。
【0058】
得られた触媒用膜状成形体(R2)について、金属酸化物微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価した結果および担持金属量を表1に示した。
性能評価
触媒用膜状成形体(R2)の変形性がないため評価は実施しなかった。
[比較例3]
触媒用膜状成形体(R3)の調製
実施例1において、網状支持体(ステンレス製、目開12mm、長さ250mm、幅50mm)を用いた以外は同様にして触媒用膜状成形体(R3)を調製した。
【0059】
得られた触媒用膜状成形体(R3)について、金属酸化物微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価した結果および担持金属量を表1に示した。なお、触媒用膜状成形体(R
3)には目開きにほぼ等しい通気孔が残存した。
【0060】
性能評価
実施例1と同様にして触媒用膜状成形体(R3)についてCOのメタネーション反応を行った。CO濃度は150ppmであった。
[参考例1]
触媒用膜状成形体(R4)の調製
実施例1と同様にして調製したZrO2・CoO複合酸化物を平均粒子径24μmに粉砕して金属酸化物微粒子(R4)を調製して用いた以外は同様にして触媒用膜状成形体(R4)を調製した。
【0061】
得られた触媒用膜状成形体(R4)について、金属酸化物微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価した結果および担持金属量を表1に示した。
性能評価
実施例1と同様にして触媒用膜状成形体(R4)についてCOのメタネーション反応を行った。CO濃度は80ppmであった。
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
網状支持体に金属酸化物微粒子が付着した膜状成形体であって、該網状支持体が導電性を有し、網目の大きさが0.03〜10mmの範囲にあり、金属酸化物微粒子がIA族、IIA族、IIIA族、IVA族、VA族、VIA族、VIIA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIII
族から選ばれる1種以上からなることを特徴とする膜状成形体。
【請求項2】
前記網状支持体が銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレスから選ばれる1種以上の金
属または合金であることを特徴とする請求項1に記載の膜状成形体。
【請求項3】
前記金属酸化物微粒子の平均粒子径が10nm〜10μmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の膜状成形体。
【請求項4】
前記金属酸化物微粒子に金属が担持されており、該金属がIB族、IIB族、VIII族から選
ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜状成形体。
【請求項5】
前記金属酸化物微粒子がSiO2、Al23、TiO2、ZrO2、NiO、Fe23
CoO、CuO、Re23から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜4の
いずれかに記載の膜状成形体。
【請求項6】
金属酸化物微粒子分散液に導電性の網状支持体を浸漬し、該分散液と網状支持体に直流電圧を印加して、導電性網状支持体上に膜状の金属酸化物微粒子層を形成することを特徴とする膜状成型体の製造方法。
【請求項7】
前記金属酸化物微粒子に金属が担持されており、該金属がIB族、IIB族、VIII族から選
ばれる1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の膜状成型体の製造方法。

【公開番号】特開2008−161810(P2008−161810A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354824(P2006−354824)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】