説明

自動分析装置

【課題】再検にかかる時間および再検で使用する試薬の無駄を低減することができる自動分析装置を提供すること。
【解決手段】ノズル31bのノズル詰まりを検出する検出部41aと、検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりを検出された検体の分析データにノズル31bが詰まったことを示す旨の付加情報をノズル詰まりフラグとして付加する情報付加部41bと、分析データにノズル詰まりフラグが付加された検体を収容する検体容器25aが少なくとも1つラック25に保持されている場合、このラック25を回収部22に搬送し、ノズル詰まりフラグが付加されておらず、かつ再検対象である検体を収容する検体容器を少なくとも1つ保持されているラック25を供給部20に搬送して自動再検の処理を行うように検体供給部2を制御する搬送制御部41cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生化学分析、免疫検査等の分析を自動で行う自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、反応容器に試薬および検体を分注し、この反応容器内で生じた反応を光学的に検出することによって、生化学分析、免疫検査等の分析を自動で行う自動分析装置が知られている。このような自動分析装置では、患者検体の性質等によって分析データに異常が出力される場合、分析データの異常原因の確認のため、分析データに異常が出力された検体について再分析(以下、再検という)を行っている。この場合、自動分析装置は、分析データに異常が出力された検体を自動で検体吸引位置に供給して再検を行うようにしている。
【0003】
特許文献1には、再検対象の検体が保持されたラックを自動で検体吸引位置に供給して再検を行う自動分析装置が記載されている。この自動分析装置では、分析を終了し、検体が供給されたときと同じ配列順序で並んでいる複数のラックのなかから、再検対象の検体が保持されたラックを自動で取り出して再検した後、再検時に取り出した位置にこのラックを戻すことによって再検終了後もラックの配列順序を変えないようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−196926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された自動分析装置は、例えば、粘性の高い検体を反応容器に分注する際に検体がノズルに詰まり、結果として分析データが異常となったとしても、この粘性の高い検体に対して希釈等の処理を行わずに自動で再検を行っていた。このような粘性の高い検体を再検のために再分注すると、再び検体がノズルに詰まって再検の分析データが異常となってしまう可能性が高かった。従って、再検にかかる時間および再検で使用する試薬を無駄にしてしまう場合があるという問題があった。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、再検にかかる時間および再検で使用する試薬の無駄を低減することができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる自動分析装置は、検体が収容された検体容器を検体吸引位置に供給可能に保持する供給部および該検体容器を回収可能に保持する回収部を有し、前記検体吸引位置を経由する前記供給部から前記回収部あるいは前記供給部までの前記検体容器の搬送を行う搬送手段を備え、前記検体吸引位置でノズルによって前記検体容器から反応容器に分注された検体の分析を行う自動分析装置において、前記ノズルのノズル詰まりを検出する検出手段と、前記検出手段が前記ノズルのノズル詰まりを検出した場合、前記ノズルのノズル詰まりが検出された検体を収容する検体容器を前記回収部に搬送し、前記ノズルのノズル詰まりが検出されずかつ再検対象である検体を収容する検体容器を前記供給部に搬送して自動再検の処理を行うように前記搬送手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記検出手段が前記ノズル詰まりを検出した場合、該ノズル詰まりが発生した検体の情報に該ノズル詰まりが発生したことを示す旨の付加情報を付加する付加手段を備え、前記制御手段は、前記付加情報が付された検体を収容する検体容器を前記回収部に搬送し、前記付加情報が付されておらずかつ再検対象である検体を収容する検体容器を前記供給部に搬送して自動再検の処理を行うように前記搬送手段を制御することを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記検出手段が前記ノズル詰まりを検出した場合、直前に分注された異なる検体の分注時にノズル詰まりが検出されていたか否かを判断する異常判断手段と、前記異常判断手段が直前に分注された異なる検体の分注時にノズル詰まりが検出されていたと判断した場合、前記ノズルの異常を報知するとともに、分析動作を停止するように制御する異常制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる自動分析装置は、検出手段が、検体を分注するノズルのノズル詰まりを検出し、前記検出手段が前記ノズルのノズル詰まりを検出した場合、制御手段が、前記ノズルのノズル詰まりが検出された検体を収容する検体容器を回収部に搬送し、前記ノズルのノズル詰まりが検出されずかつ再検対象である検体を収容する検体容器を供給部に搬送して自動再検の処理を行うように搬送手段を制御しているため、前記ノズルのノズル詰まりが検出された検体を収容する検体容器は、自動再検処理されることなく、再検前に回収され、再度のノズル詰まりの発生によって生じる再検の長時間化および再検で使用する試薬の無駄を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、この発明にかかる自動分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。自動分析装置10は、図1に示すように、搬送手段としての検体供給部2、測定部3、および制御装置4を有する。検体供給部2は、測定部3の側部に配置され、検体を収容する検体容器25aを複数保持するラック25を検体吸引位置まで搬送する。測定部3は、検体および試薬を反応容器30b内にそれぞれ分注し、反応容器30bで生じる反応を光学的に測定する。制御装置4は、測定部3および検体供給部2を含む自動分析装置10全体の制御を行うとともに測定部3における測定データの分析を行う。自動分析装置10は、これら各部が連携することによって複数の検体の生化学分析を順次自動的に行う。
【0013】
検体供給部2は、上述したようにラック25を搬送することによって、検体容器25aを検体吸引位置に移送する。検体吸引位置に移送された検体容器25a内の検体は、検体分注機構31によって、検体吸引位置に搬送された反応容器30b内に分注される。検体容器25aの側面には、収容された検体の情報、例えば、被検者の被検者番号、性別、年齢、採取日等の情報を記録した図示しない識別コードラベルが貼付されている。また、ラック25の側面には、ラック番号及び各検体容器25aに収容された検体の分析項目等を含むラック情報を記録した図示しない識別コードラベルが貼付されている。識別コードラベルは、バーコードラベルによって実現されるが、電磁気的な情報の書込み,消去が可能なICタグのような記録媒体で実現してもよい。
【0014】
検体供給部2内の供給部20は、搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメント20aを複数備えたコンベアである。供給部20は、分析対象の検体を収容する検体容器25aを保持したラック25を、検体吸引位置に搬送するための待機場所である。供給部20に保持された各ラック25は、順次搬送部23に送り出され、検体吸引位置に搬送される。
【0015】
検体供給部2内の待機部21は、供給部20に対して並行配置され、搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメント21aを複数備えたコンベアである。待機部21は、分注が終了した検体を一時待機させるものである。たとえば、待機部21は、検体の分析データが得られるまでラック25を一時待機させる。
【0016】
検体供給部2内の回収部22は、供給部20および待機部21に並行配置され、搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメント22aを複数備えたコンベアである。回収部22は、待機部21から搬送された回収対象の検体を収容する検体容器25aを保持するラック25を回収可能に一時保持する。
【0017】
検体供給部2内の搬送部23は、ラック押出し装置23a,ラック引出し装置23bを備えたコンベアである。搬送部23は、供給部20から供給されるラック25を順次、検体吸引位置まで搬送するとともに、検体吸引が終わったラック25を待機部21まで搬送する。さらに、搬送部23は、待機部21から供給されるラック25を回収部22あるは供給部20に搬送する。上述したラック押出し装置23aは、検体吸引位置の近傍、および供給部20、待機部21および回収部22の各搬送入口近傍に設けられ、搬送部23上のラック25を図示しない駆動機構によって押し出し、検体吸引位置、あるいは供給部20、待機部21および回収部22の各搬送入口内への搬送を行う。一方、ラック引出し装置23bは、供給部20および待機部21の各搬送出口に配置されたラック25を、図示しない駆動機構によって搬送部23上に引き出す処理を行う。なお、搬送部25上であって、検体吸引位置に搬送される直前位置に識別コード読取装置24が設けられる。識別コード読取装置24は、供給部20から検体吸引位置に搬送されるラック25および検体容器25aにそれぞれ貼付された識別コードラベルの情報を読み取り、この読み取った情報を制御装置4に出力する。
【0018】
反応槽30は、図示しない保温部材と、ホイール30aとを有する。ホイール30aは、複数の反応容器30bを保持し、図示しない駆動機構によって回転して反応容器30bを周方向に移送する。この反応槽30は、図示しない円盤状の蓋によって覆われており、ホイール30aの半径方向内側と外側とに配置される図示しない保温部材とともに、内部の温度を体温程度の温度に保温する保温槽を構成している。
【0019】
検体分注機構31は、検体の吸引および吐出を行うノズル31bが先端部に取り付けられたアーム31aを有する。アーム31aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。検体分注機構31は、吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を有する。検体分注機構31は、検体供給部2の検体吸引位置に移送された検体容器25a内の所定位置に移送された検体容器25a内からノズル31bによって検体を吸引し、アーム31aを図中時計回りに旋回させ、反応槽30上の検体吐き出し位置に搬送された反応容器30bに、検体を吐き出して分注を行う。各検体の分注終了後、ノズル31bは、洗浄槽31dで洗浄され、繰り返し検体の分注に使用される。また、検体分注機構31は、図2に示すように、ノズル31bのノズル詰まりを検出する検出手段として圧力センサ31cを有する。圧力センサ31cは、例えば、ノズル31bと吸排機構31eとを接続する配管31f内の圧力を検体の吸引時に検出し、この検出した圧力を制御装置4に出力する。
【0020】
第1試薬分注機構32は、第1試薬の吸引および吐出を行うノズル32bが先端部に取り付けられたアーム32aを有する。アーム32aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。第1試薬分注機構32は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を有する。第1試薬分注機構32は、第1試薬庫34上の所定位置に移送された第1試薬容器34a内の第1試薬をノズル32bによって吸引し、アーム32aを図中反時計回りに旋回させ、反応槽30上の所定位置に搬送された反応容器30bに、第1試薬を吐き出して分注を行う。第1試薬の分注終了後、ノズル32bは、洗浄槽32cで洗浄され、繰り返し第1試薬の分注に使用される。
【0021】
第2試薬分注機構33は、第1試薬分注機構32と同様に、第2試薬の吸引および吐出を行うノズル33bが先端部に取り付けられたアーム33aと、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を有し、第2試薬庫35上の所定位置に移送された第2試薬容器35a内の第2試薬をノズル33bによって吸引後、反応槽30上の所定位置に搬送された反応容器30bに、第2試薬を吐き出して分注を行う。第2試薬の分注終了後、ノズル33bは、洗浄槽33cで洗浄され、繰り返し第2試薬の分注に使用される。
【0022】
第1試薬庫34は、反応容器30b内に分注される2種類の試薬のうち、最初に分注される第1試薬が収容された第1試薬容器34aを着脱自在に複数収納できる。第1試薬庫34は、制御装置4の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、第1試薬庫34の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の第1試薬容器34aを第1試薬分注機構32による試薬吸引位置まで移送する。
【0023】
第2試薬庫35は、反応容器30b内に分注される2種類の試薬のうち、第1試薬の次に分注される第2試薬が収容された第2試薬容器35aを着脱自在に複数収納できる。第2試薬庫35は、第1試薬庫34と同様に、制御装置4の制御のもと、時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の第2試薬容器35aを第2試薬分注機構33による試薬吸引位置まで移送する。
【0024】
攪拌部37は、反応容器30bに分注された第1試薬と検体あるいは第1試薬と第2試薬と検体との混合液の攪拌を行い、反応を促進させる。
【0025】
測光部38は、所定の測定位置に移送された反応容器30bに光源38aから測定光を照射し、反応容器30b内の検体と試薬との混合液を透過した光を分光し、受光素子38bによる各波長光の強度測定を行うことによって、分析対象である検体と試薬との混合液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0026】
洗浄部39は、図示しないノズルによって、測光部38による測定が終了した反応容器30b内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行う。
【0027】
制御装置4は、制御部41、入力部42、分析部43、出力部44および記憶部45を有する。測定部3、検体供給部2、および制御装置4内の上述した各部は、制御部41に接続される。制御部41は、CPU等によって実現され、自動分析装置10の各部の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0028】
制御部41は、ノズル31bのノズル詰まりを検出する検出手段としての検出部41aと、検出部41aがノズル31bのノズル詰まりを検出した場合、検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりを検出された検体の分析データにノズル31bが詰まったことを示す旨の付加情報をノズル詰まりフラグとして付加する付加手段としての情報付加部41bと、分析データにノズル詰まりフラグが付加された検体を収容する検体容器25aが少なくとも1つラック25に保持されている場合、このラック25を回収部22に搬送し、ノズル詰まりフラグが付加されておらず、かつ再検対象である検体を収容する検体容器25aを少なくとも1つ保持されているラック25を供給部20に搬送して自動再検の処理を行うように検体供給部2を制御する制御手段としての搬送制御部41cとを有する。
【0029】
入力部42は、キーボードやマウス等によって実現され、検体数等の各種情報の入力が可能である。分析部43は、測光部38によって測定された測定結果をもとに、検体内における検出対象物の濃度を求め、検体の成分分析等を行う。出力部44は、ディスプレイパネルやプリンタ等によって実現され、検体の分析データや警報等の各種情報を出力する。記憶部45は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置10が処理を実行する際にこの処理にかかわる各種プログラムをハードディスクから読み出して電気的に記憶するメモリとを有する。記憶部45は、演算処理された吸光度等を含む検体の分析データを記憶する。
【0030】
以上のように構成された自動分析装置10では、順次搬送される複数の反応容器30bに対して、第1試薬分注機構32が、第1試薬容器34aから反応容器30bに第1試薬を分注し、検体分注機構31が、検体容器25aから反応容器30bに所定量の検体を分注する。続いて、攪拌部37が、反応容器30b内の第1試薬と検体とを攪拌して反応させた後、測光部38が、第1試薬と検体との混合液の吸光度測定を行う。また、必要に応じて第2試薬分注機構33が、第2試薬容器35aから反応容器30bに第2試薬を分注する。続いて、攪拌部37が、反応容器30b内の第1試薬、検体および第2試薬の混合液を攪拌して反応させた後、測光部38が、第1試薬と検体と第2試薬との混合液の吸光度測定を行う。そして、分析部43が、測定結果を分析し、検体の成分分析等を自動的に行う。また、洗浄部39が、測光部38による測定が終了した反応容器30bの洗浄・乾燥を行い、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0031】
ここで、検出部41aが、圧力センサ31cによって出力された検体の吸引時の圧力に基づいてノズル31bのノズル詰まりを検出した場合、情報付加部41bが、検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりを検出された検体の分析データにノズル詰まりフラグを付加し、ノズル詰まりフラグを付加された検体を収容する検体容器25aが少なくとも1つラック25に保持されている場合、搬送制御部41cが、このラック25を回収部22に搬送させ、ノズル詰まりフラグを付加された検体を収容した検体容器25aが保持されず、かつ再検対象である検体を収容する検体容器25aが少なくとも1つ保持されたラック25を供給部20に搬送させ、自動再検処理を行わせるようにしている。
【0032】
つぎに、図3および図4に示すフローチャートを参照して、制御部41による分析処理手順について説明する。図3は、制御部41による分析処理手順の全体フローチャートを示している。図3において、まず、制御部41は、1つのラック25に保持された検体容器25aに収容した各検体に対する初回の分析処理を行う(ステップS100)。その後、制御部41は、この初回の分析処理結果をもとに、自動再検処理を含むラック搬送処理を行う(ステップS200)。すなわち、制御部41は、初回の分析処理結果をもとに、ラック25を回収部22に搬送して検体容器を回収し、あるいはラック25を供給部20に搬送して自動再検処理を行わせ、本処理を終了する。
【0033】
図4は、図3に示した初回の分析処理手順の詳細フローチャートである。図4に示すように、制御部41は、まず、供給部20に保持されたラック25を、搬送部23上に引き出し、この搬送部23によって検体吸引位置へのラック25の搬送を開始する(ステップS101)。次に、制御部41は、検体吸引位置までのラック25の搬送途中で、識別コード読取装置24によって検体容器25aおよびラック25に貼付された識別コードラベルの情報を読み取って、ラック25に保持された各検体の情報を取得する(ステップS102)。次に、制御部41は、検体吸引位置の近傍の位置Pからラック25を押し出した後、搬送部23を間欠的に移動させてラック25とともに各検体容器25aを検体吸引位置に搬送する(ステップS103)。
【0034】
次に、制御部41は、第1試薬分注機構32によって反応容器30bに第1試薬を分注する(ステップS104)。その後、制御部41は、検体吸引位置の検体容器25aから検体分注機構31によって反応容器30bに検体を分注する(ステップS105)。その後、検出部41aは、この検体分注によってノズル31bにノズル詰まりが検出されたか否かを判断する(ステップS106)。ノズル31bのノズル詰まりが検出された場合(ステップS106;Yes)、情報付加部41bは、ノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の分析データにノズル詰まりフラグを付加し(ステップS107)、その後、この検体の分析データに再検が必要であることを示す情報(以下、再検フラグという)を付加する(ステップS112)。その後、制御部41は、検体の分析データを出力部44に出力する(ステップS113)。この場合、この検体には、ノズル詰まりフラグと再検フラグとが付加され、この検体は、ノズル詰まりによる再検が必要なものであるが自動再検の対象とはならないものとその後識別される。
【0035】
一方、ノズル31bのノズル詰まりが検出されなかった場合(ステップS106;No)、制御部41は、第2試薬分注機構33によって反応容器30bに第2試薬を分注する(ステップS108)。その後、1つの分析項目の分析値を算出する(ステップS109)。その後、制御部41は、この検体の全ての分析項目の分析が完了したか否かを判断する(ステップS110)。この検体の全ての分析項目の分析が完了していない場合(ステップS110;No)、制御部41は、ステップS104に移行して上述した処理を繰り返す。一方、この検体の全ての分析項目の分析が完了した場合(ステップS110;Yes)、さらに、制御部41は、この検体の分析データに基づいて検体が再検対象であるか否かを判断する(ステップS111)。この検体が再検対象である場合(ステップS111;Yes)、制御部41は、ノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の分析データに再検フラグを付加する(ステップS112)。その後、制御部41は、検体の分析データを出力部44に出力する(ステップS113)。この場合、この検体には、再検フラグのみが付加され、この検体は、自動再検の対象となるものとその後識別される。一方、この検体が再検対象でない場合(ステップS111,No)、制御部41は、そのまま、検体の分析データを出力部44に出力する(ステップS113)。この場合、この検体は、再検が行われず、分析処理が完了したものと識別される。
【0036】
その後、制御部41は、ラック25に保持された全ての検体容器25aに収容された検体の初回分析が完了したか否かを判断する(ステップS114)。ラック25に保持された全ての検体容器25aに収容された検体の初回分析が完了していない場合(ステップS114;No)、制御部41は、ステップS103に移行して上述した処理を繰り返す。一方、ラック25に保持された全ての検体容器25aに収容された検体の初回分析が完了した場合(ステップS114;Yes)、制御部41は、搬送部23によって待機部21近傍までラック25を搬送した後、ラック25を押し出して待機部21まで搬送し(ステップS115)、ステップS100にリターンする。
【0037】
次に、図5に示すフローチャートを参照して、制御部41によるステップS200の自動再検処理を含む搬送処理手順について説明する。図5において、まず、搬送制御部41cは、待機部21で待機するラック25に保持された検体容器25aに収容する検体のうち、検体の分析データにノズル詰まりフラグが付加された検体を収容する検体容器25aが少なくとも1つ保持されているか否かを判断する(ステップS201)。分析データにノズル詰まりフラグが付加された検体を収容する検体容器25aが少なくとも1つラック25に保持されている場合(ステップS201;Yes)、搬送制御部41cは、ラック25を待機部21から搬送部23に引き出し、回収部22近傍に搬送した後、ラック25を押し出して回収部22まで搬送し(ステップS205)、ステップS200にリターンする。これによって、ノズル31bのノズル詰まりが検出された検体を収容する検体容器25aが自動再検処理されずに、回収可能となる。そして、オペレータは、分析データにノズル詰まりフラグを付加された検体を収容する検体容器25aを回収し、分析データにノズル詰まりフラグを付加された検体に対して希釈する等の処理を行うことによって、ノズル31bを詰まらせた原因をなくすことができ、その後、オペレータによってこの検体の再検が実行される。
【0038】
一方、ラック25に保持された検体容器25aに収容する検体のうち、分析データにノズル詰まりフラグが付加された検体を収容する検体容器25aが保持されていない場合(ステップS201;No)、制御部41は、分析データに再検フラグを付加された検体を収容する検体容器25aが少なくとも1つラック25に保持されているか否かを判断する(ステップS202)。分析データに再検フラグを付加された検体を収容する検体容器25aがラック25保持されていない場合(ステップS202;No)、制御部41は、待機部21から搬送部23にラック25を引き出し、回収部22近傍に搬送した後、ラック25を押し出して回収部22まで搬送し(ステップS205)、ステップS200にリターンする。
【0039】
一方、分析データに再検フラグを付加された検体を収容する検体容器25aが少なくとも1つラック25に保持されている場合(ステップS202;Yes)、制御部41は、ラック25を待機部21から搬送部23に引き出し、供給部20近傍に搬送した後、ラック25を押し出して供給部20まで搬送する(ステップS203)。これにより、分析データにノズル詰まりフラグを付加されずかつ再検フラグを付加された検体を収容する検体容器25aを自動再検処理するように検体吸引位置に自動供給することができる。その後、制御部41は、このラック25に保持され、分析データにノズル詰まりフラグが付加されず、かつ再検フラグが付加された各検体の自動再検処理を行った後(ステップS204)、ラック25を再び回収部22に搬送して(ステップS205)、ステップS200にリターンする。
【0040】
この発明の実施の形態1では、検出部41aがノズル31bのノズル詰まりを検出せず、かつ再検対象の検体が収容されたラック25のみを自動再検処理対象として供給部20に供給して自動再検を行わせ、それ以外のノズル詰まりが検出された検体を含む検体が収容されたラック25を回収部22に搬送し、ノズル詰まりを検出された検体が、自動再検処理対象とならないようにしているので、ノズル詰まりを原因とする再検の繰り返しを防止でき、再検にかかる時間および再検で使用する試薬の無駄を低減することができる。
【0041】
また、この発明の実施の形態1では、情報付加部41bが、検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりを検出された検体の分析データにノズル詰まりフラグを付加しているため、ノズル31bのノズル詰まりを検出された検体を容易に識別することができる。
【0042】
(実施の形態2)
次に、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、検出部41aが、ノズル31bのノズル詰まりを検出した場合、ノズル31bのノズル詰まりを検出された検体を収容する検体容器25aが保持されたラック25を回収部22に搬送するようにしていたが、この実施の形態2では、検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の直前に分注された異なる検体についてもノズル31bのノズル詰まりが検出されていた場合、異常を報知し、分析動作を停止するようにしている。
【0043】
図6は、この発明の実施の形態2にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。図6に示すように、制御部51が、上述した実施の形態1にかかる自動分析装置10の制御部41に、さらに異常判断手段としてのノズル異常判断部51aおよび異常制御手段としての異常制御部51bを有している。ノズル異常判断部51aは、検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の直前に分注された異なる検体についてもノズル31bのノズル詰まりが検出されていたか否かを判断する。また、異常制御部51bは、ノズル異常判断部51aが検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の直前に分注された異なる検体についてもノズル31bのノズル詰まりが検出されていたと判断した場合、ノズル31bの異常を報知し、分析動作を停止するように制御する。その他の構成は、実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0044】
ここで、図7に示すフローチャートを参照して、制御部51による初回の分析処理について詳細に説明する。この初回の分析処理は、図3のステップS100に対応する処理であり、その後、ステップS200の自動再検処理を含むラック搬送処理が行われる。図7において、まず制御部51は、供給部20に保持されたラック25を、搬送部23に引き出し、搬送部23によって検体吸引位置へのラック25の搬送を開始する(ステップS301)。次に、制御部51は、検体吸引位置までのラック25の搬送途中で、識別コード読取装置24によって検体容器25aおよびラック25に貼付けられた識別コードラベルの情報を読み取ってラック25に保持された各検体の情報を取得する(ステップS302)。次に、制御部51は、検体吸引位置の近傍の位置Pからラック25を押し出した後、搬送部23を間欠的に動作させて検体を検体吸引位置に搬送する(ステップS303)。
【0045】
次に、制御部51は、反応容器30bに第1試薬を分注した後(ステップS304)、検体容器25aから反応容器30bに検体を分注する(ステップS305)。検出部41aは、この検体の分注によってノズル31bが詰まったか否かを検出し(ステップS306)、ノズル31bのノズル詰まりを検出した場合(ステップS306;Yes)、ノズル異常判断部51aは、検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の直前に分注された異なる検体についてもノズル31bのノズル詰まりが検出されていたか否かを判断する(ステップS307)。検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の直前に分注された異なる検体についてもノズル31bのノズル詰まりが検出されていなかった場合(ステップS307;No)、情報付加部41bは、ノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の分析データにノズル詰まりフラグを付加する(ステップS308)。その後、制御部51は、ノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の分析データに再検フラグを付加する(ステップS315)。その後、制御部51は、検体の分析データを出力部44に出力する(ステップS316)。
【0046】
一方、検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の直前に分注された異なる検体についてもノズル31bのノズル詰まりが検出されていた場合(ステップS307;Yes)、異常制御部51bは、ノズル31bの異常を知らせる情報を出力部44に出力し(ステップS309)、分析動作を停止させる処理を行って(ステップS310)、本処理を終了する。これにより、オペレータは、洗浄槽31dでの洗浄によっても排除することができないようなノズル31bのノズル詰まりが発生していることを知ることができる。
【0047】
一方、ノズル31bのノズル詰まりを検出しなかった場合(ステップS306;No)、制御部51は、反応容器30bに第2試薬を分注し(ステップS311)、1つの分析項目の分析値を算出する(ステップS312)。次に、制御部51は、この検体の全ての分析項目の分析が完了したか否かを判断する(ステップS313)。この検体の全ての分析項目の分析が完了していない場合(ステップS313;No)、制御部51は、ステップS304に移行して上述した処理を繰り返す。一方、この検体の全ての分析項目の分析が完了した場合(ステップS313;Yes)、制御部51は、この検体の分析データに基づいて検体が再検対象であるか否かを判断する(ステップS314)。この検体が再検対象である場合(ステップS314;Yes)、制御部51は、この検体の分析データに再検フラグを付加する(ステップS315)。次に、制御部51は、検体の分析データを出力部44に出力する(ステップS316)。
【0048】
その後、制御部51は、ラック25に保持された全ての検体の初回分析が完了したか否かを判断する(ステップS317)。ラック25に保持された全ての検体の初回分析が完了していない場合(ステップS317;No)、制御部51は、ステップS303に移行して上述した処理を繰り返す。一方、ラック25に保持された全ての検体の初回分析が完了した場合(ステップS317;Yes)、制御部51は、搬送部23によって待機部21近傍までラック25を搬送した後、ラック25を押し出して待機部21まで搬送し(ステップS318)、図3のステップS100にリターンする。
【0049】
この発明の実施の形態2では、実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、ノズル異常判断部51aが検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の直前に分注された異なる検体についてもノズル31bのノズル詰まりが検出されていたか否かを判断し、ノズル異常判断部51aが検出部41aによってノズル31bのノズル詰まりが検出された検体の直前に分注された異なる検体についてもノズル31bのノズル詰まりが検出されていたと判断した場合、異常制御部51bが、ノズル31bの異常を知らせる情報を出力部44に出力し、分析動作を停止するように制御しているため、オペレータは、ノズル31bのノズル詰まりが洗浄槽31dでの洗浄によっても排除されないため繰り返される分析データの異常に迅速に対処することが可能となる。
【0050】
なお、上述した実施の形態1,2では、ノズル31bのノズル詰まりを検出する検出手段として圧力センサ31cを用いるものを例示したが、これに限らず、ノズル31bのノズル詰まりを検出できればよい。例えば、ノズル31bの吐き出し口近傍にマイクロホンを設け、このマイクロホンによって検出した検体の吐き出し音の変化によってノズル31bのノズル詰まりを検出するようにしてもよい。
【0051】
また、上述した実施の形態1,2では、検体の分析データにノズル詰まりフラグを付加するものを例示したが、これに限らず、検出手段によってノズル31bのノズル詰まりを検出された検体が収容された検体容器25aが保持されたラック25を自動再検処理前に回収部22に搬送できればよい。例えば、検出手段によってノズル31bのノズル詰まりを検出されなかった検体の分析データにノズル31bが詰まらなかったことを示す情報を付加情報として付加し、分析データにノズル31bが詰まらなかったことを示す情報が付加されていない検体を収容する検体容器25aが保持されたラック25を回収部22に搬送するようにしてもよい。あるいは、検出部41aが、ノズル31bのノズル詰まりを検出した場合、検体の分析データにノズル詰まりフラグを付加しなくても、ノズル31bのノズル詰まりを検出したら直ちに、ノズル31bのノズル詰まりを検出された検体を収容する検体容器25aが保持されたラック25を回収部22に搬送するようにしてもよい。この場合、ノズル31bのノズル詰まりを検出された検体を収容する検体容器25aが保持されたラック25が待機部21で待機することなく検体吸引位置から回収部22まで搬送される搬送ルートを設けておくことが好ましい。
【0052】
さらに、上述した実施の形態1,2では、検体供給部2が待機部21を備えるものを例示したが、これに限らず、ラック25に保持された検体容器25aに収容した検体の分析データに基づいてラック25が検体吸引位置から供給部20または回収部22に振り分けて搬送されればよい。例えば、待機部21に替わって搬送部23を設け、検体吸引位置から供給部20と回収部22との分岐位置までの距離が、検体吸引位置からラック25を搬送しながら供給部20または回収部22に搬送を振り分ける判断基準となる分析データが求められるような距離にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】この発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の検体分注機構の構成の一部を示す模式図である。
【図3】図1に示した制御部が1つのラックに保持される検体容器に収容した検体に実施する分析処理を示すフローチャートである。
【図4】図3に示した初回の分析処理を示すフローチャートである。
【図5】図3に示した自動で再検を行う際の処理を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図7】図6に示した制御部が実施する初回の分析処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
2 検体供給部
3 測定部
4,5 制御装置
10,60 自動分析装置
20 供給部
21 待機部
22 回収部
23 搬送部
23a ラック押出し装置
23b ラック引出し装置
24 識別コード読取装置
25 ラック
25a 検体容器
30 反応槽
30a ホイール
30b 反応容器
31 検体分注機構
31a,32a,33a アーム
31b,32b,33b ノズル
31c 圧力センサ
31d,32c,33c 洗浄槽
31e 吸排機構
31f 配管
32 第1試薬分注機構
33 第2試薬分注機構
34 第1試薬庫
35 第2試薬庫
37 攪拌部
38 測光部
38a 光源
38b 受光素子
39 洗浄部
41,51 制御部
41a 検出部
41b 情報付加部
41c 搬送制御部
51a ノズル異常判断部
51b 異常制御部
P 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が収容された検体容器を検体吸引位置に供給可能に保持する供給部および該検体容器を回収可能に保持する回収部を有し、前記検体吸引位置を経由する前記供給部から前記回収部あるいは前記供給部までの前記検体容器の搬送を行う搬送手段を備え、前記検体吸引位置でノズルによって前記検体容器から反応容器に分注された検体の分析を行う自動分析装置において、
前記ノズルのノズル詰まりを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記ノズルのノズル詰まりを検出した場合、前記ノズルのノズル詰まりが検出された検体を収容する検体容器を前記回収部に搬送し、前記ノズルのノズル詰まりが検出されずかつ再検対象である検体を収容する検体容器を前記供給部に搬送して自動再検の処理を行うように前記搬送手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記検出手段が前記ノズル詰まりを検出した場合、該ノズル詰まりが発生した検体の情報に該ノズル詰まりが発生したことを示す旨の付加情報を付加する付加手段を備え、
前記制御手段は、前記付加情報が付された検体を収容する検体容器を前記回収部に搬送し、前記付加情報が付されておらずかつ再検対象である検体を収容する検体容器を前記供給部に搬送して自動再検の処理を行うように前記搬送手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記検出手段が前記ノズル詰まりを検出した場合、直前に分注された異なる検体の分注時にノズル詰まりが検出されていたか否かを判断する異常判断手段と、
前記異常判断手段が直前に分注された異なる検体の分注時にノズル詰まりが検出されていたと判断した場合、前記ノズルの異常を報知するとともに、分析動作を停止するように制御する異常制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−8372(P2010−8372A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171183(P2008−171183)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】