自他識別能を有する用紙
【課題】 特にラベルやタグ等の用途に好適に使用できる従来にない偽造防止効果を有した自他識別能を有する用紙を得る。
【解決手段】 基紙(1)の表面に、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(2)、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(3)、真珠顔料塗工層(4)が順次設けられており、該塗工層(4)及び塗工層(3)及び塗工層(2)は、いずれも赤外線を実質的に透過する性質を有し、塗工層(2)および/または塗工層(3)が着色されており、かつ基紙(1)の表面および/または塗工層(2)および/または塗工層(3)の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分(5)が設けられており、この印刷部分(5)が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことを特徴とする自他識別能を有する用紙を得る。
【解決手段】 基紙(1)の表面に、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(2)、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(3)、真珠顔料塗工層(4)が順次設けられており、該塗工層(4)及び塗工層(3)及び塗工層(2)は、いずれも赤外線を実質的に透過する性質を有し、塗工層(2)および/または塗工層(3)が着色されており、かつ基紙(1)の表面および/または塗工層(2)および/または塗工層(3)の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分(5)が設けられており、この印刷部分(5)が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことを特徴とする自他識別能を有する用紙を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自他識別能を有する用紙に関する。詳しくは、物品の真性さを証明するために物品やその包装箱等に貼付されるラベルやタグ等の製造に好適に用いられる自他識別能を有する用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近は技術の進歩により、各種の偽造防止印刷物(商品券、入場券、紙幣のようなセキュリティを必要とする印刷物)が、多色印刷機による方法、カラーコピー機による方法、パソコンに連動したスキャナーで画像を取り込みカラープリンターでプリントする方法等で偽造されることが多くなっている。
【0003】
本発明の、自他識別能を有する用紙の好適な利用分野に、その物品が真正であることを証明するために、各種物品やその包装箱等に貼付されるラベルやタグ等がある。このラベルやタグ等は極めて高度な偽造防止技術を採用して製造されているので、このラベルやタグ等が貼附されている物品は真正であると消費者が認証することができる。また、各種物品の製造業者が販売店等で自社製品(真正品)と偽造品を見分ける一手段としても使用できる。
【0004】
上記したようなラベルやタグ等に必ず要求される性能としては偽造が困難であることが挙げられる。特に、高価な物品(「ブランドもの」と呼ばれる物品が多い)は、常に偽造されるリスクを有しているので、これに貼附するラベルやタグ等は、偽造を企てる人が諦めるくらいの高度な偽造防止技術を用いて製造されていることが要求される。また、ラベル等の偽造を行う目的で有機溶剤や水でラベルを剥がして分析を試みたときに、ラベルなどが破壊されやすい設計にしておくことも要求される。ラベルをこのような構成にすることで、真正なラベルを剥がして偽造した物品に貼附してあたかも本物の物品であるかのように偽るという犯罪も未然に防ぐことができる。
【0005】
偽造が困難なラベルやタグ等に関しては、従来、種々の構成のものが提案されている。先ず、基材となるベースに偽造が困難なフィルムを使用するか偽造が困難な紙(偽造防止用紙)を使用することで偽造防止効果を高めることが第一の手段である。第二の手段は、これらの基材となるベースの表面に偽造防止印刷等の加工を施すことである。
【0006】
偽造防止技術の一例として、金属光沢や真珠光沢や虹彩色(干渉色)を利用したものがある。これらの金属光沢や真珠光沢や虹彩色を有した偽造防止印刷物は、多色印刷機による方法、カラーコピー機による方法、パソコンに連動したスキャナーで画像を取り込みカラープリンター等でプリントする方法等によっては再現することが出来ないということを利用している。例えば本出願人は、特許文献1において基紙表面に真珠顔料と接着剤を主体とした部分的な被覆層を形成し偽造防止用紙を得ること、この用紙を使用して印刷を施し、偽造防止印刷物を得ることを提案した。
【0007】
また、同じく本出願人は特許文献2において、2層以上の抄合わせ紙よりなり、最外の紙層2が20〜50g/m2であり、かつ光輝性を有する細片が含まれていることを特徴とする偽造防止用紙を提案した。
【0008】
また特許文献3においては、被印刷基材上にパール顔料を含まないインキを用いて形成された、前記被印刷基材の表面の平滑性を向上させるための下地印刷塗膜が少なくとも一層以上積層してあり、前記下地印刷塗膜上には、パール顔料を含有するパールインキを用いて形成されたパール印刷塗膜が少なくとも一層以上積層されていることを特徴とするパール調印刷物も提案されている。この発明には、パール調印刷物をオフセット印刷や活版印刷を利用して製造する際に、被印刷基材の表面が粗面であって、印刷塗膜中のパール顔料の配向方向が一定しないことにより、得られるパール光沢が不十分な点を解消することを課題としている。また、この発明には、上層のパール印刷塗膜のパール光沢を見えやすくするために、下地印刷塗膜の色相を比較的明度の低い暗色とすることも提案されている。
【0009】
また本出願人は、特許文献4において、可視光線領域と赤外線領域の一種のメタメリズムと、真珠顔料塗工層とを組み合わせて、従来にない真贋判定機能を有した真珠顔料塗工紙と印刷物の提案を行った。この提案の要旨は、無色のシート状物の表面に、赤外線を反射する性能を有した図柄や文字等の印刷層、及び赤外線を吸収する性能を有した図柄や文字等の印刷層、及び真珠顔料塗工層が設けられており、前記赤外線を反射する性能を有した図柄や文字等の印刷層と、赤外線を吸収する性能を有した図柄や文字等の印刷層とが通常光のもとで同色に見え、かつ赤外線領域での分光反射率が相違していることを特徴とする真贋判定機能を有する真珠顔料塗工シートを得ることにあった。
【0010】
前記の特許文献1や特許文献2で提案された真珠顔料の色相は穏やかなパール調であり、用紙の色とのコントラストに欠けて視認性がやや劣ることが問題であった。また、前記した特許文献3に提案されたパール調印刷物も、この仕組みが判ってしまえば比較的容易に偽造されるおそれがあった。また、これらの用紙や印刷物を利用して物品が真正であることを証明するためのラベルに使用しても、ラベルを水や有機溶剤を使用してたやすく剥がすことができるので、ラベルを剥がして偽造した物品の表面に貼附するという、前述した犯罪を防止することは困難であるという問題点も有している。本発明者らは、種々検討の結果、これら従来技術の欠点を解消した、全く新規な自他識別能を有するラベル用紙を先に特許文献5として提案した。
【0011】
この提案(特許文献5)の要旨は、基紙の表面に、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層、真珠顔料塗工層を順次設けたことを特徴とする自他識別能を有するラベル用紙、及び、基紙の表面に、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層、真珠顔料塗工層を順次設けたことを特徴とする自他識別能を有するラベル用紙を得ることにあった。
【0012】
【特許文献1】特開平6−313298号公報
【特許文献2】特許第3075454号公報
【特許文献3】特開2001−260517号公報
【特許文献4】特願2002−184668号
【特許文献5】特願2004−243589号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記特許文献5で提案した自他識別能を有するラベル用紙に、より高度な偽造防止技術を盛り込んだ用紙を提案することを課題とする。より高度な偽造防止技術とは、具体的には、赤外線を可視化できる装置で用紙を観察したときに、通常光のもとでは実質的に視認することのできない文字や画像の印刷部分が視認できるという、高度な偽造防止技術のことを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の要旨とするところを図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明の自他識別能を有する用紙の一部拡大断面図であって、本発明の第1の発明は、基紙1の表面に、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3、真珠顔料塗工層4が順次設けられており、該塗工層4及び塗工層3及び塗工層2は、いずれも赤外線を実質的に透過する性質を有し、塗工層2および/または塗工層3が着色されており、かつ基紙1の表面および/または塗工層2および/または塗工層3の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分5が設けられており、この印刷部分5が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことを特徴とする自他識別能を有する用紙である。
【0015】
また、本発明の第2の発明は、図2に示したように、基紙1の表面に、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、真珠顔料塗工層4が順次設けられており、該塗工層4及び塗工層2及び塗工層3は、いずれも赤外線を実質的に透過する性質を有し、塗工層3および/または塗工層2が着色されており、かつ基紙1の表面および/または塗工層3および/または塗工層2の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分5が設けられており、この印刷部分5が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことを特徴とする自他識別能を有する用紙である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自他識別能を有する用紙は、自他識別能を要求される用途(例えばラベルやタグ)に使用され、下記に述べるような効果を有する。
1)用紙を構成する種々の材料は容易に入手できない材料を使用しており、偽造を防止する効果に優れている。
2)ラベルに使用された場合、物品の表面に貼付されたラベルを、水や有機溶剤、或いはラベル剥がし液等を使用して粘着剤や接着剤の粘着力や接着力を弱めて剥がそうとしても、ラベルの層間を構成する、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、若しくは親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3のいずれかが溶解若しくは膨潤してしまうのでラベルが破壊されてしまう。あるいは、塗工層2や3が膨潤することで、真珠顔料光沢層4の真珠光沢感が大幅に低下してしまう。このことは、ラベルを剥がして偽造した物品の表面に貼附するという犯罪の防止に大きな効果を有する。
3)また、ラベル等の偽造を行う目的で有機溶剤や水でラベルを剥がして分析を試みたときに、ラベル等が破壊されるので分析が困難となり、偽造防止効果が大幅に高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第1の発明について先ず説明する。
基紙1は、原料パルプとして針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材パルプを主体とし、これに必要に応じて、麻、竹、ワラ、ケナフ等の非木材パルプや合成パルプ、合成繊維、半合成繊維等を併用し、これらの原料パルプに必要に応じてクレー、カオリン、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム粉末等の内添用填料や着色染料や着色顔料を加え、さらにロジンサイズ剤等のサイズ剤、ポリアクリルアミド等の乾燥紙力増強剤、ポリアミド・ポリアミン・エピクロルヒドリンやメラミン樹脂等の湿潤紙力増強剤、硫酸バンド等の定着剤といった製紙用副資材を適宜添加して紙料を調製し、一般的にはフリーネス300〜500mlC.S.F.で円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、あるいはこれらのコンビネーション、ツインワイヤー抄紙機等の抄紙機を使用して常法に従い、通常坪量50〜150g/m2で抄造される。
【0018】
基紙1は、偽造防止効果を高めるために種々の偽造防止技術を用いてもよい。例えば、スレッドの挿入、着色繊維の混抄、紫外蛍光繊維の混抄、紫外蛍光発色粒子の混抄、偽造防止用細片の混抄、等々、従来提案されている各種の偽造防止技術を採用できる。尚、ここでいう紫外蛍光繊維、紫外蛍光発色粒子とは、紫外線を照射することによって蛍光発色する繊維、粒子のことを意味する。
【0019】
本発明においては、基紙1が多層抄き合わせ紙であって、各紙層の中で少なくとも1層が他の紙層の紙層間強度より低くしておくと、この基紙を使用してラベルを製造し、物品等の表面に貼付した後にラベルを剥離しようとした場合に、紙層間強度の低い紙層から剥離するのでラベルそのものが破壊されてしまうこととなる。このことは、偽造した物品に正規のラベルを貼附するという犯罪を起こしにくくする効果を高めることとなるので好ましい。紙層間強度を低くする手段としては繊維長の短い製紙用繊維を使用する方法、紙層を構成する紙料の叩解を低くする方法、紙力増強剤を使用しないか、その添加量を少なくする方法、合成繊維を使用して繊維間結合強度を低くする方法、等の周知の方法を採用できる。紙層間強度が一番低い紙層の紙層間強度は、通常、万能引張り試験機で測定するT字剥離力で30〜70gf/15mm(MD)とする。
【0020】
なお必要に応じて、基紙の紙面強度を向上させるために、基紙の抄紙段階の途中でサイズプレス装置等によって、スチレン系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、スチレン・マレイン酸樹脂、アルキルケテンダイマーのような合成樹脂、澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉のような澱粉や変性澱粉や澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体、カルボキシメチル化グアーガム、リン酸化グアーガム、酸化グアーガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の薬品を表面に塗工してもよい。また、ビルブレードコーター等を使用して微塗工紙に使用される塗工液を数g/m2(乾燥質量、以下同じ)塗工することも適宜行うことができる。
【0021】
基紙1の表面には、必要に応じて樹脂塗工層や顔料塗工層を設けることもできる。これらの塗工層は、親水性溶剤や親油性溶剤に溶解や膨潤する性質を有していても、あるいは有していなくても良い。本発明においては、基紙1の表面に樹脂塗工層や顔料塗工層を設けると真珠顔料塗工層4の効果、即ち真珠光沢感を高める働きをするので、これらの塗工層を設けた方が好ましい。その理由は、これらの塗工層を設けると表面平滑性が高くなり、その影響で真珠顔料塗工層の真珠光沢感が高くなるからである。真珠顔料は扁平な形状を有しており、基材が平滑であればある程、その上に塗工される真珠顔料塗工層中の真珠顔料が平らに並び、その結果、真珠光沢感を高めるのである。
【0022】
樹脂塗工層は、スチレン・ブタジエン・ラテックス、メチルメタクリレート・ブタジエン・ラテックス、澱粉、ポリビニルアルコール等の周知の水系塗工液や、アクリル酸エステル樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂等を有機溶剤に溶解した塗工液をエアナイフコーター、グラビアコーター、ロールコーター等の周知の塗工機や各種印刷機を用いて、前記基紙の表面に通常3〜30g/m2塗工することで得られる。
【0023】
顔料塗工層は、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム粉末等の、周知の白色塗工用粉末の1種類以上と、スチレン・ブタジエン・ラテックス、メチルメタクリレート・ブタジエン・ラテックス、澱粉、ポリビニルアルコール等の、周知の接着剤の1種類以上を主体とし、これらに分散剤、耐水化剤、防腐剤、防かび剤、等といった塗工用の副資材を適宜併用して塗工液を調製し、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター等の周知の塗工機を使用して前記基紙の表面に通常3〜30g/m2塗工することで得られる。この顔料塗工層は、後に述べるように、本発明の目的を達成できるだけの通常光や赤外線を実質的に反射する性能を有することが必要である。
【0024】
この際、染料や着色顔料等の着色剤を本発明の目的を阻害しない範囲で塗工液に添加することもできる。また、偽造防止効果を高めるために紫外線の照射で蛍光発色する水不溶性で有機溶剤可溶性の染料粉末や紫外線の照射で蛍光発色する顔料を添加することもできる。
【0025】
親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する着色された塗工層2は、ラベルを水によって剥離させようとする際に、この層が溶解若しくは膨潤することで、前述したラベルを再貼附するという犯罪を防止する役目と、真珠顔料塗工層4の真珠光沢感を強める役目と、後に述べるように赤外線を実質的に透過させる役目を担う。真珠顔料塗工層4の真珠光沢感を強める効果は、塗工層2や3の明度が低い程効果が高くなるので、本発明においては塗工層2や3の明度は低い方が好ましい。
親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する着色された塗工層2は、バインダーと着色剤を主成分として形成される。バインダーとしては、澱粉系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、水溶性アクリル樹脂、等の水や熱水により溶解する樹脂が使用され、これらの樹脂の1種類もしくは数種類と、着色剤としての染料や顔料と、分散剤等の塗工用副資材とを必要に応じて添加して塗工液を調製する。次いで、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター等の周知の塗工機を使用して前記基紙の表面、もしくは樹脂塗工層や顔料塗工層の表面に通常5〜30g/m2塗工する。
【0026】
また、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する着色された塗工層3は、ラベルを有機溶剤によって剥離させようとするときにこの層が溶解若しくは膨潤することで、前述したラベルを再貼附するという犯罪を防止する役目と、前述のように真珠顔料塗工層4の真珠光沢感を強める役目と、後に述べるように赤外線を実質的に透過させる役目を担う。親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する着色された塗工層3は、バインダーと着色剤を主成分として形成される。バインダーとしては、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、メタクリル酸樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、変性セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂等といった、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、イソプロピルアルコール等の高級アルコール類、酢酸エチル等の酢酸エステル類、アセトンやメチル・エチル・ケトン等のケトン類、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類等の有機溶剤により溶解する樹脂が使用され、これらの樹脂の1種類もしくは数種類と、着色剤としての染料や顔料と、分散剤等の塗工用副資材とを必要に応じて添加して塗工液を調製する。次いで、グラビアコーター、ロールコーター等の周知の塗工機を使用して前記親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する着色された塗工層2の表面に通常5〜30g/m2塗工する。
【0027】
本発明では、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2や親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3は複数の層として形成してもよい。特に親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3としては、上記したように各種の有機溶剤によって溶解若しくは膨潤するバインダーの種類を変化させて複数の層を形成させることは、各種の有機溶剤でラベルを剥がそうとする、前に述べたような犯罪に対応しやすくなるので好ましいことである。
【0028】
本発明では、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3のいずれかの層、または両方が着色されていることが必要である。その理由は、塗工層2や3に着色剤を添加すると、着色剤を添加しない場合と比較して、真珠顔料塗工層4を設けた後の真珠光沢感が大きくなるという効果を得ることができるからである。特に前述のように、明度の低い着色剤を添加することで、この効果が大きくなる。かような理由から、本発明においては着色剤として、黒色系の着色剤を使用することが好ましい。着色剤としては、周知の着色染料及び/又は着色顔料を使用する。着色染料としては、黒色、黒灰色、黒青色、黒褐色等の明度の低い直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等の周知の染料を使用することが前述した理由により好ましい。また、着色顔料としては、同じく明度の低い、レーキ顔料、トーナー顔料等の有機顔料、紺青、ベンガラ等の無機顔料を使用することが好ましい。最も効果の大きなものは黒色の染顔料である。本発明においては、これらの染料や顔料の単独あるいは2種類以上を使用するが、その接着剤に対する添加量は通常5質量%〜50質量%である。また、その塗工量は通常3〜15g/m2である。本発明においては、これらの親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3は、本発明の目的を達成できるだけの赤外線を実質的に透過する性能を有することが必要である。従って上記着色剤も本発明の目的を阻害しない着色剤を選定する必要がある。
【0029】
真珠顔料塗工層4は、多色印刷機による方法、カラーコピー機による方法、パソコンに連動したスキャナーで画像を取り込みカラープリンター等でプリントする方法等では再現することが出来ないといった特殊な機能を持たせるために設ける。本発明の真珠顔料塗工層4は、真珠顔料とバインダーを主成分とする塗工液やインキを、印刷或いは塗工することで得られる。真珠顔料は、天然パールエッセンス、雲母粉末、塩基性炭酸塩、魚鱗箔、薄片状のコレステリック液晶、光干渉フィルムやホログラムフィルムを薄片状にしたもの、薄片状の粉末に薄膜を被覆して光の干渉によって真珠光沢を発現させたもの等が好ましく使用される。薄片状の粉末としては、例えば、天然若しくは合成雲母、板状アルミナ、板状シリカ、タルク、オキシ塩化ビスマス、ガラスフレーク、二酸化珪素フレーク、プラスチック等の小板のフレークが適している。また被覆する薄膜の素材としては、二酸化チタンや酸化ジルコニウム、二酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルト、有機色素等の均一な層を少なくとも薄片状の粉末の表面に、これらの1種類以上を一層以上被覆する。或いは、薄片状の粉末表面に被覆された酸化チタンを還元して低次酸化チタンとして光輝性を向上させた真珠顔料を使用してもよい。この真珠顔料塗工層4は、後に述べるように、本発明の目的を達成できるだけの赤外線を実質的に透過する性能を有することが必要である。
【0030】
本発明で用いる真珠顔料は、干渉色を発するものを使用すると見る角度で色相が変化する特徴を出すことができるので、本発明では好適に使用できる。即ち、塗工面に対して垂直に見たときに赤色に見える干渉色真珠顔料は、塗工面を傾けて見たときに、赤色に対して補色の関係にある青緑色の真珠光沢が視認できる。ここで補色とは、光の場合、混ぜ合わせたときに無彩色となる2色の関係を言い、マンセルの色相環で互いに反対側同士にある色がこれに相当する。例えば赤色に対しては青緑色が、紫色に対しては黄緑色等がその例である。本発明においては、かような干渉色を発する真珠顔料を用いることにより、真贋判定機能を一層高めることができる。
【0031】
本発明においては、真珠顔料としてコレステリック液晶を使用すると後に述べるように真贋判定機能を一層向上することができる。コレステリック液晶は層状構造をなし、各層での分子長軸方向と層面が互いに平行であり、各層は少しずつ回転して重層している(スパイラル構造となっている)。この結果、ある入射光に対して選択的に反射する性質をもつことになり、例えば黒色のベースフィルムの上に赤色の波長の光を反射するコレステリック液晶を塗工して太陽光等の白色光を当てると、赤色の光を反射し残りの波長の光は吸収されるので鮮やかな真珠光沢を持った赤色に見える。
【0032】
また、コレステリック液晶は光干渉性を有し、見る角度によって色相が変化するという別の利点があり、このことは真贋判定にとって好ましい特徴となる。また、コレステリック液晶の塗工面を偏光フィルタを通して観察すると、偏光フィルタの位置の変化で塗工面の明るさが変化するという特異な現象を観察できる。コレステリック液晶以外の真珠顔料ではこのような現象は起きないので、このことも真贋判定にとって好ましい特徴となる。
【0033】
また、コレステリック液晶の螺旋方向は化学構造の違いにより、右回転か左回転のいずれかの構造となる。このことは、この真珠顔料塗工層の上に右回転の円偏光板と左回転の円偏光板を置いて観察すると、真珠顔料塗工層が異なった色に見えることを意味し、より高い偽造防止効果を発現することとなる。
【0034】
真珠顔料と混合して使用するバインダーとしては、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、石油樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ニトロセルロース、環化ゴム、塩化ゴム等の単独あるいは混合物を使用でき、これらの1種類以上をトルエン、酢酸エチル、メチル・エチル・ケトン、アセトン、ガソリン等の石油系溶剤等の有機溶剤に溶解して使用する。あるいはロジン変性フェノール樹脂を乾性油(アマニ油等)と、高沸点溶剤で溶解したオフセット印刷インキ用のビヒクルにしたもの、あるいは、SBRラテックス、MBRラテックス、酢酸ビニルエマルジョン、アクリル酸エステルエマルジョン、ポリビニルアルコール系樹脂等の水系のバインダーを使用する。
【0035】
前記した真珠顔料とバインダーを混合し、本発明の目的を阻害しない範囲で必要に応じて、分散剤、増粘剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、有機、無機顔料や紫外蛍光発色剤、着色剤等の添加剤を併用して塗工液やインキを調製する。
【0036】
真珠顔料塗工層4を形成するための塗工液、あるいはインキ中の真珠顔料とバインダーの使用割合は、真珠光沢粉体の使用比率が高ければ高いほど真珠光沢感が高まるが、塗工層2あるいは3との接着強度が不足するので、乾燥質量換算で通常は真珠光沢粉体100質量部に対してバインダーを50〜500質量部とする。
【0037】
このようにして製造した塗工液やインキを使用して、塗工層2あるいは3の上に、塗工機や印刷機を使用して真珠顔料塗工層4を形成する。この際、塗工厚みや印刷厚み(いずれも乾燥換算)は、薄すぎると真珠光沢感が失われ、厚すぎると真珠光沢を向上する効果がそれ以上得られ難くなるので、通常1〜15μm、好ましくは3〜10μmとする。
【0038】
真珠顔料塗工層4は、エアナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンフローコーター等の周知の塗工機や、オフセット印刷機、グラビア印刷機、スクリーン印刷機等の周知の印刷機を使用して形成することができる。
【0039】
本発明においては、基紙1の表面および/または親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2および/または親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分5が設けられていることが必要である。
【0040】
赤外線を実質的に吸収する印刷部分5を詳細に説明する前に、先ずメタメリズムを利用した偽造防止技術について説明する。「メタメリズム(metamerism)」または「条件等色(metameric match)」とは、分光分布特性が異なっているにもかかわらず観察条件によって知覚的に同じ色に見えることを言う(「色彩ワンポイント」(財)日本色彩研究所編、(財)日本規格協会発行、1993年、第1巻67頁)。
【0041】
例えば、特許第1331101号(特公昭60−58711号)では、太陽光、蛍光灯、白熱電球等の通常光のもとで見える色と、所望のフィルターを通して見るかあるいは所望の分光エネルギー分布を有する光源のもとで見える色が異なった色相、明度、彩度に見えるメタメリックな性質を有する着色剤でなるメタメリックインキを用いた偽造防止技術が提案されている。このメタメリックインキと同色の通常の印刷インキとで所望のパターン群を用紙表面に組み合わせパターンとして形成させたものを、例えばカラーコピー機で複写すると、通常光のもとで同色であったものが両者の色に差が生じ、偽造品であることが判明するものである。このメタメリズムを利用した偽造防止技術については後に詳述する。
【0042】
本発明では、印刷部分5が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことが必要であるが、この説明をする前に前述したメタメリズムを応用した偽造防止技術についてより詳しく説明する。
【0043】
通常カラー印刷物を作製する場合に使用されるプロセスインキは、藍(シアン)インキ、黄(イエロー)インキ、紅(マゼンタ)インキの三原色を使用してあらゆる色を再現させようとしている。インキの混合はいわゆる「減法混色」を示し、三原色を混ぜ合わせると「黒色」となる。実際は理論通りに真っ黒とならないので、「墨インキ」と称するカーボンブラックを着色剤に使用したインキで印刷することが通常行われる。通常藍インキには着色剤としてフタロシアニンブルーを、黄インキには着色剤としてジスアゾイエローを、紅インキには着色剤としてカーミン6Bを使用している。
【0044】
図7に着色剤にフタロシアニンブルーを使った藍インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示す。
【0045】
また、図8に着色剤にジスアゾイエローを使った黄インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示す。
【0046】
また、図9に着色剤にカーミン6Bを使った紅インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示す。
【0047】
また、図10に前記藍インキ、黄インキ、紅インキを混合した墨インキを使ってRIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷したものを分光光度計で測定した結果(点線)と、着色剤としてカーボンブラックを使用した墨インキを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷したものを分光光度計で測定した結果(実線)を示す。
【0048】
図10中の、両者の分光反射率曲線の対比で判るように、「藍+黄+紅インキ」を混合した墨インキを使用した印刷面の分光反射率曲線では、波長400〜700nmの反射率は極端に低く、700nmを過ぎると急激に反射率は大きくなっている。このことは、「藍+黄+紅インキ」で調製した墨インキはわずかに赤みがかかった黒色に見えることを示している。一方、「カーボン墨インキ」を使用した印刷面の分光反射率曲線も、可視光線領域の反射率は前記「藍+黄+紅インキ」を混合したインキの反射率とほぼ同一で、黒色に見えることを示している。
【0049】
図1〜2に示した本発明の自他識別能を有する用紙の例で、このことをより具体的に説明する。一例として、基紙1の表面に設けられた赤外線を実質的に吸収する印刷部分5として「カーボン墨インキ」を使用した印刷部分を形成し、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3のいずれか一方若しくは両方の塗工層を形成するための塗工液に、着色剤としてフタロシアニンブルー、ジスアゾイエロー、カーミン6Bを併用する。併用の方法は、この3種類の着色剤を一方の塗工液に混合してもよいし、また2種類を塗工層2を形成するための塗工液に、1種類を塗工層3を形成するための塗工液に混合して使用してもよい。要は、この印刷部分5が、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2と親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3を形成した後に、用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないように併用する着色剤の添加量を調整して塗工層2や塗工層3を形成すればよい。
【0050】
しかし、赤外線を照射し、その反射光を可視化できる装置で観察すると、印刷部分5が視認できるようになる。これは、図10に示した通り赤外線領域では「カーボン墨」と前述の「藍+黄+紅」の混色墨と反射率が大幅に異なっている。このことは、仮に人間の目が赤外線を感知できるような構造になっていた場合、両者は異なった色に見えることを示している。
【0051】
本発明ではこの現象を積極的に利用したものであって、赤外線を照射しその画像を可視化できるような装置で観察したり、信号を検知することで両者を識別し、真贋の判定機能に利用するものである。なお、本発明に於いて、「透過」あるいは「吸収」あるいは「反射」の意味は、可視光あるいは赤外光を完全に透過(透過率100%)、あるいは吸収(吸収率100%)、あるいは反射(反射率100%)することを意味するものではなく、本発明の目的を達成できれば多少その値が低くても構わないことを意味する。
【0052】
図11と図12はこのことを具体的に図示したものである。図11は、四六<90>のコート紙に印刷層を細紋状の図柄で形成した例を示し、細紋印刷層5a(赤外線を実質的に吸収する印刷部分5に相当する)はカーボン墨インキで形成し、細紋印刷層7は「藍+黄+紅インキ」を混合した墨インキ(混色墨インキ)で形成する。この印刷物は通常光のもとでは7及び5aは同色(黒色)に見える(図11)が、両者は前に述べたように赤外線の反射率が異なっているので、その画像を可視化できるような装置、例えばピーク波長が830nmや900nmの赤外線を発するLEDや、波長1060nmの赤外線を発するガラスレーザを使用して赤外線を照射してその画像を、赤外線フィルターを取り外したCCDカメラ等で撮影し、CRTに画像として映し出す装置等を使用して観察すると、機器の調整具合にもよるが図12に示したように印刷層5aのみが黒く写って見え、印刷層7は消えてしまったように写る。
【0053】
本発明においては、各塗工層の表面にプライマー層を適宜設けることができる。この層は、例えば塗工層2と塗工層3が直接接したときに両塗工層の界面での接着性が劣るような場合に設け、両者がプライマー層を介して良好に接着する働きを担う。プライマー層に使用する樹脂としては、真珠顔料と混合して使用するバインダーで説明した上記した各種の樹脂を使用することができ、これらの単独或いは併用した塗工液を通常0.2〜5g/m2塗工する。
【0054】
また、塗工層2や3は複数層設けることができる。犯罪者が物品等の表面に貼付されたラベルを剥がそうとする場合は、種々の液体で剥がすことを試みる。例えば、水、温水、熱水、エチルアルコールやプロピルアルコール等のアルコール類、ガソリンや灯油等の石油系有機溶剤、界面活性剤、市販されているラベル剥がし液等である。ラベル剥がし液は、数種類のアルコール類や有機溶剤を混合する例が多い。従って、本発明においては、塗工層2や3に使用する樹脂としては、上記した液体のいずれかで溶解又は膨潤する樹脂を選定して使用することが必要である。特に,親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3に使用するバインダーは、上記したような各種の有機溶剤に溶解若しくは膨潤するものを複数選択し、塗工層を複数層とすることが好ましい。
【0055】
このようにして製造された本発明の用紙は、所定の印刷を施しラベルの形状に打ち抜かれてから所定の物品や包装箱の表面に貼附される。貼附の方法は、水系若しくは有機溶剤系の接着剤を用いて貼附する方法、ホットメルト型接着剤で貼附する方法、ラベル裏面に粘着剤加工を施し、剥離紙や剥離フィルムを剥がしてから貼附する方法等のいずれかの方法を採用する。
【0056】
図3は、本発明の用紙を使用してラベルを製造し、それを物品Mの表面に接着剤若しくは粘着剤層Bを介して貼附した一例で、その一部拡大断面図を示している。この例では赤外線を実質的に吸収する印刷部分5は、図で示したように基紙1の表面に形成されている。印刷層6は、従来周知の種々の偽造防止印刷技術を採用して形成することも適宜行われる。
【0057】
図4は、基紙1の表面に、赤外線を実質的に吸収する印刷部分5を形成した例の正面図である。具体的には、基紙の表面に、カーボン墨インキを使用して、「genuine genuine 」が連続した文字列(太ゴシック体6ポイント、文字列と文字列の間隔は5mm)をオフセット輪転印刷機で印刷した一例である。
【0058】
図5は、本発明の用紙を使用してラベルを製造した他の例の正面図を示している。この例では、ラベルの表面に白インキを使って白ベタ印刷部分W(点線で囲った範囲)を形成し、その後ブランド名等の印刷層5を形成している。白ベタ印刷部分Wの周囲には、真珠顔料塗工層4の表面の一部が露出するように形成し、用紙の表面Lを露出させている。
【0059】
図6は、図5に示したラベルに赤外線(ピーク波長が830nmの赤外線を発するLEDを使用)を照射し、反射画像を赤外線フィルターを取り外したCCDカメラで撮影し、CRTに画像として映し出す装置を使用して観察したところ、通常光のもとでは見えなかった「genuine」と言う文字が真珠顔料塗工層部分で視認できる様子をモデル的に示した正面図である。
【0060】
本発明においては、図5に例示した白ベタ印刷部分を感熱記録層にし、印刷層6の代わりに感熱記録ヘッドで所定の文字や画像を記録した構成のラベルとすることもできる。
【0061】
図4及び図5のいずれも、用紙の表面Lは、真珠顔料塗工層4が露出した面である。この露出した面は真珠光沢感に優れた面であるので意匠的な効果が向上すると共に、前に述べた理由によりこのような構成のラベルはカラーコピー機などを使用して偽造することは困難である。
【0062】
特に、真珠顔料として前述した干渉色を発現する真珠顔料を使用した場合には、ラベルを視認する角度を変化することにより真珠顔料塗工層の色相が変化するので、ラベルが複写されたものであるかの判定を瞬時に行うことが可能となるし、意匠的な効果も高まるという利点がある。
【0063】
ラベルの製造は、通常次のように行われる。先ず初めに、前述した構成の本発明の用紙を準備する。用紙の裏面には、常法に従い、接着剤若しくは粘着剤層Bを形成し、粘着剤を使用する場合は、粘着剤面には剥離紙又は剥離フィルムを貼着する。接着剤はラベルを製造し、最終的に物品等の表面に貼付するときに塗布してもよい。
【0064】
表面(真珠顔料塗工層側)には、所定の印刷層6を設け、次いで、トムソン打ち抜き刃等を使用して所定のラベルの大きさに打ち抜く。又は、剥離紙又は剥離フィルムの表面若しくは表面から少し入ったところまで刃を入れ、ラベルとして必要な部分を残して他の不必要な部分を取り去る。
【0065】
この際、ラベル内部に切り込みを入れることも随時行うことができる。この技術は周知の技術であって、物品の表面に貼附されたラベルを何らかの手段で剥がそうとすると、ラベルが破壊するように作用する。ラベルをたやすく剥がすことができると、ラベルを剥がして偽造した物品の表面に貼附して、あたかもその物品が真正であると見せかけるという犯罪が起きやすくなるから、物品が真正であることを認証する目的で使用する多くのラベルでこの手段が採られている。
【実施例】
【0066】
以下実施例を挙げるが、質量部、質量%はいずれも固形分換算の値を意味する。
[実施例1]
<基紙の製造>
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)50質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)
50質量部を400mlC.S.F.に叩解し、これに白土10質量部を添加し、パルプに対して変性ロジンサイズ剤(商品名「サイズパインN−771」、荒川化学(株)製)を1質量%、湿潤紙力増強剤(商品名「WS−547」、(株)日本PMC製)を0.5質量%、硫酸バンドを4質量%添加して紙料を調製した。この紙料を用いて長網抄紙機で坪量90g/m2の原紙を常法に従って製造した。
【0067】
次いで、カオリン(商品名「UW90」、エンゲルハード(株)製造)50質量部、炭酸カルシウム(商品名「カルライト−KT」、(株)白石工業製)50質量部、分散剤0.3質量部、バインダーとして酸化澱粉(日澱化学(株)製造)6質量部、アクリルエマルション(商品名「ニポールLX−852B」、日本ゼオン(株)製)15質量部よりなる白色顔料塗工液を上記原紙にエアーナイフコーターを使用して15g/m2設け、次いでスーパーキャレンダー処理した。白色顔料塗工層側の平滑度(JIS8119に規定するベック平滑度)を測定したところ、290秒であった。
【0068】
<赤外線を実質的に吸収する印刷部分の形成>
上記した基紙の表面(白色顔料塗工層側)に、カーボン墨インキを使用して、「genuine genuine 」が連続した文字列(太ゴシック体6ポイント、文字列と文字列の間隔は5mm)をオフセット輪転印刷機で印刷した(図4参照)。
【0069】
<親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層の形成>
次いで、この表面の全面に親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層として変性ポリビニルアルコールの塗工層を5.0g/m2エアナイフコーターを使用して設けた。
【0070】
<親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層の形成>
次いで、この表面に設けられた親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層表面に、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層として、ポリカーボネート樹脂100質量部、ジスアゾイエロー、フタロシアニンブルー、カーミン6Bを混合した黒色粉末を25質量部、酢酸エチル250質量部よりなる塗工液をグラビアコーターを使用して、5.0g/m2設けた。
【0071】
<真珠顔料塗工層の形成>
次いで、この表面に、真珠顔料(粒径40μm、酸化チタン被覆率28%の雲母粉末)100質量部、アクリルエマルジョン100質量部、リン酸化澱粉10質量部、水適量部よりなる塗工液を、エアナイフコーターを使用して、7.0g/m2設けた。
【0072】
[実施例2]
真珠顔料塗工層を下記に変更した以外は実施例2と同様にして自他識別能を有する用紙を製造した。
<真珠顔料塗工層の形成>
赤色の虹彩色を発する真珠顔料(商品名「イリオジン215」、メルク・ジャパン(株)製造)80質量部、ポリアクリル酸エステルエマルション20質量部より成る濃度20質量%の水性塗工液を、エアナイフコーターを使用して、乾燥質量で5g/m2塗工し、真珠顔料塗工層を得た。
【0073】
<粘着層の形成の一例>
クラフト紙の表面にポリエチレンを溶融押し出し塗工し、次いでシリコン系の剥離剤を塗工した剥離紙に、粘着剤層(強粘着タイプ)を形成し、この粘着剤層に実施例1及び2で得られた用紙の裏面が接するように貼着させた。
【0074】
<印刷層の形成>
次いで図5に示したように、表面に白インキを使って白ベタ印刷部分W(点線で囲った範囲)を形成し、その後ブランド名等の印刷層5を形成した。白ベタ印刷部分Wの周囲には、真珠顔料塗工層の表面の一部が露出するように形成し、用紙の表面を露出させた。
【0075】
<ラベルの打ち抜き>
次いで、トムソン打ち抜き刃を使用して、図5に示したラベルを打ち抜いた。(以下、実施例1の用紙を使用して製造したラベルを製造例1のラベル、実施例2の用紙を使用して製造したラベルを製造例2のラベルと言う。)
【0076】
<包装箱へのラベルの貼合>
白板紙を用いて所定の印刷を施した市販のインクジェットプリンター用のインキカートリッジの包装箱表面に、製造例1及び製造例2のラベルを貼付した。
【0077】
<ラベルの剥離試験とその結果>
爪でラベルを剥がそうと試みたが、製造例1及び製造例2のラベル共に粘着剤層は包装箱と強固に粘着しており、剥がすことは出来なかった。無理に剥がそうとするとラベルが破壊した。
【0078】
<赤外線による観察>
ピーク波長が830nmの赤外線を発するLEDでラベルを照射し、赤外線フィルターを取り外したCCDカメラ等で撮影し、CRTに画像として映し出した。図6に示すように、可視光下では視認することのできなかった「genuine」という文字を明瞭に視認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明による自他識別能を有する用紙は、自他を識別させたいあらゆる物品、例えば、装身具の包装箱、腕時計の包装箱、ウィスキーやブランデー等の洋酒のボトル、インクジェットプリンター用のインキカートリッジの包装箱、化粧品の包装箱、医薬品の包装箱、CDやDVDのパッケージ、等々の表面に貼付されるラベルやタグ等に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明による自他識別能を有する用紙の一例の一部拡大断面図である。
【図2】本発明による自他識別能を有する用紙の、他の一例の一部拡大断面図である。
【図3】本発明の用紙を使用してラベルを製造し、それを物品Mに接着剤若しくは粘着剤層Bを介して貼付した一例の一部拡大断面図である。
【図4】基紙1の表面に、赤外線を実質的に吸収する印刷部分5を形成した例の正面図である。
【図5】本発明の用紙を使用してラベルを製造した他の例の正面図である。
【図6】図5で示したラベルに赤外線を照射し、反射画像を赤外線フィルターを取り外したCCDカメラで撮影した画像の一部拡大した模式図である。
【図7】藍インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示している。
【図8】黄インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示している。
【図9】紅インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示している。
【図10】藍インキ、黄インキ、紅インキを混合した墨インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷したものを分光光度計で測定した結果と、色材としてカーボンブラックを使用した墨インキを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷したものを分光光度計で測定した結果を示している。
【図11】四六<90>のコート紙に印刷層を細紋状の図柄で形成した例である。
【図12】図11の印刷物に赤外線を照射してそれを可視化した像である。
【符号の説明】
【0081】
1 基紙
2 親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層
3 親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層
4 真珠顔料塗工層
5 赤外線を実質的に吸収する印刷部分
5a 赤外線を実質的に吸収する細紋印刷層
6 印刷層
7 混色墨インキで形成された細紋印刷層
B 接着剤若しくは粘着剤層
M 物品
L ラベル用紙ノ表面
W 白ベタ印刷部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、自他識別能を有する用紙に関する。詳しくは、物品の真性さを証明するために物品やその包装箱等に貼付されるラベルやタグ等の製造に好適に用いられる自他識別能を有する用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近は技術の進歩により、各種の偽造防止印刷物(商品券、入場券、紙幣のようなセキュリティを必要とする印刷物)が、多色印刷機による方法、カラーコピー機による方法、パソコンに連動したスキャナーで画像を取り込みカラープリンターでプリントする方法等で偽造されることが多くなっている。
【0003】
本発明の、自他識別能を有する用紙の好適な利用分野に、その物品が真正であることを証明するために、各種物品やその包装箱等に貼付されるラベルやタグ等がある。このラベルやタグ等は極めて高度な偽造防止技術を採用して製造されているので、このラベルやタグ等が貼附されている物品は真正であると消費者が認証することができる。また、各種物品の製造業者が販売店等で自社製品(真正品)と偽造品を見分ける一手段としても使用できる。
【0004】
上記したようなラベルやタグ等に必ず要求される性能としては偽造が困難であることが挙げられる。特に、高価な物品(「ブランドもの」と呼ばれる物品が多い)は、常に偽造されるリスクを有しているので、これに貼附するラベルやタグ等は、偽造を企てる人が諦めるくらいの高度な偽造防止技術を用いて製造されていることが要求される。また、ラベル等の偽造を行う目的で有機溶剤や水でラベルを剥がして分析を試みたときに、ラベルなどが破壊されやすい設計にしておくことも要求される。ラベルをこのような構成にすることで、真正なラベルを剥がして偽造した物品に貼附してあたかも本物の物品であるかのように偽るという犯罪も未然に防ぐことができる。
【0005】
偽造が困難なラベルやタグ等に関しては、従来、種々の構成のものが提案されている。先ず、基材となるベースに偽造が困難なフィルムを使用するか偽造が困難な紙(偽造防止用紙)を使用することで偽造防止効果を高めることが第一の手段である。第二の手段は、これらの基材となるベースの表面に偽造防止印刷等の加工を施すことである。
【0006】
偽造防止技術の一例として、金属光沢や真珠光沢や虹彩色(干渉色)を利用したものがある。これらの金属光沢や真珠光沢や虹彩色を有した偽造防止印刷物は、多色印刷機による方法、カラーコピー機による方法、パソコンに連動したスキャナーで画像を取り込みカラープリンター等でプリントする方法等によっては再現することが出来ないということを利用している。例えば本出願人は、特許文献1において基紙表面に真珠顔料と接着剤を主体とした部分的な被覆層を形成し偽造防止用紙を得ること、この用紙を使用して印刷を施し、偽造防止印刷物を得ることを提案した。
【0007】
また、同じく本出願人は特許文献2において、2層以上の抄合わせ紙よりなり、最外の紙層2が20〜50g/m2であり、かつ光輝性を有する細片が含まれていることを特徴とする偽造防止用紙を提案した。
【0008】
また特許文献3においては、被印刷基材上にパール顔料を含まないインキを用いて形成された、前記被印刷基材の表面の平滑性を向上させるための下地印刷塗膜が少なくとも一層以上積層してあり、前記下地印刷塗膜上には、パール顔料を含有するパールインキを用いて形成されたパール印刷塗膜が少なくとも一層以上積層されていることを特徴とするパール調印刷物も提案されている。この発明には、パール調印刷物をオフセット印刷や活版印刷を利用して製造する際に、被印刷基材の表面が粗面であって、印刷塗膜中のパール顔料の配向方向が一定しないことにより、得られるパール光沢が不十分な点を解消することを課題としている。また、この発明には、上層のパール印刷塗膜のパール光沢を見えやすくするために、下地印刷塗膜の色相を比較的明度の低い暗色とすることも提案されている。
【0009】
また本出願人は、特許文献4において、可視光線領域と赤外線領域の一種のメタメリズムと、真珠顔料塗工層とを組み合わせて、従来にない真贋判定機能を有した真珠顔料塗工紙と印刷物の提案を行った。この提案の要旨は、無色のシート状物の表面に、赤外線を反射する性能を有した図柄や文字等の印刷層、及び赤外線を吸収する性能を有した図柄や文字等の印刷層、及び真珠顔料塗工層が設けられており、前記赤外線を反射する性能を有した図柄や文字等の印刷層と、赤外線を吸収する性能を有した図柄や文字等の印刷層とが通常光のもとで同色に見え、かつ赤外線領域での分光反射率が相違していることを特徴とする真贋判定機能を有する真珠顔料塗工シートを得ることにあった。
【0010】
前記の特許文献1や特許文献2で提案された真珠顔料の色相は穏やかなパール調であり、用紙の色とのコントラストに欠けて視認性がやや劣ることが問題であった。また、前記した特許文献3に提案されたパール調印刷物も、この仕組みが判ってしまえば比較的容易に偽造されるおそれがあった。また、これらの用紙や印刷物を利用して物品が真正であることを証明するためのラベルに使用しても、ラベルを水や有機溶剤を使用してたやすく剥がすことができるので、ラベルを剥がして偽造した物品の表面に貼附するという、前述した犯罪を防止することは困難であるという問題点も有している。本発明者らは、種々検討の結果、これら従来技術の欠点を解消した、全く新規な自他識別能を有するラベル用紙を先に特許文献5として提案した。
【0011】
この提案(特許文献5)の要旨は、基紙の表面に、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層、真珠顔料塗工層を順次設けたことを特徴とする自他識別能を有するラベル用紙、及び、基紙の表面に、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層、真珠顔料塗工層を順次設けたことを特徴とする自他識別能を有するラベル用紙を得ることにあった。
【0012】
【特許文献1】特開平6−313298号公報
【特許文献2】特許第3075454号公報
【特許文献3】特開2001−260517号公報
【特許文献4】特願2002−184668号
【特許文献5】特願2004−243589号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記特許文献5で提案した自他識別能を有するラベル用紙に、より高度な偽造防止技術を盛り込んだ用紙を提案することを課題とする。より高度な偽造防止技術とは、具体的には、赤外線を可視化できる装置で用紙を観察したときに、通常光のもとでは実質的に視認することのできない文字や画像の印刷部分が視認できるという、高度な偽造防止技術のことを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の要旨とするところを図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明の自他識別能を有する用紙の一部拡大断面図であって、本発明の第1の発明は、基紙1の表面に、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3、真珠顔料塗工層4が順次設けられており、該塗工層4及び塗工層3及び塗工層2は、いずれも赤外線を実質的に透過する性質を有し、塗工層2および/または塗工層3が着色されており、かつ基紙1の表面および/または塗工層2および/または塗工層3の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分5が設けられており、この印刷部分5が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことを特徴とする自他識別能を有する用紙である。
【0015】
また、本発明の第2の発明は、図2に示したように、基紙1の表面に、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、真珠顔料塗工層4が順次設けられており、該塗工層4及び塗工層2及び塗工層3は、いずれも赤外線を実質的に透過する性質を有し、塗工層3および/または塗工層2が着色されており、かつ基紙1の表面および/または塗工層3および/または塗工層2の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分5が設けられており、この印刷部分5が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことを特徴とする自他識別能を有する用紙である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自他識別能を有する用紙は、自他識別能を要求される用途(例えばラベルやタグ)に使用され、下記に述べるような効果を有する。
1)用紙を構成する種々の材料は容易に入手できない材料を使用しており、偽造を防止する効果に優れている。
2)ラベルに使用された場合、物品の表面に貼付されたラベルを、水や有機溶剤、或いはラベル剥がし液等を使用して粘着剤や接着剤の粘着力や接着力を弱めて剥がそうとしても、ラベルの層間を構成する、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、若しくは親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3のいずれかが溶解若しくは膨潤してしまうのでラベルが破壊されてしまう。あるいは、塗工層2や3が膨潤することで、真珠顔料光沢層4の真珠光沢感が大幅に低下してしまう。このことは、ラベルを剥がして偽造した物品の表面に貼附するという犯罪の防止に大きな効果を有する。
3)また、ラベル等の偽造を行う目的で有機溶剤や水でラベルを剥がして分析を試みたときに、ラベル等が破壊されるので分析が困難となり、偽造防止効果が大幅に高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第1の発明について先ず説明する。
基紙1は、原料パルプとして針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材パルプを主体とし、これに必要に応じて、麻、竹、ワラ、ケナフ等の非木材パルプや合成パルプ、合成繊維、半合成繊維等を併用し、これらの原料パルプに必要に応じてクレー、カオリン、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム粉末等の内添用填料や着色染料や着色顔料を加え、さらにロジンサイズ剤等のサイズ剤、ポリアクリルアミド等の乾燥紙力増強剤、ポリアミド・ポリアミン・エピクロルヒドリンやメラミン樹脂等の湿潤紙力増強剤、硫酸バンド等の定着剤といった製紙用副資材を適宜添加して紙料を調製し、一般的にはフリーネス300〜500mlC.S.F.で円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、あるいはこれらのコンビネーション、ツインワイヤー抄紙機等の抄紙機を使用して常法に従い、通常坪量50〜150g/m2で抄造される。
【0018】
基紙1は、偽造防止効果を高めるために種々の偽造防止技術を用いてもよい。例えば、スレッドの挿入、着色繊維の混抄、紫外蛍光繊維の混抄、紫外蛍光発色粒子の混抄、偽造防止用細片の混抄、等々、従来提案されている各種の偽造防止技術を採用できる。尚、ここでいう紫外蛍光繊維、紫外蛍光発色粒子とは、紫外線を照射することによって蛍光発色する繊維、粒子のことを意味する。
【0019】
本発明においては、基紙1が多層抄き合わせ紙であって、各紙層の中で少なくとも1層が他の紙層の紙層間強度より低くしておくと、この基紙を使用してラベルを製造し、物品等の表面に貼付した後にラベルを剥離しようとした場合に、紙層間強度の低い紙層から剥離するのでラベルそのものが破壊されてしまうこととなる。このことは、偽造した物品に正規のラベルを貼附するという犯罪を起こしにくくする効果を高めることとなるので好ましい。紙層間強度を低くする手段としては繊維長の短い製紙用繊維を使用する方法、紙層を構成する紙料の叩解を低くする方法、紙力増強剤を使用しないか、その添加量を少なくする方法、合成繊維を使用して繊維間結合強度を低くする方法、等の周知の方法を採用できる。紙層間強度が一番低い紙層の紙層間強度は、通常、万能引張り試験機で測定するT字剥離力で30〜70gf/15mm(MD)とする。
【0020】
なお必要に応じて、基紙の紙面強度を向上させるために、基紙の抄紙段階の途中でサイズプレス装置等によって、スチレン系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、スチレン・マレイン酸樹脂、アルキルケテンダイマーのような合成樹脂、澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉のような澱粉や変性澱粉や澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体、カルボキシメチル化グアーガム、リン酸化グアーガム、酸化グアーガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の薬品を表面に塗工してもよい。また、ビルブレードコーター等を使用して微塗工紙に使用される塗工液を数g/m2(乾燥質量、以下同じ)塗工することも適宜行うことができる。
【0021】
基紙1の表面には、必要に応じて樹脂塗工層や顔料塗工層を設けることもできる。これらの塗工層は、親水性溶剤や親油性溶剤に溶解や膨潤する性質を有していても、あるいは有していなくても良い。本発明においては、基紙1の表面に樹脂塗工層や顔料塗工層を設けると真珠顔料塗工層4の効果、即ち真珠光沢感を高める働きをするので、これらの塗工層を設けた方が好ましい。その理由は、これらの塗工層を設けると表面平滑性が高くなり、その影響で真珠顔料塗工層の真珠光沢感が高くなるからである。真珠顔料は扁平な形状を有しており、基材が平滑であればある程、その上に塗工される真珠顔料塗工層中の真珠顔料が平らに並び、その結果、真珠光沢感を高めるのである。
【0022】
樹脂塗工層は、スチレン・ブタジエン・ラテックス、メチルメタクリレート・ブタジエン・ラテックス、澱粉、ポリビニルアルコール等の周知の水系塗工液や、アクリル酸エステル樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂等を有機溶剤に溶解した塗工液をエアナイフコーター、グラビアコーター、ロールコーター等の周知の塗工機や各種印刷機を用いて、前記基紙の表面に通常3〜30g/m2塗工することで得られる。
【0023】
顔料塗工層は、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム粉末等の、周知の白色塗工用粉末の1種類以上と、スチレン・ブタジエン・ラテックス、メチルメタクリレート・ブタジエン・ラテックス、澱粉、ポリビニルアルコール等の、周知の接着剤の1種類以上を主体とし、これらに分散剤、耐水化剤、防腐剤、防かび剤、等といった塗工用の副資材を適宜併用して塗工液を調製し、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター等の周知の塗工機を使用して前記基紙の表面に通常3〜30g/m2塗工することで得られる。この顔料塗工層は、後に述べるように、本発明の目的を達成できるだけの通常光や赤外線を実質的に反射する性能を有することが必要である。
【0024】
この際、染料や着色顔料等の着色剤を本発明の目的を阻害しない範囲で塗工液に添加することもできる。また、偽造防止効果を高めるために紫外線の照射で蛍光発色する水不溶性で有機溶剤可溶性の染料粉末や紫外線の照射で蛍光発色する顔料を添加することもできる。
【0025】
親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する着色された塗工層2は、ラベルを水によって剥離させようとする際に、この層が溶解若しくは膨潤することで、前述したラベルを再貼附するという犯罪を防止する役目と、真珠顔料塗工層4の真珠光沢感を強める役目と、後に述べるように赤外線を実質的に透過させる役目を担う。真珠顔料塗工層4の真珠光沢感を強める効果は、塗工層2や3の明度が低い程効果が高くなるので、本発明においては塗工層2や3の明度は低い方が好ましい。
親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する着色された塗工層2は、バインダーと着色剤を主成分として形成される。バインダーとしては、澱粉系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、水溶性アクリル樹脂、等の水や熱水により溶解する樹脂が使用され、これらの樹脂の1種類もしくは数種類と、着色剤としての染料や顔料と、分散剤等の塗工用副資材とを必要に応じて添加して塗工液を調製する。次いで、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター等の周知の塗工機を使用して前記基紙の表面、もしくは樹脂塗工層や顔料塗工層の表面に通常5〜30g/m2塗工する。
【0026】
また、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する着色された塗工層3は、ラベルを有機溶剤によって剥離させようとするときにこの層が溶解若しくは膨潤することで、前述したラベルを再貼附するという犯罪を防止する役目と、前述のように真珠顔料塗工層4の真珠光沢感を強める役目と、後に述べるように赤外線を実質的に透過させる役目を担う。親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する着色された塗工層3は、バインダーと着色剤を主成分として形成される。バインダーとしては、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、メタクリル酸樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、変性セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂等といった、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、イソプロピルアルコール等の高級アルコール類、酢酸エチル等の酢酸エステル類、アセトンやメチル・エチル・ケトン等のケトン類、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類等の有機溶剤により溶解する樹脂が使用され、これらの樹脂の1種類もしくは数種類と、着色剤としての染料や顔料と、分散剤等の塗工用副資材とを必要に応じて添加して塗工液を調製する。次いで、グラビアコーター、ロールコーター等の周知の塗工機を使用して前記親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する着色された塗工層2の表面に通常5〜30g/m2塗工する。
【0027】
本発明では、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2や親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3は複数の層として形成してもよい。特に親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3としては、上記したように各種の有機溶剤によって溶解若しくは膨潤するバインダーの種類を変化させて複数の層を形成させることは、各種の有機溶剤でラベルを剥がそうとする、前に述べたような犯罪に対応しやすくなるので好ましいことである。
【0028】
本発明では、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3のいずれかの層、または両方が着色されていることが必要である。その理由は、塗工層2や3に着色剤を添加すると、着色剤を添加しない場合と比較して、真珠顔料塗工層4を設けた後の真珠光沢感が大きくなるという効果を得ることができるからである。特に前述のように、明度の低い着色剤を添加することで、この効果が大きくなる。かような理由から、本発明においては着色剤として、黒色系の着色剤を使用することが好ましい。着色剤としては、周知の着色染料及び/又は着色顔料を使用する。着色染料としては、黒色、黒灰色、黒青色、黒褐色等の明度の低い直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等の周知の染料を使用することが前述した理由により好ましい。また、着色顔料としては、同じく明度の低い、レーキ顔料、トーナー顔料等の有機顔料、紺青、ベンガラ等の無機顔料を使用することが好ましい。最も効果の大きなものは黒色の染顔料である。本発明においては、これらの染料や顔料の単独あるいは2種類以上を使用するが、その接着剤に対する添加量は通常5質量%〜50質量%である。また、その塗工量は通常3〜15g/m2である。本発明においては、これらの親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3は、本発明の目的を達成できるだけの赤外線を実質的に透過する性能を有することが必要である。従って上記着色剤も本発明の目的を阻害しない着色剤を選定する必要がある。
【0029】
真珠顔料塗工層4は、多色印刷機による方法、カラーコピー機による方法、パソコンに連動したスキャナーで画像を取り込みカラープリンター等でプリントする方法等では再現することが出来ないといった特殊な機能を持たせるために設ける。本発明の真珠顔料塗工層4は、真珠顔料とバインダーを主成分とする塗工液やインキを、印刷或いは塗工することで得られる。真珠顔料は、天然パールエッセンス、雲母粉末、塩基性炭酸塩、魚鱗箔、薄片状のコレステリック液晶、光干渉フィルムやホログラムフィルムを薄片状にしたもの、薄片状の粉末に薄膜を被覆して光の干渉によって真珠光沢を発現させたもの等が好ましく使用される。薄片状の粉末としては、例えば、天然若しくは合成雲母、板状アルミナ、板状シリカ、タルク、オキシ塩化ビスマス、ガラスフレーク、二酸化珪素フレーク、プラスチック等の小板のフレークが適している。また被覆する薄膜の素材としては、二酸化チタンや酸化ジルコニウム、二酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルト、有機色素等の均一な層を少なくとも薄片状の粉末の表面に、これらの1種類以上を一層以上被覆する。或いは、薄片状の粉末表面に被覆された酸化チタンを還元して低次酸化チタンとして光輝性を向上させた真珠顔料を使用してもよい。この真珠顔料塗工層4は、後に述べるように、本発明の目的を達成できるだけの赤外線を実質的に透過する性能を有することが必要である。
【0030】
本発明で用いる真珠顔料は、干渉色を発するものを使用すると見る角度で色相が変化する特徴を出すことができるので、本発明では好適に使用できる。即ち、塗工面に対して垂直に見たときに赤色に見える干渉色真珠顔料は、塗工面を傾けて見たときに、赤色に対して補色の関係にある青緑色の真珠光沢が視認できる。ここで補色とは、光の場合、混ぜ合わせたときに無彩色となる2色の関係を言い、マンセルの色相環で互いに反対側同士にある色がこれに相当する。例えば赤色に対しては青緑色が、紫色に対しては黄緑色等がその例である。本発明においては、かような干渉色を発する真珠顔料を用いることにより、真贋判定機能を一層高めることができる。
【0031】
本発明においては、真珠顔料としてコレステリック液晶を使用すると後に述べるように真贋判定機能を一層向上することができる。コレステリック液晶は層状構造をなし、各層での分子長軸方向と層面が互いに平行であり、各層は少しずつ回転して重層している(スパイラル構造となっている)。この結果、ある入射光に対して選択的に反射する性質をもつことになり、例えば黒色のベースフィルムの上に赤色の波長の光を反射するコレステリック液晶を塗工して太陽光等の白色光を当てると、赤色の光を反射し残りの波長の光は吸収されるので鮮やかな真珠光沢を持った赤色に見える。
【0032】
また、コレステリック液晶は光干渉性を有し、見る角度によって色相が変化するという別の利点があり、このことは真贋判定にとって好ましい特徴となる。また、コレステリック液晶の塗工面を偏光フィルタを通して観察すると、偏光フィルタの位置の変化で塗工面の明るさが変化するという特異な現象を観察できる。コレステリック液晶以外の真珠顔料ではこのような現象は起きないので、このことも真贋判定にとって好ましい特徴となる。
【0033】
また、コレステリック液晶の螺旋方向は化学構造の違いにより、右回転か左回転のいずれかの構造となる。このことは、この真珠顔料塗工層の上に右回転の円偏光板と左回転の円偏光板を置いて観察すると、真珠顔料塗工層が異なった色に見えることを意味し、より高い偽造防止効果を発現することとなる。
【0034】
真珠顔料と混合して使用するバインダーとしては、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、石油樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ニトロセルロース、環化ゴム、塩化ゴム等の単独あるいは混合物を使用でき、これらの1種類以上をトルエン、酢酸エチル、メチル・エチル・ケトン、アセトン、ガソリン等の石油系溶剤等の有機溶剤に溶解して使用する。あるいはロジン変性フェノール樹脂を乾性油(アマニ油等)と、高沸点溶剤で溶解したオフセット印刷インキ用のビヒクルにしたもの、あるいは、SBRラテックス、MBRラテックス、酢酸ビニルエマルジョン、アクリル酸エステルエマルジョン、ポリビニルアルコール系樹脂等の水系のバインダーを使用する。
【0035】
前記した真珠顔料とバインダーを混合し、本発明の目的を阻害しない範囲で必要に応じて、分散剤、増粘剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、有機、無機顔料や紫外蛍光発色剤、着色剤等の添加剤を併用して塗工液やインキを調製する。
【0036】
真珠顔料塗工層4を形成するための塗工液、あるいはインキ中の真珠顔料とバインダーの使用割合は、真珠光沢粉体の使用比率が高ければ高いほど真珠光沢感が高まるが、塗工層2あるいは3との接着強度が不足するので、乾燥質量換算で通常は真珠光沢粉体100質量部に対してバインダーを50〜500質量部とする。
【0037】
このようにして製造した塗工液やインキを使用して、塗工層2あるいは3の上に、塗工機や印刷機を使用して真珠顔料塗工層4を形成する。この際、塗工厚みや印刷厚み(いずれも乾燥換算)は、薄すぎると真珠光沢感が失われ、厚すぎると真珠光沢を向上する効果がそれ以上得られ難くなるので、通常1〜15μm、好ましくは3〜10μmとする。
【0038】
真珠顔料塗工層4は、エアナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンフローコーター等の周知の塗工機や、オフセット印刷機、グラビア印刷機、スクリーン印刷機等の周知の印刷機を使用して形成することができる。
【0039】
本発明においては、基紙1の表面および/または親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2および/または親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分5が設けられていることが必要である。
【0040】
赤外線を実質的に吸収する印刷部分5を詳細に説明する前に、先ずメタメリズムを利用した偽造防止技術について説明する。「メタメリズム(metamerism)」または「条件等色(metameric match)」とは、分光分布特性が異なっているにもかかわらず観察条件によって知覚的に同じ色に見えることを言う(「色彩ワンポイント」(財)日本色彩研究所編、(財)日本規格協会発行、1993年、第1巻67頁)。
【0041】
例えば、特許第1331101号(特公昭60−58711号)では、太陽光、蛍光灯、白熱電球等の通常光のもとで見える色と、所望のフィルターを通して見るかあるいは所望の分光エネルギー分布を有する光源のもとで見える色が異なった色相、明度、彩度に見えるメタメリックな性質を有する着色剤でなるメタメリックインキを用いた偽造防止技術が提案されている。このメタメリックインキと同色の通常の印刷インキとで所望のパターン群を用紙表面に組み合わせパターンとして形成させたものを、例えばカラーコピー機で複写すると、通常光のもとで同色であったものが両者の色に差が生じ、偽造品であることが判明するものである。このメタメリズムを利用した偽造防止技術については後に詳述する。
【0042】
本発明では、印刷部分5が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことが必要であるが、この説明をする前に前述したメタメリズムを応用した偽造防止技術についてより詳しく説明する。
【0043】
通常カラー印刷物を作製する場合に使用されるプロセスインキは、藍(シアン)インキ、黄(イエロー)インキ、紅(マゼンタ)インキの三原色を使用してあらゆる色を再現させようとしている。インキの混合はいわゆる「減法混色」を示し、三原色を混ぜ合わせると「黒色」となる。実際は理論通りに真っ黒とならないので、「墨インキ」と称するカーボンブラックを着色剤に使用したインキで印刷することが通常行われる。通常藍インキには着色剤としてフタロシアニンブルーを、黄インキには着色剤としてジスアゾイエローを、紅インキには着色剤としてカーミン6Bを使用している。
【0044】
図7に着色剤にフタロシアニンブルーを使った藍インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示す。
【0045】
また、図8に着色剤にジスアゾイエローを使った黄インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示す。
【0046】
また、図9に着色剤にカーミン6Bを使った紅インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示す。
【0047】
また、図10に前記藍インキ、黄インキ、紅インキを混合した墨インキを使ってRIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷したものを分光光度計で測定した結果(点線)と、着色剤としてカーボンブラックを使用した墨インキを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷したものを分光光度計で測定した結果(実線)を示す。
【0048】
図10中の、両者の分光反射率曲線の対比で判るように、「藍+黄+紅インキ」を混合した墨インキを使用した印刷面の分光反射率曲線では、波長400〜700nmの反射率は極端に低く、700nmを過ぎると急激に反射率は大きくなっている。このことは、「藍+黄+紅インキ」で調製した墨インキはわずかに赤みがかかった黒色に見えることを示している。一方、「カーボン墨インキ」を使用した印刷面の分光反射率曲線も、可視光線領域の反射率は前記「藍+黄+紅インキ」を混合したインキの反射率とほぼ同一で、黒色に見えることを示している。
【0049】
図1〜2に示した本発明の自他識別能を有する用紙の例で、このことをより具体的に説明する。一例として、基紙1の表面に設けられた赤外線を実質的に吸収する印刷部分5として「カーボン墨インキ」を使用した印刷部分を形成し、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3のいずれか一方若しくは両方の塗工層を形成するための塗工液に、着色剤としてフタロシアニンブルー、ジスアゾイエロー、カーミン6Bを併用する。併用の方法は、この3種類の着色剤を一方の塗工液に混合してもよいし、また2種類を塗工層2を形成するための塗工液に、1種類を塗工層3を形成するための塗工液に混合して使用してもよい。要は、この印刷部分5が、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層2と親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3を形成した後に、用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないように併用する着色剤の添加量を調整して塗工層2や塗工層3を形成すればよい。
【0050】
しかし、赤外線を照射し、その反射光を可視化できる装置で観察すると、印刷部分5が視認できるようになる。これは、図10に示した通り赤外線領域では「カーボン墨」と前述の「藍+黄+紅」の混色墨と反射率が大幅に異なっている。このことは、仮に人間の目が赤外線を感知できるような構造になっていた場合、両者は異なった色に見えることを示している。
【0051】
本発明ではこの現象を積極的に利用したものであって、赤外線を照射しその画像を可視化できるような装置で観察したり、信号を検知することで両者を識別し、真贋の判定機能に利用するものである。なお、本発明に於いて、「透過」あるいは「吸収」あるいは「反射」の意味は、可視光あるいは赤外光を完全に透過(透過率100%)、あるいは吸収(吸収率100%)、あるいは反射(反射率100%)することを意味するものではなく、本発明の目的を達成できれば多少その値が低くても構わないことを意味する。
【0052】
図11と図12はこのことを具体的に図示したものである。図11は、四六<90>のコート紙に印刷層を細紋状の図柄で形成した例を示し、細紋印刷層5a(赤外線を実質的に吸収する印刷部分5に相当する)はカーボン墨インキで形成し、細紋印刷層7は「藍+黄+紅インキ」を混合した墨インキ(混色墨インキ)で形成する。この印刷物は通常光のもとでは7及び5aは同色(黒色)に見える(図11)が、両者は前に述べたように赤外線の反射率が異なっているので、その画像を可視化できるような装置、例えばピーク波長が830nmや900nmの赤外線を発するLEDや、波長1060nmの赤外線を発するガラスレーザを使用して赤外線を照射してその画像を、赤外線フィルターを取り外したCCDカメラ等で撮影し、CRTに画像として映し出す装置等を使用して観察すると、機器の調整具合にもよるが図12に示したように印刷層5aのみが黒く写って見え、印刷層7は消えてしまったように写る。
【0053】
本発明においては、各塗工層の表面にプライマー層を適宜設けることができる。この層は、例えば塗工層2と塗工層3が直接接したときに両塗工層の界面での接着性が劣るような場合に設け、両者がプライマー層を介して良好に接着する働きを担う。プライマー層に使用する樹脂としては、真珠顔料と混合して使用するバインダーで説明した上記した各種の樹脂を使用することができ、これらの単独或いは併用した塗工液を通常0.2〜5g/m2塗工する。
【0054】
また、塗工層2や3は複数層設けることができる。犯罪者が物品等の表面に貼付されたラベルを剥がそうとする場合は、種々の液体で剥がすことを試みる。例えば、水、温水、熱水、エチルアルコールやプロピルアルコール等のアルコール類、ガソリンや灯油等の石油系有機溶剤、界面活性剤、市販されているラベル剥がし液等である。ラベル剥がし液は、数種類のアルコール類や有機溶剤を混合する例が多い。従って、本発明においては、塗工層2や3に使用する樹脂としては、上記した液体のいずれかで溶解又は膨潤する樹脂を選定して使用することが必要である。特に,親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層3に使用するバインダーは、上記したような各種の有機溶剤に溶解若しくは膨潤するものを複数選択し、塗工層を複数層とすることが好ましい。
【0055】
このようにして製造された本発明の用紙は、所定の印刷を施しラベルの形状に打ち抜かれてから所定の物品や包装箱の表面に貼附される。貼附の方法は、水系若しくは有機溶剤系の接着剤を用いて貼附する方法、ホットメルト型接着剤で貼附する方法、ラベル裏面に粘着剤加工を施し、剥離紙や剥離フィルムを剥がしてから貼附する方法等のいずれかの方法を採用する。
【0056】
図3は、本発明の用紙を使用してラベルを製造し、それを物品Mの表面に接着剤若しくは粘着剤層Bを介して貼附した一例で、その一部拡大断面図を示している。この例では赤外線を実質的に吸収する印刷部分5は、図で示したように基紙1の表面に形成されている。印刷層6は、従来周知の種々の偽造防止印刷技術を採用して形成することも適宜行われる。
【0057】
図4は、基紙1の表面に、赤外線を実質的に吸収する印刷部分5を形成した例の正面図である。具体的には、基紙の表面に、カーボン墨インキを使用して、「genuine genuine 」が連続した文字列(太ゴシック体6ポイント、文字列と文字列の間隔は5mm)をオフセット輪転印刷機で印刷した一例である。
【0058】
図5は、本発明の用紙を使用してラベルを製造した他の例の正面図を示している。この例では、ラベルの表面に白インキを使って白ベタ印刷部分W(点線で囲った範囲)を形成し、その後ブランド名等の印刷層5を形成している。白ベタ印刷部分Wの周囲には、真珠顔料塗工層4の表面の一部が露出するように形成し、用紙の表面Lを露出させている。
【0059】
図6は、図5に示したラベルに赤外線(ピーク波長が830nmの赤外線を発するLEDを使用)を照射し、反射画像を赤外線フィルターを取り外したCCDカメラで撮影し、CRTに画像として映し出す装置を使用して観察したところ、通常光のもとでは見えなかった「genuine」と言う文字が真珠顔料塗工層部分で視認できる様子をモデル的に示した正面図である。
【0060】
本発明においては、図5に例示した白ベタ印刷部分を感熱記録層にし、印刷層6の代わりに感熱記録ヘッドで所定の文字や画像を記録した構成のラベルとすることもできる。
【0061】
図4及び図5のいずれも、用紙の表面Lは、真珠顔料塗工層4が露出した面である。この露出した面は真珠光沢感に優れた面であるので意匠的な効果が向上すると共に、前に述べた理由によりこのような構成のラベルはカラーコピー機などを使用して偽造することは困難である。
【0062】
特に、真珠顔料として前述した干渉色を発現する真珠顔料を使用した場合には、ラベルを視認する角度を変化することにより真珠顔料塗工層の色相が変化するので、ラベルが複写されたものであるかの判定を瞬時に行うことが可能となるし、意匠的な効果も高まるという利点がある。
【0063】
ラベルの製造は、通常次のように行われる。先ず初めに、前述した構成の本発明の用紙を準備する。用紙の裏面には、常法に従い、接着剤若しくは粘着剤層Bを形成し、粘着剤を使用する場合は、粘着剤面には剥離紙又は剥離フィルムを貼着する。接着剤はラベルを製造し、最終的に物品等の表面に貼付するときに塗布してもよい。
【0064】
表面(真珠顔料塗工層側)には、所定の印刷層6を設け、次いで、トムソン打ち抜き刃等を使用して所定のラベルの大きさに打ち抜く。又は、剥離紙又は剥離フィルムの表面若しくは表面から少し入ったところまで刃を入れ、ラベルとして必要な部分を残して他の不必要な部分を取り去る。
【0065】
この際、ラベル内部に切り込みを入れることも随時行うことができる。この技術は周知の技術であって、物品の表面に貼附されたラベルを何らかの手段で剥がそうとすると、ラベルが破壊するように作用する。ラベルをたやすく剥がすことができると、ラベルを剥がして偽造した物品の表面に貼附して、あたかもその物品が真正であると見せかけるという犯罪が起きやすくなるから、物品が真正であることを認証する目的で使用する多くのラベルでこの手段が採られている。
【実施例】
【0066】
以下実施例を挙げるが、質量部、質量%はいずれも固形分換算の値を意味する。
[実施例1]
<基紙の製造>
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)50質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)
50質量部を400mlC.S.F.に叩解し、これに白土10質量部を添加し、パルプに対して変性ロジンサイズ剤(商品名「サイズパインN−771」、荒川化学(株)製)を1質量%、湿潤紙力増強剤(商品名「WS−547」、(株)日本PMC製)を0.5質量%、硫酸バンドを4質量%添加して紙料を調製した。この紙料を用いて長網抄紙機で坪量90g/m2の原紙を常法に従って製造した。
【0067】
次いで、カオリン(商品名「UW90」、エンゲルハード(株)製造)50質量部、炭酸カルシウム(商品名「カルライト−KT」、(株)白石工業製)50質量部、分散剤0.3質量部、バインダーとして酸化澱粉(日澱化学(株)製造)6質量部、アクリルエマルション(商品名「ニポールLX−852B」、日本ゼオン(株)製)15質量部よりなる白色顔料塗工液を上記原紙にエアーナイフコーターを使用して15g/m2設け、次いでスーパーキャレンダー処理した。白色顔料塗工層側の平滑度(JIS8119に規定するベック平滑度)を測定したところ、290秒であった。
【0068】
<赤外線を実質的に吸収する印刷部分の形成>
上記した基紙の表面(白色顔料塗工層側)に、カーボン墨インキを使用して、「genuine genuine 」が連続した文字列(太ゴシック体6ポイント、文字列と文字列の間隔は5mm)をオフセット輪転印刷機で印刷した(図4参照)。
【0069】
<親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層の形成>
次いで、この表面の全面に親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層として変性ポリビニルアルコールの塗工層を5.0g/m2エアナイフコーターを使用して設けた。
【0070】
<親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層の形成>
次いで、この表面に設けられた親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層表面に、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層として、ポリカーボネート樹脂100質量部、ジスアゾイエロー、フタロシアニンブルー、カーミン6Bを混合した黒色粉末を25質量部、酢酸エチル250質量部よりなる塗工液をグラビアコーターを使用して、5.0g/m2設けた。
【0071】
<真珠顔料塗工層の形成>
次いで、この表面に、真珠顔料(粒径40μm、酸化チタン被覆率28%の雲母粉末)100質量部、アクリルエマルジョン100質量部、リン酸化澱粉10質量部、水適量部よりなる塗工液を、エアナイフコーターを使用して、7.0g/m2設けた。
【0072】
[実施例2]
真珠顔料塗工層を下記に変更した以外は実施例2と同様にして自他識別能を有する用紙を製造した。
<真珠顔料塗工層の形成>
赤色の虹彩色を発する真珠顔料(商品名「イリオジン215」、メルク・ジャパン(株)製造)80質量部、ポリアクリル酸エステルエマルション20質量部より成る濃度20質量%の水性塗工液を、エアナイフコーターを使用して、乾燥質量で5g/m2塗工し、真珠顔料塗工層を得た。
【0073】
<粘着層の形成の一例>
クラフト紙の表面にポリエチレンを溶融押し出し塗工し、次いでシリコン系の剥離剤を塗工した剥離紙に、粘着剤層(強粘着タイプ)を形成し、この粘着剤層に実施例1及び2で得られた用紙の裏面が接するように貼着させた。
【0074】
<印刷層の形成>
次いで図5に示したように、表面に白インキを使って白ベタ印刷部分W(点線で囲った範囲)を形成し、その後ブランド名等の印刷層5を形成した。白ベタ印刷部分Wの周囲には、真珠顔料塗工層の表面の一部が露出するように形成し、用紙の表面を露出させた。
【0075】
<ラベルの打ち抜き>
次いで、トムソン打ち抜き刃を使用して、図5に示したラベルを打ち抜いた。(以下、実施例1の用紙を使用して製造したラベルを製造例1のラベル、実施例2の用紙を使用して製造したラベルを製造例2のラベルと言う。)
【0076】
<包装箱へのラベルの貼合>
白板紙を用いて所定の印刷を施した市販のインクジェットプリンター用のインキカートリッジの包装箱表面に、製造例1及び製造例2のラベルを貼付した。
【0077】
<ラベルの剥離試験とその結果>
爪でラベルを剥がそうと試みたが、製造例1及び製造例2のラベル共に粘着剤層は包装箱と強固に粘着しており、剥がすことは出来なかった。無理に剥がそうとするとラベルが破壊した。
【0078】
<赤外線による観察>
ピーク波長が830nmの赤外線を発するLEDでラベルを照射し、赤外線フィルターを取り外したCCDカメラ等で撮影し、CRTに画像として映し出した。図6に示すように、可視光下では視認することのできなかった「genuine」という文字を明瞭に視認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明による自他識別能を有する用紙は、自他を識別させたいあらゆる物品、例えば、装身具の包装箱、腕時計の包装箱、ウィスキーやブランデー等の洋酒のボトル、インクジェットプリンター用のインキカートリッジの包装箱、化粧品の包装箱、医薬品の包装箱、CDやDVDのパッケージ、等々の表面に貼付されるラベルやタグ等に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明による自他識別能を有する用紙の一例の一部拡大断面図である。
【図2】本発明による自他識別能を有する用紙の、他の一例の一部拡大断面図である。
【図3】本発明の用紙を使用してラベルを製造し、それを物品Mに接着剤若しくは粘着剤層Bを介して貼付した一例の一部拡大断面図である。
【図4】基紙1の表面に、赤外線を実質的に吸収する印刷部分5を形成した例の正面図である。
【図5】本発明の用紙を使用してラベルを製造した他の例の正面図である。
【図6】図5で示したラベルに赤外線を照射し、反射画像を赤外線フィルターを取り外したCCDカメラで撮影した画像の一部拡大した模式図である。
【図7】藍インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示している。
【図8】黄インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示している。
【図9】紅インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷し、分光光度計で測定した結果(分光反射率曲線)を示している。
【図10】藍インキ、黄インキ、紅インキを混合した墨インキを、RIテスターを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷したものを分光光度計で測定した結果と、色材としてカーボンブラックを使用した墨インキを使用して四六<90>のコート紙にベタ印刷したものを分光光度計で測定した結果を示している。
【図11】四六<90>のコート紙に印刷層を細紋状の図柄で形成した例である。
【図12】図11の印刷物に赤外線を照射してそれを可視化した像である。
【符号の説明】
【0081】
1 基紙
2 親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層
3 親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層
4 真珠顔料塗工層
5 赤外線を実質的に吸収する印刷部分
5a 赤外線を実質的に吸収する細紋印刷層
6 印刷層
7 混色墨インキで形成された細紋印刷層
B 接着剤若しくは粘着剤層
M 物品
L ラベル用紙ノ表面
W 白ベタ印刷部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙(1)の表面に、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(2)、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(3)、真珠顔料塗工層(4)が順次設けられており、該塗工層(4)及び塗工層(3)及び塗工層(2)は、いずれも赤外線を実質的に透過する性質を有し、塗工層(2)および/または塗工層(3)が着色されており、かつ基紙(1)の表面および/または塗工層(2)および/または塗工層(3)の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分(5)が設けられており、この印刷部分(5)が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことを特徴とする自他識別能を有する用紙。
【請求項2】
基紙(1)の表面に、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(3)、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(2)、真珠顔料塗工層(4)が順次設けられており、該塗工層(4)及び塗工層(2)及び塗工層(3)は、いずれも赤外線を実質的に透過する性質を有し、塗工層(3)および/または塗工層(2)が着色されており、かつ基紙(1)の表面および/または塗工層(3)および/または塗工層(2)の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分(5)が設けられており、この印刷部分(5)が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことを特徴とする自他識別能を有する用紙。
【請求項3】
基紙(1)が、多層抄き合わせ紙であって、各紙層の中で少なくとも1層が他の紙層の紙層間強度より低いことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の自他識別能を有する用紙。
【請求項4】
真珠顔料塗工層(4)が光干渉性を有した真珠顔料塗工層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の自他識別能を有する用紙。
【請求項1】
基紙(1)の表面に、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(2)、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(3)、真珠顔料塗工層(4)が順次設けられており、該塗工層(4)及び塗工層(3)及び塗工層(2)は、いずれも赤外線を実質的に透過する性質を有し、塗工層(2)および/または塗工層(3)が着色されており、かつ基紙(1)の表面および/または塗工層(2)および/または塗工層(3)の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分(5)が設けられており、この印刷部分(5)が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことを特徴とする自他識別能を有する用紙。
【請求項2】
基紙(1)の表面に、親油性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(3)、親水性溶剤により溶解若しくは膨潤する塗工層(2)、真珠顔料塗工層(4)が順次設けられており、該塗工層(4)及び塗工層(2)及び塗工層(3)は、いずれも赤外線を実質的に透過する性質を有し、塗工層(3)および/または塗工層(2)が着色されており、かつ基紙(1)の表面および/または塗工層(3)および/または塗工層(2)の表面に赤外線を実質的に吸収する印刷部分(5)が設けられており、この印刷部分(5)が用紙の表面から観察したときに通常光のもとで実質的に視認することのできないことを特徴とする自他識別能を有する用紙。
【請求項3】
基紙(1)が、多層抄き合わせ紙であって、各紙層の中で少なくとも1層が他の紙層の紙層間強度より低いことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の自他識別能を有する用紙。
【請求項4】
真珠顔料塗工層(4)が光干渉性を有した真珠顔料塗工層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の自他識別能を有する用紙。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−183156(P2006−183156A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375381(P2004−375381)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)
【Fターム(参考)】
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