説明

自動分析装置及びその検量線作成方法

【課題】 検量線の区間外で被検試料の測定が可能な自動分析装置及びその検量線作成方法を提供する。
【解決手段】 被検試料及び複数の標準試料を測定して、被検試料データ及び標準試料データを生成する分析部18と、標準試料の校正値及び分析部18により生成された標準試料データに基づいて、標準試料の校正値とこの標準試料データの隣り合う各座標間を補間する第1の関数と、第1の関数を外挿する第2の関数とにより形成される検量線Aを作成するキャリブレーション部33と、分析部18で生成された被検試料データから分析データを生成する分析データ生成部34と、分析データ生成部34で生成された分析データを出力する出力部40とを備え、分析データ生成部34は、分析部18で生成された被検試料データが標準試料データの範囲外である時に第2の関数を用いて分析データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検試料の成分を分析する自動分析装置及びその検量線作成方法に係り、特に、ヒトの血液や尿などの体液中に含まれる成分を分析する自動分析装置及びその検量線作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置には、被検体から採取された被検試料と試薬との混合液の反応によって生ずる色調の変化を、光の透過量を測定して吸光度を求めることにより、被検試料中の様々な成分の濃度や活性値などを定量的に分析する装置が知られている。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料中の成分の各項目を分析するために、予め項目毎に測定に使用する標準試料や被検試料などのサンプル及び試薬の量、混合液の反応時間、検量線の種別、検量線を作成するための標準試料、光の波長などの分析条件を設定しておく必要がある。そして、項目毎に予め設定した標準試料を測定してその吸光度を求めることにより検量線が作成される。その後、検量線の作成により分析可能になった多数の項目の中から選択された被検試料毎の項目の測定が行われ、濃度や活性値などの分析データが生成され、その分析データが医療診断に利用される。
【0004】
検量線は、標準試料に予め値付けされた校正値とこの標準試料の吸光度の各座標間を補間する関数により形成され、その関数は各項目のサンプルと試薬との反応の特性に基づいて設定される。そして、標準試料が2個であれば2点の座標間は直線で表される。また、標準試料がn個(n≧3)であれば、隣り合う各座標間が直線や曲線で表され、曲線で表される関数には指数関数やスプライン関数などがあることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図8の検量線は、6個の標準試料の各校正値C0乃至C5と、この標準試料の測定により求められた各吸光度A0乃至A5の各座標P0乃至P5の隣り合う各座標間(各校正値で区分される各区間)を曲線で補間する各関数y=f1(x)乃至y=f5(x)により形成されている。そして、区間内の各関数y=f1(x)乃至y=f5(x)は、隣り合う座標間を隣り合う座標以外の座標を考慮に入れた連立方程式から各関数の係数を求めることにより得ることができる。
【0006】
分析データは、検量線を用いて生成される。被検試料を測定して求めた吸光度Aiが区間内の例えば吸光度A2よりも大きく吸光度A3よりも小さい場合、関数y=f3(x)のy座標の吸光度Aiと交わるx座標の値Ciを求めることにより生成される。また、被検試料の吸光度が吸光度A5を越える区間外にある場合、座標P4と座標P5の間を補間する関数y=f5(x)を区間外に外挿し、外挿した関数y=f5(x)のy座標の被検試料の吸光度と交わるx座標の値を求めることにより生成される。
【特許文献1】特開平10−332694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、関数y=f5(x)は、隣り合う座標間を隣り合う座標以外の座標を考慮に入れて求められるため、図9に示すように、検量線の区間外で関数の傾きが一旦負になった後に正になることがある。この場合、被検試料のy座標の吸光度Asと交わるx座標の値Cs1は、期待される単調増加関数のx座標の値Cs2よりも異常に大きい値となるため、この分析データを診断に用いたとき誤診する恐れがある。
【0008】
また、図10に示すように、関数が単調減少関数になってしまうこともある。この場合、被検試料のy座標の吸光度Asと交わるx座標が存在しないため、分析データを生成できず、分析データを生成できない項目に対しては、分析データエラーが出力される。従って、測定の終了後に、分析データエラーを含む項目の被検試料が希釈され再測定することになり、測定に時間と手間が掛かってしまう問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、検量線の区間外で被検試料の測定が可能な自動分析装置及びその検量線作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に係る本発明の自動分析装置は、被検試料及び複数の標準試料を測定して、被検試料データ及び標準試料データを生成する分析手段と、前記標準試料の校正値及び前記分析手段により生成された前記標準試料データに基づいて、前記校正値とこの校正値の標準試料データの座標の内の隣り合う各座標間を補間する第1の関数と、この第1の関数と同符号の傾きを有し、前記第1の関数を外挿する第2の関数とにより形成される検量線を作成するキャリブレーション手段と、前記分析手段により生成された前記被検試料データが前記標準試料データの範囲外である時に、前記第2の関数を用いて前記被検試料データから分析データを生成する分析データ生成手段と、前記分析データ生成手段により生成された前記分析データを出力する出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る本発明の自動分析装置の検量線作成方法は、被検試料及び複数の標準試料を測定して被検試料データ及び標準試料データを分析手段により生成し、前記標準試料の校正値及び前記分析手段により生成された前記標準試料データに基づいて、前記校正値とこの校正値の標準試料データの座標の内の隣り合う各座標間を補間する第1の関数と、この第1の関数と同符号の傾きを有し、前記第1の関数を外挿する前記標準試料の校正値とこの標準試料から生成された標準試料データの座標を通り、傾きがその座標における前記第1の関数の一次微分係数で表される一次関数である第2の関数とにより形成される検量線をキャリブレーション手段により作成し、前記分析手段により生成された前記被検試料データが前記標準試料データの範囲外である時に、前記第2の関数を用いて前記被検試料データから分析データを分析データ生成手段により生成し、前記分析データ生成手段により生成された前記分析データを出力手段により出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、標準試料の校正値により区分される各区間を曲線で補間する第1の関数と、この第1の関数と同符号の傾きを有し第1の関数を外挿する第2の関数とにより形成される検量線を作成することにより、区間外の被検試料データから分析データを精度よく生成できるので、効率よく測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図7を参照して説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、標準試料や被検試料の測定を行う分析部18と、分析部18の制御を行う分析制御部20と、標準試料や被検試料の測定により分析部18から出力された標準試料データや被検試料データを処理して検量線の作成や分析データの生成を行うデータ処理部30と、データ処理部30からの検量線や分析データを出力する出力部40と、各項目の標準試料や検量線などの分析条件の入力や、各種コマンド信号を入力する操作部50と、分析制御部20、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0015】
図2は、分析部18の斜視図である。この分析部18は、標準試料や被検試料に含まれる各項目の成分に対して選択的に反応する第1試薬や第1試薬と対の第2試薬などの試薬が入った試薬ボトル7と、この試薬ボトル7を収納する試薬ラック1と、第1試薬の入った試薬ボトル7を収納した試薬ラック1を収納する試薬庫2と、第2試薬の入った試薬ボトル7を収納した試薬ラック1を収納する試薬庫3と、円周上に複数の反応容器4を配置した反応ディスク5と、標準試料や被検試料などのサンプルを収容する試料容器17をセットするディスクサンプラ6とを備えている。
【0016】
そして、1サイクル毎に、試薬庫2、試薬庫3、及びディスクサンプラ6は夫々回動し、反応ディスク5は回転して分析制御部20により制御された位置に停止する。
【0017】
また、分析部18は、1サイクル毎に、試薬庫2,3の図示しない第1及び第2試薬吸引位置の試薬ボトル7から第1及び第2試薬を吸引した後、図示しない第1及び第2試薬吐出位置に停止した反応容器4に分注する第1及び第2試薬分注プローブ14,15と、ディスクサンプラ6の分析制御部20に制御された位置の試料容器17からサンプルを吸引した後、図示しないサンプル吐出位置に停止した反応容器4に分注する分注プローブ16とを備えている。
【0018】
そして第1試薬分注プローブ14、第2試薬分注プローブ15、及び分注プローブ16を回動及び上下動可能に保持する第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、及び分注アーム10を備えている。
【0019】
更に、1サイクル毎に、図示しない撹拌位置に停止した反応容器4内におけるサンプル+第1試薬、サンプル+第1試薬+第2試薬などの混合液を撹拌する撹拌ユニット11と、この混合液を含む反応容器4を図示しない測光位置から測定する測光ユニット13と、洗浄・乾燥位置に停止した反応容器4内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応容器4内を洗浄・乾燥する洗浄ユニット12とを備えている。
【0020】
測光ユニット13は、回転移動する反応容器4に測光位置から光を照射して、標準試料を含む混合液を透過した光を吸光度に変換して標準試料データを生成した後、データ処理部30に出力する。また、被検試料を含む混合液を透過した光を吸光度に変換して被検試料データを生成した後、データ処理部30に出力する。その後、混合液の測定を終了して洗浄・乾燥された反応容器4は、再び測定に使用される。
【0021】
分析制御部20は、試薬庫2、試薬庫3、及びディスクサンプラ6の夫々回動、反応ディスク5の回転、分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、及び撹拌ユニット11の夫々回動及び上下移動、洗浄ユニット12の上下移動などを行う機構及び各機構の制御部を備えている。
【0022】
また、サンプル分注プローブ16からサンプルを吸引及び吐出させるための分注ポンプ、第1試薬分注プローブ14から第1試薬を吸引及び吐出させるための第1試薬ポンプ、第2試薬分注プローブ14から第2試薬を吸引及び吐出させるための第2試薬ポンプ、洗浄ユニット12から反応容器4内洗浄用の洗浄液を供給及び吸引させるための洗浄ポンプ及び反応容器4内を乾燥させるための乾燥ポンプなどの各種ポンプ及び各種ポンプの制御部を備えている。更に、撹拌ユニット11を撹拌駆動する機構及び制御部を備えている。
【0023】
図1のデータ処理部30は、分析部18から出力された標準試料データや被検試料データから検量線の作成や分析データを生成する演算部31と、演算部31で生成された検量線や分析データなどを保存する記憶部32とを備えている。
【0024】
演算部31は、分析部18の測光ユニット13から出力された標準試料データから検量線を作成するキャリブレーション部33と、測光ユニット13から出力された被検試料データから分析データを生成する分析データ生成部34とを備えている。
【0025】
キャリブレーション部33は、分析部18から出力された各項目の標準試料データと、この標準試料データに対応する標準試料の校正値に基づき検量線を作成して出力部40に出力すると共に記憶部32に保存する。
【0026】
分析データ生成部34は、分析部18から出力された各項目の被検試料データに対して、その項目の検量線を記憶部32から読み出した後、読み出した検量線を用いて濃度や活性値などの分析データを生成して出力部40に出力すると共に記憶部32に保存する。
【0027】
記憶部32は、ハードディスクなどを備え、キャリブレーション部33から出力された検量線を項目毎に保存し、分析データ生成部34から出力された分析データを被検試料毎に保存する。
【0028】
出力部40は、データ処理部30から出力された検量線、分析データなどを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、データ処理部30から出力された検量線、分析データなどを予め設定されたフォーマットに基づいて、プリンタ用紙に印刷出力する。表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、各項目の標準試料や検量線などの分析条件を設定するための標準試料設定画面や検量線設定画面などの表示や、データ処理部30から出力された検量線、分析データなどの表示を行う。
【0029】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各項目の標準試料や検量線などの分析条件の設定、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検体の被検試料毎の測定する項目の選択、各項目のキャリブレーション操作、被検試料測定操作などの様々な操作が行われる。
【0030】
システム制御部60は、図示しないCPUと記憶回路を備え、操作部50から供給される操作者のコマンド信号、各項目の標準試料や検量線などの分析条件、被検体情報、被検試料毎の測定項目などの情報を記憶した後、これらの情報に基づいて、分析部18を構成する各ユニットを一定サイクルの所定のシーケンスで測定動作させる制御、或いは検量線の作成、分析データの生成と出力に関する制御などシステム全体の制御を行なう。
【0031】
次に、図1乃至図5を参照して、分析条件の標準試料及び検量線を設定する例を説明する。
【0032】
図3は、分析条件の一部である標準試料を設定する画面を示した図である。この標準試料設定画面70は、予め設定した項目名が表示される「項目」のエリアと、「標準試料」の欄、「標準試料」の欄に対応した「値」の欄、及び「標準試料」の欄に対応した「位置」の欄により構成される。そして、操作部50からの各項目の標準試料設定画面表示操作により出力部40の表示部42に表示され、標準試料設定画面70に設定された各項目の情報はシステム制御部60の内部記憶回路に保存される。
【0033】
「標準試料」の欄には上から順に「0」乃至「n」が表示され、項目毎に最大(n+1)個の標準試料の設定が可能になっている。
【0034】
「値」の欄には、「標準試料」の欄の各「0」乃至「n」に対応する四角枠70a0乃至70anが配置されている。そして、各項目のキャリブレーションで使用する各標準試料に値付けされている校正値を、上から順に各四角枠内に入力する。
【0035】
「位置」の欄には、「標準試料」の欄の各「0」乃至「n」に対応する四角枠70b0乃至70bnが配置されている。そして、項目毎に使用する各標準試料を収容した試料容器17をセットするディスクサンプラ6の位置の番号を各四角枠内に入力する。
【0036】
ここでは、項目Aのキャリブレーションで使用する各標準試料ST0乃至STmを標準試料設定画面70に設定する。各標準試料ST0乃至STmの各校正値C0乃至Cm(C0<C1<・・・<C(m−1)<Cm)の小さい校正値から、各四角枠70a0乃至70am内に入力する。また、各標準試料ST0乃至STmを収容する(m+1)個の試料容器17をセットするディスクサンプラ6の各位置D0乃至Dmを各四角枠70b0乃至70bm内に入力する。
【0037】
図4は、分析条件の一部である検量線を設定する画面を示した図である。この検量線設定画面80は、予め設定した項目名が表示される「項目」のエリアと、「標準の検量線種別」の欄、「直線による外挿を行う」の欄、及び「区間」の欄により構成される。そして、操作部50からの各項目の検量線設定画面表示操作により出力部40の表示部42に表示され、検量線設定画面80に設定された検量線の情報はシステム制御部60の内部記憶回路に保存される。
【0038】
「標準の検量線種別」の欄の右側には、項目毎に使用する検量線を作成するためのサンプルと試薬の反応特性に合う関数を選択して入力する四角枠80aが配置されている。検量線の関数には、標準試料設定画面70で設定された各標準試料の校正値とこの校正値に該当する標準試料の測定により生成された標準試料データの各座標P(校正値,標準試料データ)の隣り合う各座標P(校正値,標準試料データ)間を直線で補間する「直線」と、隣り合う各座標P(校正値,標準試料データ)間をこの隣り合う座標以外の座標も考慮に入れてスプライン関数、指数関数などの曲線で補間する「スプライン」、「指数」などがあり、これらの中から選択入力した関数が四角枠80a内に表示される。
【0039】
「直線による外挿を行う」の欄の右側には、「標準の検量線種別」の欄の四角枠80a内に設定された曲線で補間する関数を対象とし、その関数に対して直線による外挿を行うか否かを設定する四角枠80bが配置されている。
【0040】
そして、「直線による外挿を行う」を設定する場合、四角枠80b内に「レ」を入力する。この設定により、各項目の標準試料設定画面70で設定した標準試料の最大の校正値以上の区間に直線の関数が外挿される。
【0041】
ここでは、項目Aの「標準の検量線種別」としては「スプライン」を選択設定し、「直線による外挿を行う」を設定する。
【0042】
「区間」の欄の右側には、「標準の検量線種別」の欄の四角枠80a内に選択入力された検量線に対して、区間外における延長区間を入力するための四角枠80c及び80dが配置されている。「直線による外挿を行う」が選択されていなければ、四角枠80c及び80dに区間が入力されていても無効となる。
【0043】
図5は、項目Aの検量線の一例を示した図である。このx,y軸に表された検量線Aは、項目Aの検量線設定画面80で設定された関数に基づいて生成された第1の関数と、第1の関数から導き出された第2の関数とにより形成される。
【0044】
検量線Aの第1の関数は、各標準試料ST0乃至STmの各校正値C0乃至Cmを小さい順に並べた時に隣り合う校正値で区分される各区間[{C0,C1}乃至{C(m−1),Cm}](区間内)を補間する各補間関数y=S1(x)乃至y=Sm(x)により構成される。
【0045】
各補間関数y=S1(x)乃至y=Sm(x)は、項目Aの検量線設定画面80で設定された例えば三次スプライン関数などの二次以上の多項式で表される設定関数の係数を、項目Aの標準試料設定画面70で設定された各校正値C0乃至Cmをx座標とし、分析部18による標準試料ST0乃至STmの測定によって生成される標準試料データA(吸光度A0乃至Am)(A0<A1<・・・<A(m−1)<Am)をy座標とする各座標P0(C0,A0)乃至Pm(Cm,Am)を用いて求めることにより得られる。
【0046】
例えば、区間{C(i−1),Ci}の隣り合う座標P(i―1)と座標Piを補間する補間関数Si(x)は、隣り合う座標以外の座標をも用いて前記設定関数の係数を求めることにより得られる。このようにして得られた各補間関数y=S1(x)乃至y=Sm(x)は、単調増加関数として表される。
【0047】
なお、第1の関数が単調増加関数である場合、吸光度A0乃至Amは、C0<C1<・・・<C(m−1)<Cmに対応してA0<A1<・・・<A(m−1)<Amとなる関係が成り立つ。この関係が成り立たない場合、キャリブレーション時に何らかの異常があったものと見なし、標準試料データにエラーコードを付加して出力部40に出力されることになる。また、第1の関数は、吸光度A0乃至Amは、C0<C1<・・・<C(m−1)<Cmに対応してA0>A1>・・・>A(m−1)>Amとなる関係が成り立つ単調減少関数であってもよい。
【0048】
第2の関数は、校正値Cmよりも大きい区間{Cm以上}(区間外)で、区間内端部の区間{C(m−1),Cm}の補間関数y=Sm(x)を外挿する関数である。区間{C(m−1),Cm}の端部の座標Pm(Cm,Am)における補間関数y=Sm(x)の一次微分係数Sm’(Cm)を傾きとし、座標Pm(Cm,Am)を通る直線の外挿関数y=Sm’(Cm)(x−Cm)+Amとして表される。このため外挿関数の傾きは、第1の関数と同符号であり、単調増加関数となる。なお、第1の関数が単調減少関数である場合には、外挿関数も単調減少関数となる。
【0049】
このように、区間内の各区間を曲線で補間する補間関数により構成される第1の関数に対して、標準試料の最大の校正値とこの標準試料から生成される標準試料データの座標を通り、傾きがその座標における補間関数の一次微分係数で表される一次関数を求めることにより、第1の関数と同符号の傾きを有し、第1の関数を外挿する近似的な第2の関数を区間外に設けることができる。そして、第1及び第2の関数による単調増加又は単調減少する検量線を作成することができる。
【0050】
図4に戻り、以下では項目Aの検量線Aを例に説明する。「直線による外挿を行う」を選択しない場合、区間外には、区間内端部の区間{C(m−1),Cm}の補間関数y=Sm(x)が使用される。
【0051】
四角枠80c内には最大の校正値Cmを入力し、四角枠80d内には最大の校正値Cmよりも大きくその項目の測定限界域などの延長領域値C(m+1)を入力する。
【0052】
そして、「直線による外挿を行う」を選択し四角枠80c及び80dに延長区間を設定した場合、設定した延長区間{Cm,C(m+1)}で{C(m−1),Cm}の補間関数y=Smax(x)が単調増加又は単調減少する時には、区間{Cm,C(m+1)}においても補間関数y=Sm(x)が使用される。また、補間関数Sm(x)が単調増加及び単調減少しない時には、外挿関数y=Sm’(Cm)(x−Cm)+Amが使用される。
【0053】
次に、図1乃至図7を参照して、自動分析装置100による標準試料及び被検試料を測定する動作を説明する。
【0054】
図6は、標準試料を測定する動作を示したフローチャートである。操作部50から例えば項目Aの標準試料及び検量線などの分析条件を設定する分析条件設定操作が行われると、システム制御部60は、項目Aの標準試料及び検量線などの分析条件の情報を内部の記憶回路に保存する。その後、項目Aの各標準試料ST0乃至STmを収容した試料容器17がディスクサンプラ6の位置「D0」乃至「Dm」にセットされる。
【0055】
そして、操作部50から項目Aのキャリブレーション操作が行われると、自動分析装置100は各標準試料ST0乃至STmを測定する動作を開始する(ステップS1)。
【0056】
システム制御部60は、分析制御部20、データ処理部30、及び出力部40に、項目Aのキャリブレーションを行うための標準試料測定動作を指示すると共に、項目Aの分析条件の情報を出力する。
【0057】
分析制御部20は、システム制御部60の指示及び分析条件の情報に基づいて、分析部18の各ユニットを制御して項目Aの標準試料測定動作をする。分析部18の測光ユニット13は、項目Aの各標準試料ST0乃至STmを測定して標準試料データA(吸光度A0乃至Am)を生成する(ステップS2)。その後、生成した標準試料データAをデータ処理部30の演算部31のキャリブレーション部33に出力する。
【0058】
キャリブレーション部33は、システム制御部60から出力された項目Aの分析条件の情報及び測光ユニット13から出力された標準試料データに基づいて、各区間{C0,C1}乃至{Cm,Am}(区間内)を補間する各補間関数y=S1(x)乃至y=Sm(x)の係数を求める(ステップS3)。
【0059】
そして、検量線設定画面80の「直線による外挿を行う」が設定されている場合(ステップS4のはい)、ステップS5に移行する。また、「直線による外挿を行う」が設定されていない場合(ステップS4のいいえ)、区間内の区間毎の各係数を求めた各補間関数y=S1(x)乃至y=Sm(x)により構成される検量線Bを作成して出力部40に出力すると共に記憶部32に保存する(ステップS6)。その後、ステップS13に移行する。
【0060】
ステップS5において、検量線設定画面80の「区間」の四角枠80c及び80d内に区間が設定されている場合(ステップS5のはい)、四角枠80c及び80d内に例えばCm及びC(m+1)が設定されていると、ステップS7に移行する。また、四角枠80c及び80d内に区間が設定されていない場合(ステップS5のいいえ)、ステップS8に移行する。
【0061】
次に、区間{Cm,C(m+1)}で補間関数y=Sm(x)が単調増加する場合(ステップS7のはい)、区間内の各補間関数y=S1(x)乃至y=Sm(x)と区間{Cm,C(m+1)}の補間関数y=Sm(x)とにより構成される検量線Cを作成して出力部40に出力すると共に記憶部32に保存する(ステップS9)。その後、ステップS13に移行する。
【0062】
また、区間{Cm,C(m+1)}で補間関数y=Sm(x)が単調増加しない場合(ステップS7のいいえ)、ステップS8に移行する。
【0063】
次に、座標Pm(Cm,Am)におけるy=Sm(x)の一次微分係数Sm’(Cm)を求める。そして、求めた一次微分係数Sm’(Cm)が正である場合(ステップS8のはい)、区間{Cm以上}において使用される外挿関数y=Sm’(Cm)(x−Cm)+Amを求める(ステップS10)。
【0064】
また、一次微分係数Sm’(Cm)が0又は負である場合(ステップS8のいいえ)、区間内の各補間関数y=S1(x)乃至y=Sm(x)を無効とし、「検量線の作成に失敗しました」などのキャリブレーションエラー情報を出力部40に出力すると共に記憶部32に保存する(ステップS11)。
【0065】
このように、検量線を無効としキャリブレーションエラー情報を出力することにより、異常データの生成を防ぐことができる。
【0066】
次に、区間内の各補間関数y=S1(x)乃至y=Sm(x)と区間外の外挿関数y=Sm’(Cm)(x−Cm)+Amとにより構成される検量線Aを作成して出力部40に出力すると共に記憶部32に保存する(ステップS12)。
【0067】
そして、ステップS6で生成された検量線B、又はステップS9で作成された検量線C、又はステップ11で作成されたキャリブレーションエラー情報、又はステップS12で作成された検量線Aが出力部40に出力された時点で、システム制御部60が分析制御部20、データ処理部30、及び出力部40に動作停止の指示をすることにより、項目Aの標準試料測定動作が終了する(ステップS13)。
【0068】
図7は、被検試料を測定する動作を示したフローチャートである。自動分析装置100のデータ処理部30の記憶部32には、図6で説明した標準試料の測定により項目Aの検量線Aが保存されているとする。
【0069】
操作部50から被検体の被検体ID、被検体名などの被検体情報を入力し、被検体の被検試料の項目Aを選択入力した後に、被検試料測定操作が行われると、自動分析装置100は被検試料測定動作を開始する(ステップS21)。
【0070】
システム制御部60は、分析制御部20、データ処理部30、及び出力部40に、被検試料の項目Aを測定する動作を指示する。この指示に基づいて分析制御部20は、分析部18の各ユニットに被検試料の項目Aの測定動作をさせる。この測定動作により分析部18の測光ユニット13は、被検試料の項目Aを測定して分析データA(吸光度Ac)を生成する(ステップS22)。その後、生成した吸光度Acをデータ処理部30の演算部31の分析データ生成部34に出力する。
【0071】
分析データ生成部34は、測光ユニット13から出力された項目Aの吸光度Acに対して、記憶部32から項目Aの検量線Aを読み出した後、読み出した検量線Aを用いて吸光度Acから分析データを生成するための動作を行う。
【0072】
そして、吸光度Acが、項目Aの標準試料STmの吸光度Amよりも大きい場合(ステップS23のはい)、検量線Aの外挿関数y=Sm’(Cm)(x−Cm)+Amを用いて分析データAを生成する(ステップS24)。
【0073】
ここでは、外挿関数y=Sm’(Cm)(x−Cm)+Amのyに吸光度Acを代入して、xの値を求めることにより、被検試料の項目Aの分析データAである図5に示したCsを生成する。
【0074】
このように、区間外に対応する被検試料データが生成されたときに、第1の関数と同じ傾きを有する外挿関数を用いて近似的な分析データを生成することができる。
【0075】
また、吸光度Acが、吸光度Amと同じである又は吸光度Amよりも小さい場合(ステップS23のいいえ)、検量線Aの区間内の各補間関数y=S1(x)乃至y=Sm(x)を用いて分析データA’を生成する(ステップS25)。
【0076】
ここでは、吸光度Acが区間{C(i−1),Ci}に対応しているとすると、その区間の補間式y=Si(x)のyにAcを代入して、xの値を求めることにより、項目Aの分析データA’である図5に示したCiを生成する。
【0077】
分析データ生成部34は、ステップS24で生成した分析データA又はステップS25で生成した分析データA’を出力部40に出力すると共に記憶部32に保存する(ステップS26)。
【0078】
そして、出力部40にデータ処理部30からの分析データが出力された時点で、システム制御部60が分析制御部20、データ処理部30、及び出力部40に動作停止の指示をすることにより、被検試料測定動作が終了する(ステップS27)。
【0079】
なお、図6及び図7は上記実施例に限定されるものではなく、例えば検量線の第1の関数が単調減少関数である場合に実施するようにしてもよい。この場合、ステップS7では単調減少の場合に検量線Cを作成するようにし、ステップS8ではSm’(Cm)<0の場合に外挿関数を求めるようにし、ステップS23ではAs<Amの場合に外挿関数を用いて分析データAを生成するように実施する。
【0080】
以上述べた本発明の実施例によれば、標準試料の校正値により区分される区間内の各区間を曲線で補間する補間関数により構成される第1の関数に対して、標準試料の最大の校正値とこの標準試料から生成される標準試料データの座標を通り、傾きがその座標における補間関数の一次微分係数で表される一次関数を求めることにより、第1の関数と同符号の傾きを有し、第1の関数を外挿する第2の関数を区間外に設けることができる。
【0081】
この第2の関数により区間外の被検試料データから近似的な分析データを生成することができる。また、第1及び第2の関数による単調増加又は単調減少する検量線を作成することができるので、広範囲の測定に対応することができる。
【0082】
また、標準試料の最大の校正値とこの校正値よりも大きい延長領域値との延長区間を設定し、設定した延長区間の被検試料データに対して、区間内の端部の区間の補間関数が延長区間でも第1の関数と同じ単調増加又は単調減少関数である場合にはその補間関数を用いて分析データを生成し、第1の関数と同じ単調増加又は単調減少関数でない場合には第2の関数を用いることにより、広範囲の測定に対応することができる。
【0083】
これにより、誤診を防ぎ再測定する時間と手間が掛けることなく効率よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る分析部の構成を示す図。
【図3】本発明の実施例に係る標準試料設定画面の一例を示す図。
【図4】本発明の実施例に係る検量線設定画面の一例を示す図。
【図5】本発明の実施例に係る検量線の一例を示す図。
【図6】本発明の実施例に係る標準試料を測定する動作を示すフローチャート。
【図7】本発明の実施例に係る標準試料を測定する動作を示すフローチャート。
【図8】一般の検量線を示す図。
【図9】従来の検量線の一例を示す図。
【図10】従来の検量線の一例を示す図。
【符号の説明】
【0085】
18 分析部
20 分析制御部
30 データ処理部
31 演算部
32 記憶部
33 キャリブレーション部
34 分析データ生成部
40 出力部
41 印刷部
42 表示部
50 操作部
60 システム制御部
70 標準試料設定画面
80 検量線設定画面
100 自動分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料及び複数の標準試料を測定して、被検試料データ及び標準試料データを生成する分析手段と、
前記標準試料の校正値及び前記分析手段により生成された前記標準試料データに基づいて、前記校正値とこの校正値の標準試料データの座標の内の隣り合う各座標間を補間する第1の関数と、この第1の関数と同符号の傾きを有し、前記第1の関数を外挿する第2の関数とにより形成される検量線を作成するキャリブレーション手段と、
前記分析手段により生成された前記被検試料データが前記標準試料データの範囲外である時に、前記第2の関数を用いて前記被検試料データから分析データを生成する分析データ生成手段と、
前記分析データ生成手段により生成された前記分析データを出力する出力手段とを
備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記第2の関数は、前記標準試料の最大の校正値とこの標準試料から生成された標準試料データの座標を通り、傾きがその座標における前記第1の関数の一次微分係数で表される一次関数であることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記第1の関数は、二次以上の関数であることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記第1の関数は、スプライン関数であることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記第1の関数は、前記標準試料の最大の校正値とこの標準試料から生成された標準試料データの座標を補間する補間関数であることを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項6】
被検試料及び複数の標準試料を測定して被検試料データ及び標準試料データを分析手段により生成し、
前記標準試料の校正値及び前記分析手段により生成された前記標準試料データに基づいて、前記校正値とこの校正値の標準試料データの座標の内の隣り合う各座標間を補間する第1の関数と、この第1の関数と同符号の傾きを有し、前記第1の関数を外挿する前記標準試料の校正値とこの標準試料から生成された標準試料データの座標を通り、傾きがその座標における前記第1の関数の一次微分係数で表される一次関数である第2の関数とにより形成される検量線をキャリブレーション手段により作成し、
前記分析手段により生成された前記被検試料データが前記標準試料データの範囲外である時に、前記第2の関数を用いて前記被検試料データから分析データを分析データ生成手段により生成し、
前記分析データ生成手段により生成された前記分析データを出力手段により出力することを特徴とする自動分析装置の検量線作成方法。
【請求項7】
前記キャリブレーション手段は、前記第1の関数が単調増加又は単調減少関数の一方の関数であるときに、前記第2の関数が前記一方の関数でないとき前記第2の関数を無効とし、その無効の情報を前記出力手段に出力するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置の検量線作成方法。
【請求項8】
前記標準試料の最大の校正値と、この校正値よりも大きい延長領域値との区間を設定する区間設定手段を有し、
前記分析データ生成手段は、前記分析手段により生成された前記標準試料データの範囲外の前記被検試料データに対して、前記第1の関数が前記区間設定手段により設定された区間で単調増加又は単調減少関数である時に前記第1の関数を用い、単調増加及び単調減少関数でない時に前記第2の関数を用いるようにしたことを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置の検量線作成方法。
【請求項9】
複数の標準試料の測定により得られた標準試料データ及びこの標準試料の校正値の座標に基づいて検量線を作成し、作成した検量線を用いて被検試料の測定により得られた被検試料データから分析データを生成する自動分析装置において、
前記検量線は、前記座標の各区間を補間する第1の関数と、この第1の関数を外挿するために接続され、前記第1の関数の接続部における傾きとほぼ等しい傾きを有する第2の関数とにより形成されることを
特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
複数の標準試料の測定により得られた標準試料データ及びこの標準試料の校正値の座標に基づいて検量線を作成し、作成した検量線を用いて被検試料の測定により得られた被検試料データから分析データを生成する自動分析装置において、
前記座標の各区間を補間する第1の関数を求め、求めた第1の関数の傾きに基づいて前記第1の関数を外挿する第2の関数の使用の有無を判定するキャリブレーション手段を
備えたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−292525(P2007−292525A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118674(P2006−118674)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】