説明

自動二輪車

【課題】熱や雨の影響を受け難く且つ車両の外観性に影響を与え難い位置にABSモジュールを配置する自動二輪車を提供する。
【解決手段】自動二輪車10は、シート27を支持する左右一対のシートフレーム15を有する車体フレーム11と、左右一対のシートフレーム15間に前方から順に配置される収納ボックス25及び燃料タンク26と、車輪WF,WRに制動力を与える液圧式ブレーキ45,46と、液圧式ブレーキ45,46に作用する液圧を減圧するABSモジュール70と、ハンドル22とシート27との間に形成される跨ぎ空間Sと、を備え、ABSモジュール70は、左右一対のシートフレーム15間であって、収納ボックス25と燃料タンク26に前後方向に挟まれる位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液圧ブレーキに作用する液圧を減圧するABS(Anti−lock Brake System)のABSモジュールは、高価且つ大型であったため、比較的設置スペースを確保し易い大排気量の自動二輪車に適用されてきた。
【0003】
そして、ABSモジュールを搭載した自動二輪車として、後輪の側方の収納ボックス内にABSモジュールを配置するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようにABSモジュールを配置することにより、その他の部品のレイアウトに与える影響を小さくすることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−013066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で近年、ABSモジュールが従来に比べて安価且つ小型になってきたことから、種々の車両に搭載することが望まれているが、熱や雨の影響に配慮して配置することが必要である。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の自動二輪車では、後輪の側方にABSモジュールを配置する収納ボックスを設けなくてはいけないため、収納ボックスが外側に膨出してしまい、車両の外観性に大きな影響を与えていた。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱や雨の影響に配慮しつつ、車両の外観性に影響を与え難い位置にABSモジュールを配置する自動二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、シートを支持する左右一対のシートフレームを有する車体フレームと、左右一対のシートフレーム間に前方から順に配置される収納ボックス及び燃料タンクと、車輪に制動力を与える液圧式ブレーキと、液圧式ブレーキに作用する液圧を減圧するABSモジュールと、ハンドルとシートとの間に形成される跨ぎ空間と、を備える自動二輪車において、ABSモジュールは、左右一対のシートフレーム間であって、収納ボックスと燃料タンクに前後方向に挟まれる位置に配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、燃料タンクの下面の車幅方向一方側に形成される凹部にABSモジュールが収容され、燃料タンク内の車幅方向他方側に燃料ポンプが収容されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の構成に加えて、液圧式ブレーキは、前輪に制動力を与えるフロントブレーキキャリパと、後輪に制動力を与えるリヤブレーキキャリパと、を備え、フロントブレーキキャリパ及びリヤブレーキキャリパは、車幅方向一方側に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成に加えて、ABSモジュールを車体フレームに支持する支持ステイを備え、ABSモジュールに接続される液圧配管に継手部材が設けられ、継手部材が支持ステイに支持されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の構成に加えて、シートフレームにスイングアームを懸架する緩衝器を取り付け、ABSモジュールは、車両側面視において、緩衝器の上端支持孔よりも前方に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、ABSモジュールが、左右一対のシートフレーム間であって、収納ボックスと燃料タンクに前後方向に挟まれる位置に配置されるため、熱や雨の影響を受け難く且つ車両の外観性に影響を与え難い位置にABSモジュールを配置することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、燃料タンクの下面の車幅方向一方側に形成される凹部にABSモジュールが収容され、燃料タンク内の車幅方向他方側に燃料ポンプが収容されるため、車両の重量バランスを良好にすることができると共に、燃料タンクの形状が複雑になり難い。
【0015】
請求項3の発明によれば、フロントブレーキキャリパ及びリヤブレーキキャリパが、車幅方向一方側に配置されるため、ブレーキ系の配管を短くすることができる。また、その配管が車幅方向一方側に配置されるので、配索を容易にすることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、ABSモジュールを車体フレームに支持する支持ステイを備え、ABSモジュールに接続される液圧配管に継手部材が設けられ、継手部材が支持ステイに支持されるため、支持ステイ、ABSモジュール、及び継手部材をサブアッシーにしておける。これにより、製造ライン上で組み付ける際の作業性を向上することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、ABSモジュールが、車両側面視において、緩衝器の上端支持孔よりも前方に配置されるため、ブレーキ系の配管を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る自動二輪車の一実施形態を説明する左側面図である。
【図2】図1に示す収納ボックス及び燃料タンクの周辺の拡大左側面図である。
【図3】図2に示すABSモジュールの周辺の拡大左側面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2に示すABSモジュールの周辺を矢印V方向から見た図である。
【図6】本発明に係る自動二輪車のABSシステムを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る自動二輪車の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、以下の説明において、前後、左右、上下は、操縦者から見た方向に従い、図面に車両の前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0020】
本実施形態の自動二輪車10は、図1に示すように、車体フレーム11を、前端に設けられるヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12から下後方に延びるメインフレーム13と、メインフレーム13の後端部に連結され下方に延びる左右一対のピボットプレート14と、メインフレーム13の中間部に連結され上後方に延びる左右一対のシートフレーム15と、メインフレーム13の後端部に連結され上後方に延び、その後端部がシートフレーム15に連結される左右一対のサブフレーム16と、から構成し、メインフレーム13及びピボットプレート14にエンジン50が取り付けられている。
【0021】
また、自動二輪車10は、ヘッドパイプ12に転舵可能に支持されるフロントフォーク21と、フロントフォーク21の下端部に回転可能に支持される前輪WFと、フロントフォーク21の上端部に取り付けられ、乗員が転舵時に操作するバー状のハンドル22と、左右一対のピボットプレート14に揺動可能に支持されるスイングアーム23と、スイングアーム23の後端部に回転可能に支持される後輪WRと、シートフレーム15にスイングアーム23を懸架する緩衝器24と、左右一対のシートフレーム15間に前方から順に配置される収納ボックス25及び燃料タンク26と、収納ボックス25の前端部に開閉可能に取り付けられ、左右一対のシートフレーム15に支持されるシート27と、を備える。また、ハンドル22とシート27との間には、跨ぎ空間Sが形成されている。
【0022】
なお、図1中の符号31はヘッドライト、32はハンドルカバー、33はフロントカバー、34はフロントサイドカバー、35はレッグシールド、36はアンダーサイドカバー、37はリヤサイドカバー、39はサイドミラー、40はフロントフェンダ、41はフロントウィンカ、42はグラブレール、43はテールライト、44はリヤフェンダである。
【0023】
エンジン50は、空冷式の単気筒エンジンであって、図1に示すように、クランクケース51と、クランクケース51の前端部に取り付けられるシリンダブロック52と、シリンダブロック52の前端部に取り付けられるシリンダヘッド53と、シリンダヘッド53の前端部に取り付けられるシリンダヘッドカバー54と、クランクケース51の左側面に取り付けられる発電機カバー55と、クランクケース51の右側面に取り付けられる不図示のクラッチカバーと、を備える。また、エンジン50は、メインフレーム13の下方に配置されている。
【0024】
また、図1に示すように、シリンダヘッド53の上面には、吸気管61を介してスロットルボディ62が接続され、このスロットルボディ62の上流端には、接続管63を介してエアクリーナ64が接続される。また、シリンダヘッド53の下面には、排気管65を介してマフラー66が接続される。
【0025】
また、自動二輪車10は、前輪WFに制動力を与えるフロントブレーキキャリパ(液圧式ブレーキ)45と、後輪WRに制動力を与えるリヤブレーキキャリパ(液圧式ブレーキ)46と、ハンドル22の右端部に取り付けられ、フロントブレーキキャリパ45を操作するブレーキレバー22R(図6参照)と、車両右側のピボットプレート14に取り付けられ、リヤブレーキキャリパ46を操作するブレーキペダル47と、フロントブレーキキャリパ45及びリヤブレーキキャリパ46に作用する油圧(液圧)を減圧するABSモジュール70と、を備える。また、フロントブレーキキャリパ45及びリヤブレーキキャリパ46は、車幅方向右側に配置されている。なお、本実施形態の自動二輪車10のABSシステム図を図6に示す。
【0026】
また、図2〜図6に示すように、ABSモジュール70の前面左側の後輪側入力部76aには、ブレーキペダル47のマスターシリンダ47aからの油圧を入力する後輪側入力配管71が接続され、ABSモジュール70の下面左側の後輪側出力部76bには、リヤブレーキキャリパ46に油圧を出力する後輪側出力配管72が接続されている。また、ABSモジュール70の前面右側の前輪側入力部75aには、ブレーキレバー22Rのマスターシリンダ22aからの油圧を入力する前輪側入力配管73が接続され、ABSモジュール70の下面右側の前輪側出力部75bには、フロントブレーキキャリパ45に油圧を出力する前輪側出力配管74が接続されている。さらに、配管71〜74には、継手部材71a〜74aがそれぞれ設けられている。
【0027】
そして、本実施形態では、図2に示すように、ABSモジュール70は、左右一対のシートフレーム15間であって、収納ボックス25と燃料タンク26に前後方向に挟まれる位置に配置されている。なお、図2中の符号70aは、ABSモジュール70のモータ軸線であり、符号30はバッテリである。
【0028】
また、図3及び図4に示すように、燃料タンク26の前部下面の車幅方向右側には凹部26aが形成されており、この凹部26aには、ABSモジュール70の後部が収容されている。さらに、図4に示すように、燃料タンク26内の車幅方向左側(ABSモジュール70と車幅方向で反対側)には、燃料ポンプ28が収容されている。
【0029】
また、本実施形態では、図2に示すように、ABSモジュール70は、車両側面視において、緩衝器24の上端支持孔24aよりも前方に配置されている。さらに、ABSモジュール70は、緩衝器24の上端支持孔24aよりも下方に配置されている。なお、緩衝器24の上端支持孔24aは、シートフレーム15及びサブフレーム16に接続されるブラケット15bに支持されている。
【0030】
また、ABSモジュール70及び配管71〜74の継手部材71a〜74aは、図2〜図5に示すように、車両右側のシートフレーム15に取り付けられる支持ステイ80により支持されており、この支持ステイ80は、車両右側のシートフレーム15の内側に固定される支持プレート15aに2本のボルト91により取り付けられている。なお、本実施形態では、支持ステイ80、ABSモジュール70、及び継手部材71a〜74aによりサブアッシー70Sが構成されている。
【0031】
支持ステイ80は、支持プレート15aに取り付けられる側板81と、側板81の下端部から車幅方向内側に延びる底板82と、底板82の前端部の車幅方向両端から前方に延び、4つの継手部材71a〜74aを支持する左右一対の支持板83と、を有する。また、底板82には、前輪側出力配管72及び後輪側出力配管74を避けるための四角形状の切欠部82aが形成されている。
【0032】
そして、ABSモジュール70は、支持ステイ80の底板82に2本のボルト92により取り付けられる。また、4つの継手部材71a〜74aは、支持ステイ80の左右一対の支持板83に1本のボルト93及び1つのナット94により取り付けられる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の自動二輪車10によれば、ABSモジュール70が、左右一対のシートフレーム15間であって、収納ボックス25と燃料タンク26に前後方向に挟まれる位置に配置されるため、熱や雨の影響を受け難く且つ車両10の外観性に影響を与え難い位置にABSモジュール70を配置することができる。
【0034】
また、本実施形態の自動二輪車10によれば、燃料タンク26の前部下面の車幅方向右側に形成される凹部26aにABSモジュール70が収容され、燃料タンク26内の車幅方向左側に燃料ポンプ28が収容されるため、車両10の重量バランスを良好にすることができると共に、燃料タンク26の形状が複雑になり難い。
【0035】
また、本実施形態の自動二輪車10によれば、フロントブレーキキャリパ45及びリヤブレーキキャリパ46が、車幅方向右側に配置されるため、ブレーキ系の配管71〜74を短くすることができる。また、その配管71〜74が車幅方向右側に配置されるので、配索を容易にすることができる。
【0036】
また、本実施形態の自動二輪車10によれば、ABSモジュール70を車体フレーム11に支持する支持ステイ80を備え、ABSモジュール70に接続される配管71〜74に継手部材71a〜74aがそれぞれ設けられ、継手部材71a〜74aが支持ステイ80に支持されるため、支持ステイ80、ABSモジュール70、及び継手部材71a〜74aをサブアッシー70Sにしておける。これにより、製造ライン上で組み付ける際の作業性を向上することができる。
【0037】
また、本実施形態の自動二輪車10によれば、ABSモジュール70が、車両側面視において、緩衝器24の上端支持孔24aよりも前方に配置されるため、ブレーキ系の配管71〜74を短くすることができる。
【0038】
なお、本発明は上記各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 自動二輪車
11 車体フレーム
15 シートフレーム
22 ハンドル
23 スイングアーム
24 緩衝器
24a 上端支持孔
25 収納ボックス
26 燃料タンク
26a 凹部
27 シート
28 燃料ポンプ
45 フロントブレーキキャリパ(液圧式ブレーキ)
46 リヤブレーキキャリパ(液圧式ブレーキ)
70 ABSモジュール
71 後輪側入力配管(液圧配管)
71a 継手部材
72 後輪側出力配管(液圧配管)
72a 継手部材
73 前輪側入力配管(液圧配管)
73a 継手部材
74 前輪側出力配管(液圧配管)
74a 継手部材
80 支持ステイ
WF 前輪
WR 後輪
S 跨ぎ空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート(27)を支持する左右一対のシートフレーム(15)を有する車体フレーム(11)と、
前記左右一対のシートフレーム間に前方から順に配置される収納ボックス(25)及び燃料タンク(26)と、
車輪(WF,WR)に制動力を与える液圧式ブレーキ(45,46)と、
前記液圧式ブレーキに作用する液圧を減圧するABSモジュール(70)と、
ハンドル(22)と前記シートとの間に形成される跨ぎ空間(S)と、を備える自動二輪車において、
前記ABSモジュールは、前記左右一対のシートフレーム間であって、前記収納ボックスと前記燃料タンクに前後方向に挟まれる位置に配置されることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記燃料タンク(26)の下面の車幅方向一方側に形成される凹部(26a)に前記ABSモジュール(70)が収容され、
前記燃料タンク内の車幅方向他方側に燃料ポンプが(28)収容されることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記液圧式ブレーキは、前輪(WF)に制動力を与えるフロントブレーキキャリパ(45)と、後輪(WR)に制動力を与えるリヤブレーキキャリパ(46)と、を備え、
前記フロントブレーキキャリパ及び前記リヤブレーキキャリパは、車幅方向一方側に配置されることを特徴とする請求項2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記ABSモジュール(70)を前記車体フレーム(11)に支持する支持ステイ(80)を備え、
前記ABSモジュールに接続される液圧配管(71〜74)に継手部材(71a〜74a)が設けられ、
前記継手部材が前記支持ステイに支持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記シートフレーム(15)にスイングアーム(23)を懸架する緩衝器(24)を取り付け、
前記ABSモジュール(70)は、車両側面視において、前記緩衝器の上端支持孔(24a)よりも前方に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103523(P2013−103523A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246673(P2011−246673)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】