膜触媒層接合体、膜電極接合体、及びこれらの製造方法
【課題】耐久時間の長い固体高分子形燃料電池の主な構成である膜触媒層接合体、膜電極接合体、及びこれを製造するための方法を提供することを課題とする。
【解決手段】基材シート5上に触媒層3が形成された触媒層転写シート4を使用して製造された膜触媒層接合体1であって、電解質膜2と、電解質膜2の両面に、触媒層転写シート4を熱プレスすることによって電解質膜2よりも一回り小さな大きさで転写形成された触媒層3と、を備え、電解質膜2及び触媒層3によって構成された膜触媒層接合体1の上面側に第1の偏光板7aを、下面側に第2の偏光板7bを偏光軸が第1の偏光板7aの偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、電解質膜2の触媒層3の外周縁から0.2mm以内の検査領域9において、第1の偏光板7aの後方から光を照射した場合に第2の偏光板7bを透過する光の透過率が40%以下である。
【解決手段】基材シート5上に触媒層3が形成された触媒層転写シート4を使用して製造された膜触媒層接合体1であって、電解質膜2と、電解質膜2の両面に、触媒層転写シート4を熱プレスすることによって電解質膜2よりも一回り小さな大きさで転写形成された触媒層3と、を備え、電解質膜2及び触媒層3によって構成された膜触媒層接合体1の上面側に第1の偏光板7aを、下面側に第2の偏光板7bを偏光軸が第1の偏光板7aの偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、電解質膜2の触媒層3の外周縁から0.2mm以内の検査領域9において、第1の偏光板7aの後方から光を照射した場合に第2の偏光板7bを透過する光の透過率が40%以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜触媒層接合体、膜電極接合体、及びこれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質の両面に電極が配置され、水素と酸素の電気化学反応により発電する電池であり、発電時に発生するのは水のみである。このように従来の内燃機関と異なり、二酸化炭素等の環境負荷ガスを発生しないために次世代のクリーンエネルギーシステムとして普及が見込まれている。その中でも特に固体高分子形燃料電池は、作動温度が低く、電解質の抵抗が少ないことに加え、活性の高い触媒を用いるので小型でも高出力を得ることができ、家庭用コージェネレーションシステム等として早期の実用化が見込まれている。
【0003】
この固体高分子形燃料電池は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜の両面に、電解質膜よりも一回り小さい触媒層及びガス拡散層を順に積層している。この電解質膜の両面に触媒層を形成したもの(すなわち、層構成が触媒層/電解質膜/触媒層のもの)は膜触媒層接合体(CCM)と称され、また、電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散層からなる電極を形成したもの(すなわち、層構成がガス拡散層/触媒層/電解質膜/触媒層/ガス拡散層のもの)は膜電極接合体(MEA)と称されている。
【0004】
上記膜触媒層接合体や膜電極接合体を製造する方法としては、電解質膜の両面に触媒層を形成するための触媒層ペーストを塗布及び乾燥させる、いわゆる塗布方式が一般的に採用されている。しかし、この方法によって電解質膜に触媒ペーストを塗布すると、触媒ペースト中に含まれる水やアルコールなどの溶剤によって電解質膜が膨潤変形してしまい、電解質膜表面に所望の触媒層を形成することが困難になるという問題がある。また、電解質膜に塗布した触媒ペーストを乾燥させる工程において、電解質膜が高温に曝されるために電解質膜が熱膨張などを起こし、変形する問題も生じている。
【0005】
上記塗布方式による問題を解決するために、触媒層が基材シート上に形成された触媒層転写シートを使用し、この触媒層転写シートと電解質膜を重ね合わせて熱プレスを施すことにより触媒層を電解質膜に転写形成する、いわゆる転写方式が提案されている(例えば、特許文献1)。この方法は、上記塗布方式の問題を解決し、簡便な方法であるために実用化に至っている。
【特許文献1】特開平10−64574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような転写方式によって固体高分子形燃料電池を製造すると、耐久時間が短い固体高分子形燃料電池が発生するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、良好な耐久性を有する固体高分子形燃料電池の主な構成である膜触媒層接合体、膜電極接合体、及びこれを製造するための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件発明者らは、耐久時間が短い固体高分子形燃料電池がどのような原因で発生するのかを鋭意研究した結果、触媒層や電極を電解質膜に形成した際に発生する電解質膜の歪みが原因であることが判明した。
【0009】
そこで、本発明に係る膜触媒層接合体は、基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを使用して製造された膜触媒層接合体であって、電解質膜と、前記電解質膜の両面に、触媒層転写シートを熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された触媒層と、を備え、前記電解質膜及び触媒層によって構成された膜触媒層接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である。
【0010】
第1の偏光板と第2の偏光板とは偏光軸が約60〜120度異なっているため、また、電解質膜が歪んでいなければ電解質膜を透過する光はその振動方向をほぼ変えずに進行するため、一方の偏光板の後方から照射した光は、膜触媒層接合体の触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において電解質膜が歪んでいなければ他方の偏光板を透過しない。しかし、電解質膜が歪んでいると、電解質膜を透過した光は振動方向が変わって他方の偏光板を透過する。そして、本発明に係る膜触媒層接合体は、他方の透過板を透過する光の透過率が40%以下であるため、電解質膜の歪みが少なく、ひいてはこの膜触媒層接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。なお、更に耐久性を向上させるために透過率を約20%以下とすることもできる。
【0011】
上記膜触媒層接合体は種々の構成をとることができるが、例えば上記触媒層の縦横比は、1:1〜1:5であってもよい。
【0012】
本発明に係る第1の膜電極接合体は、基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写フィルムを使用して製造された膜電極接合体であって、電解質膜と、前記電解質膜の両面に、触媒層転写シートを熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された触媒層と、前記各触媒層上に圧着されたガス拡散層と、を備え、前記電解質膜、触媒層、及びガス拡散層から構成された膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である。
【0013】
本発明に係る第1の膜電極接合体によれば、他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下であるため、電解質膜の歪みが少なく、ひいてはこの膜電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。なお、更に耐久性を向上させるために透過率を約20%以下とすることもできる。
【0014】
本発明に係る第2の膜電極接合体は、ガス拡散層上に触媒層が予め形成された電極を使用して製造された膜電極接合体であって、電解質膜と、前記電解質膜の両面に、触媒層が前記電解質膜側を向いた状態で熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された電極と、を備え、前記電解質膜及び電極からなる膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である。
【0015】
本発明に係る第2の膜電極接合体によれば、他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下であるため、電解質膜の歪みが少なく、ひいてはこの膜電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。なお、更に耐久性を向上させるために透過率を約20%以下とすることもできる。
【0016】
上記第1及び第2の膜電極接合体の電極は、縦横比を1:1〜1:5とすることができる。
【0017】
また、本発明に係る固体高分子形燃料電池は、上記いずれかの膜電極接合体と、触媒層及びガス拡散層を囲むように設置されたガスケットと、膜電極接合体を挟むように設置されたセパレータとを備えている。
【0018】
本発明に係る第1の膜触媒層接合体の製造方法は、電解質膜を準備する工程と、基材シート上に触媒層が形成された、前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層転写シートを準備する工程と、前記電解質膜の両面に、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記触媒層転写シートをそれぞれ設置する工程と、前記触媒層転写シートよりも大きいゲル状部材を、前記各触媒層転写シートを覆うとともに外周縁部が前記電解質膜と接触するよう、前記触媒層転写シート上にそれぞれ配置する工程と、前記ゲル状部材を介して前記触媒層転写シートを熱プレスし、前記電解質膜に前記触媒層を転写形成する工程と、前記触媒層を転写形成した後に、基材シートを剥離する工程と、を備えている。
【0019】
この膜触媒層接合体の製造方法によれば、触媒層転写シートを覆うとともに外周縁部が電解質膜と接触しているゲル状部材を間に介して熱プレスを施している。このため、触媒層転写シートのみに圧力をかけるのではなく、電解質膜と触媒層転写シートとの両方にほぼ均等に圧力をかけることができ、ひいては電解質膜全体に作用する圧力を均等にすることができる。この結果、熱プレス時に電解質膜に生じる歪みを低減することができ、ひいてはこの膜触媒層接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0020】
上記ゲル状部材は、ヤング率(圧縮弾性率)が30〜300kPaの弾性体であることが好ましい。このようにヤング率(圧縮弾性率)を30kPa以上とすることで熱プレスに耐えることができ、また、上限を300kPaとすることで触媒層と電解質膜の段差に十分追従させることができる。
【0021】
本発明に係る第1の膜電極接合体の製造方法は、上述した膜触媒層接合体の製造方法と、前記電解質膜の両面に触媒層が形成された膜触媒層接合体の各触媒層上に、ガス拡散層を圧着させる工程と、を備えている。この方法によれば、上述したように、熱プレス時に電解質膜に生じる歪みを低減することができ、ひいてはこの膜電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0022】
本発明に係る第2の膜電極接合体の製造方法は、電解質膜を準備する工程と、ガス拡散層上に触媒層が形成された電極を電解質膜の両面に配置する工程と、前記電極よりも大きいゲル状部材を、前記電極を覆うとともに外周縁部が前記電解質膜と接触するよう、前記電極上にそれぞれ配置する工程と、前記ゲル状部材を介して前記電極を熱プレスし、前記電解質膜上に前記電極を形成する工程と、を備えている。
【0023】
この膜電極接合体の製造方法によれば、電極を覆うとともに外周縁部が電解質膜と接触しているゲル状部材を間に介して熱プレスを施している。このため、電極のみに圧力をかけるのではなく、電解質膜と電極との両方にほぼ均等に圧力をかけることができ、ひいては電解質膜全体に作用する圧力を均等にすることができる。この結果、熱プレス時に電解質膜に生じる歪みを低減することができ、ひいてはこの膜電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0024】
上記ゲル状部材は、ヤング率(圧縮弾性率)が30〜300kPaの弾性体であることが好ましい。
【0025】
本発明に係る第2の膜触媒層接合体の製造方法は、電解質膜を準備する工程と、基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、前記触媒層転写シートを熱プレスして、前記電解質膜の両面に前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層を転写形成する工程と、前記基材シートを剥離して、膜触媒層接合体を形成する工程と、前記膜触媒層接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、を備えている。
【0026】
この膜触媒層接合体の製造方法によれば、2つの偏光板の間に膜触媒層接合体を配置し、一方の偏光板の後方から光を照射して他方の偏光板を透過した光の透過率を測定し、この光の透過率を元に膜触媒層接合体が良品か否かを判断して良品のみを取り出している。この光の透過率は上述したように電解質膜の歪みと密接に関係しているため、この膜触媒層接合体の製造方法を採用すれば、電解質膜の歪みが少ない膜触媒層接合体のみを使用して固体高分子形燃料電池を製造することができ、ひいては、固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0027】
なお、上記膜触媒層接合体を良品か不良品か区別するための光の透過率は、検査領域によって変わってくるが、上記検査領域を電解質膜の触媒層の外周縁から0.2mmの範囲内とした場合は、光の透過率が40%以下のものを良品として後工程に流すことが好ましい。この条件に合う膜触媒層接合体を使用した固体高分子形燃料電池は良好な耐久性を示す。なお、更に耐久性を向上させるために透過率が約20%以下のものを良品としてもよい。
【0028】
本発明に係る第3の膜電極接合体の製造方法は、電解質膜を準備する工程と、基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、前記触媒層転写シートを熱プレスして、前記電解質膜の両面に前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層を転写形成する工程と、前記基材シートを剥離する工程と、前記各触媒層上にガス拡散層を圧着して膜電極接合体を形成する工程と、前記膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、を備えている。
【0029】
この膜電極接合体の製造方法によれば、膜電極接合体を2つの偏光板の間に配置し、一方の偏向板の後方から光を照射して他方の偏光板を透過した光の透過率を測定し、この光の透過率を元に膜電極接合体が良品か否かを判断している。この光の透過率は上述したように電解質膜の歪みと密接に関係しているため、この膜電極接合体の製造方法を採用すれば、電解質膜の歪みが少ない膜電極接合体のみを使用して固体高分子形燃料電池を製造することができ、ひいては固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0030】
本発明に係る第4の膜電極接合体の製造方法は、電解質膜を準備する工程と、前記電解質膜よりも一回り小さいガス拡散層上に触媒層が形成された電極を、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、前記電解質膜の両面に電極を熱プレスして膜電極接合体を形成する工程と、前記膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、を備えている。
【0031】
この膜電極接合体の製造方法によれば、膜電極接合体を2つの偏光板の間に配置し、一方の偏向板の後方から光を照射して他方の偏光板を透過した光の透過率を測定し、この光の透過率を元に膜電極接合体が良品か否かを判断している。この光の透過率は上述したように電解質膜の歪みと密接に関係しているため、この膜電極接合体の製造方法を採用すれば、電解質膜の歪みが少ない膜電極接合体のみを使用して固体高分子形燃料電池を製造することができ、ひいては固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0032】
なお、上記膜電極接合体を良品か不良品か区別するための光の透過率は、検査領域によって変わってくるが、上記検査領域を電解質膜の触媒層の外周縁から0.2mmの範囲内とした場合は、光の透過率が40%以下のものを良品として後工程に流すことが好ましい。この条件に合う膜電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池は良好な耐久性を示す。なお、更に耐久性を向上させるために透過率が約20%以下のものを良品としてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、良好な耐久性を有する固体高分子形燃料電池の主な構成である膜触媒層接合体、膜電極接合体、及びこれを製造するための方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る膜触媒層接合体の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0035】
膜触媒層接合体
図1に示すように、膜触媒層接合体1は、平面視矩形状の電解質膜2と、電解質膜2の両面に形成された平面視矩形状の触媒層3とを有している。
【0036】
電解質膜2は、例えば、基材上に水素イオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を塗工し、乾燥することにより形成される。水素イオン伝導性高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC−H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等が挙げられる。水素イオン伝導性高分子電解質含有溶液中に含まれる水素イオン伝導性高分子電解質の濃度は、通常5〜60重量%程度、好ましくは20〜40重量%程度である。なお、電解質膜2の膜厚は通常20〜250μm程度、好ましくは20〜80μm程度である。
【0037】
触媒層3は、公知の白金含有の触媒層(カソード触媒及びアノード触媒)である。詳しくは、触媒層3は、触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を含有する。触媒粒子としては、例えば、白金や白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、白金との合金等が挙げられる。なお、通常は、カソード触媒層に含まれる触媒粒子は白金であり、アノード触媒層に含まれる触媒粒子は上記金属と白金との合金である。また、水素イオン伝導性高分子電解質としては、上述した電解質膜2に使用されるものと同じ材料を使用することができる。
【0038】
膜触媒層接合体の製造方法
以上のように構成された膜触媒層接合体1の製造方法について説明すると、まず、図2に示すように、上述した材料からなる電解質膜2を準備し、この電解質膜2の上面及び下面に触媒層転写シート4を重ねて配置する(図2(a))。
【0039】
触媒層転写シート4とは、転写される触媒層3が基材シート5上に形成されたものである。この触媒層転写シート4の製造方法について説明すると、まず、上述した触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を適当な溶剤に混合、分散して触媒ペーストを作製する。そして、形成される触媒層3が所望の膜厚になるように触媒ペーストを公知の方法に従い、必要に応じて離型層を介して基材シート5上に塗工する。触媒ペーストの塗工方法としては、スクリーン印刷や、スプレーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティングなどの公知の塗工方法を挙げることができる。また、上記の溶剤としては、各種アルコール類、各種エーテル類、各種ジアルキルスルホキシド類、水またはこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でもアルコール類が好ましい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、等の炭素数1〜4の一価アルコール、各種の多価アルコール等が挙げられる。基材シート5としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、パラバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子シートを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。さらに基材シート5は、高分子シート以外にアート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、ノート用紙、コピー用紙などの非塗工紙であっても良い。基材シート5の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から通常6〜100μm程度、好ましくは10〜30μm程度程度とするのがよい。従って、基材シート5としては、安価で入手が容易な高分子シートが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。
【0040】
そして、触媒ペーストを塗工した後、所定の温度及び時間で乾燥することにより基材シート5上に触媒層3が形成される。乾燥温度は、通常40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃程度である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは10分〜1時間程度である。
【0041】
図2に戻って、膜触媒層接合体1の製造方法について説明を続ける。触媒層3が電解質膜2を向くようにして上述した触媒層転写シート4を電解質膜2の上面及び下面に重ねて配置する(図2(a))。そして、この各触媒層転写シート4上に、ゲル状部材6を配置する。ゲル状部材6は、図2(b)に示すように、触媒層転写シート4よりも一回り大きく形成されており、触媒層転写シート4を覆うとともに、外周縁部が電解質膜2上に接触している。このゲル状部材6は、電解質膜2上に触媒転写シート4を重ねて配置したものの輪郭に沿うような形状に変形するものであって、熱プレスの熱や圧力を伝えるとともにこれらに耐えうるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは、材質にシリコンを使用したゲルシートなどを使用することができる。また、ゲル状部材6は、ヤング率(圧縮弾性率)が30〜300kPaで、厚みが0.5〜3mmであることが好ましい。
【0042】
そして、このようなゲル状部材6を介して、各触媒層転写シート4の背面側から熱プレスを施して触媒層転写シート4の触媒層3を電解質膜2上に転写させる(図2(c))。熱プレスの加圧レベルは、転写不良を避けるために、通常0.5〜20MPa程度、好ましくは1〜10MPa程度がよい。また、この加圧操作の際に、転写不良を避けるために加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜2の破損、変形等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは150℃以下がよい。作業性を考慮すると、触媒層3を電解質膜2の両面に同時に積層することが好ましいが片面ずつ触媒層3を形成することもできる。
【0043】
その後、各ゲル状部材6を取り除いて、基材シート5を剥離する。このように電解質膜2の両面に触媒層3を形成することで膜触媒層接合体1が形成される(図2(d))。
【0044】
次に、上述したように製造した膜触媒層接合体1の電解質膜2の歪みが基準内であるか検査する。この検査方法は、図3に示すように、まず、膜触媒層接合体1の上面(第1の面)側に第1の偏光板7aを配置するとともに、膜触媒層接合体1の下面(第2の面)側に第2の偏光板7bを配置する。偏光板7としては、例えば、ヨウ素系偏光板、染料系偏光板を用いることができる。光学的歪みを、その周囲とのコントラストが良好な状態で見やすくするために、第1の偏光板7aの偏光軸と第2の偏光板7bの偏光軸とが互いに交差する角度を約60〜120°になるように設置することが好ましく、約90度にすることがさらに好ましい。
【0045】
このように各偏光板7a、7bを配置した後、第1の偏光板7aの上方(後方)に光源8を設置して光を照射する。そして、図3及び図4に示すように、電解質膜2の触媒層3の外周縁から所定距離範囲内を検査領域9とし、この検査領域9にて第2の偏光板7bを透過する光の透過率を調べる。好ましくは、触媒層3の外周縁から約0.2mmの範囲内を検査領域9とし、この検査領域9において第2の偏光板7bを透過する光の透過率が約40%以下であれば、電解質膜2の歪みが少なく基準内(良品)であると判断する。なお、光源によって照射される光は公知の光でよく、例えば自然光、ハロゲン光、蛍光灯などを照射することができる。また、このときの光の透過率を測定する方法は、種々の方法が考えられるが、例えば、撮影手段によって第2の偏光板7bを透過した光を撮影し、この撮影画像を画像解析ソフトなどの解析手段によって透過部分と非透過部分とに二値化して透過率を測定することができる。
【0046】
以上、本実施形態によれば、熱プレスする際にゲル状部材6を介しているため、電解質膜2に作用する圧力をほぼ均等にすることができ、この結果、検査領域9において第2の偏光板7bを透過する光の透過率が40%以下の膜触媒層接合体1を得ることができる。この光の透過率は電解質膜の歪みに密接に関係しており、電解質膜2が歪んでいなければ、光源8から照射された光は、電解質膜2を透過しても第1の偏光板7aによって偏光されたままの振動方向で第2の偏光板7bまで進行するため、偏光軸が第1の偏光板の偏光軸と約60〜120度の角度をなす第2の偏光板7bを透過しない。また、電解質膜2が歪んでいれば、光源8から照射された光は、電解質膜2を透過すると、第1の偏光板7aによって偏光されたままの振動方向ではなく、種々の振動方向を有する光となるため、第2の偏光板7bを透過する。このように、電解質膜2が歪んでいないほど、検査領域9において第2の偏光板7bを透過する光の透過率が低くなるため、透過率が40%以下の膜触媒層接合体1は、電解質膜2の歪みが少ない。また、このように電解質膜2の歪みが少ない膜触媒層接合体1を使用して製造された固体高分子形燃料電池は、良好な耐久性を有している。
【0047】
膜電極接合体
次に、膜電極接合体10について説明する。図5に示すように、膜電極接合体10は、上述した膜触媒層接合体1の各触媒層3上にガス拡散層11が形成されている。
【0048】
ガス拡散層11は、公知であり、燃料極、空気極を構成する各種のガス拡散層を使用でき、燃料である燃料ガス及び酸化剤ガスを効率よく触媒層3に供給するため、多孔質の導電性基材からなっている。多孔質の導電性基材としては、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロス等が挙げられる。
【0049】
この膜電極接合体10は、以下のように製造することができる。すなわち、上述したような手順で膜触媒層接合体1を製造する。そして、各触媒層3上に上述したガス拡散層11を圧着により積層形成して膜電極接合体10が完成する。また、膜電極接合体10はこれ以外の方法によっても製造することができる。まず、図6に示すように、上述した材料からなるガス拡散層11を準備する。そして、このガス拡散層11上に所望の膜厚になるように触媒ペーストを、公知の方法に従い塗工することにより触媒層3を形成する。触媒ペーストの塗工方法としては、上記と同様、スクリーン印刷や、スプレーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティングなどの公知の塗工方法を挙げることができる。このようにガス拡散層11上に触媒層3が形成された電極12を、触媒層3が電解質膜2側を向くように電解質膜2の上面及び下面に重ねて配置する(図6(a))。
【0050】
そして、この各電極12上に、上述したのと同様のゲル状部材6を配置する。ゲル状部材6は、図6(b)に示すように、電極12よりも一回り大きく形成されており、電極12を覆うとともに、外周縁部が電解質膜2上に接触している。
【0051】
そして、図6(c)に示すように、ゲル状部材6を介して各電極12の背面側から熱プレスを施して各電極12を電解質膜2の上面及び下面に接合させる。このときの熱プレスの加圧レベルは、接合不良を避けるために、通常0.5〜20MPa程度、好ましくは1〜10MPa程度がよい。また、この加圧操作の際に、接合不良を避けるために加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜2の破損、変形等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは150℃以下がよい。このように電解質膜2の両面に電極12を形成することで膜電極接合体10が形成される(図6(d))。
【0052】
このように形成した膜電極接合体10は、上述した膜触媒層接合体1のときと同様の方法で光の透過率が測定され、光の透過率が40%以下であれば膜電極接合体10の電解質膜2の歪みは問題無いとして後工程へと送られる。
【0053】
本実施形態によれば、熱プレスする際にゲル状部材6を使用しているため、電解質膜2に作用する圧力をほぼ均等にすることができ、この結果、検査領域9において第2の偏光板7bを透過する光の透過率が40%以下の膜電極接合体10を得ることができる、すなわち、電解質膜2の歪みが少ない膜電極接合体10を得ることができる。なお、上述したように、光の透過率は電解質膜2の歪みに密接に関係しており、電解質膜2が歪んでいないほど、検査領域9において第2の偏光板7bを透過する光の透過率が低くなるため、透過率が40%以下の膜電極接合体10は電解質膜2の歪みが少ないということが言える。また、このように電解質膜2の歪みが少ない膜電極接合体10を使用して製造された固体高分子形燃料電池は、良好な耐久性を有している。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、熱プレスする際にゲル状部材6を使用することによって、電解質膜2に生じる歪みを低減させているが、例えば熱プレス条件を調整することによっても電解質膜2に歪みが生じることを防止することができる。例えば、熱プレスの条件を100〜125℃、1〜3MPa、60〜120秒とすることが、電解質膜2の歪みを低減させるのに好ましい。
【0055】
また、上記実施形態では、検査領域9を電解質膜2における触媒層3の外周縁から約0.2mmの範囲内としているが、特にこれに限定されるものではなく、例えば検査領域を0.2mmの範囲よりも大きくしたり、小さくすることができる。またさらには、上記実施形態では、透過率が約40%以下の膜電解質接合体や膜電極接合体を歪みが少ない良品として判断しているが、より耐久性を向上させるために良品と判断する際の透過率を約20%以下とすることもできる。
【0056】
また、上記実施形態では、触媒層3の形状は、特に限定していないが、略円形(円形、楕円形、卵形など種々の円形を含む)であってもよいし、矩形状であっても良い。矩形状の場合は、正方形であってもよいし、長方形であってもよい。触媒層3が長方形の場合、通常、触媒層転写シート4で転写形成すると電解質膜2に歪みが生じやすいが、上述したようなゲル状部材6を使用すれば、透過率40%以下にて膜触媒層接合体1や膜電極接合体10を製造することができ、電解質膜2の歪みを抑えることができる。
【0057】
また、上記実施形態の膜電極接合体10の触媒層3及びガス拡散層11の周囲を囲むように電解質膜2上にガスケットを配置するとともに、膜電極接合体10を上面及び下面から挟むようにセパレータを設置して、固体高分子形燃料電池を製造することもできる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
まず、触媒層転写シート4を以下の要領で作製した。白金触媒担持カーボン(白金担持量:45.7wt%、田中貴金属社製、TEC10E50E)2gに、イソプロピルアルコール20g、フッ素樹脂(5wt%ナフィオンバインダー、デュポン社製)20g、及び水6gを加えた。そして、これらを分散機によって攪拌混合して触媒層ペーストを調製した。次に、触媒層3が乾燥した後の白金重量が0.4mg/cm2となるように、基材シート5(東洋紡績社製、E5100、厚さ12μm)に塗工して、触媒層転写シート4を作製し、これを60×60mmの大きさに2枚切断した。この触媒層転写シート4を電解質膜2(63×63mm、厚さ53μm、NRE212CS(Dupont社製))の両面に重ねて配置した。そして、この電解質膜2と触媒層転写シート4とを挟むようにゲル状部材6((λGEL COH−6000LVC(GELTEC社製)厚さ3mm))をさらに重ねて配置し、このゲル状部材6を介して、触媒層転写シート4を130℃、5.0MPa、120秒のプレス条件で熱プレスすることで、触媒層3を電解質膜2に転写した。最後に、基材シート5を剥離し、膜触媒層接合体1を作製した。
【0060】
(実施例2)
触媒層転写シート4の大きさが30×150mm(縦横比1:5)、電解質膜2の大きさが70×200mm、熱プレス条件が130℃、5.0MPa、120秒である点以外、実施例1と同材料、同条件で膜触媒層接合体1を作製した。
【0061】
(実施例3)
ゲル状部材6に((αGEL θ−7(GELTEC社製)厚さ3mm))を使用した点以外、実施例1と同材料、同条件で膜触媒層接合体1を作製した。
【0062】
(実施例4)
ゲル状部材6に((人肌のゲル 硬度5(エクシールコーポレーション社製)厚さ2mm))を使用した点以外、実施例1と同材料、同条件で膜触媒層接合体1を作製した。
【0063】
(実施例5)
実施例1と同一の触媒層ペーストを、触媒層3が乾燥した後の白金重量が0.4mg/cm2となるように、ガス拡散層11(カーボンペーパー:(東レ社製、TGP−H090、厚さ280μm))に塗工して、電極12を作製し、これを50×50mmの大きさに2枚切断した。この電極12を電解質膜2(63×63mm、厚さ53μm、NRE212CS(Dupont社製))の両面に重ねて配置した。そして、この電解質膜2と電極12とを挟むようにゲル状部材6((λGEL COH−6000LVC(GELTEC社製)厚さ3mm))をさらに重ねて配置し、このゲル状部材6を介して、電極12を130℃、3.0MPa、120秒のプレス条件で熱プレスすることで、触媒層3を電解質膜2に接合し、膜電極接合体10を作製した。
【0064】
(比較例1)
ゲル状部材6を使用しない点、及びプレス条件が異なる点以外は、上記実施例1と同様に膜触媒層接合体を作製した。なお、プレス条件は、130℃、30MPa、150秒とした。
【0065】
(比較例2)
ゲル状部材6を使用しない点、及びプレス条件が異なる点以外は、上記実施例2と同様に膜触媒層接合体を作製した。なお、プレス条件は、130℃、30MPa、150秒とした。
【0066】
(比較例3)
ゲル状部材6を使用しない点、及びプレス条件が異なる点以外は、上記実施例5と同様に膜電極接合体を作製した。なお、プレス条件は、130℃、30MPa、150秒とした。
【0067】
(評価方法1)
上記実施例1〜5、及び比較例1〜3の膜触媒層接合体又は膜電極接合体を、2枚の偏光板(PLフィルター 厚さ0.7mm、ケンコー株式会社製)の間に配置し、一方の偏光板の後方から光を照射し、他方の偏光板の後方から倍率50倍で写真撮影をした。これによって得られた撮影画像を上記観測より得られた撮影画像を、画像解析ソフトImage−ProPLUS(Media Cybernetics社製)を用いて二値化し、検査領域(触媒層の外周縁から0.2mmの範囲内)における透過率を測定した。その結果を表1に示す。また、図7〜図14に、各実施例及び比較例の撮影画像(a)及び二値化画像(b)を示す。図7〜図14において、下半分が触媒層又は電極となっており、上半分が電解質膜となっている。また、二値化画像における白色の部分(カラー画像においては黄色の部分)は光が透過した部分である。
【0068】
(評価方法2)
上記実施例1〜4及び比較例1,2の膜触媒層接合体の各触媒層3上に触媒層3と同サイズのガス拡散層11(東レ社製 TGP−H090 厚さ 280μm)を配置し、膜電極接合体10とする。そして、実施例1〜5及び比較例1〜3の膜電極接合体10に、各電極12を囲むようにガスケットを設置する。これを両面から挟むようにセパレータを設置し、さらに集電板も設置して単セルを形成する。このように実施例1〜5及び比較例1〜3の膜触媒層接合体又は膜電極接合体から形成された各単セルに対して、負荷変動サイクル試験を実施した。このときの測定条件は、セル温度80℃、燃料利用率70%、酸化剤利用率40%、加湿温度50℃とした。また、負荷変動サイクル試験として、電流密度0.3A/cm2にて1分間発電した後、電流密度0.01A/cm2にて1分間発電するサイクルを繰り返した。この試験結果として、電圧が低下するまでの時間を耐久性時間とし、また、この負荷変動サイクル試験後の電解質膜の破れの有無を表1に記載した。
【0069】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る膜触媒層接合体の実施形態を示す正面図である。
【図2】本実施形態に係る膜触媒層接合体の製造方法を示す説明図である。
【図3】本実施形態に係る膜触媒層接合体の電解質膜の歪みを検査する方法を示す説明図である。
【図4】図3をA方向から見た底面図である。
【図5】本発明に係る膜電極接合体の実施形態を示す正面図である。
【図6】本実施形態に係る膜電極接合体の製造方法を示す説明図である。
【図7】実施例1に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図8】実施例2に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図9】実施例3に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図10】実施例4に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図11】実施例5に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図12】比較例1に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図13】比較例2に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図14】比較例3に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【符号の説明】
【0071】
1 膜触媒層接合体
2 電解質膜
3 触媒層
4 触媒層転写シート
5 基材シート
6 ゲル状部材
7a 第1の偏光板
7b 第2の偏光板
8 光源
9 検査領域
10 膜電極接合体
11 ガス拡散層
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜触媒層接合体、膜電極接合体、及びこれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質の両面に電極が配置され、水素と酸素の電気化学反応により発電する電池であり、発電時に発生するのは水のみである。このように従来の内燃機関と異なり、二酸化炭素等の環境負荷ガスを発生しないために次世代のクリーンエネルギーシステムとして普及が見込まれている。その中でも特に固体高分子形燃料電池は、作動温度が低く、電解質の抵抗が少ないことに加え、活性の高い触媒を用いるので小型でも高出力を得ることができ、家庭用コージェネレーションシステム等として早期の実用化が見込まれている。
【0003】
この固体高分子形燃料電池は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜の両面に、電解質膜よりも一回り小さい触媒層及びガス拡散層を順に積層している。この電解質膜の両面に触媒層を形成したもの(すなわち、層構成が触媒層/電解質膜/触媒層のもの)は膜触媒層接合体(CCM)と称され、また、電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散層からなる電極を形成したもの(すなわち、層構成がガス拡散層/触媒層/電解質膜/触媒層/ガス拡散層のもの)は膜電極接合体(MEA)と称されている。
【0004】
上記膜触媒層接合体や膜電極接合体を製造する方法としては、電解質膜の両面に触媒層を形成するための触媒層ペーストを塗布及び乾燥させる、いわゆる塗布方式が一般的に採用されている。しかし、この方法によって電解質膜に触媒ペーストを塗布すると、触媒ペースト中に含まれる水やアルコールなどの溶剤によって電解質膜が膨潤変形してしまい、電解質膜表面に所望の触媒層を形成することが困難になるという問題がある。また、電解質膜に塗布した触媒ペーストを乾燥させる工程において、電解質膜が高温に曝されるために電解質膜が熱膨張などを起こし、変形する問題も生じている。
【0005】
上記塗布方式による問題を解決するために、触媒層が基材シート上に形成された触媒層転写シートを使用し、この触媒層転写シートと電解質膜を重ね合わせて熱プレスを施すことにより触媒層を電解質膜に転写形成する、いわゆる転写方式が提案されている(例えば、特許文献1)。この方法は、上記塗布方式の問題を解決し、簡便な方法であるために実用化に至っている。
【特許文献1】特開平10−64574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような転写方式によって固体高分子形燃料電池を製造すると、耐久時間が短い固体高分子形燃料電池が発生するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、良好な耐久性を有する固体高分子形燃料電池の主な構成である膜触媒層接合体、膜電極接合体、及びこれを製造するための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件発明者らは、耐久時間が短い固体高分子形燃料電池がどのような原因で発生するのかを鋭意研究した結果、触媒層や電極を電解質膜に形成した際に発生する電解質膜の歪みが原因であることが判明した。
【0009】
そこで、本発明に係る膜触媒層接合体は、基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを使用して製造された膜触媒層接合体であって、電解質膜と、前記電解質膜の両面に、触媒層転写シートを熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された触媒層と、を備え、前記電解質膜及び触媒層によって構成された膜触媒層接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である。
【0010】
第1の偏光板と第2の偏光板とは偏光軸が約60〜120度異なっているため、また、電解質膜が歪んでいなければ電解質膜を透過する光はその振動方向をほぼ変えずに進行するため、一方の偏光板の後方から照射した光は、膜触媒層接合体の触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において電解質膜が歪んでいなければ他方の偏光板を透過しない。しかし、電解質膜が歪んでいると、電解質膜を透過した光は振動方向が変わって他方の偏光板を透過する。そして、本発明に係る膜触媒層接合体は、他方の透過板を透過する光の透過率が40%以下であるため、電解質膜の歪みが少なく、ひいてはこの膜触媒層接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。なお、更に耐久性を向上させるために透過率を約20%以下とすることもできる。
【0011】
上記膜触媒層接合体は種々の構成をとることができるが、例えば上記触媒層の縦横比は、1:1〜1:5であってもよい。
【0012】
本発明に係る第1の膜電極接合体は、基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写フィルムを使用して製造された膜電極接合体であって、電解質膜と、前記電解質膜の両面に、触媒層転写シートを熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された触媒層と、前記各触媒層上に圧着されたガス拡散層と、を備え、前記電解質膜、触媒層、及びガス拡散層から構成された膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である。
【0013】
本発明に係る第1の膜電極接合体によれば、他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下であるため、電解質膜の歪みが少なく、ひいてはこの膜電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。なお、更に耐久性を向上させるために透過率を約20%以下とすることもできる。
【0014】
本発明に係る第2の膜電極接合体は、ガス拡散層上に触媒層が予め形成された電極を使用して製造された膜電極接合体であって、電解質膜と、前記電解質膜の両面に、触媒層が前記電解質膜側を向いた状態で熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された電極と、を備え、前記電解質膜及び電極からなる膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である。
【0015】
本発明に係る第2の膜電極接合体によれば、他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下であるため、電解質膜の歪みが少なく、ひいてはこの膜電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。なお、更に耐久性を向上させるために透過率を約20%以下とすることもできる。
【0016】
上記第1及び第2の膜電極接合体の電極は、縦横比を1:1〜1:5とすることができる。
【0017】
また、本発明に係る固体高分子形燃料電池は、上記いずれかの膜電極接合体と、触媒層及びガス拡散層を囲むように設置されたガスケットと、膜電極接合体を挟むように設置されたセパレータとを備えている。
【0018】
本発明に係る第1の膜触媒層接合体の製造方法は、電解質膜を準備する工程と、基材シート上に触媒層が形成された、前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層転写シートを準備する工程と、前記電解質膜の両面に、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記触媒層転写シートをそれぞれ設置する工程と、前記触媒層転写シートよりも大きいゲル状部材を、前記各触媒層転写シートを覆うとともに外周縁部が前記電解質膜と接触するよう、前記触媒層転写シート上にそれぞれ配置する工程と、前記ゲル状部材を介して前記触媒層転写シートを熱プレスし、前記電解質膜に前記触媒層を転写形成する工程と、前記触媒層を転写形成した後に、基材シートを剥離する工程と、を備えている。
【0019】
この膜触媒層接合体の製造方法によれば、触媒層転写シートを覆うとともに外周縁部が電解質膜と接触しているゲル状部材を間に介して熱プレスを施している。このため、触媒層転写シートのみに圧力をかけるのではなく、電解質膜と触媒層転写シートとの両方にほぼ均等に圧力をかけることができ、ひいては電解質膜全体に作用する圧力を均等にすることができる。この結果、熱プレス時に電解質膜に生じる歪みを低減することができ、ひいてはこの膜触媒層接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0020】
上記ゲル状部材は、ヤング率(圧縮弾性率)が30〜300kPaの弾性体であることが好ましい。このようにヤング率(圧縮弾性率)を30kPa以上とすることで熱プレスに耐えることができ、また、上限を300kPaとすることで触媒層と電解質膜の段差に十分追従させることができる。
【0021】
本発明に係る第1の膜電極接合体の製造方法は、上述した膜触媒層接合体の製造方法と、前記電解質膜の両面に触媒層が形成された膜触媒層接合体の各触媒層上に、ガス拡散層を圧着させる工程と、を備えている。この方法によれば、上述したように、熱プレス時に電解質膜に生じる歪みを低減することができ、ひいてはこの膜電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0022】
本発明に係る第2の膜電極接合体の製造方法は、電解質膜を準備する工程と、ガス拡散層上に触媒層が形成された電極を電解質膜の両面に配置する工程と、前記電極よりも大きいゲル状部材を、前記電極を覆うとともに外周縁部が前記電解質膜と接触するよう、前記電極上にそれぞれ配置する工程と、前記ゲル状部材を介して前記電極を熱プレスし、前記電解質膜上に前記電極を形成する工程と、を備えている。
【0023】
この膜電極接合体の製造方法によれば、電極を覆うとともに外周縁部が電解質膜と接触しているゲル状部材を間に介して熱プレスを施している。このため、電極のみに圧力をかけるのではなく、電解質膜と電極との両方にほぼ均等に圧力をかけることができ、ひいては電解質膜全体に作用する圧力を均等にすることができる。この結果、熱プレス時に電解質膜に生じる歪みを低減することができ、ひいてはこの膜電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0024】
上記ゲル状部材は、ヤング率(圧縮弾性率)が30〜300kPaの弾性体であることが好ましい。
【0025】
本発明に係る第2の膜触媒層接合体の製造方法は、電解質膜を準備する工程と、基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、前記触媒層転写シートを熱プレスして、前記電解質膜の両面に前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層を転写形成する工程と、前記基材シートを剥離して、膜触媒層接合体を形成する工程と、前記膜触媒層接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、を備えている。
【0026】
この膜触媒層接合体の製造方法によれば、2つの偏光板の間に膜触媒層接合体を配置し、一方の偏光板の後方から光を照射して他方の偏光板を透過した光の透過率を測定し、この光の透過率を元に膜触媒層接合体が良品か否かを判断して良品のみを取り出している。この光の透過率は上述したように電解質膜の歪みと密接に関係しているため、この膜触媒層接合体の製造方法を採用すれば、電解質膜の歪みが少ない膜触媒層接合体のみを使用して固体高分子形燃料電池を製造することができ、ひいては、固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0027】
なお、上記膜触媒層接合体を良品か不良品か区別するための光の透過率は、検査領域によって変わってくるが、上記検査領域を電解質膜の触媒層の外周縁から0.2mmの範囲内とした場合は、光の透過率が40%以下のものを良品として後工程に流すことが好ましい。この条件に合う膜触媒層接合体を使用した固体高分子形燃料電池は良好な耐久性を示す。なお、更に耐久性を向上させるために透過率が約20%以下のものを良品としてもよい。
【0028】
本発明に係る第3の膜電極接合体の製造方法は、電解質膜を準備する工程と、基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、前記触媒層転写シートを熱プレスして、前記電解質膜の両面に前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層を転写形成する工程と、前記基材シートを剥離する工程と、前記各触媒層上にガス拡散層を圧着して膜電極接合体を形成する工程と、前記膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、を備えている。
【0029】
この膜電極接合体の製造方法によれば、膜電極接合体を2つの偏光板の間に配置し、一方の偏向板の後方から光を照射して他方の偏光板を透過した光の透過率を測定し、この光の透過率を元に膜電極接合体が良品か否かを判断している。この光の透過率は上述したように電解質膜の歪みと密接に関係しているため、この膜電極接合体の製造方法を採用すれば、電解質膜の歪みが少ない膜電極接合体のみを使用して固体高分子形燃料電池を製造することができ、ひいては固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0030】
本発明に係る第4の膜電極接合体の製造方法は、電解質膜を準備する工程と、前記電解質膜よりも一回り小さいガス拡散層上に触媒層が形成された電極を、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、前記電解質膜の両面に電極を熱プレスして膜電極接合体を形成する工程と、前記膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、を備えている。
【0031】
この膜電極接合体の製造方法によれば、膜電極接合体を2つの偏光板の間に配置し、一方の偏向板の後方から光を照射して他方の偏光板を透過した光の透過率を測定し、この光の透過率を元に膜電極接合体が良品か否かを判断している。この光の透過率は上述したように電解質膜の歪みと密接に関係しているため、この膜電極接合体の製造方法を採用すれば、電解質膜の歪みが少ない膜電極接合体のみを使用して固体高分子形燃料電池を製造することができ、ひいては固体高分子形燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0032】
なお、上記膜電極接合体を良品か不良品か区別するための光の透過率は、検査領域によって変わってくるが、上記検査領域を電解質膜の触媒層の外周縁から0.2mmの範囲内とした場合は、光の透過率が40%以下のものを良品として後工程に流すことが好ましい。この条件に合う膜電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池は良好な耐久性を示す。なお、更に耐久性を向上させるために透過率が約20%以下のものを良品としてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、良好な耐久性を有する固体高分子形燃料電池の主な構成である膜触媒層接合体、膜電極接合体、及びこれを製造するための方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る膜触媒層接合体の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0035】
膜触媒層接合体
図1に示すように、膜触媒層接合体1は、平面視矩形状の電解質膜2と、電解質膜2の両面に形成された平面視矩形状の触媒層3とを有している。
【0036】
電解質膜2は、例えば、基材上に水素イオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を塗工し、乾燥することにより形成される。水素イオン伝導性高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC−H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等が挙げられる。水素イオン伝導性高分子電解質含有溶液中に含まれる水素イオン伝導性高分子電解質の濃度は、通常5〜60重量%程度、好ましくは20〜40重量%程度である。なお、電解質膜2の膜厚は通常20〜250μm程度、好ましくは20〜80μm程度である。
【0037】
触媒層3は、公知の白金含有の触媒層(カソード触媒及びアノード触媒)である。詳しくは、触媒層3は、触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を含有する。触媒粒子としては、例えば、白金や白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、白金との合金等が挙げられる。なお、通常は、カソード触媒層に含まれる触媒粒子は白金であり、アノード触媒層に含まれる触媒粒子は上記金属と白金との合金である。また、水素イオン伝導性高分子電解質としては、上述した電解質膜2に使用されるものと同じ材料を使用することができる。
【0038】
膜触媒層接合体の製造方法
以上のように構成された膜触媒層接合体1の製造方法について説明すると、まず、図2に示すように、上述した材料からなる電解質膜2を準備し、この電解質膜2の上面及び下面に触媒層転写シート4を重ねて配置する(図2(a))。
【0039】
触媒層転写シート4とは、転写される触媒層3が基材シート5上に形成されたものである。この触媒層転写シート4の製造方法について説明すると、まず、上述した触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を適当な溶剤に混合、分散して触媒ペーストを作製する。そして、形成される触媒層3が所望の膜厚になるように触媒ペーストを公知の方法に従い、必要に応じて離型層を介して基材シート5上に塗工する。触媒ペーストの塗工方法としては、スクリーン印刷や、スプレーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティングなどの公知の塗工方法を挙げることができる。また、上記の溶剤としては、各種アルコール類、各種エーテル類、各種ジアルキルスルホキシド類、水またはこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でもアルコール類が好ましい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、等の炭素数1〜4の一価アルコール、各種の多価アルコール等が挙げられる。基材シート5としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、パラバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子シートを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。さらに基材シート5は、高分子シート以外にアート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、ノート用紙、コピー用紙などの非塗工紙であっても良い。基材シート5の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から通常6〜100μm程度、好ましくは10〜30μm程度程度とするのがよい。従って、基材シート5としては、安価で入手が容易な高分子シートが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。
【0040】
そして、触媒ペーストを塗工した後、所定の温度及び時間で乾燥することにより基材シート5上に触媒層3が形成される。乾燥温度は、通常40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃程度である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは10分〜1時間程度である。
【0041】
図2に戻って、膜触媒層接合体1の製造方法について説明を続ける。触媒層3が電解質膜2を向くようにして上述した触媒層転写シート4を電解質膜2の上面及び下面に重ねて配置する(図2(a))。そして、この各触媒層転写シート4上に、ゲル状部材6を配置する。ゲル状部材6は、図2(b)に示すように、触媒層転写シート4よりも一回り大きく形成されており、触媒層転写シート4を覆うとともに、外周縁部が電解質膜2上に接触している。このゲル状部材6は、電解質膜2上に触媒転写シート4を重ねて配置したものの輪郭に沿うような形状に変形するものであって、熱プレスの熱や圧力を伝えるとともにこれらに耐えうるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは、材質にシリコンを使用したゲルシートなどを使用することができる。また、ゲル状部材6は、ヤング率(圧縮弾性率)が30〜300kPaで、厚みが0.5〜3mmであることが好ましい。
【0042】
そして、このようなゲル状部材6を介して、各触媒層転写シート4の背面側から熱プレスを施して触媒層転写シート4の触媒層3を電解質膜2上に転写させる(図2(c))。熱プレスの加圧レベルは、転写不良を避けるために、通常0.5〜20MPa程度、好ましくは1〜10MPa程度がよい。また、この加圧操作の際に、転写不良を避けるために加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜2の破損、変形等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは150℃以下がよい。作業性を考慮すると、触媒層3を電解質膜2の両面に同時に積層することが好ましいが片面ずつ触媒層3を形成することもできる。
【0043】
その後、各ゲル状部材6を取り除いて、基材シート5を剥離する。このように電解質膜2の両面に触媒層3を形成することで膜触媒層接合体1が形成される(図2(d))。
【0044】
次に、上述したように製造した膜触媒層接合体1の電解質膜2の歪みが基準内であるか検査する。この検査方法は、図3に示すように、まず、膜触媒層接合体1の上面(第1の面)側に第1の偏光板7aを配置するとともに、膜触媒層接合体1の下面(第2の面)側に第2の偏光板7bを配置する。偏光板7としては、例えば、ヨウ素系偏光板、染料系偏光板を用いることができる。光学的歪みを、その周囲とのコントラストが良好な状態で見やすくするために、第1の偏光板7aの偏光軸と第2の偏光板7bの偏光軸とが互いに交差する角度を約60〜120°になるように設置することが好ましく、約90度にすることがさらに好ましい。
【0045】
このように各偏光板7a、7bを配置した後、第1の偏光板7aの上方(後方)に光源8を設置して光を照射する。そして、図3及び図4に示すように、電解質膜2の触媒層3の外周縁から所定距離範囲内を検査領域9とし、この検査領域9にて第2の偏光板7bを透過する光の透過率を調べる。好ましくは、触媒層3の外周縁から約0.2mmの範囲内を検査領域9とし、この検査領域9において第2の偏光板7bを透過する光の透過率が約40%以下であれば、電解質膜2の歪みが少なく基準内(良品)であると判断する。なお、光源によって照射される光は公知の光でよく、例えば自然光、ハロゲン光、蛍光灯などを照射することができる。また、このときの光の透過率を測定する方法は、種々の方法が考えられるが、例えば、撮影手段によって第2の偏光板7bを透過した光を撮影し、この撮影画像を画像解析ソフトなどの解析手段によって透過部分と非透過部分とに二値化して透過率を測定することができる。
【0046】
以上、本実施形態によれば、熱プレスする際にゲル状部材6を介しているため、電解質膜2に作用する圧力をほぼ均等にすることができ、この結果、検査領域9において第2の偏光板7bを透過する光の透過率が40%以下の膜触媒層接合体1を得ることができる。この光の透過率は電解質膜の歪みに密接に関係しており、電解質膜2が歪んでいなければ、光源8から照射された光は、電解質膜2を透過しても第1の偏光板7aによって偏光されたままの振動方向で第2の偏光板7bまで進行するため、偏光軸が第1の偏光板の偏光軸と約60〜120度の角度をなす第2の偏光板7bを透過しない。また、電解質膜2が歪んでいれば、光源8から照射された光は、電解質膜2を透過すると、第1の偏光板7aによって偏光されたままの振動方向ではなく、種々の振動方向を有する光となるため、第2の偏光板7bを透過する。このように、電解質膜2が歪んでいないほど、検査領域9において第2の偏光板7bを透過する光の透過率が低くなるため、透過率が40%以下の膜触媒層接合体1は、電解質膜2の歪みが少ない。また、このように電解質膜2の歪みが少ない膜触媒層接合体1を使用して製造された固体高分子形燃料電池は、良好な耐久性を有している。
【0047】
膜電極接合体
次に、膜電極接合体10について説明する。図5に示すように、膜電極接合体10は、上述した膜触媒層接合体1の各触媒層3上にガス拡散層11が形成されている。
【0048】
ガス拡散層11は、公知であり、燃料極、空気極を構成する各種のガス拡散層を使用でき、燃料である燃料ガス及び酸化剤ガスを効率よく触媒層3に供給するため、多孔質の導電性基材からなっている。多孔質の導電性基材としては、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロス等が挙げられる。
【0049】
この膜電極接合体10は、以下のように製造することができる。すなわち、上述したような手順で膜触媒層接合体1を製造する。そして、各触媒層3上に上述したガス拡散層11を圧着により積層形成して膜電極接合体10が完成する。また、膜電極接合体10はこれ以外の方法によっても製造することができる。まず、図6に示すように、上述した材料からなるガス拡散層11を準備する。そして、このガス拡散層11上に所望の膜厚になるように触媒ペーストを、公知の方法に従い塗工することにより触媒層3を形成する。触媒ペーストの塗工方法としては、上記と同様、スクリーン印刷や、スプレーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティングなどの公知の塗工方法を挙げることができる。このようにガス拡散層11上に触媒層3が形成された電極12を、触媒層3が電解質膜2側を向くように電解質膜2の上面及び下面に重ねて配置する(図6(a))。
【0050】
そして、この各電極12上に、上述したのと同様のゲル状部材6を配置する。ゲル状部材6は、図6(b)に示すように、電極12よりも一回り大きく形成されており、電極12を覆うとともに、外周縁部が電解質膜2上に接触している。
【0051】
そして、図6(c)に示すように、ゲル状部材6を介して各電極12の背面側から熱プレスを施して各電極12を電解質膜2の上面及び下面に接合させる。このときの熱プレスの加圧レベルは、接合不良を避けるために、通常0.5〜20MPa程度、好ましくは1〜10MPa程度がよい。また、この加圧操作の際に、接合不良を避けるために加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜2の破損、変形等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは150℃以下がよい。このように電解質膜2の両面に電極12を形成することで膜電極接合体10が形成される(図6(d))。
【0052】
このように形成した膜電極接合体10は、上述した膜触媒層接合体1のときと同様の方法で光の透過率が測定され、光の透過率が40%以下であれば膜電極接合体10の電解質膜2の歪みは問題無いとして後工程へと送られる。
【0053】
本実施形態によれば、熱プレスする際にゲル状部材6を使用しているため、電解質膜2に作用する圧力をほぼ均等にすることができ、この結果、検査領域9において第2の偏光板7bを透過する光の透過率が40%以下の膜電極接合体10を得ることができる、すなわち、電解質膜2の歪みが少ない膜電極接合体10を得ることができる。なお、上述したように、光の透過率は電解質膜2の歪みに密接に関係しており、電解質膜2が歪んでいないほど、検査領域9において第2の偏光板7bを透過する光の透過率が低くなるため、透過率が40%以下の膜電極接合体10は電解質膜2の歪みが少ないということが言える。また、このように電解質膜2の歪みが少ない膜電極接合体10を使用して製造された固体高分子形燃料電池は、良好な耐久性を有している。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、熱プレスする際にゲル状部材6を使用することによって、電解質膜2に生じる歪みを低減させているが、例えば熱プレス条件を調整することによっても電解質膜2に歪みが生じることを防止することができる。例えば、熱プレスの条件を100〜125℃、1〜3MPa、60〜120秒とすることが、電解質膜2の歪みを低減させるのに好ましい。
【0055】
また、上記実施形態では、検査領域9を電解質膜2における触媒層3の外周縁から約0.2mmの範囲内としているが、特にこれに限定されるものではなく、例えば検査領域を0.2mmの範囲よりも大きくしたり、小さくすることができる。またさらには、上記実施形態では、透過率が約40%以下の膜電解質接合体や膜電極接合体を歪みが少ない良品として判断しているが、より耐久性を向上させるために良品と判断する際の透過率を約20%以下とすることもできる。
【0056】
また、上記実施形態では、触媒層3の形状は、特に限定していないが、略円形(円形、楕円形、卵形など種々の円形を含む)であってもよいし、矩形状であっても良い。矩形状の場合は、正方形であってもよいし、長方形であってもよい。触媒層3が長方形の場合、通常、触媒層転写シート4で転写形成すると電解質膜2に歪みが生じやすいが、上述したようなゲル状部材6を使用すれば、透過率40%以下にて膜触媒層接合体1や膜電極接合体10を製造することができ、電解質膜2の歪みを抑えることができる。
【0057】
また、上記実施形態の膜電極接合体10の触媒層3及びガス拡散層11の周囲を囲むように電解質膜2上にガスケットを配置するとともに、膜電極接合体10を上面及び下面から挟むようにセパレータを設置して、固体高分子形燃料電池を製造することもできる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
まず、触媒層転写シート4を以下の要領で作製した。白金触媒担持カーボン(白金担持量:45.7wt%、田中貴金属社製、TEC10E50E)2gに、イソプロピルアルコール20g、フッ素樹脂(5wt%ナフィオンバインダー、デュポン社製)20g、及び水6gを加えた。そして、これらを分散機によって攪拌混合して触媒層ペーストを調製した。次に、触媒層3が乾燥した後の白金重量が0.4mg/cm2となるように、基材シート5(東洋紡績社製、E5100、厚さ12μm)に塗工して、触媒層転写シート4を作製し、これを60×60mmの大きさに2枚切断した。この触媒層転写シート4を電解質膜2(63×63mm、厚さ53μm、NRE212CS(Dupont社製))の両面に重ねて配置した。そして、この電解質膜2と触媒層転写シート4とを挟むようにゲル状部材6((λGEL COH−6000LVC(GELTEC社製)厚さ3mm))をさらに重ねて配置し、このゲル状部材6を介して、触媒層転写シート4を130℃、5.0MPa、120秒のプレス条件で熱プレスすることで、触媒層3を電解質膜2に転写した。最後に、基材シート5を剥離し、膜触媒層接合体1を作製した。
【0060】
(実施例2)
触媒層転写シート4の大きさが30×150mm(縦横比1:5)、電解質膜2の大きさが70×200mm、熱プレス条件が130℃、5.0MPa、120秒である点以外、実施例1と同材料、同条件で膜触媒層接合体1を作製した。
【0061】
(実施例3)
ゲル状部材6に((αGEL θ−7(GELTEC社製)厚さ3mm))を使用した点以外、実施例1と同材料、同条件で膜触媒層接合体1を作製した。
【0062】
(実施例4)
ゲル状部材6に((人肌のゲル 硬度5(エクシールコーポレーション社製)厚さ2mm))を使用した点以外、実施例1と同材料、同条件で膜触媒層接合体1を作製した。
【0063】
(実施例5)
実施例1と同一の触媒層ペーストを、触媒層3が乾燥した後の白金重量が0.4mg/cm2となるように、ガス拡散層11(カーボンペーパー:(東レ社製、TGP−H090、厚さ280μm))に塗工して、電極12を作製し、これを50×50mmの大きさに2枚切断した。この電極12を電解質膜2(63×63mm、厚さ53μm、NRE212CS(Dupont社製))の両面に重ねて配置した。そして、この電解質膜2と電極12とを挟むようにゲル状部材6((λGEL COH−6000LVC(GELTEC社製)厚さ3mm))をさらに重ねて配置し、このゲル状部材6を介して、電極12を130℃、3.0MPa、120秒のプレス条件で熱プレスすることで、触媒層3を電解質膜2に接合し、膜電極接合体10を作製した。
【0064】
(比較例1)
ゲル状部材6を使用しない点、及びプレス条件が異なる点以外は、上記実施例1と同様に膜触媒層接合体を作製した。なお、プレス条件は、130℃、30MPa、150秒とした。
【0065】
(比較例2)
ゲル状部材6を使用しない点、及びプレス条件が異なる点以外は、上記実施例2と同様に膜触媒層接合体を作製した。なお、プレス条件は、130℃、30MPa、150秒とした。
【0066】
(比較例3)
ゲル状部材6を使用しない点、及びプレス条件が異なる点以外は、上記実施例5と同様に膜電極接合体を作製した。なお、プレス条件は、130℃、30MPa、150秒とした。
【0067】
(評価方法1)
上記実施例1〜5、及び比較例1〜3の膜触媒層接合体又は膜電極接合体を、2枚の偏光板(PLフィルター 厚さ0.7mm、ケンコー株式会社製)の間に配置し、一方の偏光板の後方から光を照射し、他方の偏光板の後方から倍率50倍で写真撮影をした。これによって得られた撮影画像を上記観測より得られた撮影画像を、画像解析ソフトImage−ProPLUS(Media Cybernetics社製)を用いて二値化し、検査領域(触媒層の外周縁から0.2mmの範囲内)における透過率を測定した。その結果を表1に示す。また、図7〜図14に、各実施例及び比較例の撮影画像(a)及び二値化画像(b)を示す。図7〜図14において、下半分が触媒層又は電極となっており、上半分が電解質膜となっている。また、二値化画像における白色の部分(カラー画像においては黄色の部分)は光が透過した部分である。
【0068】
(評価方法2)
上記実施例1〜4及び比較例1,2の膜触媒層接合体の各触媒層3上に触媒層3と同サイズのガス拡散層11(東レ社製 TGP−H090 厚さ 280μm)を配置し、膜電極接合体10とする。そして、実施例1〜5及び比較例1〜3の膜電極接合体10に、各電極12を囲むようにガスケットを設置する。これを両面から挟むようにセパレータを設置し、さらに集電板も設置して単セルを形成する。このように実施例1〜5及び比較例1〜3の膜触媒層接合体又は膜電極接合体から形成された各単セルに対して、負荷変動サイクル試験を実施した。このときの測定条件は、セル温度80℃、燃料利用率70%、酸化剤利用率40%、加湿温度50℃とした。また、負荷変動サイクル試験として、電流密度0.3A/cm2にて1分間発電した後、電流密度0.01A/cm2にて1分間発電するサイクルを繰り返した。この試験結果として、電圧が低下するまでの時間を耐久性時間とし、また、この負荷変動サイクル試験後の電解質膜の破れの有無を表1に記載した。
【0069】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る膜触媒層接合体の実施形態を示す正面図である。
【図2】本実施形態に係る膜触媒層接合体の製造方法を示す説明図である。
【図3】本実施形態に係る膜触媒層接合体の電解質膜の歪みを検査する方法を示す説明図である。
【図4】図3をA方向から見た底面図である。
【図5】本発明に係る膜電極接合体の実施形態を示す正面図である。
【図6】本実施形態に係る膜電極接合体の製造方法を示す説明図である。
【図7】実施例1に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図8】実施例2に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図9】実施例3に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図10】実施例4に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図11】実施例5に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図12】比較例1に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図13】比較例2に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【図14】比較例3に係る膜触媒層接合体の撮影画像(a)及び二値化画像(b)である。
【符号の説明】
【0071】
1 膜触媒層接合体
2 電解質膜
3 触媒層
4 触媒層転写シート
5 基材シート
6 ゲル状部材
7a 第1の偏光板
7b 第2の偏光板
8 光源
9 検査領域
10 膜電極接合体
11 ガス拡散層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを使用して製造された膜触媒層接合体であって、
電解質膜と、
前記電解質膜の両面に、触媒層転写シートを熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された触媒層と、を備え、
前記電解質膜及び触媒層によって構成された膜触媒層接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である、膜触媒層接合体。
【請求項2】
基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写フィルを使用して製造された膜電極接合体であって、
電解質膜と、
前記電解質膜の両面に、触媒層転写シートを熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された触媒層と、
前記各触媒層上に圧着されたガス拡散層と、を備え、
前記電解質膜、触媒層、及びガス拡散層から構成された膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である、膜電極接合体。
【請求項3】
ガス拡散層上に触媒層が予め形成された電極を使用して製造された膜電極接合体であって、
電解質膜と、
前記電解質膜の両面に、触媒層が前記電解質膜側を向いた状態で熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された電極と、を備え、
前記電解質膜及び電極からなる膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である、膜電極接合体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の膜電極接合体を用いて製造される固体高分子形燃料電池
【請求項5】
電解質膜を準備する工程と、
基材シート上に触媒層が形成された、前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層転写シートを準備する工程と、
前記電解質膜の両面に、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記触媒層転写シートをそれぞれ設置する工程と、
前記触媒層転写シートよりも大きいゲル状部材を、前記各触媒層転写シートを覆うとともに外周縁部が前記電解質膜と接触するよう、前記触媒層転写シート上にそれぞれ配置する工程と、
前記ゲル状部材を介して前記触媒層転写シートを熱プレスし、前記電解質膜に前記触媒層を転写形成する工程と、
前記触媒層を転写形成した後に、基材シートを剥離する工程と、
を備えた、膜触媒層接合体の製造方法。
【請求項6】
前記ゲル状部材は、ヤング率(圧縮弾性率)が30〜300kPaの弾性体である、請求項5に記載の膜触媒層接合体の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の膜触媒層接合体の製造方法と、
前記電解質膜の両面に触媒層が形成された膜触媒層接合体の各触媒層上に、ガス拡散層を圧着させる工程と、
を備えた、膜電極接合体の製造方法。
【請求項8】
電解質膜を準備する工程と、
ガス拡散層上に触媒層が形成された電極を電解質膜の両面に配置する工程と、
前記電極よりも大きいゲル状部材を、前記電極を覆うとともに外周縁部が前記電解質膜と接触するよう、前記電極上にそれぞれ配置する工程と、
前記ゲル状部材を介して前記電極を熱プレスし、前記電解質膜上に前記電極を形成する工程と、
を備えた、膜電極接合体の製造方法。
【請求項9】
前記ゲル状部材は、ヤング率(圧縮弾性率)が30〜300kPaの弾性体である、請求項7又は8に記載の膜電極接合体の製造方法。
【請求項10】
電解質膜を準備する工程と、
基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、
前記触媒層転写シートを熱プレスして、前記電解質膜の両面に前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層を転写形成する工程と、
前記基材シートを剥離して、膜触媒層接合体を形成する工程と、
前記膜触媒層接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、
前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、
を備えた、膜触媒層接合体の製造方法。
【請求項11】
前記検査領域は、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mmの範囲内であり、
光の透過率が40%以下のものを良品として後工程に流す、請求項10に記載の膜触媒層接合体の製造方法。
【請求項12】
電解質膜を準備する工程と、
基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、
前記触媒層転写シートを熱プレスして、前記電解質膜の両面に前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層を転写形成する工程と、
前記基材シートを剥離する工程と、
前記各触媒層上にガス拡散層を圧着して膜電極接合体を形成する工程と、
前記膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、
前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、
を備えた、膜電極接合体の製造方法。
【請求項13】
電解質膜を準備する工程と、
前記電解質膜よりも一回り小さいガス拡散層上に触媒層が形成された電極を、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、
前記電解質膜の両面に電極を熱プレスして膜電極接合体を形成する工程と、
前記膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、
前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、
を備えた、膜電極接合体の製造方法。
【請求項14】
前記検査領域は、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mmの範囲内であり、
光の透過率が40%以下のものを良品として後工程に流す、請求項12又は13に記載の膜電極接合体の製造方法。
【請求項1】
基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを使用して製造された膜触媒層接合体であって、
電解質膜と、
前記電解質膜の両面に、触媒層転写シートを熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された触媒層と、を備え、
前記電解質膜及び触媒層によって構成された膜触媒層接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である、膜触媒層接合体。
【請求項2】
基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写フィルを使用して製造された膜電極接合体であって、
電解質膜と、
前記電解質膜の両面に、触媒層転写シートを熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された触媒層と、
前記各触媒層上に圧着されたガス拡散層と、を備え、
前記電解質膜、触媒層、及びガス拡散層から構成された膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である、膜電極接合体。
【請求項3】
ガス拡散層上に触媒層が予め形成された電極を使用して製造された膜電極接合体であって、
電解質膜と、
前記電解質膜の両面に、触媒層が前記電解質膜側を向いた状態で熱プレスすることによって前記電解質膜よりも一回り小さな大きさで転写形成された電極と、を備え、
前記電解質膜及び電極からなる膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置し、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mm以内の検査領域において、前記第1の偏光板又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射した場合に他方の偏光板を透過する光の透過率が40%以下である、膜電極接合体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の膜電極接合体を用いて製造される固体高分子形燃料電池
【請求項5】
電解質膜を準備する工程と、
基材シート上に触媒層が形成された、前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層転写シートを準備する工程と、
前記電解質膜の両面に、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記触媒層転写シートをそれぞれ設置する工程と、
前記触媒層転写シートよりも大きいゲル状部材を、前記各触媒層転写シートを覆うとともに外周縁部が前記電解質膜と接触するよう、前記触媒層転写シート上にそれぞれ配置する工程と、
前記ゲル状部材を介して前記触媒層転写シートを熱プレスし、前記電解質膜に前記触媒層を転写形成する工程と、
前記触媒層を転写形成した後に、基材シートを剥離する工程と、
を備えた、膜触媒層接合体の製造方法。
【請求項6】
前記ゲル状部材は、ヤング率(圧縮弾性率)が30〜300kPaの弾性体である、請求項5に記載の膜触媒層接合体の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の膜触媒層接合体の製造方法と、
前記電解質膜の両面に触媒層が形成された膜触媒層接合体の各触媒層上に、ガス拡散層を圧着させる工程と、
を備えた、膜電極接合体の製造方法。
【請求項8】
電解質膜を準備する工程と、
ガス拡散層上に触媒層が形成された電極を電解質膜の両面に配置する工程と、
前記電極よりも大きいゲル状部材を、前記電極を覆うとともに外周縁部が前記電解質膜と接触するよう、前記電極上にそれぞれ配置する工程と、
前記ゲル状部材を介して前記電極を熱プレスし、前記電解質膜上に前記電極を形成する工程と、
を備えた、膜電極接合体の製造方法。
【請求項9】
前記ゲル状部材は、ヤング率(圧縮弾性率)が30〜300kPaの弾性体である、請求項7又は8に記載の膜電極接合体の製造方法。
【請求項10】
電解質膜を準備する工程と、
基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、
前記触媒層転写シートを熱プレスして、前記電解質膜の両面に前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層を転写形成する工程と、
前記基材シートを剥離して、膜触媒層接合体を形成する工程と、
前記膜触媒層接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、
前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、
を備えた、膜触媒層接合体の製造方法。
【請求項11】
前記検査領域は、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mmの範囲内であり、
光の透過率が40%以下のものを良品として後工程に流す、請求項10に記載の膜触媒層接合体の製造方法。
【請求項12】
電解質膜を準備する工程と、
基材シート上に触媒層が形成された触媒層転写シートを、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、
前記触媒層転写シートを熱プレスして、前記電解質膜の両面に前記電解質膜よりも一回り小さい触媒層を転写形成する工程と、
前記基材シートを剥離する工程と、
前記各触媒層上にガス拡散層を圧着して膜電極接合体を形成する工程と、
前記膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、
前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、
を備えた、膜電極接合体の製造方法。
【請求項13】
電解質膜を準備する工程と、
前記電解質膜よりも一回り小さいガス拡散層上に触媒層が形成された電極を、前記触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の両面に配置する工程と、
前記電解質膜の両面に電極を熱プレスして膜電極接合体を形成する工程と、
前記膜電極接合体の第1の面側に第1の偏光板を設置し、第2の面側に第2の偏光板を偏光軸が前記第1の偏光板の偏光軸に対して60〜120度の角度をなすように設置する工程と、
前記第1又は第2の偏光板のどちらか一方の偏光板の後方から光を照射する工程と、
前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から所定距離の範囲内の検査領域において、他方の偏光板を透過する光の透過率が所定値以下のものを良品と判断して後工程に流す工程と、
を備えた、膜電極接合体の製造方法。
【請求項14】
前記検査領域は、前記電解質膜の前記触媒層の外周縁から0.2mmの範囲内であり、
光の透過率が40%以下のものを良品として後工程に流す、請求項12又は13に記載の膜電極接合体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−153188(P2010−153188A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329675(P2008−329675)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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