説明

膜電極接合体および燃料電池

【課題】本発明は、直接メタノール形燃料電池において、アノードにて溶解した金属カチオンを捕捉する効果を長時間にわたり持続し、電解質膜やカソードへのカチオンの移動を抑制することで電解質膜の抵抗上昇や酸化分解,カソードでの排水性低下を抑制し、長時間にわたり安定に発電できる膜電極接合体、およびこれを用いた燃料電池を提供するものである。
【解決手段】本発明の膜電極接合体は、アノード,カソード、あるいは、固体高分子電解質膜の内部または表面のいずれかに、アノード触媒金属から溶出する金属カチオンを捕捉可能な官能基が共有結合によって固定された粒子状媒体を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に係り、特に、電解質膜を挟んで一対の触媒電極層が形成された膜電極接合体を有するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置である。
【0003】
燃料としての水素,メタノールなどの還元性物質と、酸化剤としての空気,酸素などの酸化性ガスとを、それぞれ燃料極(アノード),空気極(カソード)に供給する。そして、電極層に含まれる触媒上で進行する酸化還元反応によって生じる電子を取り出し、電気エネルギーとするものである。
【0004】
燃料電池は、電解質膜の材料や作動温度などによって、固体高分子型,リン酸型,溶融炭酸塩型,固体酸化物型などに分類することができる。
【0005】
この中で、パーフルオロスルホン酸系樹脂,スルホン化芳香族炭化水素系樹脂などに代表されるプロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を用い、アノード側で水素を酸化し、カソード側で酸素を還元することで発電を行う固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell;PEFC)は、比較的低温で発電でき、出力密度の高い電池として知られている。
【0006】
また、燃料として水素の代わりに液体であるメタノール,メタノール水溶液を用いた直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell;DMFC)も、近年になって脚光を浴びている。DMFCは、燃料,空気の供給方法によって、アクティブタイプ(燃料,空気を強制的に供給),セミアクティブタイプ(燃料,空気の一方を強制的に供給),パッシブタイプ(燃料,空気を自然供給)などに分類される。
【0007】
DMFCの発電は、PEFCと同様にアノードとカソードで固体高分子電解質膜をはさんだ構成の膜電極接合体(Membrane-Electrode Assembly;MEA)で行われる。DMFCで用いるMEAのアノードには一般的に白金とルテニウムからなる合金触媒が用いられ、効果的にメタノールの電気化学的酸化を進行させる。
【0008】
このMEAにはPEFC,DMFCの連続発電に対し、耐久性に優れることが望ましい。しかし、DMFCを長時間発電させた場合、その電池電圧が低下し、安定した発電が継続できないことがある。
【0009】
このような電圧低下の一つの要因としてアノードからの溶出ルテニウムの影響が指摘されており、アノードからの溶出ルテニウムの移動を抑制する技術が、特許文献1において提案されている。
【0010】
特許文献1では、溶出したルテニウムカチオンが燃料中に微量含まれるギ酸イオンなどのアニオンに配位されたアニオン性錯体として移動すると推察し、これを捕獲するためのアニオン交換樹脂を含んだMEAを提案している。
【0011】
一方、キレート効果によって金属カチオンに配位し、その溶出を防ぐ効果を持ったMEAについては、特許文献2から4においてPEFC用MEAとして提案されている。
【0012】
特許文献2では白金カチオンを捕捉する機能を有するキレート剤として、カルボン酸基を含んだ錯化剤を含有した電極触媒層を含むことを特徴とするMEAを提案している。
【0013】
特許文献3あるいは4では、白金カチオンを捕捉する機能を有するキレート剤として、ビピリジル基などの窒素含有低分子体をカーボンに担持させた構造のMEAを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−26690号公報
【特許文献2】国際公開08/32802号公報
【特許文献3】特開2006−147345号公報
【特許文献4】特開2007−242423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発電中のMEA内部の抵抗や分極特性を詳細に調査したところ、発電に伴い、カソードにおける物質拡散性が低下しており、これが電池性能低下の主要因であることを突き止めた。また、物質拡散性が乏しい箇所ではアノード触媒から溶出し、濃度勾配によって移動してきたルテニウムが多く存在した。この結果から、アノードからのルテニウムイオンがカソードに到達し、カソード全体のはっ水性を低下させたことが物質拡散性低下を引き起こすと考えられる。
【0016】
また、アノードにて溶出したルテニウムは電解質膜内にも滞留しており、これが、電解質膜抵抗の低下を引き起こしていることをも確認している。また、ルテニウムの酸化物である四酸化ルテニウム(RuO4)が生成すると、その酸化作用により電解質膜の酸化劣化が加速的に進行することが懸念される。
【0017】
以上より、DMFC用MEAの長寿命化には、アノードから溶出したルテニウムを電解質膜およびカソードへ移動させないことが必要になる。
【0018】
特許文献1で提案されている構成のMEAでは、ルテニウムカチオンがギ酸イオンに配位され生成したルテニウム錯体を捕捉する機能はあるが、電解質膜や電極内は酸性雰囲気であり、弱酸性であるギ酸イオンの配位力が弱まり、カチオンとして存在するルテニウムも存在しうる。この場合、アニオン交換樹脂ではルテニウムカチオンの拡散を抑制することができない。また、アニオン交換樹脂の存在により電池全体のプロトン伝導性が低下し、電池性能が下がることが懸念される。
【0019】
また、特許文献2から4で提案されているようなキレート剤は、白金カチオンだけではなく、ルテニウムカチオンに対しても捕捉機能を示すと考えられるが、低分子量体を添加しているだけの構成であるため、長時間使用時にこれらが溶出し、MEA外へ放出されてしまい、発電を継続させるにつれてカチオン捕捉機能が弱まるため望ましくない。
【0020】
そこで、本発明の目的は、アノードから溶出するルテニウムカチオンを長時間にわたり捕捉する効果を有する膜電極接合体と、それを用いた燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体は、アノードとカソードで固体高分子電解質膜を挟んで形成される燃料電池用の膜電極接合体において、前記アノード,前記カソード、あるいは、前記固体高分子電解質膜の内部または表面のいずれかにアノード触媒金属から溶出する金属カチオンを捕捉可能な官能基が共有結合によって固定された粒子状媒体を有していることを特徴とする。このように、膜電極接合体の内部にアノード触媒金属から溶出する金属カチオンを捕捉可能な官能基が共有結合によって固定された粒子状媒体を設けることにより、アノード触媒金属から溶出する金属カチオンを捕捉するものである。
【0022】
本発明に係る実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体は、触媒と固体高分子電解質からなるアノードと、触媒と固体高分子電解質からなるカソードが、固体高分子電解質膜を挟んで形成される燃料電池用の膜電極接合体において、アノードと電解質膜あるいはカソードと電解質膜の間の少なくとも一方に固体高分子電解質と粒子状媒体からなる中間層が配置された構造を有し、その粒子状媒体の表面にはルテニウムカチオンを捕捉可能な官能基が共有結合によって固定化されているものである。ここでいう中間層は、カチオン伝導性を有する固体高分子と粒子状媒体の混合物を、電解質膜表面に形成した薄層である。このような構成では、電解質膜やカソードへのルテニウム移動を抑制できるため望ましい。
【0023】
また、本発明に係る実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、ルテニウムカチオンを捕捉可能な官能基が共有結合によって固定されている粒子が、電解質膜内に均一に分散されていてもよい。この場合、電解質膜内に侵入したルテニウムが電解質膜内に捕捉されるため酸化性の高いRuO4の形成が抑制でき、さらにカソードへのルテニウムカチオン移動が抑制することができる。
【0024】
また、本発明に係る実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、アノード内にルテニウムカチオンを捕捉可能な官能基が共有結合によって固定化された粒子状媒体を含む。このような構成の膜電極接合体では、電極内で溶出したルテニウムカチオンを電極内で捕捉することができ、望ましい。
【0025】
また、本発明に係る実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、粒子状媒体の表面あるいは内部にはケイ素元素が含まれ、かつ、窒素あるいは硫黄元素を含んでいる。このような構成の粒子を含んだ膜電極接合体では、窒素あるいは硫黄元素部位において金属カチオンを捕捉でき、ケイ素元素を介した結合により捕捉部位の溶出を防ぐことができる。
【0026】
また、本発明に係る実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、チオール基,アミン基,ビピリジル基,カルボキシル基のうち一つ以上の官能基が固定された粒子状媒体を含んでいると、これら官能基がルテニウムをはじめとする金属カチオンに配位し、捕捉できるため望ましい。
【0027】
また、本発明にかかる実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、ルテニウム捕捉機能のある官能基が共有結合により金属酸化物粒子に固定されていると、官能基が発電中に溶出することがなくなるため、長時間にわたりルテニウム捕捉機能のある物質が膜電極接合体に存在することとなり、その効果が長期にわたるため、望ましい。
【0028】
また、本発明にかかる実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、金属酸化物粒子が、二酸化ケイ素,酸化ジルコニウム,酸化タングステン,タングストリン酸,モリブドリン酸、それらの誘導体及びそれらの前駆体であると、ルテニウムを捕捉する官能基を固定するだけではなく、粒子表面の一部にプロトン伝導を付与することができ、膜電極接合体のプロトン伝導抵抗を低減することができるため、望ましい。
【0029】
また、本発明にかかる実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、金属酸化物粒子がメソポーラス構造を有する場合、比表面積が増大するため、その表面に固定されたルテニウム捕捉機能のある官能基を高密度で配置することができ、ルテニウム捕捉容量が増すため望ましい。
【0030】
また、本発明にかかる実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、メソポーラス構造を有する金属酸化物の細孔径が10ナノメートル以上であると、ルテニウムカチオンが細孔内に侵入しやすく、効率的に捕捉できるため、特に望ましい。
【0031】
また、本発明にかかる実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、金属酸化物粒子とルテニウム捕捉機能を有する官能基とがシランカップリングにより結合されていると、C−Si−O結合により強固に官能基が固定され、捕捉機能が持続するため望ましい。
【0032】
本発明にかかる実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、粒子状媒体が、ルテニウム捕捉機能を示す官能基を有するポリシルセスキオキサン誘導体であると、燃料に溶出しないポリシルセスキオキサン粒子に固定された官能基が長時間にわたりルテニウム捕捉機能を示すため、望ましい。
【0033】
本発明にかかる実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、粒子状媒体が、窒素および硫黄元素を含むπ共役系からなる電子伝導性ポリマー粒子であると、窒素あるいは硫黄部が金属カチオンを捕捉する効果を有し、さらに、ポリマー粒子が燃料に溶解しないため、効果が持続され望ましい。効果を有する電子伝導性ポリマーとしては、ポリアニリン,ポリチオフェン,ポリピロール、およびその誘導体を挙げることができる。これらの誘導体としては、カチオン交換基を含みプロトン伝導性を示す材料であってもよい。
【0034】
本発明にかかる実施態様の1つである燃料電池用膜電極接合体において、ルテニウム捕捉機能を示す官能基を有する粒子状媒体を含んだ中間層が配置され、かつ、その中間層の電解質膜に対する投影面積が、対向するアノードあるいはカソードの面積よりも大きいと、電極外周部の電解質にルテニウムカチオンが拡散することを防ぐことができ、電極外周部の電解質の酸化劣化を抑制することができるため、望ましい。
【0035】
また、本発明にかかる実施態様の1つである膜電極接合体において、電解質膜がスルホ化あるいはスルホアルキル化された芳香族炭化水素系電解質であると、カソードからアノードへの酸素ガスの拡散を抑制し、アノードにおけるルテニウム酸化溶解量を低減することができるため望ましい。中間層に用いる電解質あるいは電極触媒層に含む電解質としては、電解質膜に用いる電解質と同種であってもよいし、異なっていてもよいが、中間層と電解質膜、あるいは電極触媒層と中間層との接合性の観点から、同種である方が望ましい。
【0036】
本発明の実施態様の1つである膜電極接合体と、ガス拡散層,空気(酸素)を供給する部材と、集電用部材とを用いることで燃料電池として使用できる。ここで、燃料を供給する部材としては、ポンプ等により導入された燃料を、セパレータを介してガス拡散層に供給する一連の部材を、また、空気(酸素)を供給する部材としては、ブロア等により導入された空気(酸素)を、セパレータを介して拡散層に供給する一連の部材を示すものである。なお、燃料はメタノール水溶液あるいは水素ガスが用いられる。
【0037】
燃料はアノードで電気化学的に酸化され、カソードでは酸素が還元され、両電極間には電気的なポテンシャルの差が生じる。このときに外部回路として負荷が両電極間にかけられると、電解質中にイオンの移動が生起し、外部負荷には電気エネルギーが取り出される。このために各種の燃料電池は、大型発電システム,小型分散型コージェネレーションシステム,電気自動車電源システム等に期待は高く、実用化開発が活発に展開されている。
【0038】
このように本発明の実施態様では、アノードから溶出したルテニウムカチオンを長時間にわたり捕捉する部位を有することで、発電に伴う電解質膜やカソードへのルテニウム移動、これによる電池性能低下を抑制するための膜電極接合体の構造,その構成材料,その製造方法、およびこれを用いた燃料電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0039】
本発明によって、アノードから溶出したルテニウムカチオンによる電解質膜やカソードへの移動を持続して抑制し、寿命の長い燃料電池用膜電極接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施例で説明した燃料電池の概略断面図である。
【図2】従来の燃料電池用膜電極接合体の断面模式図である。
【図3】本実施例に係る膜電極接合体の断面模式図である。
【図4】本実施例に係る膜電極接合体の中間層構成の模式図である。
【図5】本実施例に係る膜電極接合体の断面模式図である。
【図6】本実施例に係る膜電極接合体の断面模式図である。
【図7】本実施例に係る膜電極接合体の断面模式図である。
【図8】本実施例に係る膜電極接合体の電極触媒層の模式図である。
【図9】本実施例に係る膜電極接合体の断面模式図である。
【図10】本実施例に係る携帯情報端末の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明による実施例について、図面を用いて記述する。
【0042】
図1に、膜電極接合体を用いた燃料電池のセル構成の一例を示す。
【0043】
図1において、11がセパレータ、12がアノード拡散層、13がアノード電極触媒層、14がプロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜、15がカソード電極触媒層、16がカソード拡散層、17がガスケットである。
【0044】
セパレータ11は、電子伝導性を有し、その材質としては、緻密黒鉛プレート,黒鉛やカーボンブラックなどの炭素材料を樹脂によって成型したカーボンプレート,ステンレスやチタンなどの金属、あるいはそれを耐食性,耐熱性に優れた導電性塗料や貴金属めっきで被覆したものを用いることが望ましい。
【0045】
アノード触媒層13とカソード触媒層15および固体高分子電解質膜14を一体化したものを膜電極接合体(Membrane-Electrode-Assembly、以下MEAとも呼ぶ)と称す。この場合、触媒層と拡散層とが一体化していることもある。
【0046】
図2には従来のMEA構成を示す。アノードおよびカソードに用いられる触媒として、燃料の酸化反応および酸素の還元反応を促進する金属が望まれる。例えば、白金,金,銀,パラジウム,イリジウム,ロジウム,ルテニウム,鉄,コバルト,ニッケル,クロム,タングステン,マンガン,バナジウム,チタンあるいはそれらの合金が挙げられる。このような触媒の中で、特に、カソード用触媒として白金(Pt)触媒が、アノード電極用触媒として白金−ルテニウム(Pt−Ru)触媒が、用いられる。触媒となる金属の粒径は、通常は2〜30nmである。これらの触媒金属は、比表面積の大きなカーボン材料に担持されて用いられる。なお、本明細書において、触媒とは触媒金属単体、あるいは、触媒金属が触媒担体に担持された複合体を指す。
【0047】
アノードおよびカソードには、触媒の他にプロトン伝導性を付与するための固体高分子電解質が用いられる。
【0048】
アノードに用いられる白金−ルテニウムは発電によるアノード電位の上昇により一部が酸化され溶出する。図2のような構成では、アノードから溶出したルテニウムカチオンが拡散により移動し、電解質膜やカソードに移動する。そして、移動したルテニウムカチオンにより電解質膜やカソード内のプロトン伝導抵抗が増加し、さらにルテニウムカチオンの存在によりカソード内の親水性が高まり排水性が低下するため、カソード性能が低下する。
【0049】
本実施例は、膜電極接合体の構造および構成材料に関するものである。
【0050】
図3〜図8を用いて本実施例の構成を示す。
図3では、アノードと電解質膜の間に中間層が配置された構造となっている。この中間層内部には、図4のように固体高分子電解質とルテニウムカチオン捕捉機能のある粒子から構成されている。このような構造にすることでアノードから溶出したルテニウムが電解質膜やカソードに拡散するのを抑制することができる。図3のようにアノードと電解質膜の間に中間層を配置した構成については特許文献3においても紹介されているが、本発明では、図4のように中間層内にルテニウムカチオン捕捉機能のある官能基を共有結合により固定化した粒子状媒体が含まれているため、特許文献3とは異なる構成である。
【0051】
図5では、カソードと電解質膜の間に中間層が配置された構造となっている。この構成では、アノードから溶出したルテニウムの一部が電解質膜に流出するが、カソードへの移動を防ぐことができる。また、アノードや電解質膜に微量のルテニウムカチオンが捕捉されずに存在することで、アノード触媒金属近傍のルテニウムカチオン濃度が増し、その金属からの溶解を抑制する効果も期待できる。
【0052】
図6では、アノードと電解質膜、カソードと電解質膜の間に中間層が配置された構造となっている。この構成にすることで、電解質膜やカソードへのルテニウム溶出の効果が最も高い。
【0053】
図7では、中間層ではなく、電解質膜内にルテニウム捕捉能のある粒子が保持された構成となっている。電解質膜に溶出したルテニウムカチオンが膜内で捕捉されるため、そのプロトン伝導抵抗に悪影響を及ぼしにくくなり、さらに、ルテニウムカチオンがさらに酸化されRuO4となることも防ぐことができる。
【0054】
前記の粒子媒体は中間層や電解質ではなく、触媒電極層に加えることもできる。図8のように電極触媒層を構成する触媒担持カーボンや固体高分子電解質の他に、ルテニウムカチオン捕捉機能のある粒子が保持された構成とすることで、溶出したルテニウムカチオンが電極内で捕捉されるため、電解質膜やカソードへの移動を最も効果的に抑制することができる。
【0055】
本実施例にかかる触媒金属は、比表面積の大きなカーボン材料に担持されることが望ましい。触媒は微粒子化した方が、比表面積が増えるため、単位重量あたりの活性が高くなる。カーボンブラックに担持することで、触媒を凝集させること無く、微粒子として維持することができる。用いるカーボンブラックの比表面積は、10〜1000m2/gの範囲から選ばれることが望ましい。比表面積が小さすぎると、カーボンブラックを添加する効果があまり得られず、比表面積が大きすぎると、カーボンブラックの表面に形成されている細孔が多く、この細孔に触媒粒子が入り込み、細孔に入り込んだ触媒粒子は、電池作動時、反応に寄与しにくくなるためである。例えば、ケッチェンブラック,ファーネスブラック,チャンネルブラック,アセチレンブラック等のカーボンブラックや、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素、あるいは、活性炭,黒鉛等を用いることができ、これらは単独あるいは混合して使用することができる。
【0056】
以上の中で大きな比表面積を有するケッチェンブラックを使用することが触媒電極層の活性増大に望ましい。
【0057】
図3において、アノード31とカソード33に用いられる固体高分子電解質および中間層34に用いられる固体高分子電解質41,固体高分子電解質膜32に用いられる固体高分子電解質としては、酸性の水素イオン伝導材料を用いると、大気中、あるいはメタノール酸化反応で生成する炭酸ガスの影響を受けることなく、安定な燃料電池を実現できるため好ましい。このような例として、パーフルオロアルキルスルホン酸電解質やプロトン伝導性を示す極性基を有する炭化水素系電解質を挙げることができる。特に炭化水素系電解質膜は耐メタノール膨潤性や対メタノール透過性に優れており、これを用いることが望ましい。プロトン伝導性を示す極性基としては、スルホン酸基,リン酸基,カルボキシルキ基などが挙げられるが、プロトン伝導度の観点から特にスルホン酸基が望ましい。
【0058】
炭化水素系電解質としては、例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン,スルホン化ポリエーテルスルホン,スルホン化アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン,スルホン化ポリスルフィッド,スルホン化ポリフェニレン等のスルホン化エンジニアプラスチック系電解質や、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルケトン,スルホアルキル化ポリエーテルスルホン,スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン,スルホアルキル化ポリスルホン,スルホアルキル化ポリスルフィッド,スルホアルキル化ポリフェニレン,スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン等のスルホアルキル化エンジニアプラスチック系電解質を用いることができる。
【0059】
固体高分子電解質は、アノードからのメタノール水溶液や水素の透過、カソードからの酸素ガスの透過を抑制するために、これら物質の透過性が低い材料を用いることが望ましい。これら物質透過性抑制の観点からは、そのイオン交換容量が低い方が望ましい。一方、イオン交換容量を過度に下げるとプロトン伝導抵抗が増大するだけではなく、電極との密着性が低下し、剥離する恐れがある。以上の観点から、固体高分子電解質のイオン交換容量は、0.1〜3meq./gの範囲であることが望ましく、特に0.5〜2.5meq./gの範囲にあることが望ましく、さらに1.0〜2meq./gの間にあることが望ましい。
【0060】
また、電解質膜の強度や耐燃料透過性を向上させるために電解質膜中に多孔質基材を含めた構造にすることもできる。
【0061】
また、固体高分子電解質は、アノードおよびカソードにて発生する過酸化水素ラジカルを捕捉、あるいは分解できる材料を含むことが望ましい。ラジカル捕捉剤の例としてヒンダートフェノール系のラジカル捕捉剤が挙げられる。ヒンダートフェノール系ラジカル捕捉剤としては、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピンなどが挙げられ、特に限定はされない。
【0062】
また、ラジカル分解剤としては、Mn,Cr,Co,Cu,Ce,Rb,Co,Ir,Ag,Rh,Ti,Zr,Al,Sbなどの金属カチオンあるいはこれら金属の酸化物粒子を用いることができる。
【0063】
本発明におけるラジカル捕捉剤およびラジカル分解剤の添加量については特に限定されるものではないが、ラジカル捕捉剤とラジカル分解剤の総添加量は、高分子電解質材料100重量部に対して1重量部から50重量部が好ましい。総添加量が1重量部未満では過酸化水素ラジカルに対する耐久性が不十分であり、50重量部を越えると外周部の電解質の機械的特性や、電極間の電解質との接合性が低下するため好ましくない。
【0064】
図4では、固体高分子電解質41に粒子状媒体42が埋め込まれた構造となっており、図8では粒子状媒体84は触媒担持カーボンと固体高分子電解質の凝集体の一部として含まれる。この粒子状媒体としては、表面にルテニウム捕捉機能を有する官能基が共有結合された酸化物粒子を用いることが望ましい。
【0065】
ルテニウム捕捉機能のある官能基としては、金属カチオンに配位し、錯体を形成可能な官能基を用いることができる。具体的には、アミン基やピリジン基,ビピリジン基などの含窒素官能基、チオール基などの含硫黄官能基、そしてカルボン酸基を挙げることができる。
【0066】
前記の官能基が共有結合によって固定される粒子状媒体としては酸化物粒子などが適用でき、酸性水溶液に対して不要であれば特に指定はない。ただし、二酸化ケイ素,酸化ジルコニウム,酸化タングステン,タングストリン酸,モリブドリン酸、それらの誘導体及びそれらの前駆体を用いると、粒子自体が固体酸であるため、プロトン伝導効果も示し、膜電極接合体内部のプロトン伝導を促進することができるため望ましい。
【0067】
前記の官能基を酸化物粒子に固定する方法としては、シランカップリング法を挙げることができる。前記の官能基を末端に持つシランカップリング剤と酸化物粒子を混合し、適当な温度で処理することで、酸化物表面にシリコン−酸素−金属の共有結合を形成させることができる。使用できるシランカップリング剤の一例として、アミン基を含んだものとして、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−メチルジメトキシシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、チオール基を含んだものとして、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。また、ビピリジン基を用いたものとしては、特開2010−6797号で作製されるシランカップリング剤などを挙げることができる。
【0068】
図3から図7のような構成で粒子状媒体として酸化物粒子を中間層あるいは電解質膜に入れる場合、酸化物粒子の一次粒子径として、比表面積を高く保つため、そして、中間層内や電解質膜のプロトン伝導抵抗を低く保つために、小さな粒子であることが望ましい。
1ナノメートルから10ミクロンの間であることが望ましく、さらに10ナノメートルから1ミクロンの間であることが望ましい。
【0069】
また、図8のような構成で粒子状媒体として酸化物粒子を電極触媒層に入れる場合、酸化物粒子の一次粒子径として、比表面積を高く保つため、そして、電極触媒層内のプロトン伝導抵抗を低く保つために、小さな粒子であることが望ましい。1ナノメートルから1ミクロンの間であることが望ましく、さらに10ナノメートルから500ナノメートルの間であることが望ましい。
【0070】
また、前記の酸化物粒子は、比表面積の観点から、その内部に細孔が存在する多孔質体であってもよい。特に、規則的に細孔が配列したメソポーラス体を用いることで、細孔内部に効果的にルテニウムカチオンを捕捉することができるため望ましい。規則的な細孔径としては、1ナノメートルから50ナノメートルの間であることが望ましい。また、細孔が10ナノメートル以下の場合は、ルテニウムカチオンを有する官能基の導入が困難であることや溶出したルテニウムカチオンが細孔内に侵入しにくいなどの不具合が生じやすいことを考慮すると特に細孔径は10ナノメートルから50ナノメートルであることが望ましい。
【0071】
また、図9のように中間層を配置した膜電極接合体において、その投影面積が電極面積よりも大きく、中間層の外周が電極の外周よりも外側にあると、電極外周部の電解質膜に拡散するルテニウムカチオンを効果的に捕捉することができ、電極外周部での電解質膜の酸化劣化を抑制することができるため望ましい。
【0072】
また、図3から図9における、ルテニウム捕捉機能を有する粒子状媒体として、ルテニウム捕捉機能を示す官能基を有するポリシルセスキオキサン誘導体を用いることができる。ここでいう、ポリシルセスキオキサンとは、3官能性シランを加水分解することで得られる(R−SiOx)n(ここでxは1〜2、nは1以上の整数を示す)の構造を持つネットワーク型ポリマーのことであり、末端官能基(R)が前記のルテニウム捕捉機能のある官能基であるものである。これは、前記に示したシランカップリング剤を加水分解することで得られる。末端官能基としてチオール基を有するポリシルセスキオキサンについては特開2010−24400号を用いることができる。
【0073】
また、図3から図9における、ルテニウム捕捉機能を有する粒子状媒体として、窒素および硫黄元素を含むπ共役系からなる電子伝導性ポリマー粒子を用いることができる。窒素および硫黄元素を含むπ共役系からなる電子伝導性ポリマー粒子であると、窒素あるいは硫黄部が金属カチオンを捕捉する効果を有し、さらに、ポリマー粒子が燃料に溶解しないため、効果が持続され望ましい。効果を有する電子伝導性ポリマーとしては、ポリアニリン,ポリチオフェン,ポリピロール、およびその誘導体を挙げることができる。これら誘導体のうち、スルホン化物やリン酸化物などの酸性基を修飾したものでは、酸ドープにより高い電子伝導性を示すようになり、電極内部の電流密度分布が小さくなったり、電極触媒層内での電子伝導抵抗が低減するため、望ましい。
【0074】
また、本発明にかかる膜電極接合体のアノード触媒層およびカソード触媒層に対し、これらよりも大面積のガス拡散層を配置させることで、膜電極接合体と拡散層、ガスケットの間にできる空隙に水が滞留した場合でも滞留した水と電極外周部との接触を防ぐことができるため、望ましい。ガス拡散層の大きさは特に限定されないが、ガス拡散層の外周がアノード触媒層およびカソード触媒層の外周との距離が1mm以上離れていることが望ましい。
【0075】
以下に、本実施例にかかる膜電極接合体の製造方法の一例を示す。ただし、製造方法は下記に限定されるものではない。
【0076】
図7のように固体高分子電解質にカチオン捕捉機能を有する粒子状媒体が包埋された電解質膜を得るには、固体高分子電解質を溶媒に溶解させたワニスに対し、カチオン捕捉機能を有する官能基を修飾した粒子状媒体を加え、混合し、平坦な基板上に塗工・乾燥することで得ることができる。
【0077】
また、図3から図6のように固体高分子電解質にカチオン捕捉機能を有する粒子状媒体が包埋された中間層を得るには、固体高分子電解質を溶媒に溶解させたワニスに対し、カチオン捕捉機能を有する官能基を修飾した粒子状媒体を加えて得た混合ワニスを、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムなどの基材に塗布し、これを適切な大きさに切断し、電解質膜と接触,熱圧着して得ることができる。また、前記混合ワニスを電解質膜に直接塗布・乾燥することでも中間層を得ることができる。
【0078】
この製造工程で電解質膜塗布に使用する溶媒としては、電解質ポリマーを溶解し、さらに洗浄後に触媒を被毒しないものであれば、特に限定されない。例えば、水の他に、エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルや、n−プロパノール,iso−プロパノール,t−ブチルアルコール等のアルコール類、及び1−メチル−2−ピロリドンなどの高極性溶媒を用いることができる。またはこれらの2つ以上を混合して使用することもできる。この際、重金属カチオンを含まないことが求められる。
【0079】
図3から図9の電極触媒層の形成は、触媒と固体高分子電解質が分散したアルコール溶液を用いて、スプレー塗布法やスリットダイコーター法による直接塗布で行うこともでき、また、テフロン(登録商標)シート状に電極を塗布したものを電解質膜に押し当て熱圧着することもできる。また、基材上に直接触媒電極層を塗布した後、粒子状媒体を含んだ混合ワニスを塗布・乾燥したものを、電解質膜に圧着することで、中間層付きの膜電極接合体を得ることができる。
【0080】
また、図9ように粒子状媒体を含んだ電極触媒層を形成するには、触媒と固体高分子電解質が分散したアルコール溶液に、粒子状媒体を加え、混合し、スプレー塗布法やスリットダイコーター法による直接塗布で行うことで作製できる。
【0081】
製造した膜電極接合体が本発明の実施様態の通りであるかの確認のためには、得られた膜電極接合体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すればよい。SEMにより電解質膜や中間層、電極触媒層内に粒子状媒体が存在するかどうかを確認できる。また、SEMに付属されているエネルギー分散型X線分光装置(EDX)で組成の元素分析を行うことで、当該粒子組成中にSiやN,Sが含まれることを確認できる。さらに、当該層に対して光電子分光法(XPS)により元素分析やその化学結合状態を解析することで、該当粒子状媒体にルテニウム捕捉機能を有する官能基が固定されているかどうかを確認することができる。
【0082】
本実施例では、ルテニウムをはじめとするカチオン捕捉機能を有する官能基が共有結合によって固定された粒子状媒体を、電解質膜や電極触媒層、これらの間の中間層に配置することで、発電時にアノードから溶出するルテニウムを捕捉し、電解質膜やカソードへの移動を防ぐことができる。また、ルテニウム捕捉機能を有する官能基が、不溶性の粒子に固定されていることで、これら官能基が経時的に系外に溶出することがなく、その効果を持続させることができる。そのため、長時間にわたり、電解質膜における酸化劣化やプロトン伝導抵抗増大,カソードの排水性低下を抑制することができ、結果として膜電極接合体の寿命を改善することができる。
【0083】
以下、本実施例をさらに詳しく説明するが、本発明はここに開示した実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
[Pt/C触媒スラリーの作製]
プロパノールを主成分とする溶媒に、白金が67重量%担持されたケッチェンブラックと、Nafion(登録商標)を、重量比で1:0.2となるように添加し、マグネッチックスターラーにて12時間、攪拌し、Pt/C触媒スラリーとした。
【0085】
[PtRu/C触媒スラリーの作製]
プロパノールを主成分とする溶媒に、白金ルテニウムが73重量%担持されたケッチェンブラックと、Nafion(登録商標)を、重量比で1:0.6となるように添加し、マグネッチックスターラーにて12時間、攪拌し、PtRu/C触媒スラリーとした。
【0086】
[比較例1の作製]
(1−1)スルホアルキル化ポリエーテルスルホン(ポリマーA)を合成した。ポリマーAの数平均分子量は72,000であり、重量平均分子量は261,000であった。イオン交換容量は1.4meq./gであった。
(1−2)(1−1)で作製したポリマーA25gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)75gに溶解させ、ワニスを作製した(ワニスA)。
(1−3)(1−2)で作製したポリマーAのワニスをPETフィルム上に塗布し、高温で乾燥処理した後、形成した電解質膜AをPETフィルムよりはがし、水洗,酸処理,乾燥させることで、電解質膜Aを得た。
(1−4)厚み100μm、50mm×50mmのPTFEシート上にPt/C触媒スラリーを塗布し、単位面積あたりの白金重量が1mg/cm2となるようにカソード電極層を形成した。電極サイズは30mm×30mmとした。
(1−5)厚み100μm、50mm×50mmのPTFEシート上にPtRu/C触媒スラリーを塗布し、単位面積あたりの白金重量が1mg/cm2となるようにアノード電極層を形成した。電極サイズは30mm×30mmとした。
(1−6)(1−3)で得た電解質膜Aの片面に(1−4)で得たカソード触媒層つきPTFEシートを、他方の面に(1−5)で得たアノード触媒層付きPTFEシートを貼り合わせ、これを120℃,2分間,12.5MPaの条件でプレスし、MEAを得た。
(1−7)プレス後のMEAについて1M硫酸水溶液に浸漬させたのち、リンス,乾燥させた。
(1−8)作製後のMEAを樹脂に包埋し、ミクロトームで断面加工を実施した後、SEMで断面構造を確認した。SEM−EDXでアノードおよびカソードにおけるルテニウム/白金元素比を計測したところ、アノード側ではPt:Ru=44:56、カソード側ではPt:Ru=100:0であった。
【0087】
[比較例2の作製]
(2−1)(1−1)で作製したワニスA100gに対しビピリジンを1g添加し、24時間混合撹拌したものを(ワニスB)とした。
(2−2)(2−1)で作製したワニスBを(1−5)で作製したアノード触媒層付きPTFEシート上に10μm塗布した。塗布サイズは30mm×30mmとした。
(2−3)(2−2)で作製した中間層付きPTFEシートと(1−4)で作製したカソード触媒層付きPTFEシートで電解質膜Aを挟み、これを120℃,2分間,12.5MPaの条件でプレスした。
(2−4)プレス後のMEAについて1M硫酸水溶液に浸漬させたのち、リンス,乾燥させた。
(2−5)で得たMEAについて、断面SEM観察を行ったところ、アノードと電解質膜の間に中間層を確認することができ、中間層の組成をEDXで調べたところ、ビピリジン由来の窒素ピークを観測した。
【0088】
[実施例1の作製]
(3−1)信越シリコーン社製のN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−603、以下AEAPS)1mlをトルエン9mlで希釈した溶液をPFA製の容器に入れた。一方、同じ容器内にサンプル瓶を配位し、これに日本アエロジル社製微粒子ヒュームドシリカ(一次粒子サイズ10〜40ナノメートル)1gを入れ、温度100 ℃で長時間加熱することで、気相製膜によりシリカ表面にアミノ基を有する有機分子を固定化した。以下これを粒子Aとする。
(3−2)(3−1)で得た作製した粒子A1gをワニスA100gに添加し、24時間混合撹拌したものをワニスCとした。
(3−3)アノード中間層作製に用いるワニスをCとした以外は、(2−2)と同様にして中間層付きPTFEシートを得た。
(3−4)(3−3)で得た中間層付きPTFEシートと(1−4)で得たカソード触媒層付きPTFEシートで電解質膜Aを挟み、これを120℃,2分間,12.5MPaの条件でプレスした。
(3−5)プレス後のMEAについて1M硫酸水溶液に浸漬させたのち、リンス,乾燥させた。
(3−6)(3−5)で得たMEAについて、断面SEM観察を行ったところ、アノードと電解質膜の間に中間層を確認することができ、中間層の組成をEDXで調べたところ、中間層に粒子状媒体を確認し、EDXによりSi,N,Sの存在を確認した。
【0089】
[実施例2の作製]
(4−1)信越シリコーン社製の3−メルカプト−プロピル−トリメトキシシラン(KBM−803、以下MPS)1mlをトルエン9mlで希釈した溶液をPFA製の容器に入れた。一方、同じ容器内にサンプル瓶を配位し、これに日本アエロジル社製微粒子ヒュームドシリカ(一次粒子サイズ10〜40ナノメートル)1gを入れ、温度100℃で長時間加熱することで、気相製膜によりシリカ表面にチオール基を有する有機分子を固定化した。以下これを粒子Bとする。
(4−2)(4−1)で得た作製した粒子B1gをワニスA100gに添加し、24時間混合撹拌したものをワニスDとした。
(4−3)中間層作製に用いるワニスをワニスDとした以外は、実施例1と同様にしてMEAを作製した。
(4−4)(4−3)で得たMEAについて、断面SEM観察を行ったところ、アノードと電解質膜の間に中間層を確認することができ、中間層の組成をEDXで調べたところ、中間層に粒子状媒体を確認し、EDXによりSi,Sの存在を確認した。また、膜電極接続部をカッターを用いて剥離し、その剥離面表面に存在する中間層に対しXPS測定を実施したところ、チオール結合の存在を確認した。
【0090】
[実施例3の作製]
(5−1)(3−2)で作製したワニスCを(1−4)で作製したカソード触媒層付きPTFEシート上に10μm塗布した。塗布サイズは30mm×30mmとした。
(5−2)(1−5)で得たアノード触媒層付きPTFEシートをアノード側に、(5−1)で得た中間層付きPTFEシートをカソード側に配置し、これらで電解質膜Aを挟み、これを120℃,2分間,12.5MPaの条件でプレスした。
(5−3)プレス後のMEAについて1M硫酸水溶液に浸漬させたのち、リンス,乾燥させた。
(5−4)(5−3)で得たMEAについて、断面SEM観察を行ったところ、電解質膜とカソードの間に中間層を確認することができ、中間層の組成をEDXで調べたところ、SiとNとSなどの元素の存在を確認した。
【0091】
[実施例4の作製]
(6−1)(3−3)で得た中間層付きPTFEシートをアノード側に(5−1)で得た中間層付きPTFEシートをカソード側に配置し、電解質膜Aを挟み120℃,2分間,12.5MPaの条件でプレスした。
(6−2)プレス後のMEAについて1M硫酸水溶液に浸漬させたのち、リンス,乾燥させた。
(6−3)(6−2)で得たMEAについて、断面SEM観察を行ったところ、アノードと電解質膜、電解質膜とカソードの間に中間層を確認することができ、中間層の組成をEDXで調べたところ、SiとN元素の存在を確認した。
【0092】
[実施例5の作製]
(7−1)(3−2)で得たワニスCをPETフィルム上に塗布し、高温で乾燥処理した後、形成した電解質膜をPETフィルムよりはがし、水洗,酸処理,乾燥させることで、電解質膜Cを得た。
(7−2)(7−1)で得た電解質膜Cを用いた以外は比較例1と同様にして膜電極接合体を作製した。
【0093】
[比較例3の作製]
(8−1)中間層に添加する粒子を粒子Aではなく、未修飾のアエロジル粒子を用いた以外は実施例1と同様にして膜電極接合体を得た。
(8−2)(8−1)で得たMEAについて、断面SEM観察を行ったところ、アノードと電解質膜の間に中間層を確認することができ、中間層の組成をEDXで調べたところ、Si元素の存在を確認したが、粒子からNは検出されなかった。
【0094】
[実施例6の作製]
(9−1)粒子状媒体材料としてアエロジルに代わり、メソポーラスシリカ粒子(MCM−48)を用いた以外は、実施例1と同様にして膜電極接合体を得た。
(9−2)(9−1)で得たMEAについて、断面SEM観察を行ったところ、アノードと電解質膜の間に中間層の存在を確認できた。また、透過型電子顕微鏡を用いてその中の粒子を高倍率で確認すると規則正しく細孔が存在していることが確認できた。また、中間層の組成をEDXで調べたところ、Si元素の他にN元素を確認した。
【0095】
[実施例7の作製]
(10−1)ドデシル硫酸ナトリウムを界面活性剤に用いて水溶液中にアニリンミセルを形成し、過硫酸アンモニウムで化学酸化重合することによって、コロイド状のポリアニリン粒子を得た。
(10−2)(10−1)ポリアニリン粒子1gをワニスAと混合し、ワニスEを作製した。
(10−3)中間層作製時にワニスEを使用した以外は、実施例1と同様にしてMEAを作製した。
(10−4)(10−3)で得たMEAについて、断面SEM観察を行ったところ、アノードと電解質膜の間に中間層の存在を確認でき、中間層の組成をEDXで調べたところ、Nを含んだポリアニリン粒子が1μmサイズで観測される。
【0096】
[実施例8の作製]
(11−1)信越シリコーン社製のN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPS)をワニスAに添加したものを100℃、加湿雰囲気で混合させることで、ワニス中でAEAPSが加水分解し、表面がアミノエチル基で修飾されたポリシルセスキオキサンを含んだ混合ワニスFを得た。
(11−2)(11−1)で得たワニスFを使用した以外は、実施例1と同様にしてMEAを作製した。
【0097】
[実施例9の作製]
(12−1)中間層の塗布面積を32mm×32mmとした以外には実施例4と同様にして中間層の面積が電極面積よりも大きな膜電極接合体を得た。
【0098】
[実施例10の作製]
(13−1)20重量パーセントのNafion(登録商標)溶液(DuPont社,D2021)に対し、(3−1)で作製した粒子Aを添加し、混合することでワニスGを得た。
(13−2)ワニスGを用いて中間層を作製した以外は、実施例1と同様にしてMEAを得た。
【0099】
[実施例11の作製]
(14−1)プロパノールを主成分とする溶媒に、白金ルテニウムが73重量%担持されたケッチェンブラックと、(3−1)で得た粒子AとNafion(登録商標)を、重量比で1:0.1:0.6となるように添加し、マグネッチックスターラーにて12時間、攪拌し、PtRu/C触媒スラリーとした。
(14−2)(14−1)で得た触媒スラリーをアノード用電極作製に用いた以外は比較例1と同様にして膜電極接合体を作製した。
(14−3)(14−2)で得たMEAについて、断面SEM観察を行ったところ、アノード内に粒子状媒体の存在を確認でき、中間層の組成をEDXで調べたところ、SiとNの存在を確認した。
【0100】
[膜電極接合体のDMFC耐久性評価]
実施例1〜11および比較例1〜3の膜電極接合体のDMFC耐久性を評価した。燃料と空気の流路を有するカーボン製のセパレータの間に、各膜電極接合体を、多孔質カーボンの拡散層を介して挟み込み、評価用の燃料電池とした。この際、拡散層の大きさは32mm角とし、アノード,カソードよりも大面積とした。評価用燃料電池のアノード側には、4mol/lのメタノール水溶液を0.5ml/minで供給し、カソード側には、乾燥空気(露点−20〜−15℃)を500ml/minで供給しながら、単セルの温度を60℃とした。連続発電は0.2A/cm2の条件で行った。また、発電途中に交流インピーダンス測定を実施し、膜抵抗を測定した。試験は1000時間実施し、経過時間に対するセル電圧,アノード電位,カソード電位をプロットした。また1000時間終了後の電解質膜抵抗の増加率を交流インピーダンスを用いて評価した。電圧低下率の算出は100時間経過後と測定終了時点で行った。100時間経過後の電圧低下率は発電開始から100時間発電までの電圧-時間プロットを直線近似した際の傾きとした。また、発電終了時点の電圧低下率は発電開始から1000時間発電までのプロットを直線近似した際の傾きとした。発電試験終了後のMEAについて、断面SEM観察を実施し、アノードおよびカソードのPt:Ru元素比を測定した。また電解質膜中にRuカチオンが取り込まれているかどうかについても確認した。さらに、発電中に中間層内の窒素元素が残存しているかどうかについてもEDXで評価した。
【0101】
[結果および考察]
表1に実施例1〜11および比較例1〜3の膜電極接合体を用いたDMFCの耐久性評価結果を示す。
【0102】
【表1】

【0103】
いずれの膜電極接合体においてもアノードのPtRu組成は発電に伴いPtとなっているが、これは発電中にルテニウムが溶出したことを示している。比較例1では、アノードにおいて溶出したルテニウムが多く電解質膜やカソード側へ移動するため、電解質膜抵抗が増加し、カソード性能も低下するため、平均電圧低下率も45mV/khrと非常に大きい。カソードへのルテニウムの移動についてはEDXによりカソード触媒組成がPt:Ru=93:7となっていることからも確認できる。また、試験後の電解質膜の平均分子量をGPCを用いて測定したところ、試験前の約50%にまで低減しており、電解質膜の劣化も確認された。この要因は定かではないが、膜中のルテニウムカチオンが酸化力のあるRuO4となったことが劣化要因の一つとして考えられる。
【0104】
比較例2ではアノード中間層に導入したビピリジンの効果によりルテニウム溶出が抑えられた結果、100時間までの平均電圧低下率は低かった。しかし、発電を継続するにつれて発電電圧が低下しやすくなった。発電後のカソード触媒組成から比較例1に比べるとルテニウム溶出が抑制されているが、完全にはルテニウムカチオンの移動が抑制できていないことがわかる。また,発電終了後のEDX測定において中間層から窒素成分が流出していることが確認できる。これは、中間層内に存在した低分子量体のビピリジルが発電中に溶出したためであるといえる。
【0105】
比較例3ではアエロジルを含んだ中間層を用いているが、その表面にカチオン捕捉機能のある官能基を有していないため、ルテニウムカチオンの移動は抑制できず、結果として電解質膜の抵抗増加,電池電圧の低下を抑制できていない。
【0106】
一方、本発明の実施態様である実施例1〜11では、1000時間のカソードには検出できる範囲でのルテニウムの存在はなく、電解質膜の抵抗増加率も1%未満と低かった。中間層や電解質膜,電極内にルテニウム捕捉機能を有する官能基を含む粒子を配置した効果が見える。特にアノードと電解質膜、カソードと電解質膜の間に中間層を配置した実施例4では電圧低下率を最も低く抑えることができている。また、比較例2のように発電途中に電圧低下率が増加するような傾向は見られなかった。これは、ルテニウム捕捉機能を有する官能基が溶出せずに長時間MEA内に存在したためと考えられる。
【0107】
本発明の実施態様のひとつである膜電極接合体を、燃料電池発電システムの一例として、携帯用情報端末に実装した例を図10に示す。
【0108】
この携帯用情報端末は、2つの部分を、燃料カートリッジ106のホルダーをかねたヒンジ107で連結された折たたみ式の構造をとっている。
【0109】
1つの部分は、タッチパネル式入力装置が一体化された表示装置101,アンテナ102を内蔵した部分を有する。
【0110】
1つの部分は、燃料電池103,プロセッサ,揮発及び不揮発メモリ,電力制御部,燃料電池及び二次電池ハイブリッド制御,燃料モニタなどの電子機器及び電子回路などを実装したメインボード104,リチウムイオン二次電池105を搭載した部分を有する。
【0111】
このようにして得られる携帯用情報端末は、燃料電池103の寿命が長いため、長く使うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、DMFCやPEFCに代表される燃料電池に利用可能である。
【符号の説明】
【0113】
11 セパレータ
12 アノード拡散層
13,21,31,51,61,71,91 アノード電極触媒層
14,22,32,52,62,72,92 固体高分子電解質膜
15,23,33,53,63,73,93 カソード電極触媒層
16 カソード拡散層
17 ガスケット
34,54,64,65,94,95 中間層
41 固体高分子電解質
42,84 粒子状媒体
72 固体高分子電解質膜(粒子状媒体入り)
81 カーボン一次粒子
82 触媒金属粒子
83 固体高分子電解質(バインダ)
101 表示装置
102 アンテナ
103 燃料電池
104 メインボード
105 リチウムイオン二次電池
106 燃料カートリッジ
107 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードとカソードで固体高分子電解質膜を挟んで形成される燃料電池用の膜電極接合体において、
前記アノード,前記カソード、あるいは、前記固体高分子電解質膜の内部または表面にアノード触媒金属から溶出する金属カチオンを捕捉可能な官能基が共有結合によって固定された粒子状媒体を有する膜電極接合体。
【請求項2】
請求項1に記載の膜電極接合体において、
前記アノードと前記固体高分子電解質膜との間、あるいは、前記カソードと前記固体高分子電解質膜との間の少なくとも一方に、固体高分子電解質と前記粒子状媒体からなる中間層が配置された膜電極接合体。
【請求項3】
請求項1に記載の膜電極接合体において、
前記アノードまたはカソードが、
触媒金属を担持した触媒担体と、前記粒子状媒体と、固体高分子電解質とで構成された膜電極接合体。
【請求項4】
請求項1に記載の膜電極接合体において、
前記粒子状媒体の表面あるいは内部にはケイ素元素,硫黄元素、及び、窒素元素のうち少なくとも2つ以上の元素が含まれることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項5】
請求項1に記載の膜電極接合体において、
金属カチオンの捕捉機能を有する前記官能基が、チオール基,アミン基,ピリジル基,ビピリジル基,カルボキシル基の少なくとも一つであることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項6】
請求項4に記載の膜電極接合体において、前記粒子状媒体が金属酸化物であることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項7】
請求項6に記載の膜電極接合体において、前記金属酸化物粒子が、二酸化ケイ素,酸化ジルコニウム,酸化タングステン,タングストリン酸,モリブドリン酸、それらの誘導体及びそれらの前駆体から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項8】
請求項6に記載の膜電極接合体において、粒子状媒体が規則的な細孔構造を有する金属酸化物であることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項9】
請求項6に記載の膜電極接合体において、
粒子状媒体が10ナノメートル以上の規則的な細孔を有する金属酸化物であることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項10】
請求項6に記載の膜電極接合体において、金属カチオンを捕捉可能な前記官能基を含む化学種と前記金属酸化物表面とがシランカップリングによって結合されることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項11】
請求項1に記載の膜電極接合体において、前記粒子状媒体がポリシルセスキオキサン誘導体であることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項12】
請求項11に記載の膜電極接合体において、前記ポリシルセスキオキサン誘導体が、金属カチオンを捕捉可能な官能基を有するシランカップリング剤を加水分解することで得られたことを特徴とする膜電極接合体。
【請求項13】
請求項1に記載の膜電極接合体において、
粒子状媒体が、ポリアニリン,ポリチオフェン,ポリピロール、あるいはその誘導体から選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする膜電極接合体。
【請求項14】
請求項2において、前記中間層が前記アノードあるいは前記カソードよりも大きな面積で配置されている膜電極接合体。
【請求項15】
請求項1に記載の膜電極接合体において、電解質膜がカチオン交換基を有する芳香族炭化水素系電解質からなることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項16】
請求項1に記載の膜電極接合体を含むことを特徴とする燃料電池。
【請求項17】
請求項16に記載の燃料電池において、燃料にアルコールを用いることを特徴とする燃料電池。
【請求項18】
請求項16に記載の燃料電池を搭載した燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−74331(P2012−74331A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220251(P2010−220251)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】