説明

自動二輪車のキーシリンダ配置構造

【課題】キーシリンダおよびキーシリンダの解錠操作時に接近する周囲に対する水分や泥などの異物の付着を防止できる自動二輪車のキーシリンダ配置構造を提案する。
【解決手段】自動二輪車1のキーシリンダ配置構造は、後輪13の上方を覆うリアフェンダ64と、リアフェンダ64の上方に収納室66を仕切る左右一対のレールカバー53と、収納室66を閉じた同乗者用着座シート61を施錠するロック機構と、レールカバー53の内側に設けられてロック機構を解錠させるキーシリンダ68と、を備える。レールカバー53は、車体フレーム2の後上方に向かって延ばされて後輪13を臨む壁面を有する後壁53aと、後壁53aの前端から屈曲させて車体フレーム2の前方に向かって延ばされるとともにキーシリンダ68に差し込まれるキー71用の挿入孔72が開口された前壁53bと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納空間を閉じた蓋体を施錠するロック機構およびこのロック機構を解錠させるキーシリンダを備えた自動二輪車のキーシリンダ配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シートの下方に配置された収納室を有する自動二輪車が知られている。このような自動二輪車は、収納室を開閉自在に閉じる蓋体としてのシートと、収納室を閉じたシートを施錠するロック機構と、このロック機構を解錠させるキーシリンダと、を備える。そして、キーシリンダは、車体後半部を覆うカバーの内側に配置されるとともにリアフェンダ−に設けられる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−11257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キーシリンダは、キーを差し込み、回転させて解錠を行うものであり機械的な構造を備える。このため、キーシリンダは、雨などの水分や車輪が跳ね上げる泥などの異物が鍵穴やその他の隙間からキーシリンダ内に侵入してしまうと解錠しにくくなったり解錠できなくなったりする虞がある。
【0005】
例えば、特許文献1に記載の自動二輪車のキーシリンダ配置構造は、キーを通す挿通孔を有するリアフェンダ−と、リアフェンダに設けられたキーシリンダと、を備える。この特許文献1に記載の自動二輪車のキーシリンダ配置構造は、後輪が跳ね上げる泥などを受けるリアフェンダにキーの挿通孔を有するばかりでなく、挿通孔を有するリアフェンダの壁面が後輪を臨むため、後輪が跳ね上げる泥などの異物をキーシリンダや挿通孔の周囲に付着させてしまう。
【0006】
キーシリンダに付着した異物は、キーの差し込みにともなってキーシリンダ内に押し込まれてしまうとキーシリンダの不調を招く。他方、キーの挿通孔の周囲に付着した異物は、キーを介して間接的にキーシリンダ内に侵入したり、キーの解錠操作をする者の手に付着して不快感を与えたりする。
【0007】
そこで、本発明は、キーシリンダおよびキーシリンダの解錠操作時に接近する周囲に対する水分や泥などの異物の付着を防止できる自動二輪車のキーシリンダ配置構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため本発明に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造は、車体フレームと、前記車体フレームに軸支されたスイングアームと、前記スイングアームに軸支された後輪と、前記後輪の上方を覆うリアフェンダと、前記リアフェンダの上方に収納空間を仕切る左右一対のカバーと、左右の前記カバーに架け渡されて前記収納空間の上方を開閉自在に閉じる蓋体と、前記収納空間を閉じた前記蓋体を施錠するロック機構と、前記カバーの内側に設けられて前記ロック機構を解錠させるキーシリンダと、を備え、前記カバーは、前記車体フレームの後上方に向かって延ばされて前記後輪を臨む壁面を有する後壁と、前記後壁の前端から屈曲させて前記車体フレームの前方に向かって延ばされるとともに前記キーシリンダに差し込まれるキー用の挿入孔が開口された前壁と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キーシリンダおよびキーシリンダの解錠操作時に接近する周囲に対する水分や泥などの異物の付着を防止できる自動二輪車のキーシリンダ配置構造を提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るキーシリンダ配置構造を備えた自動二輪車を示した左側面図。
【図2】本発明の実施形態に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造を示した左側面図。
【図3】本発明の実施形態に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造を示した左側面図であり、自動二輪車に搭乗者が着座した状態を示した図。
【図4】本発明の実施形態に係るキーシリンダ配置構造を備えた自動二輪車のレールカバーを示した分解図。
【図5】本発明の実施形態に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造を示した斜視図。
【図6】図2のVI−VI線における本発明の実施形態に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造を示した断面図。
【図7】本発明の実施形態に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造を示した図であり、レールカバーの左側面図。
【図8】本発明の実施形態に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造を示した図であり、レールカバーの底面図。
【図9】本発明の実施形態に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造を示した図であり、レールカバーの背面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造の実施の形態について、図1から図9を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るキーシリンダ配置構造を備えた自動二輪車を示した左側面図である。
【0013】
なお、自動二輪車1の構造を説明するにあたり、図1中の実線矢Fを前方、図1中の実線矢Rを後方と定義する。また、自動二輪車1の搭乗者から見て左手側を自動二輪車1の左方、その反対側を自動二輪車1の右方と定義する。さらに自動二輪車1の搭乗者の頭部側を自動二輪車1の上方、その反対側を自動二輪車1の下方と定義する。また、自動二輪車1を構成する各部の方向については自動二輪車1に準じる。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1は、車体フレーム2と、車体フレーム2に搭載されたエンジン5と、車体フレーム2の前端部に軸支されたステアリング機構6と、ステアリング機構6の下端部に軸支された前輪8と、ステアリング機構6に設けられた前輪懸架装置11と、車体フレーム2の後部に上下方向へ揺動自在に軸支されたスイングアーム12と、スイングアーム12の後端部に軸支された後輪13と、車体フレーム2とスイングアーム12との間に連結された後輪懸架装置15と、を備える。
【0015】
車体フレーム2は、例えばツインチューブ型のものである。車体フレーム2は、前端部に配置されたヘッドパイプ16と、ヘッドパイプ16の直後で左右方向に拡開させて斜め後下方に延びてタンクレールを兼ねた左右一対のメインフレーム17と、メインフレーム17の後端部に一体に設けられ略下方に向かって延びた左右一対のセンターフレーム18と、メインフレーム17の後端部から斜め後上方に延びた左右一対のシートレール19と、を備える。
【0016】
ヘッドパイプ16は、内装されたステアリングシャフト(図示省略)を介してステアリング機構6を軸支する。センターフレーム18は、その長手方向の略中央部に架設されたピボット軸21を支持する。ピボット軸21は、スイングアーム12を軸支する。
【0017】
メインフレーム17は、燃料タンク23を下方から支持する。
【0018】
エンジン5は、自動二輪車1の中央下部、より詳しくはメインフレーム17の下方に配置されるとともにエンジン吸気系25およびエンジン排気系26に接続される。なお、エンジン5は、4サイクル多気筒エンジンである並列四気筒エンジンの他に、単気筒エンジン、並列二気筒エンジン、並列六気筒エンジン、V型二気筒エンジン、V型四気筒エンジン、V型六気筒エンジンが適宜に用いられる。エンジン5の出力は、二次減速機構(図示省略)を構成するチェーン(図示省略)からドリブンスプロケット(図示省略)を介して後輪13に伝達される。
【0019】
また、エンジン5は、燃料室(図示省略)を有するシリンダ、動弁機構(図示省略)および吸排気ポート(図示省略)を有するシリンダヘッドなどから構成されたシリンダアッセンブリ5aと、クランクシャフト(図示省略)やトランスミッション(図示省略)を有するクランクアッセンブリ5bと、を備える。
【0020】
エンジン吸気系25は、エンジン5の上方に配置されたスロットルボディ(図示省略)と、スロットルボディの上方に配置されたエアクリーナボックス(図示省略)と、を備える。
【0021】
エンジン排気系26は、エンジン5の前方から下方を回って自動二輪車1の後方に延ばされたエキゾーストパイプ29と、自動二輪車1の車幅方向両側に配置されてエキゾーストパイプ29に接続されたマフラ31と、を備える。マフラ31は、後輪13の両側付近から自動二輪車1の斜後上方に向かって延ばされる。
【0022】
ステアリング機構6は、ヘッドパイプ16およびステアリングシャフトによって自動二輪車1の左右方向へ回動自在に軸支される。ステアリング機構6は、ステアリングシャフトに軸支されたステアリングヘッド33と、ステアリングヘッド33に設けられた左右一対のフロントフォーク34と、フロントフォーク34の上端近傍またはステアリングヘッド33に設けられた一対のハンドルバー35と、を備える。左右それぞれのハンドルバー35は、ハンドルグリップ36を備える。自動二輪車1の右側に配置されたハンドルグリップ36は、スロットルグリップ37である。
【0023】
前輪8は、ステアリング機構6のハンドルバー35によって左右に回動自在に操舵される。また、前輪8は、前輪車軸41によってフロントフォーク34に軸支された前輪ホイール42と、前輪ホイール42の外周部に被着された前輪タイヤ43と、前輪ホイール42にボルトなどの締結部材(図示省略)によって固定された前輪ブレーキプレート45と、を備える。
【0024】
スイングアーム12の前端部は、センターフレーム18の上下方向において略中央に設けられたピボット軸21に軸支される。
【0025】
後輪13は、後輪車軸47によってスイングアーム12の後端部に軸支された後輪ホイール48と、後輪ホイール48の外周部に被着された後輪タイヤ49と、後輪ホイール48にボルトなどの締結部材(図示省略)によって固定された後輪ブレーキプレート(図示省略)と、を備える。
【0026】
後輪懸架装置15は、後輪13が捕らえた路面の凹凸によるスイングアーム12の上下方向の揺動を車体フレーム2に伝えないように緩衝する緩衝装置であり、後輪13を路面に押さえ付ける機能を兼ねている。後輪懸架装置15は、スプリング50と、ショックアブソーバー51と、を組み合わせたサスペンションユニット52を備える。
【0027】
また、自動二輪車1は、車両の少なくとも一部、具体的にはシートレール19を覆うレールカバー53と、燃料タンク23の直後に配置された搭乗者用着座シート59と、搭乗者用着座シート59の直後に配置された同乗者用着座シート61と、を備える。レールカバー53は、搭乗者用着座シート59の下方を車両両側面から挟み込む左右一対の前部レールカバー62と、前部レールカバー62に連接させて後方へ延ばされるとともに同乗者用着座シート61の下方を車両両側面から挟み込む左右一対の後部レールカバー63と、を備える。
【0028】
図2および図3は、本発明の実施形態に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造を示した左側面図である。なお、図3は自動二輪車1に搭乗者が着座した状態を示した図である。
【0029】
図4は、本発明の実施形態に係るキーシリンダ配置構造を備えた自動二輪車のレールカバーを示した分解図である。
【0030】
図2から図4に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1のキーシリンダ配置構造は、車体フレーム2と、車体フレーム2に軸支されたスイングアーム12と、スイングアーム12に軸支された後輪13と、後輪13の上方を覆うリアフェンダ64と、リアフェンダ64の上方に収納室66(収納空間)を仕切る左右一対のレールカバー53(カバー)と、左右のレールカバー53に架け渡されて収納室66の上方を開閉自在に閉じる蓋体としての同乗者用着座シート61と、収納室66を閉じた同乗者用着座シート61を施錠するロック機構67と、レールカバー53の内側に設けられてロック機構67を解錠させるキーシリンダ68と、を備える。
【0031】
車体フレーム2のシートレール19は、鋼またはアルミニウム合金などの金属材料からなる管を用いて構成される。シートレール19は、センターフレーム18の頂部から車両の後方に向かって延ばされた左右一対のトップレール19aと、トップレール19aよりも下方から車両の後方に向かって延ばされた左右一対のボトムレール19bと、左右のトップレール19aおよびボトムレール19bに架設された複数のブリッジ部材19c、19dと、を備える。
【0032】
リアフェンダ64は、左右のシートレール19の間に架け渡されて保持されてシートレール19に沿って車両の後上方に向かって延ばされるとともに、収納室66の底壁を兼ねる。リアフェンダ64は、その後端部から下方に向けて延ばされたフェンダーフラップ69を備える。フェンダーフラップ69は、リアフェンダ64に一体に形成される。リアフェンダ64は、後輪13の上方を覆うように形成されて自動二輪車1の搭乗者、同乗者およびエンジン5や電装機器(図示省略)などの他の機器を後輪13が巻き上げた泥や砂などの付着から保護する。リアフェンダ64は車両の後方へ向かう程高くなるように傾斜させて形成されているので、例えば、雨天時に後輪13が巻き上げた泥がリアフェンダ64に付着した場合、リアフェンダ64に付着した泥はリアフェンダ64を伝って前下方へ流れ、リアフェンダ64の前端から自動二輪車1の下方へ滴下される。
【0033】
レールカバー53は、車体フレーム2の後上方に向かって延ばされて後輪13を臨む壁面を有する後壁53aと、後壁53aの前端から屈曲させて車体フレーム2の前方に向かって延ばされるとともにキーシリンダ68に差し込まれるキー71用の挿入孔72が開口された前壁53bと、を有する。
【0034】
また、レールカバー53は、搭乗者用着座シート59および同乗者用着座シート61とともにシートレール19を覆うものであり、シート59、61が配置される上方の一部を除いてシートレール19の上方の他部、側方および下方を覆う。レールカバー53は、搭乗者用着座シート59の下方に配置された左右一対の前部レールカバー62、前部レールカバー62の後方に配置された後部レールカバー63の他に、リアフェンダ64の側方に配置されてリアフェンダ64と後部レールカバー63とに係合されるサイドフェンダーカバー73を備える。
【0035】
さらに、レールカバー53は、自動二輪車1の平面視および側面視において視認可能な意匠面を有する。レールカバー53の意匠面は、前部レールカバー62、後部レールカバー63およびサイドフェンダーカバー73の天壁73aから構成される。他方、サイドフェンダーカバー73の後壁73bは、リアフェンダ64とともに、主として後輪13の泥除けとして機能する。
【0036】
レールカバー53の前壁53bは、後輪13の回転中心を通る鉛直線よりも車体の前側に配置される。また、前壁53bは、搭乗者用着座シート59に搭乗者が着座していない状態では後上がりに傾けられるものの(図2)、搭乗者用着座シート59に搭乗者が着座した状態では搭乗者の体重によって後輪懸架装置15が収縮して略水平あるいは前上がりに傾く(図3)ように車体に対する傾斜角度が設定される。
【0037】
なお、前壁53bは、搭乗者用着座シート59に搭乗者が着座していない状態でも略水平あるいは前上がりに傾くように車体に対する傾斜角度を設定しても良い。
【0038】
サイドフェンダーカバー73は、リアフェンダ64と同様に泥除けの機能を有しており、特にシートレール19の中間部分に接続されたリアステップ75の後方に配置されるとともに、リアフェンダ64よりも車両外側へ張り出すように形成されて同乗者用着座シート61に着座した同乗者の脚部を後輪13の跳ね上げた泥から保護する。
【0039】
収納室66は、レールカバー53(より詳しくは、後部レールカバー63)とリアフェンダ64とで仕切られた容器状の空間である。収納室66の左右の壁および天壁の一部はレールカバー53によって構成され、収納室66の底壁はリアフェンダ64によって構成される。
【0040】
同乗者用着座シート61は、収納室66の蓋体を兼ね、収納室66の左右の壁および天壁の一部を構成するレールカバー53の開口を塞いで収納室66を閉ざす。このとき、同乗者用着座シート61は、シートレール19(より詳しくは、ブリッジ部材19dおよびボトムレール19bの後端部)によって支えられて収納室66を閉ざす。また、同乗者用着座シート61は、収納室66を閉じるとロック機構67によって施錠される。なお、同乗者用着座シート61の前側に配置された搭乗者用着座シート59は、シートレール19(より詳しくは、前側のブリッジ部材19cおよびトップレール19a)によって支えられる。
【0041】
ロック機構67は、後側に配置されたブリッジ部材19dに設けられる。
【0042】
図5は、本発明の実施形態に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造を示した斜視図である。
【0043】
図5に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1は、ブリッジ部材19dに設けられたロック機構67とレールカバー53の内側に設けられたキーシリンダ68とを連結するワイヤケーブル76を備える。ワイヤケーブル76は、キーシリンダ68に挿入されたキー71からキーシリンダ68に加えられる解錠力をロック機構67に伝達する。
【0044】
図6は、図2のVI−VI線における本発明の実施形態に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造を示した断面図である。
【0045】
図7から図9は、本発明の実施形態に係る自動二輪車のキーシリンダ配置構造を示した図である。図7はレールカバー53の左側面図であり、図8はレールカバー53の底面図であり、図9はレールカバー53の背面図である。
【0046】
図6から図9に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1のサイドフェンダーカバー73は、リアフェンダ64の側方であって後部レールカバー63の下方に配置される。
【0047】
また、サイドフェンダーカバー73は、レールカバー53の意匠面を構成する天壁73aと、リアフェンダ64とともに後輪13の泥除けとして機能する後壁73bと、キーシリンダ68に差し込まれるキー71用の挿入孔72を有する前壁73cと、を有する中空な略三角錐形状に形成される。天壁73a、後壁73b、前壁73cが交差する頂点73dは、車幅方向外側下方に張り出すように配置される。サイドフェンダーカバー73は、キーシリンダ68の車幅方向外側部分をキーシリンダ68よりも下方へ垂下させて形成される。すなわち、天壁73aは、キーシリンダ68の車幅方向外側部分をキーシリンダ68よりも下方へ垂下させて形成される。他方、後壁73bおよび前壁73cは車両の中央側ほど高く、車幅方向外側ほど低くなるように傾かせて形成される。
【0048】
さらに、サイドフェンダーカバー73は、天壁73a、後壁73bおよび前壁73cに隣接する面に開口を有し、この開口縁の壁73a、73b、73cを後部レールカバー63およびリアフェンダ64に係合させて保持される。
【0049】
自動二輪車1のキーシリンダ68は、レールカバー53の前壁53b(より詳しくは、サイドフェンダーカバー73の前壁73c)に形成された凹没部77に配置されたキー71用の挿入孔72から鍵穴を下方に指向させて配置される。
【0050】
自動二輪車1は、レールカバー53は、キーシリンダ68の車幅方向内側かつ挿入孔72の近傍に配置させてレールカバー53から垂下させて形成されたリブ78を備える。
【0051】
リブ78は、サイドフェンダーカバー73の凹没部77の縁部に配置されてサイドフェンダーカバー73に一体に形成される。また、リブ78は、凹没部77の縁部に沿って円弧状に形成され、車両内側よりの部分が最も高く(すなわち、後輪13に最も近い部分が最も高く)、車両外側へ向かうほど低くなる。
【0052】
このように構成された本実施形態に係る自動二輪車1のキーシリンダ配置構造は、自動二輪車1の走行にともない後輪13によって跳ね上げられる水分や泥などの異物がキーシリンダ68や、キーシリンダ68の周囲(特に、サイドフェンダーカバー73の凹没部77)に付着し難い。後輪13によって跳ね上げられる水分や泥などの異物は後輪13の外周の接線方向へ跳ね上げられ易いところ、キーシリンダ68の鍵穴にキー71を導く挿入孔72は略水平または前上がりに傾けられたレールカバー53の前壁53b(より詳しくは、サイドフェンダーカバー73の前壁73c)に配置されており、レールカバー53の後壁53a(より詳しくは、サイドフェンダーカバー73の後壁73b)によって後輪13に跳ね上げられる水分や泥などの異物が遮られるためである。
【0053】
また、自動二輪車1のキーシリンダ配置構造は、自動二輪車1に搭乗者が着座しない状態ではレールカバー53の前壁53b(より詳しくは、サイドフェンダーカバー73の前壁73c)を後上がりに傾けておけるので、自動二輪車1を見る者に車両後半部の外観が後上方へ流れるように立ち上がる好感な印象を与えることができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係る自動二輪車1のキーシリンダ配置構造は、挿入孔72を有するレールカバー53の前壁53b(より詳しくは、サイドフェンダーカバー73の前壁73c)が後輪13の回転中心を通る鉛直線よりも車体の前側に配置されているので、レールカバー53の後壁53a(より詳しくは、サイドフェンダーカバー73の後壁73b)による水分や泥などの異物を確実に遮ることができる。
【0055】
さらにまた、自動二輪車1のキーシリンダ配置構造は、キーシリンダ68の車幅方向外側部分をキーシリンダ68よりも下方へ垂下させたレールカバー53を備えるので、雨水などの自動二輪車1の外郭を伝って流れる水分の侵入からキーシリンダ68を保護する。
【0056】
また、自動二輪車1のキーシリンダ配置構造は、レールカバー53の前壁53b(より詳しくは、サイドフェンダーカバー73の前壁73c)にリブ78を備え、後輪13によって跳ね上げられる水分や泥などの異物からキーシリンダ68や、キーシリンダ68の周囲(特に、サイドフェンダーカバー73の凹没部77)を保護する。
【0057】
したがって、本実施形態に係る自動二輪車1のキーシリンダ配置構造によれば、キーシリンダ68およびキーシリンダ68の解錠操作時に接近する周囲に対する水分や泥などの異物の付着を防止できる。
【符号の説明】
【0058】
1 自動二輪車
2 車体フレーム
5 エンジン
5a シリンダアッセンブリ
5b クランクアッセンブリ
6 ステアリング機構
8 前輪
11 前輪懸架装置
12 スイングアーム
13 後輪
15 後輪懸架装置
16 ヘッドパイプ
17 メインフレーム
18 センターフレーム
19 シートレール
19a トップレール
19b ボトムレール
19c ブリッジ部材
19d ブリッジ部材
21 ピボット軸
23 燃料タンク
25 エンジン吸気系
26 エンジン排気系
29 エキゾーストパイプ
31 マフラ
33 ステアリングヘッド
34 フロントフォーク
35 ハンドルバー
36 ハンドルグリップ
37 スロットルグリップ
41 前輪車軸
42 前輪ホイール
43 前輪タイヤ
45 前輪ブレーキプレート
47 後輪車軸
48 後輪ホイール
49 後輪タイヤ
50 スプリング
51 ショックアブソーバー
52 サスペンションユニット
53 レールカバー
53a 後壁
53b 前壁
59 搭乗者用着座シート
61 同乗者用着座シート
62 前部レールカバー
63 後部レールカバー
64 リアフェンダ
66 収納室
67 ロック機構
68 キーシリンダ
69 フェンダーフラップ
71 キー
72 挿入孔
73 サイドフェンダーカバー
73a 天壁
73b 後壁
73c 前壁
73d 頂点
75 リアステップ
76 ワイヤケーブル
77 凹没部
78 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに軸支されたスイングアームと、
前記スイングアームに軸支された後輪と、
前記後輪の上方を覆うリアフェンダと、
前記リアフェンダの上方に収納空間を仕切る左右一対のカバーと、
左右の前記カバーに架け渡されて前記収納空間の上方を開閉自在に閉じる蓋体と、
前記収納空間を閉じた前記蓋体を施錠するロック機構と、
前記カバーの内側に設けられて前記ロック機構を解錠させるキーシリンダと、を備え、
前記カバーは、前記車体フレームの後上方に向かって延ばされて前記後輪を臨む壁面を有する後壁と、前記後壁の前端から屈曲させて前記車体フレームの前方に向かって延ばされるとともに前記キーシリンダに差し込まれるキー用の挿入孔が開口された前壁と、を有することを特徴とする自動二輪車のキーシリンダ配置構造。
【請求項2】
前記車体フレームと前記スイングアームとの間に連結された後輪懸架装置を備え、
前記前壁は、少なくとも搭乗者の体重によって前記車体フレームが下方へ移動したときに水平面に対して略平行または前記車体フレームの前下方を臨む壁面を有する事を特徴とする請求項1に記載の自動二輪車のキーシリンダ配置構造。
【請求項3】
前記前壁は、前記後輪の回転中心を通る鉛直線よりも車体の前側に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車のキーシリンダ配置構造。
【請求項4】
前記カバーは、前記キーシリンダの車幅方向外側部分を前記キーシリンダよりも下方へ垂下させて形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自動二輪車のキーシリンダ配置構造。
【請求項5】
前記キーシリンダの車幅方向内側かつ前記挿入孔の近傍に配置させて前記カバーから垂下させて形成されたリブを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自動二輪車のキーシリンダ配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−46015(P2012−46015A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188774(P2010−188774)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】